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特表2023-550969イソプレノイド側鎖を有するサイトカイニンを産生することが可能な遺伝子組換え細菌
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】イソプレノイド側鎖を有するサイトカイニンを産生することが可能な遺伝子組換え細菌
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20231129BHJP
   C12P 1/04 20060101ALI20231129BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20231129BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20231129BHJP
   C12N 9/00 20060101ALN20231129BHJP
   C12N 15/52 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12P1/04 Z
C12N15/54
C12N9/10
C12N9/00
C12N15/52 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532104
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2021083188
(87)【国際公開番号】W WO2022112509
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】20075015.6
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516334905
【氏名又は名称】アツィエス・ビオ・デ・オ・オ
【氏名又は名称原語表記】ACIES BIO d.o.o.
【住所又は居所原語表記】Tehnoloski park 21, 1000 Ljubljana, Slovenia
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ティナ コゲイ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴール コセチ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン フイス
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ブラジッチ
(72)【発明者】
【氏名】ヤカ ホルバット
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AE43
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA15X
4B065AA24X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA27
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、概して、バイオテクノロジー工学に関し、具体的には、イソプレノイド側鎖を有するサイトカイニン(イソプレノイドサイトカイニン)を産生することが可能な遺伝子組換え細菌、ならびにその作製および適用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有する異種ポリペプチドを発現するグラム陽性細菌。
【請求項2】
前記細菌が、バチルスおよびコリネバクテリウムからなる群から選択される科である、請求項1記載の細菌。
【請求項3】
前記細菌がバチルス科である、請求項1または2記載の細菌。
【請求項4】
前記細菌がコリネバクテリウム科である、請求項1または2記載の細菌。
【請求項5】
前記細菌がバチルスまたはコリネバクテリウム属である、請求項1または2記載の細菌。
【請求項6】
前記細菌がバチルス属である、請求項1または2記載の細菌。
【請求項7】
前記細菌がコリネバクテリウム属である、請求項1または2記載の細菌。
【請求項8】
前記細菌がバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)である、請求項1または2記載の細菌。
【請求項9】
前記細菌がコリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)である、請求項1または2記載の細菌。
【請求項10】
前記アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号1~33のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号1~33のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約50%、例えば少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、請求項1から9までのいずれか1項記載の細菌。
【請求項11】
前記アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号1~10のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号1~10のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約50%、例えば少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、請求項1から9までのいずれか1項記載の細菌。
【請求項12】
前記アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも約50%、例えば少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、請求項1から9までのいずれか1項記載の細菌。
【請求項13】
サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドのタンパク質発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加するように改変されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の細菌。
【請求項14】
前記サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号34~62のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびii)配列番号34~62のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、請求項13記載の細菌。
【請求項15】
前記サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号34~44のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号34~44のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、請求項13記載の細菌。
【請求項16】
前記サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号34のアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号34のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、請求項13記載の細菌。
【請求項17】
前記細菌が、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドのタンパク質発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加するようにさらに改変されている、請求項1から16までのいずれか1項記載の細菌。
【請求項18】
前記1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号63~70のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号63~70のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、請求項17記載の細菌。
【請求項19】
前記1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号63~65のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号63~65のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、請求項17記載の細菌。
【請求項20】
前記1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号63のアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号63のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、請求項17記載の細菌。
【請求項21】
前記1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号64のアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号64のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、請求項17記載の細菌。
【請求項22】
プリンヌクレオチド生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素(例えば、アデノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素)の発現および/または活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加するようにさらに改変されている、請求項1から21までのいずれか1項記載の細菌。
【請求項23】
前記プリンヌクレオチド生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素が、リボース-リン酸ジホスホキナーゼ活性を有する酵素、アミドホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素、ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有する酵素、アデニロコハク酸リアーゼ活性を有する酵素、ホスホリボシルアミノイミダゾール-カルボキサミドホルミルトランスフェラーゼ活性を有する酵素、アデニロコハク酸シンターゼ活性を有する酵素およびアデノシンキナーゼ活性を有する酵素からなる群から選択される、請求項22記載の細菌。
【請求項24】
プリンヌクレオチド分解経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素の発現および/または活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少するようにさらに改変されている、請求項1から23までのいずれか1項記載の細菌。
【請求項25】
前記プリンヌクレオチド分解経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素が、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ活性を有する酵素およびアデノシン-ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素からなる群から選択される、請求項24記載の細菌。
【請求項26】
グアノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素の発現および/または活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少するようにさらに改変されている、請求項1から25までのいずれか1項記載の細菌。
【請求項27】
前記グアノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素が、IMPデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素およびGMPシンテターゼ活性を有する酵素からなる群から選択される、請求項26記載の細菌。
【請求項28】
シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドのタンパク質発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加するようにさらに改変されている、請求項1から27までのいずれか1項記載の細菌。
【請求項29】
前記シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドが、i)配列番号93~95のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびii)配列番号93~95のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、請求項28記載の細菌。
【請求項30】
イソプレノイドサイトカイニンまたはそのリボシド誘導体を生成する方法であって、請求項1から29までのいずれか1項記載の細菌を好適な培養条件下にて好適な培養培地中で培養することを含む、方法。
【請求項31】
前記イソプレノイドサイトカイニンまたはそのリボシド誘導体が、trans-ゼアチン(tZ)、trans-ゼアチンリボシド(tZR)、N-(D2-イソペンテニル)アデニン(iP)、N(6)-(ジメチルアリル)アデノシン(iPR)、ジヒドロゼアチン(DZ)、リボシルジヒドロゼアチン(DZR)およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記イソプレノイドサイトカイニンまたはそのリボシド誘導体が、それぞれtrans-ゼアチン(tZ)およびtrans-ゼアチンリボシド(tZR)である、請求項30または31記載の方法。
【請求項33】
前記方法がtrans-ゼアチン(tZ)を生成するためのものである、請求項30記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、バイオテクノロジー工学に関し、具体的には、イソプレノイド側鎖を有するサイトカイニン(イソプレノイドサイトカイニン)を産生することが可能な遺伝子組換え細菌、ならびにその作製および適用に関する。
【0002】
発明の背景
サイトカイニンは、種子の発芽から植物および葉の老化に至るまで、多くの植物の成長および発生プロセスを制御する必須の植物ホルモンであり、細胞分裂を誘導する能力を特徴とする(Mok, Martin, and Mok 2000)。天然に存在するサイトカイニンは、芳香族側鎖(芳香族サイトカイニン)またはアデニンのN末端のイソプレン由来の側鎖(イソプレノイドサイトカイニン)のいずれかを有するアデニン誘導体である。N側鎖の構造および配置により、サイトカイニンの種類およびその活性の両方が決まる。イソプレノイドサイトカイニンは広範にわたり、植物および藻類、さらには多くの種の細菌、真菌、線虫および寄生昆虫において天然に産生される(Stirk and van Staden 2010)。天然イソプレノイドサイトカイニンは、N-(D2-イソペンテニル)アデニン(iP)、trans-ゼアチン(tZ)、cis-ゼアチン(cZ)およびジヒドロゼアチン(DZ)である(図1)。
【0003】
イソプレノイドサイトカイニンは、アデニンまたはアデノシンの誘導体であり、6位の環外アミノ基がジメチルアリル側鎖の付加によって修飾され、親化合物N-(D2-イソペンテニル)アデニン(iP)およびそのリボシドであるN-(D2-イソペンテニル)アデノシン(iPR)を生じる。ジメチルアリル側鎖を9’位でヒドロキシル化して、trans-ゼアチン(tZ)またはそのリボシドであるtrans-リボシルゼアチン(tZR)を得ることができる。また、環外二重結合を還元して、ジヒドロゼアチン(DZ)またはそのリボシドであるリボシルジヒドロゼアチン(DZR)を得ることができる(図1)。iP、iPR、tZ、tZR、DZおよびDZRの6つ全ての化合物が生物学的に活性であり、天然に存在する。
【0004】
天然に存在するサイトカイニンの大半が、特徴的な構造誘導体または形態、例えば遊離塩基、リボシドおよびヌクレオチド、またはグルコース、キシロースもしくはアミノ酸残基とのコンジュゲートで存在する。植物では、サイトカイニン遊離塩基が最も生物学的に活性な形態であると考えられ、グルコースコンジュゲートは、グリコシル化の位置に応じて、永続的に不活性または可逆的な貯蔵形態であると考えられる。
【0005】
ゼアチンは、植物におけるサイトカイニンの主要な形態である。ゼアチンは、アデニンのN位にヒドロキシル化されたイソプレン由来の側鎖を有するアデニン誘導体であり、シスまたはトランス配置で存在し得る(図1)。trans-ゼアチンは、最も有効な天然に存在するサイトカイニンの1つである。多くの先行研究では、分析法によりcis-およびtrans-ゼアチンを区別することができず、観察された生理学的プロセスにおける両化合物の存在および役割の理解が曖昧であった。
【0006】
構造類似性にもかかわらず、cis-ゼアチンがtRNA経路によって合成される一方で、trans-ゼアチンならびに生合成的に関連する化合物であるiPおよびDZは、植物細胞においてde novo(またはAMP)生合成経路で合成される。
【0007】
tRNA経路では、cis-ゼアチンは、イソペンテニル化tRNAの分解の再循環産物である。cis-ゼアチンは、古細菌を除くほぼ全ての生物において(Schaefer et al. 2015)、特定の(UNN-)tRNA上のアデニン37のプレニル化を触媒し、イソペンテニルアデニン(IP)含有tRNAの形成をもたらすtRNA-イソペンテニルトランスフェラーゼ(tRNA-IPT)によって極めて低い割合で合成される。de novoサイトカイニン生合成経路では、イソペンテニルアデニンヌクレオチド(iP)を生成するアデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ(IPT、EC 2.5.1.27)によって触媒される、ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)によるアデノシン5’-リン酸(AMP、ADPまたはATP)のN-プレニル化が第1段階である。植物においてIPTにより生成するiPは、続いてプレニル側鎖でのヒドロキシル化を受け、tZ-ヌクレオチドが生じる。シロイヌナズナでは、CYP735A1およびCYP735A2の2つのシトクロムP450モノオキシゲナーゼが、ヒドロキシル化反応を触媒する。CYP735Aは、iP-ヌクレオシドおよびiPよりもiP-ヌクレオチドを選択的に利用する。この反応は立体特異的であるため、CYP735AはtZ-ヌクレオチドを生成する(Takei, Yamaya, and Sakakibara 2004)。de novoおよびtRNA経路の両方の経路の最終段階では、サイトカイニン活性化酵素であるサイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ「ロンリーガイ(Lonely guy)」(LOG、EC 3.2.2.n1)がリボシル部分を除去し、サイトカイニンヌクレオチドを活性核酸塩基に変換する(Kurakawa et al. 2007)。iPRMP、tZRMP、DZRMPおよびcZRMPの4つ全てのサイトカイニンヌクレオシド一リン酸がLOGによって利用される。
【0008】
アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)等の植物病原性細菌による植物感染の場合、tZの生合成が開始して感染が促進される。感染プロセス中に、tZまたはiPの生合成が細菌細胞内で起こるか、または細菌IPT遺伝子ホモログが宿主の核ゲノムに組み込まれ、感染植物細胞で発現されることがある。
【0009】
重要なことには、細菌のIPTと高等植物のIPTとで基質特異性が異なる(Kakimoto 2001;Sakakibara 2005)。第1の側面では、A.ツメファシエンス(A.tumefaciens)に由来するTmrおよびTzs等の細菌IPTは、AMPのみをアクセプタとして用い(一方、植物のIPT酵素は、ADPおよびATPを選択的に用いる)、trans-ゼアチンリボシド5’-一リン酸(tZRMP)を形成する(Sakakibara 2006;Kamada-Nobusada and Sakakibara 2009)。さらに、アグロバクテリウムIPTであるTzsおよびTmrは、DMAPPまたはメチルエリスリトールリン酸(MEP)経路におけるDMAPPのヒドロキシル化前駆体である1-ヒドロキシ-2-メチル-2-ブテニル4-二リン酸(HMBDP)のいずれかを側鎖ドナーとして使用することが可能である。DMAPPが基質として使用される場合、主要産物はiPRMPであるが、IPTがHMBDPを利用する場合はtZRMPが形成される。したがって、感染中に植物細胞の葉緑体においてアグロバクテリウムIPT Tmrが発現されることで、tZRMPの直接合成のための代謝バイパスが作られ、イソプレノイド前駆体HMBDPの効率的な基質供給量が植物細胞のプラスチドに隔離される。本来の経路と同様、LOGホスホリボヒドロラーゼは、iP-またはtZ-ヌクレオシド一リン酸(iPRMP、tZRMP)から最終的にリボース一リン酸部分を放出し、生物学的に活性な分子であるiPおよびtZを生じる。
【0010】
腫瘍を誘導する植物病原性細菌であるA.ツメファシエンス(A.tumefaciens)は、TmrおよびTzsの2つのIPTを有する。TmrおよびTzsは相同タンパク質であり、どちらもDMAPP:AMPイソペンテニルトランスフェラーゼであるが、基質認識に不可欠なアミノ酸が植物のアデニル酸IPTとは異なる(Chu et al., 2010)。tmr(ipt)遺伝子は、Ti-プラスミドのT領域に位置し、宿主植物への感染を媒介する。tmr遺伝子が細菌から植物ゲノムに導入され、宿主植物にサイトカイニンを産生させることで、腫瘍形成を引き起こす。in vitro実験では、TmrがDMAPPおよびHMBDPの両方を同様のKm値でAMPに転移することが実証された(Sakakibara et al. 2005)。A.ツメファシエンス(A.tumefaciens)のノパリン産生株は、DMAPP:AMPイソペンテニルトランスフェラーゼの別の遺伝子であるtzsを有し、これはTi-プラスミドのvir領域に存在し、植物細胞へは移行しない。Tzsは、これらのA.ツメファシエンス(A.tumefaciens)株による高レベルのサイトカイニン産生および分泌を可能にし(Morris et al. 1993)、iPRMPおよびtZRMPの産生にHMBDPまたはDMAPPを用いることもできる。Tzsは、Tmrと51.3%のタンパク質配列同一性を有する。tmr/tzsと相同なDMAPP:AMPイソペンテニルトランスフェラーゼをコードする遺伝子が、アグロバクテリウム属の他の細菌であるA.ビティス(A.vitis)およびA.リゾゲネス(A.rhizogenes)、ならびに他の植物病原性細菌、例えばシュードモナス・シリンガエpv.サバスタノイ(Pseudomonas syringae pv. savastanoi)、シュードモナス・ソラナセアルム(Pseudomonas solanacearum)、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)およびロドコッカス・ファシアンス(Rhodococcus fascians)に存在する(Kakimoto, 2003)。
【0011】
イソペンテニルドナーであるジメチルアリル二リン酸(DMAPP)およびその前駆体である1-ヒドロキシ-2-メチル-2-ブテニル4-二リン酸(HMBDP)は、植物の葉緑体および細菌、さらにはバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)におけるメチルエリスリトールリン酸(MEP)経路によって生成する。MEP経路では、ピルビン酸およびグリセルアルデヒド-3-リン酸が、酵素1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ(Dxs、EC 2.2.1.7)によって縮合し、最終的にHMBDP、DMAPP、およびイソプレンまたはより大きなテルペノイド化合物を生成する代謝カスケードとなる。DXSによって媒介されるMEP経路の第1段階は、植物および細菌におけるイソプレノイド産生の律速段階である(Julsing et al. 2007)。
【0012】
発明の概要
植物病原性細菌における感染時のde novo経路を介したサイトカイニンの天然生合成率は非常に低い。これは、宿主細胞の代謝によって供給される細菌起源のIPT酵素、LOG酵素およびビルディングブロックの発現に依存する。かかる感染ベースの系は、工業規模の生産には容易に移行することができない。農業用途におけるサイトカイニンホルモンの高い活性および使用可能性のために、遺伝的およびバイオテクノロジーに適した宿主株におけるiP、tZ、ならびにリボシドであるtZRおよびiPR等のサイトカイニンの効率的かつ持続的な生産が必要とされている。
【0013】
本発明の目的は、イソプレノイド側鎖を有するサイトカイニン(イソプレノイドサイトカイニン)、例えばtZおよびiP、ならびにそれらのリボシドであるtZRおよびiPRのより効率的な生産を可能にする手段を提供することである。より詳細には、本発明の目的は、イソプレノイド側鎖を有するサイトカイニン(イソプレノイドサイトカイニン)、例えばtZおよびiP、ならびにそれらのリボシドであるtZRおよびiPRの生産をより高い公称収率で可能にする手段を提供することである。
【0014】
これは、a)アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有する異種ポリペプチドを発現し、任意にb)サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドのタンパク質発現が増加するように改変された細菌株を操作した本発明者らによって達成される。実施例に示すように、このような操作された細菌株は、驚くべきことに、上清中で10mg/Lを超えるイソプレノイドサイトカイニンの異常に高い力価を示す。結果として、これは、植物細胞感染の状況がもはや必要とされず、tZおよびiP、ならびにそれらのリボシドであるtZRおよびiPR等のイソプレノイドサイトカイニンの効率的な生合成のための生合成基質および補助因子が、操作された細菌細胞によって効果的に供給されることを意味する。
【0015】
したがって、本発明は、第1の態様において、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有する異種ポリペプチドを発現する細菌を提供する。より詳細には、本発明は、a)アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有する異種ポリペプチドを発現し、任意にb)サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドのタンパク質発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加するように改変されている細菌を提供する。
【0016】
本発明は、第2の態様において、サイトカイニンまたはそのリボシド誘導体、特にイソプレノイドサイトカイニンまたはそのリボシド誘導体を生成する方法であって、本発明による細菌を好適な培養条件下にて好適な培養培地中で培養することを含む、方法をさらに提供する。
【0017】
本発明は、以下の項目によってまとめることができる:
【0018】
1. アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有する異種ポリペプチドを発現する細菌。
【0019】
2. アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号1~33のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号1~33のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約50%、例えば少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、項目1記載の細菌。
【0020】
3. アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号1~10のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号1~10のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約50%、例えば少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、項目1記載の細菌。
【0021】
4. アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも約50%、例えば少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、項目1記載の細菌。
【0022】
5. 細菌が、上記異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を含む、項目1から4までのいずれか1つ記載の細菌。
【0023】
6. 外因性核酸分子が、細菌においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能し、上記異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に操作可能に連結したプロモーターをさらに含む、項目5記載の細菌。
【0024】
7. 外因性核酸分子がベクターである、項目5または6記載の細菌。
【0025】
8. 外因性核酸分子が、細菌のゲノムに安定に組み込まれる、項目5または6記載の細菌。
【0026】
9. サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドのタンパク質発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加するように改変されている、項目1から8までのいずれか1つ記載の細菌。
【0027】
10. サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドのタンパク質発現の増加が、上記ポリペプチドをコードする遺伝子のコピー数を増加させることによって達成される、項目9記載の細菌。
【0028】
11. 遺伝子のコピー数の増加が、細菌においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能するプロモーターに操作可能に連結した遺伝子を含む1つ以上の外因性核酸分子(例えば1つ以上のベクター)を細菌に導入することによって達成される、項目10記載の細菌。
【0029】
12. 細菌が、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子(ベクター等)を含む、項目9から11までのいずれか1つ記載の細菌。
【0030】
13. 外因性核酸分子が、細菌においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能し、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に操作可能に連結したプロモーターをさらに含む、項目12記載の細菌。
【0031】
14. 外因性核酸分子がベクターである、項目11から13までのいずれか1つ記載の細菌。
【0032】
15. 外因性核酸分子が、細菌のゲノムに安定に組み込まれる、項目11から13までのいずれか1つ記載の細菌。
【0033】
16. サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドのタンパク質発現の増加が、リボソーム結合部位を改変することによって達成される、項目9から15までのいずれか1つ記載の細菌。
【0034】
17. サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドのタンパク質発現の増加が、ポリペプチドをコードする遺伝子に操作可能に連結したプロモーターの強度を増大させることによって達成される、項目9から16までのいずれか1つ記載の細菌。
【0035】
18. サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号34~62のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびii)配列番号34~62のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、項目9から17までのいずれか1つ記載の細菌。
【0036】
19. サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号34~44のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号34~44のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、項目9から18までのいずれか1つ記載の細菌。
【0037】
20. サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号34のアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号34のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、項目9から18までのいずれか1つ記載の細菌。
【0038】
21. サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドが、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有する細菌ポリペプチドである、項目9から20までのいずれか1つ記載の細菌。
【0039】
22. 1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドのタンパク質発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加するようにさらに改変されている、項目1から21までのいずれか1つ記載の細菌。
【0040】
23. 1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドのタンパク質発現の増加が、上記ポリペプチドをコードする遺伝子のコピー数を増加させることによって達成される、項目22記載の細菌。
【0041】
24. 遺伝子のコピー数の増加が、細菌においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能するプロモーターに操作可能に連結した遺伝子を含む1つ以上の外因性核酸分子(例えば1つ以上のベクター)を細菌に導入することによって達成される、項目23記載の細菌。
【0042】
25. 細菌が、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子(ベクター等)を含む、項目22から24までのいずれか1つ記載の細菌。
【0043】
26. 外因性核酸分子が、細菌においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能し、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に操作可能に連結したプロモーターをさらに含む、項目25記載の細菌。
【0044】
27. 外因性核酸分子がベクターである、項目24から26までのいずれか1つ記載の細菌。
【0045】
28. 外因性核酸分子が、細菌のゲノムに安定に組み込まれる、項目24から26までのいずれか1つ記載の細菌。
【0046】
29. 1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドのタンパク質発現の増加が、リボソーム結合部位を改変することによって達成される、項目22から28までのいずれか1つ記載の細菌。
【0047】
30. 1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドのタンパク質発現の増加が、ポリペプチドをコードする遺伝子に操作可能に連結したプロモーターの強度を増大させることによって達成される、項目22から29までのいずれか1つ記載の細菌。
【0048】
31. 1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号63~70のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号63~70のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、項目22から30までのいずれか1つ記載の細菌。
【0049】
32. 1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号63~65のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号63~65のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、項目22から31までのいずれか1つ記載の細菌。
【0050】
33. 1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号63のアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号63のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、項目22から32までのいずれか1つ記載の細菌。
【0051】
34. 1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドが、i)配列番号64のアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号64のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、項目22から32までのいずれか1つ記載の細菌。
【0052】
35. 1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドが、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有する細菌ポリペプチドである、項目22から34までのいずれか1つ記載の細菌。
【0053】
36. プリンヌクレオチド生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素(例えば、アデノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素)の発現および/または活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加するようにさらに改変されている、項目1から35までのいずれか1つ記載の細菌。
【0054】
37. プリンヌクレオチド生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素が、リボース-リン酸ジホスホキナーゼ活性を有する酵素、アミドホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素、ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有する酵素、アデニロコハク酸リアーゼ活性を有する酵素、ホスホリボシルアミノイミダゾール-カルボキサミドホルミルトランスフェラーゼ活性を有する酵素、アデニロコハク酸シンターゼ活性を有する酵素およびアデノシンキナーゼ活性を有する酵素からなる群から選択される、項目36記載の細菌。
【0055】
38. プリンヌクレオチド分解経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素の発現および/または活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少するようにさらに改変されている、項目1から37までのいずれか1つ記載の細菌。
【0056】
39. プリンヌクレオチド分解経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素が、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ活性を有する酵素およびアデノシン-ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素からなる群から選択される、項目38記載の細菌。
【0057】
40. プリンヌクレオチド分解経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素が、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ活性を有する酵素である、項目38または39記載の細菌。
【0058】
41. プリンヌクレオチド分解経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素が、アデノシン-ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素である、項目38から40までのいずれか1つ記載の細菌。
【0059】
42. グアノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素の発現および/または活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少するようにさらに改変されている、項目1から41までのいずれか1つ記載の細菌。
【0060】
43. グアノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素が、IMPデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素およびGMPシンテターゼ活性を有する酵素からなる群から選択される、項目42記載の細菌。
【0061】
44. グアノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素が、IMPデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素である、項目42または43記載の細菌。
【0062】
45. グアノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素が、GMPシンテターゼ活性を有する酵素である、項目42から44までのいずれか1つ記載の細菌。
【0063】
46. シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドのタンパク質発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加するようにさらに改変されている、項目1から45までのいずれか1つ記載の細菌。
【0064】
47. シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドのタンパク質発現の増加が、上記ポリペプチドをコードする遺伝子のコピー数を増加させることによって達成される、項目46記載の細菌。
【0065】
48. 遺伝子のコピー数の増加が、細菌においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能するプロモーターに操作可能に連結した遺伝子を含む1つ以上の外因性核酸分子(例えば1つ以上のベクター)を細菌に導入することによって達成される、項目47記載の細菌。
【0066】
49. 細菌が、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子(ベクター等)を含む、項目1から48までのいずれか1つ記載の細菌。
【0067】
50. 外因性核酸分子が、細菌においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能し、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に操作可能に連結したプロモーターをさらに含む、項目49記載の細菌。
【0068】
51. 外因性核酸分子がベクターである、項目48から50までのいずれか1つ記載の細菌。
【0069】
52. 外因性核酸分子が、細菌のゲノムに安定に組み込まれる、項目48から50までのいずれか1つ記載の細菌。
【0070】
53. シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドが、i)配列番号93~95のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびii)配列番号93~95のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、項目46から52までのいずれか1つ記載の細菌。
【0071】
54. 細菌が、腸内細菌科、バチルス、ラクトバチルスおよびコリネバクテリウムからなる群から選択される科である、項目1から53までのいずれか1つ記載の細菌。
【0072】
55. 細菌が、バチルスおよびコリネバクテリウムからなる群から選択される科である、項目1から53までのいずれか1つ記載の細菌。
【0073】
56. 細菌がバチルス科である、項目1から53までのいずれか1つ記載の細菌。
【0074】
57. 細菌がコリネバクテリウム科である、項目1から53までのいずれか1つ記載の細菌。
【0075】
58. 細菌が、バチルス、ラクトコッカス、ラクトバチルス、クロストリジウム、コリネバクテリウム、ゲオバチルス、サーモアナエロバクテリウム、ストレプトコッカス、シュードモナス、ストレプトマイセス、エシェリキア、シゲラ、アシネトバクター、シトロバクター、サルモネラ、クレブシエラ、エンテロバクター、エルウィニア、クライベラ、セラチア、セデセア、モーガネラ、ハフニア、エドワージエラ、プロビデンシア、プロテウスまたはエルシニア属である、項目1から53までのいずれか1つ記載の細菌。
【0076】
59. 細菌がバチルスまたはコリネバクテリウム属である、項目1から53までのいずれか1つ記載の細菌。
【0077】
60. 細菌がバチルス属である、項目1から53までのいずれか1つ記載の細菌。
【0078】
61. 細菌がコリネバクテリウム属である、項目1から53までのいずれか1つ記載の細菌。
【0079】
62. 細菌がバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)である、項目1から53までのいずれか1つ記載の細菌。
【0080】
63. 細菌がコリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)である、項目1から53までのいずれか1つ記載の細菌。
【0081】
64. イソプレノイドサイトカイニンまたはそのリボシド誘導体を生成する方法であって、項目1から63までのいずれか1つ記載の細菌を好適な培養条件下にて好適な培養培地中で培養することを含む、方法。
【0082】
65. イソプレノイドサイトカイニンまたはそのリボシド誘導体が、trans-ゼアチン(tZ)、trans-ゼアチンリボシド(tZR)、N-(D2-イソペンテニル)アデニン(iP)、N(6)-(ジメチルアリル)アデノシン(iPR)、ジヒドロゼアチン(DZ)、リボシルジヒドロゼアチン(DZR)およびそれらの組合せからなる群から選択される、項目64記載の方法。
【0083】
66. イソプレノイドサイトカイニンまたはそのリボシド誘導体が、それぞれtrans-ゼアチン(tZ)およびtrans-ゼアチンリボシド(tZR)である、項目65記載の方法。
【0084】
67. 方法がtrans-ゼアチン(tZ)を生成するためのものである、項目64記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1】イソプレノイドサイトカイニンを示す図である:A)リボシド:N-(D2-イソペンテニル)アデニンリボシド(iPR)、trans-ゼアチンリボシド(tZR)、cis-ゼアチンリボシド(cZR)およびジヒドロゼアチンリボシド(DZR)。B)遊離塩基:N-(D2-イソペンテニル)アデニン(iP)、trans-ゼアチン(tZ)、cis-ゼアチン(cZ)およびジヒドロゼアチン(DZ)。
図2】MEP代謝経路の概略図である。
図3】IPT(EC 2.5.1.27)およびLOG(EC 3.2.2.n1)の異種発現によるイソプレノイドサイトカイニン生合成経路を示す図である。
図4】シェーカースケール実験での実験におけるバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株のtrans-ゼアチンおよび関連イソプレノイドサイトカイニンの産生を示す図である。VKPM B2116 - 親株、TZAB14、TZAB15 - IPT-LOG。
図5】硫酸アデニンを用いたシェーカースケール実験での実験におけるバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株のtrans-ゼアチンおよび関連イソプレノイドサイトカイニンの産生を示す図である。VKPM B2116 - 親株、TZAB14 - IPT-LOG。
図6】シェーカースケール実験におけるIPTおよびLOG遺伝子とDXS遺伝子とを有するバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株によるtrans-ゼアチンおよび関連イソプレノイドサイトカイニンの産生を示す図である。VKPM B2116 - 親株、TZAB15 - IPT-LOG、TZAB43 - IPT-LOG-DXS。
図7】シェーカースケール実験における28時間後のIPT(配列番号1)およびLOG(配列番号34)またはIPT(配列番号2)およびLOG(配列番号34)を発現するバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株によるtrans-ゼアチンおよび関連イソプレノイドサイトカイニンの産生を示す図である。VKPM B2116 - 親株、TZAB1、TZAB2、TZAB3、TZAB4 - IPT(配列番号2)およびLOG(配列番号34)を有する株、TZAB14、TZAB15 - IPT(配列番号1)およびLOG(配列番号34)を有する株。
図8】シェーカースケール実験における24時間後のIPT(配列番号1)、LOG(配列番号34)と、DXS(配列番号63)の過剰発現とを有するバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株168でのサイトカイニンの産生を示す図である。
図9】シェーカースケール実験における18時間後のIPT(配列番号1)、LOG(配列番号34)と、DXS(配列番号63)の過剰発現とを有するバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株RB50でのサイトカイニンの産生を示す図である。
図10】シェーカースケール実験における24時間後のIPT(配列番号1)、LOG(配列番号34)と、DXS(配列番号63)の過剰発現とを有するバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株VKPM B2116でのサイトカイニンの産生を示す図である。
図11】シェーカースケール実験における10時間後のIPT(配列番号1)、LOG(配列番号34)と、DXS(配列番号63)の過剰発現とを有するエシェリキア・コリ(Escherichia coli)株BL21(DE3)でのサイトカイニンの産生を示す図である。
図12】シェーカースケール実験における48時間後のIPT(配列番号1)、LOG(配列番号34)と、DXS(配列番号63)の過剰発現とを有するコリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)でのサイトカイニンの産生を示す図である。
図13】シェーカースケール実験における18時間後の様々なIPT(配列番号1、配列番号6、配列番号7および配列番号9)と組み合わせてLOG8(配列番号41)を発現するバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株でのサイトカイニンの産生を示す図である。
図14】シェーカースケール実験における18時間後の様々なLOG(配列番号34~44)と組み合わせてIPT(配列番号1)を発現するバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株でのサイトカイニンの産生を示す図である。
【0086】
ここで、本発明を以下により詳細に説明する。
【0087】
発明の詳細な説明
本明細書で特に定義されない限り、使用される全ての技術用語および科学用語は、生化学、遺伝学および微生物学の分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0088】
本明細書に記載のものと同様または同等の全ての方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができ、好適な方法および材料が本明細書に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参照文献は、その全体が参照により援用される。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法および実施例は、特に指定のない限り、例示に過ぎず、限定を意図していない。
【0089】
本発明の実施には、特に記載のない限り、当業者の技能の範囲内の細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学および組換えDNAの従来の手法が用いられる。かかる手法は、文献中で十分に説明される。例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Frederick M. AUSUBEL, 2000, Wiley and son Inc, Library of Congress, USA);Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, (Sambrook et al, 2001, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press);Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait ed., 1984);Mullis et al.の米国特許第4,683,195号明細書;Nucleic Acid Hybridization (B. D. Harries & S. J. Higgins eds. 1984);Transcription And Translation (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984);Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987);Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);Methods In ENZYMOLOGY (J. Abelson and M. Simon, eds.-in-chief, Academic Press, Inc., New York)のシリーズ、特にVols.154および155 (Wu et al. eds.)ならびにVol. 185, “Gene Expression Technology” (D. Goeddel, ed.)を参照されたい。
【0090】
本発明の細菌
上述のように、本発明者らは、a)アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有する異種ポリペプチドを発現し、任意にb)サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドのタンパク質発現が増加するように改変された細菌株を操作した。実施例に示すように、このような操作された細菌株は、驚くべきことに、上清中で10mg/Lを超えるイソプレノイドサイトカイニンの異常に高い力価を示す。結果として、これは、植物細胞感染の状況がもはや必要とされず、tZおよびiP、ならびにそれらのリボシドであるtZRおよびiPR等のイソプレノイドサイトカイニンの効率的な生合成のための生合成基質および補助因子が、操作された細菌細胞によって効果的に供給されることを意味する。
【0091】
したがって、本発明は、第1の態様において、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有する異種ポリペプチドを発現する細菌を提供する。より詳細には、本発明は、a)アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有する異種ポリペプチドを発現し、任意にb)サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドのタンパク質発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加するように改変されている細菌を提供する。
【0092】
アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ(IPT)は、de novoサイトカイニン生合成経路の第1段階である、ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)または1-ヒドロキシ-2-メチル-2-ブテニル4-二リン酸(HMBDP)のいずれかによるアデノシン5’-リン酸(AMP、ADPまたはATP)のN-プレニル化を触媒する、明確に定義されたクラスの酵素である。IPTには2種類ある(EC 2.5.1.27およびEC 2.5.1.112)。IPT酵素は、細菌および植物に存在する。TzsおよびTmrの2つのIPTホモログを含むアグロバクテリウム等の細菌に由来するIPTは、プレニルアクセプタとしてAMP、ドナーとしてHMBDPまたはDMAPPを用いる(EC 2.5.1.27)。HMBDPとの反応の生成物は、tZ-ヌクレオチドである。さらに、細菌由来のIPTは、タンパク質ファミリーおよびドメインのPfamデータベース(https://pfam.xfam.org/family/ipt)のPfamファミリーIPT(PF01745)に属している。IPT Pfamドメイン遺伝子は、系統的に分散しており、アクチノバクテリア、シアノバクテリア、α-プロテオバクテリア、β-プロテオバクテリアおよびγ-プロテオバクテリアの一部のメンバー、ならびに真核生物ディクチオステリウム・ディスコイデウム(Dictyostelium discoideum)にのみ見出される(Nishii et al., 2018)。高等植物由来のIPTは、主にプレニルアクセプタとしてATPまたはADP、ドナーとしてDMAPPを用い(EC 2.5.1.112)、PfamファミリーIPPT(PF01715)に属する(https://pfam.xfam.org/family/ippt)。反応の生成物はiPであり、これがプレニル側鎖でヒドロキシル化され、tZ-ヌクレオチドを生じる。
【0093】
アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のTzs(IPT(PF01745);EC 2.5.1.27;配列番号1)は、3つのα-ヘリックス(α1~α3)で囲まれた5本鎖平行β-シートを有するN末端ドメイン、および5つのαヘリックス(α4~α8)を有するC末端ドメインの2つのドメインからなる。N末端ドメインは、ヌクレオチド結合pループモチーフGly-8-Pro-Thr-Cys-Ser-Gly-Lys-Thr-15を含み、pループを含むヌクレオシド三リン酸ヒドロラーゼ(pNTPアーゼ)スーパーファミリーと構造的に関連している。α8のC末端側は、N末端に伸び、それに付着する。ドメイン間の界面は、溶媒露出チャネルを形成し、AMPを結合する。AMPのプレニル化部位は、Asp-33およびSer-45に結合する。DMAPPは、Asp-173、Tyr-211およびHis-214に結合する。Thr-10、Asp-33およびArg-138は、IPT内で完全に保存されている。Tzsでは、側鎖によって形成される親水性領域は、プレニル-ドナー基質のヒドロキシル基の有無を区別する、基質結合ポケット内の2つの重要なアミノ酸残基であるHis-214およびAsp-173を含み、これによりHMBDPの使用が可能となる(Sugawara et al. 2008)。
【0094】
概して、本発明に従って用いられるアデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、細菌に対して異種であり、すなわち、上記ポリペプチドは、通常は細菌に見られないか、または細菌によって作製(すなわち発現)されず、異なる種に由来する。さらに、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、PfamファミリーIPT(PF01745)のメンバーに由来するか、またはそれに相当し、好ましくは、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有する細菌ポリペプチドである。「アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有する細菌ポリペプチド」とは、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドが、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)等の細菌に由来することを意味する。
【0095】
tZ、iP、tZRおよびiPRを含むイソプレノイドサイトカイニンの生合成に最も適したアデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のTzsまたはTmr等のHMBDPおよびDMAPPの両方をプレニルドナーとして使用することができる酵素である。さらに、これらはPfamファミリーIPT(PF01745)に属し、配列番号1の173位に相当する位置にAsp残基、配列番号1の211位に相当する位置にTyr残基、および/または配列番号1の214位に相当する位置にHis残基を含む。
【0096】
本発明に従って使用されるアデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは例えば、i)配列番号1~33のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号1~33のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約50%、例えば少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであり得る。
【0097】
本発明に従って使用されるアデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは例えば、i)配列番号1~33のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号1~33のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであり得る。
【0098】
本発明に従って使用されるアデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは例えば、i)配列番号1~10のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号1~10のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであり得る。
【0099】
本発明に従って使用されるアデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは例えば、i)配列番号1~10のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号1~10のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであり得る。
【0100】
本発明に従って使用されるアデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは例えば、i)配列番号1~10のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号1~10のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであり得る。
【0101】
幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号1と少なくとも50%、例えば少なくとも55%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号1と少なくとも60%、例えば少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号1と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号1と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号1と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号1と少なくとも95%、例えば少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0102】
幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号2と少なくとも50%、例えば少なくとも55%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号2と少なくとも60%、例えば少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号2と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号2と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号2と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号2と少なくとも95%、例えば少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0103】
幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号3と少なくとも50%、例えば少なくとも55%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号3と少なくとも60%、例えば少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号3と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号3と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号3と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号3と少なくとも95%、例えば少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列を含む。
【0104】
幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号4と少なくとも50%、例えば少なくとも55%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号4と少なくとも60%、例えば少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号4と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号4と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号4と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号4と少なくとも95%、例えば少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。
【0105】
幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号5と少なくとも50%、例えば少なくとも55%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号5と少なくとも60%、例えば少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号5と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号5と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号5と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号5と少なくとも95%、例えば少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を含む。
【0106】
幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号6と少なくとも50%、例えば少なくとも55%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号6と少なくとも60%、例えば少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号6と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号6と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号6と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号6と少なくとも95%、例えば少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列を含む。
【0107】
幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号7と少なくとも50%、例えば少なくとも55%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号7と少なくとも60%、例えば少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号7と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号7と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号7と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号7と少なくとも95%、例えば少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列を含む。
【0108】
幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号8と少なくとも50%、例えば少なくとも55%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号8と少なくとも60%、例えば少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号8と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号8と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号8と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号8と少なくとも95%、例えば少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0109】
幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号9と少なくとも50%、例えば少なくとも55%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号9と少なくとも60%、例えば少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号9と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号9と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号9と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号9と少なくとも95%、例えば少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列を含む。
【0110】
幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号10と少なくとも50%、例えば少なくとも55%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号10と少なくとも60%、例えば少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号10と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号10と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号10と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号10と少なくとも95%、例えば少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0111】
アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を決定する手法は、当業者に既知である。例示的な方法は、例えばTakei, Sakakibara, and Sugiyama (2001)およびFrebortova, Greplova et al, (2015)に記載されている。アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性は、例えば以下のアッセイのいずれかに従って決定することができる:
【0112】
(1)酵素を、1mM AMPおよび340μM DMAPPを含む反応混合物(1Mベタイン、20mMトリエタノールアミン、50mM KCl、10mM MgCl、1mMジチオスレイトール、1mg/mlウシ血清アルブミン、pH8.0)中にて25℃で20分間インキュベートする。1/4量の10%アセテートの添加によって反応を停止させ、18,000×gで20分間遠心分離する。得られた上清をサイトカイニン分析に供する。1単位のIPT活性は、反応の条件下で1分当たり1μmolのiPMPを生成する酵素の量として定義される(Takei, Sakakibara, and Sugiyama 2001)。
【0113】
(2)活性アッセイを、基質としての100μM AMPおよび100μM DMAPP(Echelon BioSciences,Salt Lake City,UT,USA)、ならびに100μlの精製酵素を含む200μlの反応混合物(100mM Tris/HClバッファー、pH7.5、10mM MgCl含有)中にて25℃で一晩行う。IPTの基質選好性を評価するために、ADPまたはATPをイソプレン鎖受容基質として使用し、イソペンテニル二リン酸またはHMBPP(Echelon Biosciences)をイソプレン鎖供与基質として使用する。反応をイソプレノイド基質の添加によって開始し、95℃に5分間加熱して酵素を不活性化することによって停止させる。IPT活性アッセイは、HPLCまたはキャピラリー電気泳動による反応生成物の決定と268nmでのUV検出とに基づく。サイトカイニンリボシドおよび対応する一リン酸を、Alliance 2695高速液体クロマトグラフ(Waters)に接続したSymmetry C18カラム(2.1×150mm、5μm;Waters,Milford,MA,USA)で決定する。カラムは、以下の溶媒混合物を用いる15mMギ酸アンモニウム、pH4.0(A)およびメタノール(B)の線形勾配によって溶出させた:0~25分、5~60%のB、25~26分、60~100%のB、26~27分、100%のB。15mMギ酸アンモニウム、pH4.0(A)およびアセトニトリル(B)の線形勾配をオリゴリボヌクレオチド加水分解物の分析に用いた(0~30分、5~24%のB、30~31分、24~100%のB)。流量は0.25ml/分であり、カラム温度は30℃である。生成物の濃度を、真正標準化合物(Olchemim,Olomouc,Czech Republic)を用いた検量線法により決定する。キャピラリー電気泳動をサイトカイニン二リン酸および三リン酸の決定に用いる(Frebortova, Greplova et al, 2015)。
【0114】
アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有する異種ポリペプチドを発現する以外に、本発明の細菌は任意に、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドのタンパク質発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加するように(さらに)改変されてもよい。
【0115】
したがって、幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有する異種ポリペプチドを発現し、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドのタンパク質発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加するように改変されている。
【0116】
「タンパク質発現の増加」とは、このように改変された細菌が産生するサイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加することを意味する。より詳細には、「発現の増加」とは、このように改変された細菌が産生するサイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して少なくとも10%、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも約900%、少なくとも約1000%、少なくとも約2000%、少なくとも約3000%、少なくとも約4000%、少なくとも約5000%、少なくとも約6000%、少なくとも約7000%、少なくとも約8000%、少なくとも約9000%または少なくとも約10000%増加することを意味する。所与の細胞におけるタンパク質の量は、当該技術分野で既知の任意の好適な定量化技術、例えばELISA、免疫組織化学またはウエスタンブロッティングによって決定することができる。
【0117】
タンパク質発現の増加は、当業者に既知の任意の好適な手段によって達成することができる。例えば、タンパク質発現の増加は、例えば細菌においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能するプロモーターに操作可能に連結した、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を含むベクター等の外因性核酸を細菌に導入することにより、細菌におけるサイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子のコピー数を増加させることによって達成することができる。
【0118】
タンパク質発現の増加は、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の少なくとも第2のコピーを細菌のゲノムに組み込むことによっても達成することができる。
【0119】
タンパク質発現の増加は、例えばネイティブプロモーターを、ネイティブプロモーターと比較してポリペプチドのより高い発現および過剰産生を可能にするプロモーターに置き換えることにより、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子に操作可能に連結したプロモーターの強度を増大させることによっても達成することができる。使用され得るプロモーターとしては、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)等に由来する天然プロモーター、例えばP43、P15、Pveg、Pylb、PgroES、PsigX、PtrnQ、Ppst、PsodA、PrpsF、PlepA、PliaG、PrpsF、Ppst、PfusA、PsodA、Phag、ならびにバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)で活性な人工プロモーター、または誘導性バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)プロモーター、例えばPmtlA、Pspac、PxylA、PsacB等が挙げられる。更なる例としては、コリネバクテリウム由来の天然プロモーター、例えばP CP_2454、PtufおよびPsod、E.コリ(E.coli)由来の天然プロモーター、例えばT7、ParaBAD、Plac、PtacおよびPtrc、ならびにコリネファージBFK20に由来するプロモーターP F1が挙げられる。
【0120】
タンパク質発現の増加は、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするmRNA分子上のリボソーム結合部位を改変することによっても達成することができる。リボソーム結合部位の配列を改変することで、翻訳開始速度を高め、それにより翻訳効率を向上させることができる。
【0121】
幾つかの実施形態によると、遺伝子のコピー数の増加は、宿主細胞においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能するプロモーターに操作可能に連結した遺伝子を含む1つ以上の(例えば2つまたは3つの)外因性核酸分子(例えば1つ以上のベクター)を細菌に導入することによって達成される。
【0122】
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする1つ以上の(例えば2つ、3つまたは4つの)ヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子(ベクター等)を含む。好適には、外因性核酸分子は、細菌においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能し、上記サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に操作可能に連結したプロモーターをさらに含む。幾つかの実施形態によると、外因性核酸分子は、細菌のゲノムに安定に組み込まれる。
【0123】
サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼとして酵素機能を有するサイトカイニン活性化酵素である。かかるポリペプチドは、ロンリーガイ(LOG)タンパク質とも称され、広範な生物のゲノムにコードされ、LOGタンパク質の大部分が原核生物のものである。オリザ・サティバ(Oryza sativa)、アラビドプシス・サリアナ(Arabidopsis thaliana)、クラビセプス・プルプレア(Claviceps purpurea)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)およびコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)等の幾つかの生物に由来する酵素が、生化学的および機能的研究によってLOGとして特徴付けられている。LOGタンパク質は当初、植物ホルモン活性化植物酵素として特徴付けられ、細菌LOGホモログは、実験的証拠なしに誤って推定リジンデカルボキシラーゼ(LDC)に指定された。それらの真の酵素活性は近年、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ホモログの機能分析によって確認された(Seo et al. 2016)。細菌では、二量体のI型LOGおよび六量体のII型LOGの2種類のLOGタンパク質が同定された。II型LOGタンパク質は、オリゴマー状態およびプレニル結合部位の残基が異なる。I型LOGは、Ia型およびIb型の2つのサブグループにさらに分類することができる。Ia型は殆どの生物に由来する二量体LOGを含み、Ib型は放線菌目に由来する二量体LOGを含む。II型LOGは、殆どの生物に由来する六量体LOGを含むIIa型と、高等植物に由来するLOGを含むIIb型とに分類される(Seo and Kim 2017)。
【0124】
LOGタンパク質は、iPRMPまたはtrans-ゼアチンリボシド5’-一リン酸(tZRMP)等のサイトカイニン前駆体におけるN置換塩基とリボース5’-一リン酸との間の結合の加水分解である脱ホスホリボシル化によって活性サイトカイニンを生成する。C.グルタミカム(C.glutamicum)LOGは、2つの同一の単量体から構成され、中央のβ-シートが7本の平行β-ストランドによって形成され、これが8つのα-ヘリックスで囲まれる。LOGタンパク質は、活性部位の形成に寄与する「PGGXGTXXE」モチーフを含む。活性部位は二量体のポケットに形成され、保存された「PGGXGTXXE」モチーフがポケットの表面に存在する。「PGGXGTXXE」モチーフはヌクレオチド結合部位であり、保存された残基が、結合したAMPを安定させる(Seo et al. 2016)。このモチーフは、全てのLOG酵素で高度に保存されている(Seo and Kim 2017)。
【0125】
サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、それが発現される細菌と同じ種に由来していても、またはそれが発現される細菌とは異なる種に由来していてもよい(すなわち異種である)。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、それが発現される細菌と同じ種に由来する。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、それが発現される細菌とは異なる種に由来する(すなわち異種である)。
【0126】
幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有する細菌ポリペプチドである。「サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有する細菌ポリペプチド」とは、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドが、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)等の細菌に自然由来することを意味する。
【0127】
本発明に従って使用されるサイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは例えば、i)配列番号34~62のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号34~62のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドであり得る。
【0128】
本発明に従って使用されるサイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは例えば、i)配列番号34~44のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号34~44のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドであり得る。
【0129】
幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸配列または配列番号34と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸配列または配列番号34と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸配列または配列番号34と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸配列を含む。
【0130】
幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号35のアミノ酸配列または配列番号35と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号35のアミノ酸配列または配列番号35と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号35のアミノ酸配列または配列番号35と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号35のアミノ酸配列を含む。
【0131】
幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号36のアミノ酸配列または配列番号36と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号36のアミノ酸配列または配列番号36と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号36のアミノ酸配列または配列番号36と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号36のアミノ酸配列を含む。
【0132】
幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号37のアミノ酸配列または配列番号37と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号37のアミノ酸配列または配列番号37と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号37のアミノ酸配列または配列番号37と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号37のアミノ酸配列を含む。
【0133】
幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号38のアミノ酸配列または配列番号38と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号38のアミノ酸配列または配列番号38と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号38のアミノ酸配列または配列番号38と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号38のアミノ酸配列を含む。
【0134】
幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号39のアミノ酸配列または配列番号39と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号39のアミノ酸配列または配列番号39と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号39のアミノ酸配列または配列番号39と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号39のアミノ酸配列を含む。
【0135】
幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号40のアミノ酸配列または配列番号40と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号40のアミノ酸配列または配列番号40と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号40のアミノ酸配列または配列番号40と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号40のアミノ酸配列を含む。
【0136】
幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号41のアミノ酸配列または配列番号41と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号41のアミノ酸配列または配列番号41と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号41のアミノ酸配列または配列番号41と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号41のアミノ酸配列を含む。
【0137】
幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号42のアミノ酸配列または配列番号42と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号42のアミノ酸配列または配列番号42と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号42のアミノ酸配列または配列番号42と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号42のアミノ酸配列を含む。
【0138】
幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号43のアミノ酸配列または配列番号43と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号43のアミノ酸配列または配列番号43と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号43のアミノ酸配列または配列番号43と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号43のアミノ酸配列を含む。
【0139】
幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号44のアミノ酸配列または配列番号44と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号44のアミノ酸配列または配列番号44と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号44のアミノ酸配列または配列番号44と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号44のアミノ酸配列を含む。
【0140】
サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を決定する手法は、当業者に既知である。例示的な方法は、例えばSeo et al. (2016)に記載されている。サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性は、例えば以下の方法に従って決定することができる:
【0141】
ホスホリボヒドロラーゼ活性は、薄層クロマトグラフィー(TLC)法によって分離されたアデニン環化合物を検出することによって決定される。酵素反応を20mM AMP、36mM Tris-HCl、pH8.0および23μM精製酵素の混合物中にて30℃で行った後、混合物を95℃で1.5分間加熱することによって反応を停止させる。次いで、反応混合物をPEI-セルロース-FプラスチックTLCシート(Merck Millipore)上に点着する。移動相は1M塩化ナトリウムである。TLCチャンバーにおいて展開した後、シートを完全に乾燥させる。アデニン環を含む化合物をUVランプ(290nm)によって検出する(Seo et al. 2016)。
【0142】
イソプレノイドサイトカイニンのイソペンテニル側鎖前駆体の供給量を増加させるために、メチルエリスリトール4-リン酸(MEP)経路を経る代謝フラックスを増加させてもよい。これは、主に1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸(DXP)シンターゼ(DXS)の過剰発現によって達成される。
【0143】
したがって、幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドのタンパク質発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加するように(さらに)改変されていることを特徴とする。
【0144】
「タンパク質発現の増加」とは、このように改変された細菌が産生する1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加することを意味する。より詳細には、「発現の増加」とは、改変された細菌が産生する1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して少なくとも10%、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも約900%、少なくとも約1000%、少なくとも約2000%、少なくとも約3000%、少なくとも約4000%、少なくとも約5000%、少なくとも約6000%、少なくとも約7000%、少なくとも約8000%、少なくとも約9000%または少なくとも約10000%増加することを意味する。所与の細胞におけるタンパク質の量は、当該技術分野で既知の任意の好適な定量化技術、例えばELISA、免疫組織化学またはウエスタンブロッティングによって決定することができる。
【0145】
タンパク質発現の増加は、当業者に既知の任意の好適な手段によって達成することができる。例えば、タンパク質発現の増加は、例えば細菌においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能するプロモーターに操作可能に連結した、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を含むベクター等の外因性核酸を細菌に導入することにより、細菌における1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子のコピー数を増加させることによって達成することができる。
【0146】
タンパク質発現の増加は、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の少なくとも第2のコピーを細菌のゲノムに組み込むことによっても達成することができる。
【0147】
タンパク質発現の増加は、例えばネイティブプロモーターを、ネイティブプロモーターと比較してポリペプチドのより高い発現および過剰産生を可能にするプロモーターに置き換えることにより、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子に操作可能に連結したプロモーターの強度を増大させることによっても達成することができる。使用され得るプロモーターとしては、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)等に由来する天然プロモーター、例えばP43、P15、Pveg、Pylb、PgroES、PsigX、PtrnQ、Ppst、PsodA、PrpsF、PlepA、PliaG、PrpsF、Ppst、PfusA、PsodA、Phag、ならびにバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)で活性な人工プロモーター、または誘導性バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)プロモーター、例えばPmtlA、Pspac、PxylA、PsacB等が挙げられる。更なる例としては、コリネバクテリウム由来の天然プロモーター、例えばP CP_2454、PtufおよびPsod、E.コリ(E.coli)由来の天然プロモーター、例えばT7、ParaBAD、Plac、PtacおよびPtrc、ならびにコリネファージBFK20に由来するプロモーターP F1が挙げられる。
【0148】
タンパク質発現の増加は、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドをコードするmRNA分子上のリボソーム結合部位を改変することによっても達成することができる。リボソーム結合部位の配列を改変することで、翻訳開始速度を高め、それにより翻訳効率を向上させることができる。
【0149】
幾つかの実施形態によると、遺伝子のコピー数の増加は、細菌においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能するプロモーターに操作可能に連結した遺伝子を含む1つ以上の(例えば2つまたは3つの)外因性核酸分子(例えば1つ以上のベクター)を細菌に導入することによって達成される。
【0150】
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする1つ以上の(例えば2つ、3つまたは4つの)ヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子(ベクター等)を含む。好適には、外因性核酸分子は、細菌においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能し、上記1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に操作可能に連結したプロモーターをさらに含む。幾つかの実施形態によると、外因性核酸分子は、細菌のゲノムに安定に組み込まれる。
【0151】
1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、D-グリセルアルデヒド3-リン酸とピルビン酸との間の縮合を触媒して、1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸(DXP)を生成する酵素である(DXS;E.C.2.2.1.7)。DXSは、メチルエリスリトールリン酸(MEP)経路におけるHMBDPおよびDMAPPのイソプレノイド生合成の最初の酵素段階を触媒し、そのkcat/Km値は、この経路の他の酵素よりも大幅に低い(Kuzuyama et al. 2000)。DXSは、真正細菌において単一コピーで存在するが、緑藻および高等植物は、DXSをコードする2つ以上の遺伝子を有し、これが3つの区別可能な群を形成する。高等植物では、異なるDXSイソ酵素の発現は、組織の種類および発生段階によって決まる。
【0152】
DXSは、細菌および植物において高度に保存されている。そのタンパク質配列は、トランスケトラーゼおよびピルビン酸デヒドロゲナーゼE1サブユニットと約20%の同一性を有する。3つ全ての酵素が同様の反応を触媒し、補酵素チアミンピロリン酸(TPP)を必要とする。E.コリ(E.coli)に由来するDXSは、3つのドメイン(I、IIおよびIII)を含み、これらはトランスケトラーゼおよびピルビン酸デヒドロゲナーゼのE1サブユニット中の同等ドメインと相同である。2つのDXS単量体が二量体に並んで配置される。ドメインI(残基1~319)は、同じ単量体のドメインII(残基320~495)およびIII(残基496~629)の上にある。3つ全てのドメインがα/βフォールドを有し、中央のほぼ平行なβ-シートがαヘリックス間にある。ドメインIは5本鎖平行β-シートを含み、ドメインIIは6本鎖平行β-シートを含み、ドメインIIIは5本鎖β-シートを含み、第1鎖が他の4本の鎖に対して逆平行である。ドメインIは、N末端(残基1~49)、第1鎖の後(残基81~122)、および第4鎖と第5鎖との間の接続部(残基184~250)に幾つかの拡張表面セグメントを有する。
【0153】
DXSの活性部位は、同じ単量体中のドメインIおよびIIの界面に位置する。2つのドメインの中央の平行β-シートのC末端は、互いに向かい合い、TPP補酵素は、この界面のポケットの底に位置する。TPPのアミノピリミジン環は、ドメインIIと相互作用し、ピロリン酸基はドメインIと相互作用する。チアゾリウム環のC2原子は、基質結合部位に露出する。C2原子は反応に関与する。TPPのピロリン酸基は、酵素と多数の極性相互作用を有する。活性部位は、2つのリン酸基の間に結合したマグネシウムイオンと、Asp154、Asn183およびMet185の側鎖とから構成される。DXSのGly153-Asp-Gly155-Asn183配列は、TPP結合モチーフ≫GDG-X(25-30)-N≪と一致する。C2はピルビン酸結合部位を構成する。GAPはポケット内に位置する(Xiang et al., 2007)。
【0154】
DXPの形成がMEP経路の律速段階であることが幾つかの研究により示されていることから、DXS活性の増大は、多くの種と同様にB.サブティリス(B.subtilis)においてもテルペノイド生合成を増加させる最も効果的な戦略として認識されている(Yang et al. 2019)。E.コリ(E.coli)およびデイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans)のDxsにおける単一アミノ酸突然変異が、それらの触媒活性を増大させる。E.コリ(E.coli)Dxsの突然変異Y392Fは、野生型と比較して相対触媒活性を2.5倍増大させた(Xiang et al. 2012)。DXSは、MEP経路の最終生成物であるIPPおよびDMAPPによるネガティブフィードバック機構によって調節される(Banerjee et al. 2013)。DXSは、IPPおよびDMAPPのネガティブフィードバック阻害を緩和するために部位特異的突然変異誘発の対象となる。ポプルス・トリコカルパ(Populus trichocarpa)DXSのA147G/A352Gでの突然変異は、そのIPP結合親和性を僅かに低下させたが、TPPおよびピルビン酸に対するKmを増加させ、酵素の触媒効率を約15倍低下させた(Banerjee et al., 2016)。DXS以外の経路の幾つかの他の酵素の過剰発現も試験され、種々の細菌において様々な結果が得られている。また、人工オペロン(オペロンdxs-ispD-ispF-ispHおよびispC/dxr-ispE-ispG-ispA)としてのMEP経路全体の過剰発現が、B.サブティリス(B.subtilis)において試験されている(Xue et al. 2015)。
【0155】
1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、それが発現される細菌と同じ種に由来していても、またはそれが発現される細菌とは異なる種に由来していてもよい(すなわち異種である)。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、それが発現される細菌と同じ種に由来する。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、それが発現される細菌とは異なる種に由来する(すなわち異種である)。
【0156】
好ましくは、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有する細菌ポリペプチドである。「1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有する細菌ポリペプチド」とは、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドが、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)等の細菌に自然由来することを意味する。
【0157】
本発明に従って使用される1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは例えば、i)配列番号63~70のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号63~70のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドであり得る。
【0158】
幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号63のアミノ酸配列または配列番号63と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号63のアミノ酸配列または配列番号63と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号63のアミノ酸配列または配列番号63と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号63のアミノ酸配列を含む。
【0159】
幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号64のアミノ酸配列または配列番号64と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号64のアミノ酸配列または配列番号64と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号64のアミノ酸配列または配列番号64と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号64のアミノ酸配列を含む。
【0160】
幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号65のアミノ酸配列または配列番号65と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号65のアミノ酸配列または配列番号65と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号65のアミノ酸配列または配列番号65と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号65のアミノ酸配列を含む。
【0161】
幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号66のアミノ酸配列または配列番号66と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号66のアミノ酸配列または配列番号66と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号66のアミノ酸配列または配列番号66と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号66のアミノ酸配列を含む。
【0162】
幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号67のアミノ酸配列または配列番号67と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号67のアミノ酸配列または配列番号67と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号67のアミノ酸配列または配列番号67と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号67のアミノ酸配列を含む。
【0163】
幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号68のアミノ酸配列または配列番号68と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号68のアミノ酸配列または配列番号68と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号68のアミノ酸配列または配列番号68と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号68のアミノ酸配列を含む。
【0164】
上述のように、野生型DXS配列の改変は、触媒活性を増大させ得る。したがって、本発明は、それが由来する野生型DXS酵素と比較して増大した活性または不活性化したネガティブフィードバック機構を有する突然変異体DXSの使用を特に企図する。かかる突然変異体DXS酵素の非限定的な例は、配列番号69および70に記載されている。
【0165】
幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、392位のアミノ酸がYではなく、好ましくは392位のアミノ酸がFであるという条件で、配列番号69のアミノ酸配列または配列番号69と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、392位のアミノ酸がYではなく、好ましくは392位のアミノ酸がFであるという条件で、配列番号69のアミノ酸配列または配列番号69と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、392位のアミノ酸がYではなく、好ましくは392位のアミノ酸がFであるという条件で、配列番号69のアミノ酸配列または配列番号69と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号69のアミノ酸配列を含む。
【0166】
幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、389位のアミノ酸がYではなく、好ましくは389位のアミノ酸がFであるという条件で、配列番号70のアミノ酸配列または配列番号70と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、389位のアミノ酸がYではなく、好ましくは389位のアミノ酸がFであるという条件で、配列番号70のアミノ酸配列または配列番号70と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、389位のアミノ酸がYではなく、好ましくは389位のアミノ酸がFであるという条件で、配列番号70のアミノ酸配列または配列番号70と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号70のアミノ酸配列を含む。
【0167】
1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を決定する手法は、当業者に既知である。例示的な方法は、例えばKuzuyama et al (2000)およびKudoh et al (2017)に記載されている。1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性は、例えば以下の方法に従って決定することができる:
【0168】
(1)1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性をDXSアッセイによって決定する(Kuzuyama et al., 2000):標準アッセイ系は、0.5mlの最終容量の1mM MgCl、2mM dl-ジチオスレイトール、1mMピルビン酸ナトリウム、2mM dl-グリセルアルデヒド3-リン酸および150μMチアミン二リン酸を含有する100mM Tris-HCl(pH8.0)からなる。酵素溶液を完全なアッセイ混合物に37℃で添加することによって反応を開始し、10分間のインキュベーション後に、100℃で1分間のインキュベーションにより反応を停止させる。次に、反応混合物を56℃で60分間、アルカリホスファターゼで処理し、反応生成物であるDXPを完全に脱リン酸化する。得られる脱リン酸化化合物である1-デオキシキシルロース(DX)の生成を、80℃、1ml/分の流量にてHOで溶出させるShodex KS-801(8mm×300mm)カラム(昭和電工)を用いた屈折率分光計(モデルRI-71;昭和電工、東京、日本)によってモニタリングする。この条件下では8.6分でDXが溶出する。DX生成の量は、化学合成されたDXを標準として用いて正確に推定される。1単位のDXS活性は、37℃で1分当たり1μmolのDXPを生成した酵素の量として定義される。DXSによるDXPの生成は、1ml/分の流量にて100mM KHPO(pH3.5)で溶出させるSenshu Pak NH2-1251-N(4.6mm×250mm)カラム(株式会社センシュー科学、東京、日本)を用いた高速液体クロマトグラフィーによって195nmでモニタリングする。この条件下では8.1分でDXPが溶出する。
【0169】
(2)DXSの共役酵素アッセイ(Kudoh et al., 2017):DXS活性を、E.コリ(E.coli)由来のDXRを共役酵素とする共役酵素アッセイを用いて測定する。このアッセイでは、DXS活性によって生成したDXPをさらにMEPに変換する。この段階ではNADPHが消費され、反応全体を340nmで分光光度的に測定することができる。アッセイ混合物は、100mM Tris/HCl(pH7.8)、10mM MgCl、0.3mMチアミンピロリン酸(TPP)、1mMジチオスレイトール(DTT)、0.3mMニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、様々な濃度のピルビン酸ナトリウム(0.05~5mM)およびD,L-GAP(0.2~2.0mM)、ならびにDXR(100または50mg/ml)を含有する。混合物を温度制御分光光度計(モデルUV-1800、株式会社島津製作所、京都、日本)内にて30℃で2分間インキュベートし、DXSサンプルに添加し(最終濃度50または25mg/ml)、反応を開始する。340nmでの吸収を30℃でモニタリングすることによって反応を追跡する。
【0170】
プリンヌクレオチドは、DNAおよびRNAの構造成分、エネルギー担体(すなわちATPおよびGTP)、酵素の補助因子(すなわちNADおよびNADP)であるため、細胞生理に不可欠な代謝産物である。プリンヌクレオチドの合成は、D-リボース5-リン酸およびATPからの5’-ホスホリボシル-ピロリン酸(PRPP)の合成によって始まる。酵素PRPPシンターゼ(リボース-リン酸ジホスホキナーゼ;EC 2.7.6.1)は、D-リボース5-リン酸へのATPのジホスホリル基の移行を触媒し、AMPが同時に形成される。PRPPシンターゼは、自由生活生物に普遍的である。殆どの細菌は、PRPPシンターゼをコードする遺伝子を1つ有するが、真核生物には2つ以上の遺伝子が存在する。次の段階は、PRPPおよびグルタミンからの5-ホスホ-β-D-リボシルアミンの合成であり、B.サブティリス(B.subtilis)ではpurFにコードされるグルタミン5-ホスホリボシル-1-ピロリン酸(PRPP)アミドトランスフェラーゼ(アミドホスホリボシルトランスフェラーゼ;EC 2.4.2.14)によって触媒される。これはプリンde novo合成の律速反応である。5-ホスホ-β-D-リボシルアミンからイノシン-5-リン酸(IMP)の合成をもたらす更なる10段階は、purオペロンにコードされる酵素によって触媒される。purオペロンは、purRにコードされるPurRリプレッサーによって転写レベルで負に調節され、また影響を受ける遺伝子の上流の制御領域にある特定のDNA配列であるPurBoxによって調節される。IMPは、AMPとGMPとの合成の分岐点である。AMPは、PurAおよびPurBによって触媒される2つの酵素段階でIMPから合成されるが、GMPは、GuaBおよびGuaAによってIMPから合成される。プリン合成の酵素をコードする遺伝子またはオペロンの発現は、成長培地中のプリン塩基およびヌクレオシドによって調節される。酵素PRPPシンテターゼ、PRPPアミドトランスフェラーゼ、アデニロコハク酸シンテターゼおよびIMPデヒドロゲナーゼは、経路の最終生成物のフィードバック阻害によって調節される。PurRリプレッサーは、転写の開始を阻害する。サルベージ経路は、ヒポキサンチン、グアニンおよびアデニンを用いて対応するモノヌクレオチドAMPおよびGMPを生成することにも関与する。
【0171】
プリンヌクレオチド生合成経路は、一次代謝におけるプリンヌクレオチドの役割のためによく研究されている。これにはde novo合成経路およびサルベージ経路の両方が含まれる。転写および代謝レベルでのプリンヌクレオチド生合成経路の脱調節により、プリンヌクレオチド生合成経路を経る代謝の流れが促進され、その結果、プリンヌクレオチド生合成経路から直接生じる生成物:イノシン、グアノシン、アデノシンおよびリボフラビンの収率が高まる。プリンヌクレオチド生合成経路の生成物の収率を高めるために遺伝子過剰発現、遺伝子欠失、および突然変異による酵素脱調節を含む様々な改変が首尾よく用いられている。プリンフラックスの増加に好影響を与えるB.サブティリス(B.subtilis)酵素における例示的な改変を下記表1に挙げる。
【0172】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0173】
したがって、幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、プリンヌクレオチド生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素の発現および/または活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加するように(さらに)改変されていることを特徴とする。
【0174】
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、アデノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素の発現および/または活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加するように(さらに)改変されていることを特徴とする。
【0175】
プリンヌクレオチド生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素(例えば、アデノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素)は、それが発現される細菌と同じ種に由来していても、またはそれが発現される細菌とは異なる種に由来していてもよい(すなわち異種である)。幾つかの実施形態によると、プリンヌクレオチド生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素(例えば、アデノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素)は、それが発現される細菌と同じ種に由来する。幾つかの実施形態によると、プリンヌクレオチド生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素(例えば、アデノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素)は、それが発現される細菌とは異なる種に由来する(すなわち異種である)。
【0176】
「タンパク質発現の増加」とは、このように改変された細菌が産生するプリンヌクレオチド生合成経路に関与する酵素(例えば、アデノシン一リン酸生合成経路に関与する酵素)の量が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加することを意味する。より詳細には、「発現の増加」とは、このように改変された細菌が産生するプリンヌクレオチド生合成経路に関与する酵素(例えば、アデノシン一リン酸生合成経路に関与する酵素)の量が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して少なくとも10%、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも約900%、少なくとも約1000%、少なくとも約2000%、少なくとも約3000%、少なくとも約4000%、少なくとも約5000%、少なくとも約6000%、少なくとも約7000%、少なくとも約8000%、少なくとも約9000%または少なくとも約10000%増加することを意味する。所与の細胞におけるタンパク質の量は、当該技術分野で既知の任意の好適な定量化技術、例えばELISA、免疫組織化学またはウエスタンブロッティングによって決定することができる。
【0177】
タンパク質発現の増加は、当業者に既知の任意の好適な手段によって達成することができる。例えば、タンパク質発現の増加は、例えば細菌においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能するプロモーターに操作可能に連結した、プリンヌクレオチド生合成経路に関与する酵素(例えば、アデノシン生合成経路に関与する酵素)をコードする遺伝子を含むベクター等の外因性核酸を細菌に導入することにより、細菌におけるプリンヌクレオチド生合成経路に関与する酵素(例えば、アデノシン一リン酸生合成経路に関与する酵素)をコードする遺伝子のコピー数を増加させることによって達成することができる。
【0178】
タンパク質発現の増加は、プリンヌクレオチド生合成経路に関与する酵素(例えば、アデノシン一リン酸生合成経路に関与する酵素)をコードする遺伝子の少なくとも第2のコピーを細菌のゲノムに組み込むことによっても達成することができる。
【0179】
タンパク質発現の増加は、例えばネイティブプロモーターを、ネイティブプロモーターと比較して酵素のより高い発現および過剰産生を可能にするプロモーターに置き換えることにより、プリンヌクレオチド生合成経路に関与する酵素(例えば、アデノシン一リン酸生合成経路に関与する酵素)をコードする遺伝子に操作可能に連結したプロモーターの強度を増大させることによっても達成することができる。使用され得るプロモーターとしては、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)等に由来する天然プロモーター、例えばP43、P15、Pveg、Pylb、PgroES、PsigX、PtrnQ、Ppst、PsodA、PrpsF、PlepA、PliaG、PrpsF、Ppst、PfusA、PsodA、Phag、ならびにバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)で活性な人工プロモーター、または誘導性バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)プロモーター、例えばPmtlA、Pspac、PxylA、PsacB等が挙げられる。更なる例としては、コリネバクテリウム由来の天然プロモーター、例えばP CP_2454、PtufおよびPsod、E.コリ(E.coli)由来の天然プロモーター、例えばT7、ParaBAD、Plac、PtacおよびPtrc、ならびにコリネファージBFK20に由来するプロモーターP F1が挙げられる。
【0180】
タンパク質発現の増加は、プリンヌクレオチド生合成経路に関与する酵素をコードするmRNA分子上のリボソーム結合部位を改変することによっても達成することができる。リボソーム結合部位の配列を改変することで、翻訳開始速度を高め、それにより翻訳効率を向上させることができる。
【0181】
幾つかの実施形態によると、遺伝子のコピー数の増加は、宿主細胞においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能するプロモーターに操作可能に連結した遺伝子を含む1つ以上の(例えば2つまたは3つの)外因性核酸分子(例えば1つ以上のベクター)を細菌に導入することによって達成される。
【0182】
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、プリンヌクレオチド生合成経路に関与する酵素(例えば、アデノシン一リン酸生合成経路に関与する酵素)をコードする1つ以上の(例えば2つ、3つまたは4つの)ヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子(ベクター等)を含む。好適には、外因性核酸分子は、細菌においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能し、上記プリンヌクレオチド生合成経路に関与する酵素(例えば、上記アデノシン一リン酸生合成経路に関与する酵素)をコードするヌクレオチド配列に操作可能に連結したプロモーターをさらに含む。幾つかの実施形態によると、外因性核酸分子は、細菌のゲノムに安定に組み込まれる。
【0183】
プリンヌクレオチド生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素は、リボース-リン酸ジホスホキナーゼ活性を有する酵素、アミドホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素、ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有する酵素、ホスホリボシルアミン-グリシンリガーゼ活性を有する酵素、ホスホリボシルグリシンアミドホルミルトランスフェラーゼ活性を有する酵素、ホスホリボシルホルミルグリシンアミジンシンターゼ活性を有する酵素、ホスホリボシルホルミルグリシンアミジンシクロリガーゼ活性を有する酵素、N5-カルボキシアミノイミダゾールリボヌクレオチドシンテターゼ活性を有する酵素、N5-カルボキシアミノイミダゾールリボヌクレオチドムターゼ活性を有する酵素、ホスホリボシルアミノイミダゾールスクシノカルボキサミドシンターゼ活性を有する酵素、アデニロコハク酸リアーゼ活性を有する酵素、ホスホリボシルアミノイミダゾール-カルボキサミドホルミルトランスフェラーゼ活性を有する酵素、IMPシクロヒドロラーゼ活性を有する酵素、アデニロコハク酸シンターゼ活性を有する酵素、アデニル酸キナーゼ活性を有する酵素、ATPシンターゼ活性を有する酵素、アデノシンキナーゼ活性を有する酵素、IMPデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素およびGMPシンターゼ活性を有する酵素からなる群から選択される酵素であり得る。
【0184】
アデノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素は、リボース-リン酸ジホスホキナーゼ活性を有する酵素、アミドホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素、ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有する酵素、ホスホリボシルアミン-グリシンリガーゼ活性を有する酵素、ホスホリボシルグリシンアミドホルミルトランスフェラーゼ活性を有する酵素、ホスホリボシルホルミルグリシンアミジンシンターゼ活性を有する酵素、ホスホリボシルホルミルグリシンアミジンシクロリガーゼ活性を有する酵素、N5-カルボキシアミノイミダゾールリボヌクレオチドシンテターゼ活性を有する酵素、N5-カルボキシアミノイミダゾールリボヌクレオチドムターゼ活性を有する酵素、ホスホリボシルアミノイミダゾールスクシノカルボキサミドシンターゼ活性を有する酵素、アデニロコハク酸リアーゼ活性を有する酵素、ホスホリボシルアミノイミダゾール-カルボキサミドホルミルトランスフェラーゼ活性を有する酵素、IMPシクロヒドロラーゼ活性を有する酵素、アデニロコハク酸シンターゼ活性を有する酵素、アデニル酸キナーゼ活性を有する酵素、ATPシンターゼ活性を有する酵素およびアデノシンキナーゼ活性を有する酵素からなる群から選択される酵素であり得る。
【0185】
幾つかの実施形態によると、プリンヌクレオチド生合成経路(アデノシン一リン酸生合成経路等)に関与する少なくとも1つの酵素は、リボース-リン酸ジホスホキナーゼ活性を有する酵素、アミドホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素、ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有する酵素、アデニロコハク酸リアーゼ活性を有する酵素、ホスホリボシルアミノイミダゾール-カルボキサミドホルミルトランスフェラーゼ活性を有する酵素、アデニロコハク酸シンターゼ活性を有する酵素およびアデノシンキナーゼ活性を有する酵素からなる群から選択される。
【0186】
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、プリンヌクレオチド生合成経路に関与するその内因性酵素の1つ以上に関して表1に開示されるような改変のいずれか1つを有するように(さらに)改変されている。特に、細菌は、問題の酵素の阻害剤に耐性を示すようにするランダム突然変異誘発の結果であってもよい。
【0187】
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、プリンヌクレオチド分解経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素の発現および/または活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少するように(さらに)改変されていることを特徴とする。
【0188】
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、プリンヌクレオチド分解経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素の発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少するように改変されていてもよい。
【0189】
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、上記プリンヌクレオチド分解経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素をコードする内在性遺伝子の発現レベルが、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少するように改変されていてもよい。内在性遺伝子の発現レベルは例えば、それ以外は同一の細菌と比較して少なくとも50%、例えば少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%減少し得る。
【0190】
幾つかの実施形態によると、上記酵素をコードする内在性遺伝子は、例えば遺伝子配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている。
【0191】
幾つかの実施形態によると、上記酵素をコードする内在性遺伝子は、上記酵素をコードする内在性遺伝子をDNA切断、好ましくは二本鎖切断により選択的に不活性化することが可能なレアカットエンドヌクレアーゼを微生物に導入または発現させることによって不活性化されている。内在性遺伝子を不活性化するために本発明に従って使用されるレアカットエンドヌクレアーゼは、例えば転写アクチベーター様エフェクター(TALE)ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはRNA誘導型エンドヌクレアーゼであり得る。
【0192】
上記酵素をコードする内在性遺伝子を不活性化する方法の1つは、CRISPRiシステムを使用することである。CRISPRiシステムは、遺伝子発現の標的抑制またはゲノム上の標的位置のブロックのためのツールとして開発された。CRISPRiシステムは、触媒的に不活性な「死んだ」Cas9タンパク質(dCas9)と、DNAに対するdCas9の結合部位を画定するガイドRNAとからなる。
【0193】
このため、幾つかの実施形態によると、上記酵素をコードする内在性遺伝子は、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ、例えば触媒的に不活性なCas9タンパク質と、上記酵素をコードするゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)シングルガイドRNA(sgRNA)とを細菌に導入または発現させることによって不活性化される。
【0194】
幾つかの実施形態によると、上記プリンヌクレオチド分解経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素の発現は、阻害によって減少する。
【0195】
上記内因性酵素の発現の阻害は、当該技術分野で既知の任意の好適な手段によって達成することができる。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムまたは干渉RNA(RNAi)分子、例えばマイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)または短ヘアピンRNA(shRNA)等の阻害性核酸分子の使用を伴う遺伝子サイレンシング技術によって発現を阻害することができる。
【0196】
幾つかの実施形態によると、上記プリンヌクレオチド分解経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素の発現は、上記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子の転写抑制および/または翻訳抑制によって減少する(例えば阻害される)。
【0197】
幾つかの実施形態によると、上記プリンヌクレオチド分解経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素の発現は、阻害性核酸分子を細菌に導入または発現させることによって阻害される。例えば、阻害性核酸分子は、細菌において上記阻害性核酸分子の産生を引き起こすように機能するプロモーター、例えば誘導性プロモーターに操作可能に連結した、上記阻害性核酸分子をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子によって導入することができる。好適には、阻害性核酸分子は、内因性酵素をコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)ものである。標的に応じて、コードゲノムDNAの転写および/またはコードmRNAの翻訳を阻害する。
【0198】
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸分子は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムまたは干渉RNA(RNAi)分子である。好ましくは、かかる核酸分子は、対象のポリペプチドまたは酵素をコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNA(例えば、ポリペプチドをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNA)の相補体の少なくとも10個の連続ヌクレオチドを含む。
【0199】
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。かかるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ポリペプチドをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)核酸分子(DNAまたはRNAのいずれか)である。
【0200】
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸分子は、ハンマーヘッド型リボザイム等のリボザイムである。リボザイム分子は、ポリペプチドの翻訳を防ぐためにmRNA転写産物を触媒的に切断するように設計されている。
【0201】
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸分子は干渉RNA(RNAi)分子である。RNA干渉は、RNA分子が発現を阻害する生物学的プロセスであり、通例、特定のmRNAの破壊を引き起こす。RNAi分子の例示的なタイプとしては、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)および短ヘアピンRNA(shRNA)が挙げられる。幾つかの実施形態によると、RNAi分子はmiRNAである。幾つかの実施形態によると、RNAi分子はsiRNAである。幾つかの実施形態によると、RNAi分子はshRNAである。
【0202】
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、プリンヌクレオチド分解経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素の活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少するように改変されている。
【0203】
プリンヌクレオチド分解経路に関与する内因性酵素の活性の減少は、当該技術分野で既知の任意の好適な手段によって達成することができる。例えば、活性の低下または喪失をもたらす1つ以上の突然変異を酵素の活性部位に導入することによって活性を減少させることができる。このように、幾つかの実施形態によると、プリンヌクレオチド分解経路に関与する内因性酵素の活性が、活性の低下または喪失をもたらす少なくとも1つの活性部位突然変異によって減少する。少なくとも1つの活性部位突然変異は、例えば少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換であり得る。
【0204】
幾つかの実施形態によると、プリンヌクレオチド分解経路に関与する少なくとも1つの酵素は、プリンヌクレオシドホスホリラーゼおよびアデノシン-ホスホリボシルトランスフェラーゼからなる群から選択される。幾つかの実施形態によると、プリンヌクレオチド分解経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素は、プリンヌクレオシドホスホリラーゼである。幾つかの実施形態によると、プリンヌクレオチド分解経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素は、アデノシン-ホスホリボシルトランスフェラーゼである。
【0205】
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、グアノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素の発現および/または活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少するように(さらに)改変されている。
【0206】
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、上記グアノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素をコードする内在性遺伝子の発現レベルが、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少するように改変されていてもよい。内在性遺伝子の発現レベルは例えば、それ以外は同一の細菌と比較して少なくとも50%、例えば少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%減少し得る。
【0207】
幾つかの実施形態によると、上記酵素をコードする内在性遺伝子は、例えば遺伝子配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている。
【0208】
幾つかの実施形態によると、上記酵素をコードする内在性遺伝子は、上記酵素をコードする内在性遺伝子をDNA切断、好ましくは二本鎖切断により選択的に不活性化することが可能なレアカットエンドヌクレアーゼを微生物に導入または発現させることによって不活性化されている。内在性遺伝子を不活性化するために本発明に従って使用されるレアカットエンドヌクレアーゼは、例えば転写アクチベーター様エフェクター(TALE)ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはRNA誘導型エンドヌクレアーゼであり得る。
【0209】
上記酵素をコードする内在性遺伝子を不活性化する方法の1つは、CRISPRiシステムを使用することである。CRISPRiシステムは、遺伝子発現の標的抑制またはゲノム上の標的位置のブロックのためのツールとして開発された。CRISPRiシステムは、触媒的に不活性な「死んだ」Cas9タンパク質(dCas9)と、DNAに対するdCas9の結合部位を画定するガイドRNAとからなる。
【0210】
このため、幾つかの実施形態によると、上記酵素をコードする内在性遺伝子は、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ、例えば触媒的に不活性なCas9タンパク質と、上記酵素をコードするゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)シングルガイドRNA(sgRNA)とを細菌に導入または発現させることによって不活性化される。
【0211】
幾つかの実施形態によると、上記グアノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素の発現は、阻害によって減少する。
【0212】
上記内因性酵素の発現の阻害は、当該技術分野で既知の任意の好適な手段によって達成することができる。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムまたは干渉RNA(RNAi)分子、例えばマイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)または短ヘアピンRNA(shRNA)等の阻害性核酸分子の使用を伴う遺伝子サイレンシング技術によって発現を阻害することができる。
【0213】
幾つかの実施形態によると、上記グアノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素の発現は、上記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子の転写抑制および/または翻訳抑制によって減少する(例えば阻害される)。
【0214】
幾つかの実施形態によると、上記グアノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素の発現は、阻害性核酸分子を細菌に導入または発現させることによって阻害される。例えば、阻害性核酸分子は、細菌において上記阻害性核酸分子の産生を引き起こすように機能するプロモーター、例えば誘導性プロモーターに操作可能に連結した、上記阻害性核酸分子をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子によって導入することができる。好適には、阻害性核酸分子は、内因性酵素をコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)ものである。標的に応じて、コードゲノムDNAの転写および/またはコードmRNAの翻訳を阻害する。
【0215】
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸分子は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムまたは干渉RNA(RNAi)分子である。好ましくは、かかる核酸分子は、対象のポリペプチドまたは酵素をコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNA(例えば、ポリペプチドをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNA)の相補体の少なくとも10個の連続ヌクレオチドを含む。
【0216】
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。かかるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ポリペプチドをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)核酸分子(DNAまたはRNAのいずれか)である。
【0217】
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸分子は、ハンマーヘッド型リボザイム等のリボザイムである。リボザイム分子は、ポリペプチドの翻訳を防ぐためにmRNA転写産物を触媒的に切断するように設計されている。
【0218】
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸分子は干渉RNA(RNAi)分子である。RNA干渉は、RNA分子が発現を阻害する生物学的プロセスであり、通例、特定のmRNAの破壊を引き起こす。RNAi分子の例示的なタイプとしては、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)および短ヘアピンRNA(shRNA)が挙げられる。幾つかの実施形態によると、RNAi分子はmiRNAである。幾つかの実施形態によると、RNAi分子はsiRNAである。幾つかの実施形態によると、RNAi分子はshRNAである。
【0219】
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、グアノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの内因性酵素の活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少するように改変されている。
【0220】
グアノシン一リン酸生合成経路に関与する内因性酵素の活性の減少は、当該技術分野で既知の任意の好適な手段によって達成することができる。例えば、活性の低下または喪失をもたらす1つ以上の突然変異を酵素の活性部位に導入することによって活性を減少させることができる。このように、幾つかの実施形態によると、グアノシン一リン酸生合成経路に関与する内因性酵素の活性が、活性の低下または喪失をもたらす少なくとも1つの活性部位突然変異によって減少する。少なくとも1つの活性部位突然変異は、例えば少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換であり得る。
【0221】
幾つかの実施形態によると、グアノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素は、IMPデヒドロゲナーゼおよびGMPシンテターゼからなる群から選択される。
【0222】
幾つかの実施形態によると、グアノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素は、IMPデヒドロゲナーゼである。
【0223】
幾つかの実施形態によると、グアノシン一リン酸生合成経路に関与する少なくとも1つの酵素は、GMPシンテターゼである。
【0224】
CYP450は、ヘム含有酵素の多様な群であり、広範な酸化反応を触媒する。シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)もイソペンテニルアデニン型サイトカイニンのヒドロキシル化を触媒する。シロイヌナズナでは、イソペンテニルアデニン型サイトカイニンをヒドロキシル化する、CYP735A1およびCYP735A2の2つのシトクロムP450モノオキシゲナーゼが存在する。CYP735Aは、iP-ヌクレオチドのヒドロキシル化の立体特異的反応を触媒し、より低い親和性でiP-ヌクレオシドまたはiPのヒドロキシル化を触媒して、tZを合成する(Takei et al., 2004b)。植物起源の殆どのCYP450は、小胞体(ER)の膜に固定される。シトクロムP450モノオキシゲナーゼは、ロドコッカス・ファシアンス(Rhodococcus fascians)等の細菌にも存在する。シトクロムP450は一般に、補助タンパク質の性質に応じて大きく2つのクラスに分類される。クラスI P450は、ミトコンドリアの膜上および細菌に見られ、クラスIIシトクロムP450は、哺乳動物細胞の肝ミクロゾーム酵素に代表される。クラスI P450は、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)含有レダクターゼ、鉄硫黄タンパク質(フェレドキシン)およびP450を含む3成分系である。クラスIIシトクロムP450は、FAD含有、フラビンモノヌクレオチド(FMN)含有のNADPH依存性シトクロムP450レダクターゼおよびP450から構成される。クラスIIIおよびクラスIV CYP450も細菌で報告されているが、クラスIが細菌において最も一般的なCYP450である。シュードモナス・プチダP450camの最もよく特徴付けられている細菌シトクロムP450モノオキシゲナーゼ系は、プチダレドキシンレダクターゼ;中間鉄硫黄タンパク質であるプチダレドキシン;およびシトクロムP450camの3つの可溶性タンパク質からなる。CYP450 Fas1は、線状プラスミドのfas領域にコードされ、R.ファシアンス(R.fascians)が産生するサイトカイニンをヒドロキシル化すると考えられる(Frebort et al., 2011)。
【0225】
シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)は、iP-ヌクレオチドをヒドロキシル化し、AMPおよびDMAPPから3つの酵素段階でtrans-ゼアチンを生成することができる。この酵素は、iPRMPのプレニル側鎖を立体特異的にヒドロキシル化することで、tZRMPへのバイパスを作ることができ、これをさらに活性化してtrans-ゼアチンを生成することができる。
【0226】
したがって、幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドのタンパク質発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加するように(さらに)改変されていることを特徴とする。
【0227】
「タンパク質発現の増加」とは、このように改変された細菌が産生するシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加することを意味する。より詳細には、「発現の増加」とは、このように改変された細菌が産生するシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して少なくとも10%、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも約900%、少なくとも約1000%、少なくとも約2000%、少なくとも約3000%、少なくとも約4000%、少なくとも約5000%、少なくとも約6000%、少なくとも約7000%、少なくとも約8000%、少なくとも約9000%または少なくとも約10000%増加することを意味する。所与の細胞におけるタンパク質の量は、当該技術分野で既知の任意の好適な定量化技術、例えばELISA、免疫組織化学またはウエスタンブロッティングによって決定することができる。
【0228】
タンパク質発現の増加は、当業者に既知の任意の好適な手段によって達成することができる。例えば、タンパク質発現の増加は、例えば細菌においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能するプロモーターに操作可能に連結した、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を含むベクター等の外因性核酸を細菌に導入することにより、細菌におけるシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子のコピー数を増加させることによって達成することができる。
【0229】
タンパク質発現の増加は、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の少なくとも第2のコピーを細菌のゲノムに組み込むことによっても達成することができる。
【0230】
タンパク質発現の増加は、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子に操作可能に連結したプロモーターの強度を増大させることによっても達成することができる。使用され得るプロモーターとしては、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)等に由来する天然プロモーター、例えばP43、P15、Pveg、Pylb、PgroES、PsigX、PtrnQ、Ppst、PsodA、PrpsF、PlepA、PliaG、PrpsF、Ppst、PfusA、PsodA、Phag、ならびにバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)で活性な人工プロモーター、または誘導性バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)プロモーター、例えばPmtlA、Pspac、PxylA、PsacB等が挙げられる。更なる例としては、コリネバクテリウム由来の天然プロモーター、例えばP CP_2454、PtufおよびPsod、E.コリ(E.coli)由来の天然プロモーター、例えばT7、ParaBAD、Plac、PtacおよびPtrc、ならびにコリネファージBFK20に由来するプロモーターP F1が挙げられる。
【0231】
タンパク質発現の増加は、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドをコードするmRNA分子上のリボソーム結合部位を改変することによっても達成することができる。リボソーム結合部位の配列を改変することで、翻訳開始速度を高め、それにより翻訳効率を向上させることができる。
【0232】
幾つかの実施形態によると、遺伝子のコピー数の増加は、宿主細胞においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能するプロモーターに操作可能に連結した遺伝子を含む1つ以上の(例えば2つまたは3つの)外因性核酸分子(例えば1つ以上のベクター)を細菌に導入することによって達成される。
【0233】
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドをコードする1つ以上の(例えば2つ、3つまたは4つの)ヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子(ベクター等)を含む。好適には、外因性核酸分子は、細菌においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能し、上記シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP45)活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に操作可能に連結したプロモーターをさらに含む。幾つかの実施形態によると、外因性核酸分子は、細菌のゲノムに安定に組み込まれる。
【0234】
シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、それが発現される細菌と同じ種に由来していても、またはそれが発現される細菌とは異なる種に由来していてもよい(すなわち異種である)。幾つかの実施形態によると、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、それが発現される細菌と同じ種に由来する。幾つかの実施形態によると、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、それが発現される細菌とは異なる種に由来する(すなわち異種である)。例としては、細菌がシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子を有しない場合、上記細菌で発現されるシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、上記細菌に対して異種である。
【0235】
幾つかの実施形態によると、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有する細菌ポリペプチドである。「シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有する細菌ポリペプチド」とは、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドが、ロドコッカス・ファシアンス(Rhodococcus fascians)等の細菌に自然由来することを意味する。シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有する細菌ポリペプチドの非限定的な例を配列番号93に記載する。
【0236】
幾つかの実施形態によると、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有する植物ポリペプチドである。「シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有する植物ポリペプチド」とは、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドが、アラビドプシス・サリアナ(Arabidopsis thaliana)等の植物に自然由来することを意味する。シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有する植物ポリペプチドの非限定的な例を配列番号94および95に記載する。
【0237】
本発明に従って使用されるシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは例えば、i)配列番号93~95のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;およびii)配列番号93~95のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択される、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドであり得る。
【0238】
幾つかの実施形態によると、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、配列番号93のアミノ酸配列または配列番号93と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、配列番号93のアミノ酸配列または配列番号93と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、配列番号93のアミノ酸配列または配列番号93と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、配列番号93のアミノ酸配列を含む。
【0239】
幾つかの実施形態によると、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、配列番号94のアミノ酸配列または配列番号94と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、配列番号94のアミノ酸配列または配列番号94と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、配列番号94のアミノ酸配列または配列番号94と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、配列番号94のアミノ酸配列を含む。
【0240】
幾つかの実施形態によると、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、配列番号95のアミノ酸配列または配列番号95と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、配列番号95のアミノ酸配列または配列番号95と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、配列番号95のアミノ酸配列または配列番号95と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、配列番号95のアミノ酸配列を含む。
【0241】
本発明による細菌は、任意の好適な細菌から作製することができる。細菌はグラム陽性またはグラム陰性であり得る。グラム陰性細菌宿主細胞の非限定的な例としては、エシェリキア、エルウィニア、クレブシエラおよびシトロバクター属からの種が挙げられる。グラム陽性細菌宿主細胞の非限定的な例としては、バチルス、ラクトコッカス、ラクトバチルス、クロストリジウム、コリネバクテリウム、ストレプトマイセス、ストレプトコッカスおよびセルロモナス属からの種が挙げられる。幾つかの実施形態によると、本発明の細菌はグラム陽性である。幾つかの実施形態によると、本発明の細菌はグラム陰性である。
【0242】
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、腸内細菌科、バチルス、ラクトバチルスおよびコリネバクテリウムからなる群から選択される科の細菌である。幾つかの実施形態によると、組換え宿主細胞は、腸内細菌科の細菌である。幾つかの実施形態によると、組換え宿主細胞は、バチルス科の細菌である。幾つかの実施形態によると、組換え宿主細胞は、コリネバクテリウム科の細菌である。
【0243】
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、バチルス、ラクトコッカス、ラクトバチルス、クロストリジウム、コリネバクテリウム、ゲオバチルス、サーモアナエロバクテリウム、ストレプトコッカス、シュードモナス、ストレプトマイセス、エシェリキア、シゲラ、アシネトバクター、シトロバクター、サルモネラ、クレブシエラ、エンテロバクター、エルウィニア、クライベラ、セラチア、セデセア、モーガネラ、ハフニア、エドワージエラ、プロビデンシア、プロテウスまたはエルシニア属の細菌であり得る細菌である。
【0244】
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、バチルス属の細菌である。バチルス属の細菌の非限定的な例は、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)およびバチルス・モジャベンシス(Bacillus mojavensis)である。幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)である。
【0245】
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、コリネバクテリウム属の細菌である。コリネバクテリウム属の細菌の非限定的な例は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)およびコリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)である。一部によると、本発明の細菌は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)である。一部によると、本発明の細菌は、コリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)である。本発明の文脈において、コリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)およびコリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)は同じ種を指し、区別なく使用され得る。
【0246】
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、エシェリキア属の細菌である。エシェリキア属の細菌の非限定的な例は、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)である。一部によると、本発明の細菌は、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)である。
【0247】
上述のように、本発明の細菌は、本明細書に詳述するように1つ以上のポリペプチドを発現するように改変され、これは、上記ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子、例えばDNA分子が細菌に導入されていることを意味し得る。このため、本発明の細菌は、問題のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むDNA分子等の外因性核酸分子を含むことがある。DNA分子等の外因性核酸分子を細菌細胞に導入する手法は、当業者に既知であり、特に形質転換(例えば、熱ショックまたは自然形質転換)が挙げられる。
【0248】
細菌におけるポリペプチドの(過剰)発現を促進するために、外因性核酸分子は、細菌細胞においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能し、上記ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に操作可能に連結したプロモーター等の好適な調節要素を含んでいてもよい。
【0249】
本発明に従って有用なプロモーターは、所与の宿主細胞においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能する任意の既知のプロモーターである。多くのかかるプロモーターが当業者に既知である。かかるプロモーターとしては、通常は他の遺伝子と関連するプロモーター、および/または任意の細菌から単離されたプロモーターが挙げられる。タンパク質発現のためのプロモーターの使用は、一般に分子生物学の当業者に既知であり、例えば、Sambrook et al., Molecular cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. , 1989を参照されたい。用いられるプロモーターは誘導性、例えば温度誘導性プロモーター(例えば、それぞれ温度感受性λリプレッサーc1857によって制御され得るpLまたはpRファージλプロモーター)であってもよい。プロモーターの文脈において使用される「誘導性」という用語は、温度の変化または化学物質(「化学誘導物質」)の存在等の刺激が存在する場合にのみ、プロモーターが操作可能に連結したヌクレオチド配列の転写を誘導することを意味する。本明細書で使用される場合、本発明による「化学的誘導」は、外因性または内因性物質(高分子、例えばタンパク質または核酸を含む)を宿主細胞に物理的に適用することを指す。これは、宿主細胞に存在する標的プロモーターの転写速度を高める効果を有する。代替的には、用いられるプロモーターは構成的であってもよい。プロモーターの文脈において使用される「構成的」という用語は、プロモーターが刺激(熱ショック、化学物質等)の非存在下で、操作可能に連結したヌクレオチド配列の転写を誘導することができることを意味する。
【0250】
温度誘導系は、例えば熱不安定性リプレッサーによって抑制されるプロモーターを用いることで作用する。これらのリプレッサーは、例えば30℃のより低い温度で活性を有するが、37℃では正確にフォールディングすることができないため、不活性である。したがって、かかる回路を用いることで、遺伝子をリプレッサーとともにゲノムに組み込むことによっても対象の遺伝子を直接調節することができる。かかる温度誘導性発現系の例は、熱不安定性cI857リプレッサーによって調節されるpLおよび/またはpR λファージプロモーターに基づく。ゲノム組込みDE3系と同様、T7 RNAポリメラーゼ遺伝子の発現も温度制御プロモーター系を用いて制御することができ、T7プロモーターを用いて対象の遺伝子の発現を制御することができる。
【0251】
細菌において機能するプロモーターの非限定的な例としては、構成的および誘導性の両方のプロモーター、例えばT7プロモーター、β-ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系;アルカリホスファターゼ(phoA)プロモーター、トリプトファン(trp)プロモーター系、テトラサイクリンプロモーター、λ-ファージプロモーター、リボソームタンパク質プロモーター;ならびにtacプロモーター等のハイブリッドプロモーターが挙げられる。他の細菌プロモーターおよび合成プロモーターも好適である。
【0252】
外因性核酸分子は、プロモーターに加えて5’非翻訳領域(5’UTR)および3’非翻訳領域(3’UTR)から選択される少なくとも1つの調節要素をさらに含んでいてもよい。原核生物および真核生物に由来する多くのかかる5’UTRおよび3’UTRが当業者に既知である。かかる調節要素としては、通常は他の遺伝子と関連する5’UTRおよび3’UTR、ならびに/または任意の細菌から単離された5’UTRおよび3’UTRが挙げられる。
【0253】
通常、5’UTRは、通常は開始コドンの3~10塩基対上流にあるシャイン-ダルガノ配列としても知られるリボソーム結合部位(RBS)を含む。
【0254】
外因性核酸分子は、ベクターまたはベクターの一部、例えば発現ベクターであり得る。通常、かかるベクターは、細菌細胞において染色体外に留まり、すなわち細菌の核または核様体領域の外に見られる。
【0255】
外因性核酸分子が細菌のゲノムに安定に組み込まれることも本発明により企図される。例えば相同組換えにより宿主細胞のゲノムに安定に組み込むための手段が当業者に既知である。
【0256】
本発明の方法
本発明は、イソプレノイドサイトカイニンまたはそのリボシド誘導体を生成する方法であって、本発明による細菌を好適な培養条件下にて好適な培養培地中で培養することを含む、方法も提供する。
【0257】
方法は、イソプレノイドサイトカイニンまたはそのリボシド誘導体を培養培地から回収することをさらに含み得る。
【0258】
幾つかの実施形態によると、イソプレノイドサイトカイニンまたはそのリボシド誘導体は、trans-ゼアチン(tZ)、trans-ゼアチンリボシド(tZR)、N-(D2-イソペンテニル)アデニン(iP)、N-(ジメチルアリル)アデノシン(iPR)、ジヒドロゼアチン(DZ)、リボシルジヒドロゼアチン(DZR)およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0259】
幾つかの実施形態によると、イソプレノイドサイトカイニンまたはそのリボシド誘導体は、それぞれtrans-ゼアチン(tZ)およびtrans-ゼアチンリボシド(tZR)である。
【0260】
用いられる培養培地は、問題の細菌細胞の培養に適した任意の従来の培地とすることができ、従来技術の原理に従って構成され得る。培地は通常、それぞれの細菌の成長および生存に必要とされる全ての栄養素、例えば炭素源および窒素源、ならびに他の無機塩を含有する。好適な培地、例えば最少培地または複合培地は、商業的供給業者から入手可能であるか、または公表されているレセプト、例えばアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)の菌株カタログに従って調製することができる。当業者に既知の非限定的な標準培地としては、ルリアベルターニ(LB)ブロス、サブローデキストロース(SD)ブロス、MSブロス、酵母ペプトンデキストロース、BMMY、GMMYまたは酵母麦芽エキス(YM)ブロスが挙げられ、全て市販されている。B.サブティリス(B.subtilis)、L.ラクティス(L.lactis)またはE.コリ(E.coli)細胞等の細菌細胞の培養に適した培地の非限定的な例としては、最少培地および富栄養培地、例えばルリアブロス(LB)、M9培地、M17培地、SA培地、MOPS培地、テリフィックブロス、YT等が挙げられる。
【0261】
炭素源は、当該技術分野で既知の任意の好適な炭素基質、特に微生物の培養および/または発酵に一般に使用されている任意の炭素基質とすることができる。好適な発酵性炭素基質の非限定的な例としては、炭水化物(例えば、アラビノースもしくはキシロース等のC5糖、またはグルコース等のC6糖)、グリセロール、グリセリン、アセテート、ジヒドロキシアセトン、1炭素原子源、メタノール、メタン、油、動物性脂肪、動物油、植物油、脂肪酸、脂質、リン脂質、グリセロ脂質、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、再生可能炭素源、ポリペプチド(例えば、微生物または植物のタンパク質またはペプチド)、酵母エキス、酵母エキスからの成分、ペプトン、カザミノ酸、または上述の2つ以上の任意の組合せが挙げられる。
【0262】
窒素源として、アンモニアおよび硫酸アンモニウム等の様々なアンモニウム塩、アミン等の他の窒素化合物、ペプトン、大豆加水分解物および発酵微生物の消化物等の天然窒素源を使用することができる。ミネラルとして、一リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化カルシウム等を使用することができる。
【0263】
それぞれtrans-ゼアチン(tZ)およびtrans-ゼアチンリボシド(tZR)であるようなイソプレノイドサイトカイニンまたはそのリボシド誘導体の生成をさらに改善するために、培養培地にアデニンまたはアデノシンの供給源、例えば硫酸アデニンを添加してもよい。このため、幾つかの実施形態によると、培養培地は硫酸アデニンを含む。培養培地中の硫酸アデニンの濃度は、一般に約0.1g/L~約4g/L、例えば約1g/L~約3.5g/Lの範囲であり得る。幾つかの実施形態によると、培養培地中の硫酸アデニンの濃度は、約2.5g/L~約3.5g/Lの範囲である。しかしながら、酵母エキス等の他のアデニンまたはアデノシンの供給源も、本発明に従って使用が企図される。
【0264】
培養は、好ましくは好気条件下で、例えば振盪培養、および通気を伴う撹拌培養により、約20~約45℃、例えば約30~38℃、例えば約37℃の温度で行うことができる。幾つかの実施形態によると、培養は約30~38℃、例えば約37℃の温度で行われる。培養物のpHは、通常は5超、例えば約6~約8、好ましくは約6.5~約7.5、より好ましくは約6.8~約7.2の範囲である。幾つかの実施形態によると、培養は約6~約8のpHで行われる。培養物のpHはアンモニア、炭酸カルシウム、様々な酸、様々な塩基および緩衝剤で調整することができる。培養は、10~70時間の範囲、例えば10~24時間または10~48時間の範囲の期間にわたって行うことができる。
【0265】
培養後に、細胞等の固形物を遠心分離または膜濾過によって培養培地から除去することができる。イソプレノイドサイトカイニンまたはそのリボシド誘導体は、化学化合物を培地から単離および精製する従来の方法によって回収することができる。よく知られた精製手順としては、遠心分離または濾過、沈殿、イオン交換、クロマトグラフィー法、例えばイオン交換クロマトグラフィーまたはゲル濾過クロマトグラフィー、および結晶化法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0266】
このため、本発明は、本明細書に詳述する方法によって得ることができるイソプレノイドサイトカイニンまたはそのリボシド誘導体を提供する。
【0267】
略語
iP - N-(D2-イソペンテニル)アデニン
iPR - N-(D2-イソペンテニル)アデニンリボシド、別名N-(D2-イソペンテニル)アデノシン
tZ - trans-ゼアチン
tZR - trans-リボシルゼアチン、別名trans-ゼアチンリボシド
DZ - ジヒドロゼアチン
DZR - リボシルジヒドロゼアチン、別名ジヒドロゼアチンリボシド
cZ - cis-ゼアチン
MVA経路 - メバロン酸生合成経路
MEP経路 - メチルエリスリトールリン酸生合成経路
DMAPP - ジメチルアリル二リン酸
HMBDP - 1-ヒドロキシ-2-メチル-2-ブテニル4-二リン酸
DXP - 1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸
DXS - 1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ;DXP-シンターゼ(EC 2.2.1.7)
tZRMP - trans-ゼアチンリボシド5’-一リン酸
iPRMP - N-(D2-イソペンテニル)アデニンリボシド5’-一リン酸
DZRMP - ジヒドロゼアチンリボシド5’-一リン酸
cZRMP - cis-ゼアチンリボシド5’-一リン酸
IPT - アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ(EC 2.5.1.27)
LOG - サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ「ロンリーガイ」(EC 3.2.2.n1)
CYP450 - シトクロムP450モノオキシゲナーゼ
【0268】
或る特定の他の定義
本明細書で使用される場合、「アデニル酸イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド」(“polypeptide having adenylate isopentenyltransferase activity” or a “polypeptide, which has adenylate isopentenyltransferase activity”)は、以下の反応を触媒するポリペプチドを意味する:ジメチルアリル二リン酸+AMP<=>二リン酸+N(6)-(ジメチルアリル)アデノシン5’-リン酸(EC 2.5.1.27)および任意に1-ヒドロキシ-2-メチル-2-ブテニル4-二リン酸+AMP<=>二リン酸+trans-ゼアチンリボシド5’-リン酸。かかるポリペプチドの非限定的な例を配列番号1~33に示す。
【0269】
本明細書で使用される場合、「サイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ活性を有するポリペプチド」(“polypeptide having cytokinin riboside 5’-monophosphate phosphoribohydrolase activity” or a “polypeptide which has cytokinin riboside 5’-monophosphate phosphoribohydrolase activity”)は、以下の反応を触媒するポリペプチドを意味する:N(6)-(Δ(2)-イソペンテニル)-アデノシン5’-リン酸+H(2)O<=>N(6)-(ジメチルアリル)アデニン+D-リボース5’-リン酸(EC 3.2.2.n1)。かかるポリペプチドの非限定的な例を配列番号34~62に示す。
【0270】
本明細書で使用される場合、「1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチド」(“polypeptide having 1-deoxy-D-xylulose-5-phosphate synthase activity” or a “polypeptide, which has 1-deoxy-D-xylulose-5-phosphate synthase activity”)は、以下の反応を触媒するポリペプチドを意味する:ピルビン酸+D-グリセルアルデヒド3-リン酸<=>1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸+CO(2)(EC 2.2.1.7)。かかるポリペプチドの非限定的な例を配列番号63~70に示す。
【0271】
本明細書で使用される場合、「リボース-リン酸ジホスホキナーゼ活性を有する酵素」(“enzyme having ribose-phosphate diphosphokinase activity” or an “enzyme, which has ribose-phosphate diphosphokinase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:ATP+D-リボース5-リン酸<=>AMP+5-ホスホ-α-D-リボース1-二リン酸(EC 2.7.6.1)。リボース-リン酸ジホスホキナーゼ活性を有する酵素は、細菌遺伝子prsまたはそのオーソログにコードされる。
【0272】
本明細書で使用される場合、「アミドホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素」(“enzyme having amidophosphoribosyltransferase activity” or an “enzyme, which has amidophosphoribosyltransferase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:5-ホスホ-β-D-リボシルアミン+二リン酸+L-グルタミン酸<=>L-グルタミン+5-ホスホ-α-D-リボース1-二リン酸+HO(EC 2.4.2.14)。アミドホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素は、細菌遺伝子purFまたはそのオーソログにコードされる。
【0273】
本明細書で使用される場合、「ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有する酵素」(“enzyme having formyltetrahydrofolate deformylase activity” or an “enzyme, which has formyltetrahydrofolate deformylase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:10-ホルミルテトラヒドロ葉酸+HO<=>ギ酸+テトラヒドロ葉酸(EC 3.5.1.10)。アミドホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素は、細菌遺伝子purUまたはそのオーソログにコードされる。
【0274】
本明細書で使用される場合、「ホスホリボシルアミン-グリシンリガーゼ活性を有する酵素」(“enzyme having phosphoribosylamine-glycine ligase activity” or an “enzyme, which has phosphoribosylamine-glycine ligase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:ATP+5-ホスホ-β-D-リボシルアミン+グリシン<=>ADP+リン酸+N-(5-ホスホ-β-D-リボシル)グリシンアミド(EC 6.3.4.13)。ホスホリボシルアミン-グリシンリガーゼ活性を有する酵素は、細菌遺伝子purDまたはそのオーソログにコードされる。
【0275】
本明細書で使用される場合、「ホスホリボシルグリシンアミドホルミルトランスフェラーゼ活性を有する酵素」(“enzyme having phosphoribosylglycineamide formyltransferase activity” or an “enzyme, which has phosphoribosylglycineamide formyltransferase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:10-ホルミルテトラヒドロ葉酸+N-(5-ホスホ-β-D-リボシル)グリシンアミド<=>テトラヒドロ葉酸+N-ホルミル-N-(5-ホスホ-β-D-リボシル)グリシンアミド(EC 2.1.2.2)。ホスホリボシルグリシンアミドホルミルトランスフェラーゼ活性を有する酵素は、細菌遺伝子purTまたはそのオーソログにコードされる。
【0276】
本明細書で使用される場合、「ホスホリボシルホルミルグリシンアミジンシンターゼ活性を有する酵素」(“enzyme having phosphoribosylformylglycinamidine synthase activity” or an “enzyme, which has phosphoribosylformylglycinamidine synthase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:ATP+N-ホルミル-N-(5-ホスホ-β-D-リボシル)グリシンアミド+L-グルタミン+HO<=>ADP+リン酸+2-(ホルムアミド)-N-(5-ホスホ-β-D-リボシル)アセトアミジン+L-グルタミン酸(EC 6.3.5.3)。ホスホリボシルホルミルグリシンアミジンシンターゼ活性を有する酵素は、細菌遺伝子purLまたはそのオーソログにコードされる。
【0277】
本明細書で使用される場合、「ホスホリボシルホルミルグリシンアミジンシクロリガーゼ活性を有する酵素」(“enzyme having phosphoribosylformylglycineamidine cyclo-ligase activity” or an “enzyme, which has phosphoribosylformylglycineamidine cyclo-ligase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:ATP+2-(ホルムアミド)-N-(5-ホスホ-β-D-リボシル)アセトアミジン<=>ADP+リン酸+5-アミノ-1-(5-ホスホ-β-D-リボシル)イミダゾール(EC 6.3.3.1)。ホスホリボシルホルミルグリシンアミジンシクロリガーゼ活性を有する酵素は、細菌遺伝子purMまたはそのオーソログにコードされる。
【0278】
本明細書で使用される場合、「N5-カルボキシアミノイミダゾールリボヌクレオチドシンテターゼ活性を有する酵素」(“enzyme having N5-carboxyaminoimidazole ribonucleotide synthetase activity” or an “enzyme, which has N5-carboxyaminoimidazole ribonucleotide synthetase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:ATP+5-アミノ-1-(5-ホスホ-D-リボシル)イミダゾール+HCO <=>ADP+リン酸+5-カルボキシアミノ-1-(5-ホスホ-D-リボシル)イミダゾール(EC 6.3.4.18)。N5-カルボキシアミノイミダゾールリボヌクレオチドシンテターゼ活性を有する酵素は、細菌遺伝子purKまたはそのオーソログにコードされる。
【0279】
本明細書で使用される場合、「N5-カルボキシアミノイミダゾールリボヌクレオチドムターゼ活性を有する酵素」(“enzyme having N5-carboxyaminoimidazole ribonucleotide mutase activity” or an “enzyme, which has N5-carboxyaminoimidazole ribonucleotide mutase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:5-カルボキシアミノ-1-(5-ホスホ-D-リボシル)イミダゾール<=>5-アミノ-1-(5-ホスホ-D-リボシル)イミダゾール-4-カルボン酸(EC 5.4.99.18)。N5-カルボキシアミノイミダゾールリボヌクレオチドムターゼ活性を有する酵素は、細菌遺伝子purEまたはそのオーソログにコードされる。
【0280】
本明細書で使用される場合、「ホスホリボシルアミノイミダゾールスクシノカルボキサミドシンターゼ活性を有する酵素」(“enzyme having phosphoribosylaminoimidazolesuccinocarboxamide synthase activity” or an “enzyme, which has phosphoribosylaminoimidazolesuccinocarboxamide synthase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:ATP+5-アミノ-1-(5-ホスホ-D-リボシル)イミダゾール-4-カルボン酸+L-アスパラギン酸<=>ADP+リン酸+(S)-2-(5-アミノ-1-(5-ホスホ-D-リボシル)イミダゾール-4-カルボキサミド)コハク酸(EC 6.3.2.6)。ホスホリボシルアミノイミダゾールスクシノカルボキサミドシンターゼ活性を有する酵素は、細菌遺伝子purCまたはそのオーソログにコードされる。
【0281】
本明細書で使用される場合、「アデニロコハク酸リアーゼ活性を有する酵素」(“enzyme having adenylosuccinate lyase activity” or an “enzyme, which has adenylosuccinate lyase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:(S)-2-(5-アミノ-1-(5-ホスホ-D-リボシル)イミダゾール-4-カルボキサミド)コハク酸<=>フマル酸+5-アミノ-1-(5-ホスホ-D-リボシル)イミダゾール-4-カルボキサミド(EC 4.3.2.2)。アデニロコハク酸リアーゼ活性を有する酵素は、細菌遺伝子purBまたはそのオーソログにコードされる。
【0282】
本明細書で使用される場合、「ホスホリボシルアミノイミダゾール-カルボキサミドホルミルトランスフェラーゼ活性を有する酵素」(“enzyme having phosphoribosylaminoimidazole-carboxamide formyltransferase activity” or an “enzyme, which has phosphoribosylaminoimidazole-carboxamide formyltransferase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:10-ホルミルテトラヒドロ葉酸+5-アミノ-1-(5-ホスホ-D-リボシル)イミダゾール-4-カルボキサミド<=>テトラヒドロ葉酸+5-ホルムアミド-1-(5-ホスホ-D-リボシル)イミダゾール-4-カルボキサミド(EC 2.1.2.3)。ホスホリボシルアミノイミダゾール-カルボキサミドホルミルトランスフェラーゼ活性を有する酵素は、細菌遺伝子purHまたはそのオーソログにコードされる。
【0283】
本明細書で使用される場合、「IMPシクロヒドロラーゼ活性を有する酵素」(“enzyme having IMP cyclohydrolase activity” or an “enzyme, which has IMP cyclohydrolase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:IMP+HO<=>5-ホルムアミド-1-(5-ホスホ-D-リボシル)イミダゾール-4-カルボキサミド(EC 3.5.4.10)。IMPシクロヒドロラーゼ活性を有する酵素は、例えば細菌遺伝子purHまたはそのオーソログにコードされる。
【0284】
本明細書で使用される場合、「アデニロコハク酸シンターゼ活性を有する酵素」(“enzyme having adenylosuccinate synthase activity” or an “enzyme, which has adenylosuccinate synthase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:GTP+IMP+L-アスパラギン酸<=>GDP+リン酸+N-(1,2-ジカルボキシエチル)-AMP(EC 6.3.4.4)。アデニロコハク酸シンターゼ活性を有する酵素は、細菌遺伝子purAまたはそのオーソログにコードされる。
【0285】
本明細書で使用される場合、「アデニル酸キナーゼ活性を有する酵素」(“enzyme having adenylate kinase activity” or an “enzyme, which has adenylate kinase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:ATP+AMP<=>2ADP(EC 2.7.4.3)。アデニル酸キナーゼ活性を有する酵素は、細菌遺伝子adkまたはそのオーソログにコードされる。
【0286】
本明細書で使用される場合、「ATPシンターゼ活性を有する酵素」(“enzyme having ATP synthase activity” or an “enzyme, which has ATP synthase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:ATP+HO+H(サイトゾル)<=>ADP+リン酸+H(ペリプラズム)(EC 3.6.3.14)。ATPシンターゼ活性を有する酵素は、例えば細菌atpオペロン(遺伝子atpB、atpF、atpE、atpD、atpG、atpA、atpHおよびatpCを含む)またはそのオーソログにコードされるATPシンターゼFまたはF複合体である。
【0287】
本明細書で使用される場合、「アデノシンキナーゼ活性を有する酵素」(“enzyme having adenosine kinase activity” or an “enzyme, which has adenosine kinase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:ATP+アデノシン<=>ADP+AMP(EC 2.7.1.20)。アデノシンキナーゼ活性を有する酵素は、細菌遺伝子adkまたそのオーソログにコードされる。
【0288】
本明細書で使用される場合、「IMPデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素」(“enzyme having IMP dehydrogenase activity” or an “enzyme, which has IMP dehydrogenase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:イノシン5’-リン酸+NAD+HO<=>キサントシン5’-リン酸+NADH(EC 1.1.1.205)。IMPデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素は、細菌遺伝子guaBまたはそのオーソログにコードされる。
【0289】
本明細書で使用される場合、「GMPシンターゼ活性を有する酵素」(“enzyme having GMP synthase activity” or an “enzyme, which has GMP synthase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:ATP+XMP+L-グルタミン+HO<=>AMP+二リン酸+GMP+L-グルタミン酸(EC 6.3.5.2)。GMPシンターゼ活性を有する酵素は、細菌遺伝子guaAまたはそのオーソログにコードされる。
【0290】
本明細書で使用される場合、「プリンヌクレオシドホスホリラーゼ活性を有する酵素」(“enzyme having purine nucleoside phosphorylase activity” or an “enzyme, which has purine nucleoside phosphorylase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:プリンヌクレオシド+リン酸<=>プリン+α-D-リボース1-リン酸(EC 2.4.2.1)。プリンヌクレオシドホスホリラーゼ活性を有する酵素は、例えば細菌遺伝子deoDまたはそのオーソログにコードされる。
【0291】
本明細書で使用される場合、「アデノシンホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素」(“enzyme having adenosine phosphoribosyltransferase activity” or an “enzyme, which has adenosine phosphoribosyltransferase activity”)は、以下の反応を触媒する酵素を意味する:AMP+二リン酸<=>アデニン+5-ホスホ-α-D-リボース1-二リン酸(EC 2.4.2.7)。アデノシンホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素は、例えば細菌遺伝子aptまたはそのオーソログにコードされる。
【0292】
本明細書で使用される場合、「プリンヌクレオチド生合成経路」は、ヌクレオチドが合成されるde novo生合成経路およびサルベージ経路の両方を含むと理解される。
【0293】
本明細書で使用される場合、「アデノシン一リン酸生合成経路」は、アデノシン一リン酸が合成されるde novo生合成経路およびサルベージ経路の両方を含むと理解される。
【0294】
本明細書で使用される場合、「グアノシン一リン酸生合成経路」は、グアノシン一リン酸が合成されるde novo生合成経路およびサルベージ経路の両方を含むと理解される。
【0295】
本明細書で使用される場合、「シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチド」(“polypeptide having cytochrome P450 monooxygenase (CYP450) activity” or a “polypeptide, which has cytochrome P450 monooxygenase (CYP450) activity”)は、以下のトランスヒドロキシル化反応を触媒するポリペプチドを意味する:1)N6-(Δ2-イソペンテニル)-アデノシン5’-一リン酸+還元型[NADPH-ヘムタンパク質レダクターゼ]+酸素→trans-ゼアチンリボシド一リン酸+酸化型[NADPH-ヘムタンパク質レダクターゼ]+HO;2)N6-(Δ2-イソペンテニル)-アデノシン5’-三リン酸+還元型[NADPH-ヘムタンパク質レダクターゼ]+酸素→trans-ゼアチンリボシド三リン酸+酸化型[NADPH-ヘムタンパク質レダクターゼ]+HO;3)N6-(Δ2-イソペンテニル)-アデノシン5’-二リン酸+還元型[NADPH-ヘムタンパク質レダクターゼ]+酸素→trans-ゼアチンリボシド二リン酸+酸化型[NADPH-ヘムタンパク質レダクターゼ]+HO(EC 1.14.14.-)。シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)活性を有するポリペプチドは、例えば細菌遺伝子FAS1、またはアラビドプシス・サリアナ(Arabidopsis thaliana)(植物)遺伝子CYP735A1およびCYP735A2、またはそのオーソログにコードされる。非限定的な例としては、配列番号93~95が挙げられる。
【0296】
「ポリペプチド」および「タンパク質」は、長さまたは翻訳後修飾(例えばグリコシル化、リン酸化、脂質化、ミリストイル化、ユビキチン化等)にかかわらず、アミド結合によって共有結合した少なくとも2つのアミノ酸のポリマーを表すために本明細書で区別なく使用される。D-およびL-アミノ酸、ならびにD-およびL-アミノ酸の混合物がこの定義に含まれる。
【0297】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、長さまたは塩基修飾にかかわらず、ホスホジエステル結合によって共有結合した少なくとも2つの核酸モノマー単位または塩基(例えばアデニン、シトシン、グアニン、チミン)のポリマーを表すために本明細書で区別なく使用される。
【0298】
例えば細菌、核酸またはポリペプチドに関して使用される「組換え」または「非自然発生」は、そうでなければ自然界には存在しない様式で修飾された、またはそれと同一であるが、合成物質から、かつ/もしくは組換え技術を用いた操作によって生成もしくは誘導された、物質またはその物質の自然もしくは天然形態に対応する物質を指す。非限定的な例としては、特に、細胞の天然(非組換え)形態に見られない遺伝子を発現するか、またはそうでなければ異なるレベルで発現される天然遺伝子を発現する組換え細菌細胞が挙げられる。
【0299】
本明細書で遺伝子または核酸分子の文脈において使用される「異種」または「外因性」は、それが存在する細菌のゲノムの一部として天然に存在しない、または天然に存在する場合とは異なるゲノム内の位置に見られる遺伝子または核酸分子(すなわちDNAまたはRNA分子)を指す。このように、「異種」または「外因性」の遺伝子または核酸分子は、細菌に対して内因性ではなく、微生物に外因的に導入されたものである。「異種」遺伝子または核酸分子のDNA分子は、宿主DNAとして異なる生物、異なる種、異なる属または異なる界に由来し得る。
【0300】
本明細書でポリペプチドの文脈において使用される「異種」は、ポリペプチドが通常は宿主微生物に見られず、または宿主微生物によって作製(すなわち発現)されず、異なる生物、異なる種、異なる属または異なる界に由来することを意味する。
【0301】
本明細書で使用される場合、「オーソログ」(“ortholog” or “orthologs”)という用語は、共通の祖先遺伝子に由来するが、異なる種に存在する遺伝子、それによりコードされる核酸分子、すなわちmRNA、またはそれによりコードされるタンパク質を指す。
【0302】
遺伝子の「発現レベルの低下」とは、改変された細菌が産生する転写産物の量、それぞれ上記遺伝子によってコードされるポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少することを意味する。より詳細には、遺伝子の「発現レベルの低下」とは、改変された細菌が産生する転写産物の量、それぞれ上記遺伝子によってコードされるポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して少なくとも10%、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%減少することを意味する。遺伝子発現のレベルは、PCR、サザンブロッティング等を含む既知の方法によって決定することができる。加えて、遺伝子発現のレベルは、ノーザンブロッティング、定量RT-PCR等を含む様々な既知の方法を用いて、遺伝子から転写されるmRNAの量を測定することで推定することができる。遺伝子によってコードされるポリペプチドの量は、ELISA、免疫組織化学またはウエスタンブロッティング等を含む既知の方法によって測定することができる。
【0303】
遺伝子の発現は、遺伝子によってコードされるポリペプチドの細胞内活性が、突然変異を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少するように、改変された細菌のゲノム内の遺伝子に突然変異を導入することによって減少させることができる。遺伝子の発現の減少をもたらす突然変異としては、遺伝子によってコードされるポリペプチドにおいてアミノ酸置換を引き起こす1ヌクレオチド以上の置換(ミスセンス突然変異)、終止コドンの導入(ナンセンス突然変異)、フレームシフトを引き起こすヌクレオチドの欠失もしくは挿入、薬剤耐性遺伝子の挿入、または遺伝子の一部もしくは遺伝子全体の欠失が挙げられる(Qiu and Goodman, 1997;Kwon et al., 2000)。プロモーター、シャイン-ダルガノ(SD)配列等の発現調節配列の改変等によっても発現を減少させることができる。遺伝子の発現は、「λ-レッド媒介遺伝子置換」等の遺伝子置換によって減少させることもできる(Datsenko and Wanner, 2000)。λ-レッド媒介遺伝子置換は、本明細書に記載される1つ以上の遺伝子を不活性化する特に好適な方法である。
【0304】
「不活性化する」、「不活性化」および「不活性化した」は、遺伝子の文脈において使用される場合、問題の遺伝子がもはや機能性タンパク質を発現しないことを意味する。遺伝子配列の一部もしくは全体の欠失、遺伝子のリーディングフレームの移動、ミスセンス/ナンセンス突然変異の導入、または遺伝子発現を制御する配列、例えばプロモーター、エンハンサー、アテニュエーター、リボソーム結合部位等を含む遺伝子の調節領域の改変のために改変DNA領域が遺伝子を天然に発現することができない可能性がある。好ましくは、対象の遺伝子は、遺伝子置換等による遺伝子配列の一部または全体の欠失によって不活性化される。不活性化は、対象の遺伝子をDNA切断、好ましくは二本鎖切断により選択的に不活性化することが可能なレアカットエンドヌクレアーゼを導入または発現させることによっても達成され得る。本発明の文脈における「レアカットエンドヌクレアーゼ」としては、転写アクチベーター様エフェクター(TALE)ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)およびRNA誘導型エンドヌクレアーゼが挙げられる。
【0305】
細菌のゲノム内の遺伝子の有無は、PCR、サザンブロッティング等を含む既知の方法によって検出することができる。加えて、遺伝子発現のレベルは、ノーザンブロッティング、定量RT-PCR等を含む様々な既知の方法を用いて、遺伝子から転写されるmRNAの量を測定することで推定することができる。遺伝子によってコードされるタンパク質の量は、SDS-PAGEに続くイムノブロッティングアッセイ(ウエスタンブロッティング分析)等を含む既知の方法によって測定することができる。
【0306】
遺伝子の「発現レベルの増加」とは、改変された細菌が産生する転写産物の量、それぞれ上記遺伝子によってコードされるポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加することを意味する。より詳細には、遺伝子の「発現レベルの増加」とは、改変された細菌が産生する転写産物の量、それぞれ上記遺伝子によってコードされるポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して少なくとも10%、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも約900%、少なくとも約1000%、少なくとも約2000%、少なくとも約3000%、少なくとも約4000%、少なくとも約5000%、少なくとも約6000%、少なくとも約7000%、少なくとも約8000%、少なくとも約9000%または少なくとも約10000%増加することを意味する。遺伝子発現のレベルは、PCR、サザンブロッティング等を含む既知の方法によって決定することができる。加えて、遺伝子発現のレベルは、ノーザンブロッティング、定量RT-PCR等を含む様々な既知の方法を用いて、遺伝子から転写されるmRNAの量を測定することで推定することができる。遺伝子によってコードされるポリペプチドの量は、ELISA、免疫組織化学またはウエスタンブロッティング等を含む既知の方法によって測定することができる。
【0307】
ポリペプチドの「発現レベルの増加」とは、改変された微生物が産生する問題のポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して増加することを意味する。より詳細には、ポリペプチドの「発現レベルの増加」とは、改変された細菌が産生する問題のポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して少なくとも10%、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも約900%、少なくとも約1000%、少なくとも約2000%、少なくとも約3000%、少なくとも約4000%、少なくとも約5000%、少なくとも約6000%、少なくとも約7000%、少なくとも約8000%、少なくとも約9000%または少なくとも約10000%増加することを意味する。所与の細胞において産生されるポリペプチドの量は、当該技術分野で既知の任意の好適な定量化技術、例えばELISA、免疫組織化学またはウエスタンブロッティングによって決定することができる。
【0308】
ポリペプチド発現の増加は、当業者に既知の任意の好適な手段によって達成することができる。例えば、ポリペプチド発現の増加は、微生物においてポリペプチドをコードする遺伝子のコピー数を増加させること、例えば微生物においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能するプロモーターに操作可能に連結した、ポリペプチドをコードする遺伝子を含む外因性核酸、例えばベクターを微生物に導入することによって達成され得る。ポリペプチド発現の増加は、ポリペプチドをコードする遺伝子の少なくとも第2のコピーを微生物のゲノムに組み込むことによっても達成することができる。ポリペプチド発現の増加は、ポリペプチドをコードする遺伝子に操作可能に連結したプロモーターの強度を増大させることによっても達成することができる。ポリペプチド発現の増加は、ポリペプチドをコードするmRNA分子上のリボソーム結合部位を改変することによっても達成することができる。リボソーム結合部位の配列を改変することで、翻訳開始速度を高め、それにより翻訳効率を向上させることができる。
【0309】
本明細書で使用される場合、ポリペプチド(例えばプリンヌクレオチド分解経路に関与する酵素)の発現が「減少した」、「減少する」またはその「減少」とは、改変された細菌における上記ポリペプチドの発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(対照)における上記ポリペプチドの発現と比較して低下することを意味する。改変された細菌におけるポリペプチドの発現は、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(対照)における上記ポリペプチドの発現と比較して少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%もしくは100%、または10%~100%の整数(例えば6%、7%、8%等)の任意のパーセンテージで低下し得る。より詳細には、ポリペプチドの発現が「減少した」、「減少する」またはその「減少」とは、改変された細菌におけるポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(対照)における上記ポリペプチドの量と比較して少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%もしくは100%、または10%~100%の整数(例えば6%、7%、8%等)の任意のパーセンテージで低下することを意味する。微生物におけるポリペプチドの発現または量は、ELISA、免疫組織化学、ウエスタンブロッティングまたはフローサイトメトリー等の手法を含む当該技術分野で既知の任意の好適な手段によって決定することができる。
【0310】
本明細書で使用される場合、ポリペプチド(例えばプリンヌクレオチド分解経路に関与する酵素)の活性が「減少した」、「減少する」またはその「減少」とは、改変された細菌における上記ポリペプチドの触媒活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(対照)における上記ポリペプチドの触媒活性と比較して低下することを意味する。改変された細菌におけるポリペプチドの活性は、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(対照)における上記ポリペプチドの発現と比較して少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%もしくは100%、または10%~100%の整数(例えば6%、7%、8%等)の任意のパーセンテージで低下し得る。微生物におけるポリペプチドの活性は、任意の好適なタンパク質および酵素活性アッセイによって決定することができる。
【0311】
本明細書で使用される場合、「酵素の阻害剤」は、酵素の触媒活性を阻害する天然または合成の任意の化学化合物を指す。酵素の阻害剤は、必ずしも100%または完全な阻害を達成する必要はない。この点で、酵素の阻害剤は、任意のレベルの阻害を誘導することができる。
【0312】
「置換」または「置換された」は、或るアミノ酸残基を別のアミノ酸残基に置き換えることによるポリペプチドの改変を指し、例えばポリペプチド配列中のセリン残基をグリシンまたはアラニン残基で置き換えることは、アミノ酸置換である。ポリヌクレオチドに関して使用される場合、「置換」または「置換された」は、或るヌクレオチドを別のヌクレオチドで置き換えることによるポリヌクレオチドの改変を指し、例えばポリヌクレオチド配列中のシトシンをチミンで置き換えることは、ヌクレオチド置換である。
【0313】
「保存的置換」は、ポリペプチドに関して使用される場合、アミノ酸残基を同様の側鎖を有する異なる残基で置換することを指し、したがって、通例、ポリペプチド中のアミノ酸を同じまたは同様のクラス内のアミノ酸で置換することを含む。例としては、限定されるものではないが、脂肪族側鎖を有するアミノ酸は、別の脂肪族アミノ酸、例えばアラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンで置換されてもよく、ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸は、ヒドロキシル側鎖を有する別のアミノ酸、例えばセリンおよびトレオニンで置換され、芳香族側鎖を有するアミノ酸は、芳香族側鎖を有する別のアミノ酸、例えばフェニルアラニン、チロシン、トリプトファンおよびヒスチジンで置換され、塩基性側鎖を有するアミノ酸は、塩基性側鎖を有する別のアミノ酸、例えばリジンおよびアルギニンで置換され、酸性側鎖を有するアミノ酸は、酸性側鎖を有する別のアミノ酸、例えばアスパラギン酸またはグルタミン酸で置換され、疎水性または親水性アミノ酸は、それぞれ別の疎水性または親水性アミノ酸で置き換えられる。
【0314】
「非保存的置換」は、ポリペプチドに関して使用される場合、ポリペプチド中のアミノ酸を側鎖の特性が顕著に異なるアミノ酸で置換することを指す。非保存的置換では、定義された基の中ではなく、その間のアミノ酸を使用することができ、(a)置換(例えば、グリシンの代わりにセリン)の領域におけるペプチド骨格の構造、(b)電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩高さに影響を与える。例として、限定されるものではないが、例示的な非保存的置換は、塩基性または脂肪族アミノ酸で置換された酸性アミノ酸;小型のアミノ酸で置換された芳香族アミノ酸;および疎水性アミノ酸で置換された親水性アミノ酸であり得る。
【0315】
「発現」は、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾および分泌を含むが、これらに限定されない、ポリペプチド(例えば、コードされる酵素)の産生に関与する任意の工程を含む。
【0316】
本明細書で使用される場合、遺伝子の「調節領域」は、コード配列の発現に影響を与える核酸配列を指す。調節領域は、当該技術分野で既知であり、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位、マトリックス付着領域、および/またはコード配列の発現を調節する他の要素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0317】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、それが連結した別の核酸分子を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの一種は、付加的な核酸セグメントがライゲートし得る環状二本鎖核酸ループを指す「プラスミド」である。或る特定のベクターは、それが操作可能に連結した遺伝子の発現を誘導することができる。かかるベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。或る特定の他のベクターは、細菌のゲノムへの外因性核酸分子の挿入を促進することができる。かかるベクターは、本明細書で「形質転換ベクター」と称される。概して、組換え核酸技術に有用なベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドがベクターの最も一般的に使用される形態であることから、本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」は区別なく使用され得る。多数の好適なベクターが当業者に既知であり、市販されている。
【0318】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」は、RNAポリメラーゼおよび転写の開始に必要とされ得る他の因子の認識および結合部位を与えることによってコード領域の発現を制御する、通常は構造遺伝子のコード領域の上流(5’)にあるDNAの配列を指す。プロモーターの選択は、関心の核酸配列によって決まる。好適な「プロモーター」は一般に、本発明の細菌における転写の開始を支持し、mRNA分子の産生を引き起こすことができるものである。「強力な」プロモーターとしては例えば、タンパク質の効率的な発現および過剰産生を可能にする、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)等に由来する天然プロモーター、例えばP43、P15、Pveg、Pylb、PgroES、PsigX、PtrnQ、Ppst、PsodA、PrpsF、PlepA、PliaG、PrpsF、Ppst、PfusA、PsodA、Phag、ならびにバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)で活性な人工プロモーター、または誘導性バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)プロモーター、例えばPmtlA、Pspac、PxylA、PsacB等が挙げられる。「強力な」プロモーターの更なる例としては、コリネバクテリウム由来の天然プロモーター、例えばP CP_2454、PtufおよびPsod、E.コリ(E.coli)由来の天然プロモーター、例えばT7、ならびにコリネファージBFK20に由来するプロモーターP F1が挙げられる。
【0319】
本明細書で使用される場合、「操作可能に連結した」とは、記載の構成要素が意図されるように機能することを可能にする関係にある並置を指す。コード配列に「操作可能に連結した」制御配列は、制御配列に適合する条件下でコード配列の発現が達成されるようにライゲートする。プロモーター配列は、遺伝子の転写開始部位に、遺伝子の転写を調節するのに十分に近接している場合に、遺伝子に「操作可能に連結している」。
【0320】
「配列同一性のパーセンテージ」、「%配列同一性」および「パーセント同一性」は、本明細書においてアミノ酸配列と参照アミノ酸配列との間の比較を指すために使用される。本明細書で使用される「%配列同一性」は、2つのアミノ酸配列から以下のように算出される:Genetic Computing GroupのGAP(グローバルアラインメントプログラム)バージョン9を用い、デフォルトのBLOSUM62行列を-12のギャップオープンペナルティ(ギャップの最初のヌルに対する)および-4のギャップ伸長ペナルティ(ギャップ内の追加の各ヌルに対する)で用いて配列をアラインメントする。アラインメント後に、参照アミノ酸配列中のアミノ酸の数に対するパーセンテージとしてマッチの数を表すことによって、パーセンテージ同一性を算出する。
【0321】
「参照配列」または「参照アミノ酸配列」は、別の配列と比較される規定の配列を指す。本発明の文脈において、参照アミノ酸配列は、例えば配列番号1に記載のアミノ酸配列であり得る。
【0322】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、それが用いられる数の数値のプラスまたはマイナス10%を意味する。
【0323】
数値の限界または範囲が本明細書において定められる場合、端点が含まれる。また、数値の限界または範囲内の全ての値および部分範囲は、明示的に書き出されるかのように具体的に含まれる。
【0324】
本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」および「an」は、文脈上そうでないことが明らかに指示されない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。
【0325】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」およびその文法的変形語は、記載される特徴、工程または構成要素を指定するとみなされるが、その1つ以上の付加的な特徴、工程、構成要素または群を加えることを排除するものではない。
【0326】
本発明を一般的に説明したが、例示のみを目的として本明細書に提示され、特に指定のない限り、限定を意図するものではない或る特定の具体例を参照することによって更なる理解を得ることができる。
【0327】
実施例
実施例1:出発株の選択
イソプレノイドサイトカイニン産生工学のための出発株として種々のバチルス株を使用することができる(表2)。バチルス属種株は自然界から単離するか、またはカルチャーコレクションから得ることができる。中でも、イソプレノイドサイトカイニン産生のための出発株は、プリンヌクレオチド生合成経路に関連する代謝産物を過剰産生するために、既に突然変異誘発および選択の古典的方法に供したバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株の中から選択され得る。例えば、リボフラビン、イノシン、グアノシンまたはアデノシンを過剰産生する株を選択することができる。ランダム突然変異誘発ならびにプリンヌクレオチドおよびリボフラビン経路からの毒性代謝阻害剤に供した株が好ましく、表3に挙げられる。
【0328】
【表2】
【0329】
【表3】
【0330】
バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)VKPM B2116は、B.サブティリス(B.subtilis)168(およそ4Mbpのゲノムを有する最も一般的なB.サブティリス(B.subtilis)宿主株)と株B.サブティリス(B.subtilis)W23に由来するDNAの6.4kbpのアイランドとのハイブリッド株である。かかる構造は、殆どのB.サブティリス(B.subtilis)工業株に共通しており、B.サブティリス(B.subtilis)168(トリプトファン栄養要求株trpC)をW23(原栄養性TrpC+)DNAで形質転換することで得られた。VKPM B21216のゲノム中の6.4kbpのW23アイランドは、ゲノムが公開されているB.サブティリス(B.subtilis)レガシー株の1つであるB.サブティリス(B.subtilis)SMYと同じである(Zeigler et al. 2008)。B.サブティリス(B.subtilis)VKPM B2116は、古典的な突然変異誘発および選択によって得られたB.サブティリス(B.subtilis)SMYの直系の子孫株である。この株の別名は、B.サブティリス(B.subtilis)VNII Genetika 304である。株の構築の説明は、1980年に出願されたソ連国特許発明第908092号明細書に記載されている。この突然変異は、その後の突然変異誘発および代謝阻害剤の選択によって得られた。株VKPM B2116は、フラビンキナーゼをコードするribC遺伝子の突然変異により、ビタミンB2の毒性類似体であるロゼオフラビンに耐性を示す。この株は、毒性のプリン類似体である8-アザグアニンにも耐性を示す。
【0331】
実施例2:バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)に最適化されたイソプレノイドサイトカイニン生合成のための合成遺伝子IPT配列番号1およびLOG配列番号34の合成
アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)(シノニム アグロバクテリウム・ファブルム(Agrobacterium fabrum)(株C58/ATCC 33970)に由来するアデニル酸ジメチルアリルトランスフェラーゼ(IPT)Tzsのアミノ酸配列(遺伝子tzs、E.C.2.5.1.27、UniProt:P58758)(配列番号1)およびコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)に由来するサイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ(LOG)のアミノ酸配列(株ATCC 13032/DSM 20300/NCIMB 10025、遺伝子Cgl2379、E.C.3.2.2.n1、UniProt:Q8NN34)(配列番号34)を使用し、GENEius(Eurofins)を用いることで、B.サブティリス(B.subtilis)における遺伝子発現のためのコドン最適化ヌクレオチド配列を生成した。合成DNAフラグメントIPT-LOG(配列番号71)は、RBS配列を付加し、合成イソプレノイドサイトカイニンオペロン発現カセットの更なるアセンブリのために合成フラグメントの両末端に短いアダプター配列を用いて設計した。
【0332】
実施例3:バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)に最適化されたイソプレノイドサイトカイニン生合成のための合成遺伝子IPT配列番号2およびLOG配列番号34の合成
アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)(シノニム アグロバクテリウム・ファブルム(Agrobacterium fabrum)(株C58/ATCC 33970)に由来するアデニル酸ジメチルアリルトランスフェラーゼ(IPT)Tmrのアミノ酸配列(遺伝子izt、E.C.2.5.1.27、Uniprot:P0A3L5)(配列番号2)およびコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)に由来するサイトカイニンリボシド5’-一リン酸ホスホリボヒドロラーゼ(LOG)のアミノ酸配列(遺伝子Cgl2379、E.C.3.2.2.n1、UniProt:Q8NN34)(配列番号34)を使用し、GENEius(Eurofins)を用いることで、B.サブティリス(B.subtilis)における遺伝子発現のためのコドン最適化ヌクレオチド配列を生成した。合成DNAフラグメントIPT-LOG(配列番号72)は、RBS配列を付加し、合成イソプレノイドサイトカイニンオペロン発現カセットの更なるアセンブリのために合成フラグメントの両末端に短いアダプター配列を用いて設計した。
【0333】
実施例4:IPTおよびLOGを含む合成イソプレノイドサイトカイニンオペロンのアセンブリ、ならびにB.サブティリス(B.subtilis)への形質転換
イソプレノイドサイトカイニン生合成のための合成遺伝子IPT-LOGを含む合成フラグメント(配列番号71および配列番号72)を人工イソプレノイドサイトカイニンオペロンにアセンブリした。遺伝子組込み相同性、プロモーター配列およびエリスロマイシン選択可能マーカー(配列番号73)を含む先頭および最終フラグメントを、B.サブティリス(B.subtilis)のゲノム中のamyE遺伝子座への安定したゲノム組込みのために設計し、合成した。
【0334】
人工オペロンアセンブリの最初の工程は、配列番号75の先頭フラグメント、ならびにイソプレノイド-サイトカイニン生合成のための遺伝子を含む配列番号71および配列番号72の合成フラグメントIPT-LOGに対して配列番号74および配列番号75のプライマー対を用いて行われる別個のDNAフラグメントのPCR増幅であった。配列番号77および配列番号78のプライマーセットを配列番号79の最終フラグメントの増幅に使用した。
【0335】
フラグメントは、EppendorfのサイクラーおよびPhusionポリメラーゼ(Thermo Fisher)を使用し、製造業者により提供されるバッファー中にて200μM dNTP、0.5μMの各プライマーおよびおよそ10ngの鋳型を添加し、50μlの最終容量で以下のPCRサイクル条件を用いて30サイクル増幅した:98℃で30秒、(98℃で30秒、68.5℃で25秒、72℃で23/25秒)の30サイクル、72℃で5分、10℃でホールド。
【0336】
各フラグメントのPCR反応生成物を0.8%アガロースゲルで泳動し、ゲルから切り出し、GeneJET Gel Extraction Kit(Thermo Fisher)により、製造業者によって提供されるプロトコルに従ってゲルから抽出した。制限およびライゲーションの繰り返し工程により、フラグメントを人工オペロンにアセンブリした。SpeI(BcuI)およびXbaI制限部位の組合せを用いることで、ライゲーションの成功に適合した制限末端を得た。ライゲーションの各工程の後に、組み合わせたフラグメントを次のPCR増幅に新たな鋳型として使用した。5μlのFD greenバッファー(Thermo Fisher Scientific)、2~3μlの選択酵素(SpeI(BcuI)およびXbaI、Thermo Fisher)および最大およそ1500ngのPCRフラグメントを添加して50μl容量で制限を行った。制限消化後に、消化されたDNAフラグメントを、Wizard SV Gel and PCR Clean-up systemを用い、製造業者によって提供されるプロトコルに従ってクリーニングした。最初の2つのフラグメントを、製造業者により提供されるバッファー中にて5%PEG 4000を添加し、両方のフラグメントを1:1のモル比で最終容量15μlとして、2.5UのT4 DNAリガーゼ(Thermo Fisher)によるライゲーション反応に使用した。次の工程では、1μlの不活性化ライゲーションを鋳型として、配列番号80および配列番号81のプライマーセットを用い、先と同じPCRミックスおよびPCRサイクル条件であるが、伸長時間を長くして新たな50μLのPCRに使用した。制限消化、クリーニングおよびライゲーション工程を最終フラグメントのライゲーションのために繰り返した。PCRを0.8%アガロースゲルで行い、フラグメントをゲルから切り出し、先と同様に消化およびクリーニングし、先と同様にライゲートした。amy E相同性、RBS配列を伴うプロモーター、IPTおよびLOG遺伝子、ならびにエリスロマイシン耐性カセットを含む最終オペロンを、配列番号76および配列番号77のプライマー対を用いて増幅し、上述のようにクリーニングおよびライゲートした。配列番号82および配列番号83のIPT-LOGを含む構築した合成trans-ゼアチンオペロンをバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)VKPM B2116の形質転換に使用した。配列番号83のIPT-LOGオペロンを用いた形質転換により、形質転換株TZAB1、TZAB2、TZAB3およびTZAB4が得られた。配列番号82のIPT-LOGオペロンを用いた形質転換により、形質転換株TZAB14およびTZAB15が得られた。amyE組込み部位での人工オペロンの正確な組込みをcPCRによって確認した。
【0337】
【表4】
【0338】
実施例5:dxsの過剰発現を用いたイソプレノイド前駆体供給量の増加によるイソプレノイドサイトカイニン生合成の増加
イソプレノイドサイトカイニンの生合成のためのイソプレノイド側鎖は、B.サブティリス(B.subtilis)のMEP経路によって合成される。B.サブティリス(B.subtilis)に由来する1-デオキシキシルロース-5-リン酸シンターゼ(DXS、E.C.2.2.1.7)のタンパク質配列を用い、B.サブティリス(B.subtilis)での遺伝子発現のためのコドン最適化特徴GENEius(Eurofins)を用いることで、dxsの合成ヌクレオチド配列を生成した。配列番号84および配列番号85のdxsの合成DNAフラグメントを重複する2つの部分で設計し、オーバーラップPCRによって結合した。結合した配列番号86の合成遺伝子dxs全体を人工オペロンにアセンブリした。lacA相同性、プロモーター配列、および配列番号87のスペクチノマイシン選択可能マーカーを含む先頭および最終フラグメントを、B.サブティリス(B.subtilis)のゲノムへの安定したゲノム組込みのために設計し、合成した。フラグメントは、実施例4に記載のようにアセンブリした。
【0339】
人工オペロンアセンブリの最初の工程は、配列番号88の先頭フラグメント、配列番号89の最終フラグメント、および配列番号86の結合した合成遺伝子dxsに対して配列番号74および配列番号75のプライマーのセットを用いて行われる別個のDNAフラグメントのPCR増幅であった。
【0340】
フラグメントは、EppendorfのサイクラーおよびPhusionポリメラーゼ(Thermo Fisher)を使用し、製造業者により提供されるバッファー中にて200μM dNTP、0.5μMの各プライマーおよびおよそ10ngの鋳型を添加し、50μlの最終容量で30サイクル増幅した。使用したPCRサイクル条件は、98℃で30秒、(98℃で30秒、71℃で25秒、72℃で23/25秒)の30サイクル、72℃で5分、10℃でホールドであった。
【0341】
各フラグメントのPCR反応生成物を0.8%アガロースゲルで泳動し、ゲルから切り出し、GeneJET Gel Extraction Kit(Thermo Fisher)により、製造業者によって提供されるプロトコルに従ってゲルから抽出した。制限およびライゲーションの繰り返し工程により、フラグメントを人工オペロンにアセンブリした。SpeI(BcuI)およびXbaI制限部位の組合せを用いることで、ライゲーションの成功に適合した制限末端を得た。ライゲーションの各工程の後に、組み合わせたフラグメントを新たな鋳型として次のPCR増幅に使用した。5μlのFD greenバッファー(Thermo Fisher Scientific)、2~3μlの選択酵素(SpeI(BcuI)およびXbaI、Thermo Fisher)および最大およそ1500ngのPCRフラグメントを添加して50μl容量で制限を行った。制限消化後に、消化されたDNAフラグメントを、Wizard SV Gel and PCR Clean-up systemを用い、製造業者によって提供されるプロトコルに従ってクリーニングした。最初の2つのフラグメントを、製造業者により提供されるバッファー中にて両方のフラグメントを1:1のモル比で最終容量15μlとして、2.5UのT4 DNAリガーゼ(Thermo Fisher)によるライゲーション反応に使用した。次の工程では、1μlの不活性化ライゲーションを鋳型として、配列番号74および配列番号75のプライマーセットを用い、先と同じPCRミックスおよびPCRサイクル条件であるが、伸長時間を長くして新たな50μLのPCRに使用した。制限消化、クリーニングおよびライゲーション工程を最終フラグメントのライゲーションのために繰り返した。最終工程では、1μlの不活性化ライゲーションを、配列番号90の完全な合成dxsオペロンの鋳型として、配列番号91および配列番号92のプライマーを用い、先と同じPCRミックスおよびPCRサイクル条件であるが、伸長時間を長くして新たな50μLのPCRに使用した。PCRを0.8%アガロースゲルで行い、フラグメントをゲルから切り出し、先と同様にクリーニングし、先と同様にライゲートした。構築した合成dxsオペロンを、amyEにIPT-LOGオペロンを有するバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)TZAB15の形質転換に使用した(配列番号80)。人工DXSオペロン(配列番号90)を用いた形質転換により、形質転換株TZAB43が得られた。lacA組込み部位での人工オペロンの正確な組込みをcPCRによって確認した。
【0342】
【表5】
【0343】
実施例6:イソプレノイドサイトカイニンの産生のためのバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株の培養
構築した株および対照株は全て、この手順に従って培養した。20%グリセロール中にて-80℃で保存した株VKPM B2116、TZAB1、TZAB2、TZAB3、TZAB4、TZAB14、TZAB15およびTZAB43の凍結ストックを、適切な濃度のエリスロマイシンおよびリンコマイシンを含有する固体シード培地に塗抹し、37℃でおよそ1日インキュベートした。更なる試験のために、栄養段階培地に、25mLの栄養培地および適切な量の抗生物質が入ったバッフル付き250mLエルレンマイヤーフラスコ1本当たり、固体シードプレート上の培養物を1~5プラグ接種した。培養物を37℃にて18~20時間、220RPMでインキュベートした。栄養培地中の培養物をシード培養物として使用し、これを産生培地に接種した。10%接種材料を用いた(250mLエルレンマイヤーフラスコ内の産生培地25mL当たり2.5mL)。産生培地を前述のように使用するか、または硫酸アデニン(最終濃度3g/L)で改良した。培養物を30℃または37℃にて最大48時間、220RPMでインキュベートした。発酵した培養物をサンプリングし、実施例7に記載のように分析した。trans-ゼアチン、trans-ゼアチンリボシドおよびイソペンテニルアデニンの力価は、実施例7に記載のようにLC/MSを用いて測定した。
【0344】
【表6】
【0345】
【表7】
【0346】
栄養培地(表7)の成分を混合し、pHを7.2~7.4とした。次いで、KHPO-KHPO溶液をKHPO 1.5g/LおよびKHPO 3.5g/Lの最終濃度で添加した。培地をエルレンマイヤーフラスコ(25ml/250ml-バッフル付きエルレンマイヤーフラスコ)に分配し、121℃で30分間オートクレーブ処理した。滅菌グルコースをオートクレーブ処理後に最終濃度7.5g/Lで添加した。抗生物質を接種前に添加した。
【0347】
【表8】
【0348】
産生培地(表8)の成分を混合し、pHを7.2~7.4とした。次いで、KHPO-KHPO溶液をKHPO 1.5g/LおよびKHPO 3.5g/Lの濃度で添加した。培地を121℃で30分間オートクレーブ処理した。滅菌尿素溶液(20mlのストック溶液、最終濃度は6g/Lである)、滅菌グルコース溶液(500mlのストック溶液、最終濃度は100g/Lグルコースである)をオートクレーブ処理後に添加し、1Lの産生培地を得た。適切な抗生物質を接種前に添加した。次いで、培地を滅菌エルレンマイヤーフラスコ(25ml/250ml-バッフル付きエルレンマイヤーフラスコ)に分配した。
【0349】
実施例7:イソプレノイドサイトカイニンの分析
実施例6に記載の手順に従って培養した株は全て、この手順に従って分析した。発酵した産生培地をサンプリングし、即座に-20℃で凍結した。代謝産物の抽出のために、発酵した産生培地を、メタノールおよび100mM酢酸アンモニウムpH4の1:1混合物から構成される抽出バッファーで1:1に希釈した。サンプルを常に撹拌しながら室温で1時間抽出し、4000~4500RPMで15分間遠心分離し、濾過した(0.22um)。サンプルを即座にLC/MSによって分析するか、または分析まで-20℃で保管した。
【0350】
サンプルを、MS/MS可能質量分析計Thermo TSQ Quantum Access MAXと組み合わせたThermo Accela 1250 HPLC機器で分析した。方法は、Thermo Accucore C30、150×4.6mm、2.6um粒径カラムに基づき、60℃に維持し、移動相A-水中の0.1%ギ酸および移動相B-メタノールを開始条件:95%のA、10分でBの%を50%まで線形勾配で増加、および初期条件に5分間安定化の勾配プログラムにて、1ml/分の流量で用いる。質量分析計はhESIイオン源を備え、ポジティブ(+)モードで動作し、スプレー電圧を4600V、気化器温度を350℃、衝突圧を1.0トル、衝突エネルギーを10Vに設定した。trans-ゼアチンは、親の219.9m/zから娘イオン:185.2、148.0および136.0への遷移でMRMモードにて観察された。
【0351】
trans-ゼアチンリボシド(tZR)は、親の352.5m/zから娘イオン:220.1、202.1、148.0および136.1への遷移でMRMモードにて観察された。イソペンテニルアデニン(iP)は、親の204.4m/zから娘イオン:148.4、136.3および119.2への遷移でMRMモードにて観察された。イソペンテニルアデニンリボシド(iPR)は、親の336.5m/zから娘イオン:204.1、148.0および113.1への遷移でMRMモードにて観察された。
【0352】
実施例8:IPTおよびLOGの異種発現を有するバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株によるtrans-ゼアチンおよび関連イソプレノイドサイトカイニンの産生
培養は実施例6に記載のように行った。抽出および分析は、実施例7に記載のように行った。検出されたイソプレノイドサイトカイニンの収率を図4に示す。配列番号82のIPT-LOGを発現する株は、イソプレノイドサイトカイニンを最大10mg/Lの量で産生する(図4を参照されたい)。
【0353】
実施例9:IPTおよびLOGを異種発現させ、硫酸アデニンを成長培地に用いたバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株によるtrans-ゼアチンおよび関連イソプレノイドサイトカイニンの産生
培養は実施例6に記載のように行った。産生培地を実施例6に記載のように構成するか、または最終濃度3g/Lの硫酸アデニンで改良した。発酵ブロスを抽出し、実施例7に記載のように分析した。結果を図5に示す。配列番号82のIPT-LOGを有する株TZAB14におけるイソプレノイドサイトカイニンの産生は、硫酸アデニンを含まない培地と比較して、硫酸アデニンを含有する培地で増加する。
【0354】
実施例10:配列番号82のIPT-LOGの異種発現およびDXSの過剰発現を有するバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株によるtrans-ゼアチンおよび関連イソプレノイドサイトカイニンの産生
培養は実施例6に記載のように行った。抽出および分析は、実施例7に記載のように行った。収率を図6に示す。イソプレノイドサイトカイニンの産生は、配列番号82のIPT-LOGオペロンおよび配列番号90のDXSオペロンを有する株で増加する。
【0355】
実施例11:IPT-LOG(配列番号83)を有するバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株によるtrans-ゼアチンおよび関連イソプレノイドサイトカイニン産生の分析
培養は実施例6に記載のように行った。抽出および分析は、実施例7に記載のように行った。配列番号83のIPT-LOGを有する株TZAB1、TZAB2、TZAB3およびTZAB4ならびに配列番号82のIPT-LOGを有する株TZAB14およびTZAB15は、イソプレノイドサイトカイニンを産生した。結果を図7に示す。
【0356】
実施例12:バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株におけるIPT-LOGオペロン、IPTおよびDXSの異種発現によるtrans-ゼアチンおよび関連イソプレノイドサイトカイニンの産生
イソプレノイドサイトカイニン生合成のための遺伝子IPT1-LOG1(配列番号71)を含む合成DNAフラグメントを、実施例4に記載のように人工イソプレノイドサイトカイニンオペロンにアセンブリした。
【0357】
IPT1(配列番号1)のみを含むIPT1発現カセットを、配列番号123および配列番号183のプライマーを用いるフラグメントIPT1-LOG1(配列番号82)の最初の部分、ならびに別個に配列番号123および配列番号128のプライマーを用いるIPT1-LOG1(配列番号82)の最後の部分を、EppendorfのサイクラーおよびPhusionポリメラーゼ(Thermo Fisher)を用い、製造業者により提供されるバッファー中にて200μM dNTP、0.5μMの各プライマーおよびおよそ10ngの鋳型を添加し、50μlの最終容量で以下のPCRサイクル条件を用いて30サイクルPCR増幅することによってアセンブリした:98℃で30秒、(98℃で30秒、68.5℃で25秒、72℃で25秒)の30サイクル、72℃で5分、10℃でホールド。PCR反応生成物を0.8%アガロースゲルで泳動し、ゲルから切り出し、GeneJET Gel Extraction Kit(Thermo Fisher)により、製造業者によって提供されるプロトコルに従ってゲルから抽出した。制限およびライゲーションによってフラグメントを人工IPT1発現カセットにアセンブリした。XbaI制限部位を用いて、ライゲーションの成功に適合した制限末端を得た。ライゲーション後に、組み合わせたフラグメントを次のPCR増幅に新たな鋳型として使用した。5μlのFD greenバッファー(Thermo Fisher Scientific)、2~3μlの選択XbaI(Thermo Fisher)制限酵素および最大およそ1500ngのPCRフラグメントを添加して50μl容量で制限を行った。制限消化後に、消化されたDNAフラグメントを、Wizard SV Gel and PCR Clean-up systemを用い、製造業者によって提供されるプロトコルに従ってクリーニングした。最初の2つのフラグメントを、製造業者により提供されるバッファー中にて5%PEG 4000を添加し、両方のフラグメントを1:1のモル比で最終容量15μlとして、2.5UのT4 DNAリガーゼ(Thermo Fisher)によるライゲーション反応に使用した。次の工程では、1μlの不活性化ライゲーションを鋳型として、配列番号123および配列番号128のプライマーセットを用い、先と同じPCRミックスおよびPCRサイクル条件であるが、伸長時間を長くして新たな50μLのPCRに使用した。IPTフラグメント(配列番号184)を有する最終発現カセットが生成する。
【0358】
次いで、IPT1-LOG1(配列番号82)またはIPTフラグメント(配列番号184)を含むtrans-ゼアチンオペロンのために構築した最終発現カセットをバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)VKPM B2116、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)168およびバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)RB50株の形質転換に使用することで、表9に示す新たな形質転換株が開発された。amyE組込み部位での人工オペロンの正確な組込みをcPCRによって確認した。
【0359】
dxs遺伝子(配列番号86)を含む合成フラグメントを実施例5に記載のように発現カセットにアセンブリした。構築したDXS発現カセット(配列番号90)をバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)VKPM B2116、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)168およびバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)RB50由来株の形質転換に使用することで、表9に示す新たな形質転換株が開発された。lacA組込み部位での人工オペロンの正確な組込みをcPCRによって確認した。
【0360】
【表9】
【0361】
構築した株および対照株は全て、実施例6に記載の手順に従って培養した。20%グリセロール中にて-80℃で保存した株の凍結ストックを、適切な濃度のエリスロマイシンおよびリンコマイシンを含有する固体シード培地に塗抹し、37℃でおよそ1日インキュベートした。更なる試験のために、栄養段階培地に、25mLの栄養培地および適切な量の抗生物質が入ったバッフル付き250mLエルレンマイヤーフラスコ1本当たり、固体シードプレート上の培養物を1~5プラグ接種した。培養物を37℃にて8~20時間、220RPMでインキュベートした。栄養培地中の培養物をシード培養物として使用し、これを産生培地に接種した。10%接種材料を用いた(250mLエルレンマイヤーフラスコ内の産生培地25mL当たり2.5mL)。バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)168由来株の評価のために産生培地をトリプトファン(最終濃度50mg/L)で改良した。培養物を30℃、34℃または37℃にて最大48時間、220RPMでインキュベートした。発酵した培養物をサンプリングし、実施例7に記載のように分析した。trans-ゼアチン(tZ)、trans-ゼアチンリボシド(tZR)、イソペンテニルアデニンリボシド(iPR)およびイソペンテニルアデニン(iP)の力価は、実施例7に記載のようにLC/MSを用いて測定した。
【0362】
抽出および分析は、実施例7に記載のように行った。検出されたイソプレノイドサイトカイニンの収率を表17、図8図9および図10に示す。配列番号82のIPT-LOGを発現する株は、イソプレノイドサイトカイニンを最大60mg/Lの総量で産生し(図10を参照されたい)、イソプレノイドサイトカイニンの産生は、IPT-LOGオペロン(配列番号82)およびDXSオペロン(配列番号90)を有する株においてさらに全体的に増加する。
【0363】
実施例13:エシェリキア・コリ(Escherichia coli)BL21(DE3)株におけるIPT、IPT1-LOG1オペロンおよびDXSの異種発現によるtrans-ゼアチンおよび関連イソプレノイドサイトカイニンの産生
可能性のあるイソプレノイドサイトカイニン産生株としてエシェリキア・コリ(Escherichia coli)を評価するために2セットの発現プラスミドを構築した。
【0364】
第1のセットは、合成遺伝子IPT(配列番号179)およびIPT-LOGオペロン(配列番号82)の異種サイトカイニン遺伝子/オペロン発現のためのプラスミドであった。IPT遺伝子またはIPT-LOGオペロンをpBBR1プラスミドベクターにアセンブリした。pBBR1ベクターは、イソプロピル-β-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導可能なプロモーターに基づく異種発現系:LacI/PlacUV5-T7を有し、選択マーカーとしてクロラムフェニコール耐性カセットを含む。
【0365】
第2のプラスミドを、イソプレノイド前駆体供給量を増加させるDXS(配列番号90)の異種発現のためにクローニングした。DXS遺伝子をp15Aプラスミドベクターにアセンブリした。p15AベクターはXylS/Pmに基づく発現系を有し、ここで、XylSはm-トルイル酸誘導性Pmプロモーターの正の調節因子であり、選択マーカーとしてカナマイシン耐性カセットを含む。
【0366】
発現プラスミドアセンブリの最初の工程は、挿入フラグメント:IPT-LOG、DXSならびにベクター骨格:pBBR1およびp15AのPCR増幅であった。IPT DNAフラグメントは、配列番号163および配列番号182のプライマーセットで増幅したが、IPT-LOG DNAフラグメントは、IPTについては配列番号163および配列番号164、LOG増幅については配列番号165および配列番号166のプライマーセットを用いて増幅した。配列番号167および配列番号168のプライマーセットをpBBR1ベクター骨格の増幅に使用した。DXSフラグメントをプライマーセット:配列番号169および配列番号170で増幅し、配列番号171および配列番号172のプライマーセットをp15Aベクター骨格の増幅に使用した。フラグメントは、EppendorfのサイクラーおよびPhusionポリメラーゼ(Thermo Fisher)を使用し、製造業者により提供されるバッファー中にて200μM dNTP、0.5μMの各プライマーおよびおよそ10ngの鋳型を添加し、50μlの最終容量で30サイクル増幅した。各フラグメントのPCR反応生成物を0.8%アガロースゲルで泳動し、ゲルから切り出し、GeneJET Gel Extraction Kit(Thermo Fisher)により、製造業者によって提供されるプロトコルに従ってゲルから抽出した。各フラグメントの質量をNanoDrop機器、260nmの吸光度を用いて測定した。10μlのHIFIアセンブリ反応(NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix)によってフラグメントを最終発現構築物にアセンブリした。反応は氷上で行った:5μlのHiFi DNA Assembly Master Mixに、フラグメントをベクター:インサート=1:2のDNAモル比で添加した(フラグメントの総量は最大0.2pmolとした)。反応物をヌクレアーゼフリー水で10μlの最終容量まで満たした。サンプルをサーモサイクラーにて50℃で60分間インキュベートした。次の工程では、1μlの冷却したアセンブリ産物をコンピテントE.コリ(E.coli)BL21(DE3)細胞の形質転換に用いた。得られた株からプラスミドDNAを単離し、シークエンシングによって正確なアセンブリを確認した。
【0367】
DXS遺伝子の発現のためのp15Aプラスミドの形質転換により、形質転換株TZ3077が得られた。IPT遺伝子の発現のためのpBBR1プラスミドの形質転換により、形質転換株TZAB3079が得られた。IPT-LOGオペロンの発現のためのpBBR1プラスミドの形質転換により、形質転換株TZ3082が得られた。さらに、IPT遺伝子およびIPT-LOGオペロン発現プラスミドをTZ3077(DXS発現プラスミドを有するE.コリ(E.coli)BL21(DE3)株)に形質転換した。一方はDXS遺伝子、もう一方はIPT遺伝子の発現のための2つのプラスミドを有する得られた株をTZAB3087として保存した。一方はDXS遺伝子、もう一方はIPT-LOGオペロンの発現のための2つのプラスミドを有する得られた株をTZ3091として保存した。全ての形質転換体をcPCRによって確認し、下記表10に挙げる。
【0368】
【表10】
【0369】
構築した株(TZ3077~TZ3091)および対照株エシェリキア・コリ(Escherichia coli)BL21(DE3)を20%グリセロール中にて-80℃で保存した。株は常に適切な濃度の選択抗生物質(カナマイシン/クロラムフェニコール)の存在下で培養した。初めに、これらを固体シード培地-2YT寒天プレート(表11)に塗抹し、37℃でおよそ17時間インキュベートした。更なる試験のために、栄養段階培地-2YTに、50mLの栄養培地および適切な量の抗生物質が入った250mLエルレンマイヤーフラスコ1本当たり、固体シードプレート上の培養物の単一のコロニーを接種した。培養物を37℃にて17時間、220RPMでインキュベートした。栄養培地(表12)中の培養物をシード培養物として使用した:2.5%接種材料を用いて250mLエルレンマイヤーフラスコ内の50mLの産生培地に接種した。産生培地(表13)として、グルコースを添加した2YTを使用した(滅菌グルコースをオートクレーブ処理後に最終濃度25g/Lで添加した)。培養物を37℃にて10時間、220RPMでインキュベートした。2時間の発酵後に、発現プラスミドを有する株を誘導した。IPT/IPT-LOG発現プラスミドを有する株は、最終濃度150μMのIPTGで誘導した。DXS発現プラスミドを有する株は、最終濃度1mMのm-トルイル酸で誘導した。両方の発現系(DXSおよびIPT/IPT-LOG)を有する株は、両方の誘導物質(150μM IPTGおよび1mM m-トルイル酸)で誘導した。10時間の発酵後に、trans-ゼアチンおよび関連イソプレノイドサイトカイニンの分析のために培養物をサンプリングした。用いた抽出プロトコルは、実施例7に記載の通りであった。trans-ゼアチン、trans-ゼアチンリボシド、イソペンテニルアデニンおよびイソペンテニルアデニンリボシドの力価は、実施例7に記載のようにLC/MSを用いて測定した。
【0370】
【表11】
【0371】
【表12】
【0372】
【表13】
【0373】
検出されたイソプレノイドサイトカイニンの収率を図11に示す。株の成長は、1または2種の選択抗生物質および使用する異なる誘導物質の存在下で異なるため、サイトカイニン測定値を各培養物の600nmでの光学密度(OD600)で除算することによって正規化した。
【0374】
IPTを発現する株は、イソプレノイドサイトカイニンを最大2.8mg/Lの量で産生する(図11および表17を参照されたい)。IPT-LOGを発現する株は、イソプレノイドサイトカイニンを最大3.4mg/Lの量で産生する。イソプレノイドサイトカイニンの産生は、IPT-LOGの発現およびイソプレノイド前駆体供給量のためのDXSの付加的な発現を有する株において3.4mg/Lまで増加する。
【0375】
実施例14:クローニングベクターへのIPT1-LOG1オペロン、IPT1およびDXS遺伝子のアセンブリ、ならびに細菌コリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)へのプラスミドの形質転換
イソプレノイドサイトカイニン生合成のための遺伝子IPT1-LOG1(配列番号178)を含む合成フラグメントを、先に構築した配列番号82の合成trans-ゼアチンオペロンから、配列番号178のフラグメントについては配列番号173および配列番号174のプライマーセットを用いて増幅し、遺伝子IPT1(配列番号180)の発現については、配列番号173および配列番号177のプライマーセットを配列番号180のフラグメントの構築に使用した。フラグメントは、EppendorfのサイクラーおよびPhusionポリメラーゼ(Thermo Fisher)を使用し、製造業者により提供されるバッファー中にて200μM dNTP、0.5μMの各プライマーおよびおよそ10ngの鋳型を添加し、50μlの最終容量で以下のPCRサイクル条件を用いて30サイクル増幅した:98℃で30秒、(98℃で30秒、63.3℃で25秒、72℃で45秒)の30サイクル、72℃で5分、10℃でホールド。
【0376】
合成dxs遺伝子(配列番号181)を、先に構築した配列番号90の合成dxsオペロンから、配列番号175および配列番号176のプライマーセットを用い、EppendorfのサイクラーおよびPhusionポリメラーゼ(Thermo Fisher)を使用し、製造業者により提供されるバッファー中にて200μM dNTP、0.5μMの各プライマーおよびおよそ10ngの鋳型を添加し、50μlの最終容量で以下のPCRサイクル条件を用いて30サイクル増幅した:98℃で30秒、(98℃で30秒、67.6℃で25秒、72℃で60秒)の30サイクル、72℃で5分、10℃でホールド。各フラグメントのPCR反応生成物を0.8%アガロースゲルで泳動し、ゲルから切り出し、GeneJET Gel Extraction Kit(Thermo Fisher)により、製造業者によって提供されるプロトコルに従ってゲルから抽出した。
【0377】
IPT1遺伝子およびIPT1-LOG1イソプレノイドサイトカイニンオペロンをpVWEx6プラスミド(Henke et al. 2021)、dxs遺伝子発現カセットをpECXT99APsynプラスミドに、NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mixを用いるHiFiアセンブリ反応により、製造業者によって提供されるプロトコルに従ってさらにクローニングした。両方のプラスミドをBamHI FD制限酵素での消化によって予め線状化した。HiFi反応混合物を、エレクトロコンピテントDH10β E.コリ(E.coli)細胞のエレクトロポレーションにさらに使用した。カナマイシン選択マーカーにより、pVWEx6+IPT1-LOG1およびpVWEx6+IPT1形質転換体の選択が可能となり、pECXT99APsyn+dxs形質転換体の選択にはテトラサイクリンを使用した。形質転換体をコロニーPCRによって確認した。プラスミド単離のために、適切な抗生物質を含む2TY培地にコロニーを接種し、37℃で一晩インキュベートした。GeneJET Plasmid Miniprep Kit(Thermo Fisher)プラスミド抽出キットにより、製造業者によって提供されるプロトコルに従ってプラスミドを一晩培養物から単離した。単離されたプラスミドをKpnIおよびXbaI FD制限酵素での消化によってさらに分析した。
【0378】
生成したプラスミドをコリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)DSM 20305に形質転換するために、Yili et al. 2015に従ってエレクトロコンピテント細胞を作製した。単離プラスミドによる形質転換は、BioRadのエレクトロポレーターにより、2mmキュベットを用いて行った。およそ250ngのプラスミドを、先に作製したエレクトロコンピテント細胞の50μLアリコートに導入し、2mmキュベットに移し、電気パルスに曝露した。細胞を即座に1mLの再生培地が入った2mLエッペンドルフチューブに移した。30℃および200rpmに設定したシェーカーでの3時間のインキュベーション後に、適切な濃度の選択マーカーを含む回復寒天プレートLBHIS上に形質転換体をプレーティングした。得られた形質転換体(表14に示す)をコロニーPCRによって検証した。
【0379】
pVWEx6+ipt1-log1およびpECXT99APsyn+dxsならびにpVWEx6+ipt1およびpECXT99APsyn+dxs構築物の両方を有する形質転換体について、確認された形質転換体を、第2世代の株のための新たなエレクトロコンピテント細胞の作製に使用した。エレクトロコンピテント細胞を付加的なプラスミドで形質転換し、カナマイシンおよびテトラサイクリンの両方を含むプレート上で選択した。形質転換体のコロニーPCR検証を両方のプラスミドについて行った。
【0380】
【表14】
【0381】
実施例15:コリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)異種発現によるtrans-ゼアチンおよび関連イソプレノイドサイトカイニンの産生
構築した株および対照株は全て、この手順に従って培養した。20%グリセロール中で保存し、-80℃で保管した株コリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)DSM 20305、TZ3136、TZ3138、TZ3139、TZ3142およびTZ3146の凍結ストックを、適切な濃度のテトラサイクリンまたは/およびカナマイシンを含有する固体シード培地に塗抹し、30℃でおよそ1日インキュベートした。更なる試験のために、栄養段階培地に、25mLの栄養培地および適切な量の抗生物質が入ったバッフル付き250mLエルレンマイヤーフラスコ1本当たり、固体シードプレート上の培養物を5プラグ接種した。培養物を30℃にて18時間、200RPMでインキュベートした。栄養培地中の培養物をシード培養物として使用し、これを産生培地に接種した。10%接種材料を用いた(バッフル付き250mLエルレンマイヤーフラスコ内の産生培地25mL当たり2.5mL)。培養物を30℃にて最大48時間、200RPMでインキュベートした。発酵した培養物をサンプリングし、実施例7に記載のように分析した。trans-ゼアチン、trans-ゼアチンリボシド、イソペンテニルアデニンおよびイソペンテニルアデニンリボシドの力価は、実施例7に記載のようにLC/MSを用いて測定した。
【0382】
【表15】
【0383】
【表16】
【0384】
実施例16:コリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)異種発現によるイソプレノイドサイトカイニンの分析
コリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)形質転換体のイソプレノイドサイトカイニン産生を、発酵プロセスにおいて試験した。培養は実施例15に記載のように行った。抽出および分析は、実施例7に記載の手順に従って行った。結果を図12および表17に示す。
【0385】
【表17】
【0386】
実施例17:purA遺伝子の過剰発現によるバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)におけるプリンヌクレオチド生合成経路の増強
プリンヌクレオチド生合成経路の増強に用いたpurA遺伝子(配列番号98)を含む合成フラグメントを人工遺伝子発現カセットにアセンブリした。遺伝組込み相同性、プロモーター配列およびゼオシン選択可能マーカーを含む先頭(配列番号96)および末端フラグメント(配列番号97)を、B.サブティリス(B.subtilis)のゲノム中のyybN遺伝子座への安定したゲノム組込みのために設計し、合成した。
【0387】
人工オペロンアセンブリの最初の工程は、配列番号96の先頭フラグメントについては配列番号99および配列番号100のプライマー対、配列番号97の末端フラグメントについては配列番号101および配列番号102のプライマーセットを用いて行われる別個のDNAフラグメントのPCR増幅であった。配列番号103および配列番号104のプライマーセットを、配列番号98のpurA過剰発現の遺伝子を含むフラグメントの増幅に使用した。フラグメントは、EppendorfのサイクラーおよびPhusionポリメラーゼ(Thermo Fisher)を使用し、製造業者により提供されるバッファー中にて200μM dNTP、0.5μMの各プライマーおよびおよそ10ngの鋳型を添加し、50μlの最終容量で以下のPCRサイクル条件を用いて30サイクル増幅した:98℃で30秒、(98℃で30秒、65℃で25秒、72℃で23/25秒)の30サイクル、72℃で5分、10℃でホールド。各フラグメントのPCR反応生成物を0.8%アガロースゲルで泳動し、ゲルから切り出し、GeneJET Gel Extraction Kit(Thermo Fisher)により、製造業者によって提供されるプロトコルに従ってゲルから抽出した。制限およびライゲーションの繰り返し工程により、フラグメントを人工オペロンにアセンブリした。SpeI(BcuI)およびXbaI制限部位の組合せを用いることで、ライゲーションの成功に適合した制限末端を得た。ライゲーションの各工程の後に、組み合わせたフラグメントを次のPCR増幅に新たな鋳型として使用した。5μlのFD greenバッファー(Thermo Fisher Scientific)、2~3μlの選択酵素(SpeI(BcuI)およびXbaI、Thermo Fisher)および最大およそ1500ngのPCRフラグメントを添加して50μl容量で制限を行った。制限消化後に、消化されたDNAフラグメントを、Wizard SV Gel and PCR Clean-up systemを用い、製造業者によって提供されるプロトコルに従ってクリーニングした。最初の2つのフラグメントを、製造業者により提供されるバッファー中にて5%PEG 4000を添加し、両方のフラグメントを1:1のモル比で最終容量15μlとして、2.5UのT4 DNAリガーゼ(Thermo Fisher)によるライゲーション反応に使用した。次の工程では、1μlの不活性化ライゲーションを鋳型として、配列番号102および配列番号105のプライマーセットを用い、先と同じPCRミックスおよびPCRサイクル条件であるが、伸長時間を長くして新たな50μLのPCRに使用した。制限消化、クリーニングおよびライゲーション工程を末端フラグメントのライゲーションのために繰り返した。PCRを0.8%アガロースゲルで行い、フラグメントをゲルから切り出し、先と同様に消化およびクリーニングし、先と同様にライゲートした。yybN相同性、RBS配列を伴うプロモーター、purA遺伝子およびゼオシン耐性カセットを含む最終オペロンを、配列番号106および配列番号107のプライマー対を用いて増幅し、上述のようにクリーニングおよびライゲートした。構築した合成オペロンをバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)VKPM B2116の形質転換に使用した。配列番号108のpurAオペロンを用いた形質転換により、形質転換株BS19が得られた。yybN組込み部位での人工オペロンの正確な組込みをcPCRによって確認した。
【0388】
実施例18:LOG8遺伝子と組み合わせたIPT遺伝子の様々なホモログを含む合成イソプレノイドサイトカイニンオペロンのアセンブリ、およびB.サブティリス(B.subtilis)への形質転換
イソプレノイドサイトカイニン生合成のための合成LOG遺伝子(LOG8-配列番号116)および様々なIPT遺伝子(配列番号129、154~156)を含む合成フラグメントを人工イソプレノイドサイトカイニンオペロンにアセンブリした。遺伝子組込み相同性、プロモーター配列およびエリスロマイシン選択可能マーカー(配列番号73)を含む先頭および末端フラグメントを、B.サブティリス(B.subtilis)のゲノム中のamyE遺伝子座への安定したゲノム組込みのために設計し、合成した。
【0389】
人工オペロンアセンブリの最初の工程は、配列番号76の先頭フラグメント、ならびにイソプレノイド-サイトカイニン生合成のための遺伝子を含む合成フラグメントLOG8(配列番号116)ならびにフラグメントIPT1、IPT6、IPT7およびIPT9(それぞれ配列番号179、151、152および153)に対して配列番号74および配列番号75のプライマー対を用いて行われる別個のDNAフラグメントのPCR増幅であった。配列番号77および配列番号78のプライマーセットを配列番号79の末端フラグメントの増幅に使用した。フラグメントは、EppendorfのサイクラーおよびPhusionポリメラーゼ(Thermo Fisher)を使用し、製造業者により提供されるバッファー中にて200μM dNTP、0.5μMの各プライマーおよびおよそ10ngの鋳型を添加し、50μlの最終容量で以下のPCRサイクル条件を用いて30サイクル増幅した:98℃で30秒、(98℃で30秒、65℃で25秒、72℃で30秒)の30サイクル、72℃で5分、10℃でホールド。各フラグメントのPCR反応生成物を0.8%アガロースゲルで泳動し、ゲルから切り出し、GeneJET Gel Extraction Kit(Thermo Fisher)により、製造業者によって提供されるプロトコルに従ってゲルから抽出した。制限およびライゲーションの繰り返し工程により、フラグメントを人工オペロンにアセンブリした。SpeI(BcuI)、VspI、NdeIおよびSnaBI制限部位の組合せを用いることで、ライゲーションの成功に適合した制限末端を得た。ライゲーションの各工程の後に、組み合わせたフラグメントを次のPCR増幅に新たな鋳型として使用した。5μlのFD greenバッファー(Thermo Fisher Scientific)、2~3μlの選択酵素(SpeI(BcuI)、VspI、NdeIおよびSnaBI、Thermo Fisher)、ならびに最大およそ1500ngのPCRフラグメントを添加して50μl容量で制限を行った。制限消化後に、消化されたDNAフラグメントを、Wizard SV Gel and PCR Clean-up systemを用い、製造業者によって提供されるプロトコルに従ってクリーニングした。先頭フラグメントおよび様々なIPTフラグメント(配列番号179、151、152および153)を、製造業者により提供されるバッファー中にて5%PEG 4000を添加し、両方のフラグメントを1:1のモル比で最終容量15μlとして、2.5UのT4 DNAリガーゼ(Thermo Fisher)によるライゲーション反応に使用した。次の工程では、1μlの各不活性化ライゲーションを鋳型として、配列番号120および配列番号121のプライマーセットを用い、先と同じPCRミックスおよびPCRサイクル条件であるが、伸長時間を長くして新たな50μLのPCRに使用した。DNAフラグメントを上述のようにアガロースゲルから抽出した。制限消化(VspIおよびNdeI)、クリーニングおよびライゲーション工程をAmyE+IPT1オペロン、AmyE+IPT6オペロン、AmyE+IPT7オペロンおよびAmyE+IPT9オペロン(それぞれ配列番号129、154、155および156)、ならびにLOG8遺伝子(配列番号116)を含むフラグメントのライゲーションのために繰り返した。1μlの不活性化ライゲーションを鋳型として、配列番号122および配列番号123のプライマーセットを用い、先と同じPCRミックスおよびPCRサイクル条件であるが、伸長時間を長くして新たな50μLのPCRにさらに使用した。DNAフラグメントを上述のようにアガロースゲルから抽出した。XbaI酵素消化を行い、先にSnaBI制限部位によってライゲートし、配列番号126および配列番号127のプライマーセットを用いてPCR増幅したオペロンAmyE 0+IPT1/6/7/9+LOG8(それぞれ配列番号136、157、158および159)およびオペロンEryR+AmyE END(配列番号140)をライゲートした。
【0390】
amy E相同性、RBS配列を伴うプロモーター、様々なIPT遺伝子および遺伝子LOG8、ならびにエリスロマイシン耐性カセットを含む最終オペロンを、配列番号128および配列番号123のプライマー対を用いて増幅し、上述のようにクリーニングおよびライゲートした。IPT1-LOG8、IPT6-LOG8、IPT7-LOG8およびIPT9-LOG8(それぞれ配列番号147、160、161および162)を含む構築した合成trans-ゼアチンオペロンを、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)BS19(実施例17に記載)の形質転換に使用した。全ての形質転換体をcPCRによって確認し、下記表18に挙げる。構築した株は全て、実施例6に記載のように培養した。抽出および分析は、実施例7に記載のように行い、サイトカイニンの収率を図13に示す。
【0391】
【表18】
【0392】
実施例19:IPT1および様々なLOGを含む合成イソプレノイドサイトカイニンオペロンのアセンブリ、ならびにB.サブティリス(B.subtilis)への形質転換
イソプレノイドサイトカイニン生合成のための合成遺伝子IPT1(配列番号71)および様々なLOG遺伝子(配列番号110~119)を含む合成フラグメントを人工イソプレノイドサイトカイニンオペロンにアセンブリした。遺伝子組込み相同性、プロモーター配列およびエリスロマイシン選択可能マーカーを含む先頭および末端フラグメントを、B.サブティリス(B.subtilis)のゲノム中のamyE遺伝子座への安定したゲノム組込みのために設計し、合成した。
【0393】
人工オペロンアセンブリの最初の工程は、配列番号76の先頭フラグメント、ならびにイソプレノイド-サイトカイニン生合成のための遺伝子を含む配列番号71の合成フラグメントIPT1およびフラグメントLOG2~LOG11(配列番号110~119)に対して配列番号74および配列番号75のプライマー対を用いて行われる別個のDNAフラグメントのPCR増幅であった。配列番号126および配列番号127のプライマーセットを、エリスロマイシン選択可能マーカー(配列番号140)を含む末端フラグメントの増幅に使用した。フラグメントは、EppendorfのサイクラーおよびPhusionポリメラーゼ(Thermo Fisher)を使用し、製造業者により提供されるバッファー中にて200μM dNTP、0.5μMの各プライマーおよびおよそ10ngの鋳型を添加し、50μlの最終容量で以下のPCRサイクル条件を用いて30サイクル増幅した:98℃で30秒、(98℃で30秒、65℃で25秒、72℃で30秒)の30サイクル、72℃で5分、10℃でホールド。各フラグメントのPCR反応生成物を0.8%アガロースゲルで泳動し、ゲルから切り出し、GeneJET Gel Extraction Kit(Thermo Fisher)により、製造業者によって提供されるプロトコルに従ってゲルから抽出した。制限およびライゲーションの繰り返し工程により、フラグメントを人工オペロンにアセンブリした。SpeI(BcuI)、VspI、NdeI XbaIおよびSnaBI制限部位の組合せを用いることで、ライゲーションの成功に適合した制限末端を得た。ライゲーションの各工程の後に、組み合わせたフラグメントを次のPCR増幅に新たな鋳型として使用した。5μlのFD greenバッファー(Thermo Fisher Scientific)、2~3μlの選択酵素(SpeI(BcuI)、VspI、NdeI、XbaIおよびSnaBI、Thermo Fisher)および最大およそ1500ngのPCRフラグメントを添加して50μl容量で制限を行った。制限消化後に、消化されたDNAフラグメントを、Wizard SV Gel and PCR Clean-up systemを用い、製造業者によって提供されるプロトコルに従ってクリーニングした。
【0394】
最初の2つのフラグメントを、製造業者により提供されるバッファー中にて5%PEG 4000を添加し、両方のフラグメントを1:1のモル比で最終容量15μlとして、2.5UのT4 DNAリガーゼ(Thermo Fisher)によるライゲーション反応に使用した。次の工程では、1μlの不活性化ライゲーションを鋳型として、配列番号120および配列番号121のプライマーセットを用い、先と同じPCRミックスおよびPCRサイクル条件であるが、伸長時間を長くして新たな50μLのPCRに使用した。DNAフラグメントを上述のようにアガロースゲルから抽出した。制限消化(VspIおよびNdeI)、クリーニングおよびライゲーション工程を、様々なLOG遺伝子(配列番号110~119)を含むフラグメントのライゲーションのために繰り返した。1μlの不活性化ライゲーションを鋳型として、配列番号122および配列番号123のプライマーセットを用い、先と同じPCRミックスおよびPCRサイクル条件であるが、伸長時間を長くして新たな50μLのPCRにさらに使用した。DNAフラグメントを上述のようにアガロースゲルから抽出した。XbaI酵素消化を行い、先にSnaBI制限部位によってライゲートし、配列番号126および配列番号127のプライマーセットを用いてPCR増幅したオペロンAmyE 0+IPT1+LOG2~11(配列番号130~139)およびオペロンEryR+AmyE END(配列番号140)をライゲートした。
【0395】
amyE相同性、RBS配列を伴うプロモーター、IPT1および様々なLOG遺伝子およびエリスロマイシン耐性カセットを含む最終オペロンを、配列番号128および配列番号123のプライマー対を用いて増幅し、上述のようにクリーニングおよびライゲートした。IPT1-LOG 2~11(配列番号141~150)を含む構築した合成trans-ゼアチンオペロンをバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)BS19(実施例17に記載)の形質転換に使用した。全ての形質転換体をcPCRによって確認し、下記表19に挙げる。構築した株は全て、実施例6に記載のように培養した。抽出および分析は、実施例7に記載のように行い、サイトカイニンの収率を図14に示す。
【0396】
【表19】
【0397】
本明細書に引用した参照文献のリスト
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【配列表】
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【国際調査報告】