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特表2023-551017滑り軸受パッド及び滑り軸受、並びに滑り軸受を装備した風力タービン用ナセル
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  • 特表-滑り軸受パッド及び滑り軸受、並びに滑り軸受を装備した風力タービン用ナセル 図1
  • 特表-滑り軸受パッド及び滑り軸受、並びに滑り軸受を装備した風力タービン用ナセル 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】滑り軸受パッド及び滑り軸受、並びに滑り軸受を装備した風力タービン用ナセル
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/10 20060101AFI20231129BHJP
   F03D 80/70 20160101ALI20231129BHJP
   F16C 17/10 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
F16C33/10 Z
F03D80/70
F16C17/10 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532526
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 AT2021060452
(87)【国際公開番号】W WO2022109649
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】A51044/2020
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(31)【優先権主張番号】A50259/2021
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(31)【優先権主張番号】A50432/2021
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】315015564
【氏名又は名称】ミバ・グライトラーガー・オーストリア・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ラウビヒラー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンネス ヘルツル
【テーマコード(参考)】
3H178
3J011
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB31
3H178BB35
3H178BB73
3H178BB75
3H178DD50X
3J011AA07
3J011BA13
3J011CA01
3J011JA02
3J011KA04
3J011LA04
3J011MA05
3J011RA03
(57)【要約】
本発明は、滑り軸受(9)のための滑り軸受パッド(18)に関し、滑り軸受パッド(18)は軸受面(20)を有する。軸受面(20)の領域で滑り軸受パッド(18)の第1周面(28)に潤滑油輸送溝(29)が形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受面(20)を有する、滑り軸受(9)のための滑り軸受パッド(18)であって、
前記軸受面(20)の領域で前記滑り軸受パッド(18)の第1周面(28)に潤滑油輸送溝(29)が形成されていることを特徴とする滑り軸受パッド(18)。
【請求項2】
前記潤滑油輸送溝(29)は、半径方向溝深さ(33)と周方向溝深さ(34)とを有し、該周方向溝深さ(34)は、前記半径方向溝深さ(33)の10%~300%、特に20%~100%、好ましくは60%~80%であることを特徴とする、請求項1に記載の滑り軸受パッド(18)。
【請求項3】
半径方向溝底部(35)は溝断面で見て直線として形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の滑り軸受パッド(18)。
【請求項4】
周方向溝底部(36)は溝断面で見て直線として形成されていることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の滑り軸受パッド(18)。
【請求項5】
前記滑り軸受パッド(18)は、内側リング要素(13)と外側リング要素(14)との間に配置するために用いられ、前記滑り軸受パッド(18)は動作状態で前記内側リング要素(13)と固く連結されて、前記内側リング要素(13)と共に前記外側リング要素(14)に対して相対的に回転するように構成されており、前記軸受面(20)は球冠部(49)において球冠半径(50)を持つ球冠の基本形状を有し、前記滑り軸受パッド(18)の前記軸受面(20)は前記外側リング要素(14)の相手面(21)に当接するように形成されており、前記潤滑油輸送溝(29)は前記滑り軸受パッド(18)の軸方向に延びていて、前記潤滑油輸送溝(29)は、前記滑り軸受パッド(18)の第1端面(37)から第1の距離(39)を置いて配置された第1溝端部(38)と、前記滑り軸受パッド(18)の第2端面(40)から第2の距離(42)を置いて配置された第2溝端部(41)を有しており、前記滑り軸受パッド(18)の前記第1溝端部(38)と前記第1端面(37)との間には前記軸受面(20)に対する第1凹部(43)が形成され、前記滑り軸受パッド(18)の前記第2溝端部(41)と前記第2端面(40)との間には前記軸受面(20)に対する第2凹部(44)が形成されていることを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の滑り軸受パッド(18)。
【請求項6】
前記潤滑油輸送溝(29)は、前記滑り軸受パッド(18)の第1端面(37)から第1の距離(39)を置いて配置された第1溝端部(38)と、前記滑り軸受パッド(18)の第2端面(40)から第2の距離(42)を置いて配置された第2溝端部(41)を有することを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の滑り軸受パッド(18)。
【請求項7】
前記滑り軸受パッド(18)の前記第1溝端部(38)と前記第1端面(37)との間には前記軸受面(20)に対する第1凹部(43)が形成され、及び前記滑り軸受パッド(18)の前記第2溝端部(41)と前記第2端面(40)との間には前記軸受面(20)に対する第2凹部(44)が形成されていることを特徴とする、請求項6に記載の滑り軸受パッド(18)。
【請求項8】
前記潤滑油輸送溝(29)は、前記第1溝端部(38)において、半径方向溝底部(35)に向かって第1の移行半径(45)を有し、及び前記潤滑油輸送溝(29)は、前記第2溝端部(41)において、半径方向溝底部(35)に向かって第2の移行半径(46)を有することを特徴とする、請求項6又は7に記載の滑り軸受パッド(18)。
【請求項9】
個々の前記滑り軸受パッド(18)の前記軸受面(20)は、球冠部(49)において球冠半径(50)を持つ球冠の基本形状を有することを特徴とする、請求項1~8の何れか一項に記載の滑り軸受パッド(18)。
【請求項10】
周方向溝深さ(34)は、前記軸受面(20)の軸受面円弧長さ(47)の0.5%~20%、特に1.5%~10%、好ましくは3%~7%であることを特徴とする、請求項2~9の何れか一項に記載の滑り軸受パッド(18)。
【請求項11】
前記潤滑油輸送溝(29)と前記軸受面(20)との間に潤滑油吸入口(51)が形成されていることを特徴とする、請求項1~10の何れか一項に記載の滑り軸受パッド(18)。
【請求項12】
滑り軸受(9)であって、
内側リング要素(13)と、
外側リング要素(14)と、
前記内側リング要素(13)と前記外側リング要素(14)との間に配置された少なくとも1つの滑り軸受要素(15)と、を有し、該滑り軸受要素(15)は少なくとも2つの滑り軸受パッド(18)を含み、
該滑り軸受パッド(18)の軸受面(20)と、前記外側リング要素(14)の相手面(21)又は前記内側リング要素(13)の相手面(21)とは、互いに当接している、滑り軸受(9)において、
前記滑り軸受パッド(18)は請求項1~10の何れか一項に従って形成されていることを特徴とする滑り軸受(9)。
【請求項13】
前記外側リング要素(14)の外周部(48)に、周方向に延びる潤滑油分配溝(30)が形成され、該潤滑油分配溝(30)を前記相手面(21)に流体接続する潤滑油孔(31)が形成され、該潤滑油孔(31)は前記相手面(21)の領域でオイルポケット(32)に開口していることを特徴とする請求項12に記載の滑り軸受(9)。
【請求項14】
風力タービン(1)用のナセル(2)であって、
ナセルハウジング(4)と、
ロータシャフト(16)と、
該ロータシャフト(16)に配置されたロータハブ(6)と、
ロータシャフト(16)をナセルハウジング(4)に支持するためのロータ軸受(8)と、を有するナセル(2)において、
前記ロータ軸受(8)は請求項1~10の何れか一項に記載の滑り軸受パッド(18)を有することを特徴とする、風力タービン(1)用のナセル(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り軸受パッド及び滑り軸受、並びに滑り軸受を装備した風力タービン用ナセルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1より、風力タービンのロータハブを支持するための軸受要素が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/127510(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は改良された滑り軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、特許請求の範囲に記載された装置によって解決される。
【0006】
本発明によれば、滑り軸受のために滑り軸受パッドが形成され、滑り軸受パッドは軸受面を有する。軸受面の領域で滑り軸受パッドの第1周面に潤滑油輸送溝が形成されている。このような潤滑油輸送溝は、この潤滑油輸送溝によって潤滑油は潤滑油容器から上方に輸送することができ、それによりリング要素の相手面にわたって分配することができるという利点を有する。そうすることにより滑り軸受内で改善された潤滑効果を達成して、すべり軸受の寿命を延ばすことができる。更に、この方策により潤滑油ポンプを不要とすることができる。
【0007】
更に、潤滑油輸送溝は半径方向溝深さと周方向の溝深さを有し、周方向溝深さは、半径方向溝深さの10%~300%、特に20%~100%、好ましくは60%~80%である。特に、このように寸法設定された潤滑油輸送溝は、驚くほど潤滑油の輸送によく適している。
【0008】
更に、半径方向溝深さは1mm~30mm、特に3mm~18mm、好ましくは6mm~13mmであることが考えられる。
【0009】
更に、周方向の溝深さは1mm~30mm、特に2mm~18mm、好ましくは4mm~8mmであるようにすることができる。
【0010】
更に、半径方向溝底部は、溝断面で見て直線として形成されているようにすることができる。そのような断面図は、図7に示されている。特に、このような断面図は、円筒セグメント又は円錐セグメントとして形成されているようにすることができる。このことは、このように形成された潤滑油輸送溝は容易に製造できるという利点を有する。特に、このように形成された溝は、ミーリングカッターによって製造することができる。
【0011】
更に、周方向溝底部は、溝断面で見て直線として形成されているようにすることができる。このことは、このように形成された潤滑油輸送溝は容易に製造できるという利点を有する。特に、このように形成された溝は、ミーリングカッターによって製造することができる。
【0012】
潤滑油輸送溝が、滑り軸受パッドの軸方向に延びるようにすることができる実施態様も有利である。この方策により、潤滑油輸送溝の容積性能を向上させることができる。
【0013】
更に、滑り軸受パッドは、内側リング要素と外側リング要素との間に配置するために用いられ、滑り軸受パッドは動作状態で内側リング要素と固く連結されて、この内側リング要素と共に外側リング要素に対して相対的に回転するように構成されており、軸受面は球冠部において球冠半径を持つ球冠の基本形状を有し、滑り軸受パッドの軸受面は外側リング要素の相手面に当接するように形成されており、潤滑油輸送溝は滑り軸受パッドの軸方向に延びていて、潤滑油輸送溝は、滑り軸受パッドの第1端面から第1の距離を置いて配置された第1溝端部と、滑り軸受パッドの第2端面から第2の距離を置いて配置された第2溝端部を有しており、滑り軸受パッドの第1溝端部と第1端面との間には軸受面に対する第1凹部が形成され、滑り軸受パッドの第2溝端部と第2端面との間には軸受面に対する第2凹部が形成されているようにすることができる。
【0014】
一変形例によれば、潤滑油輸送溝は、滑り軸受パッドの第1端面から第1の距離を置いて配置された第1溝端部と、滑り軸受パッドの第2端面から第2の距離を置いて配置された第2溝端部を有することが可能である。この方策は、潤滑油輸送溝をその軸方向両端部で閉塞することができ、それによって潤滑油輸送溝の輸送性能を向上させることができるという利点がある。
【0015】
更に、滑り軸受パッドの第1溝端部と第1端面との間には軸受面に対する第1凹部が形成され、滑り軸受パッドの第2溝端部と第2端面との間には軸受面に対する第2凹部が形成されていると好都合であり得る。このことは、潤滑油が潤滑油サンプから凹部を通って軸方向に溝内に流入して、潤滑油の十分な供給を実現できるという利点がある。
【0016】
更に、第1凹部の深さは、半径方向溝深さの2%~50%、特に5%~30%、好ましくは8%~15%の間であることが考えられる。
【0017】
更に、第2凹部の深さは、半径方向溝の深さの2%~50%、特に5%~30%、好ましくは8%~15%であることが考えられる。特に、このように形成された潤滑油輸送溝において、滑り軸受面の驚くほど良好な潤滑を達成することができる。
【0018】
更に、潤滑油輸送溝は第1溝端部には、半径方向溝底部に向かって第1の移行半径を有し、潤滑油輸送溝は第2溝端部には、半径方向溝底部に向かって第2の移行半径を持つようにすることができる。このことは、このように形成された潤滑油輸送溝において潤滑油を良好に保持することができるという利点がある。その上、このように形成された潤滑油輸送溝は、容易に製造することができる。
【0019】
更に、移行半径が1mm~20mm、特に3mm~15mm、好ましくは5mm~7mmであるようにすることができる。
【0020】
代替的な実施形態において、潤滑油輸送溝は第1溝端部には、周方向溝底部に向かって第1の移行半径を有し、潤滑油輸送溝は第2溝端部には、周方向溝底部に向かって第2の移行半径を持つようにすることができる。このことは、このように形成された潤滑油輸送溝において潤滑油を良好に保持することができるという利点がある。その上、このように形成された潤滑油輸送溝は、容易に製造することができる。
【0021】
更に、潤滑油輸送溝の半径方向溝底部は個々の部分領域を有し、これらの個々の部分領域がそれぞれ平坦な表面を有するようにすることができる。
【0022】
更に、個々の滑り軸受パッドの軸受面は、球冠部において球冠半径を持つ球冠の基本形状を有するようにすることができる。特に、このように形成された摺動面を備えて構成される滑り軸受パッドにおいて、本発明による潤滑油輸送溝は驚くほど改善された摺動特性をもたらす。
【0023】
特別な実施形態によれば、周方向溝深さは、軸受面の軸受面円弧長さの0.5%~20%、特に1.5%~10%、好ましくは3%~7%であることが可能である。このことは、このように形成された潤滑油輸送溝が、潤滑油輸送によく適しているという利点を有する。
【0024】
更に、潤滑油輸送溝と軸受面との間に潤滑油吸入口が形成されているようにすることができる。このことは、潤滑油が潤滑油輸送溝から軸受面の領域に改善された形で吸入されることができるという利点を有する。特に、潤滑油入口は、潤滑油輸送溝を起点として先細りに形成されているようにすることができる。
【0025】
第1の実施形態では、潤滑油吸入口が段差を付けて形成されているようにすることができる。特に、異なる段差面を設けることができ、潤滑油輸送溝に最も近い段差面が最大の深さを有し、軸受面に最も近い段差面が最小の深さを有する。
【0026】
別の実施形態では、潤滑油吸入口が断面で見て丸みのある形で形成されているようにすることができる。特に、丸みは潤滑油輸送溝の領域で最大の深さを有し、接線方向で軸受面に移行している。
【0027】
別の実施形態では、潤滑油吸入口は断面で見て楔面の形で形成されているようにすることができる。
【0028】
本発明によれば、滑り軸受が構成されている。滑り軸受は、
内側リング要素と、
外側リング要素と、
内側リング要素と外側リング要素との間に配置された少なくとも1つの滑り軸受要素とを有し、滑り軸受要素は少なくとも2つの滑り軸受パッドを含み、
滑り軸受パッドの軸受面と外側リング要素の相手面又は内側リング要素の相手面と互いに当接している。滑り軸受パッドは上記の態様のいずれかによって形成されている。
【0029】
このように形成された滑り軸受は、驚くほど寿命が長く、摺動性が驚くほど良好である。
【0030】
第1の実施形態において、滑り軸受パッドは内側リング要素と連結され、外側リング要素に相手面が形成されているようにすることができる。
【0031】
代替的な実施形態では、滑り軸受パッドは外側リング要素と連結され、内側リング要素に相手面が形成されるようにすることができる。
【0032】
特に、外側リング要素の外周部に、周方向に延びる潤滑油分配溝が形成されており、この潤滑油分配溝と相手面を流体接続している潤滑油孔が形成されていて、潤滑油孔は相手面の領域でオイルポケットに開口していると有利であり得る。この方策により、滑り軸受の潤滑油供給を更に改善することができる。
【0033】
本発明によれば、風力タービン用ナセルが構成されている。ナセルは、
ナセルハウジングと、
ロータシャフトと、
ロータシャフトに配置されたロータハブと、
ロータシャフトをナセルハウジングに支持するためのロータ軸受と、を有する。ロータ軸受は、上記の態様のいずれかによって形成された複数の滑り軸受パッドを含む。
【0034】
更に、個々の滑り軸受パッドの軸受面は、球冠部では球冠半径を持つ球冠の基本形状を有し、移行部では移行半径を持つと好都合であり得る。
【0035】
特に、外側リング要素が収容されている軸受ブロックが構成されていて、この軸受ブロックの少なくとも1つの軸方向端面にカバーが形成され、カバー内に組み込まれて又はカバーに接続されて潤滑油容器が形成されていると有利であり得る。このことは、このように形成された潤滑油容器に流体力学的滑り軸受のための潤滑油を十分貯留できるという利点がある。
【0036】
特別な実施形態によれば、ロータ軸受は、外側リング要素が収容されている軸受ブロックを含み、軸受ブロックは外側リング要素に対する軸方向ストッパを有しており、軸方向ストッパは軸受ブロックのロータハブとは反対側の軸方向端面に形成されていることが可能である。このことは、軸方向ストッパがロータ軸受の主負荷方向に作用するという利点がある。
【0037】
滑り軸受が流体力学的滑り軸受として設計されている実施形態も有利である。特に流体力学的滑り軸受は、摩擦抵抗が小さく、したがって効率が高い。
【0038】
更に、潤滑油容器内に永久磁石が配置されているようにすることができる。このことは、強磁性特性を有する粒子が永久磁石に付着できるという利点を有する。これにより永久磁石は不純物を収集する機能を果たすことができる。このような不純物は、例えば摺動面の摩耗又はその他の損耗によって発生することがある。更に、永久磁石は潤滑油容器内に交換可能若しくは取外し可能に配置されて、永久磁石の洗浄を可能にすることが考えられる。
【0039】
本発明をよりよく理解するために、以下の図を参照しながらより詳細に説明する。
【0040】
図は、それぞれ非常に単純化された模式的な表現で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は風力タービンの模式図である。
図2図2は滑り軸受の第1実施例の斜視図である。
図3図3は滑り軸受の第1実施例の縦断面の斜視図である。
図4図4は滑り軸受パッドを配置したロータシャフトの第1実施例の斜視図である。
図5図5は滑り軸受の別の実施例の縦断面である。
図6図6は滑り軸受パッドの別の実施例の斜視図である。
図7図7図6の切断線VII-VIIに沿った滑り軸受パッド断面図である。
図8図8は滑り軸受の別の実施例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
最初に確認しておくと、記載された異なる実施形態において同じ部材には同じ参照符号又は同じ部品名称を付す。この場合、説明全体に含まれている開示内容は同じ参照符号又は同じ部品名称を有する同じ部材に準用できる。説明の中で選択された位置を表す言葉、例えば上、下、横なども直接説明されている表示された図を基準としており、これらの位置を表す言葉は位置が変化した場合には新しい位置に準用される。
【0043】
図1は、風力から電気エネルギーを生成するための風力タービンの第1実施例の模式図である。風力タービン1は、塔3に回転可能に保持されているナセル2を有している。ナセル2は、ナセルの主要構造体をなすナセルハウジング4を含んでいる。ナセル2のナセルハウジング4内には、風力タービン1の発電機などの電気技術部品が配置されている。
【0044】
更に、ロータハブ6とこれに取り付けたロータブレード7を有するロータ5が形成されている。ロータハブ6は、ナセルの一部と見なされる。ロータハブ6は、ロータ軸受8によってナセルハウジング4に回転可能に保持されている。特に、以下に詳述する本発明による滑り軸受9は、ロータ軸受8として使用されるようになっている。特に、ロータハブ6はロータシャフト16に配置されて、ロータシャフト16がロータ軸受8に支持されているようにすることができる。
【0045】
ロータハブ6をナセル2のナセルハウジング4に支持するためのロータ軸受8は、半径方向力10と軸方向力11を吸収するように構成されている。軸方向力11は、風の力によって生じる。半径方向力10は、ロータの重力によって生じ、ロータ5の重心に作用する。ロータ5の重心はロータ軸受8の外部にあるので、ロータ軸受8内では半径方向力10により傾きモーメント12が引き起こされる。傾きモーメント12は、ロータブレード7に不均一な負荷がかかることによっても引き起こされる。この傾きモーメント12は、ロータ軸受8から距離を置いて配置された第2の軸受によって吸収することができる。第2の軸受は、例えば発電機の領域に形成することができる。
【0046】
図2は、ナセル2内に取り付けられた滑り軸受9の第1実施例を示す。もちろん図2に示す滑り軸受9は、風力タービン以外のあらゆる産業用途にも使用することができる。図2では、滑り軸受9は斜視図で示されている。
【0047】
図3には、滑り軸受9の第1実施例が斜視縦断面図で示されている。
【0048】
以下では、滑り軸受9を、図2及び図3を併せて参照して説明する。
【0049】
図2及び図3から分かるように、滑り軸受9は内側リング要素13と外側リング要素14を有するようにすることができる。内側リング要素13と外側リング要素14との間には滑り軸受要素15が配置されており、この滑り軸受要素15は外側リング要素14に対して相対的に回転する内側リング要素13の滑り軸受の働きをする。
【0050】
図2及び図3に示す実施例では、内側リング要素13はロータシャフト16として形成されている。もちろん、内側リング要素13は別のシャフトであってもよい。更に、内側リング要素13が独立した部材として形成されて、シャフト、特にロータシャフト16に保持されるようにすることも考えられる。
【0051】
特に図3からよく分かるように、外側リング要素14は軸受ブロック17内に保持されているようにすることができる。特に、軸受ブロック17はナセルハウジング4と連結されているか、又は代替的に直接ナセルハウジング4内に成形されているようにすることができる。この実施例では、それにより外側リング要素14はナセルハウジング4と剛性的と連結されていて、内側リング要素13は滑り軸受要素15によって回転軸19を中心に外側リング要素14に対して相対的に回動可能であるようにすることができる。
【0052】
更に、軸受ブロック17が直接外側リング要素14として機能するようにすることができる。
【0053】
これにより、ロータシャフト16を滑り軸受9によってナセルハウジング4内に回転可能に保持されている。
【0054】
図2及び図3から更に分かるように、滑り軸受要素15は、内側リング要素13と外側リング要素14との間で円周上に分布配置された複数の個々の滑り軸受パッド18を含んでいる。
【0055】
個々の滑り軸受パッド18は、図3に示す構造により滑り軸受9の動作状態において内側リング要素13と固く連結されており、それによりこの内側リング要素13と共に外側リング要素14に対して相対的に回転する。内側リング要素13と外側リング要素14との間の回転運動を可能にするために、個々の滑り軸受パッド18にはそれぞれ1つの軸受面20が形成されており、この軸受面20は滑り軸受9の使用可能状態において外側リング要素14の相手面21に当接している。この相手面21は、外側リング要素14の内面22に配置されている。
【0056】
滑り軸受パッド18の軸受面20と外側リング要素14の相手面21は、滑り軸受9の動作中に互いに接して摺動する摺動面として形成されている。特に、外側リング要素14の相手面21は、耐摩耗性の硬い表面として形成されており、これは例えば焼入鋼によって形成することができる。滑り軸受パッド18の軸受面20は、相手面と比較して軟らかい滑り軸受材で形成することができる。もちろん、軸受面20は、滑りコーティングを備えることも考えられる。
【0057】
図3から特によく分かるように、個々の滑り軸受パッド18は、それぞれ軸方向に見て湾曲した軸受面20を有するようにすることができる。
【0058】
図3から更に分かるように、軸受ブロック17の軸方向端面23にカバー24が配置されているようにすることができる。このカバー24は、軸受ブロック17の内部を閉じるために用いられる。
【0059】
図3から更に分かるように、カバー24には潤滑油26の収容に用いられる潤滑油容器25が接続されているようにすることができる。特にこの場合、カバー24内には貫通孔27が形成されており、この貫通孔を通って潤滑油26が潤滑油容器25から軸受ブロック17の内部に流入できるようにすることができる。
【0060】
もちろん、潤滑油容器25が軸受ブロック17の別の場所に配置されていることも考えられる。
【0061】
図4は、ロータシャフト16とそれに配置された滑り軸受パッド18を斜視図で示しており、ここでも先の図1図3と同じ部材には同じ参照符号又は部材名称が使用されている。不必要な繰り返しを避けるために、先の図1図3における詳細な説明が留意され、参照される。
【0062】
図4からわかるように、個々の滑り軸受パッド18は円周上に分布して、内側リング要素に周方向に互いに間隔をあけて保持されることができる。
【0063】
図5から分かるように、外側リング要素14の外周に周方向に延びる潤滑油分配溝30が形成されているようにすることができる。この潤滑油分配溝30は、外側リング要素14が軸受ブロック17に当接する面に形成することができる。そうすると潤滑油分配溝30は、外側リング要素14と軸受ブロック17によって仕切られ、それによって潤滑油を輸送するための流路を形成することができる。更に、潤滑油分配溝30と相手面21とを流体接続する潤滑油孔31が形成されているようにすることができる。このことは、オイルポンプを用いて潤滑油分配溝30を介して滑り軸受パッド18に潤滑油を供給できるという利点がある。
【0064】
更に、潤滑油孔31がオイルポケット32に開口するようにすることができる。オイルポケット32は、外側リング要素の軸方向に延びることができる
【0065】
更に、潤滑油分配溝30の両側にシールが配置されて、外側リング要素14と軸受ブロック17との間の潤滑油分配溝30を密閉する機能を果たすようにすることができる。
【0066】
図6は滑り軸受パッド18を第1斜視図で示す。図7図6の滑り軸受パッド18を断面図で示す。
【0067】
図6から分かるように、滑り軸受パッド18の第1周面28に潤滑油輸送溝29が形成されている。この潤滑油輸送溝29は、軸受面20の領域に形成することができる。特に、潤滑油輸送溝29は、軸受面20を中断するようにすることができる。
【0068】
図7から分かるように、潤滑油輸送溝29は、半径方向溝深さ33を有するようにすることができる。更に、潤滑油輸送溝29は、周方向溝深さ34を有することができる。特にこの場合、潤滑油輸送溝29は、半径方向溝底部35と周方向溝底部36とを有する。
【0069】
図6から特によく分かるように、滑り軸受パッド18の第1端面37に第1溝端部38が形成されていて、第1端面37から第1の距離39を置いて配置されているようにすることができる。
【0070】
図6から更に分かるように、滑り軸受パッドの第2端面40の領域に第2溝端部41が形成されている。第2溝端部41は第2端面40から第2の距離42を置いて配置することができる。
【0071】
図6から更に分かるように、第1溝端部38の領域には第1凹部43が形成されている。この第1凹部43は、特に軸受面22に対する凹部の形で形成されることができる。図6から更に分かるように、第2溝端部41の領域に第2凹部44が形成されているようにすることができる。この第2凹部44は、軸受面20に対する凹部をなすことができる。
【0072】
図6から更に分かるように、潤滑油輸送溝29の半径方向溝底部35と第1溝端部38との間に第1の移行半径45が形成されているようにすることができる。
【0073】
更に、半径方向溝底部35と第2溝端部41との間に第2の移行半径46が形成されているようにすることができる。
【0074】
図6から更に分かるように、潤滑油輸送溝29と軸受面20との間に潤滑油吸入口51が形成されているようにすることができる。図6から分かるように、潤滑油吸入口51は段差を付けて形成することができ、第1段差面52と第2段差面53と第3段差面54を有することができる。もちろん、これより多いか少ない個々の段差面を形成することもできる。
【0075】
図7から分かるように、軸受面20は、軸受面円弧長さ47を有するようにすることができる。軸受面円弧長さ47は、軸受面20の周方向で測定される。特に、軸受面円弧長さ47は、軸受面の最小直径で測定される。
【0076】
図6からよく分かるように、軸受面20は球冠状に形成されているようにすることができる。特に、球冠半径50を持つ球冠部49が形成されているようにすることができる。
【0077】
図8には、滑り軸受パッド18の別の、場合によってはそれ自体独立の実施形態が示されており、ここでも先の図1図7と同じ部材には同じ参照符号又は部材名称が使用されている。不必要な繰り返しを避けるために、先の図1図7における詳細な説明が留意され、参照される。
【0078】
図8から分かるように、半径方向溝底部35は全延長にわたって第1部分領域55と、第2部分領域56と、第3部分領域57を有するようにすることができる。もちろん、これより多いか少ない個々の部分領域を形成することもできる。
【0079】
上記の実施例は可能な実施態様を示すものであり、この箇所で注記しておくと、本発明は特別に図示された実施形態に制限されるものではなく、反対に個々の実施態様を互いに様々に組み合わせることも可能であり、この変形可能性は本発明による技術的行為に関する教示に基づき当該技術分野に従事する当業者の能力の範囲内にある。
【0080】
保護の範囲は請求項によって規定されている。しかしながら請求項を解釈するために詳細な説明と図面を援用する必要がある。図示及び説明された異なる実施例に記載された個々の特徴又は特徴の組み合せは、それ自体で独立した発明的解決をなすことができる。これらの独立した発明的解決の基礎にある課題は、本明細書から読み取ることができる。
【0081】
本発明の説明において値の範囲に関するすべての指示は、当該範囲内のすべての任意の部分範囲を含むものと理解すべきである。例えば1~10という指示には、下限1から上限10に至るまでのすべての部分範囲が含まれていると理解すべきである。即ち、すべての部分範囲は、例えば1~1.7又は3.2~8.1又は5.5~10のように、下限の1又はそれ以上から始まって上限の10又はそれ以下で終わる。
【0082】
最後に形式的に指摘しておくと、構造を理解しやすくするために、要素は一部縮尺通りではなく、及び/又は拡大して、及び/又は縮小して表現された。
【符号の説明】
【0083】
1 風力タービン
2 ナセル
3 塔
4 ナセルハウジング
5 ロータ
6 ロータハブ
7 ロータブレード
8 ロータ軸受
9 滑り軸受
10 半径方向力
11 軸方向力
12 傾きモーメント
13 内側リング要素
14 外側リング要素
15 滑り軸受要素
16 ロータシャフト
17 軸受ブロック
18 滑り軸受パッド
19 回転軸
20 軸受面
21 相手面
22 内面
23 軸受ブロックの軸方向端面
24 カバー
25 潤滑油用容器
26 潤滑油
27 貫通孔
28 周面
29 潤滑油輸送溝
30 潤滑油分配溝
31 潤滑油孔
32 オイルポケット
33 半径方向溝深さ
34 周方向溝深さ
35 半径方向溝底部
36 周方向溝底部
37 第1端面
38 第1溝端部
39 第1の距離
40 第2端面
41 第2溝端部
42 第2の距離
43 第1凹部
44 第2凹部
45 第1の移行半径
46 第2の移行半径
47 軸受面円弧長さ
48 外側リング要素の外周部
49 球冠部
50 球冠半径
51 潤滑油吸入口
52 第1段差面
53 第2段差面
54 第3段差面
55 半径方向溝底部の第1部分領域
56 半径方向溝底部の第2部分領域
57 半径方向溝底部の第3部分領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】