(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】複数の無線周波数障害の推定
(51)【国際特許分類】
H04B 17/391 20150101AFI20231130BHJP
G06N 3/0464 20230101ALI20231130BHJP
G06N 3/0442 20230101ALI20231130BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20231130BHJP
H04B 17/24 20150101ALI20231130BHJP
H04B 17/21 20150101ALI20231130BHJP
H04B 1/16 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H04B17/391
G06N3/0464
G06N3/0442
G06N20/00
H04B17/24
H04B17/21
H04B1/16 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524888
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(85)【翻訳文提出日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2021080051
(87)【国際公開番号】W WO2022090426
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519061251
【氏名又は名称】ヴェステル・エレクトロニキ・サナイ・ヴェ・ティジャレット・ア・セ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】アイギュル, メフメット アリ
(72)【発明者】
【氏名】アルスラン, フセイン
【テーマコード(参考)】
5K061
【Fターム(参考)】
5K061AA10
5K061BB12
5K061JJ06
5K061JJ07
(57)【要約】
本開示は、受信されたワイヤレス通信信号内の、障害の検出に関する。これは、障害のN個のタイプ(発生源)それぞれの存在、及び場合によっては、受信された信号内に存在する障害の量を検出し得る。検出は、学習を適用することによって、障害のN個の発生源を区別するように訓練された訓練可能モジュールによって、受信された信号を処理することを含み、Nは1より大きな整数である。訓練可能モジュールは、N個の発生源の各発生源jについて、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与を出力する。寄与は、障害のj番目の発生源の有り又は無しを示す2値とすることができ、又は障害の量も示し得る。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数送信障害を推定する方法であって、
ワイヤレスチャネルを通して受信された信号を取得するステップと、
障害のN個の発生源を区別するように訓練された訓練可能モジュールによって、前記取得された信号を処理するステップであり、Nは1より大きな整数である、処理するステップと、
前記訓練可能モジュールから、前記N個の発生源の各発生源jについて、前記取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与を出力するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記送信機側での障害の前記発生源は、
周波数オフセット
位相オフセット
クロックオフセット
電力増幅器障害
フィルタ障害、及び
変調障害
のうち1つ又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記寄与は、前記受信された信号に対する、障害の発生源からの寄与の有り又は無しの1つを示し、
前記取得された信号を処理する前記ステップは、
前記N個の発生源の各発生源jについての要素を備える特徴ベクトルを取得するステップであって、前記要素は、前記取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与の程度を示す、取得するステップと、
前記特徴ベクトルの各j番目の要素が閾値を超えるかどうかを比較するステップと、
各j番目の要素について、前記j番目の要素が閾値を超える場合は、前記j番目の要素の寄与をTRUEに設定し、そうでなければ前記j番目の要素をFALSEに設定するステップと、
をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の前記寄与は、M>2であるM個の値の1つをとり得る前記寄与の程度を示し、
前記取得された信号を処理する前記ステップは、前記N個の発生源の各発生源jについてのj番目の要素を備える特徴ベクトルを出力し、前記j番目の要素は、前記取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与の前記程度を示す、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記機械学習は、多層パーセプトロン、長短期記憶、及び畳み込みニューラルネットワークを含む、1つ又は複数のタイプの機械学習法を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
障害の前記N個の発生源の少なくとも2つは、異なるタイプの機械学習法によって処理される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の前記出力された寄与に基づいて、前記取得された信号を補償するステップ
をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ワイヤレスチャネルを通して受信された前記信号は、送信デバイスから受信され、
前記方法は、障害の前記N個の発生源の少なくとも1つに対する前記寄与の表示を、前記送信デバイスに送信するステップをさらに含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記送信デバイスにおいて、障害の前記N個の発生源の少なくとも1つに対する前記寄与の前記表示を受信するステップと、
前記送信デバイスにおいて、前記受信された表示に従ってプリディストーションを適用するステップと
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記取得された信号に対する、障害の前記N個の発生源の前記出力された寄与に基づいて、物理層認証を行うステップ
をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
無線周波数送信障害を推定するための訓練可能モジュールを訓練する方法であって、
障害によって及び送信チャネルによって劣化された入力信号と、前記障害のタイプ、信号を示す障害表示とを含んだ複数の訓練データを備える訓練セットを取得するステップと、
前記訓練セットを、前記訓練可能モジュールに入力するステップと、
前記入力された訓練セットに従って、前記訓練可能モジュールのパラメータを適応させるステップと、
前記適応されたパラメータを、無線周波数送信障害を前記推定するステップでの使用のために記憶するステップと
を含む方法。
【請求項12】
前記訓練セットを取得する前記ステップは、前記訓練セット内の各訓練データについて、
入力信号を生成するステップと、
前記障害のタイプ及び/又はパラメータを示す、前記障害表示を決定するステップと、
前記障害によって、前記入力信号を劣化させるステップと、
前記劣化された入力信号をワイヤレスチャネルを通して送信し、前記送信された信号を受信することによって、送信チャネルと前記障害とによって劣化されたを取得するステップと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
無線周波数送信障害を推定するための装置であって、
前記装置が処理回路を備えており、前記処理回路が、
ワイヤレスチャネルを通して受信された信号を取得することと、
教師あり学習を適用することによって、障害のN個の発生源を区別するように訓練された訓練可能モジュールによって、前記取得された信号を処理することであり、Nは1より大きな整数である、処理することと、
前記訓練可能モジュールから、前記N個の発生源の各発生源jについて、前記取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与を出力することと、
を行うように構成されている、装置。
【請求項14】
前記処理回路は、
障害によって及び送信チャネルによって劣化された入力信号と、前記障害のタイプ、信号を示す障害表示とを含んだ複数の訓練データを備える訓練セットを取得するステップと、
前記訓練セットを、前記訓練可能モジュールに入力するステップと、
前記入力された訓練セットを用いた前記機械学習に従って、前記訓練可能モジュールのパラメータを適応させるステップと、
前記適応されたパラメータを、無線周波数送信障害を前記推定するステップでの使用のために記憶するステップと
によって、前記学習モジュールを訓練するようにさらに構成されている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
複数の障害によって劣化された信号を受信するための装置であって、
ワイヤレスチャネルを通して受信される信号を受信するための受信機と、
前記受信された信号内の無線周波数送信障害を推定するための、請求項14に記載の装置と、
補償モジュールと、
を備え、前記補償モジュールは、
前記受信された信号を、前記推定された無線周波数送信障害に対して補償することと、
前記信号が送信機から受信された該送信機へのフィードバックとして、前記推定された無線周波数送信障害の表示を送信することと、
を行うように構成されている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤレスチャネルを通した送信に関連した障害の推定に関する。
【背景】
【0002】
ワイヤレス通信には、起こり得る送信障害の発生源が多数あり、これらの障害は受信機において誤った信号受信を引き起こすことがある。エラーに対処するためのいくつかの可能性がある。例えば、エラーは少なくとも部分的に補償され得る。補償は、プリディストーションを使用することによって送信機において、又は周波数、位相、及び/又は時間シフトを補償することによって受信機において、行われ得る。補償は、ワイヤレス送信機、チャネル、及び/又は受信機のいくつかの特性が知られている場合に、少なくともある程度可能である。
【0003】
信号障害は、例えばハードウェアの欠陥によって、すでに送信機において導入され得る。例えば、パルス整形フィルタなどのフィルタ、キャリア周波数上に信号を変調するための変調器、ソフトウェア/ハードウェア動作のタイミングを合わせるためのクロック、又は電力増幅器を含んだ、送信機のフロントエンドは、周波数オフセット、位相オフセット、又はタイミングオフセットなどの信号歪みを引き起こし得る。歪みは、非線形となり得る。障害の別の発生源は、ワイヤレスチャネルである。ワイヤレスチャネルは、例えば、経路損失、多重伝搬、及び/又はいくつかのフェーディング障害その他を被り得る。最後に、受信機も、送信機のものと同様な、ハードウェア障害の発生源になり得る。
【0004】
将来のワイヤレス通信システムは、大きな送信帯域幅と、高いキャリア周波数とを必要とする、常に増加するデータレートを供給することが期待される。また、これらのシステムは、高い汎用性及び再構成可能性を有する無線送信機及び受信機をもたらすことが期待される。従って、これらは、シームレスなサービスの品質のための多様な用途での、付加価値サービスを確実にすることができる。しかし、将来のワイヤレス通信システムのために、このような小型の、高品質無線、及び低コスト及び汎用性のある機器を構築することは、非常に難易度が高い課題である。結果として、無線トランシーバにおいて、様々な欠陥(障害)が生じることが予想される。これらの障害が適切に推定され、補償されない場合、それらはワイヤレス通信システムの性能を大幅に低下させ得る。
【0005】
信号送信エラーの補償を可能にするために、エラーの特性を知ることが好ましくなり得る。
【概要】
【0006】
本発明は、モデルベースの学習を用いることによって複数の障害を検出するための方法、及び装置に関する。
【0007】
本発明は、独立請求項の範囲によって定義される。有利な実施形態のいくつかは、従属請求項によってもたらされる。
【0008】
特に、本開示のいくつかの実施形態は、同じ訓練されたモジュールによって、複数の障害を検出することに関する。いくつかの実施形態はまた、モジュールの訓練に関する。
【0009】
一実施形態によれば、無線周波数送信障害を推定する方法が提供され、方法は、ワイヤレスチャネルを通して受信された信号を取得するステップと、障害のN個の発生源を区別するように訓練された訓練可能モジュールによって、取得された信号を処理するステップであって、Nは1より大きな整数である、処理するステップと、訓練可能モジュールから、N個の発生源の各発生源jについて、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与を出力するステップとを含む。
【0010】
一実施形態によれば、無線周波数送信障害を推定するための訓練可能モジュールを訓練する方法が提供され、方法は、障害によって及び送信チャネルによって劣化された入力信号と、障害のタイプ、信号を示す障害表示とを含んだ複数の訓練データを備える訓練セットを取得するステップと、訓練セットを、訓練可能モジュールに入力するステップと、入力された訓練セットに従って、訓練可能モジュールのパラメータを適応させるステップと、適応されたパラメータを、無線周波数送信障害を前記推定するステップでの使用のために記憶するステップとを含む。
【0011】
一実施形態によれば、無線周波数送信障害を推定するための装置が提供され、装置は、処理回路を備えており、該処理回路は、ワイヤレスチャネルを通して受信された信号を取得することと、教師あり学習を適用することによって、障害のN個の発生源を区別するように訓練された訓練可能モジュールによって、取得された信号を処理することであって、Nは1より大きな整数である、処理することと、訓練可能モジュールから、N個の発生源の各発生源jについて、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与を出力することとを、行うように構成されている。
【0012】
本開示の主題の、これら及び他の特徴及び特性、並びに構造の関連する要素の動作の方法及び機能、及び部品の組み合わせ及び製造の経済性は、そのすべてが本明細書の一部となる添付の図面を参照した、以下の説明及び添付の「特許請求の範囲」を考察することによってより明らかになるであろう。しかし、図面は例示及び説明のためのみであり、本開示の主題の限界を定義するものでないことが、明示的に理解されるべきである。明細書及び「特許請求の範囲」で用いられる、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、異なる解釈を文脈が明らかに示す場合を除き、複数の指示対象を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
様々な実施形態の特質及び利点は、以下の図を参照することによって理解され得る。
【
図1】
図1は、一般的な通信システムの全体的なモデルを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、一般的なモデルベースの手法の4つのフェーズを示すフロー図である。
【
図3】
図3は、訓練可能モデルを使用する、複数RF障害推定の機能図である。
【
図4】
図4は、複数RF障害推定のための訓練データを取得するフェーズの機能図である。
【
図5】
図5は、訓練データ取得フェーズの出力の機能図である。
【
図6】
図6は、例示的訓練フェーズの機能図である。
【
図7】
図7は、例示的試験/推論フェーズの機能図である。
【
図8】
図8は、特徴抽出を有する機械学習モデルを用いた、複数RF障害推定の機能図である。
【
図9】
図9は、異なる障害発生源の寄与を出力するための、例示的出力形式を示す概略図である。
【
図10】
図10は、シングルキャリア同期のための例を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、マルチキャリア同期のための例を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、訓練フェーズにおける物理層認証機能モジュールを示すブロック図である。
【
図13】
図13は、推論フェーズにおける物理層認証機能モジュールを示すブロック図である。
【
図14】
図14は、障害を推定するための装置の例示的構造を示すブロック図である。
【
図15】
図15は、障害を推定するための装置の一部となり得るメモリの例示的構造を示すブロック図である。
【詳細な説明】
【0014】
本明細書の以下での説明のために、「端部」、「上側」、「下側」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「上部」、「下部」、「横方向」、「長手方向」、及びそれらの派生語は、それが図面の図で方向付けられているように、本開示の主題に関係するものとする。しかし、本開示の主題は、それに反して明示的に記載されない限り、様々な代替の変形及びステップシーケンスを想定し得ることが理解されるべきである。また、添付の図面に示される、及び以下の明細書で述べられる、特定のデバイス及びプロセスは、単に、本開示の主題の例示的実施形態又は態様であることが理解されるべきである。従って、本明細書で開示される実施形態又は態様に関する、特定の寸法及び他の物理的特性は、別段の記載がない限り、限定するものと考えられるべきではない。
【0015】
本明細書で用いられる、態様、構成要素、要素、構造、作用、ステップ、機能、命令、及び/又はその他の、いずれも、明示的にそのように述べられない限り、決定的に重要又は必須と解釈されるべきではない。また、本明細書で用いられる冠詞「a」及び「an」は、1つ又は複数の品目を含むことが意図され、「1つ又は複数」及び「少なくとも1つ」と同義的に用いられ得る。さらに、本明細書で用いられる「セット」という用語は、1つ又は複数の品目を含むことが意図され(例えば関連する品目、関連しない品目、関連する及び関連しない品目の組み合わせ、及び/又はその他)、「1つ又は複数」及び「少なくとも1つ」と同義的に用いられ得る。ただ1つの品目が意図される場合、「1つ」又は同様な言葉が用いられる。また、本明細書で用いられる「has」、「hava」、「having」、又はその他の用語は、オープンエンドな用語であることが意図される。さらに、「に基づく」という語句は、明示的な別段の記載がない限り、「に少なくとも部分的に基づく」ことを意味することが意図される。
【0016】
無線周波数(RF)障害推定、及びモデルベースの学習を用いたRF障害補償の分野において、いくつかの研究がなされている。RF障害推定に対する研究は、通常、このようなタイプの障害に対して特に訓練されたモデルを用いた、単一RF障害タイプの推定に関する。例えば、検出は最初に、RF障害の特定のタイプの存在を検出し、次いで検出された障害の数値を推定することによって行われ得る。しかし、検出は難しい場合があり、常に正確な結果をもたらさない。検出におけるいずれのエラーも、RF障害推定、及び可能なさらなる補償の性能を著しく低下させ得る。それに加えて、特定のタイプのアーチファクトの存在の検出のみに基づくこのような方法は、異なる種類の障害の間の、可能な相関を見落とす。これらの相関の利用は、推定品質を改善し得る。これはとりわけ、障害が互いに強く相関するときに当てはまる。本開示のいくつかの実施形態では、1つのモデルを用いた複数のRF障害の検出は、全体的性能の改善を可能にする。
【0017】
一方、共同のRF障害補償に対する研究は、異なる種類のRF障害の影響に対して、受信された信号を補償することを目指す。それらは通常、特定のRF障害タイプを、識別/認識しない。目的は、送信された信号とできるだけ同様な、受信された信号を取得するように、補償モデルを訓練又は構成することである。これらの技法の不利な点の1つは、それらが障害を推定しないことである。それらの唯一の関心は、障害の共同の影響に対して補償することである。従って、訓練可能モデルは、任意の他の目的に対して用いられることはできず、補償が良好に行われることができなければ役立たない。本開示のいくつかの実施形態によれば、障害は、別々に認識され、推定される。従って、障害のいくつかは、いくつかのシナリオにおいて誤って推定され得るが、それらのいくつかは依然として用いられ得る。さらに、RF障害が推定される場合、それらは、異なる目的に用いられ得る。例えば、それらの影響は、信号が送られる前に補償され得る。信号を送信する前のこのような補償は、プリディストーションと呼ばれ、これは、検出された/推定された障害によって劣化されたとき、もとの信号にできる限り同様な信号が受信されるように、送信されるべき信号が通常歪ませられるからである。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態は、任意のワイヤレスシステムに広く適用可能である。一般に、RF障害推定は、物理層の重要な部分である。従って、システムの物理層に関する標準は、それらを活用し得る。本開示は、ZigBee(商標)、WiFi(例えばIEEE802.11標準ファミリー、例えば、現在研究されている第7世代のWiFi、IEEE802.11be)、LoWPAN(6LoWPAN-Ipv6ベースのLoWPANなど、低電力ワイヤレスパーソナルエリアネットワーク)、又は任意の他のLANなど、ワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)に容易に適用可能である。本発明は、Bluetooth(商標)、Bluetooth LE(低電力)、又は例えば2.4GH帯域で動作する任意の独自開発のネットワークなどのパーソナルエルアネットワークに、等しく適用可能とすることができる。本発明は、特に高い周波数及び/又は高い変調次数において利点をもたらす。本発明は、コグニティブ無線標準(IEEE802.22、IEEE802.15など)の関連における改良をもたらし得る。
【0019】
本開示はまた、セルラモバイルシステム及びそれらの異なる動作モードなど、モバイルシステムに適用可能であることが留意される。例えば、いくつかの実施形態は、ロングタームエボリューション(LTE)/LTEアドバンスト(LTE-A)標準のもとでの、又は第5世代(5G)及びビヨンド5G通信システムでの、通信技術に適用可能となり得る。このような5Gシステムの例は、新無線(NR)とすることができる。
【0020】
図1は、例示的な機能的通信(サブ)システムCSを示し、1は送信機を表し、2は受信機を表す。送信機1は、インターフェース3を通して、受信機2に信号を送信する能力を有する。インターフェースは、例えば、ワイヤレスインターフェースとすることができる。インターフェースは、送信機1及び受信機2によって送信及び受信のために用いられ得るリソースを用いて、指定され得る。このようなリソースは、時間領域、周波数領域、符号領域、及び空間領域の1つ又は複数(又はすべて)によって規定され得る。一般に、「送信機」及び「受信機」はまた、同じデバイスに共に統合され得ることが留意される。言い換えれば、
図1のデバイス1及び2は、それぞれ2及び1の機能を含み得る。送信機1及び受信機2は、基地局(eNB、AP)、又は端末(UE、STA)などの任意のデバイス内に、又は通信システムCSの任意の他のエンティティ内に実装され得る。基地局又は端末などのデバイスは、2及び1の両方を実装し得る。本開示は、いずれの特定の送信機1、受信機2、及び/又はインターフェース3の実装形態に限定されない。しかし、本開示は、いくつかの既存の通信システムに、並びにそのようなシステムの拡張に、又は新たな通信システムに、容易に適用され得る。例示的な既存の通信システムは、例えば、現在又は将来のリリースでの5G新無線(NR)、及び/又は最近研究されているIEEE802.1beなどのIEEE802.11ベースのシステム、又は上述のシステムなどとすることができる。
【0021】
一般に、通信システムは、多種多様な障害を被り得る。例えば、ハードウェアは、何らかの相互変調及び増幅器歪み、局部発振器、及び量子化損失を導入し得る。設計者の殆どは、簡略化された閉形式モデルに依存する。しかし、これらのモデルは、現実世界のシステム及びチャネルの影響を正確に又は総合的に捕捉せず、非常に複雑な問題であるのでそれらは、同時に複数のRF障害を推定することができない。この複雑な問題に対して、深層学習(DL)ベースの方法は非常に見込みがある。本開示のいくつかの実施形態では、一段階法としてDLベースのモデルが用いられることができ、これは一緒に複数のRF障害を推定することができる。この手法は、訓練及び試験と呼ばれる2つの段階を含む。訓練段階では、受信された信号は入力として、及び既知の障害はDLモデルを訓練するためにDLモデルへの出力として、供給される。次いで、試験段階では、受信された信号は訓練されたDLモデルに供給され、訓練されたDLモデルはすべての欠陥を見出す。
【0022】
一般に、訓練可能モデルと共に、いくつかのフェーズが関わり得る。
図2は、これらのフェーズを示す。第1のフェーズ10では、(1つ又は複数の)訓練可能モデルを訓練するためのデータセットが取得される。訓練セットは、信号内への障害の導入を制御することと、何らかのチャネル又はチャネルモデル又はノイズなどを渡した後に受信された信号を測定することとによって、得られ得る。次いで、導入された障害(グラウンドトゥルースに対応する)及び測定された信号は、訓練セットのための訓練ペアを形成する。本開示は、教師あり学習と共に、又は教師なし学習と共に、又は強化学習と共に用いられ得ることが留意される。第2のフェーズ20では、(1つ又は複数の)訓練可能モデルは、フェーズ10で取得された訓練データセットを入力することによって訓練される。第3のフェーズでは、(1つ又は複数の)訓練可能モデルは30で試験される。試験30は、モデルの精度を評価することを可能にする。精度が十分でない場合、ステップ20、及び場合によってはまた10が繰り返され得る。第4のフェーズ40は、生成フェーズ(推論フェーズとも呼ばれる)であり、そこでは(1つ又は複数の)訓練されたモデルが、障害検出のために使用される。
【0023】
このような手法は、障害がそれらの間に相関を有すると考えることを可能にし得る。どの推定モデルが用いられるべきかを学習する必要があるので、障害の存在は、エキスパート又は何らかのツールによって検出されるべきである。従って、複数のRF障害は、単一のモデルを用いて推定されるべきである。本開示の目標の1つは、障害を推定することである。障害が検出された/認識された後、情報は様々な目的に用いられ得る。それに応じて、いくつかの実施形態は、検出された障害に対する補償を含む(送信機又は受信機において)。いくつかの実施形態は、ユーザの認証に対する、又は他のセキュリティ関連の問題点に対する、検出された障害の適用を含む。いくつかの実施形態の障害検出は、障害を補償するための良く知られた手法の任意のものと共に用いられ得ることが留意される。さらに、いくつかの実施形態の障害検出は、検出された障害に基づいて、ユーザが正当である(認証された)か否かを決定するための、良く知られた手法のいずれかと共に用いられ得る。
【0024】
図3は、本開示の一実施形態による、深層学習(DL)モデルを用いた複数RF障害推定の概観を示す。この実施形態では、DLモデルを用いて、システム内の複数の障害を推定するための一段階解決策が提供される。
図1で、送信信号Txは、RF障害102及び103によって劣化され、チャネル110を通って送信され、以て受信された信号Rxとなる。次いで受信された信号Rxは、DLモジュール120に供給され、これは、障害を推定するために、及び推定された障害発生源125を出力するために用いられる。DLモジュール120による推定が正しい場合は、推定された障害発生源125は、RF障害102及び103に対応する。これらの進歩は、よりロバスト性があり、より良い性能の通信システムを設計することを可能にする。
【0025】
この実施形態によれば、無線周波数送信障害を推定する方法がもたらされる。方法は、ワイヤレスチャネル110を通して受信された信号Rxを取得するステップを含む。取得するステップは、例えば、受信ステップとすることができる。しかし、このステップはまた単に、受信を行ったデバイスへのインターフェースを通して受信された信号Rxを取得するステップを含み得る。方法は、教師あり学習を適用することによって、障害のN個の発生源を区別するように訓練された機械学習モジュール120によって、取得された信号Rxを処理するステップを含む。ここで、Nは1より大きな整数である。方法は、N個の発生源の各発生源jについて、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与を、機械学習モジュール120から出力するステップをさらに含む。N個の発生源は、必ずしも任意の可能な発生源ではないことが留意される。Nは、訓練可能モジュール120がそれに対して訓練された、発生源の数である。
【0026】
一般に、機械学習モジュールは、訓練される(訓練可能な)モジュールとすることができる。寄与は、特定の障害タイプ(j番目)の存在及び/又は量を示す任意のものとすることができる。例示的実装形態によれば、寄与は、受信された信号に対する、障害の(j番目の)発生源からの寄与の有り又は無しの1つを示す。言い換えれば、寄与は2値で示される。
【0027】
上述の方法では、取得された信号を処理するステップは、N個の発生源の各発生源jについての要素を含む、特徴ベクトルを取得するステップをさらに含むことができ、要素は、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与の程度を示す。次に続くステップは、特徴ベクトルの各j番目の要素が閾値を超えるかどうかを、比較することを含む。いくつかの実施形態では、閾値は、特徴ベクトルの異なる要素に対して異なり得る。要素は、それぞれの異なるタイプの障害を表す。従って、次元において特徴ベクトルに対応する、閾値ベクトルが存在し得る。しかし、本開示はそれに限定されず、いくつかの実施形態では、閾値は、すべての要素に対して同じとすることができる。閾値適用の後、次のステップは、各j番目の要素に対して、j番目の要素が閾値を超える場合は、j番目の要素の寄与をTRUEに設定し、そうでなければj番目の要素をFALSEに設定することである。値TRUEは、受信された信号Rx内に、(N個の障害のうちの)j番目のタイプの障害があることを示し、FALSEは、受信された信号Rx内に、(N個の障害のうちの)j番目のタイプの障害がないことを示す。
【0028】
しかし、本開示は、2値の値を出力することに限定されないことが留意される。むしろ、例示的実装形態では、非2値の値が出力され、これは特徴ベクトルとすることができる。特徴ベクトルは、2つより多い可能な値を有する量子化など(上述の閾値適用は、2つのレベルを有する量子化と見られ得る)、いくつかのさらなる処理を受け得る。例えば可能な実装形態では、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与は、M>2として、M個の値の1つをとり得る寄与の程度を示す。取得された信号を処理するステップは、N個の発生源の各発生源jについてのj番目の要素を備えた特徴ベクトルを出力し、j番目の要素は、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与の程度を示す。
訓練データセットを取得する10
【0029】
上述の方法は、
図2に示されるフェーズ40、推論に属する。以下では、
図2の訓練セットデータ準備フェーズ10が、簡潔に例示される。簡単なシナリオは
図4に示される。
図4のシステムモードでは、送信信号Txが送信され、RF障害202及び203によって影響を受ける。結果としての影響を受けた送信信号は、チャネル210を通して送信される。次いで、受信された信号Rxは、受信機によって捕捉される。その後に、いくつかの特定の障害が、例えばいくつかのモデルベースの方法によって、又は任意の単一の障害検出方法を用いて、検出される。検出は、
図5で、検出モジュラ310を表す、別々のモデル1~Nによって示される。モデル1、モデル2などは、例えばある特定の単一のタイプの障害を検出するための、文献で知られている従来のモデルとすることができる。また、各モデル1~nは、深層学習モデルとすることができる。それに加えて、これらのモデルは機械学習モデルとすることができ、なぜならそれらは、ただ1つの問題を解くように、例えば1つの種類の障害を信頼性をもって検出するように、特に設計され得るからである。モデル1、モデル2などのいずれも、訓練段階において2つ以上のRF障害を推定することができる。モデル(1~nの1つ)は、例えば、2つ以上の障害の組み合わせの存在を推定し得る。
【0030】
障害は、周波数オフセット、位相オフセット、クロックオフセット、電力増幅器問題(非線形性など)、フィルタ歪み、及びIQ変調器問題点、その他など、任意の障害とすることができる。次いで、これらの推定された値は、ベクトル320として記憶される。このプロセスは、
図5に示される。それに対応して、これらの値320がそれから取得された受信された信号Rxは、入力として記憶される。これらのプロセスは、データセットの、十分な量の入力-出力(Rx、320)ペアが生成されるまで繰り返される。データセットの、所望の又は適切なサイズは、システム性能(障害認識の品質)、計算の複雑さ、及び/又はメモリなどの、システム要件に従って決定され得る。
【0031】
フェーズ10で取得された訓練データセットは、訓練フェーズ20のために用いられ得る。訓練されたモデルは次いで、試験30又は推論40のために用いられ得る。
図6は、深層学習モジュール420が訓練される、訓練フェーズ20を示す。
【0032】
図5では、障害のタイプ及び/又はパラメータを示す、障害表示の決定は、障害固有のモデルによって、又はすでに訓練され及び試験されたモデルによって、又はいくつかの訓練可能でない手法によって行われた。しかし、本開示は、訓練データセットの、いずれかの特定の取得に限定されない。一般に、訓練セットを取得することは、訓練セット内の各訓練データについて、入力信号Txを生成するステップ、障害のタイプ及び/又はパラメータを示す障害表示を決定し、障害によって入力信号を劣化させるステップ、及び障害と、劣化された入力信号をワイヤレスチャネルを通して送信し、送信された信号を受信することによって送信チャネルとによって劣化された信号Rxを取得するステップを含む。一般に、障害発生源はシミュレートされ得る。例えば、シミュレータ又はシミュレーティングソフトウェアがあり、これは、既知のパラメータ(量)を用いて障害を生成することができ、次いでそれらを用いて送信信号を障害し、チャネルを通じた送信を行う又はシミュレートする。このような場合、訓練データセットペアは、出力(グラウンドトゥルース)として既知の障害(及び場合によっては、それらの量)と、訓練可能モデルへの入力として結果としての受信された信号とによって、形成される。
【0033】
次いで、取得された受信された信号Rxは、訓練セットとしての使用のために、障害表示と一緒に記憶される。障害表示は、インデックス、又は名前、又は訓練されることになるモデルによって認識可能な特定の障害タイプに割り当てられたもの表す任意のものとすることができる。障害表示は、障害の量を含み得る。特定の例として、障害表示は、周波数オフセットなどの障害タイプと、周波数オフセットの値などの障害の量とを含み得る。本開示は、障害タイプと障害量との両方が検出される場合に、限定されない。本開示は、障害タイプのみが検出される実施形態と、及び障害のタイプ及び障害の量の両方が検出される実施形態とをもたらす。チャネル210を通した送信は、シミュレートされ得ることが留意される。このようなシミュレーションでは、チャネルは、ある特定の数学モデルによって表されることができ、又は実際の送信条件をシミュレートすることによって取得され得る。しかし、現実のシステムからデータを用意することは、実用的な使用のために、DLモデルをより効率的に訓練する助けとなり得る。
【0034】
訓練セットは、入力(受信された信号)と、区別可能な障害(障害発生源)の中での2つ以上の障害の様々な組み合わせによって生成された出力(関わる障害)との、ペアを含み得る。これは、モデル性能を改良し、異なる障害の間の相関を活用することを可能にし得る。
訓練20
【0035】
DLモデル訓練のフェーズ20は、
図6に示される。方法は、無線周波数送信障害402、403を推定するように、機械学習モジュール420を訓練するためにもたらされ得る。方法は、障害によって、及び送信チャネルRxによって劣化された入力信号と、障害320のタイプを示す障害表示とを含んだ、複数の訓練データを備える訓練セットを取得することを含む。訓練セットを取得することは、例えば、メモリ又は任意の種類のストレージから、訓練データを読み出すこととすることができる。取得することはまた、
図5を参照して上記で述べられた取得することに対応し得る。方法は、訓練セットを、機械学習モジュール420に入力することをさらに含み得る。言い換えれば、受信された信号と、受信された信号内に含まれる検出された障害のグラウンドトゥルースとのペアは、機械学習モジュール420にもたらされる。それに続くのは、入力された訓練セットを用いて、機械学習に従って、機械学習モジュールのパラメータを適応させるステップである。最後に、訓練可能モデルの適応されたパラメータは、無線周波数送信障害を前記推定するステップでの使用のために記憶される。
【0036】
図6は、深層学習モジュール420を例示的に示す。しかし、一般にモジュールは、機械学習モジュール、又は単に学習モジュールであり得ることが留意される。言い換えれば、本開示は、障害検出に用いられるための、深層ニューラルネットワークに限定されない。任意のモデルベースの手法が使用され得る。深層学習は、2つ以上の層を有する訓練可能モデルを指す。機械学習は、1つの単一層又はより多くの層を適用する、層構造を含んだ任意の構造を有する訓練可能モデルを指す。モデルは、機能及び/又は物理モジュールに埋め込まれ得る。それに応じて、本明細書では訓練可能モジュール又は学習モジュールを参照するとき、意味されることは、機械学習又は深層学習又は他の種類のモデルなど、訓練可能モデルを実装する機能モジュールである。訓練可能モデルは、ニューラルネットワーク又は他の種類の訓練可能モデルとすることができる。ここで、例えば、多層パーセプトロン(MLP)、長短期記憶(LSTM)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、又はそれらの変形若しくは組み合わせが、深層学習420として用いられ得る。
【0037】
機械(訓練可能モデル)は、訓練段階10で作成されたデータセットを用いて訓練される20。訓練は、例えば、教師あり又は教師なし学習によって行われ得る。訓練の間、訓練可能モデル420の訓練可能パラメータは、訓練可能モデルの実際の出力430と、訓練可能モデルの所望の出力402、403との間の差に基づいて適応される。所望の出力は、ある特定の受信された信号Rxに対して、訓練データセット内の関連付けられた障害(グラウンドトゥルース)とすることができる。学習に対しては、多くの可能性がある。いくつかの実施形態では、パラメータの適応は、逆伝播によって行われる。逆伝播は、文献から知られており、広く用いられる。しかし、本開示はそれに限定されず、逆伝播に対する代替技法が存在する。例えば、差分ターゲット伝搬、HSIC(ヒルベルト-シュミット独立基準)、補助変数を用いたオンライン交互最小化、又は合成微分を用いた分離されたニューラルインターフェース、その他などの代替手法が用いられ得る。
【0038】
訓練段階では、モデルが訓練される前に、モデルが構成され得る。設定され得るが訓練可能ではない、モデルの又は学習アルゴリズムのパラメータは、ハイパーパラメータと呼ばれる。ハイパーパラメータは、性能精度及び複雑さを考慮して最適化され得る。特に、ハイパーパラメータは、その値が学習プロセスを制御するために用いられパラメータである。それに対し、他の(訓練可能な)パラメータ(通常はノード重み)の値は、訓練によって導き出される。ハイパーパラメータは、機械を訓練セットにフィッティングさせる間に推論されることができないモデルハイパーパラメータとして分類されることでき、なぜならそれらは、原則的にモデルの性能に影響を与えないが、学習プロセスの速度と品質に影響を与える、モデル選択タスク、又はアルゴリズムハイパーパラメータを指すからである。モデルハイパーパラメータの例は、ニューラルネットワークのトポロジ及びサイズである。アルゴリズムハイパーパラメータの例は、学習速度及び訓練バッチサイズである。
【0039】
訓練は、予め定められた数の訓練ペアを有する訓練セットに基づいて、行われ得ることが留意される。しかし、訓練は、代替として、収束基準に基づいて行われ又は停止され得る。例えば、訓練は、新たな訓練データを供給するとすぐのモデルの改善が、ある特定の閾値より低い場合は停止し得る。又は、訓練は、モデルの出力と、所望の出力との間の差(場合によっては、複数の訓練データペアにわたる平均値又は中央値などにおいて)が、予め定められた閾値より低い場合は停止し得る。このような閾値も、ハイパーパラメータと考えられ得る。
【0040】
訓練されたパラメータ(例えば、ニューラルネットワークモデルの重み)は、記憶され、訓練可能モデルは、試験及び/又は推論フェーズにおいてこれらのパラメータによって構成されている。訓練がなされた後(訓練段階)、試験段階が開始し得る。試験段階30は、機能的に推論フェーズ40と同様である。
【0041】
図6で、チャネル410は、追加の障害発生源として示される。チャネルによって導入された障害も、いくつかの実施形態では、検出/認識され得ることが留意される。例えば、訓練フェーズの間、チャネルによって引き起こされた障害は、他の障害と共に訓練され、その結果認識可能になり得る。しかし、本開示は、このような手法に限定されない。むしろ、チャネルは単に、未知の障害/特性を有するある種のノイズとして考えられ得る。
試験30及び推論40
【0042】
試験段階は、
図7に示される。この段階では、信号Rxが受信され、それは訓練されたDLモデル550に供給される。その後、DLモデル550は、単一段階内のRF障害を推定することができる560。試験フェーズでは、訓練されたモデルは、訓練セットの一部ではないがそれに対する障害が知られている、いくつかのRx信号を用いて試験され得る。例えば、試験セットは、訓練セットと同様に取得され得る。次いでモデル550の性能は、例えば精度の観点で、すなわちどれだけ多くの場合に、訓練されたモデル550が障害560を正しく識別したかにおいて、試験され得る。試験は、障害存在の識別、及び障害の量の検出に関係し得る。試験フェーズでは、結果(訓練されたモデルの性能)が満足でない場合、訓練は続行され、又はいくつかのハイパーパラメータが修正されることができ、及びモデルは、例えば同じ又は異なる訓練セットを用いて、再び(新たに)訓練され得る。
【0043】
推論フェーズでは、訓練されたモデルは、障害の検出(存在の認識及び/又は定量化)のために使用される。
例示的実装形態及び変形形態
【0044】
図3及び他の図を参照して上記で述べられたように、本開示の実施形態は、ワイヤレス通信システム(例えば
図1に示されるものなど)の送信チェーン(送信機側、チャネル、受信機側)において関わる、障害の検出(推定)のための方法及び装置をもたらす。
【0045】
上述のように、本開示は、いずれかの特定の訓練可能モデルに限定されない。使用され得る多様なML及びDL技法がある。いくつかの実施形態では、機械学習は、多層パーセプトロン、長短期記憶、及び畳み込みニューラルネットワークを含む、1つ又は複数のタイプの機械学習法を含む。例えば、障害のN個の発生源の少なくとも2つは、異なるタイプの機械学習法によって処理され得る。例えば、シングルキャリア及びマルチキャリア障害のいくつかは異なるので、それらのそれぞれに対して異なるモデルが用いられ得る(2つの異なるDLモデル)。言い換えれば、シングルキャリア信号源障害は、マルチキャリア信号源からの障害を検出するために用いられる訓練可能モデルとは異なる訓練可能モデルによって検出され得る。シングルキャリア及びマルチキャリアのRF障害のいくつかは同様であるが、RF障害及びそれらの影響は、これら2つの波形を変化させ得る。従って、訓練データセット内の信号は、シングルキャリアとマルチキャリアとに分割され得る。訓練は、シングルキャリア及びマルチキャリア信号に対して別々に行われ、以て2つの別々の訓練されたモデルを取得する。その後、RF障害は、シングルキャリアRF障害を学習するための深層学習(DL)アルゴリズムと、マルチキャリアRF障害を学習するための他のDLアルゴリズムとによって訓練される。試験段階又は推論段階での受信された信号は、最初にシングルキャリア又はマルチキャリア信号として識別される。信号がマルチキャリアである場合は、複数のRF障害を推定するためにマルチキャリア波形で訓練されたモデルが用いられ、信号がシングルキャリア信号である場合は、RF障害を推定するためにシングルキャリア波形で訓練されたモデルが用いられる。
【0046】
上記の例ではそれぞれ、シングルキャリアに対して、及びマルチキャリア信号に対して、2つの異なるモデルが用いられた。追加のモデルは、受信された信号がシングルキャリア信号であるか、マルチキャリア信号であるかを区別するように専用化されたモデルによる処理が先行し得る。区別の結果に従って、信号は、障害検出のために、対応するシングルキャリアの訓練されたモデルに、又はマルチキャリアの訓練されたモデルに入力される。
【0047】
(訓練又は試験)データセットは、例えば、MATLAB又は同様なシミュレータプログラムを用いて作成され得る。その場合、モデル又はMLベースの方法によって、障害を推定する必要はなくなる。これは、シミュレーションにおいて作成された障害は、知られ得るからである。これらの既知の障害は、訓練段階で用いられることができ、訓練可能モデルは、それらに従って訓練され得る。試験段階では、推定されることになる受信された信号は、上記で述べられたように、訓練されたDLアルゴリズムに供給される。
【0048】
深層学習の出現は、人間ベースの特徴抽出/クラフティング/エンジニアリングに対する必要性を軽減するためのである。従って、何らかの特徴抽出を行わずに、上記の方法を、現実世界の測定に直接適用することが可能である。反対に、用いられる機械学習の「深層」属性(層の数)は、さらなる特徴抽出を追加することを犠牲にして低減され得る。極端な例では、複数のRF障害を推定するために、特有な特徴を抽出することが可能な場合は、深層学習を完全に回避し、機械学習を用いることが可能である。特徴抽出がなされ得る段階は、
図6に示される。
【0049】
図8は、特徴抽出を有する機械学習モデルを用いた、このような複数RF障害推定の概観を示す。チャネル610から、受信された信号Rxを取得した後、特徴抽出モジュール620は、ある特定の特徴を抽出する。信号のいくつかの特徴(複数可)は、学習されることができ、これらの特徴(複数可)は、訓練可能モジュールに入力として供給され得る。いくつかの実施形態では、これらの特徴は、訓練可能モジュールに一緒に供給され得ることが留意される。例えば、特徴は、(非限定的に)エラーベクター振幅(EVM)、相補累積分布関数(CCDF)、コンスタレーションその他の、1つ又は複数を含み得る。エラーベクトルは、理想コンスタレーション点と、受信機によって受信された点との間の、I-Q平面内のベクトルである。言い換えれば、これは実際の受信されたシンボルと、理想的シンボルとの間の差である。理想信号振幅基準に正規化された、エラーベクトルの二乗平均平方根(RMS)平均振幅が、EVMである。EVMは、比率に100%を乗算することによってパーセントで表され得る。「コンスタレーション」という用語は、ここでは変調コンスタレーションを指す。
【0050】
例えば、電力増幅器の前後でスペクトルを観測し、このようにしてスペクトル再成長を観測することが可能である。このようなスペクトル再成長は、抽出されることになる特徴を表し得る。これらは単に例であり、一般に、従来技術から知られ得る任意の他の特徴が、抽出され得る。特徴抽出の後、機械学習モジュール630は、抽出された特徴に基づいて障害を認識する。
【0051】
RF障害の存在(有り又は無し)は、それらの数値(障害の量)を見出すのではなく、1及び0などの2値数によって表され得る。例えば、出力は、障害が存在する場合は1として、及び存在しない場合は0として表されるようになる。言い換えれば、ここで回帰問題は、分類問題に変化した。このような分類によって、受信された信号内の障害の存在が見出され得る。RF障害存在の推定の後、RF障害の数値は、別のやり方で見出され得る。例えば、いくつかの従来の方法によって、又は特定の個別の障害に対して特に訓練されたモジュールによって、障害の量を見出すことが可能である。言い換えれば、訓練可能モジュールは、受信された信号内の障害又は障害の組み合わせの有り又は無しを検出する選別器とすることができる。
【0052】
本開示のいくつかの実施形態は、RF障害の存在を、同時にそれらの数値を見出しながら学習するために用いられ得る。このようにして、訓練可能モジュールは、受信された信号内の各障害の量を見出すように訓練される。例えば、障害が見出された後、見出された値(ある特定の障害の量)が閾値より高い場合、この障害が存在すること(有ること)が想定される。見出された値(ある特定の障害の量)が閾値より低い場合、この障害は存在しないこと(無いこと)が想定される。
【0053】
本開示の利点の1つは、RF障害が上述のものに限定されないことである。特に深層学習ベースの実装形態において、ネットワークをそれに応じて訓練することによって、アーキテクチャを変更せずに、システムにおける任意の種類の欠陥に対して、障害を推定することが可能である。本開示は、すべての可能な障害に適用される必要はない。これは選択されたRF障害のある特定のグループに適用されることができ、それは次いで、提案される方法を用いて推定され得る。残りの障害は、システムの何らかのノイズを表すと考えられることができ、又は別の方法を用いることによって検出され得る。
【0054】
障害検出の出力は、検出されることになる障害に従って、ベクトル又は行列とすることができる。例えば、チャネル特性はベクトルとすることができる。一方、周波数オフセット及び位相オフセットのそれぞれは、値とすることができる。それらは一緒に、様々なやり方で出力内に表され得る。例えば、チャネルベクトル、周波数オフセット、及び位相オフセットは、ベクトル内にスタックされ得る。このようなベクトルは、チャネルベクトル+2(周波数オフセット及び位相オフセット値のため)の、長さ(要素の数の観点での)を有する。しかし、本開示は、このような形の出力に限定されない。
図9は、いくつかの代替の例示的出力形式を示す。形式(a)は、その中に障害発生源当たりの列がある、行列である。第1の列は、チャネルベクトルに対応し、第2の列は、予め定められた(ここでは第1の)行位置に、値f(周波数オフセット)を含み、最後の列は、予め定められた(ここでは第1の)行位置に、値p(位相オフセット)を含む。中間には、ベクトル又は値で表されるさらなる(他の)障害発生源が存在し得る。形式(b)は、形式(a)と同様であり、値f及びpに対する予め定められた行位置の違いがある。f及びpなどの値だけが含まれる(又は行列の行の数より短いベクトル)列内の、未使用の行を満たすためにパディングが用いられ得る。この例では、パディングはゼロを挿入することによって行われる。列の代わりに、障害発生源当たりの行が存在し得ることが留意される。一般に、例えば、障害発生源が行列又はテンソルによって表される場合に、テンソル表示をもたらすことが考えられる。代替として、任意の行列又はテンソルがベクトル化され得る。
【0055】
検出された障害は、受信機側補償、プリディストーション、及び/又は物理層認証(PLA)など、様々な異なる目的のために用いられ得る。
【0056】
それに対応して、信号受信側に適用される方法は、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の出力された寄与に基づいて、取得された信号を補償するステップをさらに含み得る。
【0057】
複数のRF障害を推定した後、これらの障害の影響は信号から除去されることができ、これは補償と呼ばれる。完全な除去は可能でない場合があり得ることが留意されるが、補償は、受信された信号から少なくとも、ある特定の障害の量、又は障害の組み合わせを、低減し得ることが留意される。その結果として、このような信号は次いで、正しい復号のより高い可能性を有して、復号され得る。例として、システム内に、位相オフセットのみがあると仮定する。シングルキャリアシステムに対して、データは、ダウンサンプルされ、ダウンサンプルされたデータは、その影響を補償するために位相オフセットによって分割される。上記で述べられたように、訓練されたモデルを用いて複数の障害が見出されたとき、送信信号内に障害を導入するプロセスと逆のプロセスが、補償のために適用され得る。RF障害の補償は、同期のために重要となり得る。例えば、
図10は、シングルキャリア同期のための例を示すブロック図である。
図11は、マルチキャリア同期のための例を示すブロック図である。
【0058】
図10で分かるように、最初のデータはダウンサンプルされ、次いで位相オフセットが除去される。特に、
図10は、例示的シングルキャリア受信機のステップ/機能モジュール(ユニット)を示す。サンプリング及びアナログ-デジタル変換の後、サンプルされた(デジタルの)受信された信号が取得される。ステップ710で、整合フィルタは、受信されたデジタル信号に、1つ又は複数のチャネル経路に対して適用され得る。ステップ720で、検出されたチャネルに基づいて、粗い同期が行われ得る。ステップ710での検出は通常、送信機及び受信機に知られている(少なくとも部分的に)、何らかの同期信号(プリアンブル)に基づいて行われる。ステップ730で、周波数オフセットが取得され、ステップ735で、周波数オフセットが補償される。周波数オフセットは、上記で述べられた障害検出によって取得され得る。ステップ740で、シンボルタイミング及びサンプルタイミング推定が行われる。ステップ750で、ダウンサンプリングが行われ、所望の時間スロットが抽出される。位相オフセット推定及びチャネル推定が、ステップ760で行われ、上記で述べられた障害検出によって一緒に、及び場合によっては、ステップ730の周波数オフセット推定と一緒に行われ得る。推定されたチャネル及び位相オフセットに従って、ステップ770で補正が行われる。ステップ780で、補償された信号は復調され、ステップ790で、復調された信号はデータに変換される。データは、層仕様(標準)に応じて、ビット、バイト、又はキャラクタの観点で指定され得る。ここで、バイトは、8ビットを指し、キャラクタは、例えばハードウェア/ソフトウェアーキテクチャに応じて、1つ又は複数のバイトに対応する。
【0059】
図11は、マルチキャリア同期のための例を示すブロック図である。ブロック図は、装置のステップ/機能モジュールを示す。図において分かるように、受信された複素値(IQ)サンプルが、処理に入力される。それに基づいて、パケットの開始が検出され、粗い周波数オフセット推定が行われ、それに応じて周波数オフセットが補正される。次いで、タイミング推定が行われ、それに応じてプリアンブル及びシンボルタイミングが調整される。次いで、パケットの終了が検出され、パケットが抽出される。次に、より微細な周波数オフセットが推定され、補正される。次いで、サブキャリア復調が行われる。例えば、サイクリックプレフィックスが除去されることができ、サブキャリア変調シンボルを取得するために、高速フーリエ変換(FFT)が適用され得る。次いで、変調(IQ)障害が検出され、補償され得る。またチャネル推定が行われ、チャネル等化によって補償され得る。パイロット追跡に基づいて、位相オフセット、及びさらにタイミングオフセット及びゲインが推定され、補償され得る。補償された周波数信号値に基づいて、復調が行われ得る。本開示は、いずれの特定の復調にも限定されない。例えば、検出出力ソフト情報が用いられることができ、又は検出はハード値を直接出力し得る。さらにベースバンド処理は、デインタリービング、復号などを含み得る。
図11の例では、フレーム制御ヘッダ(FCH)が復号される。
【0060】
図10及び11の複数の段階において、障害のいずれの1つ又は複数(又はすべて)は、本開示の実施形態及び例で述べられた障害検出を用いて推定され得る。例えば、以下の障害のいずれの1つ又は複数も、このようにして推定され得る:粗い周波数オフセット、シンボルタイミング、微細な周波数オフセット、変調障害、チャネルタップ、位相オフセット、電力利得、サンプルタイミングオフセット、又は任意の他の種類の障害。これらの障害及び受信機チェーンは、単に例示的なものであることが留意される。他の受信機アーキテクチャでは、他の障害が、より適切となり得る。
【0061】
当技術分野から、いくつかの障害補償手法が知られており、それらのいずれも適用され得る。例えば、QI,Jian.Analysis and Compensation of Channel and RF Impairments in MIMO Wireless Communication Systems.2011.PhD Thesis.Universite du Quebec,Institut national de la recherche scientifique(http://espace.inrs.ca/id/eprint/2160/で入手可能)は、本開示の障害検出と共にでも用いられ得る手法のいくつかの概観をもたらす。
【0062】
一実施形態によれば、ワイヤレスチャネルを通して受信された信号は、送信デバイス1から受信される。次いで、上記の例のいずれかで述べられたような障害検出が行われる。方法は、障害のN個の発生源の少なくとも1つに対する寄与の表示を、送信デバイスに送信するステップをさらに含む。このような場合は、受信機で補償が行われる必要はない。例えば、送信デバイスは次いで、送信デバイスにおいて、障害のN個の発生源の少なくとも1つに対する寄与の表示を受信することと、送信デバイスにおいて、受信された表示に従って補償を適用することとによって、次に進み得る。信号が送信される前の、受信機側でのこのような補償は、プリディストーションと呼ばれる。当技術分野から知られるいくつかのプリディストーション手法があり、それらの任意のものが用いられ得る。本明細書では「プリディストーション」という用語は、任意の種類の障害の、より広い関連において使用されることが留意される。これは或いは「前処理」と呼ばれ得る。一般に、このようなプリディストーション又は前処理は、前の推定されたRF障害に従って、現在の/来たるべきRF障害に対して補償するための、最適化された送信機及び受信機設計を指す。プリディストーション(前処理)は、PAPRに対して補償するように、又は検出された任意の障害発生源に対して補償するように適用され得る。
【0063】
異なるトランシーバに対するRF障害の影響は、例えば、JIN,Yuehai;DAI,Fa Foster.Impact of transceiver RFIC impairments on MIMO system performance;IEEE Transactions on Industrial Electronics,2011,59.1:538-549、又はKIAYANI,Adnan,et al.Advanced receiver design for mitigating multiple RF impairments in OFDM systems:algorithms and RF measurements;Journal of Electrical and Computer Engineering,2012の文献において、調査されている。RF障害を推定した後、いずれかのRF障害が除去されるべきである、又はその影響を、それらが来たるべき信号で生じる前に低減されるべきである場合、上述の刊行物又は他の刊行物と同様な手法が適用され得る。プリディストーションに関する上記の例では、障害は、受信機で検出され、送信機で補償された。しかし、本開示はこのような手法に限定されない。一般に、障害のある特定のタイプ(又は組み合わせ)は、受信機側で補償されることができ、障害の他のタイプ(又は組み合わせ)は、送信機で補償され得る。補償の種類は、障害のタイプ(発生源)に基づいて決定され得る。それに対応して、受信機2から送信機1にもたらされる表示は、送信機側で(プリディストーションによって)対処されることになる障害のみを含み得る。
【0064】
複数のRF障害は、上述の実施形態及び例の1つを用いて推定され得る。来たるべき信号(送信機から送信されることになる次の信号)では、同じ又は同様なRF障害を有することが期待される。そのため、受信機においてこれらの影響を軽減するための波形が設計され得る。例えば、推定されたRF障害の中でPAPRがより高い場合、及び波形成形された(ルートレイズドコサイン、RRCなど)パルス化シングルキャリアが用いられる場合、ロールオフ値は送信機において増加されることができ、PAPR値は、来たるべき信号に対して低減され得る。代替として、変調次数が低減され得る。言い換えれば、プリディストーションは、この影響を逆にすることによって、障害に対して補償することに限定されない。むしろ、送信時の補償は、検出される障害のタイプに基づいて、受信を改善するように、1つ又は複数の送信パラメータを変更することを含み得る。RF障害の影響は、様々な波形、及び異なるシナリオ(周波数、移動性)に従って変わり得る。この考え方に従って、推定されたRF障害に従って、来たるべき信号に対して、最適な波形設計がもたらされ得る。
【0065】
上記の例で述べられたように、送信機側での障害の発生源は、周波数オフセット、位相オフセット、クロックオフセット、電力増幅器障害、フィルタ障害、及び変調障害、又は他の障害の1つ又は複数を含む。
【0066】
RF障害は、特に電力増幅器非線形性(とりわけ、信号の高いピーク対平均電力比、PAPRによって引き起こされる)、IQ変調器障害(直角位相オフセット、IQ利得不平衡、及び/又はDCオフセット)、位相ノイズ、周波数オフセット、サンプルクロックエラー、ノイズ(付加的白色ガウスノイズ、AWGN)、アナログ-デジタル及び/又はデジタル-アナログ(ADC/DAC)問題点、又はハードウェアによって与えられるダイナミックレンジを含む。
【0067】
本開示はさらに、チャネルの分散、フェーディング、干渉などの1つ又は複数を含む、チャネル障害を識別するために、及び場合によっては定量化するために用いられ得る。
物理層認証
【0068】
本開示のいくつかの実施形態による障害の検出の別の応用は、物理層認証(PLA)である。それに応じて、障害を推定した後、いくつかの実施形態の方法は、取得された信号に対する、障害のN個の発生源の出力された寄与に基づいて、物理層認証を行うステップをさらに含み得る。
【0069】
PLAでの使用のために、最初にRF障害が検出される。次いでこれらの検出された障害は、ユーザ認証のために用いられる。物理層認証(PLA)のための知られている手法のいくつかが使用され得る。例えば、PEI,Chengcheng et al.Channel-based physical layer authenticationがある。2014 IEEE Global Communications Conference;IEEE,2014.p.4114-4119では、最初にチャネルを推定し、次いで物理層認証のために機械学習(特にサポートベクターマシン、SVM)を用いる。最初のチャネル及び/又はRF障害は、上記で述べられた障害推定手法によって推定されることができ、次いで物理層認証のために、機械学習アルゴリズムが用いられ得る。この技法において、機械学習は、ある種の閾値機構として用いられる。最適閾値も、真陽性及び偽陽性率(又は学習された)に従って決定され得る。上述のPEIらによる研究は単に例であり、本開示は、ある特定のユーザの適法/不法ステータスをチェックするために、推定された障害に依存する任意の他の機構を使用し得る。いくつかの知られているPLA研究の不利な点の1つは、それらが、正当な信号に従った訓練段階において、それらのモデルを訓練することである。その後、それらは、受信された信号に従って、信号が正当か非正当かどうかを決定する。しかし、これは、信号が非正当であるとそれらが決定した障害についての情報を、それらが提供できないという点で不利である。言い換えれば、機械は、RF障害を検出せずに、ブラックボックスとして、ユーザが正当であるか否かの決定を与える。信頼性を改善するために、本開示のいくつかの実施形態では、正当なユーザの、前に定義された障害は収集され、閾値に従って識別されるようになる検出された実際の障害と比較される。次いで、到着する信号が正当であるか否かの決定が与えられる。このようにして、訓練可能モジュールは、どの障害が、正当性又は非正当性について、より良い又はより悪い情報をもたらすかを学習することができる。従って、セキュリティの見通しの観点で、より信頼性のある結果が取得され得る。これは機械が、異なる(異常な)、特定のRF障害(又は障害の組み合わせ)についての情報をもたらすからである。このような特定の障害は、例えば人(技術者)によって、又は別の方法(例えばモデルベースの信号RF単一障害検出)を用いてさらにチェックされることができ、その正しさは二重に確認され得る。これは信頼性を向上させる。
【0070】
図12及び13は、それぞれPLA訓練及び試験段階のための本発明を示す。
【0071】
図12は、例示的PLA訓練段階を示す。特に、正当な及び場合によっては非正当な訓練ペアが、訓練可能モジュール860に、それを訓練するために入力される。ユーザが正当な場合は、正当な訓練ペアは、可能な入力(受信された信号)と、それぞれの所望の出力(障害)とを含む。訓練の後、訓練可能モジュール869の訓練されたパラメータ870が出力される。
【0072】
訓練段階では、追加的に、ユーザが正当か非正当かを識別するために、閾値選択がプロセスに追加され得る。最初に、複数のRF障害が推定され、閾値訓練モジュール/段階850において、真陽性率(TPR)と偽陽性率(FPR)とに従って閾値が選択される。最適閾値は、例えば、学習への入力として、訓練段階において正当及び非正当信号を用いて学習される。試験段階では、認証されることになる信号が入力として受信される。閾値学習の結果は、推定されることになる障害のそれぞれのセットに対する、閾値のセットである。
【0073】
図13は、試験及び推論段階における例示的PLAを示す。受信された信号Rxは、訓練可能モジュール(訓練された深層学習モデル)950に入力され、これは訓練された深層学習モジュール870と、閾値訓練モジュール850から出力された訓練された閾値とに対応し得る。訓練可能モジュール950は、上記で述べられたように障害を推定する。次いで、判断モジュール990は、推定された障害に基づいて、及び決定された閾値を用いることによって、特定の入力された受信された信号Rxが正当であるか非正当であるかを決定する。特に、判断モジュールは、推定されたある特定の障害発生源の量を、前記ある特定の障害発生源に対して学習されたそれぞれの閾値と比較し得る。これは、すべての障害に対して行われ得る。
【0074】
図12及び13を参照して上記で述べられた、障害検出を使用するPLAの例は、本開示を限定するものではない。例えば、別々の閾値を学習する代わりに、検出された障害は、それらによって劣化された信号が正当か非正当を障害が示すかどうかを決定するように訓練された、深層学習モジュールに入力され得る。条件3は、障害値及びそれらの組み合わせなどに基づいて、設計され得る。PLAの出力は、2値決定とすることができ、又はそれは、信号が正当/非正当である確率とすることができる。非正当という用語は、予期される(正常な、正当な)信号と比べて、異常であると理解され得ることが留意される。
【0075】
要約すると、上記の例において、複数のRF障害が推定され、信号は、推定されたRF障害及び閾値に従って認証される。さらに特に、推定されたRF障害の間の差が、それぞれの閾値より高い場合は、ユーザは非正当であると考えられ、差が閾値より低い場合は、ユーザは正当であると考えられる。
【0076】
一般に、RF障害を検出した後、障害は、何らかの事前に認証された値に従って設計された、ある特定の閾値と比較され得る。障害が閾値を超える場合、ユーザは、非正当である考えられ得る。(1つ又は複数の)閾値は、フォールス又はトゥルーアラームレートに従って選択され得る。言い換えれば、閾値の選択はシナリオに依存し得る。
例示的な有利な効果
【0077】
本開示のいくつかの実施形態は、物理層上のRF障害を検出し、補償するために用いられることができ、及びそれらは物理層セキュリティにおいて用いられ得る。追加的に、いくつかの実施形態は、同期に関連し得る。また、高次の変調及び高い周波数が用いられるとき、RF障害の影響は増大する。そのため、本開示は、これらの用途に容易に使用され得る。
【0078】
いくつかの実施形態は、単一のモデルを用いて複数のRF障害を検出することを可能にし得る。すべての所与の障害を推定することができる、このモデルに対しては、従来技術では普通であったような、どの特定の障害が検出される必要があるかを見出すことは、必要ない。追加的に、単一のモデルを適用するとき、障害の間の相関が活用される。これは、RF障害推定に、より高い精度をもたらし得る。
【0079】
いくつかの実施形態はまた、RF障害補償のために用いられ得る。
【0080】
さらに、本開示は、スペクトルセンシングなどのコグニティブ無線用途の殆どにおいて用いられ得る。さらに、これは特に、RF障害の影響が増大される高次変調及び周波数でのシステム性能において、効果的になり得る。それに加えて、本発明を用いてチャネル品質条件及びRF障害が推定された後、効率をもたらすように、推定された値に従って変調次数が調整され得る。例えば、チャネル条件が改善するときは、変調次数は増加されることができ、チャネルが悪化するときは、変調次数は減少され得る。
【0081】
いくつかの実施形態は、セキュリティにおいて、特にユーザの認証のために用いられ得る。従来の方法では、RF障害を推定せずに、ユーザが正当か又は非正当かを識別するために、MLベースのモデルが用いられる。しかし、これらのモデルが用いられるとき、推定が正しいか否かを制御するのは困難である。これは、MLモデルは、ユーザ正当性についての情報(1又は0として)のみを与えるだけで、それらの障害については与えないからである。それに加えて、RF障害を推定すること、及びこれらの障害に従ってユーザを正当化することは、利点を有する。例えば、提案される方法によって障害を推定した後、これらの障害は、推定を検証するためにモデルベースの方法によって制御されることができ、従って、より信頼性を有して決定が与えられる。言い換えれば、本開示は、認証に対するより高い意識をもたらす。
ソフトウェア及びハードウェアにおける実装形態
【0082】
本明細書で述べられる方法論は、応用例に応じて様々な手段によって実装され得る。例えば、これらの方法論は、ハードウェア、オペレーションシステム、ファームウェア、ソフトウェア、又はこれらの2つ又はすべての任意の組み合わせで、実装され得る。ハードウェア実装形態に対しては、任意の処理回路が用いられることができ、これは1つ又は複数のプロセッサを含み得る。例えば、ハードウェアは、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、任意の電子デバイス、又は上記で述べられた機能を行うように設計された他の電子回路ユニット若しくは要素の、1つ又は複数を含み得る。
【0083】
プログラムコードとして実装される場合、送信装置(デバイス)によって行われる機能は、メモリ610又は任意の他のタイプのストレージなどの、非一時的コンピュータ可読記憶媒体上に、1つ又は複数の命令又はコードとして記憶され得る。コンピュータ可読媒体は、コンピュータによって、又は一般に処理回路620によってアクセスされ得る、任意の入手可能な媒体とすることができる物理的コンピュータ記憶媒体を含む。このようなコンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、EEPROM、光ディスクストレージ、磁気ディスクストレージ、半導体ストレージ、又は他の記憶デバイスを備え得る。いくつかの特定の及び非限定的な例は、コンパクトディスク(CD)、CD-ROM、レーザディスク、光ディスク、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(BD)ディスクなどを含む。異なる記憶媒体の組み合わせも可能であり、言い換えれば、分散型及びヘテロジニアスなストレージが使用され得る。
【0084】
上述の実施形態及び例示的実装形態は、いくつかの非限定的な例を示す。特許請求される主題から逸脱せずに、様々な変更がなされ得ることが理解される。例えば、本明細書で述べられる主要な概念から逸脱せずに、新たなシステム及びシナリオに例を適応させるように変更がなされ得る。
【0085】
図14は、複数の障害を推定するための装置1050の例示的構造を示す。ワイヤレストランシーバ1030は、信号Rxを受信し、それを処理回路1020に渡すことができる。処理回路1020は、例えば、実施形態及び上記の例のいずれかで述べられたように、障害推定を行うために、メモリ1010からフェッチされたプログラムによって構成され得る。装置は、訓練及び/又は推論フェーズなどを制御するために用いられ得る、ユーザインターフェース1040を有し得る。ワイヤレストランシーバ1030、メモリ1010、処理回路1020、及び場合によってはユーザインターフェース1040は、バス1001を通じて相互接続され得る。
図15は、訓練された(訓練可能な)モジュールプログラム1060と、学習(訓練)モジュールプログラム1080とを含んだ、メモリの例1010を示す。この実装形態は、単に例示的であることが留意される。推論又は試験又は訓練フェーズ、又はそれらの任意の組み合わせを実装するために、異なるアーキテクチャが存在し得る。
選択された実施形態及び実施例
【0086】
要約すると、ワイヤレス通信に対する障害検出のための、方法及び技法が述べられる。本開示は、受信されたワイヤレス通信信号内の、障害の検出に関する。これは、障害のN個のタイプ(発生源)それぞれの存在、及び場合によっては、受信された信号内に存在する障害の量を検出し得る。検出は、学習を適用することによって、障害のN個の発生源を区別するように訓練された訓練可能モジュールによって、受信された信号を処理することを含み、Nは1より大きな整数である。訓練可能モジュールは、N個の発生源の各発生源jについて、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与を出力する。寄与は、障害のj番目の発生源の有り又は無しを示す2値とすることができ、又は障害の量も示し得る。
【0087】
一実施形態によれば、無線周波数送信障害を推定する方法が提供され、方法は、ワイヤレスチャネルを通して受信された信号を取得するステップと、障害のN個の発生源を区別するように訓練された訓練可能モジュールによって、取得された信号を処理するステップであって、Nは1より大きな整数である、処理するステップと、訓練可能モジュールから、N個の発生源の各発生源jについて、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与を出力するステップとを含む。
【0088】
例えば、送信機側での障害の発生源は、周波数オフセット、位相オフセット、クロックオフセット、電力増幅器障害、フィルタ障害、及び変調障害の、1つ又は複数を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、寄与は、受信された信号に対する、障害の発生源からの寄与の有り又は無しの1つを示し、取得された信号を処理するステップは、N個の発生源の各発生源jについての要素を備える特徴ベクトルを取得するステップであって、要素は、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与の程度を示す、取得するステップと、特徴ベクトルの各j番目の要素が閾値を超えるかどうかを比較するステップと、各j番目の要素について、j番目の要素が閾値を超える場合は、j番目の要素の寄与をTRUEに設定し、そうでなければj番目の要素をFALSEに設定するステップとをさらに含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与は、M>2であるM個の値の1つをとり得る寄与の程度を示し、取得された信号を処理するステップは、N個の発生源の各発生源jについてのj番目の要素を備える特徴ベクトルを出力し、j番目の要素は、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与の程度を示す。
【0091】
例えば機械学習は、多層パーセプトロン、長短期記憶、及び畳み込みニューラルネットワークを含む、1つ又は複数のタイプの機械学習法を含む。例示的実装形態では、障害のN個の発生源の少なくとも2つは、異なるタイプの機械学習法によって処理される。
【0092】
方法は、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の出力された寄与に基づいて、取得された信号を補償するステップをさらに含み得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、ワイヤレスチャネルを通して受信された信号は、送信デバイスから受信され、方法は、障害のN個の発生源の少なくとも1つに対する寄与の表示を、送信デバイスに送信するステップをさらに含む。例えば、方法は、障害のN個の発生源の少なくとも1つに対する寄与の表示を、送信デバイスにおいて、受信するステップと、受信された表示に従って、送信デバイスにおいて、プリディストーションを適用するステップとをさらに含む。
【0094】
方法は、取得された信号に対する、障害のN個の発生源の出力された寄与に基づいて、物理層認証を行うステップを含み得る。
【0095】
一実施形態によれば、無線周波数送信障害を推定するための訓練可能モジュールを訓練する方法が提供され、方法は、障害によって及び送信チャネルによって劣化された入力信号と、障害のタイプ、信号を示す障害表示を含んだ、複数の訓練データを備える訓練セットを取得するステップと、訓練セットを、訓練可能モジュールに入力するステップと、入力された訓練セットに従って、訓練可能モジュールのパラメータを適応させるステップと、適応されたパラメータを、無線周波数送信障害を前記推定するステップでの使用のために記憶するステップとを含む。
【0096】
例示的実装形態では、訓練セットを取得するステップは、訓練セット内の各訓練データについて、入力信号を生成するステップと、障害のタイプ及び/又はパラメータを示す、障害表示を決定するステップと、障害によって、入力信号を劣化させるステップと、障害と、劣化された入力信号をワイヤレスチャネルを通して送信し、送信された信号を受信することによって、送信チャネルとによって、劣化されたものを取得するステップとを含む。
【0097】
一実施形態によれば、無線周波数送信障害を推定するための装置が提供され、装置は、ワイヤレスチャネルを通して受信された信号を取得することと、教師あり学習を適用することによって、障害のN個の発生源を区別するように訓練された訓練可能モジュールによって、取得された信号を処理することであって、Nは1より大きな整数である、処理することと、訓練可能モジュールから、N個の発生源の各発生源jについて、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与を出力することとを、行うように構成された処理回路を備える。
【0098】
例えば、処理回路は、障害によって及び送信チャネルによって劣化された入力信号と、障害のタイプ、信号を示す障害表示を含んだ、複数の訓練データを備える訓練セットを取得するステップと、訓練セットを、訓練可能モジュールに入力するステップと、入力された訓練セットを用いた機械学習に従って、訓練可能モジュールのパラメータを適応させるステップと、適応されたパラメータを、無線周波数送信障害を前記推定するステップでの使用のために記憶するステップとによって、学習モジュールを訓練するようにさらに構成されている。
【0099】
一実施形態によれば、複数の障害によって劣化された信号を受信するための装置が提供され、装置は、ワイヤレスチャネルを通して受信される信号を受信するための受信機(これは、必ずしも完全なワイヤレストランシーバでなく、簡単な入力でもよい)と、受信された信号内の無線周波数送信障害を推定するための装置(上述のような)と、補償モジュールとを備え、補償モジュールは、受信された信号を、推定された無線周波数送信障害に対して補償することと、信号がそれから受信された送信機へのフィードバックとして、推定された無線周波数送信障害の表示を送信することとを行うように構成されている。
【0100】
一実施形態によれば、無線周波数送信障害を推定するための訓練可能モジュールを訓練するための装置が提供され、装置は、障害によって及び送信チャネルによって劣化された入力信号と、障害のタイプ、信号を示す障害表示を含んだ、複数の訓練データを備える訓練セットを取得するための入力と、入力を通じて訓練セットが入力される訓練可能モジュールと、入力された訓練セットに従って、訓練可能モジュールのパラメータを適応させるための学習モジュールと、適応されたパラメータを、無線周波数送信障害を前記推定するステップでの使用のために記憶するメモリとを備える。
【0101】
例示的実装形態では、訓練セットを取得するステップは、訓練セット内の各訓練データについて、入力信号を生成するステップと、障害のタイプ及び/又はパラメータを示す、障害表示を決定するステップと、障害によって、入力信号を劣化させるステップと、障害と、劣化された入力信号をワイヤレスチャネルを通して送信し、送信された信号を受信することによって、送信チャネルとによって、劣化されたものを取得するステップとを含む。訓練セットのこのような取得は、障害を推定するための装置と同じ装置によって、又はコンピュータその他など、別の装置において行われ得る。
【0102】
また方法に対して、また装置に対して上述されたように、送信機側での障害の発生源は、周波数オフセット、位相オフセット、クロックオフセット、電力増幅器障害、フィルタ障害、及び変調障害の、1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、寄与は、受信された信号に対する、障害の発生源からの寄与の有り又は無しの1つを示す。処理回路は、N個の発生源の各発生源jについての要素を備える特徴ベクトルを取得するステップであって、要素は、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与の程度を示す、取得するステップと、特徴ベクトルの各j番目の要素が閾値を超えるかどうかを比較するステップと、各j番目の要素について、j番目の要素が閾値を超える場合は、j番目の要素の寄与をTRUEに設定し、そうでなければj番目の要素をFALSEに設定するステップとを、さらに行うことによって、取得された信号を処理するように構成され得る。いくつかの実施形態では、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与は、M>2であるM個の値の1つをとり得る寄与の程度を示し、取得された信号を処理するステップは、N個の発生源の各発生源jについてのj番目の要素を備える特徴ベクトルを出力し、j番目の要素は、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の寄与の程度を示す。例えば機械学習は、多層パーセプトロン、長短期記憶、及び畳み込みニューラルネットワークを含む、1つ又は複数のタイプの機械学習法を含む。例示的実装形態では、障害のN個の発生源の少なくとも2つは、異なるタイプの機械学習法によって処理される。
【0103】
装置は、取得された信号に対する、障害のj番目の発生源の出力された寄与に基づいて、取得された信号を補償する、障害補償モジュール(これはまた処理回路によって具体化され得る)をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、ワイヤレスチャネルを通して受信された信号は、送信デバイスから受信される。装置の処理回路は、ワイヤレス送信機を、障害のN個の発生源の少なくとも1つに対する寄与の表示を、送信デバイスに送信するように、さらに制御し得る。送信デバイスは、障害のN個の発生源の少なくとも1つに対する寄与の表示を受信することと、受信された表示に従って、送信デバイスにおいて、プリディストーションを適用することとを行うように構成され得る。
【0104】
上述の障害推定装置の処理回路は、取得された信号に対する、障害のN個の発生源の出力された寄与に基づいて、物理層認証を行うようにさらに構成され得る。
【0105】
さらに、上述の処理回路実装形態のいずれかによって行われるステップを含んだ、対応する方法が提供される。
【0106】
さらに、非一時的媒体に記憶され、コンピュータによって又は処理回路によって実行されたときに上述の方法のいずれかのステップを行うコード命令を備えた、コンピュータプログラムが提供される。
【0107】
いくつかの実施形態によれば、処理回路及び/又はトランシーバは、集積回路、ICに埋め込まれる。
【0108】
本開示の装置のいずれも、集積化チップ上に具体化され得る。
【0109】
上述の実施形態及び例示的実装形態のいずれも、組み合わされ得る。
【0110】
本開示の主題は、現在最も実用的及び好ましい実施形態であると考えられるものに基づいて、例示の目的のために詳細に述べられたが、このような詳細は専らその目的のためであること、及び本開示の主題は、開示された実施形態に限定されず、むしろ、添付の「特許請求の範囲」の思想及び範囲内である変更形態及び等価な構成を包括することが意図されることが理解されるべきである。例えば、本開示の主題は、可能な範囲まで、任意の実施形態の1つ又は複数の特徴は、任意の他の実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わされ得ることを企図することが、理解されるべきである。
【国際調査報告】