IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コナリス リサーチ インスティテュート アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2023-550994COVID-19及びその他のウイルス感染症の患者の症状の消散までの時間を低減するためのニコチンアミド、ニコチンアミド前駆体及びニコチンアミド代謝体並びにそれらの組成物
<>
  • 特表-COVID-19及びその他のウイルス感染症の患者の症状の消散までの時間を低減するためのニコチンアミド、ニコチンアミド前駆体及びニコチンアミド代謝体並びにそれらの組成物 図1
  • 特表-COVID-19及びその他のウイルス感染症の患者の症状の消散までの時間を低減するためのニコチンアミド、ニコチンアミド前駆体及びニコチンアミド代謝体並びにそれらの組成物 図2
  • 特表-COVID-19及びその他のウイルス感染症の患者の症状の消散までの時間を低減するためのニコチンアミド、ニコチンアミド前駆体及びニコチンアミド代謝体並びにそれらの組成物 図3
  • 特表-COVID-19及びその他のウイルス感染症の患者の症状の消散までの時間を低減するためのニコチンアミド、ニコチンアミド前駆体及びニコチンアミド代謝体並びにそれらの組成物 図4
  • 特表-COVID-19及びその他のウイルス感染症の患者の症状の消散までの時間を低減するためのニコチンアミド、ニコチンアミド前駆体及びニコチンアミド代謝体並びにそれらの組成物 図5
  • 特表-COVID-19及びその他のウイルス感染症の患者の症状の消散までの時間を低減するためのニコチンアミド、ニコチンアミド前駆体及びニコチンアミド代謝体並びにそれらの組成物 図6
  • 特表-COVID-19及びその他のウイルス感染症の患者の症状の消散までの時間を低減するためのニコチンアミド、ニコチンアミド前駆体及びニコチンアミド代謝体並びにそれらの組成物 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】COVID-19及びその他のウイルス感染症の患者の症状の消散までの時間を低減するためのニコチンアミド、ニコチンアミド前駆体及びニコチンアミド代謝体並びにそれらの組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/706 20060101AFI20231129BHJP
   A61K 31/455 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20231129BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20231129BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20231129BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20231129BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20231129BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231129BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231129BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20231129BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A61K31/706
A61K31/455
A61K31/405
A61K31/198
A61K31/44
A61K31/196
A61P31/16
A61P31/14
A61P31/18
A61P31/20
A61P1/16
A61P29/00
A61P1/02
A61P11/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532395
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2021083138
(87)【国際公開番号】W WO2022112489
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】20210479.0
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21162960.5
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519234006
【氏名又は名称】コナリス リサーチ インスティテュート アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ヴェツィヒ ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】シュライバー シュテファン
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086BC14
4C086BC17
4C086BC19
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA07
4C086ZA59
4C086ZA62
4C086ZA67
4C086ZA75
4C086ZB11
4C086ZB33
4C086ZC55
4C206AA01
4C206FA33
4C206FA53
4C206GA01
4C206GA31
4C206ZA07
4C206ZA62
4C206ZA67
(57)【要約】
本発明は、COVID-19の患者又は他のウイルス感染症の患者において1種又は複数の症状の消散までの時間を低減するのに使用するためのニコチンアミド(ナイアシンアミド)又はその適切な前駆体若しくは代謝体及びその組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチンアミド;ニコチン酸;ニコチン酸エステル;トリプトファン;トリプトファンジペプチド;ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD);ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP);N-ホルミルキヌレニン、L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシアントラニレート、2-アミノ-3-カルボキシムコン酸セミアルデヒド、キノリネート、ニコチン酸モノヌクレオチド(ベーターニコチン酸D-リボヌクレオチド)、及びニコチン酸アデニンジヌクレオチドからなる群から選択されるNAD若しくはNADPの生合成における中間体;ニコチンアミドリボシド;ニコチンアミドモノヌクレオチド;1-メチルニコチンアミド/N-メチルニコチンアミド;又はこれらの組合せから選択される活性物質を含む、コロナウイルス感染症2019(COVID-19)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、インフルエンザ、後天性免疫不全症候群(AIDS)、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、エンテロウイルス感染症及びワクシニアウイルス感染症からなる群から選択される疾患に関連する1種又は複数の症状の消散までの時間を低減するのに使用するための組成物であって、活性物質、好ましくはニコチンアミドを下部小腸及び/又は結腸において局所の補充又は効力のために部分的又は完全に放出するように製剤化されている、組成物。
【請求項2】
それぞれの病原体に陽性と検査された患者においてCOVID-19、SARS、MERS、インフルエンザ、AIDS、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、エンテロウイルス感染症及びワクシニアウイルス感染症からなる群から選択される疾患に関連する症状の発現を予防するか、及び/又は症状を改善するために曝露後予防として使用するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
活性物質、好ましくはニコチンアミドを主に局所に下部小腸及び/又は結腸に送達する遅延放出及び/又は遅延制御放出用の1種又は複数の活性物質製剤、好ましくはニコチンアミド製剤と共に活性物質、好ましくはニコチンアミドを主に全身的に血液循環に送達する即時放出及び/又は持続放出及び/又は徐放用の1種又は複数の活性物質製剤、好ましくはニコチンアミド製剤を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
活性物質製剤、好ましくはニコチンアミド製剤の2つの製剤異形の組合せを1:1~1:1000、好ましくは1:3~1:300、より好ましくは1:10~1:100の範囲の特定の質量比で含有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
同じ投与形態の活性物質、好ましくはニコチンアミドの2つ又はそれ以上の製剤異形の組合せを含有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
別々の投与形態の活性物質、好ましくはニコチンアミドの2つ又はそれ以上の製剤異形の変動又は固定用量組合せ薬を含有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
最終投与形態当たり1~5000mg、好ましくは10~4000mg、より好ましくは100~3000mgの活性物質含量、好ましくはニコチンアミド含量を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
遅延又は遅延制御放出製剤の投与後における活性物質、好ましくはニコチンアミドの血漿ピークレベルが、同じ方法及び同じ条件下で即時放出製剤として投与された同じ量の活性物質、好ましくはニコチンアミドに対して少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%低減するように、活性物質、好ましくはニコチンアミドの一部が循環系に低い程度でのみ入るように遅延又は遅延制御放出用に製剤化される、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
1日一回投与に使用するための、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
朝に朝食と共に投与に使用するための、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
用量が最終投与形態当たり1~5000mg、好ましくは10~4000mg、より好ましくは100~3000mgの活性物質含量、好ましくはニコチンアミド含量を有する、請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1に規定された疾患に陽性と検査された患者において4週以内、好ましくは3週以内、より好ましくは2週以内の通常の活動を行なう能力の改善及び/又は身体能力の改善及び/又は倦怠感の改善に使用するための、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
疾患がCOVID-19である、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
ウイルス感染から重症の病気を発症する増大したリスクに関連する少なくとも1種の特徴又は内在する医学的状態を有する患者への投与に使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
COVID-19の少なくとも1種の特徴的な症状、好ましくは咳、発熱及び味覚喪失からなる群から選択される症状のある患者への投与に使用するための、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナウイルス感染症2019(coronavirus disease 2019)(COVID-19)の患者又はその他のウイルス感染症の患者において症状の緩和又は消散までの時間を低減するのに使用するためのニコチンアミド(ナイアシンアミド)又はその適切な前駆体若しくは代謝体及びそれらの組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(severe acute respiratory syndrome coronavirus type 2)(SARS-CoV-2)による感染後の疾患経過は、無症状感染から入院、最終的な補助換気の必要性及び死を伴う重症急性呼吸器症候群の発症まで極めて変わり易い。最終的にCOVID-19を発症するSARS-CoV-2感染の患者の大部分は病院での看護を必要としない症状になる。入院治療の主要な誘因はガス交換及び換気に伴う問題であり、一方全般的な病気は二次的な役割を果たす。理由は分からないが、急性COVID-19から回復した後の低下した臓器機能は、軽度及び重症の両方の疾患経過の患者でも感染の急性期後数週間~数か月持続し得る。この症候群に対して、COVID-19急性期後症候群(post-acute COVID-19 syndrome)(PACS)、SARS-CoV-2感染症の急性期後後遺症(post-acute sequelae of SARS-CoV-2 infection)(PASC)又は「COVID後遺症(long COVID)」のような異なる用語がある。類似の症状(例えば咳、発熱又は倦怠感)があるインフルエンザのような一般的な呼吸器ウイルス感染症と比較して、COVID-19患者では、特に入院後、持続性身体症状(Persistent Somatic Symptom)がより一層一般的であり、深刻である(Marshall 2020, Nature 585:339; Groff et al. 2021, JAMA Netw. Open 4:e2128568; Jiang et al. 2021, JACC Basic Transl. Sci. 6:796)。持続性身体症状は、その病因とは無関係に、ある病気から回復した後少なくとも数か月殆どの日に存在する悩ましい身体の症状を主観的に説明する総称を表す。持続性身体症状は患者の主観的な身体症状重症度の反復測定によりオペレーション可能になる(operationalised)ことができ、したがって倦怠感及び苦痛の他の測定を含む。COVID-19において、疾患の急性期を越える症状又は組織損傷の持続性は例外というよりむしろ規則である:例えば、COVID-19患者での研究において参加者の88%は病院からの退院後6週でも目視による肺損傷を有し、56%で損傷は12週持続した(Marshall 2020, Nature 585:339)。別の研究においては、70%を超える患者が退院した1か月後も息切れに苦しんでいた(Marshall 2020, Nature 585:339)。更に別の研究において、患者の25%が3か月後異常な肺機能を有し、16%がまだ倦怠感があった(Marshall 2020, Nature 585:339)。最近の大規模なメタ解析は「COVID-19生存者の大半が回復の6か月後PASCを経験した」ことを示した(Groff et al. 2021, JAMA Netw. Open 4:e2128568)。SARS-CoV-1のような関連するコロナウイルスの場合も、症状持続性が記載されており、何年も続くことが示されている(Marshall 2020, Nature 585:339)。この症状の持続性は、約100日の長期追跡調査で抗体の耐久性及び免疫反応に結び付けられることが示唆されている(Chen at al. 2020, Cell 183:1)。いずれの場合も、症状の持続性は上に記載した重症のCOVID-19の入院患者に制限されないが、軽度の疾患の患者でも同じように起こる。例えば、COVID-19後の持続性の倦怠感はアイルランドの128人の患者のコホートで疾患重症度とは無関係であり、そのうちの52.3%が初期のCOVID-19症状後10週のメジアンで持続性倦怠感を報告した(Townsend et al. 2020, PloS ONE 15:e0240784)。
【0003】
COVID-19からの回復後ローマ(イタリア)の病院から退院した患者に対する急性期後(post-acute)外来診療の追跡研究で、143人の患者が含まれ、最初のCOVID-19症状の始まりから平均60.3日後に評価した(Carfi et al. 2020, JAMA 324:604)。この時点で、87.4%の患者が少なくとも1種のCOVID-19に関連する症状の持続を報告し、32.2%が1種又は2種の症状を報告し、55.2%が3種又はそれ以上の症状を報告した。最も頻繁に残る症状は倦怠感(53.1%)、呼吸困難(43.3%)及び関節痛(27.3%)であった(Carfi et al. 2020, JAMA 324:604)。
【0004】
アメリカ疾病予防管理センター(United States Centers for Disease Control and Prevention)(CDC)のCOVID-19対応チーム(Response Team)は、最初13州の14大学のヘルスケアシステムの1つで外来患者来診時にSARS-CoV-2-陽性と検査された成人の場所特定のランダムサンプルとのCDC職員の電話問診を含む大規模な研究を行なった(Tenforde et al. 2020, MMWR 69:993)。問診は2020年4月~6月の期間にこの検査日後14~21日で実施した。292人の応答者のうち、94%(274人)はその初期検査の時点で1種又は複数のCOVID-19症状を有しており、更に分析した。症状を示す応答者のメジアンの年齢は42.5歳であり、52%が女性であり、利用できるそれぞれのデータがある応答者の53%(264人のうち141人)が1種又は複数の慢性の医学的状態を有していた。検査から問診の日までのメジアンの間隔は16日であった。利用できるそれぞれのデータがある274人の問診した症状を示す患者の270人のうち95人(35%)は問診のときにその通常の健康状態に戻っていなかった。かかる患者の割合は年齢及び慢性状態の数と共に増大した:それぞれ、26%(18~34歳)~47%(≧50)及び28%(0又は1の慢性状態)~57%(3又はそれ以上)。全体として、最も一般的に報告された症状は倦怠感(71%)、咳及び頭痛(いずれも61%)であり、咳及び倦怠感は検査陽性(それぞれ43%及び35%)の14~21日に解消していた可能性が最も少ない。重要なことに、その時間に通常の健康状態に戻らなかった患者35%(270人のうち95人)に加えて、通常の健康状態に戻ったと報告した人が、全て症状がないわけではなかった:34%(175人のうちの59人)は17の尋ねられたCOVID-19-関連症状のうちの1種又は複数にまだ苦しんでいた。総合して、CDCの研究は、270人の患者のうち154人(95人+59人)(57%)がSARS-CoV-2に対して初期の検査陽性後14~21日で無症状ではなかったことを立証した。また、検査の日後に始まった症状は調査に記録さえされなかった(Tenforde et al. 2020, MMWR 69:993)。
【0005】
2020年3月~6月、非重篤COVID-19の150人のCOVID-19患者の記述的臨床経過観察が、フランス、ツールの大学病院(University Hospital of Tours)で患者がSARS-CoV-2陽性と検査された後7日目、30日目及び60日目に行なわれた(Carvalho-Schneider et al. 2021, Clin. Microbiol. Infect. 27:258)。68%(150人のうちの103人)の患者が30日目に、更に一層際立ったことに66%(130人のうちの86人)が60日目に、そのCOVID-19疾患の少なくとも1種の症状を保持していることが分かった。30日目/60日目の主な持続症状は無力(49.3%/40%)、呼吸困難(36.7%/30%)及び無臭覚/無味覚(28%/23%)であった。著者らは、「症状の始まりから2か月まで、非重篤COVID-19の成人の三分の二が症状、主に無臭覚/無味覚、呼吸困難又は無力をもっていた」と結論した(Carvalho-Schneider et al. 2021, Clin. Microbiol. Infect. 27:258)。
【0006】
補足するデータがCOVID-19の384人の患者の追跡コホートから提供され、それによると、病院から退院後54日のメジアンで、53%が持続性の息切れを、34%が咳を、及び69%が倦怠感を報告した(Mandal et al. 2021, Thorax 76:396)。
ジュネーブ(スイス)の669人の歩行可能な患者のコホートで、少なくとも32%の患者が診断から30~45日(平均、43日)で1種又は複数の症状を報告した。倦怠感、呼吸困難、及び味覚又は嗅覚の喪失が主な持続性症状であった(Nehme et al. 2021, Ann. Intern. Med. 174:723)。
周知の呼吸器症状に加えて、新たに出現した疫学データがSARS-CoV-2感染により誘発される胃腸傷害とCOVID-19の臨床特徴、予後、及び疾患重症度との関連を示唆しているので、COVID-19の消化器症状の発現が増大する注目を集めている(Mitsuyama et al. 2020, J. Clin. Med. 9:3630)。典型的な胃腸症状には食欲の喪失、吐き気、嘔吐、下痢、及び腹部痛があり、これらは小腸及び大腸の腸壁肥厚、液体で満たされた(fluid-filled)結腸、腸壁気腫、気腹、腸重積症、及び腹水症により引き起こされ得、伴い得る[reviewed by Lui et al. 2021, Abdom. Radiol. (NY) 46:1249]。COVID-19の患者の入院したコホートで、45.6%が急性粘膜傷害を示し、33.3%が虚血性様大腸炎を示した(Vanella et al. 2021, BMC Open Gastroenterol. 8:e000578)。また、腸の微生物叢の組成の攪乱(腸内毒素症)はCOVID-19の患者の疾患重症度及び機能不全の免疫反応を反映することが示されている(Yeoh et al. 2021, Gut 70:698)。太り過ぎ、肥満又はその他の併存疾患のような危険因子をもつアメリカの患者において、胃腸症状は患者の過半数(61.3%)で観察されており、食欲の喪失(34.8%)、下痢(33.7%)及び吐き気(26.4%)が最も一般的な症状である(Redd et al. 2020, Gastroenterology 159:765)。胃腸症状のある患者はまた、倦怠感(胃腸症状のない患者の45.5%と比較して65.1%)又は筋肉痛(22%に対して49.2%)のような他のCOVID-19症状をかなり示し易い傾向もあった(Redd et al. 2020, Gastroenterology 159:765)。
【0007】
COVID-19に苦しむ症状は広範囲に及ぶ可能性があり、殆どの患者はその苦悩がたいてい身体症状状態により引き起こされると報告する(Repisti et al. 2020, Global Psychiatry 3:201)。今までのところ、家庭内隔離又は初期診療において軽度~中程度のCOVID-19の患者の大部分で症状の継続時間を実質的に短縮することができる薬物療法又はその他の治療介入はない。対照的に、プレドニゾンのような抗炎症療法は早期疾患中に行なわれると悪化した経過を伴い(Brenner et al. 2020, Gastroenterology 159:481)、これは急性呼吸窮迫症候群中に投与されるデキサメタゾンと異なっている(The RECOVERY Collaborative Group 2021, N. Engl. J. Med. 384:693)。
したがって、COVID-19の症状の緩和又は消散までの時間を低減することができる、副作用がないか又は最少の活性物質及び組成物に対する大きな満たされていないニーズがある。ウイルスの複製が細胞傷害を引き起こし、それ故内皮細胞死及び凝固作用活性化を含む一連の病態生理学的な事象を起こすCOVID-19の病態生理学を考えると、かかる作用物質は抗炎症又は抗ウイルス活性以上のものを必要とするであろう。
【0008】
用語ビタミンB3はニコチン酸及びニコチンアミドを含む。重要な遍在する補酵素ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)及びそのリン酸化誘導体ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)の前駆体であることに加えて、ニコチンアミドは腸の上皮細胞におけるエネルギー恒常性シグナル伝達経路及びこれらの細胞からの抗菌性ペプチドの分泌の維持にも関与する(Hashimoto et al. 2012, Nature 487:477)。腸の上皮細胞及び腸内微生物叢の健康及び機能性の維持に関して、ニコチンアミドはその前駆体である必須アミノ酸トリプトファンと類似の効力を有する(Hashimoto et al. 2012, Nature 487:477)。したがって、充分な量のトリプトファン又はニコチンアミドが上皮細胞のような速く複製する細胞において食物エネルギー代謝にとって特に重要であるばかりでなく、ニコチンアミドの補充はまた、特にニコチンアミドが適当な製剤又は組成物により微生物叢が位置する下部小腸及び大腸に局所送達されたとき腸内微生物叢の調節不全及び腸の炎症から保護する(Hashimoto et al. 2012, Nature 487:477;Waetzig & Seegert 2013、国際出願PCT/EP2013/062363;Bettenworth et al. 2014, Mol. Nutr. Food Res. 58:1474;Waetzig & Seegert 2015、国際出願PCT/EP2014/077637;Waetzig & Seegert 2015、国際出願PCT/EP2014/077646)。また、ニコチンアミドのようなNAD前駆体の補充はコロナウイルス感染症と戦うのに有益であることが示唆されている(Heer et al. 2020, J. Biol. Chem. 295:17986)。しかしながら、ニコチンアミドリボシドがNADレベルを上げる際により効果があることが示唆されているので(Bogan-Brown et al. 2021, J. Diet. Suppl., DOI: 10.1080/19390211.2021.1881686)、ニコチンアミドを使用することは唯一の明白な選択ではない。ニコチンアミドは食品[Regulation (EC) No 1925/2006, amended by Commission Regulation (EC) No 1170/2009]、栄養補助食品(Directive 2002/46/EC)並びに幼児以後の処方食(formula)、乳児食及び特定の栄養用の食品(Regulation (EU) No 609/2013)に使用が認められている。ニコチンアミドは主にダイエット栄養補助食品(dietary supplement)の形態で上市されているが、ビタミンB3不足を処置するためのニコチンアミド処方薬もある。ニコチンアミドは優れた安全プロフィールを有しており、結果として欧州食品安全機関(European Food Safety Authority)(EFSA 2002, SCF/CS/NUT/UPPLEV/39; EFSA 2014, EFSA J. 12:3759)により規定されている12.5mg/kg/日又は900mg/日の高い耐容上限量(Tolerable Upper Intake Level)(UL)又は一生の一日摂取許容量(Acceptable Daily Intake)(ADI)をもたらす。
【0009】
様々なウイルス型について、例えばワクシニアウイルス(Child et al. 1988, Virus Res. 9:119)、ヒト免疫不全ウイルス(Murray 2003, Clin. Infect. Dis. 36:453)、エンテロウイルス(Moell et al. 2009, J. Med. Virol. 81:1082)又はB型肝炎ウイルス(Li et al. 2016, Arch. Virol. 161:621)の場合、ニコチンアミドがウイルスの複製を低減し、身体の防御機構を支えることができる証拠がある。その推定的に有利なリスク対効果比に起因して、COVID-19患者におけるニコチンアミドの充分な補充は、その抗ウイルス活性及び肺損傷及び細菌の肺感染症に対する保護作用のために推奨されている(Shi et al. 2020, Cell Ceath Differ. 27:1451; Gharote 2020, Ind. J. Med. Sci. 72:25; Zhang et al. 2020, J. Med. Virol. 92:479; Mehmel et al. 2020, Nutrients 12:1616; Shakoor et al. 2021, Maturitas 144:108)。NAM補充によるNADレベルの補充は抗ウイルス性の固有の免疫機能を回復させ、SARS-CoV-2感染症に対する不適応な過炎症性の(hyperinflammatory)免疫反応のバランスを取り戻すと考えられる(Mehmel et al. 2020, Nutrients 12:1616)。
【0010】
ニコチンアミドの前駆体であるトリプトファンの腸摂取は、腸の上皮のアンジオテンシン変換酵素-2(ACE2)の存在に依存する(Hashimoto et al. 2012, Nature 487:477)。ACE2は、SARS-CoV-2がヒトの体細胞に入るのに必要とされ、呼吸器上皮よりも腸でずっと高いレベルで発現する(Mitsuyama et al. 2020, J. Clin. Med. 9:3630)。SARS-CoV-2感染は必然的にACE2の細胞表面発現を低下させ、これがトリプトファンの吸収不良、胃腸腸内毒素症及び腸の炎症症状を引き起こす(Hashimoto et al. 2012, Nature 487:477; Mitsuyama et al. 2020, J. Clin. Med. 9:3630; Yeoh et al. 2021, Gut 70:698; Vanella et al. 2021, BMC Open Gastroenterol. 8:e000578)。これはニコチンアミドの投与により補償され得、その摂取はACE2に依存せず、またこれは腸の健康及び健康な腸内微生物叢を維持する際に等しく効果的である(Hashimoto et al. 2012, Nature 487:477)。
【0011】
しかしながら、SARS-CoV-2に関連する症状の緩和に使用するための多くの他の異なる活性物質の提案がある。
他のウイルス感染症もまたトリプトファン代謝においてシフトを引き起こす。例えば、インフルエンザにおいて、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ-1(IDO1)によるトリプトファンからニコチンアミドの前駆体であるキヌレニンへの代謝は、潜在的にウイルス感染に対する直接反応により増大する(van der Sluijs et al. 2006, J. Infect. Dis. 193:214; Lin et al. 2020, Acta Otolaryngol. 140:149)。高まったIDO1活性及びトリプトファン除去は炎症のIL-6-関連バイオマーカー(即ち、ネオプテリン)及び患者の予後と密接に関連する(Pizzini et al. 2019, Influenza Other Respir. Viruses 13:603; Pett et al. 2018, Open Forum Infect Dis. 5:ofx228)。インターフェロン遊離は、連続してトリプトファンをキヌレニンに導くIDO1誘発においてある特定の役割を果たすようである(Gaelings et al. 2017, FEBS J. 284:222)。最近のH1N1インフルエンザの大流行中に、トリプトファンの減成(degradation)は最も有益なマーカーの中で急性呼吸窮迫症候群の発現を予言していた(Ferrarini et al. 2017, Electrophoresis 38:2341)。共生細菌により産生されるD-トリプトファンが胃腸微生物叢の変化を介してアレルギー性気道疾患に影響を及ぼすようである胃腸及び肺の免疫-微生物叢相互作用間の興味深い交差接続が提案されている(Kepert et al. 2017, J. Allergy Clin. Immunol. 139:1525)。インフルエンザの重症の症例において、慢性の炎症のように、増大したトリプトファン減成、したがって増大したキヌレニンレベルが観察され、トリプトファン減成の阻害が動物モデルにおいて正の効果を有する(Boergeling & Ludwig 2017, FEBS J. 284:218; Pizzini et al. 2019, Influenza Other Respir. Viruses 13:603)。
【0012】
総合して、技術水準は、ニコチンアミドがCOVID-19の患者に投与される栄養又は医薬製剤の天然であるが、非特異的な抗ウイルス活性物質として免疫機構に作用し得ることを示唆している。ニコチンアミドリボシドの方がニコチンアミドより適切であり得るという証拠がある。トリプトファン及びインターロイキン-6の封鎖はインターフェロンガンマの調節によってその抗ウイルス活性において相乗作用し得る(Belladonna & Orabona 2020, Front. Pharmacol. 11:959)。デキサメタゾンのような強力な抗炎症剤又はその限定され疾患時期依存が強い効力のインターロイキン-6遮断薬トシリズマブ(Hermine et al. 2021, JAMA Intern. Med. 181:32; Gupta et al. 2021, JAMA Intern. Med. 181:41; Stone et al. 2020, N. Engl. J. Med. 383:2333; Gordon et al. 2021, N. Engl. J. Med. 384:1491; Rosas et al. 2021, N. Engl. J. Med. 384:1503)を除いて、COVID-19の唯一の認可されているターゲットを絞った抗ウイルス処置は、コロナウイルスRNAポリメラーゼをターゲットにするレムデシビルである。レムデシビルは、重い病状で入院している成人において回復までのメジアン時間を15から10日に、大幅に短縮することが示されている(Beigel et al. 2020, N. Engl. J. Med. 383:1813; Goldman et al. 2020, N. Engl. J. Med. 383:1827)。その低い効力はヤヌスキナーゼ阻害薬バリシチニブと組み合わせることにより改善することができるが(Kalil et al. 2021, N. Engl. J. Med. 384:795)、実際に臨床ルーチンに効果はない。最近、抗ウイルス薬モルヌピラビルを調べたMOVe-OUT試験の中間解析から励みになる重要な結果が、Merck and Ridgeback Therapeuticsにより報道発表され、モルヌピラビルは軽度又は中程度のCOVID-19の患者で入院又は死の危険をプラシーボと比べておよそ50%低減し得ることが示唆された。EPIC-HR試験の更に一層励みになる中間結果が最近Pfizerにより報道発表され、深刻な病気に進行する危険性が高い入院していないCOVID-19患者にSARS-CoV-2-3CLプロテアーゼ阻害薬PF-07321332及び低用量のリトナビルの組合せ(PAXLOVID(商標)という名前の組合せ)を投与するとプラシーボと比較して入院及び死が89%低下すると説明している。両方の試験及びその他多くの現在進行中の試験において、登録患者はCOVID-19に由来する深刻な病気を発症する増大したリスクを伴う少なくとも1種の特徴的又は内在する医学的状態を有することを必要としたし、必要とする。
【0013】
しかしながら、これらの試験の殆どにおいて、また他の生物製剤による治療介入試験において適用される回復の定義は、重症のCOVID-19への進行のWHO定義に従い、一般的なCOVID-19関連症状の欠如、即ち健康を全く意味しないが、7ポイント(Goldman et al. 2020, N. Engl. J. Med. 383:1827)又は8ポイント(Beigel et al. 2020, N. Engl. J. Med. 383:1813)の順序尺度で評価された臨床状態スコアカテゴリーに焦点を当てる。例えば、Goldman et al. 2020(N. Engl. J. Med. 383:1827)により使用された7ポイントの順序尺度は以下のカテゴリーからなっていた:1、死;2、入院して、侵襲的な機械的人工換気又は体外式膜型人工肺を受ける;3、入院して、非侵襲的な換気又は高流量酸素装置を受ける;4、入院して、低流量酸素補給を必要とする;5、入院して、酸素補給を必要としないが進行中の医療(Covid-19関連又は非関連)を受ける;6、入院して、酸素補給も進行中の(レムデシビル投与プロトコルに規定されている以外の)医療も必要としない;及び7、入院していない。現行基準は世界保健機関(World Health Organization)(WHO)のCOVID-19 Ordinal Scale for Clinical Improvement(https://wwwwhoint/publications/i/item/covid-19-therapeutic-trial-synopsisから入手可能)である。かかる尺度は進行の範囲及び抗ウイルス薬の割り当てられた機能を反映しており、これらの薬はウイルス量を低減することにより疾患の悪化に効果を有し、症状軽減を提供することを意図していないし、提供することができない。レムデシビル単独は中程度の病気で入院しているCOVID-19患者において回復までの時間の有意な低減を提供せず(Spinner et al. 2020, JAMA 324:1048)、レムデシビルのWHO SOLIDARITY試験における無効力及びそのリスク対効果比のために(Hsu 2020, BMJ 371:m4457)その有用性は疑問である。レムデシビル及びバリシチニブの組合せはプラシーボの場合の15日に対して10日という回復までのより速い時間を提供したが、高流量酸素の非侵襲的な換気を受ける患者のみであり、回復は症状の消散として定義されていたのではなく、酸素必要としない入院までの条件を含むという制限があった(Kalil et al. 2021, N. Engl. J. Med. 384:795)。バムラニビマブ単独又はエテセビマブとの組合せ(Chen et al. 2021, N. Engl. J. Med. 384:229; NCT04427501)並びにカシリビマブ及びイマデビマブの組合せ(Weinreich et al. 2021, N. Engl. J. Med. 384:238)のようにSARS-CoV-2に対するモノクローナル抗体は、早期のCOVID-19を制限する際に幾らかの有望さを示すが、これは米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)の緊急時使用許可により反映される。しかしながら、それらの効力は非常に限定されており、これらの治療薬はリスク/利益及び利益/コストの問題に直面し得る。したがって、近々可能性のあるモルヌピラビル及びPAXLOVID(商標)は別として、現在のところCOVID-19の一般的な苦しみの症状を効果的に改善する利用可能なコスト効率の高い治療はないし、入院から疾患の深刻な進行に移る患者の割合を確実に低下させるものもない。
【0014】
インフルエンザRNAポリメラーゼをターゲットにするファビピラビルのような類似の抗ウイルス薬は(Udwadia et al. 2021, Int. J. Infect. Dis. 103:62)同様に有望さを示しているがCOVID-19に対する効力は決定的に証明されていない。一般に、2020年初期中国で最初のCOVID-19波の絶望的な状態の下いろいろな抗ウイルス薬のターゲットを絞らない投与は、あらゆる抗ウイルス薬での早期の処置がウイルス除去を速め、COVID-19の深刻な疾患経過の可能性を低下させ得ることを示唆した(Yu et al. 2020, J. Med. Virol. 92:2675)。抗ウイルス薬は目標の終点としてのウイルス除去を増大し、感染症と戦う際の免疫系を支えることにより、例えばCOVID-19について上に記載したような疾患スコア(Beigel et al. 2020, N. Engl. J. Med. 383:1813)を低下させることが期待される。SARS-CoV-2に関して、インフルエンザウイルス及びパンデミックに対して採用される以前から確立されている戦略は最も近い利用可能な先行技術である(Ison et al. 2010, J. Infect. Dis. 201:1654; Mifsud et al. 2019, Antiviral Res. 169:1045; Uyeki et al. 2019, Clin. Infect. Dis. 68:e1)。インフルエンザをターゲットにする抗ウイルス薬では、回復までの時間、症状の緩和若しくは消散までの時間、普通の活動を取り戻すまでの時間又は以前の介護レベルに戻るまでの時間のような基準が臨床試験の終点として使用される(Ison et al. 2010, J. Infect. Dis. 201:1654; Mifsud et al. 2019, Antiviral Res. 169:1045; Uyeki et al. 2019, Clin. Infect. Dis. 68:e1)。普通、抗ウイルス薬は他の主として症状改変薬がより適当である(例えば、痛みを軽減するための鎮痛剤、熱を改善するための解熱剤又は空咳を和らげるための鎮咳剤)疾患の症状を改善するか又は取り除くために使用されないが、臨床の経験はこれらの薬が普通ウイルス感染症に極めて有効ではないことが多いことを示す。
【0015】
インフルエンザ及びその他の呼吸器ウイルス感染症(上記参照)と比較して、回復までの時間、特に症状の消散までの時間は、その疾患経過の重症度に関わらずCOVID-19患者でずっと長い(Marshall 2020, Nature 585:339; Chen at al. 2020, Cell 183:1; Carfi et al. 2020, JAMA 324:604; Tenforde et al. 2020, MMWR 69:993; Carvalho-Schneider et al. 2021, Clin. Microbiol. Infect. 27:258)。したがって、当業者は、ニコチンアミドのような非特異的な抗ウイルス剤による処置が軽度~中程度の疾患のCOVID-19患者において症状の完全な消散までの時間を短縮するとは期待しなかったが、他の場合には重症の経過をたどり、酸素又は機械的人工換気を伴う入院を必要とする傾向がある患者においてむしろ疾患経過を改善する。
しかしながら、COVID-19及びその他のウイルス関連疾患の症状の消散の時間を短縮する処置は、急性の疾患を患う苦しみを低減し、機能障害の慢性症状への長期化を回避し、その結果として患者、殊にCOVID-19の患者、また軽度~中程度の疾患の患者にとっても病気の日数を減らすために是が非でも必要であり、これは単に健康問題であるばかりでなく大きな社会経済問題でもある。
【発明の概要】
【0016】
したがって、本発明の目的は、ウイルス関連疾患、殊にCOVID-19の患者において症状の消散(単に緩和ではない)までの時間を低減するための手段を提供することであった。好ましくは、症状の消散は高い割合の患者に対して短い期間内に達成されるべきである。それに加えて、本発明の目的は、それぞれの疾患を引き起こす病原体に曝露された個体に対する曝露後予防のための手段を提供することであった。
本発明に従って、この目的は、ニコチンアミド;ニコチン酸;ニコチン酸エステル;トリプトファン;トリプトファンジペプチド;ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD);ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP);N-ホルミルキヌレニン、L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシアントラニレート、2-アミノ-3-カルボキシムコン酸セミアルデヒド、キノリネート、ニコチン酸モノヌクレオチド(ベーターニコチン酸D-リボヌクレオチド)、及びニコチン酸アデニンジヌクレオチドからなる群から選択されるNAD若しくはNADPの生合成における中間体;ニコチンアミドリボシド;ニコチンアミドモノヌクレオチド;1-メチルニコチンアミド/N-メチルニコチンアミド;又はこれらの組合せから選択される活性物質を含み、コロナウイルス感染症2019(COVID-19)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(middle-east respiratory syndrome)(MERS)、インフルエンザ、後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome)(AIDS)、A型肝炎(hepatitis type A)、B型肝炎(hepatitis type B)、C型肝炎(hepatitis type C)、D型肝炎(hepatitis type D)、E型肝炎(hepatitis type E)、エンテロウイルス感染症及びワクシニアウイルス感染症からなる群から選択される疾患に関連する1種又は複数、好ましくは全ての症状の消散までの時間を低減するのに使用するための組成物であって、活性物質、好ましくはニコチンアミドを、局所の補充又は効力のために下部小腸及び/又は結腸において部分的又は完全に放出するように製剤化されている、組成物によって解決される。
【0017】
好ましくは、本発明の組成物は経口投与用に製剤化される。
人体はヒト細胞及び特に腸内微生物叢における多くの微生物種を組み込んだメタ有機体(metaorganism)である。このメタ有機体の全ての部分から利用可能な全ての代謝経路の総和は全体として考えなければならず、人体により直接又は間接に使用することができる。トリプトファン及びニコチン酸はヒト細胞により新たに合成することはできないが、多様な起源から胃腸で吸収することができる。上に掲げた活性物質はこれらの前駆体からNAD又はNADPへ導く合成経路において中間体として合成することができる。したがって、これらの物質は特に安全でよく特徴付けられたNAD(P)前駆体ニコチンアミドと機能的に等価であると考えられる。例えば、ヒトの栄養科学において、用語「ナイアシン当量(niacin equivalent)」は既に前駆体トリプトファン及びその産物ニコチン酸及びニコチンアミドの互換性を示しており:およそ60mgのトリプトファンは1mgのナイアシンを生じ、1mgナイアシン当量と定義される(EFSA Scientific Opinion on dietary reference values for niacin; EFSA Journal 2014; 12:3759)。簡潔にするために、本発明の説明及び例示はニコチンアミドに焦点を当てるがこの化合物に制約されることはない。しかし、ニコチンアミドは最も好ましい活性物質である。
好ましくは、COVID-19の場合、少なくとも1種の症状は実施例5の表2に掲げる群から選択される。
より好ましくは、COVID-19の場合、少なくとも1種の症状は、通常の活動を行なう能力の低下、身体能力の低下、倦怠感、痰を伴う又は伴わない咳、息切れ、嗅覚及び/又は味覚の異常、のどの痛み、関節痛、及び/又は胸痛からなる群から選択される。
【0018】
この明細書の意味で、症状は、患者により(例えば、問診及び/又はアンケート及び/又はモバイルアプリにより、特に通常の活動を行なう能力のような全般的な健康な状態の多次元パラメーターに関して)及び/又は客観的な試験及び検査により(例えば、息切れを測定するために、例えば、身体検査により、活動及び/若しくは物理的パラメーターの電子機器監視により、並びに/又は、例えば、嗅覚障害を検出及び/若しくは定量化するために嗅覚検査により)自己評価され得る。疑念がある場合には、それぞれの症状の評価は自己評価によって行なわれる。
また、本発明は、COVID-19症状と重なる少なくとも幾つかの症状、特に(長引く)倦怠感をもつ他のウイルス感染症における、限定されないがSARS-CoV-1、SARS-CoV-2、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV);インフルエンザ;ヒト免疫不全ウイルス;A、B、C、D若しくはE型肝炎ウイルス;エンテロウイルス;又はワクシニアウイルスを含むウイルス感染症の症状、好ましくは持続性身体症状(特に倦怠感)の予防のための活性物質の類似の使用も含む。
当業者には理解されるように、本発明の意味で、「症状の消散」は、かかる症状が存在していた場合にのみ起こることができる。
【0019】
本明細書で使用されるとき、「症状の消散」は、存在していたその症状が、少なくとも患者の感じによると完全に取り除かれたことを意味する。
症状は以下
- SARS-CoV-2感染症:呼吸困難/息切れ;咳;ホイッスリング/喘鳴(wheezing);肺炎;倦怠感;身体能力の低下;通常の活動を行なう能力の低下;味覚及び/又は嗅覚障害;頭痛;鼻炎/鼻漏;胸痛;発熱;悪寒;のどの痛み/咽頭炎/咽頭痛;嗄声;痰が出る;下痢;関節痛(joint pain)/関節痛(arthralgia);下肢痛/四肢痛;筋肉痛(muscle pain)/筋肉痛(myalgia);腹部痛;食欲不振(anorexia)/食欲の喪失(loss of appetite)/食物摂取不足(lower food intake);吐き気;嘔吐;意識障害;めまい;錯乱;睡眠障害;皮疹;結膜炎;脱毛;
- SARS-CoV-1感染症:倦怠感;発熱;空咳;呼吸困難/息切れ;
- MERS-CoV:感染:倦怠感;発熱;空咳;呼吸困難/息切れ;下痢;吐き気;嘔吐;
- インフルエンザウイルス感染症:倦怠感;発熱;悪寒;咳;のどの痛み;鼻漏;鼻づまり;筋肉痛;身体痛;頭痛;嘔吐;下痢;
- ヒト免疫不全ウイルス感染症:倦怠感;繰り返す発熱;おびただしい寝汗;体重減少;腋窩、股間又は首のリンパ節の長引く腫れ;下痢;口、肛門又は生殖器の痛み;肺炎;
- A型肝炎ウイルス感染症:倦怠感/不快感;食欲の喪失;下痢;吐き気;腹部の不快感;暗い色の(dark-coloured)尿;黄疸;
- B型肝炎ウイルス感染症:倦怠感;発熱;食欲の喪失;吐き気;嘔吐;腹部痛;暗い色の尿;粘土色の排便;
- C型肝炎ウイルス感染症:倦怠感;筋肉痛;関節痛;発熱;吐き気;食欲の喪失;胃痛;敏感肌;暗色尿;黄疸;
- D型肝炎ウイルス感染症:倦怠感/不快感;食欲の喪失;腹部痛;黄疸;暗い色の尿;粘土色の排便;
- E型肝炎ウイルス感染症:倦怠感;腹部痛;食欲の喪失;吐き気;嘔吐;発熱;黄疸;暗い色の尿;粘土色の排便;
- エンテロウイルス感染症:発熱;鼻漏;くしゃみ;咳;発疹;口唇疱疹;体の痛み;筋肉痛;
- ワクシニアウイルス感染症:皮膚損傷;発熱;腫れたリンパ節;倦怠感/不快感;体の痛み。
【0020】
本発明に従って、上述の問題は、特許請求の範囲に定義され、及び/又は本明細書でより詳細に記載されるように、補充若しくは処置計画においてニコチンアミド又はニコチンアミドを含む組成物の使用により好ましく解決される。ニコチンアミドの適切な前駆体又は代謝体の、単独で又は組み合わせて、ニコチンアミドと共に、又はその代わりに、使用することも本発明の範囲内である。簡潔にするために全ての場合に繰り返されることはないが、ニコチンアミドが好ましい例として使用される。好ましい実施形態において、ニコチンアミドを含む組成物は、以下の関連対応特許出願:Waetzig & Seegert 2013、国際出願PCT/EP2013/062363;Waetzig & Seegert 2015、国際出願PCT/EP2014/077637;Waetzig & Seegert 2015、国際出願PCT/EP2014/077646;Schwarzら、2017、国際出願PCT/EP2017/058733に記載されているように、ニコチンアミドを下部小腸及び/又は結腸で部分的又は完全に放出して腸の粘膜及び腸内微生物叢に有益且つ局所に影響を及ぼすように製剤化される。例えば、ニコチンアミドは、例えば、少なくとも部分的に局所の効力のために、腸内微生物叢が位置する下部小腸及び/又は結腸で選択的に放出されるように製剤化される。したがって、好ましくは、疾患経過に対して、特に好ましくはCOVID-19の症状の緩和又は消散までの時間に対して有益に作用するニコチンアミドを含有する組成物が提供される。
【0021】
本発明はまた、COVID-19、SARS、MERS、インフルエンザ、AIDS、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、エンテロウイルス感染症及びワクシニアウイルス感染症からなる群から選択される疾患に関連する症状の始まりを、それぞれの病原体に対して陽性と検査された患者において予防するために曝露後予防として使用される上に定義された組成物を提供することにより、COVID-19又は他のウイルス感染症に関連する症状の予防手段も含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、COVID-19の患者の補充及び処置のためのニコチンアミド及びニコチンアミドを含む組成物の有益な効果の図式概要を示す。
図2図2は、COVID-19で入院している患者の2つのコホートでのトリプトファン及びC反応性タンパク質の比と疾患経過の重症度との相関関係を示す。CRP、C反応性タンパク質;TRP、トリプトファン。
図3図3は、一般病棟に残る患者(各々のパネルの左のボックスプロット)及び集中治療室への入院を必要とする患者(ICU-各々のパネルの右のボックスプロット)にグループ分けしたCOVID-19で入院している患者におけるトリプトファン及びその代謝体の減成マップを示す。3-HK、3-ヒドロキシキヌレニン;3-HAA、3-ヒドロキシアントラニル酸;CRP、C反応性タンパク質;IAA、インドール-3-酢酸;KYN、キヌレニン;NAM、ニコチンアミド;QUI、キノリン酸;TRP、トリプトファン。
図4図4は、ニコチンアミドを補充したCOVID-19患者のパイロット群とシリカ(プラシーボ)を補充した患者との差の症状の消散までの時間に関するグラフ表示を示す[各々n=8;COVit試験(COVit-1)の第1の部分のパイロット相]。
図5図5は、COVID-19患者[COVit試験(COVit-1)の第1の部分に登録したn=56;各々ニコチンアミド又はシリカ(プラシーボ)を補充したn=28]の幾つかの残る症状をもつ割合のグラフ表示を示す。
図6図6は、COVit試験(COVit-1)の第1の部分におけるニコチンアミド(NAM)又はシリカ(プラシーボ)の補充食供給下の完全に症状がないCOVID-19患者に対するKaplan-Meierグラフを示す;群当たりn=28。
図7図7は、COVit試験(COVit-1)の第1の部分におけるニコチンアミド(NAM)又はシリカ(プラシーボ)の補充食供給4週後患者の症状の完全な消散までの時間を表すメジアン及び四分位範囲(IQR)を含むボックスプロットを示す;群当たりn=28。
【発明を実施するための形態】
【0023】
慢性の炎症がトリプトファンの減成に関連すると予測することができ(Nikolaus et al. 2017, Gastroenterology 153:1504)、低下したトリプトファンレベルがCOVID-19で示唆されているが(Essa et al. 2020, Int. J. Tryptophan Res. 13:1)、驚くべきことに、病院への入院時のトリプトファンの炎症バイオマーカーC反応性タンパク質(CRP)に対する低い比がCOVID-19の経過の重症度に強く関連しており、特に、当業者により期待されていたようにトリプトファン血清レベルの予想外に強い低下が重要な代謝体の1種としてのニコチンアミドの増大した有用性となるわけではないことが観察された(実施例1)。
【0024】
また、COVit試験(COVit-1;実施例2)の第1の部分のパイロット相において、驚くべきことに、1日当たり1,000mgのニコチンアミドの28日間の補充は、シリカを投与したプラシーボコントロール群と比較して、SARS-CoV-2の最初の検査陽性後21日目又はそれより前に少なくとも1種のCOVID-19の症状を依然として患う対象の数を50%の割合(8人のうち4人)に低下させ、患者の87.5%(8人のうちの7人)はまだ1種又は複数のCOVID-19の症状を示していたことが判明した(実施例2)。プラシーボ群の1人の患者は2週目の前に入院を必要としたがニコチンアミド群の患者にはいなかった。この効果は募集した患者集団で非常に強力なようであるが、患者の無症状の割合を、68%(150人のうちの103人)の患者が30日目に、更に一層際立ったことに66%(130人のうちの86人)が60日目にCOVID-19疾患の少なくとも1種の症状を保持していたフランス出身の匹敵する欧州人の集団で得られた結果と比較しても明白であった(Carvalho-Schneider et al. 2021, Clin. Microbiol. Infect. 27:258)。この長期の結果をパイロット試験(実施例2)における6週からの結果と比較すると、COVit-1試験に募集した患者集団、特にシリカ(コントロール)群が異常に好ましくない疾患経過又は予後をもたなかったが公開されたコホートに充分匹敵したことが明らかである。
【0025】
信号は、患者集団がCOVit-1試験の状況で群当たりn=28に拡大されたとき、およそ20のパーセンテージポイント(2週後ニコチンアミドで35.7%無症状、プラシーボ/シリカで14.3%)の大きさで確かめられた(実施例5)。驚くべきことに、女性患者はこの設定で慣用のニコチンアミド補充から選択的に利益を得た(実施例5)。
COVit-1からの正の信号は、中間のデータ(n=402患者)が入手可能な(実施例6)より大きい確認試験部分(COVit-2)を正当化した。COVit-1に対する重要な差は、2つの異なるニコチンアミド錠剤:1種の慣用の500-mg即時放出ニコチンアミド錠剤(COVit-1に使用したものと同じ)及び1種の新規な500-mgの制御された回結腸放出性のニコチンアミド(CICR-NAM)錠剤のプラシーボ制御された使用であり、これはニコチンアミドへの長期の連続した腸の曝露を保証する。この概念は、特に炎症性腸疾患の処置において腸内微生物叢の改善のために開発され、COVID-19の胃腸症状を改善することが意図された(背景技術参照)。即時放出及び制御された回結腸放出性のニコチンアミドの組合せの使用は、驚くべきことに、COVID-19から深刻な病気を発症する増大したリスクに関連する少なくとも1種の特徴又は内在する医学的状態を有する患者並びにCOVID-19の重要な症状をもつ患者において通常の活動を行なう能力、身体能力及び倦怠感にかなりの改善をもたらした(実施例6)。より驚くべきことに、慣用のニコチンアミドのみの使用(COVit-1のような;実施例2及び5)と対照的に、即時及び制御された回結腸放出性のニコチンアミドの組合せは、(i)全般的な健康な状態のこれらの重要なパラメーターを改善するのに特に効果があり、(ii)男性及び女性の両方で有益であった(実施例6)。
【0026】
本発明の殊に好ましい態様は、実施例2、5及び6の驚くほど上首尾の実用的な投与計画であり:通常のビタミンB3補給の推奨される摂取は、12.5mg/kg/日又は900mg/日のADI(EFSA 2002, SCF/CS/NUT/UPPLEV/39; EFSA 2014, EFSA J. 12:3759)よりはるかに低い20mg/日未満であるが、実施例2、5及び6に記載する研究で効果的な補充は1日一回朝に朝食と共に投与される1.000mg/日であった。対照的に、曝露を永久に高く、服用間のトラフレベルをできるだけ高く保つことを目指す典型的な補充計画は幾つかのより少ない用量(例えば、朝、正午及び晩の食事と共に3×300mg)の繰り返し投与を使用するであろう。
【0027】
したがって、本発明の核は、特許請求の範囲に定義され、及び/又は本明細書により詳細に記載される、COVID-19の患者において1種又は複数の症状の消散までの時間を低減するための補充又は処置計画における、好ましくはニコチンアミドの使用、又はこの使用のための経口投与用のニコチンアミドを含む組成物の使用である。実施例5で示されるように、ニコチンアミド補充下でのCOVID-19患者における味覚及び嗅覚の迅速な回復は本発明の好ましい効果である。特に、COVID-19から重症の病気を発症する増大したリスクに関連する少なくとも1種の特徴又は内在する医学的状態を有する患者並びにCOVID-19の重要な症状をもつ患者における通常の活動を行なう能力、身体能力及び倦怠感の改善は本発明の好ましい効果である。好ましくはニコチンアミドの、SARS-CoV-2の検査陽性後で疾患症状の始まる前の曝露後予防としての使用も本発明の範囲内である。また、本発明は、COVID-19の症状と重なる少なくとも幾つかの症状、特に通常の活動を行なう能力の低下、身体能力の低下及び/又は倦怠感を伴う他のウイルス感染症における、限定されないがSARS-CoV-1、SARS-CoV-2、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV);インフルエンザ;ヒト免疫不全ウイルス;A、B、C、D若しくはE型肝炎ウイルス;エンテロウイルス;又はワクシニアウイルスを始めとするウイルス感染症の持続性身体症状(特に通常の活動を行なう能力の低下、身体能力の低下及び/又は倦怠感)の予防又は改善のための、ニコチンアミドの類似の使用も含む。
【0028】
好ましい活性物質ニコチンアミドに加えて、ニコチンアミドの適切な前駆体又は代謝体が本発明で活性物質として使用することができる。例えば、ニコチン酸又はニコチン酸エステルのようなヒト又は動物身体内で(例えば、加水分解又は代謝により)ニコチンアミドに変換する化合物が適している。加えて、トリプトファンから出発するニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)又はNADリン酸(NADP)の生合成の中間体、例えばN-ホルミルキヌレニン、L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシアントラニレート、2-アミノ-3-カルボキシムコン酸セミアルデヒド、キノリネート、ニコチン酸モノヌクレオチド(ベーターニコチン酸D-リボヌクレオチド)、及びニコチン酸アデニンジヌクレオチドを使用することができる。更なる例にはNAD、NADP、ニコチンアミドリボシド、ニコチンアミドモノヌクレオチド又はニコチンアミド代謝体1-メチルニコチンアミド/N-メチルニコチンアミドが含まれる。腸における易感染性のACE2細胞表面発現の場合ニコチンアミドに対する等価体としてのジペプチド性のトリプトファン(Hashimoto et al. 2012, Nature 487:477)も本発明の範囲内である。ニコチンアミドのこれらの適切な前駆体又は代謝体を、単独若しくは組合せでニコチンアミドと共に又は代わりに使用することも本発明の範囲内である。簡潔にするために、全ての場合に繰り返さないが、ニコチンアミドは好ましい例として使用される。
一般に、この発明で開示される使用は医学的使用又は非医学的使用であり得る。本出願において医学的使用とは好ましくは、本発明に従って使用される組成物がその使用が行なわれるそれぞれの国のそれぞれの管轄規制当局により認可された医薬であること意味し、全てのその他の使用は非医学的使用である。
【0029】
本発明の組成物は、以下の関連対応特許出願:Waetzig & Seegert 2013、国際出願PCT/EP2013/062363;Waetzig & Seegert 2015、国際出願PCT/EP2014/077637;Waetzig & Seegert 2015、国際出願PCT/EP2014/077646;Schwarzら、2017、国際出願PCT/EP2017/058733に記載されているようにニコチンアミドを下部小腸及び/又は結腸において局所の補充又は効力のために部分的又は完全に放出して腸の粘膜及び腸内微生物叢に有益に及び局所に影響を及ぼすように経口投与用に製剤化されるのが好ましい。好ましくは、本発明の組成物は、腸内微生物叢が位置する下部小腸及び/又は結腸において局所の補充又は効力のためにニコチンアミドを選択的に放出する、より好ましくは少なくとも部分的に遅延放出するように製剤化される。好ましくは、本発明の組成物はニコチンアミドを空腸の後半部で放出し始めるように製剤化される。或いは好ましくは、本発明の組成物は回腸末端及び/又は結腸で放出し始めるように製剤化される。更に好ましい実施形態において、遅延及び非遅延の両方の投与形態においてニコチンアミドの放出は持続放出及び/又は制御放出製剤により延ばされてより高いトラフレベル及びより一定した全身性の曝露を達成する。
【0030】
本発明において、用語「製剤」又は「組成物」又は「補充」又は「処置」、特に用語「組成物」は、限定されることはないが医薬(医薬製剤)、栄養補給食品、特別な医療目的の食品、ダイエット栄養補助食品、食品成分及び/又は食品を含めてニコチンアミドの薬学的及び/若しくは栄養学的及び/若しくは生理学的に許容される製剤、組成物並びに/又は投与方式の広い意味を有する。組成物の特質は、例えば、成分及び賦形剤、ニコチンアミドの用量、製剤タイプ及びその他の要因に応じて変化し得る。好ましいのはダイエット栄養補助食品、特別な医療目的の食品、栄養補給食品及び医薬である。
本発明の組成物は好ましくは下部小腸及び/又は結腸において局所の補充又は効力のために活性物質、好ましくはニコチンアミドの少なくとも部分的な遅延放出用に製剤化される。
本発明の組成物は好ましくは、ニコチンアミドを主に全身的に血液循環に送達する即時放出及び/又は持続放出及び/又は徐放用の1種又は複数のニコチンアミド製剤を、ニコチンアミドを主に局所に下部小腸及び/又は結腸に送達する遅延放出及び/又は遅延制御放出(delayed-controlled release)用の1種又は複数のニコチンアミド製剤と共に含む。遅延及び遅延制御放出の定義については以下を参照されたい。
【0031】
本発明の組成物は好ましくは1:1~1:1000、好ましくは1:3~1:300、より好ましくは1:10~1:100の範囲の特定の質量比のニコチンアミドの2つの製剤異形の組合せを含有する。
組合せは同一又は別々の投与形態で存在し得、これらは同時に又は逐次に投与し得る。組成物は即時及び/又は持続放出及び/又は徐放用による経口投与に適していて、血液循環に送達することによりニコチンアミドへの全身性の曝露を達成し得る。好ましくは、本発明の組成物は下部小腸及び/又は結腸における特定の局部又は局所の効力のためのニコチンアミドの遅延放出及び/又は遅延制御放出に適し得る。
【0032】
本明細書で使用されるとき、用語「好ましい」又は「好ましくは」は一定の状況下で一定の利益を得ることができる実施形態をいうが、他の実施形態も同一又は他の状況下で好ましいことがあり得る。1種又は複数の好ましい実施形態の記述は他の有用な実施形態の本発明の範囲からの除外を意味しない。「含む(comprises)」及びその変化形のような用語は明細書及び特許請求の範囲において限定する意味をもたない。文献からの資料の幾つかのセクションの引用は、かかる文書の残りが、関連がない又は参照により組み込まれないことを示さない。1つ又は2つの終点による数値範囲の記述はその範囲内に含まれる全ての数を含む(例えば、「1~10」は1、2.4、4.576、等を含み、「1より小さい」は1より小さい全ての数を含む)。個別のステップを含む、本明細書に開示されているか又は言及されているあらゆる方法について、それらのステップはあらゆる実行可能な順序で実施され得、また2つ又はそれ以上のステップのあらゆる組合せが同時に実施され得る。あらゆる例又は例のリストはあらゆる種類の制約として又は排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【0033】
本明細書で使用されるとき、用語「補充」は患者、好ましくはCOVID-19の患者におけるニコチンアミドの補充食供給を意味する。本明細書で使用されるとき、用語「処置」、及び「処置する」は、本明細書に述べられている疾患、好ましくはCOVID-19、又はその1種若しくは複数の症状の進行を、本明細書に記載されているようにニコチンアミドの投与により逆転、軽減、又は阻害することを意味する。幾つかの実施形態において、補充又は処置は1種又は複数の症状が発症した後に投与され得る。他の実施形態において、補充又は処置は症状の不在下で投与され得る。例えば、補充又は処置は症状が始まる前にSARS-CoV-2に感染した個人に投与され得る。補充又は処置はまた、症状が解消された後、例えばその再発を予防するか又は遅延させるために続けてもよい。
本明細書で使用されるとき、「下部小腸」は空腸の後半及び回腸を含む小腸の後半部である。本明細書で使用されるとき、「回腸末端」は回腸の後半である。
【0034】
本明細書で使用されるとき、用語「局所の効力」は薬力学的な意味で局所の効果をいい、したがって補充食供給又は薬物療法のための全身性ではなく局部的ターゲットを意味する。したがって、「局所の補充又は効力」はある位置で特異的又は選択的に放出されたニコチンアミドによる局所の補充又は治療を意味し、その位置では、例えば、ダイエット栄養補助食品又は食品成分又は薬剤がその直接の作用効果を送達し、ニコチンアミドは、例えば、即時及び/又は持続放出及び/又は徐放による慣用の製剤より低い程度で血液循環に入ることにより、慣用の製剤と比較して低下した又は低い全身性の作用のみを生じる。この点において、本発明の局所の効力はまた腸(消化管)及び血管内/静脈内(循環系に注入)投与と対比される。高い全身利用性及び/又は曝露を目指す組成物と比較すると、組成物の少なくとも部分的に局所の効力はまた、ニコチンアミドの全身レベルが増大するまでのより長い潜伏時間によっても特徴付けられ得る。局所放出のかかる潜伏時間は当技術分野で公知の腸通過時間と関連付けることができる(例えば、Davis et al. 1986, Gut 27:886; Evans et al. 1988, Gut 29:1035; Kararli 1995, Biopharm. Drug Dispos. 16:351; Sutton 2004, Adv. Drug Deliv. Rev. 56:1383参照)。例えば、胃内容排出の変わり易い時間(投与形態及び給餌状態に依存し、<15分~10時間超の範囲にわたる)の後、小腸通過時間は製剤によらず研究の間1~6(普通2~4)時間でむしろ一定である(Davis et al. 1986, Gut 27:886)。したがって、疑念がある場合、絶食した患者での潜伏時間は通常局所効力の製剤に対して少なくとも2時間であり、その時間で製剤は下部小腸に達し、ニコチンアミドの全身性のレベルは強く上昇し始め得る。本発明の状況で、局所の効力はまた、同一方法同一条件で即時放出の製剤の(例えば、胃で溶けるカプセルに入れたニコチンアミドとして)投与された同量のニコチンアミドに対して少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は更には95%又はそれ以上の血漿ピークレベルの低下に関して表現することもできる。ベースライン値は同一人でも大きく異なり得るので、ピークレベルを投与直前のそれぞれのベースラインレベルに委ねるのが好ましい。好ましくは、適切なコホートの人の平均の血漿レベルが、極めて相違する結果を与える可能性がある個人のそれぞれのレベルよりはむしろ局所の効力のこの定義に使用される(Schwarzら、2017、国際出願PCT/EP2017/058733)。局所の効力は特に本明細書に記載されている本発明の組成物により達成される。ニコチンアミドを主に全身的に血液循環に送達する即時放出及び/又は持続放出及び/又は徐放用のニコチンアミド製剤を、ニコチンアミドを主に局所に下部小腸及び/又は結腸に送達する遅延放出及び/又は遅延制御放出用の1種又は複数のニコチンアミド製剤と共に含む組合せ製剤において、ピークレベルの上記低下はそれぞれ遅延放出又は遅延制御放出製剤のみに適用される。
【0035】
ニコチンアミドが主に下部小腸及び結腸に位置する腸内微生物叢(腸内の全ての微生物、特に細菌の全体)に影響を及ぼすことにより驚くべき抗炎症作用を有することは以前に立証されている(Waetzig & Seegert 2013、国際出願PCT/EP2013/062363;Waetzig & Seegert 2015、国際出願PCT/EP2014/077637;Waetzig & Seegert 2015、国際出願PCT/EP2014/077646)。この驚くべき作用の裏にある機構は、通常の健康な腸内微生物叢の維持及び/又は再生を支える腸内の抗菌性ペプチドの分泌パターンにおけるニコチンアミドにより誘発される変化に関与することが示されている(Hashimoto et al. 2012, Nature 487:477)。
【0036】
したがって、本明細書で使用されるとき、「腸内微生物叢に有益に影響を及ぼす」とは、腸内微生物叢において、健康に対して、殊に本明細書に記載されている疾患及び状態の1種又は複数に対して有益な影響を有する変化を引き起こすこと、及び/又は健康な腸内微生物叢を予防環境に維持することを意味する。例えば、有益な影響は病原性細菌の数を低下させること、有益な細菌に対する病原性細菌の割合を減らすこと、微生物叢の多様性を増大すること、有益な細菌の量を増やすこと、微生物叢のエンテロタイプ(例えば、バクテロイデス属(Bacteroides)、プレボテラ属(Prevotella)及びルミノコッカス属(Ruminococcus)に関連するエンテロタイプ)における病的な変化を部分的又は完全に戻すこと、及び/又は健康な内因性の微生物叢を維持することに関連し得る。
【0037】
したがって、本発明に従って好ましいのは、下部小腸及び/又は結腸において特定の局所の補充又は効力のために活性物質(好ましくはニコチンアミド)を少なくとも部分的に遅延及び/又は遅延制御放出する経口投与のための本発明の組成物である。より好ましくは、組成物は、下部小腸及び/又は結腸において特定の局所の補充又は効力のために活性物質を少なくとも部分的に遅延放出する経口投与用に製剤化される。別のより好ましい異形において、組成物は、下部小腸及び/又は結腸において特定の局所の補充又は効力のためにニコチンアミドを少なくとも部分的に遅延制御放出する経口投与用に製剤化される。
好ましくは、ニコチンアミドは、ニコチンアミドの少なくとも一部が上部小腸において身体に吸収される、例えば循環系に吸収されることから保護し、むしろ下部小腸及び/又は結腸への少なくとも部分的に局所の放出(例えば、遅延放出及び/又は遅延制御放出)を奏する規定食及び/又は薬理学的製剤に使用される。
【0038】
特に、ニコチンアミド並びに本明細書に記載されている製剤及び組成物はしたがって、医薬、栄養補給食品、特別な医療目的の食品、ダイエット栄養補助食品、食品成分及び/又は少なくとも部分的に局所の放出(例えば、遅延放出及び/又は遅延制御放出)用の食品に使用されるのに適していて、例えば、COVID-19及びその胃腸症状、及び/又は連続した腸の曝露に起因する長期の吸収期の状況で、下部小腸及び/又は結腸の直接のニコチンアミド補充又は処置も可能にする。
ニコチンアミド並びに本明細書に記載されている製剤及び組成物はヒト及び他の哺乳動物の両方、特に家畜及び有用動物でSARS-CoV-2感染症に等しく使用可能である。かかる動物の例は客観的な制約なくイヌ、ネコ、ミンク、ウマ、ラクダ、ブタ又はウシである。
ニコチンアミドは適切な栄養学的又は薬学的品質の市場で入手可能な、例えば、DSM、Lonza又はMerckのような一般的製造業者及び販売会社により提供されるあらゆる形態で使用し得る。
【0039】
本発明はまた、ニコチンアミドの配合剤及び/又は組成物、例えば即時放出、徐放性、持続放出、遅延放出及び/又は遅延制御放出のニコチンアミドの変動用量組合せ薬(variable dose combination)又は固定用量組合せ薬(fixed dose combination)を含む。かかる製剤の異なる放出動力学は、ニコチンアミドの全身性曝露及び局所の腸曝露の程度、持続時間及び動力学を調整するのに使用し得る。本明細書に記載される組合せは同一又は別々の投与形態で存在し得、これらは同時又は逐次に投与し得る。かかる組合せの組成物及び用量は当業者に公知である。
【0040】
本明細書で使用されるとき、用語「変動用量組合せ薬」は医薬、栄養補給食品、特別な医療目的の食品、ダイエット栄養補助食品、食品成分及び/又は食品におけるニコチンアミドの2つ又はそれ以上の製剤の異形の組合せを意味し、それによりニコチンアミドの各々の製剤の異形は別々の組成物の形態、例えば、2つの単一の投与形態で適用される。別々の組成物は投与計画により同時に、逐次に又は別々の場合に投与し得る。例えば、あらゆる適切な用量の即時放出のニコチンアミド(胃に入った後迅速に吸収される)の組成物はあらゆる適切な用量の遅延放出ニコチンアミド(下部小腸に達するまで吸収から部分的に又は完全に保護される)の別々の組成物と一緒に、連続して又は後に投与され得る。このように、ニコチンアミドの変動する用量の2つ又はそれ以上の異なる製剤が組み合わせられ得る。これらの変動用量組合せ薬は医薬、栄養補給食品、特別な医療目的の食品、ダイエット栄養補助食品、食品成分及び/又は食品の慣習的に入手可能な組成物を使用し得るか、又は調剤による特別注文の多剤併用により達成してもよい。患者の胃腸症状の存在及び重症度及び/又は連続した腸の曝露に起因する長期の吸収期間から期待される利益に応じて、全身性の送達のための即時放出、徐放又は持続放出及び局所の腸送達のための遅延放出又は遅延制御放出を異なる割合及び用量で投与し得る。
【0041】
変動用量組合せ薬とは対照的に、「固定用量組合せ薬」は本明細書で使用されるとき、ニコチンアミドの2つ又はそれ以上の製剤異形を含む製剤である組合せであり、一定のそれぞれの固定用量で製造され分配される単一の投与形態、又は固定された数若しくは量がラベルに従って補充されるか又は投与される製剤異形を表す2つ又はそれ以上の別々の投与形態の組合せとして組み合わせられる。固定用量組合せ薬は主に、所定の組合せ及びそれぞれの用量を有する量産された製品をいう。
本発明に従って使用される活性物質(好ましくはニコチンアミド)の総用量は1~5000mgの範囲であることができ、個々の用量又は多数の用量として及び/又は1日一回、二回又はそれ以上の用量で投与され得る。本発明による活性物質の好ましい総用量は10~4000mgの範囲、より好ましくは100~3000mgの範囲である。
【0042】
非限定例として、高用量製剤は5000mgまでの活性物質を含むことができる。例えば、限定されないが、高用量製剤は1000~5000mgの範囲、好ましくは1000~4000mgの範囲、より好ましくは1000~3000mgの範囲、例えば2000mgの総量の活性物質を含むことができる。
非限定例として、低用量製剤は1000mgまで、好ましくは1~1000mgの範囲の活性物質、より好ましくは100~1000mgの範囲の活性物質を含むことができる。
非限定例として、標準用量の製剤は3000mgまで、好ましくは250~2500mgの範囲、より好ましくは500~2000mgの範囲の活性物質を含むことができる。
固定用量の高用量製剤の非限定の特定例は1000mgの即時放出のニコチンアミド及び1000mgの遅延放出及び/又は遅延制御放出ニコチンアミドの組合せを含む。
固定用量の標準用量製剤の非限定の特定例は750mgの即時放出ニコチンアミド及び750mgの遅延放出及び/又は遅延制御放出ニコチンアミドの組合せを含む。
固定用量の低用量製剤の非限定の特定例は400mg又は500mgの即時放出ニコチンアミド及び400又は500mgの遅延放出及び/又は遅延制御放出ニコチンアミドの組合せを含む。
【0043】
本発明のかかる組成物は、例えば、好ましくは錠剤、ペレット又は粒剤(granulate)、好ましくは微粒剤(microgranulate)として、適切ならばカプセル、サッシェ(sachet)又はスティックパックに入れて、好ましくはサッシェ又はスティックパックに入れて投与し得る。
活性物質(好ましくはニコチンアミド)は錠剤、顆粒、微粒剤(microgranule)又はペレットの形態で製剤化されるのが好ましい。これらの錠剤、顆粒、微粒剤又はペレットは単一の投与形態又は変動用量組合せ薬若しくは固定用量組合せ薬に使用することができる。錠剤、顆粒、微粒剤又はペレットの形態の活性物質の異なる製剤異形が本明細書に記載されているように使用されるならば、これらはあらゆる単一の規定食又は薬学組成物の形態で、並びに変動用量組合せ薬又は固定用量組合せ薬として使用し得る。顆粒、微粒剤又はペレットは錠剤に圧縮され得るか、又はカプセル、サッシェ又はスティックパックに詰められ得るか、又は適宜そのままで使用され得る。
【0044】
下部小腸及び/又は結腸での少なくとも部分的な放出のための活性物質の経口で投与される製剤(例えば、錠剤、糖衣錠(dragee)、カプセル、サッシェ、等)を作成するために、遅延モードの放出を使用するのが有利である。本発明の一定の実施形態、例えば、即時放出、持続放出及び/又は徐放性ニコチンアミド製剤の最適な補充のための慣用の(場合により、遅延もあるが、全身的に送達する)放出モードとは対照的に、かかる遅延及び/又は遅延制御モードの放出は(少なくとも)部分的に又は(更には)実質的に胃及び小腸の上部での吸収を回避する。
【0045】
経口投与の場合、特別なガレノス製剤のために活性物質の放出を少なくとも部分的に制御する及び/又は遅延させる特定の投与形態が特に適切である。かかる投与形態は簡単な錠剤、また被覆錠、例えば、フィルム錠又は糖衣錠であり得る。錠剤は普通長円形、円形又は両凸である。特定の長円形の錠剤形態は、錠剤が分離されることを可能にし、好ましいとすることができる。加えて、ミニタブレット、顆粒、回転楕円体、ペレット又はマイクロカプセルが可能であり(例えば、Liang & Dingari 2017、国際出願PCT/US2017/028063;Schwarzら、2017、国際出願PCT/EP2017/058733)、これらは適当な場合にはカプセル、サッシェ又はスティックパックに詰められる。ニコチンアミドをある程度全身的に作用する製剤(例えば、即時放出)及び大部分局所に下部小腸及び/又は結腸で作用する製剤(例えば、遅延及び/又は遅延制御放出)で送達するために、別々の投与形態及び/又は多層の投与形態の異なる製剤の組合せを使用して、最初に活性物質の一部を胃及び上部小腸で放出し、且つ他の部分を、例えば、迅速に崩壊するコア(遅延放出)又はマトリックス核(遅延制御放出)から、pH依存性又は微生物依存性の放出により、又はそれなしで、放出することができる。別の例はOralogiK(商標)製品ポートフォリオ(BDD Pharma)により例示される浸食に基づく放出技術である。
【0046】
用語「遅延放出」は好ましくは、遅延期間、例えば、好ましくは下部小腸及び/又は結腸に存在するpH、化学的、酵素的及び/又は微生物環境に起因するフィルムコーティング又はその他のコーティングの分解の後、活性物質を放出又は送達する製剤又はその成分に関連する。幾つかの実施形態において、遅延は製剤中の活性物質の少なくとも一部分が下部小腸及び/又は結腸で放出されるのに充分である。
用語「遅延制御放出」は、好ましくは、長期間にわたって(時間依存性の放出)及び/又は一定の生理学的条件下、例えば、好ましくは下部小腸及び/又は結腸に存在するpH、化学的、酵素的及び/又は微生物環境に起因するコーティング又はマトリックスの分解の下で、活性物質を放出又は送達する製剤又はその成分を指す。幾つかの実施形態において、期間又は生理学的条件に従う放出は製剤中のニコチンアミドの少なくとも一部分が下部小腸及び/又は結腸で放出されるのに充分である。
【0047】
遅延(retardation)及び/又は遅延放出及び/又は遅延制御放出は、例えば、胃液に耐性があり、pHに依存して溶けるコーティングにより、いろいろな担体マトリックス成分(例えば、いろいろなグレードのヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微晶質セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、加工デンプン、アルファデンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン)若しくはその組合せを使用することにより、他のマトリックス及び/若しくはマルチマトリックス(MMX)技術により、又はこれらの技術の組合せにより、有利に達成される。例として、遅延放出のための様々な混合物中にアクリル及び/又はメタクリレートポリマーを含有するフィルムコーティングが含まれる。追加の例として微生物叢依存性の放出のための天然又は化学変性ポリマーのような生分解性のポリマー及びポリマー-薬物コンジュゲート、コーティング及び/又はマトリックス作用物質が含まれる(例えば、Rajpurohit et al. 2010, Indian J. Pharm. Sci. 72:689により概説されている)。例えば、活性物質は上に記載された成分を含むマトリックスに含有され得、これが活性物質の遅延放出を提供する材料で被覆される。本発明による活性物質は、公知の方法によって被覆される、例えば、錠剤、ミニタブレット、顆粒、回転楕円体、ペレット、マイクロカプセル又は大きい容積のカプセル(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセル)で投与することができる。適切なコーティング剤は水不溶性のワックス、例えばカルナウバロウ、及び/又はポリマー、例えばポリ(メタ)アクリレート、例えば、全ポリ(メタ)アクリレート製品ポートフォリオ、商品名Eudraguard(登録商標)及びEudragit(登録商標)、Evonik Industriesから提供、特にEudraguard(登録商標)protect、Eudraguard(登録商標)control、Eudraguard(登録商標)biotic、Eudraguard(登録商標)natural、Eudragit(登録商標)L 30 D-55(官能基としてメタクリル酸を有するアニオン性ポリマーの水性分散液)、Eudragit(登録商標)L 100-55(メタクリル酸及びアクリル酸エチルをベースとするアニオン性コポリマーを含有する)、Eudragit(登録商標)L 100又はL 12,5又はS 100又はS 12,5(メタクリル酸及びメタクリル酸メチルをベースとするアニオン性コポリマー)、Eudragit(登録商標)S及びL化合物の組合せ、又はEudragit(登録商標)FS 30 D(アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸をベースとするアニオン性コポリマーの水性分散液)、及び/又は水不溶性セルロース(例えば、メチルセルロース又はエチルセルロース)である。適当な場合には、水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)、水溶性セルロース(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロース)、乳化剤及び安定剤(例えば、ポリソルベート80)、ポリエチレングリコール(PEG)、ラクトース又はマンニトールもコーティング材料に含有され得る。
【0048】
好ましい実施形態において、即時放出及び/又は持続放出及び/又は徐放用の製剤は、例えば以下を単独で又は組み合わせて含む味覚マスキング技術を備える。
- 感覚刺激的法、例えば甘味料(例えば、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、グリチルリチン(glycerrhizin)、チクロ、ラクトース、マンニトール、サッカリン、又はスクロース)、糖類、香味料(例えば、ミント、ペパーミント、メントール、セイヨウミザクラ、クルミ、チョコレート、パッションフルーツ又は柑橘類香味料、例えばレモン又はオレンジ)、苦み遮断剤(例えば、アデノシン一リン酸、ジヒドロカルコン(dihydrochalone)、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、リポタンパク質[例えば、ホスファチジン酸及びβ-ラクトグロブリンからなる]又はリン脂質[例えば、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール又は大豆レシチン])、発泡剤(例えば、二酸化炭素の発生器)、味覚修飾物質、緩衝剤及び/又は他の賦形剤(例えば、硫酸亜鉛、マルトデキストリン[例えば、エンドウマルトデキストリン]又はポリオール)の組合せを組成物又はそのコーティングに添加する;
- 例えば、疎水性又は親水性ポリマー(例えば、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルコポリマー、例えばEudragit(登録商標)E、E-100、RL 30D、RS 30D、L30D-55又はNE 30D;Eudraguard(登録商標)protect、natural又はcontrol;エチルセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ヒドロキシプロピルセルロース;酢酸セルロース;クロスカルメロース;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン(例えば、PVP-K30又はKollicoat);ポリ酢酸ビニル;シェラック;グアーガム)、脂質(例えば、パルミトステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル又はベヘン酸グリセロール)、タルク、洗剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム又はポリソルベート、例えばポリソルベート80)、糖類及び/又は甘味料(上記参照)を単独で又は組み合わせて含む単層又は多層コーティング及び/又はマトリックス技術;
- マトリックス粒状化(例えば、ゲル化又は脂質ポリマーを伴う);
- 融解、溶媒又は融解-溶媒方法及び担体、例えばポビドン、様々な分子量のポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、尿素、マンニトール又はエチルセルロース;噴霧乾燥(例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ヒドロキシプロピルセルロース又はアクリレートポリマーを伴う);ホットメルトエクストルージョン(例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ヒドロキシプロピルセルロース又はアクリレートポリマー)を用いる固体分散、好ましくは続いて押出物をミル加工又は微粉化して味覚遮断した顆粒又は粒子を得、好ましくはこれを続いて適切な投与形態に組み込む;
- 上記リストのコーティング剤を用いるマイクロカプセル化(例えばWurster流動層コーティング[例えば、クロスカルメロース、Eudragitを用いる]);
- 隔膜;
- 包接錯体形成(例えば、シクロデキストリン、タンニン酸、Eudragit(登録商標)ポリマー、Eudragit S-100又はキトサンによる);
- イオン交換樹脂、例えばスチレン、アクリル酸又はメタクリル酸とジビニルベンゼンのコポリマー;
- 吸着(例えばシリケート、シリカゲル又はベントナイトを用いる)。
【0049】
殊に本発明によるダイエット栄養補助食品の製剤だけでなく、また食品成分のための更なる非限定例がマルトデキストリン-ペクチンマイクロカプセル及びシェラック-コート粒剤(Berg et al. 2012, J. Food Eng. 108:158;Schwarzら、2017、PCT/EP2017/058733;Theismann et al. 2019, Int. J. Pharm. 564:472)を用いて記載されている。
組成物、例えば、医薬の製剤、栄養補給食品、特別な医療目的の食品、ダイエット栄養補助食品、食品成分及び/又は食品はまた、更なる賦形剤物質、例えば結合剤(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース/ヒプロメロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストリン、マルトデキストリン、コポビドン及び/又はアルギン酸ナトリウム)、充填剤(例えば、無水ラクトース、ラクトース一水和物、デンプン、アルファデンプン、粉末セルロース、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水の第二リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム二水和物、無水の硫酸カルシウム、硫酸カルシウム二水和物、第三リン酸カルシウム、スクロース、フルクトース、無水のグルコース/デキストロース、グルコース/デキストロース一水和物、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、イソマルト及び/又はキシリトール)、流動促進剤、潤滑剤及び流動調節剤も含有することができる。本発明によるニコチンアミドは、適当な場合には、更なる活性物質及び規定食又は薬学組成物に慣用の賦形剤、例えば、滑石、アラビアゴム、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ココアバター、水性及び非水性の担体、動物又は野菜起源の脂質成分、パラフィン誘導体、グリコール(特にポリエチレングリコール)、様々な可塑剤、分散剤、乳化剤及び/又は保存料と一緒に製剤化することができる。
【0050】
本明細書に記載されている本発明の更なる態様は、記載されている医薬、栄養補給食品、特別な医療目的の食品、ダイエット栄養補助食品、食品成分及び/又は食品の、血液及び/又は尿及び/又は糞便及び/又は遺伝及び/又は微生物学及び/又は他のバイオマーカー又はデータ及び処置される個体の特定のニーズに基づいた効率的な使用である。特に、トリプトファン及びその代謝体の血清レベルは補充又は治療上の決定を管理するのに使用することができる(実施例1)。疾患経過、ウイルス(好ましくはSARS-CoV-2)異形及び/又は遺伝的背景(例えば、ウイルスと相互作用する細胞表面受容体、輸送タンパク質、代謝酵素又は信号伝達タンパク質をコードする遺伝子、ウイルス、ニコチンアミド及び/又はその代謝体及び/又はその下流エフェクターに対する免疫反応)の分析及びデータを含めた証拠に基づく個別の医学は、本明細書に記載されている医薬、栄養補給食品、特別な医療目的の食品、ダイエット栄養補助食品、食品成分及び/又は食品の使用の種類、適用様式、使用の時間、用量及び/又は投薬計画に関する情報及び改善を提供することができる。この個別の処置から利益を得ることができる個人は血液及び/又は血漿及び/又は血清脂質及び/又は他のバイオマーカーに疾患特異的又は非特異的変化がある人を含む。これは、特に糞便サンプルが微生物叢の変化を指示するとき、腸内微生物叢の分析に同様に当てはまる。したがって本発明は、本発明による医薬、栄養補給食品、特別な医療目的の食品、ダイエット栄養補助食品、食品成分及び/又は食品に特に感受性の個人を確認し、及び/又はこれら並びに付随する補充及び/又は薬物療法の使用を個々の状況に適応させるのに適切な試験方法の使用も含む。これはまた、明らかに、活性物質又はその組合せを含むいろいろな製剤異形又は組成物の、補充又は処置される個人のバイオマーカーに応じた異なる投与モードでの使用も含む。これらの目的から、例えば、血液、尿若しくはその他の体液又は糞便サンプル中の適切なパラメーターを解析するために、医師、ユーザー及び/又は患者により採用される実験室検査及び/又は適切な検査キット及び更には測定方法、装置及び/又はキットを使用することが可能である。特に、本発明はまた、本明細書に記載されている補充又は処置への患者又は対象の選択を支持し、本明細書に記載されている組成物及び/又は補充及び/又は処置を個人向けにし、適応させ、及び/又は本明細書に記載されている組成物及び/又は補充及び/又は処置の終点及び効力基準を決定するためにこれらのバイオマーカーを使用することにも関する。
【0051】
実施例及び上記から分かるように、本発明に従って、本発明の組成物は1日一回投与するのに使用するために製剤化されるのが好ましい。驚くべきことに、この投与計画は優れた効果を示した。最良の効果は、本発明の組成物を朝に朝食と共に投与したときに得られた。1日一回投薬する場合、最終の投与形態当たり1~5000mg、好ましくは50~4000mg、より好ましくは100~3000mgのニコチンアミド含量が好ましい。
上に記載した通り、そして実施例から分かるように、本発明の組成物は本明細書に記載されている疾患、殊にCOVID-19の症状の消散に非常に効果的であった。したがって、本発明の組成物は、上に記載したウイルス疾患に陽性と検査された患者において4週以内、好ましくは3週以内、より好ましくは2週以内の1種又は複数の症状の消散に使用され、及び/又は通常の活動を行なう能力、身体能力及び/又は倦怠感の改善に使用されるのが好ましい。好ましくは、この効果はこれらの患者の少なくとも10%、好ましくは15%、より好ましくは20%、更により好ましくは25%、最も好ましくは30%で達成する。代わりに、又は更に、効果は男性及び女性の患者で類似の割合で達成されるのが好ましく、ここで類似とは+/-25%、好ましくは+/-10%を意味する。
更に、本発明によると、疾患がCOVID-19であるのが最も好ましいことを述べるべきである。
【0052】
本発明の組成物はウイルス感染から深刻な病気を発症する増大したリスクと関連する少なくとも1種の特徴又は内在する医学的状態を有する患者に投与するのに好ましく使用され、ここで好ましくは特徴又は内在する医学的状態は少なくとも30.0の肥満度指数(肥満)、2型糖尿病、習慣的喫煙者の状態、及び喫煙経験者の状態からなる群から選択される。
その代わりに、又はそれに加えて、本発明の組成物は処置及び/又は補充が、好ましくは咳、発熱及び味覚の喪失からなる群から選択されるCOVID-19の少なくとも1種の特徴的な症状を有する患者に投与される場合に使用するのが好ましい。
【実施例
【0053】
本発明の教示を有利に発展させ、更に進展させる様々な可能性がある。この目的で、本発明を代表的に記載する以下の実施例を参照する。
【0054】
(実施例1)COVID-19患者のトリプトファン代謝
異なる病院のCOVID-19で入院している患者の2つのコホートで、ニコチンアミドの前駆体であるトリプトファンの血清レベルが異常な程度に低下し、病院入院時の炎症バイオマーカーCRPに対するトリプトファンの低い比はCOVID-19の経過の重症度(即ち、補助換気を伴う集中治療が認められる可能性及び/又は死の可能性)と強く関連していた(図2)。その後のトリプトファン分解産物の分析は、驚くべきことに、トリプトファンの重要な代謝体としてのニコチンアミドが、トリプトファン及びニコチンアミドの直接の代謝中間体のレベルから期待されたように増大しなかったことが示されたが、ニコチンアミドは明らかに利用可能性から除かれた(図3)。
【0055】
(実施例2)軽度~中程度疾患のCOVID-19患者におけるCOVit-1食事介入試験のパイロット相からの結果
University Medical Center Schleswig-Holstein, Campus Kiel(ドイツ)のDepartment of Internal Medicine Iで実施した単心性ランダム化二重盲検プロスペクティブプラシーボ様コントロール食事介入試験(「COVit-1」、DRKS-ID:DRKS00021214)のパイロット相において、家庭内隔離において早期症状を示すCOVID-19の外来患者を2020年4月~6月に募集しランダム化して、1,000mgの即時放出のニコチンアミド(2×500mg錠剤の上市されているダイエット栄養補助食品製剤)又はプラシーボ様コントロールとして245mgのシリカ入りカプセルを4週間(28日)毎日朝一回朝食と共に経口で自己投与させた。試験対象患者基準は実験室で確かめられたSARS-CoV-2感染症、呼吸器又は消化管のCOVID-19症状及び年齢≧18歳であった。排除基準はなかった。ニコチンアミドの既知の基準特性(背景技術参照)に従って、試験の主要評価項目は連続した酸素治療の少なくとも24時間の入院の頻度であり、副次的評価項目は機械換気の頻度、集中治療、死並びに症状の消散までの時間を含んでいた。
【0056】
全体の試験は遠隔で行なった。患者はオンラインで登録し、研究チームと接触してその適格性をチェックされ、書面の患者情報及びインフォームドコンセント用紙を提出した。インフォームドコンセント後、患者はベースラインデータ収集(0週目)、その後2週目、4週目及び6週目に求められた。尋ねられたベースライン情報は個人及び人口統計学データ、喫煙状況、併存疾患、ダイエット栄養補助食品又は医薬の同時投与並びにCOVID-19症状を含んでいた。2週目、4週目及び6週目に、試験栄養補助食品及び同時補充及び医薬の定期的摂取並びに現在のCOVID-19症状及び疾患経過が尋ねられた。
16人の外来患者(ベースライン特性、試験群割り当て及び症状については、それぞれ表1、2及び3参照)で、データ品質コントロール試験を行ない、不注意に最もありそうもないと考えられた最後の副次的評価項目、即ち症状の消散までの時間がニコチンアミドとシリカ(コントロール)群との間の驚くべき差を示すことが明らかになった。
【0057】
【表1】

【表2】
【0058】
【表3】

驚くべきことに、1日当たり1,000mgのニコチンアミドの28日間補充は、SARS-CoV-2の最初の検査陽性後21日目又はそれより前に少なくとも1種のCOVID-19症状を依然として患っている対象の数を50%(8人のうちの4人)の割合に低下させたことが判明したが、これは患者の87.5%(8人のうちの7人)がまだ1種又は複数のCOVID-19症状を示すシリカ(コントロール)群と比較して驚くほど大きい差である(表4及び5)。シリカ(コントロール)群の1人の患者が2週より前に入院を必要としたがニコチンアミド群の患者にはいなかった。
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】

4週で、無症状患者の割合は両方の試験群で同一であった(8人の患者のうち5人;表6)。
【表6】

6週で、4週に持続する症状であった患者のみが尋ねられ、ニコチンアミド群の3人の患者のうちの1人は無症状になったが、シリカ(コントロール)群の残る2人の患者にはなかった(表7)。
【0061】
【表7】

症状の消散までの時間の差が図4に視覚化されている。4週及び6週での無症状の患者の割合の類似性はニコチンアミドの効果が速く且つ早期に起こることを示しており、またニコチンアミド群での症状のより迅速な消散が異なる予後をもつ患者の不注意に均等でない分配に起因しないことも示すようである。その疾患の特徴に一定の、しかし未知の類似性を共有し得るかなりの割合のCOVID-19患者がニコチンアミドを補充されたとき、シリカ(コントロール)群で明白であり、入手可能な文献(背景技術参照)に報告されている典型的な疾患経過に従うCOVID-19をもっている他の人よりずっと速い症状の消散を示すというのがもっともらしく見える。
【0062】
2週でのニコチンアミドの有益な効果は募集された患者集団で非常に強いように見えたが、68%(150人のうちの103人)の患者が30日目に、更に一層際立ったことには66%(130人のうちの86人)が60日目にそのCOVID-19疾患の少なくとも1種の症状を保持していたフランス出身の匹敵する欧州人の集団で得られた結果と患者の無症状の割合を比較しても全く明らかであった(Carvalho-Schneider et al. 2021, Clin. Microbiol. Infect. 27:258)。この長期の結果を本試験での6週からの結果と比較すると、本試験のために募集された患者集団及び特にシリカ(コントロール)群は異常に好ましくない疾患経過も予後も有していなかったことが明らかであるが公開されたコホートに充分匹敵する。
総合すると、ニコチンアミド補充は驚くべきことにCOVID-19患者において症状の消散までの時間を低下させる際に強力な利益を示した。
【0063】
(実施例3)製剤異形(本発明を実施するための一般情報)
(1)ニコチンアミド又はその適切な前駆体若しくは代謝体は少なくとも部分的に制御された放出(例えば、異なるグレードのヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微晶質セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、加工デンプン、アルファデンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、又はこれらの組合せを含むか、又は他のマトリックス若しくはマルチマトリックス技術を採用する)のためにマトリックス内に活性物質(好ましくはニコチンアミド)を含むコアがある錠剤として単独で又は組み合わせて投与することができる。錠剤コアは下部小腸及び/又は結腸での遅延放出のための内層、即時放出用に製剤化された活性物質の層及び錠剤が胃に達するまでその下の層を保護し、錠剤の味覚を遮断する外層を含むコーティング層システムを備えることができる。遅延放出のための層は遅延放出のための様々な混合物中にアクリル及び/又はメタクリレートポリマー又は微生物叢依存性放出のための生分解性のポリマーを含有するフィルムコーティングを含む。更なる適切なコーティング剤は水不溶性のワックス、例えばカルナウバロウ、及び/又はポリマー、例えばポリ(メタ)アクリレート、例えば、Evonik Industriesにより提供される商品名Eudraguard(登録商標)及びEudragit(登録商標)の全ポリ(メタ)アクリレート製品ポートフォリオ、特にEudraguard(登録商標)protect、Eudraguard(登録商標)control、Eudraguard(登録商標)biotic、Eudraguard(登録商標)natural、Eudragit(登録商標)L 30 D-55(官能基としてメタクリル酸を有するアニオン性ポリマーの水性分散液)、Eudragit(登録商標)L 100-55(メタクリル酸及びアクリル酸エチルをベースとするアニオン性コポリマーを含有する)、Eudragit(登録商標)L 100又はL 12,5又はS 100又はS 12,5(メタクリル酸及びメタクリル酸メチルをベースとするアニオン性コポリマー)、Eudragit(登録商標)S及びL化合物の組合せ、又はEudragit(登録商標)FS 30 D(アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸をベースとするアニオン性コポリマーの水性分散液)、及び/又は水不溶性のセルロース(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース)である。適当な場合には、水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)、水溶性セルロース(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロース)、乳化剤及び安定剤(例えば、ポリソルベート80)、ポリエチレングリコール(PEG)、ラクトース又はマンニトールもコーティング材料内に含有される。味覚マスキング外層は単独で又は組み合わせて、例えば、疎水性又は親水性ポリマー(例えば、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルコポリマー、例えばEudragit(登録商標)E、E-100、RL 30D、RS 30D、L30D-55又はNE 30D;Eudraguard(登録商標)protect、natural又はcontrol;エチルセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ヒドロキシプロピルセルロース;酢酸セルロース;クロスカルメロース;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン(例えば、PVP-K30又はKollicoat);ポリ酢酸ビニル;シェラック;グアーガム)、脂質(例えば、パルミトステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル又はベヘン酸グリセロール)、タルク、洗剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム又はポリソルベート、例えばポリソルベート80)、糖類及び/又は甘味料を含む単層又は多層コーティングを含むことができる。
【0064】
(2)ニコチンアミド又はその適切な前駆体若しくは代謝体は製造業者により記載されている即時放出の、遅延及び後のパルス放出動力学を用いたOralogiK technology(BDD Pharma)に基づく又は類似の錠剤で投与することができる。
(3)ニコチンアミド又はその適切な前駆体若しくは代謝体は即時放出型のミニ又はマイクロピペット製剤に造粒することができ、そのうちの固定又は変動部分は遅延(例えばpH依存性の)放出を奏するコーティングを備えることができ、他の部分は即時放出のための味覚マスキングコーティングを備えていてもよい[詳細については実施例3(1)参照]。2種類のペレットは即時:遅延放出のために一緒に単一サッシェ、スティックパック又はカプセルに固定された割合、例えば2:1又は1:1で充填することができる。或いは、2種類のペレットは別々のサッシェ、スティックパック又はカプセルに充填することができ、患者の症状に応じて投与される。更なる選択肢において、ペレットはカプセルに充填するか、又は錠剤に組み込むことができる。
(4)ニコチンアミド又はその適切な前駆体若しくは代謝体は単独で又は組み合わせて活性物質(好ましくはニコチンアミド)を含むコアを有する錠剤として投与することができる。コアは実施例3(1)に記載した少なくとも部分的に制御された放出及び遅延放出コーティングのためのマトリックス特性を有することができるが、即時放出活性物質及び外側のコーティングの追加の層はない。
(5)ニコチンアミド又はその適切な前駆体若しくは代謝体は活性物質(好ましくはニコチンアミド)を含むコアを有する錠剤として単独で又は組み合わせて投与することができる。コアは実施例3(1)及び(4)に記載したものと異なるマトリックス特性を有することができるが、実施例3(4)に記載した遅延放出コーティングを有することができる。
【0065】
(6)ニコチンアミド又はその適切な前駆体若しくは代謝体は単独で又は組み合わせて活性物質(好ましくはニコチンアミド)を含むコアを有する錠剤として投与することができる。コアは実施例3(1)に記載した少なくとも部分的に制御された放出のためのマトリックス特性を有することができ、詳細な説明で記載したような味覚マスキング技術、例えば実施例3(1)で記載したように胃で始まる即時放出を提供する味覚マスキングコーティングを備えることができる。
(7)ニコチンアミド又はその適切な前駆体若しくは代謝体は活性物質(好ましくはニコチンアミド)を含むコアを有する錠剤として単独で又は組み合わせて投与することができる。コアは制御された放出のためのマトリックス特性をもたないことができ、実施例3(6)で記載したような味覚マスキング技術を備えることができる。
(実施例4)他のウイルス感染症(本発明を実施するための一般情報)
ニコチンアミド又はその適切な前駆体若しくは代謝体は、慣用の上市されている即時放出錠剤又はカプセルを使用するか又は制限されることはないが実施例3に記載したものを含む製剤異形を使用して、限定されないがSARS-CoV-1、SARS-CoV-2、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV);インフルエンザ;ヒト免疫不全ウイルス;A、B、C、D又はE型肝炎ウイルス;エンテロウイルス;又はワクシニアウイルスを含むウイルス感染の持続性身体症状(特に倦怠感)の予防又は改善のために投与される。
(実施例5)COVit-1試験からの結果
実施例2に記載した「COVit-1」試験を56人の患者(ニコチンアミド又はシリカ/コントロールの各々n=28)に拡大したが、これを「COVit-1」と呼んでCOVit試験の第2の、より大きい部分(「COVit-2」)と区別し、後者はCOVit-1の後即座に開始し、実施例6で記載する。
表1はCOVit-1試験集団のベースライン特性を示す。むしろ小さいサンプルサイズのために併存疾患又は他の特徴に対する階層化はなかったので、ニコチンアミド群の患者は不注意にシリカ(コントロール)群よりかなり多い併存疾患を有していた(p=0.014、表1)。
【0066】
【表8】


ベースライン及び2週での症状頻度は表2及び表3に示されているようにニコチンアミド群でシリカ(コントロール)群より強く低減した。追加の視覚化のため、図5は各々の症状について症状が残る患者の割合を示す(ベースライン=100%)。2週で、ニコチンアミド補充は倦怠感、嗅覚障害、のどの痛み、痰のある咳、又は関節及び胸痛のような様々な症状に対してシリカ(コントロール)と比較して広い有益な効果を有するようであった(表2、図5)。
【0067】
補充の2週後の症状の完全な消散に関して、期待された通り少ないがまだ著しい程度のおよそ20パーセンテージポイントの大きさで、n=16の患者のパイロット群から(実施例2)信号が確かめられた(プラシーボ/シリカの場合のたった14.3%と比較してニコチンアミド補充の2週後35.7%の患者が無症状であった;表3)。
n=16の患者のパイロット群と同様に、4週での無症状患者の割合の類似性(表4)はニコチンアミドの効果が速く且つ早期に起こることを示している。これはまた症状の完全な消散のためKaplan-Meier曲線にも反映される(図6)。上に記載した結果と一致して、症状の消散までのメジアン時間(日単位)に極めて顕著な差が4週で検出された。この期間はニコチンアミドを補充した患者でシリカを投与した患者と比較しておよそ半分の長さに過ぎなかった(表4;図7)。驚くべきことに、女性患者はCOVit-1試験集団において慣用のニコチンアミド補充から選択的に利益を得た(表3;表4)。
【0068】
【表9】
【0069】
【表10】
【0070】
【表11】

ニコチンアミド群が不注意に併存疾患(上記参照)をもつ患者を顕著により多く含有し、これらの併存疾患の幾つかはCOVID-19のより重症の経過の素因となる事実を考えると、症状の消散までの時間に関するニコチンアミドの極めて顕著な利点(表4)は驚くべきである。更に一層驚くべきは女性のみが慣用のニコチンアミド補充の利益を得るというこの効果の性-特異性であった。
【0071】
(実施例6)COVit-2試験からの中間結果
背景及び方法
COVit-1試験からの陽性信号(実施例2及び5)の後、COVit試験の第2の部分(COVit-2)を開始し、この出願の提出時進行中である。試験構造及び手順はたいてい実施例2で記載した通りであるが、主要な変化は試験補充に関する。COVit-2では、ニコチンアミドにランダム化した患者には2つの異なるニコチンアミド錠剤の組合せ:1種の慣用の500-mg即時放出ニコチンアミド錠剤(COVit-1で使用したのと同じ)及び1種の新規な500-mgの制御された回結腸放出性のニコチンアミド(CICR-NAM)錠剤を投与する。この組合せの後者はニコチンアミドに対する長期の連続した腸の曝露を確保する。COVit-1試験からの陽性の信号のため、現実のプラシーボの使用(2つの異なるマッチング錠剤)がプラシーボ様ダイエット栄養補助食品シリカを投与する代わりに正当化された。既に数百人の患者がCOVit-2試験に募集された後にSARS-CoV-2に対するワクチン接種がより広く公衆に入手可能になったので、部分的又は完全にワクチン接種を受けた患者は加入から除外し、同じ包含集団を維持すると共に試験内の全ての患者の正式な比較可能性を確保した。しかし、ニコチンアミドの基礎的な代謝及び微生物叢をターゲットにする効果が症状を示すCOVID-19患者において以前のワクチン接種の有無で異なると仮定する理由も証拠もない。
【0072】
試験プロトコルに従って、およそ400人の患者の募集後中間解析を行なって、無益かどうか試験し、必要があればサンプルサイズを調節した。以下に、この解析のn=402の患者(n=201はニコチンアミド錠剤の組合せを補充し、n=201はプラシーボを補充)に対する重要なデータを要約する。簡潔にするために、また実施例5に沿って、本実施例6は主にベースライン及び2週での症状間の統計的に有意な差(多重検定についてBonferroni補正した)に焦点を当てる。また、COVID-19研究及び療法の最近の進歩(背景技術参照)はCOVID-19から深刻な病気を発症する増大したリスクと関連する少なくとも1種の特徴又は内在する医学的状態を有する患者に焦点を当てることを示唆した(背景技術の欄に記載したモルヌピラビル及びPAXLOVID(商標)に対する試験参照)。集団における危険因子頻度の盲検解析後、以下の6つのリスク群が規定された:
- 少なくとも60歳の年齢;
- 少なくとも30.0の肥満度指数又は2型糖尿病;
- 心臓血管疾患、高血圧又は脳卒中;
- 喘息、慢性閉塞性肺疾患又は他の慢性肺疾患;
- 習慣性喫煙者又は喫煙経験者(後者は、合計で100本より多くのタバコ又は他の喫煙製品を以前喫煙したが、少なくとも4週間喫煙していない患者と定義される);
-全ての上記リスク群を含む、COVID-19から深刻な病気を発症する増大したリスクに関連する少なくとも1種の特徴又は内在する医学的状態を有する全ての患者、加えて1型糖尿病、慢性腎疾患、慢性肝疾患、がん、臓器移植、現在免疫抑制療法又は慢性神経疾患(多発性硬化症、パーキンソン病)をもつ全ての患者。
また、ベースライン時に最大3つの典型的なCOVID-19主症状を有する患者の7つの群、即ち咳及び/又は発熱及び/又は味覚喪失を全ての組合せでもつ患者が規定された。
【0073】
全てのこれらの指示された患者群を二値及び順序変数の両方について分析した。二値変数(あり/なし)は倦怠感、身体能力の低下、息切れ、味覚の喪失及び咳を(この順で)含んでいた。これらの変数はカイ2乗解析又はFisher正確検定を使用して解析した(20%より多くの細胞が期待される頻度<5を有する場合)。順序変数(グレード0=正常、1=非常に軽度の症状、2=軽度の症状、3=中程度に悪い、4=悪い、5=非常に悪い、及び6=最大の症状、の症状スケールに基づく)は通常の活動を行なう能力、咳及び息切れを(この順で)含んでいた。これらの変数は、データ群がパラメーター分布を示したならばt検定を使用して、又はデータ群がノンパラメトリック分布を示したならばMann-Whitney U検定で解析した。順序変数解析中、時点の可能な効果は後の週(2週、4週、及び6週)とベースライン(0週)との差の解析により考慮された。これらの差の数値は症状をベースラインからの悪化、持続、又は改善として再コード化することにより更なる解析を可能にした。再コード化された値は次いでカイ2乗検定を使用して解析してこれらのカテゴリーの有意性を決定した。
【0074】
重症COVID-19の増大したリスクをもつ患者の結果
COVID-19から重症の病気を発症する増大したリスクに関連する少なくとも1種の特徴又は内在する医学的状態を有する患者
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
充分に大きい群サイズのため、性に対するランダム化アルゴリズムの階層化はニコチンアミド(39.3%男性、60.7%女性)及びプラシーボ群(40.0%男性、60.0%女性)における男性及び女性のむしろ等しい割合を確保した。
【0075】
少なくとも30.0の肥満度指数又は2型糖尿病の患者
【表16】
【表17】
【表18】
中程度の群サイズにもかかわらず、性に対するランダム化アルゴリズムの階層化はニコチンアミド(44.4%男性、55.6%女性)及びプラシーボ群(42.4%男性、57.6%女性)における男性及び女性のむしろ等しい割合を確保した。
習慣性喫煙者又は喫煙経験者である患者
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
充分に大きい群サイズのため、性に対するランダム化アルゴリズムの階層化はニコチンアミド(37.3%男性、62.7%女性)及びプラシーボ群(40.3%男性、59.7%女性)における男性及び女性のむしろ等しい割合を確保した。
【0076】
COVID-19の主症状を有する患者の結果
咳のある患者
【表23】
充分に大きい群サイズのため、性に対するランダム化アルゴリズムの階層化はニコチンアミド(34.0%男性、66.0%女性)及びプラシーボ群(35.1%男性、64.9%女性)における男性及び女性のむしろ等しい割合を確保した。
発熱のある患者
【表24】
中程度の群サイズのため、ニコチンアミド(52.4%男性、47.6%女性)及びプラシーボ群(35.5%男性、64.5%女性)における男性及び女性の割合は性に対するランダム化アルゴリズムの階層化にもかかわらず実質的に異なった。
咳及び発熱のある患者
【表25】
中程度の群サイズにもかかわらず、性に対するランダム化アルゴリズムの階層化はニコチンアミド(46.7%男性、53.3%女性)及びプラシーボ群(41.2%男性、58.8%女性)における男性及び女性のむしろ等しい割合を確保した。
咳及び味覚喪失のある患者
【表26】
これは、プラシーボに対して見られた唯一の有意な差であった。他の結果を考えると、これは偶然の発見のようである。中程度の群サイズにもかかわらず、性に対するランダム化アルゴリズムの階層化はニコチンアミド(36.1%男性、63.9%女性)及びプラシーボ群(29.7%男性、70.3%女性)における男性及び女性のむしろ等しい割合を確保した。
【0077】
発熱及び味覚喪失のある患者
【表27】
小さい群サイズのため、ニコチンアミド(50.0%男性、50.0%女性)及びプラシーボ群(18.2%男性、81.8%女性)における男性及び女性の割合は性に対するランダム化アルゴリズムの階層化にもかかわらず実質的に異なった。
咳、発熱及び味覚喪失のある患者
【表28】
小さい群サイズのため、ニコチンアミド(50.0%男性、50.0%女性)及びプラシーボ群(14.3%男性、85.7%女性)における男性及び女性の割合は性に対するランダム化アルゴリズムの階層化にもかかわらず実質的に異なった。
【0078】
概要
COVit-2試験の無益性解析は、COVID-19から深刻な病気を発症する増大したリスクに関連する少なくとも1種の特徴又は内在する医学的状態を有する特に関連のある患者集団において関連するパラメーター、即ち、通常の活動を行なう能力、倦怠感及び身体能力の低下に対するニコチンアミドの生物学的及び統計的に有意な正の効果を明らかにした。肥満及び/又は2型糖尿病の患者の危険因子部分群において、並びに習慣性喫煙者及び喫煙経験者において、咳の持続性に対する効果が加えて観察され、ニコチンアミドの効果は特に強かった。したがって、本発明の組成物は好ましくはこれらの危険因子部分群のいずれか又は全てに使用される。しかしながら、統計的な有意性を達成しなかった他の危険因子部分群における効果もあり、これらは簡潔にするために本例示に含めなかったが、追加の数百人の患者の進行中の募集の後統計的な有意性を充分に達成する可能性もある。したがって、更なる危険因子部分群における組成物の好ましい使用も本発明の範囲内である。
【0079】
COVit-1試験部分と同様に、効果は2週で最も顕著であった。COVID-19の主症状がある患者において、ニコチンアミドが有益なパラメーター、即ち、倦怠感及び通常の活動を行なう能力は重症のCOVID-19に対する増大したリスクを有する患者と完全に重なり、これは中間解析からの信号の信憑性を増大する。また、1種又は複数の症状の存在に基づく部分群に関しても、無益性解析で統計的な有意性を達成しなかった更なる効果及びかかる部分群の患者における組成物の好ましい使用も本発明の範囲内である。
【0080】
驚くべきことに、そして慣用のニコチンアミドのみの使用(COVit-1;実施例2及び5)と対照的に、即時及び制御-回結腸放出性のニコチンアミドの組合せは、(i)全般的な健康な状態、即ち、通常の活動を行なう能力、倦怠感及び身体能力の低下の重要なパラメーターを改善する際に特に効果があり、(ii)男性及び女性の両方で有益であった。1つの例として、通常の活動を行なう能力のスケールの改善(表1.4)は男性(p=0.005)及び女性(p=0.0343)の両方で有意であった。あるとしたら、男性におけるより強い利益の傾向が、COVit-1での純粋に女性で引き起こされる有益な効果と対照的にCOVit-2で観察された。総合して、データは、ニコチンアミドを下部小腸及び/又は結腸で少なくとも部分的に放出するニコチンアミド組合せ製剤が慣用のニコチンアミド製剤と比較してかなりの予想外な利点を有することを強く示唆している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】