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特表2023-551070赤泥を処理するためのシステムおよび赤泥を処理する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】赤泥を処理するためのシステムおよび赤泥を処理する方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20231129BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20231129BHJP
   B09B 3/35 20220101ALI20231129BHJP
   B09B 3/80 20220101ALI20231129BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20231129BHJP
   C22B 21/00 20060101ALI20231129BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20231129BHJP
   C22B 34/32 20060101ALI20231129BHJP
   C22B 34/22 20060101ALI20231129BHJP
   C22B 34/12 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C22B7/00 101
B09B3/40 ZAB
B09B3/35
B09B3/80
C22B1/02
C22B21/00
C22B47/00
C22B34/32
C22B34/22
C22B34/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555118
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 US2021060692
(87)【国際公開番号】W WO2022115512
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】17/104,970
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523194570
【氏名又は名称】レッド マッド エンタープライゼズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】RED MUD ENTERPRISES LLC
【住所又は居所原語表記】P.O.Box 20205, New York, NY 10014 United States
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】マクニッシュ、ゲーリー
【テーマコード(参考)】
4D004
4K001
【Fターム(参考)】
4D004AA46
4D004AB05
4D004BA05
4D004BA06
4D004CA04
4D004CA07
4D004CA09
4D004CA15
4D004CA22
4D004CB01
4D004CB09
4D004CB13
4D004CB27
4D004CB31
4D004CB34
4D004CB45
4D004DA02
4D004DA03
4D004DA06
4K001AA02
4K001AA08
4K001AA10
4K001AA16
4K001AA27
4K001AA28
4K001BA24
4K001CA01
4K001CA02
4K001CA04
4K001CA11
(57)【要約】
赤泥を処理する方法は、赤泥を所定の温度に加熱するステップと、赤泥を所定の粒径に破砕するステップと、赤泥から鉄成分を物理的に抽出するステップと、赤泥からアルミニウム成分を物理的に抽出するステップと、を含み、アルミニウム成分の前記物理的な抽出は、鉄成分の物理的な抽出とは別個であり、鉄成分を物理的に抽出するステップおよびアルミニウム成分を物理的に抽出するステップは、赤泥への化学添加物の添加を必要とせずに行われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤泥を処理する方法であって、
赤泥を所定の温度に加熱するステップと、
前記赤泥を所定の粒径に破砕するステップと、
前記赤泥から鉄成分を物理的に抽出するステップと、
前記赤泥からアルミニウム成分を物理的に抽出するステップであって、アルミニウム成分の前記物理的な抽出が、鉄成分の前記物理的な抽出とは別個である、アルミニウム成分を物理的に抽出するステップと、を含み、
鉄成分を物理的に抽出する前記ステップおよびアルミニウム成分を物理的に抽出する前記ステップが、前記赤泥への化学添加物の添加を必要とせずに行われる、方法。
【請求項2】
前記所定の温度が少なくとも600℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の温度が少なくとも1400℃であり、前記加熱するステップが、前記赤泥から苛性ソーダを除去することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱するステップが、前記赤泥中のシリコン成分をガラスに転換することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
鉄成分を物理的に抽出するステップが、前記赤泥からの鉄成分の磁気抽出を含み、アルミニウム成分を物理的に抽出するステップが、前記赤泥からのアルミニウム成分の重力分離を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
鉄成分を物理的に抽出する前記ステップが、抽出された鉄成分と、鉄が分離された赤泥とを得、アルミニウム成分を物理的に抽出する前記ステップが、前記鉄が分離された赤泥からアルミニウム成分を物理的に抽出して、アルミニウム成分と、アルミニウムが分離された赤泥とを得ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱するステップが、前記赤泥から苛性ソーダを除去するために前記赤泥を第1の温度に加熱する第1の加熱ステップと、前記赤泥中の鉄成分を変換するために前記赤泥を前記第1の温度よりも低い第2の温度に加熱する第2の加熱ステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の温度が少なくとも1400℃であり、前記第2の温度が600℃~1400℃の間である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
チタン、バナジウム、マンガン、およびクロムのうちの1つまたは複数を前記赤泥から物理的に抽出することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
赤泥を処理する方法であって、
赤泥を所定の温度に加熱するステップと、
前記赤泥を所定の粒径に破砕するステップと、
前記赤泥から鉄成分を物理的に抽出して、分離された鉄成分と、鉄が分離された赤泥とを得るステップと、
前記鉄が分離された赤泥からチタン成分を物理的に抽出するステップと、を含み、
鉄成分の前記物理的な抽出およびチタン成分の前記物理的な抽出が、前記赤泥への化学添加物の添加を必要とせずに行われる、方法。
【請求項11】
鉄成分を物理的に抽出する前記ステップが、第1の磁気強度において前記赤泥から鉄成分を磁気抽出することを含み、チタン成分を物理的に抽出する前記ステップが、前記第1の磁気強度よりも高い第2の磁気強度において、前記鉄が分離された赤泥からチタン成分を磁気抽出することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
鉄成分を物理的に抽出する前記ステップが、前記赤泥から鉄成分を磁気抽出することを含み、チタン成分を物理的に抽出する前記ステップが、重力分離を行って、前記鉄が分離された赤泥からチタン成分を抽出することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱するステップ、前記破砕するステップ、鉄成分を物理的に抽出する前記ステップ、およびチタン成分を物理的に抽出する前記ステップが、共通のハウジング内で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記加熱するステップが、前記赤泥中のシリコン成分をガラスに転換することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
赤泥を処理するためのシステムであって、
赤泥を所定の温度に加熱するように制御される少なくとも1つの加熱区間と、
前記赤泥を所定の粒径に破砕するように構成された粉砕機と、
前記赤泥から鉄成分を物理的に抽出するための第1の分離器と、
前記赤泥からアルミニウム成分およびチタン成分の1つまたは複数を物理的に抽出するための第2の分離器と、を備え、
前記第1の分離器および前記第2の分離器が、分離を行うために化学添加物の添加を必要としない、システム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの加熱区間が、前記赤泥を第1の温度に加熱するように制御される第1の加熱区間と、前記赤泥を前記第1の温度よりも低い第2の温度に加熱するように制御される第2の加熱区間と、を含み、前記第2の加熱区間が、前記第1の加熱区間から送出される前記赤泥を受け取るように構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1の温度が少なくとも1400℃であり、前記第2の温度が600℃~1500℃の間である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記少なくとも1つの加熱区間が、第1の加熱区間と、前記第1の加熱区間内で前記赤泥を搬送し、混合するように構成された混合搬送機とを含み、前記混合搬送機が、前記第1の加熱区間の長さの大部分に沿って延びている、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記混合搬送機がオーガースクリュー搬送機である、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記第1の加熱区間が、前記第1の加熱区間の前記長さに沿って配置された複数のバーナを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記少なくとも1つの加熱区間と、前記粉砕機と、前記第1の分離器および前記第2の分離器の少なくとも一方とを少なくとも部分的に包囲する外側ハウジングをさらに備えている、請求項15に記載のシステム。
【請求項22】
前記外側ハウジングが、前記少なくとも1つの加熱区間と、前記粉砕機と、前記第1の分離器および前記第2の分離器の少なくとも一方とを包囲する複数のエリアを含む回転管炉を備えている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記第1の分離器が、前記赤泥から鉄成分を抽出するための磁気分離器を備え、前記第2の分離器が、重力分離を使用して前記赤泥から前記アルミニウム成分および前記チタン成分の1つまたは複数を抽出するためのサイクロン分離器を備えている、請求項15に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1の分離器が、前記赤泥から鉄成分を抽出するための第1の磁気分離器を備え、前記第2の分離器が、第2の磁気分離器であって、より高い磁気強度で動作し、前記第1の磁気分離器から鉄が分離された赤泥を受け取り、前記鉄が分離された赤泥からチタン成分を抽出するように構成された第2の磁気分離器、を備えている、請求項15に記載のシステム。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
赤泥(RM:red mud)は、アルミニウムを製造するためのバイヤーボーキサイト法の結果、アルミナ産業から生じる産業廃棄物である。アルミナ産業は、アルミナ1トンごとに1.5~2トン前後のRMを生じる。毒性の副生成物として生成されるRMは、これまで技術的に役に立たないと考えられ、世界各地の沈殿池や有毒物質廃棄場に貯留されてきた。30億トンを超える毒性RMが世界各地に貯蔵されており、この量は日々増加している。
【0002】
RMは、苛性ソーダの含有に起因してアルカリ性が高く、そのために腐食性が非常に高く、また環境にとって毒性のある重金属を含有している。通例、RMは、Na2O、Al2O3、Fe2O3、SiO2、TiO2、および他の物質を様々な量ずつ含んでいる。例えば、フランスに所在するRMの化学分析では、RMが、14%のAl、11.5%のTiO、50%のFe、6%のSiO、5.5%のCaO、および3.5%のNaOを含むことが示された。中国に所在するRMの別の化学分析では、RMが、6.4~7.5%前後のSiO、9.8~15%のAl、23.4~40.2%のFe、3.9~37%のCaSO、4.3~9.2%のTiO、0.4~1.4%のTiO、0.4~1.4%のNaO、0.01~0.03%のMgO、ならびに水分および揮発性物質に相当する13.5~28%の強熱減量(LOI:Loss on Ignition)を含むことが示された。乾燥ベースで、RMは、通例、45~55%の酸化鉄、10~25%の酸化アルミニウム、およびおよそ10%の酸化チタンを含有している。これらの化学分析から分かるように、アルミニウム、鉄、およびある程度のチタン金属が、比較的高い量でRM中に存在する。その結果、RMは、アルミニウム、鉄、およびチタンを含む、有用な金属成分を含んでいる。しかし、RMの高いアルカリ性および毒性のために、これら金属の抽出は難しく、これら金属のうちの1つまたは複数を除去するためにRMを化学的に処理するには、他の毒性物質の添加を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、RMからアルミニウム、鉄およびチタン金属を抽出して回収するためにRMに化学物質を添加することを必要としない、RMを処理する方法を提供する。本発明は、物理的抽出を使用することにより、RM成分と反応するためのさらなる化学物質を添加することによってRMを化学的に処理することなく、これら金属の回収を高い割合、例えば90%を超える回収、で達成する。本発明の方法は、複雑でなく、多量のRMを処理して環境的に安全な成分を産生し、それによりRMを無害の物質にするために適合されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、赤泥を処理するためのシステムを対象とし、システムは、赤泥を第1の温度に加熱するように制御される第1の加熱区間と、赤泥を第1の温度よりも低い第2の温度に加熱するように制御される第2の加熱区間と、赤泥を所定の粒径に破砕するように構成された粉砕機と、赤泥から少なくとも鉄成分およびアルミニウム成分を物理的に抽出するための1つまたは複数の分離器と、を備えている。ある特定の実施形態では、第1の温度は、少なくとも1200℃であり、1400~2000℃の間であってもよく、第2の温度は、600~1500℃の間である。一部の実施形態では、システムは、赤泥を第1の温度に加熱するように第1の加熱区間を制御する、および/または赤泥を第2の温度に加熱するように第2の加熱区間を制御するようにプログラムされた、コントローラを含む。
【0005】
ある特定の実施形態では、第1の加熱区間は、第1の加熱区間に沿って赤泥を搬送するように構成されたオーガースクリュー搬送機と、第1の加熱区間内で火炎を発生させるように構成された1つまたは複数のバーナと、を含む。第2の加熱区間は、その内側表面に沿って複数のフィンを有する管炉を含んでよい。そのような実施形態では、管炉は、その内側表面に第1の配置で複数のフィンを有する入口部分と、その内側表面に第1の配置とは異なる第2の配置で複数のフィンを有する出口部分と、を含む。例えば、入口部分は、互いと重なり合わずに配置された複数のフィンを含み、出口部分は、各々がその隣の別のフィンと重なり合う複数のフィンを含む。
【0006】
ある特定の実施形態では、粉砕機は、ボールミルを備え、赤泥を冷却するための冷却区間をさらに含む。1つまたは複数の分離器は、赤泥から鉄および酸化鉄を抽出するように構成された磁気分離器を含む。一部の実施形態では、磁気分離器は、鉄および酸化鉄を抽出した後に赤泥から酸化チタンを抽出するようにさらに構成される。1つまたは複数の分離器が、重力分離を使用して赤泥から少なくともアルミニウムを分離するためのサイクロン分離器を含んでよい。1つまたは複数の分離器は、赤泥に化学物質を添加することなく、赤泥から鉄成分およびアルミニウム成分を分離するように構成される。
【0007】
一部の実施形態では、システムは、第1の加熱区間と、第2の加熱区間と、粉砕機と、1つまたは複数の分離器の少なくとも1つとを少なくとも部分的に包囲するハウジングを含む。ハウジングは、第1の加熱区間と、第2の加熱区間と、粉砕機と、少なくとも1つまたは複数の分離器とを包囲する複数のエリアを含む回転管炉の形態であってよい。
【0008】
本発明はまた、赤泥を少なくとも1400℃に加熱するように制御される加熱区間と、赤泥を所定の粒径に破砕するように構成された粉砕機と、赤泥から少なくとも鉄成分およびアルミニウム成分を物理的に抽出するための1つまたは複数の分離器とを備えた、赤泥を処理するためのシステムを対象とする。一部の実施形態では、加熱区間は、赤泥を1400~2000℃に加熱するように制御されるバーナを含む。加熱区間内のバーナは、ガス化装置バーナ、直火式バーナ、高熱放出バーナ、および/またはサイクロンバーナであってよい。加熱区間はまた、加熱区間の少なくとも一部分に沿って赤泥を搬送するためのオーガースクリュー搬送機を含む。1つまたは複数の分離器は、赤泥から少なくとも鉄および酸化鉄を抽出するための磁気分離器と、重力分離を使用して赤泥から少なくともアルミニウムを抽出するためのサイクロン分離器と、を含む。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の分離器は、赤泥に化学物質を添加することなく、赤泥から少なくとも鉄およびアルミニウムを物理的に分離するように構成される。
【0009】
一部の実施形態では、システムは、加熱区間、粉砕機と、1つまたは複数の分離器の少なくとも1つとを少なくとも部分的に包囲するハウジングをさらに備える。ハウジングは、加熱区間と、粉砕機と、少なくとも1つまたは複数の分離器とを包囲する複数のエリアを含む回転管炉の形態であってよい。
【0010】
本発明はまた、赤泥を処理する方法を対象とする。一部の実施形態では、方法は、赤泥から苛性ソーダを除去するために赤泥を少なくとも1400℃の温度で衛生化することと、赤泥を所定の粒径に破砕することと、赤泥から少なくとも鉄成分およびアルミニウム成分を物理的に抽出することと、を含む。一部の実施形態では、方法は、赤泥から苛性ソーダを除去するために赤泥を加熱することと、赤泥を所定の粒径に破砕することと、赤泥から少なくとも鉄成分およびアルミニウム成分を物理的に抽出することと、を含み、この処理はすべて、赤泥に化学物質を添加することなく行われる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明によるRMを処理するためのシステムの概略構成を示す図である。
図2】本発明によるRMを処理する工程を示す図である。
図3A】本発明によるRMを処理するためのシステムの別の概略構成を示す図である。
図3B図3Aのシステムの複数のハウジングの例示的配置を示す図である。
図4A-B】図1および図3のシステムで使用されるバーナの写真である。
図5A-D】図1および図3のシステムで使用される衛生化装置の写真である。
図5E図1および図3の加熱管と共に使用される図5A~Cの衛生化装置の写真である。
図6A-C】図1および図3のシステムで使用される加熱管の写真である。
図7図1および図3のシステムで使用される例示的な磁気分離器を示す図である。
図8】尾鉱池に貯留されている、または工場供給物として提供される赤泥を処理する例示的方法のフローチャートである。
図9】フィルタープレスから得られる赤泥を処理する例示的方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明では、RMの処理は、RMを衛生化し、苛性ソーダなどの毒性成分を除去するために、RMを非常に高い温度、例えば1200℃超、ある特定の実施形態では1400℃超、に加熱する熱工程と、RMを例えば200メッシュの微粉に粉砕またはボールミリングする粉砕工程と、RMから鉄、アルミニウムおよびチタンなどの金属を抽出し、無害のシリカ凝集体を残すための物理的抽出工程と、を含む。熱工程は、それまで毒性であったRMを無害で環境に安全なものにするためにRMを衛生化する。本発明の全工程は、RMに化学物質を全く添加することなく行われ、そのことにより、熱が利用可能であればこの工程が行われることが可能になり、また、すでに毒性のある物質に毒性の化学物質を添加することを回避する。さらに、工程に化学物質が添加されないので、本発明の工程の結果、毒性のない環境的に安全な物質を産生するための付加的な清掃処理や化学的複生成物の処分が必要とされない。
【0013】
図1は、本出願の第1の実施形態による、RMを処理するための例示的システムの概略構成を示し、図2は、図1のシステムを使用して、または同様のシステムを使用してRMを処理するための例示的方法のフローチャートを示す。図1に示すように、システム100は、熱工程のための熱および火炎を提供する1つまたは複数のバーナ102と、RMが衛生化される衛生化装置104と、RMが熱を使用してさらに処理される加熱管106と、RMを粉砕する粉砕機108と、処理・粉砕されたRMから磁気成分を分離するための磁気分離器110と、RMの中の残りの成分を分離して取り出すためのサイクロン分離器112とを含む。バーナ102は、バイオマスを燃料として使用するガス化装置バーナ、サイクロンバーナ、直火式バーナ、高熱放出(HTR:high thermal release)バーナ、電気アーク炉、誘導炉、または任意の燃料で動作し、少なくとも1200℃、好ましくは少なくとも1400℃の高熱を生成することが可能な、任意の他のタイプのバーナからなってよい。ある特定の実施形態では、バーナ102は、管の中に管を備えており、燃料、例えばガス、は、内側管を通じて供給されて点火され、一方、外側管は、バーナ102の燃焼能力を高めるために空気を供給する。内側管は、外側管によって供給された空気を受けるための複数の開口を含んでよい。バーナ102の大きさは、1400℃を超える温度にRMを加熱するために必要とされる熱を提供するためにバーナが小さいまたは大きい口径を有し得るように、また小さいまたは大きい長さを有し得るように、様々に異なってよい。
【0014】
図1のシステムで使用され得る例示的バーナ102が、バーナ/ガス化装置を示す図4Aおよび図4Bに示されている。図4Aでは、バーナ102はオフになっているのに対し、図4Bでは、バーナは動作しており、RMが曝されることになる火炎を生成している。このシステムで使用される例示的バーナ102は、パッケージ化された低NOx多燃料バーナであるHauck(登録商標)Eco-starIIバーナであってよい。2000℃の温度に加熱が可能な任意の他のバーナが、本発明のシステムに適する。加えて、バーナの大きさは、処理されるRMの量およびシステム100の大きさに応じて様々に異ならせてよい。ある特定の実施形態では、バーナ102は、別の企業、例えばHauck(登録商標)、によって製造された既存のバーナであってよく、システム100で使用するためにカスタマイズされてよい。例えば、バーナをより小型にし、システムの配管に合わせるために、出口配管を含む特定の配管がバーナから取り除かれてよい。加えて、バーナ102は、発電機の大きさを制限し、また世界のどの地域でも世界的な運用を可能にするために、動作に110Vの電力を必要とするようにカスタマイズされてよい。ある例示的実施形態では、バーナ102は、動作のために5~7kWの発電機を必要とする。例えば、上述したHauck(登録商標)Eco-starIIバーナは、それに空気を供給するために三相モータを使用し、一部の実施形態では、このバーナが、三相モータおよびそれに対応する空気供給機器を、送風機、送風機モータおよび/またはファンなど、別の、より費用効果の高い機器に置き換えるように改造されてよい。他のタイプのバーナが、110Vの電力で動作し、より費用およびエネルギー効果が高くなるように、同様にカスタマイズされてよい。
【0015】
ある特定の実施形態では、バーナ102は、RMが加熱されながら火炎に曝されるように、火炎を生成する。一部の実施形態では、複数の小さいまたは同じサイズのバーナまたは火炎源が衛生化装置104に沿って設けられてよく、それらは、より大きいサイズの主バーナに加えて、またはその代わりに使用されてよい。複数の小さいバーナは、これらに限定されないが、2000℃の加熱が可能な高温焼草器バーナを含み得る。以下で説明される、図5A~Eに示される衛生化装置104を使用する例示的実施形態では、複数のバーナが、衛生化装置104用の大きいサイズのバーナを必要とすることなく、衛生化装置104の中に熱および直接の火炎を提供する。
【0016】
バーナが火炎および熱を生成し、RMを1200℃またはそれ以上、好ましくは1400℃またはそれ以上、に加熱するために使用される燃料は、ガス、バイオガス、合成ガス、バイオマス、電気、石炭、石炭粉、マイクロ波、処理済汚水ペレット(PSP)、使用済み油、プラズマ、例えばおがくずやペレットなどの木材加工企業からの廃物、トウモロコシの皮、ナッツの殻、わら、木材、農業廃棄物、またはこれら燃料の組合せなど、任意の熱源を含む。
【0017】
衛生化装置104は、衛生化装置104に沿って、衛生化装置から次の処理段階までRMを衛生化装置104に搬送するためのオーガースクリュー搬送機または同様の搬送機を含み、その間に、RMはバーナ102からの高熱に曝される。衛生化装置104は、好ましくはRMが濾過および/または予備加熱あるいは他の適切な方法を使用して30%未満の水分含有量まで乾燥された後に、RMを受け取る。通例、RMは、乾燥積層を使用して乾燥状態で池に貯留されており、よって、RMは、池からシステム100の衛生化装置104に直接供給されてよい。RMがオーガー搬送機を使用して搬送される間、RMは、非常に高い温度に加熱され、バーナ102および/または補助バーナによって生成された火炎に曝される。本発明の衛生化装置104の例示的構成が図5A~Eに示される。図5A~Bはフレームを示し、これは、筐体によって覆われたオーガースクリュー搬送機(図5C~Dに見ることができる)を保持し、3つの小さな補助バーナ104aを含む。オーガースクリュー搬送機は、筐体104cの端部104bに接続されたモータ(図5Cに見ることができる)によって駆動され、筐体104cは、オーガースクリュー搬送機を収容し、RMが衛生化装置の中を通って搬送されるときにRMを保持する。図5Cでは、筐体104cの中に設けられたオーガースクリュー搬送機104dは、フレームのない状態で示されており、筐体104cの開口が、内部に設けられたオーガースクリュー搬送機104dの一部を露出させている。図5Dは、オーガースクリュー搬送機104dを露出させるように筐体の一部分が取り除かれた、オーガースクリュー搬送機104dの模式的な描写を示す。図5Eは、処理されるRMを衛生化装置104に供給するホッパー103に取り付けられた衛生化装置104を示し、衛生化装置104は、衛生化されたRMを衛生化装置104から受け取る加熱管106の隣に位置する。本発明のシステム100が組み立てられたとき、衛生化装置104または加熱管106と流体接続するその端部部分は、処理中のRMを閉じ込めるようにハウジング(図示せず)によって包囲されてよい。
【0018】
図5A~Eの衛生化装置104の例示的実施形態は、衛生化装置のためにオーガースクリュー搬送機を使用しているが、他の実施形態では、RMは、オーガースクリュー搬送機の代わりに、衛生化装置内を重力で供給されてよい。さらに他の実施形態では、バーナによって発生させた火炎によって、サイクロンが衛生化装置内に形成されてよく、そのサイクロンが、オーガースクリュー搬送機と共に使用されるか、またはオーガースクリュー搬送機の代わりに使用されてもよい。一部の実施形態では、RMを衛生化するために流動床システムが使用されてよい。さらに、衛生化装置のサイズおよび寸法は、現場の要件および処理されるRMの量に応じて、様々に異ならせてよい。一部の実施形態では、同じ構成または異なる構成を有する複数の衛生化装置104が使用されてよく、それらの衛生化装置は、直列に接続されても並列に接続されてよい。
【0019】
衛生化装置104内で、RMは、少なくとも1200℃に、好ましくは1400℃に加熱される。ある特定の実施形態では、RMは、1400~2000℃の範囲内の温度に加熱される。RMは、好ましくは、この温度に最大で5分間にわたり曝される。RMを火炎にさらし、RMを1400℃またはそれ以上の温度に加熱することにより、RM中のシリカ成分をガラスに転換し、RMから苛性ソーダを除去する。その結果、衛生化装置から送出されるRMは、無害であり、pH中性またはpH中性前後である。加えて、火炎および熱へのRMの曝露は、RM中の鉄の一部またはすべてを変換し得る。
【0020】
オーガー搬送機、またはRMを攪拌もしくはかき混ぜながら衛生化装置に沿ってRMを搬送する同様の搬送機を使用することにより、すべてのRM粒子が均等に火炎からの熱に曝されて、RM中の苛性ソーダを除去するかまたは実質的に除去し、またRM中のシリカ成分をガラスに転換する。加えて、RMをバーナ102の火炎に曝すことにより、RMの粒子または粒を分離させ、各RMの粒子または粒が少なくとも1200℃、好ましくは1400~2000℃の範囲の望まれる温度に到達するように、各RM粒子または粒が火炎に曝されることを確実にする。さらに、オーガーまたは同様の搬送機を使用することは、システム100が、大量のRMの処理を可能にするようにRMを継続的に処理するために連続的に使用されることを可能にする。
【0021】
システム100のある特定の実施形態では、図4A~4Bに示されるものと同様のバーナ102は、動作中に火炎が出る管または送出口を含む。そのような実施形態では、衛生化装置104は、バーナ102のこの火炎送出口を延長し、オーガースクリュー搬送機の筐体の役割を果たす、延長された送出口の内側にオーガースクリュー搬送機を設置することによって形成されてよい。衛生化装置104のこの構成では、RMは、オーガー搬送機によって、火炎に近い方の端部の近くかまたは火炎から遠い方の端部から、延長された送出口の中に導入される。いずれの場合も、延長された送出口の中の火炎と、入って来る空気とがサイクロンを生じさせて、供給されたRMの中で粒子または粒の移動またはかき混ぜを引き起こす。その結果、RM粒子または粒は、火炎に当たるときに分離され、それぞれの個々の粒子または粒は、少なくとも1200℃、好ましくは1400~2000℃の望ましい温度に達する。
【0022】
RMが衛生化装置104内で熱処理を受けた後、RMは、加熱管106に搬送されて、より低い温度における第2の加熱工程を受ける。この第2の加熱工程は、か焼工程である。ある特定の実施形態では、RMは、オーガー搬送機によって衛生化装置104から加熱管106に供給され、そこでRMは冷え、600~1400℃の間の温度に保たれる。一部の実施形態では、加熱管106内の温度は、800~1500℃の間である。この例示的実施形態における加熱管106は、回転管炉または同様の炉を備えている。代替として、セメントか焼管炉または任意の他の炉が、システム100内で加熱管106として使用されてよい。第2の加熱工程の間に、RMは、必要な場合はシリカのガラスへの転換を完了するために、およびRM中の鉄および酸化鉄を変換して金属鉄(Fe)およびある範囲の酸化鉄を得るために、さらに処理される。具体的には、衛生化装置104および加熱管106における2ステップの加熱工程は、RM中の鉄化合物を、ヘマタイト(Fe)および磁鉄鉱(Fe)を含む酸化鉄ならびに金属鉄(Fe)にする。処理されるRMの鉄および酸化鉄の含有量に応じて、結果として得られる処理されたRMは、金属鉄(Fe)、ならびに様々な量のヘマタイト(Fe)、針鉄鉱(FeO)、および磁鉄鉱(Fe)を含んでいる。
【0023】
第2の加熱工程中にRMの完全な処理およびRM中の鉄の実質的な変換を確実にするために、本発明の加熱管106は、回転管炉または回転加熱炉を備え、これはある特定の実施形態では、RMの完全な処理を確実にするために複数のフィンまたは邪魔板を含む。例示的な加熱管106が図6A~Cに示される。図6Aは、加熱管106の一部分の写真を示し、図6B~Cは、加熱管の各反対側の開口を示し、管の中に設けられたフィン構造を示している。図6B~Cに示すように、加熱管106は、外側表面および内側表面と、管の内側表面に沿って設けられた複数の邪魔板またはフィン107とを含む。加熱管のこの例示的実施形態では、図6Bは、加熱管106の入口開口を示し、図6Cは加熱管106の出口開口を示している。他の実施形態では、これらの開口は逆にされてよく、または、入口開口と出口開口が、実質的に同じフィンおよびその配置をもつ、同じまたは実質的に同じ構成を有してよい。
【0024】
一部の実施形態では、加熱管106は、加熱管の入口に開口している第1の区間106aと、加熱管の出口に開口している第2の区間106bとを含む。第1の区間106aと第2の区間106bとは、異なるフィン107および内部での異なるフィン配置を有している。図6Bに示すように、第1の区間は、加熱管106の内側表面に、角度の付いたねじ山状のパターンで配置された複数のリブ状フィン107aを有する。加熱管106の出口に向かう方向にリブ状フィン107aの後に、複数の山型フィン107bが加熱管106の内側表面に設けられている。山型フィン107bの各々は、一端が加熱管106の内側表面に取り付けられており、フィン107bの他端は取り付けられていない。山型フィン107bは、第1の区間内で内側表面の周囲に沿って互いから実質的に等間隔であり、これらのフィン107bは互いと重なっていない。フィン107b同士の間隔は、様々に異ならせてよく、図6Bに示される間隔に限定されない。さらに、フィン107bの間隔は、第1の区間106aの長さに沿って、第2の区間106bに向かう方向に向かって、隣り合うフィン107b間の間隔を増すまたは減らすように、第1の区間106aの長さに沿って変動してよい。加えて、山型フィン107bは、第1の区間106aの長さに沿って複数の列として設けられてよく、隣り合う列のフィン107b同士は、位置合わせされても、または互いに対してずらされていてもよい。
【0025】
図6Cは、加熱管106の第2の区間106b内のフィン107cの構成および配置を示す。示されるように、本例示的実施形態では、区間106b内の各フィン107cは、2つの板部分が互いに対して角度を付けられた山型形状を有する。しかし、第2の区間106bの山型フィン107cは、管106の内側表面に対して、第1の区間106aの山型フィン107bとは異なる角度で置かれている。一部の実施形態では、各フィン107c内で板部分の一方が他方の板部分より長くてよく、対して他の実施形態では、板部分は実質的に同じ長さであってよい。フィン107cは、各フィンの一方の板部分が管106の内側表面に取り付けられるかまたは連結され、他方の板部分は、取り付けられず、隣のフィンの取り付けられている方の板部分とわずかに重なるように、管の内側表面に配置される。本実施形態における隣同士のフィンは互いとわずかに重なり合っているが、他の実施形態では、フィンは、互いと重ならないように広く間隔が空けられていてよく、またはより大きい重なりをもたらすように互いとより狭い間隔であってもよい。さらに、図6Bで分かるように、フィン107cは、管106の長さに沿って複数の列として配置され、隣り合う列は、所定の距離、例えばフィンの幅の1/3または1/2、だけオフセットされている。
【0026】
管106内でのフィンの構成およびそれらの配置は、管106が回転される間に管内でのRMの望まれる混合およびかき混ぜを促す。その結果、RMのすべての粒子または粒が、管160の中で熱に曝され、熱処理される。フィンの配置および構成を管の長さに沿って変えることにより、あるエリア、例えば第1の区間の山型フィン107bのエリア、では、管の他のエリアより多くのかき混ぜおよび混合を提供するように、管内でのRMのかき混ぜおよび混合が制御される。
【0027】
動作中、加熱管106は、回転し、温度を600℃より上、または所定の温度範囲内、例えば600~1400℃または800~1500℃または600~1500℃、に維持するように熱を供給する。加熱管106内の温度は、手動で、または加熱管106内の温度を感知する熱電対を使用して自動的に制御されてよい。加熱管106に供給されたRMは、RM粒子がフィン107aおよび加熱管106の内側側壁に当たる時に、1200℃またはそれ以上の温度から600~1500℃に冷える。さらに、投入されたRMに伴う空気の取り込みおよび加熱管106の回転が、RM粒子または粒が熱に曝され、RM中の鉄のすべてまたは実質的にすべてが変換されるように、加熱管106内でサイクロンまたは気体の移動を作り出す。図には示していないが、ある特定の実施形態では、サイクロンを作り出すため、および管106内での粒子の移動を促進するために、図4A図4Bに示すバーナなどのバーナが加熱管106と共に使用されてよい。
【0028】
図6A~Cに示す加熱管106の説明例では、加熱管106は、長さ90フィート、直径8~10フィートであり、異なる構成を有する複数のフィンを有する2つの区間を含んでいる。他の実施形態では、フィンは、同じ形状を有してよく、加熱管全体に同じように配置されてよく、または、フィンは、同じ形状を有し、2つ以上の区間の間で異なるように配置されてよい。同じもしくは異なるフィンの構成を持つ、またはフィンが全くない、追加的な区間が、加熱管内に設けられてよい。他の実施形態では、加熱管の長さは、システムの構成および要件、周囲状況、および現場の要件に応じて、より短くまたはより長く異ならせてよい。加熱管の直径も、特に処理されるRMの量に応じて、異ならせてよい。ある特定の実施形態では、加熱管106の長さは40~50フィートであり、加熱管106の直径は8~10フィートである。加えて、図6A~Cに示すフィンは、一部の加熱管または加熱管の一部の区間では省略されてよく、また一部の実施形態では、他の混合または攪拌技術が使用されてよい。一部の実施形態では、複数の加熱管が使用されてよく、並列に配列されても直列に配置されてもよく、それら加熱管は、同じ構成を有しても異なる構成を有してもよい。例えば、RMを処理するためのより高い容量を費用効果的に提供するために、実質的に同じ構成を有する複数の加熱管106が、並列に配置されてよく、同じモータを使用してまたは別々のモータを使用して回転されてよい。さらに、図1および図6A~6Cは、加熱管106が水平方向に配置されているのを示すが、他の実施形態では、加熱管106は、加熱管がRMを所要温度に加熱することができる限り、垂直方向に配置されてもよい。
【0029】
図1には示されていないが、衛生化装置104および/または加熱管106内の温度は、衛生化装置104および/または加熱管106の中で感知された温度に関する情報を受け取り、受け取った情報に基づいて、より多くのまたはより少ない熱を供給するべく1つまたは複数のバーナ102および/または加熱管106を調整するようにプログラムされたコントローラによって制御されてよい。コントローラは、上記の制御機能を行うための1つまたは複数のプロセッサまたは回路を含んでよい。
【0030】
衛生化装置104および加熱管106内での熱処理後、処理されたRMは、磁性酸化鉄(Fe、FeO、およびFe)、いくらかの磁気鉄(Fe)、ならびに非磁性アルミニウム、酸化チタンおよび酸化シリコンと微量の他の酸化物の混合物を含んでいる。処理されたRMを、X線回折を使用して分析して、その成分を判定した。表1および表2は、処理されたRMサンプルRM1およびRM2に対するこの分析の結果を示している。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
図1は、バーナ102および衛生化装置104が第1の加熱段階に使用され、加熱管106が第2の加熱段階に使用されるシステムを示しているが、他の実施形態では、加熱管106を使用する第2の加熱段階は、バーナ102および衛生化装置104を使用する第1の加熱段階を行う前に行われてもよい。さらに他の実施形態では、第2の加熱段階は、上記の加熱管と同様の別々の加熱管を使用して行われる、または複数段階の処理を含むように構成された同じ加熱管を使用して行われる、複数のか焼段階を含んでよい。さらなる実施形態では、2つの加熱段階は、単一の加熱段階が行われるように組み合わされてよい。そのような実施形態では、RMは、少なくとも1200℃に、好ましくは1400~2000℃に加熱され、加熱管106の中を搬送されながらバーナ102を使用して1つまたは複数の火炎に曝され、加熱管106は回転することにより、苛性ソーダなどの毒性成分を除去し、シリカ成分をガラスに転換し、鉄成分を金属鉄(Fe)および各種の酸化鉄に変換するように、RMの徹底的な処理を促す。そのような実施形態では、オーガースクリュー搬送機は省略されてよく、または、オーガースクリュー搬送機を加熱管106内で使用して、加熱管106にRMを搬送する、および/または加熱管106の少なくとも一部分を通るようにRMを搬送してよい。
【0034】
さらに、一部の実施形態では、バーナ102および衛生化装置104および/または加熱管106は、下記でさらに詳しく説明される粉砕機108の後に配置されてよい。しかし、図1の例示的実施形態では、粉砕機108が加熱管106の後に配置されており、そのため、粉砕機108は、処理された無害なRMを受け取る。粉砕機108は、鋼製または他の好適なボールを使用するボールミリング、または乾燥粉末を摩砕もしくは破砕するのに適した他のタイプの破砕機器を含んでよい。本実施形態では、処理されたRMは、熱交換器、大気、または水中での急冷や他の冷却液などの他の好適な冷却手段を使用して、粉砕機108に供給される前に冷却されてよい。ある特定の実施形態では、処理されたRMから冷却工程中に熱を回収し、システムに供給されるRMを加熱するために内部で、または例えば水を加熱するなどの他の目的のために外部で使用してよい。
【0035】
粉砕機108によって受け取られると、冷却された処理済みのRMは、200メッシュの粒径またはそれ以下に摩砕される。処理されたRMの摩砕は、加熱工程中に還元されない他の金属酸化物から、鉄および酸化鉄の粒子を分離する。その結果、摩砕された処理済みのRM粉は、乾燥状態で物理的に各成分に分離することができる。例示的粉砕機108が図7に示され、これはボールミリング粉砕機である。
【0036】
処理されたRMが粉砕機108で摩砕された後、RMは、処理中に生成された鉄および酸化鉄を磁気分離するために磁気分離器110に受けられる。具体的には、既存の磁気分離機を使用して、鉄および酸化鉄を含む磁性物質を、処理されたRMから抽出してよい。一部の実施形態では、磁気分離器110内に設定される磁場の強度に応じて、鉄および酸化鉄に加えて、酸化チタンも磁気抽出され得る。そのような酸化チタンの磁気抽出は、鉄および酸化鉄を磁気分離した後に、別の磁気分離段階として行われてよい。ある特定の実施形態では、鉄および酸化鉄を分離するため、および/または酸化チタンを分離するための複数の磁気分離器110が使用されてよく、それらの分離器は、並列に接続されても直列に接続されてもよい。鉄および酸化鉄の磁気分離は、処理されたRMに存在する鉄/酸化鉄の90%以上を抽出し、詳細には鉄/酸化鉄の含有量の約96%~100%を抽出する。加えて、磁気分離の結果、濃縮された酸化鉄を含有する優れた生成物が得られ、これは、電気アーク炉で鋼を生産するためおよびその他用途にそのまま使用するのが容易で経済的である。
【0037】
処理されたRM粉から磁性成分(鉄、酸化鉄、および一部の実施形態では酸化チタン)を磁気抽出した後、残ったRMは、酸化アルミニウムおよび酸化チタンを含むRM中の残りの非磁性成分をそれらの重量に基づいて分離するために、サイクロン分離器112に提供される。サイクロン分離器112は、主としてシリカ成分を含む最終的な残留物から酸化アルミニウムおよび酸化チタンを分離するために、重力分離を使用する。一部の実施形態では、サイクロン分離器112はハイドロサイクロンであり、他の実施形態では、サイクロン分離器は、これらに限定されないが従来のジグ、挟みスルース(pinched sluice)、スパイラル、遠心ジグ、振動台、浮選装置等を含む、別の種類の渦式分離器または重力分離器である。ある特定の実施形態では、容量を増すため、および/または分離を完全にするために、複数のサイクロン分離器または重力分離器が並列または直列で使用されてよい。
【0038】
サイクロン分離器112を使用した重力分離の結果、酸化アルミニウムおよび酸化チタンが、磁気分離されたRMから分離され、シリカ成分および他の少量の要素を含むシリカ残留物が残る。このシリカ残留物は、建設およびレンガ、コンクリート、またはセメントの製造で使用され得る。
【0039】
上記で述べたように、図1のシステム100は、RMに化学物質を添加することなく、RMを処理して環境に無害にし、有用なRM成分を効率的にリサイクルすることができる。図1のシステム100または他の好適なシステムを使用してRMを処理する方法が図2に示される。
【0040】
図2に示すように、工程は、苛性ソーダなどの毒性成分を除去し、シリカをガラスに転換するようにRMを衛生化するために、RMを1,200℃またはそれ以上、好ましくは1400℃またはそれ以上、に加熱する衛生化ステップS201を含む。衛生化ステップS201は、図1のシステムのバーナ102および衛生化装置104を使用して行われてよい。
【0041】
ステップS201の衛生化工程の後、RMは次いでか焼ステップS202でさらに熱処理され、ここで、RMは、600℃またはそれ以上、好ましくは600~1500℃、または600~1400℃、または800~1500℃の温度範囲に、加熱される。か焼ステップS202中に、RMの鉄成分が変換されて、上記のように金属鉄(Fe)および各種の酸化鉄を発生させる。か焼ステップS202は、図1のシステムの加熱管106内で行われてよい。
【0042】
ステップS202でRMをか焼した後、処理されたRMは、摩砕ステップS203で、約200メッシュ、好ましくは200メッシュまたはそれ以下、の微粉に粉砕または摩砕される。欠落ステップS203は、図1のシステムの粉砕機108を使用して行われてよい。
【0043】
図2は、衛生化ステップS201が最初に行われ、続いてか焼ステップS202、それに続いて摩砕ステップS203が行われるものと示しているが、他の実施形態では、か焼ステップS202が衛生化ステップS201の前に行われてよく、さらに他の実施形態では、摩砕ステップS203が、衛生化ステップS201およびか焼ステップS202の1つまたは複数の前に行われてよい。ステップS201~S203の順序は、処理の必要性、使用される機器、およびRMの条件に応じて異ならせてよい。図1のシステム構成要素の配置も、ステップS201~S203が行われる順序に応じて、同様に異ならせてよい。ステップS201~S203が行われた後、その結果得られる処理済みのRMは、図1に関して上記で述べたように、鉄、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化チタン、石英および/またはシリカ化合物を含む、非毒性で、環境に対して無害な微粉からなっている。
【0044】
この処理済みのRMは、鉄および酸化鉄物質を送出するように、磁気分離ステップS204で鉄および酸化鉄の磁気分離にかけられる。磁気分離ステップS204で回収された鉄および酸化鉄は、圧縮されてレンガまたは小塊にされてよく、それはその後、電気アーク炉における鋼の生産に直接使用されてよい。磁気分離ステップは、図1のシステムの磁気分離器110を使用して行われてよい。
【0045】
図2には示されていないが、ある特定の実施形態では、磁気分離ステップS204は、処理されたRMから酸化チタンを除去するために高強度の磁場を使用する第2の磁気分離工程をさらに含んでよい。この第2の磁気分離ステップは、処理されたRMから鉄および酸化鉄を磁気抽出した後、または下記のステップS205でRMからアルミニウムを除去した後に行われてよい。第2の磁気分離ステップは、鉄および酸化鉄の分離に使用されるのと同じ磁気分離器をより高い強度設定で使用して行われてよく、または別の磁気分離器内で行われてもよい。
【0046】
鉄および酸化鉄を分離する磁気分離ステップS204に続いて、残りのRMは、重力分離を使用してアルミニウム、シリカ、およびチタンを分離するためにステップS205で物理的分離を受ける。上述したように、アルミニウム、チタン、および他の金属成分は、サイクロン分離器または別のタイプの重力分離器を使用して、重量に基づいて分離され得る。図1のサイクロン112が、ステップS205を行うために使用されてよい。物理的分離ステップは、酸化アルミニウム粒子、およびそれと別に酸化チタン粒子を分離してよい。代替として、物理的分離ステップS205は、酸化アルミニウム粒子および酸化チタン粒子を分離して、少量成分と共にシリカ凝集体を残してよく、その後、分離された酸化アルミニウムおよび酸化チタンは、酸化チタンを抽出するための高強度の磁気分離にかけられる。
【0047】
物理的分離ステップS205によって、または物理的分離ステップS205と高強度磁気分離の組合せによって生成されたシリカ凝集体は、建設用途など、他の用途のためにリサイクルされてよい。一部の実施形態では、シリカ凝集体は、バナジウム、マンガンおよびクロムなど、その中に含有される少量要素を回収するためにさらに処理されてよい。
【0048】
図2の方法は、図1に示すシステムを使用して、または図3A~3Bに示す変更が加えられたシステム300を使用して行われてよい。図3A~3Bのシステム300は、図1のシステムと同様のまたは実質的に同じ構成要素を含む。具体的には、図3Aに示す例示的システム300は、衛生化装置304に熱および/または火炎を提供する1つまたは複数のバーナ302、加熱管306、粉砕機308、磁気分離器310、およびサイクロン分離器312を含む。図1のシステムと同様に、例示的な衛生化装置304は、衛生化装置304に沿ってRMを搬送するためのオーガースクリュー搬送機と、RMを少なくとも1200℃、好ましくは少なくとも1400℃、または1400~2000℃の温度範囲内に加熱するために、熱を提供すると共に、衛生化装置内に火炎を放出してよい、1つまたは複数のバーナ302とを含む。衛生化されたRMは、次いで加熱管306に搬送され、加熱管306は、回転管炉などを備えてよく、上記で図1図6A~6Cに関して説明したように複数のフィン307を含み、RMを加熱しながら、またはRMを上記で説明したように600~1500℃に、または600~1400℃もしくは800~1500℃の範囲内に保ちながら回転する。図1の実施形態と同様に、衛生化装置304および加熱管306内の温度が、熱電対または他の好適な温度センサを使用して感知されてよく、または手動もしくは自動で制御されてもよい。図3Aには示されていないが、衛生化装置304および/または加熱管306内の温度は、衛生化装置304および/または加熱管306の中で感知された温度に関する情報を受け取り、受け取った情報に基づいて、より多くのまたはより少ない熱を供給するべく1つまたは複数のバーナ302および/または加熱管306を調整するようにプログラムされたコントローラによって制御されてよい。コントローラは、上記の制御を行うための1つまたは複数のプロセッサまたは回路を含んでよい。
【0049】
図3Aに示すように、加熱管306を出る処理されたRMは冷却され、これは、加熱管306に続く冷却区間内で熱交換器または同様の装置を使用して行われてよく、RMはその後粉砕機308に搬送され、粉砕機308は、RMを、約200メッシュまたはそれ以下の粒径の微粉に破砕、粉砕、または摩砕する。微RM粉末は次いで、RMから鉄および酸化鉄を磁気抽出するために磁気分離器310に搬送され、次いで、シリカ凝集体から重力分離を使用してアルミニウムおよびチタンを物理的に分離するためにサイクロン分離器312に搬送される。図1および図2に関して上述したように、酸化チタンは、RMからのアルミニウム化合物の物理的分離の後または前のいずれかに、高強度の磁気分離を使用して分離されてよい。これも上述したように、シリカ凝集体は、さらに処理される、および/または建設ならびにコンクリートもしくはセメントの製造などの他の目的に使用されてよい。
【0050】
図3Aに示すように、システム300の構成要素の少なくとも一部は、ハウジング301によって包囲されるかまたは部分的に包囲され、ハウジング301は、管または回転管または回転管炉の形態であってよい。ある特定の実施形態では、バーナ302、衛生化装置304、加熱管306、粉砕機、磁気分離器310および/またはサイクロン分離器312は、図1のシステム100の対応する構成要素と実質的に同じ構成を有し、これらの構成要素は、ハウジング301の中にまたは部分的にその中に配置されている。
【0051】
他の実施形態では、ハウジング301は、複数の区間を形成し、その各々が、図3に示される構成要素302~312の一部またはすべてに対応し、そのため、それぞれの構成要302~312の各動作がハウジング301内に組み込まれる。例えば、一部の実施形態では、ハウジング301は、複数の区間を有する回転管を備え、衛生化区間304に対応し、包囲されていても、部分的に包囲されていても、またはハウジング301の外部に配置されてもよい、1つまたは複数のバーナ302を含む、第1の区間と、複数のフィン307を含み、場合によっては、1つまたは複数の加熱源(例えばさらなるバーナ)を含む、か焼区間306と、複数の鋼ミルボールなどの粉砕または破砕機器を含む粉砕区間308と、処理されたRM粉から鉄および酸化鉄を分離するために磁場を生成する1つまたは複数の磁石を含む磁気分離区間310と、重力を使用して残りの成分を分離する重力物理的分離区間312と、がある。一部の実施形態では、ハウジング301は、衛生化区間304の後に、および/またはか焼区間306の後に、1つまたは複数の冷却区間をさらに含む。代替として、粉砕区間306は、処理されたRMが粉砕または摩砕される間、冷却区間の役目を果たしてもよい。そのような冷却区間は、1つまたは複数の熱交換器または他の冷却機器を含んでよい。図1および図3のシステムの一部の実施形態では、加熱管106/306またはハウジング301内のか焼区間306が、複数の管または複数のか焼段階を含んでよい。
【0052】
図3のシステムの一部の例示的実施形態では、ハウジング301は回転管を備え、また、苛性ソーダなどの毒性物質をRMから除去し、RM中の鉄および酸化鉄化合物を変換するために、最初の2つの区間、すなわち衛生化区間304およびか焼区間306、に熱および/または火炎を提供するためのサイクロンバーナ302または任意の他の好適なバーナを含む。サイクロンバーナ302は、図3に示すように回転管ハウジング301への入口に設けられてよく、または、サイクロンバーナ302に加えてまたはサイクロンバーナの代わりに、第1のおよび/または第2の区間の長さに沿って1つまたは複数のバーナを含んでよい。RMは、オーガースクリュー搬送機または他の好適な搬送機を使用して回転管ハウジングの第1の区間に供給されてよい。これらの実施形態における回転管ハウジング301は、第1および第2の区間の後に、処理されたRMを冷却し、金属製ミルボールまたは他の好適な粉砕装置を使用してRMを粉砕して、約200メッシュまたはそれ以下の粒径を有する微粉にするための第3の区間、すなわち冷却・粉砕区間308、も含む。第3の区間の後、第4の区間、すなわち磁気分離器310が、RM粉から鉄および酸化鉄を含む磁性成分を抽出する。残りのシリカ凝集体からアルミニウムおよび/またはチタン成分などのRM中の他の成分を分離するために、第5の区間、すなわちサイクロン分離器312も、回転管ハウジング301内に設けられてよい。一部の実施形態では、サイクロン分離器312は、回転管ハウジング301の外側に設けられてよく、第4の区間で磁気分離を受けた後にRMを受け取る。上記の実施形態では、RMは最初に熱を使用して処理され、その後、抽出工程の前に粉砕または摩砕されるが、他の実施形態では、RMは、加熱工程の前に、または2つの加熱工程の間に粉砕または摩砕されてもよい。さらに、図3Aの実施形態における衛生化装置/衛生化区間304は、加熱管/か焼区間306よりも前にあるが、他の実施形態では、衛生化装置/衛生化区間304と加熱管/か焼区間306の順序が逆にされてよい。さらに、他の実施形態では、衛生化装置/衛生化区間304は、1つのみの加熱区間を含むように、加熱管/か焼区間306と組み合わされてよい。
【0053】
ある特定の実施形態では、図3Bに示すように、上記で説明された構造を有する複数の回転管ハウジング301が使用される。複数の回転管ハウジング301は、1つまたは複数のモータを使用して駆動されてよく、一部の実施形態では、すべてのハウジング301の回転を駆動するために1つのみのモータが使用される。複数の回転管ハウジング301を使用することにより、より多量のRMがより低いコストで同時に処理され得る。
【0054】
回転管ハウジング301の使用は、RMを処理する複数のステップが同じ管の中で行われることを可能にする。上記で説明されたように、管ハウジングは、RMを受け取り、RMを処理して毒性成分を除去し、鉄および酸化鉄を変換するために、サイクロンを生成しながらRMを加熱する、加熱エリアと、処理されたRMを冷却し、ボールミリングまたは他の好適な粉砕、破砕、または摩砕技術を使用してRMを粉砕する、冷却および粉砕エリアと、磁気分離を使用して処理済みのRMから鉄および酸化鉄を分離し、また、重力を使用してシリカ凝集体からアルミニウムおよび/またはチタン成分を分類するためのさらなる物理的分離を含んでもよい、分離エリアと、を含む。
【0055】
上記で説明されたRMを処理するシステムおよび方法の実施形態は、貯留池からの毒性のある有害なRMを無害で有用な成分に変換するために、多量のRMを連続的に処理することが可能である。上記で説明された実施形態は、RMの処理、ならびにRMの種々の成分を分離するための磁気分離および重力分離を含む物理的分離のために熱を使用し、化学物質や添加物を添加することはしない。したがって、RMまたはその成分のさらなる清浄が必要でなく、抽出された成分は種々の目的に使用され得る。例えば、処理されたRMから磁気抽出された鉄および酸化鉄成分は、電気アーク炉での鋼の調製および可能性としてはシート鋼の製造工程で使用するのに特に適する。さらに、重力分離によって回収された酸化アルミニウムは、バイヤー工程に戻されてよく、または他の目的に使用されてもよい。さらに、環境に対して無害である残りのシリカ凝集体は、建設ならびにコンクリートおよびセメントの製造に使用され得る。
【0056】
本明細書の上記で説明されたRMを処理する方法では、衛生化するステップ、か焼するステップ、ならびに鉄化合物、酸化アルミニウムおよびチタン化合物を含む種々の成分を物理的に分離するステップを含む工程全体が、赤泥に化学物質や化学添加物を加えることなく行われる。すなわち、これらの工程ステップは、化学添加物を加えることなく、より具体的には、液体または固体の化学添加物を加えることなく、行われる。化学添加物には、これらに限定されないが、溶剤、有機もしくは無機化合物、酸、塩基、塩、コークスや木炭等の炭質、石灰化合物、浸出剤および試薬、ならびに周囲の大気の一部でなく、赤泥自体から抽出されるのでない他の化合物が含まれる。
【0057】
図8は、尾鉱池に貯留されている、および/またはアルミニウムプラントなどの工場から供給される赤泥を、例示的な処理システムを使用して処理する例示的方法のフローチャートを示す。一般に、尾鉱池からのものと工場から直接来るものとの両方の赤泥を処理するために同じ方法およびシステムが使用されてよく、尾鉱池からの赤泥は、ステップ/段階801a~804aにおいて前処理され、工場から供給される赤泥は、ステップ/段階801b~803bにおいて前処理された後に、前処理された赤泥が、ステップ/段階805で組み合わされ、その後本発明の方法を使用して処理される。
【0058】
通例、池の尾鉱は、かなりの量の水を表面に含んでおり、典型的な赤泥ラグーン池である。図8に示すように、尾鉱池からの赤泥スラリー800aは、ステップ801aで、ポンプ輸送システムを使用してポンプ輸送される。ポンプ輸送システムは、水中汚水溜め/汚泥ポンプを含む、トップアンドボトムポンプ輸送システムであってよい。ステップ802aで、赤泥スラリーが、取り付けられた配管システムに通されて、ステップ803aで濾過/脱水され、所望の粘度まで濃縮される。ステップ804aで、赤泥スラリーが混合され、熱・物質収支段階805にポンプ輸送される。
【0059】
赤泥が工場から直接供給される場合、すなわち工場直送800bの場合、赤泥スラリーは、ステップ801bで指定の配管を使用して工場からポンプ輸送され、ステップ802bで濾過/脱水され、所望の粘度まで濃縮され、次いでステップ803bで、混合され、熱・物質収支段階805にポンプ輸送される。工場から直接提供される赤泥と、尾鉱池から提供される赤泥とは、似た化学的特性および物理的特性を有することが好ましい。加えて、尾鉱池からの前処理された赤泥スラリーの粘度は、工場からの前処理された赤泥スラリーの粘度と同様であることが好ましい。場合によっては、赤泥スラリーは、一回の時に一方の供給源、すなわち尾鉱池または工場直送、から処理のために提供されてよく、他の場合には、赤泥は両方の供給源から同時に提供されてよい。
【0060】
熱・物質収支段階805において、1つまたは複数の赤泥スラリーが混合されて、実質的に均一な粘度のブレンドを得、スラリー中の熱エネルギーの収支をとる。一部の実施形態では、赤泥スラリーは、熱・物質収支段階805に続く1つまたは複数のオプションの段階(図示せず)で、粉砕または破砕され、分類され、予備加熱されてよい。その結果得られたスラリーは、赤泥スラリーを所定温度に加熱してその中の赤泥をか焼するために、ステップ806の多段か焼炉に提供される。上記で述べたように、赤泥スラリーが加熱される所定温度は、少なくとも600℃であってよく、一部の実施形態では、少なくとも1400℃である。多段か焼炉は、赤泥スラリーが異なる段階において異なる温度に加熱されるように、複数の加熱段階を備えてよい。図8に示すように、赤泥は、多段か焼炉の一部であってよいステップ807で冷却され、そして、ガスを濾過し、空気汚染を抑制するためのバグハウス808が設けられてよい。図8には示されていないが、冷却は、熱交換器を使用して行われてよく、その結果生じた熱は、前処理および/または予備加熱ステップ中に使用されてよい。
【0061】
冷却された、か焼後の赤泥スラリーは次いで、ステップ809で摩砕または破砕にかけられ、これは、ロッドミルもしくは縦型ミルまたは任意の他の好適なミルを使用してよい。一部の実施形態では、密度または粒子形状によって赤泥成分を分離するためにスパイラル分離器がステップ810で使用されてよいが、このステップは任意選択であり、省略されてもよい。赤泥スラリーは次いで、鉄成分、例えばFe、を赤泥から抽出するために、ステップ811で磁気分離などの物理的分離にかけられる。一台の湿式高強度磁気分離器(WHIMS)または直列もしくは並列で設けられた複数のWHIMS装置が、赤泥から磁性鉄成分を磁気分離するために使用されてよい。図8に示すように、分離された鉄成分は、812で分類を受け、813で、空圧搬送機を使用するなどして、指定の保管場所に搬送される。
【0062】
鉄が分離された残りの赤泥は、ステップ814で、赤泥から酸化チタンTiOxを抽出するために、より高い磁気強度における別の磁気分離など、第2の物理的分離段階にかけられる。赤泥から酸化チタンを磁気分離するために、一台のWHIMSまたは複数のWHIMS装置が使用されてよい。分離された酸化チタンは、812で分類を受け、813で、指定の保管場所に搬送される。
【0063】
鉄とチタンが分離された赤泥を含む815における凝集物は、次いで第3の物理的分離段階816に提供され、これは、赤泥中の残りの砂から酸化アルミニウムを分離するためのサイクロン、分離器または浮選装置であってよい。図8に示すように、分離された酸化アルミニウムは、817で分類を受け、818で、空圧搬送機を使用するなどして、指定の保管場所に搬送される。同様に、分離された砂は、819で分類を受け、820で、指定されたその保管場所に搬送される。
【0064】
上記で述べたように、前処理中に、尾鉱池からの赤泥と工場からの赤泥は、ステップ803aおよび802bでその水分含有量を減らすために脱水を受ける。この工程中に取り除かれた水は、821a、821bで好適な濾過を使用して濾過され、822a、822bで、水管理、分配、およびリサイクリングのために提供されてよい。同様に、尾鉱池からの水は、水管理、分配、およびリサイクリングのために提供されてよい。図8に示すように、必要な場合、前処理中または何らかの他のステップ中に赤泥からリサイクルされた水は、ステップ811および814で、WHIMSで湿式磁気分離のために使用されてよい。リサイクルされた水は、必要であれば、第3の物理的分離段階816に提供されてもよく、および/または、水はリサイクルされて、第3の分離状態816から、水管理、分配、およびリサイクリング822a、822bのために戻されてもよい。
【0065】
図9は、フィルタープレスまたは同様の脱水装置から得られる赤泥を処理し、例示的システムを使用するための例示的方法を実証する別のフローチャートを示す。この場合、赤泥は、ラグーン池に貯留されるのではなく、積層形態であってよく、または工場からフィルタープレスもしくは同様の脱水装置に直接搬送されてよく、大幅に低下した水分含有量を有する。図9に示す方法では、工場から送出される赤泥尾鉱中の水分含有量を減らすフィルタープレスまたは同様の脱水装置から、フィルタープレス物質900が得られる。通例、赤泥尾鉱は、30%前後の水分含有量を有するのに対し、ステップ900でフィルタープレス装置から得られるフィルタープレス物質は、10%前後またはそれ未満の水分含有量を有する。
【0066】
減らされた水分含有量において赤泥が減らされた後、それは、粘性のある、様々な大きさのケーク粘度を有し得る。赤泥は、ステップ901で、エプロンフィルターを使用して積載され、ステップ902で、予備加熱スクリュープレスに投下して、物質の収支を合わせると共に、より均一なブレンドを作ることができる。ステップ903の搬送機またはホッパーは、赤泥を搬送し、ステップ904でそれを粉砕機に供給する前に赤泥物質の収支をさらに合わせるために使用されてよい。
【0067】
粉砕機は、ステップ904で赤泥を破砕または摩砕して、粒径を200メッシュ前後まで減らす。その結果得られる粉砕された赤泥は、次いでステップ905で搬送機を使用して事前保管および/または準備装置に提供される。ステップ906の事前保管および/または準備装置内で、赤泥は、ステップ907の乾燥およびか焼のための多段か焼炉への追加およびステップ908の冷却に備えて赤泥物質を準備するために、追加的な混合および/または破砕にかけられてよい。上記で説明された図8と同様、ステップ907で多段か焼炉に提供された赤泥は、その中で赤泥をか焼するために所定温度に加熱される。上記で述べたように、赤泥スラリーが加熱される所定温度は、少なくとも600℃であり、一部の実施形態では、少なくとも1400℃である。多段か焼炉は、赤泥スラリーが異なる段階において異なる温度に加熱されるように、複数の加熱段階を備えてよい。図9に示すように、赤泥は、多段か焼炉の一部であってよいステップ908で冷却され、そして、ガスを濾過し、空気汚染を抑制するためのバグハウス909が設けられてよい。図示されていないが、冷却は、熱交換器を使用して行われてよく、その結果生じた熱は、スクリュープレス902内での前処理ステップ中に使用されてよい。また、多段か焼炉内で生じた余剰熱は、前処理ステップ900~903のために熱交換器内で使用されてよい。
【0068】
か焼され、冷却された赤泥は、ステップ910で、乾燥状態で摩砕にかけられてよく、これは、後のステップで使用される低鉄分含有ヘマタイトおよび常磁性チタン分離のために推奨される。赤泥は次いで、ステップ911、915、および920で、鉄成分、チタン成分、酸化アルミニウム、および砂の物理的分離にかけられる。図9に示すように、赤泥は、希土類ロール、乾式高強度磁気分離(DHIMS)、WHIMS、またはスパイラル分離器を使用して、鉄成分、すなわちFe、を赤泥から磁気分離するために、911で第1の分離器段階に提供される。可能な限り完全な鉄成分の抽出を確実にするために、複数の分離器が並列または直列に設けられてよい。WHIMSまたはスパイラル分離器がステップ911で使用される場合、水が赤泥に加えられることが必要とされ得る。水は、先行するステップからの赤泥からリサイクルされ、濾過されてよい。鉄成分は、次いで912で、二次破砕など、ステップ913における浄化のために搬送され、その後、914で、適切な回収または保管場所に搬送される。
【0069】
鉄が分離された残りの赤泥は、次いで、チタン成分、すなわちTiOx、を赤泥から磁気分離するために、第2の分離器段階915に搬送される。同様に、希土類ロール、DHIMSまたはWHIMS(リサイクルされた水を加える)が、第2の分離器段階915で使用されてよく、並列または直列の複数の分離器が使用されてよい。第2の分離器段階915で、分離器は、第1の分離器段階911よりも高い磁気強度で動作させてよい。赤泥から抽出されたチタン成分は、次いで916で、917における分類、例えば二次破砕のために搬送され、その後918で、適切な回収または保管場所に搬送される。
【0070】
酸化アルミニウムおよび砂ならびに少量の他の金属を含む残りの凝集体919は、次いで920で、酸化アルミニウムAlOxを残りの砂凝集体から物理的に分離するために、サイクロン分離器、重力分離器、または浮遊分離器を含んでよい、第3の分離段階にかけられる。ある特定の実施形態では、水がサイクロン分離器に加えられることがあり、その水は、工程の先行するステップで赤泥からリサイクルされてよい。第3の分離段階920で物理的に分離された酸化アルミニウムは次いで、921で分類、例えば二次破砕にかけられ、918で、適切な回収または保管場所に搬送される。同様に、その大半が砂である残りの赤泥成分は、923で分類にかけられ、924で適切な保管場所に搬送されてよい。
【0071】
上記で説明された図8および図9の方法は、周囲の大気中に存在する化合物、例えば、大気中の酸素、CO、燃焼プロセスガス等、または赤泥から抽出され、リサイクルされて戻される化合物、例えば水、より具体的には、赤泥から抽出され、リサイクルされて戻される非毒性の化合物を除いては、化学物質および/または化学添加物を赤泥に添加せずに、赤泥を処理して鉄成分、チタン成分およびアルミニウム成分を物理的に抽出する。
【0072】
これらの方法のいくつかの変形例において、工程の特定のステップで水が赤泥に加えられてよい。この水は、赤泥自体からリサイクルされ、再び赤泥に加えられる前に濾過されてよい。しかし、場合によっては、図8および図9の方法は、清水、すなわち非リサイクル水、の添加を必要とすることもある。そのような実施形態では、図8および図9の方法は、周囲の大気および水に存在する化合物を除いては、化学添加物を加えることなく行われる。
【0073】
図2図8および図9に関連して上記で説明した方法は、必要な場合に水、または周囲の大気中に存在するガスなどの化合物を除いては、化学添加物を使用せずに、希土類元(REE)の物理的抽出を追加するようにさらに変更されてよい。一つの例示的実施形態では、希土類元素(REE)は、赤泥からの鉄化合物の磁気分離を行った後、および/または赤泥からのチタン化合物の磁気分離を行った後に、物理的に抽出される。例えば、1つまたは複数の抽出段階でのREE抽出の追加的なステップが、図8のステップ814の後に、または図9のステップ915の後に追加されてよい。
【0074】
多くのREEは、常温で常磁性であり、そのため、これらの物質は、外部から加えられる磁場に弱く引き付けられ、加えられた磁場の方向に、内部の誘起磁場を形成する。一部のREEは、ある温度で強磁性になり、それにより、永久磁石を形成するか、または磁石に引き付けられる。例えば、ガドリニウム(Gd)およびテルビウム(Tb)は、それぞれ289K度未満および230K度未満で強磁性になる。加えて、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、およびツリウム(Tm)は、温度が低下すると、規則磁性状態、反強磁性状態への遷移を呈し、さらに低い温度で、もう一度遷移を起こして強磁性になる。セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、およびサマリウム(Sm)は、約10K度で反強磁性になる。REEは、当該元素のネール温度Tnのすぐ上で外部磁気力に反応し、ネール温度は、反強磁性の物質が常磁性になる温度である。キュリー温度とネール温度は共に、高温値である。キュリー温度とネール温度の主要な違いは、キュリー温度では、ある物質の恒久的な磁気的性質が失われるのに対し、ネール温度では、反強磁性の物質が常磁性になることである。
【0075】
本発明では、REEは、複数の異なる温度における磁気分離を使用して抽出される。REE抽出のステップでは、鉄が分離された赤泥または鉄およびチタンが分離された赤泥など、REEを含有している物質が、約200メッシュ(74ミクロン)の粒径に粉砕される。REEを含有している物質は次いで、コンベヤベルト等を使用して、いくつかの温度段階を通るように搬送され、その各々で、物質の温度が、抽出すべき元素に固有のネール温度Tnのすぐ上まで下げられ、抽出すべき元素が磁気分離にかけられる。例えば、REEを含む物質からセリウム(Ce)を抽出しようとする場合、温度段階は、物質の温度を13K度まで下げ、次いで、物質を磁場にかけることにより、残りの物質からセリウムが磁気分離される。すなわち、各温度段階で、REEを含む物質の温度は、抽出すべき元素のネール温度Tnに対応する所定の温度まで下げられ、REE元素を磁気抽出するために物質が磁場にかけられる。以下は、REE抽出の温度段階の温度に対応するREEの種々のネール温度の一覧である。
セリウム 13k
ガドリニウム 18k
ツリウム 56k
ジスプロシウム 180.2k
エルビウム 85.7
ユウロピウム 91k
ホルミウム 132.24k
ランタン 138k
ルテチウム
ネオジム 19.2k
プラセオジム
プロメチウム
サマリウム 106k
スカンジウム
イッテルビウム
テルビウム 230k
【0076】
1つまたは複数の特定のREEが、抽出されるために選定されることができ、次いで、REEを有する物質が、選定されたREEに対応するネール温度に基づいて選択された1つまたは複数の温度ゾーンを通るように搬送されることが理解される。抽出すべき特定のREEおよび磁気抽出を伴う対応する温度ゾーンは、赤泥中のREEの濃度に応じて異ならせてよい。
【0077】
赤泥の処理では、赤泥中のREEの濃度レベルが現場ごとに異なる。この用途の場合、REEの濃度レベルは、<0.19%から<0.002%である。150,000,000トン以上の赤泥が貯蔵されている現場では、REEの量は、一元素当たり、<0.19%における285,000メートルトンから、<0.002%における3000メートルトンの範囲である。したがって、抽出することのできる相当な量のREEが赤泥中に存在している。
【0078】
すべての場合に、上記で説明された構成は、本発明の応用例を表す多くの可能な具体的な実施形態の例示に過ぎないことが理解される。上記に開示されたおよびその他の特徴および機能、またはそれらの代替物のいくつかが、多くの他の異なるシステムまたは応用例に望ましいように組み込まれてよいことが認識されるであろう。現在予期されていないまたは予想されていない様々な代替物、変更、変形、または改良が後に当業者によってなされ得、それらも以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。

図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
【国際調査報告】