(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】用量分の眼科用液体の噴霧剤を送達するためのデバイス、および眼科用液体の噴霧剤を送達するためのデバイスに適したポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 9/14 20060101AFI20231129BHJP
A61F 9/007 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
F04B9/14 B
A61F9/007 170
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533269
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2021067824
(87)【国際公開番号】W WO2022111865
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523201487
【氏名又は名称】アイ-ゴー・アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリク・ナゲル
(72)【発明者】
【氏名】ヨエル・ヴィオン・ウェスタールンド
(72)【発明者】
【氏名】シュテッフェン・ギルン
【テーマコード(参考)】
3H075
【Fターム(参考)】
3H075AA09
3H075BB03
3H075BB14
3H075CC11
3H075CC34
3H075DA19
3H075DB14
3H075DB50
(57)【要約】
本発明は、用量分の眼科用液体の噴霧剤を送達するためのデバイスに関する。このデバイスは、ハウジングを備え、ハウジングは、送達されることとなる用量分の液体を保持するための、排出開口を有する保持チャンバと、用量供給導管(235)を経由して保持チャンバ(92)へ用量分の液体をポンプ送給するためのポンプ(200)であって、複数の用量分を収容する容器(30)に連結された、ポンプ(200)と、ポンプ(200)により送達された用量分を排出開口(93)を通して保持チャンバ(92)へと押し出すために、保持チャンバ(92)に空気流を供給するための空気流導管(76、77)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用量分の眼科用液体の噴霧剤を送達するためのデバイス(1)であって、ハウジング(6)を備え、前記ハウジング(6)は、
送達される用量分の液体を保持するための、排出開口(93)を有する保持チャンバ(92)と、
用量供給導管(235)を経由して前記保持チャンバ(92)へ前記用量分の前記液体をポンプ送給するためのポンプ(200)であって、複数の前記用量分を収容する容器(30)に連結された、ポンプ(200)と、
前記ポンプ(200)により送達された前記用量分を前記排出開口(93)を通して前記保持チャンバ(92)へと押し出すために、前記保持チャンバ(92)に空気流を供給するための空気流導管(76、77)と
を備える、デバイス(1)において、
前記ポンプ(200)は、
第1のパーツ(210)であって、前記第1のパーツ(210)は、ベース(213)、前記ベース(213)から延在する細長管状構造部(214)、および座部(215)を有し、前記座部(215)は、前記管状構造部(214)がネック(35)の内部で延在する状態において、前記容器(30)の前記ネック(35)を前記第1のパーツ(210)に対して固定するように構成され、前記管状構造部(214)は、前記容器(30)から前記細長環状構造部(214)内への前記液体の流れを可能にする一方向弁(250)を備える遠位端部を有し、前記管状構造部(214)は、ポンプチャンバ(216)を画定し、前記ベース(213)は、前記管状構造部(214)の近位端部にて前記ポンプチャンバ(216)に続く開口(217)を有し、シール(218)が、前記開口(217)を囲む、第1のパーツ(210)と、
前記第1のパーツ(210)に対して可動であり、前記シール(218)との封止係合状態において前記開口(217)を通り前記ポンプチャンバ(216)内に延在するポンプステム(238)を備える、第2のパーツ(225)であって、前記ポンプステム(238)は、後退位置と前進位置との間で前記ポンプチャンバ(216)の内部において前記第1のパーツ(210)に対して移動し、前記ポンプステム(125)の自由端部(130)が、前記前進位置においては前記一方向弁(250)に対してより近くに位置し、前記ポンプチャンバ(216)から変位される液体のための細長流れ通路(230)が、前記前進位置へと前記ポンプステム(238)を移動させるときに、前記ポンプステム(238)と前記管状構造部(214)の内部との間に画定される、第2のパーツ(225)と
を備え、
前記用量供給導管(235)は、前記液体保持チャンバ(92)に前記細長流れ通路(230)を連結し、前記液体保持チャンバ(92)への前記液体の流れを可能にする一方向弁(207、208)を備える
ことを特徴とする、
デバイス(1)。
【請求項2】
前記第2のパーツ(225)は、前記ポンプステム(238)が前記前進位置にある場合に前記第1のパーツ(210)を囲む周囲壁部(229)を有する、
請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項3】
前記排出開口(93)を経由して前記1用量分チャンバ(92)と連通状態にあるさらなるチャンバ(21)と、前記さらなるチャンバ(21)に第2の空気流を供給するためのさらなる空気流導管(78)とを備え、前記さらなるチャンバ(21)は、前記第2の空気流と共に、前記押し出された1用量分を前記デバイス(1)から排出するための排出開口(20)を有する、
請求項1または2に記載のデバイス(1)。
【請求項4】
前記ポンプチャンバ(216)の内部における前記ポンプステム(238)の前記後退位置と前記前進位置との間における前記移動を制御するための、前記第1のパーツ(210)を囲むばね(150)をさらに備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記用量供給導管(235)は、前記管状構造部(214)の近位端部に、好ましくは前記開口(217)に隣接して配置された、液体進入ポート(EP)を有し、前記用量供給導管(235)のセグメント(235''')が、好ましくは前記ポンプステム(238)に対して横方向に延在する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記容器(30)は収縮可能である、
請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項7】
前記空気流導管(76、77)に対して連結された空気チャンバ(50)と、前記空気チャンバ(50)からある体積の空気を押し出すための変位可能ピストン(52)と、前記ピストン(52)の変位を制御するためのドライブとを備える、
請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項8】
回転可能ハンドル(8)をさらに備え、前記ピストン(52)は、ピストンロッド(53)および前記空気チャンバ(50)内に受けられたピストンヘッド(56)を備え、前記ハンドル(8)の回転により、前記ピストン(52)は前記空気チャンバ(50)内へと前記体積の空気を引き込むために後退位置へと移動され、前記ハンドル(8)の前記回転により、前記第1のパーツ(210)に対する前記第2のパーツ(225)の前記移動が制御される、
請求項7に記載のデバイス(1)。
【請求項9】
例えば5~7マイクロリットルなど、約5~30マイクロリットルの体積を有する1用量分の眼科用液体などの液体を送達するためのポンプ(200)であって、
第1のパーツ(210)であって、前記第1のパーツ(210)は、ベース(213)、前記ベース(213)から延在する細長管状構造部(214)、および座部(215)を有し、前記座部(215)は、前記管状構造部(214)がネック(35)の内部で延在する状態において、前記容器(30)の前記ネック(35)を前記第1のパーツ(210)に対して固定するように構成され、
前記管状構造部(214)は、前記容器(30)から前記細長管状構造部(214)内への前記液体の流れを可能にする一方向弁(250)を備える遠位端部を有し、前記管状構造部(214)は、ポンプチャンバ(216)を画定し、前記ベース(213)は、前記管状構造部(214)の近位端部にて前記ポンプチャンバ(216)に続く開口(217)を有し、シール(218)が、前記開口(217)を囲む、第1のパーツ(210)と、
前記第1のパーツ(210)に対して可動であり、前記シール(218)との封止係合状態において前記開口(217)を通り前記ポンプチャンバ(216)内に延在するポンプステム(238)を備える、第2のパーツ(225)であって、前記ポンプステム(238)は、後退位置と前進位置との間で前記ポンプチャンバ(216)の内部において前記第1のパーツ(210)に対して移動し、前記ポンプステム(125)の自由端部(130)が、前記前進位置においては前記一方向弁(250)に対してより近くに位置し、前記ポンプチャンバ(216)から変位される液体のための細長流れ通路(230)が、前記前進位置へと前記ポンプステム(238)を移動させるときに、前記ポンプステム(238)と前記管状構造部(214)の内部との間に画定される、第2のパーツ(225)と
を備え、
前記第1のパーツ(210)は、前記ポンプチャンバ(216)から変位される前記液体を排出するための、前記細長流れ通路(230)に連結された用量供給導管(235''、235''')を備える、
ポンプ(200)。
【請求項10】
前記第2のパーツ(225)の周囲壁部(229)が、前記ポンプステム(238)が前記前進位置にある場合に前記第1のパーツ(210)を囲む、
請求項9に記載のポンプ(200)。
【請求項11】
前記用量供給導管(235)のセグメント(235'')が、通常は閉じられた一方向弁(207、208)を備える、
請求項9または10に記載のポンプ(200)。
【請求項12】
前記ポンプチャンバ(216)の内部における前記ポンプステム(238)の前記後退位置と前記前進位置との間における前記移動を制御するための、前記第1のパーツ(210)を囲むばね(150)をさらに備える、
請求項9から11のいずれか一項に記載のポンプ(200)。
【請求項13】
前記用量供給導管(235)は、前記管状構造部(214)の近位端部に、好ましくは前記開口(217)に隣接して配置された、液体進入ポート(EP)を有し、前記用量供給導管(235)のセグメント(235''')が、好ましくは前記ポンプステム(238)に対して横方向に延在する、
請求項9から12のいずれか一項に記載のポンプ(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば眼科用薬剤または生理食塩水などの用量分の眼科用液体の噴霧剤を送達するための改良されたデバイスであって、ハウジングを備え、このハウジングが、送達対象となる1用量分の液体を保持するための、排出開口を有する保持チャンバと、用量供給導管を経由して保持チャンバにこの用量分の液体をポンプ送給するためのポンプであって、複数用量分を収容する容器に連結されたポンプと、ポンプによって送達された用量を排出開口を通して保持チャンバへ押し出すために、保持チャンバに空気流を供給するための空気流導管とを有するタイプの、改良されたデバイスに関する。
【0002】
さらに、本発明は、非常に小さい体積の液体をポンプ送給するためのポンプであって、眼科用液体の噴霧剤を送達するためのデバイスに一般的に適したポンプに関する。好都合には、このポンプの構成要素の多くは、プラスチック射出成形により形成され得る。
【背景技術】
【0003】
文献WO15/114,139およびWO17/21,168は、前述のタイプのデバイスについて開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO15/114,139
【特許文献2】WO17/21,168
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下のものの中の、すなわち、例えば約6マイクロリットルであり得る前述の1用量分に相当する、例えば眼科用薬剤または生理食塩水などの非常に少量の眼科用液体をポンプ送給することと、ポンプの好都合かつ迅速なプライミングを行うことと、ポンプが比較的小サイズのデバイスのハウジング内に配置され得るようにポンプを小寸法で作製することを可能にすることとの中の、1つまたは複数を可能にするデバイスおよびポンプが必要である。本願において特許請求される本発明は、様々な特徴の組合せによりこのニーズを解決する。眼科用液体は、任意には混合チャンバ内で空気と混合された形態において、デバイスの排出開口を経由してユーザに対して送達される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
好ましい実施形態は、従属請求項において定義される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1a】本発明のデバイスの一構成における斜視図である。
【
図1b】本発明のデバイスの一構成における斜視図である。
【
図3a】本発明のポンプと、本発明のデバイス内にポンプが取り付けられる位置となるベースプレートとの斜視図である。
【
図3b】
図3aに示すデバイスのベースプレート上に取り付けられた本発明のポンプの、ポンプ送給の最中のある位置における断面図である。
【
図3c】
図3aに示すデバイスのベースプレート上に取り付けられた本発明のポンプの、ポンプ送給の最中の別の位置における断面図である。
【
図4a】ベースプレートに取り付けられたポンプを示す部分断面斜視図である。
【
図4b】ベースプレートに取り付けられたポンプを示す完全断面斜視図である。
【
図5a】組み立てられたポンプを示す、
図3bと同様の図である。
【
図5b】組み立てられたポンプを示す、
図3cと同様の図である。
【
図6a】下方から見たベースプレートの分解図である。
【
図6b】上方から見たベースプレートの分解図である。
【
図7a】プライミングの最中にポンプを通過する液体流を示す、
図3bと同様の断面図である。
【
図7b】プライミングの最中にポンプを通過する液体流を示す、
図3cと同様の断面図である。
【
図7c】プライミングの最中にポンプを通過する液体流を示す、
図3bと同様の断面図である。
【
図7d】プライミングの最中にポンプを通過する液体流を示す、
図3cと同様の断面図である。
【
図7e】プライミングの最中にポンプを通過する液体流を示す、
図3bと同様の断面図である。
【
図7f】プライミングの最中にポンプを通過する液体流を示す、
図3cと同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態を参照として本発明をさらに詳細に説明する。
【0009】
図1a~
図1bは、1用量分の眼科用液体を連続送達するための本発明のデバイス1のそれぞれ異なる構成における斜視図を示す。各用量は、搬送空気流中において小液滴としてユーザの目に運ばれる。図示するように、デバイス1は、ユーザの手H内に保持されるようにサイズ設定される。
【0010】
デバイス1は、前方壁部10と反対側の後方壁部15とを有するハウジング6を備え、
図1bに示すように軸Aを中心としてデバイス1のハンドル/ヘッド8をユーザの手Hでユーザが回転させることによって、1用量分の各送達を行うようにデバイス1を調整するためのドライブを有する。ヘッド8は、ハウジング6の後方端部3'に対して回転可能に取り付けられ、デバイス1の後方端部4を画定する。前方壁部10中の解除ボタン9は、ユーザが、ハウジング6の前方端部3を画定するベースプレート70中に形成された排出開口20を経由して、各搬送空気流中において各1用量分の送達を行うことができるようにするためのものである。排出開口20は、霧化能力を有するノズルとして形成され得る。
【0011】
図示するように、ベースプレート70に対して連結された当接構造部2は、ユーザが、解除ボタン9を押す前に自身の目の周囲の領域にこのデバイス1を当接状態に位置決めおよび保持することができるようにするためのものである。
【0012】
図示するデバイス1は、具体的には、ハウジング6の内部に、ポンプに対して連結された液体眼科用薬剤/生理食塩水容器/カートリッジを有し、この各1用量分の眼科用液体が、このポンプによりカートリッジから1用量分保持チャンバ内へと駆動される点において、文献WO15/114,139およびWO17/21,168に開示されるデバイスと共通するいくつかの特徴を有する。次いで、この1用量分が、1用量分保持チャンバ内に用意された状態におかれて、第1の空気流による、1用量分保持チャンバに続く下流に配置された混合チャンバ内への1用量分チャンバからの押出しを待機する。したがって、混合チャンバに進入する1用量分は、同時に混合チャンバに進入する第2の空気流と混合され、次いで、第1の空気流および第2の空気流の組合せ流は、1用量分の眼科用液体と共に、排出開口20にて混合チャンバから退出する。それにより、この1用量分の眼科用液体は、とりわけ空気流の圧力により決定される速度にて噴霧剤としてユーザに送達される。
【0013】
本発明は、ヒトの目の治療のために吐出される必要のある用量の眼科用液体の体積が、例えば約5~30マイクロリットルなど、例えば約6マイクロリットルなど、非常に小さく、1用量分保持チャンバの容積が、好ましくは1用量分の体積と同一または実質的に同一である場合に、特に適する。従来の眼科用液体ディスペンサでは、典型的には、1つまたは複数の液滴が吐出されるが、この液滴は、約30マイクロリットル超のまたはさらには60マイクロリットル超の各体積を有するため、過剰吐出となる。
【0014】
図2aおよび
図2bは、ヘッド8が180°回転をする前後におけるそれぞれの構成にあるデバイス1の部分断面図であり、符号30で示した前述の容器/カートリッジの上部部分と、前述のベースプレート70により一方の端部で閉じられたそれぞれの空気チャンバ50の内部において軸Aに対して平行に前後に(図では上下として図示)移動するように構成された2つのピストン52とを含む、ハウジング6内部のいくつかの構成要素が詳細に示される。これら2つの空気チャンバ50は、カートリッジ30を中心としておよび軸Aを中心として実質的に対称に構成される。
【0015】
本発明のコンテクストにおいては、好ましくは、カートリッジ30は、排出開口のみにおいて開口しており、カートリッジ30内に空気を引き込むことなく眼科用液体がカートリッジ30から引き出されることにより容器が収縮するように可撓性側壁部を有して構成された、収縮可能容器である。代替的には、カートリッジ30は、カートリッジ30内に空気を引き込むことなく、液体が引き出されることによりカートリッジ30の内部容積が縮小されるように、変位可能壁部を有してもよい。例えば、カートリッジ30は、10~1000用量分の眼科用液体を収容し得る。
【0016】
前述の各空気チャンバ50は、ベースプレート70上の環状構造部71に対して封着された、
図2aおよび
図2において断面で図示される円筒状壁部51によって、部分的に画定される。各ピストン52は、ベースプレート70の一部分および円筒状壁部51の中の1つと共に各空気チャンバ50の内部を境界画定するピストンヘッド56を有する。
図2bは、ユーザがヘッド8を回転させたことにより、2つのピストン52が上方の後退位置へと移動されたところを示す。この移動に関して、ヘッド8は、後方端部3'中の開口を通りハウジング6内に回転可能に受けられた、および容器30を囲む、中空円筒シャフト40を備える。前述のドライブの一部であるシャフト40は、その外方面上に1対の対向側に位置するらせん状延在リッジ41を備え、これらのリッジ41は、各ピストンヘッド56に対して連結されたそれぞれの回転不能ピストンロッド53の中のそれぞれの上に構成された対応するカム従動子(図示せず)に対して作用するカムを画定する。2つのピストン52は、
図2bに示す完全後退位置において、各タブ(図示せず)がこの位置でピストンロッド53に解除可能に係合することによって一時的に保持され、ユーザがボタン9を押すとピストンロッド53から係合解除されるように構成される。
【0017】
理解されるように、ピストン52の上方移動は、軸Aを中心としてシャフト40が回転することによって発生し、それによりカム従動子は、リッジ41上に載置される。ピストン52がこのように上方移動することにより、空気が、ベースプレート70中に形成された各アパーチャ74を経由して2つの空気チャンバ50内へと同時に引き込まれる。これらのアパーチャ74は、デバイス1の外部と連通し、各逆止弁を備える(図示せず)。
【0018】
ユーザがボタン9を押してピストン52を前述のタブとの係合状態から解除すると、ピストン52とハウジング6の後方端部3'との間に位置決めされた各ばね58が、
図2aに示す下方位置へとピストン52を駆動して戻す。また、これと同時に、空気が、ベースプレート70中に形成されたアパーチャ73を経由して空気チャンバ50から押し出される。このようにして空気チャンバ50から退出する空気は、空気チャンバ50の底部においてベースプレート70中に形成された空気流導管76、77を経由して、1用量分保持チャンバ92に向かっておよびその中へと流入する。
図3aおよび
図3bを参照されたい。ベースプレート70に関するさらなる詳細は、
図6aおよび
図6bに示す。これらの図においては、ベースプレート70が、前述のアパーチャ73および流れ導管76、77を画定する凹部を有する2つのプレート70'、70''と、さらなる導管および所要の弁のセグメント235'とを緊密に組み合わせることによって好ましくは形成され得る様式が示される。
図6bに示すように、プレート70''の中の一方と一体成形され得るおよび複数の好ましく相互連結されたストリングSからなる弾性材料封止パーツが、対応するリッジS1と協働する。
図3bでは、これらのリッジS1の中の1つが、プレート70''の中の他方の上に形成されるのが示される。
【0019】
好ましくは、上記において参照した先行技術におけるように、各空気チャンバ50から押し出された空気は、第1の空気流および第2の空気流を決定して前述の目的を果たし、それぞれの空気流導管77、78を通り流れる。これらの空気流導管77、78は、各空気チャンバ50から延在する一次導管76から分岐したものであってもよく、一方の第1の空気流導管77は、第1の空気流のためのものであり、1用量分保持チャンバ92に連結し、他方の第2の導管78は、第2の空気流のためのものであり、混合チャンバ21に連結する。
図6aに示すように、好ましくは、様々な空気流導管76、77、78が、プレート70''の中の一方に凹部として形成され、前述のリッジS1は、様々な空気流導管76、77、78の長さ方向に沿って同一のプレート70''上に形成されて、封止材料の対応するストリングS内へと押し込まれることによって空気流導管76、77、78を封止する。
【0020】
図示するように、1用量分保持チャンバ92は、混合チャンバ21と連通する排出開口93を有し、これにより第1の空気流は、排出開口93を経由して混合チャンバ21内へと1用量分保持チャンバ92内に収容された液体を押し込む。この排出開口93は、第1の空気流導管が保持チャンバ92内へと開口する位置である1用量分保持チャンバ92の近位端部PEとは対向側に位置する、1用量分保持チャンバ92の遠位端部に位置する。
図4bにおいて最もよく示されるように、1用量分保持チャンバ92へ用量分の眼科用液体を供給するための用量供給導管235が、1用量分保持チャンバ92の近位端部PEにて同様に開口するセグメント235'を有する。
【0021】
図示するデバイス1は、文献WO15/114,139およびWO17/21,168に開示される先行技術のデバイスとは異なり、とりわけ本発明による特殊構成ポンプ200を有する点において異なる。さらに、シャフト40を備えるドライブが、ポンプ200のストロークを生じさせ、それにより1用量分の眼科用液体は、シャフト40が回転されることによって、容器30から1用量分保持チャンバ92内へと用量供給導管を経由して駆動される。このようにすることで、ヘッド8を1回転させることにより、空気が空気チャンバ50内に引き込まれ、次いで容器30から保持チャンバ92内へと1用量分の眼科用液体がさらにポンプ送給される。これにより、その後のボタン9の押圧によって、この1用量分が、それぞれのばね58の作用により空気チャンバ50から排出される組み合わされた空気流がキャリアとして作用することによって、排出開口20を経由してユーザへと送達される。
【0022】
とりわけ、以降で説明するように、本発明の特殊構成ポンプ200は、非常に少量の薬剤の、すなわち例えば6マイクロリットルであってもよい前述の1用量分に相当する量の薬剤のポンプ送給を可能にし、ポンプ200の好都合かつ迅速なプライミングを可能にし、デバイス1の比較的小さいサイズのハウジング6内に配置され得るように小寸法を有するポンプ200を作製することを可能にする。
【0023】
次に
図3aを参照すると、本発明のポンプ200が示される。このポンプ200は、事前に組み立てられており、デバイス1のベースプレート70に対して取り付けられる過程にある。これを目的として、ベースプレート70は、ポンプ200の第1のパーツ210の円筒状壁部211中に形成された対応する個数の凹部202内へとスナップ嵌めされるように構成された、複数の直立弾性フィンガ72を備える。ベースプレート70に対して取り付けられた直立流体コネクタ75が、用量供給導管235の大径部分234内に緊密に受けられるように構成される。
図4bを参照されたい。この大径部分234は、第1のパーツ210中に形成され、用量供給導管235は、流体コネクタ75の内部に連続する。この用量供給導管235においては、ポンプ200は、通常は閉鎖された一方向弁(
図4bを再度参照されたい)を備える。この一方向弁は、通常は閉じられた位置へと付勢される図示するボール207が、流体コネクタ75により定位置に保持されたばね208によって用量供給導管235のセグメントを閉鎖するものとして例示されている。円筒状壁部211中に形成された2つの対向側に位置するガイドスリット212が、一方の下方端部では開口し、反対側の端部では閉じている。
【0024】
図3bは、ベースプレート70に対して取り付けられたポンプ200を示す断面図である。第1のパーツ210を囲むばね150が、一方ではベースプレート70を圧迫し、他方ではポンプ200の第2のパーツ225の周縁フランジ226を圧迫する。第2のパーツ225は、第1のパーツ210に対しておよびしたがってベースプレート70に対して方向Pにおいて上下に変位可能である。第2のパーツ225は、第2のパーツ225が後退位置にある場合に、第1のパーツ210を囲む周囲/円筒状壁部229を有する。第2のパーツ225は、ばね150により
図3aおよび
図3bに示す上方前進位置に向かって付勢される。
図3cでは、第2のパーツ225は、以降において説明するように、前述の用量供給導管235を経由してポンプ200内のポンプチャンバ216から1用量分の眼科用液体を排出することが可能な状態である、ベースプレート70の付近の後退下方位置へと変位されているのが示される。
【0025】
より具体的には、
図3bおよび
図3cは、円筒状壁部211の上方端部の付近に横方向環状上壁部213を備えるものとして下方の第1のパーツ210を示しており、細長中空管状構造部214が、上壁部213から上方へと中心に延在する。座部215が、管状構造部214に沿って、細長管状構造部214の下方部分を囲む円筒状壁部211の上方延在部211'上に位置する。この座部215は、例えば容器30のリムに対してスナップ嵌めされることなどにより、容器30のネック35を第1のパーツ210に対して緊密に固定するように構成される。管状構造部214は、ネック35の内部に延在する。容器30は、座部215に対して固定されると、ベースプレート70に対する固定位置においてポンプ200の第1のパーツ210に対して保持される。
【0026】
管状構造部214は、上壁部213から遠い位置に自由遠位端部214'を有し、この自由遠位端部214'は、例えばダックビル弁などの一方向弁250を備える。この一方向弁250により、容器30から液体流が細長管状構造部214内へ、その遠位端部214'を経由してもたらされる。
【0027】
管状構造部214は、
図3cにおいて最もよく示されるポンプチャンバ216を画定する。第1のパーツ210の横方向上壁部213は、管状構造部214の近位端部214''の位置にてポンプチャンバ216に続く中央開口217を有する。ここでは上壁部213の層同士の間に取り付けられるものとして図示される、好ましくは例えばゴムなどの弾性材料からなる環状シール218が、この開口217を囲む。
【0028】
ポンプ200の第2のパーツ225の前述の円筒状壁部229の下方端部は、フランジ226の対向側に位置する2つの部分に対して連結されたブリッジ228を有する。ポンプ200の組立て時に、このブリッジ228は、第1のパーツ210中の2つのガイドスリット212の開口端部にて受けられて、第2のパーツ225は、方向Pに沿った上下移動の際に、第1のパーツ210に対して回転を阻止され、ブリッジ228は、2つのガイドスリット212のそれぞれ一方の中で、2つのスリット212の閉端部まで移動する。
【0029】
長さ方向に一定の直径を有し得る中実細長ピン形状ポンプステム238が、環状シール218と封止係合状態において、開口217を通りポンプチャンバ216内へと延在するようにブリッジ228に対して連結される。このポンプステム238は、
図3cに示す後退位置と
図3bに示す前進位置との間においてポンプチャンバ216の内部で移動するように構成され、ポンプステム238の自由端部130は、この前進位置において一方向弁250の付近に位置する。
【0030】
弁250を経由して受領される、およびポンプステム238が前進位置へと移動されるときに、すなわちポンプ200の第2のパーツ225が前進位置に移動しているときに、ポンプチャンバ216から変位される眼科用液体のための細長環状流体流通路230が、ポンプステム238の外部と管状構造部214の内部との間に画定される。ステム228が一定の直径を有する場合には、環状流体流通路230は、好ましくは一定の内径および外径を有する。ステム228は、本発明から逸脱することなく、多角形断面を有してもよい。
【0031】
約6マイクロリットルの液体体積が各ストロークにおいて変位されるようにポンプチャンバ216がサイズ設定されるため、寸法が小さいことにより、開口217におけるステム238の横方向支持は、ステム228が、ポンプチャンバ216の内部で移動するときにポンプチャンバ216の内面に接触させないために十分なものとなる。
【0032】
理解されるであろうが、ばね150は、ポンプチャンバ216の内部におけるポンプステム238の後退位置と前進位置との間での移動を制御する役割を果たす。ポンプ200の変位可能な第2のパーツ225の円筒状壁部229は、カム従動子として機能する相互に対向側に位置するリブ227を備える構造部を有し、これらのリブ227は、周囲の中空シャフト40の内部上に位置するカム(図示せず)に、空気ピストン52と同様の様式で係合される。このようにすることで、ヘッド8を回転させることにより、i)ばね150を圧縮しつつ
図3cに示す位置へと第2のパーツ225を移動させることによってポンプチャンバ216内へと液体が引き込まれ、次いで最終的に、ii)リブ227がシャフト40の内部上のカムから係合解除される回転の完了時に、ばね150によって第2のパーツ225が
図3bに示す上方位置へと駆動され得る。この後者の移動が、ポンプストロークに相当するものであり、これにより、ポンプチャンバ216内に収容された液体が、ポンプステム238と管状構造部214の内部との間に画定された細長流通路230を経由して押し出されて、用量供給導管235を経由して液体保持チャンバ92内へと流れ込む。
【0033】
液体保持チャンバ92が充填されると、デバイス1は、ボタン9を押すことにより薬剤送達が可能な状態になり、ボタン9を押すと、結果として上述したように空気チャンバ50からの空気が液体保持チャンバ92をパージする。次いで、液体保持チャンバ92は、ヘッド8を再度回転させることによって上記で説明したような様式で再び充填され得る。
【0034】
液体がポンプチャンバ216から押し出されつつある場合に、弁207は、開き、次いで弁ばね208の作動によるポンプストロークの完了後には再び閉じ、例えばそれにより液体は、次いで、ポンプステム238が
図3cに示す後退位置へと移動されて戻る場合にのみ、一方向弁250を経由してポンプチャンバ216内へと引き込まれ得ることが確保されることが理解されよう。例えば内方可撓性収縮可能バッグを有するカートリッジの形態などの、収縮可能タイプの容器30を使用することにより、カートリッジは、滅菌性を損なうおそれのあるベンチレーションの必要性を伴わずに使い切ることが可能となる。用量供給導管235中の一方向弁207は、ポンプチャンバ内の液体と雰囲気との間に位置するバリアとしての役割を果たすことにより、上流汚染を防止する機能をさらに果たす。
【0035】
図4aは、ベースプレート70に対して取り付けられたポンプを示す部分断面斜視図であり、
図4bは、同様の完全断面図である。
図4bにおいては全長が図示される用量供給導管235は、ポンプ200の第1のパーツ210中に形成され上壁部213中の開口217に隣接する細長管状構造部214の側に位置する進入ポートを有する第1のセグメント235'''と、直立コネクタ75中におよびベースプレート70中にそれぞれ形成された2つのさらなるセグメント235''、235'とを備える。
【0036】
理解されるように、ポンプチャンバ216の容積は、1用量分の体積と対応し、この1用量分の体積は、ポンプステム238の体積と、ポンプステム238と細長管状構造部214の内方面との間の環状空間により画定された体積との和に相関する。典型的には、1用量の体積が6マイクロリットルである場合に、ポンプチャンバ216の容積は、約15~20マイクロリットルになるように設計されることになる。
【0037】
図5aおよび
図5bは、それぞれ
図3bおよび
図3cと同様の図であり、組み立てられたポンプ200と共に、第1のパーツ210に対する第2のパーツ225の位置に依拠して圧縮された、または圧縮されていないばね150を示す。スリット212の開端部を通り第1のパーツ210から離れる方向に第2のパーツ225を引くことは、ロッキング構造部(図示せず)を備えることによって防止され得る。
【0038】
図7a~
図7eは、ユーザが用量分の眼科用液体Lの第1の送達のためにデバイス1を調整するときの、すなわちヘッド8を所定回数だけ回転させることにより図示する例では合計でポンプ200を4ストロークさせることによる、すなわちデバイス1がユーザに送達されるときにポンプステム238がとるポンプステム238の前進位置からの2回の移動と(
図7aを参照)、ポンプステム238を前進位置へ戻す2回の移動とによる、プライミングの最中の、ポンプ200を通過するドットで示した液体Lの流れを示すシーケンスである。この処理の最中に、液体Lは、ポンプチャンバ216内へと引き込まれて、最初にこのポンプチャンバ216を充填する。次いで、液体は、
図7dに示すように用量供給導管235の横配向セグメント235'''内へと押し込まれて、一方向弁207を有するセグメント235''内に流れ込み、それにより最終的に一方向弁207を開き、次いでそれにより用量供給導管235の最終セグメント235'内へと流れ込む。この最終セグメント235'は、液体保持チャンバ92内へと開口し、ポンプ200は、
図4bに示すようにこの液体保持チャンバ92に対して連結され得る。理解されるであろうが、
図7bに示すようにステム238がその後退位置へと向かう最初のストローク時にチャンバ216内へと最初に引き込まれる液体の体積は、通常はステム238がチャンバ216内部において完全前進位置にある場合に占め得るステム238の体積に、および結果として液体保持チャンバ92の容積に対応する。
【符号の説明】
【0039】
1 デバイス
2 当接構造部
3 前方端部
3' 後方端部
4 後方端部
6 ハウジング
8 ハンドル/ヘッド
9 解除ボタン
10 前方壁部
15 後方壁部
20 排出開口
21 混合チャンバ
30 容器/カートリッジ
35 ネック
40 中空円筒シャフト
41 らせん状延在リッジ
50 空気チャンバ
51 円筒状壁部
52 空気ピストン
53 回転不能ピストンロッド
56 ピストンヘッド
58 ばね
70 ベースプレート
70' プレート
70'' プレート
71 環状構造部
72 直立弾性フィンガ
73 アパーチャ
74 アパーチャ
75 直立流体コネクタ
76 空気流導管、一次導管、流れ導管
77 空気流導管、第1の空気流導管
78 第2の導管
92 1用量分保持チャンバ、液体保持チャンバ
93 排出開口
130 自由端部
150 ばね
200 特殊構成ポンプ
202 凹部
207 ボール、弁、一方向弁
208 弁ばね
210 第1のパーツ
211 円筒状壁部
211' 上方延在部
212 ガイドスリット
213 上壁部
213 横方向環状上壁部
214 細長管状構造部
214' 自由遠位端部
214'' 近位端部
215 座部
216 ポンプチャンバ
217 中央開口
218 環状シール
225 第2のパーツ
226 フランジ
226 周縁フランジ
227 リブ
228 ブリッジ、ステム
229 周囲/円筒状壁部
230 細長環状流体流通路
234 大径部分
235 用量供給導管
235' セグメント、最終セグメント
235'' セグメント
235''' 横配向セグメント、第1のセグメント
238 中実細長ピン形状ポンプステム
250 一方向弁
S1 リッジ
【国際調査報告】