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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ホットスタンピング部品
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20231130BHJP
   C22C 38/38 20060101ALI20231130BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20231130BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20231130BHJP
   C21D 9/42 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
C22C38/00 301S
C22C38/00 301A
C22C38/38
C21D1/18 Q
C22C38/00 301T
C21D9/00 A
C21D9/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575482
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 KR2022001502
(87)【国際公開番号】W WO2023075035
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0147068
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510307299
【氏名又は名称】ヒュンダイ スチール カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョジン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジンホ
(72)【発明者】
【氏名】コン、ジョヨル
(72)【発明者】
【氏名】ユン、スンチェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、スンピル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ヒョンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ギュヨン
【テーマコード(参考)】
4K042
【Fターム(参考)】
4K042AA25
4K042BA01
4K042BA06
4K042BA07
4K042BA08
4K042CA02
4K042CA06
4K042CA08
4K042CA09
4K042CA12
4K042DB07
4K042DC01
4K042DC02
4K042DC03
4K042DC05
4K042DD01
4K042DE05
4K042DE07
4K042EA03
(57)【要約】
本発明は、引っ張り強度が1680Mpa以上であるホットスタンピング部品において、ホットスタンピング部品は、初期オーステナイト結晶粒(PAG, prior austenite grain)を含む微細組織を備え、前記初期オーステナイト結晶粒の平均粒径は、25μm以下である、ホットスタンピング部品を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引っ張り強度が1680Mpa以上であるホットスタンピング部品において、
前記ホットスタンピング部品は、初期オーステナイト結晶粒(PAG, prior austenite grain)を含む微細組織を備え、
前記初期オーステナイト結晶粒の平均粒径は、25μm以下である、ホットスタンピング部品。
【請求項2】
前記微細組織の界面を形成する結晶粒界(grain boundary)であって、結晶粒角が0°以上15°以下である小傾角粒界及び結晶粒角が15°超過180°以下である大傾角粒界を含み、
前記小傾角粒界の分率は、20%以上である、請求項1に記載のホットスタンピング部品。
【請求項3】
前記大傾角粒界は、規則的な原子配列を有する特殊結晶粒界及び不規則的な原子配列を有するランダム結晶粒界を含む、請求項2に記載のホットスタンピング部品。
【請求項4】
前記特殊結晶粒界の分率は、5%以上10%以下である、請求項3に記載のホットスタンピング部品。
【請求項5】
前記ランダム結晶粒界の分率は、70%以下である、請求項3に記載のホットスタンピング部品。
【請求項6】
前記ホットスタンピング部品内で95%以上の面積分率を有するマルテンサイト相を含む、請求項1に記載のホットスタンピング部品。
【請求項7】
前記ホットスタンピング部品は、ベース鋼板を含み、
前記ベース鋼板は、前記ベース鋼板の全体重量に対して炭素(C):0.28重量%~0.50重量%、シリコン(Si):0.15重量%~0.7重量%、マンガン(Mn):0.5重量%~2.0重量%、リン(P):0.03重量%以下、硫黄(S):0.01重量%以下、クロム(Cr):0.1重量%~0.6重量%、ホウ素(B):0.001重量%~0.005重量%、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)のうち、少なくとも1つ以上、及び残りの鉄(Fe)とその他不可避な不純物を含む、請求項1に記載のホットスタンピング部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットスタンピング部品に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に環境規制、及び燃費規制が強化されながら、さらに軽い車両素材に対する必要性が増加している。これにより、超高強力鋼とホットスタンピング鋼に対する研究開発が活発になされている。ここにおいて、ホットスタンピング工程は、普遍的に加熱/成形/冷却/トリムからなり、工程中、素材の相変態、及び微細組織の変化を利用することになる。
【0003】
最近、ホットスタンピング工程によって製造されたホットスタンピング部品で発生する遅延破断、耐食性、及び溶接性を向上させようとする研究が活発に進められている。それと係わる技術としては、大韓民国特許公開公報第10-2018-0095757号(発明の名称:ホットスタンピング部品の製造方法)がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、腐食反応による水素誘起応力腐食亀裂(hydrogen induced stress corrosion cracking)抵抗性が向上したホットスタンピング部品を提供することである。
【0005】
しかし、そのような課題は、例示的なものであり、それにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、引っ張り強度が1680Mpa以上であるホットスタンピング部品において、前記ホットスタンピング部品は、初期オーステナイト結晶粒(PAG, prior austenite grain)を含む微細組織を備え、前記初期オーステナイト結晶粒の平均粒径は、25μm以下である、ホットスタンピング部品が提供される。
【0007】
一実施例によれば、前記微細組織の界面を形成する結晶粒界(grain boundary)として、結晶粒角が0°以上15°以下である小傾角粒界及び結晶粒角が15°超過180°以下である大傾角粒界を含み、前記小傾角粒界の分率は、20%以上でもある。
【0008】
一実施例によれば、前記大傾角粒界は、規則的な原子配列を有する特殊結晶粒界及び不規則的な原子配列を有するランダム結晶粒界を含む。
【0009】
一実施例によれば、前記特殊結晶粒界の分率は、5%以上10%以下でもある。
【0010】
一実施例によれば、前記ランダム結晶粒界の分率は、70%以下でもある。
【0011】
一実施例によれば、前記ホットスタンピング部品内で95%以上の面積分率を有するマルテンサイト相を含む。
【0012】
一実施例によれば、前記ホットスタンピング部品は、ベース鋼板を含み、前記ベース鋼板は、前記ベース鋼板の全体重量に対して炭素(C):0.28重量%~0.50重量%、シリコン(Si):0.15重量%~0.7重量%、マンガン(Mn):0.5重量%~2.0重量%、リン(P):0.03重量%以下、硫黄(S):0.01重量%以下、クロム(Cr):0.1重量%~0.6重量%、ホウ素(B):0.001重量%~0.005重量%、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)のうち、少なくとも1つ以上、及び残りの鉄(Fe)とその他不可避な不純物を含む。
【発明の効果】
【0013】
前述したような本発明の一実施例によれば、水素誘起応力腐食亀裂抵抗性が向上したホットスタンピング部品を具現することができる。しかしながら、そのような効果によって本発明の範囲が限定されるものではないということはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の断面一部を拡大したイメージである。
図2】本発明の一実施例によるホットスタンピング部品を電子後方散乱回折(EBSD:electron back scattered diffraction)分析したイメージである。
図3】本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の断面一部を拡大したイメージである。
図4】本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の微細組織が特殊結晶粒界をなす状態を示す図面である。
図5】本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
図6図5のブランク加熱段階を説明するための図面である。
図7】ホットスタンピング部品製造の工程時間及び温度によるホットスタンピング部品内の初期オーステナイト結晶粒サイズを測定したイメージである。
図8図7の実施例及び比較例の初期オーステナイト結晶粒サイズを図式化したグラフである。
図9】実施例及び比較例それぞれに係わる4点屈曲試験の結果を示すイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施例を有することができるところ、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明に詳細に説明する。本発明の効果、特徴、及びそれらを達成する方法は、図面と共に詳細に後述されている実施形態を参照すれば、明確になるであろう。しかしながら、本発明は、以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、多様な形態にも具現される。
【0016】
以下、添付された図面を参照して本発明の実施例を詳しく説明し、図面を参照して説明するとき、同一であるか、あるいは対応する構成要素は、同一図面符号を付し、それに係わる重複説明は、省略する。
【0017】
本明細書において、第1、第2のような用語は、限定的な意味ではなく、1つの構成要素を、他の構成要素と区別する目的で使用されている。
【0018】
本明細書において、単数の表現は、文脈上、明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0019】
本明細書において、「含む」または「有する」というような用語は、明細書上に記載された特徴または構成要素が存在するということを意味するものであり、1以上の他の特徴または構成要素が付加される可能性を事前に排除するものではない。
本明細書において、膜、領域、構成要素のような部分が、他の部分の「上」または「上部」にあるとするとき、他の部分の真上にある場合だけではなく、その中間に、他の膜、領域、構成要素などが介在されている場合も含む。
【0020】
本明細書において、膜、領域、構成要素などが連結されているとするとき、膜、領域、構成要素が直接連結されている場合、または/及び膜、領域、構成要素の中間に、他の膜、領域、構成要素が介在され、間接的に連結されている場合も含む。例えば、本明細書において、膜、領域、構成要素などが電気的に連結されたとするとき、膜、領域、構成要素などが直接電気的に連結された場合、及び/またはその中間に他の膜、領域、構成要素などが介在され、間接的に電気的に連結されている場合を示す。
【0021】
本明細書において、「A及び/またはB」は、Aであるか、Bであるか、あるいはA及びBである場合を示す。そして、「A及びBのうち少なくとも一つ」は、Aであるか、Bであるか、あるいはA及びBである場合を示す。
【0022】
本明細書において、x軸、y軸及びz軸は、直交座標系上の3つの軸に限定されるものではなく、それを含む広い意味にも解釈される。例えば、x軸、y軸及びz軸は、互いに直交してもよいが、互いに直交しない、互いに異なる方向を称する場合もある。
【0023】
本明細書において、ある実施形態が異なって具現可能である場合、特定の工程順序は、説明される順序と異なるようにも遂行される。例えば、連続して説明される2つの工程が、実質的に同時にも遂行され、説明される順序と、反対の順序にも進められる。
【0024】
図面では、説明の便宜上、構成要素の大きさが誇張されたり、縮小されたりしている。例えば、図面に示されている各構成の大きさ及び厚みは、説明の便宜のために任意に示されているので、本発明は、必ずしも図示されたところに限定されるものではない。
【0025】
図1は、本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の断面一部を拡大したイメージである。
【0026】
図1を参照すれば、本発明の一実施例によるホットスタンピング部品100は、1680Mpa以上の引っ張り強度と、950MPa以上の降伏強度を有しうる。ベース鋼板、及びベース鋼板の少なくとも一面を被覆するメッキ層を含むことができる。
【0027】
メッキ層は、例えば、アルミニウム(Al)を含む。その場合、メッキ層は、ベース鋼板100のFeとメッキ層のAlとが相互拡散され、アルミニウム-鉄(Al-Fe)及びアルミニウム-鉄-シリコン(Al-Fe-Si)化合物を含む。
【0028】
ベース鋼板は、所定の合金元素を所定含量含むように鋳造されたスラブに対して熱延工程及び/または冷延工程を進めて製造された鋼板でもある。一実施例において、ベース鋼板は、炭素(C)、シリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、クロム(Cr)、ホウ素(B)及び残部の鉄(Fe)とその他不可避な不純物を含む。また、一実施例において、ベース鋼板は、添加剤としてチタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)のうち、少なくともいずれか1つをさらに含む。他の実施例において、ベース鋼板は、所定含量のカルシウム(Ca)をさらに含む。
【0029】
炭素(C)は、ベース鋼板内において、オーステナイト安定化元素として作用する。炭素は、ベース鋼板の強度及び硬度を決定する主要元素であり、ホットスタンピング工程後、ベース鋼板の引っ張り強度及び降伏強度(例えば、1,680MPa以上の引っ張り強度及び950MPa以上の降伏強度)を確保し、焼き入れ性特性を確保するための目的で添加される。そのような炭素は、ベース鋼板の全体重量に対して0.28wt%~0.50wt%で含まれる。炭素の含量が0.28wt%未満である場合、硬質相(マルテンサイトなど)確保が困難であり、ベース鋼板の機械的強度を満足させ難い。それと反対に、炭素の含量が0.50wt%を超過する場合、ベース鋼板の脆性発生または曲げ性能低減の問題が引き起こされてしまう。
【0030】
シリコン(Si)は、ベース鋼板内において、フェライト安定化元素として作用する。シリコン(Si)は、固溶強化元素として、ベース鋼板の強度を向上させ、低温域炭化物の形成を抑制することで、オーステナイト内の炭素濃化度を向上させる。また、シリコンは、熱延、冷延、熱間プレス組織均質化(パーライト、マンガン偏析帯制御)及びフェライト微細分散の核心元素である。シリコンは、マルテンサイト強度不均質制御元素として作用し、衝突性能を向上させる役割を行う。そのようなシリコンは、ベース鋼板の全体重量に対して0.15wt%~0.7wt%含まれうる。シリコンの含量が0.15wt%未満である場合、上述した効果が得難く、最終ホットスタンピングマルテンサイト組織において、セメンタイト形成及び粗大化が発生し、ベース鋼板の均一化効果が微々たるものであり、Vベンディング角を確保することができなくなる。それと反対に、シリコンの含量が0.7wt%を超過する場合、熱延、冷延負荷が増加し、熱延赤スケールが過多となり、ベース鋼板のメッキ特性が低下してしまう。
【0031】
マンガン(Mn)は、ベース鋼板内において、オーステナイト安定化元素として作用する。マンガンは、熱処理時、焼き入れ性及び強度増加目的で添加される。そのようなマンガンは、ベース鋼板の全体重量に対して0.5wt%~2.0wt%含まれうる。マンガンの含量が0.5wt%未満である場合、硬化能効果が不十分であり、焼き入れ性が不十分であり、ホットスタンピング後、成型品内の硬質相分率が不十分なものともなる。一方、マンガンの含量が2.0wt%を超過する場合、マンガン偏析またはパーライトバンドによる軟性及び靭性が低下し、曲げ性能低下の原因になり、不均質微細組織が発生しうる。
【0032】
リン(P)は、ベース鋼板の靭性低下を防止するために、ベース鋼板の全体重量に対して0超過0.03wt%以下で含まれうる。リンの含量が0.03wt%を超過する場合、リン化鉄化合物が形成され、靭性及び溶接性が低下し、製造工程中、ベース鋼板にクラックが誘発されうる。
【0033】
硫黄(S)は、ベース鋼板の全体重量に対し、0超過0.01wt%以下含まれうる。硫黄の含量が0.01wt%を超過すれば、熱間加工性、溶接性及び衝撃特性が低下し、巨大介在物生成により、クラックのような表面欠陥が生じうる。
【0034】
クロム(Cr)は、ベース鋼板の焼き入れ性及び強度を向上させる目的で添加される。クロムは、析出硬化を通じる結晶粒微細化及び強度確保を可能にする。そのようなクロムは、ベース鋼板の全体重量に対して0.1wt%~0.6wt%含まれうる。クロムの含量が0.1wt%未満である場合、析出硬化効果が低調であり、それと反対に、クロムの含量が0.6wt%を超過する場合、Cr系析出物及びマトリックス固溶量が増加して靭性が低下し、原価上昇によって生産費が増加してしまう。
【0035】
ホウ素(B)は、フェライト、パーライト及びベイナイト変態を抑制し、マルテンサイト組織を確保することで、ベース鋼板の焼き入れ性及び強度を確保する目的で添加される。また、ホウ素は、結晶粒界に偏析され、粒界エネルギーを低め、焼き入れ性を増加させ、オーステナイト結晶粒成長温度の上昇により、結晶粒微細化効果を有する。そのようなホウ素は、ベース鋼板の全体重量に対して0.001wt%~0.005wt%で含まれうる。ホウ素が前記範囲に含まれるとき、硬質相粒界脆性発生を防止し、高靭性と曲げ性とを確保することができる。ホウ素の含量が0.001wt%未満である場合、焼き入れ性効果が不足し、それと反対に、ボロンの含量が0.005wt%を超過する場合、固溶度が低く、熱処理条件によって結晶粒界において容易に析出され、焼き入れ性が劣化されるか、高温脆化の原因にもなり、硬質相粒界脆性発生によって靭性及び曲げ性が低下しうる。
【0036】
一方、本発明の一実施例によるベース鋼板内では、微細析出物が含まれうる。ベース鋼板に含まれた元素の一部を構成する添加剤細析出物形成に寄与する窒化物または炭化物生成元素でもある。
【0037】
添加剤は、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)のうち、少なくともいずれか1つを含む。チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)は、窒化物または炭化物形態の微細析出物を形成することで、ホットスタンピング、焼き入れた部材の強度を確保することができる。また、これらは、Fe-Mn系複合酸化物に含有され、耐遅延破壊特性向上に有効な水素トラップサイトとして機能し、耐遅延破壊性改善に必要な元素である。
【0038】
さらに具体的に、チタン(Ti)は、熱間プレス熱処理後の析出物形成による結晶粒微細化強化及び材質向上目的で添加され、高温においてTiC及び/またはTiNなどの析出相を形成し、オーステナイト結晶粒微細化に効果的に寄与することができる。そのようなチタンは、ベース鋼板の全体重量に対して0.025wt%~0.045wt%含まれうる。チタンが前記含量範囲で含まれれば、連鋳不良及び析出物粗大化を防止し、鋼材の物性を容易に確保し、鋼材表面にクラック発生などの欠陥を防止することができる。一方、チタンの含量が0.045wt%を超過すれば、析出物が粗大化され、延伸率及び曲げ性下落が発生しうる。
【0039】
ニオブ(Nb)及びモリブデン(Mo)は、マルテンサイトパケットサイズ(packet size)減少による強度及び靭性増加を目的に添加される。ニオブは、ベース鋼板の全体重量に対して0.045wt%以下、例えば、0.015wt%~0.045wt%含まれうる。また、モリブデンは、ベース鋼板の全体重量に対して0.15wt%以下、例えば、0.05wt%~0.15wt%含まれうる。ニオブ及びモリブデンが前記範囲で含まれるとき、、熱間圧延及び冷間圧延工程で鋼材の結晶粒微細化効果に優れ、製鋼/連鋳時、スラブのクラック発生と、製品の脆性破断発生を防止し、製鋼性粗大析出物生成を最小化しうる。
【0040】
本実施例によるベース鋼板は、所定の合金元素を所定含量含むように鋳造されたスラブに対し、熱延工程及び/または冷延工程を進めて製造された鋼板でもある。そのようなベース鋼板は、ホットスタンピング加熱温度において、フルオーステナイト組織として存在し、その後、冷却時、マルテンサイト組織に変態されうる。マルテンサイト相は、冷却中、マルテンサイト変態の開始温度(Ms)下においてオーステナイトγの無拡散変態結果である。
【0041】
ホットスタンピング部品100は、微細組織として、初期オーステナイト結晶粒(PAG:prior austenite grain)を含む。一実施例において、ベース鋼板は、面積分率で95%以上のマルテンサイト相を含む。初期オーステナイト結晶粒は、大体のところ、マルテンサイト相内に分布しうる。
【0042】
一方、ホットスタンピング部品100が隙間腐食(crevice corrosion)のような腐食環境に露出される場合、腐食反応中に発生した水素(H)によって引っ張り応力によって破断された表面から、結晶粒界(grain boundary)に沿ってクラックが伝播される水素誘引応力腐食亀裂(hydrogen induced stress corrosion cracking)が発生しうる。そのような水素誘引応力腐食亀裂に対する抵抗性は、初期オーステナイト結晶粒の大きさを制御することによって向上しうる。
【0043】
それにより、本実施例によるホットスタンピング部品100において、初期オーステナイト結晶粒の平均サイズは、25μm以下、さらに具体的には、5μm以上25μm以下でもある。初期オーステナイト結晶粒の平均サイズが5μm以上25μm以下に形成される場合、同一の応力及び腐食環境で水素誘引応力腐食亀裂に対する抵抗性を向上させうる。初期オーステナイト結晶粒の平均サイズを5μm未満に形成するのは、ホットスタンピング工程上、実質的に不可能であり、初期オーステナイト結晶粒の平均サイズが25μmを超過して粗大化される場合、水素侵透が容易であり、結晶粒界に沿って移動する拡散性水素が増加し、水素移動経路に沿ってクラックが伝播されやすいからである。また、結晶粒界に沿って存在する水素の密度が高くなり、水素による遅延破断が起こる確率が高くなってしまう。
【0044】
初期オーステナイト結晶粒の平均サイズは、ホットスタンピング工程時間及び温度を調節することによって制御することができる。一実施例において、ホットスタンピング工程は、多段加熱によって遂行され、ホットスタンピング工程時、加熱炉の温度範囲は、680℃~1,000℃でもある。また、一実施例において、ホットスタンピング工程時、加熱炉での総滞留時間は、100秒~900秒でもある。前記条件下において、ホットスタンピング工程を進めるとき、初期オーステナイト結晶粒の平均サイズを25μm以下、さらに具体的には、5μm以上25μm以下に形成することが可能である。これと係わるホットスタンピング工程については、図5及び図6の説明を通じて詳細に後述する。
【0045】
図2は、本発明の一実施例によるホットスタンピング部品を電子後方散乱回折(EBSD:electron back scattered diffraction)分析したイメージであり、図3は、本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の断面一部を拡大したイメージであり、図4は、本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の微細組織が特殊結晶粒界をなす状態を示す図面である。
【0046】
本発明の一実施例によるマルテンサイト相は、複数の特徴的な微細組織単位を含む。例えば、マルテンサイト相内の微細組織は、初期オーステナイト結晶粒(prior austenite grain)、パケット(packet)、ラス(lath)が階層的に重なる微細で複雑な形態を有する。ここで、ラスは、特定の方向に平行に配向されたロッド(rod)状を有し、パケットは、ラス集団からなる領域と定義されうる。パケット及びラスは、初期オーステナイト結晶粒内に含まれうる。
【0047】
ホットスタンピング部品100内の微細組織は、微細組織間の界面を形成する結晶粒界(grain boundary)を形成する。ここで、結晶粒界(または、粒界)とは、異なる方向の配列を有する2個以上の微細組織が当接する原子密度の低い境界を意味しうる。本発明において、結晶粒界は、初期オーステナイト結晶粒間の界面、パケット間の界面及びラス間の界面を意味するものでもある。
【0048】
本実施例において、ホットスタンピング部品100内の微細組織の結晶粒界は、結晶粒角が小さい小傾角粒界及び結晶粒角が相対的に大きい大傾角粒界を含みうる。小傾角粒界は、界面を基準に2つの微細組織が当接してなす角が0°以上15°以下である結晶粒界を意味し、大傾角粒界は、界面を基準に2つの微細組織が当接してなす角が15°超過180°以下である結晶粒界を意味する。
【0049】
図2を参照すれば、小傾角粒界及び大傾角粒界は、電子後方散乱回折(EBSD)分析を通じて測定することができる。図2では、赤色及び緑ラインが、結晶粒角が15°以下である小傾角粒界を示し、青色のラインが結晶粒角が、15°超過180°以下である大傾角粒界を示す。
【0050】
一実施例において、ホットスタンピング部品100は、結晶粒角が0°以上15°以下である小傾角粒界を分率として20%以上含み、結晶粒角が15°超過180°以下である大傾角粒界を分率として80%以下で含むものでもある。結晶粒角が大きいということは、結晶粒界のエネルギーが高いということを意味し、逆に、結晶粒角が低いということは、結晶粒界のエネルギーが低いということを意味する。エネルギーが高い結晶粒界は、拡散、相変態、析出などの固相反応の核生成位置として作用するので、結晶粒界のエネルギーが高いほど、鋼板内において水素が拡散性水素活性化になりやすく、そのような拡散性水素は、応力腐食亀裂に脆弱であり、クラックの伝播を拡散させうる。したがって、本発明の一実施例によるホットスタンピング部品100では、相対的にエネルギーが低い小傾角粒界を分率として20%以上確保することにより、水素拡散経路を低減させ、クラック伝播を効果的に防止することができる。
【0051】
一実施例において、ホットスタンピング部品100は、結晶粒角が15°超過180°以下である大傾角粒界を分率として80%以下で含むものでもある。そのような大傾角粒界は、特殊結晶粒界(special grain boundary)及びランダム結晶粒界(random grain boundary)を含む。ランダム結晶粒界は、不規則な原子配列を有する結晶粒界であり、結晶粒界のエネルギーが高く、比較的不安定な界面である。ホットスタンピング部品100でのクラックは、大体のところ、そのような不安定な界面に沿って進むので、ホットスタンピング部品100の腐食による破断を防止するためには、ランダム結晶粒界を一定比率以下に制御することが要求される。
【0052】
それにより、本実施例によるホットスタンピング部品100は、結晶粒角が15°超過180°以下である大傾角粒界において、ランダム結晶粒界(random grain boundary)を分率として70%以下含む。ランダム結晶粒界が70%以上分布されれば、ホットスタンピング部品100内の微細組織間の界面エネルギーが高くなり、水素拡散経路及びクラック伝播経路として作用しうる。したがって、ランダム結晶粒界を70%以下に制御することにより、ホットスタンピング部品100内の微細組織間の不安定な界面を、一定比率以下に低くし、鋼板内に水素が拡散性水素として活性化されることを防止することができる。
【0053】
また、ホットスタンピング部品100は、大傾角粒界において、特殊結晶粒界(special grain boundary)を分率として5%~10%含む。図3は、本実施例によるホットスタンピング部品100の微細組織においてラス構造を拡大して示したイメージであり、特にA部分において特殊結晶粒界が示されていることを確認することができる。
【0054】
さらに具体的に、特殊結晶粒界は、双晶(twinning boundaryまたはcoherent Σ 3boundary)と称される特殊構造の結晶粒界であり、2つの微細組織が、面または軸を挟んで対称形態に付いている現象を意味する。一般的に、大傾角粒界は、ランダムに生成されるが、アニーリング工程のような熱処理工程を介した拡散により、一部構造において、規則的な原子配列が示されうる。そのような対称形状のような原子配列の規則性により、双晶界面は、整合状態に置かれることになる。これは、拡散性水素の安定した水素トラップサイトとして機能し、クラック伝播に効果的に安定したサイトとして作用することで、脆化メカニズムを効果的に低減させることが可能である。
【0055】
図4は、特殊結晶粒界の粒子間配列を示す。図4では、粒界GBを中心に当接した第1結晶粒G1と第2結晶粒G2との原子配列を示した。この際、第1結晶粒G1と第2結晶粒G2とがなす粒界GBは、ラスとラスとの界面でもあり、ラスとパケットとの界面でもあり、パケットとパケットとの界面でもある。第1結晶粒G1をなす原子と第2結晶粒G2をなす原子は、図4に図示されたように整合界面をなして対称的に形成されうる。第1結晶粒G1と第2結晶粒G2との原子配列による結晶粒角は、鈍角をなす大傾角粒界にも分類されるが、粒界GBのエネルギーは、ランダム結晶粒界とは異なり、顕著に低く形成されうる。これは、特殊結晶粒界の原子は、粒界GBに沿って安定した配列を有するように備えられるためである。したがって、そのような特殊結晶粒界は、低いエネルギーを有し、拡散性水素のトラップサイトとして作用し、水素の移動を減少させることにより、クラック伝播を防止することができる。一例として、そのような特殊結晶粒界は、ラスとラス、ラスとパケットまたはパケットとパケットとの界面において、約90%以上分布されうる。
【0056】
本発明の一実施例によるホットスタンピング部品100は、特殊結晶粒界を分率として5%~10%含むことにより、水素誘起応力腐食亀裂時、流入された水素が特殊結晶粒界内にトラップされることにより、水素捕獲効果を高め、拡散性水素の移動を効果的に遮断することができる。また、ホットスタンピング部品100内の大傾角粒界において、特殊結晶粒界の分率を5%~10%に具備することにより、高いエネルギー界面を有するランダム結晶粒界の分率を相対的に減少させうる。
【0057】
本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法においては、ホットスタンピングのための加熱時、加熱炉内において多段加熱方式を採用する。以下、図5及び図6を参照し、本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法について詳細に説明する。
【0058】
図5は、本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法を概略的に示すフローチャートであり、図6は、図5のブランク加熱段階を説明するための図面である。
【0059】
図5を参照すれば、本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法は、ブランク投入段階(S110)、多段加熱段階(S120)及び均熱加熱段階(S130)を含み、均熱加熱段階(S130)以後に、移送段階(S140)、形成段階(S150)及び冷却段階(S160)をさらに含むものでもある。
【0060】
まず、ブランク投入段階(S110)は、互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を備えた加熱炉内に、ブランクを投入する段階でもある。
【0061】
加熱炉内に投入されるブランクは、ホットスタンピング部品形成のための板材を裁断して形成されたものでもある。前記板材は、鋼スラブに、熱間圧延または冷間圧延を遂行した後、焼き鈍し熱処理する過程を通じて製造されうる。また、前記焼き鈍し熱処理後、前記焼き鈍し熱処理された板材の少なくとも一面にメッキ層を形成することができる。
加熱炉全体温度は、680℃~1000℃でもある。具体的に、多段加熱段階(S210)及び均熱加熱段階(S220)が遂行される加熱炉全体温度は、680℃~1000℃でもある。この際、多段加熱段階(S210)が遂行される加熱炉の温度は、680℃~Ac3でもあり、均熱加熱段階(S220)が遂行される加熱炉の温度は、Ac3~1000℃でもある。
【0062】
加熱炉内に、投入されたブランクは、ローラに実装された後、移送方向に沿っても移送される。
【0063】
ブランク投入段階(S110)以後、多段加熱段階(S120)がなされうる。多段加熱段階(S120)は、ブランクが加熱炉内に備えられた複数の区間を通過し、段階的に加熱される段階でもある。多段加熱段階(S120)において、一実施例による加熱炉は、互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を具備することができる。さらに具体的に、図6に図示されたように、加熱炉は、第1温度範囲Tを有する第1区間P、第2温度範囲Tを有する第2区間P、第3温度範囲Tを有する第3区間P、第4温度範囲Tを有する第4区間P、第5温度範囲Tを有する第5区間P、第6温度範囲Tを有する第6区間P、及び第7温度範囲Tを有する第7区間Pを具備することができる。
【0064】
第1区間Pないし第7区間Pは、順次に加熱炉内に配置されうる。第1温度範囲Tを有する第1区間Pは、ブランクが投入される加熱炉の入口と隣接し、第7温度範囲Tを有する第7区間Pは、ブランクが排出される加熱炉の出口と隣接することができる。したがって、第1温度範囲Tを有する第1区間Pが加熱炉の最初区間でもあり、第7温度範囲Tを有する第7区間Pが加熱炉の最後の区間でもある。後述するように、加熱炉の複数の区間において、第5区間P、第6区間P、及び第7区間Pは、多段加熱が遂行される区間ではない、均熱加熱が遂行される区間でもある。
【0065】
加熱炉内に備えられた複数の区間の温度、例えば、第1区間Pないし第7区間Pの温度は、ブランクが投入される加熱炉の入口からブランクが取り出される加熱炉の出口方向に増加しうる。但し、第5区間Pないし第7区間Pの温度は、同一でもある。また、加熱炉内に備えられた複数の区間のうち、互いに隣接した2つの区間間の温度差は、0℃より大きく、100℃以下でもある。例えば、第1区間Pと第2区間Pとの温度差は、0℃より大きく、100℃以下でもある。
【0066】
一実施例において、第1区間Pの第1温度範囲Tは、680℃~850℃でもある。第2区間Pの第2温度範囲Tは、700℃~900℃でもある。第3区間P3の第3温度範囲Tは、750℃~930℃でもある。第4区間Pの第4温度範囲Tは、800℃~950℃でもある。第5区間Pの第5温度範囲Tは、Ac3~1000℃でもある。望ましくは、第5区間Pの第5温度範囲Tは、830℃以上1000℃以下でもある。第6区間Pの第6温度範囲T、及び第7区間Pの第7温度範囲Tは、第5区間Pの第5温度範囲Tと同一でもある。
【0067】
多段加熱段階(S120)以後、均熱加熱段階(S130)がなされうる。均熱加熱段階(S130)は、加熱炉に備えられた複数の区間のうち、最後の区間において、ブランクをAc3以上の温度で均熱加熱する段階でもある。
【0068】
均熱加熱段階(S130)は、加熱炉の複数の区間のうち、最後の部分で行われる。一例として、均熱加熱段階(S130)は、加熱炉の第5区間P、第6区間P、及び第7区間Pで行われる。加熱炉内に複数の区間が備えられる場合、1つの区間の長さが長ければ、前記区間内で温度変化が生じるなどの問題点が存在しうる。したがって、均熱加熱段階(S130)が遂行される区間は、第5区間P、第6区間P、及び第7区間Pに区分されるが、前記第5区間P、第6区間P、及び前記第7区間Pは、加熱炉内で同じ温度範囲を有しうる。
【0069】
均熱加熱段階(S130)では、多段加熱されたブランクをAc3ないし1,000℃の温度で均熱加熱することができる。望ましくは、均熱加熱段階(S130)では、多段加熱されたブランクを830℃~1,000℃の温度で均熱加熱する。1,000℃を超過する雰囲気では、鋼内の有益な炭化物が母材に溶解され、結晶粒微細化効果が喪失される危険性が存在しうる。
【0070】
一実施例において、加熱段階(S200)が多段加熱段階(S210)及び均熱加熱段階(S220)として備えられることで、加熱炉の温度を段階的に設定することができ、加熱炉のエネルギー効率を向上させうる。
【0071】
一実施例において、加熱炉は、ブランクの移送経路に沿って20m~40mの長さを有しうる。加熱炉は、互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を備え、複数の区間のうち、ブランクを多段加熱する区間の長さDと、複数の区間のうち、ブランクを均熱加熱する区間の長さDとの比は、1:1~4:1を満足することができる。すなわち、加熱炉内に備えられた複数の区間のうち、均一加熱区間の長さDは、加熱炉の全長(D+D)の20%~50%の長さを有しうる。
【0072】
例えば、複数の区間のうち、ブランクを均熱加熱する区間は、加熱炉の最後の部分(例えば、第5区間P、第6区間P、及び第7区間P)でもある。ブランクを均熱加熱する区間の長さが増加し、ブランクを多段加熱する区間の長さDとブランクを均熱加熱する区間の長さDとの比が1:1を超過する場合、均熱加熱区間においてブランク内で水素浸透量が増加し、遅延破断が増加しうる。また、ブランクを均熱加熱する区間の長さが減少し、ブランクを多段加熱する区間の長さDと、ブランクを均熱加熱する区間の長さDとの比が4:1未満である場合、均熱加熱区間(時間)が十分に確保されず、ホットスタンピング部品の製造工程によって製造された部品の強度が不均一になる。
【0073】
一実施例において、多段加熱段階(S120)及び均熱加熱段階(S130)において、ブランクは、約6℃/s~12℃/sの昇温速度を有し、クラック時間は、約3分~6分でもある。さらに具体的に、ブランクの厚さが約1.6mm~2.3mmである場合、昇温速度は、約6℃/s~9℃/sであり、クラック時間は、約3~4分でもある。また、ブランクの厚さが約1.0mm~1.6mmである場合、昇温速度は、約9℃/s~12℃/sであり、クラック時間は、約4分~6分でもある。
【0074】
一方、均熱加熱段階(S130)以後、移送段階(S140)、形成段階(S150)及び冷却段階(S160)がさらに遂行されうる。
【0075】
移送段階(S140)は、均熱加熱されたブランクを加熱炉からプレス金型に移送する段階でもある。均熱加熱されたブランクを、加熱炉からプレス金型に移送する段階において、均熱加熱されたブランクは、5秒~20秒間空冷されうる。
【0076】
形成段階(S150)は、移送されたブランクをホットスタンピングし、成形体を形成する段階でもある。冷却段階(S160)は、形成された成形体を冷却する段階でもある。
【0077】
プレス金型において最終部品形状に成形されると共に、成形体を冷却して最終製品が形成されうる。プレス金型には、内部に冷媒が循環する冷却チャネルが備えられうる。プレス金型に備えられた冷却チャネルを介して供給される冷媒の循環によって加熱されたブランクを急冷させうる。この際、板材のスプリングバック(spring back)現象を防止すると共に、所望の形状を保持するためには、プレス金型を閉状態で加圧しながら、急冷を実施することができる。加熱されたブランクに対し、成形及び冷却操作を行うに当たって、マルテンサイト終了温度まで平均冷却速度を少なくとも10℃/s以上にして冷却することができる。ブランクは、プレス金型内で3~20秒間保持されうる。プレス金型内の保持時間が3秒未満である場合、素材の十分な冷却がなされず、製品の残存熱と部位別温度との偏差によって熱変形が発生し、寸法品質が低下しうる。また、プレス金型内の保持時間が20秒を超過する場合、プレス金型内の保持時間が長くなり、生産性が低下しうる。
【0078】
一実施例において、上述したホットスタンピング部品の製造方法によって製造されたホットスタンピング部品は、1,680MPa以上の引っ張り強度、望ましくは、1,680MPa以上2,000MPa以下の引っ張り強度を有し、95%以上の面積分率でもってマルテンサイトの組織を含みうる。また、上述したホットスタンピング部品の製造方法によって製造されたホットスタンピング部品は、初期オーステナイト結晶粒平均サイズが5μm以上25μm以下に形成され、小傾角粒界分率が20%以上であり、大傾角粒界において、特殊結晶粒界の分率が5%~10%に備えられうる。ホットスタンピング部品が上述した範囲を満足する場合、水素誘起応力腐食亀裂に対する抵抗性を十分に確保することができる。
【0079】
以下では、実施例及び比較例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明をさらに具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲が下記実施例によって限定されるものではない。下記実施例は、本発明の範囲内で同一技術分野の通常の実施者によって適切な修正及び変更が可能である。
【0080】
<ホットスタンピング部品の製造>
本発明の一実施例によるホットスタンピング部品は、[表1]の成分系を有するベース鋼板を含みうる。ベース鋼板上には、溶融メッキによるメッキ層が形成されうる。メッキ層は、Al-Si-Feを含む。[表1]の成分系を有するホットスタンピング部品の場合、引っ張り強度1680MPa以上、降伏強度950MPa以上でもある。
【0081】
【表1】
【0082】
<ホットスタンピング部品の応力腐食亀裂破断実験>
下記表2のように実施例及び比較例別に、初期オーステナイト平均サイズ、小傾角粒界分率、及び特殊結晶粒界分率をそれぞれ測定した。また、当該実施例及び比較例による応力腐食亀裂破断結果を測定した。
【0083】
応力腐食亀裂(SCC:stress corrosion cracking)特性評価方法は、4点屈曲試験(4-pointbendingtest)によって曲げ応力(100%降伏強度)が適用された試片を、複合腐食試験に露出させる方式で測定された。
【0084】
複合腐食試験(CCT:cyclic corrosion test)は、自然状態での腐食状況で発見される物質の変異状態を調べるための実験であり、湿潤、酸性雰囲気を任意に造成し、鋼材に対する水素有機クラックを測定するものである。さらに具体的に、温度40℃、湿度95%RH条件下で約5時間塩水に浸漬し(1段階)、その後、約2時間、温度70℃、湿度30%RH条件下で強制乾燥した後(2段階)、温度50℃、湿度95%RH条件の湿潤環境に約3時間露出させ(3段階)、最後に、温度60℃、湿度30%RHの下で、約2時間強制乾燥させる(4段階)ことを1サイクルにし、60サイクル(720時間)の間遂行した。
【0085】
【表2】
【0086】
[表2]に開示されたように、実施例1ないし実施例6の場合、初期オーステナイト結晶粒平均サイズが5μm以上25μm以下に形成され、小傾角粒界分率が20%以上であり、大傾角粒界において、特殊結晶粒界の分率が5%~10%と測定された。一方、比較例1ないし比較例3の場合、初期オーステナイト結晶粒平均サイズ、小傾角粒界分率、及び大傾角粒界における特殊結晶粒界の分率が、前記範囲をいずれも外れていることが分かる。その結果、上述した範囲を満足する実施例1ないし実施例6は、応力腐食亀裂評価時、破断されておらず、一方、上述した範囲を外れた比較例1ないし比較例3は、応力腐食亀裂評価時、破断されていることが分かる。
【0087】
前記実験結果によって、初期オーステナイト結晶粒平均サイズが25μm以下、さらに具体的には、5μm以上25μm以下に形成され、小傾角粒界分率が20%以上であり、大傾角粒界における特殊結晶粒界の分率が5%~10%である本発明のホットスタンピング部品の場合、同一の応力及び腐食環境において水素拡散による応力腐食亀裂に抵抗性が向上したことを確認することができる。
【0088】
図7は、加熱炉内の総滞留時間及び加熱炉内の最終温度によるホットスタンピング部品内の初期オーステナイト結晶粒サイズを測定したイメージであり、図8は、図7の実施例及び比較例の初期オーステナイト結晶粒サイズを図式化したグラフであり、図9は、実施例及び比較例それぞれに係わる4点屈曲試験の結果を示すイメージである。
【0089】
図7及び図8を参照すれば、加熱炉内の最終温度を870℃、900℃、930℃及び950℃にそれぞれ設定し、各温度別に加熱炉内の滞留時間を、5分、10分及び20分に制御した。これを通じて、加熱炉内の総滞留時間及び加熱炉内の最終温度によってホットスタンピング部品内の初期オーステナイト結晶粒サイズが異なることを確認することができる。すなわち、ホットスタンピング部品内の初期オーステナイト結晶粒サイズは、ホットスタンピング工程時、加熱炉内の総滞留時間及び加熱炉内の最終温度を設定することによって制御することができる。
【0090】
具体的に、最終温度870℃において、それぞれ5分、10分、20分間滞留した試片(a1)、(a2)、(a3)の場合、初期オーステナイト結晶粒平均サイズは、9.66μm、11.32μm、14.32μmであり、最終温度900℃でそれぞれ5分、10分、20分間滞留した試片(b1)、(b2)、(b3)の場合、初期オーステナイト結晶粒平均サイズは、12.87μm、16.62μm、28.12μmであり、最終温度930℃でそれぞれ5分、10分、20分間滞留した試片(c1)、(c2)、(c3)の場合、初期オーステナイト結晶粒平均サイズは、20.63μm、23.71μm、31.42μmであり、最終温度950℃でそれぞれ5分、10分、20分間滞留した試片(d1)、(d2)、(d3)の場合、初期オーステナイト結晶粒平均サイズは、25.88μm、29.02μm、31.42μmと測定された。これを通じて分かるように、ホットスタンピング工程において、熱処理温度及び時間が増大するほど、初期オーステナイト結晶粒サイズが粗大化されることを確認し、特に930℃を超過する温度で初期オーステナイト結晶粒サイズの粗大化が深くなる傾向を確認することができる。
【0091】
その結果、図9に図示されたように、初期オーステナイト結晶粒平均サイズが25μm以内に形成された試片(a1)、(a2)、(b1)、(b2)、(c1)及び(c2)の場合、4点屈曲試験時破断が起こらず、一方、初期オーステナイト結晶粒平均サイズが25μmを超過する試片(d1)及び(d)2の場合、4点屈曲試験時破断が起こったことを確認することができる。
【0092】
本発明は、図面に図示された実施例に基づいて説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野で通常の知識を有する者であれば、それらから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解するであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】