(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】レンズ要素
(51)【国際特許分類】
G02B 3/10 20060101AFI20231129BHJP
G02C 7/06 20060101ALI20231129BHJP
G02C 13/00 20060101ALI20231129BHJP
B29C 33/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G02B3/10
G02C7/06
G02C13/00
B29C33/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532398
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2021083250
(87)【国際公開番号】W WO2022112535
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ギヨー
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ・フェルミジエ
(72)【発明者】
【氏名】カルロ・ルゴ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ガコワン
【テーマコード(参考)】
2H006
4F202
【Fターム(参考)】
2H006BD01
2H006DA01
4F202AH74
4F202CA27
4F202CB01
4F202CK06
4F202CK87
(57)【要約】
装着者の眼の前方での装着を意図されたレンズ要素であって、
- 装着者の眼についての装着者の処方に基づく屈折力を有する少なくとも2つの第1のエリアと、
- 特定の装着条件において少なくとも第2の光学機能を有する複数の第2のエリアと、
を備え、
少なくとも、第1の第2のエリアにおける第1の点(<r1,θ1>)及び第2の点(<r2,θ1>)を通る少なくとも1つの第1の径方向経路(Pth_R(θ1))を決定することができ、第1及び第2の点は少なくとも2つの第1のエリアに隣接し、径方向座標r2は径方向座標r1よりも大きく、第1の点(<r1,θ1>)における径方向屈折力は、第2の点(<r2,θ1>)における径方向屈折力と大きく異なる、レンズ要素。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の眼の前方での装着を意図されたレンズ要素であって、
- 特定の装着状況において第1の光学機能を有する少なくとも2つの第1のエリアであって、前記第1の光学機能は、前記装着者の前記眼の前記装着者の処方に基づく屈折率に基づく、少なくとも2つの第1のエリアと、
- 特定の装着状況において少なくとも第2の光学機能を有する複数の第2のエリアと、
を備え、
少なくとも第1の第2のエリアにおける第1の点(<r1,θ1>)及び第2の点(<r2,θ1>)を通る少なくとも1つの第1の径方向経路(Pth_R(θ1))を決定することができ、前記第1及び第2の点は前記少なくとも2つの第1のエリアに隣接し、前記径方向座標r2は前記径方向座標 r1よりも大きく、前記第1の点(<r1,θ1>)における前記径方向屈折力は、前記第2の点(<r2,θ1>)における前記径方向屈折力と大きく異なる、レンズ要素。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1の径方向経路(Pth_R(θ1))に沿って、前記第1の点と前記第2の点との間の径方向屈折力の増大は厳密に単調である、請求項1に記載のレンズ要素。
【請求項3】
前記第1の第2のゾーンに含まれ、第2の径方向経路(Pth_R(θ2))を定義する少なくとも2つの点(<r3,θ2>)及び(<r4,θ2>)並びに前記第1の径方向経路と前記第2の径方向経路との間の少なくとも1つの直交径方向経路(Pth_OR(θ1,θ2))を更に決定することができ、前記直交径方向経路(Pth_OR(θ1,θ2))に沿った平均球面屈折力は実質的に一定であり、前記直交径方向経路(Pth_OR(θ1,θ2))は、18度以上である、請求項1又は2に記載のレンズ要素。
【請求項4】
前記第1及び第2のエリアは、前記レンズ要素上で交互になり、前記少なくとも2つの第1のエリア及び前記複数の第2のエリアの少なくとも1つを通る少なくとも1つの径方向経路に沿って、隣接する前記第1のエリアと前記第2のエリアとの間の径方向屈折力の 遷移は不連続である、請求項1~3のいずれか1項に記載のレンズ要素。
【請求項5】
前記第1及び第2のエリアは、前記レンズ要素上で交互になり、前記少なくとも1つの第1のエリア及び前記複数の第2のエリアの少なくとも1つを通る少なくとも1つの径方向経路に沿って、隣接する前記第1のエリアと前記第2のエリアとの間の径方向屈折力の遷移は連続する、請求項1~3のいずれか1項に記載のレンズ要素。
【請求項6】
隣接する前記第1のエリアと前記第2のエリアとの間の高度遷移は連続する、請求項1~5のいずれか1項に記載の レンズ要素。
【請求項7】
隣接する前記第1のエリアと前記第2のエリアとの間の高度遷移は不連続である、請求項1~6のいずれか1項に記載のレンズ要素。
【請求項8】
前記第2の光学機能は球面ではない光学機能である、請求項1~7のいずれか1項に記載のレンズ要素。
【請求項9】
前記球面ではない機能は非球面機能である、請求項8に記載のレンズ要素。
【請求項10】
前記複数の第2のエリアは、完全な同心環又は同心環の部分に編成される、請求項1~9のいずれか1項に記載のレンズ要素。
【請求項11】
前記第2のエリアは異なる光学機能を有する、請求項10に記載のレンズ要素。
【請求項12】
前記第2のエリアは、前記レンズ要素の光学中心を中心とする、請求項10又は11に記載のレンズ要素。
【請求項13】
前記第2の光学機能は、前記レンズ要素の幾何学的中心に対する第2のエリアの偏心によって変化する、請求項1~12のいずれか1項に記載のレンズ要素。
【請求項14】
前記少なくとも2つの第1のエリアの少なくとも一点の平均屈折力と第2のエリアの1つの一点の平均屈折力との差の絶対値は、0.50~15.0Dである、請求項1~13のいずれか1項に記載のレンズ要素。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に記載のレンズ要素を取得するための金型であって、
- 第1の表面を有する第1の成形要素と、
- 第2の表面を有する第2の成形要素と、
を備え、前記第1の成形要素の前記第1の表面、前記第2の要素の前記第2の表面は、成形材料で満たされる成形キャビティを形成する、金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、装着者の眼の前方での装着を意図されたレンズ要素に関する。特に、本開示は、近視又は遠視等の眼の屈折異常の進行を抑制又は低減するために人の眼の前方に装着されるように意図されたレンズ要素に関する。
【0002】
本開示は更に、装着者の眼の前方での装着を意図されたレンズ要素を取得するための金型に関する。
【背景技術】
【0003】
眼の近視は、眼が遠方の物体を網膜の前方で結像させる事実により特徴付けられる。近視は通常凹レンズを用いて矯正され、遠視は通常凸レンズを用いて矯正される。
【0004】
従来型の単焦点光学レンズを用いて視力が矯正されている人々、特に児童が近距離に位置する対象を見ている、すなわち近方視状態にある場合に不正確に結像されることが観察されている。遠方視が矯正された近視児童についても、この結像不良に起因して近くにある対象の画像も網膜の後方に、極端な場合は中心窩領域に形成されてしまう。
【0005】
上述のような結像不良は上述のような個人の近視の進行に影響を及ぼし得る。個人の大多数で近視欠陥が時間の経過に伴い増加する傾向があることが見て取れる。
【0006】
中心視は、注視している物体の画像が、中心窩領域と呼ばれる網膜の中心領域で眼により形成される注視条件に対応している。
【0007】
周辺視は、注視している物体から横方向にずれているシーンの要素の認識に対応し、要素の画像は中心窩領域から離れた網膜の周縁部分に形成される。
【0008】
屈折異常症の対象に施される眼科的矯正は、通常当人の中心視に適合される。しかしながら、公知のように、周辺視の矯正は中心視に対して決定された矯正に比べて弱める必要がある。特に、サルについて行われた研究により、中心窩領域から離れた位置で生じる網膜の後方での光の強い焦点ずれにより眼球が伸長し、従って近視欠陥が増加し得ることが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、近視又は遠視等、眼の屈折異常の進行を抑制又は少なくとも遅延させるレンズ要素に対するニーズがあることが分かる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため、本開示は、装着者の眼の前方での装着を意図されたレンズ要素を提案するものであり、レンズ要素は、
- 第1の光学機能を有する少なくとも2つの第1のエリアであって、第1の光学機能は、装着者の眼の装着者の処方に基づく屈折率に基づく、少なくとも2つの第1のエリアと、
- 特定の装着状況において少なくとも第2の光学機能を有する複数の第2のエリアと、
を備え、
少なくとも、第1の第2のエリアにおける第1の点(<r1,θ1>)及び第2の点(<r2,θ1>)を通る少なくとも1つの第1の径方向経路(Pth_R(θ1))を決定することができ、第1及び第2の点は少なくとも2つの第1のエリアに隣接し、径方向座標r2は径方向座標r1よりも大きく、第1の点(<r1,θ1>)における径方向屈折力は、第2の点(<r2,θ1>)における径方向屈折力と大きく異なる。
【0011】
有利なことに、第2の光学機能を有する複数の第2のエリアは、変形、特に拡張する眼の網膜の自然な傾向を減じる、近視及び/又は遠視制御のシグナルを生み出す装着者の網膜上以外で非集束像を生み出す。従って、眼の屈折異常の進行が遅延する。
【0012】
さらに、非集束像は装用者により使用可能ではなく、したがって、不快さがより低く、それにより装着者の快適性を改善する。
【0013】
単独又は組み合わせとして想到可能な更なる実施形態によれば、
- 少なくとも1つの第1の径方向経路(Pth_R(θ1))に沿って、第1の点と第2の点との間の径方向屈折力の増大は厳密に単調であり、且つ/又は
- 第1の第2のゾーンに含まれ、第2の径方向経路(Pth_R(θ2)を定義する少なくとも2つの点(<r3,θ2>)及び(<r4,θ2>)並びに第1の径方向経路と第2の径方向経路との間の少なくとも1つの直交径方向経路(Pth_OR(θ1,θ2))を更に決定することができ、直交径方向経路(Pth_OR(θ1,θ2))に沿った直交径方向屈折力は実質的に一定であり、直交径方向経路(Pth_OR(θ1,θ2))は、18度以上であり、且つ/又は
- 第1及び第2のエリアは、レンズ要素上で交互になり、少なくとも1つの第1のエリア及び複数の第2のエリアの少なくとも1つを通る少なくとも1つの径方向経路に沿って、隣接する第1のエリアと第2のエリアとの間の屈折力の遷移は不連続であり、且つ/又は
- 第1及び第2のエリアは、レンズ要素上で交互になり、少なくとも1つの第1のエリア及び複数の第2のエリアの少なくとも1つを通る少なくとも1つの径方向経路に沿って、隣接する第1のエリアと第2のエリアとの間の屈折力の遷移は連続し、且つ/又は
- 隣接する第1のエリアと第2のエリアとの間の高度遷移は連続し、且つ/又は
- 隣接する第1のエリアと第2のエリアとの間の高度遷移は不連続であり、且つ/又は
- 第2の光学機能は球面ではない光学機能であり、且つ/又は
- 球面ではない機能は非球面機能であり、且つ/又は
- 複数の第2のエリアは、レンズ要素上又は内部で完全な同心環又は同心環の部分に編成され、且つ/又は
- 第2のエリアは異なる光学機能を有し、且つ/又は
- 少なくとも2つの第2のエリアは、同じ第2の光学機能を有し、且つ/又は
- 第2のエリアは全て同じ第2の光学機能を有し、且つ/又は
- 第2のエリアは、それらが配置されたレンズ要素又はそれらが封入されたレンズ要素の光学中心を中心とし、且つ/又は
- 第2のエリアは、4.0mm以上の直径と70mm以下の直径との間で画定されるレンズ要素の環状ゾーンに含まれ、且つ/又は
- 複数の第2のエリアは、0.1mm~3.0mmの径方向サイズを有し、且つ/又は
- 第2の光学機能は、レンズ要素の幾何学的中心に対する第2のエリアの偏心によって変化し、且つ/又は
- 第1のエリアの一点の平均屈折力と第2のエリアの一点の平均屈折力との差の絶対値は、0.50~15.0Dである。好ましくは、第1及び第2のエリアの第1及び第2の点は隣接し、且つ/又は
- 第2のエリアの1つの一点の径方向屈折力と同じ第2のエリアの一点の径方向屈折力との差の絶対値は、0.25~20.0Dであり、且つ/又は
- 第2のエリアの1つの一点の平均屈折力と同じ第2のエリアの一点の平均屈折力との差の絶対値は、0.25~10.0Dである。
【0014】
本開示は、装着者の眼の前方に装着されるように意図されたレンズ要素を取得するための金型に更に関し、金型は、
- 第1の表面を有する第1の成形要素と、
- 第2の表面を有する第2の成形要素と、
を備え、第1の成形要素の第1の表面と第2の要素の第2の表面は、成形材料でファイリングされる成形キャビティを形成する。
【0015】
単独又は組み合わせとして想到可能な更なる実施形態によれば、
- 金型は、内面及び外面を有するガスケットを更に備え、ガスケットの内面は、第1の成形要素の第1の表面及び第2の要素の第2の表面を有する成形キャビティを形成する。
【0016】
ここで本発明の複数の実施形態について、ほんの一例として以下の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の一実施形態によるレンズ要素の平面図である。
【
図2】本開示の一実施形態によるレンズ要素の平面図である。
【
図3】本開示の一実施形態によるレンズ要素の平面図である。
【
図4a】レンズの非点収差軸γをTABO表記で示す図である。
【
図4b】円柱軸γAXを非球面表面の特徴付けに用いる表記で示す図である。
【
図5】眼及びレンズの光学システムを図式的に示す図である。
【
図6】眼及びレンズの光学システムを図式的に示す図である。
【
図7】本開示の一実施形態によるレンズ要素を取得するための金型を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面内の要素は、簡潔化及び明示化のために示されており、必ずしも正確な縮尺で描かれていない。例えば、本発明の実施形態を分かり易くするため図のいくつかの要素のサイズを他の要素に比べて誇張している場合がある。
【0019】
本開示は、装着者の眼の前方での装着を意図され、例えば上記装着者に適合されたレンズ要素10に関する。
【0020】
以下の記述において、「上」、「下」、「水平」、「垂直」、「上方」、「下方」、「前」、「後」等の用語又は相対位置を示す他の用語を用いる場合がある。これらの用語はレンズ要素の装着条件に関するものと理解されたい。
【0021】
本発明の文脈では、「レンズ要素」という用語は、アンカット光学レンズ、又は特定の眼鏡フレームに合うように玉形加工済みの眼鏡光学レンズ、又は眼用レンズ及び眼用レンズ上に配置されるように適合された光学装置を指し得る。光学デバイスは、眼科レンズの前面又は背面に配置されていてもよい。光学デバイスは、光学パッチ、又はレンズ上に積層されたフィルム、又は例えばインクジェットにより堆積した皮膜の層でもよい。光学デバイスは、例えば眼科レンズを含む眼鏡フレームにクリップ留めするように構成されたクリップ等、眼科レンズに着脱自在に配置すべく適合されていてもよい。代替的には、レンズはコンタクトレンズである。
【0022】
本開示によるレンズ要素10は、装着者に適合され、且つ前記装着者の眼の前方での装着を意図されている。
【0023】
図1に表されるように、本開示によるレンズ要素10は、少なくとも2つの第1のエリア12を備える。第1のエリア12は、少なくとも第1の光学機能、例えば装着者の処方に基づく屈折力を有する。本発明では、「処方に基づく」という用語は、処方値±0.5D、好ましくは出願日に公開されているISO8980基準に定義されるように処方値±0.12Dに等しいものと理解されるべきである。
【0024】
本開示の一実施形態によれば、第1のエリアは、例えば装着者の処方に基づく第1の屈折力P1及び第1の屈折力P1と異なる第2の屈折力P2を有し得る。好ましくは、第1及び第2の屈折力P1及びP2は異なる第1のエリア12によって有される。第1のエリアの屈折力は、上記第1のエリア内で変化し得る。例えば、第1のエリアの屈折力は、第1の屈折力P1と第2の屈折力P2との間で連続変化し得る。好ましくは、第1のエリアの屈折力は径方向軸に沿って連続変化する。用語「処方」は、眼科医又は検眼士により、例えば眼の前方に配置されたレンズにより眼の視力欠陥を矯正すべく判定された屈折力、非点収差、プリズム偏差の光学特徴の組を意味するものと理解されたい。例えば、近視眼に対する処方は、屈折力及び遠方視軸との非点収差の値を含む。
【0025】
第1のエリア12は、特定の装着条件、例えば標準装着条件、特に中心視で、少なくとも、装着者の網膜上に光を集束するように構成された第1の光学機能を装着者に提供するように構成される。第1の光学機能は、屈折力、例えば装着者の眼の屈折異常を矯正するための装着者の処方に基づく屈折力に基づくことができる。
【0026】
装着条件とは、例えば装着時前傾角、角膜からレンズまでの距離、瞳孔-角膜間距離、眼の回転中心(CRE)-瞳孔間離、CREからレンズまでの距離、及び巻き角により規定される装着者の眼に対するレンズ要素の位置として理解されたい。
【0027】
角膜からレンズまでの距離は、第1眼位(通常は水平に取られる)における眼の視軸に沿った角膜とレンズの裏面との間の距離であり、例えば12mmに等しい。
【0028】
瞳孔-角膜間距離は、瞳孔と角膜間の眼球の視軸に沿った距離であり、通常は2mmに等しい。
【0029】
CREから瞳孔までの距離は、眼球の視軸に沿ったその回旋点(CRE)と角膜との間の距離であり、例えば11.5mmに等しい。
【0030】
CRE-レンズ間距離は、眼のCREとレンズの背面との間の第1眼位(通常は水平方向にとられる)における眼の視軸に沿った距離であり、例えば25.5mmに等しい。
【0031】
装着時前傾角は、レンズの背面と第1眼位(通常は水平方向にとられる)における眼の視軸との交線における、レンズの背面に対する法線と第1眼位における眼の視軸の間の垂直面内の角度であり、例えば-8°に等しい。
【0032】
巻き角は、レンズの背面と第1眼位(通常は水平方向にとられる)における眼の視軸との交線における、レンズの背面に対する法線と第1眼位における眼の視軸との間の水平面内の角度であり、例えば0°に等しい。
【0033】
標準的な装用者の状態の例は、装用時前傾角-8°、角膜からレンズまでの距離12mm、瞳孔-角膜間距離2mm、CREから瞳孔までの距離11.5mm、CREからレンズまでの距離25.5mm、及び巻き角0°によって定義されてもよい。
【0034】
本発明は累進レンズを目的としないが、本明細書で用いる用語は累進レンズを対象とする文献国際公開第2016/146590号パンフレットの
図1~10に示されている。当業者はこれらの規定を単焦点レンズに適合させることができる。
【0035】
累進レンズは少なくとも1個、但し好適には2個の非回転対称非球面表面、例えば累進面、後退面、トーリック又は非トーリック面を含むがこれらに限定されない。
【0036】
公知のように、最小曲率CURV
最小は次式により非球面表面上の任意の点で規定される。
【数1】
式中、R
最大はメートル単位で表される局所最大曲率半径であり、CURV
最小はジオプタ単位で表される。
【0037】
同様に、最大曲率CURV
最大は次式により非球面表面上の任意の点で規定することができる。
【数2】
式中、R
最小はメートル単位で表される局所最小曲率半径であり、CURV
最大はジオプタ単位で表される。
【0038】
表面が局所的に球面である場合、局所最小曲率半径R最小と局所最大曲率半径R最大は等しく、従って最小及び最大曲率CURV最小とCURV最大も同一であることに留意されたい。表面が非球面の場合、局所最小曲率半径R最小と局所最大曲率半径R最大は異なる。
【0039】
最小及び最大曲率CURV最小、CURV最大のこれらの式から、SPH最小及びSPH最大とラベル付けされた最小及び最大球面は考慮される面の種類から推論できる。
【0040】
考慮される面が物体側の面(前面とも称する)である場合、式は以下の通りである。
【数3】
式中、nはレンズの組成材料の屈折率である。
【0041】
考慮される面が眼球側の面(背面とも称する)である場合、式は以下の通りである。
【数4】
式中、nはレンズの組成材料の屈折率である。
【0042】
公知のように、非球面表面上の任意の点における平均球面度数SPH
平均も次式により規定することができる。
【数5】
【0043】
したがって、平均球面度数の式は、考慮される面に依存し、
表面が物体側の面であれば、
【数6】
表面が眼球側の面であれば、
【数7】
である。
【0044】
円柱CYLも、式:
CYL=|SPH最大-SPH最小|
により規定される。
【0045】
レンズの任意の非球面表面の特徴を局所平均球面度数及び円柱度数により表すことができる。円柱度数が少なくとも0.25ジオプタである場合、面は局所的に非球面であると考えられる。
【0046】
非球面表面に対して、局所円柱軸γAXを更に規定することができる。
図4aにTABO表記で規定される非点収差軸γを示し、
図4bに非球面表面を特徴付けるべく規定された表記で円柱軸γAXを示す。
【0047】
円柱軸γAXは、基準軸に対する且つ回転の選択された意味での、最大曲率CURV最大の向きの角度である。上で定義した表記において、基準軸は水平(この基準軸の角度は0°)であり、装着者を注視しているとき(0°≦γAX≦180°)、回転の意味は各々の眼に対して反時計回りである。したがって、円柱軸γAXの軸値+45°は斜めに向けられた軸を表し、装着者を注視しているとき、右上の象限から左下の象限まで延びている。
【0048】
更に、累進多焦点レンズは、レンズを装着している人の条件を考慮に入れて、光学特徴により規定されてもよい。
【0049】
図5及び
図6は、眼及びレンズの光学システムの模式図であり、したがって、本明細書で使用される定義を示す。より正確には、
図5は、注視方向を定義するために使用されるパラメータα、βを示す、そのようなシステムの斜視図を表す。
図6は、パラメータβが0に等しい場合に、装着者の頭部の前後軸と平行であって眼の回転中心を通過する垂直面を示す。
【0050】
眼の回転中心はQ’とラベル付けされている。
図6に一点鎖線で示す軸Q’F’は、眼の回転中心を通過して装着者の前方へ延びる水平軸、すなわち主要注視ビューに対応する軸Q’F’である。この軸は、検眼士によるレンズのフレームでの位置合わせを可能にすべくレンズに存在するフィッティングクロスと呼ばれる点でレンズの非球面表面を切断する。レンズの背面と軸Q’F’の交点がOである。Oは、背面に位置する場合はフィッティングクロスであり得る。中心がQ’、半径がq’の頂点球面は水平軸の一点でレンズの背面に接する。例として、半径q’の値25.5mmは通常値に対応し、レンズを装着する際に満足すべき結果を与える。
【0051】
図5の実線により示される所与の注視方向は、Q’の回りの回転方向での眼の位置、及び頂点球面の一点Jに対応し、角度βは、軸Q’F’と、軸Q’F’を含む水平面上への、直線Q’Jの射影との間で形成される角度であり、この角度は
図5のスキームに現れている。角度αは、軸Q’Jと、軸Q’F’を含む水平面上への、直線Q’Jの射影との間で形成される角度であり、この角度は
図5及び6のスキームに現れている。したがって、所与の注視ビューは、頂点球面の一点J、又はペア(α、β)に対応する。下向き注視角度の値が正方向に大きいほど注視は下向きになり、値が負方向に大きいほど注視は上向きになる。
【0052】
所与の注視方向において、所与の物体距離に位置する、物体空間内の点Mの画像が、最小距離JSと最大距離JTに対応する2つの点、SとTとの間に形成され、これらの距離は、矢状方向及び接線方向の局所焦点距離となる。物体空間内の無限遠点の画像が点F’で形成される。距離Dは、レンズの背平面及び前平面に対応する。
【0053】
エルゴラマは、物体点の通常の距離を各注視方向に関連付ける関数である。典型的に、主注視方向に続く遠方視において、物体点は無限遠にある。近方視において、鼻側に向かう絶対値が35°程度の角度α及び5°程度の角度βに基本的に対応する注視方向に従って、物体との距離は30~50cm程度である。エルゴラマの可能な定義に関する更なる詳細事項について米国特許第6,318,859A号明細書を参照されたい。この文献は、エルゴラマ、その定義、及びそのモデリング方法を記述している。本発明の方法の場合、複数の点が無限遠にあっても又はなくてもよい。エルゴラマは、装着者の屈折異常又は装着者の加入度数の関数であってもよい。
【0054】
これらの要素を用いて、各々の注視方向での装着者の屈折力及び非点収差を規定することが可能である。注視方向(α,β)に関して、エルゴラマにより与えられる物体との距離において物体点Mを想定する。物体空間内において対応する光線上の点Mに対して、物体近接度ProxOが、点Mと頂点球面の点Jとの間の距離MJの逆数として規定される。
【数8】
【0055】
これにより、頂点球面の全ての点で近似した薄型レンズ内での物体近接度を計算して、エルゴラマの決定のために用いることが可能になる。実際のレンズの場合、物体近接度は、物体点と対応する光線上でのレンズの前面の距離の逆数と見なすことができる。
【0056】
同一注視方向(α,β)に対して、所与の物体近接度を有する点Mの画像が、各々が最小及び最大焦点距離(矢状方向及び接線方向の焦点距離となる)に対応する2つの点、SとTとの間で形成される。量ProxIは点Mの画像近接度と呼ばれる。
【数9】
【0057】
したがって、薄型レンズの場合と同様に、所与の注視方向に対して、及び所与の物体近接度に対して、すなわち対応する光線上の物体空間の一点に対して、画像近接度及び物体近接度の和としての屈折力Puiを規定することができる。
Pui=ProxO+ProxI
【0058】
同じ表記法により、非点収差Astが、全ての注視方向及び所与の物体近接度に対して以下のように定義される。
【数10】
【0059】
上の規定は、レンズにより生じる光線ビームの非点収差に対応する。上の規定が、主注視方向において、非点収差の古典的値を与えることに留意されたい。通常は軸と呼ばれる非点収差角度が角度γである。角度γは、眼に紐付けられたフレーム{Q’,xm,ym,zm}内で測定される。これは、平面{Q’,zm,ym}内での方向zmとの関連で用いられる表記法に応じて、画像S又はTiが形成される角度に対応する。
【0060】
したがって、装着条件におけるレンズの屈折力及び非点収差の可能な規定は、B.Bourdoncleらによる論文“Ray tracing through progressive ophthalmic lenses”,1990 International Lens Design Conference,D.T.Moore ed.,Proc.Soc.Photo.Opt.Instrum.Eng.で説明されているように計算できる。
【0061】
第1のエリア12の少なくとも1つは、レンズ要素の制御点を中心とし得る。制御点は、制御点として参照されるレンズ要素の任意の点として理解されたい。特に、制御点は、レンズ要素の幾何学的中心、レンズ要素の光学中心、レンズ要素の近方視基準点、又はレンズ要素の遠方視基準点であり得る。
【0062】
本開示の一実施形態によれば、制御点を中心とした第1のエリア12は、少なくとも第1の屈折力P1を有する。制御点を中心とした第1のエリアに最も近い第2の第1のエリア12は、第2の屈折力P2を有し得る。
【0063】
図1に表すように、本開示によるレンズ要素10は複数の第2のエリア14を備える。第2のエリア14は、特定の装着条件において少なくとも第2の光学機能を有する。
【0064】
好ましくは、第2のエリアの第2の光学機能は、第1のエリアの第1の光学機能と異なる。例えば、第1のエリアの一点の平均屈折力と第2のエリアの一点の平均屈折力との差の絶対値は、0.50~15.0Dである。好ましくは、第1及び第2のエリアの第1及び第2の点は隣接する。
【0065】
第2のエリアの1つの一点の径方向屈折力と同じ第2のエリアの一点の径方向屈折力との差の絶対値は、0.25~20.0Dであり得る。
【0066】
第2のエリアの1つの一点の平均屈折力と同じ第2のエリアの一点の平均屈折力との差の絶対値は、0.25~10.0Dである。
【0067】
第2のエリア14の第2の光学機能は、球面ではない光学機能であり得る。例えば、球面ではない光学機能は非球面光学機能である。
【0068】
有利なことに、特定の装着条件における第2の光学機能は、装着者の網膜上、網膜の前方、及び/又は網膜の後方に非集束像を生み出す。近視の場合での網膜の前方の非集束像及び遠視の場合での網膜の後方の非集束像は、変形、特に拡張する眼の網膜の自然な傾向を減じる制御シグナルを生み出す。非集束像は装着者により使用可能ではなく、したがって、装着者にとっての不快さは低い。換言すれば、装着者の快適さは、装着者の網膜上、網膜の前方、及び/又は網膜の後方に集束像を生み出す第2の光学機能と比較して大幅に改善される。
【0069】
本開示の一実施形態によれば、少なくとも2つ、例えば全ての第2のエリアは、同じ第2の光学機能を有する。
【0070】
本開示の別の実施形態では、複数の第2のエリア14は異なる光学機能を有し得る。例えば、第2の光学機能は、レンズ要素の幾何学的中心に対する第2のエリアの偏心によって変化する。
【0071】
図1及び
図2に示すように、複数の第2のエリア14は、レンズ要素10上又は内部の完全な同心環に編成し得る。好ましくは、直交面上の同心環の射影は、同一の中心を有する。
【0072】
図3に示される本開示の別の実施形態によれば、第2のエリア14は、レンズ要素10上又は内部の同心環の部分に編成される。好ましくは、直交面上の同心環の部分の射影は同一の中心を有する。
【0073】
図1及び
図3に表される本開示の実施形態では、同心環は、レンズ要素の幾何学的中心を中心とする。代替的には、第2のエリアの同心環は、レンズ要素の光学中心を中心とし得る。
【0074】
図2に表される本開示の実施形態では、第2のエリアの同心環の中心は近視エリアに配置される。代替的には、第2のエリアの同心環の中心は、遠視ゾーン、及び/又は鼻ゾーン、及び/又は側頭ゾーンに配置し得る。
【0075】
複数の第2のエリア14は、4.0mm以上の直径と70mm以下の直径との間で画定されるレンズ要素の環状ゾーンに含まれる。好ましくは、環状ゾーンはレンズ要素の幾何学的中心を中心とする。より好ましくは、環状ゾーンはレンズ要素の光学中心を中心とする。
【0076】
代替的には、レンズ要素は、遠方視基準点、近方視基準点、及び遠方視基準点と近方視基準点をつなぐ経線を含んでいてよい。例えば、レンズ要素は、人の処方に適合された累進多焦点設計を有し得る。複数の第2のエリアを含む環状ゾーンは、近方視基準点又は遠方視基準点を中心とし得る。
【0077】
複数の第2のエリア14は、0.1~3.0mmの径方向サイズ、好ましくは0.2~2.0mm、より好ましくは0.5~1.5mmの径方向サイズを有し、例えば1.0mmに等しい。本発明では、径方向サイズとは、1つの第2のエリアが内接する環状ゾーンの外形の長さと上記環状ゾーンの内径の長さとの間の差の半分を指す。
【0078】
図1に示すように、レンズ要素10は少なくとも第1の径方向経路(Pth_R(θ1))を有する。第1の径方向経路Pth_R(θ1)は、少なくとも第1の第2のエリア14の第1の点(<r1,θ1>)及び第2の点(<r2,θ1>)を通過する。第1及び第2の点(<r1,θ1>)及び(<r2,θ1>)は両方とも、少なくとも1つの第1のエリア12に隣接する。第2の点の径方向座標r2は、第1の点の径方向座標r1よりも大きい。換言すれば、第2の点(<r2,θ1>)は、第1の点(<r1,θ1>)よりもレンズ要素10の周縁に近い。
【0079】
有利なことに、第1の点における径方向屈折力(<r1,θ1>)は、第2の点における径方向屈折力(<r2,θ1>)と大きく異なる。
【0080】
本開示では、差の値が0.25D以上である場合、2つの径方向屈折力は大きく異なる。換言すれば、点Ciにおける径方向屈折力ROPは、点Piにおける径方向屈折力と、|ROP(Ci)-ROP(Pi)|≧0.25Dの場合、大きく異なる。
【0081】
レンズ要素の径方向屈折力は、上記レンズ要素の径方向曲率によって規定される。換言すれば、レンズ要素10の径方向曲率は、レンズ要素の曲率の一次導関数を使用して計算することができる。
【0082】
同様に、レンズ要素の直交径方向屈折力は、上記レンズ要素の接線曲率によって規定される。換言すれば、レンズ要素10の直交径方向曲率は、レンズ要素の曲率の二次導関数を使用して計算することができる。
【0083】
回転対称面であって、
z(ρ)=f(ρ)
により記述される回転対称面を考慮することにより、
径方向曲率C
r(ρ)は、
【数11】
として定義することができる。
【0084】
接線曲率C
t(ρ)は、
【数12】
として定義することができる。
【0085】
好ましくは、少なくとも1つの第1の径方向経路(Pth_R(θ1))に沿った第1の点(<r1,θ1>)と第2の点(<r2,θ1>)との間の径方向屈折力の増大デルタ(n)*Crは厳密に単調である。本発明では、関数は、全体的に増加しないか、又は全体的に低下しない場合のみ単調である。デルタ(n)は、屈折率n1の材料から屈折率n2の材料に渡る場合のn1とn2との差として理解されたい。
【0086】
図1に示すように、レンズ要素10は第2の径方向経路(Pth_R(θ2))を更に有し得る。第2の径方向経路は、少なくとも同じ第1の第2のエリア14の第3の点(<r3,θ2>)及び第4の点(<r4,θ2>)を通過する。第3及び第4の点(<r3,θ2>)及び(<r4,θ2>)は両方とも、少なくとも同じ第1のエリア12に隣接する。第4の点の径方向座標r4は、第3の点の径方向座標r3よりも大きい。換言すれば、第4の点(<r4,θ2>)は、第3の点(<r3,θ2>)よりもレンズ要素10の周縁に近い。
【0087】
レンズ要素10は、第1の第2のエリアに含まれる少なくとも1つの直交径方向経路(Pth_OR(θ1,θ2))を更に有し得る。直交径方向経路(Pth_OR(θ1,θ2))は、第1、第2、第3、及び第4の点(<r1,θ1>)(<r2,θ1>)、(<r3,θ2>)、及び(<r4,θ2>)によって区切られた第2のエリア14のゾーンにおいて画定される。好ましくは、直交径方向経路(Pth_OR(θ1,θ2))は18度以上である。
【0088】
直交径方向経路(Pth_OR(θ1,θ2))に沿って、平均球面屈折力の増加は単調であり、例えば、平均球面度数は実質的に一定である。有利なことに、直交径方向経路(Pth_OR(θ1,θ2))に沿って、直交径方向屈折力デルタ(n)*Ctの増加は単調であり、例えば、直交径方向屈折力Ctは実質的に一定である。実質的に一定とは、差が厳密に0.50D未満、好ましくは厳密に0.25D未満、より好ましくは厳密に0.10D未満であることとして理解されたい。
【0089】
有利なことに、第2のエリアの各々の光学機能は光軸上に集束せず、変形する眼の網膜の自然な傾向を減じる近視又は遠視制御のシグナルを生成する焦面、例えば回転対称焦面を生み出す。
【0090】
有利なことに、第2のエリアの1つの一点の径方向屈折力と同じ第2のエリアの一点の径方向屈折力との差の絶対値は、0.25Dよりも大きく、且つ20.0D以下である。
【0091】
有利なことに、第2のエリアの1つの一点の平均屈折力と同じ第2のエリアの一点の平均屈折力との差の絶対値は、0.25Dよりも大きく、且つ10.0D以下である。
【0092】
本開示の一実施形態によれば、第1のエリア12及び第2のエリア14は、レンズ要素10上で交互になる。
【0093】
有利なことに、この構成は、両シグナル、すなわち、第1の光学機能を通した近視/遠視矯正及び第2の光学機能を通した近視/遠視制御を装着者の瞳孔を通る各注視方向に有することを保証する。
【0094】
少なくとも1つの第1のエリア12及び第2のエリア14の少なくとも1つを通る少なくとも1つの径方向経路(Pth_R(θ))に沿って、上記隣接する第1のエリアと第2のエリアとの間の屈折力遷移は不連続である。
【0095】
本開示では、隣接するエリア間の屈折力遷移は、上記隣接する光学要素を結ぶ経路に沿って、「屈折力」の段差を測定することができる場合、不連続である。段差とは、少なくとも0.50Dの屈折力の急激な変動として理解されたい。
【0096】
有利なことに、この不連続性により、第1の光学機能によって生成される屈折異常矯正と第2の光学機能によって生成されるぼやけた像との相関をよりよくなくすことができる。したがって、本開示によるレンズ要素は、装着者の網膜の前方、及び/又は網膜上、及び/又は網膜の後方のみにより多量の非集束光を生み出し、よりよい近視及び/又は遠視制御効果を有する不快さのより低い第2の像を生み出した。
【0097】
代替的には、少なくとも1つの第1のエリア12及び第2のエリア14の少なくとも1つを通る少なくとも1つの径方向経路(Pth_R(θ))に沿って、上記隣接する第1のエリアと第2のエリアとの間の屈折力の遷移は連続する。
【0098】
本開示では、隣接するエリア間の屈折力遷移は、上記隣接する光学要素を結ぶ経路に沿って、屈折力の累進変動を測定することができる場合、連続する。換言すれば、それらを結ぶ経路に沿って屈折力の「段差」を測定することができない場合、遷移は連続する。段差は、少なくとも0.50Dの屈折力の急激な変動として理解されたい。
【0099】
レンズ要素上で交互になった第1のエリアと第2のエリアとの間の高度遷移は、連続し得る。
【0100】
本開示では、隣接するエリア間の高度遷移は、上記隣接する光学要素を結ぶ経路に沿って、高度の累進変動を測定することができる場合、連続する。換言すれば、それらを結ぶ経路に沿って高度の「段差」を測定することができない場合、高度遷移は連続する。段差は、少なくとも0.10μmの高度zの急激な変動として理解されたい。
【0101】
有利なことに、連続高度遷移は、レンズ要素のソリディティを改善するとともに、その美観性を改善する。実際に、連続高度遷移は、第1及び第2のエリアをレンズ要素上でより目立たなくする。さらに、連続高度遷移により、レンズ要素の製造プロセス及び被覆プロセスは、リソース、時間、及びコストの点で改善する。
【0102】
代替的には、レンズ要素上で交互になった第1のエリアと第2のエリアとの間の高度遷移は不連続であり得る。
【0103】
本開示では、隣接するエリア間の高度遷移は、上記隣接する光学要素を結ぶ経路に沿って、それらを結ぶ経路に沿って高度の「段差」を測定することができる場合、不連続である。段差は、少なくとも0.10μmの高度zの急激な変動として理解されたい。
【0104】
レンズ要素10は、直接肉盛、成形、鋳造、又は射出成形、型押し、成膜、又はフォトリソグラフィのような様々な技術を使用して製造可能である。
【0105】
第1及び第2のエリアを含むレンズ要素10は、光学デバイスに部分的又は全体的に封入し得る。例えば、レンズ要素10は、ウェーハ注入及びオーバーモールディング又はレンズ上への接着を用いて完成し得る。任意選択的に、ウェーハはマイクロ構造を含み得る。代替的には、レンズ要素10は皮膜で覆われ得る。代替的には、レンズ要素10は、フラットホット型押し又はロールツーロールによって型押しされ、次いでレンズ上に積層又は接着されるマイクロ構造フィルムによって覆われ得る。代替的には、レンズ要素10は、マイクロ構造金型からの射出成形によって行われ、次いで積層されたフィルムによって保護され得る。代替的には、レンズ要素10は、マイクロ構造をレンズ上にインプリントし、次いで積層されたフィルムでレンズを覆うことにより行われ得、又はレンズ上に積層されるフィルムのインプリントにより行われ得る。
【0106】
任意選択的に、レンズ要素10の第1のエリアの少なくとも一部は、球形前面を有する。代替的には、レンズ要素10の第1のエリアの少なくとも一部は、非球形前面を有する。代替的には、レンズ要素10の第1のエリアの少なくとも一部は、回転対称非球形前面を有する。
【0107】
本開示は、近視又は遠視等の眼の屈折異常の進行を抑制又は低減するために人の眼の前方に装着されるように意図されたレンズ要素を取得するための金型に更に関する。
【0108】
図7に示すように、レンズ要素10の金型20は、第1の成形要素21、第2の成形要素22を備える。
【0109】
第1の成形要素21は、第1の表面24を有する。第1の表面24は、第1の表面曲率を有する少なくとも2つの第1のエリアを有する。例えば、第1のエリアは、球面表面曲率を有する。第2の表面24は、第2の表面曲率を有する複数の第2のエリアを更に有する。例えば、第2の表面曲率は球面曲率ではなく、例えば非球面曲率である。第1のエリアの第1の表面曲率は、第2のエリアの第2の表面曲率と大きく異なる。
【0110】
好ましくは、第1の成形要素の表面の第1のエリアは、提供されるレンズ要素10の第1のエリア12と相関し、第1の成形要素の表面の第2のエリアは、提供されるレンズ要素10の第2のエリア14と相関する。
【0111】
図7に示すように、レンズ要素10のための金型20は、第2の成形要素22を更に含む。第2の成形要素22は、第2の表面25を有する。
図7では、第2の成形要素22の第2の表面25は示されないが、それは、第2の表面25が第1の成形要素の第1の表面24に面するからである。
【0112】
第1及び第2の成形要素21及び22は、成形キャビティ28を形成する。成形キャビティ28は、第1及び第2のエリアを含む第1の成形要素21の第1の表面24及び第2の成形要素22の第2の表面25によって画定される。
【0113】
代替的には、レンズ要素2のための金型20は、ガスケット23を更に含み得る。ガスケット23は、内面23a及び外面23bを含む環状形を有する。ガスケット23は開口部27を含み得る。そのような場合、成形キャビティは、第1の成形要素21の第1の表面24、第2の成形要素22の第2の表面25、及びガスケット23の内面23aによって画定される。
【0114】
レンズ要素10の金型20の成形キャビティ28は、開口部27を介して成形材料で満たされる。ガスケット23中に示されているが、開口部27は、代替的に第1の成形要素又は第2の成形要素上に配置されてもよい。
【0115】
例えば、成形材料は、ガスケット23の開口部27を通して成形キャビティ内に注入される鋳造材料であってよい。成形キャビティ内の鋳造材料は更にレンズ材料に重合されることによりレンズ要素10を形成する。
【0116】
代替的に、成形材料は熱可塑性材料であってよい。第1の温度で第1の液相にある熱可塑性材料は、開口部27を通して成形キャビティ28内に注入される。冷却工程中に熱可塑性材料は第1の液相からレンズ要素10のレンズ材料に対応する第2の固相に変化する。
【0117】
上記の例示的な実施形態を参照することで当業者には多くの更なる変更及び変形が明らかになるが、これらは例示目的で提供されるにすぎず、添付の請求項によってのみ決定される本開示の範囲を限定することを意図していない。
【0118】
特許請求の範囲において、単語「含む」は他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外するものではない。互いに異なる従属請求項で異なる特徴が引用されていたとしても、これらの特徴の組み合わせが有利に使用できないことを意味しない。請求項におけるいかなる参照符号も本開示の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【国際調査報告】