IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブルースター・シリコーンズ・フランス・エスアエスの特許一覧 ▶ アンスティチュ・ナシオナル・デ・シアンス・サプリケ・リヨンの特許一覧 ▶ ウニベルシテ クロード ベルナール リヨン 1の特許一覧 ▶ センター ナショナル ド ラ ルシェルシュ サイエンティフィークの特許一覧

特表2023-5510493Dプリンターを用いてシリコーンエラストマー物品を製造するための方法
<>
  • 特表-3Dプリンターを用いてシリコーンエラストマー物品を製造するための方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】3Dプリンターを用いてシリコーンエラストマー物品を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/106 20170101AFI20231129BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20231129BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20231129BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231129BHJP
   B33Y 40/10 20200101ALI20231129BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20231129BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20231129BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20231129BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B29C64/106
B29C64/314
B29C64/40
B33Y10/00
B33Y40/10
B33Y40/20
B33Y70/00
C08L71/02
C08L83/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532603
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2021083412
(87)【国際公開番号】W WO2022112571
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】20306467.0
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507421304
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・フランス・エスアエス
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES France SAS
(71)【出願人】
【識別番号】520328442
【氏名又は名称】アンスティチュ・ナシオナル・デ・シアンス・サプリケ・リヨン
(71)【出願人】
【識別番号】503161615
【氏名又は名称】ウニベルシテ クロード ベルナール リヨン 1
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・マルク・フランシス
(72)【発明者】
【氏名】アーサー・コリー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・マルケット
(72)【発明者】
【氏名】エドウィン-ジョフレイ・クルティアル
【テーマコード(参考)】
4F213
4J002
【Fターム(参考)】
4F213AA33
4F213AA45
4F213AB04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL32
4F213WL43
4F213WL52
4F213WL55
4F213WL62
4F213WL74
4F213WW38
4J002CH02W
4J002CH02X
4J002CP04Z
4J002CP12Y
4J002CP13Y
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、1)水、少なくとも1種のポロキサマー及びポリ(オキシアルキレングリコール)を、容器中に含む、組成物Cを提供する工程;2)前記組成物Cを含む前記容器を所要温度T1に置き、ゲルを形成する工程;3)前記所要温度T1で、3Dプリンターを用いて2)で得られた前記ゲルの中に架橋性シリコーン組成物Xを印刷する工程;4)任意選択で、前記印刷された組成物Xを、任意選択で加熱により、部分的に又は全体的に架橋させ、前記容器内に、シリコーンエラストマー物品を得る工程;5)任意選択で、工程4)で得られた前記容器を組成物Cのゾルゲル転移温度よりも低い温度T3に置く工程;6)前記シリコーンエラストマー物品を回収する工程;並びに7)任意選択で、組成物Cのゾルゲル転移温度よりも低い温度T3で前記得られたシリコーンエラストマー物品を例えば水で洗浄する工程;を含む、シリコーンエラストマー物品を製造する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)水、少なくとも1種のポロキサマー及びポリ(オキシアルキレングリコール)を容器中に含む、組成物Cを提供する工程;
2)前記組成物Cを含む前記容器を所要温度T1に置き、ゲルを形成する工程;
3)前記所要温度T1で、3Dプリンターを用いて2)で得られた前記ゲルの中に架橋性シリコーン組成物Xを印刷する工程;
4)任意選択で、印刷された前記組成物Xを、任意選択で加熱により、部分的に又は全体的に架橋させ、前記容器内に、シリコーンエラストマー物品を得る工程;
5)任意選択で、工程4)で得られた前記容器を組成物Cのゾルゲル転移温度よりも低い温度T3に置く工程;
6)前記シリコーンエラストマー物品を回収する工程;並びに
7)任意選択で、組成物Cのゾルゲル転移温度よりも低い温度T3で、得られた前記シリコーンエラストマー物品を例えば水で洗浄する工程
を含む、シリコーンエラストマー物品を製造する方法。
【請求項2】
1)水及び少なくとも1種のポロキサマー及びポリ(オキシアルキレングリコール)を容器中に含む、組成物Cを提供する工程;
2)所要温度T1に前記組成物Cを含む前記容器を置き、ゲルを形成する工程;
3)前記所要温度T1で、3Dプリンターを用いて2)で得られた前記ゲルの中に架橋性シリコーン組成物Xを印刷する工程;
4)印刷された前記組成物Xを、任意選択で加熱により、部分的に又は全体的に架橋させ、前記容器内に、シリコーンエラストマー物品を得る工程;
5)任意選択で、工程4)で得られた前記容器を組成物Cのゾルゲル転移温度よりも低い温度T3に置く工程;
6)前記シリコーンエラストマー物品を回収する工程;並びに
7)任意選択で、組成物Cのゾルゲル転移温度よりも低い温度T3で、得られた前記シリコーンエラストマー物品を例えば水で洗浄する工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリ(オキシアルキレングリコール)は、100から6000g/mol、好ましくは200から1000g/molのMwを有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリ(オキシアルキレングリコール)は、ポリ(オキシエチレングリコール)である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポロキサマーが、ポリ(プロピレンオキシド)ブロック及びポリ(エチレンオキシド)ブロックから構成されるコポリマーである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポロキサマーが、中央ポリ(プロピレンオキシド)ブロック及び2つの末端ポリ(エチレンオキシド)ブロックから構成されるトリブロックコポリマーである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポロキサマーが、前記ポロキサマーの総重量に基づいて25から90質量%のポリ(エチレンオキシド)単位を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポロキサマーが、中央ポリ(プロピレンオキシド)ブロック及び2つの末端ポリ(エチレンオキシド)ブロックから構成されるトリブロックコポリマーであり、前記2つのポリ(エチレンオキシド)ブロックがそれぞれ100+/-10個の繰り返し単位を含み、前記ポリ(プロピレンオキシド)ブロックが55+/-10個の繰り返し単位を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
組成物Cにおいて、質量比ポリ(オキシアルキレングリコール)/ポロキサマーは、20℃から50℃、好ましくは20℃から40℃の温度でのゲルCの静的降伏応力が、0.5から200Pa、好ましくは1から100Pa、より好ましくは1から50Paとなるものである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
組成物Cにおいて、質量比ポリ(オキシアルキレングリコール)/ポロキサマーは、0.5よりも大きい、好ましくは1よりも大きい、好ましくは0.5から2、好ましくは0.5から1.5、好ましくは1から2、好ましくは1.1から1.5である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
組成物Cにおいて、ポロキサマーの量は、組成物Cの総重量に基づいて10から40質量%、より好ましくは15から30質量%、さらにより好ましくは17から25質量%である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物Cは、
- 塩基、例えばNaOH;
- 酸、例えば酢酸;及び
- 例えば、アミノ、エポキシ、ヒドロキシ、ポリエーテル基で官能化されたシラン
からなる群から選択された1つ又は複数の化合物をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
- T1が、25から50℃、好ましくは25から40℃、例えば25から35℃、より好ましくは28から32℃であり、及び/又は
- T3が、15℃よりも低く、好ましくは0から15℃、好ましくは0から10℃である、
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
水、少なくとも1種のポロキサマー及びポリ(オキシアルキレングリコール)を含む組成物Cであって、質量比ポリ(オキシアルキレングリコール)/ポロキサマーは、20℃から50℃、好ましくは20℃から40℃の温度でのゲルCの静的降伏応力が、1から200Pa、好ましくは1から100Pa、より好ましくは1から50Paとなるものである、組成物C。
【請求項15】
3Dプリンターでシリコーンエラストマー物品を製造するための制約環境としての、請求項1から14のいずれか一項に規定の組成物Cの使用。
【請求項16】
FRESH3D印刷のためのゲルの特性を維持及び改善しながら自己修復を改善するための、ポロキサマーのゲル中での、ポリ(オキシアルキレングリコール)、とりわけポリ(オキシエチレングリコール)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンターを用いてシリコーンエラストマー物品を製造するための方法に関する。また、本発明は、この方法によって得られやすいシリコーンエラストマー物品に関する。
【背景技術】
【0002】
3D印刷において、印刷、特に複雑な物品の製造に使用される組成物の重力並びにレオロジー特性及び機械的特性は大きな影響を及ぼす。特に、低粘度のシリコーン組成物(<100000mPa.s)は、単純な又は複雑な対象物を「地球」の重力を伴う典型的な雰囲気で印刷することができない。実際、これらのシリコーンのレオロジー特性及び機械的特性は、ユーザーが印刷中に対象物を保持する(hold)ことを可能にしない。さらに、気圧及び表面張力が、フィラメントの押出を困難にする。中粘度又は高粘度(>100000mPa.s)のシリコーン配合物にとって、印刷適性はレオロジー特性及び機械的特性に依存する。しかしながら、複雑の形状を有する物品(すなわち、>40°のオーバーハング、>2mmのブリッジ又は高さを有する物品)を印刷することはできない。
【0003】
Freeform Reversible Embedding of Suspended Hydrogel(FRESH)は、低又は無降伏応力での軟質材料の3D印刷を可能にする付加製造技術である。印刷された材料は、その固形化までの過程で埋め込まれる。文献から、FRESHの能力は、自己修復、再利用可能性、懸濁化、熱的安定性及び高精度の印刷とされる。
【0004】
US20180057682は、ジブロックコポリマーポリスチレン-ブロックエチレン/プロピレン(SEP)及びトリブロックコポリマーポリスチレン-ブロックエチレン/ブチレン-ブロック-ポリスチレン(SEBS)を鉱油中でブレンドすることにより得られる有機マイクロゲルの、3D印刷用の支持材料としての使用を開示している。この有機マイクロゲルのレオロジー特性は調整可能であり、ジャミング転移を活用してシリコーン構造物の3D印刷におけるその使用を促進する。溶媒(メタノール)及び界面活性剤溶液でそれを連続的に洗浄することにより、有機マイクロゲル支持材料から硬化された部分を除去する必要がある。支持材料は再利用することはできないようである。
【0005】
また、Hintonら(Science Advances、2015年、Vol.1、no.8)により、3つの異なるゲル:Carbopol 940、ETD 2020、及びUltrez 30(Lubrizol)(これらは架橋された酸性アクリルポリマーである)を使用することによってシリコーン3D対象物を印刷する方法が開示されている。Carbopol 940は最良の表面形態をもたらす。しかしながら、Carbopol 940は正確なpH及び塩の制御を必要とし、異なる種類のシリコーンの印刷を制限し得る。出版物のタイトルに反して、Carbopol 940はPBS(ポリブタジエン/スチレン)溶液で希釈されて、15分後に印刷されたシリコーン対象物を除去するため、ゲルはこれ以上使用されないようである。
【0006】
また、WO2019215190からも、低粘度架橋性組成物を印刷してシリコーンエラストマー物品を得ることを可能にする、制約環境としての、ポロキサマーのゲルの使用が知られている。このゲルは、いくつかの対象物の印刷を可能にし得る。しかしながら、対象物の複雑性及び印刷ノズルの経路に依存して、懸濁したハイドロゲルの静的降伏応力は、場合によっては高すぎることがあり(23質量%及び27質量%の配合で、それぞれ200Pa及び500Pa)、印刷ノズルの湾曲をもたらし、印刷の精度に影響を与えるようである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US 20180057682
【特許文献2】WO 2019/215190
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hinton他、Science Advances、2015年、Vol.1、no.8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、FRESH3D印刷のための制約環境(constrained environment)として使用でき、特に複雑な対象物の印刷のための、改善された自己修復特性を有する、ゲル組成物を提供する必要がある。
【0010】
3Dプリンターを使用して、幅広い種類のシリコーンエラストマーを取り扱うことができる、シリコーンエラストマー物品を製造する方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の目的は、したがって、FRESH3D印刷のための制約環境として使用でき、改善された自己修復特性を有する、ゲル組成物を提供することである。
【0012】
また、別の目的は、3Dプリンターを用いて、幅広い種類のシリコーン組成物で使用することができるシリコーンエラストマー物品を製造するための方法である。
【0013】
本発明の別の目的は、複雑な形状の物品、すなわち、>40°のオーバーハング、>2mmのブリッジ又は高さを有する物品の製造を可能にするそのような方法を提供することである。
【0014】
全てのこれらの目的は、以下の工程を含むシリコーンエラストマー物品を製造する方法に関する本発明により実現される:
1)水、少なくとも1種のポロキサマー及びポリ(オキシアルキレングリコール)を容器中に含む、組成物Cを提供する工程;
2)前記組成物Cを含む前記容器を所要温度T1に置き、ゲルを形成する工程;
3)前記所要温度T1で、3Dプリンターを用いて2)で得られた前記ゲルの中に架橋性シリコーン組成物Xを印刷する工程;
4)任意選択で、印刷された前記組成物Xを、任意選択で加熱により、部分的に又は全体的に架橋させ、前記容器内に、シリコーンエラストマー物品を得る工程;
5)任意選択で、工程4)で得られた前記容器を組成物Cのゾルゲル転移温度よりも低い温度T3に置く工程;
6)前記シリコーンエラストマー物品を回収する工程;並びに
7)任意選択で、組成物Cのゾルゲル転移温度よりも低い温度T3で、得られた前記シリコーンエラストマー物品を例えば水で洗浄する工程。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、僧帽弁、8本の腱索、2つの内側乳頭筋からなる生理学的形状を表している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ポロキサマーは、シリコーンエラストマーと非相溶性でなければならない、すなわち、ポロキサマーとシリコーンエラストマーとの間に相互浸透はない。これにより、製造されたシリコーン物品の良好な表面粗さ、すなわち100nm未満の粗さを得ることが有利に可能になる。
【0017】
さらに、ポロキサマーは物品のシリコーン表面を汚染することなく除去されるべきである。
【0018】
本発明によれば、ポロキサマーは、ポリ(プロピレンオキシド)ポリ(エチレンオキシド)ブロックコポリマーとも呼ばれる、ポリ(プロピレンオキシド)(PO)及びポリ(エチレンオキシド)(EO)ブロックから構成されたコポリマーである。好ましくは、本発明によるポロキサマーは、ポリ(エチレンオキシド)ポリ(プロピレンオキシド)ポリ(エチレンオキシド)ブロックコポリマーとも呼ばれる、中央POブロック及び2つの末端EOブロックから構成されたトリブロックコポリマーであり、すなわち、本発明によるポロキサマーは、好ましくはEO-PO-EOトリブロックコポリマータイプのものである。
【0019】
ポロキサマーの重要な特徴は、ゾルゲル転移温度方法において、それらは水と反応してゲルを形成することである。ゾルゲル転移温度において、組成物のレオロジー特性は、液体様状態から固体様状態に変化する。ポロキサマーの水性溶液は、熱可逆性方法において、低温で液体であり、より高い温度でゲルを形成する。これらの系で起こる転移は、ポロキサマー及びその濃度に依存する。本発明において、温度T1は、組成物Cがゲルを形成する温度に相当し、温度T3は、工程2で組成物Cを用いて形成されたゲルが液化するよりも低い温度である。
【0020】
好ましくは、本発明において、ポロキサマー組成物Cは周囲温度、すなわち20から30℃の温度で固体であり、より低い温度、すなわち15℃より低い温度で液体である。好ましくは、本発明において、ポロキサマーは、ポリ(プロピレンオキシド)(PO)及びポリ(エチレンオキシド)(EO)ブロックから構成される。好ましくは、本発明のポロキサマーは、中央POブロック及び2つの末端EOブロックから構成されるトリブロックコポリマーであり、ポロキサマーの総重量に基づいて25から90質量%のEO単位、好ましくはポロキサマーの総重量に基づいて30から80質量%のEO単位、好ましくはポロキサマーの総重量に基づいて50から75質量%のEO単位を含む。
【0021】
より好ましくは、本発明によるポロキサマーは、中央POブロック及び2つの末端EOブロックから構成されるトリブロックコポリマーであり、2つのEOブロックはそれぞれ20から300個の繰り返し単位、好ましくは50から150個の繰り返し単位を含み、POブロックは10から100個の繰り返し単位、好ましくは30から70個の繰り返し単位を含む。
【0022】
有利には、本発明のポロキサマーは、中央POブロック及び70質量%+/-2質量%のEO単位を有する2つの末端EOブロックから構成されるトリブロックコポリマーである。
【0023】
好ましい実施形態において、本発明によるポロキサマーは、中央POブロック及び2つの末端EOブロックから構成されるトリブロックコポリマーであり、2つのEOブロックはそれぞれ100+/-10個の繰り返し単位を含み、POブロックは55+/-10個の繰り返し単位を含む。そのようなポロキサマーは、例えば、BASF社によりPluronic F127(登録商標)の商品名で販売されている。
【0024】
さらに、ポロキサマー及び特にPluronic F127(登録商標)は、生体適合性があり、したがって、生物学的用途又は医学的用途のための物品を調製するために使用することができる。
【0025】
本発明のポリ(オキシアルキレングリコール)(PAG)は、好ましくは、100から6000g/mol、好ましくは200から2000g/molの重量による分子量(Mw)を有するポリ(オキシアルキレングリコール)である。
【0026】
いかなる理論にも拘束されないが、ポリ(オキシアルキレングリコール)は、好ましくは、ポロキサマーの外側のブロックに応じて選択される。好ましくは、ポリ(オキシアルキレングリコール)は、ポロキサマーの外側のブロックと同じ性質を有するべきであり、本来的に、ポリ(オキシアルキレングリコール)のアルキレンは、ポロキサマーの外側のブロックの1つと同じであることが理解されるべきである。
【0027】
ポリ(オキシアルキレングリコール)(これは、分子量に応じて、液体形態又は粉末形態のいずれかである)は、ポロキサマーの添加前に水中に分散される。
【0028】
好ましくは、本発明のポリ(オキシアルキレングリコール)は、ポリ(オキシエチレングリコール)(又はポリエチレンオキシド、PEG)、好ましくは100から6000g/mol、好ましくは200から2000g/molの重量による分子量(Mw)を有するPEGである。
【0029】
本発明の組成物(C)において、ポロキサマーは、好ましくは、中央POブロック及び2つの末端EOブロックから構成されるトリブロックコポリマーであり、ポリ(オキシアルキレングリコール)は、好ましくは、100から6000g/mol、好ましくは200から2000g/molの重量による分子量(Mw)を好ましくは有するPEGである。
【0030】
いかなる理論にも拘束されないが、組成物Cから形成されたゲルは、低粘度の架橋性組成物Xを印刷して、シリコーンエラストマー物品をさらに得ることを可能にする制約環境として作用する。実際、組成物Cから形成されたゲルは、印刷中に架橋性組成物Xに一定の圧力を加え、材料の落下(drop)を回避するのを可能にする。加えられる圧力は、降伏応力パラメータのビンガム流体を使用するレオロジー特性(せん断速度の関数におけるせん断応力)によって測定することができ、降伏応力の範囲は、好ましくは1から10Paである。
【0031】
有利には、組成物Cから形成されたゲルは、自己修復性である。これにより、ゲルが印刷された構造を同時に支持しながら、印刷ノズルが同じ領域のゲルを繰り返し通過することが有利に可能になる。
【0032】
有利には、ポロキサマー水性組成物に添加されたポリ(オキシアルキレングリコール)は、形成されたゲルの軟化剤として作用し、FRESH3D印刷のためのゲルの特性を維持及び改善しながら、より良好な自己修復を可能にする。実際、PAGの添加は、レオロジー特性の適合を可能にし(PAGは降伏応力調整剤である)、ゲル化温度の低下、降伏応力の低下、及び粘度の低下を可能にする。静的降伏応力を減少及び制御することで、印刷された対象物の懸濁状態を維持しながら、本方法の間のヒドロゲルのより優れた自己修復性を可能にする。
【0033】
好ましくは、20℃から50℃、好ましくは20℃から40℃の温度でのゲルCの静的降伏応力は、1から100Pa、好ましくは1から50Paである。静的降伏応力は当業者により知られる任意の方法に従って測定することができ、特に、レオロジー測定は、半径14mm、高さ42mmの同心円筒形状の制御応力レオメータ(DHR-2レオメータ、TA Instruments、米国)を用いて実施した。15mLの組成物Cをギャップを3580μmに固定して導入した。まず、ゲル化温度(Tgel)を、線形フィールドチェック後の周波数掃引手順(0.1から100rad/s)から得た。ゲル化温度をtanδ=G’’/G’=1の時に規定した。続いて、10から10-5-1のせん断速度掃引を適用し、10から40℃まで5℃刻みの様々な温度で応力を測定することにより、静的降伏応力の値を測定した。シリコーン材料の粘度は、半径40mm、角度2°、ギャップ50μmのコーンプレート形状で測定された。
【0034】
好ましくは、質量比PAG/ポロキサマーは、20℃から50℃、好ましくは20℃から40℃の温度でのゲルCの静的降伏応力が、0.5から200Pa、好ましくは1から100、より好ましくは1から50Paとなるようなものである。
【0035】
好ましくは、質量比PAG/ポロキサマーは、0.5よりも大きく、好ましくは1よりも大きい。好ましくは0.5から2、好ましくは0.5から1.5、好ましくは1から2、好ましくは1.1から1.5である。
【0036】
好ましくは、組成物Cは、10から40質量%、より好ましくは15から30質量%、さらにより好ましくは17から25質量%の少なくとも1種のポロキサマー、好ましくは上記したもの等の少なくとも1種のポリキサマーを含む。
【0037】
本発明の組成物(C)において、ポロキサマーは、好ましくは、中央POブロック及び2つの末端EOブロックから構成されたトリブロックコポリマーであり、ポリ(オキシアルキレングリコール)は、好ましくは、100から6000g/mol、好ましくは200から2000g/mol、好ましくは400g/molの重量による分子量(Mw)を好ましくは有するPEGであり、質量比PEG/ポロキサマーは1よりも大きく、好ましくは1から2、好ましくは1.1から1.5である。
【0038】
有利には、本発明の方法により得られるシリコーンエラストマー物品の表面の官能化を提供するために、組成物Cは、
- 塩基、例えばNAOH;
- 酸、例えば酢酸;
- 官能化シラン、例えばアミノ、エポキシ、ヒドロキシ、ポリエーテル(とりわけ、4から5のpHで安定したもの)基;
の中から選択された1種以上の化合物をさらに含むことができる。
【0039】
工程1において、組成物Cは、ゲルを形成できる温度T1に置かれる必要がある。当業者は、その一般知識及び使用されるポロキサマーに基づいて温度範囲を決定することができる。好ましくは、T1は、20から50℃、好ましくは25から50℃、より好ましくは25から40℃、例えば25から35℃、さらにより好ましくは28から32℃である。
【0040】
組成物Cは、ポリ(オキシアルキレン)グリコールを水に分散させ、次いでポロキサマーを添加することによって得られ得る。
【0041】
本発明による方法において、組成物Xは、好ましくは1000mPa.sから1000000mPa.sの粘度を有する架橋性シリコーン組成物である。本発明による方法は、50000mPa.sよりも低い、好ましくは10000mPa.sよりも低い、例えば1000から5000mPa.sの粘度を有する架橋性シリコーン組成物Xを印刷するために特に適している。
【0042】
本開示において考慮されている全ての粘度は、25℃での「ニュートン」動的粘度の大きさに相当する。すなわち、動的粘度は、それ自体が既知の方法で、測定粘度が速度勾配に依存しないほど十分に低いせん断速度勾配で、ブルックフィールド粘度計を用いて測定される。
【0043】
架橋性シリコーン組成物Xは、付加反応により又は重縮合反応により架橋可能なシリコーン組成物であり得る。
【0044】
一実施形態において、架橋性シリコーン組成物Xは、付加反応により架橋可能なシリコーン組成物である。この実施形態において、組成物Xは、
(A)1分子当たりケイ素原子に結合した少なくとも2つのC-Cアルケニル基を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサン化合物A、
(B)1分子当たり、同一の又は異なるケイ素原子に結合した少なくとも2つの水素原子を含む少なくとも1種のオルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物B、
(C)白金族からの、少なくとも1つの金属又は化合物からなる少なくとも1つの触媒Cat、
(D)任意選択でフィラーD、及び
(F)任意選択で架橋阻害剤F
を含む。
【0045】
オルガノポリシロキサンA
特に有利な態様によれば、1分子当たり、ケイ素原子に結合した少なくとも2つのC-Cアルケニル基を含むオルガノポリシロキサンAは、
(i)同一又は異なってもよい、以下の式を有する、少なくとも2つのシロキシル単位(A.1)
【化1】
(式中、
- a=1又は2、b=0、1又は2及びa+b=1、2又は3;
- 記号Wは、同一又は異なってもよく、直鎖状又は分岐状C-Cアルケニル基を表し;
- 記号Zは、同一又は異なってもよく、1から30個の炭素原子を含有する一価の炭化水素系の基を表し、好ましくは1から8個の炭素原子を含有するアルキル基及び6から12個の炭素原子を含有するアリール基により形成される群から選択され、より優先的にはメチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニル基により形成される群から選択される)
(ii)及び、任意選択で、以下の式を有する少なくとも1つのシロキシル単位:
【化2】
(式中、
- a=0、1、2又は3、
- 記号Zは、同一又は異なってもよく、1から30個の炭素原子を含有する一価の炭化水素系の基を表し、好ましくは1から8個の炭素原子を含有するアルキル基及び6から12個の炭素原子を含有するアリール基により形成される群から選択され、さらにより優先的にはメチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニル基により形成される群から選択される)
を含む。
【0046】
有利には、Z及びZは、メチル基及びフェニル基より形成される群から選択され、Wは、以下のリスト:ビニル、プロペニル、3-ブテニル、5-ヘキセニル、9-デセニル、10-ウンデセニル、5,9-デカジエニル及び6-11-ドデカジエニル、から選択され、好ましくは、Wはビニルである。
【0047】
好ましい実施形態において、式(A.1)において、a=1かつa+b=2又は3であり、式(A.2)において、c=2又は3である。
【0048】
これらのオルガノポリシロキサンAは、直鎖状、分岐状又は環状の構造を有してもよい。これらの重合度は好ましくは2から5000である。
【0049】
オルガノポリシロキサンAが直鎖状ポリマーである場合、それらはシロキシル単位WSiO2/2、WZSiO2/2及びZ SiO2/2より形成される群から選択されるシロキシル単位Dから、及びシロキシル単位WSiO1/2、WZSiO1/2、ZSiO1/2及びZ SiO1/2より形成される群から選択されるシロキシル単位Mから実質的に形成される。記号W、Z及びZは、上記したとおりである。
【0050】
末端単位Mの例としては、トリメチルシロキシ、ジメチルフェニルシロキシ、ジメチルビニルシロキシ又はジメチルヘキセニルシロキシ基が挙げられる。
【0051】
単位Dの例としては、ジメチルシロキシ、メチルフェニルシロキシ、メチルビニルシロキシ、メチルブテニルシロキシ、メチルヘキセニルシロキシ、メチルドデセニルシロキシ又はメチルデカジエニルシロキシ基が挙げられる。
【0052】
前記オルガノポリシロキサンAは、25℃で約10から1000000mPa.s、通常、25℃で約1000から120000mPa.sの動的粘度を有する油であってもよい。
【0053】
オルガノポリシロキサンAが環状オルガノポリシロキサンである場合、それらは以下の式:WSiO2/2、ZSiO2/2又はWZSiO2/2を有するシロキシル単位Dから形成され、これらはジアルキルシロキシ、アルキルアリールシロキシ又はアルキルシロキシタイプのものであってもよい。そのようなシロキシル単位の例は、既に上で挙げられている。前記環状オルガノポリシロキサンAは、25℃で約1から5000mPa.sの粘度を有する。
【0054】
好ましくは、オルガノポリシロキサン化合物Aは、0.001から30%、好ましくは0.01から10%のSi-ビニル単位の質量含有量を有する。
【0055】
オルガノヒドロゲンポリシロキサンB
好ましい実施形態によると、オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、1分子当たり、同一の又は異なるケイ素原子に結合した少なくとも2つの水素原子を含有する、好ましくは、1分子当たり、同一の又は異なるケイ素原子に直接結合した少なくとも3つの水素原子を含有するオルガノポリシロキサンである。
【0056】
有利には、オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、
(i)少なくとも2つのシロキシル単位、好ましくは、以下の式を有する少なくとも3つのシロキシル単位:
【化3】
(式中:
- d=1又は2、e=0、1又は2、d+e=1、2又は3、
- 記号Zは、同一又は異なっていてもよく、1から30個の炭素原子を含有する1価の炭化水素系の基を表し、好ましくは、1から8個の炭素原子を含有するアルキル基及び6から12個の炭素原子を含有するアリール基より形成される群から選択され、さらにより優先的には、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニル基より形成される群から選択される)、及び
(ii)任意選択で、以下の式を有する少なくとも1つのシロキシル単位:
【化4】
(式中:
- c=0、1、2又は3、
- 記号Zは、同一又は異なっていてもよく、1から30個の炭素原子を含有する1価の炭化水素系の基を表し、好ましくは、1から8個の炭素原子を含有するアルキル基及び6から12個の炭素原子を含有するアリール基より形成される群から選択され、さらにより優先的には、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニル基より形成される群から選択される)
を含む、オルガノポリシロキサンである。
【0057】
オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、式(B.1)のシロキシル単位から単独で形成されてもよく、又は式(B.2)の単位も含んでもよい。直鎖状、分岐状又は環状構造を有してもよい。重合度は、好ましくは2以上である。より一般的には、重合度は5000未満である。
【0058】
式(B.1)のシロキシル単位の例は、特に、以下の単位:H(CHSiO1/2、HCHSiO2/2及びH(C)SiO2/2である。
【0059】
オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bが直鎖状ポリマーである場合、それらは:
- 以下の式:Z SiO2/2又はZHSiO2/2を有する単位から選択されるシロキシル単位D、及び
- 以下の式:Z SiO1/2又はZ HSiO1/2を有する単位から選択されるシロキシル単位M
から実質的に形成され、記号Z及びZは、上記したとおりである。
【0060】
これらの直鎖状オルガノポリシロキサンは、25℃で約1から100000mPa.s、一般的には、25℃で約10から5000mPa.sの動的粘度を有する油、又は25℃で約1000000mPa.s以上の粘度を有する高粘性油であってもよい。
【0061】
オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bが環状オルガノポリシロキサンである場合、それらは、ジアルキルシロキシ又はアルキルアリールシロキシタイプのものであってもよい、以下の式:Z SiO2/2及びZHSiO2/2を有するシロキシル単位Dから形成されるか、又は単位ZHSiO2/2単独から形成される。したがって、それらは、約1から5000mPa.sの粘度を有する。
【0062】
直鎖状オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bの例は、ヒドロゲノジメチルシリル末端基を有するジメチルポリシロキサン、トリメチルシリル末端基を有するジメチルヒドロゲノメチルポリシロキサン、ヒドロゲノジメチルシリル末端基を有するジメチルヒドロゲノメチルポリシロキサン、トリメチルシリル末端基を有するヒドロゲノメチルポリシロキサン、及び環状ヒドロゲノメチルポリシロキサンである。
【0063】
一般式(B.3)に対応するオリゴマー及びポリマーは、オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物B:
【化5】
(式中、
- x及びyは、0から200の範囲の整数であり、
- 記号Rは、同一又は異なっていてもよく、互いに独立して:
・1から8個の炭素原子を含有し、任意選択で、少なくとも1つのハロゲン、好ましくはフッ素で置換された、直鎖状又は分岐状アルキル基であり、アルキル基は好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3-トリフルオロプロピルである、直鎖状又は分岐状アルキル基、
・5から8個の環状炭素原子を含有するシクロアルキル基、
・6から12個の炭素原子を含有するアリール基、又は
・5から14個の炭素原子を含有するアルキル部分及び6から12個の炭素原子を含有するアリール部分を有するアラルキル基、
を表す)
として特に好ましい。
【0064】
以下の化合物が、オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bとして、本発明に特に好適である:
【化6】
(式中、a、b、c、d及びeは以下で定義される:
- 式S1のポリマーにおいて、
- 0≦a≦150、好ましくは0≦a≦100、より好ましくは0≦a≦20であり、及び
- 1≦b≦90、好ましくは10≦b≦80、より好ましくは30≦b≦70であり、
- 式S2のポリマーにおいて、0≦c≦15であり、
- 式S3のポリマーにおいて、5≦d≦200、好ましくは20≦d≦100、及び2≦e≦90、好ましくは10≦e≦70である)。
【0065】
特に、本発明での使用に好適であるオルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、a=0である式S1の化合物である。
【0066】
好ましくは、オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、0.2から91%、好ましくは0.2から50%のSiH単位の質量含有量を有する。
【0067】
一実施形態において、オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、分岐状ポリマーである。前記分岐状オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは:
a)式RSiO1/2のシロキシル単位M、式RSiO2/2のシロキシル単位D、式SiO3/2のシロキシル単位T及び式SiO4/2のシロキシル単位Qから選択される少なくとも2つの異なるシロキシル単位(式中、Rは、1から20個の炭素原子を有する一価の炭化水素基又は水素原子を示す)を含み、かつ
b)ただし、これらのシロキシル単位の少なくとも1つは、シロキシル単位T又はQであり、シロキシル単位M、D又はTの少なくとも1つは、Si-H基を含有する。
【0068】
したがって、好ましい一実施形態によると、分岐状オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、以下の群から選択され得る:
- 式M’Qのオルガノポリシロキサン樹脂であって、
(a)式RHSiO1/2の一価のシロキシル単位M’;及び
(b)式SiO4/2の四価のシロキシル単位Q;
から実質的に形成される、オルガノポリシロキサン樹脂、並びに
- 式MD’Qのオルガノシロキサン樹脂であって、以下の単位:
(a)式RHSiO2/2の二価のシロキシル単位D’;
(b)式RSiO1/2の一価のシロキシル単位M;及び
(c)式SiO4/2の四価のシロキシル単位Q;
で基本的には構成されるオルガノシロキサン樹脂(式中、Rは1から20個の炭素原子を有する一価のヒドロカルビルを表し、好ましくは、1から12個、より好ましくは1から8個の炭素原子を有する一価の脂肪族又は芳香族ヒドロカルビルを表す。)
【0069】
さらなる実施形態として、少なくとも直鎖状オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物B及び少なくとも分岐状オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bの混合物が使用され得る。この場合、直鎖状及び分岐状オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、広範囲の任意の割合で混合することができ、硬度及びSi-Hとアルケニル基の比率などの所望の製品特性に応じて混合割合が調整されてもよい。
【0070】
本発明において、オルガノポリシロキサンAの割合及びオルガノヒドロゲノポリシロキサンBの割合は、オルガノヒドロゲノポリシロキサンB中のケイ素に結合した水素原子(Si-H)と、オルガノポリシロキサンA中のケイ素に結合したアルケニル基(Si-CH=CH)とのモル比が0.2から20、好ましくは0.5から15、より優先的には0.5から10、さらにより優先的には0.5から5となるような割合である。
【0071】
触媒Cat
白金族からの少なくとも1つの金属、又は化合物からなる触媒Catはよく知られている。白金族の金属はプラチノイドという名前で知られているものであり、この用語は白金のほかに、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム及びイリジウムを組み合わせたものである。白金及びロジウム化合物が好ましく使用されている。白金と有機生成物の錯体が特許文献US 3159601、US 3159602、US 3220972及び欧州特許文献EP 0057459、EP 0188978及びEP 0190530に記載されており、特許文献US 3419593、US 3715334、US 3377432及びUS 3814730に記載されている白金とビニルオルガノシロキサンの錯体が、特に使用されてもよい。具体例としては、白金金属粉末、塩化白金酸、塩化白金酸とβ-ジケトンとの錯体、塩化白金酸とオレフィンとの錯体、塩化白金酸と1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体、上記触媒を含むシリコーン樹脂粉末の錯体、例えば式RhCl(PhP)、RhCl[S(C等によって表されるもののようなロジウム化合物、テトラキス(トリフェニル)パラジウム、パラジウムブラックとトリフェニルホスフィンの混合物等がある。
【0072】
白金触媒は、室温で十分に迅速な架橋を可能にするために、触媒的に十分な量で使用されることが好ましい。典型的には、全シリコーン組成物に対して、Pt金属の量に基づいて、1から200質量ppm、好ましくは1から100質量ppm、より好ましくは1から50質量ppmの触媒が使用される。
【0073】
フィラーD
十分に高い機械的強度を可能にするために、付加-架橋(addition-crosslinking)シリコーン組成物は、フィラー、例えばシリカ微粒子等のフィラーを、補強フィラーDとして含み得る。沈殿シリカ、ヒュームドシリカ、及びこれらの混合物が使用され得る。これらの活性補強フィラーの比表面積は、BET法により測定して少なくとも50m/g、好ましくは100から400m/gの範囲内であるべきである。この種の活性補強フィラーは、シリコーンゴムの分野内では非常によく知られた材料である。言及したシリカフィラーは、親水性の性質を有していてもよいし、又は公知の方法によって疎水化されていてもよい。
【0074】
好ましい実施形態において、シリカ補強フィラーは、BET法により測定して少なくとも50m/g、好ましくは100から400m/gの比表面積を有するヒュームドシリカである。ヒュームドシリカは、未処理の形態で使用されてもよいが、好ましくは疎水性表面処理が施される。これらの場合、疎水性表面処理を施したヒュームドシリカが使用される場合には、あらかじめ疎水性表面処理を施したヒュームドシリカが使用されてもよいし、又はヒュームドシリカとオルガノポリシロキサンAとの混合の間に表面処理剤を添加して、ヒュームドシリカをその場で処理してもよい。
【0075】
表面処理剤は、アルキルアルコキシシラン、アルキルクロロシラン、アルキルシラザン、シランカップリング剤、チタネート系処理剤、脂肪酸エステル等の従来から使用されている剤のいずれから選択してもよく、単一の処理剤を用いても、2種以上の処理剤を組み合わせて用いてもよく、これらは同時に用いても、異なるタイミングで用いてもよい。
【0076】
付加-架橋シリコーン組成物におけるシリカ補強フィラーDの量は、全組成物の5質量%から40質量%、好ましくは10質量%から35質量%の範囲内である。このブレンド量が5質量%未満の場合、十分なエラストマー強度が得られない可能性があり、一方で、個のブレンド量が40質量%を超えると、実際のブレンド方法が困難になる可能性がある。
【0077】
本発明によるシリコーン組成物は、標準的な半補強フィラー又は充填フィラー(packing filler)、ヒドロキシル官能性シリコーン樹脂、顔料、又は接着促進剤のような他のフィラーも含んでもよい。
【0078】
半補強又は充填鉱物フィラーとして含まれてもよい非ケイ質鉱物は、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、水和アルミナ、炭酸カルシウム、粉砕石英、珪藻土、酸化亜鉛、雲母、タルク、酸化鉄、硫酸バリウム、及び消石灰で構成される群から選択され得る。
【0079】
シリコーン樹脂とは、少なくとも1つのT及び/又は1つQシロキシ単位(ここで、Q:SiO2/2及びT:R1SiO3/2)を含むオルガノポリシロキサンを指す。ヒドロキシル官能性シリコーン樹脂はよく知られており、MQ(OH)、MDT(OH)、又はDT(OH)樹脂(ここでM: R1R2R3SiO1/2、D:R1R2SiO2/2、Q(OH):(OH)SiO3/2,及びT(OH):(OH)R1SiO2/2)から選択され得、R1、R2及びR3基は:
- 1から8個の炭素原子を有し、任意選択で1個以上のハロゲン原子で置換された、
直鎖状又は分岐状のアルキル基;及び
- 6から14個の炭素原子を含有するアリール又はアルキルアリール基
から互いに独立して選択される。
【0080】
好ましくは、ヒドロキシル官能性シリコーン樹脂は、MQ(OH)樹脂である。
【0081】
架橋阻害剤F
架橋阻害剤は、周囲温度での組成物の硬化を遅らせるために、付加架橋シリコーン組成物に一般的に使用されている。架橋阻害剤Fは、以下の化合物:
- アセチレンアルコール、
- 任意選択で環状形態であってもよい少なくとも1のアルケニルで置換されたオルガノポリシロキサン、テトラメチルビニルシクロテトラシロキサンが特に好ましい、
- ピリジン、
- 有機ホスフィン及びホスファイト、
- 不飽和アミド、並びに
- アルキル又はアルケニルマレエート、
から選択されてもよい。
【0082】
好ましいヒドロシリル化反応熱ブロッカーである、これらのアセチレンアルコール(FR 1528464及びFR 2372874を参照)は、式:
【化7】
(式中、R’は直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又はフェニル基であり、R’’はH又は直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又はフェニル基であり、基R’及びR’’と炭素原子αが三重結合し、環を形成する可能性がある)
を有する。
【0083】
R’及びR’’に含有される炭素原子の総量は、少なくとも5個、好ましくは9から20個である。前記アセチレンアルコールに関して、例として:
- 1-エチニル-1-シクロヘキサノール;
- 3-メチル-1-ドデシン-3-オール;
- 3,7,11-トリメチル-1-ドデシン-3-オール;
- 1,1-ジフェニル-2-プロピン-1-オール;
- 3-エチル-6-エチル-1-ノニル-3-オール;
- 2-メチル-3-ブチン-2-オール;
- 3-メチル-1-ペンタデシン-3-オール;及び
- ジアリルマレエート又はジアリルマレエート誘導体
が挙げられてもよい。
【0084】
好ましい実施形態において、架橋阻害剤は、1-エチニル-1-シクロヘキサノールである。
【0085】
より長い作業時間又は「ポットライフ」を得るために、阻害剤の量が調整され、所望の「ポットライフ」が達成される。本発明のシリコーン組成物中の触媒阻害剤の濃度は、周囲温度で触媒の硬化を遅らせるのに十分である。この濃度は、使用される特定の阻害剤、ヒドロシリル化触媒の性質及び濃度、並びにオルガノヒドロゲノポリシロキサンの性質によって大きく異なり得る。白金族金属1モル当たり1モルの阻害剤という低い阻害剤濃度でも、場合によっては満足のいく貯蔵安定性及び硬化速度が得られる。他の例では、白金族金属1モル当たり500モル以上までの阻害剤の阻害剤濃度が必要とされることもある。所定のシリコーン組成物中の阻害剤の最適濃度は、日常的な実験によって容易に決定することができる。
【0086】
有利には、付加-架橋シリコーン組成物中の架橋阻害剤Fの量は、シリコーン組成物の総重量に対して、0.01重量%から0.2重量%、好ましくは、0.03重量%から0.15重量%である。
【0087】
阻害剤の使用は、ノズルの先端でのシリコーン組成物の早期硬化及びその後の印刷層の外観の損傷を回避するのに効果的である。
【0088】
任意選択で、シリコーン組成物Xは、チキソトロピック剤をさらに含み得る。チキソトロピック剤は、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーFであり得る。
【0089】
ポリジオルガノシロキサン-ポリエーテルコポリマー又はポリアルキレンオキシド変性ポリメチルシロキサンとしても知られる、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーFは、アルキレンオキシド鎖配列を有するシロキシル単位を含むオルガノポリシロキサンである。好ましくは、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーFは、エチレンオキシド鎖配列及び/又はプロピレンオキシド鎖配列を有するシロキシル単位を含むオルガノポリシロキサンである。
【0090】
好ましい実施形態において、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーFは、式(F-1):
[R SiO(4-a-b)/2 (F-1)
(式中、
各Rは、1から30個の炭素原子を含有する炭化水素系の基から独立して選択され、好ましく1から8個の炭素原子を含有するアルキル基及び6から12個の炭素原子を含有するアリール基より形成される群から選択され;
各Zは、基-R-(OC2p(OC2r-ORであり、
式中、nは2より大きい整数であり、
a及びbは独立して0、1、2又は3であり;a+b=0、1、2又は3であり、
は2から20個の炭素原子を有する二価の炭化水素基又は直接結合であり、
は水素原子又はR1で定義するような基であり、
p及びrは独立して1から6の整数であり、
q及びsは独立して0、又は1<q+s<400のような整数である)
の単位を含むシロキシルを含むオルガノポリシロキサンであり、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーEの各分子は、少なくとも1つの基Zを含む。
【0091】
好ましい実施形態において、上記式(F-1)において、
nは2より大きい整数であり;a+b=0、1、2又は3であり、
a及びbは独立して0、1、2又は3であり、
は1から8個の炭素原子を含有するアルキル基であり、最も好ましくはRはメチル基であり、
は2から6個の炭素原子を有する二価の炭化水素基又は直接結合であり、
p=2及びr=3であり、
qは1から40、最も好ましくは5から30であり、
sは1から40、最も好ましくは5から30であり、
は水素原子又は1から8個の炭素原子を含有するアルキル基であり、最も好ましくはRは水素原子である。
【0092】
最も好ましい実施形態において、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーFは、1から200、好ましくは50から150のシロキシル単位(F-1)の総数、及び2から25、好ましくは3から15のZ基の総数を含むオルガノポリシロキサンである。
【0093】
本発明の方法で使用され得るオルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーFの例は、式(F-2):
SiO[R SiO][RSi(R-(OCHCH(OC-OR)O]SiR (F-2)
(式中、
各Rは1から8個の炭素原子を含有するアルキル基から独立して選択され、好ましくはRはメチル基であり、
各Rは2から6個の炭素原子を有する二価の炭化水素基又は直接結合であり、好ましくはRはプロピル基であり、
x及びyは独立して1から40、好ましくは5から30、最も好ましくは10から30の整数であり、
tは1から200、好ましくは25から150であり、
rは2から25、好ましくは3から15であり、
はH又はアルキル基、優先的にはH又はCH基である。)
に相当する。
【0094】
有利には、一実施形態において、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーFは:
MeSiO[MeSiO]75[MeSi((CH-(OCHCH22(OCHCH(CH))22-OH)O]SiMe
である。
【0095】
ポリジオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーの調製方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、ポリジオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーは、例えば、ケイ素結合水素原子を含有するポリジオルガノシロキサンと脂肪族不飽和を有する基を含有するポリオキシアルキレンを白金族触媒の存在下で反応させることによるヒドロシリル化反応を用いて調製され得る。
【0096】
付加-架橋シリコーン組成物中のオルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーFの量は、シリコーン組成物の総質量に対して、少なくとも0.3質量%、好ましくは少なくとも0.4質量%、最も好ましくは0.6質量%から4質量%、さらに最も好ましくは0.6質量%から3質量%の範囲内である。
【0097】
好ましい実施形態において、本発明の架橋性シリコーン組成物Xは、100質量%のシリコーン組成物あたり、
- 55から80質量%の少なくとも1種のオルガノポリシロキサン化合物A;
- 0.1から5質量%の少なくとも1種のオルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物B;
- 0から20質量%の少なくとも1つのフィラー、好ましくは補強シリカフィラーD;
- 0.002から0.01質量%の白金及び
- 0.01から0.2質量%の少なくとも1つの架橋阻害剤E
を含む。
【0098】
組成物は、成分AからEを単一の部分に含む一成分型組成物であってもよく、あるいは、成分BおよびCatが同じ部分に存在しないことを条件として、これらの成分を2つ以上の部分に含む多成分型(multi-part)組成物であってもよい。例えば、多成分型組成物は、成分Aの一部及び成分Catの全てを含む第1部分と、成分Aの残りの部分及び成分Bの全てを含む第2部分とを含み得る。特定の実施形態において、成分Aは第1部分にあり、成分Bは第1部分とは別の第2部分にあり、成分Catは第1部分、第2部分、及び/又は第1部分と第2部分とは別の第3部分にある。成分D及びEは、成分B、又はCatの少なくとも1つと共にそれぞれの部分に存在してもよいし、及び/又は別個の部分に存在することもできる。
【0099】
一成分型組成物は、典型的には、主成分と任意選択の成分を周囲温度において上述した比率で混合することにより調製される。組成物がすぐに使用される場合、種々の成分の添加の順番は重要ではないが、ヒドロシリル化触媒は、典型的には、組成物の早期硬化を防ぐために、約30℃未満の温度で最後に添加される。
【0100】
また、多成分型組成物はそれぞれの部分における成分を混合することにより調製され得る。混合は、特定の装置におけるバッチ方法又は連続的方法のいずれかにおいて、ブレンド又は攪拌等の技術分野で知られた任意の技術によって達成され得る。特定の装置は、成分の粘度及び最終的な組成物の粘度により決定される。
【0101】
特定の実施形態において、シリコーン組成物が多成分型シリコーン組成物である場合、多成分型シリコーン組成物の別々の部分は、印刷の前及び/又は間に、ディスペンス印刷ノズル(dispense printing nozzle)、例えば、デュアルディスペンス印刷ノズルにおいて混合されてもよい。あるいは、別々の部分は印刷の直前に混合されてもよい。
【0102】
別の実施形態において、架橋性シリコーン組成物Xは、当業者によく知られる重縮合反応によって架橋可能なシリコーン組成物である。この実施形態において、組成物Xは、
- OH基及び加水分解性基からなる群において選択された少なくとも2つの基を含む少なくとも1つのオルガノポリシロキサンG、
- 重縮合触媒、
- 任意選択で少なくとも1つの架橋剤H、及び
- 任意選択で上記したようなフィラーD、
を含む。
【0103】
好ましくは、オルガノポリシロキサンGは、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシ-アルキレン-オキシ、アミノ、アミド、アシルアミノ、アミノキシ(aminoxy)、イミノキシ、セチミノキシ(cetiminoxy)、アシルオキシ及びエノキシ基からなる群において選択される少なくとも2つの基を含む。
【0104】
有利には、ポリオルガノシロキサンGは、
(i)少なくとも2つの、式(V)のシロキシル単位:
【化8】
(式中、
- Rは、同一の又は異なる、1から30個の炭素原子を含む一価の炭化水素基を表し、
- Yは、同一の又は異なる、加水分解性縮合性基(hydrolysable and condensable group)又はヒドロキシ基を表し、好ましくは、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシ-アルキレン-オキシ、アミノ、アミド、アシルアミノ、アミノキシ(aminoxy)、イミノキシ、セチミノキシ(cetiminoxy)、アシルオキシ、イミノキシ、セチミノキシ及びエノキシ基からなる群において選択され、
- gは0、1又は2であり、hは1、2又は3であり、g+hの合計は1、2又は3である)、及び
(ii)任意選択で、1つ又は複数の、式(VI)のシロキシル単位:
【化9】
(式中、
- Rは、同一の又は異なる、1から30個の炭素原子を含み、任意選択で、1つ又は複数のハロゲン原子により又はアミノ、エーテル、エステル、エポキシ、メルカプト又はシアノ基により置換された、一価の炭化水素基を表し、
- iは0、1、2又は3である。)
を含む。
【0105】
アルコキシタイプの加水分解性縮合性基Yの例として、1から8個の炭素原子を有する基、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソ-プロポキシ、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、2-メトキシエトキシ、ヘキシルオキシ又はオクチルオキシを挙げることができる。
【0106】
アルコキシ-アルキレン-オキシタイプの加水分解性縮合性基Yの例として、メトキシ-エチレン-オキシを挙げることができる。
【0107】
アミノタイプの加水分解性縮合性基Yの例として、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、n-ブチルアミノ、sec-ブチルアミノ又はシクロヘキシルアミノを挙げることができる。
【0108】
アミドタイプの加水分解性縮合性基Yの例として、N-メチル-アセトアミドを挙げることができる。
【0109】
アシルアミノタイプの加水分解性縮合性基Yの例として、ベンゾイル-アミノを挙げることができる。
【0110】
アミノキシタイプの加水分解性縮合性基Yの例として、ジメチルアミノキシ、ジエチルアミノキシ、ジオクチルアミノキシ又はジフェニルアミノキシを挙げることができる。
【0111】
イミノキシ、及び特にセチミノキシタイプの加水分解性縮合性基Yの例として、以下のオキシム:アセトフェノン-オキシム、アセトン-オキシム、ベンゾフェノン-オキシム、メチル-エチル-セトキシム、ジ-イソプロピルセトキシム又はメチルイソブチル-セトキシム、に由来する基を挙げることができる。
【0112】
アシルオキシタイプの加水分解性縮合性基Yの例として、アセトキシを挙げることができる。
【0113】
エノキシタイプの加水分解性縮合性基Yの例として、2-プロペンオキシを挙げることができる。
【0114】
オルガノポリシロキサンGの粘度は、通常、25℃で50mPa.sから1000000mPa.sの間に含まれる。
【0115】
好ましくは、オルガノポリシロキサンGは、式(VII)のものである:
3-jSi─O─(SiR ─O)─SiR 3-j (VII)
(式中、
- Yは、同一の又は異なる、各加水分解性縮合性基又はヒドロキシ基を表し、好ましくは、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシ-アルキレン-オキシ、アミノ、アミド、アシルアミノ、アミノキシ(aminoxy)、イミノキシ、セチミノキシ(cetiminoxy)、アシルオキシ及びエノキシ基からなる群において選択され、
- Rは、同一の又は異なる、1から30個の炭素原子を含み、任意選択で、1つ又は複数のハロゲン原子又はアミノ、エーテル、エステル、エポキシ、メルカプト又はシアノ基により置換された、一価の炭化水素基を表し、
- jは1、2又は3、好ましくは2又は3であり、Yがヒドロキシル基の場合、j=1であり、
- pは1以上の整数であり、好ましくはpは1から2000の間に含まれる整数である。)。
【0116】
式(V)、(VI)及び(VII)において、R、R及びRは、好ましくは、
- 任意選択で、1つ又は複数のアリール若しくはシクロアルキル基により、1つ又は複数のハロゲン原子により、又はアミノ、エーテル、エステル、エポキシ、メルカプト、シアノ若しくは(ポリ)グリコール基により置換された、1から20個の炭素原子を含むアルキル基。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、エチル-2ヘキシル、オクチル、デシル、トリフルオロ-3,3,3プロピル、トリフルオロ-4,4,4ブチル、ペンタフルオロ-4,4,4,3,3ブチル;
- 5から13個の炭素原子を含むシクロアルキル及びハロゲノシクロアルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、プロピルシクロヘキシル、ジフルオロ-2,3シクロブチル、ジフルオロ-3,4メチル-5シクロヘプチル;
- 6から13個の炭素原子を含むアリール及びハロゲノアリール単環、例えばフェニル、トリル、キシリル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、トリクロロフェニル;又は
- 2から8個の炭素原子を含むアルケニル基、例えばビニル、アリル及びブテン-2イル;
である。
【0117】
特定の実施形態において、Gが、ヒドロキシルタイプのYを有する式(VII)のものである場合、dは好ましくは1である。この場合、末端シラノール基(≪アルファ-オメガ≫位とも呼ばれる)を有するポリ(ジメチルシロキサン)を使用することが好ましい。
【0118】
オルガノポリシロキサンGは、少なくとも1つのヒドロキシ又はアルコキシ基、縮合性若しくは加水分解性である基を有するオルガノポリシロキサン樹脂からなる群において選択されることもでき、式M、D、T及びQの群の中から選択される少なくとも2つの異なるシロキシル単位を含み得る:
- M= (RSiO1/2
- D= (RSiO2/2
- T= RSiO3/2、及び
- Q= SiO4/2
[式中、Rは、1から40個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子を含む一価の炭化水素基、又は、基-OR’’’(R’’’は、H又は1から40個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子を含むアルキル基である)を表し;ただし、樹脂が少なくとも1つのモチーフT又はQ単位を含むことが条件である]。
【0119】
前記樹脂は、好ましくは、樹脂の質量に対して0.1から10質量%のヒドロキシ又はアルコキシ置換基の質量含有量を有し、好ましくは樹脂の質量に対して0.2から5質量%のヒドロキシ又はアルコキシ置換基の質量含有量を有する。
【0120】
オルガノシロキサン樹脂は、通常、ケイ素原子あたり約0.001から1.5のOH基及び/又はアルコキシルを有する。これらのオルガノポリシロキサン樹脂は、通常、クロロシラン、例えば、(R19SiCl、(R19Si(Cl)、R19Si(Cl)又はSi(Cl)(式中、基R19は、同一又は異なり、CからCの直鎖状又は分岐状アルキル、フェニル及びトリフルオロ-3,3,3プロピルからなる群のものであり、例えば、R19はメチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル(tertiobutyl)及びn-ヘキシルである。)の共加水分解及び共縮合によって調製される。
【0121】
樹脂の例は、T(OH)、DT(OH)、DQ(OH)、DT(OH)、MQ(OH)、MDT(OH)、MDQ(OH)タイプのケイ素含有樹脂(silicic resin)又は混合物である。
【0122】
この第2の実施形態において、重縮合反応により架橋可能なシリコーン組成物は、このような架橋剤Hをさらに含み得る。それは、好ましくは、ケイ素原子に結合した1分子当たり2個を超える加水分解性縮合性基を有する有機ケイ素化合物である。このような剤は当業者によく知られており、市販されている。
【0123】
架橋剤Hは、好ましくは、その各分子が少なくとも3つの加水分解性縮合性基Yを含むケイ素含有化合物であり、前記剤Hは、式(VIII)を有する:
(4-k)SiY (VIII)
(式中、
- R基は、同一又は異なり、CからC30における一価の炭化水素基を表し、
- Yは、同一又は異なり、アルコキシ、アルコキシ-アルキレン-オキシ、アミノ、アミド、アシルアミノ、アミノキシ、イミノキシ、セチミノキシ、アシルオキシ又はエノキシ基からなる群において選択され、好ましくは、Yはアルコキシ、アシルオキシ、エノキシ、セチミノキシ又はオキシム基であり、
- k=2、3又は4、好ましくはk=3又は4である)。
【0124】
Y基の例は、Yが加水分解性縮合性基である場合、上記のGについて引用したものと同じである。
【0125】
架橋剤Hの他の例は、アルコキシシラン及び式(IX)のシランの部分加水分解生成物である:
Si(OR(4-l) (IX)
(式中、
- Rは、同一又は異なり、1から8個の炭素原子を含むアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、エチル-2ヘキシル、オクチル及びデシル、C~Cのオキシアルキレン基を表し、
- Rは、同一又は異なり、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐状脂肪族炭化水素基、炭素環基、飽和又は不飽和の、及び/又は芳香族の、単環若しくは多環を表し、
- lは、0、1又は2である)。
【0126】
架橋剤Hの中で、アルコキシシラン、セチミノキシシラン、アルキルシリケート及びアルキルポリシリケートであって、有機基が1から4個の炭素原子を削った(shaving)アルキル基であるものが好ましい。
【0127】
好ましくは、以下の架橋剤Hが、単独で又は混合して使用される:
・エチルポリシリケート及びn-プロピルポリシリケート;
・アルコキシシラン、例えば、ジアルコキシシラン、例としてジアルキルジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、例としてアルキルトリアルコキシシラン及びテトラアルコキシシラン、好ましくは、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、テトラ-イソプロポキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及び以下の式のもの:CH=CHSi(OCHCHOCH、Si(OCOCH及びCHSi(OCOCH
・アシルオキシシラン、例えば以下のアセトキシシラン:テトラアセトキシシラン、メチル-トリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、プロポキシトリアセトキシシラン、ブチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、オクチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、フェニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン及びテトラアセトキシシラン;
・アルコキシ基及びアセトキシ基を含むシラン、例えば、メチル-ジアセトキシメトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、ビニルジアセトキシ-メトキシシラン、ビニルアセトキシジメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン及びメチルアセトキシジエトキシシラン;
・メチルトリス(メチルエチル-セトキシム)シラン、3-シアノプロピルトリメトキシシラン、3-シアノプロピルトリエトキシシラン、3-(グリシジルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、ビニル-トリス(メチルエチルセトキシム)シラン、テトラ-キス(メチルエチルセトキシム)シラン。
【0128】
通常、0.1から60質量部の架橋剤Hが、100質量部のポリオルガノシロキサンGに対して使用される。好ましくは、0.5から15質量部の架橋剤Hが、100質量部のポリオルガノシロキサンGに対して使用される。
【0129】
架橋性シリコーン組成物X(重縮合又は重付加のいずれかによる)は、シリコーン組成物において通常の機能性添加剤をさらに含むことができる。以下の添加剤の機能性ファミリーが挙げられ得る:
- 接着促進剤;
- シリコン樹脂;
- チキソトロピック剤;
- 着色剤;及び
- 耐熱性、耐油性、耐火性のための添加剤、例えば、金属酸化物。
【0130】
重縮合触媒は、スズ、亜鉛、鉄、ジルコニウム、ビスマス又はチタン誘導体、又は例えばEP2268743及びEP2222688に開示されるようなアミン若しくはグアニジン等の有機化合物であり得る。スズ由来の縮合触媒として、スズのモノカルボン酸塩及びジカルボン酸塩、例えば2-エチルヘキサン酸スズ、ジブチルスズジラウレート又はジブチルスズジアセテートを使用することができる(Nollによる著作物“Chemistry and Technology of Silicone”の337頁、Academic Press、1968、第2版、又は特許文献EP 147323又はEP 235049を参照)。他の可能な金属誘導体には、キレート、例えばジブチルスズアセトアセトナート、スルホネート、アルコラートなどが含まれる。
【0131】
接着促進剤が、シリコーン組成物に主に使用される。有利には、本発明による方法において、
- 1分子当たり、少なくとも1つのC~Cアルケニル基を含むアルコキシル化オルガノシラン、
- 少なくともエポキシ基を含むオルガノシリケート化合物、
- 金属Mのキレート及び/又は式:M(OJ)の金属アルコキシド:
(式中、MはTi、Zr、Ge、Li、Mn、Fe、Al及びMg又はこれらの混合物からなる群において選択され、nはMの価数であり、JはC~Cの直鎖状又は分岐状アルキルである)
からなる群において選択される1つ又は複数の接着促進剤を使用することができる。
【0132】
好ましくは、MはTi、Zr、Ge、Li又はMnからなる群において選択され、より好ましくはMはチタンである。例えばブトキシタイプのアルコキシ基を結合させることが可能である。
【0133】
シリコン樹脂(Silicon resins)は、よく知られた分岐状オルガノポリシロキサンであり、市販されている。それらは、その構造中に、式RSiO1/2 (M単位)、RSiO2/2 (D単位)、RSiO3/2(T単位)及びSiO4/2 (Q単位)の単位の中から選択された少なくとも2つの異なる単位を示し、これらの単位の少なくとも1つはT又はQ単位である。
【0134】
基Rは、同一又は異なり、C~Cの直鎖状又は分岐状アルキル、ヒドロキシル、フェニル、トリフルオロ-3,3,3プロピルからなる群において選択される。アルキル基は、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル及びn-ヘキシルである。
【0135】
分岐状オリゴマー又はオルガノポリシロキサンポリマーの例として、MQ樹脂、MDQ樹脂、TD樹脂及びMDT樹脂を挙げることができ、ヒドロキシル官能基はM、D及び/又はT単位によって担持され得る。特に適切な樹脂の例として、0.2から10質量%のヒドロキシル基を有するヒドロキシル化MDQ樹脂を挙げることができる。
【0136】
工程3において、架橋性シリコーン組成物Xは、上で定義したような温度T1で印刷される。温度T1は、制約環境を維持するために、3D印刷方法全体にわたって維持されるべきである。
【0137】
印刷は、3Dプリンターを用いて一層ずつ実行することが好ましい。有利には、3Dプリンターは、押出3Dプリンターである。
【0138】
有利には、温度T1を一定に維持するために、容器及び3Dプリンターは、温度調節エンクロージャーの中に入れられる。
【0139】
3D印刷は一般に、コンピュータが生成した物理的対象物の製造に用いられる関連技術のホスト、例えばコンピュータ援用設計(CAD)、データソースと関連している。「3Dプリンター」は、「3D印刷のために使用される機械」と定義され、「3D印刷」は「プリントヘッド、ノズル、又は他のプリンター技術を用いて材料を積層させることによる、対象物の製造」と定義される。
【0140】
「印刷」は、プリントヘッド、ノズル、又は他のプリンター技術を用いて、材料、本発明における架橋性シリコーン組成物Xの堆積と定義される。
【0141】
本開示において、「3D又は3次元物品、対象物又は部分」は、上で開示された付加製造又は3D印刷により得られる物品、対象物又は部分を意味する。
【0142】
一般的に、全ての3D印刷方法には、共通の出発点があり、それは、対象物を記述することができるコンピュータ生成データソース又はプログラムである。コンピュータ生成データソース又はプログラムは、実物又は仮想対象物に基づくことができる。例えば、実物は、3Dスキャナーを使用してスキャンすることができ、スキャンデータを、コンピュータ生成データソース又はプログラムの作成に使用することができる。あるいは、コンピュータ生成データソース又はプログラムは、コンピュータ援用設計ソフトウェアを用いて設計されてもよい。
【0143】
コンピュータ生成データソース又はプログラムは、典型的にはスタンダードテセレーションランゲージ(STL)ファイル形式に変換されるが、他のファイル形式を使用することも、又は追加的に使用することもできる。このファイルは一般に3D印刷ソフトウェアに読み込まれ、ソフトウェアは、ファイル及び任意選択的にユーザーの入力を取り込み、数百、数千、又は数百万もの「スライス」に分離する。3D印刷ソフトウェアは、典型的には、Gコードの形態とすることができる機械命令を出力し、この命令は3Dプリンターによって読み込まれ、それぞれのスライスを構築する。機械命令は3Dプリンターに転送され、続いて3Dプリンターが、機械命令の形態のこのスライスの情報に基づき、1層ずつ対象物を構築する。これらのスライスの厚さは一様でなくてもよい。押出3Dプリンターは、製造方法中に材料がノズル、シリンジ又はオリフィスを通して押し出される3Dプリンターである。材料の押し出しは一般に、ノズル、シリンジ、又はオリフィスを通して材料を押し出して対象物の1つの断面を印刷することで機能し、後続の各層でこれを繰り返すことができる。押し出された材料は、材料の硬化中にその下の層に接合する。
【0144】
好ましい一実施形態において、三次元シリコーンエラストマー物品の製造方法は、お押出3Dプリンターを使用する。架橋性シリコーン組成物Xは、ノズルを通して押し出される。ノズルは、付加架橋性シリコーン組成物の吐出(dispensing)を補助するために加熱されてもよい。
【0145】
ノズルから吐出されるシリコーン組成物Xは、カートリッジ様のシステムから供給されてもよい。カートリッジは、関連する1つまたは複数の流体貯留槽(fluid reservoir)を備えた1つまたは複数のノズルを含んでもよい。また、スタティックミキサー及び1つのノズルのみを備えた同軸2カートリッジシステムを使用することもできる。圧力は、吐出される流体、関連するノズルの平均直径、及び印刷速度に適合され得る。
【0146】
ノズルの押出時に発生する高いせん断速度のため、架橋性シリコーン組成物Xの粘度は大幅に低下し、微細な(fine)層の印刷が可能になる。
【0147】
カートリッジの圧力は、1(大気圧)から28bar、好ましくは1から10bar、最も好ましくは2から8barまで変化する。このような圧力に耐えるためには、アルミニウム製カートリッジを使用する適合備品を使用するべきである。
【0148】
ノズル及び/又は構築プラットフォームは、X-Y(水平平面)方向に移動して対象物の断面を完成させた後、1つの層が完成すると、Z軸(垂直)平面方向に移動する。ノズルは、約10μmと高いXYZ移動精度を有する。各層がX、Y作業平面で印刷された後、ノズルは次の層をX、Y作業平面で塗布できるのに十分な距離だけZ方向に移動する。このように、3D物品となる対象物は、1回につき1層ずつ、底部から上方へと形成される。
【0149】
ノズルの平均直径は、層の厚みに関連する。一実施形態において、層の直径は、50から2000μm、好ましくは100から800μm、最も好ましくは100から500μmである。
【0150】
有利には、印刷速度は、良好な精度と及び製造速度の間で最良の妥協点を得るために、1から50mm/s、好ましくは、5から30mm/sである。
【0151】
本発明の方法の工程4は、任意選択であり、特に架橋性シリコーン組成物X、温度T1及び印刷される対象物のタイプによって決まる。上記したように、架橋性シリコーン組成物Xは、付加反応によって又は重縮合反応におって架橋可能なシリコーン組成物であり得る。当業者は、架橋性シリコーン組成物Xに応じて、架橋工程の動力学(kinetic)が可変であることを周知している。3D印刷の分野において当業者に知られるように、架橋は印刷工程が開始するとすぐに開始し、その動力学は組成物の性質によって決まる。目的は、変形することなく、その形状を保ちながら形成された物品を回収できるようにすることである。したがって、場合によっては、工程3の終了時に、物品は回収されるのに十分な強度を有することができ、必要であれば架橋は後で終わらせることができる。工程4が実施される場合、架橋は、物品が変形することなくその形状を保ちながら物品を回収することが可能である限り、部分的であっても又は全体的であってもよい。好ましくは、工程4は、任意選択でない。
【0152】
架橋工程4は、使用される架橋性シリコーン組成物Xの機能において、当業者に知られる任意の方法で行われ得る。したがって、架橋工程は、シリコーン組成物Xの架橋までにT1で数分又は数時間待つことによって、又は温度T2で加熱することによって行われ得る。温度T2は、使用される架橋性シリコーン組成物Xによって決まる。この温度は、当業者によって、その一般的な知識及び使用される架橋性シリコーン組成物Xに関する情報、特にデータシートに記載された情報に基づいて決定することができる。好ましくは、T2は30から90℃、好ましくは40から70℃である。
【0153】
本発明による方法の工程5は、組成物Cから形成されたゲルを液化することを可能にし、従って、工程6において、ゲルの量が少ないシリコーンエラストマー物品を回収することを可能にする。この工程により、有利なことに、組成物Cの大部分を回収することができ、これをリサイクルすることができる。温度T3はしたがって、組成物Cに基づいて当業者によって決定され得る。好ましくは、T3は15℃より低く、好ましくは0から15℃、好ましくは0から10℃である。
【0154】
好ましくは、本発明による方法において:
- T1は、25から50℃、好ましくは25から40°、例えば25から35℃、より好ましくは28から32℃であり、及び/又は
- T3は、15℃よりも低く、好ましくは0から15℃、好ましくは0から10℃である。
【0155】
特定の実施形態において、工程5はない。
【0156】
好ましくは、工程5がない場合、工程7が実行され、工程6で回収されたシリコーンエラストマー物品の周囲のゲルが全て除去される。
【0157】
工程5及び6は、順を逆にすることができる。実際、シリコーンエラストマー物品を取り除き、その後、物品上の残留ゲルを液化するために、組成物Cのゾルゲル転移温度よりも低い温度T3に置くことができる。
【0158】
有利には、工程5及び7の後、組成物Cを回収して、工程1にリサイクルする。組成物Cは、したがって少なくとも30回再利用され得る。
【0159】
有利には、本発明によるポロキサマーの使用は、本発明の方法において水以外のいかなる溶媒の使用を回避することを可能にする。したがって、本発明の方法は、好ましくは、水以外の溶媒を使用しないという特徴も有する。このことは、特に得られた物品の生物学的及び医学的使用にとって大きな関心である。
【0160】
上記の通り、工程4の後に得られた架橋性シリコーン組成物Xは、部分的に架橋され得る。このような場合、さらなる架橋工程が方法の終了時、工程6又は7の後に実行される。このさらなる架橋工程は、使用される架橋性シリコーン組成物Xの機能において当業者に知られる任意の手段によって実施され得る。例えば、100から250℃の加熱により、又は水銀アークランプの場合50から240W/cmの紫外線照射下、若しくは15mW/cmより高い放射照度を有するLEDを用いて、実行され得る。
【0161】
任意選択で、得られた物品は、異なる後処理レジームに供されてもよい。一実施形態において、本方法は、三次元シリコーン物品を加熱する工程をさらに含む。加熱が硬化を促進するために使用され得る。別の実施形態において、本方法は、三次元シリコーン物品にさらに放射線を照射する工程をさらに含む。さらなる放射線照射が硬化を促進するために使用され得る。別の実施形態において、本方法は、三次元シリコーン物品の加熱工程及び放射線照射工程の両方をさらに含む。
【0162】
任意選択で、後処理工程は、印刷された物品の表面品質を大幅に改善し得る。サンディング(sanding)はモデルの眼に見える明確な層を減少させるか又は取り除く一般的な方法である。エラストマー物品の表面に、熱又はUV硬化性のRTV又はLSRシリコーン組成物をスプレー又はコーティングすることが、適切な滑らかな表面形態を得るために使用され得る。
【0163】
レーザーを用いた表面処理も、行われ得る。
【0164】
医薬用途のための、最終的なエラストマー物品の滅菌は、例えば、乾燥した雰囲気中又は蒸気と共にオートクレーブ中で加熱することによって、例えば、100℃を超える温度で対象物を加熱することによって、ガンマ線下で、エチレンオキシドで滅菌することによって、電子ビームで滅菌することによって、得ることができる。
【0165】
本発明はまた、本発明による方法によって得られる、または得られやすいシリコーンエラストマー物品に関する。物品は、単純又は複雑な形状を有する任意の物品であり得る。例えば、心臓、腰、腎臓、前立腺などの解剖学的モデル(機能的または非機能的)、外科医及び教育界のためのモデル、矯正器具又は人工装具、あるいは補聴器、ステント、喉頭インプラントなどの長期インプラントなど、さまざまなクラスのインプラントであり得る。
【0166】
本発明はまた、3Dプリンターでシリコーンエラストマー物品を製造するための制約環境としての本発明による組成物Cの使用にも関する。
【0167】
本発明はまた、FRESH3D印刷のためのゲルの特性を維持及び改善しながら自己修復を改善するための、ポロキサマーのゲル中での、ポリ(オキシアルキレングリコール)の使用、とりわけ好ましくはポリ(オキシアルキレングリコール)、とりわけポリ(オキシエチレングリコール)(又はポリエチレンオキシド、PEG)の使用にも関する。
【0168】
本発明はまた、水、少なくとも1種のポロキサマー及びポリ(オキシアルキレングリコール)を含む組成物Cにも関する。ポロキサマー及びポリ(オキシアルキレングリコール)の性質及び量は好ましくは上記したとおりである。
【0169】
図1は、僧帽弁、8本の腱索、及び2つの内側乳頭筋からなる生理学的形状を表している。
【実施例
【0170】
本発明は、以下の非限定的な例によって開示される。
【0171】
実施例1:組成物Cの調製の基本手順
ポリキサマー407(P407)(Sigma-Aldrich、米国)を、Schmolkaにより記載された「cold method」を用いて(Schmolka Irving R.、Artificial skin I. Preparation and properties of pluronic F‐127 gels for treatment of burns、J. Biomed. Mater. Res.6、571~582頁(2004年))、氷冷した脱イオン水に可溶化した。溶液を4℃で一晩保管して、可溶化及び脱気を完了した。
【0172】
P407を添加する前に、ポリ(オキシエチレングリコール)400(PEG400)(M=400g.mol-1) (Sigma-Aldrich、米国)を、氷冷した超純水に希釈した。
【0173】
支持媒体に印刷する前に、溶液を結晶化装置に注ぎ、ゲル化するまで周囲温度まで温めた。
【0174】
実施例2:様々な組成物Cの調製
実施例1に記載した基本手順に従って、以下の組成物を調製した。
【0175】
【表1】
【0176】
実施例3:組成物Cのレオロジー特性
レオロジー測定を、半径14mm、高さ42mmの同心円筒形状の制御応力レオメータ(DHR-2レオメータ、TA Instruments、米国)を用いて実施した。15mLの組成物Cを、ギャップを3580μmに固定して導入した。まず、ゲル化温度(Tgel)を、線形フィールドチェック後の周波数掃引手順(0.1から100rad/s)から得た。ゲル化温度をtanδ=G’’/G’=1の時に規定した。続いて、10から10-5-1のせん断速度掃引を適用し、10から40℃まで5℃刻みの様々な温度で応力を測定することにより、静的降伏応力の値を測定した(表2)。シリコーン材料の粘度は、半径40mm、角度2°、ギャップ50μmのコーンプレート(cone plate)形状で測定された。
【0177】
【表2】
【0178】
これらの結果は、ポリ(エチレングリコール)が可塑剤として作用し、静的降伏応力を低減できることを示す。
【0179】
【表3】
【0180】
実施例4:3D印刷方法
FRESH技術に挑戦するために、高度に複雑な3D対象物を使用した:僧帽弁、8本の腱索、及び2つの内側乳頭筋からなる生理学的形状(図1)。このような複雑な3D印刷を可能にするために、3つの構成要素(弁、脊索、筋肉)を異なる印刷経路パラメータで印刷することを可能にする6軸ロボットアーム(BioassemblyBot(登録商標)(Advanced Solutions Life Sciences、米国))を使用した。印刷が終了するとすぐに、対象物は硬化し(周囲温度重縮合)、取り除き、冷水で簡単にすすいだ。
【0181】
印刷の温度は22±1℃で固定した。相対湿度50%の雰囲気下においてタックフリー時間10分でPDMS(AMSil(商標)20101、RTV-1アルコキシ、Elkem Silicones、フランス)を、30cm3(30CC(Nordson EFD、米国))のインクカートリッジに装填した印刷材料として使用した。カートリッジには直径200μmの円錐ノズル(Nordson EFD、米国)を取り付け、空気圧(70 PSI)で押し出した。3D印刷は、TSIMソフトウェア(Advanced Solutions Life Sciences、V1.1.142、米国)を用いて、直交(cartesian)プリントでは10 mm/sec、パスベースプリントでは1 mm/secのプリント速度で制御した。堆積の後、PDMSを25℃で48時間硬化した。印刷した対象物を回収する前に、支持浴(support bath)を4℃で一晩置いた。その後、僧帽弁を冷水ですすいだ。乾燥後、対象物の特定の部分についてノギスを用いて寸法測定を行った。
【0182】
比較組成物CC1、CC2及びCC5では、図1の選択された複合形態のFRESH3D印刷は達成することができない。組成物CC1及びCC2について、ゲル形態は印刷材料を懸濁することを可能にしなかった(静的降伏応力は無視できるほど小さく、組成物CC1はゲル化温度を示さず、CC2は30℃より高い温度でゲルを生成しただけであった。
【0183】
組成物CC5については、高い静的降伏応力値(25℃で167Pa)により、劣悪な自己修復挙動が確認された。この静的降伏応力は、複雑な対象物の印刷を可能にしたが、主に、印刷材料の初期堆積経路外への拡散につながる未修復クレバスの存在に起因して、忠実度(fidelity)の低いものであった。全体的な印刷の忠実度は56.0±0.76%(以下の表4を参照)であったが、僧帽弁表面の解像度が低く、腱索がつながっておらず、内側乳頭筋の一部が欠けていた。
【0184】
【表4】
【0185】
図1の選択された複合形態のFRESH3D印刷を、組成物C5についても実行した。完全な対象物がヒドロゲルC5の中に懸濁し、ゲルの表面に無視できるほど小さなクレバスが形成された(直径23mmの場合、30CCシリンジを使用した場合でも)。印刷には3つの異なるシーケンス、すなわち、僧帽弁のカルテシアン印刷、8本の腱索の多方向6軸印刷、2本の内側乳頭筋の最終カルテシアン印刷が用いられた。これらの3つのシーケンスは、ゲル内で複数の対象物を十分な密着力(cohesion)で結合すべきであるため、本来ならば印刷工程にさらなる複雑性をもたらすはずであった。ここで、8本の腱索は単一の400μmのフィラメントとして印刷され、他の2つのシーケンスの間に位置するが、他の対象物とはまだ密着していることを指摘しておく。この結合は、FRESH3D印刷を扱う際に繰り返し発生するため、本発明の高解像度印刷の顕著な特徴でもある。製品の全ての部分は表面品質で密着しており、組成物CC5で得られた製品と比較すると、初期STLファイルへの忠実度が大幅に向上した。この忠実度を実証ために、印刷された対象物の寸法測定が実行され、初期のSTLと比較された(以下の表5)。
【0186】
【表5】
【0187】
これらの要素は、ポロキサマー溶液へのPEGの添加が自己修復性及び印刷忠実性を向上させるのを可能にすることを示す。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)水、少なくとも1種のポロキサマー及びポリ(オキシアルキレングリコール)を容器中に含む、組成物Cを提供する工程;
2)前記組成物Cを含む前記容器を所要温度T1に置き、ゲルを形成する工程;
3)前記所要温度T1で、3Dプリンターを用いて2)で得られた前記ゲルの中に架橋性シリコーン組成物Xを印刷する工程;
4)任意選択で、印刷された前記組成物Xを、任意選択で加熱により、部分的に又は全体的に架橋させ、前記容器内に、シリコーンエラストマー物品を得る工程;
5)任意選択で、工程4)で得られた前記容器を組成物Cのゾルゲル転移温度よりも低い温度T3に置く工程;
6)前記シリコーンエラストマー物品を回収する工程;並びに
7)任意選択で、組成物Cのゾルゲル転移温度よりも低い温度T3で、得られた前記シリコーンエラストマー物品を例えば水で洗浄する工程
を含む、シリコーンエラストマー物品を製造する方法。
【請求項2】
1)水及び少なくとも1種のポロキサマー及びポリ(オキシアルキレングリコール)を容器中に含む、組成物Cを提供する工程;
2)所要温度T1に前記組成物Cを含む前記容器を置き、ゲルを形成する工程;
3)前記所要温度T1で、3Dプリンターを用いて2)で得られた前記ゲルの中に架橋性シリコーン組成物Xを印刷する工程;
4)印刷された前記組成物Xを、任意選択で加熱により、部分的に又は全体的に架橋させ、前記容器内に、シリコーンエラストマー物品を得る工程;
5)任意選択で、工程4)で得られた前記容器を組成物Cのゾルゲル転移温度よりも低い温度T3に置く工程;
6)前記シリコーンエラストマー物品を回収する工程;並びに
7)任意選択で、組成物Cのゾルゲル転移温度よりも低い温度T3で、得られた前記シリコーンエラストマー物品を例えば水で洗浄する工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリ(オキシアルキレングリコール)は、100から6000g/molのMwを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリ(オキシアルキレングリコール)は、ポリ(オキシエチレングリコール)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポロキサマーが、ポリ(プロピレンオキシド)ブロック及びポリ(エチレンオキシド)ブロックから構成されるコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポロキサマーが、中央ポリ(プロピレンオキシド)ブロック及び2つの末端ポリ(エチレンオキシド)ブロックから構成されるトリブロックコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポロキサマーが、前記ポロキサマーの総重量に基づいて25から90質量%のポリ(エチレンオキシド)単位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポロキサマーが、中央ポリ(プロピレンオキシド)ブロック及び2つの末端ポリ(エチレンオキシド)ブロックから構成されるトリブロックコポリマーであり、前記2つのポリ(エチレンオキシド)ブロックがそれぞれ100+/-10個の繰り返し単位を含み、前記ポリ(プロピレンオキシド)ブロックが55+/-10個の繰り返し単位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
組成物Cにおいて、質量比ポリ(オキシアルキレングリコール)/ポロキサマーは、20℃から50℃の温度でのゲルCの静的降伏応力が、0.5から200Paとなるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
組成物Cにおいて、質量比ポリ(オキシアルキレングリコール)/ポロキサマーは、0.5よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
組成物Cにおいて、ポロキサマーの量は、組成物Cの総重量に基づいて10から40質量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物Cは、
- 塩基;
酸;及び
能化されたシラン
からなる群から選択された1つ又は複数の化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
- T1が、25から50℃であり、及び/又は
- T3が、15℃よりも低
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
水、少なくとも1種のポロキサマー及びポリ(オキシアルキレングリコール)を含む組成物Cであって、質量比ポリ(オキシアルキレングリコール)/ポロキサマーは、20℃から50℃の温度でのゲルCの静的降伏応力が、1から200Paとなるものである、組成物C。
【請求項15】
3Dプリンターでシリコーンエラストマー物品を製造するための制約環境としての、請求項1に規定の組成物Cの使用。
【請求項16】
FRESH3D印刷のためのゲルの特性を維持及び改善しながら自己修復を改善するための、ポロキサマーのゲル中での、ポリ(オキシアルキレングリコール)の使用。
【国際調査報告】