IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー エナジー ソリューション リミテッドの特許一覧

特表2023-551001電気化学素子用分離膜、これを含む電極組立体及び電気化学素子
<>
  • 特表-電気化学素子用分離膜、これを含む電極組立体及び電気化学素子 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】電気化学素子用分離膜、これを含む電極組立体及び電気化学素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/446 20210101AFI20231129BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20231129BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20231129BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20231129BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20231129BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20231129BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20231129BHJP
   H01M 50/429 20210101ALI20231129BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20231129BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20231129BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20231129BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20231129BHJP
【FI】
H01M50/446
H01M50/417
H01M50/451
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/426
H01M50/42
H01M50/429
H01M50/414
H01M50/489
H01G11/52
H01M50/46
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532410
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 KR2022012836
(87)【国際公開番号】W WO2023027558
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0114280
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ジュン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ウォン-シク・ペ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン-ユン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ミ・ジョン
【テーマコード(参考)】
5E078
5H021
【Fターム(参考)】
5E078AB02
5E078AB06
5E078CA07
5E078CA09
5E078CA10
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE06
5H021EE10
5H021EE11
5H021EE21
5H021EE22
5H021EE23
5H021HH01
5H021HH04
5H021HH06
(57)【要約】
本発明は、電気化学素子用の分離膜であって、
前記分離膜は、多孔性基材及び多孔性基材の少なくとも一面上に形成された多孔性コーティング層を備え、
前記多孔性コーティング層は、バインダー高分子及び無機フィラーを含み、
下記[式1]を満たすことを特徴とする、電気化学素子用分離膜を提供する。
[式1]
20≦[無機フィラーの含有量(重量%)×無機フィラーのBET表面積(m/g)]/[バインダー高分子の含有量(重量%)]≦30
(バインダー高分子の含有量及び無機フィラーの含有量は、多孔性コーティング層の総量100重量%を基準とする。)
本発明に係る電気化学素子用分離膜は、電気化学素子の安全性を確保するととともに、分離膜の多孔性基材と多孔性コーティング層との間の接着力、及び分離膜と電極との接着力を向上させ、耐熱安定性を改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学素子用分離膜であって、
前記分離膜は、多孔性基材及び多孔性基材の少なくとも一面上に形成された多孔性コーティング層を備え、
前記多孔性コーティング層は、バインダー高分子及び無機フィラーを含み、
下記[式1]を満たす、電気化学素子用分離膜。
[式1]
20≦[無機フィラーの含有量(重量%)×無機フィラーのBET表面積(m/g)]/[バインダー高分子の含有量(重量%)]≦30
(バインダー高分子の含有量及び無機フィラーの含有量は、多孔性コーティング層の総量100重量%を基準とする。)
【請求項2】
下記[式2]を満たす、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
[式2]
23≦[無機フィラーの含有量(重量%)×無機フィラーのBET表面積(m/g)]/[バインダー高分子の含有量(重量%)]≦28
(バインダー高分子の含有量及び無機フィラーの含有量は、多孔性コーティング層の総量100重量%を基準とする。)
【請求項3】
前記無機フィラーは、BET表面積の値が10~20m/gである無機フィラーを含む、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項4】
前記無機フィラーの含有量は、多孔性コーティング層の総量100重量%に対して50~80重量%であり、
前記バインダー高分子の含有量は、多孔性コーティング層の総量100重量%に対して20~50重量%である、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項5】
前記バインダー高分子が、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン-トリクロロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリエチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリアリレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシルメチルセルロース、またはこれらのうちの2種以上の混合物である、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項6】
前記分離膜の多孔性基材と多孔性コーティング層との間の接着力(ピール強度)が、200gf/15mm以上である、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項7】
逆極性を有する二つの電極と、前記二つの電極間に介在された分離膜と、を含む電極組立体であって、前記分離膜が、請求項1~6のいずれか一項に記載の分離膜を含む、電極組立体。
【請求項8】
前記電極と分離膜との間の接着力(ラミネート強度)が、100gf/25mm以上である、請求項7に記載の電極組立体。
【請求項9】
請求項7に記載の電極組立体を一つ以上含む、電気化学素子。
【請求項10】
前記電気化学素子は、リチウム二次電池である、請求項9に記載の電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学素子用分離膜、これを含む電極組立体及び電気化学素子に関する。
【0002】
本出願は、2021年8月27日付け出願の韓国特許出願第10-2021-0114280号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、エネルギー貯蔵技術への関心がますます高まっている。携帯電話、ビデオカメラ及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーにまで適用分野が拡大するにつれて、電気化学素子の研究と開発への取り組みがますます具体化されている。電気化学素子は、このような側面で最も注目されている分野であり、その中でも充放電が可能な二次電池、薄い厚さで様々な製品に適用可能な二次電池、また高いエネルギー密度を有するリチウム二次電池が、関心の焦点となっている。最近は、このような二次電池の開発において安全性を確保することに大きな関心が払われている。
【0004】
現在生産されているリチウム二次電池では、正極と負極の短絡を防止するために、ポリオレフィン系高分子樹脂を用いた多孔性基材が分離膜基材として使用されている。しかし、前記多孔性基材は、高温下で収縮したり溶融したりするなど、耐熱性が低くて短絡が発生するという問題がある。そこで、上記問題を解決するために、多孔性基材の少なくとも一面に、無機フィラーとバインダー高分子とが混合されている多孔性コーティング層を形成して耐熱性を向上させる方法が広く用いられている。しかし、多孔性コーティング層の導入に伴い、分離膜の抵抗上昇や電極間の接着性低下などの他の問題が生じ、これらの問題に対する解決が求められている。
【0005】
また、電池のエネルギー密度を高め、分離膜の抵抗を下げるために、薄い分離膜を製造することにより、電池の薄膜化を実現しようとする試みがある。しかし、分離膜の厚さが薄い場合、分離膜と電極との間の接着力が低下し、組立工程性及び電池の安全性が低下するという問題がある。このため、薄くても、電池内で安定した接着力を実現し、耐熱安定性を確保できる分離膜が求められている。
【0006】
多孔性コーティング層を導入して分離膜を製造する方法のうち、湿式相分離法を適用する場合、無機フィラーとバインダー高分子とが混合されているスラリーを多孔性基材にコーティングした後、湿式相分離により製造される。このとき、バインダー高分子が多孔性コーティング層の表面により多く分布するほど、電極との接着力が改善され得る。このためには、多孔性コーティング層内の無機フィラーとバインダー高分子の最適な比率を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、電気化学素子の安全性を確保するとともに、分離膜の多孔性基材と多孔性コーティング層との間の接着力、及び分離膜と電極との接着力を向上させ、耐熱安定性を改善した、電気化学素子用分離膜及びこれを備えた電気化学素子を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的及び利点は、特許請求の範囲に記載された手段または方法、及びその組み合わせによって実現できることが容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、下記の電気化学素子用分離膜及びこれを備えた電気化学素子により前記課題を解決できることを見出した。
【0010】
第1具現例は、
電気化学素子用分離膜であって、
前記分離膜は、多孔性基材及び多孔性基材の少なくとも一面上に形成された多孔性コーティング層を備え、
前記多孔性コーティング層は、バインダー高分子及び無機フィラーを含み、
下記[式1]を満たすことを特徴とする、電気化学素子用分離膜に関する。
[式1]
20≦[無機フィラーの含有量(重量%)×無機フィラーのBET表面積(m/g)]/[バインダー高分子の含有量(重量%)]≦30
(バインダー高分子の含有量及び無機フィラーの含有量は、多孔性コーティング層の総量100重量%を基準とする。)
【0011】
第2具現例は、第1具現例において、
下記[式2]を満たすことを特徴とする、電気化学素子用分離膜に関する。
[式2]
23≦[無機フィラーの含有量(重量%)×無機フィラーのBET表面積(m/g)]/[バインダー高分子の含有量(重量%)]≦28
(バインダー高分子の含有量及び無機フィラーの含有量は、多孔性コーティング層の総量100重量%を基準とする。)
【0012】
第3具現例は、第1具現例または第2具現例において、
前記無機フィラーは、BET表面積の値が10~20m/gである無機フィラーを含むことを特徴とする、電気化学素子用分離膜に関する。
【0013】
第4具現例は、第1具現例~第3具現例のいずれか一具現例において、
前記無機フィラーの含有量は、多孔性コーティング層の総量100重量%に対して50~80重量%であり、
前記バインダー高分子の含有量は、多孔性コーティング層の総量100重量%に対して20~50重量%であることを特徴とする、電気化学素子用分離膜に関する。
【0014】
第5具現例は、第1具現例~第4具現例のいずれか一具現例において、
前記バインダー高分子が、
ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、ポリフッ化ビニリデン-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリブチルメタアクリレート(polybutylmethacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinyl acetate)、ポリエチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリアリレート(polyarylate)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetate propionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)、またはこれらのうちの2種以上の混合物であることを特徴とする、電気化学素子用分離膜に関する。
【0015】
第6具現例は、第1具現例~第5具現例のいずれか一具現例において、
前記分離膜の多孔性基材と多孔性コーティング層との間の接着力(ピール強度)が、200gf/15mm以上であることを特徴とする、電気化学素子用分離膜に関する。
【0016】
第7具現例は、逆極性を有する二つの電極と、前記二つの電極間に介在された分離膜と、を含む電極組立体であって、前記分離膜が、第1具現例~第6具現例のいずれか一具現例の分離膜を含むことを特徴とする、電極組立体に関する。
【0017】
第8具現例は、第7具現例において、
前記電極と分離膜との間の接着力(ラミネート強度)が、100gf/25mm以上であることを特徴とする、電極組立体に関する。
【0018】
第9具現例は、第7具現例または第8具現例に記載の電極組立体を一つ以上含むことを特徴とする、電気化学素子に関する。
【0019】
第10具現例は、第9具現例において、
前記電気化学素子は、リチウム二次電池であることを特徴とする、電気化学素子に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る電気化学素子用分離膜は、無機フィラーのBET(Brunauer、Emmett、Teller)表面積及び無機フィラーの含有量を考慮して決定される所定の含有量範囲のバインダー高分子を含む。これにより、多孔性コーティング層内において、無機フィラーの表面を覆うバインダー高分子と、多孔性コーティング層の表面に位置するバインダー高分子とが適切に分布するように調整することができる。
【0021】
したがって、分離膜の多孔性基材と多孔性コーティング層との間の接着力、及び分離膜と電極との間の接着力が向上し、耐熱安定性が改善されるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本明細書に添付される図面は、本発明の好適な実施例を例示するものであり、前述した発明の内容とともに本発明の技術思想をさらによく理解させる役割を果たすものであるので、本発明は、そのような図面に記載された事項にのみ限定されて解釈されるものではない。一方、本明細書に記載された図面における要素の形状、大きさ、縮尺または比率などは、より明確な説明を強調するために誇張され得る。
【0023】
図1】実施例1の分離膜の断面のSEMイメージである。具体的には、実施例1の分離膜が有する多孔性コーティング層の表面の拡大断面/分離膜の断面/多孔性基材(ポリエチレン素材の高分子フィルム)の拡大断面のSEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は、自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則を踏まえて、本発明の技術的な思想に見合う意味と概念として解釈されるべきである。
【0025】
本明細書の全般にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」または「備える」としたとき、これは、特に断りのない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含んでいてもよいことを意味する。
【0026】
また、本明細書の全般にわたって使用される用語「略」または「約」は、言及された意味に固有な製造及び物質の許容誤差が提示されるとき、その数値でまたはその数値に近い意味で用いられ、本発明の理解を助けるために正確な数値や絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防ぐために用いられる。
【0027】
本明細書の全般にわたって、「Aおよび/またはB」の記載は「AもしくはB、またはその両方」を意味する
【0028】
本発明は、電気化学素子用分離膜、これを含む電極組立体及び電気化学素子に関する。
【0029】
一般に、電気化学素子の薄膜化を達成するために、薄い厚さを有する多孔性コーティング層を含む場合、多孔性コーティング層と多孔性基材との接着力(ピール強度)及び電極と分離膜との接着力(ラミネート強度)が顕著に低下するという問題が現れる。また、多孔性基材の耐熱性が低いため、電気化学素子の安全性を確保する上で有利ではないという問題がある。
【0030】
そこで、本発明者らは、これらの問題に着目し、十分な接着力(ピール強度及びラミネート強度)と耐熱安定性に優れた効果を発揮し、安全性を確保できる電気化学素子用分離膜の提供を図る。
【0031】
以下、本発明の電気化学素子用分離膜について詳細に説明する。
【0032】
本発明に係る電気化学素子用分離膜は、多孔性基材及び前記多孔性基材の少なくとも一面上に形成された多孔性コーティング層を備え、前記多孔性コーティング層は、無機フィラー及びバインダー高分子を含み、下記[式1]を満たすことを特徴とする。
【0033】
[式1]
20≦[無機フィラーの含有量(重量%)×無機フィラーのBET表面積(m/g)]/[バインダー高分子の含有量(重量%)]≦30
(バインダー高分子の含有量及び無機フィラーの含有量は、多孔性コーティング層の総量100重量%を基準とする。)
【0034】
具体的に、本発明の分離膜の多孔性コーティング層は、無機フィラーのBET表面積及び無機フィラーの含有量を考慮して決定される所定の含有量範囲でバインダー高分子を含む。その結果、多孔性コーティング層内において、無機フィラーの表面を覆うバインダー高分子と、多孔性コーティング層の表面に位置するバインダー高分子とが適量分布し、接着力(ピール強度及びラミネート強度)及び耐熱安定性の面でバランスよく優れた効果を発揮できる。
【0035】
特に、本発明の分離膜は、多孔性コーティング層内の無機フィラーとバインダー高分子の含有量比が本発明と同一または同等の分離膜と対比しても、電極と分離膜との間の接着力、多孔性基材と多孔性コーティング層との間の接着力、及び耐熱安定性の面で優れた効果を発揮できる。
【0036】
一方、湿式相分離法で製造される分離膜の場合、多孔性コーティング層内にバインダー高分子と無機フィラーが混在しており、また無機フィラー間の結着力を確保するためにバインダーが使われる。このため、無機フィラーとバインダー高分子の結着に必要なバインダー高分子の量と、電極との接着力確保のために多孔性コーティング層の表面に位置するバインダー高分子の量とを適切に調整することが重要である。本発明によれば、湿式相分離法で製造される分離膜の多孔性コーティング層内のバインダー高分子の量を適切に調節できるので、湿式相分離法で製造される分離膜においても所望の効果を発揮できるという利点がある。
【0037】
本発明において、電気化学素子は、電気化学的反応により化学的エネルギーを電気的エネルギーに変換する装置であり、電気化学反応を行う全ての素子を含み、具体例としては、全ての種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはスーパーキャパシタ素子などのキャパシタ(capacitor)などが挙げられる。特に、前記二次電池の中でも、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池またはリチウムイオンポリマー二次電池などを含むリチウム二次電池が好ましい。
【0038】
本発明において、分離膜は、多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも一面上に形成された多孔性コーティング層とを備える。
【0039】
前記多孔性基材は、負極と正極との間の電気的接触を遮断しながらイオンを通過させる多孔性イオン伝導性バリア(porous ion-conducting barrier)として機能し内部に複数の気孔が形成された基材を指すことができる。前記気孔は、基材の一方の面から他方の面に気体または液体が通過できるように相互に連結されている。このような多孔性基材としては、シャットダウン(shut down)機能を付与する観点から、熱可塑性樹脂を含む多孔性高分子フィルムを用いることができる。ここで、シャットダウン機能とは、電池温度が高くなった場合に、熱可塑性樹脂が溶解して多孔質基材の孔を塞いでイオンの移動を遮断し、電池の熱暴走を防止する機能をいう。前記熱可塑性樹脂の非限定的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン樹脂が挙げられる。一方、シャットダウン機能の観点から、前記熱可塑性樹脂の融点は約200℃未満であることが好ましい。
【0040】
前記多孔性基材の厚さは特に限定されないが、具体的には約1~100μm、より具体的には約5~50μm、または約5~30μmである。多孔性基材に存在する気孔率も特に限定されないが、約10~95%、または約35~65%であることが好ましい。
【0041】
前記多孔性コーティング層は、前記多孔性基材の少なくとも一面上に形成されるもので、無機フィラー及びバインダー高分子を含む。
【0042】
本発明において、前記多孔性コーティング層は、前記無機フィラーが充填されて互いに接触した状態で、前記バインダー高分子によって互いに結着され、その結果、無機フィラーの間にインタースティシャルボリューム(interstitial volumes)が形成され得る。前記無機フィラー間のインタースティシャルボリュームは、空き空間であって気孔が形成される構造を有していてもよい。
【0043】
本発明において、前記多孔性コーティング層は、多孔性基材の一面または両面に形成されてもよい。前記多孔性コーティング層の総厚さは特に限定されないが、具体的には約1~50μm、より具体的には約1~20μm、約1~10μm、または約1~5μmであってもよい。特に、本発明の分離膜は、薄い厚さの多孔性コーティング層を含んでいても、電極と分離膜との間の接着力が低下するという問題が生じないという利点を有する。
【0044】
本発明において、無機フィラーのBET表面積、無機フィラーの含有量及びバインダー高分子の含有量は、下記[式1]から計算される20~30の値を満たす。
【0045】
また、本発明の具体的な実施態様において、下記[式1]から計算される値は、23~28または23~27を満たすことができる。
【0046】
[式1]
[無機フィラーの含有量(重量%)×無機フィラーのBET表面積(m/g)]/[バインダー高分子の含有量(重量%)](バインダー高分子の含有量及び無機フィラーの含有量は、多孔性コーティング層の総量100重量%を基準とする。)
【0047】
具体的に、前記多孔性コーティング層は、無機フィラーのBET表面積及び無機フィラーの含有量を考慮して決定される所定の含有量範囲のバインダー高分子を含む。
【0048】
これにより、無機フィラーとバインダー高分子とを十分に結着できるように、無機フィラーの表面を覆うバインダー高分子の量を最適化することができる。また、電極と分離膜との間の接着力を十分に確保できるように、多孔性コーティング層の表面に位置するバインダー高分子の量を最適化することができる。
【0049】
したがって、分離膜の多孔性基材と多孔性コーティング層との間の接着力が向上するだけでなく、分離膜と電極との接着力も向上することができる。
【0050】
本発明において、前記無機フィラーとしては、前記[式1]の値を満足できるBET表面積を有する無機フィラーを使用してもよい。例えば、前記無機フィラーは、BET表面積の値が10~20m/gまたは13~18m/gである無機フィラーを含んでいてもよい。多孔性コーティング層スラリーを製造する観点から、前記範囲のBET表面積を有する無機フィラーを含むことにより、一般的に多孔性コーティング層に使用されていたBET表面積値が6m/gであるAl無機フィラーよりも少ない分散剤を使用することができ、また、分散工程を最小化することができるという利点がある。無機フィラーのBET表面積が大きすぎる場合、バインダー高分子によって覆われる表面積が増加するため、電極と分離膜との間の接着力(ラミネート強度)を確保するために使用されるバインダー高分子が相対的に減少することがある。一方、無機フィラーのBET表面積が小さすぎる場合、多孔性コーティング層の表面部に近く分布するバインダー高分子の量が減少するため、多孔性基材と多孔性コーティング層との間の接着力(ピール強度)を確保することが困難になるおそれがあり、このため、電極と分離膜との間の接着力(ラミネート強度)をも確保することが困難になるおそれがある。
【0051】
但し、無機フィラーのBET表面積は、必ずしも前記範囲を満たすものに限定されるものではなく、前記[式1]の値を満たしつつ、本発明の目的を達成できる範囲で適切なBET表面積を有する無機フィラーを使用することができる。
【0052】
無機フィラーの具体的な種類は、電気化学的に安定であり、適用される電気化学素子の動作電圧範囲(例えば、Li/Li+基準で0~5V)において酸化及び/又は還元反応が起きないものであれば特に限定されない。例えば、前記無機フィラーとしては、AlOOH、Al(OH)、ZrO、BaTiO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT)、Pb(MgNb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、ハフニア(HfO)、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO、Y、Al、TiO、SiCまたはこれらの混合物などがある。これらに加えて、リチウムホスフェート(LiPO)、リチウムチタンホスフェート(LiTi(PO、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LiAlTi(PO、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、(LiAlTiP)系列ガラス(glass)(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LiLaTiO、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(LiGe、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムナイトライド(Li、0<x<4、0<y<2)、SiS系列ガラス(LiSi、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、P系列ガラス(Li、0<x<3、0<y<3、0<z<7)またはこれらのうち2種以上の無機フィラーをさらに含んでいてもよい。
【0053】
例えば、本発明において、多孔性コーティング層が少なくとも2種の無機フィラーとして第1無機フィラー及び第2無機フィラーを含む場合、本発明に係る電気化学素子用分離膜は、下記の[式2]を満たすものであってもよい。
【0054】
[式2]
[(第1無機フィラーの含有量(重量%)×第1無機フィラーのBET表面積(m/g))+(第2無機フィラーの含有量(重量%)×第2無機フィラーのBET表面積(m/g))]/[バインダー高分子の含有量(重量%)]
【0055】
本発明において、前記バインダー高分子は、無機フィラー間の結着力及び多孔性コーティング層と電極との間の結着力を提供できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、バインダー高分子は、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoro propylene、PVDF-co-HFP)、ポリフッ化ビニリデン-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloro ethylene)、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-chlorotrifluoro ethylene)、ポリ(メチル)メタアクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリn-プロピル(メタ)アクリレート、ポリイソプロピル(メタ)アクリレート、ポリn-ブチル(メタ)アクリレート、ポリt-ブチル(メタ)アクリレート、ポリsec-ブチル(メタ)アクリレート、ポリペンチル(メタ)アクリレート、ポリ2-エチルブチルポリ(メタ)アクリレート、ポリ2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリn-オクチル(メタ)アクリレート、ポリイソオクチル(メタ)アクリレート、ポリイソノニル(メタ)アクリレート、ポリラウリル(メタ)アクリレート、ポリテトラデシル(メタ)アクリレート、ポリN-ビニルピロリジノン、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルアセテート(polyvinyl acetate)、ポリエチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetate propionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylvinethylvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体(acrylonitrile-styrene-butadiene copolymer)、及びポリイミド(polyimide)からなる群より選択される1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0056】
具体的に、本発明において、前記バインダー高分子は、非分散剤バインダー高分子及び分散剤バインダー高分子を含んでいてもよい。
【0057】
前記分散剤バインダー高分子は、高分子の主鎖または側鎖に少なくとも一つ以上の分散寄与官能基を有する高分子であり、前記分散寄与官能基としては、OH基、CN基などが挙げられる。このような分散剤バインダー高分子の例には、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetate propionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)などがある。非分散剤バインダー高分子は、前記バインダー高分子のうち分散剤バインダー高分子を除いたものが挙げられる。
【0058】
本発明の一具現例において、前記バインダー高分子としては、分散剤バインダー高分子と非分散剤バインダー高分子とを同時に使用してもよい。前記バインダー高分子として分散剤バインダー高分子と非分散剤バインダー高分子とを同時に使用する場合に、分散剤バインダー高分子と非分散剤バインダー高分子との重量比は1:5~1:20、または1:10~1:15であってもよい。このような重量比を満たす場合に、多孔性コーティング層内の分散性を安定させつつ、コーティング後の電極接着力を確保することができる。
【0059】
本発明において、前記多孔性コーティング層内の無機フィラーの含有量は、多孔性コーティング層の総量100重量%に対して50~80重量%、60~80重量%または60~70重量%であってもよい。また、前記多孔性コーティング層内のバインダー高分子の含有量は、多孔性コーティング層の総量100重量%に対して20~50重量%、30~50重量%または35~50重量%であってもよい。前記範囲の重量比で無機フィラーとバインダー高分子とを含むことにより、分離膜の耐熱性を向上させることができ、多孔性基材と多孔性コーティング層との間の接着力、及び分離膜と電極との間の接着力を向上させることができる。
【0060】
本発明において、前記分離膜の多孔性基材と多孔性コーティング層との間の接着力(ピール強度)は、200gf/15mm以上であってもよい。または、前記多孔性基材と多孔性コーティング層との間の接着力(ピール強度)は、210gf/15mm以上または220gf/15mm以上であってもよい。前記数値範囲を満たす場合、電極との組立工程時に多孔性基材と多孔性コーティング層との脱離現象を防止しつつ、分離膜の表面に位置する多孔性コーティング層と電極との接着力を最大にすることができるという利点がある。
【0061】
本発明で言うピール強度とは、分離膜を15mm×100mmの大きさに裁断して準備した後、ガラス板上に両面接着テープを貼り付け、分離膜の多孔性コーティング層の表面を接着テープと接着させ、接着された分離膜の末端部をUTM装置に装着した後、測定速度300mm/分で180°の力を加え、多孔性コーティング層を多孔性基材から引き剥がすのに必要な力を意味する。
【0062】
一方、本発明において、分離膜は、多孔性コーティング層の成分として、前述したバインダー高分子及び無機フィラー以外に、必要に応じてその他の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0063】
本発明の一実施形態に係る分離膜は、無機フィラー及びバインダー高分子を含む多孔性コーティング層形成用組成物を準備した後、前記組成物を多孔性基材の少なくとも一面上に塗布し、これを乾燥することによって製造され得る。
【0064】
例えば、まず、バインダー高分子を溶媒に溶解させた高分子溶液を準備した後、前記高分子溶液に無機フィラーを加えて混合して、多孔性コーティング層形成用スラリーを準備する。次に、これを多孔性基材上に塗布し、相対湿度約40%~80%の条件下で所定時間静置してバインダー高分子を固化(乾燥)させる。このとき、バインダー高分子の相分離が誘導される。相分離の過程で、溶媒は多孔性コーティング層の表面部に移動し、溶媒の移動に伴ってバインダー高分子が多孔性コーティング層の表面部に移動することで、多孔性コーティング層の表面部におけるバインダー高分子の含有量が高くなる。多孔性コーティング層の表面部下部には、無機フィラー間のインタースティシャルボリュームによる気孔が形成され、多孔性コーティング層が多孔性特性を有するようになる。本発明の一実施態様において、バインダー高分子の含有量は、前記多孔性コーティング層の表面部に向かって増加してもよいが、多孔性コーティング層の厚さ方向に無機フィラーとバインダー高分子が全体として混合され、多孔性コーティング層の下部及び上部まで無機フィラー粒子間のインタースティシャルボリュームによる気孔構造が維持される。これにより、多孔性コーティング層の抵抗が低いレベルに維持され得る。
【0065】
一方、本発明の一実施態様において、前記多孔性コーティング層中の溶媒を除く固形分の濃度は、約10wt%~80wt%の範囲に制御されることが好ましい。また、このときに使用される溶媒の非限定的な例としては、アセトン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、及び水から選択される1種の化合物または2種以上の混合物が挙げられる。
【0066】
前記多孔性コーティング層形成用組成物を前記多孔性基材にコーティングする方法は、特に限定されないが、スロットコーティング法やディップコーティング法を用いることが好ましい。スロットコーティングは、スロットダイを通じて供給された組成物が基材の全面に塗布される方法であり、定量ポンプから供給される流量によってコーティング層の厚さを調整することができる。また、ディップコーティングは、組成物の入ったタンクに基材を浸漬してコーティングする方法であり、組成物の濃度及び組成物タンクから基材を取り出す速度によってコーティング層の厚さを調整することができ、より正確なコーティングの厚さ制御のために、浸漬後、マイヤーバーなどにより後計量することができる。
【0067】
本発明に係る分離膜の厚さは特に限定されないが、約5~50μm以下、好ましくは約5~20μm、または約5~15の範囲であってもよい。
【0068】
本発明に係る電極組立体は、逆極性を有する二つの電極、及び前記二つの電極間に介在される分離膜を含んでいてもよく、前記分離膜は、前述した本発明に係る分離膜であってもよい。
【0069】
本発明の電極組立体において、前記電極と分離膜との間の接着力(ラミネート強度)は、100gf/25mm以上であってもよい。または、前記電極と分離膜との間の接着力(ラミネート強度)は、110gf/25mm以上または120gf/15mm以上であってもよい。前記数値範囲のラミネート強度を満たす場合、電極との組立工程時に温度及び圧力条件の緩和による多孔性基材の変形を防止することができ、また、電解液の注液時に分離膜と接着された電極との間の折れ現象を緩和することができるなどの利点がある。
【0070】
本発明で言うラミネート強度とは、電極と、電極のいずれか一つに対向する分離膜の最外郭面(多孔性コーティング層)との間の接着力を意味する。また、本発明で言うラミネート強度は、25mm×70mmの大きさの負極と25mm×70mmの大きさの分離膜を製造して準備した後、準備した分離膜と電極を互いに重ね合わせて100μmのPETフィルムの間に挟み、その後、平板プレスを使用して60℃の6.5MPaの圧力で1秒間加熱して接着し、接着された分離膜と電極の末端部をUTM装置に装着した後、測定速度300mm/分で180°の力を加えて、電極と電極に対向する分離膜の最外郭面(多孔質コーティング層)とを引き剥がすのに必要な力を指す。
【0071】
本発明の分離膜と共に適用される逆極性を有する二つの電極は、正極及び/又は負極であってもよい。前記電極は、当業界に周知の方法によって電極活物質が電極集電体に結着された形態に製造することができる。
【0072】
前記電極活物質のうち正極活物質の非限定的な例としては、従来のリチウム二次電池の正極に使用できる通常の正極活物質が使用可能であり、特にリチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物、またはこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物などが望ましい。
【0073】
負極活物質の非限定的な例としては、従来のリチウム二次電池の負極に使用できる通常の負極活物質が使用可能であり、特にリチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コーク(petroleum coke)、活性化炭素(activated carbon)、グラファイト(graphite)、またはその他の炭素類などのようなリチウム吸着物質などが望ましい。
【0074】
正極集電体の非限定的な例としては、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組み合わせによって製造されるホイルなどがあり、負極集電体の非限定的な例としては、銅、金、ニッケルまたは銅合金、もしくはこれらの組み合わせによって製造されるホイルなどがある。
【0075】
また、本発明に係る電気化学素子は、前記本発明に係る電極組立体を一つ以上含んでいてもよい。具体的には、電解液が注入された電極組立体を含んでいてもよい。
【0076】
本発明の電気化学素子で使用できる電解液は、Aのような構造の塩を含んでいてもよい。例えば、Aは、Li、Na、Kのようなアルカリ金属陽イオン、またはこれらの組み合わせからなるイオンを含み、Bは、PF 、BF 、Cl、Br、I、ClO 、AsF 、CHCO 、CFSO 、N(CFSO 、C(CFSO-のような陰イオン、またはこれらの組み合わせからなるイオンを含む塩が、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ガンマブチロラクトン(γ-ブチロラクトン)、またはこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解または解離されたものを含んでいてもよいが、これに限定されるものではない。
【0077】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性に応じて、電池製造工程の中で適切なステップで行われてもよい。すなわち、電池組立ての前または電池組立ての最終ステップなどに適用されてもよい。
【0078】
また、本発明は、電極組立体を含む電池を単位電池として含む電池モジュール、前記電池モジュールを含む電池パック、及び前記電池パックを電源として含むデバイスを提供することができる。前記デバイスの具体的な例としては、電力の供給を受けて動作するパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む自動車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0079】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は、様々な他の形態に変形可能であり、本発明の範囲が下記で詳述する実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0080】
実施例
下記の方法により各実施例及び比較例の分離膜を製造した。
【0081】
実施例1
多孔性コーティング層を含む分離膜の製造
アセトンにバインダー高分子としてポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(VDF:HFP=80:20、Solvay社、Solef 21510)、ポリフッ化ビニリデン-トリクロロエチレン(VDF:CTFE=80:20、Daikin社、VT-475)、及びシアノエチルポリビニルアルコール(Cyanoethyl polyvinyl alcohol)を投入し、無機フィラーとして平均直径250nmのAlOOH粉末を投入して多孔性コーティング層形成用スラリーを準備した。
【0082】
各スラリー中の溶媒を除く固形分(バインダー高分子及び無機フィラー)の濃度は18wt%であり、総バインダー高分子と無機フィラーの重量比は39:61であった。前記スラリーを、ペインターシェーカーを用いて約2時間混合した。前記スラリーを、ポリエチレン素材の高分子フィルム(厚さ約9μm、気孔率約40~45%)の両面にディープコーティング法で塗布し、相対湿度45%下で乾燥させて分離膜を得た。前記乾燥は、常温で行われた。乾燥時間は約10分間維持した。得られた各分離膜の多孔性コーティング層の厚さは両面基準で約3μmであった。実施例1で製造された分離膜のSEMイメージを図1に示した。図1に、多孔性コーティング層の表面の拡大断面/実施例1の分離膜の断面/多孔性基材(ポリエチレン素材の高分子フィルム)の拡大断面を順に示した。
【0083】
実施例2~3および比較例1~8
実施例1と同様の方法で分離膜を製造したが、下記表1に示すように組成を変更して実施例2~3及び比較例1~8の分離膜を製造した。このとき、比較例2に含まれる無機フィラーAlのBET表面積は6.4m/gであり、AlOOHのBET表面積は16.1m/gであるので、比較例2のBET表面積は(6.4+16.1)/2と計算した。
【0084】
【表1】
【0085】
分離膜の物性評価
前記実施例および比較例で製造された分離膜の物性評価結果を下記の表2に示した。
【0086】
【表2】
【0087】
表2から分かるように、実施例1~3と比較例1~8とを比較すると、実施例1~3が比較例1~8に比べて接着力に優れていることが確認できた。また、実施例1及び2が比較例1~4に比べて耐熱安定性に優れていることが確認できた。
【0088】
特に、比較例3は、無機フィラーのBET表面積を除いては、実施例1及び2と同等の含有量のバインダー高分子及び無機フィラーを含んでいた。但し、比較例3に含まれる無機フィラーのBET表面積が実施例1及び2よりも小さいため、バインダー高分子が覆う無機物表面積が減少し、そこで、接着力(ピール強度及びラミネート強度)は向上し得るが、無機フィラー間のパッキング(packing)が実施例1及び2に比べて劣るため、耐熱特性が低下し、耐熱安定性の面で劣る効果を示した。
【0089】
具体的に、各物性評価は、以下のようにして各物性評価を行った。
【0090】
(1)分離膜の多孔性基材と多孔性コーティング層との間の接着力(ピール強度、gf/15mm)の評価
【0091】
実施例1~3及び比較例1~8で製造された分離膜を15mm×100mmの大きさに裁断して準備した。
【0092】
ガラス板の上に両面接着テープを貼り付け、準備された分離膜の多孔性コーティング層の表面を接着テープと接着させた。その後、接着された分離膜の末端部をUTM装置(インストロン社)に装着し、その次、測定速度300mm/分で180°の力を加え、多孔性コーティング層を多孔性基材から引き剥がすのに必要な力を測定した。
【0093】
(2)電極-分離膜の接着力(ラミネート強度、gf/25mm)評価
活物質[天然黒鉛および人造黒鉛(重量比5:5)]、導電材[super P]、バインダー[ポリフッ化ビニリデン(PVdF)]を重量比92:2:6で混合し、得られた混合物を水に分散させた後、銅ホイルにコーティングして負極を製造し、これを25mm×70mmの大きさに裁断して準備した。
【0094】
実施例1~3及び比較例1~8で製造された分離膜を25mm×70mmの大きさに裁断して準備した。
【0095】
準備された分離膜と負極を互いに重ね合わせ、厚さ100μmのPETフィルムの間に挟み、平板プレスで接着させた。このとき、平板プレス機は60℃、6.5MPaの圧力条件下で1秒間加熱した。
【0096】
接着された分離膜と負極の末端部をUTM装置(インストロン社)に装着した後、測定速度300mm/分で180°の力を加え、負極と負極に接着された分離膜とを分離するのに必要な力を測定した。
【0097】
(3)150℃熱収縮特性の評価
実施例1~2及び比較例1~4で製造された分離膜を、それぞれ50mm×50mmの大きさに裁断して準備した。準備された分離膜を、150℃に設定した対流式オーブン(convection oven)に30分間放置した。30分後、最初の長さ(50mm×50mm)と比較した分離膜の長さの減少を%の単位で計算し、熱収縮の程度を記載した。
【0098】
(4)分離膜のホットチップ(Hot tip)の損失長さの評価
実施例1~2及び比較例1~4で製造された分離膜を、それぞれ50mm×50mmの大きさに裁断して準備した。準備された分離膜を、UTM装置を用いてホットチップテストを行った。ホットチップテストに使用されたチップの直径は1パイであり、このとき、チップの温度450℃、測定速度1mm/sで5秒間停止して測定した。消失長さは、ホットチップテスト後に、破断した分離膜孔の直径を定規で測定することで得られた。
図1
【国際調査報告】