(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】抗体様タンパク質およびその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20231129BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20231129BHJP
C07K 14/46 20060101ALI20231129BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231129BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231129BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20231129BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231129BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231129BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20231129BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K16/18 ZNA
C07K14/46
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/12
A61P35/00
A61P35/02
A61P31/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K39/395 R
A61K39/395 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526090
(86)(22)【出願日】2021-11-01
(85)【翻訳文提出日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 KR2021015602
(87)【国際公開番号】W WO2022092974
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0143660
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0148175
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519367980
【氏名又は名称】セレメディー カンパニー,リミテッド
【住所又は居所原語表記】H4301, 4th Floor, Bundang Seoul National Univ. Hospital HIP, 172 Dolma-ro, Bundang-gu, Seongnam-si, Gyeonggi-do 13605 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】リ, ジェ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】リ, ボ ラム
(72)【発明者】
【氏名】ユン, チュル ジュ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085BB11
4C085CC21
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、抗体様タンパク質およびその用途に関し、より詳細には、抗体の相補性決定領域が融合したCDR-フェリチン単量体を少なくとも含む複数のフェリチン単量体の自己集合からなることにより、相補性決定領域がその表面または外部に高密度で存在し、HCDR3などの一部の相補性決定領域のみでも抗体と類似したレベルの結合力(affinity)で抗原に結合することができ、複数の抗原と同時に結合するのに有利な構造的特性を有しており、抗体に比べて結合活性(avidity)が顕著に改善された、抗体様タンパク質およびその用途に関する。本発明の抗体様タンパク質は、抗体ベースの用途および分野で広く利用できる抗体の代替材料である。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相補性決定領域(Complementarity Determining Region)が融合したCDR-フェリチン単量体を少なくとも含む複数のフェリチン単量体の自己集合からなる抗体様タンパク質。
【請求項2】
前記相補性決定領域は、前記抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択されるいずれか1つである、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項3】
前記相補性決定領域は、抗原との結合のために前記タンパク質の表面または外部に露出している、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項4】
前記相補性決定領域は、25aa以下の長さを有する、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項5】
前記CDR-フェリチン単量体は、前記相補性決定領域がヒトフェリチン重鎖単量体に融合したものである、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項6】
前記CDR-フェリチン単量体における前記相補性決定領域は、フェリチン単量体のα-ヘリックスの内部、隣接するα-ヘリックスの間、N末端、C末端、ABループ、BCループ、CDループ、DEループ、N末端とAヘリックスの間、およびEヘリックスとC末端の間からなる群より選択されるいずれか1つに融合する、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項7】
前記CDR-フェリチン単量体は、1つのフェリチン単量体に前記抗体の複数の相補性決定領域が融合したものである、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項8】
前記CDR-フェリチン単量体は、1つのフェリチン単量体に前記抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される少なくとも1つの重鎖相補性決定領域が融合したものである、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項9】
前記CDR-フェリチン単量体は、1つのフェリチン単量体に、前記抗体のLCDR1、LCDR2、LCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される少なくとも1つの軽鎖相補性決定領域が融合したものである、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項10】
前記CDR-フェリチン単量体は、前記抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される少なくとも1つの重鎖相補性決定領域が融合した重鎖CDR-フェリチン単量体と、前記抗体のLCDR1、LCDR2、LCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される少なくとも1つの軽鎖相補性決定領域が融合した軽鎖CDR-フェリチン単量体とを含む、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項11】
前記相補性決定領域は、前記CDR-フェリチン単量体のDEループまたはC末端に融合して4重対称構造(four fold symmetry)を形成する、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項12】
前記相補性決定領域は、前記CDR-フェリチン単量体のN末端、ABループまたはBCループに融合して2重対称構造(two fold symmetry)を形成する、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項13】
前記相補性決定領域は、前記CDR-フェリチン単量体のCDループに融合して3重対称構造(three fold symmetry)を形成する、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項14】
前記相補性決定領域は、0.7~7nmの距離で離隔して配置される、請求項11~13のいずれか一項に記載の抗体様タンパク質。
【請求項15】
前記CDR-フェリチン単量体は、1つのフェリチン単量体に2種以上の抗体の各相補性決定領域が融合したものである、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項16】
前記CDR-フェリチン単量体は、第1の抗体の少なくとも1つの相補性決定領域が融合した第1のCDR-フェリチン単量体、および第2の抗体の少なくとも1つの相補性決定領域が融合した第2のCDR-フェリチン単量体を少なくとも含む、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項17】
前記第1のCDR-フェリチン単量体は、前記第1の抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される少なくとも1つの重鎖相補性決定領域が融合した第1の重鎖CDR-フェリチン単量体と、前記第1の抗体のLCDR1、LCDR2、LCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される少なくとも1つの軽鎖相補性決定領域が融合した第1の軽鎖CDR-フェリチン単量体とを含む、請求項16に記載の抗体様タンパク質。
【請求項18】
前記第2のCDR-フェリチン単量体は、前記第2の抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される少なくとも1つの重鎖相補性決定領域が融合した第2の重鎖CDR-フェリチン単量体と、前記第2の抗体のLCDR1、LCDR2、LCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される少なくとも1つの軽鎖相補性決定領域が融合した第2の軽鎖CDR-フェリチン単量体とを含む、請求項16に記載の抗体様タンパク質。
【請求項19】
前記第1のCDR-フェリチン単量体および前記第2のCDR-フェリチン単量体は1:1~1:5で含まれる、請求項16に記載の抗体様タンパク質。
【請求項20】
前記CDR-フェリチン単量体は、複数の異なる抗体を含む第1の抗体群の複数の相補性決定領域が融合した第1のCDR-フェリチン単量体、および複数の異なる抗体を含む第2の抗体群の複数の相補性決定領域が融合した第2のCDR-フェリチン単量体を少なくとも含む、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項21】
前記複数のフェリチン単量体は、前記相補性決定領域が融合していないフェリチン単量体を少なくとも含む、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項22】
前記CDR-フェリチン単量体の24個が自己集合してなる、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項23】
粒径8~50nmの球状である、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項24】
前記相補性決定領域に結合する抗原に対する結合力(Kd)が1,000nM以下である、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項25】
前記抗体は、PD-1、Her-2/neu、VISTA、4-1BBL、CD48、ガレクチン9(Galectin-9)、アデノシンA2a受容体(Adenosine A2a receptor)、CD80、CD86、ICOS、ICOSL、BTLA、OX-40L、CD155、BCL2、MYC、PP2A、BRD1、BRD2、BRD3、BRD4、BRDT、CBP、E2F1、MDM2、MDMX、PPP2CA、PPM1D、STAT3、IDH1、PD-L1、PD-L2、CD40L、LAG3、TIM3、TIGIT、BTLA、CD52、SLAMF7、4-1BB、OX-40、ICOS、GITR、CD27、CD28、CD16、CD3、CD20、EGFRファミリー、AXL、CSF1R、DDR1、DDR2、EPH受容体ファミリー、FGFRファミリー、VEGFRファミリー、IGF1R、LTK、PDGFRファミリー、RET、KIT、KRAS、NTRK1、NTRK2およびSARS-Covからなる群より選択されるいずれか1つに対する抗体である、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項26】
前記抗体は、gp100、MART-1、Melna-A、MAGE-A3、MAGE-C2、マンマグロビンA(Mammaglobin-A)、プロテイナーゼ3(proteinsase-3)、ムチン1(mucin-1)、HPV E6、LMP2、PSMA、GD2、hTERT、PAP、ERG、NA17、ALK、GM3、EPhA2、NA17-A、TRP-1、TRP-2、NY-ESO-1、CEA、CA 125、AFP、サバイビン (Survivin)、AH1、ras、G17DT、MUC1、Her-2/neu、E75、p53、PSA、HCG、PRAME、WT1、URLC10、VEGFR1、VEGFR2、E7、チロシナーゼ(Tyrosinase)ペプチド、B16F10、EL4およびネオアンチゲン(neoantigen)からなる群より選択されるものに対する抗体である、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項27】
前記抗体は、脳癌、頭頸部癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、白血病、肺癌、肝癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、血管腫瘍、扁平細胞癌種、腺癌種、小細胞癌種、黒色腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫、喉頭癌、耳下腺癌、胆道癌、甲状腺癌、日光角化症、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、腺様嚢胞癌、腺腫、腺扁平上皮癌腫、肛門管癌、肛門癌、肛門直腸癌、星細胞腫、バルトリン腺癌、基底細胞癌腫、胆汁癌、骨癌、骨髄癌、気管支癌、気管支腺癌腫、カルチノイド、胆管癌腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、淡明細胞癌腫、結合組織癌、嚢腺腫、消化器系癌、十二指腸癌、内分泌系癌、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜様腺癌、内皮細胞癌、上衣腫、上皮細胞癌、眼窩癌、局所性結節性過形成、胆嚢癌、幽門洞癌、胃基底部癌、ガストリノーマ、膠芽腫、グルカゴノーマ、心臓癌、血管芽細胞腫、血管内皮腫、血管腫、肝腺腫、肝腺腫症、肝胆道癌、肝細胞癌腫、ホジキン病、回腸癌、インスリノーマ、上皮内新生物、上皮内扁平細胞新生物、肝内胆道癌、浸潤性扁平細胞癌腫、空腸癌、関節癌、骨盤癌、巨細胞癌腫、大腸癌、リンパ腫、悪性中皮腫、髄芽腫、髄質上皮腫、脳膜癌、中皮癌、転移性癌腫、口腔癌、粘表皮癌、多発性骨髄腫、筋肉癌、鼻腔癌、神経系癌、非上皮皮膚癌、非ホジキンリンパ腫、燕麦細胞癌、乏突起膠腫、口腔癌、骨肉腫、漿液性乳頭状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、下垂体腫瘍、形質細胞性腫瘍、偽肉腫、肺芽腫、直腸癌、腎細胞癌腫、呼吸器系癌、網膜芽細胞腫、漿液性癌、副鼻腔癌、皮膚癌、小細胞癌、小腸癌、平滑筋肉腫、軟部組織癌、ソマトスタチノーマ、脊椎癌、扁平細胞癌、線条筋肉癌、中皮細胞下層癌、T細胞白血病、舌癌、尿管癌、尿道癌、子宮頸癌、子宮体癌、膣癌、VIPoma、外陰部癌、高分化癌、およびウィルムス腫瘍からなる群より選択される癌の抗原に対する抗体である、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項28】
前記抗体は、感染性疾患抗原に対する抗体である、請求項1に記載の抗体様タンパク質。
【請求項29】
前記感染性疾患は、バクテリア、真菌、ウイルス、寄生虫またはプリオン誘発疾患である、請求項28に記載の抗体様タンパク質。
【請求項30】
請求項1に記載の抗体様タンパク質を含む、疾患の治療または予防用薬学組成物。
【請求項31】
請求項1に記載の抗体様タンパク質を含む、疾患の診断用組成物。
【請求項32】
請求項1に記載の抗体様タンパク質を処理するステップを含む、抗原の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な構造および特性を有するタンパク質並びにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
標的指向型薬物送達システムとは、薬物を治療部位に選択的に送達することにより、健康な組織を薬物に暴露させないとともに、少量の薬物でも優れた治療効果を発揮できるように設計された技術を指す。標的指向型薬物送達システムを利用すれば、特定の疾患部位に薬物を集中させることで薬物治療効果を最大化し、抗癌剤などの毒性の強い薬物による副作用を最小限に抑えることができる。
【0003】
ほとんどの場合、標的指向性を付与する代表的な物質はシグナルペプチドと抗体である。抗体とは、脊椎動物の免疫応答によって産生されるタンパク質であって、抗原の特定の部位を特異的に認識して結合し、抗原の作用を不活性化または除去する免疫タンパク質である。抗体は2つの重鎖(heavy chain)と2つの軽鎖(light chain)を有し、最も一般的に利用されているGクラスの抗体(immunoglobulin G)の場合は、基本的にY字型をしている。軽鎖と重鎖の可変領域が一緒になって抗原結合部位(antigen binding site)が形成される。このような抗体は2つの抗原結合部位を有するため、1つの抗体は2つの抗原エピトープしか結合することができない。また、抗原結合部位が占める部分は、抗体全体の大きさに比べて一部であり、抗体の使用時には抗原-抗体反応を誘発できる抗原結合部位以外に他の外来配列が投与体に共に導入される限界がある。
【0004】
フェリチンは鉄を貯蔵するタンパク質であり、原核生物と真核生物に広く存在している。フェリチンの分子量は約500,000Daで、重鎖(Heavy chain)と軽鎖(Light chain)で構成されており、自己集合能力があって球状粒子を形成する独特の特性を示す。フェリチンは24個の単量体(重鎖または軽鎖のいずれかで構成される単一単量体または異種単量体)が集まって巨大な球状の三次構造を形成したタンパク質であり、ヒトフェリチンの場合、外径が約12nm、内径が約8nmである。
【0005】
フェリチン構造体は、選択的方法により適切な機能団を用いて修飾(modification)することができ、必要な様々な物理化学的性質を付与できる利点を有する。一例として、抗原エピトープと融合したフェリチン単量体が自己集合してフェリチンタンパク質を形成し、そのフェリチンタンパク質は樹状細胞に抗原を提示する役割を果たすことができる。しかし、フェリチン単量体に抗体の相補性決定領域を融合させた事例は未だ報告されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、抗原への結合活性に優れた抗体様タンパク質を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、抗体全体を用いることによる不要な免疫応答を誘発しない抗体様タンパク質を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、生産および保存が容易な抗体様タンパク質を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、前記抗体様タンパク質を用いる疾患の治療または予防用薬学組成物、疾患の診断用組成物および抗原の検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、相補性決定領域(Complementarity Determining Region)が融合したCDR-フェリチン単量体を少なくとも含む複数のフェリチン単量体の自己集合からなる抗体様タンパク質を提供する。
【0011】
本発明の抗体様タンパク質における前記相補性決定領域は、前記抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択されるいずれか1つであってもよい。
【0012】
本発明の抗体様タンパク質における前記相補性決定領域は、抗原との結合のために前記タンパク質の表面または外部に露出していてもよい。
【0013】
本発明の抗体様タンパク質における前記相補性決定領域は、25aa以下の長さを有することができる。
【0014】
本発明の抗体様タンパク質における前記CDR-フェリチン単量体は、前記相補性決定領域がヒトフェリチン重鎖単量体に融合したものであってもよい。
【0015】
本発明の抗体様タンパク質における前記相補性決定領域は、α-ヘリックスの内部、隣接するα-ヘリックスの間、N末端、C末端、ABループ、BCループ、CDループ、DEループ、N末端とAヘリックスの間、およびEヘリックスとC末端の間からなる群より選択されるいずれか1つに融合するものであってもよい。
【0016】
本発明の抗体様タンパク質における前記CDR-フェリチン単量体は、1つのフェリチン単量体に前記抗体の複数の相補性決定領域が融合したものであってもよい。
【0017】
本発明の抗体様タンパク質における前記CDR-フェリチン単量体は、1つのフェリチン単量体に前記抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される少なくとも1つの重鎖相補性決定領域が融合したものであってもよい。
【0018】
本発明の抗体様タンパク質における前記CDR-フェリチン単量体は、1つのフェリチン単量体に、前記抗体のLCDR1、LCDR2、LCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される少なくとも1つの軽鎖相補性決定領域が融合したものであってもよい。
【0019】
本発明の抗体様タンパク質における前記CDR-フェリチン単量体は、前記抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される少なくとも1つの重鎖相補性決定領域が融合した重鎖CDR-フェリチン単量体と、前記抗体のLCDR1、LCDR2、LCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される少なくとも1つの軽鎖相補性決定領域が融合した軽鎖CDR-フェリチン単量体とを含むことができる。
【0020】
本発明の抗体様タンパク質における前記相補性決定領域は、前記CDR-フェリチン単量体のDEループまたはC末端に融合して4重対称構造(four fold symmetry)を形成することができる。
【0021】
本発明の抗体様タンパク質における前記相補性決定領域は、前記CDR-フェリチン単量体のN末端、ABループまたはBCループに融合して2重対称構造(two fold symmetry)を形成することができる。
【0022】
本発明の抗体様タンパク質における前記相補性決定領域は、前記CDR-フェリチン単量体のCDループに融合して3重対称構造(three fold symmetry)を形成することができる。
【0023】
本発明の抗体様タンパク質における前記相補性決定領域は、0.7~7nmの距離で離隔して配置することができる。
【0024】
本発明の抗体様タンパク質における前記CDR-フェリチン単量体は、1つのフェリチン単量体に2種以上の抗体の各相補性決定領域が融合したものであってもよい。
【0025】
本発明の抗体様タンパク質における前記CDR-フェリチン単量体は、第1の抗体の少なくとも1つの相補性決定領域が融合した第1のCDR-フェリチン単量体、および第2の抗体の少なくとも1つの相補性決定領域が融合した第2のCDR-フェリチン単量体を少なくとも含むことができる。
【0026】
本発明の抗体様タンパク質における前記第1のCDR-フェリチン単量体は、前記第1の抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される少なくとも1つの重鎖相補性決定領域が融合した第1の重鎖CDR-フェリチン単量体と、前記第1の抗体のLCDR1、LCDR2、LCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される少なくとも1つの軽鎖相補性決定領域が融合した第1の軽鎖CDR-フェリチン単量体とを含むことができる。
【0027】
本発明の抗体様タンパク質における前記第2のCDR-フェリチン単量体は、前記第2の抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される少なくとも1つの重鎖相補性決定領域が融合した第2の重鎖CDR-フェリチン単量体と、前記第2の抗体のLCDR1、LCDR2、LCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される少なくとも1つの軽鎖相補性決定領域が融合した第2の軽鎖CDR-フェリチン単量体とを含むことができる。
【0028】
本発明の抗体様タンパク質において、前記第1のCDR-フェリチン単量体および前記第2のCDR-フェリチン単量体は1:1~1:5で含むことができる。
【0029】
本発明の抗体様タンパク質における前記CDR-フェリチン単量体は、複数の異なる抗体を含む第1の抗体群の複数の相補性決定領域が融合した第1のCDR-フェリチン単量体、および複数の異なる抗体を含む第2の抗体群の複数の相補性決定領域が融合した第2のCDR-フェリチン単量体を少なくとも含むことができる。
【0030】
本発明の抗体様タンパク質における前記複数のフェリチン単量体は、前記相補性決定領域が融合していないフェリチン単量体を少なくとも含むことができる。
【0031】
本発明の抗体様タンパク質は、前記CDR-フェリチン単量体の24個が自己集合してなるものであってもよい。
【0032】
本発明の抗体様タンパク質は、粒径8~50nmの球状であってもよい。
【0033】
本発明の抗体様タンパク質において、前記相補性決定領域に結合する抗原への結合力(Kd)は1,000nM以下であってもよい。
【0034】
本発明の抗体様タンパク質における前記抗体は、PD-1、Her-2/neu、VISTA、4-1BBL、CD48、ガレクチン9(Galectin-9)、アデノシンA2a受容体(Adenosine A2a receptor)、CD80、CD86、ICOS、ICOSL、BTLA、OX-40L、CD155、BCL2、MYC、PP2A、BRD1、BRD2、BRD3、BRD4、BRDT、CBP、E2F1、MDM2、MDMX、PPP2CA、PPM1D、STAT3、IDH1、PD-L1、PD-L2、CD40L、LAG3、TIM3、TIGIT、BTLA、CD52、SLAMF7、4-1BB、OX-40、ICOS、GITR、CD27、CD28、CD16、CD3、CD20、EGFRファミリー、AXL、CSF1R、DDR1、DDR2、EPH受容体ファミリー、FGFRファミリー、VEGFRファミリー、IGF1R、LTK、PDGFRファミリー、RET、KIT、KRAS、NTRK1、NTRK2およびSARS-Covからなる群より選択されるいずれか1つに対する抗体であってもよい。
【0035】
本発明の抗体様タンパク質における前記抗体は、gp100、MART-1、Melna-A、MAGE-A3、MAGE-C2、マンマグロビンA(Mammaglobin-A)、プロテイナーゼ3(proteinsase-3)、ムチン1(mucin-1)、HPV E6、LMP2、PSMA、GD2、hTERT、PAP、ERG、NA17、ALK、GM3、EPhA2、NA17-A、TRP-1、TRP-2、NY-ESO-1、CEA、CA 125、AFP、サバイビン (Survivin)、AH1、ras、G17DT、MUC1、Her-2/neu、E75、p53、PSA、HCG、PRAME、WT1、URLC10、VEGFR1、VEGFR2、E7、チロシナーゼ(Tyrosinase)ペプチド、B16F10、EL4およびネオアンチゲン(neoantigen)からなる群より選択されるものに対する抗体であってもよい。
【0036】
本発明の抗体様タンパク質における前記抗体は、脳癌、頭頸部癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、白血病、肺癌、肝癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、血管腫瘍、扁平細胞癌種、腺癌種、小細胞癌種、黒色腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫、喉頭癌、耳下腺癌、胆道癌、甲状腺癌、日光角化症、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、腺様嚢胞癌、腺腫、腺扁平上皮癌腫、肛門管癌、肛門癌、肛門直腸癌、星細胞腫、バルトリン腺癌、基底細胞癌腫、胆汁癌、骨癌、骨髄癌、気管支癌、気管支腺癌腫、カルチノイド、胆管癌腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、淡明細胞癌腫、結合組織癌、嚢腺腫、消化器系癌、十二指腸癌、内分泌系癌、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜様腺癌、内皮細胞癌、上衣腫、上皮細胞癌、眼窩癌、局所性結節性過形成、胆嚢癌、幽門洞癌、胃基底部癌、ガストリノーマ、膠芽腫、グルカゴノーマ、心臓癌、血管芽細胞腫、血管内皮腫、血管腫、肝腺腫、肝腺腫症、肝胆道癌、肝細胞癌腫、ホジキン病、回腸癌、インスリノーマ、上皮内新生物、上皮内扁平細胞新生物、肝内胆道癌、浸潤性扁平細胞癌腫、空腸癌、関節癌、骨盤癌、巨細胞癌腫、大腸癌、リンパ腫、悪性中皮腫、髄芽腫、髄質上皮腫、脳膜癌、中皮癌、転移性癌腫、口腔癌、粘表皮癌、多発性骨髄腫、筋肉癌、鼻腔癌、神経系癌、非上皮皮膚癌、非ホジキンリンパ腫、燕麦細胞癌、乏突起膠腫、口腔癌、骨肉腫、漿液性乳頭状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、下垂体腫瘍、形質細胞性腫瘍、偽肉腫、肺芽腫、直腸癌、腎細胞癌腫、呼吸器系癌、網膜芽細胞腫、漿液性癌、副鼻腔癌、皮膚癌、小細胞癌、小腸癌、平滑筋肉腫、軟部組織癌、ソマトスタチノーマ、脊椎癌、扁平細胞癌、線条筋肉癌、中皮細胞下層癌、T細胞白血病、舌癌、尿管癌、尿道癌、子宮頸癌、子宮体癌、膣癌、VIPoma、外陰部癌、高分化癌、およびウィルムス腫瘍からなる群より選択される癌の抗原に対する抗体であってもよい。
【0037】
本発明の抗体様タンパク質における前記抗体は、感染性疾患抗原に対する抗体であってもよい。
【0038】
本発明の抗体様タンパク質における前記感染性疾患は、バクテリア、真菌、ウイルス、寄生虫またはプリオン誘発疾患であってもよい。
【0039】
また、本発明は、前記抗体様タンパク質を含む、疾患の治療または予防用薬学組成物を提供する。
【0040】
また、本発明は、前記抗体様タンパク質を含む、疾患の診断用組成物を提供する。
【0041】
また、本発明は、前記抗体様タンパク質を含む抗体様タンパク質を処理するステップを含む、抗原の検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0042】
本発明の抗体様タンパク質は、抗体またはその断片(scFv)とは全く異なる構造を有する。
【0043】
本発明の抗体様タンパク質は、相補性決定領域がその表面または外部に高密度で存在し、一部の相補性決定領域だけでも抗体と類似したレベルの結合力(affinity)で抗原に結合することができる。
【0044】
本発明の抗体様タンパク質は、抗体の相補性決定領域間の距離を考慮して、フェリチンタンパク質の表面または外部に相補性決定領域が配置されるように設計することができる。
【0045】
本発明の抗体様タンパク質は、2重抗体などの多重抗体と類似した役割を果たすことができる。
【0046】
本発明の抗体様タンパク質は、複数の抗原と同時に結合するのに有利な構造的特性を有しており、抗体に比べて結合活性(avidity)が顕著に改善されている。
【0047】
本発明の抗体様タンパク質は、抗体のCDRまたはその保存的配列変異体のみを含み、CDR以外の抗体全配列を用いることによる不要な免疫応答を誘発しない。
【0048】
本発明の抗体様タンパク質は、微生物において容易に産生することができる。
【0049】
本発明の抗体様タンパク質は保存が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、CDR-フェリチン単量体の当該部位に相補性決定領域が融合した場合における、本発明の抗体様タンパク質の表面にディスプレイされる相補性決定領域の位置および密度を示す。
【
図2A】
図2Aは、テセントリク(Tecentriq)抗体の相補性決定領域間の距離を示す。
【
図2B】
図2Bは、CDR-フェリチン単量体の当該部位に相補性決定領域が融合した場合における、形成される対称構造内の各CDR間の距離を示す。
【
図3】
図3は、フェリチン単量体の様々な位置に抗体CDR3を融合させたベクターの模式図である。
【
図4】
図4は、αPD-L1 HCDR3が融合した重鎖CDR-フェリチン単量体(huHF-αPD-L1 HCDR3)の製造のためのベクター模式図およびその単量体の製造並びに自己集合の有無を確認したものである。
【
図5】
図5は、αPD1 HCDR3が融合した重鎖CDR-フェリチン単量体(huHF-αPD1 HCDR3)の製造のためのベクター模式図およびその単量体の製造並びに自己集合の有無を確認したものである。
【
図6】
図6は、αCTLA4 HCDR3が融合した重鎖CDR-フェリチン単量体(huHF-αCTLA4 HCDR3)の製造のためのベクター模式図およびその単量体の製造並びに自己集合の有無を確認したものである。
【
図7】
図7は、αTIGIT HCDR3が融合した重鎖CDR-フェリチン単量体(huHF-αTIGIT HCDR3)の製造のためのベクター模式図およびその単量体の製造並びに自己集合の有無を確認したものである。
【
図8】
図8は、αLAG3 HCDR3が融合した重鎖CDR-フェリチン単量体(huHF-αLAG3 HCDR3)の製造のためのベクター模式図およびその単量体の製造並びに自己集合の有無を確認したものである。
【
図9】
図9は、αTIM3 HCDR3が融合した重鎖CDR-フェリチン単量体(huHF-αTIM3 HCDR3)の製造のためのベクター模式図およびその単量体の製造並びに自己集合の有無を確認したものである。
【
図10】
図10は、αPD-L1 HCDR3とαTIGIT HCDR3が融合した重鎖CDR-フェリチン単量体(huHF-αPD-L1-αTIGIT)の製造のためのベクター模式図およびその単量体の製造並びに自己集合の有無を確認したものである。
【
図11】
図11は、フェリチン単量体のC末端に様々な抗体CDR3を融合させたベクターの模式図である。
【
図12】
図12は、PD1(Tecentriq)HCDR3が融合した重鎖CDR-フェリチン単量体(huHF-PD1(Tecentriq)HCDR3)の製造のためのベクター模式図およびその単量体の製造並びに自己集合の有無を確認したものである。
【
図13】
図13は、PD1(keytruda)HCDR3が融合した重鎖CDR-フェリチン単量体(huHF-PD1(keytruda)HCDR3)の製造のためのベクター模式図およびその単量体の製造並びに自己集合の有無を確認したものである。
【
図14】
図14は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図15】
図15は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図16】
図16は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図17】
図17は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図18】
図18は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図19】
図19は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図20】
図20は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図21】
図21は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図22】
図22は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図23】
図23は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図24】
図24は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図25】
図25は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図26】
図26は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図27】
図27は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図28】
図28は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図29】
図29は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図30】
図30は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図31】
図31は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図32】
図32は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図33】
図33は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図34】
図34は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図35】
図35は、製造された抗体様タンパク質の抗原への結合力(A)を測定するプロットを示す。
【
図36】
図36は、タンパク質の腫瘍抑制能の評価スケジュールを示す。
【
図37】
図37は、αPD-L1 HCDR3とαTIGIT HCDR3が融合した重鎖CDR-フェリチン単量体(huHF-PD-L1-TIGITデュアルブロッカー)の腫瘍抑制能の評価結果である。
【
図38】
図38は、αPD-L1 HCDR3とαTIGIT HCDR3が融合した重鎖CDR-フェリチン単量体(huHF-PD-L1-TIGITデュアルブロッカー)の腫瘍抑制能の評価結果である。
【
図39】
図39は、α-PD-L1 HCDR3のフェリチン単量体への融合位置による腫瘍抑制能の比較結果である。
【
図40】
図40は、α-PD-L1 HCDR3のフェリチン単量体への融合位置による腫瘍抑制能の比較結果である。
【
図41】
図41は、抗体様タンパク質の細胞内での抗原結合力を評価した結果である。
【
図42】
図42は、抗体様タンパク質の細胞内での抗原結合力を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の一実施形態は、抗体の相補性決定領域が融合したCDR-フェリチン単量体を少なくとも含む複数のフェリチン単量体の自己集合からなることにより、相補性決定領域がその表面または外部に高密度で存在し、HCDR3などの一部の相補性決定領域だけでも抗体と類似したレベルの結合力(affinity)で抗原に結合でき、複数の抗原と同時に結合するのに有利な構造的特性を有していることから、抗体に比べて結合活性(avidity)が顕著に改善された抗体様タンパク質を提供する。
【0052】
本発明の抗体様タンパク質は、フェリチン単量体が自己集合してなる。真核細胞フェリチンは、24個の単量体が集まって球状の立体構造を形成する。
【0053】
本発明で使用できるフェリチン単量体は、由来および配列に制限がない。本発明のフェリチン単量体は、ヒトフェリチン単量体を含む。ヒトフェリチン単量体としては、ヒト重鎖フェリチン単量体またはヒト軽鎖フェリチン単量体を使用することができる。ヒト重鎖フェリチン単量体とヒト軽鎖フェリチン単量体を共に使用することもできる。
【0054】
ヒトフェリチンは、重鎖(heavy chain、21kDa)と軽鎖(light chain、19kDa)で構成され、24個の単量体が自己集合体を形成する。
【0055】
ヒトフェリチンの場合は、外径が約12nm、内径が約8nmである。フェリチン単量体の構造は、5つのαヘリックス構造、すなわちAヘリックス、Bヘリックス、Cヘリックス、DヘリックスおよびEヘリックスが順次連結された形態であり、ループ(loop)と呼ばれる各々のαヘリックス構造のポリペプチドを連結する非定型のポリペプチド部分を含む。
【0056】
ループとは、フェリチン単量体に相補性決定領域が挿入されても構造的に壊れない領域(region)を意味する。本発明では、AヘリックスとBヘリックスを連結するループをABループ、BヘリックスとCヘリックスを連結するループをBCループ、CヘリックスとDヘリックスを連結するループをCDループ、DヘリックスとEヘリックスを連結するループをDEループという。
【0057】
フェリチン単量体の情報はNCBIに公知されている(GenBank Accession No.NM_000146、NM_002032など)。
【0058】
フェリチン単量体はフェリチン重鎖単量体であってもよく、具体的には、ヒトフェリチン重鎖単量体であってもよい。前記ヒトフェリチン重鎖単量体(huHF)は、ヒト由来の配列番号1のアミノ酸配列で表されるタンパク質であってもよい。
【0059】
フェリチン重鎖単量体は、トランスフェリン受容体への結合力が低下するように一部の配列が突然変異したものであってもよい。例えば、ヒトフェリチン重鎖単量体の場合、配列番号1の配列における15番、16番、23番、82番または84番のアミノ酸がアラニン、グリシン、バリンまたはロイシンで置換されたものであってもよい。
【0060】
CDR-フェリチン単量体は、相補性決定領域(Complementarity Determining Region)が融合したフェリチン単量体である。本発明の抗体様タンパク質は、複数のフェリチン単量体が自己集合してなるが、複数のフェリチン単量体の中には、少なくとも1つのCDR-フェリチン単量体が含まれる。CDR-フェリチン単量体は24個以下で含まれ得る。
【0061】
相補性決定領域は、抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3からなる群より選択されるいずれか1つを指す。相補性決定領域はまた、それらの保存的配列変異体を含む。
【0062】
保存的配列変異体は、特定のアミノ酸配列を有する相補性決定領域の結合特性に深刻な影響を及ぼさないか、または変化させないか、または結合特性が改善されたアミノ酸配列の変異体を意味する。この保存的配列変異体には、アミノ酸の置換、付加および欠失が含まれる。保存的アミノ酸置換には、アミノ酸残基を、類似した側鎖を有するアミノ酸残基で置換することが含まれる。類似した側鎖を有するアミノ酸残基の群が当業界で定義されている。この群には、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、帯電していない極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β-分岐型側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。
【0063】
相補性決定領域は、抗原との結合のために、抗体様タンパク質の表面または外部に露出している。
【0064】
相補性決定領域は、フェリチン単量体に融合できる長さを有する。例えば、その長さは25aa以下であってもよい。長さが25aa以下であると、フェリチン単量体の自己集合に支障がなく、自己集合によって抗体様タンパク質が形成された後、相補性決定領域が表面または外部に露出するのに適している。
【0065】
相補性決定領域の長さは、例えば、25aa以下、20aa以下、19aa以下、18aa以下、17aa以下、16aa以下、15aa以下、14aa以下、13aa以下、12aa以下、11aa以下、10aa以下、9aa以下などであってもよい。また、例えば、3aa以上、4aa以上、5aa以上、6aa以上であってもよい。
【0066】
相補性決定領域は、フェリチン単量体のαヘリックスの内部、隣接するαヘリックスの間、N末端、C末端、ABループ、BCループ、CDループ、DEループ、N末端とAヘリックスの間、およびEヘリックスとC末端の間からなる群より選択されるいずれか1つに融合する。抗体中の相補性決定領域の3次元配置、相互間の距離、抗原との特異的結合に及ぼす影響の程度などを考慮して、フェリチン単量体の前述した部位の中で相補性決定領域が融合する位置を決定することができる。
【0067】
CDR-フェリチン単量体は、1つまたは複数の相補性決定領域が融合したものである。CDR-フェリチン単量体は、抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される少なくとも1つの重鎖相補性決定領域が融合したものであってもよい。CDR-フェリチン単量体は、抗体のLCDR1、LCDR2、LCDR3およびそれらの保存的配列変異体からなる群より選択される少なくとも1つの軽鎖相補性決定領域が融合したものであってもよい。
【0068】
1つの抗体に対する相補性決定領域は、1つのCDR-フェリチン単量体に融合してもよく、複数のCDR-フェリチン単量体に融合してもよい。
【0069】
1つのCDR-フェリチン単量体には、1つの抗体に対する相補性決定領域が融合してもよく、複数の抗体に対する相補性決定領域が融合してもよい。
【0070】
CDR-フェリチン単量体は、1個~24個が自己集合に関与することができる。相補性決定領域が融合していないフェリチン単量体の場合は、0個~23個が自己集合に関与することができる。
【0071】
例えば、CDR-フェリチン単量体の24個が自己集合して抗体様タンパク質を形成することができる。例えば、CDR-フェリチン単量体の12個と、相補性決定領域が融合していないフェリチン単量体の12個とが自己集合し、抗体様タンパク質を形成することができる。例えば、第1の抗体に対する第1のCDR-フェリチン単量体の12個と、第2の抗体に対する第2のCDR-フェリチン単量体の12個とが自己集合して、抗体様タンパク質を形成することができる。例えば、ある抗体に対する重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、HCDR3またはその保存的配列変異体)が融合した重鎖CDR-フェリチン単量体の12個と、同一抗体に対する軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、LCDR3またはその保存的配列変異体)が融合した軽鎖CDR-フェリチン単量体の12個とが自己集合し、抗体様タンパク質を形成することができる。また、例えば、複数の異なる抗体を含む第1の抗体群の複数の相補性決定領域が融合した第1のCDR-フェリチン単量体の12個と、複数の異なる抗体を含む第2の抗体群の複数の相補性決定領域が融合した第2のCDR-フェリチン単量体の12個とが自己集合し、抗体様タンパク質を形成することができる。
【0072】
相補性決定領域の全部または一部をフェリチン単量体のどの位置に融合させるかは、抗体の相補性決定領域の距離、必要とされる結合力および結合活性、各相補性決定領域の結合に対する寄与度などを考慮して決定することができる。
【0073】
自己集合するCDR-フェリチン単量体の数、その単量体に含まれる相補性決定領域の数、相補性決定領域の融合位置、自己集合後の相補性決定領域の密度などによって、抗体様タンパク質の結合力および結合活性を調節することができる。
【0074】
抗体の相補性決定領域のうち、抗原との結合に主要な影響を及ぼす一部のみを選択してフェリチン単量体に融合させることもできる。抗体の種類によって、6つの相補性決定領域の中で1個、2個、3個、4個または5個が抗原との結合に主要な影響を及ぼす場合には、その主要な影響を有する一部の相補性決定領域のみをフェリチン単量体に融合させ、CDR-フェリチン単量体を製造することができる。例えば、抗体のHCDR3のみをフェリチン単量体に融合させ、CDR-フェリチン単量体を製造することができる。例えば、抗体のHCDR3およびLCDR3のみを選択してフェリチン単量体に融合させ、CDR-フェリチン単量体を製造することができる。
【0075】
相補性決定領域がCDR-フェリチン単量体のDEループまたはC末端に融合する場合には、4重対称構造(four fold symmetry)を形成することができる。この4重対称構造を利用して、抗体様タンパク質の表面の相補性決定領域間の配置および距離を、抗体の相補性決定領域間の配置および距離と類似するようにすることができる。例えば、フェリチン単量体のC末端に重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、HCDR3およびそれらの保存的配列変異体の少なくとも1つ)を融合させた重鎖CDR-フェリチン単量体の12個と、フェリチン単量体のC末端に軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、LCDR3およびそれらの保存的配列変異体の少なくとも1つ)が融合した軽鎖CDR-フェリチン単量体を同じ比率で自己集合させる場合、抗体様タンパク質の表面に重鎖相補性決定領域と軽鎖相補性決定領域が抗体と類似した距離だけ離隔した状態でディスプレイされ得る。
【0076】
相補性決定領域がCDR-フェリチン単量体のN末端、ABループまたはBCループに融合する場合には、2重対称構造(two fold symmetry)を形成することができる。この4重対称構造を利用して、抗体様タンパク質の表面の相補性決定領域間の配置および距離を、抗体の相補性決定領域間の配置および距離と類似にすることができる。特に、BCループは相対的に長さが長いことから、相補性決定領域間の配置および距離を考慮して適切な位置に相補性決定領域を融合するのに適している。例えば、フェリチン単量体のBCループに重鎖相補性決定領域に相当するHCDR1、HCDR2およびHCDR3(または、それらの保存的配列変異体)を抗体と類似した間隔だけ離隔して融合させた重鎖CDR-フェリチン単量体の12個と、他のフェリチン単量体のBCループに軽鎖相補性決定領域に相当するLCDR1、LCDR2およびLCDR3(または、それらの保存的配列変異体)を抗体と類似した間隔だけ離隔して融合させた軽鎖CDR-フェリチン単量体を同じ比率で自己集合させる場合、抗体様タンパク質の表面に重鎖相補性決定領域と軽鎖相補性決定領域が抗体と類似した距離だけ離隔している状態でディスプレイされ得る。
【0077】
相補性決定領域がCDR-フェリチン単量体のCDループに融合する場合には、3重対称構造(three fold symmetry)を形成することができる。例えば、CDR-フェリチン単量体のCDループに抗原との結合に重要な役割を果たすことが知られている一部の相補性決定領域(例えば、HCDR3)を融合させる場合には、HCDR3の密度が抗体に比べて3倍高い抗体様タンパク質を製造することができる。
【0078】
相補性決定領域は、フェリチン単量体のどのループ、末端またはヘリックスに融合するか、また、そのループ、末端またはヘリックスの中で特にどの位置に融合するかによって、CDR-フェリチン単量体が融合して抗体様タンパク質を形成したとき、隣接する相補性決定領域との距離が異なり得る。
【0079】
例えば、相補性決定領域の距離は、0.7nm、0.75nm、0.8nm、0.85nm、0.9nm、0.95nm、1.0nm、1.05nm、1.1nm、1.15nm、1.2nm、1.25nm、1.3nm、1.35nm、1.4nm、1.45nm、1.5nm、1.55nm、1.6nm、1.65nm、1.7nm、1.75nm、1.8nm、1.85nm、1.9nm、1.95nm、2.0nm、2.05nm、2.1nm、2.15nm、2.2nm、2.25nm、2.3nm、2.35nm、2.4nm、2.45nm、2.5nm、2.55nm、2.6nm、2.65nm、2.7nm、2.75nm、2.8nm、2.85nm、2.9nm、2.95nm、3.0nm、3.05nm、3.1nm、3.15nm、3.2nm、3.25nm、3.3nm、3.35nm、3.4nm、3.45nm、3.5nm、3.55nm、3.6nm、3.65nm、3.7nm、3.75nm、3.8nm、3.85nm、3.9nm、3.95nm、4.0nm、4.05nm、4.1nm、4.15nm、4.2nm、4.25nm、4.3nm、4.35nm、4.4nm、4.45nm、4.5nm、4.55nm、4.6nm、4.65nm、4.7nm、4.75nm、4.8nm、4.85nm、4.9nm、4.95nm、5.0nm、5.05nm、5.1nm、5.15nm、5.2nm、5.25nm、5.3nm、5.35nm、5.4nm、5.45nm、5.5nm、5.55nm、5.6nm、5.65nm、5.7nm、5.75nm、5.8nm、5.85nm、5.9nm、5.95nm、6.0nm、6.05nm、6.1nm、6.15nm、6.2nm、6.25nm、6.3nm、6.35nm、6.4nm、6.45nm、6.5nm、6.55nm、6.6nm、6.65nm、6.7nm、6.75nm、6.8nm、6.85nm、6.9nm、6.95nm、7.0nmであってもよい。
【0080】
抗体は相補性決定領域を有するタンパク質である。例えば、IgA、IGD、IgE、IgG、IgM、IgY、IgWクラス等に属する抗体、その抗原結合断片などを含む。
【0081】
また、抗体は、疾患抗原の抗体、免疫チェックポイント分子に対する抗体、診断、予測、評価などの目的で検出しようとする抗原に対する抗体、疾患の治療ターゲットとなる抗原の抗体などであってもよい。
【0082】
疾患抗原は、疾患を引き起こす抗原、疾患細胞の表面または内部抗原などであってもよい。疾患細胞は、病原体細胞、病原体に感染した細胞などであってもよい。
【0083】
疾患とは、抗体によって治療され得る全ての疾患を意味する。例えば、感染性疾患、癌、炎症性疾患などである。
【0084】
感染性疾患は、例えば、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫またはプリオンによる疾患であってもよい。
【0085】
炎症性疾患は、例えば、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、自己免疫疾患、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、リウマチ性多発筋痛症、痛風性関節炎、変形性関節症、腱炎、滑液包炎、乾癬、嚢胞性線維症、骨関節炎、関節リウマチ、炎症性関節炎、シェーグレン症候群、巨細胞性動脈炎、進行性全身性強皮症(皮膚硬化症)、強直性脊椎炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、類天疱瘡、糖尿病(例えば、1型)、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、グレーブス病、グッドパスチャー病、混合性結合組織病、硬化性胆管炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、悪性貧血、炎症性皮膚疾患、通常型間質性肺炎、石綿肺症、珪肺症、気管支拡張症、ベリリウム肺症、滑石症、塵肺症、サルコイドーシス、剥離性間質性肺炎、リンパ球性間質性肺炎、巨細胞性間質性肺炎、細胞性間質性肺炎、外因性アレルギー性肺胞炎、ウェゲナー肉芽腫症および関連形態の血管炎(側頭動脈炎および結節性多発動脈炎)、炎症性皮膚病、肝炎、遅延型過敏反応(例えば、ツタウルシ過敏症)、肺炎、気道の炎症、成人呼吸窮迫症候群、脳炎、即時型過敏反応、喘息、花粉症、アレルギー、急性アナフィラキシー、リウマチ熱、糸球体腎炎、腎盂腎炎、蜂巣炎、膀胱炎、慢性胆嚢炎、虚血(虚血性傷害)、再灌流障害、同種移植片拒絶、宿主対移植片拒絶、虫垂炎、動脈炎、眼瞼炎、細気管支炎、気管支炎、子宮頸管炎、胆管炎、絨毛羊膜炎、結膜炎、涙腺炎、皮膚筋炎、心内膜炎、子宮内膜炎、腸炎、全腸炎、上顆炎、精巣上体炎、筋膜炎、結合組織炎、胃炎、胃腸炎、歯肉炎、回腸炎、虹彩炎、喉頭炎、脊髄炎、心筋炎、腎炎、臍炎、卵巣炎、精巣炎、骨炎、中耳炎、膵炎、耳下腺炎、心膜炎、咽頭炎、胸膜炎、静脈炎、肺炎、直腸炎、前立腺炎、鼻炎、卵管炎、副鼻腔炎、口内炎、滑膜炎、睾丸炎、扁桃炎、尿道炎、膀胱炎、ブドウ膜炎、膣炎、血管炎、外陰炎、外陰膣炎、血管炎、慢性気管支炎、骨髄炎、視神経炎、側頭動脈炎、横断性脊髄炎、壊死性筋膜炎、および壊死性腸炎を含む。
【0086】
癌は、例えば、脳癌、頭頸部癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、白血病、肺癌、肝癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、血管腫瘍、扁平細胞癌種、腺癌種、小細胞癌種、黒色腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫、喉頭癌、耳下腺癌、胆道癌、甲状腺癌、日光角化症、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、腺様嚢胞癌、腺腫、腺扁平上皮癌腫、肛門管癌、肛門癌、肛門直腸癌、星細胞腫、バルトリン腺癌、基底細胞癌腫、胆汁癌、骨癌、骨髄癌、気管支癌、気管支腺癌腫、カルチノイド、胆管癌腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、淡明細胞癌腫、結合組織癌、嚢腺腫、消化器系癌、十二指腸癌、内分泌系癌、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜様腺癌、内皮細胞癌、上衣腫、上皮細胞癌、眼窩癌、局所性結節性過形成、胆嚢癌、幽門洞癌、胃基底部癌、ガストリノーマ、膠芽腫、グルカゴノーマ、心臓癌、血管芽細胞腫、血管内皮腫、血管腫、肝腺腫、肝腺腫症、肝胆道癌、肝細胞癌腫、ホジキン病、回腸癌、インスリノーマ、上皮内新生物、上皮内扁平細胞新生物、肝内胆道癌、浸潤性扁平細胞癌腫、空腸癌、関節癌、骨盤癌、巨細胞癌腫、大腸癌、リンパ腫、悪性中皮腫、髄芽腫、髄質上皮腫、脳膜癌、中皮癌、転移性癌腫、口腔癌、粘表皮癌、多発性骨髄腫、筋肉癌、鼻腔癌、神経系癌、非上皮皮膚癌、非ホジキンリンパ腫、燕麦細胞癌、乏突起膠腫、口腔癌、骨肉腫、漿液性乳頭状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、下垂体腫瘍、形質細胞性腫瘍、偽肉腫、肺芽腫、直腸癌、腎細胞癌腫、呼吸器系癌、網膜芽細胞腫、漿液性癌、副鼻腔癌、皮膚癌、小細胞癌、小腸癌、平滑筋肉腫、軟部組織癌、ソマトスタチノーマ、脊椎癌、扁平細胞癌、線条筋肉癌、中皮細胞下層癌、T細胞白血病、舌癌、尿管癌、尿道癌、子宮頸癌、子宮体癌、膣癌、VIPoma、外陰部癌、高分化癌、およびウィルムス腫瘍からなる群より選択される癌であってもよい。
【0087】
炎症性疾患抗原は、例えば、炎症性サイトカインであってもよい。例えば、ヒト成長ホルモン(human growth hormone)、N-メチオニルヒト成長ホルモン(N-methionyl human growth hormone)およびウシ成長ホルモン(bovine growth hormone)などの成長ホルモン;副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone);チロキシン(thyroxine);インシュリン(insulin);プロインシュリン(proinsulin);リラキシン(relaxin);プロリラキシン(prorelaxin);卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone、FSH)、甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone、TSH)および黄体形成ホルモン(luteinizing hormone、LH)などの糖タンパク質ホルモン;肝臓増殖因子(hepatic growth factor);線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor);プロラクチン(prolactin);胎盤性ラクトゲン(placental lactogen);腫瘍壊死因子-α(tumor necrosis factor such as tumor necrosis factor-alpha、TNF-α)および腫瘍壊死因子-β(tumor necrosis factor-beta、TNF-β)などの腫瘍壊死因子;ミュラー管(mullerian)抑制因子;マウスゴナドトロピン関連ペプチド(mouse gonadotropin-associated peptide);インヒビン(inhibin);アクチビン(activin);血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor);インテグリン(integrin);トロンボポエチン(thrombopoietin、TPO);NGF-α(NGF-α)などの神経成長因子(nerve growth factors);血小板成長因子(platelet-growth factor);胎盤増殖因子(placental growth factor);TGF-αおよびTGF-βなどのトランスフォーミング増殖因子(transforming growth factors、TGF);インスリン様増殖因子-1および-11(insulin-like growth factor-1 and -11);エリスロポエチン(erythropoietin、EPO);骨誘導因子(osteoinductive factors);インターフェロン-α (IFN-α)、インターフェロン-β(IFN-β)およびインターフェロン-γ(IFN-γ)などのインターフェロン;マクロファージ-CSF(macrophage-CSF、M-CSF)などのコロニー刺激因子(colony stimulating factors、CSF);顆粒球マクロファージ-CSF(granulocyte macrophage-CSF、GM-CSF);顆粒球-CSF(granulocyte-CSF、G-CSF);IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、IL-21、IL-22、IL-23、IL-33などのインターロイキン;並びにLIFおよびキットリガンド(kit ligand、KL)を含むその他のポリペプチド因子を含む。
【0088】
癌抗原は、例えば、gp100、MART-1、Melna-A、MAGE-A3、MAGE-C2、マンマグロビンA(Mammaglobin-A)、プロテイナーゼ3(proteinsase-3)、ムチン1(mucin-1)、HPV E6、LMP2、PSMA、GD2、hTERT、PAP、ERG、NA17、ALK、GM3、EPhA2、NA17-A、TRP-1、TRP-2、NY-ESO-1、CEA、CA 125、AFP、サバイビン (Survivin)、AH1、ras、G17DT、MUC1、Her-2/neu、E75、p53、PSA、HCG、PRAME、WT1、URLC10、VEGFR1、VEGFR2、E7、チロシナーゼ(Tyrosinase)ペプチド、B16F10、EL4およびネオアンチゲン(neoantigen)であってもよい。前記ネオアンチゲンとは、腫瘍細胞内の体性突然変異によって誘導されて形成される免疫原性ペプチドを意味する。前記ネオアンチゲンは、MHC Iと複合体を形成し、腫瘍細胞の表面に移動して抗原エピトープとして表示され得るが、T細胞の受容体(T-cell receptor、TCR)がこのネオアンチゲン-MHC I複合体を認識することによって免疫応答を誘導することができる。
【0089】
免疫チェックポイント分子は、例えば、PD-L1、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3またはTIGITであってもよい。
【0090】
抗体は、例えば、癌細胞またはT細胞の表面の免疫チェックポイント分子に対する抗体であってもよい。例えば、PD-1、Her-2/neu、VISTA、4-1BBL、CD48、ガレクチン9(Galectin-9)、アデノシンA2a受容体(Adenosine A2a receptor)、CD80、CD86、ICOS、ICOSL、BTLA、OX-40L、CD155、BCL2、MYC、PP2A、BRD1、BRD2、BRD3、BRD4、BRDT、CBP、E2F1、MDM2、MDMX、PPP2CA、PPM1D、STAT3、IDH1、PD-L1、PD-L2、CD40L、LAG3、TIM3、TIGIT、BTLA、CD52、SLAMF7、4-1BB、OX-40、ICOS、GITR、CD27、CD28、CD16、CD3、CD20、EGFRファミリー、AXL、CSF1R、DDR1、DDR2、EPH受容体ファミリー、FGFRファミリー、VEGFRファミリー、IGF1R、LTK、PDGFRファミリー、RET、KIT、KRAS、NTRK1またはNTRK2であってもよい。
【0091】
検出しようとする抗原は、例えばバイオマーカーであってもよく、例えば、疾患診断用バイオマーカー、発症リスク予測用バイオマーカー、特定の医薬の予後診断用バイオマーカーなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0092】
以下、
図1に基づいて本発明の抗体様タンパク質を説明する。
【0093】
図1は、24個のフェリチン単量体の自己集合からなるタンパク質の構造を例示したものであり、フェリチンは、4重、3重、2重の対称構造(4-fold、3-fold、2-fold symetry)を有する複数の対称構造となっており、N末端、ABループ、BCループは2重対称構造、CDループは3重対称構造、DEループおよびC末端は4重対称構造を形成することができる。前記対称構造は、その柔軟な末端が集まる個数を意味するものであり、当該部位に相補性決定領域が融合する場合、自己集合体において相補性決定領域が2個、3個、4個ずつ集まり得る。
図1における各色で表示される部分は、各部位に相補性決定領域を融合させる際のその融合部位を示したものであり、各部位に融合されるタンパク質の配置、密度等が異なることを確認できる。
【0094】
例えば、
図1に示す部位に相補性決定領域が融合したCDR-フェリチン単量体の24個を自己集合し、相補性決定領域が4個ずつ6個の部位に集まった抗体様タンパク質を得るか、またはCDR-フェリチン単量体の数を減らすことにより、前記6個の部位に集まった相補性決定領域の数を調節することもできる。また、長さの長いループ(例えば、BCループ)における相補性決定領域の融合位置を調節することにより、複数ずつ集まった相補性決定領域間の距離を多様に調節することができる。これは、CDR-フェリチン単量体に複数の相補性決定領域が融合した場合にも同様に適用されるものであり、1つの抗体に対して複数の同種の相補性決定領域が融合した場合にそれらを特定の位置に融合させてさらに密集させるか、または異種の相補性決定領域が融合した場合に、実際の抗体における相補性決定領域構造を模倣するように、3重対称構造を有する部位に相補性決定領域を融合させて、3つの異種のCDR(例えば、HCDR1、HCDR2及びHCDR3、またはLCDR1、LCDR2及びLCDR3)が近距離に集まるように(例えば、CDループに融合)するなどにより調節することができる。
【0095】
前記調節は、複数の抗体に対して複数の相補性決定領域が融合した場合にも同様に適用することができる。例えば、互いに異なる抗体の相補性決定領域が密集している場合には、立体障害によって抗原の結合が阻害される可能性があるため、互いに異なる抗体の相補性決定領域が密集することがないように調節できる。これは、例えば、互いに異なる抗体の相補性決定領域がそれぞれ融合した第1のCDR-フェリチン単量体と第2のCDR-フェリチン単量体において、各CDR-フェリチン単量体の互いに異なる部位に相補性決定領域を融合させて調節することができる。
【0096】
また、例えば、同一抗体の相補性決定領域が融合した第1のCDR-フェリチン単量体と第2のCDR-フェリチン単量体における抗体の構造を模擬するように、LCDR1、LCDR2及びLCDR3が密集するか、またはHCDR1、HCDR2及びHCDR3が集まるか、またはこれらのすべてが集まるように調節できる。これは、例えば、第1及び第2のCDR-フェリチン単量体における同一部位に相補性決定領域を融合させて調節することができ、例えば、3重対称構造が形成される部位にCDRを融合させて調節することができる。これは、例えばCDループであってもよい。例えば、第1のCDR-フェリチン単量体のCDループに特定抗体のHCDR1を融合させ、第2のCDR-フェリチン単量体のCDループにそれと同じ抗体のHCDR2、HCDR3を融合させて、それらが自己集合すると、3重対称性構造にHCDR1、HCDR2、HCDR3が密集している抗体様タンパク質が得られる。
【0097】
図2は、市販の抗体のテセントリク(Tecentriq、アテゾリズマブ)のCDR間の距離(上)、およびヒトフェリチン重鎖単量体の24個が自己集合したタンパク質における各部位間の距離(下)を示す。これは、蛋白質構造データバンク(www.rcsb.org)の3Dビュー上で各アミノ酸の位置を指定してそれらの間の距離を測定したものである。
図2の下は配列番号1の配列を基準としてN末端、ABループ;46D/47Vの間、BCループ;81F/82Lの間、87K/88Kの間、93D/94W、CDループ;127D/128Pの間、DEループ;162E/163Sの間、C末端に相補性決定領域が融合した場合、そのCDR-フェリチン単量体が自己集合したときの各相補性決定領域間の距離を示す。それを参照して、公知の抗体における相補性決定領域間の距離を測定し、その相補性決定領域間の距離、密集度などを模倣するように、CDR-フェリチン単量体の前記抗体に対するCDRを、各抗体における距離を満足できる位置に融合することにより、前記抗体を模倣することができる。
【0098】
本発明の抗体様タンパク質は、抗原に対する優れた結合力を示すことができる。その結合力は、先に例示したような相補性決定領域の融合位置、複数の相補性決定領域の適用程度等によって多様に調節できるが、例えば、CDR-フェリチン単量体のその相補性決定領域に対応する抗原に対する結合力(affinity、Kd)は1,000nM以下であってもよい。前記範囲内では、1,000nM以下、900nM以下、800nM以下、700nM以下、600nM以下、500nM以下、400nM以下、300nM以下、200nM以下、150nM以下、100nM以下などであってもよい。その下限は限定されず、例えば、1nM、5nM、10nM、20nM、30nM、40nM、50nMなどであってもよい。前記結合力は、例えばELISA法によって測定したものであってもよい。
【0099】
本発明の抗体様タンパク質が粒子をなす場合、その粒径は例えば8~50nmであってもよい。具体的には、8nm~50nm、8nm~45nm、8nm~40nm、8nm~35nm、8nm~30nm、8nm~25nm、8nm~20nm、8nm~15nmなどであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0100】
本発明の抗体様タンパク質は、前記のように抗体構成の中でCDRのみを使用するので、抗体全配列の使用による不要な免疫応答を誘発しない。
【0101】
また、フェリチンタンパク質は常温保存が可能であるので、本発明の抗体様タンパク質は冷蔵保存が不要である。
【0102】
また、本発明は、前記抗体様タンパク質を含む、疾患の治療または予防用薬学組成物に関するものである。
【0103】
その対象疾患に合った抗体のCDRを使用すればよいので、本発明の疾患治療用薬学組成物は特定疾患の治療用途のみに使用可能なものではなく、抗体の使用によって緩和、治療、改善できる全ての疾患に適用可能である。治療対象となる疾患には、抗体の適用によって治療できることが知られている全ての疾患を制限なく適用することができ、例えば、感染性疾患、炎症性疾患、癌などであってもよい。その具体例は前述の通りである。
【0104】
本発明の抗体様タンパク質に融合したCDRは、疾患抗原に対する抗体、または疾患における治療標的物質に対する抗体のCDRであってもよい。
【0105】
本発明の薬学組成物は、標的疾患に対して当該分野で公知の有効物質、治療剤などをさらに含むことができる。
【0106】
さらに含むことができる有効物質、治療剤などは、自己集合された構造の内部に含まれてもよいが、これに限定されるものではない。
【0107】
本発明の薬学組成物は、薬学的に許容可能な担体を含むことができる。本発明で用語「薬学的に許容可能な担体」とは、生物体を非常に刺激せず、投与成分の生物学的活性および特性を阻害しない担体または希釈剤を指す。本発明における「薬学的に許容可能な担体」としては、生理食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝生理食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの成分のうちの1成分又は1成分以上を混合して使用することができる。必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液および静菌剤などの他の通常の添加剤を添加して、組織または臓器に注入するのに適した注射剤の形で製剤化することができる。また、等張性滅菌溶液、または場合によって滅菌水や生理食塩水を添加して注射可能な溶液となり得る乾燥剤(特に、凍結乾燥剤)に製剤化することもできる。さらに、標的器官に特異的に作用できるように、標的器官特異的な抗体または他のリガンドを前記担体と結合して使用することができる。
【0108】
また、本発明の組成物は、充填剤、賦形剤、崩壊剤、結合剤または滑沢剤をさらに含むことができる。さらに、本発明の組成物は、哺乳動物に投与された後に活性成分の迅速、持続または遅延放出を提供できるように、当業界で公知の方法を使用して製剤化することができる。
【0109】
一実施形態では、前記薬学組成物は注射製剤であってもよく、静脈内投与されるものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0110】
本発明の用語「有効量」は、目的とする治療すべき特定の疾患の発症または進行を遅らせるか、または完全に増進するのに必要な量を意味する。
【0111】
本発明において、組成物は薬学的有効量で投与することができる。前記薬学組成物の適切な1日の総使用量を、適切な医学的判断の範囲内で治療医によって決定され得ることは当業者にとって自明なことである。
【0112】
本発明の目的のために、特定の患者に対する具体的な薬学的有効量は、達成しようとする反応の種類および程度、場合によっては他の製剤が使用されるかどうかを含む具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食物、投与時間、投与経路、組成物の分泌率、治療期間、具体的な組成物と併用または同時使用される薬物を含む様々な因子および医薬分野でよく知られている類似因子によって異なるように適用することが好ましい。
【0113】
本発明において、前記薬学組成物は、必要に応じて薬物の製造、使用および販売を管轄する行政機関によって指定された方式での、容器に付帯する注意書きを添付してもよい。前記注意書きは、組成物の形またはヒトもしくは獣医的な投与に関する私益機関による認可を示し、例えば処方薬に関する米国食品医薬品局により認可された表示でもよい。
【0114】
また、本発明は、前記抗体様タンパク質を含む標的物質検出用組成物に関するものである。
【0115】
本発明の組成物は、前記タンパク質を含み、その標的物質との結合の有無で標的物質の存否を確認・検出することができる。
【0116】
標的物質は、例えばバイオマーカーであってもよく、例えば、疾患診断用バイオマーカー、発症リスク予測用バイオマーカー、特定の医薬の敏感度予測用バイオマーカーなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0117】
標的物質が疾患診断用バイオマーカーである場合、本発明の組成物は疾患の診断用組成物として使用することができる。
【0118】
抗体CDRは、標的物質に対する抗体のCDRであってもよい。
【0119】
標的物質の容易な検出・確認のために、抗体CDR、フェリチン単量体またはタンパク質は、蛍光染料、放射性同位元素などで標識されたものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0120】
本発明の組成物は、標的物質の存否を確認しようとするサンプルに処理するか、または動物に処理することができる。
【0121】
動物は、例えばヒトを含む哺乳類であってもよく、具体的にはヒトであってもよい。
【0122】
本発明の組成物は、公知の様々な方法で製剤化することができ、例えば、前述の薬学組成物について例示した製剤に製剤化することができるが、これに限定されるものではない。
【0123】
また、本発明は、個体に前記抗体様タンパク質を投与するステップを含む、疾患の治療方法に関するものである。
【0124】
個体は疾患に罹患した個体であり、これはヒトを含む哺乳類であってもよく、具体的にはヒトであってもよい。
【0125】
疾患は、抗体の使用によって処理できる疾患であり、先に例示した疾患であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0126】
本発明のタンパク質に融合した抗体CDRは、疾患抗原に対する抗体、または疾患における治療標的物質に対する抗体のCDRであってもよい。
【0127】
タンパク質は治療上有効量で投与することができる。
【0128】
本発明で用語「投与」とは、いかなる適切な方法で患者に本発明の組成物を導入することを意味する。本発明の組成物の投与経路は、目的の組織に到達できる限り、経口または非経口の様々な経路であってもよい。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与、または直腸内投与することができるが、これらに限定されるものではない。
【0129】
また、本発明は、前記抗体様タンパク質を処理するステップを含む抗原の検出方法に関するものである。
【0130】
抗体CDRは、標的抗原に対する抗体のCDRであってもよい。
【0131】
標的抗原の容易な検出・確認のために、抗体CDR、フェリチン単量体またはタンパク質は、蛍光染料、放射性同位元素などで標識されたものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0132】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明することとする。
【0133】
実施例
1.タンパク質製造用発現ベクターの構成
(1)huHFは24個の単量体から構成された球状タンパク質ナノ粒子(12nm)であり、各単量体は合計5個のα-ヘリックス(helix)から構成されている。本発明の発明者らは、huHF単量体の各α-ヘリックスの間のループ(PDB 3AJO sequence基準にhuHF 5T~176G中のABループ;46D/47Vの間、BCループ;93D/94W、CDループ;127D/128Pの間、DEループ;163E/164Sの間)とN末端およびC末端中の選択される位置に、抗体CDR3ペプチドを遺伝子クローニングにより挿入することにより、huHFの様々な位置に抗体CDR3ペプチドが挿入された送達体を確保した。
【0134】
下記表1の配列を使用し、
図4~10、表2の製造のためのベクター模式図に従ってPCRを行い、huHF-αPD-L1 HCDR3(CDループ、C末端)、huHF-αPD1 HCDR3(C末端)、huHF-αCTLA4 HCDR3(C末端)、huHF αTIGIT HCDR3(C末端)、huHF-αLAG3 HCDR3(C末端)、huHF-αTIM3 HCDR3(C末端)、huHF-αPD-L1 HCDR3(ABループ)-αTIGIT HCDR3(C末端)(デュアルブロッカー(dual blocker))を製造した。製造した全てのプラスミド発現ベクターをアガロースゲルで精製し、完全なDNAシーケンシングによって配列を確認した。
【0135】
具体的には、表3のプライマーセットを用いて、各々の発現ベクターの製造に必要なPCR産物を順次にプラスミドpT7-7ベクターに挿入し、各々のタンパク質ナノ粒子を発現できる発現ベクターを構成した。このとき、さらに下記表3のリンカー(linker)ペプチドを含むことができる。
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
(2)huHF単量体の各α-ヘリックスの間のループ(PDB 3AJO sequence基準にhuHF 5T~176G中のABループ;46D/47Vの間、BCループ;81F/82Lの間、87K/88Kの間、93D/94W、CDループ;127D/128Pの間、DEループ;162E/163Sの間)とN末端およびC末端中の選択される位置に、抗体CDR3ペプチドを遺伝子クローニングにより挿入することにより、huHFの様々な位置に抗体CDR3ペプチドが挿入された送達体を確保した。
【0141】
huHFとしては、配列番号25のミュータント(mutant) huHFを用いた。
【0142】
CDRとしては、下記表5の配列を用い、
図3の製造のためのベクター模式図に従い、huHF-Her2/neu(ハーセプチン(herceptin))HCDR3(C末端)、huHF-PD1(キイトルーダ(keytruda))HCDR3(C末端)、huHF-PD-L1(テセントリク(tecentriq))HCDR3(C末端)、huHF-PD-L1 HCDR3(N末端、ABループ、BCループ(81/82)、BCループ(87/88)、BCループ(93/94)、DEループまたはC末端)、huHF-TIM3 HCDR3(C末端)、huHF-LAG3 HCDR3(C末端)、huHF-TIGIT HCDR3(C末端)、huHF-SARS-Cov HCDR3(C末端)、huHF-PD-L1 HCDR3(ABループ)-αTIGIT HCDR3(C末端)を製造した。
【0143】
製造したすべてのプラスミド発現ベクターをアガロースゲルで精製し、完全なDNAシークエンシングによって配列を確認した。プラスミドベクターとしては、pT7-7ベクターを用いた。
【0144】
【0145】
(3)
図11の製造のためのベクター模式図に従い、huHF-Her2/neu(herceptin)HCDR3(C末端)、huHF-PD1(keytruda)HCDR3(C末端)、huHF-CTLA4(ヤーボイ(yervoy))HCDR3(C末端)、huHF-PD-L1(tecentriq)HCDR3(C末端)、huHF-PD-L1 HCDR3(C末端)、huHF-LAG3 HCDR3(C末端)、huHF-TIM3 HCDR3(C末端)、huHF-TIGIT HCDR3を製造した。
【0146】
製造したすべてのプラスミド発現ベクターをアガロースゲルで精製し、完全なDNAシークエンシングによって配列を確認した。プラスミドベクターとしては、pT7-7ベクターを用いた。
【0147】
2.タンパク質の生合成
大腸菌株BL21(DE3)[F-ompThsdSB(rB-mB-)]を前記で製造した発現ベクターでそれぞれ形質転換し、アンピシリン-抵抗性形質転換体を選択した。形質転換された大腸菌は、50mLのLB(Luria-Bertani)培地(100mgのL-1アンピシリンを含有)を含有するフラスコ(250mL三角フラスコ、37℃、150rpm)で培養した。培地の濁度(O.D600)が約0.5~0.7に達したとき、IPTG(イソプロピル‐β-Dチオガラクトピラノシド(Isopropyl-β-Dthiogalactopyranosid))(1.0mM)を注入して組換え遺伝子の発現を誘導した。
【0148】
huHF-(93-AbPD-L1+C-AbTIGIT)を除いて、個々の発現ベクターを用いて1つのベクターに形質転換した。huHF-(93-AbPD-L1+C-AbTIGIT)の場合は、huHF-PD-L1 HCDR3(BCループ(92/93))およびhuHF-TIGIT HCDR3を製造するための2つのベクターに形質転換したものである。
【0149】
20℃で16~18時間培養した後、培養した大腸菌を4,500rpmで10分間遠心分離して菌体沈殿物を回収し、5mlの破砕溶液(10mM Tris-HCl緩衝液、pH7.5、10mM EDTA)に懸濁し、超音波破砕機(Branson Ultrasonics Corp.、Danbury、CT、USA)を用いて破砕した。破砕後、13,000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液と不溶性凝集体を分離した。分離した上澄み液は、その後の実験に使用した。
【0150】
3.タンパク質の精製および蛍光物質の付着
前記実施例2で得られた上澄み液を3段階の過程を経て精製した。まず、1)組換えタンパク質に融合したヒスチジンとニッケルの結合を用いたNi2+-NTAアフィニティークロマトグラフィーを行った後、2)組換えタンパク質を濃縮し、バッファー交換によって蛍光物質を付着し、3)最後に、蛍光物質が付着した自己集合したタンパク質ナノ粒子のみを分離するために、スクロース勾配超遠心分離(ultracentifugation)を行った。各段階の詳細は以下の通りである。
【0151】
1)Ni2+-NTAアフィニティークロマトグラフィー
組換えタンパク質を精製するために、前記と同様の方法で培養された大腸菌を回収し、その細胞ペレットを5mLのライシスバッファー(pH8.0、50mM リン酸ナトリウム、300mM NaCl、20mM イミダゾール)に再浮遊し、超音波破砕機を用いて細胞を破砕した。破砕した細胞液を13,000rpmで10分間遠心分離してその上澄み液のみを分離した後、各組換えタンパク質をNi2+-NTAカラム(Qiagen, Hilden, Germany)を用いてそれぞれ分離した(洗浄バッファー:pH8.0、50mM リン酸ナトリウム、300mM NaCl、80mM イミダゾール/溶出バッファー:pH8.0、50mM リン酸ナトリウム、300mM NaCl、200mM イミダゾール)。
【0152】
2)濃縮とバッファー交換および蛍光物質の付着過程
イメージングのために、huHF-gp100粒子とhuHF-PD1粒子は、Ni2+-NTAアフィニティークロマトグラフィーを経て溶出された3mlの組換えタンパク質を、超遠心ろ過器(Ultracentrifugal filter、Amicon Ultra 100K、Millipore、Billerica、MA)に入れて、カラムの上に1mlの溶液が残るまで5,000gで遠心分離を行った。その後、NIR蛍光物質であるcy5.5およびFITC(フルオレセインイソチオシアン酸塩)を付着するために、タンパク質粒子を重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)(0.1M、pH8.5)バッファーでバッファー交換を行い、常温で12時間蛍光物質を付着した。
【0153】
3)スクロース勾配超高速遠心分離
PBS(2.7mM KCl、137mM NaCl、2mM KH2PO4、10mM Na2HPO4、pH7.4)バッファーにスクロースを濃度別にそれぞれ添加し、40%、35%、30%、25%、20%のスクロースを含む溶液をそれぞれ準備した。その後、超高速遠心分離用チューブ(ultraclear 13.2ml tube、Beckman)に各濃度別(45~20%)のスクロース溶液を濃度の高い溶液から2mlずつ入れた後、準備した自己集合用バッファーに存在する組換えタンパク質溶液を1ml充填した後、35,000rpmにおいて4℃で16時間超高速遠心分離を行った(Ultracentrifuge L-90k、Beckman)。遠心分離後、慎重にパイペットを用いて上層(20-25%スクロース溶液部分)を、前記2)に記載されているように超遠心ろ過器(Ultracentrifugal filter)とPBSバッファーを用いて組換えタンパク質のバッファーを交換した。
【0154】
4.タンパク質の水溶性画分の確認
pT7-7ベースの様々な発現ベクターでBL21(DE3)コンピテントセル(competent cell)を形質転換(transformation)した。単一コロニーをアンピシリン100mg/Lが添加されたLB液体培地(50mL)に接種し、振とう培養器(shaking incubator)で37℃、130rpmの条件で培養した。濁度(turbidity/optical density at 600nm)が0.5に達すると、IPTGの1mMを投与して標的タンパク質の発現を誘導した。その後、20℃で12~16時間培養した後、培養液中の細胞を遠心分離(13,000rpm、10分)によってスピンダウン(spun-down)し、細胞ペレットを回収して10mM Tris-Hcl(pH7.4)バッファーに再浮遊させた。再浮遊された細胞は、ブランソンのソニファイアー(Branson Sonifier、Branson Ultrasonics Corp.、Danbury、CT)を用いて破裂した。音波処理後、溶解性タンパク質を含む上澄み液と不溶性タンパク質を含む凝集体は、遠心分離(13,000rpm、10分)で分離した。分離された溶解性、不溶性タンパク質画分をSDS-PAGE分析によって確認した。
【0155】
図4~10は前記実施例1.(1)のベクターを用いた産物であり、
図12及び13は前記実施例1.(3)のベクターを用いた産物である。
【0156】
5.タンパク質の集合の検証
実施例3で製造した各タンパク質の精製組換えタンパク質ナノ粒子の構造を分析するために、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて組換えタンパク質を撮影した。まず、染色していない精製タンパク質のサンプルを炭素コーティングされた銅電子顕微鏡グリッド(grids)に乗せた後、自然乾燥した。タンパク質の染色された画像を得るために、自然乾燥したサンプルを含む電子顕微鏡グリッドを2%(w/v)水性酢酸ウラニル溶液と共に10分間室温でインキュベートし、蒸留水で3~4回洗浄した。タンパク質の画像をPhilips Technai 120kV電子顕微鏡を用いて観察した結果、各粒子が球状のナノ粒子を形成することを確認した(
図4~10、12及び13)。
【0157】
6.タンパク質の抗原への結合力の測定
前記実施例で製造したタンパク質の抗原への結合力を、抗体の抗原への結合力と比較した。製造したタンパク質の抗原への結合力Aを以下の方法によって測定した。
【0158】
Nunc MaxiSorpTMフラットボトム(cat.44-2404-21)96ウェルを使用した。
【0159】
各ウェルに2μg/ml濃度のタンパク質を100μlずつ分注し、4℃、オーバーナイト(over-night)でプレート(plate)をシェーキング(shaking)してタンパク質を付着した。
【0160】
その後、プレートウェル(plate well)の溶液を除去した後、PBST(Tween20、0.05%)を200μlずつ分注した後、それを除去した(washing)。
【0161】
SuperBlockTM(PBS)ブロッキングバッファー(cat.37515)を200μlずつ分注してマスキング(masking)し、プレートウェルの溶液を除去した後、PBST(Tween20、0.05%)を200μlずつ分注した後、それを除去した(washing)。
【0162】
その後、Kdを確認しようとするサンプルを、濃度によって100μlずつ各ウェルに分注し、プレートウェルの溶液を除去した後、PBST(Tween20、0.05%)を200μlずつ分注した後、それを除去した(washing)。
【0163】
二次抗体(2nd antibody)-HRPを1/100でPBSに希釈した後、それを100μlずつ各ウェルに分注した。その後、プレートウェルの溶液を除去した後、PBST(Tween20、0.05%)で200μlずつ分注した後、それを除去した(washing)。
【0164】
その後、TMB溶液を100μlずつ各ウェルに分注し、停止液(1M H2SO4)を100μlずつ各ウェルに分注した後、波長450nmにおける吸光度(absorbance)を測定した。
【0165】
各濃度による吸光度(abs)のグラフを作成して飽和(saturation)点の蛍光値(abs(sat))を求め、x軸が濃度/abs、y軸が濃度/abs(sat)であるグラフを作成して、それを線形フィット(linear fitting)して式を求めた。
【0166】
式のy切片にabs(sat)を掛けると、Kdが得られる。
【0167】
各結合力は、対象抗体の対象抗原への結合力を示す。図中、mPD-L1のような「m」はマウス抗原への結合力を示し、hPD-L1のような「h」はヒト抗原への結合力を示す。
【0168】
実施例の全ての抗体様タンパク質は、CDR-フェリチン単量体の24個が自己集合して形成されたものである。huHF-dualはPD-L1 HCDR3とTIGIT HCDR3が融合した重鎖CDR-フェリチン単量体の24個の自己集合体であり、huHF-(93-AbPD-L1+C-AbTIGIT)は93番の位置(BCループ)にPD-L1 HCDR3が融合した第1の重鎖CDR-フェリチン単量体と、C末端にTIGIT HCDR3が融合した第2の重鎖CDR-フェリチン単量体との自己集合体であり、第1及び第2の重鎖CDR-フェリチン単量体の数の合計は24個である。
【0169】
測定の結果を下記表6~9および
図14~35に示す。
【0170】
表6は、各抗体HCDR3がC末端に融合した重鎖CDR-フェリチン単量体の24個の自己集合体の抗原への結合力を測定した結果である。表7は、PD-L1 HCDR3が様々な位置にそれぞれ融合した重鎖CDR-フェリチン単量体の24個の自己集合体の抗原への結合力を測定した結果である。
【0171】
表8は、huHF-dual、PD-L1 HCDR3がBCループに融合した重鎖CDR-フェリチン単量体の自己集合体、TIGIT HCDR3がC末端に融合した重鎖CDR-フェリチン単量体の自己集合体、およびhuHF-(93-AbPD-L1+C-AbTIGIT)の各抗原への結合力を測定した結果である。
【0172】
表9は、huHF-dualのマウス抗原への結合力を測定した結果である。
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
7.免疫チェックポイント分子に結合する分子が融合したタンパク質の使用
(1)腫瘍抑制能の評価
タンパク質の腫瘍抑制能は、大腸癌細胞株(CT26)をBALB/cマウスに皮下接種し、
図36のスケジュールに従ってタンパク質を注射して評価した(
図37)。
【0178】
具体的には、一定のサイズの大腸癌腫瘍(CT26)が形成されたマウスBalb/cに対して、3日間隔でPBS、PD-L1抗体とTIGIT抗体、huHF-PD-L1-TIGITデュアルブロッカー(dual blocker)タンパク質を静脈注射で注入した。観察の結果、huHF-PD-L1-TIGITデュアルブロッカータンパク質が抗体治療剤と類似した腫瘍治療効果を示すことを確認した。実験では実験群当たり4匹を使用し、癌細胞のサイズは下記式で計算した。
【0179】
【0180】
ここで、実験群としては1)PBS群、2)抗体治療剤併用処理群(α-PD-L1、α-TIGIT)、3)タンパク質処理群(huHF-PD-L1-TIGITデュアルブロッカー)を使用した。
【0181】
また、各処理群ごとに腫瘍組織を摘出して重量を測定し、その結果を
図38に示す。その結果から、PD-L1とTIGITに結合する分子が融合したタンパク質の優れた抗癌効果を確認することができる。
【0182】
(2)フェリチン単量体への融合位置による効率の分析
α-PD-L1 HCDR3がフェリチン単量体の互いに異なる位置に融合したタンパク質を製造し、腫瘍抑制能を確認した。
【0183】
具体的には、FITC蛍光物質が付着したhuHF-αPD-L1 HCDR3(AB、BC、CD、DEループ、C末端)タンパク質のCT26大腸癌に対するターゲティング効率を比較するために、CT26大腸癌細胞に300nMの濃度でタンパク質ナノ粒子を反応させた後、蛍光シグナルを比較して細胞取込(cell uptake)効率を確認した。対照群であるhuHFタンパク質よりも、huHF-αPD-L1 HCDR3(AB、BC、CD、DEループ、C末端)タンパク質の方が、癌細胞と結合して蛍光シグナルを示すことを確認した。
【0184】
【0185】
確認の結果、融合部位に関係なく、抗体様タンパク質に比べて強いターゲティング能を示すことを確認した。
【0186】
8.抗体様タンパク質の細胞内での結合力の確認
ターゲットセル(Target cell)(immune cell、cancer cell)を培養して分注した(1×105個/10ul、1 FACS column(5ml polystyrene round-bottom tube、Falcon(352052)))。
【0187】
その後、サンプル(drug、antibody(anti-mouse PD-L1 antibody(BE0101)、anti-mouse TIGIT antibody(BE0274)、anti-human PD-L1(BE0285)))を100μl/FACSカラム処理し、対照群ではFACSバッファー(0.1%BSA+0.01% sodium azide in PBS)の100μlを処理した(3時間、室温)。
【0188】
FACSバッファーを各1mlずつ前記FACSカラムに入れた後、1,700rpmで5分間遠心分離し、上澄み液を除去する工程を3回繰り返した。
【0189】
その後、蛍光抗体(Fluorescence antibody)(anti his tag antibody-PE(SC-8036 PE)、anti-IgG antibody-PE(PE goat F(ab’)2 anti-rat(IgG)secondary antibody(ab7010), PE F(ab’)2-goat anti-mouse IgG(H+L)secondary antibody(12-4010-82)))を処理した(2時間、室温)。
【0190】
FACSバッファーを各1mlずつ前記FACSカラムに入れた後、1,700rpmで5分間遠心分離し、上澄み液を除去する工程を3回繰り返した。
【0191】
その後、各サンプルFACSカラムにFACSバッファーの100ulを入れた後、7-AAD(BD Pharmigen(559925))の2μlを5分間処理した。
【0192】
BD Biosciences、FACS装置を各FACSカラムにおけるライブセル(live cell)中のPE蛍光を示すターゲットセルの割合を用いて分析した。
【0193】
【0194】
それを参照すると、本発明の抗体様タンパク質は、モノクローナル抗体に比べてKdの値が顕著に低いことから、非常に高い結合活性を示すことを確認することができる。これは、本発明の抗体様タンパク質が複数のCDRを有し、多数の抗原に結合できることによる。
【配列表】
【国際調査報告】