IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ヘアケア組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/35 20060101AFI20231130BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20231130BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20231130BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20231130BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20231130BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A61K8/35
A61Q5/00
A61K8/89
A61K8/49
A61Q5/02
A61Q5/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023522537
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2021077433
(87)【国際公開番号】W WO2022089892
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/124148
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】20213967.1
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】カオ,フェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,グオチアン
(72)【発明者】
【氏名】ジ,チェンドン
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,スー
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC211
4C083AC212
4C083AC691
4C083AC711
4C083AC781
4C083AC782
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083BB01
4C083BB05
4C083BB06
4C083BB07
4C083CC31
4C083CC33
4C083CC38
4C083EE23
(57)【要約】
(i)ベンゾフェノン、ベンゾフェノン-1、ベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-7、ベンゾフェノン-8、ベンゾフェノン-10またはベンゾフェノン-12から選択される1種以上の成分であるベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体;(ii)ピロクトンオラミン;(iii)シリコーン化合物;化粧品として許容される担体を含むヘアケア組成物であって、前記ベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体の量が全組成物の0.2~10重量%であるヘアケア組成物が開示される。ピロクトンオラミンの沈着および安定性を改善することが示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
(i)ベンゾフェノン、ベンゾフェノン-1、ベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-7、ベンゾフェノン-8、ベンゾフェノン-10またはベンゾフェノン-12から選択される1種以上の成分であるベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体;
(ii)ピロクトンオラミン;
(iii)シリコーン化合物;および
(iv)化粧品として許容される担体;
を含むヘアケア組成物であって、前記ベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体の量は全組成物の0.2~10重量%である、前記ヘアケア組成物。
【請求項2】
前記ベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体がベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-3またはベンゾフェノン-8である、請求項1に記載のヘアケア組成物。
【請求項3】
前記ベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体の量が0.3~5重量%である、請求項1または2に記載のヘアケア組成物。
【請求項4】
前記ピロクトンオラミンの量が0.01~10重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のヘアケア組成物。
【請求項5】
前記シリコーン化合物の量が0.01~10重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のヘアケア組成物。
【請求項6】
界面活性剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のヘアケア組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤がアニオン性界面活性剤またはカチオン性界面活性剤である、請求項6に記載のヘアケア組成物。
【請求項8】
前記アニオン性界面活性剤がアルキル硫酸塩界面活性剤および/またはアルコキシル化アルキル硫酸塩界面活性剤である、請求項7に記載のヘアケア組成物。
【請求項9】
ベタイン界面活性剤を含む、請求項8に記載のヘアケア組成物。
【請求項10】
組成物がシャンプーである、請求項6~9のいずれか一項に記載のヘアケア組成物。
【請求項11】
前記カチオン性界面活性剤がステアラミドプロピルジメチルアミン、ベヘントリモニウムクロリドまたはステアリルトリメチルアンモニウムクロリドである、請求項7に記載のヘアケア組成物。
【請求項12】
前記組成物がヘアコンディショナーである、請求項11に記載のヘアケア組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のヘアケア組成物を調製する方法であって:
(a)前記ベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体を前記シリコーン化合物と混合してプレミックスを形成する工程;
(b)工程(a)のプレミックスを他の成分と混合してヘアケア組成物を形成する工程、
を含む前記方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物を所望の頭皮表面に局所適用する工程を含む、フケを処置する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアケア組成物に関する。より詳細には、本発明はピロクトンオラミンを含むヘアケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フケは世界中の多くの人が経験する状態である。フケの状態は皮膚の剥離などの軽度の状態から、重度の炎症および頭皮のかゆみまで様々である。マラセチア・ファーファー(Malassezia furfur)などのマラセチア酵母はフケの主な原因であると考えられており、このことは状況の完全な科学的像を表すものではないかもしれないが、Malassezia酵母はフケと密接に関連しているよう。したがって、フケの処置に従来使用されている戦略は、通常シャンプーを通して送達される、ジンクピリチオン(ZnPTO)、ピロクトンオラミン、クリンバゾールおよびケトコナゾールなどの抗真菌剤の局所適用である。
【0003】
ピロクトンオラミン(Octopirox(登録商標)としても知られる)は、真菌感染症の治療にしばしば使用される化合物である。ピロクトンオラミンは、ヒドロキサム酸誘導体ピロクトンのエタノールアミン塩である。ピロクトンオラミンは、マラセチア・グロボサ(Malassezia globosa)と呼ばれる一般的に存在する真菌であるフケの根本原因を制御するのに理想的な抗真菌特性を有する。これは、一般的に使用される化合物であるジンクピリチオンの代わりとして、フケ防止シャンプーに使用されることが多い。一般に、ピロクトンオラミンは、界面活性剤、水、シリコーン、ポリマーならびに着色成分および芳香成分を含むシャンプーのベース組成物に溶解される。使用者が組成物を毛髪および頭皮に適用すると、ピロクトンオラミンの一部がその上に沈着する。
【0004】
一般に、フケ防止シャンプーまたはコンディショナーの有効性は頭皮および毛髪に沈着したフケ防止活性物質の量に依存するが、これはより多くの沈着がより多くの生物学的利用能を意味するからである。しかしながら、ピロクトンオラミンは光に対して不安定であり、沈着したピロクトンオラミンは、ピロクトンオラミンの不安定化をもたらすUV照射と反応する傾向があるので、生物学的に利用可能ではないことがよく知られている。この不安定化は、UV光安定剤または日焼け止め剤を使用することによってある程度回避することができる。ピロクトンオラミンを「ブースター」技術と組み合わせることによって、ピロクトンオラミンの抗菌効果を増大させる努力もなされてきた。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、ピロクトンオラミンなどのフケ防止剤の沈着を改善し、一方、ピロクトンオラミンの光安定性を改善する新しい方法を確立した。本発明者らは、ピロクトンオラミン、シリコーン化合物および特定のベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体が組成物中に共配合される場合、ピロクトンオラミンの沈着および光安定性の両方が改善され得ることを確立した。
【0006】
第1の態様によれば、以下を含むヘアケア組成物が開示される:
(i)ベンゾフェノン、ベンゾフェノン-1、ベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-7、ベンゾフェノン-8、ベンゾフェノン-10またはベンゾフェノン-12から選択される1種以上の成分であるベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体;
(ii)ピロクトンオラミン;
(iii)シリコーン化合物;および
(iv)化粧品として許容される担体;
但し、前記ベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体の量は、全組成物の0.2~10重量%である。
【0007】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様のいずれかの実施形態のヘアケア組成物を調製する方法であって、以下の:
(a)前記ベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体を前記シリコーン化合物と混合してプレミックスを形成する工程;
(b)工程(a)のプレミックスを他の成分と混合してヘアケア組成物を形成する工程、
を含む前記方法に関する。
【0008】
第3の態様によれば、第1の態様の組成物を塗布する工程を含むフケの処理方法が開示される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
誤解を避けるために、本発明の1つの態様の任意の特徴は、本発明の任意の他の態様において利用され得る。用語「含む」は「包含する」を意味することを意図しているが、必ずしも「からなる」または「から構成される」ことを意味することを意図していない。言い換えれば、列挙された工程または選択しは、網羅的である必要はない。以下の説明において与えられる実施例は本発明を明確にすることを意図するものであり、本発明をそれらの実施例自体に限定することを意図するものではないことに留意されたい。同様に、全てのパーセンテージは特に明記しない限り、重量/重量パーセンテージである。実施例および比較例を除いて、または他に明示的に示されている場合を除いて、材料の量または反応の条件、材料の物理的特性および/または使用を示す本明細書および特許請求の範囲におけるすべての数は、「約」という単語によって修飾されていると理解されるべきである。「x~y」の形式で表される数値範囲がxおよびyを含むと理解される。特定の特徴について、複数の好ましい範囲が「x~y」の形式で記載される場合、異なる終点を組み合わせるすべての範囲も意図されることが理解される。本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」または「an」およびその対応する定冠詞「the」は特に明記しない限り、少なくとも1つ、または1つ以上を意味する。先の個々のセクションにおいて言及された本発明の様々な特徴は、必要な変更を加えて、必要に応じて他のセクションに適用される。したがって、1つのセクションで指定された特徴は、必要に応じて他のセクションで指定された特徴と組み合わせることができる。セクションの見出しは、いずれも便宜上追加されているにすぎず、決して本開示を限定することを意図するものではない。
【0010】
本明細書で使用するとき、「ヘアケア組成物」は、哺乳動物、特にヒトの毛髪または頭皮への局所適用のための組成物を含むことを意味する。局所とは、組成物が身体の外表面に適用されることを意味する。本発明において、これは、組成物を毛髪または頭皮に適用することによって達成される。そのような組成物は一般に、リーブオンまたはリンスオフとして分類することができ、頭皮および毛髪の外観、クレンジング、臭気制御または全般的な美観を改善するために適用される任意の製品を含む。本発明のヘアケア組成物は、液体、ローション、クリーム、フォーム、スクラブ、ゲル、シャンプー、コンディショナー、シャワーゲルまたはバーの形態であり得る。本発明のヘアケア組成物は、好ましくはリーブオン組成物である。あるいは、本発明のヘアケア組成物はウォッシュオフ組成物である。人体への摂取によって所望の利益を達成するための組成物は、本発明の範囲から除外される。
【0011】
ベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体
本発明による組成物はベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体を含み、該ベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体はベンゾフェノン、ベンゾフェノン-1、ベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-7、ベンゾフェノン-8、ベンゾフェノン-10またはベンゾフェノン-12から選択され、より好ましくはベンゾフェノン-1、ベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-8、ベンゾフェノン-10またはベンゾフェノン-12から選択され、より好ましくはベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-8またはベンゾフェノン-10から選択され、さらに好ましくはベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-3またはベンゾフェノン-8から選択され、さらに好ましくはベンゾフェノン-2またはベンゾフェノン-3から選択される1種以上の成分であり、もっとも好ましくはベンゾフェノン-3である。
【0012】
LogP
分配係数(logP)は、脂質(脂肪、油、有機溶媒)および水の非混和性二相系に化合物が溶解する傾向を表す。logPについての低い値は化合物が水相に対してより高い親和性を有する(より親水性である)ことを意味し;logPについての高い値は有機相におけるより高い濃度(すなわち、化合物はより親油性であること)を示す。
【0013】
logP値は以下の様式で定義される定数である:LogP=log10(分配係数)、分配係数:P=[有機]/[水性];式中、[]は有機および水性分配物中の溶質の濃度を示す。
【0014】
ベンゾフェノン、ベンゾフェノン-1、ベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-7、ベンゾフェノン-8、ベンゾフェノン-10およびベンゾフェノン-12のlogPは、それぞれ、3.21、3.15、3.09、3.99、4.78、4.51、4.31、4.66および7.56である。
【0015】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは親油性ベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体がピロクトンオラミンおよび担体と結合して、ピロクトンオラミンと担体との共沈着をもたらすことができると考える。一方、親油性ベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体はlogPが2.67であるジメチコーンのように、担体中に容易に分散させることができる。一方、ベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体の特別な芳香族構造はピロクトンオラミンとの相互作用を有することができ、ピロクトンオラミンの担体容量を改善し、それによってピロクトンオラミンの沈着を改善する。
【0016】
本発明の組成物中のベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体の量は、ヘアケア組成物のタイプおよび使用されるピロクトンオラミンの量に依存するであろう。本発明による組成物は、組成物の0.2~10重量%、好ましくは0.2~5重量%、より好ましくは0.3~2重量%、さらに好ましくは0.4~1重量%の前記ベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体を含む。
【0017】
ピロクトンオラミン
ピロクトンオラミンは、典型的な抗菌活性物質であるヒドロキサム酸誘導体ピロクトンのオラミン塩である。一般にピロクトンエタノールアミンとしてOctopirox(登録商標)の商品名で知られている。
【0018】
本発明によるピロクトンオラミンは1-ヒドロキシ-4-メチル-6-(2,4,4-トリメチルペンチル)-2(1H)-ピリジノンと2-アミノエタノールとの1:1化合物であり、1-ヒドロキシ-4-メチル-6-(2,4,4-トリメチルペンチル)-2(1H)ピリジノンモノエタノールアミン塩とも称される。CAS番号は68890-66-4であり、該化合物は以下の一般式を有する:
【化1】
【0019】
いくつかのフケ防止ヘアケア製品は、ピロクトンオラミンを含有する。溶解した無傷のピロクトンオラミン分子は、ピロクトンオラミンの唯一の生物活性形態であることが見出されている。ピロクトンオラミンを有するヘアケア製品が利用される場合、ピロクトンオラミンは解離し、光酸化を受け、そのため、生物活性物質の安定性が影響を受け、その抗フケ効果が低下する。
【0020】
本発明の組成物中のピロクトンオラミンの量は、ヘアケア組成物のタイプおよび使用される他のフケ防止剤の正確な性質に依存するであろう。当該組成物は、組成物の0.1~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%、さらに好ましくは0.5~2重量%の前記ピロクトンオラミンを含むことが好ましい。
【0021】
ベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体とピロクトンオラミンとの重量比は、好ましくは1:0.1~1:10、より好ましくは1:0.5~1:5、さらに好ましくは1:1~1:3である。
【0022】
シリコーン
本発明のヘアケア組成物は、シリコーン化合物を含む。
【0023】
好適なシリコーンとしては、ポリジオルガノシロキサン類、CTFA名ジメチコーンを有するポリジメチルシロキサン類が挙げられる。さらに、本発明の組成物(特にシャンプーおよびコンディショナー)における使用に適しているのは、CTFA名ジメチコノールを有するヒドロキシル末端基を有するポリジメチルシロキサン類である。
【0024】
好ましくはエマルジョン化したシリコーンの粘度が25℃で少なくとも10,000cstであり、シリコーンの粘度は好ましくは少なくとも60,000cst、最も好ましくは少なくとも500,000cst、理想的には少なくとも1,000,000cstである。好ましくは、配合を容易にするために、粘度は10cstを超えない。
【0025】
適切な予め形成されたエマルジョンの例としては、Dow Corning社から入手可能なXiameter MEM1785およびマイクロエマルジョンDC2-1865が挙げられる。これらはジメチコノールのエマルジョン/マイクロエマルジョンである。架橋シリコーンガムもまた、予備乳化形態で入手可能であり、これは、製剤化の容易さのために有利である。シャンプーおよびコンディショナーに含めるためのシリコーンのさらに好ましいクラスは、アミノ官能性シリコーン類である。「アミノ官能性シリコーン」とは、少なくとも1つの第一級、第二級もしくは第三級アミン基、または第四級アンモニウム基を含有するシリコーンを意味する。適切なアミノ官能性シリコーン類の例としては、CTFA名称「アモジメチコーン」を有するポリシロキサン類が挙げられる。
【0026】
本発明での使用に適したアミノ官能性シリコーン類の具体例は、アミノシリコーン油DC2-8220、DC2-8166およびDC2-8566(全てDow Corning社製)である。
【0027】
シリコーンの総量は、0.01~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%、最も好ましくは0.5~3重量%であることが好ましい。
【0028】
ヘアケア組成物
本発明のさらなる態様によれば、第1の態様のヘアケア組成物が開示される。好ましくは、組成物がシャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアクリーム、ヘアゲル、ヘアセラム、ムースまたはヘアオイルである。より好ましくは、組成物はシャンプー組成物である。
【0029】
本発明の組成物、特にシャンプーは好ましくはアニオン性界面活性剤、例えば、アルキル硫酸塩および/またはアルコキシル化アルキル硫酸塩界面活性剤を用いて製剤化される。これらのアニオン性界面活性剤は、好ましくは組成物の2~16重量%、より好ましくは3~16重量%の濃度で存在する。好ましいアルキル硫酸塩はC8~18アルキル硫酸塩、より好ましくはC12~18アルキル硫酸塩であり、好ましくはナトリウム、カリウム、アンモニウムまたは置換アンモニウムなどの可溶化カチオンを有する塩の形態である。例は、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)またはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である。
【0030】
好ましいアルキルエーテル硫酸塩は、次式:RO(CHCHO)SOM;式中、Rは8~18個(好ましくは12~18個)の炭素原子を有するアルキルまたはアルケニルであり;nが少なくとも0.5より大きい、好ましくは1~3、より好ましくは1~2の平均値を有する数であり;Mはナトリウム、カリウム、アンモニウムまたは置換アンモニウムなどの可溶化カチオンである。例は、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)である。
【0031】
好ましいアルコキシル化アルキル硫酸塩アニオン性界面活性剤は、0.5~3、好ましくは1~3の平均エトキシル化度を有するラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)である。
【0032】
本発明による組成物は必要に応じて、そして好ましくはベタイン界面活性剤をさらに含む。好ましい実施形態では、組成物が0.1~10重量%、好ましくは0.5~8重量%、より好ましくは1~5重量%のベタイン界面活性剤、好ましくはアルキルアミドプロピルベタイン、例えばコカミドプロピルベタインを含む。
【0033】
好ましくは、シャンプーの形態の本発明のヘアケア組成物がラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ココイルイセチオン酸ナトリウムおよびラウリルエーテルカルボン酸、ココベタイン、コカミドプロピルベタイン、ココアンホ酢酸ナトリウムまたはそれらの混合物である界面活性剤を含む。
【0034】
好ましくは、本発明のヘアケア組成物が1~50%、好ましくは2~40%、より好ましくは4~25%の総界面活性剤を含む。
【0035】
ヘアコンディショニング組成物は、単独でまたは混合して使用されるカチオン性界面活性剤類から選択されるコンディショニング界面活性剤類を含む。好ましくはカチオン性界面活性剤類が式N(式中、R、R、RおよびRは独立して(C1~C30)アルキルまたはベンジルである)を有する。好ましくはR、R、RおよびRの1つ、2つまたは3つは独立して(C4~C30)アルキルであり、他のR、R、RおよびR基またはその複数の基は(C1~C6)アルキルまたはベンジルである。より好ましくはR、R、RおよびRの1つまたは2つは独立して(C6~C30)アルキルであり、他のR、R、RおよびR基は(C1~C6)アルキルまたはベンジル基である。場合により、アルキル基は、アルキル鎖内に1つ以上のエステル(-OCO-または-COO-)および/またはエーテル(-O-)結合を含んでもよい。アルキル基は、1つ以上のヒドロキシル基で置換されていてもよい。アルキル基は直鎖または分枝鎖であってもよく、3個以上の炭素原子を有するアルキル基については環状であってもよい。アルキル基は飽和であってもよく、または1つもしくは複数の炭素-炭素二重結合(例えば、オレイル)を含有する可能性がある。アルキル基は場合により、アルキル鎖上で1つ以上のエチレンオキシ基でエトキシル化されている。
【0036】
本発明によるコンディショナー組成物に使用するのに適したカチオン性界面活性剤類としては、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、デシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、タロートリメチルアンモニウムクロリド、ジ水素化タロージメチルアンモニウムクロリド(例えば、Akzo Nobel社製のArquad 2HT/75)、ココトリメチルアンモニウムクロリド、PEG-2-オレアンモニウムクロリドおよび対応するその水酸化物が挙げられる。さらなる好適なカチオン性界面活性剤類としては、CTFA名クォータニウム-5、クォータニウム-31およびクォータニウム-18を有する材料が挙げられる。前述の材料のいずれかの混合物も好適であり得る。本発明によるコンディショナーに使用するための特に有用なカチオン性界面活性剤は、例えばGENAMIN CTAC(Hoechst Celanese社製)として市販されているセチルトリメチルアンモニウムクロリドである。本発明によるコンディショナーに使用するための別の特に有用なカチオン性界面活性剤は、例えばClariant社からGENAMIN KDMPとして市販されているベヘニルトリメチルアンモニウムクロリドである。さらに別の好ましいカチオン性界面活性剤は、ステアラミドプロピルジメチルアミンである。
【0037】
該組成物に使用するための最も好ましいカチオン性界面活性剤類は、ステアラミドプロピルジメチルアミン、ベヘントリモニウムクロリドまたはステアリルトリメチルアンモニウムクロリドである。本発明のコンディショナーにおいて、カチオン性界面活性剤の濃度は一般に、組成物の0.1~5重量%、好ましくは0.5~2.5重量%の範囲である。
【0038】
本発明のヘアコンディショニング組成物は、好ましくは脂肪アルコール類をさらに含んでもよい。コンディショニング組成物における脂肪アルコール類およびカチオン性界面活性剤類の併用は、カチオン性界面活性剤が分散されるラメラ相の形成をもたらすので、特に有利であると考えられる。
【0039】
代表的な脂肪アルコール類は、8~22個の炭素原子、より好ましくは16~22個の炭素原子を含む。脂肪アルコール類は、典型的には直鎖アルキル基を含む化合物である。適切な脂肪アルコール類の例としては、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびそれらの混合物が挙げられる。これらの材料の使用は、それらが本発明の組成物の全体的なコンディショニング特性に寄与するという点でも有利である。
【0040】
本発明のコンディショナー中の脂肪アルコールの濃度は一般に、組成物の0.5~10重量%、好ましくは0.1~8重量%、より好ましくは0.2~7重量%、最も好ましくは0.3~6重量%の範囲である。カチオン性界面活性剤と脂肪アルコールとの重量比は、好適には1:1~1:10、より好ましくは1:1.5~1:8、最適には1:2~1:5である。
【0041】
本発明のヘアケア組成物が化粧品成分を含むことがさらに好ましい。好ましくは、化粧品成分が、シリコーン、抗フケ剤以外の抗菌剤、起泡力増進剤、香料、カプセル化剤(例えば、カプセル化香料)、染料、着色剤、顔料、防腐剤、増粘剤、タンパク質、リン酸エステル、緩衝剤、pH調整剤、真珠光沢化剤(例えば、マイカ、二酸化チタン、二酸化チタン被覆マイカ、ジステアリン酸エチレングリコール(INCI名 ジステアリン酸グリコール))および/または乳白剤、粘度調整剤、皮膚軟化剤、日焼け止め剤、乳化剤、感覚活性剤(例えば、メントールおよびメントール誘導体)、ビタミン、ミネラルオイル、精油、脂質、天然活性剤、グリセリン、天然の毛髪養分(植物エキス、果実エキス、糖誘導体およびアミノ酸など)、微結晶セルロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0042】
好ましくは、本発明のヘアケア組成物が組成物全体の重量に対して、0.01~20重量%、より好ましくは0.05~10重量%、さらにより好ましくは0.075~7.5重量%、最も好ましくは0.1~5重量%の少なくとも1つの化粧品成分を含む。
【0043】
本発明のヘアケア組成物はまた、ピロクトンオラミンと組み合わせて使用した場合に相乗的な抗菌効果を与え、その特性を増強し、さらにMalassezia furfurの増殖を阻害する相乗的な抗菌性化合物を含んでもよい。これらの化合物の非限定的な例としては、アルコール基を有する化合物(例えば、ホオノキオール、マグノロールまたはペオノール)、ピペラジン類並びに天然植物抽出物、すなわちチモールおよびテルペニオール中に見出されるフェノール化合物が挙げられる。
【0044】
組成物は、ビタミンB3化合物をさらに含んでもよい。好ましいビタミンB3化合物はナイアシンアミドである。
【0045】
ナイアシンアミドは、ケラチノサイトからのAMP(抗微生物タンパク質)類の分泌について知られている。このように分泌されたAMPは、例えば頭皮の免疫を改善する。したがって、ナイアシンアミドの使用により、抗フケ効果は抗真菌活性によってだけでなく、ナイアシンアミドの使用により、細菌に対する頭皮自身の防御シールドをブーストすることによって増強され得る。この組み合わせは、さらなる長期間の防御、例えば、細菌に対する24時間までの防御を提供することができる。
【0046】
存在する場合、本発明のヘアケア組成物は、組成物の0.1~5重量%、より好ましくは0.5~5重量%、さらに好ましくは0.5~3重量%、最適には1.0~3.0重量%のナイアシンアミドを含むことが好ましい。
【0047】
シャンプー
本発明のヘアケア組成物がシャンプーである場合、それは一般に水性であり、すなわち、主成分として水または水溶液またはリオトロピック液晶相を有する。
【0048】
適切には、シャンプー組成物が50~98%、好ましくは60~92%の水を含む。
【0049】
好ましくは、シャンプー組成物が毛髪をコンディショニングするための1種または複数のカチオン性ポリマー類を含む。
【0050】
好適なカチオン性ポリマー類としては、カチオン置換されているホモポリマーか、または2つ以上のタイプのモノマーから形成され得るものが挙げられる。該ポリマー類の質量平均(M)分子量は、一般的に100,000~3,000,000ダルトンである。該ポリマー類は、第四級アンモニウム基またはプロトン化アミノ基またはそれらの混合物などのカチオン性窒素含有基を有する。ポリマーの分子量が低すぎる場合、コンディショニング効果は乏しい。高すぎる場合、組成物が注がれたときに、組成物の糸引きにつながる高い伸長粘度の問題が存在し得る。
【0051】
カチオン性窒素含有基は、一般的にカチオン性ポリマーの全モノマー単位の一部の上に置換基として存在する。したがって、ポリマーがホモポリマーでない場合、それはスペーサー非カチオン性モノマー単位を含有することができる。このようなポリマーは、CTFA Cosmetic Ingredient Directory、第3版に記載されている。カチオン性モノマー単位と非カチオン性モノマー単位との比は、必要な範囲、一般に0.2~3.0meq/gのカチオン性電荷密度を有するポリマーを得るように選択される。ポリマーのカチオン電荷密度は窒素定量のための化学試験の下で、米国薬局方に記載されているように、ケルダール法によって適切に決定される。
【0052】
好適なカチオン性ポリマー類としては、カチオン性アミンまたは第四級アンモニウム官能基を有するビニルモノマーと、(メタ)アクリルアミド、アルキルおよびジアルキル(メタ)アクリルアミド、アルキル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクトンおよびビニルピロリジンなどの水溶性スペーサーモノマーとのコポリマーが挙げられる。アルキルおよびジアルキル置換モノマーは、好ましくはC1~C7アルキル基、より好ましくはC1~3アルキル基を有する。他の適当なスペーサーモノマーには、ビニルエステル、ビニルアルコール、マレイン酸無水物、プロピレングリコールおよびエチレングリコールが含まれる。
【0053】
カチオン性アミンは、特定の種および組成物のpHに応じて、第一級、第二級または第三級アミンであり得る。一般に、第二級および第三級アミン、特に第三級アミンが好ましい。
【0054】
アミン置換ビニルモノマーおよびアミンは、アミン形態で重合され、次いで、四級化によってアンモニウムに変換され得る。
【0055】
カチオン性ポリマー類は、アミンおよび/または第四級アンモニウム置換モノマーおよび/または相溶性スペーサーモノマーに由来するモノマー単位の混合物を含むことができる。
【0056】
好適なカチオン性ポリマー類(非限定的な例)としては:
・例えば、それぞれポリクオタニウム6およびポリクオタニウム7として当業界(CTFA)において呼称される、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドホモポリマーおよびアクリルアミドとジメチルジアリルアンモニウムクロリドとのコポリマーを含むカチオン性ジアリル第四級アンモニウム含有ポリマー;
・3~5個の炭素原子を有する不飽和カルボン酸のホモポリマーおよびコポリマーのアミノアルキルエステルの鉱酸塩(米国特許第4,009,256号に記載されている);
・カチオン性ポリアクリルアミド(WO95/22311に記載されている)
が挙げられる。
【0057】
使用することができる他のカチオン性ポリマー類としては、カチオン性セルロース誘導体、カチオン性デンプン誘導体およびカチオン性グアーガム誘導体などのカチオン性多糖ポリマー類が挙げられる。
【0058】
使用することができる特に好適な種類のカチオン性多糖ポリマー類は、カチオン性グアーガム誘導体、例えばグアーヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(Rhodia社からJAGUAR商標シリーズで市販されている)である。このような材料の例は、JAGUAR C13S、JAGUAR C14およびJAGUAR C17である。
【0059】
上記のカチオン性ポリマー類のいずれかの混合物を使用することができる。
【0060】
本発明のヘアケア組成物は、0.01~5%、好ましくは0.02~1%、より好ましくは0.05~0.8%のカチオン性ポリマーを含むことが好ましい。
【0061】
本発明のヘアケア組成物は、1,000,000~2,200,000g/molの平均分子量(M)および0.13~0.3のカチオン置換度を有するカチオン性ポリガラクトマンナン類であるカチオン性沈着重合体をさらに含むことができる。
【0062】
ポリガラクトマンナン類は主にガラクトースおよびマンノース単位から構成される多糖であり、通常、グアー、ローカストビーン、ハニーローカスト、フレームツリーおよびマメ科の他のメンバーなどのマメ科植物由来の種子の胚乳物質中に見出される。ポリガラクトマンナン類は、ポリマー骨格中のマンノピラノース残基の6番の炭素原子から分岐する反復1→6結合α-D-ガラクトシル側基(ガラクトシド単位または残基とも呼ばれる)を有する1→4結合β-D-マンノピラノシル主鎖単位(マンノシド単位または残基とも呼ばれる)の骨格から構成される。異なるマメ科種のポリガラクトマンナンは、ポリマンノシド骨格から分岐するガラクトシド側単位の出現頻度が互いに異なる。マンノシドおよびガラクトシド単位は、本明細書において、一般的にグリコシド単位または残基と称される。グアーガム(以下、「グアー」という)に含まれるポリガラクトマンナン中のマンノシドのガラクトシド単位に対する平均比は約2:1である。
【0063】
好適なカチオン性ポリガラクトマンナン類としてはグアーおよびヒドロキシアルキルグアー(例えば、ヒドロキシエチルグアーまたはヒドロキシプロピルグアー)が挙げられ、これらは1つ以上の誘導体化剤との化学反応によってカチオン修飾されている。
【0064】
典型的な組成物において、カチオン性ポリガラクトマンナン類の量は一般に、組成物の約0.05~1重量%、好ましくは0.1~0.8重量%、より好ましくは0.2~0.6重量%の範囲である。
【0065】
本発明のヘアケア組成物は、カルボン酸ポリマーなどのアニオン性ポリマーレオロジー改質剤をさらに含んでもよい。
【0066】
本発明の文脈における「カルボン酸ポリマー」という用語は一般に、ペンダントカルボン酸基を含有するエチレン性不飽和モノマー(以下、「カルボン酸モノマー」と称する)の重合から得られるホモポリマーまたはコポリマーを意味する。
【0067】
好適なカルボン酸モノマーは一般に、1個または2個のカルボン酸基、1個の炭素-炭素二重結合を有し、合計で3~約10個の炭素原子、より好ましくは3~約5個の炭素原子を含有する。
【0068】
好適なカルボン酸モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸などのα-β-不飽和モノカルボン酸;並びにイタコン酸、フマル酸、マレイン酸およびアコニット酸などのα-β-不飽和ジカルボン酸が挙げられる。上記のα-β-不飽和モノ-またはジカルボン酸の塩、エステルまたは無水物も使用することができる。例えば、α-β-不飽和ジカルボン酸とC1-4アルカノールとの半エステル、例えばモノメチルフマレート;α-β-不飽和ジカルボン酸の環状無水物、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸および無水シトラコン酸;ならびにアクリル酸またはメタクリル酸とC1-30アルカノールとのエステル、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレートおよびオクタデシルアクリレートが挙げられる。
【0069】
場合により、他のエチレン性不飽和モノマーを、カルボン酸ポリマー主鎖中に共重合させることができる。そのような他のエチレン性不飽和モノマーの例としては、スチレン、酢酸ビニル、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリルおよびそれらの混合物が挙げられる。カルボン酸ポリマーは、好ましくは少なくとも1,000,000ダルトンの分子量を有し得る。
【0070】
好適な実例としては、C1-4アルキルアクリレートまたはメタクリレート(例えばエチルアクリレート)と、アクリル酸、メタクリル酸またはこれらの混合物から選択される1種以上のコモノマーとから重合される架橋コポリマーが挙げられる。このような材料は、アクリレートコポリマーのINCI名で一般に呼称され得る。市販の例としては、Rohm and Haas社製のAculyn(登録商標)33が挙げられる。
【0071】
アクリル酸またはメタクリル酸のC10-30アルキルエステルと、アクリル酸、メタクリル酸またはそれらのそれぞれのC1-4アルキルエステルから選択される1種以上のコモノマーとから重合される架橋コポリマーも好適である。そのような材料は一般に、アクリレーツ/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマーのINCI名で称され得る。市販の例としては、Lubrizol Advanced Materials社製のCarbopol(登録商標)ポリマー1342および1382が挙げられる。
【0072】
また、アクリル酸またはメタクリル酸とアルキルアクリレートおよびエトキシル化疎水性修飾アルキルアクリレートとの架橋コポリマーも任意に好適である。このような材料は一般に、アクリレーツ/ステアレス-20メタクリレートコポリマー、アクリレーツ/ベヘネス-25メタクリレートコポリマー、アクリレーツ/ステアレス-20メタクリレートクロスポリマーおよびアクリレーツ/パルメス-25アクリレートコポリマーのINCI名で称され得る。市販の例としては、Rohm & Haas社製のAculyn(登録商標)22、28または88、および3V Sigma社製のSynthalen(登録商標)が挙げられる。
【0073】
カルボン酸は、ペンタエリスリトールのアリルエーテルまたはスクロースのアリルエーテルで架橋されたアクリル酸のホモポリマーなどのカルボマーであることが好ましい。
【0074】
前述の材料のいずれの混合物も使用することができる。
【0075】
好ましくは、本発明のヘアケア組成物が組成物の0.1~3.0重量%、より好ましくは0.4~1.5重量%のカルボン酸ポリマーを含む。
【0076】
上述のカルボン酸ポリマーなどのアニオン性のポリマー性レオロジー改質剤類を含有する製剤では、多くの場合、無機または有機塩基の添加によって遊離カルボキシル基の少なくとも一部を中和する必要がある。適切な無機または有機塩基の例としては、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)、炭酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、メチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0077】
本発明のヘアケア組成物はまた、1種以上の非イオン性セルロースエーテルから選択される非イオン性のポリマー性レオロジー改質剤を含んでもよい。
【0078】
好適な非イオン性セルロースエーテル、または本発明における当該非イオン性のポリマー性レオロジー改質剤としての使用には、(C1-3アルキル)セルロースエーテル、例えばメチルセルロースおよびエチルセルロース;ヒドロキシ(C1-3アルキル)セルロースエーテル、例えばヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース;混合ヒドロキシ(C1-3アルキル)セルロースエーテル、例えばヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース;ならびに(C1-3アルキル)ヒドロキシ(C1-3アルキル)セルロースエーテル、例えばヒドロキシエチルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。
【0079】
本発明において非イオン性のポリマー性レオロジー改質剤として使用するための好ましい非イオン性セルロースエーテルは、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性非イオン性セルロースエーテルである。この文脈における「水溶性」という用語は、25℃および1気圧で100グラムの蒸留水中の少なくとも1グラム、より好ましくは少なくとも3グラム、最も好ましくは少なくとも5グラムの水への溶解度を意味する。この濃度は、巨視的に等方性または透明な、有色または無色の溶液の生成を示す。
【0080】
メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースはDow Chemical社製のMETHOCEL(登録商標)商標シリーズとして、いくつかの粘度グレードで市販されている。
【0081】
任意の非イオン性セルロースエーテルの混合物も好適であり得る。本発明による典型的な組成物において、非イオン性セルロースエーテルの濃度は一般に、組成物の総重量に基づいて、約0.01~約2.0重量%、好ましくは0.1~0.5重量%、より好ましくは0.1~0.3重量%の範囲である。
【0082】
好ましくは、本発明のヘアケア組成物が0.1~0.3重量%の非イオン性セルロースエーテルを含む。
【0083】
本発明のヘアケア組成物は、性能および/または消費者受容性を向上させるために、さらなる任意の成分を含有してもよい。そのような成分の例としては、芳香剤、染料および顔料、ならびに防腐剤が挙げられる。これらの成分のそれぞれは、その目的を達成するのに有効な量で存在する。一般に、これらの任意の成分は、組成物の総重量に基づいて5重量%までの濃度で個々に含まれる。
【0084】
ヘアケア組成物の調製方法
本発明はまた、ヘアケア組成物を調製する方法であって、以下の:
(a)前記ベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体を前記シリコーン化合物と混合してプレミックスを形成する工程;
(b)工程(a)のプレミックスを他の成分と混合して、ヘアケア組成物を形成する工程;
を含む、前記方法に関する。
【0085】
ベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体は、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン-1、ベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-7、ベンゾフェノン-8、ベンゾフェノン-10またはベンゾフェノン-12から選択され、より好ましくはベンゾフェノン-1、ベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-8、ベンゾフェノン-10またはベンゾフェノン-12から選択され、より好ましくはベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-8またはベンゾフェノン-10から選択され、さらに好ましくはベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-3またはベンゾフェノン-8から選択される1種以上の成分であり、もっとも好ましくはベンゾフェノン-3である。
【0086】
シリコーン化合物は、ジメチコーン、ジメチコノールまたはそれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0087】
方法および使用
本発明はまた、第1の態様の組成物をその上に適用する工程を含む、フケを処置する方法を提供する。本方法は、本質的に非治療的である。好ましくは、化粧用である。
【0088】
本発明はまた、フケを処置するための、第1の態様の組成物の使用を提供する。使用は本質的に非治療的であり、好ましくは本質的に化粧用途である。
【0089】
使用方法
本発明のヘアケア組成物は主に、毛髪および頭皮への局所適用を意図している。
【0090】
組成物がシャンプーである場合、それは、毛髪に局所的に適用され、次いで、毛髪および頭皮にマッサージされる。その後、毛髪を乾燥させる前に水ですすぐ。リーブオンヘアケア組成物であるヘアオイルまたはヘアセラムを、洗い流す前に塗布後1~10時間放置する。
【0091】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明され、ここで、言及された全てのパーセンテージは特に明記しない限り、総重量に基づく重量による。
【0092】
実施例は本発明を例示することを意図しており、本発明をそれらの実施例自体に限定することを意図していない。
【実施例
【0093】
実施例1:ベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体とシリコーンとの組合せを含むまたは含まないシャンプー組成物のOctopirox(登録商標)沈着
【0094】
ヘアケア組成物の調製
表-1に示すような以下のシャンプー組成物を調製した:
組成物1を調製する場合、ベンゾフェノン-3およびジメチコーンは、他の成分と混合して組成物を形成する前に予備混合される。
【表1】
【0095】
Octopirox(登録商標)沈着試験法
ヒトの頭皮を模倣するために、ビトロ-スキン(Vitro-skin(IMS Incから供給される))が使用される。ビトロ-スキンを適切なサイズに切断し、プラスチックリングで固定する。試験するシャンプー組成物0.20gをビトロ-スキン上に加え、続いて1.8mLの脱イオン水を加える。シャンプーを30秒間攪拌棒で全表面上に攪拌して擦りつけて、スポイトを用いてシャンプー液を全て取り出す。次いで、4mLの脱イオン水でビトロ-スキンをすすぐ。30秒間、表面全体を再度撹拌し、擦る。すべてのすすぎ水を取り出し、もう一度すすぎを繰り返す。ビトロ-スキンが完全に乾燥した後、ビトロ-スキンを10mLのメタノールと共に遠心管に入れ、続いて30分間超音速抽出する。4mLのメタノールを新しい遠心管に移し、真空濃縮器によりメタノールを完全に蒸発させる。メタノール0.4mLで再構成し、試料0.2mLをマイクロインサート付き2mL超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)褐色バイアルに移す。
【0096】
Waters(登録商標)ACQUITY超高速液体クロマトグラフィー(UPLC、ウォーターズ、マンチェスター、英国)を試料分析に使用した。MassLynxソフトウェア(バージョン4.1)を、機器制御およびデータ収集に使用した。分離は、Waters Acquity UPLC BEH C18カラム(2.1×100mm、粒径1.7μm)で行った。移動相Aは脱イオン水中の0.1%ギ酸+5μMメドロン酸から成り、移動相Bはアセトニトリル中の0.1%ギ酸から成り、勾配モードでプログラムした。試料は、302nmの吸収波長でフォトダイオードアレイ(PDA)検出器によって測定した。
【0097】
試験したOctopirox(登録商標)沈着の結果を下記表-2に示す:
【表2】
【0098】
結果は、ベンゾフェノン-3およびジメチコーンの組み合わせを含む組成物1が組成物A(ベンゾフェノン-3およびジメチコーンを含まない)、B(ジメチコーンを含まない)およびC(ベンゾフェノン-3を含まない)よりも有意に良好なピロクトンオラミンの沈着を提供したことを示した。
【0099】
実施例2:様々なベンゾフェノン誘導体が紫外線曝露下のOctopirox(登録商標)沈着に及ぼす影響
【0100】
表-3に示す以下の組成物を調製した。
【0101】
組成物Dおよび2を調製する場合、ベンゾフェノン-3またはベンゾフェノン-4は、他の成分と混合して組成物を形成する前にジメチコーンと予備混合される。
【表3】
【0102】
紫外線曝露下のOctopirox(登録商標)沈着試験
実施例1で述べたプロトコールに従って、シャンプー組成物を用いてビトロ-スキンを処理する。
【0103】
UV処理:
ビトロ-スキンが完全に乾燥した後、300μLの50%水/50%メタノールをビトロ-スキンに加え、続いて紫外線(UV)照射を行う。UV照射は、X-Rite(Macbeth社)Spectra Light IIIチャンバー中で行った。UVモードは、UVA光とUVB光の両方を提供するUV照射について選択された。紫外線をUVX放射計(UVX-36、E24195、UVP)によって試験し、強度を、UVAについては250μw/cm、UVBについては110μw/cmと評価した。チャンバー温度は、室温(20±2℃)に等しかった。試料を、4時間の曝露の間、チャンバーの中心に近い線に置いた。ビトロ-スキンを一晩乾燥させ、UPLCでOctopirox(登録商標)沈着を測定する。
【0104】
沈着されたOctopirox(登録商標)は、実施例1に記載の方法のようなUPLCを用いて測定した。
【0105】
試験したOctopirox(登録商標)沈着の結果を下記表-4に示す:
【表4】
【0106】
表-4のデータは、UV曝露下のピロクトンオラミンの沈着が、本発明以外の対応する試験例(本発明のベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体を含有しない組成物D)と比較して、実験中に本発明による組成物(組成物2)を使用した場合に著しく改善されることを明確に示している。データはさらに、本発明のベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体とシリコーンとの組み合わせが、ピロクトンオラミンの沈着および光安定性を改善し得ることを示す。
【0107】
実施例3:ベンゾフェノン誘導体の用量が紫外線曝露下のOctopirox(登録商標)沈着に及ぼす影響
【0108】
表-5に示す以下の組成物を調製した。
【0109】
組成物Dおよび2を調製する場合、ベンゾフェノン-2またはベンゾフェノン-3は、他の成分と混合して組成物を形成する前にジメチコーンと予備混合される。
【表5】
【0110】
Octopirox(登録商標)沈着を、実施例1に記載されたものと同じ方法を使用することによって試験した。
【0111】
試験したOctopirox(登録商標)沈着の結果を下記表-6に示す:
【表6】
【0112】
結果は、0.2%以上の用量のベンゾフェノン-3またはベンゾフェノン-2とジメチコーンとの組み合わせを含む組成物3~5が組成物E(ベンゾフェノン誘導体およびジメチコーンを含まない)、F(ベンゾフェノン誘導体を含まない)およびG(0.2%未満の用量のベンゾフェノン誘導体)よりも有意に良好なピロクトンオラミンの沈着をもたらしたことを示した。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
(i)ベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-3またはベンゾフェノン-8から選択されるベンゾフェノン誘導体;
(ii)ピロクトンオラミン;
(iii)シリコーン化合物;および
(iv)化粧品として許容される担体;
を含むヘアケア組成物であって、前記ベンゾフェノン誘導体の量は全組成物の0.2~10重量%である、前記ヘアケア組成物。
【請求項2】
前記ベンゾフェノン誘導体の量が0.3~5重量%である、請求項1に記載のヘアケア組成物。
【請求項3】
前記ピロクトンオラミンの量が0.01~10重量%である、請求項1または2に記載のヘアケア組成物。
【請求項4】
前記シリコーン化合物の量が0.01~10重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のヘアケア組成物。
【請求項5】
界面活性剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のヘアケア組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤がアニオン性界面活性剤またはカチオン性界面活性剤である、請求項5に記載のヘアケア組成物。
【請求項7】
前記アニオン性界面活性剤がアルキル硫酸塩界面活性剤および/またはアルコキシル化アルキル硫酸塩界面活性剤である、請求項6に記載のヘアケア組成物。
【請求項8】
ベタイン界面活性剤を含む、請求項7に記載のヘアケア組成物。
【請求項9】
組成物がシャンプーである、請求項5~8のいずれか一項に記載のヘアケア組成物。
【請求項10】
前記カチオン性界面活性剤がステアラミドプロピルジメチルアミン、ベヘントリモニウムクロリドまたはステアリルトリメチルアンモニウムクロリドである、請求項6に記載のヘアケア組成物。
【請求項11】
前記組成物がヘアコンディショナーである、請求項10に記載のヘアケア組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のヘアケア組成物を調製する方法であって:
(a)前記ベンゾフェノン誘導体を前記シリコーン化合物と混合してプレミックスを形成する工程;
(b)工程(a)のプレミックスを他の成分と混合してヘアケア組成物を形成する工程、
を含む前記方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物を所望の頭皮表面に局所適用する工程を含む、フケを処置する方法。
【国際調査報告】