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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ホットスタンピング部品
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20231130BHJP
   C22C 38/38 20060101ALI20231130BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
C22C38/00 301S
C22C38/00 301A
C22C38/38
C21D1/18 Q
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575413
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 KR2022001409
(87)【国際公開番号】W WO2023075031
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0147067
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510307299
【氏名又は名称】ヒュンダイ スチール カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ビョンギル
(72)【発明者】
【氏名】カン、ソクヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、トンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョウス
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ソンキョン
(57)【要約】
本発明は、炭素(C):0.28重量%~0.50重量%、シリコン(Si):0.15重量%~0.7重量%、マンガン(Mn):0.5重量%~2.0重量%、リン(P):0.03重量%以下、硫黄(S):0.01重量%以下、クロム(Cr):0.1重量%~0.6重量%、ホウ素(B):0.001重量%~0.005重量%、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)のうち、少なくとも1つ以上、及び残りの鉄(Fe)とその他不可避な不純物を含むベース鋼板を含むホットスタンピング部品において、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)の含量は、下記数式を満足する、ホットスタンピング部品を提供する。
【数1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素(C):0.28重量%~0.50重量%、シリコン(Si):0.15重量%~0.7重量%、マンガン(Mn):0.5重量%~2.0重量%、リン(P):0.03重量%以下、硫黄(S):0.01重量%以下、クロム(Cr):0.1重量%~0.6重量%、ホウ素(B):0.001重量%~0.005重量%、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)のうち、少なくとも1つ以上、及び残りの鉄(Fe)とその他不可避な不純物を含むベース鋼板を含むホットスタンピング部品において、
チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)の含量は、下記数式を満足する、ホットスタンピング部品。
【数1】
【請求項2】
ナノ押込試験時に観察される200nm~600nmの押込み深さに対する押込み変形率(indentation strain rate)において、押込み動的ひずみ時効(Indentation dynamic strain aging)の個数は、25~39個である、請求項1に記載のホットスタンピング部品。
【請求項3】
前記ベース鋼板は、複数のラス(Lath)構造が分布されたマルテンサイト組織を含む、請求項1に記載のホットスタンピング部品。
【請求項4】
前記複数のラスの平均間隔は、30nm~300nmである、請求項3に記載のホットスタンピング部品。
【請求項5】
前記ベース鋼板内に分布された微細析出物をさらに備え、
前記微細析出物は、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)のうち、少なくともいずれか1つの窒化物または炭化物を含む、請求項1に記載のホットスタンピング部品。
【請求項6】
単位面積(100μm)当たり分布された前記微細析出物の個数は、25,000個以上30,000個以下である、請求項5に記載のホットスタンピング部品。
【請求項7】
前記微細析出物のうち、単位面積(100μm)当たり分布されたTiC系析出密度は、20,000(個/100μm)~35,000(個/100μm)以下である、請求項5に記載のホットスタンピング部品。
【請求項8】
前記微細析出物の平均直径は、0.006μm以下である、請求項5に記載のホットスタンピング部品。
【請求項9】
前記微細析出物のうち、10nm以下の直径を有する比率は、90%以上である、請求項5に記載のホットスタンピング部品。
【請求項10】
前記微細析出物のうち、5nm以下の直径を有する比率は、60%以上である、請求項5に記載のホットスタンピング部品。
【請求項11】
前記ホットスタンピング部品のV曲げ角度は、50°以上である、請求項1に記載のホットスタンピング部品。
【請求項12】
前記ホットスタンピング部品の引張強度は、1680MPa以上である、請求項1に記載のホットスタンピング部品。
【請求項13】
前記ホットスタンピング部品の活性化水素量は、0.5wppm以下である、請求項1に記載のホットスタンピング部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットスタンピング部品に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に環境規制、及び燃費規制が強化されつつ、さらに軽い車両素材に対する必要性が増加している。これにより、超高強度鋼とホットスタンピング鋼に係わる研究開発が活発になされている。その中、ホットスタンピング工程は、普遍的に加熱/成形/冷却/トリムからなり、工程中に、素材の相変態、及び微細組織の変化を利用することになる。
【0003】
最近、ホットスタンピング工程によって製造されたホットスタンピング部品で発生する遅延破断、耐食性、及び溶接性を向上させようとする研究が活発に進められている。これに係わる技術としては、大韓民国特許公開公報第10-2018-0095757号(発明の名称:ホットスタンピング部品の製造方法)などがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、衝突性能が向上したホットスタンピング部品を提供することである。
【0005】
しかし、そのような課題は、例示的なものであって、これにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、炭素(C):0.28重量%~0.50重量%、シリコン(Si):0.15重量%~0.7重量%、マンガン(Mn):0.5重量%~2.0重量%、リン(P):0.03重量%以下、硫黄(S):0.01重量%以下、クロム(Cr):0.1重量%~0.6重量%、ホウ素(B):0.001重量%~0.005重量%、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)のうち、少なくとも1つ以上、及び残りの鉄(Fe)とその他不可避な不純物を含むベース鋼板を含むホットスタンピング部品において、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)の含量は、下記数式を満足する、ホットスタンピング部品を提供する。
【数1】
【0007】
本実施形態において、ナノ押込試験時に観察される200nm~600nmの押込み深さに対する押込み変形率(indentation strain rate)において、押込み動的ひずみ時効(Indentation dynamic strain aging)の個数は、25~39個でもある。
【0008】
本実施形態において、前記ベース鋼板は、複数のラス(Lath)構造が分布されたマルテンサイト組織を含む。
【0009】
本実施形態において、前記複数のラスの平均間隔は、30nm~300nmでもある。
【0010】
本実施形態において、前記ベース鋼板内に分布された微細析出物をさらに備え、前記微細析出物は、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)のうち、少なくともいずれか1つの窒化物または炭化物を含む。
【0011】
本実施形態において、単位面積(100μm)当たり分布された前記微細析出物の個数は、25,000個以上30,000個以下でもある。
【0012】
本実施形態において、前記微細析出物のうち、単位面積(100μm)当たり分布されたTiC系析出密度は、20,000(個/100μm)~35,000(個/100μm)以下でもある。
【0013】
本実施形態において、前記微細析出物の平均直径は、0.006μm以下でもある。
【0014】
本実施形態において、前記微細析出物のうち、10nm以下の直径を有する比率は、90%以上でもある。
【0015】
本実施形態において、前記微細析出物のうち、5nm以下の直径を有する比率は、60%以上でもある。
【0016】
本実施形態において、前記ホットスタンピング部品のV曲げ角度は、50゜以上でもある。
【0017】
本実施形態において、前記ホットスタンピング部品の引張強度は、1680MPa以上でもある。
【0018】
本実施形態において、前記ホットスタンピング部品の活性化水素量は、0.5wppm以下でもある。
【発明の効果】
【0019】
前述したようになされた本発明の一実施形態によれば、ホットスタンピング部品を具現することができる。このような効果によって本発明の範囲が限定されないということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の一部を図示するTEM(Transmission Electron Microscopy)イメージである。
図2】本発明の一実施形態に係わるホットスタンピング部品のナノ押込試験による荷重-変位グラフである。
図3図2のA部分のセレーション(serration)挙動を示す拡大図である。
図4】押込み動的ひずみ時効を測定したグラフである。
図5図4のB部分を拡大して示す拡大図である。
図6】本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品のラス及びラス境界において転位の移動による押込み動的ひずみ時効のメカニズムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、多様な変換が可能であり、様々な実施形態を有することができるところ、特定の実施形態を図面に例示し、詳細な説明で詳細に説明する。本発明の効果及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、図面と共に、詳細に後述する実施形態を参照すれば、明確になるであろう。しかし、本発明は、以下に開示される実施形態に限定されるものではなく、多様な形態にも具現される。
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明し、図面を参照して説明するとき、同一であるか、対応する構成要素は、同じ図面符号を付し、これに係わる重複説明は省略する。
【0023】
本明細書において第1、第2などの用語は、限定的な意味ではなく、1つの構成要素を他の構成要素と区別する目的で使用された。
【0024】
本明細書で単数表現は、文脈上、明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0025】
本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、または構成要素が存在することを意味し、1つ以上の他の特徴または構成要素が付加される可能性を予め排除するものではない。
【0026】
本明細書において、膜、領域、構成要素などの部分が、他の部分上にまたは、上部にあるとするとき、他の部分の直上にある場合だけではなく、その中間に他の膜、領域、構成要素などが介在されている場合も含む。
【0027】
本明細書において、膜、領域、構成要素などが連結されたとするとき、膜、領域、構成要素が直接連結された場合、または/及び膜、領域、構成要素の中間に他の膜、領域、構成要素が介在されて間接的に連結された場合も含む。例えば、本明細書において、膜、領域、構成要素などが電気的に連結されたとするとき、膜、領域、構成要素などが直接電気的に連結された場合、及び/またはその中間に他の膜、領域、構成要素などが介在されて間接的に電気的連結された場合を示す。
【0028】
本明細書において、「A及び/またはB」は、Aであるか、Bであるか、AとBである場合を示す。そして、「A及びBのうち、少なくとも1つ」は、Aであるか、Bであるか、AとBである場合を示す。
【0029】
本明細書において、ある実施形態が異なって具現可能な場合、特定の工程順序は、説明される順序とは異なって遂行されうる。例えば、連続して説明される2つの工程が実質的に同時に遂行されてもよく、説明される順序とは逆順に進められうる。
【0030】
図面では説明の便宜上、構成要素がその大きさが誇張または縮小されうる。例えば、図面に示された各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜上、任意に示したので、本発明が必ずしも図示されたところに限定されない。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の一部を図示するTEM(Transmission Electron Microscopy)イメージである。
【0032】
図1を参照すれば、ホットスタンピング部品は、ベース鋼板を含む。ベース鋼板は、所定の合金元素を所定含量含むように鋳造されたスラブに対して熱延工程及び/または冷延工程を進めて製造された鋼板でもある。一実施形態において、ベース鋼板は、炭素(C)、シリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、クロム(Cr)、ホウ素(B)及び残部の鉄(Fe)とその他不可避な不純物を含む。また、一実施形態において、ベース鋼板は、添加剤としてチタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)のうち、少なくともいずれか1つをさらに含む。他の実施形態において、ベース鋼板は、所定含量のカルシウム(Ca)をさらに含む。
【0033】
炭素(C)は、ベース鋼板内のオーステナイト安定化元素として作用する。炭素は、ベース鋼板の強度及び硬度を決める主要元素であり、ホットスタンピング工程以後、ベース鋼板の引張強度及び降伏強度(例えば、1,680MPa以上の引張強度及び950MPa以上の降伏強度)を確保し、焼入性特性を確保するための目的で添加される。このような炭素は、ベース鋼板の全体重量に対して0.28wt%~0.50wt%含まれる。炭素含量が0.28wt%未満である場合、硬質相(マルテンサイトなど)確保が困難であり、ベース鋼板の機械的強度を満足させ難い。逆に、炭素の含量が0.50wt%を超過する場合、ベース鋼板の脆性の発生、または、曲げ性能の低減問題がもたされる。
【0034】
シリコン(Si)は、ベース鋼板内のフェライト安定化元素として作用する。シリコン(Si)は、固溶強化元素としてベース鋼板の強度を向上させ、低温域炭化物の形成を抑制することで、オーステナイト内の炭素濃化度を向上させる。また、シリコンは、熱延、冷延、熱間プレス組織均質化(パーライト、マンガン偏析帯の制御)及びフェライト微細分散の核心元素である。シリコンは、マルテンサイト強度不均質制御元素として作用して衝突性能を向上させる役割を行う。このようなシリコンは、ベース鋼板の全体重量に対して0.15wt%~0.7wt%含まれる。シリコンの含量が0.15wt%未満である場合、上述した効果を得難く、最終ホットスタンピングマルテンサイト組織でセメンタイト形成及び粗大化が発生し、ベース鋼板の均一化効果が僅かであり、V曲げ角を確保することができなくなる。逆に、シリコンの含量が0.7wt%を超過する場合、熱延、冷延負荷が増加し、熱延赤スケールが過多となり、ベース鋼板のメッキ特性が低下しうる。
【0035】
マンガン(Mn)は、ベース鋼板内のオーステナイト安定化元素として作用する。マンガンは、熱処理時に焼入性及び強度増加の目的で添加される。このようなマンガンは、ベース鋼板の全体重量に対して0.5wt%~2.0wt%含まれる。マンガンの含量が0.5wt%未満である場合、硬化能効果が十分ではなく、焼入性不足によってホットスタンピング後、成形品内の硬質相分率が不十分にもなる。一方、マンガンの含量が2.0wt%を超過する場合、マンガン偏析またはパーライト帯による延性及び靭性が低下し、曲げ性能低下の原因になり、不均質微細組織が発生してしまう。
【0036】
リン(P)は、ベース鋼板の靭性低下を防止するために、ベース鋼板の全体重量に対して0超過0.03wt%以下含まれる。リンの含量が0.03wt%を超過する場合、リン化鉄化合物が形成され、靭性及び溶接性が低下し、製造工程中に、ベース鋼板にクラックが誘発されうる。
【0037】
硫黄(S)は、ベース鋼板の全体重量に対して0超過0.01wt%以下含まれる。硫黄の含量が0.01wt%を超過すれば、熱間加工性、溶接性及び衝撃特性が低下し、巨大介在物生成によってクラックなど表面欠陥が発生する。
【0038】
クロム(Cr)は、ベース鋼板の焼入性及び強度を向上させる目的で添加される。クロムは、析出硬化を通じる結晶粒微細化及び強度確保を可能にする。このようなクロムは、ベース鋼板の全体重量に対して0.1wt%~0.6wt%含まれる。クロムの含量が0.1wt%未満である場合、析出硬化効果が不十分であり、逆に、クロムの含量が0.6wt%を超過する場合、Cr系析出物及びマトリックス固溶量が増加して靭性が低下し、コスト高によって生産費が増加する。
【0039】
ホウ素(B)は、フェライト、パーライト及びベイナイト変態を抑制してマルテンサイト組織を確保することで、ベース鋼板の焼入性及び強度を確保する目的で添加される。また、ホウ素は、結晶粒界に偏析されて粒界エネルギーを低め、焼入性を増加させ、オーステナイト結晶粒の成長温度の増加によって結晶粒微細化効果を有する。このようなホウ素は、ベース鋼板の全体重量に対して0.001wt%~0.005wt%含まれる。ホウ素が前記範囲で含まれるとき、硬質相粒界の脆性の発生を防止し、高靭性と曲げ性を確保することができる。ホウ素の含量が0.001wt%未満である場合、焼入性効果が不足し、逆に、ボロンの含量が0.005wt%を超過する場合、固溶度が低く、熱処理条件によって結晶粒界で容易に析出され、焼入性が劣化されるか、高温脆化の原因になり、硬質相粒界脆性発生によって靭性及び曲げ性が低下しうる。
【0040】
一方、本発明の一実施形態によるベース鋼板内では、微細析出物が含まれる。ベース鋼板に含まれた元素の一部を構成する添加剤は、微細析出物の形成に寄与する窒化物または炭化物生成元素でもある。
【0041】
添加剤は、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)のうち、少なくともいずれか1つを含む。チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)は、窒化物または炭化物形態の微細析出物を形成することで、ホットスタンピング、焼き入れ部材の強度を確保することができる。また、これらは、Fe-Mn系複合酸化物に含有され、耐遅延破壊特性向上に有効な水素トラップサイトとして機能し、耐遅延破壊性の改善に必要な元素である。
【0042】
さらに具体的に、チタン(Ti)は、熱間プレス熱処理後、析出物の形成による結晶粒微細化を強化し、材質改善を目的に添加され、高温でTiC及び/または、TiNなどの析出相を形成し、オーステナイト結晶粒微細化に効果的に寄与することができる。このようなチタンは、ベース鋼板の全体重量に対して0.025wt%~0.045wt%含まれる。チタンが前記含量範囲で含まれれば、連鋳不良及び析出物の粗大化を防止し、鋼材の物性を容易に確保し、鋼材表面にクラック発生などの欠陥を防止することができる。一方、チタンの含量が0.045wt%を超過すれば、析出物が粗大化されて延伸率及び曲げ性の低下が発生する。
【0043】
ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)は、マルテンサイトパケットサイズ(Packet size)の減少による強度及び靭性増加を目的に添加される。ニオブは、ベース鋼板の全体重量に対して0.015wt%~0.045wt%含まれる。また、モリブデンは、ベース鋼板の全体重量に対して0.05wt%~0.15wt%含まれる。ニオブ及びモリブデンが前記範囲で含まれるとき、熱間圧延及び冷間圧延工程で鋼材の結晶粒微細化効果に優れ、製鋼/連鋳時、スラブのクラック発生と、製品の脆性破断発生を防止し、製鋼性粗大析出物の生成を最小化することができる。
【0044】
一実施形態において、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)の含量は、下記数式を満足する。
【数2】
【0045】
チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)の含量が前記数式の範囲内に含まれる場合、連鋳不良及び析出物の粗大化を防止し、鋼材の物性を容易に確保し、鋼材表面にクラック発生などの欠陥を防止することができる。また、熱間圧延及び冷間圧延工程で鋼材の結晶粒微細化効果に優れ、製鋼/連鋳時、スラブのクラック発生と、製品の脆性破断発生を防止し、製鋼性粗大析出物の生成を最小化することができる。
【0046】
前記数式の値が0.050wt%を超過する場合、析出物が粗大化されて延伸率及び曲げ性の低下が発生する。また、前記数式の値が0.015wt%未満である場合、ベース鋼板内での微細析出物の形成が不十分であり、ホットスタンピング部品の水素脆性を弱化させ、降伏強度の確保が不十分でもある。
【0047】
上述したように本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品は、ベース鋼板内でチタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)のうち、少なくともいずれか1つの窒化物または炭化物を含む微細析出物を含み、このような微細析出物は、ホットスタンピング部品の製造過程または製造後に内部に流入された水素に対するトラップサイトを提供することで、ホットスタンピング部品の水素脆性を向上させうる。
【0048】
一実施形態において、微細析出物がベース鋼板内に形成される個数は、既設定の範囲を満足するように制御される。一実施形態において、微細析出物は、ベース鋼板内に単位面積(100μm)当たり25,000個/100μm以上30,000個/100μm以下含まれる。また、一実施形態において、ベース鋼板内に分布する微細析出物の平均直径は、約0.006μm以下であり、望ましくは、約0.002μm~0.006μmでもある。このような微細析出物のうち、10nm以下の直径を有する微細析出物の比率は、約90%以上であり、5nm以下の直径を有する比率は、約60%以上でもある。上述した条件内で微細析出物を含むホットスタンピング部品は、V曲げ特性に優れ、曲げ性及び衝突性能に優れるだけではなく、水素遅延破壊特性も共に向上しうる。
【0049】
このような微細析出物の直径は、水素遅延破壊特性の改善に大きい影響を与える。微細析出物の個数、大きさ及び比率などが上述した範囲に形成されれば、ホットスタンピング後、要求される引張強度(例えば、1,680MPa)を確保し、成形性ないし曲げ性を向上させうる。例えば、単位面積(100μm)当たり微細析出物の個数が25,000個/100μm未満である場合、ホットスタンピング部品の強度が低下し、30,000個/100μmを超過する場合、ホットスタンピング部品の成形性ないし曲げ性が低下しうる。
【0050】
また、一実施形態において、ベース鋼板内の活性化水素量は、約0.5wppm以下でもある。活性化水素量は、ベース鋼板内に流入された水素のうち、微細析出物にトラップされた水素を除いた水素量を意味する。このような活性化水素量は、加熱脱ガス分析(Thermal desorption spectroscopy)方法を利用して測定することができる。具体的に、試片を既設定の加熱速度で加熱して昇温させつつ、特定温度以下で試片から放出される水素量を測定する。この際、特定温度以下で試片から放出される水素は、試片内に流入された水素のうち、トラップされず、水素遅延破壊に影響を与える活性化水素と理解されうる。例えば、比較例として、ホットスタンピング部品が、ベース鋼板内の活性化水素量0.5wppmを超過して含む場合、水素遅延破壊特性が低下し、同一条件下の曲げ試験において本実施形態によるホットスタンピング部品に比べて容易に破断されうる。
【0051】
一方、本実施形態によるベース鋼板は、微細構造が分布されたマルテンサイト組織を含む。マルテンサイト組織は、冷却中、マルテンサイト変態の開始温度(Ms)下でオーステナイトγの無拡散変態結果である。マルテンサイト組織内の微細構造は、初期オーステナイト結晶粒界(prior austenite grain boundary, PAGB)という結晶粒内で急冷時に作られる無拡散変態組織であり、複数のラスL構造を含む。複数のラスL構造は、さらにブロック(Block)、パケット(Packet)のような単位体を構成する。さらに詳細に、複数のラスL構造は、ブロック(Block)を形成し、複数のブロック(Block)は、パケット(Packet)を形成し、複数のパケット(Packet)は、初期オーステナイト結晶粒界(PAGB)を形成する。
【0052】
上述したようにマルテンサイトは、オーステナイトそれぞれの初期結晶粒内で一方向に配向された細長型ロッド(rod)状のラスL構造を有する。複数のラスL構造は、これらの間の境界、すなわち、ラス境界(lath boundary, LB)で外部変形に抵抗する特性を有する。これについての詳細は、後述する。
【0053】
一方、本実施形態によるホットスタンピング部品のV曲げ角度は、50°以上でもある。「V曲げ」は、ホットスタンピング部品の曲げ性能で示される変形のうち、最大荷重区間での曲げ変形物性を評価するパラメータである。すなわち、ホットスタンピング部品の荷重-変位評価による巨視的、微視的サイズでの曲げ時、引張変形領域を見れば、局所的な引張領域において微細クラックが発生、伝播されれば、V曲げ角度であると呼ばれる曲げ性能が評価されうる。
【0054】
上述したように本実施形態によるホットスタンピング部品は、複数のラスL構造を有するマルテンサイト組織を含むが、曲げ変形時に生成されるクラックは、転位(dislocation)という1次元的欠陥がマルテンサイト組織内で相互作用による移動によって発生しうる。この際、与えられた塑性変形のうち、局所的な変形率速度が大きいほど、マルテンサイトの塑性変形に対するエネルギー吸収程度が高く、衝突性能は高くなると理解されうる。
【0055】
本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品では、マルテンサイト組織が複数のラスL構造を有することにより、曲げ変形時、転位がラスLとラス境界LBを反復的に移動する過程で変形率速度差による動的ひずみ時効(dynamic strain aging, DSA)、すなわち押込み動的ひずみ時効(Indentation dynamic strain aging)が示される。押込み動的ひずみ時効は、塑性変形吸収エネルギーの概念であって、変形に対する抵抗性能を意味するので、押込み動的ひずみ時効現象が頻煩になるほど、変形に対する抵抗能に優れると評価されうる。
【0056】
本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品では、マルテンサイト組織が稠密な形態の複数のラスL構造を有することで押込み動的ひずみ時効現象が頻繁に発生し、これを通じてV曲げ角度を50°以上確保して曲げ性及び衝突性能を向上させうる。
【0057】
一実施形態において、本実施形態によるホットスタンピング部品のマルテンサイト組織に含まれた複数のラスLの平均間隔は、約30nm~300nmでもある。比較例として、上述した元素の組成を外れるベース鋼板を含むホットスタンピング部品がラス構造を含む場合を仮定する。比較例のホットスタンピング部品のラス構造間の平均間隔は、本実施形態によるホットスタンピング部品のラスL構造の平均間隔よりもさらに大きく形成されうる。すなわち、本実施形態によるホットスタンピング部品は、比較例に比べてさらに稠密なラスL構造を有し、このようにホットスタンピング部品内のラスL構造が稠密になることにより、押込み動的ひずみ時効の個数はさらに増加しうる。
【0058】
図2は、本発明の一実施形態に係わるホットスタンピング部品のナノ押込試験による荷重-変位グラフであり、図3は、図2のA部分のセレーション(serration)挙動を示す拡大図である。
【0059】
図2を参照すれば、本発明の一実施形態に係わるホットスタンピング部品に対してナノ押込試験を進めた結果を示すグラフである。「ナノ押込試験」は、ホットスタンピング部品の表面でインデンター(indenter)を垂直に押して深さによる力の変形を測定した試験である。図2において、x軸は、インデンターが押込まれた深さを示し、y軸は、押込まれた深さによる力を示す。一例として、図2では、インデンターとして、キューブコーナーチップ(cube-corner tip:中心線から面までの角度(centerline-to-face angle)=35.3°、押込み変形率(indentation strain rate)=0.22)を使用したが、本発明がそれに限定されるものではなく、バーコヴィッチ圧子(Berkovich tip:中心線から面までの角度(centerline-to-face angle)=65.3°、押込み変形率(indentation strain rate)=0.072)を使用しうる。
【0060】
図2のA部分を拡大した図3を参照すれば、ナノ押込試験時に発生する押込、塑性変形のうち、鋸歯状の変形、すなわち、セレーション(serration)と呼ばれる特徴的な挙動が観察されることが分かる。セレーション挙動は、ほぼ一定間隔を置いて反復的に示され、図3では、矢印(↓)でセレーション挙動を表記した。
【0061】
セレーション挙動は、ホットスタンピング部品の押込試験時、それこ含まれた初期オーステナイト結晶粒界(PAGB)内の無拡散変態組織によって示される。さらに具体的に、図2のような荷重-変位曲線で示されるセレーション挙動は、材料内で拡散する溶質原子と転位との相互作用によって示されるものであって、初期オーステナイト結晶粒界(PAGB)内に分布された複数のラスと、これらの間に形成されるラス境界部分での外圧に対する抵抗力差から始まると理解されうる。このようなセレーション挙動は、後述する図4の動的ひずみ時効(dynamic strain aging, DSA)、すなわち、押込み動的ひずみ時効(Indentation dynamic strain aging)現状の主要証拠とも認識される。
【0062】
図4は、押込み動的ひずみ時効を測定したグラフであり、図5は、図4のB部分を拡大して示す拡大図である。
【0063】
図4は、図3の荷重-変位曲線に基づいてナノ押込み変形率速度([dh/dt]/h、h:押込み深さ、t:単位時間)を解析したグラフである。
【0064】
一実施形態において、ホットスタンピング部品は、ナノ押込試験時に観察される約200nm~600nmの押込み深さに対する押込み変形率(indentation strain rate)において、押込み動的ひずみ時効(Indentation dynamic strain aging)の個数が約25~39個でもある。押込み動的ひずみ時効は、押込み変形率が複数個のピーク(peak)を反復的に形成する挙動で示されうる。
【0065】
押込み動的ひずみ時効の個数は、ベースラインCを中心としてそれを通るピークを基準に算定する。すなわち、押込み動的ひずみ時効の個数は、ベースラインCを中心にベースラインCの上下に形成されるピークは算定せず、ベースラインCを通過して形成されたピークを基準に算定したものでもある。ベースラインCは、押込み変形率測定時、ラス及びラス境界構造による押込み動的ひずみ時効を除去した場合を仮定した線である。
【0066】
図5の押込み変形率グラフを参照すれば、押込み深さが徐々に深くなる場合、押込み動的ひずみ時効の個数及び大きさが徐々に小さくなることが分かる。これは、押込み深さが徐々に深くなるほど、初期オーステナイト結晶の押込物性が混在されて押込み動的ひずみ時効がほとんど示されないからである。図4を参照すれば、押込深さ600nm以上では、実質的に押込み動的ひずみ時効がほとんど示されないということが分かる。図4のグラフでは、押込深さ700nm以上は測定されていないが、700nm以上の押込み深さに対する押込み変形率を測定し続ければ、当該区間で動的ひずみ時効が除去された曲線が得られる。ベースラインCは、このように押込み動的ひずみ時効が除去された押込み深さでの押込み変形率曲線を逆に推定して導出することができる。
【0067】
上述したように、本実施形態によるホットスタンピング部品の押込み動的ひずみ時効の個数は、25ないし39個でもあるが、これは、押込深さ、約200nm~600nm区間で測定されたものを基準にする。図4では、押込み深さを0nmから約700nmまで測定したが、押込深さ、約200nm未満では、鈍くなったインデンターの影響によって押込み変形率の正確度が低く、押込深さ、約600nm超過時、初期オーステナイト結晶自体の押込物性が混在されて動的ひずみ時効の評価が容易ではないからである。
【0068】
図4に図示されたように、押込み変形率は、巨視的に見るとき、押込み深さによって2次関数的に徐々に小さくなる様相を呈する。この際、押込み動的ひずみ時効は、押込み変形率が複数個のピークを反復的に形成する挙動で示される。それを詳細に観察するために、図5では、図4の350nm~400nmの押込み深さに対する押込み変形率を拡大して図示した。
【0069】
図5を参照すれば、押込み変形率は、上昇区間と下降区間が繰り返す形態にも示される。a区間は、押込試験時、押込み変形率が増加する区間で抵抗を吸収する区間を意味する。すなわち、a区間は、曲げ変形中、引張発生部における転位移動時、初期オーステナイト結晶粒界内に分布されたラス内で転位が摺動(gliding)する区間と理解される。このように転位がラス内で移動する間、ホットスタンピング部品は、外部抵抗を吸収する性質を示し、これは、図5のように押込み変形率が上昇する区間で示される。転位は、ラス境界部分まで上昇していてラス境界を通る瞬間、b区間のように押込み変形率が下降するが、これは、ラス境界に分布された微細析出物との相互作用による現象と解釈されうる。
【0070】
図6は、本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品の曲げ変形中、転位移動による押込み動的ひずみ時効のメカニズムを示す模式図である。
図6を参照すれば、曲げ変形中、引張発生部での初期オーステナイト結晶粒界(PAGB)内に分布されたラスL及びラス境界LBを図示しながら、図5の押込み動的ひずみ時効による転位の移動を模式的に図示した。上述したように、曲げ変形中、転位は、隣接したラスLに沿って移動することができる。図6の矢印は、転位の移動方向を示す。
【0071】
このように転位移動時、ラスL内とラス境界LBでのエネルギー吸収程度による押込み変形率が互いに異なると解釈されうる。図5及び図6を共に参照すれば、ラスL内で図6の矢印に沿って転位の移動する間は、図5のa区間に該当しうる。すなわち、ラスL内で転位が移動する間、押込み変形率は、上昇しうる。押込み変形率は、転位がラス境界LBに隣接するまで上昇していて、ラス境界LBを通る瞬間、下降するが、これは、図5のb区間に該当しうる。このように、転位移動時、転位とラス境界LBの相互作用によって図5のような押込み動的ひずみ時効が発生する。上述したようにラス境界LBには、微細析出物Pが分布して変形を遅延させる特性を示し、そのように変形率の増加及び減少は、複数のラスLを通る間、反復的に形成されて押込み動的ひずみ時効を発生させうる。
【0072】
本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品は、ベース鋼板内に含まれた微細析出物を制御することで、複数のラス間の平均間隔を縮めて転位が曲げ変形中に摺動するとき、押込み動的ひずみ時効現象がさらに頻繁に起こる特性を有する。このようにラス構造の稠密化を通じて押込み動的ひずみ時効現象が増加することにより、本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品は、曲げ変形時に破断されず、V曲げ角度を50°以上確保し、それにより、曲げ性及び衝突性能が向上しうる。
【0073】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、下記実施例及び比較例は、本発明をさらに具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲が下記実施例及び比較例によって限定されるものではない。下記実施例及び比較例は、本発明の範囲内で当業者によって適切に修正、変更されうる。
【0074】
本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品は、下記表1のような組成を有するベース鋼板に対してホットスタンピング工程を経て形成されうる。
【表1】
【0075】
前述したように、本発明の一実施形態によるホットスタンピング部品は、ベース鋼板内に添加剤の窒化物及び/または炭化物を含む微細析出物を含み、ホットスタンピング部品内の微細析出物は、ベース鋼板内に単位面積(100μm)当たり25,000個/100μm以上30,000個/100μm以下含まれる。また、一実施形態において、ベース鋼板内に分布する微細析出物の平均直径は、0.006μm以下、さらに具体的に、約0.002μm~0.0006μmでもある。上述した条件を満足するホットスタンピング部品の場合、V曲げ角度が50°以上を示す。
【0076】
上述したように、添加剤は、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)を含み、これらの含量は、下記数式を満足する。
【数3】
【0077】
以下、表2は、添加剤の含量による本発明による実施例と比較例の微細析出物の析出挙動及びそれによる押込み動的ひずみ時効の個数、V曲げ角度を数値化して測定した値を示す。
【表2】
【0078】
前記表2において、実施例1ないし実施例7は、前述したようにチタン含量による微細析出物の析出挙動条件及び複数のラス形成条件を満足する実施例である。具体的に、実施例1ないし実施例7内でチタンは、約0.025wt%~0.050wt%含まれ、これによる複数のラスの平均間隔は、約30nm~300nmでもあり、チタンを含む微細析出物、例えば、チタン炭化物(TiC)の単位面積当たり個数は、20,000個/100μm以上35,000個/100μm以下であり、全体微細析出物の平均直径は、0.002μm~0.0006μmでもある。その場合、押込み動的ひずみ時効の個数は、25個~39個の条件を満足する。
【0079】
このように本発明の析出挙動条件及び複数のラス形成条件を満足する実施例1ないし実施例7は、V曲げ角度を50°以上確保し、引張強度及び曲げ性が向上したことを確認しうる。
【0080】
一方、比較例1及び比較例2は、前述した析出挙動条件及び複数のラス形成条件のうち、少なくとも一部を満足させず、引張強度及び曲げ性が実施例1ないし実施例7に比べて低くなったことを確認しうる。
【0081】
比較例1の場合、チタン含量が0.052wt%であることにより、微細析出物のサイズが粗大化され、複数のラスの平均間隔は、約25nmと狭くなり、押込み動的ひずみ時効は、23個であって、前述した条件を満足させ得ない。これにより、比較例1のV曲げ角度は、44°に過ぎないことを確認しうる。
【0082】
比較例2の場合、チタン含量が0.024wt%であることにより、微細析出物のサイズ及び密度が小さくなり、複数のラスの平均間隔は、約325nmと大きくなり、押込み動的ひずみ時効は、24個であり、やはり前述した条件を満足させ得ない。これにより、比較例2のV曲げ角度は、46°に過ぎないことを確認しうる。
【0083】
さらに具体的には、本発明の一実施例によるホットスタンピング部品内の微細析出物は、ベース鋼板内に単位面積(100μm)当たり25,000個/100μm以上30,000個/100μm以下含まれる。また、一実施例において、ベース鋼板内に分布する微細析出物の平均直径は、約0.006μm以下でもある。このような微細析出物のうち、10nm以下の直径を有する微細析出物の比率は、約90%以上であり、5nm以下の直径を有する比率は、60%以上でもある。また、一実施例において、ベース鋼板内の活性化水素量は、約0.5wppm以下でもある。このような特性を有するホットスタンピング部品は、曲げ性に優れ、耐水素脆性が向上しうる。
【0084】
下記表3は、本発明による実施例と比較例の微細析出物の析出挙動を数値化して測定した値を示す。
【0085】
微細析出物の析出挙動は、TEM(Transmission Electron Microscopy)イメージを分析する方法で測定することができる。具体的に、試片に対して既設定の個数ほど任意の領域に対するTEMイメージを獲得する。獲得したイメージからイメージ分析プログラムなどを通じて微細析出物を抽出し、抽出された微細析出物に対して微細析出物の個数、微細析出物間の平均距離、微細析出物の直径などを測定することができる。
【0086】
一実施例において、微細析出物の析出挙動測定のために測定対象試片に前処理として表面複製法(Replication method)を適用する。例えば、1段階レプリカ法、2段階レプリカ法、抽出レプリカ法などが適用されうるが、上述した例示に限定されるものではない。
【0087】
他の実施例において、微細析出物の直径測定時、微細析出物の形態の不均一性を考慮して微細析出物の形状を円に換算して微細析出物の直径を算出することができる。具体的に、特定の面積を有する単位ピクセルを用いて抽出された微細析出物の面積を測定し、微細析出物を測定された面積と同一面積を有する円に換算して微細析出物の直径を算出することができる。
【表3】
【0088】
前記表3では、試片AないしNに対して微細析出物の析出挙動(単位面積当たり全体微細析出物個数、全体微細析出物の平均直径、直径10nm以下の微細析出物の比率、活性化水素量)を測定したものである。
【0089】
表3の試片AないしJは、本発明による実施例であって、前述した含量条件(表1参照)を満足するベース鋼板を用いて製造されたホットスタンピング部品の試片である。すなわち、試片AないしJは、前述した微細析出物の析出挙動条件を満足する試片である。具体的には、試片AないしJは、微細析出物が鋼板内に25,000個/100μm以上30,000個/100μm以下に形成され、全体微細析出物の平均直径は、0.006μm以下であり、鋼板内に形成される微細析出物の90%以上が10nm以下の直径を有し、60%以上が5nm以下の直径を満足する。
【0090】
このような本発明の析出挙動条件を満足する試片AないしJは、活性化水素量が0.5wppm以下の条件を満足することにより、水素遅延破壊特性が向上することを確認しうる。
【0091】
一方、試片KないしNは、前述した微細析出物の析出挙動条件のうち、少なくとも一部を満足させ得ない試片であって、引張強度、曲げ性及び/または水素遅延破壊特性が試片AないしJと対比して劣ることを確認しうる。
【0092】
試片Kの場合、全体微細析出物の平均直径が0.0062μmである。これは、全体微細析出物の平均直径条件の下限に達していない。これにより、試片Kの活性化水素量は、相対的に高い0.507wppmであることを確認しうる。
【0093】
試片Lの場合、直径10nm以下微細析出物の比率が89.7%と測定された。これにより、試片Lの活性化水素量は、相対的に高い0.511wppmであることを確認しうる。
【0094】
試片M及び試片Nの場合、直径5nm以下の微細析出物の比率がそれぞれ59.9%及び59.6%と測定された。これにより、試片M及び試片Nの活性化水素量は、相対的に高い0.503wppm及び0.509wppmであることをそれぞれ確認することができる。
【0095】
試片KないしNのように本発明の析出挙動条件を満足していない場合は、ホットスタンピング工程中、1つの微細析出物に相対的に多くの水素がトラップされたか、トラップされた水素原子が局所的に密集されてトラップされた水素原子が互いに結合して水素分子(H)を形成することで、内部圧力を発生させ、これにより、ホットスタンピング加工された製品の水素遅延破壊特性を低下させたものと判断される。
【0096】
一方、試片AないしJのように本発明の析出挙動条件を満足する場合は、ホットスタンピング工程中、1つの微細析出物にトラップされる水素原子の個数が相対的に少ないか、トラップされた水素原子が相対的に均一に分散されうる。したがって、トラップされた水素原子によって形成される水素分子による内部圧力発生を低下させ、これにより、ホットスタンピング加工された製品の水素遅延破壊特性が向上したと判断される。
【0097】
結果として、前述した本発明の含量条件が適用されたホットスタンピング部品は、ホットスタンピングを経た後、前述した微細析出物の析出挙動条件を満足することにより、水素遅延破壊特性が向上したことを確認した。
【0098】
本発明は、図面に図示された実施例を参照して説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野で通常の知識を有する者であれば、それにより、多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】