(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ケイ素含有材料
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20231129BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231129BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20231129BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20231129BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20231129BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20231129BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231129BHJP
C01B 33/18 20060101ALI20231129BHJP
C01B 33/12 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/134
H01M4/62 Z
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M10/0566
H01M10/052
C01B33/18 Z
C01B33/12 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532578
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2020083890
(87)【国際公開番号】W WO2022111828
(87)【国際公開日】2022-06-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ、ドレガー
(72)【発明者】
【氏名】エクハルト、ハネルト
(72)【発明者】
【氏名】アレナ、カリヤキナ
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア、クラインライン
【テーマコード(参考)】
4G072
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072AA38
4G072BB05
4G072DD03
4G072DD04
4G072HH30
4G072JJ34
4G072JJ39
4G072JJ42
4G072LL04
4G072TT01
4G072TT05
4G072TT08
4G072UU30
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
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5H029DJ08
5H029HJ01
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5H029HJ20
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB11
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5H050DA11
5H050EA01
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5H050FA13
5H050GA02
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA09
5H050HA17
5H050HA19
(57)【要約】
本発明は、1または複数の多孔質粒子とケイ素とに基づくケイ素含有材料に関し、前記ケイ素は、細孔内および多孔質粒子の表面上に配置され、ケイ素含有材料は、窒素収着およびBET評価によって決定される、最大で50m2/gの比表面積を有し、多孔質粒子は、a)少なくとも2kΩの平均電気粒子抵抗、およびb)最大100mAh/gの可逆的脱リチウム容量βを有することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の多孔質粒子とケイ素とを含有するケイ素含有材料であって、
前記ケイ素は、細孔内および多孔質粒子の表面上に配置され、前記ケイ素含有材料は、窒素収着およびBET評価によって決定される、最大で50m
2/gの比表面積を有し、多孔質粒子は、
a)少なくとも2kΩの平均電気粒子抵抗、および
b)最大100mAh/gの可逆的脱リチウム容量β。
ことを特徴とする、ケイ素含有材料。
【請求項2】
前記多孔質粒子は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、ケイ素-アルミニウム混合酸化物、酸化マグネシウム、酸化鉛、および酸化ジルコニウムからなる群より選択される酸化物、炭化ケイ素および炭化ホウ素から選択される炭化物、ならびに、窒化ケイ素および窒化ホウ素から選択される窒化物から選択される1または複数の材料を含む、請求項1に記載のケイ素含有材料。
【請求項3】
前記多孔質粒子は、下記一般式:
Al
aB
bC
cMg
dN
eO
fSi
g
(式中、0≦a、b、c、d、e、f、g≦1であるが、a~gのうち少なくとも2つの係数は>0であり、a×3+b×3+c×4+d×2+g×4≧e×3+f×2である。)
で表されるセラミック材料であって、
非化学量論的窒化ホウ素BNz(式中、z=0.2~1)、
非化学量論的炭素窒化物CNz(式中、z=0.1~4/3)
炭窒化ホウ素BxCNz(式中、x=0.1~20、z=0.1~20、x×3+4≧z×3)、
窒化ホウ素系酸化物BNzOr(式中、z=0.1~1、r=0.1~1、3≧r×2+z×3)、
炭窒化ホウ素酸化物BxCNzOr(式中、x=0.1~2、z=0.1~1、r=0.1~1、x×3+4≧r×2+z×3、
ケイ素炭素酸化物SixCOz(式中、x=0.1~2、z=0.1~2、x×4+4≧z×2、
シリコン炭窒化物SixCNz(式中、x=0.1~3、z=0.1~4、x×4+4≧z×3、
ケイ素ホウ素炭窒化物SiwBxCNz(式中、w=0.1~3、x=0.1~2、z=0.1~4、w×4+x×3+4≧z×3、
ケイ素ホウ素炭素酸化物SiwBxCOz(式中、w=0.10~3、x=0.1~2、z=0.1~4、w×4+x×3+4≧z×2)、
ケイ素ホウ素炭窒化物酸化物SivBwCNxOz(式中、v=0.1~3、w=0.1~2、x=0.1~4、z=0.1~3、v×4+w×3+4≧x×3+z×2、u=0.1~2、v=0.1~2、w=0.1~4、x=0.1~2、z=0.1~3、u×3+v×3+x×4+4≧w×3+z×2)
を含む群より選択されるセラミック材料を含む、請求項1または2に記載のケイ素含有材料。
【請求項4】
前記多孔質粒子は、ヘリウムピクノメトリーによって決定される密度0.1~7g/cm
3を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のケイ素含有材料。
【請求項5】
前記多孔質粒子は、直径パーセンタイルd
50が0.5~20μmの体積加重粒度分布を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のケイ素含有材料。
【請求項6】
前記ケイ素含有材料は、直径パーセンタイルd
50が0.5~20μmの体積加重粒度分布を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のケイ素含有材料。
【請求項7】
前記ケイ素含有材料は、全細孔容積に基づいて、最大30%のマクロ細孔を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のケイ素含有材料。
【請求項8】
前記ケイ素含有材料は、最大5nmの直径の細孔を少なくとも1~50%以上有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のケイ素含有材料。
【請求項9】
前記ケイ素含有材料は、少なくとも30重量%の、ケイ素前駆体からの熱分解から得られるケイ素を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のケイ素含有材料。
【請求項10】
前記ケイ素含有材料は、ケイ素前駆体からの熱分解を介して得られたシリコンと少なくとも同じ全細孔容積を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のケイ素含有材料。
【請求項11】
最大1μmの層厚を有するケイ素粒子から形成された層の形態にある前記多孔質粒子の細孔中または外表面にケイ素が存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載のケイ素含有材料。
【請求項12】
1または複数の多孔質粒子の存在下で、1または複数のケイ素前駆体を熱分解して、ケイ素を細孔内および多孔質粒子の表面上に析出させて、ケイ素含有材料を製造する方法であって、
前記ケイ素含有材料は、窒素収着およびBET評価によって決定される、最大で50m
2/gの比表面積を有し、
前記多孔質粒子が
a)少なくとも2kΩの平均電気粒子抵抗、および
b)最大100mAh/gの可逆的脱リチウム容量β
を有することを特徴とする、方法。
【請求項13】
ケイ素が、流動床反応器、水平から垂直まで配向したロータリーキルン、開放系または閉鎖系固定床反応器、および圧力反応器から選択される反応器内において、堆積する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
リチウムイオン電池に使用される負極材料であって、
請求項1~11のいずれか一項に記載のケイ素含有材料を5~95重量%、
1または複数の更なる電気伝導性成分を0~90質量%、
グラファイトを0~90質量%、
バインダーを0~25重量%、および
更なる添加剤を0~80重量%
含む(ここで、重量%は負極材料の全重量を指し、負極材料の全構成成分の割合は最大100重量%である。)ことを特徴とする、負極材料。
【請求項15】
請求項14に記載の負極材料で被覆された集電体を備える負極。
【請求項16】
陽極と、負極と、電極への2つの導電性接続部と、セパレータと、セパレータおよび2つの電極が含浸された電解液と、特定された部品を収容するハウジングとを備えるリチウムイオン電池であって、前記負極が請求項1~11のいずれか一項に記載のケイ素含有材料を含む、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質粒子とケイ素とに基づくケイ素含有材料、その製造方法、およびリチウムイオン電池の負極活物質としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、電流の貯蔵媒体として、現在、最も高いエネルギー密度を持つ実用的な電気化学エネルギー貯蔵装置である。リチウムイオン二次電池は、主に携帯電子機器、工具、また自転車、スクーター、自動車などの電動移動手段の分野で使用されている。現在、グラファイトカーボンは対応する電池の負極(アノード)の活物質として広く使用されている。しかし、このような黒鉛質カーボンの電気化学的容量は比較的低いという欠点があり、理論的には黒鉛1グラム当たり最大でも372mAhであり、したがってリチウム金属で理論的に達成できる電気化学的容量の約10分の1にしか相当しない。負極の代替活物質としては、例えば欧州特許1730800 B1、米国特許10,559,812B2、米国特許10,819,400B2、欧州特許3335262B1に記載されているように、シリコンを添加したものがある。シリコンはリチウムと二元電気化学的に活性な合金を形成し、シリコン1グラムあたり最大3579mAhという非常に高い電気化学的達成可能なリチウム含有量を可能にする(M. Obrovac, V.L. Chevrier Chem. Rev. 2014, 114, 11444)。
【0003】
ケイ素へのリチウムイオンの取り込みと除去は、体積変化が非常に大きいという欠点を伴う。このような体積変化は、ケイ素を含む活物質に厳しい機械的応力を与え、その結果、活物質は最終的に粉々になる可能性がある。このプロセスは電気化学的粉砕とも呼ばれ、活物質と電極構造の電気的接触が失われ、電極の容量が持続的かつ不可逆的に失われる。
【0004】
さらに、ケイ素含有活物質の表面は電解液の成分と反応し、不動態化保護層(固体電解質界面相:SEI)を連続的に形成する。形成された成分はもはや電気化学的に活性ではない。そこに結合したリチウムはシステムで利用できなくなるため、電池容量が連続的に著しく低下する。電池の充放電過程でケイ素の体積が極端に変化するため、SEIは定期的に破裂し、ケイ素含有活物質の未占有の表面がさらに露出し、SEIがさらに形成される。使用可能な容量に相当するフルセル中の可動リチウムの量は正極材料によって制限されるため、正極材料は次第に消費され、セルの容量は、適用という観点で、僅か数サイクルで許容できない程度まで低下する。
【0005】
数回の充放電を繰り返すうちに容量が減少することは、フェージングまたは連続的な容量低下とも呼ばれ、通常は不可逆的である。
【0006】
一連のケイ素-炭素複合粒子は、リチウムイオン電池負極用の活物質として記載されており、ケイ素は、気体または液体の前駆体から出発して多孔性炭素粒子に組み込まれる。例えば、米国特許10,147,950 B2には、CVD(化学気相成長)またはPE-CVD(プラズマ強化化学気相成長)プロセスにより、好ましくは粒子を撹拌しながら、300~900℃の高温の管状炉または同等の炉型において、モノシランSiH4から多孔質炭素中にケイ素を蒸着することが記載されている。類似の手順は米国特許10,424,786B1に記載されており、ケイ素前駆体は不活性ガスとの混合物として1.013barの全圧で導入される。国際公開第2012/097969号には、ケイ素前駆体としてシランを多孔質炭素担体上に200~950℃で加熱することにより1~20nmの超微細ケイ素粒子を堆積させること記載されており、堆積したケイ素粒子の凝集や厚い層の形成を防ぐためにシランは不活性ガスで希釈され、堆積は0.1~5barの圧力範囲で行われる。
【0007】
上記したプロセスから利用可能なケイ素含有材料は、ケイ素含有材料がリチウムイオン電池用負極の活物質として使用される場合、ケイ素に加えて炭素もケイ素含有材料の電気化学的容量にある程度寄与するという点で共通している。多くの場合、使用される炭素は非晶質構造であるため、制限された電位差の中で電気化学的サイクル中に不釣り合いな量のリチウムがケイ素含有材料中に残留し、特に携帯電話への応用の場合、理論的に可能な範囲を完全に網羅することができず、さらなるサイクルには利用できない(トラッピング)。そのため、全容量が使用できず、このような用途に既知のケイ素含有材料を使用するのは不利である。
【0008】
さらに、約800℃を超える温度でのケイ素の析出は、限定された範囲でのみ可能であるという欠点がある。これは、ガス状ケイ素前駆体に対する非晶質炭素の高い反応性のために炭化ケイ素の形成が起こり得るためであり、炭化ケイ素はケイ素とは異なり、リチウムイオンの電気化学的貯蔵に使用することができないため、ケイ素含有材料のリチウムイオンの貯蔵能力を大幅に低下させる可能性がある。さらに、このような高温では、焼結プロセスによって多孔質粒子の多孔性の少なくとも一部が失われる危険性がある。
【0009】
米国特許9,005,818 B2には、ガス状ケイ素前駆体からメソポーラス二酸化ケイ素マトリックスにケイ素を析出させることによって得られる、リチウムイオン電池用のケイ素含有負極活物質が記載されている。このようにして得られた生成物は、メソポーラス二酸化ケイ素マトリックスの重量に基づいて、0.05~100%の量のケイ素を含有し、窒素吸着によって決定される0.2~0.5ml/gの細孔容積および150~1000m2/gのBET表面を有する。対応するリチウムイオン電池の初期クーロン効率とサイクル安定性はまだ満足できるものではない。
【発明の概要】
【0010】
このような背景から、リチウムイオン二次電池の負極活物質として使用される場合、セル内で利用可能なリチウムの初期および継続的な損失が少なく、したがって高いクーロン効率と、さらにその後のサイクルにおける安定した電気化学的挙動を可能にするケイ素含有材料を提供することが目的であった。フェーディングやトラッピングは可能な限り小さいことが望ましい。
【0011】
驚くべきことに、本発明の目的は、1つ以上の多孔質粒子およびケイ素をベースとするケイ素含有材料を用いて達成することができ、ケイ素は、細孔内および多孔質粒子の表面上に配置され、ケイ素含有材料は、窒素収着およびBET評価によって決定される、多くとも50m2/gの比表面積を有し、多孔質粒子は、少なくとも2kΩの平均電気粒子抵抗および多くとも100mAh/gの可逆的脱リチウム容量βを有することを特徴とする。通常、例えば非常に低い電子抵抗を有する炭素の電子伝導性層を備えているため、電子伝導性が低く、したがって電気粒子抵抗が高いリチウムイオン二次電池用活物質は、特に驚くべきことである。これは、例えば欧州特許出願公開3678990A1などで正極活物質として使用されているリン酸鉄リチウムや、欧州特許1323783B1などで負極活物質として使用されている亜酸化ケイ素SiOxなどで知られている。この点に関して、一般に、リチウムイオン電池の負極活物質として使用するケイ素含有材料の出発材料としての多孔質粒子の平均粒子抵抗は、そのようなケイ素含有材料の容量および電極内の必要な導電性を十分に利用できるようにするために、2kΩ未満であるべきであると想定されている。一般的に、多孔性炭素の粒子抵抗率はこのように低い。これに対して、驚くべきことに、多孔質粒子の平均電気粒子抵抗が2kΩ以上であっても、得られるケイ素含有材料の電気伝導度は、リチウムイオン電池の負極活物質としての用途において全容量を使用可能にするのに十分であることが見出された。
【0012】
本発明は、1または複数の多孔質粒子とケイ素とに基づくケイ素含有材料に関し、前記ケイ素は、細孔内および多孔質粒子の表面上に配置され、ケイ素含有材料は、窒素収着およびBET評価によって決定される、最大で50m2/gの比表面積を有し、多孔質粒子は、以下を有することを特徴とする。
a)少なくとも2kΩの平均電気粒子抵抗、および
b)最大100mAh/gの可逆的脱リチウム容量β。
【0013】
ケイ素含有材料に使用できる多孔質粒子は、任意の材料であり、その粒子は、少なくとも2kΩの平均電気粒子抵抗を有し、最大100mAh/g、好ましくは0~100mAh/g、特に好ましくは2~80mAh/gの可逆的脱リチウム容量βを有する。
【0014】
本発明において、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、ケイ素-アルミニウム混合酸化物、酸化マグネシウム、酸化鉛および酸化ジルコニウム等の酸化物、炭化ケイ素および炭化ホウ素等の炭化物、窒化ケイ素および窒化ホウ素等の窒化物、ならびに、下記成分式:
AlaBbCcMgdNeOfSig
(式中、0≦a、b、c、d、e、f、g≦1であるが、a~gのうち少なくとも2つの係数は>0であり、a×3+b×3+c×4+d×2+g×4≧e×3+f×2である。)
で表され得るような他のセラミック材料が好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
セラミック材料は、例えば、二元、三元、四元、五元、六元または七元の化合物とすることができる。以下の成分式を有するセラミック材料が好ましく用いられる。
非化学量論的窒化ホウ素BNz(式中、z=0.2~1)、
非化学量論的炭素窒化物CNz(式中、z=0.1~4/3)
炭窒化ホウ素BxCNz(式中、x=0.1~20、z=0.1~20、x×3+4≧z×3)、
窒化ホウ素系酸化物BNzOr(式中、z=0.1~1、r=0.1~1、3≧r×2+z×3)、
炭窒化ホウ素酸化物BxCNzOr(式中、x=0.1~2、z=0.1~1、r=0.1~1、x×3+4≧r×2+z×3、
ケイ素炭素酸化物SixCOz(式中、x=0.1~2、z=0.1~2、x×4+4≧z×2、
シリコン炭窒化物SixCNz(式中、x=0.1~3、z=0.1~4、x×4+4≧z×3、
ケイ素ホウ素炭窒化物SiwBxCNz(式中、w=0.1~3、x=0.1~2、z=0.1~4、w×4+x×3+4≧z×3、
ケイ素ホウ素炭素酸化物SiwBxCOz(式中、w=0.10~3、x=0.1~2、z=0.1~4、w×4+x×3+4≧z×2)、
ケイ素ホウ素炭窒化物酸化物SivBwCNxOz(式中、v=0.1~3、w=0.1~2、x=0.1~4、z=0.1~3、v×4+w×3+4≧x×3+z×2、u=0.1~2、v=0.1~2、w=0.1~4、x=0.1~2、z=0.1~3、u×3+v×3+x×4+4≧w×3+z×2)
【0016】
好ましい多孔質粒子は、二酸化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、またはこれらの化合物をベースとする混合材料、特に二酸化ケイ素または窒化ホウ素をベースとする混合材料である。
【0017】
特に好ましい多孔性粒子は、多孔性窒化ホウ素粒子、特に多孔性酸化ケイ素粒子であり、特にナノ多孔性酸化ケイ素粒子が好ましい。
【0018】
多孔質粒子の合成は、一般にゾル-ゲル合成に基づいで実施することができ、例えば、シリカゲル、エアロゲルまたはキセロゲルについては、M. Kato, K. Sakai-Kato, T Toyo'oka, J. Sep. Science, 2005, 28, 1893-1908に記載されている。10nm以下の細孔構造を有し、同時に高い細孔容積を有するSiO2材料は、好ましくは、非常に小さな基本単位(SiO2粒子、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)単位)を用いたゾル-ゲルプロセスを用いて調製される。細孔特性は、例えば、温度、触媒の種類、濃度などの反応条件や、シラン官能基化によって調整することができる。その他の影響因子としては、例えばゲルの乾燥条件やアニーリングなどの後処理がある。100nmより小さい細孔径で90%以上の空孔率は、例えばゲルの超臨界乾燥により達成可能である。10nm以下の細孔径を有するゼロゲルは、対流乾燥によっても得ることができる。
【0019】
多孔質粒子は、好ましくは、ヘリウムピクノメトリーによって決定される密度が0.1~7g/cm3、特に好ましくは0.3~3g/cm3である。これは、リチウムイオン電池の重量容量(mAh/cm3)を増加させるのに有利である。
【0020】
多孔質粒子は、好ましくは≧0.5μm、特に好ましくは≧1.5μm、最も好ましくは≧2μmの直径パーセンタイルd50を有する体積加重粒度分布を有する。直径パーセンタイルd50は、好ましくは≦20μm、より好ましくは≦12μm、最も好ましくは≦8μmである。
【0021】
多孔質粒子の体積加重粒度分布は、好ましくは直径百分率d10≧0.2μm~d90≦20.0μm、特に好ましくはd10≧0.4μm~d90≦15.0μm、最も好ましくはd10≧0.6μm~d90≦12.0μmである。
【0022】
多孔質粒子は、好ましくは≦10μm、特に好ましくは≦5μm、特に好ましくは≦3μm、最も好ましくは≦2μmの直径パーセンタイルd10を有する体積加重粒度分布を有する。直径パーセンタイルd10は、好ましくは≧0.2μm、特に好ましくは≧0.5μm、最も好ましくは≧1μmである。
【0023】
多孔質粒子は、好ましくは≧4μm、特に好ましくは≧8μmの直径パーセンタイルd90を有する体積加重粒度分布を有する。直径パーセンタイルd90は、好ましくは≦18μm、より好ましくは≦15μm、最も好ましくは≦13μmである。
【0024】
多孔質粒子の体積加重粒度分布は、好ましくは≦15.0μm、より好ましくは≦12.0μm、特に好ましくは≦10.0μm、特に好ましくは≦8.0μm、最も好ましくは≦4.0μmの幅d90-d10を有する。多孔質粒子の体積加重粒度分布は、好ましくは≧0.6μm、特に好ましくは≧0.7μm、最も好ましくは≧1.0μmの幅d90-d10を有する。
【0025】
体積加重粒度分布は、ISO 13320に従って、多孔質粒子の分散媒としてエタノールを用い、Horiba LA 950測定装置を用いてMieモデルを用いた静的レーザー散乱法により測定することができる。
【0026】
多孔性粒子は、例えば、単離されたものでも凝集したものでもよい。多孔質粒子は好ましくは非凝集体であり、好ましくは非凝集体である。凝集しているとは、一般に、多孔質粒子の製造過程で、一次粒子が最初に形成され、一緒に成長すること、および/または一次粒子が、例えば共有結合を介して互いに連結され、このようにして凝集体を形成することを意味する。一次粒子は一般に孤立粒子である。凝集体または孤立粒子は凝集体を形成することがある。凝集体は、例えばファンデルワールス相互作用または水素結合を介して互いに結合した凝集体または一次粒子の緩やかな集積体である。凝集した凝集体は、一般的な混練工程や分散工程により、容易に再び凝集体に分割することができる。凝集体は、そのような工程で一次粒子に部分的にしか分解できない。凝集体、凝集塊または孤立粒子の形態の多孔質粒子の存在は、例えば従来の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて可視化することができる。対照的に、マトリックス粒子の粒度分布または粒子径を決定するための静的光散乱法では、凝集体と凝集体を区別することはできない。
【0027】
多孔質粒子はどのような形態を有していてもよく、例えば、分割状、薄片状、球状、あるいは針状であってもよく、分割状または球状の粒子が好ましい。
【0028】
ワーデルの定義によれば、真球度φは、体積が等しい球体の表面積と実際の表面積との比である。この定義によれば、多孔質粒子は、好ましくは0.3~1.0、特に好ましくは0.5~1.0、最も好ましくは0.65~1.0の真球度φを有する。
【0029】
真球度Sは、表面に投影された粒子の投影と同じ面積Aを持つ等価円の円周と、この投影の円周の測定値Uの比(S=2√πA/U)である。理想的な円形粒子の場合、Sは値1となる。多孔質粒子の場合、真球度Sは、真球度数分布のパーセンタイルS10~S90に基づいて、好ましくは0.5~1.0、特に好ましくは0.65~1.0の範囲にある。真球度Sの測定は、例えば、光学顕微鏡による個々の粒子の顕微鏡写真を参照するか、10μm未満の粒子の場合には、好ましくはImageJのような画像解析ソフトウェアを用いたグラフ評価により走査型電子顕微鏡を用いて行う。
【0030】
多孔質粒子は、好ましくは≧0.2cm3/g、特に好ましくは≧0.6cm3/g、最も好ましくは≧1.0cm3/gのガスにアクセス可能な細孔容積を有する。これは、高容量のリチウムイオン電池を得るのに好都合である。ガス吸着可能な細孔容積は、DIN 66134に準拠した窒素によるガス吸着測定によって決定される。
【0031】
多孔質粒子は、好ましくは開気孔である。開気孔とは、一般に、気孔が例えば流路を介して粒子表面に連通しており、好ましくは環境と物質を交換し、特にガス状化合物を交換できることを意味する。このことは、ガス収着測定(Brunauer, Emmett and Teller, "BET "に従った分析)、すなわち比表面積によって実証することができる。
【0032】
多孔質粒子は、好ましくは≧50m2/g、特に好ましくは≧500m2/g、最も好ましくは≧1000m2/gの比表面積を有する。BET比表面積は、DIN 66131(窒素使用)に従って測定される。
【0033】
多孔質粒子の細孔は任意の直径を有してよく、一般的にはマクロ孔(50nm以上)、メソ孔(2~50nm)、ミクロ孔(2nm未満)の範囲である。多孔質粒子は、異なる細孔タイプの任意の混合物で使用することができる。好ましくは、全細孔容積に基づいて、最大30%のマクロ細孔を有する多孔質粒子、特に好ましくはマクロ細孔を有さない多孔質粒子、特に好ましくは5nm未満の平均細孔直径を有する細孔を少なくとも50%有する多孔質粒子を使用することが好ましい。多孔質粒子は、特に好ましくは、2nm未満の細孔直径を有する細孔のみを有する(決定方法:メソ細孔範囲ではDIN 66134に従ったBJH(ガス吸着)に従った細孔径分布、ミクロ細孔範囲ではDIN 66135に従ったHorvath-Kawazoe(ガス吸着)に従った細孔径分布;マクロ細孔範囲での細孔径分布は、DIN ISO 15901-1に従った水銀ポロシメトリーによって評価される)。
【0034】
好ましくは0.3cm3/g未満、特に好ましくは0.15cm3/g未満の気体にアクセスできない細孔容積を有する多孔性粒子である。これはまた、リチウムイオン電池の容量を増加させるために使用することができる。ガス不透過性の細孔容積は、以下の式で求めることができる。
ガス不透過性細孔容積=1/純物質密度-1/骨格密度
【0035】
ここで、純物質密度とは、相組成または純物質の密度(閉鎖気孔を有しないものと仮定した場合の密度)に基づく材料の理論的な密度である。純物質密度に関するデータは、例えば米国国立標準研究所(NIST, https://srdata.nist.gov/CeramicDataPortal/scd)のセラミック・データ・ポータルサイトから当業者であれば見つけることができる。例えば、酸化ケイ素SiO2の純物質密度は2.203g/cm3、窒化ホウ素BNの純物質密度は2.25g/cm3、窒化ケイ素Si3N4の純物質密度は3.44g/cm3、炭化ケイ素SiCの純物質密度は3.21g/cm3である。骨格密度は、ヘリウムピクノメトリーによって測定された多孔質粒子の実際の密度(ガス透過性)である。
【0036】
明確にするために、多孔質粒子はケイ素含有材料とは異なることに留意すべきである。多孔質粒子は、ケイ素含有材料を製造するための出発材料として機能する。一般に、多孔質粒子の細孔内および多孔質粒子の表面には、好ましくはケイ素、より詳細にはケイ素前駆体の堆積によって得られたケイ素は存在しない。
【0037】
細孔内および多孔質粒子の表面へのケイ素の堆積によって得られるケイ素含有材料は、好ましくは0.5~20μmの範囲の直径百分率d50を有する体積加重粒度分布を有する。d50値は、好ましくは少なくとも1.5μmであり、特に好ましくは少なくとも2μmである。直径パーセンタイルd50は、好ましくは多くとも13μm、特に好ましくは多くとも8μmである。
【0038】
ケイ素含有材料の体積加重粒度分布は、好ましくは直径百分率d10≧0.2μm~d90≦20.0μmであり、特に好ましくはd10≧0.4μm~d90≦15.0μmであり、最も好ましくはd10≧0.6μm~d90≦12.0μmである。
【0039】
ケイ素含有材料は、好ましくは≦10μm、特に好ましくは≦5μm、特に好ましくは≦3μm、最も好ましくは≦1μmの直径パーセンタイルd10を有する体積加重粒度分布を有する。直径パーセンタイルd10は、好ましくは≧0.2μm、特に好ましくは≧0.4μm、最も好ましくは≧0.6μmである。
【0040】
ケイ素含有材料は、好ましくは≧5μm、特に好ましくは≧10μmの直径パーセンタイルd90を有する体積加重粒度分布を有する。直径パーセンタイルd90は、好ましくは≦20.0μm、特に好ましくは≦15.0μm、最も好ましくは≦12.0μmである。
【0041】
ケイ素含有材料の体積加重粒度分布は、好ましくは≦15.0μm、特に好ましくは≦12.0μm、より好ましくは≦10.0μm、特に好ましくは≦8.0μm、最も好ましくは≦4.0μmの幅d90-d10を有する。ケイ素含有材料の体積加重粒度分布は、好ましくは≧0.6μm、特に好ましくは≧0.7μm、最も好ましくは≧1.0μmの幅d90-d10を有する。
【0042】
ケイ素含有材料は、好ましくは粒子の形態である。粒子は単離されていても凝集していてもよい。ケイ素含有活性材料は、好ましくは非凝集体であり、好ましくは非凝集体である。孤立、凝集および非凝集という用語は、多孔質粒子に関して既に上記で定義したものである。凝集体または凝集塊の形態のケイ素含有材料の存在は、例えば従来の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて可視化することができる。
【0043】
ケイ素含有材料はどのような形態を有していてもよく、例えば、破片状、薄片状、真球度、または針状であってもよく、破片状または真球度の粒子が好ましい。
【0044】
ワーデルの定義によれば、真球度ψは、体積が等しい球体の表面積と実際の表面積との比である。この定義によれば、ケイ素含有材料は、好ましくは0.3~1.0、特に好ましくは0.5~1.0、最も好ましくは0.65~1.0の真球度ψを有する。
【0045】
真球度Sは、表面に投影された粒子の投影と同じ面積Aを持つ等価円の円周と、この投影の円周の測定値Uの比(S=2√πA/U)である。理想的な円形粒子の場合、Sは値1となる。ケイ素含有材料の場合、真球度Sは、真球度数分布のパーセンタイルS10~S90に基づいて、好ましくは0.5~1.0、特に好ましくは0.65~1.0の範囲にある。真球度Sの測定は、例えば、光学顕微鏡による個々の粒子の顕微鏡写真を参照するか、10μm未満の粒子の場合には、好ましくはImageJのような画像解析ソフトウェアを用いたグラフ評価により走査型電子顕微鏡を用いて行う。
【0046】
リチウムイオン電池のサイクル安定性は、モルフォロジーや材料組成、特にケイ素含有材料の比表面積や内部気孔率によってさらに向上させることができる。
【0047】
ケイ素含有材料は、ケイ素含有材料の総重量に基づいて、好ましくは10~90重量%、より好ましくは20~80重量%、特に好ましくは30~60重量%、特に好ましくは40~50重量%の多孔質粒子を含む。
【0048】
ケイ素含有材料は、ケイ素含有材料の総重量に基づいて、好ましくは10~90重量%、より好ましくは20~80重量%、特に好ましくは30~60重量%、特に好ましくは40~50重量%の、ケイ素前駆体からの堆積を介して得られたシリコンからなる(決定は、好ましくはICP-OESなどの元素分析による)。多孔質粒子が、例えば二酸化ケイ素の形態のケイ素化合物からなる場合、上記のデータは、元素分析によって決定されたケイ素含有材料のケイ素の質量から、元素分析によって決定された多孔質粒子中のケイ素の質量を差し引き、その結果をケイ素含有材料の質量で割ることによって、重量%で決定することができる。
【0049】
ケイ素前駆体からの堆積によって得られたケイ素含有材料中に存在するケイ素の体積は、ケイ素含有材料の全質量におけるケイ素前駆体からの堆積によって得られたケイ素の質量分率をケイ素の密度(2.336g/cm3)で除したものである。
【0050】
ケイ素含有材料の細孔容積Pは、ガス透過性の細孔容積とガス非透過性の細孔容積の合計から得られる。Gurwitschによれば、ケイ素含有材料のガス透過性の細孔容積は、DIN 66134に準拠した窒素によるガス収着測定によって決定することができる。
【0051】
ケイ素含有材料の気体にアクセスできない細孔容積は、次式で求めることができる。
ガス非透過性細孔容積=1/純物質密度-1/骨格密度
【0052】
ケイ素含有材料の純物質密度は、ケイ素含有材料に含まれる成分の理論純物質密度の和に、材料全体に占めるそれぞれの重量割合を乗じた理論密度である。純物質密度は、米国国立標準研究所(NIST, https://srdata.nist.gov/CeramicDataPortal/scd)のセラミック・データ・ポータルサイトで報告されている。骨格密度の決定は、実施例の説明の冒頭で後述する。例えば、ケイ素を含む材料の場合、次のようになる。
純物質密度=ケイ素の理論純物質密度×ケイ素の割合(重量%)+多孔質粒子の理論純物質密度×多孔質粒子の割合(重量%)
【0053】
ケイ素含有材料の細孔容積Pは、ケイ素前駆体からの堆積から得られるケイ素含有材料中に存在するケイ素の体積を基準として、好ましくは0~400体積%の範囲、より好ましくは100~350体積%の範囲、特に好ましくは200~350体積%の範囲である。
【0054】
ケイ素含有材料の気孔率は、ガス透過性であってもよいし、ガス不透過性であってもよい。ケイ素含有材料のガス透過性の気孔率に対するガス非透過性の気孔率の体積の比は、一般に、0(ガス透過性の気孔がない)から1(全ての気孔がガガス非透過性である)の範囲とすることができる。ケイ素含有材料の気体透過性気孔率に対する気体透過性気孔率の比は、好ましくは0~0.8、より好ましくは0~0.3、特に好ましくは0~0.1の範囲である。
【0055】
ケイ素含有材料の細孔は、例えばマクロ細孔(50nm以上)、メソ細孔(2~50nm)およびミクロ細孔(2nm未満)の範囲の任意の直径を有することができる。ケイ素含有材料はまた、異なる細孔タイプの任意の混合物から構成されてもよい。好ましくは、ケイ素含有材料は、全細孔容積に基づいて、多くとも30%のマクロ細孔からなり、特に好ましくは、マクロ細孔を有さないケイ素含有材料であり、特に好ましくは、平均細孔直径が5nm未満の細孔を少なくとも50%有するケイ素含有材料である。特に好ましくは、ケイ素含有材料は、直径がせいぜい2nmの細孔のみからなる。
【0056】
ケイ素含有材料は、少なくとも1つの次元において、好ましくは最大1000nm、より好ましくは100nm未満、特に好ましくは5nm未満の構造サイズを有するケイ素構造を有する(決定方法:走査型電子顕微鏡(SEM)および/または高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM))。
【0057】
ケイ素含有材料は、好ましくは1000nm未満、より好ましくは100nm未満、特に好ましくは5nm未満の層厚を有するケイ素層からなる(決定方法:走査型電子顕微鏡(SEM)および/または高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM))。ケイ素含有材料は、粒子の形態のケイ素を含むこともできる。ケイ素粒子は、好ましくは最大1000nm、より好ましくは100nm未満、特に好ましくは5nm未満の直径を有する(決定方法:走査型電子顕微鏡(SEM)および/または高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM))。ケイ素粒子に関するデータは、好ましくは、顕微鏡画像における粒子の円周の直径に関する。
【0058】
ケイ素含有材料は、多くとも50m2/g、好ましくは30m2/g未満、特に好ましくは10m2/g未満の比表面積を有する。BET比表面積は、DIN 66131(窒素使用)に従って測定される。ケイ素含有材料をリチウムイオン二次電池用負極活物質として使用する場合、SEIの形成を低減し、初期クーロン効率を向上させることができる。
【0059】
さらに、ケイ素含有材料中のケイ素前駆体から堆積されたケイ素は、例えば、Li、Fe、Al、Cu、Ca、K、Na、S、Cl、Zr、Ti、Pt、Ni、Cr、Sn、Mg、Ag、Co、Zn、B、P、Sb、Pb、Ge、Bi、希土類またはそれらの組み合わせからなる群から選択されるドーパントを含んでもよい。Liおよび/またはSnが好ましい。ケイ素含有材料中のドーパントの含有量は、ケイ素含有材料の総重量に基づいて、好ましくは多くとも1重量%、特に好ましくは多くとも100ppmであり、これはICP-OESによって決定することができる。
【0060】
ケイ素含有材料は一般に、圧縮荷重および/またはせん断応力下で驚くほど高い安定性を示す。ケイ素含有材料の圧力安定性および剪断安定性は、例えば、ケイ素含有材料が、圧縮荷重(例えば、電極圧縮中)または剪断応力(例えば、電極調製中)下で、SEMにおいてその多孔質構造に変化を示さないか、またはわずかな変化しか示さないという事実によって実証される。
【0061】
ケイ素含有材料は、一般に、多孔質粒子、ケイ素前駆体から堆積したケイ素、および他の追加元素に加えて、他の成分を含んでいてもよい。特に、炭素が存在することもある。特に、炭素は、最大1μm、好ましくは100nm未満、特に好ましくは5nm未満、特に好ましくは1nm未満の層厚を有する薄層の形態で存在してもよい(SEMまたはHR-TEMによって決定可能)。炭素層は、例えば、細孔の表面および/またはケイ素含有材料の外表面に存在してもよい。ケイ素含有材料中の異なる層の順序およびその数も任意である。例えば、多孔質粒子上に、まず多孔質粒子の材料とは異なる別の材料、例えば炭素の層が存在し、その上にケイ素層またはケイ素粒子の層が存在してもよい。また、シリコン層上またはシリコン粒子層上には、多孔質粒子とシリコン層またはシリコン粒子からなる層との間に、多孔質粒子の材料とは異なる材料のさらなる層が存在するか否かにかかわらず、多孔質粒子の材料とは異なるかまたは同じであるさらなる材料の層が存在することもある。
【0062】
ケイ素含有材料は、好ましくは≦50重量%、特に好ましくは≦40重量%、特に好ましくは≦20重量%の追加元素を含む。ケイ素含有材料は、好ましくは≧1重量%、特に好ましくは≧2重量%、特に好ましくは≧3重量%の追加元素を含む。重量%はケイ素含有材料の総重量を意味する。代替的な実施形態では、ケイ素含有材料は追加元素を含まない。
【0063】
また、本発明はケイ素含有材料の製造方法にも関し、1または複数の多孔質粒子の存在下で、1または複数のケイ素前駆体を熱分解してケイ素を細孔内および多孔質粒子の表面上に析出させる。ケイ素含有材料は、窒素収着およびBET評価によって決定される、最大で50m2/gの比表面積を有し、多孔質粒子が以下を有することを特徴とする。
a)少なくとも2kΩの平均電気粒子抵抗、および
b)最大100mAh/gの可逆的脱リチウム容量β
を有することを特徴とする。
【0064】
ケイ素含有材料は、ケイ素前駆体からのケイ素の堆積に一般的に使用される任意の反応器で製造することができる。流動床反応器、水平から垂直までどのような配置でもよいロータリーキルン、および開放系または閉鎖系、例えば圧力反応器として操作され得る固定床反応器からなる群から選択される反応器が優先される。特に好ましいのは、堆積中に形成される多孔質粒子およびケイ素含有材料をケイ素前駆体と均一に混合できる反応器である。これは、多孔質粒子の細孔内および表面上へのケイ素の可能な限り均質な堆積に有利である。最も好ましい反応器は、流動床反応器、ロータリーキルンまたは圧力反応器、特に流動床反応器または圧力反応器である。
【0065】
ケイ素は一般に、熱分解下でケイ素前駆体から堆積される。好ましいケイ素前駆体は、モノシランSiH4、ジシランSi2H6、およびそれ以上の直鎖状、分岐状または環状の同族体、ネオペンタシランSi5H12、シクロヘキサシランSi6H12などのケイ素-水素化合物;トリクロロシランHSiCl3、ジクロロシランH2SiCl2、クロロシランH3SiCl、テトラクロロシランSiCl4、ヘキサクロロジシランSi2Cl6などの塩素含有シラン、および1,1,2,2-テトラクロロジシランCl2HSi-SiHCl2などの高次の直鎖状、分岐状または環状の同族体;塩素化および部分塩素化オリゴシランおよびポリシラン、トリクロロメチルシランMeSiCl3、ジクロロジメチルシランMe2SiCl2、クロロトリメチルシランMe3SiCl、テトラメチルシランMe4Siなどのメチルクロロシラン、ジクロロメチルシランMeHSiCl2、クロロメチルシランMeH2SiCl、メチルシランMeH3Si、クロロジメチルシランMe2HSiCl、ジメチルシランMe2H2Si、トリメチルシランMe3SiH、または記載のケイ素化合物の混合物からなる群から選択される。特に、ケイ素前駆体は、モノシランSiH4、ジシランSi2H6、トリクロロシランHSiCl3、ジクロロシランH2SiCl2、クロロシランH3SiCl、テトラクロロシランSiCl4、ヘキサクロロジシランSi2Cl6、およびこれらのシランからなる混合物からなる群から選択される。
【0066】
さらに、1以上の反応性成分を反応器に導入してもよい。これらの例は、ホウ素、窒素、リン、ヒ素、ゲルマニウム、鉄またはニッケル含有化合物に基づくドーパントである。ドーパントは、好ましくは、アンモニア(NH3)、ジボラン(B2H6)、ホスファン(PH3)、ゲルマン(GeH4)、アルシン(AsH3)、およびニッケルテトラカルボニル(Ni(CO)4)からなる群から選択される。
【0067】
反応性成分のさらなる例は、水素または炭化水素、特に、1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン;1~10個の炭素原子を有する不飽和炭化水素、例えばエチレン、アセチレン、プロピレンまたはブチレン;イソプレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン、ビニルアセチレン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン;シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、ノルボルナジエンなどの環状不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、p-、m-、o-キシレン、スチレン(ビニルベンゼン)、エチルベンゼン、ジフェニルメタン、ナフタレンなどの芳香族炭化水素;フェノール、o-、m-、p-クレゾール、シメン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ピリジン、アントラセン、フェナントレン、ミルセン、ゲラニオール、チオテルピネオールなどの芳香族炭化水素、ノルボルナン、ボルネオール、イソボルネオール、ボルナン、カンファー、リモネン、テルピネン、ピネン、ピナン、カレン、フェノール、アニリン、アニソール、フラン、フルフラール、フルフリルアルコール、ヒドロキシメチルフルフラール、ビスヒドロキシメチルフラン、および天然ガス凝縮物、石油蒸留物、コークス炉凝縮物、流動接触分解装置(FCC)、スチームクラッカーまたはフィッシャー・トロプシュ合成プラントの生成物流からの混合留分、あるいはより一般的には木材、天然ガス、石油および石炭処理からの炭化水素質材料流からの、このような化合物からなる様々な混合留分が挙げられる。
【0068】
本発明の方法は、好ましくは不活性ガス雰囲気、例えば窒素またはアルゴン雰囲気中で実施される。
【0069】
他のすべての点では、本発明の方法は、当業者に慣用的な日常的な調整を必要とするならば、ケイ素前駆体からのケイ素の蒸着に一般的に使用される従来の方法で実施することができる。
【0070】
本発明はさらに、リチウムイオン電池の負極材料の活物質としての本発明によるケイ素含有材料の使用、およびリチウムイオン電池を製造するための本発明による負極の使用に関する。
【0071】
負極材料は、好ましくは、本発明によるケイ素含有材料、1以上のバインダー、任意にさらなる活物質としてのグラファイト、任意に1以上のさらなる導電性成分、および任意に1以上の添加剤からなる混合物を含んでいてもよい。
【0072】
本発明はさらにケイ素含有材料、1以上のバインダー、任意選択でさらなる活物質としてのグラファイト、任意選択で1以上のさらなる導電性成分、および任意選択で1以上の添加剤を含む負極材料に関する。
【0073】
負極材料に他の導電性成分を使用することにより、電極内および電極と集電体間の接触抵抗を低減することができ、リチウムイオン電池の通電容量を向上させることができる。好ましいさらなる導電性成分は、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、または金属粒子、例えば銅である。
【0074】
導電性カーボンブラックの一次粒子は、好ましくは、直径パーセンタイルd10=5nmとd90=200nmの間の体積加重粒度分布を有する。導電性カーボンブラックの一次粒子は、鎖のように分岐し、マイクロメートルまでの大きさの構造を形成することもできる。カーボンナノチューブは、好ましくは0.4~200nm、より好ましくは2~100nm、最も好ましくは5~30nmの直径を有する。金属粒子は、体積加重粒度分布が直径百分位数d10=5nmとd90=800nmの間にある。
【0075】
負極材料は、好ましくは、負極材料の総重量に基づいて、0~95重量%、特に好ましくは0~40重量%、最も好ましくは0~25重量%の1以上のさらなる導電性成分を含む。
【0076】
ケイ素含有材料は、リチウムイオン電池用負極中に、負極材料中に存在する全活性材料を基準として、好ましくは5~100重量%、より好ましくは30~100重量%、最も好ましくは60~100重量%で存在することができる。
【0077】
バインダーとしては、ポリアクリル酸またはそのアルカリ金属塩、特にリチウム塩またはナトリウム塩、ポリビニルアルコール、セルロースまたはセルロース誘導体、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ポリイミド、特にポリアミドイミド、または熱可塑性エラストマー、特にエチレン-プロピレン-ジエンターポリマーを好ましく使用できる。特に好ましくは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸またはセルロース誘導体、特にカルボキシメチルセルロースである。上記したバインダーのアルカリ金属塩、特にリチウム塩またはナトリウム塩も特に好ましい。最も好ましいのは、ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸のアルカリ金属塩、特にリチウム塩またはナトリウム塩である。バインダーの酸基の全てまたは好ましくは割合が塩の形態で存在してもよい。バインダーは、好ましくは100,000~1,000,000g/molのモル質量を有する。2種類以上のバインダーの混合物を使用することもできる。
【0078】
使用する黒鉛は、一般に天然黒鉛または合成黒鉛である。グラファイト粒子は、好ましくは、直径パーセンタイルd10>0.2μmとd90<200μmの間の体積加重粒度分布を有する。
【0079】
添加剤の例としては、細孔形成剤、分散剤、レベリング剤、ドーパント、例えば元素状リチウムなどがある。
【0080】
負極材料の好ましい配合は、好ましくは、ケイ素含有材料5~95重量%、特に60~90重量%;さらなる導電性成分0~90重量%、特に0~40重量%;グラファイト0~90重量%、特に5~40重量%;バインダー0~25重量%、特に5~20重量%;および任意に0~80重量%、特に0.1~5重量%のさらなる添加剤である。ここで、重量%は負極材料の全重量を指し、負極材料の全成分の割合は100重量%になる。
【0081】
本発明はさらに、本発明による負極材料で被覆された集電体からなる負極に関する。この負極は、好ましくはリチウムイオン電池に使用される。
【0082】
負極材料の構成成分は、例えば溶媒中で、好ましくは水、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドおよびエタノール、ならびにこれらの溶媒の混合物からなる群から選択される溶媒中で、負極インクまたはペーストに加工することができ、好ましくはローターステーター機、高エネルギーミル、遊星ニーダー、アジテータービーズミル、振動プレートまたは超音波装置を使用することができる。
【0083】
アノードインクまたはペーストは、好ましくは2~7.5のpHを有する(例えば、SenTix RJDプローブ付きWTW pH 340i pHメーターを用いて20℃で測定)。
【0084】
例えば、アノードインクやペーストを銅箔や他の集電体にナイフコーティングすることができる。また、スピンコーティング、ローラーコーティング、ディップコーティング、スロットコーティング、刷毛塗り、スプレーなどの他のコーティング法も本発明に使用することができる。
【0085】
銅箔を本発明による負極材で被覆する前に、銅箔を市販のプライマー、例えばポリマー樹脂やシランをベースとしたもので処理してもよい。プライマーは銅との接着性を向上させるが、それ自体は一般に電気化学的活性を実質的に持たない。
【0086】
負極材料は、好ましくは一定重量まで乾燥させる。乾燥温度は、使用する成分および溶媒に依存する。乾燥温度は好ましくは20℃~300℃、特に好ましくは50℃~150℃である。
【0087】
層厚、すなわち陽極皮膜の乾燥層厚は、好ましくは2μm~500μm、特に好ましくは10μm~300μmである。
【0088】
最後に、電極コーティングは、規定された気孔率を達成するためにカレンダー処理することができる。このようにして製造された電極は、好ましくは、DIN ISO 15901-1に従って水銀ポロシメトリーによって決定される15~85%の気孔率を有する。好ましくは、この方法で決定できる細孔容積の25~85%は、0.01~2μmの細孔直径を有する細孔によって提供される。
【0089】
本発明はさらに、陽極と、負極と、電極への2つの導電性接続部と、セパレータと、セパレータおよび2つの電極が含浸された電解液と、特定された部品を収容するハウジングとを備えるリチウムイオン電池であって、負極が本発明によるケイ素含有材料からなることを特徴とするリチウムイオン電池に関する。
【0090】
本発明の文脈では、リチウムイオン電池という用語にはセルも含まれる。セルは一般に、正極、負極、セパレータおよび電解質からなる。つまたは複数のセルに加えて、リチウムイオン電池は好ましくは電池管理システムも含む。バッテリー管理システムは一般に、例えば電子回路を使用してバッテリーを制御するために使用され、特に充電状態の検出、深放電保護、過充電保護に使用される。
【0091】
使用される好ましい正極材料は、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム(ドープまたはアンドープ)、マンガン酸リチウム(スピネル)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸コバルトリチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸バナジウムリチウム、またはバナジウム酸リチウムである。
【0092】
セパレータは、好ましくはイオン透過性の電気絶縁膜であり、ポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)、あるいはポリエステルまたは対応する積層体から構成される。セパレータは、電池製造において一般的なように、ガラスまたはセラミック材料から構成されるか、またはガラスまたはセラミック材料でコーティングされることもある。周知のように、セパレータは第1電極を第2電極から分離し、電極間の電子伝導接続(短絡)を防止する。
【0093】
電解質は、好ましくは、非プロトン性溶媒中の1つ以上のリチウム塩(=伝導性塩)からなる溶液である。導電性塩は、好ましくは、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、過塩素酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、リチウムイミド、リチウムメチド、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)およびホウ酸リチウムからなる群から選択される。導電性塩の濃度は、溶媒を基準として、好ましくは0.5mol/lから該当する塩の溶解度限界の間である。特に好ましくは0.8~1.2mol/lである。
【0094】
使用できる溶媒の例は、環状カーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、ジオキソラン、アセトニトリル、有機炭酸エステルまたはニトリルであり、単独またはそれらの混合物として使用できる。
【0095】
電解液は、好ましくは、ビニレンカーボネートまたはフルオロエチレンカーボネートなどのフィルムフォーマーを含む。その結果、本発明によるケイ素含有材料を含む負極のサイクル安定性の著しい向上が達成され得る。これは主に、活性粒子の表面に固体電解質間相が形成されることに起因する。電解液中のフィルムフォーマーの割合は、好ましくは0.1~20.0重量%、特に好ましくは0.2~15.0重量%、最も好ましくは0.5~10重量%である。
【0096】
リチウムイオン電池の電極の実際の容量をできるだけ最適に一致させるためには、正極と負極の材料の量のバランスをとることが有利である。この観点では、二次リチウムイオン電池の最初のまたは最初の充放電サイクル(いわゆる形成)中に、負極の電気化学的に活性な材料の表面に被覆層が形成されることが特に重要である。この最表層は「固体電解質間相」(SEI)と呼ばれ、一般に電解質の分解生成物と一定量のリチウムが主成分であり、このリチウムはそれ以上充放電反応に利用できない。SEIの厚さと組成は、使用される負極材料の種類と品質、および使用される電解質溶液に依存する。
【0097】
グラファイトの場合、SEIは特に薄い。グラファイトの場合、最初の充電段階でセル内の可動リチウムの5%から35%が失われるのが普通である。それに伴い、電池の可逆容量も低下する。
【0098】
本発明によるケイ素含有材料を有する負極の場合、第1の充電ステップにおける可動リチウムの損失は、好ましくは多くても30%、特に好ましくは多くても20%、最も好ましくは多くても10%であり、これは、ケイ素含有複合負極材料について、例えば米国特許10,147,950B1に記載されている従来技術の値を大幅に下回る。
【0099】
本発明によるリチウムイオン二次電池は、通常のあらゆる形態、例えば巻回型、折り畳み型、積層型で製造することができる。
【0100】
上述したように、本発明によるリチウムイオン電池を製造するために使用される物質および材料はすべて公知である。本発明による電池の部品の製造および本発明による電池を形成するためのそれらの組立は、電池製造の分野で公知の方法に従って実施される。
【0101】
本発明のケイ素含有材料は、著しく改善された電気化学的挙動を特徴とし、高い体積容量と優れた応用特性を有するリチウムイオン電池を実現することができる。本発明によるケイ素含有材料は、リチウムイオンおよび電子に対して透過性であるため、電荷輸送が可能である。本発明によるケイ素含有材料を用いると、リチウムイオン電池中のSEIの量を大幅に低減することができる。さらに、本発明によるケイ素含有材料の設計により、SEIは本発明によるケイ素含有材料の表面からもはや剥離しないか、または少なくとも剥離の程度がはるかに小さい。この結果、対応するリチウムイオン電池のサイクル安定性が高くなる。褪色およびトラッピングは最小限に抑えることができる。さらに、本発明によるリチウムイオン電池は、セル内で利用可能なリチウムの初期および継続的な損失が少なく、したがって高いクーロン効率を示す。
【実施例】
【0102】
以下の実施例は、ここに記載された発明をさらに解明するのに役立つ。
【0103】
<走査型電子顕微鏡(SEM/EDX)>
顕微鏡分析は、Zeiss Ultra 55走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型Oxford X-Max 80N X線分光器を用いて行った。分析の前に、帯電現象を防止するため、Safematic Compact Coating Unit 010/HVを用いて、炭素の蒸着処理を行った。ケイ素含有材料の断面は、Leica TIC 3Xイオンカッターを用いて6kVで作製した。
【0104】
<無機/元素分析>
C含有量はLeco CS 230アナライザーを用いて測定し、酸素および窒素含有量の測定にはLeco TCH-600アナライザーを用いた。その他の元素の定性・定量は、ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析(Optima 7300 DV, Perkin Elmer)で行った。この目的のため、試料はマイクロウェーブ(Microwave 3000、Anton Paar製)で酸分解(HF/HNO3)した。ICP-OESによる定量は、ISO 11885「水質-誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)による特定元素の定量(ISO 11885:2007);ドイツ語版EN ISO 11885:2009」に準拠しており、酸性の水溶液(酸性化した飲料水、廃水、その他の水試料、土壌や堆積物のアクアレジア抽出物など)の分析に使用される。
【0105】
<粒度測定>
粒度分布は、ISO 13320に従い、Horiba LA 950を用いた静的レーザー散乱法により測定した。試料の調製では、個々の粒子ではなく凝集体のサイズを測定しないよう、測定溶液への粒子の分散に特に注意を払う必要がある。ここで検討した材料では、これらをエタノールに分散させた。この目的のため、必要に応じて測定前に、LS24d5ソノトロードを備えたHielscherモデルUIS250v超音波実験装置で、分散液を250Wの超音波で4分間処理した。
【0106】
<BET比表面積測定>
材料の比表面積は、Sorptomatic 199090装置(Porotec社製)またはSA-9603MP装置(Horiba社製)を用いて、窒素によるガス吸着によりBET法(窒素を用いたDIN ISO 9277:2003-05に準拠した測定法)で測定した。
【0107】
<骨格密度>
骨格密度、すなわち外部から気体が侵入可能な細孔空間の容積のみに基づく多孔質固体の密度は、DIN 66137-2に従ってヘリウムピクノメトリーにより測定した。
【0108】
<ガス透過性細孔容積>
Gurwitschに従ったガス透過性細孔容積は、DIN 66134に従った窒素によるガス収着測定によって決定された。
【0109】
<可逆的脱リチウム容量βの測定>
多孔質粒子またはケイ素含有材料の容量の測定は、ボタン型ハーフセル(CR2032型、Hohsen Corp.)を用いて行った。この目的のために、多孔質粒子またはケイ素含有材料とバインダー、任意でグラファイト、任意でさらに導電性成分、任意で添加剤から電極を製造し、リチウム対電極(ロックウッドリチウム、厚さ0.5mm、直径=15mm)に対して設置する。ケイ素含有材料に基づく作用電極は、このセル構造では正極に相当する。対極には金属リチウムを用い、これが負極に相当する。120μlの電解液で飽和させたガラス繊維ろ紙(Whatman、GDタイプD)をセパレーターとして使用する(Dm=16mm)。使用する電解液は、フルオロエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1:4(v/v)混合溶媒中のヘキサフルオロリン酸リチウムの1.0モル溶液である。セルは通常、グローブボックス(H2OとO2が1ppm以下)内で組み立てられる。すべての出発原料の乾燥物の含水量は、好ましくは20ppm以下である。
【0110】
まず、cc法(定電流)により、ケイ素含有材料の理論容量(理論容量:ケイ素重量%×3579mAh/g、レート:C/25)に相当する定電流を用いて放電させることにより、ハーフセルを放電状態に変換し(C/25は25時間の充放電に相当する)、0.005Vの電圧限界に達するまで行う。ここで活物質はリチウム化される。
【0111】
アノード被膜の可逆的脱リチウム容量βは、このようにして生成・放電されたボタン型ハーフセルを、1.5Vの電圧限界に達するまでC/25で充電することによって決定される。電気化学測定は20℃で行われる。
【0112】
<平均電気粒子抵抗の測定>
100μm以下の個々の粒子の電気抵抗を測定するため、Shimazu微小圧縮試験機MCT211に平板銅圧子を取り付け、試料ホルダーとともにKEITHLEY 2602デュアルソースメーターに接続した。個々の粒子の抵抗値は、粒子の形状が異なるためにばらつく。このため、各製品バッチについて、少なくとも20個の粒子の電気抵抗の平均値を決定した。t検定[1標本検定、Student.Test]を用いた統計分析:The Probable Error of a Mean. In: Biometrika. Volume 6, No. 1 March 1908, pp. 1-259] を用いた統計分析により、異なる製品バッチの平均値間の有意差を、例えば95%の信頼水準で決定することができる。
【0113】
[実施例1]
<二酸化ケイ素の多孔質粒子>
493mlのエタノールと308mlの水を、1Lの広口デュランガラス瓶に入れた。30.18gのテトラエトキシシラン(TEOS)を室温でこの混合物に加え、攪拌しながら溶解させた。この溶液を15℃に温度調節し、さらに30.18gのTEOSを45分かけて滴下ロートで加えた。溶液は徐々に白濁し、沈殿物が生じた。反応混合物を15℃でさらに4時間撹拌した後、沈殿物を吸引ろ過し、水とエタノールで4回洗浄した。このようにして得られた白色粉末を乾燥キャビネットで80℃、4時間乾燥した。粗生成物(18.68g)を管状炉のボートの中で2℃/分の加熱速度で400℃まで加熱した。次の保持温度である600℃に10℃/分で昇温し、4時間保持した。炉の雰囲気は、反応全体中は12L/hのアルゴン流で調整し、冷却段階では管を空にするまで3L/hのアルゴン流で調整した。13.74g(73.6%)の多孔質SiO2粒子が得られた。
【0114】
可逆的脱リチウム容量β:8mAh/g
BET:1270m2/g
粒度分布(PSD):D50=5.4μm、スパン0.77
全細孔容積:0.8cm3/g
平均粒子電気抵抗:240000kΩ
【0115】
[実施例2]
<ケイ素含有素材>
管状反応器に、実施例1の多孔質二酸化ケイ素粒子(比表面積=1070m2/g、細孔容積=0.6cm3/g)3.0gを石英ガラスボートに装入した。窒素で不活性化した後、反応器を410℃に加熱した。反応温度に達した後、反応ガス(N2中10%SiH4、10Nl/h)を5.8時間反応器に通した。その後、反応器を不活性ガスでパージした後、生成物を500℃で1時間アニールした。反応器から取り出す前に、生成物を不活性ガス下で室温まで冷却した。
【0116】
BET比表面積 29m2/g
PSD:D50=5.4μm、スパン0.77
蒸着Si含有量 35重量
可逆的脱リチウム容量β:1245mAh/g
初期クーロン効率:92
【0117】
[比較例3]
<ケイ素含有素材>
管状反応器に3.0gのメソポーラス二酸化ケイ素マトリックス(比表面積=360m2/g、細孔容積=1.1cm3/g、Macherey-Nagel社製Polygoprep(商標)100-12、平均粒子電気抵抗210000kΩ、可逆容量β=8mAh/g)を充填した。窒素で不活性化した後、反応器を410℃に加熱した。反応温度に達した後、反応ガス(N2中10%SiH4、10Nl/h)を5時間反応器に通した。反応器を不活性ガスでパージした後、生成物を500℃で1時間アニールした。反応器から取り出す前に、生成物を不活性ガス下で室温まで冷却した。
【0118】
BET比表面積 214m2/g
PSD:D50=14μm、スパン0.8
蒸着Si含有量 30重量
可逆的脱リチウム容量β:1068mAh/g
初期クーロン効率:89
【0119】
[実施例4]
<実施例2のケイ素含有材料からなる負極とリチウムイオン電池における電気化学試験>
29.71gのポリアクリル酸(85℃で一定重量まで乾燥;シグマアルドリッチ社製、Mw~450,000g/mol)と756.60gの脱イオン水を、ポリアクリル酸の溶解が完了するまで2.5時間、シェーカー(290L/分)を用いて撹拌した。水酸化リチウム一水和物(Sigma-Aldrich)をpHが7.0(WTW pH 340i pHメーターとSenTix RJDプローブで測定)になるまで溶液に少しずつ加えた。中和したポリアクリル酸溶液3.87gとグラファイト0.96g(Imerys, KS6L C)とを50ml容器に入れ、プラネタリーミキサー(SpeedMixer, DAC 150 SP)で2000rpmで混合した。その後、実施例2からの本発明によるケイ素含有材料3.40gを2000rpmで1分間撹拌した。次いで、1.21gの8%導電性カーボンブラック分散液および0.8gの脱イオン水を添加し、プラネタリーミキサー中で2000rpmで混合した。次いで、ディゾルバー中で3000rpm、20℃一定で30分間分散を行った。インクを再びプラネタリーミキサーで真空下、2500rpmで5分間脱気した。
【0120】
完成した分散液を、ギャップ高さ0.1mmのフィルムドローイングフレーム(Erichsen、モデル360)を使用して、厚さ0.03mmの銅箔(Schlenk metal foils、SE-Cu58)に塗布した。このようにして作製した負極被膜を、50℃、1barの気圧で60分間乾燥させた。乾燥負極皮膜の平均坪量は3.0mg/cm2、被膜密度は0.7g/cm3であった。
【0121】
電気化学的試験は、2電極配置のボタン電池(CR2032型、Hohsen Corp.)を用いて行った。電極被膜は、対電極または負極(Dm = 15 mm)として使用した。リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト酸化物6:2:2をベースとし、含有率94.0%、平均坪量15.9mg/cm2のコーティング(SEIから入手)を作用電極または正極(Dm=15mm)として使用した。60μlの電解液で飽和させたガラス繊維ろ紙(Whatman, GD Type D)をセパレーターとして使用した(Dm=16mm)。使用した電解液は、フルオロエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1:4(v/v)混合溶媒中のヘキサフルオロリン酸リチウムの1.0モル溶液であった。セルはグローブボックス(<1ppm H2O、O2)内で組み立てられ、使用した全成分の乾燥物中の水分含有量は20ppm以下であった。
【0122】
電気化学試験は20℃で行った。cc/cv法(定電流/定電圧)により、最初のサイクルでは5mA/g(C/25に相当)、その後のサイクルでは60mA/g(C/2に相当)の定電流で充電し、4.2Vの電圧限界に達すると、電流が1.2mA/g(C/100に相当)または15mA/g(C/8に相当)を下回るまで定電圧で充電した。cc法(定電流)で、最初のサイクルでは5mA/g(C/25に相当)、その後のサイクルでは60mA/g(C/2に相当)の定電流で、電圧限界2.5Vに達するまで放電させた。選択された比電流は、正極の被覆重量に基づく。電極は、正極:負極=1:1.2の容量比になるように選択した。
【0123】
実施例4のフルリチウムイオン電池セルを用いて、以下の試験結果を得た。
-第2サイクルにおける負極の可逆比容量:
600 mAh/g (4.2-2.5 V); 534 mAh/g (4.2-3.0V)
-80%以上の容量保持サイクル数:
302充放電サイクル
【0124】
[比較例5]
<比較例3のケイ素含有材料を用いた負極とリチウムイオン電池での電気化学試験>
比較例3の非発明のケイ素含有材料を用いて、実施例4に記載したように負極を作製した。この負極を実施例4に記載のリチウムイオン二次電池に取り付け、同様の手順で試験を行った。
【0125】
比較例5のフルリチウムイオン電池セルを用いて、以下の試験結果を得た。
-第2サイクルにおける負極の可逆比容量:
520mAh/g(4.2-2.5V);490mAh/g(4.2-3.0V)
-80%以上の容量保持サイクル数:
35回の充放電サイクル
【0126】
[実施例6]
<多孔質粒子としてのマイクロポーラス窒化ホウ素>
3.36gのホウ酸と13.68gのジシアンジアミドを300mlの蒸留水に室温で溶解した。その後、溶液を100℃に加熱し、攪拌しながら白色の結晶性固体(16.79g)が得られるまで蒸発させた。石英ガラス製のボートに、こうして得られた中間生成物8.15gを入れ、管状炉に入れた。これをフォーミングガス(N2中5%H2、12Nl/h)気流下で975℃まで10K/分の速度で加熱した。目標温度に達した後、ガス流をCO2(3Nl/h)に切り替え、5時間維持した。最後に、混合物を成形ガス流(3Nl/h)下で室温まで受動的に冷却した。これにより0.5gの白色固体が得られた。
【0127】
BET比表面積 1006 m2/g
全細孔容積:0.56cm3/g
可逆的脱リチウム容量β:5mAh/g
平均電気粒子抵抗:72740kΩ
PSD:D50=6.8μm、スパン 0.81
【0128】
[実施例7]
<実施例6の多孔質粒子を用いたケイ素含有材料>
管状反応器に石英ガラスボートに入れた実施例6の多孔性BN粒子3.0gを装入した。窒素で不活性化した後、反応器を410℃に加熱した。反応温度に達した後、反応ガス(N2中10%SiH4、10Nl/h)を5.2時間反応器に通した。その後、生成物を500℃で1時間アニールする前に反応器を不活性ガスでパージした。反応器から取り出す前に、生成物を不活性ガス下で室温まで冷却した。
【0129】
BET比表面積 14m2/g
PSD:D50=6.8μm、スパン0.81
蒸着Si含有量 35重量%
可逆的脱リチウム容量β:1210mAh/g
【0130】
[実施例8]
<実施例7のケイ素含有材料を用いた負極とリチウムイオン電池での電気化学試験>
実施例7の本発明ケイ素含有材料を用いて、実施例4に記載したように負極を作製した。この負極を実施例4に記載のリチウムイオン電池に取り付け、同様の手順で試験を行った。
【0131】
実施例8のフルリチウムイオン電池セルを用いて、以下の試験結果を得た。
-第2サイクルにおける負極の可逆比容量:
740mAh/g(4.2~2.5V);657mAh/g(4.2~3.0V)
-80%以上の容量保持サイクル数:
280回の充放電サイクル
【0132】
[比較例9]
<多孔質炭素を多孔質粒子とするケイ素含有材料>
石英ガラスボートに3.0gの多孔質炭素(比表面積=1189m2/g、細孔容積=0.65cm3/g、平均粒子電気抵抗=1.2kΩ、可逆容量β=389mAh/g)を入れ、管状反応器に装入した。窒素で不活性化した後、反応器を410℃に加熱した。反応温度に達した後、反応ガス(N2中10%SiH4、10Nl/h)を5.2時間反応器に通した。反応器を不活性ガスでパージした後、生成物を500℃で1時間アニールした。反応器から取り出す前に、生成物を不活性ガス下で室温まで冷却した。
【0133】
BET表面積 32m2/g
PSD:D50=3.9μm、スパン0.86
析出Si含有量 38重量%
可逆的脱リチウム容量β:1130mAh/g
【0134】
[比較例10]
<比較例9のケイ素含有材料を用いた負極とリチウムイオン電池での電気化学試験>
比較例9の非発明のケイ素含有材料を用いて、実施例4に記載したように負極を作製した。この負極を実施例4に記載のリチウムイオン電池に取り付け、同様の手順で試験を行った。
【0135】
比較例10のフルリチウムイオン電池セルを用いて、以下の試験結果を得た。
-第2サイクルにおける負極の可逆比容量:
580mAh/g(4.2~2.5V);464mAh/g(4.2~3.0V)
-80%以上の容量保持サイクル数:
174充放電サイクル
【0136】
【手続補正書】
【提出日】2023-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の多孔質粒子とケイ素とを含有するケイ素含有材料であって、
前記ケイ素は、細孔内および多孔質粒子の表面上に配置され、前記ケイ素含有材料は、窒素収着およびBET評価によって決定される、最大で50m
2/gの比表面積を有し、多孔質粒子は、
a)少なくとも2kΩの平均電気粒子抵抗、および
b)最大100mAh/gの可逆的脱リチウム容量β
を有することを特徴とする、ケイ素含有材料。
【請求項2】
前記多孔質粒子は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、ケイ素-アルミニウム混合酸化物、酸化マグネシウム、酸化鉛、および酸化ジルコニウムからなる群より選択される酸化物、炭化ケイ素および炭化ホウ素から選択される炭化物、ならびに、窒化ケイ素および窒化ホウ素から選択される窒化物から選択される1または複数の材料を含む、請求項1に記載のケイ素含有材料。
【請求項3】
前記多孔質粒子は、下記一般式:
Al
aB
bC
cMg
dN
eO
fSi
g
(式中、0≦a、b、c、d、e、f、g≦1であるが、a~gのうち少なくとも2つの係数は>0であり、a×3+b×3+c×4+d×2+g×4≧e×3+f×2である。)
で表されるセラミック材料であって、
非化学量論的窒化ホウ素BNz(式中、z=0.2~1)、
非化学量論的炭素窒化物CNz(式中、z=0.1~4/3)
炭窒化ホウ素BxCNz(式中、x=0.1~20、z=0.1~20、x×3+4≧z×3)、
窒化ホウ素系酸化物BNzOr(式中、z=0.1~1、r=0.1~1、3≧r×2+z×3)、
炭窒化ホウ素酸化物BxCNzOr(式中、x=0.1~2、z=0.1~1、r=0.1~1、x×3+4≧r×2+z×3、
ケイ素炭素酸化物SixCOz(式中、x=0.1~2、z=0.1~2、x×4+4≧z×2、
シリコン炭窒化物SixCNz(式中、x=0.1~3、z=0.1~4、x×4+4≧z×3、
ケイ素ホウ素炭窒化物SiwBxCNz(式中、w=0.1~3、x=0.1~2、z=0.1~4、w×4+x×3+4≧z×3、
ケイ素ホウ素炭素酸化物SiwBxCOz(式中、w=0.10~3、x=0.1~2、z=0.1~4、w×4+x×3+4≧z×2)、
ケイ素ホウ素炭窒化物酸化物SivBwCNxOz(式中、v=0.1~3、w=0.1~2、x=0.1~4、z=0.1~3、v×4+w×3+4≧x×3+z×2、u=0.1~2、v=0.1~2、w=0.1~4、x=0.1~2、z=0.1~3、u×3+v×3+x×4+4≧w×3+z×2)
を含む群より選択されるセラミック材料を含む、請求項
1又は2に記載のケイ素含有材料。
【請求項4】
前記多孔質粒子は、ヘリウムピクノメトリーによって決定される密度0.1~7g/cm
3を有する、請求項
1又は2に記載のケイ素含有材料。
【請求項5】
前記多孔質粒子は、直径パーセンタイルd
50が0.5~20μmの体積加重粒度分布を有する、請求項
1又は2に記載のケイ素含有材料。
【請求項6】
前記ケイ素含有材料は、直径パーセンタイルd
50が0.5~20μmの体積加重粒度分布を有する、請求項
1又は2に記載のケイ素含有材料。
【請求項7】
前記ケイ素含有材料は、全細孔容積に基づいて、最大30%のマクロ細孔を有する、請求項
1又は2に記載のケイ素含有材料。
【請求項8】
前記ケイ素含有材料は、最大5nmの直径の細孔を少なくとも1~50%以上有する、請求項
1又は2に記載のケイ素含有材料。
【請求項9】
前記ケイ素含有材料は、少なくとも30重量%の、ケイ素前駆体からの熱分解から得られるケイ素を含む、請求項
1に記載のケイ素含有材料。
【請求項10】
前記ケイ素含有材料は、ケイ素前駆体からの熱分解を介して得られたシリコンと少なくとも同じ全細孔容積を有する、請求項
1又は2に記載のケイ素含有材料。
【請求項11】
最大1μmの層厚を有するケイ素粒子から形成された層の形態にある前記多孔質粒子の細孔中または外表面にケイ素が存在する、請求項
1又は2に記載のケイ素含有材料。
【請求項12】
1または複数の多孔質粒子の存在下で、1または複数のケイ素前駆体を熱分解して、ケイ素を細孔内および多孔質粒子の表面上に析出させて、ケイ素含有材料を製造する方法であって、
前記ケイ素含有材料は、窒素収着およびBET評価によって決定される、最大で50m
2/gの比表面積を有し、
前記多孔質粒子が
a)少なくとも2kΩの平均電気粒子抵抗、および
b)最大100mAh/gの可逆的脱リチウム容量β
を有することを特徴とする、方法。
【請求項13】
ケイ素が、流動床反応器、水平から垂直まで配向したロータリーキルン、開放系または閉鎖系固定床反応器、および圧力反応器から選択される反応器内において、堆積する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
リチウムイオン電池に使用される負極材料であって、
請求項
1又は2に記載のケイ素含有材料を5~95重量%、
1または複数の更なる電気伝導性成分を0~90質量%、
グラファイトを0~90質量%、
バインダーを0~25重量%、および
更なる添加剤を0~80重量%
含む(ここで、重量%は負極材料の全重量を指し、負極材料の全構成成分の割合は最大100重量%である。)ことを特徴とする、負極材料。
【請求項15】
請求項14に記載の負極材料で被覆された集電体を備える負極。
【請求項16】
陽極と、負極と、電極への2つの導電性接続部と、セパレータと、セパレータおよび2つの電極が含浸された電解液と、特定された部品を収容するハウジングとを備えるリチウムイオン電池であって、前記負極が請求項
1又は2のいずれか一項に記載のケイ素含有材料を含む、リチウムイオン電池。
【国際調査報告】