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特表2023-551023タイヤトレッドコンパウンド用複合材料開発のための機械学習に基づく予測方法
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  • 特表-タイヤトレッドコンパウンド用複合材料開発のための機械学習に基づく予測方法 図1A
  • 特表-タイヤトレッドコンパウンド用複合材料開発のための機械学習に基づく予測方法 図1B
  • 特表-タイヤトレッドコンパウンド用複合材料開発のための機械学習に基づく予測方法 図1C
  • 特表-タイヤトレッドコンパウンド用複合材料開発のための機械学習に基づく予測方法 図2
  • 特表-タイヤトレッドコンパウンド用複合材料開発のための機械学習に基づく予測方法 図3
  • 特表-タイヤトレッドコンパウンド用複合材料開発のための機械学習に基づく予測方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】タイヤトレッドコンパウンド用複合材料開発のための機械学習に基づく予測方法
(51)【国際特許分類】
   G16C 60/00 20190101AFI20231129BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20231129BHJP
   G06N 3/08 20230101ALI20231129BHJP
【FI】
G16C60/00
G06N20/00
G06N3/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532535
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2021083492
(87)【国際公開番号】W WO2022112584
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】102020000029054
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【弁理士】
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ロンバルディ
(72)【発明者】
【氏名】パオロ パチョッタ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア グイディ
(57)【要約】
本発明は、タイヤトレッドコンパウンド用の複合材料を開発するための、機械学習に基づいてコンピュータで実装される予測方法に関する。方法は次のステップ、すなわち、生データのデータベース、つまり、基準として使用される、既存の複合材料の配合レシピおよび対応する既知の動的特性からなるデータセットを準備するステップと、反復手順に従って生データのデータベースに含まれるデータを正規化するステップと、異常なデータを除去し、実際の成分の特定のカテゴリーに関連する新しい架空の成分を追加するために、データマイニングを使用して正規化されたデータを前処理するステップと、前処理されたデータを使用した自動学習に基づいてアルゴリズムをトレーニングするステップと、トレーニングされたアルゴリズムを、試験すべき複合材料の動的特性を予測するために、試験すべき複合材料の配合レシピを表す一連の実験的データに適用するステップと、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤトレッドコンパウンドの製造のために試験される複合材料の動的特性を予測するための電子コンピュータを使用して実装される方法であって、
‐生データのデータベース、つまり既存の複合材料の配合レシピ、および基準として使用される、対応する既知の動的特性からなるデータセットを準備するステップと、
‐反復手順に従って前記生データのデータベースに含まれるデータを正規化するステップと、
‐異常なデータを除去し、実際の成分の特定のカテゴリーに関連する新しい架空の成分を追加するために、データマイニングを使用して正規化された前記データを前処理するステップと、
‐前処理された前記データを使用した自動学習に基づいてアルゴリズムをトレーニングするステップと、
‐トレーニングされた前記アルゴリズムを、試験すべき前記複合材料の前記動的特性を予測するために、試験すべき該複合材料の前記配合レシピを表す一組の実験データに適用するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記動的特性は、試験される前記複合材料の損失モジュール(tanδ)および貯蔵モジュール(E')である、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記生データのデータベースは、複数の実験的測定のセッションを表すデータを含む、方法。
【請求項4】
請求項4に記載の方法において、前記正規化するステップは、実験的な前記セッション間の連結を実施して、その変動性を低減し、それらを同一基準にするよう、各反復において、前記データセット内で最多で繰り返される配合レシピ(FMR)に基づく反復正規化のために行う、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法において、反復的な前記正規化するステップは、予測される前記動的特性のそれぞれ(tanδ、E')を、基準として使用される反復的に選択された前記複合材料の対応する特性で除算することによって実施され、ここで、基準配合レシピは様々な実験的セッション間の連結を構成し、これらのセッションを比較できるようにする、方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法において、前記トレーニングするステップ中に最小化されるコスト関数の計算に適用される重み/ペナルティ論理により、予測される前記動的特性に物理的な制約を課すことができる、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記制約は、以下の関係、すなわち、
【数1】
方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法において、前記前処理するステップは、データマイニングアルゴリズムの適用を含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記データマイニングアルゴリズムは、実際の成分の特定のカテゴリーに関連する新しい架空の成分を追加するために、異常なデータの除去および/または主成分分析(PCA)の実行を実施する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッドコンパウンド用複合材料の開発のために、電子コンピュータを用いて実装される、機械学習に基づくゴムコンパウンドの動的特性の予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、タイヤ製造分野、特にタイヤトレッドの製造に使用されるゴムコンパウンドの組成の決定に関するものである。
【0003】
これらのゴムコンパウンドの動的特性(例えば、tanδおよびE')は、タイヤの性能、特にエネルギー散逸に関連する性能(例えば、ウェットブレーキ、ドライブレーキ、および転がり抵抗係数(RRC))を決定する上で重要な役割を果たす。
【0004】
これらの特性は、複合材料に使用される配合レシピ(recipes)の特性、特に成分、その量、およびそれらの2つ以上の間で確立される特定の相乗効果の観点から確保される。
【0005】
一般に、複合材料に使用される配合レシピの的確な調合物(formulation)には、最初に適切な技術パッケージを見つけ、次いで、目的が完全に達成されるまで漸進的な微調整によってその調合物を最適化するために、実験室でいくつかの検証ステップを経なければならない。
【0006】
これら反復的な一連の実験活動はそれぞれ、製品の観点から見ると、製品開発(市場投入までの時間)におけるリードタイムおよびコストの増加につながり、また、データの観点から見ると、様々な一連の試験活動中に行われた測定内のランダムノイズによる固有の変動を有するデータベースの生成につながる。
【0007】
エネルギー散逸(ウェットブレーキ、ドライブレーキ、およびRRCなど)に関連した製品の性能に対する期待は、ゴムコンパウンドの動的特性(tanδおよびE'など)を評価することによって決定される。このような評価には、複合材料の検証に到達するために広範な実験室試験が必要であり、また時間およびリソースが必要である。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、請求項1に定義されたプロセスを提供することによって、先行技術によって解決されなかった問題を解決することである。
【0009】
特に、本発明の目的は、物理的試験を行う必要なく、タイヤ用ゴムコンパウンドの製造のための複合材料の重要な動的特性の一部の正確な推定を提供するために、実験室試験をシミュレートすることである。これらの特性は、例えば、tanδおよびE’であり、これらはエネルギー散逸に関連する製品の性能(例えば、ウェットブレーキ、ドライブレーキ、およびRRC)を決定する重要なパラメータを表す。
【0010】
本発明のさらなる特徴は、対応する従属請求項で定義される。
【0011】
一方、複合材料の挙動、およびそれゆえにタイヤの性能を予測できるソフトウェアツールを使用すると、以下、すなわち、
‐経常コスト(原材料、人件費など)の大幅な削減、
‐実験室試験の実行能力および品質の最適化(他の業務に人員を割り当てることが可能)、
‐新製品の市場投入までの時間の短縮、
‐既知の方法論に対する予測精度の向上、
が可能となる。
【0012】
先行技術に対する他の明らかな利点は、本発明の特徴および使用法とともに、単なる非限定的な例として与えられる以下の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図の図面を参照する。
図1A】一例としての、本発明のプロセスを示す。
図1B】一例としての、本発明のプロセスを示す。
図1C】一例としての、本発明のプロセスを示す。
図2】元のTanδ値に対する予想されるTanδ値の散布図を示した図である。
図3】様々な実験セッション間の「連結(connections)」、つまり変動を減らす可能性を表している図である。
図4】物理的制約を適用した場合と適用しない場合の予測の品質を表す2つのグラフを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
【0015】
したがって、タイヤ用ゴムコンパウンドの製造に使用できる複合材料の動的特性(例えば、TanδおよびE')を予測するための方法論について説明する。
【0016】
一般論として、このプロセスには以下の手順、すなわち、
‐生データのデータベース、つまり既存の複合材料の配合リスト、および対応する既知の動的特性からなるデータセットの生成(N回の実験セッション、それぞれがMコンパウンドの試験を含む)、
‐生データのデータベースに含まれるデータを反復的に正規化する手順、
‐データマイニングによる正規化データの前処理、
‐自動学習(人工ニューラルネットワークなどの機械学習)に基づくアルゴリズムのトレーニングおよび適用、
を含む。
【0017】
特に、上記のように正規化されかつ前処理されたデータベースに含まれるデータセットを使用してモデルをトレーニングするステップの後には、データベース内の生データにアルゴリズムを直接適用するよりも、より高い精度で複合材料の動的特性を予測することが可能となる。
【0018】
実際、この方法により、ノイズおよびデータ固有の変動性がデータベースの予測精度に及ぼす影響を大幅に低減することができる。
【0019】
実際、基準(reference)の同一種(N回の実験セッションのそれぞれに存在するMコンパウンドの少なくとも1つ)に対する複数の実験室試験に関連するデータを使用してデータを反復正規化する手順により、固有の実験的変動性を低減することが目的である。実際、特定の実験セッション中に実施される各反復試験を使用して、これら特定の実験条件に起因する変動率を推定する。
【0020】
さらに、前処理手順(データマイニング)を使用して、新しい機能を開発し、異常なデータを除去し、および主成分分析(PCA)を実施することにより、予測の精度を向上させる。
【0021】
最後に、人工ニューラルネットワーク(ANN)などの機械学習アルゴリズムは、すでに示したように、tanδ対温度の傾向、およびE’対温度傾向など、試験下の複合材料の主な動的特性の一部を予測する。
【0022】
図1A、1B、1Cは、一例として、本発明のプロセスを示す。
【0023】
[理論的背景]
動的機械分析(DMA)の間、正弦波の力(応力σ)が材料に印加され、その結果生じる変位(変形)が測定される。材料が完全に弾性がある場合、結果として生じる張力および応力は完全に同位相(in phase)になる。材料が純粋に粘性流体の場合、応力に対して90°の変形位相の遅れが観察される。
【0024】
粘弾性ポリマーには中間の特性があり、DMA試験中に位相遅延が発生する。この文脈では、
E'は貯蔵モジュールであり、貯蔵されたエネルギー、つまり弾性部分を測定し、
Tanδは損失モジュールであり、熱として放散されるエネルギー、つまり粘性部分を測定する。
【0025】
結果は、開発されたアルゴリズムによって予測されたようなtanδおよびE'の値を、トレーニングステップ中にニューラルネットワーク(ANN)に供給するために明らかに使用されなかった複数の新しい実験的配合レシピについて実験的に既知の値と比較することによって検証される。図2は、試験セットのトレーニングおよび性能の例として、元のTanδ値に対する予測されたTanδ値の散布図を示す。見てわかるように、どちらの散布図もRの値が高い(>0.99)という特徴がある。
【0026】
本発明によれば、重要な前処理ステップは、ANNアルゴリズムトレーニングステップの前に実施されることに留意されたい。具体的には、前述のデータ正規化手順 + データマイニングによる前処理ステップである。
【0027】
[反復的なデータ正規化手順]
この正規化手順は、最も効率的な改善を示す。このタイプのアプリケーションでは、実験セッションが繰り返されるため、通常、ターゲットの特性に関して大きな変動が観察される可能性がある。実際、一部の配合レシピは複数の実験セッションで繰り返されることが多く、そのターゲット特性に大きな違いが見られる場合がある。実施されたN回の実験セッションをすべて調査することにより、M個の考え得る配合レシピの中から、実験セッションに関する当該変動性を減らすために使用できる様々な配合レシピを見つけることが可能である。
【0028】
正規化は、様々な実験セッションに共通する配合レシピの物理的特性を参照することによって、各実験セッションで実行される。そのような配合レシピが実験セッションに含まれていない限りにおいて、一部の実験セッションを正規化するために使用できない場合は、新しい配合レシピが、少なくとも1つのすでに正規化された実験セッション、およびまだ正規化されていない実験セッションに含まれるように選択されることとなる。この選択により、正規化を反復的に拡張し、また新たな実験セッションに適用することが可能になる。
【0029】
図3は、「連結(connections)」表現、つまり、様々な実験セッション間の共通の調合物(配合レシピ)による変動性を低減できる可能性を示している。スポットは実験セッションを表し、ラインは「連結」、つまり基準コンパウンド(reference compounds)/調合物(配合レシピ)による実験セッションの正規化方法を表す。グラフは、実験セッションを「連結する(connect)」(つまり、正規化)させ、その変動を減らすために考えられるすべての方法を表す。提案されたグラフを見るとわかるように、各実験セッションは他の多くのセッションに結合できる。したがって、このような手順は、できるだけ多くの実験セッションでの変動を減らすために繰り返し実行できる。
【0030】
数学的な観点から見ると、これらの連結は様々な方法で行うことができるため、様々な正規化手順を使用することができる。
【0031】
本発明によれば、各ターゲット特性(すなわち、例えばtanδおよびE’)は、実験セッションにおいて基準(reference)として使用される配合レシピに対応する特性で除算される。
【0032】
操作上の観点から、反復正規化手順は以下、すなわち、
1.データセット内で最も多く繰り返される配合レシピFMCR(最多頻度反復調合物:Most Repeated Formulation)を含むすべての実験セッションの選択、
2.前のポイントで選択した、すべての実験セッションに含まれるすべての調合物(Formulations)の物理的特性は、配合レシピFMRの対応する特性を参照して正規化される。
3.図3のグラフによれば、正規化された各実験セッション SSNormalizedは、配合レシピF(共通調合物:Common Formulation)によって、正規化されていない実験セッションSSNotNormalizedに連結される、すなわち、
a. SSNotNormalizedに含まれる配合レシピFの物理的特性は、SSNormalizedに含まれるFの物理的特性を基準としてとることにより正規化され、
b. SSNotNormalizedに含まれるすべての配合レシピの物理的特性は、SSNotNormalizedに含まれるFの物理的特性(すでに事前正規化されている)を基準としてとることにより正規化される。
4.ポイント3で説明した手順は、図3のグラフに従ってすべての実験セッションに反復適用される、
といった手順で実施される。
【0033】
本発明によれば、既知の技術で起こることとは異なり、データ正規化はデータセット全体に適用されないことを強調することが重要である。正規化手順は、具体的かつターゲット化した方法で各実験セッションに適用され、個々の実験セッションを他の実験セッションと比較可能にすることで、全体としてのデータセットを形成するために開発される。この目的は、実験セッションに関する変動を減らすことで達成される。これは、有害な非線形性を導入する限りにおいて、既知の技術では一般的に推奨されていないこと、すなわち、本発明に係る、異なるデータセットを異なる方法で正規化するプロセスが、図3のグラフの連結に従って決定される反復正規化の実装によって望ましい結果を達成するために、使用され、また活用されることを意味する。
【0034】
正規化手順は以下のように説明でき、
【数1】
【0035】
次の表1は、データ正規化手順を実施する場合と実施しない場合の精度の違いを示している。
【0036】
その際、精度は、ターゲットパーセンテージ誤差よりも低いパーセンテージ予測誤差を示す配合レシピのパーセンテージとして定義される。E’値予測モデルは、データ正規化手順(DELTA列を参照)の適用により30%を超える精度の向上を示し、一方、tanδ値予測モデルは11%を超える精度の向上を示した。
【0037】
【表1】
【0038】
この表は、データ正規化手順の影響を強調することを目的として、E’およびTanδの予測精度を示している。正規化されたデータ処理により、個々のターゲット特性の予測性能が向上する。興味深いことに、正規化手順により、E'@0°の予測精度が40%向上した(正規化なしで28.57%の精度から正規化データありの68.57%の精度へ)。
【0039】
[データマイニングを使用した前処理]
「トレーニングステップ」中にアルゴリズムの作成に使用された実験データセットに対して正しいデータマイニング操作(反復正規化、異常データ除去、PCA)が実施されると、予測の精度が大幅に向上する。実際、PCAは、ターゲット特性に影響を与えない成分(tanδおよびE'など)をトレーニングデータセットの配合レシピから削除し、またデータセットの有益な内容を強調するために特別に作成された新しい架空の成分を追加することができる。
【0040】
特徴(ひいては拡張してデータセット)の有益な貢献という用語では、予測される物理的特性に対するその影響が、その量と他の成分との相互作用に関連して、その性能に則してモデルによって適切に解釈されるという事実に対して参照される。特定の成分の増減に伴う問題となる1つの特性に関する2Mpaの正確な増加は、モデルによって適切に解釈されるならば、プラスの有益な貢献となる比率である。
【0041】
異常データの除去手順は、個々の実験セッションを単独で実行する場合と、様々な実験セッションをすべて組み合わせて実行する場合との両方を考慮して実装されるようにデザインされている。この手順の二重の性質により、ありとあらゆるセッションを活用することが可能になる。
【0042】
その後の予測モデルの作成を容易にすることを目的として、新しい架空の成分を追加するために、元の成分はポリマー、充填剤、促進剤などの特定のカテゴリーに分類されている。次いで、特定の成分カテゴリーの有益な内容を強化する可能性がある新しい架空の成分を推定するために、PCAが各成分カテゴリーに適用された。したがって、この文脈では、PCAに供給される実際の成分の線形結合を架空の成分として定義することが可能であり、すなわち、その特定の成分カテゴリーの有益な貢献を強調することができるようになる。したがって、この線形結合は、最初の成分の有益な貢献を結合する。このことから、架空の成分によってもたらされる有益な貢献は、最初の成分の有益な貢献を要約および増幅するということになる。最終的に、成分のカテゴリーごとに、上記のようにして決定された架空の成分が、予測アルゴリズムが処理するタスクを有する入力リスト(つまり、成分)に追加され、従って、元の有益な貢献、および架空の成分内で増幅された貢献の両方が分析の対象となる。
【0043】
[動的特性E’およびtanδに関連した物理的条件の管理]
図4および次の表2を参照してください。予測の品質は、「トレーニングステップ」中にアルゴリズムが満たすべき一連の物理的条件にも依存する。
【0044】
特に、モデルが以下の重要な物理的制約を同時に満たさなければならない場合、予測の信頼性はさらに高まる。
【数2】
【0045】
係数Ri°/j°は、ターゲット関数Tanδ(t)およびE'(t)を正規化するために導入される。正規化Ri°/j°は、Tanδ(T)およびE'(T)の絶対値が減少しても、アルゴリズムがすべての温度に等しい「重み」を適用することを保証するために必要な条件である。これらの制約は、重み/ペナルティ論理によって、モデル自体のトレーニング中に最小化されるコスト関数に適用される。これは、コスト関数が以下のように都合よく乗算されることを意味する:
‐すべての物理的制約が考慮(respect)される場合、係数は1に等しくなる。
‐物理的制約の1つまたは一部が考慮されない場合、係数は1より大きくなる。
【0046】
この手順の目的は、物理的制約を考慮した予測を行うことができるモデルを促進することである。
【0047】
どちらの方法論(制約あり、なし)も温度に対するtanδの減衰傾向を正確に予測するが、油含有量に伴うtanδの増加を正確に推定するのは制約付きモデルのみである。
【0048】
次の表2は、温度に対するtanδに関する油含有量の予測を示している。4つの材料(A、B、C、D)を研究した。第1の行群は配合レシピを示しており、その中でCPDカラムは4つの材料(A、B、C、D)の調合物(NRからRAE OILまで)を伝える。中央の行群は、制約付きモデルを使用して得られた予測Tanδ値を示し、最後の中央の行群は、制約なしモデルを使用して得られた予測Tanδ値を示す。
【表2】
【0049】
以上、本発明をその好ましい実施形態を参照して説明した。本明細書で説明される好ましい実施形態で実装される技術的特徴のそれぞれは、単に例として挙げたものであるが、同じ発明の核心に属し、また添付の特許請求の範囲によって与えられる保護の範囲内にある他の実施形態を形成するために、これまでに説明したもの以外の方法で、他の特徴とも有利に組み合わせることができることが意図されている。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
【国際調査報告】