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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ガラス廃棄物を処理する方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/235 20060101AFI20231129BHJP
   C03B 5/187 20060101ALI20231129BHJP
   C03B 5/193 20060101ALI20231129BHJP
   C03C 13/06 20060101ALI20231129BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20231129BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20231129BHJP
   C03C 3/089 20060101ALI20231129BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20231129BHJP
   C03B 3/02 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C03B5/235
C03B5/187
C03B5/193
C03C13/06
C03C3/085
C03C3/087
C03C3/089
C03C3/091
C03B3/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532567
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(85)【翻訳文提出日】2023-07-03
(86)【国際出願番号】 FR2021052108
(87)【国際公開番号】W WO2022112723
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】2012400
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502425053
【氏名又は名称】サン-ゴバン イゾベール
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100210697
【弁理士】
【氏名又は名称】日浅 里美
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム デュプー
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム バルバ ロッサ
【テーマコード(参考)】
4G014
4G062
【Fターム(参考)】
4G014AB00
4G014AF00
4G062AA01
4G062AA05
4G062BB01
4G062DA05
4G062DA06
4G062DA07
4G062DB01
4G062DB02
4G062DB03
4G062DB04
4G062DC01
4G062DC02
4G062DC03
4G062DD01
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4G062KK07
4G062KK10
4G062MM01
4G062NN34
(57)【要約】
【課題】ガラス溶融方法において原材料として使用するのに適している無機材料の製造方法の提供。
【解決手段】- 主ベッセルに、有機物を含むリサイクル材料を含むガラス化可能な材料の混合物を供給すること;- 主ベッセル中の前記ガラス化可能な材料の混合物を浸漬バーナーを用いて溶融させて、溶融材料の浴を得ること;及び- 溶融材料の浴へ固体酸化剤を導入することを含む、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス溶融方法において原材料として使用するのに適している無機材料の製造方法であって、
- 主タンクに、有機物を含むリサイクル材料を含むガラス化可能な材料の混合物を供給すること;
- 前記主タンク中の前記ガラス化可能な材料の混合物を浸漬バーナーを用いて溶融させて、溶融物を得ること;及び
- 前記溶融物へ固体酸化剤を導入すること
を含む、方法。
【請求項2】
酸化物の形態で表される前記ガラス化可能な材料の混合物の化学組成が、2質量%未満、好ましくは1質量%未満の、Feの形態で表される総酸化鉄を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸化物の形態で表される前記ガラス化可能な材料の混合物の化学組成が、2~10質量%の、Feの形態で表される総酸化鉄を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記リサイクル材料が、ミネラルウール廃棄物、家庭のカレット、及びラミネートガラス廃棄物から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記固体酸化剤が、硝酸塩、特に硝酸ナトリウム、サルフェート、特に硫酸ナトリウム又は硫酸カルシウム、及び酸化マンガン、特に二酸化マンガンから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、前記主タンクから補助タンクへ前記溶融物を移動させることを含み、前記固体酸化剤は、前記主タンクの下流で導入される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記補助タンクが、バブラー、ミキサー、又は浸漬バーナー等の撹拌手段を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、ガラス溶融方法において原材料として用いることができる無機材料であって、少なくとも部分的に、有機物を含むリサイクル材料から製造されたものであり、カーボン粒子を本質的に含まない、無機材料。
【請求項9】
前記無機材料が、カレットである、請求項8に記載の無機材料。
【請求項10】
0.1%未満の総炭素量を有する、請求項8又は9に記載の無機材料。
【請求項11】
0.1~0.9、好ましくは0.2~0.7のレドックスを有する、請求項8~10のいずれか一項に記載の無機材料。
【請求項12】
繊維化される溶融物を提供することと、前記繊維化される溶融物を繊維化することとを含む、ミネラルウールの製造方法であって、前記繊維化される溶融物が、少なくとも部分的に、請求項8~11のいずれか一項に記載の無機材料から製造されるものであるか、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法によって得られるものである、方法。
【請求項13】
請求項8~11のいずれか一項に記載の無機材料から、又は請求項1~7のいずれか一項に記載の方法により得られる無機材料から、直接得られるミネラルウールであって、このミネラルウールは、少なくとも部分的に、有機物を含むリサイクル材料から製造されたものであり、カーボン粒子を本質的に含まない、ミネラルウール。
【請求項14】
0.1%未満の総炭素量を有する、請求項13に記載のミネラルウール。
【請求項15】
0.1~0.9、好ましくは0.2~0.7のレドックスを有する、請求項13又は14に記載のミネラルウール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス廃棄物を処理する方法に関する。より詳しくは、本発明は、かなりの割合の有機物を有するガラスに基づいた材料をリサイクルすることにより、ガラス溶融方法においてガラス化可能な原材料として使用するのに適している無機材料を形成する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0002】
有機成分を含有するガラス廃棄物を、ガラス製品を製造する方法に再導入することによってリサイクルすることが知られている。しかし、有機化合物の存在は、得られるガラスの品質及び/又は溶融に影響を及ぼす場合がある。一般に、有機成分の事前の除去は、例えば、燃焼によって、原材料を溶融炉に供給する前に実施される。最近では、浸漬バーナーの発展により、このステップを省くことが可能となっている。実際、浸漬バーナーによる溶融は、リサイクルされるべき原材料と一緒に溶融ガラスの中心へ導入される有機成分の燃焼を可能にする。しかし、この方法によって得られるガラスが、特にカーボン粒子の介在物の存在に起因して、あまりよくない品質を有する可能性があることが分かっている。
【0003】
有機物を含有するガラス廃棄物を、ガラス製品を製造する方法において直接リサイクルすることは、生成物の溶融及び成形の条件を乱す傾向があり、それは、これらの方法に導入することができる廃棄物の量を制限する効果を有することも分かっている。
【0004】
有機物を含有するガラス廃棄物をリサイクルする効力を改善するために、本発明は、カレットなどの無機材料を製造する方法を提案し、この無機材料は、ガラスの溶融又は成形の条件を大きく乱すことなく、ガラス溶融方法において原材料として用いることができる十分な品質を有する。
【0005】
したがって、本発明の第一の側面は、ガラス溶融方法において原材料として使用するのに適している無機材料の製造方法に関し、この方法は次のものを含む:
- 主タンクに、有機物を含むリサイクル材料を含むガラス化可能な材料の混合物を供給すること;
- 主タンク中のガラス化可能な材料の混合物を浸漬バーナーを用いて溶融させて、溶融物を得ること;及び
- 溶融物へ固体酸化剤を導入すること。
【0006】
浸漬バーナーの使用は、溶融物の中心に大量の酸素を提供することができること、及び溶融物を徹底的に撹拌して、したがって混合物の均質化と任意の汚染物質の分解を促進することができることの両方の利点を有する。しかし、これは、特に、大量の有機物を含む、ガラスに基づいた材料をリサイクルする場合には不十分であることが分かっている。大量の酸素を供給する場合でさえ、製造される無機材料は、有機化合物の部分燃焼に由来する大量のカーボン粒子を有する。同様に、浸漬バーナーの使用のみによって、製造される無機材料のレドックスを制御するか、低下させることは不可能であることが見出されている。それが溶融方法において用いられる場合、高いレドックスを有する無機材料が、ガラス浴の表面でフォームを生成しやすいことが分かっている。いかなる理論に拘束されることを望むものではないが、第一鉄(FeO)が、一定の原材料(例えば板ガラスのカレット)に含有されるサルフェートと反応し、SOガスを製造し、このガスが、ガラス浴の表面でフォームを形成すると仮定される。このフォーム層の存在により、炉のエネルギー移動の効力が低下する。
【0007】
浸漬バーナー及び固体酸化剤を組み合わせて使用することにより、特に、製造される無機材料中のカーボン粒子の存在を著しく低減するか、回避することによって、製造される無機材料の品質を著しく改善することが可能となるため、この無機材料は、ガラスの溶融方法においてその乱れのリスクのなしで用いることができることが分かった。
【0008】
ガラス化可能な材料の混合物は、典型的には、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも70質量%、より優先的には少なくとも80質量%、さらには少なくとも90質量%のリサイクル材料を含む。従来の原材料、特に天然資源に由来する従来の原材料を、特に、製造される無機材料の組成を調節するために、ガラス化可能な材料の混合物に加えることができる。1つの実施態様において、ガラス化可能な材料の混合物は、100%リサイクル材料で構成されている。本発明に係る方法において用いることができるリサイクル材料の例は、(特に、有機バインダーによって結合された)屑繊維又はミネラルウール、有機廃棄物で汚染されていることが多い家庭のカレット、ラミネートガラスの廃棄物などの、ガラス又はセラミックに基づいた、有機物を含むリサイクル材料を含む。一定の実施態様において、ガラス化可能な材料の混合物は、単一のリサイクル材料源、特に、ミネラルウール廃棄物、ガラス繊維廃棄物、又はラミネートガラス廃棄物由来であってよい。典型的には、ガラス化可能な材料の混合物は、ガラス化可能な材料の混合物の全質量に基づいて、少なくとも1質量%、好ましくは少なくとも2質量%、より優先的には少なくとも5質量%の有機物、かつ、典型的には最大で30質量%、又は最大で25質量%、又は最大で20質量%の有機物を有する。有機物の量は、650℃での強熱減量(650℃までの加熱によって得られる、乾燥分の質量%として表される質量の変動)を測定することにより決定することができる。多量の有機物は、その燃焼によって、ガラス化可能な材料の混合物を溶融するために必要なエネルギーの提供に寄与するという利点を有し、したがって、バーナーによって供給される燃料の量を低減することを可能にする。リサイクル材料は、特に建設廃棄物から生じる、金属汚染物質、例えば、鉄又は銅をさらに含んでよい。したがって、原材料の混合物は、少なくとも0.2質量%、又は少なくとも0.5質量%の金属粒子を含んでよい。
【0009】
ガラス化可能な材料の混合物の、酸化物の形態で表される化学組成は、特に制限されない。それは、特に、高い鉄含有量を含んでよく、典型的には、2質量%より大きく、好ましくは3質量%より大きく、又は4質量%より大きく、かつ、好ましくは10質量%未満、8質量%未満の、Feの形態で表される総鉄含有量を有する。それは、低い鉄含有量を有する組成であってもよく、典型的には、2質量%未満、好ましくは1.7質量%未満、より優先的には1.5質量%未満、又は1質量%未満の、Feの形態で表される総鉄含有量を有する。実際、鉄含有量が低いほど、製造される無機材料のレドックスを制御することがより困難であることが分かった。本発明に係る方法は、低い鉄含有量を有する組成を含めて、製造される無機材料のレドックスのより容易な抑制を可能にする。
【0010】
一定の実施態様において、ガラス化可能な材料の混合物は、ガラス化可能な材料の混合物の無機物部分に基づいた質量割合で、以下の構成成分を含有する組成を有することができ、これは、以下の明確な範囲によって規定される:
SiO 35~80%、
Al 0~30%、
CaO+MgO 2~35%、
NaO+KO 0~30%。
ここで、SiO及びAl含有量の合計は、典型的には、50~80質量%である。
【0011】
好ましくは、ガラス化可能な材料の混合物は、ガラス化可能な材料の混合物の無機物部分に基づいた質量割合で、以下の構成成分を含有する組成を有し、これは、以下の範囲によって規定される:
SiO 50~75%、
Al 0~8%、
CaO+MgO 2~20%、
Fe 0~2%、
NaO+KO 12~20%。
0~10%。
【0012】
ガラス化可能な材料の混合物は、好ましくはバッチ投入機を用いて、主タンクに導入される。投入は、有利には、深い投入であり、すなわち、ガラス化可能な材料の混合物の投入は、溶融物のレベルより下である。深い投入のためのバッチ投入機の例は、例えば、WO2012/132184に記載されている。
【0013】
主タンクは、浸漬バーナーを備える炉を構成しており、それは、名称SBM(浸漬バーナーメルター:Submerged Burner Melter)又はSCM(浸漬燃焼メルター:Submerged Combustion Melter)によって示されることが多い。主タンクは、ガラスの溶融において従来用いられている耐火壁タンクであってよい。代わりに、主タンクは、水ジャケットと呼ばれるタンクであってよく、それは、地金壁を含み、すなわち、耐火材料によって保護されておらず、そこには冷却液、例えば水が循環する内部パイプのシステムが横断している。主タンクは、1つ又はそれより多くの浸漬バーナーを含む。本発明に適している浸漬バーナーメルターの例は、WO2013/186480に記載されている。
【0014】
「浸漬バーナー」は、それらが生成する炎が溶融物内で発生するように構成されたバーナーを意味する。それらは、通常、底と同じ高さにあるように配置される。本発明の文脈において用いられる浸漬バーナーは、例えばWO99/35099の図5に示されるような円筒形状であってよく、例えばWO2013/117851に記載されるような線形形状であってもよい。
【0015】
浸漬バーナーには燃料及び酸化剤が供給される。浸漬バーナーに供給する酸化剤は、ガス状である。それは、好ましくは、少なくとも80体積%の酸素を含む。これは、典型的には酸素の豊富な空気、又は純粋な酸素である。浸漬バーナーに供給する燃料、典型的にはガス状の燃料は、通常、天然ガスである。燃料/酸化剤混合物は、希薄燃料混合物であってよく、それは、化学量論的な酸素/燃料モル比を有する。過剰な酸素は、ガラス化可能な材料の混合物に含有される有機物の酸化に部分的に寄与する場合がある。代わりに、少なくとも酸素の一部は、浸漬バーナーの別個のバブラーによって提供することができる。バブラーも、通常、主タンクの底に配置される。酸素の体積流量と燃料ガスの体積流量との比は、典型的には少なくとも2であり、好ましくは2.1~3.5である。
【0016】
しかし、高い酸素化学量論によってさえ、大量の有機物を含む原材料の溶融中にカーボン粒子の存在をなくすことは不可能であったことが観察された。浸漬バーナーを用いて溶融させることと組み合わせた固体酸化剤の添加は、好ましくは、浸漬バーナーへの酸素の超化学量論的な供給による過剰な酸素、又は酸素バブラーを用いた酸素の導入において、この欠点を克服することを可能にする。
【0017】
固体酸化剤は、典型的には粉末又は顆粒形態であり、硝酸塩、特に硝酸ナトリウム、サルフェート、特に硫酸ナトリウム又は硫酸カルシウム(すべてそれらの水和形態において)、重クロム酸カリウム、過酸化物、特に過酸化カリウム又は過酸化カルシウム、酸化セリウム、並びに酸化マンガン、特に二酸化マンガン(MnO)、マンガン(III)酸化物(Mn)、マンガン(II、III)酸化物(Mn)及び(特にナトリウム、カリウム、カルシウム又はマグネシウムの)過マンガン酸塩から選択することができる。好ましくは、固体酸化剤は、酸化マンガン、特に、二酸化マンガンから選択される。それは、任意選択的に、化学製品、鉱石の形態で、又は材料、特に、硫酸カルシウムの場合にはプラスターに基づいた材料をリサイクルすることによって提供されてよい。一定の実施態様において、固体酸化剤は、サルフェートから選択されない。実際に、これらを酸化剤として使用すると、煙道ガス中の硫黄酸化物(SOx)の排出量が増加し、これは、環境上の観点から回避するべきであり、高価な処理施設を伴う。
【0018】
固体酸化剤は、主タンクに直接加えることができる。したがって、それは、ガラス化可能な材料の混合物との混合物として導入することができる。代わりに、それは、主タンクの側壁に配置された別個のバッチ投入機によって導入されてよい。
【0019】
好ましい実施態様において、本発明に係る方法は、主タンクから補助タンクへの溶融物の移動を含み、固体酸化剤は、主タンクの下流で導入される。したがって、固体酸化剤は、溶融物の移動中に、典型的には、補助タンクのフィーダーチャネルへ、例えば供給チャネルのセグメントに配置されたバッチ投入機によって、導入することができる。代わりに、固体酸化剤は、補助タンクに直接、例えば、補助タンクの側壁に配置されたバッチ投入機によって導入することができる。
【0020】
固体酸化剤がどのように導入されるかにかかわらず、それは、ガラス化可能な材料の混合物の流量に対して、通常0.5~8質量%、好ましくは1~5質量%の濃度で加えられる。固体酸化剤の導入は、連続的に、又は断続的に行うことができる。断続的な導入の場合には、添加量は、酸化剤が加えられるタンク内の溶融物の平均の滞留時間に対する平均の量として表される。
【0021】
補助タンクの性質は、特に制限されない。それは、耐火壁を備えるタンクであっても、水ジャケットと呼ばれるタンクであってもよい。それは、典型的には加熱手段を含み、加熱手段は、特に、電極、オーバーヘッドバーナー、浸漬バーナー、又はこれらの組み合わせから選択することができる。溶融物は、好ましくは、1000~1300℃、好ましくは1050~1250℃の温度で維持される。
【0022】
補助タンクは、有利には、溶融物を撹拌するための手段を含む。これらは、典型的には空気、酸素富化空気、又は酸素を供給するバブラー、メカニカルミキサー、又は浸漬バーナーから選択することができる。撹拌手段は、溶融物中の固体酸化剤の均一な混合物を可能にし、特に、補助タンク内に撹拌の激しいゾーンを作り出す。したがって、本発明に係る補助タンクは、精製に適していない。好ましい実施態様において、補助タンクは、1つ又はそれより多くの浸漬バーナーを含む。実際に、驚くべきことに、補助タンクに浸漬されたバーナーの使用が、形成される無機材料のレドックスのより良好な制御及びより低いレドックス値の達成の両方を可能にすることが観察された。いかなる理論に拘束されることを望むものではないが、浸漬バーナーによって引き起こされる撹拌が固体酸化剤の改善された均質化を可能にし、固体酸化剤と溶融物との迅速な反応を促進すると仮定される。
【0023】
本発明に係る方法は、カーボン粒子の量を制限する観点においてより高い品質を有する、リサイクル材料に由来する無機材料、典型的にはカレットを得、レドックスを制御することを可能にする。
【0024】
本発明に係る方法は、カーボン粒子の量を制限する観点においてより高い品質を有する、リサイクル材料に少なくとも部分的に由来する無機材料、典型的にはカレットを得、レドックスを制御することを可能にする。したがって、本発明はさらに、ガラス溶融方法において原材料として用いることができ、本発明に係る方法によって得ることができ、有機物を含むリサイクル材料に少なくとも部分的に由来し、カーボン粒子を本質的に含まない、無機材料に関する。
【0025】
本発明に係る無機材料は、好ましくは、溶融方法において原材料として用いられることが意図される、主にリサイクル材料由来(典型的には少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも70質量%、より優先的には少なくとも80質量%、さらには少なくとも90質量%)のカレットである。それは、液体形態(典型的には溶融ガラスの浴)である高温カレットであってよく、固体形態(典型的には粉砕ガラス粒子又は粒状ガラス粒子)である低温カレットであってもよい。
【0026】
本発明に係る無機材料は、カーボン粒子を本質的に含まない。この点において、それは、典型的には、0.1%未満、好ましくは0.05%未満、さらには0.01%未満の総炭素量を有する。総炭素量は、二酸素雰囲気の下で、典型的には1300℃で無機材料を溶融させ、赤外分光分析によって、放出される二酸化炭素の量を測定することにより決定される。
【0027】
無機材料は、典型的には、0.95未満、好ましくは0.9未満、より優先的には0.7未満、さらには0.5未満のレドックス、例えば、0.1、0.15若しくは0.2~0.9若しくは0.7若しくは0.5、例えば0.1~0.9又は0.2~0.7のレドックスを有する。特定の実施態様において、無機材料は、0.3又は0.5~0.9又は0.7のレドックスを有してよい。別の実施態様において、無機材料は、0.1又は0.15~0.5又は0.3のレドックスを有してよい。レドックスは、Feで表される第一鉄含有量(Fe2+)と、Feで表される総鉄含有量との質量比に対応する。
【0028】
典型的には、無機材料は、少なくとも0.05のバブルの体積分率を有する。バブルBの体積分率は、式B=1-(ρバルク/ρガラス)に従って、ガラスの密度ρガラスに対するガラスブロックの見掛け密度ρバルクを評価することにより決定することができる。
【0029】
典型的には、無機材料は、質量割合で、以下の構成成分を含む組成を有し、これは、以下の範囲によって規定される:
SiO 35~80%、
Al 0~30%
CaO+MgO 2~35%、
NaO+KO 0~30%。
ここで、SiO及びAl含有量の合計は、好ましくは50~80質量%である。
【0030】
好ましくは、無機材料は、典型的には、以下の範囲によって規定される質量割合で、以下の構成成分を含む組成を有する:
SiO 50~75%、
Al 0~8%、
CaO+MgO 2~20%、
Fe 0~2%、
NaO+KO 12~20%。
0~10%。
【0031】
カーボン粒子の量を制限し、レドックスを制御することによって、本発明に係る無機材料は、有利には、ガラス溶融方法、特に電気溶融における原材料として、乱れのリスクなしで用いることができる。特に、サルフェートを有する原材料の存在下でのフォームを回避することができ、溶融温度の上昇を制限することができる。
【0032】
本発明はさらに、ミネラルウールの製造方法に関し、この方法は、繊維化される溶融物を提供することと、繊維化される溶融物を繊維化することとを含み、繊維化される溶融物が、本発明に係る無機材料に少なくとも部分的に由来するか、本発明に係る無機材料の製造方法によって得られることを特徴とする。一定の実施態様において、溶融物を提供するステップは、原材料(1種又は複数種)の混合物を提供することと、適切な場合には、原材料(1種又は複数種)の混合物を溶融させて、繊維化される溶融物を得ることとを含み、原材料(1種又は複数種)の混合物は、少なくとも20質量%、好ましくは少なくとも50質量%、さらには少なくとも70質量%、さらには少なくとも80質量%の、本発明に係る無機材料又は本発明に係る無機材料の製造方法によって得られる無機材料を含む。特定の実施態様において、原材料(1種又は複数種)の混合物及び結果的に繊維化される溶融物は、本質的に本発明に係る無機材料で構成される。繊維化される溶融物は、本発明に係る無機材料の製造方法に直接由来する高温カレットであってよい。この場合、ミネラルウールの製造方法は、上記の方法に従った無機材料の製造であって、前記無機材料は溶融した無機材料である、製造と、溶融した無機材料の繊維化とを含む。特に、無機材料は、好ましくは、補助タンクの出口で繊維化部材に運ばれる。代わりに、溶融物は、本発明に係る無機材料の製造方法に由来する低温カレットを溶融させることにより得ることができる。この場合、ミネラルウールの製造方法は、上記の方法に従った無機材料の製造であって、無機材料は固体の無機材料である製造と、繊維化される溶融物を得るための固体の無機材料の溶融と、繊維化される溶融物の繊維化とを含む。
【0033】
繊維化は、当業者に知られている任意の方法によって実施することができる。それは、特に、外部遠心による繊維化方法であっても、内部遠心による繊維化方法であってもよい。外部遠心方法は、典型的には、例えば出願EP0465310又はEP0439385に記載されるように、繊維化される溶融物が分配装置によって供給される遠心ホイールのカスケードを用いる。内部遠心方法において、繊維化される溶融物の流れは繊維化皿へ導入され、それは、高速で回転しかつその周囲には非常に多数のオリフィスが穿孔されており、そこを通して、ガラスが遠心力の効果に起因してフィラメントの形態で放出される。次いで、これらのフィラメントは、スピナの壁に沿って進む高温かつ高速の環状の引張流れの作用にさらされ、その流れは、フィラメントを細くし、フィラメントを繊維に変換する。繊維化は、好ましくは、特に出願FR1382917に記載の繊維化部材を用いて、内部遠心によって実施される。
【0034】
最後に、本発明は、本発明に係る無機材料から、又は本発明に係る無機材料の製造方法により得られる無機材料から、直接得られるミネラルウールに関する。言いかえれば、ミネラルウールは、本発明に係る無機材料又は本発明に係る無機材料の製造方法により得られる無機材料で構成された溶融物から得られる。そのため、本発明に係るミネラルウールは、本発明に係る無機材料と同じ組成を有する。したがって、無機材料に関して記載された組成物の(総炭素含有量及びレドックスなどの)特徴は、本発明に係るミネラルウールにも当てはまる。特に、本発明に係るミネラルウールは、有機物を含むリサイクル材料に少なくとも部分的に由来すること、及びカーボン粒子を本質的に含まないことを特徴とする。
【実施例
【0035】
本発明は、以下の非限定的な例によって示される。
【0036】
以下の例の各々において、8質量%の有機化合物を含む、100%の粉砕されたミネラルウール廃棄物からなるガラス化可能な材料の混合物は、バッチ投入機を用いて浸漬バーナー炉に導入される。
【0037】
第一の一連の例(C1、I1及びI2)は、0.5m表面の耐火壁(R)を備える主タンク、及び酸素と天然ガスとの体積流量の比が2.5である酸素/天然ガス混合物が供給される150kWの浸漬バーナーを含むSBM炉において製造される。これらの3つの例において、主タンクは、30Nm/hの酸素流量を供給する酸素バブラーをさらに含む。炉の抜き出し量は、10t/dである。
【0038】
第二の一連の例(C2、I3及びI4)は、0.3mの表面積を有する、水ジャケット(WJ)と呼ばれる耐火壁を備える主タンク、及び酸素と天然ガスとの体積流量の比が2.5である酸素/天然ガス混合物が供給される3つの110kWの浸漬バーナーを含むSBM炉において製造される。炉の抜き出し量は、3t/dである。
【0039】
本発明に係る例I1において、酸化マンガン(MnO)は、粉砕されたミネラルウールと混合されて主タンクへ導入される。
【0040】
本発明に係る例I2~I4において、主タンクの出口で得られた溶融物は補助タンクへ移され、酸化マンガン(MnO)は補助タンクのフィーダーチャネルで導入される。例I2において、補助タンクは、主タンクと同様の浸漬バーナーを備える耐火壁タンク(R)である。例I3において、補助タンクは、溶融物の流路上にエアバーナー及びバブラーを備える耐火性タンク(R)である。例I4において、補助タンクは、主タンクと同様の浸漬バーナーを備える水ジャケット(WJ)と呼ばれるタンクである。
【0041】
例I1~I4の各々において、酸化マンガンは、2質量%の抜き出し量で導入され、これは、I1及びI2について8.3kg/h、I3及びI4について2.5kg/hのマスフローレートである。
【0042】
例C1、C2は、固体酸化剤が導入されていない比較例である。
【0043】
溶融物は、主タンク(C1、C2及びI1)、又は補助タンク(I2、I3及びI4)の出口でカレットの形態で回収される。製造したカレット組成及びその特性は、表1に要約される。
【0044】
カーボン粒子の存在は、目視観測によって決定される:
「+」は、肉眼で見えるカーボン粒子があることを示し、「-」は、肉眼で見えるカーボン粒子がないことを示す。
【0045】
炭素の総量は、二酸素雰囲気の下で、1300℃で無機材料を溶融させ、赤外分光分析によって、放出される二酸化炭素の量を測定することにより決定される。
【0046】
レドックスは、湿式FeO分析によって決定される。
【表1】
【0047】
例C1及びC2において得られるカレットと比較して、本発明に係る例I1~I3のカレットは、それらがカーボン粒子を本質的に含まないことだけでなく、レドックスのより良好な制御に起因して、品質がより良好であると分かる。特に、例I2~I4でのように、主タンクの下流で酸化剤を導入することによって、導入される酸化剤の量に応じて、所望のレドックスを比較的低い値に調節することが可能となる。
【国際調査報告】