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特表2023-550899飼料中の安息香酸の殺ウイルス活性の増強
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  • 特表-飼料中の安息香酸の殺ウイルス活性の増強 図1
  • 特表-飼料中の安息香酸の殺ウイルス活性の増強 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】飼料中の安息香酸の殺ウイルス活性の増強
(51)【国際特許分類】
   A23K 20/111 20160101AFI20231129BHJP
   A23K 20/105 20160101ALI20231129BHJP
   A23K 50/30 20160101ALI20231129BHJP
【FI】
A23K20/111
A23K20/105
A23K50/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526519
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2021082889
(87)【国際公開番号】W WO2022112365
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/131946
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ, マリア
(72)【発明者】
【氏名】ニウ, デンユアン
(72)【発明者】
【氏名】ソン, ハイジェ
(72)【発明者】
【氏名】ザイ, ヘン‐シャオ
(72)【発明者】
【氏名】シエ, ジアナン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ, ショウ‐ジェン
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005EA01
2B150AA03
2B150AB10
2B150DA01
2B150DA38
2B150DA60
(57)【要約】
本発明は、飼料中のウイルス分解を確実にするために必要な保持時間を減少させることを可能にする。飼料中において、安息香酸の殺ウイルス活性は、精油によって増強され得る。本発明の一実施形態は、豚用飼料中のアフリカ豚熱ウイルスを少なくとも部分的に不活化する方法において、安息香酸は、少なくとも1種の精油と共に豚用飼料に添加されることを特徴とする方法に関する。好ましい精油は、チモール及びオイゲノールである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
豚用飼料中のアフリカ豚熱ウイルスを少なくとも部分的に不活化する方法において、安息香酸及び少なくとも1種の精油は、豚用飼料に添加されることを特徴とする方法。
【請求項2】
ホルムアルデヒド、中鎖脂肪酸、フマル酸、プロピオン酸、2-ヒドロキシ-4-メチルチオ-ブタン酸及び/又は2-ヒドロキシ-4-メチルチオ-ブタン酸の塩は、前記飼料に添加されないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
安息香酸フレークは、前記試料に添加され、安息香酸フレークは、好ましくは、前記豚用飼料の総重量に基づいて0.25~0.5重量%の量、より好ましくは0.25~0.475重量%の量、さらにより好ましくは0.25~0.4重量%の量、最も好ましくは0.25~0.39重量%の量で添加されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の精油は、オイゲノール及び/又はチモールであり、オイゲノール及びチモールの混合物を含む粉末は、好ましくは、前記ブタ用飼料に添加されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
安息香酸とオイゲノールとの間の重量比は、好ましくは、少なくとも500:1であり、より好ましくは少なくとも833:1であり、且つ好ましくは最大で2500:1であることを特徴とし、及び/又は安息香酸とチモールとの間の重量比は、好ましくは、少なくとも250:1であり、より好ましくは少なくとも333:1であり、且つ好ましくは最大で500:1であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
飼料中のアフリカ豚熱ウイルスを少なくとも部分的に不活化するための安息香酸及び少なくとも1種の精油の使用又は飼料中の安息香酸の殺ウイルス活性を増強するための少なくとも1種の精油の使用。
【請求項7】
前記少なくとも1種の精油は、豚用飼料中のアフリカ豚熱ウイルスを不活化する安息香酸の能力を増強させることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記少なくとも1種の精油は、オイゲノール及び/又はチモールであり、前記少なくとも1種の精油は、好ましくは、オイゲノール及びチモールの混合物を含む粉末であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の使用。
【請求項9】
不活化アフリカ豚熱ウイルス、安息香酸フレーク及び粉末を含む豚用飼料において、前記粉末は、少なくとも1種の精油を含むことを特徴とする豚用飼料。
【請求項10】
前記不活化アフリカ豚ウイルスは、PCR方法によって検出され得る一方、血球吸着アッセイで血球吸着が起こらないことを特徴とする、請求項9に記載の豚用飼料。
【請求項11】
140日前未満、好ましくは100日前未満、より好ましくは50日前未満、最も好ましくは20日前未満に調製されていることを特徴とする、請求項9又は10に記載の豚用飼料。
【請求項12】
過去12か月以内にアフリカ豚熱の少なくとも1回の発生を当局が報告している国で調製されていることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の豚用飼料。
【請求項13】
前記豚用飼料の総重量に基づいて0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、さらにより好ましくは0.01重量%未満、最も好ましくは0.001重量%未満のホルムアルデヒド、フマル酸、プロピオン酸、2-ヒドロキシ-4-メチルチオ-ブタン酸及び/又は2-ヒドロキシ-4-メチルチオ-ブタン酸の塩を含むことを特徴とする、請求項9~12のいずれか一項に記載の豚用飼料。
【請求項14】
- 前記豚用飼料の総重量に基づいて0.25~0.5重量%、好ましくは0.25~0.475重量%、より好ましくは0.25~0.4重量%、最も好ましくは0.25~0.39重量%の安息香酸フレーク、及び
- 前記飼料の総重量に基づいて0.010~0.019重量%の粉末であって、オイゲノール及びチモールを含む粉末
を含むことを特徴とする、請求項9~13のいずれか一項に記載の豚用飼料。
【請求項15】
過去12か月以内にアフリカ豚熱の少なくとも1回の発生を当局が報告している国で豚用飼料を調製するプロセスにおいて、安息香酸フレーク及び粉末は、豚用飼料に添加され、前記粉末は、少なくとも1種の精油を含むことを特徴とするプロセス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、飼料中のウイルス病原体の脅威に対処するものである。一例は、豚用飼料中のアフリカ豚熱ウイルス(ASFV)汚染である。
【0002】
[発明の背景]
飼料及び飼料成分は、商業用豚群における豚流行性下痢ウイルス(PEDV)の侵入に寄与する要因であると提示されている。この感染経路は、実験環境で可能であることが証明されている(Dee et al.“An evaluation of contaminated complete feed as a vehicle for porcine epidemic diarrhea virus infection of naive pigs following consumption via natural feeding behavior: proof of concept”BMC Veterinary Research、2014;10:176)。
【0003】
Swine Health Information Center(SHIC)、National Pork Board、National Pork Producers Council及びAmerican Association of Swine Veterinariansは、飼料中のウイルス分解を確実にするために、より多くの保持時間を加えることを提言している。従来の大豆ミールでは、99.99%分解するために4℃で143日間の保持時間を推奨している(Swine Health Information Center,“Research on viral transmission in feedstuffs yields,new information”、2019年5月7日発表)。
【0004】
Patricia de Leonらは、アフリカ豚熱ウイルスを研究するための実験方法を記載している(http://dx.doi.org/10.1016/j.virusres.2012.09.013,Virus Res.,2012)。
【0005】
国際公開第2019/169256号パンフレットの実施例は、飼料への中鎖脂肪酸の導入による動物飼料中のアフリカ豚熱ウイルスの阻害に関するデータを開示している。好ましい中鎖脂肪酸は、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸である。
【0006】
有機酸の殺ウイルス活性は、長い間にわたって知られている。Poliらの表1によれば、安息香酸の殺ウイルス活性は、比較的低い(Poli et al.,“Virucidal activity of organic acids”,Food Chemistry,Volume 4,Issue 4,October 1979,Pages 251-258)。Poliらは、プロピオン酸の殺ウイルス活性が安息香酸の殺ウイルス活性よりも高いことを示唆している。
【0007】
国際公開第2020/149092号パンフレットは、有効量のホルムアルデヒド及びプロピオン酸の水溶液を動物飼料と組み合わせる工程を含む、アフリカ豚熱ウイルスを制御する方法を開示している。
【0008】
プロピオン酸の殺ウイルス活性は、高いと思われるが、Poliらは、フマル酸の殺ウイルス活性がさらに高いことを示唆している。国際公開第2020/100077号パンフレットの実施例1では、フマル酸、安息香酸及び2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタン酸(HMTBA)カルシウムのブレンドを使用して、PRRSV、PEDV及びSVAで汚染された飼料を摂取した後の感染リスクを減少させている。
【0009】
先行技術の解決策は、いずれも満足のいくものではない。多くの購入者にとって、ホルムアルデヒドをブタに与えることは、もはや許容できない。他方では、HMTBA及びその塩は、比較的高価である。最も重要なことに、先行技術の解決策のいずれも、必要な保持時間を十分に減少させない。ほとんどの場合、飼料中のウイルス分解を確実にするために、数週間の保持時間が依然として必要である。保持時間は、プロピオン酸、フマル酸、HMTBA又はホルムアルデヒドの添加量を増加させることによって減少させることができる可能性がある。しかしながら、多量の飼料添加物を添加することは、これが法外にコストを上昇させるであろうため、許容できない。加えて、規制当局によって与えられる閾値を順守する必要がある。
【0010】
飼料中のウイルス病原体の脅威により効果的に且つ/又はより低コストで対処する必要がある。可能な場合、試料にホルムアルデヒドを添加することは、避けるべきである。より具体的には、アフリカ豚熱ウイルス(ASFV)で汚染されている可能性がある豚用飼料の保持時間をさらに減少させる必要がある。
【0011】
[発明の概要]
本発明は、安息香酸の使用に基づく。いくつかの飼料添加物(例えば、フマル酸)が安息香酸よりも高い殺ウイルス活性を有するようであることを考慮すると、安息香酸の選択は、驚くべきことである。
【0012】
本発明の根底にある問題は、安息香酸の比較的低い殺ウイルス活性を、1種又は複数の精油を用いて増強することによって解決される。驚くべきことに、精油による安息香酸の殺ウイルス活性の増強は、液体中よりも飼料中でより成功する。例えば、豚用飼料中のアフリカ豚熱ウイルスは、汚染された豚用飼料に安息香酸及び少なくとも1種の精油を添加することにより、非常に速く且つ/又は低コストで不活化することができる。
【0013】
非常に速い不活化により、飼料の保持時間を減少させることができる。保持時間の減少は、コストを低下させ、且つ/又は飼料サプライチェーンの複雑性を低下させる。
【0014】
本発明の一実施形態は、少なくとも1種のウイルスで汚染された飼料の摂取後の感染リスクを減少させる方法において、安息香酸及び少なくとも1種の精油は、飼料に添加されることを特徴とする方法に関する。本発明の好ましい実施形態は、豚用飼料中のアフリカ豚ウイルスを少なくとも部分的に不活化する方法において、安息香酸及び少なくとも1種の精油は、豚用飼料に添加されることを特徴とする方法に関する。
【0015】
本発明は、不活化アフリカ豚熱ウイルス、安息香酸及び少なくとも1種の精油を含む豚用飼料にも関する。不活化アフリカ豚ウイルスは、PCR方法によって検出され得る一方、血球吸着アッセイで血球吸着が起こらない。
【0016】
本発明のさらなる実施形態は、安息香酸及び少なくとも1種の精油又は好ましくは安息香酸及び少なくとも1種の精油を含む組成物若しくは混合物の、好ましくは飼料中のアフリカ豚熱ウイルスを少なくとも部分的に不活化するための使用或いは飼料中の安息香酸の殺ウイルス活性を増強するための少なくとも1種の精油の使用に関する。好ましい精油は、チモール及びオイゲノールである。最も好ましくは、安息香酸の殺ウイルス活性は、チモール及びオイゲノールの混合物によって増強される。
【0017】
安息香酸及び少なくとも1種の精油は、飼料に別々に添加され得る。代わりに、安息香酸及び少なくとも1種の精油の混合物が飼料に添加される。安息香酸フレークを使用する場合、飼料を安息香酸と混合することが特に容易である。安息香酸の他の形態(安息香酸顆粒など)は、あまり好ましくない。少なくとも1種の精油を含む粉末を使用する場合、飼料を1種以上の精油と混合することが特に容易である。精油の他の形態(液体など)は、あまり好ましくない。オイゲノール及びチモールの混合物を含む粉末が特に好ましい。そのような粉末は、安息香酸フレーク及び/又は飼料と容易に混合され得る。
【0018】
したがって、本発明は、好ましくは飼料中の安息香酸フレークの殺ウイルス活性を増強するための、好ましくは豚用飼料中のアフリカ豚熱ウイルスを不活化する安息香酸フレークの能力を増強するための、オイゲノール及びチモールの混合物を含む粉末の使用にも関する。本発明の好ましい実施形態は、不活化アフリカ豚熱ウイルス、安息香酸フレーク及び粉末を含む豚用飼料であって、前記粉末は、オイゲノール及びチモールの混合物を含む、豚用飼料にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1で行ったインビトロアッセイの説明図を示す。
図2】実施例2のアッセイの説明図である。図1図2との比較は、2つの実施例のアッセイが類似していることを明らかにする。しかしながら、実施例1のアッセイは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中で行った一方、実施例2のアッセイでは試料フィードマトリックスを用いた。驚くべきことに、安息香酸の殺ウイルス活性に対する精油の増強効果は、溶液中よりも飼料マトリックス中で著しく高い。
【0020】
[発明の詳細な説明]
本発明の好ましい方法は、アフリカ豚熱ウイルス(AFSV)で汚染された飼料の摂取後の感染リスクを減少させる方法である。ブタは、AFSVの宿主であり、したがって、本発明の好ましい飼料は、豚用飼料である。これに関して、用語「豚用飼料」は、広い意味で理解されるべきである。好ましくは、本発明の豚用飼料は、好ましくは、イノシシ類、ブタ、子ブタ、雌ブタ及び/又はイノシシに適している。
【0021】
本発明は、殺ウイルス剤に関する。これに関して、用語「殺ウイルス剤」及び「抗ウイルス剤」は、同義語として使用される。本発明に関連して、殺ウイルス剤は、少なくとも1種のウイルスを少なくとも部分的に不活化又は破壊する化合物又は化合物の混合物である。「不活化」及び「不活性化」という用語も同義語として使用される。
【0022】
典型的には、不活化は、ウイルスの残骸がqPCR、RT-PCR方法又は別の好適なPCR方法によって依然として検出され得ることを意味する。健康な動物の場合、そのような不活化されたウイルスの残骸は、ほとんどの場合に無害である。したがって、感染性ウイルスを産生する能力について試料を評価することがより重要である。感染細胞の周囲に赤血球のロゼットを生じさせるという、ASFVに感染したブタ単球の特徴を利用することは、診断目的及びウイルス力価測定の両方に広く使用されている「血球吸着」による古典的アッセイの基礎となっている(Enjuanes,L.et al.,1976a Titration of African swine fever(ASF)virus.Journal of General Virology 32(3),471-477(Leon et al.,section 4.1に引用されている)を参照されたい)。
【0023】
本発明の好ましい殺ウイルス剤は、安息香酸である。本発明によれば、安息香酸の殺ウイルス活性は、少なくとも1種の精油又は好ましくは精油の混合物によって増強される。これは、精油又は精油の混合物がそれ自体殺ウイルス剤であることを排除するものではない。本発明に関連して、「増強」は、広い意味で理解されるべきである。しかしながら、好ましくは、増強は、ウイルスが不活化又は破壊される速度を増加させることとして理解されるべきである。速度の増加は、汚染された可能性のある飼料の保持時間を減少させることを可能にする。PCR方法は、有害なウイルスと、無害な不活化されたウイルスの残骸とを一般に区別することができないため、速度の決定に適していない。したがって、汚染された飼料中のウイルスを不活化又は破壊するために必要な日数を決定するために、血球吸着などの生物学的方法が必要とされる。
【0024】
本発明は、方法、使用、飼料及びプロセスに関する。以下の選好は、それらの4つ全て、すなわち本発明の方法、使用、飼料及びまた本発明のプロセスに適用される。
【0025】
安息香酸フレークは、本発明の好ましい安息香酸である。安息香酸顆粒などの他の種類の安息香酸は、あまり好ましくないが、除外されない。安息香酸フレークは、DSM(登録商標)Nutritional Products(Switzerland)から市販されている。
【0026】
本発明に関連して使用される精油としては、寒天油、アジョワン油、トウキ油、アニス油、アサフェティダ、ペルーバルサム、バジル油、ベイ油、ベルガモット油、黒コショー、ブチュー油、カバノキ、ショウノウ、カナビスフラワー精油、キャラウェー油、カルダモン種子油、ニンジン種子油、シダーウッド油、カミツレ油、ショウブ根、シナモン油、ゴジアオイ属(Cistus)、シトロン、シトロネラ油、クラリセージ、チョウジ油、コーヒー、コリアンダー、コストマリー油(バイブルリーフ油)、コスツス属(Costus)の根、クベバ、クミン油/ブラックシード油、イトスギ、シプリオル、カレーリーフ、ダバナ油、ディル油、オオグルマ、ユーカリ油、フェンネル種子油、フェヌグリーク油、モミ、フランキンセンス油、ガランガル、ガルバナム、ゼラニウム油、ジンジャー油、アキノキリンソウ、グレープフルーツ油、ヘナ油、ヘリクリサム属(Helichrysum)、ヒソップ、アイダホタンジー、ジャスミン油、ジュニパーベリー油、ラベンダー油、レダム、レモン油、レモングラス、ライム、リツエアクベバ油、リナロエ、マンダリン、マージョラム、メラルウカシーティーツリー油、メリッサ油(レモンバーム)、メンサ・アルベンシス(Mentha arvensis)/ミント油、モリンガ油、マウンテンセイボリー、マグワート油、マスタード油(精油)、ミルラ油、ギンバイカ、ニーム油又はニームツリー油、ネロリ、ナツメグ、オレンジ油、オレガノ油、オリス油、パロサント、パセリ油、パチョリー油、ペリラ精油、ペニーロイヤル油、ペパーミント油、プチグレン、パイン油、ラベンサラ、レッドシダー、ローマンカモミール、ローズ油、ローズヒップ油、ローズマリー油、ローズウッド油、セージ油、サンダルウッド油、サッサフラス油、サボリー油、シサンドラ油、スペアミント油、スパイクナード、スプルース、スターアニス油、スパイス油、タンジェリンタラゴン油、ティーツリー油、タイム油、ツガ属(Tsuga)、ターメリック、バレリアン、ベチバー油(カス油)、ウェスタンレードシーダー、ウィンターグリーン、ヤロー油、イランイラン及びゼドアリーが挙げられる。本発明に関連して、「精油」という表現は、広い意味で理解されるべきであり、チモール及びオイゲノールなどの精油からの芳香を有する成分も含む。チモール及びオイゲノールは、本発明の好ましい精油である。これに関して、チモール及びオイゲノールが合成により製造されたか、植物から抽出されたか、又は任意の他の方法で得られたかどうかは、問題ではない。より好ましくは、本発明の少なくとも1種の精油は、チモール及びオイゲノールの混合物である。さらにより好ましくは、少なくとも1種の精油を含む1種又は複数の粉末が使用される。最も好ましくは、チモール及びオイゲノールの混合物を含む粉末が使用される。このような粉末は、DSM(登録商標)Nutritional Products(Switzerland)から市販されており、安息香酸フレーク及び/又は飼料と容易に混合することができる。本発明の最も好ましい粉末は、チモール及びオイゲノールの混合物を含み、且つ少なくとも1種の賦形剤をさらに含み、前記少なくとも1種の賦形剤は、好ましくは、2-メトキシフェノール、ピペリン及び/又はクルクミンであり、より好ましくはピペリンである。
【0027】
化合物の殺ウイルス活性は、選択されるウイルスにより変わり得る。本発明は、好ましくは、アフリカ豚熱ウイルス(AFSV)に関する。
【0028】
[発明の方法]
本発明は、飼料中のウイルスを不活化する方法に関する。これに関して、不活化は、部分的又は完全であり得る。場合により、飼料が実際に特定のウイルスで汚染されていることがわかっている場合がある。他の場合、飼料が汚染されている可能性があることが疑われるのみであり得る。本発明の方法の目的は、飼料の摂取後の感染のリスクを減少させることであるため、飼料が実際に汚染されているかどうかは、本発明の方法を適用する場合に問題ではない。したがって、本明細書に開示される方法を適用する前に飼料の研究室における分析を行う必要はない。飼料中に存在する可能性のあるウイルスは、本発明の増強された殺ウイルス剤によって不活化され、飼料中にウイルスが存在しない場合、飼料の摂取によるウイルス感染のリスクは、いずれにしても低いか又は存在しない。
【0029】
本発明の好ましい実施形態は、飼料中、好ましくは豚用飼料中のアフリカ豚熱ウイルスを少なくとも部分的に不活化する方法に関する。本発明によれば、豚用飼料中に存在するアフリカ豚熱ウイルスは、安息香酸及び少なくとも1種の精油を豚用飼料に添加することにより、少なくとも部分的に不活化される。多くの精油は、揮発性液体である。揮発性液体を飼料と混合することは、困難である。したがって、安息香酸と一緒に、少なくとも1種の精油を含む1種又は複数の粉末を添加することが好ましい。したがって、本発明の好ましい実施形態は、豚用飼料中のアフリカ豚ウイルスを少なくとも部分的に不活化する方法において、安息香酸及び少なくとも粉末は、豚用飼料に添加され、前記粉末は、少なくとも1種の精油を含み、且つ任意選択により少なくとも1種の賦形剤をさらに含み、前記少なくとも1種の任意選択の賦形剤は、好ましくは、2-メトキシフェノール、ピペリン及び/又はクルクミンであり、最も好ましくはピペリンであることを特徴とする方法に関する。
【0030】
本発明に関連して、任意の精油が使用され得る。しかしながら、好ましい精油は、オイゲノール及びチモールであり、オイゲノール及びチモールの混合物がさらにより好ましい。このような混合物において、オイゲノール:チモールの重量比は、好ましくは、10:1~1:10、より好ましくは5:1~1:5、最も好ましくは3:1~1:3である。本発明の特に好ましい実施形態は、豚用飼料中のアフリカ豚熱ウイルスを少なくとも部分的に不活化する方法において、安息香酸フレーク及び少なくとも粉末は、豚用飼料に添加され、前記粉末は、オイゲノール及びチモールの混合物並びに任意選択により少なくとも1種の賦形剤を含み、前記少なくとも1種の任意選択の賦形剤は、好ましくは、2-メトキシフェノール、ピペリン及び/又はクルクミンであることを特徴とする方法に関する。オイゲノールに関して、安息香酸フレークとオイゲノールとの間の重量比は、好ましくは、少なくとも500:1であり、より好ましくは少なくとも833:1であり、且つ好ましくは最大で2500:1である。チモールに関して、安息香酸フレークとチモールとの間の重量比は、好ましくは、少なくとも250:1であり、より好ましくは少なくとも333:1であり、且つ好ましくは最大で500:1である。
【0031】
安息香酸及び少なくとも1種の精油は、豚用飼料などの飼料に別々に添加され得る。代わりに、安息香酸及び少なくとも1種の精油の混合物が豚用飼料に添加され得る。安息香酸フレークは、粉末との混合が容易である。したがって、本発明の特に好ましい実施形態は、豚用飼料中のアフリカ豚ウイルスを少なくとも部分的に不活化する方法において、安息香酸フレーク及び少なくとも粉末は、豚用飼料に添加され、前記粉末は、少なくとも1種の精油を含み、且つ好ましくはチモール、オイゲノール及び任意選択により少なくとも1種の賦形剤を含み、前記少なくとも1種の任意選択の賦形剤は、好ましくは、2-メトキシフェノール、ピペリン及び/又はクルクミンであることを特徴とする方法に関する。
【0032】
安息香酸フレークなどの安息香酸は、好ましくは、豚用飼料の総重量に基づいて0.25~0.5重量%の量、より好ましくは0.25~0.475重量%の量、さらにより好ましくは0.25~0.4重量%の量、最も好ましくは0.25~0.39重量%の量で添加される。代替の実施形態では、安息香酸フレークは、豚用飼料の総重量に基づいて少なくとも0.5重量%の量で添加される。
【0033】
好ましくはないが、さらなる添加物を豚用飼料に添加することができる。しかしながら、ホルムアルデヒド、中鎖脂肪酸、フマル酸、プロピオン酸、2-ヒドロキシ-4-メチルチオ-ブタン酸及び/又は2-ヒドロキシ-4-メチルチオ-ブタン酸の塩(例えば、2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタン酸カルシウム)の本発明の豚用飼料への添加は、必要がなく、好ましくもない。さらなる添加剤は、コストを増加させるが、ホルムアルデヒドの供給は、購入者によく認識されていない。
【0034】
[発明の使用]
本発明は、少なくとも1種の精油の新規な使用にも関する。これに関して、上述の選好が適用される。したがって、本発明の好ましい実施形態は、オイゲノール、チモール又はオイゲノール及びチモールの混合物の新規な使用に関する。本発明の特に好ましい実施形態は、オイゲノール及びチモールの混合物を含み、且つ任意選択により少なくとも1種の賦形剤をさらに含む粉末の新規な使用に関する。
【0035】
本発明の使用は、好ましくは飼料中の安息香酸フレークの殺ウイルス活性の増強に関する。したがって、本発明の好ましい実施形態は、好ましくは飼料中の安息香酸フレークの殺ウイルス活性を増強するための、本明細書に記載の粉末の使用に関する。アフリカ豚熱ウイルスに関して、安息香酸又は安息香酸フレークの殺ウイルス活性が特に増強される。したがって、本発明の好ましい実施形態は、飼料中の安息香酸の殺ウイルス活性を増強するための少なくとも1種の精油の使用において、前記少なくとも1種の精油は、豚用飼料中のアフリカ豚熱ウイルスを不活化する安息香酸の能力を増強させることを特徴とする使用に関する。本発明の特に好ましい実施形態は、飼料中の安息香酸又は安息香酸フレークの殺ウイルス活性を増強するためのオイゲノール及びチモールの混合物の使用において、前記混合物は、豚用飼料中のアフリカ豚熱ウイルスを不活化する安息香酸フレークの能力を増強させることを特徴とする使用に関する。本発明のさらにより好ましい実施形態は、飼料中の安息香酸(好ましくは安息香酸フレーク)の殺ウイルス活性を増強するための、本明細書に記載の粉末の使用において、前記混合物は、豚用飼料中のアフリカ豚熱ウイルスを不活化する安息香酸(好ましくは安息香酸フレーク)の能力を増強させることを特徴とする使用に関する。
【0036】
これに関して、上述の選好が適用される。したがって、安息香酸とオイゲノールとの間の重量比は、好ましくは、少なくとも500:1であり、より好ましくは少なくとも833:1であり、且つ好ましくは最大で2500:1である一方、安息香酸とチモールとの間の重量比は、好ましくは、少なくとも250:1であり、より好ましくは少なくとも333:1であり、且つ好ましくは最大で500:1である。安息香酸フレークが使用される場合、同じ重量比が適用される。
【0037】
本発明は、安息香酸及び少なくとも1種の精油又は好ましくは安息香酸及び少なくとも1種の精油を含む組成物若しくは混合物の、好ましくは飼料中、より好ましくは豚用飼料中のアフリカ豚熱ウイルスを少なくとも部分的に不活化するための使用にさらに関する。好ましい安息香酸、好ましい少なくとも1種の精油及び/又は安息香酸と少なくとも1種の精油との間の好ましい重量比は、「発明の使用」の項で上記に列挙されているように同様に適用される。
【0038】
[発明の飼料]
本発明の飼料は、任意の種類の飼料であり得る。しかしながら、ブタは、アフリカ豚熱ウイルスの好ましい宿主であるため、本発明の好ましい飼料は、豚用飼料である。
【0039】
本発明に関連して使用される安息香酸は、典型的には、アフリカ豚熱ウイルスを完全には破壊しない。強化安息香酸は、豚用飼料中のアフリカ豚熱ウイルスを十分に不活化するが、本発明の方法を適用した後、豚用飼料中にウイルスの無害な残骸が一定時間残存することが特徴である。これらの無害な残骸は、qPCRなどのPCR方法によって検出され得る。不活化アフリカ豚熱ウイルスの無害な残骸は、PCR方法で検出され得る一方、アフリカ豚熱ウイルスの不活化された残骸の場合、血球吸着アッセイで血球吸着が起こらない。血球吸着などの生物学的方法は、不活化されたアフリカ豚熱ウイルスの遺残が実際に無害であることを示すために使用され得る。
【0040】
したがって、本発明の方法が適用されると、不活化アフリカ豚ウイルス、安息香酸及び少なくとも1種の精油を含む豚用飼料が得られる。安息香酸又は安息香酸フレークの殺ウイルス活性が本明細書に記載されるように増強された場合、不活化アフリカ豚熱ウイルスのみを含む豚用飼料は、例えば、本発明の方法が適用された後9日目、6日目、3日目及び/又は1日目に得ることができる。
【0041】
本発明の一実施形態は、不活化アフリカ豚ウイルス、安息香酸フレーク及び精油混合物を含む豚用飼料において、140日前未満、好ましくは100日前未満、より好ましくは50日前未満、最も好ましくは20日前未満に調製されていることを特徴とする豚用飼料に関する。このような豚用飼料は、過去12か月以内にアフリカ豚熱の少なくとも1回の発生を当局が報告している国で調製されていても入手可能である。
【0042】
本発明の好ましい実施形態は、不活化アフリカ豚ウイルス、安息香酸フレーク及び少なくとも1種の粉末を含む豚用飼料であって、前記粉末は、少なくとも1種の精油及び任意選択により少なくとも1種の賦形剤を含み、前記少なくとも1種の賦形剤は、好ましくは、2-メトキシフェノール、ピペリン及びクルクミンである、豚用飼料に関する。好ましい精油、精油の好ましい量及び精油と安息香酸との好ましい重量比に関して、本明細書に開示される選好が適用される。
【0043】
本発明の好ましい実施形態は、不活化アフリカ豚ウイルス、安息香酸フレーク及び少なくとも1種の粉末を含む豚用飼料において、
- 豚用飼料の総重量に基づいて0.25~0.5重量%、好ましくは0.25~0.475重量%、より好ましくは0.25~0.4重量%、最も好ましくは0.25~0.39重量%の安息香酸フレーク、及び
- 豚用飼料の総重量に基づいて0.010~0.019重量%の粉末であって、オイゲノール及びチモールを含み、且つ任意選択により本明細書に記載の少なくとも1種の賦形剤をさらに含む粉末
を含むことを特徴とする豚用飼料にも関する。
【0044】
好ましくはないが、豚用飼料は、さらなる添加物を含み得る。しかしながら、ホルムアルデヒド、中鎖脂肪酸、フマル酸、プロピオン酸、2-ヒドロキシ-4-メチルチオ-ブタン酸及び/又は2-ヒドロキシ-4-メチルチオ-ブタン酸の塩(例えば、2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタン酸カルシウム)の本発明の豚用飼料への添加は、必要がなく、好ましくもない。本発明の豚用飼料は、豚用飼料に添加されたホルムアルデヒド、中鎖脂肪酸、フマル酸、プロピオン酸及び/又は2-ヒドロキシ-4-メチルチオ-ブタンの塩を実質的に含まないことが好ましい。これに関して、「実質的に含まない」という表現は、豚用飼料の総重量に基づいてそれぞれの化合物の0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、さらにより好ましくは0.01重量%未満、最も好ましくは0.001重量%未満の量を指し得る。
【0045】
[本発明の飼料を調製するプロセス]
本発明の飼料は、不活化アフリカ豚ウイルスを含む。このような飼料は、汚染された飼料成分に含まれるアフリカ豚ウイルスを不活化することによって調製され得る。そのような飼料成分は、それ自体汚染されているか、又は飼料工場で加工中に汚染され得る。アフリカ豚熱の発生を当局が報告している国にある飼料工場は、ある程度汚染されている可能性がある。このような国で栽培及び/又は購入される飼料成分(トウモロコシ、ダイズ粕、オオムギぬか及びコムギふすまなど)もやや汚染されている可能性がある。そのような潜在的な汚染のリスクは、本明細書に記載されるように軽減され得る。
【0046】
本発明の一実施形態は、過去12か月以内にアフリカ豚熱の少なくとも1回の発生を当局が報告している国で豚用飼料を調製するプロセスにおいて、安息香酸フレーク及び粉末は、豚用飼料に添加され、前記粉末は、少なくとも1種の精油を含み、且つ好ましくはオイゲノール及びチモールの混合物を含むことを特徴とするプロセスに関する。
【0047】
[実施例]
[実施例1]
実施例1では、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中でインビトロアッセイを行った。このアッセイの概要を図1に示す。
【0048】
実施例1のインビトロアッセイを以下のように行った:
・工程1:PBSに被験品(それぞれVevoVitall(登録商標)及びVevoWin(登録商標))を溶解する
・工程2:ASFウイルス[1mL 105.3 50%血球吸着用量(HAD50)/ml]を20mL溶液に接種し、汚染溶液を1、3、6及び9日間保持する
・工程3:保持時間終了時に生ウイルスを回収し、インキュベーションのためにブタ肺胞マクロファージ(PAM)細胞にウイルスを接種する
・工程4:血球吸着試験のために、感染したPAM細胞に赤血球(RBC)を添加する。
【0049】
血球吸着試験の結果を以下の表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
各試験について4回の反復を行った。*+*は、血球吸着を意味し、「-」は、血球吸着なしを意味する。VevoVitall(登録商標)は、DSM(登録商標)Nutritional Products(Switzerland)から市販されている。それは、実質的に安息香酸(純度:約99.9%)からなる飼料添加物である。VevoVitall(登録商標)は、安息香酸フレークである。このようなフレークは、大量且つ低コストで製造することができる。VevoWin(登録商標)は、安息香酸フレークと、精油のブレンド物を含む粉末との混合物である。粉末の主要な精油は、チモール及びオイゲノールである。
【0052】
実施例1は、添加物(「試験品」)が添加されない場合、9日間の保持時間がASFウイルスを不活化するのに十分でないことを示す(陽性対照を参照されたい)。実施例1は、PBS溶液中で2つの試験品(VevoVitall(登録商標)及びVevoWin(登録商標))が同様に機能したことも示す。いずれの場合にも、ASFウイルスは、9日前に完全には不活化されなかった。したがって、PBS溶液中では、精油を用いて安息香酸の殺ウイルス活性を増強することは、困難であると思われる。
【0053】
[実施例2]
実施例2では、実施例1のアッセイを繰り返した。しかしながら、今回、PBS溶液の代わりに飼料マトリックスを使用した。
【0054】
実施例2のアッセイの概要を図2に示す。
【0055】
実施例2では、小型のブレード型ミキサー内において、豚用食餌からの4つの食餌試料を、陰性対照(NC)及び陽性対照(PC)処理のために飼料添加物(「試験品」)の添加なしで、又は各飼料試料の総重量に基づいて0.5重量%の安息香酸(Vevovital(登録商標))処理と共に若しくは0.5重量%の安息香酸及び0.02重量%の精油(VevoWin(登録商標))の組み合わせと共に個々に混合した。BSL-3実験室でさらなる操作を行う前に、これらの処理試料を25kGyのガンマ線で刺激した。4つの10グラムのサブ試料を遠心分離管に秤量した。PC、Vevovital(登録商標)及びVevoWin(登録商標)処理の試料チューブのそれぞれに1mLの105.3HAD50/mLのASFV(ASFV/China/GZ201801)を接種した。凝固を防ぐために、全ての試料チューブを1,200rpm/分で連続的に回転させた。陰性対照(NC)について、接種は行わなかった。接種後(PI)の1、3、6又は9日目に、処理ごとの各試料チューブを血球吸着試験のために採取した。遠心分離後の上清の収集のために、10mLのPBSを各試料に添加した。100倍希釈した上清を用いて、プレートウェル中のブタの肺胞マクロファージに2時間感染させた後、RPMI 1640培地を添加した。24時間のインキュベーション後、赤血球を添加して血球吸着試験を行った。
【0056】
実施例2の血球吸着試験の結果を以下の表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
再度、各試験について4回の反復を行った。*+*は、血球吸着を意味し、「-」は、血球吸着なしを意味する。実施例2では、実施例1と同じ製品を試験した(それぞれVevoVitall(登録商標)及びVevoWin(登録商標))。
【0059】
陰性対照試料は、血球吸着について陰性であった。実施例2の陽性対照は、ASFウイルスの接種が成功したことを確認する。陽性対照は、飼料添加物が添加されない場合、9日の保持時間がASFウイルスを不活化するのに十分でないことも確認する。
【0060】
実施例1との比較は、VevoVitall(登録商標)の効果がPBS溶液よりも飼料中でわずかに良好であることを示す。それにもかかわらず、飼料中では、ASFウイルスを完全に不活化するのになお6日を要する。
【0061】
驚くべきことに、安息香酸及び精油の組み合わせ(すなわちVevoWin(登録商標))を安息香酸単独(すなわちVevoVitall(登録商標))の代わりに添加すると、ASFウイルスは、1日目の終わりにすでに完全に不活化される。したがって、飼料中において、精油は、安息香酸の殺ウイルス活性を劇的に増強する。その結果、保持時間を減少させることができる。
【0062】
[実施例3]
実施例3では、当局が最近アフリカ豚熱の深刻な発生を報告している国において、いくつかのバッチに分けて豚用飼料を調製している。
【0063】
バッチ1及び2を以下の同様の方法で調製する:安息香酸フレーク及び精油の混合物を含む粉末を豚用食餌に添加する。豚用食餌の成分は、両方のバッチで同じであるが、それぞれの豚用食餌は、異なる地域からのものであり、バッチ1の豚用食餌は、長い間にわたってASFVを含まない遠く離れた国で購入される一方、バッチ2の豚用食餌は、その地域で生育されている。実施例3の結果を以下に示す。
【0064】
バッチ1を1日目に製造する。20日後、バッチ1は、生きているアフリカ豚ウイルスを含まず、不活化アフリカ豚ウイルスも含まない。したがって、バッチ1は、汚染されておらず、ASFVで汚染されたこともない。
【0065】
バッチ2を1日目に製造する。20日後、バッチ2は、生きているアフリカ豚ウイルスを含まない。しかし、バッチ2は、不活化アフリカ豚ウイルスを含む。したがって、バッチ2の豚用食餌は、汚染されていた。しかしながら、20日間の保持時間後、バッチ2は、もはや有害ではなく、安息香酸及び精油の混合物は、それらの役割を成功裏に果たした。
【0066】
比較バッチ3は、豚用食餌のみを含む。比較バッチ3の豚用食餌は、その地域で生育されている。安息香酸も精油も添加しない。20日後、比較バッチ3は、生きたアフリカ豚ウイルスを含有する。140日後、比較バッチ3は、生きたアフリカ豚ウイルスを依然として含有する。500日の保持時間後、比較バッチ3は、もはや有害ではない。それらの500日分の倉庫料は、1,000米ドルを超える。加えて、バッチ3の一部は、腐敗し、排出しなければならない。
図1
図2
【国際調査報告】