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特表2023-550976自動薬物送達システム用の単純な食事告知のためのデバイスおよび方法 関連出願
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】自動薬物送達システム用の単純な食事告知のためのデバイスおよび方法 関連出願
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/17 20180101AFI20231129BHJP
【FI】
G16H20/17
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532357
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 US2021060618
(87)【国際公開番号】W WO2022115475
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】63/119,055
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519167449
【氏名又は名称】インスレット コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100202740
【弁理士】
【氏名又は名称】増山 樹
(72)【発明者】
【氏名】モンティー リー
(72)【発明者】
【氏名】イーピン チョン
(72)【発明者】
【氏名】チュン ポク リー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン オコナー
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】
食事の摂取によってひき起こされるユーザの血糖の変化に応答するように構成された方法およびデバイスが開示されている。食事の摂取は、ユーザの入力によって、またはユーザ入力を全く必要としない食事検出アルゴリズムによって告知され得る。応答性あるデバイスおよび方法は、ユーザの血糖履歴、ユーザの食事履歴に関連する外部データに基づいて、または、先行する炭水化物補償インスリン用量に対するユーザの応答に基づいて、炭水化物補償インスリン用量を決定する。さらに、開始血糖と標的血糖の間のギャップをカバーするために、補正インスリン用量を計算することができる。炭水化物補償インスリン用量と補正インスリン用量の総和に対するユーザの応答が送達され得る。ユーザの応答に基づいて、開示された例は、炭水化物補償インスリン用量、補正インスリン用量または両方に対する修正を決定し得る。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食事告知を受信するステップであって、前記食事告知が食事の摂取通知であるステップと、
前記食事の摂取告知に応答して、インスリンの炭水化物補償用量を推定するステップと、
インスリン送達履歴に基づいてインスリンオンボード(IOB)量を推定するステップと、
現在の血糖測定値を取得するステップと、
前記IOB推定量および前記現在の血糖測定値を用いて、補正インスリン用量を推定するステップと、
前記補正インスリン用量の推定が完了した時点で、前記推定されたインスリンの炭水化物補償用量と前記補正インスリン用量の総和を送達するステップと、
経時的な血糖測定値の変化を監視するステップと、
血糖測定値を設定された血糖測定範囲内に入れるために基礎インスリンを送達するステップと、
前記食事告知を受信する予め設定された時間内に、前記予め設定された時間内に取得された血糖測定値が高血糖閾値を超えたか、または低血糖閾値より低く降下したかを決定するステップと、
前記予め設定された時間内に取得された前記血糖測定値が高血糖閾値を超えたかまたは低血糖閾値より低く降下したかの決定に応答して、予め決定された係数によりインスリンの前記炭水化物補償用量を適応させるステップと、を含む方法。
【請求項2】
IOB量の更新済み推定値を用いて、更新済み補正インスリン用量を推定するステップと、
前記更新済み補正インスリン用量の前記推定の完了時点で、前記適応されたインスリンの炭水化物補償用量と前記更新済み補正インスリン用量の総和を送達させるステップと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インスリンの炭水化物補償用量を推定するステップが、
ユーザの履歴血糖測定値を取得するステップと、
前記ユーザの推定された炭水化物補償用量および一日の平均総インスリンを取得するステップと、
前記ユーザの推定された炭水化物補償用量および1日の平均総インスリンを入力して、炭水化物補償インスリン用量予測モデルを訓練するステップと、
前記炭水化物補償インスリン用量予測モデルからの出力に基づいて、前記推定された炭水化物補償用量を削減するステップと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ユーザの炭水化物補償用量および1日の平均総インスリンから、先行する食事告知に応答して送達された中間ボーラスに基づく典型的ボーラス値を決定するステップと、
ユーザの総炭水化物補償用量と1日の平均総インスリンとの差異を計算する上での一係数として送達された前記中間ボーラスを使用するステップと、をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
カーネル密度推定モデル内で、先行食事告知に応答して送達された中間ボーラスに基づく典型的ボーラス値を前記ユーザの炭水化物補償用量および1日の平均総インスリンに対して適用するステップと、
ユーザの総炭水化物補償用量と1日の平均総インスリンとの差異を計算する上での一係数として前記カーネル密度推定モデルの出力を使用するステップと、をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
補正インスリン用量を推定するステップがさらに、
現在の血糖測定値と標的血糖設定値の間の差異を決定するステップと、
予備補正インスリン用量を計算するステップと、
予め決定された時間にわたって受信した血糖測定値の傾向に基づいて前記予備補正インスリン用量を調整して、前記推定された補正インスリン用量を提供するステップと、
ユーザに対し送達するために前記推定された補正インスリン用量を出力するステップと、を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
血糖測定値を設定された血糖測定値範囲内に入れるために基礎インスリンを送達するステップがさらに、
前記推定されたインスリンの炭水化物補償用量と前記補正インスリン用量の前記総和を送達した後、設定された時間が経過した後にインスリンの基礎用量の送達を開始するステップ、を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
血糖測定値を設定された血糖測定範囲内に入れるために基礎インスリンを送達するステップがさらに、
前記推定されたインスリンの炭水化物補償用量と前記補正インスリン用量の前記総和を送達した後、緩和された安全制約に基づいて修正されたインスリンの基礎用量の送達を開始するステップ、を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
血糖測定値を設定された血糖測定範囲内に入れるために基礎インスリンを送達する場合に、さらに、
前記推定されたインスリンの炭水化物補償用量と前記補正インスリン用量の前記総和を送達した後、インスリンの基礎用量の送達を開始するステップと、
前記推定されたインスリンの炭水化物補償用量と前記補正インスリン用量の前記総和を送達した後、設定された時間に、第2のボーラスを送達するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
予め決定された係数により前記インスリンの炭水化物補償用量を適応させるステップがさらに、
血糖センサから血糖測定値を取得することにより食後血糖をチェックするステップと、
前記血糖測定値が標的血糖より低いかどうかを決定するステップと、
前記血糖測定値が標的血糖より低いことに応答して、前記推定された炭水化物補償用量を予め設定された百分率値だけ減少させるステップと、を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
予め決定された係数により前記インスリンの炭水化物補償用量を適応させるステップが、さらに、
前記推定されたインスリンの炭水化物補償用量の部分用量を送達するステップであって、前記部分用量と予備用量が、総計した場合に前記推定されたインスリンの炭水化物補償用量内のインスリン量を含んでいる、ステップと、
血糖センサから血糖測定値を取得することにより食後血糖をチェックするステップと、
前記血糖測定値が標的血糖設定値未満であるかどうかを決定するステップと、
前記血糖測定値が前記標的血糖設定値よりも高いことに応答して、前記血糖測定値が予め決定された血糖の高血糖閾値未満であるかどうかを決定するステップと、
前記血糖測定値が前記予め決定された血糖の高血糖閾値よりも高いことに応答して、前記推定されたインスリンの炭水化物補償用量の予備用量を送達するステップと、
を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記推定されたインスリンの炭水化物補償用量の前記予備用量の送達後、後続する血糖測定値が前記予め決定された血糖の高血糖閾値未満であるかどうかを決定するステップと、
前記血糖測定値が前記予め決定された血糖の高血糖閾値よりも大きいことに応答して、将来の送達のための前記推定された炭水化物補償用量を前記推定された炭水化物補償用量の予め決定された百分率だけ増大させるステップと、をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ユーザの一日の総インスリン、ユーザの標的血糖およびユーザの現在の血糖測定値を取得するステップと、
前記取得された一日の総インスリンを用いて、炭水化物補償インスリン用量を推定するステップと、
前記ユーザの標的血糖および前記ユーザの血糖測定値を用いて、補正インスリン用量を推定するステップと、
総ボーラスのために、前記炭水化物補償インスリン用量と前記補正インスリン用量とを組合せるステップと、
前記総ボーラスを送達するステップと、
ユーザの血糖のステータスおよび前記ユーザの血糖に関連する他の情報を監視するステップと、
前記ユーザの血糖の前記ステータスおよび前記ユーザの血糖に関連する他の情報の決定に基づいて、前記総ボーラスがインスリンを過少送達したかどうかを決定するステップと、
前記総ボーラスがインスリンを過少送達したことの前記決定に基づいて、炭水化物補償推定アルゴリズムを更新すべきかどうかを決定するステップと、
前記ユーザの血糖の前記ステータスおよび前記ユーザの血糖に関連する他の情報の決定に基づいて、将来の炭水化物補償インスリン用量の更新を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記ユーザの血糖の前記ステータスおよび前記ユーザの血糖に関する他の情報を監視するステップが、
血糖センサから血糖測定値および血糖傾向標示を受信するステップと、
前記受信した血糖測定値を前記ユーザのための標的血糖設定値と比較するステップと、
前記血糖傾向標示が前記ユーザの血糖について上昇方向を標示しているか下降方向を標示しているかに基づいて、前記ユーザの血糖の方向を決定するステップと、
前記ユーザの血糖の前記比較およびその前記方向の前記決定の結果を、前記総ボーラスがインスリンを過少送達したかどうかを決定する際に使用するための前記ユーザの血糖の前記ステータスおよび前記ユーザの血糖に関連する他の情報として出力するステップと、を含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記総ボーラスがインスリンを過少送達したかどうかを決定するステップが、
血糖センサから受信したユーザの血糖測定値をユーザの標的血糖設定値との関係において評価するステップと、
前記ユーザの血糖測定値が前記ユーザの標的血糖設定値よりも大きいことを標示する前記評価の結果に基づいて、過少送達された前記総ボーラスを決定するステップと、
前記総ボーラスがインスリンを過少送達したことの標示を生成するステップと、を含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記総ボーラスがインスリンを過少送達したかどうかを決定するステップが、
血糖センサから血糖傾向標示を受信するステップと、
ユーザの標的血糖設定値との関係において前記血糖傾向標示を評価するステップと、
ユーザの血糖測定値が、ユーザの標的血糖設定値に向かうかまたはこの設定値を超える傾向を有することを標示する前記血糖傾向標示の前記評価の結果に基づいて、前記総ボーラスがインスリンを過少送達したことを決定するステップと、
前記総ボーラスがインスリンを過少送達したことの標示を生成するステップと、を含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記総ボーラスがインスリンを過少送達したかどうかを決定するステップが、
前記ユーザの標的血糖設定値との関係において前記ユーザの血糖測定値を評価するステップと、
前記ユーザの血糖測定値が前記ユーザの標的血糖設定値未満であることを標示する前記評価の結果に基づいて、前記総ボーラスがインスリンを過少送達しなかったことを決定するステップと、
前記総ボーラスがインスリンを過少送達しなかったことの標示を生成するステップと、を含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記総ボーラスがインスリンを過少送達したかどうかを決定するステップが、
前記ユーザの標的血糖設定値との関係において、ユーザの血糖測定値の傾向を評価するステップと、
前記ユーザの血糖測定値が、前記ユーザの標的血糖設定値のインスリン未満であることを標示する前記評価の結果に基づいて、前記総ボーラスがインスリンを過少送達しなかったことを決定するステップと、
前記総ボーラスがインスリンを過少送達しなかったことの標示を生成するステップと、を含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
プログラミングコードを記憶するメモリと、
前記プログラミングコードを実行するように構成されたコントローラであって、前記コントローラが、前記プログラミングコードを実行した時点で、
食事の摂取通知である食事告知を受信し、
前記食事の摂取告知に応答して、インスリンの炭水化物補償用量を推定し、
インスリン送達履歴に基づいてインスリンオンボード(IOB)量を推定し、
現在の血糖測定値を取得し、
前記IOB推定量および前記現在の血糖測定値を用いて、補正インスリン用量を推定し、
前記補正インスリン用量の推定が完了した時点で、前記推定されたインスリンの炭水化物補償用量と前記補正インスリン用量の総和を送達し、
経時的な血糖測定値の変化を監視し、
血糖測定値を設定された血糖測定範囲内に入れるために基礎インスリンを送達し、
前記食事告知を受信する予め設定された時間内に、前記予め設定された時間内に取得された血糖測定値が高血糖閾値を超えたか、または低血糖閾値より低く降下したかを決定し、
前記予め設定された時間内に取得された前記血糖測定値が高血糖閾値を超えたかまたは低血糖閾値より低く降下したかの決定に応答して、予め決定された係数により前記インスリンの炭水化物補償用量を適応させる、ように構成されているコントローラと、を含む、薬物送達デバイス。
【請求項20】
前記コントローラが前記プログラミングコードを実行した時点で、さらに、
IOB量の更新済み推定値を用いて、更新済み補正インスリン用量を推定し、
前記更新済み補正インスリン用量の前記推定の完了時点で、前記適応されたインスリンの炭水化物補償用量と前記更新済み補正インスリン用量の総和を送達させる、ように構成されている、請求項19に記載の薬物送達デバイス。
【請求項21】
前記コントローラが前記プログラミングコードを実行した時点で、前記インスリンの炭水化物補償用量を推定する場合に、さらに、
ユーザの履歴血糖測定値を取得し、
前記ユーザの推定された炭水化物補償用量および一日の平均総インスリンを取得し、
ユーザの炭水化物補償用量の合計と1日の平均総インスリンの差異を計算し、
前記差異を炭水化物補償インスリン用量予測モデル内に入力し、
前記炭水化物補償インスリン用量予測モデルからの出力に基づいて、前記推定された炭水化物補償用量を削減する、ように構成されている、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記コントローラが前記プログラミングコードを実行した時点でさらに、
前記ユーザの炭水化物補償用量および1日の平均総インスリンから、先行する食事告知に応答して送達された中間ボーラスに基づく典型的ボーラス値を決定し、
ユーザの総炭水化物補償用量と1日の平均総インスリンとの前記差異を前記計算する上での一係数として送達された前記中間ボーラスを使用する、ように構成されている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記コントローラが前記プログラミングコードを実行した時点でさらに、
カーネル密度推定モデル内で、先行食事告知に応答して送達された中間ボーラスに基づく典型的ボーラス値を前記ユーザの炭水化物補償用量および1日の平均総インスリンに対して適用し、
ユーザの炭水化物補償用量の合計と1日の平均総インスリンの前記差異を前記計算する上で一係数として前記カーネル密度推定モデルの出力を使用する、ように構成されている、請求項21に記載の薬物送達デバイス。
【請求項24】
前記コントローラが前記プログラミングコードを実行した時点で、前記インスリンの炭水化物補償用量を推定する場合に、さらに、
現在の血糖測定値と標的血糖設定値の間の差異を決定し、
予備補正インスリン用量を計算し、
予め決定された時間にわたる受信された血糖測定値の傾向に基づいて前記予備補正インスリン用量を調整し、
前記推定された補正インスリン用量として前記調整された予備補正インスリン用量を出力する、ように構成されている、請求項19に記載の薬物送達デバイス。
【請求項25】
血糖測定値を設定された血糖測定値範囲内に入れるために基礎インスリンを送達する場合に、さらに、
前記推定されたインスリンの炭水化物補償用量と前記補正インスリン用量の前記総和を送達した後、設定された時間が経過した後にインスリンの基礎用量の送達を引き起こすこと、を含む、請求項19に記載の薬物送達デバイス。
【請求項26】
血糖測定値を設定された血糖測定範囲内に入れるために基礎インスリンを送達する場合に、さらに、
前記推定されたインスリンの炭水化物補償用量と前記補正インスリン用量の前記総和を送達した後、緩和された安全制約に基づいて修正されたインスリンの基礎用量の送達を引き起こすこと、を含む、請求項19に記載の薬物送達デバイス。
【請求項27】
血糖測定値を設定された血糖測定範囲内に入れるために基礎インスリンを送達する場合に、さらに、
前記推定されたインスリンの炭水化物補償用量と前記補正インスリン用量の前記総和を送達した後にインスリンの基礎用量の送達を開始し、
前記推定されたインスリンの炭水化物補償用量と補正インスリン用量の総和を送達した後、設定された時間に、第2のボーラスを送達すること、を含む、請求項19に記載の薬物送達デバイス。
【請求項28】
予め決定された係数により前記インスリンの炭水化物補償用量を適応させる場合に、さらに、
血糖センサから血糖測定値を取得することにより食後血糖をチェックし、
前記血糖測定値が標的血糖より低いかどうかを決定し、
前記血糖測定値が前記標的血糖より低いことに応答して、前記推定された炭水化物補償用量を予め設定された百分率値だけ減少させること、を含む、請求項19に記載の薬物送達デバイス。
【請求項29】
予め決定された係数により前記インスリンの炭水化物補償用量を適応させる場合に、さらに、
前記推定されたインスリンの炭水化物補償用量の部分用量を送達し、ここで前記部分用量と予備用量が、総計した場合に前記推定されたインスリンの炭水化物補償用量内のインスリン量を含み、
血糖センサから血糖測定値を取得することにより食後血糖をチェックし、
前記血糖測定値が標的血糖設定値未満であるかどうかを決定し、
前記血糖測定値が前記標的血糖設定値よりも高いことに応答して、前記血糖測定値が予め決定された血糖の高血糖閾値未満であるかどうかを決定し、
前記血糖測定値が前記予め決定された血糖の高血糖閾値よりも高いことに応答して、前記推定されたインスリンの炭水化物補償用量の予備用量を送達する、ように構成されていること、を含む、請求項19に記載の薬物送達デバイス。
【請求項30】
前記推定されたインスリンの炭水化物補償用量の前記予備用量の送達後、後続する血糖測定値が前記予め決定された血糖の高血糖閾値未満であるかどうかを決定し、
前記血糖測定値が前記予め決定された血糖の高血糖閾値よりも大きいことに応答して、将来の送達のための前記推定された炭水化物補償用量を前記推定された炭水化物補償用量の予め決定された百分率だけ増大させること、をさらに含む、請求項19に記載の薬物送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、内容全体が参照により本明細書に組込まれている。2020年11月30日出願の米国仮特許出願第63/119,055号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、技術的現状の食事ボーラス計算機では、ユーザがその推定炭水化物摂取量を入力することが求められる。食事のサイズおよび推定誤差は人によって変動する。最大推定誤差は±25g前後であり得る。
【0003】
一部のハイブリッド自動インスリン送達システムは、ユーザが、食事または炭水化物摂取量を補償するためのインスリン用量を手作業で処方することを必要とする可能性がある。手作業による処方プロセスには、ユーザが炭水化物摂取量を推定し、ボーラス計算機を使用することが関与し、これは、多くの技術力の低いユーザにとって負担が大きくミスが生じやすい作業である。
【発明の概要】
【0004】
この概要は、以下の「詳細な説明」においてさらに説明される概念の一部を簡略化した形で紹介するために提供されるものである。この概要は、請求対象の主題の主要な特徴または本質的な特徴を識別するように意図されたものでなく、請求対象の主題の範囲を決定する上での補助として意図されたものでもない。
【0005】
いくつかのアプローチにおいて、方法には、食事告知を受信するステップが含まれ得る。食事告知は、食事の摂取通知であってよい。食事の摂取告知に応答して、インスリンの炭水化物補償用量を推定することができる。インスリン送達履歴に基づくインスリンオンボード(IOB)量が推定され得る。現在の血糖測定値を取得することができる。IOBの推定量と現在の血糖測定値を用いて補正インスリン用量を推定することができる。補正インスリン用量の推定が完了した時点で、推定されたインスリンの炭水化物補償用量と補正インスリン用量の総和を送達することができる。経時的な血糖測定値の変化を監視し、血糖測定値を設定された血糖測定範囲内に入れるために基礎インスリンを送達することができる。食事告知を受信する予め推定された時間内に、予め推定された時間内に取得された血糖測定値が高血糖閾値を超えたか、または低血糖閾値より低く降下したかの決定を行なうことができる。予め設定された時間内に取得された血糖測定値が高血糖閾値を超えたかまたは低血糖閾値より低く降下したのに応答して、予め決定された係数によりインスリンの炭水化物補償用量を適応させることができる。
【0006】
他のアプローチにおいて、別の方法には、ユーザの一日の総インスリン、ユーザの標的血糖およびユーザの現在の血糖測定値を取得するステップが含まれる。取得された一日の総インスリンを用いて、炭水化物補償インスリン用量を推定することができる。ユーザの標的血糖およびユーザの血糖測定値を用いて、補正インスリン用量を推定することができる。送達される総ボーラスのために、炭水化物補償インスリン用量と補正インスリン用量とを組合せることができる。ユーザの血糖ステータスおよびユーザの血糖に関連する他の情報を監視することができる。ユーザの血糖ステータスおよびユーザの血糖に関連する他の情報の決定に基づいて、総ボーラスがインスリンを過少送達したかどうかを決定することができる。総ボーラスがインスリンを過少送達したことの決定に基づいて、炭水化物補償推定アルゴリズムを更新すべきどうかを決定することができる。ユーザの血糖ステータスおよびユーザの血糖に関連する他の情報の決定に基づいて、将来の炭水化物補償インスリン用量の更新を生成することができる。
【0007】
さらなるアプローチにおいては、メモリとコントローラを含む薬物送達デバイスが提供される。メモリは、プログラミングコードを記憶することができ、コントローラは、プログラミングコードを実行するように構成され得る。プログラミングコードを実行することによって、食事の摂取通知である食事告知を受信するようにコントローラを構成することができる。食事の摂取告知に応答して、インスリンの炭水化物補償用量を推定することができる。インスリン送達履歴に基づいてインスリンオンボード(IOB)量を推定することができる。現在の血糖測定値を取得し、IOB推定量および現在の血糖測定値を用いて、補正インスリン用量を推定することができる。補正インスリン用量の推定が完了した時点で推定されたインスリンの炭水化物補償用量と補正インスリン用量の総和を送達することができる。経時的な血糖測定値の変化を監視することができる。血糖測定値を設定された血糖測定範囲内に入れるために基礎インスリンを送達することができる。食事告知を受信する予め設定された時間内に、予め設定された時間内に取得した血糖測定値が高血糖閾値を超えたか、または低血糖閾値より低く降下したかの決定を行うことができる。予め設定された時間内に取得した血糖測定値が高血糖閾値を超えたかまたは低血糖閾値より低く降下したかの決定に応答して、予め決定された係数によりインスリンの炭水化物補償用量を適応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図面中、類似の参照文字は概して、異なる図全体を通して同じ部品を意味する。以下の説明では、本開示のさまざまな実施形態が以下の図面を参照しながら説明されている。
【0009】
図1A】食事告知に応答してボーラス注入の用量を決定するための例示的プロセスの流れ図を示す。
図1B】食事告知に対し応答するための代替的な例示的プロセスの流れ図を例示する。
図2図1Aおよび1Bの例示的プロセスで使用可能なサブプロセスを例示する。
図3A】ユーザについてのインシュリンオンボード量を考慮に入れた補正インスリン用量を推定するための、図1Aおよび1Bの例示的プロセスにおいて使用可能なプロセスを例示する。
図3B】インスリンの炭水化物補償用量またはインスリン補正ボーラスの送達に応答するための異なるタイムラインの例を示す。
図3C】インスリンの炭水化物補償用量またはインスリン補正ボーラスの送達に応答するための異なるタイムラインの例を示す。
図3D】インスリンの炭水化物補償用量またはインスリン補正ボーラスの送達に応答するための異なるタイムラインの例を示す。
図4図1Aおよび1Bに記載のプロセス例で使用可能である炭水化物補償インスリン用量に対する長期更新を決定するためのプロセスの一例を示す。
図5】本明細書中に記載の例示的プロセスおよび技術を実装するのに好適である例示的システムの機能ブロック図を例示する。
図6】開示された技術およびデバイスで使用可能なグラフィカルユーザインタフェースの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示に係るシステム、デバイス、コンピュータ可読媒体および方法についてここで、1つ以上の実施形態を示す添付図面を参照しながら、以下でより完全に説明する。システム、デバイスおよび方法は、多くの異なる形態で実施され得、本明細書中に記されている実施形態に限定されるものとしてみなされるべきものではない。むしろ、これらの実施形態は、開示が徹底的かつ完全なものとなり、当業者に対し方法およびデバイスの範囲を完全に伝えることになるように提供されている。本明細書中で開示されているシステム、デバイスおよび方法の各々は、従来のシステム、構成要素および方法に対する1つ以上の利点を提供する。
【0011】
さまざまな実施例が、被分析物センサなどのセンサおよび自動薬物送達システムのユーザによって提供される入力に応答するための方法、システム、デバイスおよびコンピュータ可読媒体を提供している。いくつかの具体的例を実装するために使用できるさまざまなデバイスおよびセンサは同様に、具体的例の中で説明されているものと異なる薬物を用いる異なる治療レジメンを実装するためにも使用可能である。
【0012】
一実施例において、開示された方法、システムデバイスまたはコンピュータ可読媒体は、ユーザによる食事の摂取に応答したユーザの血糖管理に関連する措置を遂行することができる。
【0013】
開示された実施例は、血糖レベルおよびインスリン療法を管理するあらゆる追加のアルゴリズムまたはコンピュータアプリケーションと共に使用可能である技術を提供する。これらのアルゴリズムおよびコンピュータアプリケーションは、集合的に、「薬剤送達アルゴリズム」または「薬剤送達アプリケーション」と呼ぶことができ、化学療法薬物、鎮痛剤、糖尿病治療薬物(例えばインスリンおよび/またはグルカゴン)、血圧薬など異なるカテゴリの薬物(または薬剤)を送達するために動作可能であり得る。
【0014】
一タイプの薬剤送達システム(MDA)には、「人工膵」アルゴリズムベースのシステム、あるいはより一般的に人工膵(AP)アプリケーションが含まれ得る。論述を容易にするために、薬剤送達アルゴリズムまたはアプリケーションを実装するコンピュータプログラムおよびコンピュータアプリケーションを、「APアプリケーション」と呼ぶことができる。APアプリケーションは、連続血糖モニタなどの被分析物センサから受信した信号などの血糖センサ入力に基づいて自動インスリン送達を提供するように構成され得る。一実施例において、人工膵(AP)アプリケーションは、プロセッサにより実行された場合に、ユーザの血糖測定値の監視を有効化し、監視されたグルコース値(例えば血糖濃度または血糖測定値)および他の情報、例えば、炭水化物摂取量、運動時間、食事時間などに関する情報に基づいてユーザのための適切なインスリンレベルを決定し、ユーザの血糖値を適切な範囲内に維持するための措置を講じることができる。特定のユーザの標的血糖値が、代替的には、特定のユーザにとって適切な血糖測定値の範囲であり得る。例えば、標的血糖測定値は、それが、糖尿病治療のための臨床的治療基準を満たす範囲である80mg/dL~120mg/dLの範囲内に入る場合に、許容可能であり得る。さらに、ユーザの血糖が低血糖範囲内または高血糖範囲内をさまよっている場合、本明細書中に記載のAPアプリケーションがそれを決定し得る。
【0015】
図1A~4の実施例を参照してより詳細に説明されるように、自動薬物送達システムは、ユーザの血糖測定値、ユーザインタフェースまたはウェアラブル自動薬物送達デバイスのプロセッサにより実行される食事検出および応答アルゴリズムからの入力を監視するように構成され得る。ユーザインタフェースまたは食事検出および応答アルゴリズムからの入力は、ユーザが食事を消費したかまたは消費しようとしていることを告知する標示であり得る。自動薬物送達システムは、監視された情報および/または入力を利用して、食事の摂取を補償するための異なる薬剤用量を決定することができる。食事の摂取に対する決定された応答は、消費された食事中の炭水化物の結果としての血糖の増加を補償するように意図されているインスリン用量の決定であり得る。
【0016】
典型的には、食事に対して応答するとき、APアプリケーションのアルゴリズムは、以下の実施例中で例示されている機能を用いることなく、それぞれの食事検出アルゴリズム内に組込まれた食事の実際の摂取の不確実性に起因する保守的なアプローチを実装する。この保守的アプローチとは対照的に、開示されている実施例は、低下したまたは減少した安全上の制約にこだわる食事の消費をより迅速に、ただし適切に補償するために、インスリンの積極的な送達を実装することができる。以下の実施例は、食事の消費をより迅速に補償するインスリン量をユーザに投与する送達を可能にする食後の安全上の制約を修正するように動作可能な食事検出および応答アルゴリズムを伴って構成されたAPアプリケーションを提供している。以下でより詳細に説明するように、食事検出および応答アルゴリズムの実施例は、食事ボーラスの決定のために安全上の制約の設定値をAPアプリケーションが修正することを可能にする食事の摂取を標示することができ、これが食事のより急速な補償を可能にする。
【0017】
開示された実施例の利点は、食事が消費されたことを決定し、ユーザに消費した食事に関する詳細の入力を要求することなく、迅速かつ途切れ無く適切なインスリン量を自動インスリン送達システムが投与できるようにするため消費された食事に関連する安全上の制約を修正することが可能となっている自動薬物送達(ADD)システムにある。消費された食事に関する詳細には、食事の組成の識別(例えば、肉類、でんぷん、果物など)、食事の中の推定炭水化物および/またはカロリー数、食事のサイズ、推定カロリーまたは炭水化物数などが含まれ得る。説明されている技術を使用して、システムは、食事を消費した結果としての血糖測定値の変化を補償するためにインスリンを送達する時となった場合にユーザに対する負担を軽減し、ユーザがより迅速にそのボーラスを受け取り、血糖測定値を低下させ始めることができるように補正ボーラスの送達を最適化する。
【0018】
以上の実施例ならびに補正ボーラス用量を決定する他の実施例について、図面を参照しながらより詳細に説明することが有益であり得る。
【0019】
提供される1つの利点は、単純に、ユーザが自ら食事中であることの入力を提供できるようにすることにある。このような入力は、グラフィカルユーザインタフェース内に提示されているソフトボタンへの単なる入力、制御アプリケーションに対する音声入力などであり得る。食事告知は、食事の摂取を補償するプロセスをAPアプリケーションに開始させ得る。
【0020】
食事告知に先立って、APアプリケーションは、ユーザの血糖が高くなる傾向を示していたことを検出している場合がある。例えば、血糖センサであり得る被分析物センサから血糖測定値を受信した時点で、血糖センサは同様に、先に提供された血糖測定値との関係における血糖測定値の、例えば上昇、下降または安定といった傾向の方向性の標示(例えばフラグ設定、ビット設定など)を提供することもできる。APアプリケーションは同様に、受信した血糖測定値を標的血糖値と比較し、標的血糖値を超えた場合にそれを指摘することもできる。
【0021】
図1Aは、食事告知に応答してボーラス注入の用量を決定するための例示的プロセスの流れ図を示す。図1Aに例示されたプロセスの実施例は、プロセッサ上で実行するAPアプリケーションにより実装可能である。図1Aのプロセス100の実施例で示されているように、APアプリケーションは110において食事告知を受信し得る。食事告知は、ユーザ入力または自動食事検出アルゴリズムによって提供される食事の摂取通知であり得る。例えば、食事告知は、ユーザがボーラス投与ボタンに触れるか、ユーザが特定の言い回しで食事を口頭で標示するか、またはユーザがデバイスを揺らすかまたは他の形で物理的にデバイスとインタラクトしたことに応答するものであり得る。代替的には、APアプリケーションは、食事が摂取されたことを1つ以上のさまざまな入力から決定するように構成された自動食事検出アルゴリズムを利用することができる。いずれのシナリオにおいても、APアプリケーションは、ユーザに食事中の炭水化物の推定値を入力することを要求しない。
【0022】
110における食事告知に応答して、APアプリケーションは、ユーザの一日の総インスリン(TDI)を取得することができる。TDIは、例えば、ユーザの体重および/またはユーザのインスリン送達履歴に基づくものであり得る。
【0023】
120において、食事の摂取を標示する食事告知に応答して、APアプリケーションは、インスリンの炭水化物補償用量を推定することができる。APアプリケーションは、ユーザの炭水化物履歴またはユーザのインスリン送達履歴を用いて、推定を行なうことができる。さらに、ユーザの炭水化物履歴またはユーザのインスリン送達履歴などのうちの1つ以上に基づいて、ユーザにパーソナライズされたクラスタ化アルゴリズムを使用することができる。いくつかの実施例において、インスリンの炭水化物補償用量は、ユーザの一日の総インスリンのおよそ10パーセントであり得る。130において、APアプリケーションは、ユーザのインスリン送達履歴に基づいてユーザについてのインスリンオンボード(IOB)量を推定するように構成され得る。140においては、血糖センサからかまたはプロセッサに結合されたメモリから、現在の血糖測定値を取得することができる。150においては、推定されたIOB量を用いて補正インスリン用量を推定することができる。送達すべき補正インスリン用量の推定が完了した時点で、160において、APアプリケーションは、推定されたインスリンの炭水化物補償用量と補正インスリン用量の総計を行なわせるように構成され得る。総和は、ユーザの開始時血糖、IOBおよびユーザの血糖測定値の傾向に基づいて調整可能である。一実施例において、APアプリケーションは、総計の直後に送達を発生させる制御信号を出力することができる。170に標示されているように、血糖測定値の変化を、一定の期間にわたりAPアプリケーションによって監視することができる。一定の期間にわたる血糖測定値は、70mg/dL~180mg/dLの間で変化し得る。APアプリケーションは、インスリン基礎用量ならびにインスリン補正用量を送達し続けて、血糖測定値をひきつづき設定されたユーザ標的血糖範囲に入れることができる。180では、APアプリケーションは、予め推定された期間にわたり血糖測定値の監視された変化を評価して、ユーザの血糖が低血糖領域(例えばおよそ70mg/dL未満)または高血糖領域(例えばおよそ180mg/dL超)内に入ったかどうかを決定することができる。ユーザの血糖が低血糖領域と高血糖領域の間にとどまっていることの決定に応答して、APアプリケーションは、180における評価の結果が、「NO」であることを決定でき、170におけるユーザの血糖の監視を続けることができる。代替的には、180における決定が「YES」であった場合、つまり5時間といったボーラス投与後の予め推定された時間内で取得された血糖測定値が高血糖閾値を超えたかまたは予め推定された期間内に低血糖閾値より低く降下したことが決定された場合には、APアプリケーションは、予め決定された係数によりインスリンの炭水化物補償用量を適応させることによって応答し得る。予め決定された係数は、5~10%、10~15%、5~15%などであり得る。
【0024】
さらなる実施例では、IOB量の更新された推定を用いて、更新された補正インスリン用量を推定することができる。プロセッサは、適応されたインスリンの炭水化物補償用量と更新された補正インスリン用量を総計し、補正インスリン用量の推定が完了した時点で、適応されたインスリンの炭水化物補償用量と更新された補正インスリン用量の総和を送達させることができる。
【0025】
図1Bは、食事告知に応答するための代替的プロセス実施例を示す。プロセス100と同様に、代替的プロセス101は、いかなる組成情報(例えば食品、ポーションサイズなど)、位置情報、炭水化物情報または食事についての他のいかなる栄養情報も入力することを求めない。
【0026】
プロセス101は、105aにおいてAPアプリケーションが、ユーザの一日の総インスリンを取得し、105bにおいてユーザの現在の血糖測定値および標的血糖を取得することから始まり得る。ステップ105aおよび105bは、連続的にまたは同時に発生し得る。ステップ106では、105aで取得したユーザのTDIを用いて、炭水化物補償インスリン用量を推定することができる。108では、105aで取得したユーザのTDIおよび105bで取得したユーザの現在の血糖測定値および標的血糖を用いて、補正インスリン用量を推定することができる。106で炭水化物補償インスリン用量をそして108で補正インスリン用量を決定した時点で、APアプリケーションは、総ボーラスのために、炭水化物補償インスリン用量と補正インスリン用量を組み合わせるように動作可能であり得る。総ボーラスは、115で薬物送達デバイスによって送達され得る。
【0027】
総ボーラスの送達後、APアプリケーションは、ユーザ、被分析物センサなどから受信した情報に基づいてAPアプリケーションの設定値を適応させ続けることができる。例えば、APアプリケーションは、血糖測定値、血糖傾向インジケータおよび他のユーザ関連メトリクス(例えばカレンダ上のアポイントメント、薬物送達デバイスの移動など)の受信を通してユーザのステータスを積極的に監視し続けることができる。125において、APアプリケーションは、監視されたステータスおよびユーザ関連メトリクスに基づいて送達されるべきインスリンの量に影響を及ぼし得る人工膵アルゴリズムの異なるパラメータを積極的に更新および/または補償することができる。
【0028】
APアプリケーションは同様に、ユーザの血糖のステータスおよび他の情報、例えばユーザの血糖に関する他の情報である、ユーザの血糖傾向、インスリンオンボードまたはユーザの心拍数を監視し続けることもできる。ユーザの血糖、および血糖関連情報(例えば血糖傾向など)とユーザステータス情報、例えば心拍数、酸素飽和などの両方を含み得る他の情報に基づいて、APアプリケーションは、長期的措置、短期的措置またはその両方を講じる必要があるかどうかを決定することができる。例えば、APアプリケーションは、131において食後血糖を取得し、チェックし、かつこの情報を、それぞれ長期的措置および短期的措置を開始する2つの異なるサブプロセスに対して提供することができる。食後血糖チェックの結果を受信するための第1のサブプロセスは、(短期的措置との関係における)長期的措置を実装する141であり得る。141において、アルゴリズムは、インスリンの未送達炭水化物用量の影響を推定するように設計されており、これは次の食事のための削減割合を調整するためにその後使用可能である。例えば、先行する食事について、例えばおよそ50%または60%だけインスリンの炭水化物補償ボーラスを削減することができ、食後血糖測定値は、標的血糖設定値よりもはるかに大きいものとなり得る。未送達炭水化物補償ボーラス用量の結果としての血糖測定値の低下量を推定することができる。未送達炭水化物補償ボーラスの結果としての推定された低下を減算した後の推定された血糖測定値が標的血糖設定値に近いものである場合、APアプリケーションは、次の食事については削減割合を例えばおおよそ40~50%またはより詳細には45%、48%、50%などまで減少させても安全であると決定し得る。未送達炭水化物補償インスリン用量の決定された影響の結果に基づいて、APアプリケーションは、炭水化物補償インスリン用量を推定するためのアルゴリズムを更新することができる。例えば、アルゴリズムのパラメータまたは係数、例えばインスリンオンボード(IOB)、一日の総インスリン(TDI)、標的血糖設定値、インスリン感受性などを改変することができる。例えば、食後血糖測定値がなおも70mg/dLより低い場合、APアプリケーションは、安全のため削減割合をさらに増大させることを考慮し有効化し、かつ補正インスリン送達を減少させるのに役立つインスリン感受性を増大させることができる。将来の炭水化物補償インスリン用量の更新を計算するために、炭水化物補償インスリン用量を推定するためのアルゴリズムに対する更新を使用してもよい。将来の炭水化物補償インスリン用量は、次の食事のために使用され得るか、または例えば朝食または夕食などの特定の食事のために使用されてもよい。
【0029】
(141で始まるプロセスのより長期的な措置との関係における)短期的措置を実装し得る第2のサブプロセスが、132において実装され得、これには、血糖測定値が標的血糖設定値を超えるかどうかの決定が必然的に伴われ得る。例えば、132における決定は、APアプリケーションが、それによるユーザの血糖の削減においてより積極的になろうとしているかどうかを決定し得る。132における結果がNOである、すなわち血糖測定値が標的血糖設定値を超えない場合には、プロセス101は131に戻る。しかしながら、132における結果が「YES、血糖測定値は標的血糖設定値を超える」である場合には、プロセス101は、2つのオプションのうちのいずれによりユーザの血糖がユーザの標的血糖設定値に達することが可能となるかを評価し得る(136)。例えば、136におけるオプション1は、食事消費を補償するためのインスリンの送達についてのアルゴリズムに対する制約を緩和することにある。オプション1に対する代替として、134におけるオプション2は、例えば、第2のボーラスを送達できるかどうかを決定し、第2のボーラスを送達すべきであることが決定された場合には第2のボーラスのサイズを計算するために実装され得る。
【0030】
どのオプションが実装されるかに応じて、インスリンを送達することができるかまたはユーザの血糖が図1B内の155に反映されているユーザの標的血糖設定値に達するようにインスリンの送達を遅延させることが可能である。
【0031】
プロセス100および101は、炭水化物補償インスリン用量の決定を可能にするサブプロセスを利用する。このようなサブプロセスの一例が、図2に関連して説明される。図2は、図1Aおよび1Bの例示的プロセス内で使用可能なサブプロセスの一例を示している。詳細には、図2に例示されているアルゴリズムは、食事告知によって標示された食事を補償するために必要とされるインスリン量を計算するために使用され得る。
【0032】
図2の例において、プロセス200は、一日の総インスリンに基づいたインスリンの炭水化物補償用量の推定を可能にし得る。例えば、210において、プロセッサは、Glooko(登録商標)データなどのデータベースからのユーザの履歴上の推定された炭水化物値を取得するように構成され得る。ユーザの履歴血糖測定値から、プロセス200は、ユーザの炭水化物補償用量および1日の平均総インスリンを220において取得することができる。
【0033】
プロセッサはさらに、ユーザの炭水化物補償インスリン用量についての値を予測するために使用可能である一日の総インスリンに基づく線形回帰モデルを構築するように構成され得る。この予測は、ユーザが新規ユーザである場合に使用可能である。カーネル密度推定または中央値などの予測を行なうために異なる方法を使用することができる。カーネル密度推定は、ランダム変数の確率密度関数の推定を行なうことのできるプロセスである。カーネル密度推定により導出された炭水化物補償インスリン用量およびメジアンから導出した炭水化物補償インスリン用量は、ユーザのTDIに基づくものであり得る。メジアン方法は、履歴データまたは平均TDI値の履歴から取得した炭水化物補償インスリン用量の中央値を利用し得る。
【0034】
付加的にまたは任意には、220において、プロセス200は、推定された炭水化物インスリン用量とTDIの間の相関度をチェックすることができる。APアプリケーションは、222からのカーネル密度推定かまたは、224における各TDI値に対応するIC比のメジアンのいずれかを利用した回帰モデルの構築において、推定された炭水化物インスリン用量とTDIの間の相関度を使用することができる。代替的には、平均などの他の統計学的手法を利用することができる。
【0035】
実施例において、220で取得したデータは、カーネル密度推定222またはメジアン224のいずれかを用いて平均ボーラスを決定するために使用される。
【0036】
カーネル密度推定222またはメジアン224のいずれかからの出力を用いて、プロセス200は、新規ユーザについての炭水化物補償インスリン用量を予測するためTDIに関連する線形回帰モデルであり得る炭水化物補償インスリン用量予測モデルを初期化することができる。線形回帰モデルは、後に、ユーザの食後パフォーマンス(例えば、自らの血糖を自らのための標的血糖設定値の範囲内に戻すユーザの身体能力)に基づいて更新可能である。例えば230において、APアプリケーションは、a*TDI+bといった等式を用いて炭水化物補償インスリンを推定することができ、式中aは、一日の総インスリン(TDI)の百分率であり、bは、TDI関連ボーラス予測のための調整であるこの線形関数のインタセプションである。それは、例えば、負の半単位または負の1単位であり得る。
【0037】
メトリクスは例えば、高血糖/低血糖事象の百分率、標的血糖設定値範囲内の時間(例えば、標的血糖設定値の10~20%内)、平均血糖測定値などであり得る。APアプリケーションは、受信した測定基準に基づいて、低血糖の高発生率を回避するために送達すべき炭水化物補償インスリン用量の百分率(%)の決定を下すように構成され得る。低血糖の高発生率は、ユーザの主観に基づくものであり得るが、例示的設定値はおおよそ50%などである。代替的には、高発生率は、10%の増分などで、50%~100%といった百分率(%)範囲であり得る。測定基準にはさらに、高血糖および低血糖の両方の事象の百分率(%)および送達百分率(%)を削減することの限界利益の決定が含まれてよく、ここで限界利益とは、例えば、炭水化物補償インスリン用量の百分率に基づいて高血糖または低血糖がどの程度低減されるかということである。
【0038】
プロセス200中の230において、240で標示されているような炭水化物補償インスリン用量予測モデルを訓練するための入力として、222で計算した炭水化物補償インスリンの各ユーザの典型的用量および220からの平均TDIを使用することができる。例えば、240での炭水化物補償インスリン用量予測モデルからの出力は、メジアン炭水化物補償インスリン用量とTDIの関係に基づいて計算された炭水化物補償インスリンの用量であり得る。
【0039】
推定された炭水化物補償用量を査定した後、推定された炭水化物補償用量の安全性を増大させるために、APアプリケーションはさらに、250において、炭水化物補償インスリン用量予測モデルからの出力に基づいて推定された炭水化物補償用量を削減することができる(例えば(a*TDI+b))。出力された百分率は、修正された炭水化物補償インスリン用量を決定するために使用可能である。例えば、このような計算のための等式は、以下の通りであり得る:
(a*TDI+b)*X_reduction+X_baseline
なお式中、X_reductionは、炭水化物補償インスリン用量の出力に基づいて増大し得る炭水化物補償インスリン用量の削減規模%を表わし、X_reductionは、全てのTDI値で適用される同じ削減である。例えば、X_baselineは50%であり得、一方、X_reductionは0.5であり得、ここで削減量は、より大きいボーラス量についての潜在的な過剰送達の尤度の増加を所与として、推奨される各インスリン単位について0.5%だけ増大させられる。1つ以上の実施例において、修正された炭水化物補償インスリン用量は、更新された炭水化物補償インスリン用量であり得る。
【0040】
さらなる実施例において、送達すべき総ボーラスの決定は、図3Aに示されているようにユーザが使用しているインスリンのタイプに応じて異なる形で行なわれ得る。ユーザが受取るインスリン一単位あたりに予期される血糖の降下を計算する上でユーザを支援するために使用可能な公知の経験則が存在する。レギュラインスリンについて、経験則は、ユーザのインスリン感受性を計算する方法である1500ルールであり得る。レギュラ(または長時間作用性)インスリンのユーザについての1500ルールは、各々のレギュラインスリン単位についてユーザの血糖がどれほど降下すると予期されるかの概算を提供する。一実施例では、数1500は、ユーザのインスリンの一日用量で除され、商は、インスリン対血糖の比率において使用される。例えば、ユーザが毎日30単位のレギュラインスリンを摂取する場合、1500を30で除した結果は、ユーザが受取るレギュラ(または長時間作用性)インスリン一単位あたりの予期された血糖の降下を表わし得る。この除算の商は50に等しい。したがって、この具体例において、商50は、ユーザのインスリン感受性係数が1:50であること、つまり、レギュラインスリン1単位が、約50mg/dLだけそれぞれのユーザの血糖を低下させることになることを意味する。
【0041】
代替的には、経験則は、短時間作用性インスリンについては異なるものであり得る。例えば、経験則は、ユーザのインスリン感受性を短時間作用性インスリンに近似するために使用可能である1800ルールであり得る。短時間作用性インスリンのユーザについての1800ルールは、各々の短時間作用性インスリン単位についてユーザの血糖がどれほど降下すると予期されるかの概算を提供する。例えば、ユーザが毎日30単位のレギュラインスリンを摂取する場合、1800を30で除した結果は、ユーザが受取る短時間作用性インスリン1単位あたりに予期される血糖の降下を表わし得る。この除算の商は60に等しい。したがって、この具体例において、商60は、ユーザのインスリン感受性係数が1:60であること、つまり、短時間作用性インスリン1単位が、約60mg/dLだけそれぞれのユーザの血糖を低下させることになることを意味する。1500ルールまたは1800ルールのいずれも、出発血糖値と標的血糖設定値の間のギャップをカバーするのに充分であり得る補正インスリン用量を推定するために使用可能である。
【0042】
図3Aは、ユーザについてのインスリンオンボードの量を顧慮に入れた補正インスリン用量を推定するためのプロセスを例示している。プロセス300において、APアプリケーションは、1800ルール、血糖モニタからの血糖測定値の傾向および事前のIOBの傾向に基づいて補正インスリン投与量を推定することができる。補正インスリン用量は、食事のインスリン補正ボーラスについての補正として使用可能であるという点を想起されたい。
【0043】
出発および標的BGのギャップをカバーするのに必要とされる補正インスリンの投与量を推定する目的で、現在の血糖測定値と標的血糖設定値の間の差異を、310で標示されている通りに、APアプリケーションによって決定することができる。例えば、現在の血糖測定値(すなわちBGCurrent)は血糖モニタからかまたは最近受信した血糖測定値を記憶するメモリから取得することができる。さらに、ユーザの標的血糖設定値(すなわちBGTarget)も、メモリから検索可能である。
【0044】
APアプリケーションは、現在の血糖測定値と標的血糖設定値の間の差異の計算を行なうことができる。320で、APアプリケーションは、現在の血糖測定値と標的血糖設定値の間の差異に応答して、予備補正インスリン用量を計算することができる。「予備」というのは、まだ送達されていない補正インスリン用量を意味し得る。ユーザが使用しているインスリンのタイプ(すなわち短時間作用性インスリンまたはレギュラ/長時間作用性インスリン)に応じて、ユーザのインスリン感受性を、短時間作用性インスリンについての1800ルールまたはレギュラインスリンについての1500ルールのいずれかを用いて決定することができる。ユーザのインスリン感受性は、経験則として以上で説明された通りに決定される。320における補正インスリン用量は:
【数1】
として論理を用いて(この実施例においては1800ルールを用いて)推定され得、ここでIOBは、体が有効に利用しなかったインスリンの量の計算であり得、TDIは一日の総インスリンであり、1800は1800ルール由来のものである。1800は、レギュラインスリンのために使用され得る1500ルールよりも保守的な推定である。実施例において、IOBは、インスリンが基礎用量によってか、補正ボーラスによってかまたは炭水化物補償ボーラスによって提供されたかに関わらず、ユーザの体内のインスリンを考慮したものであってよい。したがって、IOBは、ユーザの血液中の全ての事前のインスリンを考慮に入れる。
【0045】
現在の血糖測定値と標的血糖設定値の差異を無くするために補正ボーラスを使用することができ、炭水化物の摂取量によってひき起こされる血糖の増加を制御するために食事ボーラスまたは炭水化物補償ボーラスを使用することができるという点が指摘される。ユーザが食事していることに応答してボーラスが送達される場合、送達された総ボーラス用量中のインスリン量は、炭水化物補償ボーラス用量プラス(+)補正ボーラス用量マイナス(-)インスリンオンボード(IOB)に等しい。
【0046】
プロセッサにより実行されたAPアプリケーションは、血糖モニタによって提供されたユーザの血糖測定値の傾向を用いて低血糖および高血糖を回避するために補正インスリン用量を調整するように動作可能であり得る。330において、APアプリケーションは、予め決定された期間にわたって受取った血糖測定値の傾向に基づいて予備補正インスリン用量を調整することができる。一実施例においては、予め決定された期間は、数分間にわたって測定される。CGMなどの血糖センサが傾向の標示を提供し得る。APアプリケーションは、いくつかの事例において、傾向の標示を解釈することができ、グラフィカルユーザインタフェース上での傾向インジケータアイコンの提示をひき起こすことができる。傾向インジケータアイコンは、例えば、上向き矢印(すなわち上方を指す垂直方向矢印)、下向き矢印(すなわち下方を指す垂直方向矢印)、ダッシュ(変更無しまたは平坦な傾向を標示)、45度上向き角度または45度下向き角度の矢印などであり得る。上向きまたは下向き矢印の角度は、決定または推定された血糖値の変化度または勾配に対応し得る。例えば、60度の上向き矢印は、グラフィカルユーザインタフェース上に表示された30度上向き矢印に比べさらに急速な血糖の変化を標示し得る。330において、例えば、血糖の傾向が下向きである場合、補正インスリン投与量は、X%(これは10進数として適用され得る)だけ削減されている可能性がある。代替的には、血糖の傾向が上向きである場合、補正インスリン投与量は、Y%だけ増大している可能性があり、ここでXおよびYは、異なるものであってよく、かつ例えば10%~70%であり得る。等式を実行することで、調整された予備補正インスリン用量が、推定された補正インスリン用量として出力され得る。
【0047】
調整された補正インスリン用量についての例示的等式は、以下の通りであり得る:
【数2】
【0048】
調整された補正インスリン用量を取得した後、APアプリケーションは、総ボーラス用量を決定することができる。例えば、APアプリケーションは、調整された補正インスリンと削減された炭水化物補償インスリン用量とを組合せるように動作可能であり得、これは調整された補正インスリン用量を炭水化物補償インスリン用量に加算することと同様であり得る。
【0049】
血糖測定値が予め推定された血糖測定範囲内に入るように送達すべき基礎インスリン量をAPアプリケーションが決定できるようにするために、異なるオプションを提供することができる。例えば、ユーザの食後血糖測定値がユーザの標的血糖設定値より高いか低いかを決定することによって、過少および過剰ボーラス投与を積極的に補償するために一定の期間基礎インスリンを、APアプリケーション内のアルゴリズムが調整できる。最適値を超えるまたは最適値未満であるあらゆる初期ボーラス送達が、考えられる最大の補償量まで補償される、ということを仮定することができる。
【0050】
図3Bの実施例において、ユーザの食後血糖測定値はユーザの標的血糖設定値との関係において評価され得る。例えば、APアプリケーションは、食事通知時間を記録し、血糖センサから食後血糖測定値(および血糖傾向標示)を取得することができる。APアプリケーションは、APアプリケーションを実行しているプロセッサに結合されたメモリからユーザの標的血糖設定値を検索することができる。APアプリケーションは、受信した血糖測定値を、ユーザについての検索された標的血糖設定値と比較することができる。さらに、APアプリケーションは、血糖傾向標示が上向きであるかまたは下向きであるかを決定することができる。
【0051】
図3Bの実施例において、論理は以下のように進行し得る。すなわち、食後血糖測定値が標的血糖設定値よりも小さい(<)場合、APアプリケーションは、基礎インスリンが(mg/dL単位で測定されたΔ_BG+予め推定された最小閾値まで)よりも高くなるまで、おおよそ1.5時間であり得るインスリン送達のピーク時間にわたり、基礎インスリンを保留することができる。予め推定された最小補償閾値は、例えば50mg/dL、55.0mg/dL、67.25mg/dLなどであり得る。さらに、または代替的には、当該最小閾値は、ユーザのインスリン感受性などに基づいて修正可能であり得る。
【0052】
食後BGが標的BGより大きい(>)場合、APアプリケーションは、例えば、BGが(mg/dL単位で測定されたΔ_BG-予め推定された最大補償閾値まで)などの閾値に達するまで、例えば1.5時間超といった幾分かの時間を超えた食事との関係におけるインスリン送達ピーク時間全体にわたって送達されるべくスケジューリングされた基礎インスリン量のおおよそ4倍を送達するように構成され得る。例えば、APアプリケーションは、設定された期間(例えばインスリン送達のためのピーク時間)、この増加したインスリン基礎用量を送達し始めることができる。基礎用量の送達は、推定されたインスリンの炭水化物補償用量と補正インスリン用量の総和の送達後に始まってよい。
【0053】
一変形形態として、APアプリケーションは、総ボーラスがインスリンを過少送達したかどうかを決定するために血糖傾向標示を利用することができる。例えば、APアプリケーションは、血糖センサからの血糖傾向標示を受信し得る。APアプリケーションは、ユーザの標的血糖設定値との関係において血糖傾向標示を評価することができる。ユーザの血糖傾向標示の評価結果は、ユーザの血糖測定値がユーザの標的血糖設定値に向かってまたはそれを超えて上昇傾向を示していることを標示し得る。評価の結果に基づいて、APアプリケーションは、総ボーラスがインスリンを過少送達したことを決定することができ、総ボーラスがインスリンを過少送達したことの標示を生成することができる。反対に、APアプリケーションは、ユーザの標的血糖設定値との関係においてユーザの血糖測定値を評価することができる。ユーザの血糖測定値がユーザの標的血糖設定値のインスリンよりも少ないことを標示する評価の結果に基づいて、APアプリケーションは、総ボーラスがインスリンを過少送達しなかったことを決定することができ、総ボーラスがインスリンを過少送達しなかったという標示を生成することができる。
【0054】
代替的に、図3Cは、血糖測定値を設定された血糖測定範囲内に入れるために基礎インスリンを送達するときの論理の別の実施例を示している。この実施例では、APアプリケーションは、推定されたインスリンの炭水化物補償用量と補正インスリン用量の総和の送達後に緩和された安全上の制約に基づいて修正可能であるインスリンの基礎用量の送達をウェアラブル自動薬物送達デバイスに開始させるように動作可能であり得る。例えば、図3C中で、食後血糖測定値が標的血糖設定値よりも大きい(>)場合、APアプリケーションは、基礎インスリン補償のアルゴリズム制約の例えば4倍から4+n倍までの緩和を促すことができる。「n」は、ユーザの血糖設定値に基づいて決定される値であり得る。「n」は、以下の式によって決定することができる:
【数3】
式中、Nは、補償を伴うインスリン送達の回数である。例えば、補償が1時間持続する場合、N=12であり、5分間隔で12回を表わす。
【0055】
ユーザの血糖測定値を設定された血糖測定範囲内に入れるための送達を目的とする基礎インスリン用量の決定のさらに別の実施例が、図3Dの実施例中で示されている。図3Dの例示的プロセスは、食後BGが標的BGより高い場合に実装され得る。食事の摂取から一定の期間の後の食後BGが標的BGよりも高い事例においては、APアプリケーションは、食事摂取時点で炭水化物を補償するために初期ボーラスの送達からXX時間後に第2のボーラスを送達させるように動作可能であり得る。実施例において、APアプリケーションは、推定されたインスリンの炭水化物補償用量と補正インスリン用量の総和を送達してから一定の設定された期間(XXとして示されている)後に、第2の、または二次的なボーラスの送達をひき起こすことができる。実施例において、設定された期間XXは、例えば、おおよそ2時間、3時間、4時間以上であり得る。
【0056】
APアプリケーションは、さらなる機能を果たすことができる。いくつかの事例において、炭水化物補償インスリン用量を、図1Aおよび1Bの実施例中で言及されているように適応させることができる。予め決定された係数によるインスリンの炭水化物補償用量の適応の詳細は、図4を参照して説明することができる。
【0057】
図4のプロセス400の実施例は、将来のボーラスのための過去の低血糖および高血糖事象に基づく炭水化物補償インスリン用量の長期更新とみなされてよい。更新は、炭水化物補償インスリン用量を含み得る次のボーラスに対して適用され得る。
【0058】
一運用例においては、ボーラスとみなされ得る炭水化物補償インスリン用量が送達される場合に、APアプリケーションは炭水化物補償インスリン用量の部分用量のみを送達することができる。例えば、APアプリケーションは、推定された炭水化物補償インスリン用量の60~80パーセントといった百分率を、予備用量として備蓄させることができる。部分用量および予備用量は、総計したとき、推定された炭水化物補償インスリン用量内の全インスリン量を形成する。推定された炭水化物補償インスリン用量の推定は、プロセス400にしたがって確認および評価され得る。例えば、推定されたインスリンの炭水化物補償用量の削減用量または部分用量の送達は、インスリンに対するユーザの身体反応が摂取された食事からの炭水化物をなおも補償し得るか否かをAPアプリケーションが決定できるようにする。さらに、わずか一分量だけの送達は、APアプリケーションがユーザに対してインスリンを過剰送達しないことを保証するというメリットを提供する。
【0059】
プロセス400において、APアプリケーションは、410で標示されているように、血糖センサから血糖測定値を取得することにより、ユーザの食後血糖を監視することができる。410において、APアプリケーションは、おおよそ5分毎などに、連続血糖モニタから血糖測定値を受信するように構成され得る。さらなる実施例においては、APアプリケーションは同様に、血糖傾向標示および他の情報を受信することもできる。420において、APアプリケーションは、血糖測定値がユーザのための標的血糖設定値より低いかどうかを決定することができる。標的血糖設定値の一例は、おおよそ120mg/dLであり得、これには、例えば140mg/dLといった上限境界および100mg/dLといった下限境界があり得る。420における応答に基づいて、APアプリケーションは、異なる措置を講じることができる。例えば、食後血糖測定値が標的血糖設定値よりも低い(<)場合、プロセスは、430へと進み得る。430で、APアプリケーションは、炭水化物補償インスリン用量の次の送達のために(すなわち次の食事がユーザにより摂取されるとき)、1~10%といった予め推定された百分率値だけ推定された炭水化物補償インスリン用量を減少させることによって、推定された炭水化物補償インスリン用量を更新することができる。
【0060】
代替的には、420において、食後血糖測定値が標的血糖設定値よりも大きい(>)という決定がなされる。この決定に応答して、プロセス400は、420から425まで進むことができる。
【0061】
425では、APアプリケーションは、食後血糖測定値が予め決定された血糖高血糖閾値より低い(すなわちそれ以下である)かどうかを決定することにより、食後血糖測定値が標的血糖設定値の範囲内に入っているかどうかを決定することができる。例えば、APアプリケーションは、食後血糖測定値が、予め決定された血糖高血糖閾値(「高血糖閾値」または「HYPER」とも呼ばれる)であり得る180mg/dL未満であるかどうかを決定することができる。食後血糖測定値が高血糖閾値HYPER(例えば180mg/dL、ユーザの特定の高血糖閾値など)よりも低い場合、APアプリケーションは、435において、推定された炭水化物補償インスリン用量に対応する食事補償ボーラス用量の将来の送達をひき起こすために、推定された炭水化物補償インスリン用量を保つことができる。
【0062】
しかしながら、425において、推定された炭水化物補償インスリン用量の百分率の送達にも関わらず食後血糖測定値が高血糖閾値HYPERよりも大きい(>)ことをAPアプリケーションが決定した場合、APアプリケーションは、440に進むことができる。食事の通知または告知に応答してボーラスとして推定された炭水化物補償インスリン用量の百分率しか送達されなかったことから、追加のインスリンが送達されずになおも残っている。440において、APアプリケーションは、推定された食事ボーラスの残留百分率(例えば残りの40~20%)の送達をひき起こすことができる。
【0063】
440の後、プロセス400は、450へと進む。450において、APアプリケーションは、推定された炭水化物補償インスリン用量の残留百分率の送達が、ユーザの血糖を低下させたかどうかを決定することができる。APアプリケーションは、推定された炭水化物補償の残留百分率の送達後、推定された炭水化物補償インスリン用量の残留百分率がユーザの血糖に対し効果を有することができるようにするため、一定の期間(例えば90~120分)待機することができる。一定の期間が経過した後、APアプリケーションは、後続する血糖測定値(これは食後血糖測定値である)が標的血糖測定値の上限境界より低いかどうかを決定するために、後続して受信した血糖モニタからの血糖測定値を使用することができる。
【0064】
450において、APアプリケーションは、推定された血糖値を予め決定された血糖高血糖閾値HYPERと比較することができる。食後血糖測定値が高血糖閾値よりも低い(<)ことの比較による決定に基づいて、プロセスは455に進むことができる。455において、APアプリケーションは、推定された炭水化物補償インスリン用量に対応する食事補償ボーラス用量の将来の送達をひき起こすため、推定された炭水化物補償インスリン用量を維持することができる。
【0065】
代替的には、450において、血糖測定値がなおも標的血糖設定値の上限境界よりも大きい(>)場合、APアプリケーションは460に進むことができる。460において、APアプリケーションは、次の送達のために炭水化物補償インスリン用量中のインスリン百分率を増大させることにより、推定された食事ボーラスを更新するように動作可能であり得る。
【0066】
例えば、460において、APアプリケーションは、推定された血糖値が予め決定された血糖高血糖閾値よりも大きいことに応答して、推定された炭水化物補償用量の予め決定された百分率だけ推定された炭水化物補償用量を増大させることができる。一実施例において、増大させられる百分率は、各々の条件反復について5%~10%であり得る。
【0067】
図1A~4の実施例を参照して説明された技術を実装できる薬物送達システムの実施例について論述することが有用であり得る。
【0068】
図5は、本明細書中に記載の例示的プロセスおよび技術を実装するのに好適であるシステム実施例の機能ブロック図を示している。
【0069】
自動薬物送達システム500は、(例えば正常血糖値、つまり血液中の正常なグルコースレベルを維持するために)ユーザに対してインスリンなどの薬物または薬剤の自動送達を管理または制御する目的で、人工膵(AP)アプリケーションなどの薬剤送達アルゴリズムを実装(および/またはそのための機能性を提供)することができる。薬物送達システム500は、自動薬物送達システムであり得、ウェアラブル自動薬物送達デバイス502、被分析物センサ503および管理デバイス(PDM)505を含み得る。
【0070】
システム500は、オプションの実施例中では、同様に、有線または無線通信リンク591~593のいずれかを介してシステム500の他の構成要素と通信し得る、スマートアクセサリデバイス507、例えばスマートウォッチ、パーソナルアシスタントデバイスなども含むことができる。
【0071】
管理デバイス505は、コンピュータデバイス、例えばスマートホン、タブレット、パーソナル糖尿病管理デバイス、専用糖尿病治療管理デバイスなどであり得る。一実施例において、管理デバイス(PDM)505は、プロセッサ551、管理デバイスメモリ553、ユーザインタフェース558、および通信デバイス554を含み得る。管理デバイス505は、ユーザの血糖レベルを管理するために薬剤送達アルゴリズムまたはアプリケーション(MDA)559などの、管理デバイスメモリ553内に記憶されたプログラミングコードに基づいてプロセスを実行するため、およびユーザに対する薬物、薬剤または治療剤の送達を制御するため、ならびに他の機能、例えば以上で論述した炭水化物補償用量、補正ボーラス用量などを計算するため、プロセッサ551として実装可能であるアナログおよび/またはデジタル回路を含み得る。管理デバイス505は、ウェアラブル自動薬物送達デバイス502および/または被分析物センサ503ならびにオプションのスマートアクセサリデバイス507をプログラミングし、設定値を調整しかつ/または動作を制御するために使用可能である。
【0072】
プロセッサ551は同様に、MDA559などの管理デバイスメモリ553内に記憶されたプログラミングコードを実行するように構成されてもよい。MDA559は、被分析物センサ503、クラウドベースのサービス511および/または管理デバイス505またはオプションのスマートアクセサリデバイス507から受信した情報に基づいて薬物を送達するように動作可能であるコンピュータアプリケーションであり得る。メモリ553は、例えばユーザインタフェース558(例えばタッチスクリーンデバイス、カメラなど)、通信デバイス554などを動作させるためのプログラミングコードを記憶することもできる。プロセッサ551は、MDA559を実行するとき、食事の摂取、血糖測定値などに関連する標示および通知を実装するように構成され得る。ユーザインタフェース558は、プロセッサ551の制御下にあり得、上述のように食事告知の入力を可能にし、設定値の選択を調整するなどするグラフィカルユーザインタフェースを提示するように構成され得る。
【0073】
特定の実施例においては、MDA559が人工膵(AP)アプリケーションである場合、プロセッサ551は同様に、メモリ553内に記憶されたMDA559によって管理される糖尿病治療計画(これはメモリ内に記憶され得る)を実行するようにも構成されている。上述の機能に加えて、MDA559がAPアプリケーションである場合、それはさらに、プロセッサ551が炭水化物補償用量、補正ボーラス用量を決定し、糖尿病治療計画にしたがって基礎用量を決定することを可能にするための機能性を提供し得る。さらに、APアプリケーションとして、MDA559は、図1A~4の実施例を参照して説明されている決定されたボーラスおよび基礎用量を送達するためにプロセッサ551がウェアラブル自動薬物送達デバイス502に対し信号を出力できるようにするための機能性を提供する。
【0074】
通信デバイス554は、1つ以上の無線周波数プロトコルにしたがって動作する。1つ以上の送受信機、例えば送受信機A552および送受信機B556および受信機または送信機を含むことができる。実施例において、送受信機552および556は、それぞれ、セルラ一送受信機およびBluetooth(登録商標)送受信機であり得る。例えば、通信デバイス554は、MDA559によって使用可能な情報を含む信号を送受信するように構成された送受信機552または556を含み得る。
【0075】
ウェアラブル自動薬物送達デバイス502は、例示的システム500において、ユーザインタフェース527、コントローラ521、駆動機構525、通信デバイス526、メモリ523、電源/環境発電回路528、デバイスセンサ584およびタンク524を含み得る。ウェアラブル自動薬物送達デバイス502は、管理デバイス505または任意のスマートアクセサリデバイス507からの入力無く図1A~4の実施例で説明されたプロセスを実施し実行するように構成され得る。より詳細に説明されるように、コントローラ521は、例えば図1A~4のプロセスを実装するため、ならびに送達されたインスリンの量、IOB、残留するインスリン、などを決定するために動作可能であり得る。コントローラ521は単独で、被分析物センサ504からの入力に基づいて、図1A~4のプロセスを実装し、かつ送達されたインスリンの量、IOB、残留するインスリンなどを決定する、例えばインスリン送達を制御することができる。
【0076】
メモリ523は、コントローラ521によって実行可能であるプログラミングコードを記憶することができる。例えばプログラミングコードは、コントローラ521が、タンク524からのインスリンの放出を制御し、MDA529から、またはMDA529が外部制御信号を実装するように構成されている場合には外部デバイスからの信号に基づいて薬剤投与量の投与を制御することを可能にし得る。
【0077】
タンク524は、インスリン、モルヒネ、血圧薬、化学療法薬などの、自動送達に好適な薬物、薬剤または治療薬を貯蔵するように構成され得る。
【0078】
デバイスセンサ584は、コントローラ521に対し通信可能に結合されかつさまざまな信号を提供する圧力センサ、電力センサなどのうちの1つ以上を含むことができる。例えば、デバイスセンサ584の圧力センサは、ユーザの体内に挿入される針またはカニューレ(図2Aおよび2Bの実施例内に示されている)とタンク524の間の流体経路中で検出される流体圧力の標示を提供するように構成され得る。例えば圧力センサは、(駆動機構525の一部であり得る)針/カニューレ挿入構成要素などに結合されるかまたはそれらと一体となっていてよい。一例において、コントローラ521またはプロセッサ、例えば551は、流体圧力の標示に基づいて薬物点滴速度を決定するように動作可能である。薬物点滴速度は、点滴速度閾値と比較され得、比較の結果は、インスリンオンボード(IOB)量または一日の総インスリン(TDI)量を決定する上で使用可能であり得る。
【0079】
一実施例において、ウェアラブル自動薬物送達デバイス502は、Bluetooth、Wi-Fi、近距離無線通信規格、セルラ規格などの1つ以上の無線周波数プロトコルにしたがって動作する受信機、送信機または送受信機であり得る通信デバイス526を含む。コントローラ521は、例えば、通信デバイス526を介してパーソナル糖尿病管理デバイス505および被分析物センサ503と通信し得る。
【0080】
ウェアラブル自動薬物送達デバイス502は、患者または糖尿病患者などのユーザの身体に取付け位置で取付け可能であり、インスリンなどの任意の薬物または薬剤を含め、あらゆる治療薬をユーザに対して、取付け位置またはその周りに送達することができる。ウェアラブル自動薬物送達デバイス502の表面は、先の実施例中で説明した通りユーザの皮膚に対する取付けを容易にするための接着剤を含んでいてよい。
【0081】
ウェアラブル自動薬物送達デバイス502は、例えば、(インスリンなどの)薬物を保管するためのタンク524、ユーザの体内への(皮下、腹腔内または静脈内で行なうことのできる)薬物送達のための針またはカニューレ(この実施例では図示せず)、およびタンク524から、針またはカニューレを通してユーザの体内へと薬物を移送するための駆動機構525を含み得る。駆動機構525は、タンク524に対して流体結合され、コントローラ521に対し通信可能に結合されていてよい。
【0082】
ウェアラブル自動薬物送達デバイス502はさらに、駆動機構525および/またはウェアラブル自動薬物送達デバイス502の他の構成要素(例えばコントローラ521、メモリ523および通信デバイス526)に対して電力を供給するための、例えばバッテリ、圧電デバイス、他の形態の環境発電デバイスなどの電源528を含み得る。
【0083】
いくつかの実施例においてウェアラブル自動薬物送達デバイス502および/または管理デバイス505はそれぞれに、ユーザが情報を入力することを可能にし、管理デバイス505がユーザに対する提示のための情報を出力すること(例えばアラーム信号など)を可能にするように構成された、ユーザインタフェース558、例えばキーパッド、タッチスクリーンディスプレイ、レバー、発光ダイオード、管理デバイス505のハウジング上のボタン、マイクロホン、カメラ、スピーカ、ディスプレイなどを含むことができる。ユーザインタフェース558は、入力、例えば音声入力、カメラへのジェスチャ(例えば手または顔面)入力、タッチスクリーンに対するスワイプなどをプロセッサ551に提供することができ、これらをプログラミングコードが解釈する。
【0084】
PDM505または被分析物センサ504などの外部デバイスに対し通信するように構成されている場合、ウェアラブル自動薬物送達デバイス502は、有線または無線リンク594上で、管理デバイス(PDM)505又は508からあるいは被分析物センサ504から信号を受信することができる。ウェアラブル自動薬物送達デバイス502のコントローラ521は、図1A~4の実施例を参照して説明されているようにそれぞれの外部デバイスから信号を受信し処理し、かつ糖尿病治療計画または他の薬物送達レジメンにしたがってユーザに対する薬物の送達を実装することができる。
【0085】
運用実施例において、プロセッサ521は、MDA559を実行するときに、図1A~4の実施例を参照して説明されているように、インスリンの炭水化物補償用量、補正ボーラス、修正された基礎用量などを送達するために駆動機構525を起動させるように動作可能である制御信号を出力することができる。
【0086】
スマートアクセサリデバイス507は、例えば、Apple Watch(登録商標)、他のメーカが提供する眼鏡を含む他のウェアラブルスマートデバイス、グローバルポジショニングシステム有効化ウェアラブル、ウェアラブルフィットネスデバイス、スマート衣料などであり得る。管理デバイス505と同様、スマートアクセサリデバイス507も、ウェアラブル自動薬物送達デバイス502の制御を含めたさまざまな機能を果たすように構成され得る。例えば、スマートアクセサリデバイス507は、通信デバイス574、プロセッサ571、ユーザインタフェース578およびメモリ573を含み得る。ユーザインタフェース578は、スマートアクセサリデバイス507のタッチスクリーンディスプレイ上に提示されるグラフィカルユーザインタフェースであり得る。メモリ573は、スマートアクセサリデバイス507の異なる機能ならびにMDA579のインスタンスを動作させるためのプログラミングコードを記憶することができる。プロセッサ571は、本明細書中に記載の図1A~4の実施例を実装するべくウェアラブル自動薬物送達デバイス502を制御するために、サイトMDA579などのプログラミングコードを実行することができる。
【0087】
被分析物センサ503は、コントローラ531、メモリ532、検知/測定デバイス533、ユーザインタフェース537、電源/環境発電回路534および通信デバイス535を含むことができる。被分析物センサ503は、管理デバイス505のプロセッサ551またはウェアラブル自動薬物送達デバイス502のコントローラ521に対して通信可能に結合され得る。メモリ532は、情報およびプログラミングコード、例えばMDA536のインスタンスなどを記憶するように構成され得る。
【0088】
被分析物センサ503は、多数の異なる被分析物、例えば乳酸塩、ケトン、尿酸、ナトリウム、カリウム、アルコールレベルなど、および検出の出力結果、例えば測定値などを検出するように構成され得る。被分析物センサ503は、一実施例においては、5分毎などの予め決定された時間的間隔で血糖値を測定するように構成され得る。被分析物センサ503の通信デバイス535は、測定された血糖値を、無線リンク595を介して管理デバイス505に対してまたはウェアラブル自動薬物送達デバイス502を用いて無線通信リンク508を介して通信するための送受信機として動作する回路を有することができる。被分析物センサ503と呼ばれているものの、被分析物センサ503の検知/測定デバイス533は、1つ以上の追加の検知要素、例えばグルコース測定要素、心拍数モニタ、圧力センサなどを含むことができる。コントローラ531は、ソフトウェア命令、ファームウェア、メモリ(例えば532)内に記憶されたプログラミング命令、またはそれらの任意の組合せを実行する離散的な特殊論理および/または構成要素、特定用途向け集積回路、マイクロコントローラまたはプロセッサを含み得る。
【0089】
コントローラ521と同様に、被分析物センサ503のコントローラ531は、多くの機能を果たすように動作可能であり得る。例えば、コントローラ531は、メモリ532内に記憶されたプログラミングコードによって、検知および測定デバイス533が検出したデータの収集および分析を管理するように構成され得る。
【0090】
被分析物センサ503は、図5中でウェアラブル自動薬物送達デバイス502とは別個のものとして描かれているものの、さまざまな実施例において、被分析物センサ503とウェアラブル自動薬物送達デバイス502を同じユニット内に組込むことが可能である。すなわち、さまざまな実施例において、センサ503は、ウェアラブル自動薬物送達デバイス502の一部であり、ウェアラブル自動薬物送達デバイス502と同じハウジングの内部に格納されていてよい(例えばセンサ503または、単に検知/測定デバイス533と関連するプログラミングコードを記憶するメモリのみが、ウェアラブル自動薬物送達デバイス502のメモリ523などの1つ以上の構成要素の内部に位置付けされるかまたはそれらの中に統合されていてよい)。このような例示的構成において、コントローラ521は、管理デバイス505、クラウドベースサービス511、別のセンサ(図示せず)、オプションのスマートアクセサリデバイス507などからのいかなる外部入力も無く、単独で図1A~4のプロセス実施例を実装する能力を有し得る。
【0091】
クラウドベースサービス511をシステム500のそれぞれのデバイス502、503、505または507に結合する通信リンク515は、セルラリンク、Wi-Fiリンク、Bluetoothリンクまたはそれらの組合せであり得る。クラウドベースサービス511によって提供されるサービスには、血糖測定値、履歴IOBまたはTDI、先行する炭水化物補償用量および他の形態のデータなどの匿名化されたデータを記憶するデータストレージが含まれ得る。さらに、クラウドベースサービス511は、多数のユーザからの匿名化されたデータを処理して、TDI、インスリン感受性、IOBなどに関連する一般化された情報を提供することができる。
【0092】
無線通信リンク508、591、592、593、594および595は、公知の無線通信規格または独自規格を用いて動作するあらゆるタイプの無線リンクであり得る。一例として、無線通信リンク508、591、592、593、594および595は、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、Wi-Fi、近距離通信規格、セルラ規格または他の任意の無線プロトコルに基づく通信リンクを、それぞれの通信デバイス554、574、526および535を介して提供することができる。
【0093】
図6は、開示された技術およびデバイスと共に使用可能なグラフィカルユーザインタフェースの一実施例を示す。
【0094】
先の実施例で説明されている管理デバイスは、スマートホンに類似するフォームファクタを有する専用コンピュータデバイスであり得るかまたは本明細書中に記載の食事告知の特徴のいくつかまたは全てを実装するモバイルコンピュータアプリケーションを実行するように動作可能であるスマートホンであり得る管理デバイス601として実装可能である。管理デバイス601は、610などのグラフィカルユーザインタフェースを実装するように動作可能であり得る。グラフィカルユーザインタフェースは、ボーラスボタン611ならびに他の入力といったユーザ活動化入力を含み得る。
【0095】
一実施例において、先の実施例を参照して説明されたMDAアプリケーションが、食事告知を受信するように動作可能であり得る。例えば、食事告知は、ユーザ入力または自動食事検出アルゴリズムを介してユーザが提供する食事の摂取通知であり得る。図6の実施例においては、食事告知は、ユーザがボーラスボタン611に触れたことに応答したものであり得る。ボーラスボタン611とユーザとの対話に応答して、MDAアプリケーションのアルゴリズムは、グラフィカルユーザインタフェース610に対する更新である確認ユーザインタフェース612の生成をひき起こし得る。確認ユーザインタフェース612は、食事の摂取をユーザが確認できるようにするために提示されるべき確認ボタン617を含み得る。食事の確認に応答して、確認ユーザインタフェース612を修正して、食事告知応答グラフィカルユーザインタフェース614を提示することができる。食事告知応答グラフィカルユーザインタフェース614は、食事告知に応答して送達され得るボーラス用量のインジケータ615を含むことができる。
【0096】
図6の実施例中のボタン611および確認ボタン617は、「ボーラス」という用語を使用しているものの、このようなボタン上の言葉遣いは異なるものであってよい。例えば、ボタン611は、「Announce Meal(食事を告知)」または「Meal Announcement(食事告知)」と提示していてよく、あるいは、「Are you having meal(食事中ですか)」または「Announce Meal?(食事告知を行ないますか?)」といったように問いかけることもできる。そしてボタン617は、同様にして、食事告知またはボーラス要請を確認するための対応する言語、例えば「Would you like to start a balus?(ボーラスを開始したいですか?)」などの説明文に隣接して「Confirm meal announcement(食事告知を確認して下さい)」などを提示することもできる。ボーラスのデフォルトサイズ(例えば単位数)も同様に、確認スクリーンまたは確認ボタン617内に描写され得る。さらに、ボーラスのデフォルトサイズは、アプリケーションの設定値部分の中で構成されていてもよい。
【0097】
本明細書中に記載の技術のソフトウェア関連実装、例えば図1A~4を参照して説明されているプロセス実施例には、非限定的に、ファームウェア、特定用途向けソフトウェア、または1つ以上のプロセッサにより実行され得る他の任意のタイプのコンピュータ可読命令が含まれ得る。コンピュータ可読命令は、非一時的コンピュータ可読媒体を介して提供され得る。本明細書中に記載の技術のハードウェア関連実装には、非限定的に、集積回路(IC)、特定用途向けIC(ASIC)、フィールドプログラマブルアレイ(FPGA)および/またはプログラマブル論理デバイス(PLD)が含まれ得る。いくつかの実施例において、本明細書中に記載の技術および/または本明細書中に記載のいずれのシステムまたは構成要素も、1つ以上のメモリ構成要素上に記憶されたコンピュータ可読命令を実行するプロセッサを伴って実装可能である。
【0098】
さらにまたは代替的には、実施例は閉ループアルゴリズム実装に関連して説明された可能性があるものの、開ループ使用を可能にするように開示された実施例の変形形態を実装することが可能である。開ループ実装は、スマートペン、シリンジなどのさまざまなインスリン送達方法の使用を可能にする。例えば、開示されたAPアプリケーションおよびアルゴリズムは、体重または年齢といった情報の入力を要求するプロンプトの生成などの、開ループ動作に関係するさまざまな機能を行なうように動作可能であり得る。同様にして、インスリン投与用量を、APアプリケーションまたはアルゴリズムによって、ユーザインタフェースを介してユーザから受信することができる。APアプリケーションまたはアルゴリズム内のユーザ設定値などを調整することによって、他の開ループアクションも実装可能である。
【0099】
開示されているデバイスまたはプロセスのいくつかの実施例は例えば、機械(すなわち、プロセッサまたはコントローラ)によって実行された場合に本開示の実施例にしたがって方法および/または動作を機械に行なわせることのできる命令または命令セットを記憶し得る記憶媒体、コンピュータ可読媒体または製品を用いて、実装可能である。このような機械は、例えば、あらゆる好適な処理プラットフォーム、コンピュータプラットフォーム、コンピュータデバイス、処理デバイス、コンピュータシステム、処理システム、コンピュータ、プロセッサなどを含むことができ、ハードウェアおよび/またはソフトウェアのあらゆる好適な組合せを使用して実装可能である。コンピュータ可読媒体または製品には例えば、任意の好適なタイプのメモリユニット、メモリ、メモリ製品、メモリ媒体、記憶デバイス、記憶製品、記憶媒体および/または記憶ユニット、例えばメモリ(非一時的メモリを含む)、取外し可能または取外し不能媒体、消去可能または消去不能媒体、書込み可能媒体または書直し可能媒体、デジタルまたはアナログ媒体、ハードディスク、フロッピディスク、コンパクトディスク読取り専用メモリ(CD-ROM)、記録可能コンパクトディスク(CD-R)、書直し可能コンパクトディスク(CD-RW)、光ディスク、磁気媒体、磁気光学媒体、取外し可能メモリカードまたはディスク、さまざまなタイプのデジタル多用途ディスク(DVD)、テープ、カセットなどが含まれ得る。命令には、任意の好適な高水準、低水準、オブジェクト指向、視覚、コンパイル済みおよび/または解釈済みプログラミング言語を用いて実装される、任意の好適なタイプのコード、例えばソースコード、コンパイル済みコード、解釈済みコード、実行可能コード、静的コード、動的コード、暗号化コード、プログラミングコードなどが含まれる。非一時的コンピュータ可読媒体で具体化されたプログラミングコードは、プログラミングコードを実行した場合にプロセッサに本明細書中に記載されているものなどの機能を行なわせることができる。
【0100】
本開示のいくつかの実施例について以上で説明した。しかしながら、本開示はこれらの実施例に限定されず、むしろ、本明細書中で明示的に記載されたものに対する追加および修正も同様に開示された実施例の範囲内に含まれるということが意図されている、ということが明示的に指摘される。その上、本明細書中に記載のさまざまな実施例の特徴は相互に排他的なものでなかったこと、そしてたとえ、本明細書中で明確にされていなかったとしても、さまざまな組合せおよび置換の形で存在し得、それによって開示された実施例の精神および範囲から逸脱することはない、ということを理解すべきである。実際、当業者であれば、開示された実施例の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載されたものの変形形態、修正および他の実装を着想するものである。したがって、開示された実施例は、先行する例示的説明によってのみ定義すべきものではない。
【0101】
本技術のプログラム態様は、典型的に一タイプの非一時的機械可読媒体上に担持されその中で具現化される実行可能コードおよび/または付随するデータの形をした「プロダクト(products)」または「製品(articles of manufacture)」として想定されてよい。蓄積型媒体には、ソフトウェアプログラミングのためにいつでも非一時的記憶を提供し得る、コンピュータ、プロセッサなどまたはそれに付随するモジュールの有形メモリ、例えばさまざまな半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブなどのいずれかまたは全てが含まれる。開示の要約は、読者が技術的開示の内容を迅速に解明できるようにするために提供されている、ということが強調される。それは、クレームの範囲または意味を解釈または限定するために使用されないという理解の下で提出されているものである。さらに、以上の「詳細な説明」においては、本開示を簡素化するために、さまざまな特徴が単一の実施例中にまとめられている。この開示方法は、請求対象の実施例が、各クレーム中で明示的に記載されているものよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下のクレームが反映するように、発明力ある主題は、単一の開示された実施例の全てより少ない特徴の中にある。したがって、以下のクレームは、本明細書の詳細な説明中に組込まれ、各クレームは別個の実施例として独立したものである。添付クレーム中、「including(~を含む)」および「in which(ここで)」なる用語は、それぞれ「comprising(~を含む)」および「wherein(ここで)」なるそれぞれの用語のプレインイングリッシュ等価物として使用される。さらに、「first(第1の)」、「second(第2の)」、「third(第3の)」などの用語は、単なるラベルとして使用されているにすぎず、それらの目的語に対して数的要件を課するように意図されていない。実施例についての以上の説明は、例示および説明を目的として提示されてきた。それは、網羅的であるように、または本開示を開示された厳密な形態に限定するように意図されたものではない。本開示に照らして、多くの修正および変形形態が可能である。本開示の範囲は、この詳細な説明によってではなく、むしろ本明細書に付加されたクレームによって限定されることが意図されている。本出願に対する優先権を主張する将来提出される出願は、開示された主題を異なる形で主張することができ、概して、本明細書中でさまざまな形で開示され他の形で実証されている通りの1つ以上の制限のあらゆるセットを含むことができる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
【国際調査報告】