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特表2023-550952リチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池
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  • 特表-リチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池 図1
  • 特表-リチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20231129BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20231129BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20231129BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231129BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530714
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 KR2022007011
(87)【国際公開番号】W WO2022245090
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0064492
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジェギル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウンホ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キヒュン・キム
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ07
5H029AK05
5H029AK15
5H029AK16
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AL18
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
(57)【要約】
本発明は、リチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池に関するものであって、リチウム塩、非水系溶媒及び2つの酸素原子の間に位置した炭素位置に水素または電子供与性基が置換したベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物を含むリチウム二次電池用電解液を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩、非水系溶媒及び添加剤を含むリチウム二次電池用電解液であって、
前記添加剤がベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物を含み、
前記ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物が2つの酸素原子の間に位置した炭素位置に水素または電気供与性基(electron donating group)を有することを特徴とするリチウム二次電池用電解液。
【請求項2】
前記ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物が下記化学式1で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液:
【化1】
前記化学式1において、
前記Rは置換または非置換した炭素数1~6のアルキル基、置換または非置換した炭素数6~10のアリール基または置換または非置換した炭素数5~10のヘテロアリール基であり、
前記複数のRaは互いに同一であるか相違であり、それぞれ独立に水素または電子供与性基であり、
前記nは1ないし3の整数である。
【請求項3】
前記複数のRaが互いに同一であるか相違であり、それぞれ独立にハメットの置換基定数(Hammet substivent constant)が0以下の置換基であることを特徴とする、請求項2に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項4】
前記複数のRaが互いに同一であるか相違であり、それぞれ独立に水素、アミノ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~20のジアルキルアミノ基、炭素数6~10のアリールアミノ基、炭素数12~20のジアリールアミノ基、ヒドロキシル基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアミド基、炭素数1~10のエステル基、アリル基、炭素数1~10のアルキルアリル基及び炭素数2~20のジアルキルアリル基からなる群から選択されたことを特徴とする、請求項2に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項5】
前記化学式1で表される化合物が下記化学式1-1または化学式1-2で表される化合物であることを特徴とする、請求項2に記載のリチウム二次電池用電解液:
【化2】
【請求項6】
前記リチウム塩がLiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiB(Ph)、LiCBO、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiSOCH、LiSOCF、LiSCN、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(SOF)及び低級脂肪族カルボン酸リチウムからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項7】
前記非水系溶媒が線状エーテル及び環状エーテルを含むことを特徴とする、請求項1記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項8】
前記線状エーテルがジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、エチルメチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルtertブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチレンエーテル、ブチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールtertブチルエチルエーテル、及びエチレングリコールエチルメチルエーテルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項9】
前記環状エーテルがジオキソラン、メチルジオキソラン、ジメチルジオキソラン、ビニルジオキソラン、メトキシジオキソラン、エチルメチルジオキソラン、オキサン、ジオキサン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジメチルテトラヒドロフラン、ジメトキシテトラヒドロフラン、エトキシテトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、フラン及び2-メチルフランからなる群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項10】
前記ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物の含量が電解液の全重量に対して0.1重量%ないし10重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項11】
硝酸系化合物をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項12】
前記硝酸系化合物が硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸セシウム、硝酸バリウム、硝酸アンモニウム、メチルニトラート、ジアルキルイミダゾリウムニトラート、グアニジンニトラート、イミダゾリウムニトラート及びピリジニウムニトラートからなる群から選択された1種であることを特徴とする、請求項11に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の電解液;
正極;
負極;及び
分離膜を含むことを特徴とする、リチウム二次電池。
【請求項14】
前記リチウム二次電池はリチウム-硫黄二次電池である、請求項13に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年5月20日付韓国特許出願第10-2021-0064492号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として組み込む。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用電解液及びそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
二次電池の応用領域が電気自動車(EV)やエネルギー貯蔵装置(ESS)などに拡大されるにつれ、相対的に低い重さ対比エネルギー貯蔵密度(~250Wh/kg)を有するリチウム-イオン二次電池はこのような製品に対する適用の限界がある。これと違って、リチウム-硫黄二次電池は理論上、高い重さ対比エネルギー貯蔵密度(~2,600Wh/kg)が具現できるため、次世代二次電池技術として脚光を浴びている。
【0004】
リチウム-硫黄二次電池は、S-S結合(Sulfur-Sulfur Bond)を有する硫黄系の物質を正極活物質として用い、リチウム金属を負極活物質として用いた電池システムを意味する。前記正極活物質の主材料である硫黄は、全世界的に資源が豊富で、毒性がなく、低い原子当たりの重さを有している長所がある。
【0005】
リチウム-硫黄二次電池は、放電時に負極活物質であるリチウムが電子を取り出してイオン化しながら酸化され、正極活物質である硫黄系物質が電子を受け入れて還元する。ここで、リチウムの酸化反応は、リチウム金属が電子を取り出してリチウム陽イオン形態に変換する過程である。また、硫黄の還元反応はS-S結合が2つの電子を受け入れて硫黄陰イオン形態に変換する過程である。リチウムの酸化反応によって生成されたリチウム陽イオンは電解質を通じて正極に伝達され、硫黄の還元反応によって生成された硫黄陰イオンと結合して塩を形成する。具体的に、放電前の硫黄は環状のS構造を有しているが、これは還元反応によってリチウムポリスルフィド(Lithium polysulfide、LiS)へ変換される。リチウムポリスルフィドが完全に還元される場合にはリチウムスルフィド(LiS)が生成されることとなる。
【0006】
正極活物質である硫黄は低い電気伝導度の特性により、固相形態では電子及びリチウムイオンとの反応性を確保し難い。既存のリチウム-硫黄二次電池はこのような硫黄の反応性を改善するためにLi形態の中間ポリスルフィド(intermediate polysulfide)を生成して液相反応を誘導し、反応性を改善する。この場合、電解液の溶媒としてリチウムポリスルフィドに対して溶解性の高いジオキソラン(dioxolane)、ジメトキシエタン(dimethoxyethane)などのエーテル系溶媒が用いられる。
【0007】
しかし、このようなエーテル系溶媒を用いる場合、様々な原因によってリチウム-硫黄二次電池の寿命特性が低下する問題点が存在する。例えば、正極からのリチウムポリスルフィドの溶出、リチウム負極上にデンドライトの成長によるショート(short)発生、電解液の分解による副産物の堆積などにより、リチウム-硫黄二次電池の寿命特性が低下することがある。
【0008】
特に、このようなエーテル系溶媒を用いる場合、リチウムポリスルフィドを多量に溶解させることができて反応性が高いが、電解液内に溶けるリチウムポリスルフィドの特性により、電解液の含量に応じて硫黄の反応性及び寿命特性が影響を受けることになる。
【0009】
近年、航空機や次世代電気自動車などに要求される500Wh/kg以上の高エネルギー密度のリチウム-硫黄二次電池を開発するために、電極中の硫黄のローディング量が大きく、電解液の含量が最小化されることが求められている。
【0010】
しかし、前記エーテル系溶媒の特性上、電解液の含量が低くなるほど充・放電中に急速に粘度が増加し、それにより過電圧が発生して退化される問題がある。
【0011】
そこで、電解液の分解を防止し、優れた寿命特性を確保するために、添加剤をさらに添加する研究が持続的に行われている。にもかかわらず、電解液の分解を防止し、寿命特性を向上することができる、電解液の成分及び組成については明確に明かされていない。特に、電解液の含量が極めて少ないパウチセルなどの場合に適した電解液の成分及び組成については具体的に知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10-2017-0027512(2007年03月09日)、「リチウム-硫黄電気化学電池用電解質」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明においてはリチウム二次電池の電解液分解を防止し、寿命特性を向上させるために、リチウム塩及び非水系溶媒を含むリチウム二次電池用電解液においてベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物を添加剤として含むことにより、前記問題を解決してリチウム二次電池の性能が向上できることを確認し、本発明を完成した。
【0014】
よって、本発明の目的は電解液の分解を防止し、負極界面に安定した被膜を形成することにより、電解質及び負極の退化を防止して寿命特性を向上することができるリチウム二次電池用電解液を提供することにある。また、本発明の他の目的は、前記電解液を備え、電池の性能が向上したリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、リチウム塩、非水系溶媒を含むリチウム二次電池用電解液として、ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物を添加剤としてさらに含むリチウム二次電池用電解液を提供する。特に、前記ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物が前記化合物の二つの酸素原子の間に位置した炭素位置に水素または電子供与性基(electron donating group)を有することを特徴とするリチウム二次電池用電解液を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物が下記化学式1で表される化合物である、リチウム二次電池用電解液を提供する。
【0017】
【化1】
【0018】
前記化学式1において、
前記Rは置換または非置換した炭素数1~6のアルキル基、置換または非置換した炭素数6~10のアリール基または置換または非置換した炭素数5~10のヘテロアリール基であり、
前記複数のRaは互いに同一であるか相違であり、それぞれ独立に水素または電子供与性基であり、
前記nは1ないし3の整数である。
【0019】
また、本発明は、前記化学式1における前記複数のRaが互いに同一であるか相違であり、それぞれ独立にハメットの置換基定数(Hammet substivent constant)が0以下の置換基である、リチウム二次電池用電解液を提供する。
【0020】
また、本発明は、前記化学式1における前記複数のRaが互いに同一であるか相違であり、それぞれ独立に水素、アミノ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~20のジアルキルアミノ基、炭素数6~10のアリールアミノ基、炭素数12~20のジアリールアミノ基、ヒドロキシル基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアミド基、炭素数1~10のエステル基、アリル基、炭素数1~10のアルキルアリル基及び炭素数2~20のジアルキルアリル基からなる群から選択されたものである、リチウム二次電池用電解液を提供する。
【0021】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物が、下記化学式1-1または化学式1-2で表される化合物である、リチウム二次電池用電解液を提供する。
【0022】
【化2】
【0023】
また、本発明は、前記リチウム塩がLiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiB(Ph)、LiCBO、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiSOCH、LiSOCF、LiSCN、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(SOF)及び低級脂肪族カルボン酸リチウムからなる群から選択される1種以上である、リチウム二次電池用電解液を提供する。
【0024】
また、本発明は、前記非水系溶媒が線状エーテル及び環状エーテルを含む、リチウム-硫黄二次電池用電解液を提供する。
【0025】
また、本発明は、前記線状エーテルがジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、エチルメチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルtertブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチレンエーテル、ブチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールtertブチルエチルエーテル、及びエチレングリコールエチルメチルエーテルからなる群から選択されるものである、リチウム二次電池用電解液を提供する。
【0026】
また、本発明は、前記環状エーテルがジオキソラン、メチルジオキソラン、ジメチルジオキソラン、ビニルジオキソラン、メトキシジオキソラン、エチルメチルジオキソラン、オキサン、ジオキサン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジメチルテトラヒドロフラン、ジメトキシテトラヒドロフラン、エトキシテトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、フラン及び2-メチルフランからなる群から選択されるものである、リチウム二次電池用電解液を提供する。
【0027】
また、本発明は、前記ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物の含量が電解液全重量に対して0.1重量%ないし10重量%である、リチウム二次電池用電解液を提供する。
【0028】
また、本発明は、前記リチウム二次電池用電解液に硝酸系化合物をさらに含む、リチウム二次電池用電解液を提供する。
【0029】
また、本発明は、前記硝酸系化合物が硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸セシウム、硝酸バリウム、硝酸アンモニウム、メチルニトラート、ジアルキルイミダゾリウムニトラート、グアニジンニトラート、イミダゾリウムニトラート及びピリジニウムニトラートからなる群から選択された1種以上である、リチウム二次電池用電解液を提供する。
【0030】
また、本発明は、前記電解液、正極、負極及び分離膜を含むリチウム二次電池を提供する。
【0031】
また、前記リチウム二次電池はリチウム-硫黄二次電池であるものを提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によるリチウム二次電池用電解液は、リチウム塩及び非水系溶媒を含み、添加剤としてベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物をさらに含むことで、リチウム二次電池の駆動中に電解液の分解を防止し、負極界面に安定的な皮膜を形成して電解質及び負極の退化を防止することで寿命特性を向上させる効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施例1ないし実施例3及び比較例1ないし比較例2によるリチウム-硫黄二次電池の寿命特性を示すグラフである。
図2】本発明の実施例1及び比較例3によるリチウム-硫黄二次電池の寿命特性を示すグラフである。
図3】本発明の実施例1,4及び比較例1,4によるリチウム-硫黄二次電池の寿命特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明により提供される具体例は、下記の説明によって全て達成できる。下記の説明は本発明の好ましい具体例を記述するものとして理解されるべきであり、本発明が必ずしもこれに限定されるものではないことを理解すべきである。
【0035】
本発明は、リチウム塩及び非水系溶媒を含むリチウム二次電池用電解液であって、添加剤としてベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物をさらに含むリチウム二次電池用電解液を提供する。特に、前記ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物が2つの酸素原子の間に位置した炭素位置に水素または電子供与性基(electron donating group)を有するものである、リチウム二次電池用電解液を提供する。
【0036】
本発明による前記ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物は、2つの酸素原子の間に位置した電子密度の低い炭素位置に電子供与性基が置換されることにより、電子密度が増加してポリスルフィドとの反応性が低くなることで、正極活物質の損失を抑制して電池の容量が急激に減少する現象を防止することができる。これにより、リチウム二次電池の寿命特性を向上させることができる。
【0037】
これに係り、従来のリチウム-硫黄二次電池は、電解質に溶解しているリチウムポリスルフィドと電解質成分とが化学反応を引き起こすことで正極活物質の損失を発生させ、電池の容量が急激に減少する問題点が存在する。特に、前記ポリスルフィドは求核性を示すため、電子密度の低い親電子性物質と容易に反応するが、前記ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物の2つの酸素原子の間に位置する炭素位置は、電子を吸引する2つの酸素原子により電子密度が低く、ポリスルフィドとの反応性が高い。これに対して、本発明による前記2つの酸素原子の間に位置する炭素原子に水素または電子供与性基が置換されたベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物は、前記電子供与性基により電子密度が高くなり、ポリスルフィドとの反応性が低下する。これにより、正極活物質の損失を防止することができる。一方、ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物の前記2つの酸素原子の間に位置する炭素原子に電子吸引性基が置換された場合には、より電子密度が低くなってポリスルフィドとの反応性が高くなることで、正極活物質の損失が加重されるという問題点が存在する。
【0038】
よって、前記ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物は、前記ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物の前記2つの酸素原子の間に位置する炭素原子には水素または電子供与性基が置換されていることがより好ましい。
【0039】
本発明による前記ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物は、下記化学式1で表される化合物であることができる。
【0040】
【化3】
【0041】
前記化学式1において、
前記Rは置換または非置換した炭素数1~6のアルキル基、置換または非置換した炭素数6~10のアリール基または置換または非置換した炭素数5~10のヘテロアリール基であり、
前記複数のRaは互いに同一であるか相違であり、それぞれ独立に水素または電子供与性基(Elctron Donating Group)であり、
前記nは1ないし3の整数である。
【0042】
また、本発明による前記化学式1で表される化合物のうち、前記複数のRaは互いに同一であるか相違であり、それぞれ独立にハメットの置換基定数(Hammet substivent constant)が0以下の置換基であることができる。具体的な例としては、水素、アミノ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~20のジアルキルアミノ基、炭素数6~10のアリールアミノ基、炭素数12~20のジアリールアミノ基、ヒドロキシル基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアミド基、炭素数1~10のエステル基、アリル基、炭素数1~10のアルキルアリル基及び炭素数2~20のジアルキルアリル基からなる群から選択されたものであることができ、好ましくは、水素、アミノ基、炭素数1~6のアルキルアミノ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、炭素数6~10のアリールアミノ基、炭素数12~20のジアリールアミノ基、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアミド基、炭素数1~6のエステル基、アリル基、炭素数1~6のアルキルアリル基及び炭素数2~12のジアルキルアリル基からなる群から選択されたものであることができ、より好ましくは、水素または炭素数1~6のアルキル基であることができる。
【0043】
また、本発明による前記化学式1で表される化合物は下記化学式1-1または化学式1-2で表される化合物であることができる。
【0044】
【化4】
【0045】
本発明による前記ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物の含量は、電解液全重量に対して0.1重量%ないし10重量%であってもよく、好ましくは0.1重量%ないし5重量%であってもよく、より好ましくは0.1重量%ないし3重量%であってもよい。前記ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物の含量が前記範囲未満の場合には、電極表面上に皮膜(Solid Electrolyte Interphase,SEI)形成効果がかすかで、寿命特性の改善効果が不十分であり、前記ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物の含量が前記範囲を超える場合には、余剰添加剤による抵抗が増加する問題点が発生できる。よって、前記ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物の含量は前記範囲を満たすことが好ましい。
【0046】
一方、本発明のリチウム二次電池用電解液はリチウム塩及び非水系溶媒を含むことができ、前記リチウム塩は非水系有機溶媒に溶解されやすい物質として、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiB(Ph)、LiCBO、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiSOCH、LiSOCF、LiSCN、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(SOF)及び低級脂肪族カルボン酸リチウムからなる群から選択されたものであることができ、好ましくはLiN(CFSOであることができる。
【0047】
前記リチウム塩の濃度は、電解質混合物の正確な組成、塩の溶解度、溶解した塩の伝導性、電池の充電及び放電条件、作業温度及びリチウムバッテリー分野において公知の他の要因のような様々な要因によって、0.2~2M、具体的には0.5~1.8M、より具体的には0.6~1.7Mであることができる。前記リチウム塩の濃度が前記範囲未満に用いると、電解質の伝導度が低くなって電解質の性能が低下することがあり、前記リチウム塩の濃度が前記範囲を超えて用いると、電解質の粘度が増加してリチウムイオン(Li)の移動性が減少することがある。
【0048】
本発明による前記非水系溶媒はエーテル系溶媒及び非溶媒を含むことができ、前記エーテル系溶媒は線状エーテル及び環状エーテルを含むことができる。
【0049】
前記線状エーテルがジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、エチルメチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチル‐t‐ブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチレンエーテル、ブチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコール‐t‐ブチルエチルエーテル、及びエチレングリコールエチルメチルエーテルからなる群から選択でき、好ましくはジメトキシエタンであることができる。
【0050】
前記環状エーテルがジオキソラン、メチルジオキソラン、ジメチルジオキソラン、ビニルジオキソラン、メトキシジオキソラン、エチルメチルジオキソラン、オキサン、ジオキサン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジメチルテトラヒドロフラン、ジメトキシテトラヒドロフラン、エトキシテトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、フラン及び2-メチルフランからなる群から選択でき、好ましくは2-メチルフランであることができる。
【0051】
前記線状エーテルと環状エーテルの体積比は9:1ないし1:9であることができ、好ましくは8:2ないし2:8であることができ、さらに好ましくは7:3ないし5:5であることができる。
【0052】
前記線状エーテルと環状エーテルの体積比が前記範囲から外れる場合、電池の寿命特性の改善効果が不十分であって所望の効果が得られないので、前記線状エーテルと環状エーテルの体積比は前記範囲を満たした方が好ましい。
【0053】
本発明のリチウム二次電池用電解液は添加剤として硝酸または亜硝酸系化合物をさらに含むことができる。前記硝酸または亜硝酸系化合物はリチウム電極に安定的な皮膜を形成し、充・放電効率を向上させる効果を示す。このような硝酸または亜硝酸系化合物としては特に限定はしないが、硝酸リチウム(LiNO)、硝酸カリウム(KNO)、硝酸セシウム(CsNO)、硝酸バリウム(Ba(NO)、硝酸アンモニウム(NHNO)、亜硝酸リチウム(LiNO)、亜硝酸カリウム(KNO)、亜硝酸セシウム(CsNO)、亜硝酸アンモニウム(NHNO)などの無機系硝酸または亜硝酸化合物;メチルニトラート、ジアルキルイミダゾリウムニトラート、グアニジンニトラート、イミダゾリウムニトラート、ピリジニウムニトラート、エチルニトラート、プロピルニトラート、ブチルニトラート、ペンチルニトラート、オクチルニトラートなどの有機系硝酸または亜硝酸化合物;ニトロメタン、ニトロプロパン、ニトロブタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロピリジン、ジニトロピリジン、ニトロトルエン、ジニトロトルエンなどの有機ニトロ化合物及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種であることができ、好ましくは硝酸リチウム(LiNO)であることができる。
【0054】
また、本発明のリチウム二次電池用電解液は、充・放電特性、難燃性などの改善を目的としてその他の添加剤をさらに含むことができる。前記添加剤の例としては、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N、N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウム、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、プロペンスルトン(PRS)、ビニレンカーボネート(VC)などが挙げられる。
【0055】
本発明のリチウム二次電池用電解液の製造方法は、本発明において特に限定せず、当業界において公知の通常的な方法により製造することができる。
【0056】
また、本発明は、リチウム二次電池用電解液を含むリチウム二次電池を提供する。
【0057】
前記リチウム二次電池は、正極、負極、前記正極と負極との間に介在する分離膜及び電解液を含むことができ、前記電解液として本発明によるリチウム二次電池用電解液を含むことができる。
【0058】
一具現例において、前記リチウム二次電池はリチウム-硫黄二次電池であることができる。
【0059】
前記正極は、正極集電体と前記正極集電体の一面または両面に塗布された正極活物質を含むことができる。
【0060】
前記正極集電体は正極活物質を支持し、当該電池に化学的変化を誘発せず高い導電性を有するものであれば特に制限されるものではない。例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタニウム、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを用いることができる。
【0061】
前記正極集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質との結合力を強化することができ、フィルム、シート、箔、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態を用いることができる。
【0062】
前記正極活物質は、正極活物質と選択的に導電材とバインダーを含むことができる。
【0063】
前記正極活物質は硫黄元素(Elemental sulfur,S8);LiSn(n≧1)、有機硫黄化合物または炭素-硫黄ポリマー((C)n:x=2.5~50、n≧2)からなる群から選択された1種であることができる。好ましくは無機硫黄(S)を用いることができる。
【0064】
前記正極は前記正極活物質の他に遷移金属元素、2族元素、3族元素、これらの元素の硫黄化合物、及びこれらの元素と硫黄の合金の中から選択される1つ以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0065】
前記遷移金属元素としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、AuまたはHgなどが含まれてもよく、前記族元素としてはAl、Ga、In、Tiなどが含まれてもよく、前記族元素としてはGe、Sn、Pbなどが含まれ得る。
【0066】
前記導電材は電気伝導性を向上させるためのものであって、リチウム二次電池において化学変化を引き起こさない電子伝導性物質であれば特に制限されず、一般的にカーボンブラック(carbon black)、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属粉末、導電性金属酸化物、有機導電材などを用いることができ、現在導電材として市販されている商品としては、アセチレンブラック系(シェブロンケミカルカンパニー(Chevron Chemical Company)またはガルフオイルカンパニー(Gulf Oil Company)製品など)、ケッチェンブラック(Ketjen Black) EC系(アルマックカンパニー(Armak Company)製品)、ブルカン(Vulcan)XC-72(キャボットカンパニー(Cabot Company)製品)及びスーパーP(エムエムエム(MMM)社製品)などがある。例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などが挙げられる。
【0067】
また、前記正極活物質は、正極活物質を正極集電体に維持させ、活物質間を繋ぐ機能を有するバインダーをさらに含むことができる。前記バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidenefluoride,PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、スチレン-ブタジエンゴム(styrene butadiene rubber,SBR)、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose,CMC)などの様々な種類のバインダーを用いることができる。
【0068】
前記正極としては、硫黄のローディング量が高い正極を用いることができる。前記硫黄のローディング量は3.0mAh/cm以上であることができ、好ましくは4.0mAh/cm以上であることができ、より好ましくは5.0mAh/cm以上であることができる。
【0069】
前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質を含むことができる。または、前記負極はリチウム金属板であってもよい。
【0070】
前記負極集電体は負極活物質の支持のためのものであり、優れた導電性を有してリチウム二次電池の電圧領域において電気化学的に安定なものであれば特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタニウム、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを用いることができる。
【0071】
前記負極集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して負極活物質との結合力を強化することができ、フィルム、シート、箔、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態を用いることができる。
【0072】
前記負極活物質はリチウム(Li)を可逆的に吸蔵(Intercalation)または放出(Deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を含むことができる。前記リチウムイオン(Li)を可逆的に吸蔵または放出できる物質は、例えば結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であることができる。前記リチウムイオン(Li)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成できる物質は、例えば、酸化錫、窒化チタンまたはシリコンであることができる。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム( Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及び錫(Sn)からなる群から選択される金属の合金であることができる。好ましくは、前記負極活物質はリチウム金属であることができ、具体的に、リチウム金属薄膜またはリチウム金属粉末の形態であることができる。
【0073】
前記負極活物質の形成方法は特に限定されず、当業界において通常用いられる層または膜の形成方法を用いることができる。例えば、圧着、コーティング、蒸着などの方法を用いることができる。また、集電体にリチウム薄膜がない状態で電池を組み立てた後、初期充電により金属板上に金属リチウム薄膜が形成される場合も本発明の負極に含まれる。
【0074】
前記分離膜は、本発明のリチウム二次電池において正極と負極を物理的に分離するためのものであって、通常リチウム二次電池において分離膜として用いられるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動について低抵抗でありながら電解液の含湿能力に優れるものが好ましい。
【0075】
前記分離膜は多孔性基材からなることができるが、前記多孔性基材は通常的に電気化学素子に用いられる多孔性基材であれば全て使用が可能であり、例えばポリオレフィン系多孔性膜または不織布を用いることができるが、これに特に限定されるものではない。
【0076】
前記ポリオレフィン系多孔質膜の例としては、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独で、またはこれらを混合した高分子で形成した膜(membrane)が挙げられる。
【0077】
前記不織布としては、ポリオレフィン系不織布の他に、例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)及びポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate)などをそれぞれ単独で、またはこれらを混合した高分子で形成した不織布が挙げられる。前記不織布の構造は長繊維からなるスポンボンド不織布またはメルトブローン不織布であることができる。
【0078】
前記多孔性基材の厚さは特に限定されないが、1ないし100μm、好ましくは5ないし50μmであることができる。
【0079】
前記多孔性基材に存在する気孔のサイズ及び気孔度また特に限定されないが、それぞれ0.001ないし50μm及び10ないし95%であることができる。
【0080】
前記電解液はリチウムイオンを含み、これを媒介に正極及び負極において電気化学的酸化または還元反応を引き起こすためのものであり、前述のところにしたがう。
【0081】
前記電解液の仕込みは、最終製品の製造工程及び要求物性に応じて、電気化学素子の製造工程中の適切な段階で行われる。すなわち、電気化学素子の組み立て前または電気化学素子の組み立ての最終段階などで適用することができる。
【0082】
本発明によるリチウム二次電池は、一般的な工程である巻取り(winding)以外にも、分離膜と電極の積層(lamination、stack)及び折り畳み(folding)工程が可能である。
【0083】
前記リチウム二次電池の形状は特に限定されず、円筒型、積層型、コイン型など様々な形状とすることができる。
【0084】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであるだけで、本発明がこれに限定されるものではない。
【0085】
実施例
リチウム二次電池用電解液の製造
製造例1
2-メチルフラン(2-methyl furan):1,2-ジメトキシエタン(DME)を3:7の体積比で混合した非水系溶媒に、リチウムビス(フルオロメチルスルホニル)イミド(LiFSI)の濃度が0.75M(mol/L)となるように溶解し、硝酸リチウム(LiNO)を電解液全重量に対して3.0重量%となるように添加した後、下記化学式1-1で表されるベンゾ-ジオキソール系化合物を電解液の全重量に対して1重量%となるように添加してリチウム二次電池用電解液を製造した。
【0086】
【化5】
【0087】
製造例2
前記化学式1-1で表されるベンゾ-ジオキソール系化合物を0.1重量%となるように添加することを除いては、前記製造例1と同様の方法でリチウム二次電池用電解液を製造した。
【0088】
製造例3
前記化学式1-1で表されるベンゾ-ジオキソール系化合物を3.0重量%となるように添加することを除いては、前記製造例1と同様の方法でリチウム二次電池用電解液を製造した。
【0089】
製造例4
前記化学式1-1で表されるベンゾ-ジオキソール系化合物を下記化学式1-2で表されるベンゾ-ジオキサン系化合物に置換したことを除いては、前記製造例1と同様の方法でリチウム二次電池用電解液を製造した。
【0090】
【化6】
【0091】
比較製造例1
前記化学式1-1で表されるベンゾ-ジオキソール系化合物を添加していないことを除いては、前記製造例1と同様の方法でリチウム二次電池用電解液を製造した。
【0092】
比較製造例2
前記化学式1-1で表されるベンゾ-ジオキソール系化合物を10重量%となるように添加することを除いては、前記製造例1と同様の方法でリチウム二次電池用電解液を製造した。
【0093】
比較製造例3
2-メチルフラン(2-methyl furan):1,2-ジメトキシエタン(DME)を3:7の体積比で混合した非水系溶媒をエチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)を1:1の体積比で混合した非水系溶媒に置換したことを除いては、前記製造例1と同様の方法でリチウム二次電池用電解液を製造した。
【0094】
比較製造例4
前記化学式1-1で表されるベンゾ-ジオキソール系化合物を下記比較化合物A(2,2-フルオロ-1,3-ベンゾジオキソール)に置換したことを除いては、前記製造例1と同様の方法でリチウム二次電池用電解液を製造した。
【0095】
【化7】
【0096】
前記製造例1ないし4及び比較例1ないし4のリチウム二次電池用電解液のうち非水系溶媒とベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物の含量は下記表1に示したとおりである。
【0097】
【表1】
【0098】
実験例の寿命特性評価
硫黄をアセトニトリル中で導電材及びバインダーと共にボールミルを用いて混合して正極活物質スラリーを製造した。この際、導電材としてはカーボンブラックを、バインダーとしてはSBRとCMCの混合形態のバインダーをそれぞれ用い、混合割合は重量比で硫黄:導電材:バインダーが90:5:5となるようにした。前記正極活物質スラリーをアルミニウム集電体にローディング量が5.0mAh/cmとなるように塗布した後、乾燥して空隙率が68%である正極を製造した。また、厚さ45μmのリチウム金属を負極とした。
【0099】
前述の方法で製造した正極と負極とを対面するように位置させた後、厚さ20μm、気孔度45%のポリエチレン分離膜を前記正極と負極との間に介在した。
【0100】
その後、ケース内部へ前記製造例1ないし4及び比較製造例1ないし4によるリチウム二次電池用電解液を仕込んで、実施例1ないし4及び比較例1ないし4のコインセルを製造した。
【0101】
前記方法で製造されたコインセルを25℃において0.1Cの電流密度で放電と充電を2回繰り返した後、0.3C/0.5Cの電流密度で200サイクル進行しながら、容量維持率が80%である時点の寿命サイクルを測定することで、電池の寿命特性を確認した。この際、放電は加減電圧1.8V(vs. Li/Li+)まで進行し、充電は上限電圧2.5V(vs. Li/Li+)で進行した。これから得られた結果を表1及び図1に示すとおりである。
【0102】
【表2】
【0103】
前記表2に示すとおり、実施例1ないし4によるリチウム二次電池用電解液を適用したリチウム-硫黄二次電池の場合、比較例1ないし4による電解液を適用したリチウム-硫黄二次電池に比べて電池の寿命特性が優れていることが確認できた。具体的に、本発明によるリチウム-硫黄二次電池は、非水系溶媒中の化学式1-1または化学式1-2で表されるベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物の含有量が0.1重量%ないし3重量%である実施例1ないし実施例4によるリチウム-硫黄二次電池用電解液を用いることで、リチウム負極に安定したSEI(Solid-Electrolyte Interphase)膜を形成し、リチウムとポリスルフィド間の反応及び電解液の分解を抑制し、電池の寿命特性が向上する効果を示すことが確認できた。
【0104】
一方、ベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物を含まなかったり(比較例1)、過度に多い含量を含む場合(比較例2)、寿命特性の改善は示されなかった。また、非水系溶媒としてカーボネート系溶媒を用いた場合(比較例3)及び添加剤として電子吸引性基(electron withdrawing group)を有するベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物(比較化合物A)を用いた場合(比較例4)、寿命特性が著しく低下することが確認できた。
【0105】
このような点を考慮すると、本発明によるベンゾ-ジオキソール(benzo-dioxole)系化合物またはベンゾ-ジオキサン(benzo-dioxane)系化合物を含むリチウム二次電池用電解液を用いる場合に、従来のリチウム二次電池に比べて電池の寿命特性が向上する。
【0106】
本発明の単なる変形または変更はすべて本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲によって明確になるだろう。
図1
図2
図3
【国際調査報告】