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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】温度の推定
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/06 20060101AFI20231129BHJP
   A24F 40/20 20200101ALI20231129BHJP
   A24F 40/465 20200101ALI20231129BHJP
   A24F 40/50 20200101ALI20231129BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20231129BHJP
   H02M 7/5387 20070101ALI20231129BHJP
【FI】
H05B6/06 386
A24F40/20
A24F40/465
A24F40/50
H02M7/48 E
H02M7/5387
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530816
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 GB2021053113
(87)【国際公開番号】W WO2022118005
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】2018942.9
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Nicoventures Trading Limited
【住所又は居所原語表記】Globe House, 1 Water Street,WC2R 3LA London,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】コーラス, アントン
【テーマコード(参考)】
3K059
4B162
5H770
【Fターム(参考)】
3K059AA07
3K059AA08
3K059AB22
3K059AC03
3K059AC12
3K059AC20
3K059AC33
3K059BD00
4B162AA03
4B162AA05
4B162AA22
4B162AB01
4B162AB12
4B162AB14
4B162AB28
4B162AC12
4B162AC22
4B162AC34
4B162AD20
4B162AD23
5H770BA09
5H770CA06
5H770DA01
5H770DA18
5H770DA41
5H770DA44
5H770EA11
5H770HA06Z
(57)【要約】
方法、装置、及びコンピュータプログラムについて説明し、これらは、(サセプタを誘導加熱するための)誘導素子とキャパシタとを備える共振回路にパルスエッジを印加することであって、印加されたパルスエッジが共振回路のキャパシタと誘導素子の間にパルス応答を引き起こし、パルス応答が共振周波数を有する、印加することと、前記パルス応答の共振周波数の周期又は周波数を決定することと、温度勾配及び較正測定値に基づいて決定された周期又は周波数を温度推定値に変換することと、を含む。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サセプタを誘導加熱するための誘導素子とキャパシタとを備える共振回路にパルスエッジを印加するステップであって、前記印加されたパルスエッジが前記共振回路の前記キャパシタと前記誘導素子の間にパルス応答を引き起こし、前記パルス応答が共振周波数を有する、印加するステップと、
前記パルス応答の前記共振周波数の周期又は周波数を決定するステップと、
温度勾配及び較正測定値に基づいて前記決定された周期又は周波数を温度推定値に変換するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記決定された周期又は周波数を前記温度推定値に変換するステップが、
前記パルス応答の前記共振周波数の前記決定された周期又は周波数から前記較正測定値を減算することと、
前記減算の結果を前記温度勾配で除算することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記較正測定値が、第1の温度における前記パルス応答の前記共振周波数の第1の周期又は周波数を定める、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の温度が室温である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記較正測定値が、前記勾配と較正温度の積を、前記較正温度における前記パルス応答の周期から減算することによって得られる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記勾配が、温度に対する前記パルス応答の前記共振周波数の変化率を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記較正測定値を決定するステップをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記勾配を決定するステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記パルスエッジがオフレゾナンスパルスの一部を形成する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
誘導素子及びキャパシタを備える共振回路であって、前記誘導素子がサセプタを誘導加熱するためのものである、共振回路と、
前記共振回路にパルスエッジを印加するための駆動回路であって、前記印加されたパルスエッジが前記共振回路の前記キャパシタと前記誘導素子の間にパルス応答を引き起こし、前記パルス応答が共振周波数を有する、駆動回路と、
前記パルス応答の前記共振周波数の周期又は周波数を決定し、温度勾配及び較正測定値に基づいて前記決定された周期又は周波数を温度推定値に変換するためのプロセッサと、
を備える、装置。
【請求項11】
前記プロセッサが、前記決定された周期又は周波数を前記温度推定値に変換することを、
前記パルス応答の前記共振周波数の前記決定された周期又は周波数から前記較正測定値を減算することと、
前記減算の結果を前記温度勾配で除算することと、
によって行う、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記プロセッサが、前記較正測定値を決定するためのものである、請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記プロセッサが、前記勾配を決定するためのものである、請求項10~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記誘導素子及び前記キャパシタが直列に接続されている、請求項10~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記駆動回路がHブリッジ回路である、請求項10~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記駆動回路がハーフブリッジ回路である、請求項10~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
請求項10~16のいずれか一項に記載の装置を備える、非燃焼性エアロゾル生成デバイス。
【請求項18】
前記エアロゾル生成デバイスが、エアロゾル生成材料を含む取り外し可能な物品を受けるように構成される、請求項17に記載の非燃焼性エアロゾル生成デバイス。
【請求項19】
前記エアロゾル生成材料が、エアロゾル生成基材及びエアロゾル形成材料を含む、請求項18に記載の非燃焼性エアロゾル生成デバイス。
【請求項20】
前記取り外し可能な物品がサセプタ構成体を含む、請求項18又は19に記載の非燃焼性エアロゾル生成デバイス。
【請求項21】
非燃焼性エアロゾル生成システムで使用するための物品を含む部品のキットであって、前記非燃焼性エアロゾル生成システムが、請求項10~16のいずれか一項に記載の装置又は請求項17~20のいずれか一項に記載のエアロゾル生成デバイスを含む、部品のキット。
【請求項22】
前記物品が、エアロゾル生成材料を含む取り外し可能な物品である、請求項21に記載の部品のキット。
【請求項23】
命令を含むコンピュータプログラムであって、前記命令が装置に少なくとも、
サセプタを誘導加熱するための誘導素子とキャパシタとを備える共振回路にパルスエッジを印加することであって、前記印加されたパルスエッジが前記共振回路の前記キャパシタと前記誘導素子の間にパルス応答を引き起こし、前記パルス応答が共振周波数を有する、印加することと、
前記パルス応答の前記共振周波数の周期又は周波数を決定することと、
温度勾配及び較正測定値に基づいて前記決定された周期又は周波数を温度推定値に変換することと、
を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は温度の推定に関し、たとえば、エアロゾル生成デバイスの温度の推定に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
シガレット、シガーなどの喫煙品は、使用中にタバコを燃やしてタバコの煙を発生させる。燃焼させずに化合物を放出する製品を作成することにより、これらの物品(article)の代用品を提供する試みがなされてきた。たとえば、タバコ加熱デバイスは、タバコなどのエアロゾル生成基材(substrate)を加熱し、基材を加熱するが燃やさないことによって、エアロゾルを形成する。
【発明の概要】
【0003】
(概要)
第1の態様において、本明細書では、サセプタを誘導加熱するための誘導素子とキャパシタとを備える共振回路にパルスエッジを印加するステップであって、印加されたパルスエッジが共振回路のキャパシタと誘導素子の間にパルス応答を引き起こし、パルス応答が共振周波数を有する、印加するステップと、前記パルス応答の共振周波数の周期又は周波数を決定するステップと、温度勾配(たとえば、温度に対する前記パルス応答の共振周波数の変化率)及び較正測定値に基づいて決定された周期又は周波数を温度推定値に変換するステップと、を含む、方法について説明する。パルスエッジはオフレゾナンスパルスの一部を形成してもよい。
【0004】
いくつかの例示的な実施形態では、決定された周期又は周波数を前記温度推定値に変換するステップは、前記パルス応答の共振周波数の決定された周期又は周波数から較正測定値を減算することと、減算の結果を前記温度勾配で除算することと、を含んでもよい。
【0005】
較正測定値は、第1の温度(たとえば、室温)における前記パルス応答の共振周波数の第1の周期又は周波数を定めてもよい。
【0006】
較正測定値は、たとえば、前記勾配と較正温度の積を、前記較正温度における前記パルス応答の周期から減算することによって得られてもよい。
【0007】
この方法は、前記較正測定値を決定するステップを含んでもよい。或いは、又はさらに、この方法は、前記勾配を決定するステップを含んでもよい。
【0008】
第2の態様において、本明細書では、誘導素子及びキャパシタを備える共振回路であって、誘導素子がサセプタを誘導加熱するためのものである、共振回路と、前記共振回路にパルスエッジを印加するための駆動回路(たとえば、Hブリッジ回路又はハーフブリッジ回路など)であって、印加されたパルスエッジが共振回路のキャパシタと誘導素子の間にパルス応答を引き起こし、パルス応答が共振周波数を有する、駆動回路と、前記パルス応答の共振周波数の周期又は周波数を決定し、温度勾配及び較正測定値に基づいて決定された周期又は周波数を温度推定値に変換するためのプロセッサと、を備える、装置について説明する。誘導素子及びキャパシタは直列に接続されていてもよい。
【0009】
プロセッサは、決定された周期又は周波数を前記温度推定値に変換することを、前記パルス応答の共振周波数の決定された周期又は周波数から較正測定値を減算することと、減算の結果を前記温度勾配で除算することと、によって行ってもよい。
【0010】
プロセッサは、前記較正測定値を決定するためのものであってもよい。或いは、又はさらに、プロセッサは、前記勾配を決定するためのものであってもよい。
【0011】
第3の態様において、本明細書では、第2の態様を参照して上述した装置を備える、非燃焼性エアロゾル生成デバイスについて説明する。エアロゾル生成デバイスは、エアロゾル生成材料を含む取り外し可能な物品を受けるように構成されてもよい。エアロゾル生成材料は、たとえば、エアロゾル生成基材及びエアロゾル形成材料を含んでもよい。取り外し可能な物品はサセプタ構成体を含んでもよい。
【0012】
第4の態様において、本明細書では、非燃焼性エアロゾル生成システムで使用するための物品を含む部品のキットであって、非燃焼性エアロゾル生成システムが、第2の態様を参照して上述した装置又は第3の態様を参照して上述したエアロゾル生成デバイスを備える、部品のキットについて説明する。この物品は、エアロゾル生成材料を含む取り外し可能な物品であってもよい。
【0013】
第5の態様において、本明細書では、命令を含むコンピュータプログラムであって、命令が装置に少なくとも、サセプタを誘導加熱するための誘導素子とキャパシタとを備える共振回路にパルスエッジを印加することであって、印加されたパルスエッジが共振回路のキャパシタと誘導素子の間にパルス応答を引き起こし、パルス応答が共振周波数を有する、印加することと、前記パルス応答の共振周波数の周期又は周波数を決定することと、温度勾配及び較正測定値に基づいて決定された周期又は周波数を温度推定値に変換することと、を実行させる、コンピュータプログラムについて説明する。コンピュータプログラムは、第1の態様を参照して上述した方法の任意の態様を実行するようにさらに構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
ここで、以下の概略図を参照して、例示的な実施形態を単なる例として説明する。
図1】例示的な実施形態によるシステムのブロック図である。
図2】例示的な実施形態による非燃焼性エアロゾル供給デバイスを示す図である。
図3】例示的な実施形態による非燃焼性エアロゾル供給デバイスの図である。
図4】例示的な実施形態による非燃焼性エアロゾル供給デバイスと共に使用するための物品の図である。
図5】例示的な実施形態による回路のブロック図である。
図6】例示的な実施形態による回路のブロック図である。
図7】例示的な実施形態によるシステムのブロック図である。
図8】例示的な実施形態によるアルゴリズムを示すフローチャートである。
図9】例示的な実施形態によるパルスを示すプロットである。
図10】例示的な実施形態によるパルス応答を示すプロットである。
図11】例示的な実施形態によるパルス応答を示すプロットである。
図12】例示的な実施形態による、パルス応答周期と温度の間の関係を示すプロットである。
図13】例示的な実施形態によるアルゴリズムを示すフローチャートである。
図14】例示的な実施形態による回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(詳細な説明)
本明細書で使用する場合、「エアロゾル送達デバイス」という用語は、物質をユーザに送達するシステムを包含することを意図しており、以下を含む:
エアロゾル化可能材料を燃焼させることなくエアロゾル化可能材料から化合物を放出する非燃焼性エアロゾル供給システム、たとえば、電子タバコ(electronic cigarette)、タバコ加熱製品、及びエアロゾル化可能材料の組み合わせを使用してエアロゾルを生成するハイブリッドシステムなど、及び
エアロゾル化可能材料を含み、これらの非燃焼性エアロゾル供給システムのうちの1つで使用されるように構成される物品。
【0016】
本開示によれば、「可燃性」エアロゾル供給システムは、エアロゾル供給システム(又はその構成要素)を構成するエアロゾル化可能材料が、ユーザへの送達を容易にするために燃焼される又は燃やされるものである。
【0017】
本開示によれば、「非燃焼性」エアロゾル供給システムは、エアロゾル供給システム(又はその構成要素)を構成するエアロゾル化可能材料が、ユーザへの送達を容易にするために燃焼されない又は燃やされないものである。本明細書に記載の実施形態では、送達システムは非燃焼性エアロゾル供給システム、たとえば、動力付き非燃焼性エアロゾル供給システムである。
【0018】
一実施形態では、非燃焼性エアロゾル供給システムは電子タバコであり、これはベイピング(vaping)デバイス又は電子ニコチン送達システム(END:electronic nicotine delivery system)としても知られているが、エアロゾル化可能材料内のニコチンの存在は要件ではないことに留意されたい。
【0019】
一実施形態では、非燃焼性エアロゾル供給システムは、非燃焼加熱式システムとしても知られているタバコ加熱システムである。
【0020】
一実施形態では、非燃焼性エアロゾル供給システムは、エアロゾル化可能材料の組み合わせを使用してエアロゾルを生成するハイブリッドシステムであり、エアロゾル化可能材料のうちの1つ又は複数は加熱されてもよい。エアロゾル化可能材料のそれぞれは、たとえば、固体、液体、又はゲルの形態であってもよく、ニコチンを含有してもしなくてもよい。一実施形態では、ハイブリッドシステムは、液体又はゲルのエアロゾル化可能材料及び固体のエアロゾル化可能材料を含む。固体のエアロゾル化可能材料は、たとえば、タバコ又は非タバコ製品を含んでもよい。
【0021】
典型的には、非燃焼性エアロゾル供給システムは、非燃焼性エアロゾル供給デバイス及び非燃焼性エアロゾル供給システムと共に使用するための物品を含んでもよい。しかしながら、エアロゾル生成構成要素に動力を供給するための手段をそれ自体が含む物品自体が、非燃焼性エアロゾル供給システムを形成してもよいということも想定される。
【0022】
一実施形態では、非燃焼性エアロゾル供給デバイスは、動力源及びコントローラを含んでもよい。動力源は、電力源であっても発熱動力源であってもよい。一実施形態では、発熱動力源は、発熱動力源に近接するエアロゾル化可能材料又は熱伝達材料に熱の形態で動力を供給するようにエネルギーを与えることができる炭素基材を含む。一実施形態では、発熱動力源などの動力源は、非燃焼性エアロゾル供給を形成するように物品内に提供される。
【0023】
一実施形態では、非燃焼性エアロゾル供給デバイスと共に使用するための物品は、エアロゾル化可能材料、エアロゾル生成構成要素、エアロゾル生成領域、マウスピース、及び/又はエアロゾル化可能材料を受けるための領域を含んでもよい。
【0024】
一実施形態では、エアロゾル生成構成要素は、エアロゾル化可能材料から1つ又は複数の揮発性物質を放出してエアロゾルを形成するように、エアロゾル化可能材料と相互作用することが可能なヒーターである。一実施形態では、エアロゾル生成構成要素は、加熱せずにエアロゾル化可能材料からエアロゾルを生成することが可能である。たとえば、エアロゾル生成構成要素は、たとえば、振動、機械、加圧又は静電手段のうちの1つ又は複数などによって、熱を加えることなく、エアロゾル化可能材料からエアロゾルを生成可能であってもよい。
【0025】
一実施形態では、エアロゾル化可能材料は、活性材料、エアロゾル形成材料、及び任意選択で1つ又は複数の機能材料を含んでもよい。活性材料は、ニコチン(任意選択でタバコ又はタバコ派生品に含有される)或いは1つ又は複数の他の非嗅覚の生理活性材料を含んでもよい。非嗅覚の生理活性材料は、嗅覚以外の生理反応を実現するためにエアロゾル化可能材料に含まれる材料である。本明細書で使用する活性物質は、生理反応を実現又は増強することを目的とする材料である生理活性材料であってもよい。活性物質は、たとえば、栄養補助食品、向知性薬、向精神薬から選択されてもよい。活性物質は、天然のもの又は合成的に得られるものであってもよい。活性物質は、たとえば、ニコチン、カフェイン、タウリン、テイン、B6若しくはB12又はCなどのビタミン、メラトニン、カンナビノイド、或いはそれらの成分、派生物、又は組み合わせを含んでもよい。活性物質は、タバコ、大麻又は他の植物の1つ又は複数の成分、派生物又は抽出物を含んでもよい。いくつかの実施形態では、活性物質はニコチンを含む。いくつかの実施形態では、活性物質は、カフェイン、メラトニン、又はビタミンB12を含む。
【0026】
エアロゾル形成材料は、グリセリン、グリセロール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、メソ-エリスリトール、バニリン酸エチル、ラウリン酸エチル、スベリン酸ジエチル、クエン酸トリエチル、トリアセチン、ジアセチン混合物、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸ベンジル、トリブチリン、酢酸ラウリル、ラウリン酸、ミリスチン酸、及び炭酸プロピレンのうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0027】
1つ又は複数の機能材料は、香料、担体、pH調整剤、安定剤、及び/又は抗酸化剤のうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0028】
一実施形態では、非燃焼性エアロゾル供給デバイスと共に使用するための物品は、エアロゾル化可能材料又はエアロゾル化可能材料を受けるための領域を含んでもよい。一実施形態では、非燃焼性エアロゾル供給デバイスと共に使用するための物品は、マウスピースを含んでもよい。エアロゾル化可能材料を受けるための領域は、エアロゾル化可能材料を貯蔵するための貯蔵領域であってもよい。たとえば、貯蔵領域はリザーバであってもよい。一実施形態では、エアロゾル化可能材料を受けるための領域は、エアロゾル生成領域とは別個であってもよいし、又はエアロゾル生成領域と結合されてもよい。
【0029】
本明細書ではエアロゾル生成材料と呼ぶ場合もあるエアロゾル化可能材料は、たとえば、加熱されたとき、照射されたとき、又は他の任意の方法でエネルギーが与えられたときに、エアロゾルを生成することが可能な材料である。エアロゾル化可能材料は、たとえば、ニコチン及び/又は香味料を含有してもしなくてもよい固体、液体、又はゲルの形態であってもよい。いくつかの実施形態では、エアロゾル化可能材料は、代替的に「モノリシック固体」(すなわち、非繊維性)と呼ばれる場合もある「非晶質固体」を含んでもよい。いくつかの実施形態では、非晶質固体は乾燥ゲルであってもよい。非晶質固体は、液体などの何らかの流体を内部に保持することができる固体材料である。
【0030】
エアロゾル化可能材料は、基材上に存在してもよい。基材は、たとえば、紙、カード、板紙、厚紙、再生されたエアロゾル化可能材料、プラスチック材料、セラミック材料、複合材料、ガラス、金属、又は金属合金であってもよいし、又はそれらを含んでもよい。
【0031】
消耗品とは、エアロゾル生成材料を含むか、又はエアロゾル生成材料からなる物品であり、その一部又は全部がユーザにより使用中に消費されることが意図されている。消耗品は1つ又は複数の他の構成要素、たとえば、エアロゾル生成材料貯蔵領域、エアロゾル生成材料移送構成要素、エアロゾル生成領域、ハウジング、ラッパー、マウスピース、フィルター、及び/又はエアロゾル変性剤を含んでもよい。消耗品はまた、使用時にエアロゾル生成材料にエアロゾルを生成させるために熱を放出するヒーターなどのエアロゾル生成器を含んでもよい。ヒーターは、たとえば、可燃性材料、電気伝導によって加熱可能な材料、又はサセプタを含んでもよい。
【0032】
図1は、参照番号10によって全体を示す、例示的な実施形態によるシステムのブロック図である。システム10は、直流(DC:direct current)電圧源11の形態の電源、スイッチング構成体13、共振回路14、サセプタ構成体16、及び制御回路18を含む。スイッチング構成体13及び共振回路14は、サセプタ16を加熱するために使用することができる誘導加熱構成体12内で相互に結合されてもよい。
【0033】
以下に詳細に論じるように、共振回路14は、エアロゾル生成材料を加熱するためにサセプタ構成体16を誘導加熱するためのキャパシタ及び1つ又は複数の誘導素子を含んでもよい。エアロゾル生成材料を加熱することにより、エアロゾルを生成することができる。
【0034】
スイッチング構成体13は、(制御回路18の制御下で)DC電圧源11から交流電流を発生させることが可能であってもよい。交流電流は、1つ又は複数の誘導素子を通って流れてもよく、サセプタ構成体16の加熱を引き起こしてもよい。スイッチング構成体は複数のトランジスタを含んでもよい。DC-ACコンバータの例には、Hブリッジ回路又はインバータ回路が含まれ、その例については以下で論じる。
【0035】
サセプタは、交番磁場などの変動磁場の侵入によって加熱可能な材料である。加熱材料は導電性材料であってもよく、これにより、変動磁場がその中に侵入すると、加熱材料の誘導加熱が引き起こされる。加熱材料は磁性材料であってもよく、これにより、変動磁場がその中に侵入すると、加熱材料の磁気ヒステリシス加熱が引き起こされる。加熱材料は導電性及び磁性の両方を有してもよく、これにより、両方の加熱メカニズムで加熱材料が加熱可能になる。
【0036】
誘導加熱は、導電性の物体に変動磁場を侵入させることによってその物体が加熱されるプロセスである。このプロセスは、ファラデーの電磁誘導の法則及びオームの法則によって説明される。誘導ヒーターは、電磁石と、電磁石に交流電流などの変動電流を流すためのデバイスとを含んでもよい。電磁石及び被加熱物体が適切に相対的に配置され、その結果、電磁石によって生成された変動磁場が物体に侵入すると、物体の内部に1つ又は複数の渦電流が発生する。物体は電流の流れに対して抵抗を有する。したがって、そのような渦電流が物体内で発生すると、渦電流が物体の電気抵抗に逆らって流れることにより、物体が加熱される。このプロセスは、ジュール加熱、オーム加熱、又は抵抗加熱と呼ばれている。誘導加熱が可能な物体は、サセプタとして知られている。
【0037】
一実施形態では、サセプタは閉回路の形態である。いくつかの実施形態では、サセプタが閉回路の形態である場合、使用中のサセプタと電磁石の間の磁気結合が強化され、その結果、ジュール加熱がより大きくなる又は改善されることが分かっている。
【0038】
磁気ヒステリシス加熱は、磁性材料で作られた物体に変動磁場を侵入させることによってその物体が加熱されるプロセスである。磁性材料は、多数の原子スケールの磁石又は磁気双極子で構成されていると考えることができる。磁場がそのような材料に侵入すると、磁気双極子の向きが磁場と揃う。したがって、たとえば電磁石によって生成された交番磁場などの変動磁場が磁性材料に侵入すると、印加された変動磁場によって磁気双極子の向きが変化する。そのような磁気双極子の向きの変化により、磁性材料内に熱が発生する。
【0039】
物体が導電性及び磁性の両方を有する場合、物体に変動磁場を侵入させると、物体にジュール加熱及び磁気ヒステリシス加熱の両方を発生させることができる。さらに、磁性材料を使用すると磁場を増強することができ、これによりジュール加熱を増大させることができる。
【0040】
上記の各プロセスでは、熱伝導による外部熱源によってではなく、物体自体の内部で熱が発生するので、特に、適切な物体材料及び形状と、物体に対する適切な変動磁場の大きさ及び向きとを選択することにより、物体の急速な温度上昇と、より均一な熱分布とを実現することができる。さらに、誘導加熱及び磁気ヒステリシス加熱では、変動磁場の発生源と物体との間に物理的な接続を設ける必要がないので、設計の自由度及び加熱プロファイルの制御が向上する場合があり、コストが低くなる場合がある。
【0041】
図2及び図3は、参照番号20によって全体を示す、例示的な実施形態による非燃焼性エアロゾル供給デバイスを示している。図2は、外側カバーが取り付けられたエアロゾル供給デバイス20Aの透視図である。エアロゾル供給デバイス20Aは交換可能な物品21を含んでもよく、物品21をエアロゾル供給デバイス20Aに挿入してサセプタを加熱できるようにしてもよい(サセプタは、以下にさらに論じるように、物品21に含まれてもよい)。エアロゾル供給デバイス20Aは、エアロゾル供給デバイス20Aをオン又はオフにするために使用されてもよい作動スイッチ22をさらに含んでもよい。
【0042】
図3は、外側カバーが取り外されたエアロゾル供給デバイス20Bを示している。エアロゾル生成デバイス20Bは、物品21と、作動スイッチ22と、複数の誘導素子23a、23b、及び23cと、1つ又は複数のエアチューブエクステンダ24及び25とを含む。1つ又は複数のエアチューブエクステンダ24及び25は任意選択的なものであってもよい。
【0043】
複数の誘導素子23a、23b、及び23cはそれぞれ、共振回路14などの共振回路の一部を形成してもよい。誘導素子23aは、螺旋形インダクタコイルを含んでもよい。一例では、螺旋形インダクタコイルは、螺旋形インダクタコイルを提供するように螺旋状に巻かれたリッツ線/ケーブルから作られる。多くの代替的なインダクタの形成が可能であり、たとえば、プリント回路基板内にインダクタが形成される。誘導素子23b及び23cは、誘導素子23aと同様であってもよい。3つの誘導素子23a、23b、及び23cの使用は、全ての例示的な実施形態にとって必須ではない。したがって、エアロゾル生成デバイス20は、1つ又は複数の誘導素子を含んでもよい。
【0044】
サセプタは、物品21の一部として提供されてもよい。例示的な実施形態では、物品21がエアロゾル生成デバイス20に挿入されたときに、物品21の挿入によってエアロゾル生成デバイス20がオンにされてもよい。これはたとえば、適切なセンサ(たとえば、光センサ)を使用してエアロゾル生成デバイス内の物品21の存在を検出することによるものであってもよく、又は、サセプタが物品21の一部を形成する場合には、共振回路14を使用してサセプタの存在を検出することによるものであってもよい。エアロゾル生成デバイス20がオンにされた場合、誘導素子23は、サセプタを介して物品21を誘導加熱させてもよい。代替の実施形態では、サセプタは、エアロゾル生成デバイス20の一部として(たとえば、物品21を受けるためのホルダの一部として)提供されてもよい。
【0045】
図4は、参照番号30によって全体を示す、例示的な実施形態による非燃焼性エアロゾル供給デバイスと共に使用するための物品の図である。物品30は、図2及び図3を参照して上述した交換可能な物品21の一例である。
【0046】
物品30は、マウスピース31と、マウスピース31に接続された、この場合はタバコ材料であるエアロゾル生成材料33の円筒形ロッドとを含む。エアロゾル生成材料33は、たとえば、本明細書に記載のエアロゾル生成デバイス20などの非燃焼性エアロゾル生成デバイス内で加熱されると、エアロゾルを提供する。エアロゾル生成材料33はラッパー32に包まれている。ラッパー32は、たとえば、紙又は紙で裏打ちされた箔のラッパーとすることができる。ラッパー32は、空気に対して実質的に不透過性のものであってもよい。
【0047】
一実施形態では、ラッパー32はアルミニウム箔を含む。アルミニウム箔は、エアロゾル生成材料33内でのエアロゾルの形成を促進するのに特に効果的であることが分かった。一例では、アルミニウム箔は、約6μmの厚さを有する金属層を有する。アルミニウム箔は紙の裏打ちを有してもよい。しかしながら、代替構成では、アルミニウム箔は他の厚さ、たとえば4μm~16μmの間の厚さを有することができる。アルミニウム箔は紙の裏打ちを有さなくてもよいが、たとえば、箔に適切な引張強度を提供するのを助けるために、他の材料から形成された裏打ちを有してもよく、又は裏打ち材料を有さなくてもよい。アルミニウム以外の金属層又は箔も使用することができる。さらに、そのような金属層が物品30の一部として提供されることは必須ではなく、たとえば、そのような金属層は、装置20の一部として提供されてもよい。
【0048】
本明細書ではエアロゾル生成基材33とも呼ばれるエアロゾル生成材料33は、少なくとも1つのエアロゾル形成材料を含む。本例では、エアロゾル形成材料はグリセロールである。代替例では、エアロゾル形成材料は、本明細書に記載の他の材料又はその組み合わせとすることができる。エアロゾル形成材料は、香料化合物などの化合物をエアロゾル生成材料から消費者に移すのを助けることによって、物品の知覚性能を改善することが分かった。
【0049】
図4に示すように、物品30のマウスピース31は、エアロゾル生成基材33と隣り合う上流端31aと、エアロゾル生成基材33から離れた下流端31bとを含む。エアロゾル生成基材はタバコを含んでもよいが、代替物も可能である。
【0050】
マウスピース31は、本例では、中空管状要素34の上流に材料本体36を含み、これはこの例では、中空管状要素34と隣り合い、これと当接関係にある。材料本体36及び中空管状要素34はそれぞれ、実質的に円筒形の全体的な外側形状を画定し、共通の長手方向軸線を共有する。材料本体36は、第1のプラグラップ37で包まれている。第1のプラグラップ37は、約20gsm~40gsmの間など、50gsm未満の坪量を有してもよい。
【0051】
本例では、中空管状要素34は第1の中空管状要素34であり、マウスピースは、第1の中空管状要素34の上流に、冷却要素とも呼ばれる第2の中空管状要素38を含む。本例では、第2の中空管状要素38は、材料本体36の上流にあり、これと隣り合い、これと当接関係にある。材料本体36及び第2の中空管状要素38はそれぞれ、実質的に円筒形の全体的な外側形状を画定し、共通の長手方向軸線を共有する。第2の中空管状要素38は複数の紙の層から形成され、これらは平行に巻かれ、継ぎ目が接合されて、管状要素38を形成する。本例では、第1及び第2の紙の層が2重の管に設けられているが、他の実施例では、3つ、4つ又はそれ以上の紙の層を使用して、3重、4重又はそれ以上の層の管を形成することができる。螺旋状に巻かれた紙の層、厚紙管、張り子タイプのプロセスを使用して形成された管、成形又は押出成形されたプラスチック管など、他の構造を使用することもできる。第2の中空管状要素38は、本明細書に記載の第2のプラグラップ39及び/又はチップペーパー35として堅いプラグラップ及び/又はチップペーパーを使用して形成することもでき、これは別個の管状要素が必要ないことを意味する。
【0052】
第2の中空管状要素38は、マウスピース31内において冷却セグメントとして機能する空隙の周りに位置し、これを画定する。空隙は、エアロゾル生成材料33によって生成された加熱された揮発成分が流れることができるチャンバを提供する。第2の中空管状要素38は中空であり、エアロゾル蓄積のためのチャンバを提供するが、製造中及び物品21の使用中に生じる可能性のある軸方向の圧縮力及び曲げモーメントに耐えるのに十分な剛性を有する。第2の中空管状要素38は、エアロゾル生成材料33と材料本体36との間の物理的変位を提供する。第2の中空管状要素38によって提供される物理的変位は、第2の中空管状要素38の長さにわたって温度勾配を提供する。
【0053】
当然ながら、物品30は例としてのみ提供している。当業者は、本明細書に記載のシステムで使用できるそのような物品の多くの代替構成に気付くであろう。
【0054】
図5は、参照番号50によって全体を示す、例示的な実施形態による回路のブロック図である。回路50は、第1のスイッチ51、第2のスイッチ52、第3のスイッチ53、第4のスイッチ54、及び共振回路56を含む。第1~第4のスイッチ51~54は、以下でさらに論じるように、トランジスタを使用して実装されてもよい。
【0055】
第1~第4のスイッチ51~54は、共振回路56にパルスを印加するために使用されてもよいHブリッジブリッジ回路を形成する。このため、第1~第4のスイッチ51~54はスイッチング構成体13の実装例であり、共振回路56は共振回路14の一例である。
【0056】
第1及び第2のスイッチ51及び52はブリッジ回路の第1のリムを形成し、第3及び第4のスイッチ53及び54は第2のリムを形成する。より具体的には、第1のスイッチ51は、第1の電源(図5ではVDDとラベル付けした)と第1の接続点の間の接続を選択的に提供することができ、第2のスイッチ52は、第1の接続点とグランドの間の接続を選択的に提供することができ、第3のスイッチ53は、第1の電源と第2の接続点の間の接続を選択的に提供することができ、第4のスイッチ54は、第2の接続点とグランドの間の接続を選択的に提供することができる。共振回路56は、第1と第2の接続点の間に設けられる。
【0057】
図6は、参照番号60によって全体を示す、例示的な実施形態による回路のブロック図である。回路60は、上述の回路50の実装例である。
【0058】
回路60は、正端子67及び負(グランド)端子68を含む(これらは上述のシステム10のDC電圧源11の実装例である)。回路60は、スイッチング構成体64(上述のスイッチング構成体13を実装する)を含み、スイッチング構成体64はブリッジ回路(たとえば、FET Hブリッジ回路などのHブリッジ回路)を含む。スイッチング構成体64は第1のリム64a及び第2のリム64bを含み、第1のリム64a及び第2のリム64bは、共振回路69(この共振回路は上述の共振回路14及び56を実装する)によって結合される。第1のリム64aはスイッチ65a及び65b(上述のスイッチ51及び52を実装する)を含み、第2のリム64bはスイッチ65c及び65d(上述のスイッチ53及び54を実装する)を含む。スイッチ65a、65b、65c、及び65dは、電界効果トランジスタ(FET)などのトランジスタであってもよく、システム10の制御回路18などのコントローラから入力を受け取ってもよい。
【0059】
共振回路69は、共振回路69がLC共振回路となることができるようなキャパシタ66及び誘導素子63を含む。回路60はさらに、サセプタ等価回路62(以て、サセプタ構成体16を実装する)を示している。サセプタ等価回路62は、例示的なサセプタ構成体16の電気的効果を示す抵抗及び誘導素子を含む。サセプタが存在する場合、サセプタ構成体62及び誘導素子63はトランス61として機能してもよい。トランス61は、回路60が電力を受け取ったときにサセプタが加熱されるような変動磁場を生成してもよい。サセプタ構成体16が誘導構成体によって加熱される加熱動作中に、スイッチング構成体64は、第1及び第2のブランチのそれぞれが順に結合されて、交流電流が共振回路69を流れるように(たとえば、制御回路18によって)駆動される。共振回路69は、サセプタ構成体16に部分的に基づく共振周波数を有し、制御回路18は、共振周波数又は共振周波数に近い周波数でスイッチングするようにスイッチング構成体64を制御するよう構成されてもよい。スイッチング回路を共振点又はその付近で駆動することは、効率を向上させるのに役立ち、スイッチング素子へ失われるエネルギー(これはスイッチング素子の不必要な加熱の原因となる)が削減される。アルミニウム箔を含む物品21が加熱される一例では、スイッチング構成体64は2.5MHz付近の周波数で駆動されてもよい。しかしながら、他の実施では、周波数は、たとえば、500kHz~4MHzの間のどこかであってもよい。
【0060】
図7は、参照番号70によって全体を示す、例示的な実施形態によるシステムのブロック図である。
【0061】
システム70は、パルス生成回路72、共振回路74(たとえば、共振回路56及び69など)、サセプタ76(たとえば、サセプタ16など)、及びパルス応答処理器78を含む。パルス生成回路72及びパルス応答処理器74は、システム10の制御回路18の一部として実装されてもよい。
【0062】
パルス生成回路72は、正及び負の電圧源を切り替えることによってパルス(たとえば、パルスエッジ)を生成するために、上述の回路50及び60のスイッチング構成体を使用して実装されてもよい。これは全ての例示的な実施形態にとって必須ではなく、たとえば、パルス生成回路72は、以下でさらに論じるように、ハーフブリッジ回路を使用して実装されてもよい。
【0063】
パルス応答処理器78は、パルス応答に基づいて、共振回路74及びサセプタ76の1つ又は複数のパフォーマンスメトリック(又は特徴)を決定してもよい。たとえば、パルス応答処理器78は、サセプタ76の温度の推定値を生成してもよい。
【0064】
図8は、参照番号80によって全体を示す、例示的な実施形態によるアルゴリズムを示すフローチャートである。アルゴリズム80は、システム70の使用例を示している。
【0065】
アルゴリズム80は動作82から開始し、ここで、パルスエッジが共振回路74に印加される。パルスエッジは、パルス生成回路72によって生成される立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジである。
【0066】
図9は、例示的な実施形態によるパルス90を示すプロットである。パルス90は、動作82で印加されてもよいパルスエッジの一例である立ち上がりパルスエッジ92を含む。パルス90は、パルス生成回路72によって(たとえば、Hブリッジ又はハーフブリッジ回路によって)生成されてもよい。
【0067】
パルス90は、共振回路74に印加されてもよい。或いは、複数の誘導素子を有するシステム(たとえば、図2及び図3を参照して上述した非燃焼性エアロゾル構成体20など)では、パルス生成回路72は複数の共振回路のうちの1つを選択してもよく、各共振回路はサセプタを誘導加熱するための誘導素子とキャパシタとを含み、印加されたパルスは、選択された共振回路のキャパシタと誘導素子の間にパルス応答を引き起こす。
【0068】
パルスエッジ92を共振回路に印加すると、パルス応答が生成される。
【0069】
図10は、パルスエッジ92に応答して共振回路69のキャパシタ66とインダクタ63の間の接続点で生成され得る例示的なパルス応答を示す、参照番号100によって全体を示すプロットである。図10に示すように、パルス応答100は、リンギング共振(ringing resonance)の形をとる場合がある。パルス応答は、共振回路のインダクタ(複数可)とキャパシタの間での電荷の跳ね返りの結果である。1つの構成では、結果としてサセプタの加熱が引き起こされない。すなわち、サセプタの温度は実質的に一定(たとえば、パルスを印加する前の温度の±1℃又は±0.1℃以内)のままである。図10に示すように、パルス応答100は、周期102を有する共振周波数を有する(この周期はリンギング応答の連続するピーク間の時間である)。
【0070】
図11は、参照番号110によって全体を示す、パルスエッジ92に応答して生成される場合がある別の例示的なパルス応答を示すプロットである。パルス応答110は、周期112を有する共振周波数を有する。
【0071】
アルゴリズム80の動作84において、印加されたパルスエッジに応答して生成されたパルス応答の共振周波数の周期又は周波数が(たとえば、パルス応答処理器78によって)決定される。例示的なパルス応答100の場合、動作84で決定された周期又は周波数は周期102である。同様に、例示的なパルス応答110の場合、動作84で決定された周期又は周波数は周期112である。
【0072】
アルゴリズム80の動作86において、以下に詳細に論じるように、動作84で決定された周期又は周波数が温度推定値に変換される。
【0073】
パルス応答100及び110の電圧(V)は、次のように数学的に表されてもよい。
=sin(ωt)・e-αt
ここで、
ωはシステム(サセプタを含む)の減衰共振周波数である。
アルファ減衰と減衰周波数振動との間の関係は、次式で与えられてもよく、
【0074】
【数1】

ここで、
【0075】
【数2】

であり、
【0076】
【数3】

である。ここで、
ωはシステム(サセプタなし)の固有共振周波数であり、
coilはコイル抵抗であり、
susは反射サセプタ抵抗である。
【0077】
上述の動作84で測定された周期は、減衰周波数(ω)に基づく。
【0078】
図12は、参照番号120によって全体を示す、例示的な実施形態による、パルス応答周期と温度の間の関係を示すプロットである。
【0079】
回路50若しくは60又はシステム70などの誘導加熱システムが温まると、システム内の抵抗が変化する。この結果、共振周波数が変化する(ひいては、上述の動作84で決定されたパルス応答の周期も変化する)。例示的なプロット120に示すように、温度が上昇するにつれて、パルス応答周期が長くなる場合がある。いくつかの例示的な実施形態では、この変化は線形(又はほぼ線形)であるので、温度測定値の推定に使用することができる。
【0080】
プロット120の特性が既知である場合、動作84で決定された周期又は周波数(たとえば、システムの減衰周波数)を動作86で温度推定値に変換することができる。
【0081】
動作86において、温度(x)は次式で与えられてもよい。
【0082】
【数4】

ここで、
yは動作84で決定された周期であり、
cは較正値であり、
mはプロット120の勾配である。
【0083】
勾配mは2つのデータ点(x1,y1)及び(x2,y2)から次のように決定することができる。
【0084】
【数5】

較正値cは次のようにして与えられてもよく、
c=-ma+b
ここで、
mは上記で論じた勾配であり、
aは較正温度(たとえば、室温)であり、
bは較正温度でのパルス応答周期である。
【0085】
たとえば、摂氏20度の較正温度で400nsのパルス応答周期が測定されたと仮定する。プロット120の勾配が摂氏1度当たり250ピコ秒であると決定された場合、上記の値は次のように与えられる。
m=250ps/℃=0.25ns/℃
c=-0.250*20+400=395
したがって、動作84で420nsの周期が決定された場合、これは動作86で次式を使用して温度推定値に変換することができる。
【0086】
【数6】

であり、
【数7】

したがって、温度推定値xは100℃である。
【0087】
図13は、参照番号130によって全体を示す、例示的な実施形態によるアルゴリズムを示すフローチャートである。
【0088】
動作132において、システムの勾配が決定される。勾配は、温度に対する前記パルス応答の共振周波数の変化率である。勾配は(初期化プロセスの一部として)一度生成されてもよく、その後記憶され、変更されなくてもよい(又は稀にしか変更されなくてもよい)。或いは、勾配測定値は、その時々に(たとえば、定期的に、又は勾配測定値が信頼できない可能性があるという判定に応答して)、更新されてもよい。
【0089】
動作134において、較正測定値が決定される。較正測定値は、既知の温度(たとえば、測定された温度)における共振周波数の周期又は周波数を決定することによって、決定されてもよい。たとえば、システムは、(たとえば、較正プロセス中に)既知の室温に基づいて較正されてもよい。したがって、室温が測定されてもよく(たとえば、熱電対を使用)、この既知の室温でパルスの持続時間が測定されてもよい。
【0090】
較正測定値は、記憶される1回限りの測定値であってもよい。或いは、較正測定値は、たとえばシステムの構成が変化した可能性があるときなどに随時、繰り返し取得されてもよい。多くの可能な較正の構成が存在する。たとえば、加熱用のサセプタ構成体を含む取り外し可能な物品を有するシステムの場合、取り外し可能な物品が交換されるたびにシステムが再較正されてもよい。
【0091】
動作136において、温度推定値が生成される。動作136は、上述のアルゴリズム100を使用して実行されてもよい。
【0092】
上述したように、パルスエッジは、動作82でフルブリッジ回路を使用して生成されてもよい。これは必須ではなく、たとえば、ハーフブリッジ回路が使用されてもよい。
【0093】
図14は、参照番号140によって全体を示す、例示的な実施形態による回路のブロック図である。回路140は、上述の回路50の第3のスイッチ53、第4のスイッチ54、及び共振回路56を含む。また、第1の接続点(第1のスイッチ51と共振回路56の間)はグランドに接続される。このため、回路50の第2のスイッチ52は、グランドへの永続的な接続に置き換えられ、第1のスイッチ51は省略されてもよい。
【0094】
上述の回路50は、共振回路56を駆動するためのフルブリッジ回路を提供する。回路140は、共振回路56を駆動するためのハーフブリッジ回路を提供する。たとえば、回路50は、サセプタを誘導加熱するために共振回路を駆動するためのパルスを提供するのに特に適している場合があり、回路140は、分析(たとえば、測定)のために共振回路からパルス応答を生成するためのパルスエッジを提供するのに特に適している場合がある。
【0095】
本明細書に記載の様々な実施形態は、特許請求する特徴の理解及び教示を支援するためにのみ提示している。これらの実施形態は、実施形態の代表的なサンプルとしてのみ提供しており、網羅的及び/又は排他的なものではない。本明細書に記載の利点、実施形態、例、機能、特徴、構造、及び/又は他の態様は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲に対する限定とも、特許請求の範囲の均等物に対する限定とも考えられるべきではなく、特許請求する発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用されてもよく、変更が行われてもよいということを理解されたい。本発明の様々な実施形態は、本明細書に具体的に記載したもの以外の、開示した要素、構成要素、特徴、部分、ステップ、手段などの適切な組み合わせを好適に含んでもよく、それらからなってもよく、又は本質的にそれらからなってもよい。さらに、本開示は、現在特許請求していないが、将来請求する可能性のある他の発明も含むことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】