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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1333 20060101AFI20231129BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20231129BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G02F1/1333
G02F1/13 505
G02F1/1339 505
G02F1/1333 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530248
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 GB2021052999
(87)【国際公開番号】W WO2022106834
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】2018219.2
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【弁理士】
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン バークレイ ディクソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ジェレミー ブート
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
2H190
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088FA02
2H088FA04
2H088FA10
2H088HA01
2H088HA05
2H088MA17
2H088MA20
2H189AA08
2H189AA64
2H189DA04
2H189DA72
2H189DA73
2H189EA03Y
2H189EA04Y
2H189EA05Y
2H189FA25
2H189HA04
2H189HA14
2H189HA16
2H189JA06
2H189LA01
2H189LA02
2H189MA15
2H190JB03
2H190KA06
2H190LA02
2H190LA03
(57)【要約】
電場の影響下で可変の光学的不透明度を有する電気的に作動する液体を収容するフィルムについて説明する。フィルムは、液体の一部または全部が含まれる第1のキャビティをそれらの間に画定する、離隔して配置された第1および第2の基板を備える。フィルムはまた、第1の開口を介して第1のキャビティと流体連通する液体トラップを備える。液体トラップは、第1のキャビティの容積が減少することによって第1のキャビティから第1の開口を通って流れ得る液体を収容する。フィルムは積層グレージングに含まれ得る。液体用のセルを調製する方法もまた記載されており、そのようなセルは、可変の光学的不透明度を有するフィルムの一部であり得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容するフィルムであって、前記フィルムは、第2の基板に接合された第1の基板を備え、前記第1の基板は、前記液体の少なくとも一部が収容される第1のキャビティを画定するために前記第2の基板から離隔され、前記第1の基板と前記第2の基板との間に適切な電場が印加されると、前記フィルムは、第1の光学的不透明度から第2の光学的不透明度に変化し、前記フィルムは、少なくとも第1の開口を介して前記第1のキャビティと流体連通するように構成された液体トラップを備え、前記液体トラップは、前記第1のキャビティから前記第1の開口を通って流れる液体を収容するように配置される、液体を収容するフィルム。
【請求項2】
前記液体トラップは、第2のキャビティを備え、前記第1の開口を通過する液体は、前記第2のキャビティ内に収容可能であり、好ましくは前記第2のキャビティは、流体を収容する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記第2のキャビティは、大気圧未満の内圧を有し、および/または前記第2のキャビティは、長さ、幅および高さを有するチャネルとして構成され、前記チャネルの高さは、前記フィルムの第1および第2の基板の間隔によって決定され、好ましくは、前記チャネルの幅は、前記第1のキャビティの幅および/または長さよりも小さい、請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記第2のキャビティは、前記第1のキャビティ内の圧力変化を補償するための膨張容器として構成される、請求項2に記載のフィルム。
【請求項5】
前記膨張容器は、少なくとも第1の壁部分を有し、前記膨張容器の前記第1の壁部分は、移動可能および/または可撓性であり、好ましくは前記第2のキャビティ内に位置する、請求項4に記載のフィルム。
【請求項6】
前記液体トラップは、前記第1の開口を通過する液体を収容するための液体吸収体を備え、好ましくは、前記液体吸収体は、スポンジである、請求項1から5のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記第1の開口は、前記第1のキャビティ内の所定の圧力について、液体が前記第1のキャビティから前記液体トラップへ流れるのを阻止されるように構成され、好ましくはバリアは、前記第1の開口を覆い、前記第1のキャビティ内の圧力が所定の圧力を超えるとき、前記バリアは、破られるかまたは前記第1の開口から除去されるように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項8】
液体は、前記第1のキャビティ内の前記所定の圧力を超えると、前記第1の開口を通って前記液体トラップに流れ得る、請求項7に記載のフィルム。
【請求項9】
前記第1および/または第2の基板が、熱収縮性材料、好ましくはプラスチックまたはポリエステル、より好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)またはトリアリルシアヌレート(TAC)を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項10】
前記液体は、液晶材料、特にゲストホスト液晶材料を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項11】
前記第1の基板は、第1のシールによって前記第2の基板に接合され、好ましくは前記第1のシールは、接着シール、特に熱硬化性接着シールおよび/または紫外線硬化性接着シールである、請求項1から10のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
前記第1の開口は、前記第1のシール内の開口である、請求項11に記載のフィルム。
【請求項13】
前記第1の基板は、前記第1の基板と前記第2の基板との間の1つ以上のスペーサによって前記第2の基板から離隔される、請求項1から12のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項14】
前記フィルムは、第1の接着層または接着性中間層材料の第1のシートによってグレージング材料の第1のシートに接合される、請求項1から13のいずれか一項に記載のフィルムを含む積層グレージング。
【請求項15】
前記フィルムは、第2の接着層または接着性中間層材料の第2のシートによってグレージング材料の第2のシートにも接合され、前記フィルムは、グレージング材料の第1のシートと第2のシートとの間にある、請求項14に記載の積層グレージング。
【請求項16】
前記接着性中間層材料の第1のシート、および存在する場合には前記接着性中間層材料の第2のシートは、ポリビニルブチラール(PVB)、吸音性改質PVB、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)などのエチレンのコポリマー、エチレンとメタクリル酸とのコポリマー(EMA)、またはUvekolなどの液体硬化性樹脂を備える、請求項14または15に記載の積層グレージング。
【請求項17】
液体用のセルを調製する方法であって、前記セルは、第2の基板に接合された第1の基板を備え、前記第1および/または第2の基板は、熱収縮性材料を備え、好ましくは、前記セルは、請求項1から13のいずれか一項に従って構成されたフィルムの一部であり、前記方法は、
(i)前記第1の基板を準備するステップと、
(ii)前記第1の基板が前記第2の基板から離隔するように、前記第2の基板を前記第1の基板上に配置するステップと、
(iii)前記第2の基板を前記第1の基板に接合して第1の容積を有するキャビティを形成することによってセルを形成するステップと、
ステップ(iii)で形成されたセルを加熱して、前記キャビティの第1の容積を第2の容積へと減少させるステップと、
を含む、液体用のセルを調製する方法。
【請求項18】
ステップ(i)の後およびステップ(ii)の前、1つ以上のスペーサは、次のステップ(ii)において前記第1の基板が前記1つ以上のスペーサのうちの少なくとも1つによって前記第2の基板から離隔されるように、前記第1の基板上に位置する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
次のステップ(iii)において、前記1つ以上のスペーサのうちの少なくとも1つが前記キャビティ内に収容される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(iii)で形成された前記セルは、その中に前記キャビティと流体連通する少なくとも1つの穴を有し、次のステップ(iv)において液体が前記穴を介してキャビティに導入され、その後、前記穴が密閉され、それによって前記セルの前記キャビティ内に液体が密閉される、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記液体は、前記キャビティを完全に満たす、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(i)の後、第1の量の液体は、前記第1の基板上に位置し、前記第1の量の液体は、前記キャビティの前記第1の容積よりも小さい容積を有する、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
次のステップ(iv)において、前記第1の量の液体は、前記第2の容積を有するキャビティを満たす、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記液体は、液晶材料、特にゲストホスト液晶材料を備える、請求項17から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1および/または第2の基板は、プラスチックまたはポリエステルを備え、好ましくは前記第1および/または第2の基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、またはトリアリルシアヌレート(TAC)を備える、請求項17から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(iv)中の加熱は、少なくとも1つの接着性中間層材料シートによって前記セルを少なくとも1つのグレージング材料シートに積層する積層プロセスの一部であり、および/または、ステップ(iv)中の加熱は、前処理ステップの一部であり、その結果、次のステップ(iv)において、前記加熱処理されたセルが、少なくとも1つのグレージング材料のシートと少なくとも1つの接着性中間層材料のシートとを備える積層グレージングの構成要素として使用され、前記セルは、少なくとも1つの接着性中間層材料のシートによって前記少なくとも1つのグレージング材料のシートに接合される、請求項17から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
液体を収容するフィルム、グレージング材料の第1のシート、および接着性中間層材料の第1のシートを備える積層グレージングであって、
前記フィルムは、第2の基板に接合された第1の基板を備え、前記第1の基板は、前記液体の少なくとも一部が収容させる第1のキャビティを画定するために前記第2の基板から離隔して配置され、
前記フィルムは、前記接着性中間層材料の第1のシートによって前記グレージング材料の第1のシートに接合され、
前記接着性中間層材料の第1のシートは、その中に少なくとも第1の空隙を有し、前記第1の空隙は、フィルムの少なくとも一部を前記第1の空隙内に収容するように配置され、好ましくはフィルムは、請求項1から13のいずれかに従って構成される、
積層グレージング。
【請求項28】
前記第1の空隙は、前記フィルムが前記第1の空隙内に膨張することによって、前記第1の空隙内に前記フィルムの少なくとも一部を収容するように配置される、請求項27に記載の積層グレージング。
【請求項29】
前記フィルムの一部は、前記接着性中間層材料の第1のシートの前記第1の空隙内にある、請求項27または28に記載の積層グレージング。
【請求項30】
弾性材料は、第1の空隙に収容され、前記弾性材料は、前記フィルムと前記グレージング材料の第1のシートとの間にある、請求項27から29のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項31】
前記フィルムは、少なくとも1つの脆弱ゾーンを備え、前記脆弱ゾーンは、前記第1の空隙と連通するように配置され、前記フィルム内の圧力が上昇すると前記脆弱ゾーンが破裂し、液体が前記第1の空隙に流入する、請求項27に記載の積層グレージング。
【請求項32】
バリアは、前記接着性中間層材料の第1のシートからの接着性中間層材料が前記第1の空隙に流入するのを防止するように、第1の空隙を画定する、請求項27から31のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項33】
前記フィルムは、請求項1から13のいずれか一項に記載のフィルムであり、前記液体トラップが少なくとも部分的に前記第1の空隙内にある、請求項27から32のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を収容するためのフィルム、特に電場の影響下で可変の光学的不透明度を有するフィルムに関し、液体、特に電場の影響下で可変の光学的不透明度を有する液体を収容するためのセルを調製する方法に関し、フィルム、特に光制御フィルムを収容する積層グレージングに関する。
【背景技術】
【0002】
接着性中間層材料のシート、例えばポリビニルブチラール(PVB)のシートを備える中間層構造によって接合された2つのガラスシートを備える積層グレージングを製造することが知られている。
【0003】
ガラスシートを結合するには、積層されていないスタックを準備し、その後、適切な高温と圧力をかけて接着性中間層材料のシートを流動させ、それによってガラスシートに接触させる。この理由から、このような接着性中間層材料のシートは、当技術分野ではホットメルト接着剤と呼ばれることがある。
【0004】
特定の材料は、加熱すると収縮することが知られている。そのような材料の1つは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。このような材料は、50℃を超える温度、例えば約90℃から150℃に加熱されると、収縮する傾向がある。
【0005】
PETフィルムの使用は積層の分野ではよく知られている。多くの場合、PETフィルムは赤外線反射コーティングのキャリアシートとして使用され、コーティングされたPETフィルムは通常、PVBなどの接着性中間層材料のシートをコーティングされたPETフィルムの反対側およびガラスシートのいずれかの側に配置することによって、車両のフロントガラスなどの積層グレージングに組み込まれる。
【0006】
PETフィルムは、電気的に作動する材料の基板として他の分野でも使用されている。例えば、2つのPETシートの間に液晶材料の層を有することが知られている。例えば、米国特許第4,505,546号明細書および国際公開第2019209029号を参照されたい。このようなフィルムは光制御フィルムとして機能し得る。
【0007】
このようなフィルムでは、液晶材料の所望のセルギャップを達成するためにガラス球などのスペーサが使用されることが知られている。
【0008】
しかしながら、液晶材料などの液体を収容するこのようなフィルムが上記のタイプの積層グレージングに組み込まれる場合、問題がある。
【0009】
米国特許出願公開第2018/0157072号明細書には、プラスチック基板が伸縮する際に大きく変形した場合でも密封性を失わないシール材を有する液晶セルが記載されている。
【0010】
米国特許出願公開第2019/0107742号明細書には、液晶フィルムセルのベースフィルムとは異なる高温膨張係数を有する膨張制御層を含む液晶フィルムセルが記載されている。
【0011】
米国特許出願公開第2021/0208445号明細書には、液晶フィルムが挟持され、3次元曲面形状を有する積層ガラスにおいて、液晶フィルムのシワの発生を抑制できる積層グレージングの製造方法が記載されている。
【0012】
米国特許出願公開第2021/146660号明細書には、車両の周囲に面する外側と外側から反対側に面する内側とを有し、複合材料が接続されている、板状の窓ガラス本体を有する車両の窓ガラス板が記載されており、複合材料は、順に重ねて配置された複数の層を有し得る層構造を有し、層のうちの1つは、2つのフィルムと2つのフィルムの間に配置された液晶セルとを有する液晶配置を有し、層のうちのもう1つは、偏光層である。層構造の少なくとも1つの層は、その面積が液晶配置の面積よりも小さい補償層であり得、こうして、液晶セルは、補償層によって覆われた中央部分よりも厚い縁を有する。
【発明の概要】
【0013】
通常、高温(および圧力)を使用して積層グレージングを形成すると、フィルムのPET基板が加熱によって収縮する。この収縮によって、液晶材料を収容するセルの容積が減少し、その結果、セル内の圧力が上昇する。この圧力上昇は、細胞壁の破壊を引き起こすのに十分であり得、それによって液体が漏れ得る。本発明は、上記の問題に対処する。
【0014】
したがって、本発明は、第1の態様から、液体を収容するフィルムであって、フィルムは、第2の基板に接合された第1の基板を備え、第1の基板は、液体の少なくとも一部が収容される第1のキャビティを画定するために第2の基板から離隔され、第1の基板と第2の基板との間に適切な電場が印加されると、フィルムは、第1の光学的不透明度から第2の光学的不透明度に変化し、フィルムは、少なくとも第1の開口を介して第1のキャビティと流体連通するように構成された液体トラップを備え、液体トラップは、第1のキャビティから第1の開口を通って流れる液体を収容するように配置される、液体を収容するフィルムを提供する。
【0015】
このようなフィルムは、第1のキャビティ内の液体がフィルムの第1および第2の基板間に印加される電場に応じて可変の光学的不透明度を有するため、光制御フィルムとして使用され得る。
【0016】
光制御は、可視光の散乱および/または吸収および/または偏光によって達成され得る。
【0017】
光学的不透明度は、第1または第2の基板への垂直入射でフィルムを通過する光線の減衰を測定することによって決定され得る。
【0018】
第1のキャビティ内の圧力が増加すると、これは、加熱による第1のキャビティの容積の減少により得、および/または積層プロセス中に一方または両方の基板の主表面に加えられる圧力により得、フィルムを積層グレージング内に含み、液体の一部が液体トラップによって収容されることが可能であり、それによってフィルムの破裂が防止される。液体トラップはまた、第1のキャビティ内の液体が第1のキャビティ全体にわたって一定の厚さ、または実質的に一定の厚さを有するように、第1の基板と第2の基板との均一な間隔を維持するのに役立ち、特定の印加電場において、液体の均一性が向上し、セルの光学的不透明度が改善される。
【0019】
好ましくは、第1の基板および第2の基板のうちの少なくとも一方は、その主表面の少なくとも一部に導電性の、好ましくは光学的に透明なコーティングを有する。導電性コーティングを使用して、第1の基板と第2の基板との間に電場を印加し得る。
【0020】
好ましくは、第1および第2の基板の両方は、その主表面の少なくとも一部に導電性の、好ましくは光学的に透明なコーティングを有する。
【0021】
好ましくは、フィルムは、フィルムを通過する光線の偏光状態を調整するように配置された第1の偏光層を備える。好ましくは、液体トラップは、第2のキャビティを備え、第1の開口を通過する液体は、第2のキャビティ内に収容可能である。
【0022】
好ましくは、液体トラップは、第1の開口を通過する液体を収容するための液体吸収体を備える。すなわち、液体吸収体には、第1の開口を流れるまたは通過する液体が収容される。適切な液体吸収体は、スポンジである。
【0023】
好ましくは、第1および/または第2の基板は、熱収縮性材料、特にプラスチックまたはポリエステルを備える。第1および/または第2の基板に適した熱収縮性材料には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、およびトリアリルシアヌレート(TAC)が含まれる。
【0024】
好ましくは、液体は、液晶材料、特にゲストホスト液晶材料を備える。
【0025】
好ましくは、第1の基板は、第1のシールによって第2の基板に接合される。第1のシールは、第1のキャビティの境界を画定し得る。好ましくは、第1のシールは、接着シール、特に熱硬化性接着シールおよび/または紫外線硬化性接着シールである。第1のシールに適した材料には、エポキシ樹脂系が含まれる。
【0026】
好ましくは、第1の基板が、第1の基板と第2の基板との間の1つ以上のスペーサによって第2の基板から離隔される、前述の請求項のいずれか一項に記載のフィルム。
【0027】
適切なスペーサには、ガラス球などが含まれる。
【0028】
いくつかの実施形態では、液体トラップは、スポンジおよび第2のキャビティを備え、スポンジは、第2のキャビティ内に封入される。
【0029】
液体トラップが第2のキャビティを備えるいくつかの実施形態では、第2のキャビティが流体、好ましくは気体または液体、例えば液体の一部を収容することが好ましい。
【0030】
液体トラップが第2のキャビティを備えるいくつかの実施形態では、第2のキャビティ内の内圧は大気圧より低いことが好ましい。
【0031】
好ましくは、第2のキャビティは、真空であり得る。
【0032】
液体トラップが第2のキャビティを備えるいくつかの実施形態では、第2のキャビティは、好ましくは、長さ、幅、および高さを有するチャネルとして構成され、チャネルの高さは、フィルムの第1および第2の基板の間隔によって決定される。好ましくは、チャネルの幅は、第1のキャビティの幅および/または長さ未満であり、より好ましくは、チャネルの幅は、第1のキャビティの幅および/または長さの10倍未満、または20倍未満、または30倍未満である。
【0033】
好ましくは、チャネルは、少なくとも第1の直線部分を備える。
【0034】
好ましくは、チャネルは蛇行部分を備える。
【0035】
液体トラップが第2のキャビティを備えるいくつかの実施形態では、好ましくは、第2のキャビティは、第1のキャビティ内の圧力変化を補償する膨張容器として構成される。
【0036】
膨張容器は、少なくとも第1の壁部分を有し、好ましくは膨張容器の第1の壁部分は移動可能および/または可撓性である。
【0037】
好ましくは、膨張容器の第1の壁部分は、第2のキャビティ内に位置する。
【0038】
第1の壁部分は、第2のキャビティを画定し得、第2のキャビティが拡張容器となりブラダーのように機能するように、可撓性および/または可動性であり得る。
【0039】
第1の壁部分が可動および/または可撓性であり第2のキャビティ内にあるとき、第1の壁部分は、膨張容器のダイヤフラムとして機能する。
【0040】
いくつかの実施形態では、第1の開口は、第1のキャビティ内の所定の圧力に対して、液体が第1のキャビティから液体トラップへ流れるのを阻止されるように構成される。所定の圧力は、通常の実験によって決定され得る。
【0041】
好ましくは、第1のキャビティ内の所定の圧力を超えると、液体は、第1の開口を通って液体トラップに流れる。
【0042】
開口は、所定の圧力では液体が開口を通って流れないようなサイズを有するように構成されることが好ましい。
【0043】
好ましくは、バリアが第1の開口を覆い、バリアは、第1のキャビティ内の圧力が所定の圧力を超えたときに破られるか、または第1の開口から除去されるように構成される。バリアが第1の開口を覆わなくなったとき、液体は第1の開口を通って液体トラップに流れる。
【0044】
第1の基板が第1のシールによって第2の基板に接合される実施形態では、第1の開口は第1のシール内の開口であることが好ましい。
【0045】
液体トラップが第2のキャビティを備え、第1の開口を通過する液体が第2のキャビティ内に収容可能である実施形態では、第2のキャビティが第1の基板と第2の基板との間にあることが好ましい。
【0046】
好ましくは、第2のキャビティは第2のシールによって境界が画定される。好ましくは、第1のシールの少なくとも一部が第2のキャビティの境界を画定する。
【0047】
いくつかの実施形態では、第1および/または第2の基板は、1mm未満、好ましくは10μm~900μm、より好ましくは50μm~500μmの厚さを有する。
【0048】
いくつかの実施形態では、第1の基板は、第2の基板から500μm未満、好ましくは400μm未満、または300μm未満、または200μm未満、または100μm未満、または50μm未満離隔される。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1の基板は、第2の基板から5μm超、好ましくは10μm超、または20μm超、または30μm超、または40μm超、または50μm超の間隔で離隔される。
【0050】
いくつかの実施形態では、フィルムは1000μm未満、好ましくは50μm~500μmの厚さを有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1の基板は、接着性中間層の第1のシートが第1のキャビティとは反対側を向くように配置された接着性中間層材料の第1のシートに接合される。適切な接着性中間層材料には、ポリビニルブチラール(PVB)、吸音性改質PVB、エチレン酢酸ビニル(EVA)などのエチレンのコポリマー、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレンとメタクリル酸とのコポリマー(EMA)またはUvekolなどの液体硬化性樹脂が含まれる。
【0052】
いくつかの実施形態では、第2の基板は、接着性中間層の第2のシートが第1のキャビティとは反対側を向くように配置された接着性中間層材料の第2のシートに接合される。適切な接着性中間層材料には、ポリビニルブチラール(PVB)、吸音性改質PVB、エチレン酢酸ビニル(EVA)などのエチレンのコポリマー、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレンとメタクリル酸とのコポリマー(EMA)またはUvekolなどの液体硬化性樹脂が含まれる。
【0053】
いくつかの実施形態では、第1の基板は、接着性中間層材料の第1のシートに接合され、第2の基板は、第1のキャビティが接着性中間層材料の第1のシートと接着性中間層材料の第2のシートとの間にあるように、接着性中間層の第2のシートに接合される。適切な接着性中間層材料には、ポリビニルブチラール(PVB)、吸音性改質PVB、エチレン酢酸ビニル(EVA)などのエチレンのコポリマー、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレンとメタクリル酸とのコポリマー(EMA)またはUvekolなどの液体硬化性樹脂が含まれる。接着性中間層材料の第1および第2のシートの材料は、同じであっても異なっていてもよい。
【0054】
第1および第2の基板のうちの少なくとも一方がその主表面の少なくとも一部に導電性コーティングを有するいくつかの実施形態では、それぞれの導電性コーティングは好ましくは第1のキャビティに面する。
【0055】
好ましくは、第1の基板は、第1のキャビティに面する主表面の少なくとも一部に導電性コーティングを有する。
【0056】
好ましくは、第2の基板は、第1のキャビティに面する主表面の少なくとも一部に導電性コーティングを有する。
【0057】
好ましくは、第1の基板は、第1のキャビティに面する主表面の少なくとも一部に導電性コーティングを有し、第2の基板は、第1のキャビティに面する主表面の少なくとも一部に導電性コーティングを有する。
【0058】
好ましくは、導電性コーティングまたは各導電性コーティングは光学的に透明である。
【0059】
いくつかの実施形態では、フィルムは、第1の接着層または接着性中間層材料の第1のシートによって、グレージング材料の第1のシートに接合される。適切な接着性中間層材料には、ポリビニルブチラール(PVB)、吸音性改質PVB、エチレン酢酸ビニル(EVA)などのエチレンのコポリマー、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレンとメタクリル酸とのコポリマー(EMA)またはUvekolなどの液体硬化性樹脂が含まれる。接着層は、感圧接着剤、またはポリウレタン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニルなどの接着剤の層であり得る。このような実施形態では、フィルムは積層グレージングの一部であることが好ましい。
【0060】
いくつかの実施形態では、フィルムは、片面で第1の接着層または接着性中間層材料の第1のシートによってグレージング材料の第1のシートに接合され、反対側の第2の接着層または接着性中間層材料の第2のシートによってグレージング材料の第2のシートに接合される。適切な接着性中間層材料は、ポリビニルブチラール(PVB)、吸音性改質PVB、エチレン酢酸ビニル(EVA)などのエチレンのコポリマー、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレンとメタクリル酸とのコポリマー(EMA)またはUvekolなどの液体硬化性樹脂が含まれる。接着層は、感圧接着剤、またはポリウレタン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニルなどの接着剤の層であり得る。このような実施形態では、フィルムは積層グレージングの一部であることが好ましい。
【0061】
フィルムが偏光層を備える実施形態では、好ましくは、偏光層は、接着層または接着性中間層材料のシートによってフィルムに接合される。このような実施形態では、好ましくは、偏光層は、片面の第1の接着層または接着性中間層材料の第1のシートと反対側の第2の接着層または接着性中間層材料の第2のシートとの間にある。
【0062】
いくつかの実施形態では、光学的不透明度は、第1または第2の基板への垂直入射におけるフィルムを通る可視光透過率(D65光源 10°視野)に関する。
【0063】
第2の態様から、本発明は、液体用のセルを調製する方法であって、セルは、第2の基板に接合された第1の基板を備え、第1および/または第2の基板は、熱収縮性材料を備え、本方法は、(i)第1の基板を準備するステップと、(ii)第1の基板が第2の基板から離隔するように、第2の基板を第1の基板上に配置するステップと、(iii)第2の基板を第1の基板に接合して第1の容積を有するキャビティを形成することによってセルを形成するステップと、(iv)ステップ(iii)で形成されたセルを加熱して、キャビティの第1の容積を第2の容積へと減少させるステップと、を提供する。
【0064】
第1の容積および第2の容積は、標準的な容積測定技術を使用して測定し得る。
【0065】
このセルは、電気的に作動する液体を収容するのに適しており、電気的に作動する液体は、電場の影響下で可変の光学的不透明度を有する。
【0066】
好ましくは、ステップ(i)の後およびステップ(ii)の前、1つ以上のスペーサは、次のステップ(ii)において第1の基板が1つ以上のスペーサのうちの少なくとも1つによって第2の基板から離隔されるように、第1の基板上に位置する。好ましくは、次のステップ(iii)において、1つ以上のスペーサのうちの少なくとも1つがキャビティ内に収容される。
【0067】
好ましくは、ステップ(iii)で形成されたセルは、その中にキャビティと流体連通する少なくとも1つの穴を有し、次のステップ(iv)において液体が穴を介してキャビティに導入され、その後、穴が密閉され、それによってセルのキャビティ内に液体が密閉される。穴は、第1および/または第2の基板の主表面にあり得る。穴は、キャビティの境界を定めるシール内にあり得る。穴を介してキャビティに導入された液体がキャビティを完全に満たすことが好ましい。
【0068】
好ましくは、液体は、液体がキャビティ内にあるとき、第1の基板と第2の基板との間に適切な電場を印加するとき、フィルムが第1の光学的不透明度から第2の光学的不透明度に変化するように選択される。
【0069】
いくつかの実施形態では、液体は液晶材料、特にゲストホスト液晶材料を備える。
【0070】
他の実施形態では、ステップ(i)の後、第1の量の液体が第1の基板上に配置され、第1の量の液体はキャビティの第1の容積よりも小さい体積を有する。
【0071】
好ましくは、次のステップ(iv)において、第1の量の液体は、第2の容積を有するキャビティを満たす。
【0072】
第1および/または第2の基板は、プラスチックまたはポリエステルを備え、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、またはトリアリルシアヌレート(TAC)を備える。
【0073】
いくつかの実施形態では、ステップ(iv)中の加熱は、少なくとも1つの接着性中間層材料シートによってセルを少なくとも1つのグレージング材料シートに積層する積層プロセスの一部である。
【0074】
いくつかの実施形態では、ステップ(iv)中の加熱は、前処理ステップの一部であり、その結果、次のステップ(iv)において、加熱処理されたセルが、少なくとも1つのグレージング材料のシートと少なくとも1つの接着性中間層材料のシートとを備える積層グレージングの構成要素として使用され、セルは、少なくとも1つの接着性中間層材料のシートによって少なくとも1つのグレージング材料のシートに接合される。
【0075】
適切なグレージング材料としては、ガラス、特にソーダ石灰ケイ酸ガラスが挙げられる。典型的なソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの組成(重量比)は、SiO 69~74%、Al 0~3%、NaO 10~16%、KO 0~5%、MgO 0~6%、CaO 5~14%、SO3 0~2%、Fe 0.005~2%である。ガラス組成物は、他の添加剤、例えば、通常最大2%の量で存在する精製助剤をも含有し得る。ソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物は、透過光で見たときにガラスに所望の色を与えるために、Co、NiO、Seなどの他の着色剤を含有し得る。透過ガラスの色は、BS EN410などの認められた規格に基づいて測定され得る。
【0076】
適切な接着性中間層材料には、ポリビニルブチラール(PVB)、吸音性改質PVB、エチレン酢酸ビニル(EVA)などのエチレンのコポリマー、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレンとメタクリル酸とのコポリマー(EMA)またはUvekolなどの液体硬化性樹脂が含まれる。
【0077】
本発明の第2の態様のいくつかの実施形態では、セルは、本発明の第1の態様に従って構成されたフィルムの一部である。
【0078】
本発明は、第3の態様から、液体を収容するフィルム、グレージング材料の第1のシート、および少なくとも接着性中間層材料の第1のシートを備える積層グレージングであって、フィルムは、第2の基板に接合された第1の基板を備え、第1の基板は、液体の少なくとも一部が収容させる第1のキャビティを画定するために第2の基板から離隔して配置され、フィルムは、接着性中間層材料の第1のシートによってグレージング材料の第1のシートに接合され、接着性中間層材料の第1のシートは、その中に少なくとも第1の空隙を有し、第1の空隙は、フィルムの少なくとも一部を第1の空隙内に収容するように配置される、積層グレージングを提供する。
【0079】
第1の空隙を有する接着性中間層材料の第1のシートを有することによって、フィルムが収縮する場合、フィルム内の過剰な液体によってフィルムが第1の空隙内に膨張し得る。好ましくは、第1の空隙は、第1の空隙内へのフィルムの膨張によって、第1の空隙内にフィルムの少なくとも一部を収容するように配置される。
【0080】
好ましくは、第1の基板と第2の基板との間に適切な電場を印加すると、フィルムは第1の光学的不透明度から第2の光学的不透明度に変化する。
【0081】
好ましくは、フィルムの一部は、接着性中間層材料の第1のシートの第1の空隙内にある。
【0082】
好ましくは、弾性材料は、接着性中間層材料の第1のシートの第1の空隙に収容されており、弾性材料は、フィルムとグレージング材料の第1のシートとの間にある。弾性材料はバリアとして機能し、その結果、フィルム内の圧力が大きくなりすぎる場合、弾性材料が圧縮されてフィルムが第1の空隙内に膨張するように配置される。
【0083】
弾性材料は、ゴム、より好ましくはシリコーンゴムなどのエラストマー材料を備え得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、液体は、液晶材料を備える。
【0085】
いくつかの実施形態では、フィルムは、少なくとも1つの脆弱ゾーンを備え、脆弱ゾーンは第1の空隙と連通するように配置され、フィルム内の圧力が上昇すると脆弱ゾーンが破裂し、液体が第1の空隙に流入する。
【0086】
いくつかの実施形態では、バリアが第1の空隙を画定する。第1の空隙を画定するためのバリアの使用は、フィルム、グレージング材料の第1のシート、および接着性中間層材料の第1のシートを適切な高温および/または高圧で積層する際に、接着性中間層材料の第1のシートから第1の空隙への材料の流れを防止するのに特に有用である。
【0087】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第1のシートは、ガラス、好ましくはソーダ石灰ケイ酸塩ガラスを備える。
【0088】
いくつかの実施形態では、接着性中間層材料の第1のシートは、ポリビニルブチラール(PVB)、吸音性改質PVB、エチレン酢酸ビニル(EVA)などのエチレンのコポリマー、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレンとメタクリル酸とのコポリマー(EMA)またはUvekolなどの液体硬化性樹脂を備える。
【0089】
いくつかの実施形態では、積層グレージングは、グレージング材料の第2のシートを備え、フィルムは、グレージング材料の第1のシートとグレージング材料の第2のシートとの間にある。
【0090】
いくつかの実施形態では、積層グレージングは接着性中間層材料の第2のシートを備え、フィルムは接着性中間層材料の第1のシートと第2のシートとの間にある。
【0091】
いくつかの実施形態では、フィルムは、接着性中間層材料のシートの切り抜き領域に位置する。このような実施形態では、接着性中間層材料のシートのカットアウト領域に配置されるフィルムは、好ましくは、接着性中間層材料の第1のシートと接着性中間層材料の第2のシートとの間にある。
【0092】
いくつかの実施形態では、フィルムは、本発明の第1の態様によるフィルムとして構成され、液体トラップは、少なくとも部分的に第1の空隙内にある。
【0093】
いくつかの実施形態では、フィルムは偏光層を備える。
【0094】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第1のシートは、1mm~5mm、好ましくは1.3mm~3mmの厚さを有する。
【0095】
グレージング材料の第2のシートを有する実施形態では、グレージング材料の第2のシートの好ましい厚さは、1mm~5mm、好ましくは1.3mm~3mmである。
【0096】
いくつかの実施形態では、積層グレージングは、1つ以上の方向に湾曲している。1つ以上の方向のうちの1つの曲率半径は、1000mm~8000mmであり得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、接着性中間層材料の第1のシートは、0.3mm~2.3mm、より好ましくは0.3mm~1.6mm、最も好ましくは0.3mm~0.8mmの厚さを有する。
【0098】
容易に明らかなように、本発明の第1の態様によるフィルムは、本発明の第3の態様による積層グレージングに組み込まれ得る。
【0099】
次に、下記の図(縮尺は一定ではない)を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0100】
図1】本発明の第1の態様によるフィルムの平面図である。
図2図1に示す積層グレージングのA-A’線に沿った概略断面図である。
図3】本発明の第1の態様に係る他のフィルムの平面図である。
図4図3に示す積層グレージングのB-B’線に沿った概略断面図である。
図5】本発明の第2の態様による液体用のセルを調製するために使用される構成部品の概略分解側面図である。
図6図5に示されるセルの概略側面図である。
図7】本発明の第3の態様による積層グレージングの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0101】
図1および図2を参照すると、第1のシール7によって第2のPET基板5に接合された第1のPET基板3を備えるフィルム1が示される。第1のシール7は、第1の基板3および第2の基板5の周囲に延在して第1のキャビティ9を画定する。第1のキャビティ9の内部には液体11がある。また、第1のキャビティ9内には、第1の基板3および第2の基板5の間隔を維持するための球状ガラススペーサ(図示せず)が配置される。
【0102】
この例では、第1および第2の基板の厚さは、各々約200μmであり、約50μmの間隔をあけて配置される。間隔は、約20μmであり得る。
【0103】
この例では、液体11は、液晶材料、例えばゲストホスト液晶材料であるが、液体11は、電場の作用下で可変の光学的不透明度を有する任意の液体であり得る。例えば、周波数Fで第1の大きさMを有する第1の電場Eの影響下では、第1の基板3に垂直な入射でフィルム1を通して見たフィルム1の光学的不透明度はOであり、周波数Fで第2の大きさMを有する第2の電場Eの影響下では、第1の基板3への垂直入射でフィルム1を通して見たフィルム1の光学的不透明度はOである(電場E、Eは、第1の基板3と第2の基板5との間に印加される)。したがって、フィルム1は光制御フィルムである。例えば、電場Eの影響下では可視光透過率(D65光源 10°視野)が50%を超える場合があり得、電場Eの影響下では可視光透過率(D65光源 10°視野)は、50%未満であり得、例えば10%未満である。
【0104】
まさに説明したように、第1のPET基板3および第2のPET基板5の間に電場が印加されるとき、第1のキャビティ内の液体層11の光学的不透明度が変化する。光波長には、380nm~780nmの少なくとも1つの波長が含まれる。
【0105】
液晶材料の層を備えるフィルムは当技術分野で知られており、広い温度範囲にわたって短いスイッチング時間、すなわち約1秒で動作し得る。交流電圧を使用して液晶フィルムを作動させ、その光学的不透明度を変化させ得る。いくつかのそのようなフィルムでは、30V以下であり得るスイッチング電圧および/または50~60Hzの周波数を使用することが知られている。液晶フィルムは、動作電圧が35~70VAC、動作周波数が25~50Hz方形波であることも知られている。
【0106】
また、第1の基板3および第2の基板5の周囲には、第2のシール13が配置されている。第2のシール13の内側には、第2のキャビティ15がある。
【0107】
わかりやすくするために、図1の一部を拡大して示している。第1のキャビティ9は、開口17を介して第2のキャビティ15と流体連通している。開口17は、第1のシール7および第2のシール13の開口であり、液体11が第1のキャビティ9から第2のキャビティ15に(矢印19の方向に)流れるための経路を提供する。
【0108】
第1および/または第2のPET基板3、5が収縮した場合、第1のキャビティ9の容積は減少する。第1のキャビティ9内の圧力は、液体11が開口17を介して第2のキャビティ15に流入し得るように増加する。
【0109】
この例では、第2のキャビティ15は、第1および/または第2の基板3、5の収縮による第1のキャビティ9の容積の減少によってその中に流入し得る液体を収容する液体トラップとして機能する。
【0110】
図示の実施形態では、開口17は、第1のキャビティ9内に所定の圧力が生成されるまで、表面張力によって液体11が第2のキャビティ15に流入するのを防止可能であるような大きさに設定される。
【0111】
第1の基板3および第2の基板5のうちの少なくとも一方の露出した主表面に圧力を加えると、液体はまた、第1のキャビティ9から第2のキャビティ15へ流れ得る。
【0112】
図1および図2に示す実施形態の代替例では、開口17は、第1のキャビティ9内に十分な圧力が生じてバリアが破裂し、液体11が第2のキャビティ15への開口17を通って流れるまで開口を閉じるバリアを有する。バリアは、PETの薄いシートであり得、または適切な厚さを有するシール7、13の一部であり得る。
【0113】
図1および図2に示す実施形態の別の代替例では、第2のキャビティは、第2のシール13の一部であり得る可撓性の壁部分を有する。可撓性の壁部分は、第1のキャビティ9内の圧力差を補償するために第2のキャビティ15の容積を調整することが可能である。そのような実施形態では、第2のキャビティ15は膨張容器またはブラダーとして機能する。
【0114】
上記のものと同様の実施形態では、第2のキャビティ15を画定する壁に加えて、可動壁が第2のキャビティ15の内部に含まれる。可動壁は可撓性であり得、第2のキャビティ内でダイヤフラムとして機能し、第2のキャビティが第1のキャビティ内の圧力変動を補償することを可能にする。
【0115】
フィルム1は、積層グレージングの中間層として含まれ得る。第1の基板3は、PVB、EVA、またはPUなどの接着性中間層材料の少なくとも1つのシートを備える第1の中間層構造を介して、グレージング材料の第1のシートに結合され得る。第2の基板5は、PVB、EVA、またはPUなどの接着性中間層材料の少なくとも1つのシートを備える第2の中間層構造を介して、グレージング材料の第2のシートに結合され得る。このような積層グレージングは、従来の積層技術を使用して作製され得る。
【0116】
積層のためにフィルム1の温度が上昇すると、基板3、5が収縮し、液体11の一部が第1のキャビティ9から開口17を通って第2のキャビティ15に流れる。
【0117】
フィルム1は、次のようにして作製され得る。まず、第1のPETシートが第1の基板3として提供される。第1のPETシートは、その主表面上にITOなどの導電性の光学的に透明なコーティングを有し得る。
【0118】
次に、第1の基板3の主表面のうちの1つの周囲に第1の接着層を設けて、液体11を収容する容器を作製する。第2の接着層を設けて、容器を第1の領域と第2の領域とに分割する。次に、ブレードを使用して第2の接着層に開口17を形成する。あるいは、開口17は、容器が第1の領域と第2の領域とに分割されるときに、第2の接着層の流れを遮断することによって設けられ得る。
【0119】
次に、液体11が、好ましくはワンドロップフィルプロセスを使用して、第1の領域に容積される。
【0120】
次に、(第2の基板5を提供するための)第2のPETシートを第1および第2の接着剤層上に配置し、それに接合させる。例えば、接着剤は、UV放射線に曝露することによって適切に硬化され得る。第2のPETシートが第1のPETシートに接合されると、第1の領域内の液体は、第1のキャビティ9内に封入され、第1のキャビティ9は、開口17を介して第2のキャビティ15と流体連通する。第1のキャビティ15は容器の第1の領域を含み、第2のキャビティ15は容器の第2の領域を含む。
【0121】
図1および図2を参照すると容易に明らかなように、第1の接着層は、第2のシール13および第1のシール7の一部を生じさせる。第2の接着層で、第1のシール7が完成する。接着剤の層は、図1および2に示す構成を提供するために、異なる方法で塗布され得る。
【0122】
第2のPETシートは、その主表面上にITOなどの導電性の光学的に透明なコーティングを有し得る。
【0123】
第1および第2のPETシートのいずれかまたは両方が、その主表面上に導電性の光学的に透明なコーティングを有する場合、コーティングは、第1および/または第2のキャビティ9、15に面しないことが好ましい。
【0124】
図3および図4を参照すると、本発明の第1の態様による別のフィルム21が示されている。
【0125】
フィルム21は、上記のフィルム1と同様であり、第1のシール27によって第2のPET基板25に接合された第1のPET基板23を備える。第1のシール27は、第1の基板23および第2の基板25の周囲に延在して、第1のキャビティ29を画定する。第1のキャビティ29の内部には液体31がある。また、第1のキャビティ29内には、第1の基板23および第2の基板25の間隔を維持するための球状ガラススペーサ(図示せず)が配置される。
【0126】
この例では、第1および第2の基板の厚さは、各々約100μmであり、約25μmの間隔で配置される。
【0127】
第1の基板23と第2の基板25との間には、スポンジ33の形態の液体吸収体が配置される。
【0128】
わかりやすくするために、図3の一部を拡大して示す。
【0129】
スポンジ33は、シール27の一部に隣接する。スポンジ33に隣接するシール27の部分には、開口37がある。開口37は、液体31が第1のキャビティ29からスポンジ33へ(矢印39の方向に)流れるための経路を提供する。
【0130】
第1および/または第2のPET基板23、25が収縮した場合、第1のキャビティ29の容積は減少する。第1のキャビティ29内の圧力は、液体31が開口37を通って流れ得、スポンジ33に吸収されるように増加される。
【0131】
この例では、スポンジは、第1および/または第2の基板23、25の収縮による第1のキャビティ29の容積の減少によってその中に流入する可能性のある液体を収容する液体トラップとして機能する。この例では、スポンジは第1のキャビティ29の1つの縁に沿って示されているが、スポンジは第1のキャビティ29の2つ以上の縁に沿い得る。いくつかの実施形態では、スポンジは、1つ以上の側面に開口が設けられて第1のキャビティ29を取り囲み、スポンジへの液体の流れを改善する。
【0132】
図示の実施形態では、開口37は、第1のキャビティ29内に所定の圧力が生成されるまで、表面張力によって液体31がスポンジ33に流入するのを防止できるような大きさに設定される。
【0133】
スポンジ33は、図1および図2を参照して上記したタイプの第2のキャビティ内に収容され得る。
【0134】
図5および図6を参照して、液晶材料などの液体用のセル41を準備する方法を説明する。セル51は、第2の基板55に接合された第1の基板53を備える。この例では、第1の基板53および第2の基板55は、各々約100μmの厚さを有するPETのシートである。
【0135】
セル51を液体用に準備するには、第1の基板51を水平に配置する。この例では、次に、複数のスペーサ(3つだけが示され、57a、57b、57cとラベル付けされている)が、第1の基板の上向きの主表面上に置かれる。スペーサ57a、57b、57cは、セル51の間隔を決定する直径を有するガラス球である。
【0136】
次に、接着層59が、第1の基板53の上向きの主表面上に容積される。接着層59は、複数のスペーサを取り囲み、第1のキャビティ61の壁を画定するために使用される。
【0137】
次に、第2の基板55を第1の基板53上に配置して、接着剤層59およびスペーサ57a、57b、57cに接触させる。
【0138】
この例では、第2の基板55は、その対向する主表面間に延在する穴60を有する。
【0139】
次いで、接着層59を硬化させて、第1の容積を有する第1のキャビティ61を有するセル51を形成することを可能にする。硬化した接着層59は、第1の基板53を第2の基板55に接合し、キャビティと外部環境との間のシールとして機能する。
【0140】
次いで、セル51を約150℃の温度で約1時間加熱して、第1の基板53および第2の基板55を収縮させる。基板の収縮によって、キャビティ61の容積が第1の容積から第2の容積に減少する。他の時間および温度は実験によって決定され得る。
【0141】
次に、セル51が準備され、キャビティ61内に液体を収容するために使用され得る。液体は、穴60を介してキャビティ61に導入され得る。その後、穴60は封止され得る。
【0142】
第1の基板53および第2の基板55の任意の収縮がある場合、本発明の第2の態様に従って製造されたセル51は、すでに収縮しており、その結果、キャビティ内に液体を有するセル51をその後のセル51の温度を上昇させる工程で使用するとき、収縮はほとんど起こらない。
【0143】
後続のプロセスは積層プロセスであり、セル51のいずれかの側にPVBのシートを使用して、セル51を2つのガラスシートの間に積層し得る。
【0144】
また、図5および図6には、第2のキャビティ65を画定するために使用される第2の接着層63の追加の提供も示されている。このようなセルは、本発明の第1の態様に従ってフィルムを製造するのに有用である。第1のキャビティと流体連通する第2のキャビティを有する実施形態では、この方法は、セルを事前収縮させるための加熱ステップを含まなくてもよい。
【0145】
上記の方法の代替では、穴60のない第2の基板が提供される。このような実施形態では、キャビティ内に収容される液体は、第2の基板が第1の基板上に配置される前に導入される。導入される液体の量は、生成されるキャビティ61の容積よりも少ない。しかし、第1および第2の基板53、55の収縮によってキャビティ61の容積が減少すると、液体の量は第2の容積を有するキャビティを完全に満たすのに十分である。
【0146】
このような実施形態では、キャビティ61の容積を減少させるための加熱ステップは、別の処理ステップ、例えば積層ステップの一部であり得る。
【0147】
図7は、本発明の第3の態様による積層グレージング80を示す。
【0148】
積層グレージング80は、第1のガラスシート82と第2のガラスシート84とを備える。第1のガラスシート82と第2のガラスシート84との間には、第1のPVBシート86、第2のPVBシート88、およびフィルム91がある。フィルム91は、第1のPVBシート86と第2のPVBシート88との間にある。第1のPVBシート86は、フィルム91と第1のガラスシート82との間にある。第2のPVBシート88は、フィルム91と第2のガラスシート84との間にある。PVBのシート86、88の厚さは、約0.8mmである。すなわち、厚さは約0.7mmから約0.8mmの間である。
【0149】
フィルム91は、第2のPET基板95から離隔した第1のPET基板93を備える。第1のPET基板93は、シール97によって第2のPET基板95に接合される。シール97は、第1および第2のPET基板93、95の内側に面する主表面の周囲に延在する。適切なシール97は、硬化したエポキシである。
【0150】
第1のキャビティは、第1および第2のPET基板93、95およびシール97の内面に面する主表面によって画定される。液体99が、上記の第1のキャビティ内に含まれる。
【0151】
第1のPVBシート86は、その中に空隙87を有する。空隙87は、第1のPVBシート86の一部を打ち抜くことによって作製され得る。空隙87の境界を画定するためにバリア材料(図示せず)を使用し得る。適切なバリア材料は、空隙87に面するPVBの縁を覆うために使用され得、積層中に空隙へのPVBの流れを防止するために使用され得る、PETテープである。
【0152】
積層グレージング80は、適切な高圧および適切な高温、例えば80℃~150℃の温度を使用する従来の積層プロセスを使用して作製される。
【0153】
積層中の高温によって、フィルム91の第1の基板93および第2の基板95が収縮し得る。フィルム91のキャビティ内に生じる圧力の増加に適応するために、フィルム91は、第1のPVBのシート86内の空隙87内に膨張し得る。
【0154】
図7に示す例の代替例では、フィルム91の第1の基板93は、空隙87の近傍に脆弱ゾーン、例えば第1の基板93の局所的な厚さの変化を有する。フィルム91のキャビティ内の圧力が増加すると、脆弱ゾーンによって第1の基板93が破裂し、それによって一部の液体99が空隙87に流入することが可能になる。
【0155】
図7に示す例の別の代替例では、フィルム91が空隙内に膨張するのを防ぐために、エラストマー材料が空隙87内に配置される。空隙87内へのフィルムの膨張は、フィルム91の第1のキャビティ内の所定の圧力を超えた場合にのみ可能となる。
【0156】
前述の例では、液体は、液晶含有材料であり得る。このような実施形態では、フィルムおよび/またはセルの第1および第2の基板は、当技術分野で既知である適切な電極(すなわち、ITOコーティング層または好ましくは光学的に透明である他の適切な導電性コーティング)、偏光層および配向層をも含み得る。
【0157】
本発明は、加熱する際に収縮するフィルムに特に有用である。加熱は、フィルムを積層グレージングなどの別の製品に組み込むプロセスの一部であり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】