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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】水溶液からのリチウムの回収
(51)【国際特許分類】
   C22B 26/12 20060101AFI20231130BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
C22B26/12
C22B3/44 101A
C22B3/44 101Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527247
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 AU2021051237
(87)【国際公開番号】W WO2022087655
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】2020903897
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523160195
【氏名又は名称】ギャラクシー リソーシズ プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Galaxy Resources Pty Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タルボット,ブライアン コリン
(72)【発明者】
【氏名】カトヴィッチ,エネジ
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA34
4K001AA36
4K001BA24
4K001DB22
4K001DB23
(57)【要約】
水溶液からリチウム生成物を回収する方法であって、(i)前記溶液をアルカリ性材料と接触させて前記塩水溶液中に目標量のマグネシウムを沈殿させ、前記沈殿した固体を中間溶液から分離するステップ;(ii)前記中間溶液を制御された量の水酸化物塩と接触させて、前記中間溶液中にマグネシウムを沈殿させるステップ;(iii)前記中間溶液を制御された量の炭酸ナトリウムと接触させて不純物を沈殿させ、前記沈殿した固体を精製された溶液から分離するステップ;および(iv)前記精製された溶液からリチウム生成物を回収するステップ;を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液からリチウム生成物を回収する方法であって、
i.前記溶液をアルカリ性材料と接触させて前記塩水溶液中に目標量のマグネシウムを沈殿させ、前記沈殿した固体を中間溶液から分離するステップ、
ii.前記中間溶液を制御された量の水酸化物塩と接触させて、前記中間溶液中にマグネシウムを沈殿させるステップ、
iii.前記中間溶液を制御された量の炭酸ナトリウムと接触させて不純物を沈殿させ、前記沈殿した固体を精製された溶液から分離するステップ、および
iv.前記精製された溶液からリチウム生成物を回収するステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
前記水溶液が、ステップ(i)の前に濃縮ステップに供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記濃縮ステップが、前記水溶液中のリチウムの濃度を0.1~1.2%に上昇させる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリ性材料が水酸化カルシウムを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(i)が、前記水溶液中の前記マグネシウムの50~80%を沈殿させる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(i)が、前記水溶液中の前記ホウ素の63~83%を沈殿させる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記水溶液が、ステップ(i)の間、9以下のpHに維持される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記中間溶液が、ステップ(ii)の前に二次濃縮ステップに導かれる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記二次濃縮ステップが、前記水溶液中のリチウムの濃度を少なくとも1.2%に上昇させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記二次濃縮ステップが、前記水溶液中のリチウムの濃度を1.2%~2.2%に上昇させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記二次濃縮ステップが、前記水溶液中のリチウムの濃度を少なくとも1.6%に上昇させる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記水酸化物塩が水酸化ナトリウムである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(ii)において添加される水酸化物塩の量が、1.25:1~1:1.25の化学量論的濃度のMg2+:OHを目標とする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶液のpHが、ステップ(ii)の間、10未満に維持される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(iii)で添加される炭酸ナトリウムの量が、1.25:1~1:1.25の化学量論的濃度のCa2+:NaCOを目標とする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記精製された溶液からリチウム生成物を回収する前記ステップの前に、前記精製された溶液を希釈ステップに供することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記精製された溶液から炭酸リチウムを回収する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
炭酸ナトリウムを前記精製された溶液に添加して塩化リチウムを沈殿させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記精製された溶液に添加される炭酸ナトリウムの量が、1.25:1~1:1.25の化学量論的濃度のLi2+:NaCOを目標とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
水酸化リチウムが前記精製された溶液から回収される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記回収されたリチウム生成物が精製ステップに供される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶液からリチウム生成物を回収するための方法に関する。より具体的には、本発明の方法は、高純度リチウム生成物の回収を可能にする。本発明の方法は、塩水溶液からのリチウム生成物の回収に特に適している。
【背景技術】
【0002】
背景技術の以下の説明は、本発明の理解を容易にすることのみを意図している。議論は、言及された資料のいずれかが、出願の優先日における共通の一般知識であるか、またはその一部であったことの自認または承認ではない。
【0003】
リチウムは、塩湖または地下水源に由来する塩水溶液中に天然に存在することが見出され得る。これらの溶液は、典型的には、塩化ナトリウムと比較して比較的少量の溶解リチウムカチオンを含有する。これらの溶液は、カリウム、マグネシウム、カルシウム、塩素、硫酸塩およびホウ酸塩などの他の溶解不純物種も含む。これらの溶液中のリチウム濃度は、典型的には、リチウム濃度を上昇させるために溶液を蒸発池に長期間貯蔵することによって上昇する。蒸発プロセスは、不純物の一部を塩として沈殿させ、分離を可能にする。次いで、濃縮塩水溶液を処理して、残留不純物を除去し、リチウムを回収する。濃縮塩水溶液の処理は、濃縮塩水溶液中に存在する不純物に応じて異なる。
【0004】
次いで、炭酸ナトリウム(ソーダ灰)の添加によって溶液からリチウムを回収して、炭酸リチウムを沈殿させる。プロセスは比較的単純であるが、炭酸ナトリウムの添加前に不純物が除去されない限り、沈殿する炭酸リチウム生成物は高純度ではない。最も問題となる不純物は、リチウムと非常に類似した化学的性質を有するマグネシウムである。炭酸リチウムの沈殿中にマグネシウムが溶液中に存在する場合、それは典型的にはMgCOとして共沈殿する。その後、回収された生成物は、不純物を除去するためにさらなる精製プロセスに供されなければならない。
【0005】
塩水溶液からマグネシウムを除去する最も一般的なアプローチは、石灰Ca(OH)を添加して溶液のpHを上昇させ、水酸化マグネシウムを沈殿させ、その後の濾過による分離を可能にすることによるものである。プロセスの主な欠点は、大きな水性成分を有する溶液のpHを上昇させるのに必要なかなりの量の石灰である。さらに、石灰の使用はカルシウムを溶液に導入し、このカルシウムはリチウム回収の前に除去されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
塩水からリチウムを回収するためのいくつかの他の技術が提案されている。これらの技術は、典型的には、塩水源からのリチウムの選択的吸収に焦点を当てている。アルミナ化合物に基づくリチウム選択的イオン交換樹脂は、高いリチウム吸収を示すが、リチウムをストリッピングするためのその後の酸処理、続いて樹脂を再生するための処理を必要とする。電気化学的方法もまた、リチウムを塩水溶液から分離するために提案されているが、これらはかなりのエネルギー入力を必要とする。ナノ濾過膜はまた、リチウムを選択的に回収することが示されているが、工業規模でこれらを操作することに関連する課題がある。
【0007】
塩水溶液の処理が直面する主な問題は、リチウムが低濃度であることである。これは、処理される大量の塩水を必要とし、使用されるプロセスをスケーリングすることを困難にする。
【0008】
本明細書を通して、文脈上別段の要求がない限り、「備える」という語または「備える」もしくは「を含み」などの変形は、記載された整数または整数群の包含を意味するが、任意の他の整数または整数群の排除を意味しないと理解される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、水溶液からリチウム生成物を回収するための方法であって、
i.水溶液をアルカリ性材料と接触させて、水溶液中に目標量のマグネシウムを沈殿させ、沈殿した固体を中間溶液から分離するステップと、
ii.中間溶液を制御された量の水酸化物塩と接触させて、中間溶液中にマグネシウムを沈殿させるステップと、
iii.中間溶液を制御された量の炭酸ナトリウムと接触させて不純物を沈殿させ、沈殿した固体を精製された溶液から分離するステップと、
iv.精製された溶液からリチウム生成物を回収するステップと、を含む方法が提供される。
【0010】
本発明の発明者らは、不純物を沈殿させるための別個の段階の使用が、不純物を除去するために溶液に導入される追加のカチオンのより大きな制御を可能にすることを見出した。これにより、その後にこれらのカチオンを溶液から除去するために行わなければならない下流処理の量が制限されることが分かった。特に、本発明者らは、ステップ(i)で導入されるアルカリ性材料の量を制御することにより、その後に系から除去する必要があるアルカリカチオンが制限されることを見出した。これは、系へのカルシウムカチオンの添加が制御されるため、水酸化カルシウムがアルカリ溶液として使用される場合に特に有用であることが分かった。ステップ(i)で使用される水酸化カルシウムの量を制限すると、このステップで沈殿する不純物の量が減少するが、本発明者らは、これがステップ(iii)で必要とされる炭酸ナトリウムの量を減少させることを見出した。これにより、本ステップにおいて炭酸リチウムとして析出するリチウムの割合が減少し、それにより回収されるリチウム量が増加することが分かった。
【0011】
本発明の方法は、塩水溶液からのリチウム生成物の回収に特に有用であることが分かった。本明細書を通して、「塩水溶液」という用語は、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属塩を含む水溶液を指すと理解され、塩の濃度は、微量から飽和点まで変化し得る。塩水溶液は、天然供給源から得られてもよく、または工業的処理によって生成されてもよいことが理解されよう。当業者には理解されるように、このような溶液は典型的にはある範囲の不純物を含有する。本発明の方法は、高純度リチウム生成物を溶液から直接回収することを可能にするために、いくつかのこれらの不純物を経済的に除去しようとするものである。
【0012】
本発明の方法は、6%未満のリチウムを含有する塩水溶液からのリチウムの回収に特に適している。
【0013】
本発明の一形態において、水溶液は、ステップ(i)の前に濃縮ステップに供される。好ましくは、濃縮ステップは蒸発ステップである。
【0014】
本発明の一形態において、濃縮ステップは、水溶液中のリチウムの濃度を0.1~1.2%に上昇させる。好ましくは、リチウムの最大濃度は0.7%である。
【0015】
本発明の一形態において、水溶液を処理して硫酸塩の濃度を低下させる。
【0016】
本発明の一形態において、水溶液中の硫酸塩の濃度は4%未満に維持される。本発明の一形態では、水溶液中の硫酸塩の濃度は、沈殿剤の添加を通じて維持される。好ましくは、沈殿剤はCaClである。より好ましくは、CaClは、プロセスの他の部分からリサイクルされる。
【0017】
本発明の一形態において、アルカリ性材料はカルシウムを含む。好ましくは、アルカリ性材料は水酸化カルシウムを含む。
【0018】
本発明の一形態において、アルカリ性材料は石灰である。好ましくは、アルカリ性材料は消石灰である。
【0019】
本発明の一形態において、ステップ(i)は、水溶液中の目標量のマグネシウムを沈殿させる。好ましくは、水溶液中のマグネシウムの50~80%が沈殿する。
【0020】
本発明の一形態において、ステップ(i)は、水溶液中の目標量のホウ素を沈殿させる。好ましくは、水溶液中のホウ素の63~83%が沈殿する。
【0021】
本発明の一形態において、水溶液は、ステップ(i)の間、9以下のpHに維持される。
【0022】
本発明の一形態において、中間溶液は、ステップ(ii)の前に二次濃縮ステップに導かれる。好ましくは、二次濃縮は蒸発ステップである。
【0023】
本発明の一形態において、二次濃縮ステップは、水溶液中のリチウムの濃度を少なくとも1.2%に上昇させる。好ましくは、リチウムの濃度は1.2~2.2%である。より好ましくは、リチウムの濃度は1.2~1.6%である。
【0024】
本発明の代替的な形態において、二次濃縮ステップは、水溶液中のリチウムの濃度を少なくとも1.6%に上昇させる。好ましくは、リチウムの濃度は1.6~6.0%である。より好ましくは、リチウムの濃度は1.6~4.5%である。
【0025】
本発明の一形態において、水酸化物塩は、水酸化ナトリウムである。
【0026】
本発明の一形態において、ステップ(ii)で添加される水酸化物塩の量は、中間溶液のMg2+濃度に関連する。好ましくは、1.25:1~1:1.25の化学量論的濃度のMg2+:OHが目標とされる。好ましくは、水酸化ナトリウムが使用される場合、1.25:1~1:1.25の化学量論的濃度のMg2+:NaOHが目標とされる。
【0027】
本発明の一形態では、溶液のpHは、中間溶液を制御された量の水酸化物塩と接触させて中間溶液中にマグネシウムを沈殿させるステップ中に10未満に維持される。
【0028】
本発明の一形態において、ステップ(iii)で添加される炭酸ナトリウムの量は、中間溶液のCa2+濃度に関連する。好ましくは、1.25:1~1:1.25の化学量論的濃度のCa2+:NaCO が目標とされる。
【0029】
二次濃縮ステップにおいて水溶液中のリチウムの濃度を少なくとも1.6%に目標とする本発明の実施形態において、方法は、好ましくは、精製された溶液からリチウム生成物を回収するステップの前に、精製された溶液を希釈ステップに供することをさらに含む。好ましくは、希釈ステップは、精製された溶液中のリチウム濃度を低下させるために精製された溶液に水を添加することを含む。
【0030】
本発明の一形態において、精製された溶液から炭酸リチウムが回収される。好ましくは、制御された量の炭酸ナトリウムを精製された溶液に添加して、炭酸リチウムを沈殿させる。本発明の一形態において、精製された溶液に添加される炭酸ナトリウムの量は、中間溶液のLi2+濃度に関連する。好ましくは、1.25:1~1:1.25の化学量論的濃度のLi2+:NaCO が目標とされる。
【0031】
本発明の一形態において、炭酸リチウムが水酸化リチウムに変換される。
【0032】
本発明の一形態において、水酸化リチウムが精製された溶液から回収される。
【0033】
本発明の一形態において、回収されたリチウム生成物は、精製ステップに供される。好ましくは、精製ステップは、高温のリパルプ洗浄段階を含む。追加的または代替的に、精製ステップは、炭酸リチウム溶解ステップと、それに続く炭酸リチウム再結晶ステップとを含む。
【0034】
本発明のさらなる特徴は、そのいくつかの非限定的な実施形態の以下の説明においてより完全に説明される。この説明は、単に本発明を例示する目的で含まれる。上記の本発明の広範な概要、開示または説明に対する制限として理解されるべきではない。以下、添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1の実施形態に従う、水溶液からリチウム生成物を回収するための方法のフローシートを示す。
図2】本発明の第2の実施形態に従う、水溶液からリチウム生成物を回収するための方法のフローシートを示す。
図3】実施例1で行われた試験における、リチウムの濃度経路のプロットである。
図4】実施例1で行われた試験における、硫酸塩の濃度経路のプロットである。
図5】実施例1で行われた第2の試験における、リチウムの濃度経路のプロットである。
図6】実施例1で行われた第2の試験における、硫酸塩の濃度経路のプロットである。
図7】実施例2で行われた試験における、リチウムの濃度経路のプロットである。
図8】実施例2で行われた試験における、硫酸塩の濃度経路のプロットである。
図9】実施例3で行われた不純物除去試験のプロットである。
図10】pHに対する実施例3で行われた不純物除去試験のプロットである。
図11】実施例3の試験中に除去された全二価不純物を示すプロットである。
図12】実施例4で行われた試験について、石灰添加で観察されたマグネシウムおよびホウ素の除去対pHのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、広範には、水溶液からリチウム生成物を回収するための方法に関する。本発明の方法は、ある範囲の水溶液からリチウムを回収するために使用され得るが、本発明の方法は、塩水溶液からのリチウムの回収に特に適している。図1では、本発明の実施形態に従う塩水溶液12からリチウム生成物を回収するための方法10を示す。
【0037】
一実施形態において、食塩水溶液は6%未満のリチウムを含有する。一実施形態において、食塩水溶液は5%未満のリチウムを含有する。一実施形態において、食塩水溶液は4%未満のリチウムを含有する。一実施形態において、食塩水溶液は3%未満のリチウムを含有する。一実施形態において、食塩水溶液は2%未満のリチウムを含有する。一実施形態において、食塩水溶液は1%未満のリチウムを含有する。一実施形態において、食塩水溶液は0.9%未満のリチウムを含有する。一実施形態において、食塩水溶液は0.8%未満のリチウムを含有する。一実施形態において、食塩水溶液は0.7%未満のリチウムを含有する。一実施形態において、食塩水溶液は0.6%未満のリチウムを含有する。一実施形態において、食塩水溶液は0.5%未満のリチウムを含有する。一実施形態において、食塩水溶液は0.4%未満のリチウムを含有する。一実施形態において、食塩水溶液は0.3%未満のリチウムを含有する。一実施形態において、食塩水溶液は0.2%未満のリチウムを含有する。一実施形態において、食塩水溶液は0.1%未満のリチウムを含有する。
塩水溶液12は、リチウム濃度を上昇させるために濃縮ステップ14に送られる。図1に示す実施形態において、濃縮ステップ14は、塩水溶液12が蒸発池または蒸発皿に導かれて含水量を減少させる太陽蒸発プロセスを含む。当業者に知られている塩水溶液を濃縮するための他の手段も使用され得ることが想定される。塩水溶液を濃縮すると、いくつかの固体が沈殿する。主な沈殿物は、ハライト(NaCl)である。塩水溶液中に十分なリチウムが存在する場合、沈殿ステップは必要ないことが想定される。
【0038】
濃縮ステップは、所望のリチウム濃度が達成されるまで継続される。一実施形態において、濃縮ステップは、水溶液中のリチウムの濃度を0.1~1.2%に上昇させる。一実施形態において、濃縮ステップは、水溶液中のリチウムの濃度を0.2~1.2%に上昇させる。一実施形態において、濃縮ステップは、水溶液中のリチウムの濃度を0.3~1.2%に上昇させる。一実施形態において、濃縮ステップは、水溶液中のリチウムの濃度を0.4~1.2%に上昇させる。一実施形態において、濃縮ステップは、水溶液中のリチウムの濃度を0.5~1.2%に上昇させる。一実施形態において、濃縮ステップは、水溶液中のリチウムの濃度を0.6~1.2%に上昇させる。
【0039】
一実施形態において、塩水溶液中のLiの最大濃度は1.0%である。一実施形態において、塩水溶液中のLiの最大濃度は0.9%である。一実施形態において、塩水溶液中のLiの最大濃度は0.8%である。一実施形態において、塩水溶液中のLiの最大濃度は0.7%である。
【0040】
一実施形態において、濃縮ステップは、最大硫酸塩濃度が達成されるまで行われる。一実施形態において、最大硫酸塩濃度は4%である。水溶液中のリチウムおよび/または硫酸塩の濃度は、当技術分野で公知の技術を使用して、例えば誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)技術によって監視することができることが想定される。
【0041】
本発明者らは、塩水溶液が濃縮されるにつれて、リチウム濃度の上昇がKLiSOの沈殿をもたらすことを確認した。KLiSOが沈殿し始めるリチウム濃度は、温度ならびに塩水溶液中のCa2+およびSO42-の濃度に依存する。本発明者らは、塩水溶液中のリチウムおよび硫酸塩の濃度を制限することによって、KLiSOの沈殿が有意に減少することを見出した。これにより、濃縮ステップ14におけるリチウムの損失が防止される。系中のLi2+に対するSO 2-の割合がより高い場合、リサイクルされたCaCl溶液などのCa2+の供給源を導入して、KLiSOよりもCaSOを有利に沈殿させることができることが想定される。
【0042】
濃縮された溶液を回収し、濾過して任意の同伴固体15を除去する。
【0043】
濾過された塩水溶液16は、塩水溶液中に目標量のマグネシウムを沈殿させるために予備不純物除去ステップ18に導かれる。マグネシウムを沈殿させるために、アルカリ性材料20が塩水溶液に添加される。図1に示す予備不純物除去ステップ18では、塩水溶液を消石灰Ca(OH)と接触させて、塩水溶液中に目標量のマグネシウムを沈殿させる。消石灰の添加は、いくらかの石膏CaSO.2HOと共に水酸化マグネシウムの沈殿をもたらす。ホウ素が塩水溶液中に存在する場合、石灰の添加はまた、ホウ酸塩としてホウ素の沈殿をもたらす。
【0044】
消石灰を添加して、塩水溶液に含まれる目標量のマグネシウムを沈殿させる。本発明者らは、析出するマグネシウムの量を制限することによって、塩水溶液中に導入されるCa2+イオンの量も制限されることを見出した。これにより、その後リチウム回収の前に溶液から除去しなければならないカルシウムの量が減少する。理論によって制限されることを望むものではないが、本発明者らは、カルシウム除去プロセス中にリチウムが失われることを見出した。除去されるカルシウムの量を制限することにより、リチウムの損失も制限される。
【0045】
一実施形態において、水溶液中のマグネシウムの50~80%が沈殿する。一実施形態において、水溶液中のマグネシウムの55~75%が沈殿する。一実施形態において、水溶液中のマグネシウムの70%が沈殿する。
【0046】
一実施形態において、水溶液中のホウ素の63~83%が沈殿する。一実施形態において、水溶液中のホウ素の68~78%が沈殿する。一実施形態において、水溶液中のホウ素の73%が沈殿する。
【0047】
沈殿するマグネシウムの量を制御するために、水酸化カルシウムの添加は、塩水溶液中の総マグネシウムの濃度に基づく。滴定分析を使用して塩水溶液中のマグネシウムを監視することができることが想定される。好ましい実施形態において、オンライン滴定ユニットを使用して、水酸化カルシウムの添加後のマグネシウム濃度を監視および制御する。過剰な水酸化カルシウムが添加されないことを確実にするために、温度および質量流量の制御が実施されることが好ましい。
【0048】
一実施形態において、溶液のpHは9.0未満に維持される。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、沈殿したホウ素塩がpH9.0を超えると石灰と反応し、石灰の消費の増加、ホウ素の再溶解、および塩水溶液へのカルシウムの導入をもたらすことを見出した。本発明者らは、より低い温度では、溶液のpHが9を超えて上昇し得ることを見出した。
【0049】
消石灰を添加した後、得られたスラリーを固/液分離ステップに通して固体22を除去し、中間溶液24を生成する。好ましい実施形態において、固/液分離ステップは、濃厚化ステップ(図示せず)を含む。濃縮槽アンダーフローは、濾過ステップ(図示せず)に導かれる。濾液をオーバーフロー流と合わせ、回収された固体は廃棄に導かれる。
【0050】
中間溶液24は、リチウム濃度を上昇させるために二次濃縮ステップ26に導かれる。図1に示す実施形態において、濃縮ステップは、中間溶液24が蒸発池または蒸発皿に導かれて含水量を減少させる太陽蒸発プロセスを含む。当業者に知られている塩水溶液を濃縮するための他の手段も使用され得ることが想定される。塩水溶液を濃縮すると、いくつかの固体が沈殿する。主な沈殿剤は、ハライト(NaCl)および塩化カリウム(KCl)である。
【0051】
濃縮ステップは、目標のリチウム濃度まで継続される。好ましい実施形態において、Liの目標濃度は少なくとも1.2%である。
【0052】
一実施形態において、二次濃縮ステップ26は、水溶液中のリチウムの濃度を少なくとも1.3%に上昇させる。一実施形態において、二次濃縮ステップは、水溶液中のリチウムの濃度を少なくとも1.4%に上昇させる。一実施形態において、二次濃縮ステップは、水溶液中のリチウムの濃度を少なくとも1.5%に上昇させる。
【0053】
一実施形態において、二次濃縮ステップは、水溶液中のリチウムの濃度を1.2~2.2%に上昇させる。一実施形態において、二次濃縮ステップは、水溶液中のリチウムの濃度を1.2~1.6%に上昇させる。
【0054】
濃縮された溶液を回収し、濾過して同伴固体28を濾過した溶液30から除去する。
【0055】
濾過した溶液を一次沈殿ステップ32に導き、そこでこれを水酸化物塩、例えば水酸化ナトリウム34と接触させて、溶液中の残りのマグネシウムをMg(OH)として沈殿させる。水酸化ナトリウム34の添加は、溶液中のマグネシウムの濃度に基づく。添加される水酸化ナトリウム34の量は、Mg2+とNaOHとの間の1.25:1~1:1.25の化学量論的関係を目標とすべきである。滴定分析を使用して中間溶液24中のマグネシウムを監視することができることが想定される。好ましい実施形態において、オンライン滴定ユニットを使用して、水酸化ナトリウム34の添加後のマグネシウム濃度を監視および制御する。他の水酸化物塩がMg(OH)を沈殿させるために等しく使用され得ることが想定されるが、本発明者らは、ナトリウムカチオンが系内に既に存在するので、NaOHの使用が好ましいことを見出した。
【0056】
当業者には理解されるように、水酸化ナトリウム34の添加は、溶液のpHの上昇をもたらす。本発明者らは、pHの上昇がリチウム損失をもたらすことを見出した。水酸化ナトリウム34の添加を制限することにより、pHも制限される。一実施形態において、一次沈殿ステップ32の溶液のpHは10未満に維持される。一実施形態において、一次沈殿ステップ32の溶液のpHは9.5未満に維持される。一実施形態において、一次沈殿ステップ32の溶液のpHは9未満に維持される。
【0057】
pHが安定化されると、二次沈殿ステップ36が行われる。必須ではないが、一次沈殿ステップ32と二次沈殿ステップ36との間で沈殿種を除去することができることが想定される。二次沈殿ステップ36では、溶液を炭酸ナトリウム38と接触させて炭酸カルシウムを沈殿させる。炭酸ナトリウム38は、溶液中のCa2+の濃度に基づいて投入される。添加される炭酸ナトリウム38の量は、Ca2+とNaCOとの間の1.25:1~1:1.25の化学量論的関係を目標とすべきである。滴定分析を使用して中間溶液24中のカルシウムを監視することができることが想定される。好ましい実施形態において、オンライン滴定ユニットを使用して、水酸化ナトリウム34の添加後のカルシウム濃度を監視および制御する。
【0058】
一実施形態において、溶液のpHは10未満に維持される。一実施形態において、溶液のpHは9.5未満に維持される。本発明者らは、炭酸リチウムの沈殿が溶液のpHと相関することを見出した。溶液のpHを10未満に維持することにより、炭酸リチウムの沈殿を制限できることが理解される。
【0059】
炭酸カルシウムを沈殿させるために炭酸ナトリウム38を使用すると、炭酸リチウムも共沈殿することが示されており、これは最終的にリチウム回収を制限する。本発明の発明者らは、中間溶液24中に存在する二価カチオンの濃度を管理することによって、二次沈殿ステップ36で必要とされる炭酸ナトリウム38の量を減少させることができることを見出した。二価カチオンの2つの主な供給源は、Mg2+およびCa2+である。予備不純物除去ステップ18におけるCa(OH)の使用は、塩水溶液からMg2+を沈殿させて除去するが、それはまたCa2+を塩水溶液に導入する。本発明者らは、予備析出ステップにおいて析出させるMg2+の量を制御することにより、中間溶液24中の総二価カチオン負荷量を管理できることを見出した。これは、塩水溶液中のMg2+濃度に基づいてCa(OH)を投入することによって達成される。従来技術のプロセスは、塩水溶液からマグネシウムを沈殿させるためにCa(OH)を使用しているが、Ca(OH)の投入量は、典型的には、可能な限り最大のMg2+を沈殿させるために目標溶液pHを達成することに基づく。これにより、かなりの量のCa2+カチオンが導入され、次いで、これを炭酸ナトリウム38で除去しなければならない。
【0060】
中間溶液24中に残るMg2+およびCa2+を説明するために、二段階沈殿プロセスを使用して最初にMg2+を除去し、続いてCa2+を除去する。予備不純物除去ステップ18で導入されたCa2+を管理することにより、本発明者らは、二次沈殿ステップ36で必要とされる炭酸ナトリウム38がより少ないことを見出した。これにより、この二次沈殿ステップ36で共沈殿する炭酸リチウムの量が制限される。さらなる利点は、溶液のpHが10未満に維持され、それによって炭酸リチウムの沈殿がさらに制限されることである。
【0061】
水酸化ナトリウム34および炭酸ナトリウム38の添加は、両方とも塩水溶液中のリチウム含有量を希釈する。当業者には理解されるように、希釈を最小限に抑えることは、溶液から高純度リチウム生成物を得る上で重要である。本発明者らは、溶液中のリチウムが不純物除去ステップ後に1.1重量%を超えて維持されるべきであることを見出した。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、溶液中に炭酸塩として沈殿するのに十分なリチウムがなければ、他の不純物が沈殿することを理解している。これにより、リチウム生成物中に不純物が生じる。
【0062】
二次沈殿ステップ36に続いて、得られたスラリーを固/液分離ステップに通して、生成した固体流40を除去し、精製された溶液42を得る。好ましい実施形態において、固/液分離ステップは、濃厚化ステップを含む。濃縮槽アンダーフローは、濾過ステップに導かれる。濾液をオーバーフロー流と合わせ、回収された固体40を廃棄に導かれる。
【0063】
精製された溶液42は、リチウム回収ステップ44に送られる。図1に示す実施形態において、リチウム回収ステップ44は、炭酸リチウムの結晶化を含む。炭酸リチウムを結晶化させるために、精製された溶液42を80~85℃に加熱する。次いで、精製された溶液42を炭酸ナトリウム46と接触させて炭酸リチウムを沈殿させる。
【0064】
本発明の好ましい実施形態において、炭酸ナトリウム46の投入量は、精製された溶液42中のLi+の濃度に基づく。一実施形態において、炭酸ナトリウム46を溶液に添加して、LiとNaCOとの間の1.25:1~1:1.25の化学量論的関係を目標とする。
【0065】
次いで、得られたスラリーは、炭酸リチウム48を回収するために固/液分離ステップに送られる。回収された生成物は、NaClおよびKClなどの不純物の吸蔵を減少させるために洗浄される。
【0066】
次いで、洗浄された生成物は、吸蔵した不純物をさらに低減するために精製ステップ(図示せず)に送られる。図1に示す実施形態において、洗浄された生成物が再溶解される。次いで、炭酸リチウムを再結晶し、回収した固体を洗浄して高純度炭酸リチウムを製造する。精製のための代替手段も使用され得ることが想定される。一実施形態において、リチウム生成物は、高温のリパルプ洗浄ステップに供され得る。本発明者らは、約80℃を超える温度では、固体不純物が溶解し、固体リチウム生成物が残ることを理解している。
【0067】
図1に示す実施形態は、リチウム生成物としての炭酸リチウムの回収を対象としているが、他のリチウム生成物が回収され得ることが想定される。一実施形態において、炭酸リチウムは、水酸化リチウムを生成するためにさらに処理される。代替的な実施形態において、水酸化リチウムが精製された溶液42から直接回収される。
【0068】
図2では、本発明の代替的実施形態に従う塩水溶液からリチウム生成物を回収するための方法を示す。図2に示す実施形態は、図1に示す実施形態と多くの類似点を共有し、同様の符号は同様の部分を示す。
【0069】
塩水溶液12は、リチウム濃度を上昇させるために濃縮ステップ14に送られる。図2に示す実施形態において、濃縮ステップ14は、塩水溶液が蒸発池または蒸発皿に導かれて含水量を減少させる太陽蒸発プロセスを含む。当業者に知られている塩水溶液を濃縮するための他の手段も使用され得ることが想定される。塩水溶液を濃縮すると、いくつかの固体が沈殿する。主な沈殿物は、ハライト(NaCl)である。
【0070】
濃縮ステップ14は、所望のリチウム濃度が達成されるまで継続される。好ましいリチウム濃度およびリチウム濃度を測定するための方法は、図1に関して上述したものと同様である。
【0071】
濃縮された溶液を回収し、濾過して任意の同伴固体15を除去する。
【0072】
濾過された塩水溶液16は、塩水溶液中にある量のマグネシウムを沈殿させるために予備不純物除去ステップ18に導かれる。マグネシウムを沈殿させるために、アルカリ性材料20が塩水溶液に添加される。図2に示す予備不純物除去ステップ18では、塩水溶液を消石灰Ca(OH)と接触させて、塩水溶液中に目標量のマグネシウムを沈殿させる。消石灰の添加は、いくらかの石膏CaSO.2HOと共に水酸化マグネシウムの沈殿をもたらす。ホウ素が塩水溶液中に存在する場合、石灰の添加はまた、ホウ酸塩としてホウ素の沈殿をもたらす。
【0073】
一実施形態において、水溶液中のマグネシウムの50~80%が沈殿する。一実施形態において、水溶液中のマグネシウムの55~75%が沈殿する。一実施形態において、水溶液中のマグネシウムの70%が沈殿する。
【0074】
一実施形態において、水溶液中のホウ素の63~83%が沈殿する。一実施形態において、水溶液中のホウ素の68~78%が沈殿する。一実施形態において、水溶液中のホウ素の73%が沈殿する。
【0075】
図1に関して上述したのと同様のマグネシウムを制御する方法は、図2の18にも同様に適用される。
【0076】
消石灰を添加した後、得られたスラリーを固/液分離ステップに通して固体を除去し、中間溶液24を生成する。好ましい実施形態において、固/液分離ステップは、濃厚化ステップを含む。濃縮槽アンダーフローは、濾過ステップに導かれる。濾液をオーバーフロー流と合わせ、回収された固体は廃棄に導かれる。
【0077】
中間流は、リチウム濃度を上昇させるために二次濃縮ステップ26に送られる。図2に示す実施形態において、二次濃縮ステップ26は、中間溶液24が蒸発池または蒸発皿に導かれて含水量を減少させる太陽蒸発プロセスを含む。当業者に知られている塩水溶液を濃縮するための他の手段も使用され得ることが想定される。塩水溶液を濃縮すると、いくつかの固体が沈殿する。主な沈殿剤は、ハライト(NaCl)および塩化カリウム(KCl)である。
【0078】
濃縮ステップは、目標のリチウム濃度まで継続される。図2の実施形態において、Liの目標濃度は1.6%~6%の範囲まで上昇させられる。
【0079】
図2に示す実施形態において、濃縮ステップは、図1に関して上述した実施形態のものよりも、中間溶液24中のリチウム濃度を上昇させる。本発明者らは、中間段階におけるリチウム濃度を上昇させることによって、より高純度のリチウム生成物がその後に回収され得ることを見出した。本発明者らは、中間溶液24の濃度が上昇すると、中間溶液24中の他の不純物に対するリチウムの比が増加することを見出した。理論に束縛されることを望むものではないが、カリウムおよびナトリウムなどの不純物は、リチウムよりも低い溶解限界を有し、したがってリチウムの前に飽和に達することが理解される。不純物が飽和に達すると、中間溶液24のさらなる濃縮は、不純物固体の沈殿のみをもたらす。これは、中間溶液24中のそのような種の濃度を制限しつつ、リチウム濃度をさらに上昇させることを可能にする。したがって、溶液中の不純物に対するリチウムの比率が増加する。本発明者らは、不純物に対するリチウムの比率のこの増加を利用して、回収される最終リチウム生成物中の不純物を低減することができることを見出した。
【0080】
濃縮された溶液を回収し、濾過して同伴固体を除去する。
【0081】
濾過した溶液を一次沈殿ステップ32に導き、そこでこれを水酸化ナトリウム34と接触させて、溶液中の残りのマグネシウムをMg(OH)2として沈殿させる。水酸化ナトリウム34の添加は、溶液中のマグネシウムの濃度に基づく。添加される水酸化ナトリウム34の量は、Mg2+とNaOHとの間の1.25:1~1:1.25の化学量論的関係を目標とすべきである。滴定分析を使用して中間溶液24中のマグネシウムを監視することができることが想定される。好ましい実施形態において、オンライン滴定ユニットを使用して、水酸化ナトリウム34の添加後のマグネシウム濃度を監視および制御する。
【0082】
当業者には理解されるように、NaOHの添加は、溶液のpHの上昇をもたらす。本発明者らは、pHの上昇がリチウム損失をもたらすことを見出した。NaOHの添加を制限することにより、pHも制限される。一実施形態において、一次沈殿ステップ32の溶液のpHは10未満に維持される。一実施形態において、一次沈殿ステップ32の溶液のpHは9.5未満に維持される。一実施形態において、一次沈殿ステップ32の溶液のpHは9未満に維持される。
【0083】
pHが安定化されると、二次沈殿ステップ36が行われる。二次沈殿ステップ36では、溶液を炭酸ナトリウム38と接触させて炭酸カルシウムを沈殿させる。炭酸ナトリウム38は、溶液中のCa2+の濃度に基づいて投入される。添加される炭酸ナトリウム38の量は、Ca2+とNaCOとの間の1:1の化学量論的関係を目標とすべきである。滴定分析を使用して中間溶液24中のカルシウムを監視することができることが想定される。好ましい実施形態において、オンライン滴定ユニットを使用して、水酸化ナトリウム34の添加後のカルシウム濃度を監視および制御する。
【0084】
一実施形態において、溶液のpHは10未満に維持される。一実施形態において、溶液のpHは9.5未満に維持される。本発明者らは、炭酸リチウムの沈殿が溶液のpHと相関することを見出した。溶液のpHを10未満に維持することにより、炭酸リチウムの沈殿を制限できることが理解される。
【0085】
二次沈殿ステップ36に続いて、得られたスラリーを固/液分離ステップに通して、生成した固体流40を除去し、精製された溶液42を得る。好ましい実施形態において、固/液分離ステップは、濃厚化ステップを含む。濃縮槽アンダーフローは、濾過ステップに導かれる。濾液をオーバーフロー流と合わせ、回収された固体は廃棄に導かれる。
【0086】
精製された溶液42は希釈ステップに送られ、そこで精製水と接触させてリチウム濃度を低下させる。前述のように、本発明者らは、溶液から高純度リチウム生成物を回収するために、精製された溶液中のリチウム濃度を1.1重量%超に維持すべきであることを見出した。図2に示す実施形態において、中間溶液24は、リチウム濃度を上昇させるために濃縮される。これにより、必要最小限をはるかに上回るリチウム濃度を有する精製された溶液42が得られる。希釈ステップは、溶液中の残留不純物の濃度と共に、リチウム濃度を減少させる。希釈ステップで添加される水の量を制御することにより、これらの不純物の濃度を可能な限り低下させることができる一方で、1.1重量%を超えるリチウム濃度を確保することができる。低不純物濃度は、その後に回収されるリチウム生成物の純度を増加させる。
【0087】
希釈ステップの後、精製された溶液42は、リチウム回収ステップ44に送られる。図2に示す実施形態において、リチウム回収ステップ44は、炭酸リチウムの結晶化を含む。炭酸リチウムを結晶化させるために、精製された溶液42を80~85℃に加熱する。次いで、精製された溶液42を炭酸ナトリウム46と接触させて炭酸リチウムを沈殿させる。
【0088】
本発明の好ましい実施形態において、炭酸ナトリウム46の投入量は、精製された溶液42中のLi+の濃度に基づく。一実施形態において、炭酸ナトリウム38を溶液に添加して、Li+とNaCOとの間の約1:1の化学量論的関係を目標とする。
【0089】
次いで、得られたスラリーは、炭酸リチウム48を回収するために固/液分離ステップに送られる。回収された生成物は、NaClおよびKClなどの不純物の吸蔵を減少させるために洗浄される。
【0090】
実施例1
蒸発池を通じたリチウムの回収に対する硫酸塩濃度の影響を決定するために、一連の試験を行った。蒸発中のKLiSOの沈殿をよりよく理解するために、硫酸塩濃度とKLiSOの沈殿の開始時との間の(見かけの)関連を理解することが最初に必要であった。
【0091】
これは、0.8重量%のLiの濃度まで蒸発させた実際の塩水を使用して、2つの蒸発プロファイル試験で行った。試験は、小規模(約100mL)で並行して行った。一方の試験では、供給原料をわずかに希釈し(15%未満、「未処理」)、他方では、濃縮CaCl溶液の少量のアリコート(78g/L Ca)を添加して硫酸塩を約60%減少させた(「硫酸塩が減少した」)。次いで、両方の塩水を約20℃で8日間にわたって大気条件下で蒸発させた。リチウムおよび硫酸塩の濃度経路をそれぞれ図3および図4に示す。
【0092】
図3のデータは、2つの蒸発試験のリチウム濃度経路の実質的な違いを示している。硫酸塩低減塩水では、Li:Mg比の有意な変化は観察されず、沈殿した固体の元素分析によって判断したところ、KLiSOの沈殿なしに塩水を目標の1.2重量%のLiまで蒸発させることができた。未処理塩水では、リチウム濃度経路の初期の分岐によって示されるように、蒸発プロセスの当初からKLiSO沈殿が起こった。この試験では、わずか1.0重量%の最終リチウム濃度が達成され、約20%のリチウムが蒸発中に沈殿したことを示している。
【0093】
図4のデータは、未処理塩水からのリチウムの沈殿が硫酸塩の沈殿を伴ったことを示している。析出したLi:SOのモル比は、蒸発プロファイル全体を通して約1:1であり、これはKLiSOの析出と一致する。対照的に、蒸発中に維持された一定のSO:Mg比から示されるように、硫酸塩低減塩水から硫酸塩は沈殿しなかった。
【0094】
硫酸塩濃度の影響をよりよく定義するために、一般的な塩水を用いて追加の蒸発試験を行った。これらの蒸発試験は、BV蒸発試験中に使用される温度である25℃で数時間にわたってロータリーエバポレーターにおいて減圧下で行われた。未処理塩水の蒸発を、濃縮CaCl溶液の添加によって30、40および50%の硫酸塩が除去された塩水の蒸発と比較した。LiおよびSOの濃度経路をそれぞれ図5および図6に示す。
【0095】
図5のデータは、硫酸塩が低減された一般的な塩水のそれぞれが、リチウムの沈殿なしに目標の約1.2重量%のLiに蒸発させることができたことを示している。対照的に、未処理塩水は、1.1重量%のLiに蒸発すると約28%のリチウムを失うことが観察された。
【0096】
一般的な塩水の場合、蒸発前に硫酸塩の約30%が除去された塩水のみが、蒸発中に硫酸塩のさらなる減少を示した(図6)。これはKLiSOによるものではないことから、K2SOの析出によるものであることが示唆される。これらの試験で使用された(相対的)加速蒸発速度は、KLiSO対K2SOの競合する沈殿に影響を及ぼした可能性がある。
【0097】
実施例2
温度がKLiSOの沈殿にどのような影響を有するか決定するために、KLiSOの沈殿前に約0.6重量%のLiに蒸発した塩水を表す一般的な塩水を、約1.1重量%のLiを目標として15、25および35℃で蒸発させた。
【0098】
これらの蒸発試験は、サーモスタット制御水浴を使用し、減圧下でロータリーエバポレーターを使用して塩水温度を厳密に制御して行った。蒸発は、典型的には20時間にわたって、または必要に応じて行われた。
【0099】
LiおよびSOの濃度経路をそれぞれ図7および図8に示す。
【0100】
図7のデータは、3つの蒸発温度間のリチウム濃度経路のわずかな違いを示している。しかし、データは、所与のMg重量%(蒸発レベル)に対してより高い濃度のリチウムをより低い温度で維持できることを示唆している。同様の傾向が、図8に示される硫酸塩の濃度経路にも反映された。
【0101】
リチウムの析出が確認された各温度について、析出したリチウムと硫酸塩とのモル比は1:1 Li:SOであり、KLiSOの析出と一致した。これらの結果は、KLiSOがより高い温度では可溶性がより低く、蒸発温度が上昇するにつれて沈殿する可能性がより高いことを示している。
【0102】
実施例3
0.7重量%のLiでの石灰化中のマグネシウム、カルシウム、ホウ素および硫酸塩の挙動を特徴付けるために、一連の試験を行った。
【0103】
図9のデータは、マグネシウム、ホウ素および硫酸塩の除去率対MgおよびBに対して計算された石灰添加の化学量論を示している。石灰の化学量論は、この場合、石灰の滴定されたアルカリ度に基づいて計算され、わずか22mmol/g(すなわち、純粋なCa(OH)について予想されるアルカリ度の83%)であった。
【0104】
注目すべきこのデータの最初の特徴は、マグネシウムのほぼ完全な除去を達成するために(>99%)、これは過剰な石灰(130~150%)を必要としたことである。これは、添加された石灰の有用性が比較的低いことを実証しており、これはおそらく石膏による石灰粒子表面の不動態化による。連続運転における有用性の向上を期待することが合理的であろう。
【0105】
注目すべきこのデータの2つ目の特徴は、ホウ素の除去が石灰の約85%の化学量論的添加で最大化され、これは約70~80%のマグネシウム除去に変換されたことである。石灰の添加を増やすと、ホウ素の除去は、実際には、調査した石灰の最大添加で85~約65%、さらには40%まで減少した。
【0106】
石灰添加中の塩水化学の変化へのさらなる洞察を提供するために、図10にpHに対してプロットされた主要元素の濃度で151%の石灰化学量論(対MgおよびB)を使用した試験のプロファイルを取った。
【0107】
ホウ素の場合、濃度経路は異常であり、pH8.5を中心とした「U字形」プロファイルを示した。ホウ素は最初にpH7.0~8.5の間で減少し、次いでpH8.5を超えて増加した。この挙動は、最初に沈殿するホウ素種が、さらに添加されるにつれて石灰と反応することを示す。この挙動はまた、pH9.5でのデータを説明しており、これは、盗まれた(thief)サブサンプルと共に除去された固体を反応タンクに戻した結果である。これにより、pHが急激に低下し、その結果、ホウ素濃度が急激に低下した。反応のpHをpH9.5に戻すには、追加の石灰が必要であり、その結果、溶液中のカルシウムの濃度が上昇した。
【0108】
したがって、石灰を使用してマグネシウムの非常に高い(>99%)除去を追求する結果は3つの部分からなる。第1に、pH>8.5で沈殿したホウ酸塩固体と石灰との間の継続的な反応性がホウ素を可溶化するので、ホウ素除去は減少する。第2に、この反応は、不純物の除去を効果的に進めることなく石灰を消費し、石灰の有用性を低下させる。そして第3に、この反応は、マグネシウムのみを除去するのに必要な量を超えてカルシウムを塩水に放出し、これは、示されるように(図11)、塩水の二価イオン濃度(すなわち、CaプラスMg)を実際上上昇させる。この追加された二価の負荷は、より高い試薬消費をもたらし、また、プロセスの効率に悪影響を及ぼす軟化におけるより高い固体生成をもたらす。
【0109】
実施例4
マグネシウム除去に対するpHの効果を調べた。図12のデータは、石灰添加で観察されたpHに対するマグネシウムおよびホウ素の除去を示すが、pH範囲7.5~10についてのみである。データは、ほぼ完全なマグネシウム除去(>99%)を達成するためには、約10のpHが必要とされるが、ホウ素除去はわずか約40%に低下する。この高pH領域におけるデータの広がりの欠如は、関係が強いことを示唆している。
【0110】
対照的に、8.0~8.5のより低いpH範囲では、(所与のpHでの)マグネシウム除去とホウ素除去との間の相関は特に不十分であった。例えば、約80%のホウ素除去が起こるpH8.5では、マグネシウムの除去は20~80%の間で変化した。マグネシウム除去度の再現性は、単一の塩水供給と比較的一致することが観察されたが、これらのデータは、塩水組成の変化が大きな影響を及ぼすことを実証している。さらに、これは、石灰化段階の性能を制御するためにpHに依存する場合には注意を払わなければならないことを示している。
【0111】
石灰化学量論(質量/体積流量比)がこのステップのためのより信頼性の高い制御戦略であることが示唆される。しかしながら、実用的な指針として、最適レベルのホウ素除去(約75~85%)を達成し、軟化を報告する二価イオン濃度を最小限に抑えるために、pH8.2~8.8の間の一般的な動作範囲が推奨される。
【0112】
実施例5
炭酸リチウムの沈殿の前にカルシウムおよびマグネシウムを除去するために、苛性物質および炭酸ナトリウムの両方の組み合わせを使用して、合計8回の軟化試験を行った。特にリチウム損失に関して、石灰化におけるどのマグネシウム除去が軟化における最良の性能をもたらしたかを決定することに特に注目した。
【0113】
各試験では、最初に約pH10でマグネシウム除去を目標として苛性物質を添加し、次いで得られたスラリーに(可溶性)カルシウムの濃度に対して炭酸ナトリウムを添加した。これらの試験の結果を表1に要約する。
【表1】
【0114】
実行8、9および10では、それぞれ高(約26g/L)、中(約17g/L)および低(約0.7g/L)の残留カルシウム濃度を目標として、0.7重量%のLiで石灰化を行った。実行11および実験12では、それぞれ高(約13g/L)および低(約4g/L)残留カルシウム濃度を目標として、1.0重量%のLiで塩水石灰化を行った。最後に、好ましい石灰化条件を使用して軟化条件を最適化する試みにおいて、実行8~12の結果に基づいて実行13A~Cを実行した。
【0115】
実行8、9、10および12の各試験では、有意な量のリチウム沈殿が観察された(8~14%)が、洗浄後のリチウムの損失は典型的には約3%であった。驚くべきことに、軟化中のリチウムの沈殿の程度は、予想通り、供給液中のカルシウム濃度と相関していないようであった。これらの試験では、実験の実行に関する明白な問題は認められなかった。
【0116】
実行11は、溶液からのリチウムの沈殿をもたらさなかったという点で普通ではなかった。2つの特徴は、異常に低いリチウム沈殿をもたらしたかもしれない実行11に関して独特であった。第1に、軟化への供給原料中のリチウム濃度は、各他の実施よりも有意に低く(約6g/L Li)、第2に、最終反応pHは他の実行よりも幾分低かった(少なくとも約0.3pH単位)。低い反応pHは、マグネシウム沈殿のpH10の目標を達成するために必要なNaOH化学量論が低いためであった。
【0117】
実行11におけるリチウムの損失の欠如の正確な理由は不明のままである。しかし、リチウム濃度の低下が最も考えられる理由であると推測される。LCの沈殿は実際には反応性結晶化プロセスであるため、濃度が低下すると、はるかに高い濃度、すなわち他の実施と同様に約10g/Lを超えるLiの場合よりもLCの結晶化速度が遅くなると考えられる。
【0118】
結晶化条件の重要性は、LC沈殿試験研究中に以前に指摘されており、このステップはカルシウム沈殿を目標としているが、同様の効果がここで働いている可能性があると予想することは合理的であると思われる。
【0119】
実行13A~Cに対して選択された石灰化条件は、実行9に対して使用されたものと本質的に同じであり、すなわち、約65%のマグネシウム除去を目標として0.7重量%のLiで石灰化する。より低濃度の塩水でより良好な石灰反応性が得られ、蒸発後の石灰化と軟化の両方がいくらかの希釈をもたらし、これがステージ効率を低下させ、LC不足(barren)への依存を低下させてリチウムの損失を制限するため、0.7重量%のLiでの石灰化が行われた。
【0120】
マグネシウムおよびホウ素の除去に関して最良の石灰の有用性を達成するために、約65%のマグネシウムの除去の石灰化を目標に設定した。はるかに多くのまたはより少ないマグネシウム除去を目標とすることは、軟化段階への二価負荷を増加させ、ホウ素除去を減少させる。
【0121】
石灰化後、塩水を蒸発させて約1.1重量%のLiとした。軟化中、苛性物質の添加は以前の試験と比較してわずかに減少し、pH10の目標を達成するための添加ではなく、存在するマグネシウムに対して化学量論量(105%)が添加された。以前の試験と比較して同様の炭酸ナトリウム添加を使用した。
【0122】
実行13Aでは、反応を40℃で行い、実行13Bでは、反応を20℃で行った。温度による反応性能の差は観察されず、両方の試験では、リチウム沈殿は事実上生じなかった。これらの試験の最終反応pHも比較的低く、pH9.4(実行13A)およびpH9.9(実行13B)であった。より低いpHにもかかわらず、非常に高いマグネシウム除去がこれらの試験で依然として得られた(<23mg/L)。実行13Cでも、反応温度は20℃であったが、炭酸ナトリウムが最初に添加され、続いてNaOHが添加されるように試薬添加を交換した。これにより、5%のリチウム沈殿および10.7のより高い反応pHが得られた。
【0123】
実施例6
高いマグネシウムおよびカルシウム度が達成された苛性物質/炭酸ナトリウム二価除去試験の組み合わせから得られた液体を使用して、炭酸リチウム(LC)の沈殿を行った。これらは、実施例5に記載の実行8~12および実行13Bからの液体であった。作製したLCの組成の概要を表2に示す。
【表2】
【0124】
実行8~12および実行13Bでは、すべての試験で99%を超えるLC純度が達成された。最良の結果は、99.5%の純度および例外的に低いカリウム、ナトリウムおよび塩化物不純物を有する実行11によって得られた。実行11を1.0重量%のLiで石灰化させ、石灰化によって希釈を導入し、続いて軟化さらに希釈を導入すると、LC沈殿物への供給原料中のリチウム濃度が非常に低くなった(約6g/L)。これにより、結晶成長がより遅く、より均一になり、その結果、LCによるNaClおよびKClの吸蔵が少なくなった可能性がある。この結果は、好ましい結晶化条件下でのLC沈殿で得られ得る高度のNaClおよびKClの排除を強調している。
【0125】
LC沈殿への供給原料のリチウム濃度が非常に低い(約6g/L)ため、実行11もLCへのリチウム回収率が最も低かった(61%)。比較すると、0.7重量%のLiで石灰化を行い、続いて1.1重量%を超えるLiまで蒸発させた場合、LC沈殿への供給原料中にはるかに高いリチウム濃度が存在し(約9~14g/L)、はるかに高いリチウム回収率が得られた(72~86%)。この結果は、石灰化によって導入される追加の希釈がLCの回収を実質的に減少させるという点で、蒸発の終了時の石灰化に対する別の欠点を強調している。
【0126】
99.0%および99.1%の最悪のLC純度は、主により高いNaCl含有量に起因して、それぞれ実行8および9から生成された。これらの試験のための供給液は、より迅速なLC結晶化、不規則な結晶成長およびより多くのNaCl吸蔵をもたらした可能性がある他の実行(pH9.9~10.6)と比較してより高いpH(11.3)を有していた。
【0127】
ナトリウム、カリウムおよび塩化物は、各LC試料中の主要な不純物であり、これは混合Na/K塩化物塩水供給液からのLC沈殿について予想される通りである。一般に、LC中に存在する塩化物不純物は、存在するナトリウムおよびカリウム不純物の量とよく相関しており、これらの不純物が実際にLC結晶中のNaClおよびKClの吸蔵により発生することを示唆している。重要なことに、吸蔵された塩はLCから容易に「洗浄」されない。LC結晶化は、連続プロセス運転下での、シードリサイクル、長時間の運転時間、最適な反応器設計など、ベンチスケール、バッチ試験研究では容易に再現されない条件で改善することが知られていることに留意されたい。
【0128】
各供給液は比較的低濃度のカルシウムおよびマグネシウムを含有していたが、関連する炭酸塩は極めて不溶性であり、得られたLCに報告されるので、カルシウムおよびマグネシウムの両方が、生成された各LCにおいて主要な不純物として現れた。不純物除去および軟化試験研究の結果に基づいて、得られたLCからのカルシウムおよびマグネシウムの除去の増加は、LC沈殿の前にイオン交換(IX)による処理を必要とする。
【0129】
得られたLCへのホウ素の挙動はいくらか変動があり、様々な供給液の組成と相関するようには見えなかった。とは言え、ホウ素の大部分は、以前のプロセス開発プログラムで観察された挙動に従って、結果として得られるLCに報告しない。
【0130】
LC中の硫酸塩不純物の存在は、これまでに行われたプロセス開発研究において懸念されていなかった。石灰の添加は、典型的には、塩水中に非常に低い硫酸塩濃度を生じさせるのに十分であった。しかし、実行10では、不純物除去のために少ない石灰の添加を使用し、上昇した硫酸塩濃度がLC沈殿まで進み、LCで上昇した硫酸塩不純物、すなわち、石灰化がはるかに高い硫酸塩除去を達成した<25ppm Sと比較して118ppm Sが得られた(例えば、実行8および13B)。
【0131】
実施例7
石灰化段階後にリチウム濃度が1.7重量%のLiおよび2.1重量%のLiの両方に上昇した溶液について、軟化試験を繰り返した。実施例5と同様に、これらの試験は、炭酸リチウムの沈殿の前にカルシウムおよびマグネシウムを除去するために苛性物質および炭酸ナトリウムの両方の組み合わせを使用して行われた。
【0132】
各試験では、最初に約pH10でマグネシウム除去を目標として苛性物質を添加し、次いで得られたスラリーに(可溶性)カルシウムの濃度に対して炭酸ナトリウムを添加した。これらの試験の結果を、それぞれ1.7重量%および2.1%について表3および表4に要約する。
【表3】
【表4】
【0133】
1.7重量%溶液では、Li:Kの比率は0.99から1.63に増加した。2.1重量%溶液では、Li:Kの比率は1.41から2.13に増加した。これは、第2の濃縮ステップにおけるリチウムの濃度の上昇を使用して、精製された溶液中のカリウムに対するリチウムの比を増加させることができることを実証している。
【0134】
本明細書に記載の本発明に対する変形および修正は、その趣旨および範囲から逸脱することなく明らかになることが当業者には理解されよう。当業者に明らかな変形および修正は、本明細書に記載の本発明の広い範囲および範囲に含まれると考えられる。
図1
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【国際調査報告】