(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ホットスタンピング部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 24/00 20060101AFI20231130BHJP
B21D 22/20 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B21D24/00 M
B21D22/20 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575419
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 KR2022001412
(87)【国際公開番号】W WO2023075032
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0147069
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510307299
【氏名又は名称】ヒュンダイ スチール カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェミョン
(72)【発明者】
【氏名】コン、ジェヨル
(72)【発明者】
【氏名】パク、キェジョン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、スンチェ
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA01
4E137AA05
4E137AA06
4E137AA11
4E137BA01
4E137BB01
4E137CA09
4E137DA03
4E137EA01
4E137EA26
4E137FA10
4E137FA25
4E137FA27
4E137GB01
(57)【要約】
本発明は、加熱炉内にブランクを投入する段階;ブランクを加熱する段階;及び加熱されたブランクを加熱炉から金型に移送する段階;を含み、ブランクを移送する段階でのブランクの空冷時間は、数式1を満足する、ホットスタンピング部品の製造方法を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉内にブランクを投入する段階と、
前記ブランクを加熱する段階と、
前記加熱されたブランクを前記加熱炉から金型に移送する段階と、を含み、
前記ブランクを移送する段階での前記ブランクの空冷時間は、下記数式1を満足する、ホットスタンピング部品の製造方法。
【数1】
(この際、λ
tは、空冷時間(s)、a
tは、加熱炉取出温度及び大気温度補正係数、T
tは、加熱温度(℃)、b
tは、素材成分補正係数、tは、素材厚さ(mm)、c
tは、高温素材厚さ敏感度補正係数)。
【請求項2】
前記数式1において、
前記a
tは、0.0160以上0.0165以下であり、T
tは、Ac3以上1000℃以下であり、b
tは、-10以上0.5以下であり、tは、1mm以上2.6mm以下であり、c
tは、0.7以上0.9以下である、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項3】
前記数式1において、
λ
tは、5s以上20s以下である、請求項2に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項4】
前記ブランクを移送する段階において、
前記加熱されたブランクは、常温で空冷される、請求項3に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項5】
前記ブランクを加熱する段階は、
前記ブランクを段階的に加熱する多段加熱段階と、
前記ブランクをAc3~1000℃の温度で加熱する均熱加熱段階と、を含む、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項6】
前記ブランクを加熱する段階において、
前記ブランクの加熱時間は、下記数式2を満足する、請求項5に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【数2】
(この際、λ
nは、加熱時間(s)、a
nは、加熱炉熱損失補正係数、T
nは、加熱温度(℃)、b
nは、Ac3温度補正係数、tは、素材厚さ(mm)、c
nは、高温素材厚さ敏感度係数)。
【請求項7】
前記数式2において、
前記a
nは、-0.60以上-0.55以下であり、T
nは、Ac3以上1000℃以下であり、b
nは、700以上900以下であり、tは、1mm以上2.6mm以下であり、c
nは、0.7以上0.9以下である、請求項6に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項8】
前記数式2において、
λ
nは、100s以上900s以下である、請求項7に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項9】
前記加熱炉は、互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を具備する、請求項5に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項10】
前記複数の区間で前記ブランクが多段加熱される区間の長さと前記ブランクが均熱加熱される区間の長さとの比は、1:1~4:1を満足する、請求項9に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項11】
前記ブランクを移送する段階以後に、
前記移送されたブランクを前記金型で加圧して成形体を成形する段階と、
前記成形された成形体を冷却する段階と、をさらに含む、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項12】
前記成形体を成形する段階において、
前記ブランクの成形開始温度は、500℃以上700℃以下である、請求項11に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項13】
前記成形された成形体を冷却する段階は、
前記金型内でなされる、請求項11に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項14】
前記成形体冷却段階において、
前記金型内で前記成形体が冷却される金型冷却時間は、下記数式3を満足する、請求項13に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【数3】
(この際、λ
qは、金型冷却時間(s)、a
qは、金型熱伝導補正係数、Pは、加圧力(MPa)、b
qは、素材硬化能補正係数、tは、素材厚さ(mm)、c
qは、低温素材厚さ敏感度係数)。
【請求項15】
前記数式3において、
前記a
qは、-1.0以上-0.2以下であり、Pは、0.1MPa以上5MPa以下であり、b
qは、11以上15以下であり、tは、1mm以上2.6mm以下であり、c
qは、1.00以上1.05以下である、請求項14に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項16】
前記数式3において、
λ
qは、6s以上40s以下である、請求項15に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項17】
前記成形体冷却段階において、
前記冷却段階が終了する金型冷却終了温度は、常温以上約200℃以下である、請求項11に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項18】
請求項1ないし17のうち、いずれか1項に記載の製造されたホットスタンピング部品であって、
1350MPa以上2300MPa未満の引張強度を有する、ホットスタンピング部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットスタンピング部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に環境規制及び燃費規制が強化されつつ、さらに軽い車両素材に対する必要性が増加している。これにより、超高強度鋼とホットスタンピング鋼に対する研究開発が活発になされている。
【0003】
ホットスタンピング工程は、一般的に加熱/成形/冷却/トリムからなり、工程中に、素材の相変態及び微細組織の変化を利用することができる。ホットスタンピング工程のうち、加熱工程は、加熱炉内でブランクを加熱させる工程であり、ホットスタンピング工程のうち、冷却工程は、金型内でホットスタンピングされた成形体が冷却される工程である。また、加熱工程を通じて加熱されたブランクは、加熱炉から金型に流入される間に常温に露出されて空冷されうる。
【0004】
これに係わる技術として、大韓民国特許登録公報第10-2070579号(発明の名称:ホットスタンピング方法)などがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ブランクの素材、ブランクの厚さ、加熱温度など多様なパラメータを考慮して加熱時間、空冷時間、及び金型冷却時間を制御することで、製造されたホットスタンピング部品の品質を向上させうる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施例は、加熱炉内にブランクを投入する段階、前記ブランクを加熱する段階、及び前記加熱されたブランクを前記加熱炉から金型に移送する段階を含み、前記ブランクを移送する段階での前記ブランクの空冷時間は、下記数式1を満足する、ホットスタンピング部品の製造方法が提供される。
【数1】
(この際、λ
tは、空冷時間(s)、a
tは、加熱炉取出温度及び大気温度補正係数、T
tは、加熱温度(℃)、b
tは、素材成分補正係数、tは、素材厚さ(mm)、c
tは、高温素材厚さ敏感度補正係数)
【0007】
本実施例において、前記数式1において、前記atは、0.0160以上0.0165以下であり、Ttは、Ac3以上1000℃以下であり、btは、-10以上0.5以下であり、tは、1mm以上2.6mm以下であり、ctは、0.7以上0.9以下でもある。
【0008】
本実施例において、前記数式1において、λtは、5s以上20s以下でもある。
【0009】
本実施例において、前記ブランクを移送する段階において、前記加熱されたブランクは、常温で空冷されうる。
【0010】
本実施例において、前記ブランクを加熱する段階は、前記ブランクを段階的に加熱する多段加熱段階、及び前記ブランクをAc3~1000℃の温度で加熱する均熱加熱段階を含む。
【0011】
本実施例において、前記ブランクを加熱する段階において、前記ブランクの加熱時間は、下記数式2を満足する。
【数2】
(この際、λ
nは、加熱時間(s)、a
nは、加熱炉熱損失補正係数、T
nは、加熱温度(℃)、b
nは、Ac3温度補正係数、tは、素材厚さ(mm)、c
nは、高温素材厚さ敏感度係数)
【0012】
本実施例において、前記数式2において、前記anは、-0.60以上-0.55以下であり、Tnは、Ac3以上1000℃以下であり、bnは、700以上900以下であり、tは、1mm以上2.6mm以下であり、cnは、0.7以上0.9以下でもある。
【0013】
本実施例において、前記数式2において、λnは、100s以上900s以下でもある。
【0014】
本実施例において、前記加熱炉は、互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を具備することができる。
【0015】
本実施例において、前記複数の区間で前記ブランクが多段加熱される区間の長さと前記ブランクが均熱加熱される区間の長さとの比は、1:1~4:1を満足する。
【0016】
本実施例において、前記ブランクを移送する段階以後に、前記移送されたブランクを前記金型で加圧して成形体を成形する段階、及び前記成形された成形体を冷却する段階をさらに含む。
【0017】
本実施例において、前記成形体を成形する段階で、前記ブランクの成形開始温度は、500℃以上700℃以下でもある。
【0018】
本実施例において、前記成形体冷却段階で、前記金型内で前記成形体が冷却される金型冷却時間は、下記数式3を満足する。
【数3】
(この際、λ
qは、金型冷却時間(s)、a
qは、金型熱伝導補正係数、Pは、加圧力(MPa)、b
qは、素材硬化能補正係数、tは、素材厚さ(mm)、c
qは、低温素材厚さ敏感度係数)
【0019】
本実施例において、前記数式3において、前記aqは、-1.0以上-0.2以下であり、Pは、0.1MPa以上5MPa以下であり、bqは、11以上15以下であり、tは、1mm以上2.6mm以下であり、cqは、1.00以上1.05以下である。
【0020】
本実施例において、前記数式3において、λqは、6s以上40s以下でもある。
【0021】
本実施例において、前記成形体冷却段階で、前記冷却段階が終了する金型冷却終了温度は、常温以上約200℃以下でもある。
【0022】
本発明の他の実施例は、1350MPa以上2300MPa未満の引張強度を有するホットスタンピング部品が提供される。
【0023】
前記以外の他の側面、特徴、利点は、以下の発明を実施するための具体的な内容、請求範囲及び図面から明確になるであろう。
【発明の効果】
【0024】
前述したようになされた本発明の一実施例によれば、ブランクの素材、ブランクの厚さ、加熱温度など多様なパラメータを考慮して加熱時間、空冷時間、及び金型冷却時間を制御することで、製造されたホットスタンピング部品の品質を向上させうる。
【0025】
また、本発明の一実施例によれば、素材厚さ、加熱時間、空冷時間、及び金型冷却時間を媒介変数としてプロセスウィンドウを導出することで、柔軟な工程設計が可能であり、製造されたホットスタンピング部品の品質管理を容易にしうる。このような効果によって本発明の範囲が限定されないということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法の加熱段階を具体的に示すフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法の加熱段階において、複数の区間を備えた加熱炉を説明するために示す図面である。
【
図4】加熱されたブランクが経時的に冷却される挙動を示す図面である。
【
図5】素材厚さによる加熱時間及び加熱温度による加熱時間を示す図面である。
【
図6】素材厚さによる空冷時間及び加熱温度による空冷時間を示す図面である。
【
図7】素材厚さによる金型冷却時間及び加圧力による金型冷却時間を示す図面である。
【
図8】素材厚さ、加熱時間、空冷時間及び金型冷却時間を媒介変数として導出されたプロセスウィンドウを示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、多様な変換が可能であり、様々な実施例を有することができるところ、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明で詳細に説明する。本発明の効果及び特徴、及びそれらを達成する方法は、図面と共に、詳細に後述する実施例を参照すれば、明確になるであろう。しかし、本発明は、以下に開示される実施例に限定されるものではなく、多様な形態にも具現される。
【0028】
以下の実施例において、第1、第2などの用語は、限定的な意味ではなく、1つの構成要素を他の構成要素と区別する目的で使用された。
【0029】
以下の実施例において、単数表現は、文脈上、明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0030】
以下の実施例において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、または構成要素が存在することを意味し、1つ以上の他の特徴または構成要素の付加可能性を予め排除するものではない。
【0031】
以下の実施例において、膜、領域、構成要素などの部分が、他の部分上に、または上部にあるとするとき、他の部分の直上にある場合だけではなく、その中間に他の膜、領域、構成要素などが介在されている場合も含む。
【0032】
図面では、説明の便宜上、構成要素がその大きさが誇張または縮小されうる。例えば、図面に示された各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜上、任意に示したものであって、本発明が必ずしも図示されたところに限定されない。
【0033】
本明細書において「A及び/またはB」は、Aであるか、Bであるか、AとBである場合を示す。また、本明細書において「A及びBのうち、少なくともいずれか1つ」は、Aであるか、Bであるか、AとBである場合を示す。
【0034】
以下の実施例において、配線が「第1方向または第2方向に延びる」という意味は、直線状に延びるものだけではなく、第1方向または第2方向に沿ってジグザグまたは曲線に延びることも含む。
【0035】
以下の実施例において、「平面上」とするとき、これは、対象部分の上面視を意味し、「断面上」とするとき、これは、対象部分を垂直に切った断面の側面視を意味する。以下の実施例において、「重畳」とするとき、これは「平面上」及び「断面上」重畳を含む。
【0036】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明し、図面を参照して説明するとき、同一であるか、対応する構成要素は、同じ図面符号を付する。
【0037】
図1は、本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法を概略的に示すフローチャートであり、
図2は、一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法の加熱段階を具体的に示すフローチャートである。以下、
図1及び
図2を参照して、ホットスタンピング部品の製造方法を説明する。
【0038】
図1を参照すれば、一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法は、ブランク投入段階(S100)、加熱段階(S200)、移送段階(S300)、成形段階(S400)、及び冷却段階(S500)を含む。
【0039】
まず、ブランク投入段階(S100)は、互いに異なる昇温速度範囲を有する複数の区間を備えた加熱炉内にブランクを投入する段階でもある。ブランクは、母材の少なくとも一面にメッキ層が形成された形態に備えられる。母材は、素地鋼板として所定の合金元素を所定含量含むように鋳造された鋼スラブに対して熱延工程及び/または冷延工程を進めて製造された鋼板でもある。
【0040】
一実施例において、素地鋼板は、炭素(C)、シリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、残部の鉄(Fe)、及びその他不可避な不純物を含む。例えば、素地鋼板は、炭素(C)0.01重量%以上0.5重量%以下、シリコン(Si)0.01重量%以上~1.00重量%以下、マンガン(Mn)0.3重量%以上~2.0重量%以下、リン(P)0超過0.1重量%以下、硫黄(S)0超過0.1重量%以下、残部の鉄(Fe)及びその他不可避な不純物を含む。
【0041】
また、素地鋼板は、ボロン(B)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)及びニッケル(Ni)のうち、1つ以上の成分をさらに含む。例えば、素地鋼板は、ボロン(B)0.0001重量%以上0.005重量%以下、チタン(Ti)0.01重量%以上0.1重量%以下、ニオブ(Nb)0.01重量%以上0.1重量%以下、クロム(Cr)0.01重量%以上0.5重量%以下、モリブデン(Mo)0.01重量%以上0.5重量%以下、及びニッケル(Ni)0.01重量%以上1.0重量%以下のうち、1つ以上の成分をさらに含む。
【0042】
一実施例において、ブランクを用いてホットスタンピング部品を製造するので、製造されたホットスタンピング部品も前述した成分を含む。
【0043】
炭素(C)は、鋼の強度、硬度を決定する主要元素であり、ホットスタンピング(または、熱間プレス)工程以後、鋼材の引張強度を確保する目的で添加されうる。また、炭素は、鋼材の焼入性特性を確保するための目的で添加されうる。一実施例において、炭素は、素地鋼板の全体重量に対して0.01重量%以上0.5重量%以下含まれる。炭素が素地鋼板の全体重量に対して0.01重量%未満含まれる場合、本発明の機械的強度を達成し難い。一方、炭素が素地鋼板の全体重量に対して0.5重量%超過含まれる場合、鋼材の靭性低下問題または鋼の脆性制御問題がもたらされうる。
【0044】
シリコン(Si)は、素地鋼板内のフェライト安定化元素として作用しうる。シリコンは、フェライトを清浄にすることで延性を向上させ、低温域炭化物形成を抑制することで、オーステナイト内の炭素濃化度を向上させる機能を遂行する。さらに、シリコンは、熱延、冷延、ホットスタンピング組織均質化(パーライト、マンガン偏析帯制御)及びフェライト微細分散の核心元素でもある。一実施例において、シリコンは、素地鋼板の全体重量に対して0.01重量%以上1.0重量%以下含まれる。シリコンが素地鋼板の全体重量に対して0.01重量%未満含まれる場合、前述した機能を発揮することが不十分にもなる。一方、シリコンが素地鋼板の全体重量に対して1.0重量%超過含まれる場合、熱延及び冷延負荷が増加し、熱延赤スケールが過多となり、接合性が低下しうる。
【0045】
マンガン(Mn)は、熱処理時の焼入性及び強度増加の目的で添加されうる。一実施例において、マンガンは、素地鋼板の全体重量に対して0.3重量%以上2.0重量%以下含まれる。マンガンが素地鋼板の全体重量に対して0.3重量%未満含まれる場合、焼入性不足によってホットスタンピング後、材質が不十分である(硬質相分率不足)可能性が高い。一方、マンガンが素地鋼板の全体重量に対して2.0重量%超過含まれる場合、マンガン偏析またはパーライト帯による延性及び靭性が低下し、曲げ性能低下の原因になり、不均質微細組織が発生してしまう。
【0046】
リン(P)は、偏析が容易な元素であり、鋼の靭性を阻害する元素でもある。一実施例において、リン(P)は、素地鋼板の全体重量に対して0超過0.1重量%以下含まれる。リンが素地鋼板の全体重量に対して前述した範囲で含まれる場合、鋼の靭性低下を免れうる。一方、リンが素地鋼板の全体重量に対して0.1重量%超過含まれる場合、工程中にクラックを誘発し、リン化鉄化合物が形成されて鋼の靭性が低下しうる。
【0047】
硫黄(S)は、加工性及び物性を阻害する元素でもある。一実施例において、硫黄は、素地鋼板の全体重量に対して0超過0.1重量%以下含まれる。硫黄が素地鋼板の全体重量に対して0.1重量%超過含まれる場合、熱間加工性が低下し、巨大介在物生成によってクラックなど表面欠陥が発生する。
【0048】
ボロン(B)は、マルテンサイト組織を確保することで、鋼材の焼入性及び強度を確保する目的で添加され、オーステナイト結晶粒成長温度の増加によって結晶粒微細化効果を有する。一実施例において、ボロンは、素地鋼板の全体重量に対して0.0001重量%以上0.005重量%以下含まれる。ボロンが素地鋼板の全体重量に対して前述した範囲で含まれる場合、硬質相粒界脆性発生を防止し、高靭性と曲げ性とを確保することができる。
【0049】
チタン(Ti)は、ホットスタンピング熱処理後、析出物形成による焼入性強化及び材質向上の目的で添加されうる。また、チタンは、高温でTi(C,N)などの析出相を形成し、オーステナイト結晶粒微細化に効果的に寄与する。一実施例において、チタンは、素地鋼板の全体重量に対して0.01重量%以上0.1重量%以下含まれる。チタンが素地鋼板の全体重量に対して前述した範囲で含まれる場合、性能低下が防止され、析出物の粗大化が防止され、鋼材の物性を容易に確保し、鋼材表面にクラックの発生が防止または最小化されうる。
【0050】
ニオブ(Nb)は、マルテンサイト(Martensite)パケットサイズ(Packet size)減少による強度及び靭性増加を目的で添加されうる。一実施例において、ニオブは、素地鋼板の全体重量に対して0.01重量%以上0.1重量%以下含まれる。ニオブが素地鋼板の全体重量に対して前述した範囲で含まれる場合、熱間圧延及び冷間圧延工程で鋼材の結晶粒微細化効果に優れ、製鋼/連鋳時、スラブのクラック発生及び製品の脆性破断発生を防止し、製鋼性粗大析出物の生成を最小化しうる。
【0051】
クロム(Cr)は、鋼の焼入性及び強度を向上させる目的で添加されうる。一実施例において、クロムは、素地鋼板の全体重量に対して0.01重量%以上0.5重量%以下含まれる。クロムが素地鋼板の全体重量に対して前述した範囲で含まれる場合、鋼の焼入性及び強度を向上させ、生産費増加と鋼材の靭性低下を防止することができる。
【0052】
モリブデン(Mo)は、熱間圧延及びホットスタンピングの間、析出物の粗大化抑制及び焼入性増大を通じて強度向上に寄与することができる。モリブデン(Mo)は、素地鋼板の全体重量に対して0.01重量%以上0.5重量%以下含まれる。モリブデンが素地鋼板の全体重量に対して前述した範囲で含まれるとき、熱間圧延及びホットスタンピングの間、析出物の粗大化抑制及び焼入性増大効果に優れる。
【0053】
ニッケル(Ni)は、焼入性及び強度確保目的で添加されうる。また、ニッケルは、オーステナイト安定化元素であり、オーステナイト変態制御によって延伸率向上に寄与する。一実施例において、ニッケルは、素地鋼板の全体重量に対して0.01重量%以上1.0重量%以下含まれる。ニッケルが素地鋼板の全体重量に対して0.01重量%未満含まれる場合、上述した効果の具現が不十分でもある。ニッケルが素地鋼板の全体重量に対して1.0重量%超過含まれる場合、靭性が低下し、冷間加工性が低下し、製品の製造費用が増加する。
【0054】
一実施例において、ブランク投入段階(S100)では、加熱炉内に投入されたブランクがローラに実装された後、移送方向に沿って移送されうる。
【0055】
図1及び
図2を参照すれば、ブランク投入段階(S100)以後に、加熱段階(S200)が遂行されうる。一実施例において、加熱段階(S200)は、多段加熱段階(S210)及び均熱加熱段階(S220)を含む。したがって、ブランク投入段階(S100)以後に、多段加熱段階(S210)と均熱加熱段階(S220)とがなされうる。多段加熱段階(S210)及び均熱加熱段階(S220)は、ブランクが加熱炉内に備えられた複数の区間を通過して加熱される段階でもある。
【0056】
一実施例において、加熱炉全体温度は、680℃~1000℃でもある。具体的には、多段加熱段階(S210)及び均熱加熱段階(S220)が遂行される加熱炉全体温度は、680℃~1000℃でもある。この際、多段加熱段階(S210)が遂行される加熱炉の温度は、680℃~Ac3でもあり、均熱加熱段階(S220)が遂行される加熱炉の温度は、Ac3~1000℃でもある。
【0057】
多段加熱段階(S210)では、ブランクが加熱炉内に備えられた複数の区間を通過して段階的に昇温されうる。加熱炉内に備えられた複数の区間のうち、多段加熱段階(S210)が遂行される区間は、複数個存在し、ブランクが投入される加熱炉の入口からブランクが取り出される加熱炉の出口方向に高くなるように、各区間別に温度が設定されてブランクが段階的に昇温されうる。
【0058】
多段加熱段階(S210)以後に、均熱加熱段階(S220)がなされうる。均熱加熱段階(S220)では、多段加熱されたブランクがAc3~1000℃の温度に設定された加熱炉の区間を通過しつつ熱処理されうる。望ましくは、均熱加熱段階(S220)では、多段加熱されたブランクを830℃~1000℃の温度で均熱加熱することができる。また、加熱炉内に備えられた複数の区間のうち、均熱加熱段階(S220)が遂行される区間は、少なくとも1つ以上である。
【0059】
図3は、本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法の加熱段階において、複数の区間を備えた加熱炉を説明するために示す図面である。
【0060】
図3を参照すれば、一実施例による加熱炉は、互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を具備する。さらに具体的には、加熱炉は、第1温度範囲T
1を有する第1区間P
1、第2温度範囲T
2を有する第2区間P
2、第3温度範囲T
3を有する第3区間P
3、第4温度範囲T
4を有する第4区間P
4、第5温度範囲T
5を有する第5区間P
5、第6温度範囲T
6を有する第6区間P
6、及び第7温度範囲T7を有する第7区間P
7を具備する。
【0061】
一実施例において、多段加熱段階(S210)では、ブランクが加熱炉内に定義された第1区間P1ないし第4区間P4を通過して段階的に多段加熱されうる。また、均熱加熱段階(S220)では、第1区間P1ないし第4区間P4で多段加熱されたブランクが第5区間P5ないし第7区間P7を通過して均熱加熱されうる。
【0062】
第1区間P1ないし第7区間P7は、順次に加熱炉内に配置されうる。第1温度範囲T1を有する第1区間P1は、ブランクが投入される加熱炉の入口と隣接し、第7温度範囲T7を有する第7区間P7は、ブランクが排出される加熱炉の出口と隣接しうる。したがって、第1温度範囲T1を有する第1区間P1が加熱炉の最初区間でもあり、第7温度範囲T7を有する第7区間P7が加熱炉の最後区間でもある。加熱炉の複数の区間のうち、第5区間P5、第6区間P6、及び第7区間P7は、多段加熱が遂行される区間ではない均熱加熱が遂行される区間でもある。
【0063】
加熱炉内に備えられた複数の区間の温度、例えば、第1区間P1ないし第7区間P7の温度は、ブランクが投入される加熱炉の入口からブランクが取り出される加熱炉の出口方向に増加しうる。但し、第5区間P5、第6区間P6及び第7区間P7の温度は、同一でもある。また、加熱炉内に備えられた複数の区間のうち、互いに隣接した2区間の間の温度差は、0℃より大きく、100℃以下でもある。例えば、第1区間P1と第2区間P2の温度差は、0℃より大きく、100℃以下でもある。
【0064】
一実施例において、第1区間P1の第1温度範囲T1は、680℃~870℃でもある。第2区間P2の第2温度範囲T2は、700℃~900℃でもある。第3区間P3の第3温度範囲T3は、750℃~930℃でもある。第4区間P4の第4温度範囲T4は、800℃~950℃でもある。第5区間P5の第5温度範囲T5は、Ac3~1000℃でもある。望ましくは、第5区間P5の第5温度範囲T5は、830℃以上1000℃以下でもある。第6区間P6の第6温度範囲T6、及び第7区間P7の第7温度範囲T7は、第5区間P5の第5温度範囲T5と同一でもある。
【0065】
図3では、一実施例による加熱炉が互いに異なる温度範囲を有する7個の区間を備えていると図示されているが、本発明がそれに限定されるものではない。加熱炉内には、互いに異なる温度範囲を有する5個、6個、または8個などの区間が備えられうる。
【0066】
一実施例において、多段加熱段階(S210)では、ブランクが加熱炉内に定義された複数の区間(例えば、第1区間P1ないし第4区間P4)を通過して段階的に加熱されうる。
【0067】
多段加熱段階(S210)後に、均熱加熱段階(S220)が行われる。均熱加熱段階(S220)は、加熱炉の複数の区間のうち、最後の部分で行われる。一実施例において、均熱加熱段階(S220)は、加熱炉の第5区間P5、第6区間P6、及び第7区間P7で行われる。加熱炉内に複数の区間が備えられる場合、1つの区間の長さが長ければ、前記区間内で温度変化が生じるなどの問題点が存在しうる。したがって、均熱加熱段階(S220)が遂行される区間は、第5区間P5、第6区間P6、及び第7区間P7に区分されるが、第5区間P5、第6区間P6、及び前記第7区間P7は、加熱炉内で同じ温度範囲を有することができる。
【0068】
均熱加熱段階(S220)では、多段加熱されたブランクがAc3ないし1,000℃の温度で均熱加熱されうる。望ましくは、均熱加熱段階(S220)では、多段加熱されたブランクが830℃~1,000℃の温度で均熱加熱されうる。
【0069】
一実施例において、加熱段階(S200)が多段加熱段階(S210)及び均熱加熱段階(S220)に備えられることで、加熱炉の温度を段階的に設定し、加熱炉のエネルギー効率を向上させうる。
【0070】
一実施例において、加熱炉は、ブランクの移送経路に沿って20m~40mの長さを有する。加熱炉は、互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を備え、複数の区間のうち、ブランクが多段加熱される区間の長さD1と、複数の区間のうち、ブランクが均熱加熱される区間の長さD2の比は、1:1~4:1を満足する。加熱炉内でブランクが均熱加熱される区間の長さが増加してブランクが多段加熱される区間の長さD1とブランクが均熱加熱される区間の長さD2との比が1:1を超過する場合、均熱加熱区間においてブランク内への水素浸透量が増加し、遅延破断が増加する。一方、ブランクが均熱加熱される区間の長さが減少してブランクが多段加熱される区間の長さD1とブランクが均熱加熱される区間の長さD2との比が4:1未満である場合、均熱加熱区間(時間)が十分に確保されず、ホットスタンピング部品の製造工程によって製造されたホットスタンピング部品の強度が不均一でもある。
【0071】
一実施例において、加熱炉内に備えられた複数の区間のうち、均一加熱区間の長さは、加熱炉の全長の20%~50%でもある。
【0072】
図1を参照すれば、加熱段階(S200)後に移送段階(S300)、成形段階(S400)、及び冷却段階(S500)がさらに遂行されうる。
【0073】
一実施例において、移送段階(S300)は、加熱されたブランクを加熱炉から金型に移送する段階でもある。この際、移送段階(S300)では、加熱されたブランクが金型に移送されながら、大気温度(または、常温)で冷却することができる。加熱されたブランクは、移送のうち、空冷されうる。加熱されたブランクが空冷されなければ、金型進入温度(例えば、成形開始温度)が高くなり、製造されたホットスタンピング部品の表面にシワ(または、屈曲)が発生しうる。また、冷媒使用時、後続工程(ホットスタンピング)に影響を与えてしまうので、移送中に加熱されたブランクが空冷されることが望ましい。
【0074】
一実施例において、成形段階(S400)は、移送されたブランクをホットスタンピングして成形体を成形する段階でもある。具体的には、成形段階(S400)では、金型でブランクを加圧して成形体を成形することができる。
【0075】
一実施例において、冷却段階(S500)は、成形された成形体を冷却する段階でもある。冷却段階(S500)では、ブランクを加圧した金型内で行われる。
【0076】
図4は、加熱されたブランクが経時的に冷却される挙動を示す図面である。具体的には、
図4は、加熱段階(S200)を通じて加熱されたブランクが加熱炉から取り出された後、移送段階(S300)、成形段階(S400)、及び冷却段階(S500)を経る間の冷却挙動を示すグラフである。
【0077】
図4を参照すれば、加熱段階(S200)を通じて加熱されたブランクが加熱炉から取り出された後、移送段階(S300)、成形段階(S400)、及び冷却段階(S500)を経る間、冷却されうる。
【0078】
一実施例において、加熱されたブランクは、移送段階(S300)で大気温度(または、常温)で冷却されうる。具体的には、移送段階(S300)では、加熱段階(S200)を通じて加熱されたブランクが加熱炉から取り出された後、金型に移送される間、大気温度(または、常温)で冷却されうる。
【0079】
次いで、成形段階(S400)において、大気温度(または、常温)で冷却されたブランクの成形が開始される。この際、ブランクの成形開始温度を成形開始温度TAと称する。すなわち、移送段階(S300)では、加熱段階(S200)を通じて加熱されたブランクは、加熱炉から取り出された後、大気温度(または、常温)で成形開始温度TAまで冷却(または、空冷)されうる。
【0080】
一実施例において、成形開始温度TAは、500℃以上700℃以下でもある。成形開始温度TAが500℃未満である場合、成形開始温度TAが過度に低く、ブランクの成形性が低下し、製造されたホットスタンピング部品が所望の組織と物性とを有することができない。一方、成形開始温度TAが700℃超過である場合、製造されたホットスタンピング部品の表面にシワ(または屈曲)が発生する。また、ブランクのメッキ層が金型に焼着されうる。したがって、成形開始温度TAが500℃以上700℃以下である場合、ブランクの成形性が向上し、製造されたホットスタンピング部品が所望の組織と物性とを有し、製造されたホットスタンピング部品の表面におけるシワ(または、屈曲)の発生が防止または最小化されうる。
【0081】
次いで、一実施例において、成形段階(S400)において、移送段階(S300)を通じて金型に移送されたブランクを成形して成形体を形成し、冷却段階(S500)で成形された成形体を冷却することができる。この際、成形された成形体を冷却する冷却段階(S500)は、金型内で行われる。
【0082】
具体的には、金型で最終部品形状に成形すると共に、成形体を冷却して最終製品が形成されうる。金型には、内部に冷媒が循環する冷却チャネルが備えられうる。金型に備えられた冷却チャネルを介して供給される冷媒の循環によって成形体を急冷させうる。この際、板材のスプリングバック(spring back)現象を防止すると共に、所望の形状を保持するためには、金型を閉状態で加圧しながら、急冷を実施しうる。成形体を成形及び冷却操作するに当たって、マルテンサイト終了温度まで平均冷却速度を少なくとも10℃/s以上に冷却することができる。
【0083】
一実施例において、冷却段階(S500)が終了する金型冷却終了温度は、常温以上200℃以下でもある。金型冷却終了温度が常温未満である場合、製造工程の生産性が低下する。一方、金型冷却終了温度が200℃超過である場合、製造されたホットスタンピング部品が常温で空冷されるが、この際、ホットスタンピング部品にねじれが発生し、所望の材質確保し難い。したがって、冷却段階(S500)が終了する金型冷却終了温度が常温以上約200℃以下の範囲を満足する場合、製造工程の生産性を向上させ、製造されたホットスタンピング部品が常温で空冷され、ホットスタンピング部品のねじれが防止または最小化されうる。
【0084】
図5は、素材厚さによる加熱時間、及び加熱温度による加熱時間を示す図面である。具体的には、
図5は、素材厚さによる最小加熱時間、及び加熱温度による最小加熱時間を説明するために示すグラフである。
図5において、加熱温度は、均熱加熱段階(S220)の均熱加熱温度を意味し、加熱時間は、加熱段階(S200)の全体加熱時間を意味する。
【0085】
図1、
図2及び
図5を参照すれば、素材厚さが同一である場合、加熱温度が減少するほど最小加熱時間が増加することを確認しうる。また、加熱温度が同一である場合、素材厚さが増加するほど最小加熱時間が増加することを確認しうる。
【0086】
加熱段階(S200)においてブランクが加熱される加熱時間(例えば、全体加熱時間)が短ければ、ブランクで十分な相変態がなされない。一方、加熱段階(S200)におけるブランクの加熱時間が長すぎると、オーステナイト結晶粒粗大化、耐水素脆性低下が発生するだけではなく、メッキ層が厚くなり、溶接性が低下しうる。したがって、加熱段階(S200)での加熱時間を調節する必要がある。但し、加熱段階(S200)での加熱時間を調節するには、加熱温度及びブランクの厚さ(例えば、素材の厚さ)だけではなく、加熱炉の密閉度、雰囲気、熱源などによって発生する加熱炉内の熱損失及びブランクの成分など多様な変数を考慮しなければならない。
【0087】
そこで、本発明者は、過度な反復実験を経て加熱時間を容易に制御することができる数式1を導出した。一実施例において、加熱段階(S200)でのブランクの加熱時間は、下記数式1を満足する。
【数4】
数式1において、λ
nは、加熱時間(s)、a
nは、加熱炉熱損失補正係数、T
nは、加熱温度(℃)、b
nは、Ac3温度補正係数、c
nは、高温素材厚さ敏感度補正係数、tは、素材厚さ(mm)である。この際、素材は、ブランクを意味し、加熱時間の単位sは、秒を意味する。
【0088】
加熱炉タイプ別に互いに異なる熱源が用いられるので、加熱炉タイプ別に発生する熱損失も異なる。anは、加熱炉の熱損失を考慮した補正係数であって、約-0.60以上約-0.55以下の値を有する。この際、anは、s/(℃xmm)の単位を有する。
【0089】
各素材の成分が互いに異なる場合、相変態の発生温度が互いに異なる。bnは、素材成分によるAc3温度差を考慮した補正係数であって、約700以上約900以下の値を有する。この際、bnは、s/mmの単位を有する。
【0090】
素材の厚さによって素材内部から伝達される熱伝導率(または、熱伝逹量)が異なっている。cnは、高温における素材の厚さによる熱伝導率(または、熱伝逹量)差を考慮した補正係数であって、約0.7以上約0.9以下の値を有しうる。この際、高温は、600℃以上を意味しうる。但し、高温は、500℃以上を意味してもよく、700℃以上を意味してもよい。
【0091】
加熱温度Tnは、均熱加熱段階(S220)の均熱加熱温度を意味し、加熱温度Tnは、約Ac3以上約1000℃以下の値を有する。また、素材厚さtは、約1mm以上約2.6mm以下の値を有しうる。
【0092】
一実施例において、数式1による加熱時間λnは、約100s以上約900s以下でもある。加熱時間λnが100s未満である場合、ブランクで十分な相変態がなされない。一方、加熱時間λnが900s超過である場合、オーステナイト結晶粒粗大化、耐水素性低下が発生するだけではなく、メッキ層が厚くなり、溶接性が低下しうる。したがって、加熱時間λnが約100s以上約900s以下の範囲を満足する場合、ブランクで十分な相変態がなされ、オーステナイト結晶粒粗大化の発生が防止または最小化され、耐水素脆性及び/または溶接性の低下が防止または最小化されうる。
【0093】
図6は、素材厚さによる空冷時間、及び加熱温度による空冷時間を示す図面である。具体的には、
図6は、素材厚さによる最大許容空冷時間、及び加熱温度による最大許容空冷時間を説明するために示すグラフである。
図6において、加熱温度が高いということは、加熱炉取出温度が高いということを意味する。
【0094】
図1、
図2及び
図6を参照すれば、同一素材の厚さにおいて加熱温度が減少するほど、最大許容空冷時間が増加することを確認しうる。また、同じ加熱温度で素材の厚さが増加するほど、最大許容空冷時間が増加することを確認しうる。
【0095】
加熱されたブランクが常温に過度に露出される場合、生産性が低下するだけではなく、空冷中にブランクで相変態が発生して成形性が低下し、所望の材質を確保し難い。一方、加熱されたブランクの常温露出時間が短い場合、過度に高い温度で成形が開始されて製造されたホットスタンピング部品にシワ(または、屈曲)が発生する。また、ブランクのメッキ層が金型に焼着されうる。したがって、移送段階(S300)での空冷時間を調節する必要がある。但し、移送段階(S300)での空冷時間を調節するには、加熱温度及びブランクの厚さ(例えば、素材の厚さ)だけではなく、ブランクの成分、ブランクの厚さ、メッキ量及び表面放射率による熱伝導度、熱伝導率及び熱伝逹量、及びブランクの加熱炉取出温度と大気温度など多様な変数を考慮しなければならない。
【0096】
そこで、本発明者は、過度な反復実験を経て空冷時間を容易に制御することができる数式2を導出した。一実施例において、移送段階(S300)でのブランクの空冷時間は、下記数式2を満足する。
【数5】
数式2においてλ
tは、空冷時間(s)、a
tは、加熱炉取出温度及び大気温度補正係数、T
nは、加熱温度(℃)、b
tは、素材成分補正係数、c
nは、高温素材厚さ敏感度補正係数、tは、素材厚さ(mm)である。この際、素材は、ブランクを意味し、空冷時間の単位sは、秒を意味する。
【0097】
atは、加熱されたブランクの加熱炉取出温度及び大気温度を考慮した補正係数であって、約0.0160以上約0.0165以下の値を有する。この際、atは、s/(℃xmm)の単位を有する。
【0098】
btは、各素材が成分が互いに異なる場合を考慮した補正係数であって、約-10.0以上約0.5以下の値を有する。この際、btは、s/mmの単位を有する。
【0099】
また、素材の厚さによって素材内部から伝達される熱伝逹量が異なっている。ctは、高温における素材の厚さによる熱伝逹量差を考慮した補正係数であって、約0.7以上約0.9以下の値を有する。この際、高温は、600℃以上を意味する。但し、高温は、500℃以上を意味するか、700℃以上を意味する。
【0100】
加熱温度Ttは、均熱加熱段階(S220)の均熱加熱温度を意味し、加熱温度Ttは、約Ac3以上約1000℃以下の値を有する。この際、加熱温度Ttは、加熱炉取出温度を意味することもできる。また、素材厚さtは、約1mm以上約2.6mm以下の値を有する。
【0101】
一実施例において、数式2による空冷時間λtは、約5s以上約20s以下でもある。空冷時間λtが5s未満である場合、ブランクの成形が開始される成形開始温度が過度に高く、ブランクの成形が高い温度で進められて製造されたホットスタンピング部品にシワ(または、屈曲)が発生し、設備上、5s未満の空冷時間λtを具現し難い。一方、空冷時間λtが20s超過である場合、生産性が低下するだけではなく、ブランクが移送される過程においてブランクで相変態が発生してブランクの成形性が低下し、製造されたホットスタンピング部品が所望の材質を有しない。したがって、空冷時間λtが約5s以上約20s以下の範囲を満足する場合、ブランクの成形性及び工程の生産性を向上させ、製造されたホットスタンピング部品が所望の材質を持たせる。
【0102】
図7は、素材厚さによる金型冷却時間、及び加圧力による金型冷却時間を示す図面である。具体的には、
図7は、素材厚さによる最小許容金型冷却時間、及び加圧力による最小許容金型冷却時間を説明するために示すグラフである。
【0103】
図1、
図2及び
図7を参照すれば、素材厚さが同一である場合、加圧力が増加するほど、最小許容金型冷却時間が減少することを確認しうる。また、加圧力が同一である場合、素材の厚さが増加するほど、最小許容金型冷却時間が増加することを確認しうる。
【0104】
冷却段階(S500)で成形された成形体が冷却される金型冷却時間が短ければ、過度に高温で金型冷却が終了して製造されたホットスタンピング部品が常温で長時間空冷され、空冷中に製造されたホットスタンピング部品にねじれが発生して所望の寸法を確保し難い。一方、冷却段階(S500)で成形された成形体が冷却される金型冷却時間が長ければ、生産性が低下する。したがって、冷却段階(S500)での金型冷却時間を調節する必要がある。但し、冷却段階(S500)での冷却時間を調節するためには、金型の加圧力及びブランクの厚さ(例えば、素材の厚さ)だけではなく、金型の熱伝導率、ブランクの成分による冷却挙動、ブランク成分による硬化能など多様な変数を考慮しなければならない。
【0105】
そこで、本発明者は、過度な反復実験を経て金型冷却時間を容易に制御することができる数式3を導出した。一実施例において、冷却段階(S500)での成形体の金型冷却時間は、下記数式3を満足する。
【数6】
数式3においてλ
qは、金型冷却時間(s)、a
qは、金型補正係数、Pは、加圧力(MPa)、b
qは、素材硬化能補正係数、c
qは、低温素材厚さ敏感度補正係数、tは、素材厚さ(mm)である。この際、素材は、ブランクを意味し、金型冷却時間の単位sは、秒を意味する。
【0106】
金型の素材別に熱伝導率が異なってもいる。また、成形位置別(平坦部、エッジ部、側壁部など)変形量差によって同一部品内に発生する局所的な熱伝導率が異なってもいる。aqは、金型の熱伝導率及び部品内に発生する局所的な熱伝導率を考慮した補正係数であって、約-1.0以上約-0.2以下の値を有する。この際、aqは、s/(MPaxmm)の単位を有する。
【0107】
各素材の成分が互いに異なる場合、それを含む成形体の連続冷却変態(Continuous Cooling Transformation, CCT)曲線が互いに異なり、マルテンサイト変態開始温度が互いに異なる。bqは、素材成分による成形体の連続冷却変態(Continuous Cooling Transformation, CCT)曲線及び/またはマルテンサイト変態開始温度を考慮した補正係数であって、約11以上約15以下の値を有する。この際、bqは、s/mmの単位を有する。
【0108】
素材の厚さによって素材内部から伝達される熱伝逹量が異なってもいる。Cqは、低温で素材の厚さによる熱伝逹量差を考慮した補正係数であって、約1.00以上約1.05以下の値を有する。この際、低温は、600℃以下を意味する。但し、低温は、500℃以下を意味するか、700℃以下を意味する。
【0109】
加圧力Pは、金型冷却工程での最小加圧力でもある。具体的には、加圧力Pは、ブランクの部位(例えば、平坦部、エッジ部、側壁部など)別に加えられる加圧力のうち、最小値でもあり、金型の力が垂直に作用しない部分(例えば、側壁部)での加圧力でもある。例えば、加圧力Pは、約0.1MPa以上の値を有する。実際工程において、加圧力Pは、約5MPa以上でもある。但し、加圧力Pが5MPa以上である場合にも、金型冷却時間λqを容易に導出するために数式3での加圧力Pは、5MPaの値を有する。
【0110】
また、素材厚さtは、約1mm以上約2.6mm以下の値を有する。
【0111】
一実施例において、数式3による金型冷却時間λqは、約6s以上約40s以下でもある。金型冷却時間λqが6s未満である場合、高い温度で金型冷却が終了して長い空冷を伴い、これにより、製造されたホットスタンピング部品にねじれが発生して所望の寸法が確保されない。一方、金型冷却時間λqが40s超過である場合、生産性が低下しうる。したがって、金型冷却時間λqが約6s以上約40s以下の範囲を満足する場合、ブランクの温度が常温以上200℃以下であるとき、金型冷却が終了して製造されたホットスタンピング部品のねじれが防止または最小化され、製造工程の生産性が向上しうる。
【0112】
図8は、素材厚さ、加熱時間、空冷時間及び金型冷却時間を媒介変数として導出されたプロセスウィンドウを示す図面である。
図8のプロセスウィンドウは、素材厚さ、加熱時間、空冷時間及び金型冷却時間を媒介変数として導出されたグラフである。
【0113】
図1及び
図8を参照すれば、ホットスタンピング部品の製造方法は、ブランク投入段階(S100)、加熱段階(S200)、移送段階(S300)、成形段階(S400)、及び冷却段階(S500)を含む。
【0114】
一実施例において、前述した数式1を用いて加熱段階(S200)での加熱時間を容易に導出し、前述した数式2を用いて移送段階(S300)での空冷時間を容易に導出し、前述した数式3を用いて冷却段階(S500)での金型冷却時間を容易に導出可能である。また、数式1、数式2及び数式3を通じてそれぞれ導出された加熱時間、空冷時間、及び金型冷却時間と素材厚さを媒介変数としてプロセスウィンドウが導出されうる。すなわち、加熱段階(S200)での加熱時間、移送段階(S300)での空冷時間、冷却段階(S500)での金型冷却時間及び素材厚さを媒介変数としてプロセスウィンドウが導出されうる。この際、プロセスウィンドウで素材厚さは、約1.0mm以上約2.6mm以下であり、加熱時間は、約100s以上約900s以下であり、空冷時間は、約5s以上約20s以下であり、金型冷却時間は、約6s以上約40s以下でもある。
【0115】
一実施例において、素材厚さ、加熱時間、空冷時間、及び金型冷却時間を媒介変数として加熱段階(S200)、移送段階(S300)及び冷却工程(S500)に対する統合型パラメータウィンドウを導出することで、ホットスタンピング工程前に柔軟な工程設計を誘導し、製造されたホットスタンピング部品の品質を向上させ、製造されたホットスタンピング部品の品質管理をさらに容易にしうる。
【0116】
一実施例において、本発明の一実施例を通じて製造されたホットスタンピング部品は、約1350MPa以上約2300MPa未満の引張強度を有する。望ましくは、製造されたホットスタンピング部品は、約1350MPa以上約1680MPa未満の引張強度を有する。または、製造されたホットスタンピング部品は、約1680MPa以上約2300MPa未満の引張強度を有することができる。
【0117】
本発明は、図面に図示された実施例を参照して説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野で通常の知識を有する者であれば、それにより、多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
【国際調査報告】