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特表2023-551115エラストマー混合物押出機で使用するスクリューおよび二軸スクリューアセンブリ、ならびに関連するエラストマー混合物を押出す方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】エラストマー混合物押出機で使用するスクリューおよび二軸スクリューアセンブリ、ならびに関連するエラストマー混合物を押出す方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/535 20190101AFI20231130BHJP
   B29C 48/41 20190101ALI20231130BHJP
   B29C 48/59 20190101ALI20231130BHJP
   B29C 48/595 20190101ALI20231130BHJP
   B29C 48/62 20190101ALI20231130BHJP
   B29C 48/69 20190101ALI20231130BHJP
【FI】
B29C48/535
B29C48/41
B29C48/59
B29C48/595
B29C48/62
B29C48/69
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527442
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 IB2021060253
(87)【国際公開番号】W WO2022097076
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】102020000026669
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522312045
【氏名又は名称】ポミニ ラバー アンド プラスチック エス アール エル
【氏名又は名称原語表記】POMINI RUBBER & PLASTICS S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト レガリア
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AA45
4F207AJ08
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK13
4F207KL03
4F207KL04
4F207KL07
4F207KL19
4F207KL38
(57)【要約】
エラストマー混合物押出機の二軸スクリューアセンブリで使用するスクリュー(21;22)は、3つの異なるセクター(30、40、50)を画定する一条タイプのねじ山を有するねじ部を備える。3つの異なるセクターは、外部から供給される混合物をキャプチャし、それを長手方向(X‐X)に沿って下流に押し出し、ねじ山の隣接するフランクの間に含まれる貫流チャネルの断面(S)を有し、断面(S)は、ねじ山の2ピッチまたは720°の回転にわたって一定である、取入セクター(30)と、可変で取入セクターの貫流チャネルの断面よりも小さい貫流チャネルの断面(S)を有し、断面(S)は、長手方向(X‐X)に通過中の混合物に作用する押圧力を増加させる、移行セクター(40)と、貫流チャネルの最小の断面を有し、この断面は、1ピッチにわたって一定であり、混合物の最大圧力を得るために混合物の圧縮を引き起こす、高圧セクター(50)と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー混合物押出機の、噛み合いスクリューを有する二軸スクリューアセンブリで使用するように適合されたスクリュー(21;22)であって、上流から下流への軸方向の延在の長手方向(X‐X)に沿って前記スクリューの少なくとも3つの異なるセクター(30、40、50)を画定する一条タイプのねじ山を有するねじ部を備え、前記少なくとも3つの異なるセクターは、
取入セクター(30)であって、混合物をキャプチャし、それを前記長手方向(X‐X)に沿って下流に押し出すように構成されて、前記ねじ山の隣接するフランクの間に含まれる貫流チャネルの断面(S)を有し、前記断面(S)は、前記ねじ山の少なくとも2ピッチまたは720度の回転にわたって一定である、取入セクター(30)と、
前記取入セクターの下流にある移行セクター(40)であって、可変で前記取入セクターの貫流チャネルの断面よりも小さい貫流チャネルの断面(S)を有し、前記断面(S)は、長手方向(X‐X)に通過中の混合物に作用する押圧力を増加させるように設計されている、移行セクター(40)と、
前記移行セクターの下流にある高圧セクター(50)であって、貫流チャネルの最小の断面を有し、前記断面は、少なくとも1ピッチにわたって一定であり、混合物の最大圧力を得るために前記混合物の圧縮を引き起こすように設計されている、高圧セクター(50)と、を備える、スクリュー(21;22)。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリューであって、前記取入セクターは、少なくとも2ピッチにわたって、好適には少なくとも3ピッチにわたって、特に2、3、または4ピッチにわたって一定である貫流チャネルの断面および/またはねじ山の頂部の幅(W)を有することを特徴とする、スクリュー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスクリューであって、前記取入セクターにおいて、前記スクリューのジオメトリは、
頂部の幅W=(0.025‐0.20)D、好適には(0.05‐0.10)D、ここでDは、スクリューの外径であり、少なくとも2、3、または4ピッチにわたって一定である、および/または、
ねじ山のピッチPは一定、好適には外径Dに等しい、および/または、
貫流チャネルの高さHは、
H=(0.3‐0.8)D、好適には(0.54‐0.6)Dであり、および/または、
取入ゾーンの軸方向長さLi=(3‐4)Pおよび/または(3‐4)D、であることを特徴とする、スクリュー。
【請求項4】
請求項1、2、または3の何れか一項に記載のスクリューであって、前記高圧セクター(50)において、前記スクリューのジオメトリは、
頂部の幅W=(0.3‐0.4)D、好適には(0.33‐0.37)D、1ピッチまたは2ピッチにわたって一定であり、および/または、
ピッチPは一定、好適には=Dであり、
ここで、Dは前記スクリューの外径であることを特徴とする、スクリュー。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のスクリューであって、ねじ部全体にわたって一定のピッチを有することを特徴とする、スクリュー。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載のスクリューであって、ねじ部の長さは、10D以下であってDは前記スクリューの外径であり、および/または10P以下であってPはねじ山のピッチであることを特徴とする、スクリュー。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載のスクリューであって、前記移行セクターにおいて、混合物の通過のための貫流チャネルの変化は、スクリューのねじ山の頂部の幅(W)を変化させるジオメトリで得られることを特徴とする、スクリュー。
【請求項8】
請求項7に記載のスクリューであって、前記移行セクターにおいて、頂部の幅Wは、前記取入セクターの頂部の幅に対応するWの最小値と、前記高圧セクターのWの値に対応する最大値と、の間で連続的に可変であり、前記スクリューの前記移行セクターにおけるジオメトリは、好適には、
ピッチPは一定、好適には外径Dに等しく、および/または、
貫流チャネルの高さHは、好適には一定であり、および/または(0.3‐0.12)D、好適には(0.54‐0.6)Dの間に含まれ、および/または、
前記移行セクターの軸方向の長さLt=1‐3Dであり、
ここで、Dは前記スクリューの外径である、スクリュー。
【請求項9】
エラストマー混合物押出機用の二軸スクリューアセンブリ(10、20)であって、一条タイプのねじ山を有するねじ部を備える2つのスクリュー(21、22)を備え、前記2つのスクリューは、噛み合い、またシリンダ(10)内部で平行な長手方向の回転軸(X‐X)で逆回転するように配置され、その結果、複数のCチャンバ(Cx)の結合体からなる混合物流の通過のための貫流チャネルを形成し、各Cチャンバは、前記シリンダ(10)内部の自由容積によって画定され、1つのスクリューのねじ山の1回転に含まれ、
前記二軸スクリューアセンブリには、混合物を前記貫流チャネルに取入するための上流開口部(13)が設けられ、
流れの通過のための前記貫流チャネルは、上流から下流へ、前記スクリューの軸方向の延在の長手方向(X‐X)、また混合物の前進運動において、少なくとも3つの異なるセクター(30、40、50)を備え、前記少なくとも3つの異なるセクターは、
取入セクター(30)であって、外部から供給される混合物をキャプチャし、それを前記長手方向(X‐X)に沿って下流に押し出すように構成されて、また、流れの通過のための前記貫流チャネルを形成するCチャンバの容積を有し、前記Cチャンバの容積は、各スクリューのねじ山の少なくとも2ピッチにわたって一定である、取入セクター(30)と、
前記取入セクターの下流にある移行セクター(40)であって、流路を形成するCチャンバの容積を有し、前記容積は、可変であって、減少し、また前記取入セクターのCチャンバの容積よりも小さい、移行セクター(40)と、
前記移行セクターの下流にある高圧セクター(50)であって、流路を形成するCチャンバの容積を有し、前記容積は、少なくとも1ピッチにわたって一定であり、また前記取入セクターおよび前記移行セクターのCチャンバの容積よりも小さく、かつ混合物の最大圧力を得るために前記混合物の圧縮を引き起こすように適合されている、高圧セクター(50)と、を含むことを特徴とする、二軸スクリューアセンブリ(10、20)。
【請求項10】
請求項9に記載の二軸スクリューアセンブリであって、前記スクリューは鏡像配置にあることを特徴とする、二軸スクリューアセンブリ。
【請求項11】
請求項9または10に記載の二軸スクリューアセンブリであって、前記高圧セクターは、各スクリューの少なくとも2ピッチにわたって一定であるCチャンバの容積を有することを特徴とする、二軸スクリューアセンブリ。
【請求項12】
請求項9~11の何れか一項に記載の二軸スクリューアセンブリであって、前記取入セクターは、各スクリューの少なくとも3ピッチ、好適には少なくとも4ピッチにわたって一定であるCチャンバの容積を有する、二軸スクリューアセンブリ。
【請求項13】
請求項9~12の何れか一項に記載の二軸スクリューアセンブリであって、前記移行セクターは、混合物の前進運動の意味において減少するCチャンバの容積を有する、および/または、実質的に連続する、特に少なくとも部分的に概して一次および/または二次および/または二次より大きい次数の変化の法則に従って、混合物の前進運動の意味において減少する混合物流の通過のための貫流チャネルの断面を有する、二軸スクリューアセンブリ。
【請求項14】
請求項9~13の何れか一項に記載の二軸スクリューアセンブリであって、前記スクリューおよび前記シリンダは、混合物流路を通る有効流量(Q)であって、前記取入セクターから前記高圧セクターの端部まで混合物が前進運動する長手方向に沿って一定である前記有効流量(Q)が得られるように配置および構成されている、二軸スクリューアセンブリ。
【請求項15】
請求項9~14の何れか一項に記載の二軸スクリューアセンブリであって、2つのスクリューのうちの一方および/または他方は、請求項1~8の何れか一項に従って構成されている、二軸スクリューアセンブリ。
【請求項16】
請求項9~15の何れか一項に記載の二軸スクリューアセンブリであって、
前記取入セクターにおいて、
O’=(0.0025‐0.030)D、好適には(0.005-0.015)Dであり、
δ=(0.0025‐0.030)D、好適には(0.005-0.015)Dであり、
および/または、
前記高圧セクターにおいて、
O’=(0.0025‐0.020)D、好適には(0.005‐0.015)Dであり、
δ=(0.0025‐0.030)D、好適には(0.005‐0.015)Dであり、
および/または、
前記移行セクターにおいて、
O’=(0.0025‐0.030)D、好適には(0.005‐0.015)Dであり、
δ=(0.025‐0.030)D、好適には(0.005‐0.015)Dであり、
ここで、O’は一方のスクリューの頂部と他方のスクリューのコアとの間の距離であり、δは1つのスクリューの頂部と、収容シリンダのハウジングキャビティの内面との間の距離である、二軸スクリューアセンブリ。
【請求項17】
請求項9~16の何れか一項に記載の二軸スクリューアセンブリであって、前記上流開口部は、長手方向(X‐X)に対して実質的に直交する方向(Z‐Z)で貫流チャネルに混合物を供給するように構成されている、二軸スクリューアセンブリ。
【請求項18】
エラストマー混合物押出機であって、請求項9~17のいずれか一項に記載の、長手方向(X‐X)に延在する二軸スクリューアセンブリと、下流側押出ヘッド(70)と、を備えることを特徴とする、エラストマー混合物押出機。
【請求項19】
請求項18に記載の押出機であって、高圧ゾーン(50)の下流に、メッシュフィルターが設けられて混合物を通過させる濾過ゾーン(70)を備えることを特徴とする、押出機。
【請求項20】
エラストマー混合物を押出す方法であって、
エラストマー混合物を、混合物押出機の二軸スクリューアセンブリに供給するステップであって、前記二軸スクリューアセンブリは、ねじ部を有する2つのスクリュー(21、22)を備え、前記スクリュー(21、22)は、噛み合い、またシリンダ(10)内部で平行な長手方向の回転軸(X‐X)で逆回転するように配置され、その結果、複数のCチャンバ(Cx)の結合体からなる混合物流の通過のための上流から下流への貫流チャネルを形成し、各Cチャンバは、前記シリンダ内部のそれぞれのスクリューの間の自由容積によって画定され、1つのスクリューのねじ山の1回転に含まれ、
前記エラストマー混合物を、前記二軸スクリューアセンブリの混合物流の通過のための前記貫流チャネル内部に、混合物取入開口部(13)を通して供給する、供給するステップと、
前記エラストマー混合物をキャプチャし、前記エラストマー混合物を、前記二軸スクリューアセンブリの取入セクター(30)において、混合物流のための前記貫流チャネルを通って下流に押し出すステップであって、前記取入セクターは、各スクリューのねじ山の少なくとも2ピッチにわたって一定の流路を形成するCチャンバの容積を有する、キャプチャして下流に押し出すステップと、
混合物流の通過のための前記貫流チャネルの移行セクター(40)を通って前記エラストマー混合物を前進させるステップであって、前記移行セクター(40)は、前記スクリューの軸方向の延在の長手方向(X‐X)において前記取入セクターの下流に配置されて、混合物の移動を前進させ、流路を形成するCチャンバの容積を有し、前記容積は、可変であって、減少し、また前記取入セクターのCチャンバの容積よりも小さい、前進させるステップと、
高圧セクター(50)において前記エラストマー混合物を前進させて圧縮するステップであって、前記高圧セクター(50)は、前記移行セクターの下流に配置され、流路を形成するCチャンバの容積を有し、前記容積は、少なくとも1ピッチにわたって一定であり、また前記取入セクターおよび前記移行セクターのCチャンバの容積よりも小さく、その結果、混合物の圧縮を引き起こして、前記混合物の最大圧力を得る、前進させて圧縮するステップと、
前記エラストマー混合物を、最大圧力で、前記高圧セクター(50)の下流に配置された押出ヘッド(60)を通過させるステップと、を含む方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記高圧ゾーン(50)の下流のメッシュフィルターを通過させる、処理される混合物の濾過(70)を含む、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、混合物流路を通る混合物の有効流量は、前記取入セクターから前記高圧セクターの端部までの混合物の前進運動の長手方向に沿って実質的に一定である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマーベースの混合物の押出および/または濾過のための噛み合いスクリューを有する二軸スクリュー押出機で使用するねじ付きスクリューと、エラストマー混合物用の噛み合いスクリューを有する二軸スクリュー押出機と、エラストマーベースの混合物を押出す方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマーベースの混合物または化合物などのエラストマー材料は、周囲温度よりも低いガラス転移温度を有するアモルファス材料であることが既知である。換言すると、周囲温度以上の温度のエラストマー材料は、すでに「ゴム状」である高粘性(粘弾性)の流体であるため、更なるプロセスのために溶融する必要がない。
【0003】
これらの材料は、一般にゴムとして既知であり、例えば天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、EPDM、NBR、およびSBRなどを含む。
【0004】
エラストマーベースの化合物の製造に関連する技術分野において、後者の「濾過」の必要性が存在することが既知である。この操作では、処理される材料は、適切な機械を用いて、一般に、適切な寸法のメッシュの貫流開口部を有する1つまたは複数の金属メッシュ構造スクリーンで構成される「フィルタ」を横切って流れるようにされる。
【0005】
典型的に、この開口部は、0.1mmと1mmとの間の範囲の値を有する。
【0006】
この操作の目的は、任意の可能性のある「物体」(不純物、混合されていない材料の粒子など)をフィルタ内に保持し、その結果、化合物から除去することである。この物体は、フィルタメッシュの貫流開口部よりも大きな寸法を有する。
【0007】
典型的な例は、例えば、窓シールなどの、自動車の目に見える外形を作り出すために使用される化合物である。この場合、「完璧な」表面外観が重要な特徴である。この目的のために、使用される化合物から、表面凹凸の可能性のある原因をすべて除去する必要がある。
【0008】
濾過が重要であるもう1つの分野は、不純物、特に金属性の不純物をまったく含んではならない電力供給ケーブルに使用される化合物の分野である。
【0009】
化合物を濾過するには、フィルタを通過させるために、化合物を「押す」または「強制する」必要がある。この操作は、化合物が流体状態にある場合、すなわち、化合物が、「弾性(elastic)」成分に比べて優勢な「粘性(viscous)」成分を有する場合にのみ、可能である。この状態は、化合物が架橋されていない(加硫されていない)ために、ポリマー鎖が化学的に結合していない場合に、発生する。
【0010】
非架橋(いわゆる「生(raw)」)状態において、エラストマー化合物は「流れる(flow)」または「自由に移動する(freely move)」ことができる「流体(fluid)」と見なすことができる。
【0011】
この状態においても、問題の流体は、比較的に極めて高い粘度を有する。そのため、化合物の流動運動の間に、材料内部の高い摩擦に起因する不所望な温度上昇が発生することがある。
【0012】
したがって、濾過は、化合物が架橋されておらず、また、濾過の間に化合物がまったく架橋できない条件で実行されなければならない。その結果、濾過は、温度および圧力という2つの主な要因によって大きく左右される。
【0013】
したがって、全体のプロセスの間、例えば摩擦に起因する、温度上昇が回避されなければならない。したがって、温度は、摩擦を低減することによって、および/または生成された熱を効率的に放散することによって、制御されなければならない。
【0014】
処理の間に化合物を供給するために要求される圧力の値は、フィルタを通過する「流体」の速度にも依存する。他のすべての条件が等しい場合、生産性の増加、ひいては流量の増加を得るためには、この速度を正確に増加させることが要求され、その結果、圧力が増加し、したがって温度が増加する。
【0015】
また、速度勾配の対象となるエラストマーに関与するすべてのプロセスの間に、まさにこれらの「勾配」が原因で、処理される材料の内部に機械的応力が発生し、その応力が、概して、特性の不所望な変化(例えば、高分子の機械的破壊に起因する粘度の低下など)を引き起こす可能性があることも知られている。
【0016】
したがって、ゴム技術の観点からは、エラストマーベースの化合物を、以下のように濾過するという問題が存在する。
高流量/生産性という条件下。
化合物の温度上昇を比較的低い値に制限し、いかなる場合でも初期架橋を回避する。
材料における、例えば、ポリマー鎖の不所望な切断などの、機械的性質の劣化を回避する。
【0017】
工業的な観点からは、濾過プロセスは、一般に、次のことを保証する必要がある。
処理作業の経済的持続可能性、したがって、そのコスト(つまり、機械、労働、およびエネルギーのコスト)が低いこと。
操作が容易かつ安全であること。
プラントのレイアウトがシンプルで、高度に自動化されていること。
「環境的な」持続可能性、つまり、低価値の排出物および処理廃棄物が限られていること。
【0018】
PVCおよびPPなどのプラスチック化合物の処理に関連する異なる技術分野において、異なるタイプの単軸スクリューまたは多軸スクリュー押出機が既知である。
【0019】
プラスチック化合物は、周囲温度よりも高いガラス転移温度を持っている。そのため、プラスチック化合物を、固体状態で押出機に導入し、「溶融」して処理できるように、押出機内で加熱する必要がある。したがって、プラスチック材料用に設計されたプロセスおよび押出機は、前述の加熱を可及的に避けなければならないエラストマー化合物の正しい処理には不適合である。したがって、2つの技術分野は、相互に極めて異なると考えられる。
【0020】
化合物を加熱して、プラスチック材料を処理するための既知の押出機は、例えば、プロフィールされた定ピッチスクリューの使用を提案するUS20150184655A1、および化合物入口と出口との間で連続的かつ漸進的に変化するねじ山のピッチおよび幅を有するスクリューの使用を提案するUS2508495に記載されている。
【0021】
GB1,359,672は、PETなどの固体状態のプラスチック材料を処理するための非噛み合いスクリューを備え、プラスチック材料を溶融するための加熱手段を備える単軸スクリューまたは二軸スクリュー押出機を記載する。スクリューのねじ山の隣接する頂部の間に含まれる体積は、ねじ山の底部から突出する「ランド(land)」によって変化する。突出するランドがあるため、エラストマー加工物の処理用の、噛み合いスクリューを備える二軸スクリュー押出機でスクリューを使用することができない。
【0022】
このようなスクリューおよび押出機は、処理中のプラスチック材料を溶融に必要な高温に加熱するように設計された加熱手段(ダイアサーミックオイルまたは電気抵抗)を備えているため(むしろ溶融されてならないエラストマー材料を損傷する可能性があるため)、また非噛み合いスクリューのために、(スクリューの間に遊びが生じる結果となり、したがって流量が過度に失われ、エラストマーの押出し/濾過のために十分な圧力に達することができない)エラストマー化合物の押出し、および濾過に適さない。さらに、非噛み合いスクリューは、実質的に別個の独立した化合物流路に沿って動作する。
【0023】
エラストマー化合物を濾過するための装置は、既知の噛み合い二軸スクリュー/多軸スクリュー押出機を含む。これらは、一般に、逆回転し、フィルタにおいて化合物に高圧を発生させるように構成されたスクリューを備える。
【0024】
しかしながら、これらの既知の押出機は、以下のような処理上の問題がある。
周囲圧力で押出機にロードされるときに大量の空気が化合物内に閉じ込められた状態になる可能性があり、濾過段階まで化合物内に「閉じ込められた(trapped)」状態になる可能性がある。その結果、最終製品は、内部に気泡を含み、下流の濾過プロセスにおいて使用が困難/不可能である。
これらは、主な動きに対抗する逆流を低減し、望ましいポンピング効果を得るために、比較的長いスクリュー長を備える。しかしながら、化合物とスクリューの表面とシリンダとの間の摩擦によって発生する熱が、その表面の増加に伴って増加するため、この長さが、化合物の温度上昇を制御する目的では逆効果である。
【0025】
さらに、化合物との接触面積が大きくなるほど、まさに化合物と表面との間の摩擦のために、処理中の化合物の特性が著しく変化する可能性がより高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】US20150184655A1
【特許文献2】US2508495
【特許文献3】GB1,359,672
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
したがって、提起される技術的問題は、特に、軸方向排出を伴うエラストマー混合物用の二軸スクリュー押出機への用途に適した改良された設計を有する、平行な回転軸を有して噛み合うように配置されたスクリューを提供することによって、従来技術の欠点を克服する、または少なくとも軽減することである。
【0028】
提起される特定の問題は、エラストマー混合物を濾過する前にエラストマー混合物中に存在する空気を排出することができるように、および/または処理される混合物の温度上昇および物理的特性の変化を低減できるように、スクリューのジオメトリを作り出すことである。
【0029】
提起されている技術的問題は、エラストマー混合物用の二軸スクリュー押出機を提供することでもある。この二軸スクリュー押出し機は、以下のようなものである。すなわち、
周囲圧力で動作するローディングシステムを備える。および/または、
処理中の材料に潤滑を必要としない(つまり、混合物の損失がない)。および/または、
生産性が高い。および/または、
熱交換の改善、つまり発熱が少ないことを保証する。および/または、
対象ゾーン内および比較的短いセクションに沿ってのみ、高圧を確保するようなスクリューの設計を備える。および/または、
混合物内に閉じ込められた状態の空気を、混合物が濾過ゾーンに到達する前に排出することができる。および/または、
混合物の物理的特性に変化を引き起こさない。
【0030】
この問題に関連して、二軸スクリューアセンブリおよび/または押出機は、製造および組み立てが容易かつ安価であり、寸法が小さく、ユーザーの任意の場所にも容易に設置できることも求められる。
【課題を解決するための手段】
【0031】
これらの結果は、請求項1の特徴に従うスクリューおよび請求項9に従う二軸スクリューアセンブリによる、本発明によって得られる。
【0032】
本発明は、さらに、請求項20によるエラストマー混合物を押出す方法に関する。
【0033】
更なる詳細は、添付の図面を参照して提供される、本発明の主題の実施形態の非限定的な例についての以下の説明から得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明によるスクリューの側面図である。スクリューの3つの異なる長手方向の部分が強調して表示されている。
図2図1によるスクリューの側面図である。様々な特徴的なパラメータが示されている。
図3】本発明による二軸スクリューアセンブリの分解図である。
図4】組み立てられて、収容シリンダが開いた状態の、図3による二軸スクリューアセンブリの斜視図である。
図5図3による二軸スクリューアセンブリと共に組み立てられた、本発明による押出機の斜視図である。
図6】スクリューの間およびスクリューとシリンダとの間に存在する遊びを示す、本発明による押出機の概略的な断面図である。
図7a】スクリューの間に存在する遊びの概略図である。
図7b】スクリューの間に存在する遊びの概略図、および様々なセクターにおいて得られる圧力の対応するグラフである。
図8a】二軸スクリューアセンブリの一対のスクリューの斜視図である。Cチャンバが強調されて表示されている。
図8b】二軸スクリューアセンブリの一対のスクリューの斜視図である。Cチャンバが強調されて表示されている。
図8c】二軸スクリューアセンブリの一対のスクリューの部分的な側面図である。Cチャンバが強調されて表示され、関与する異なる流量が示されている。
図9】押出機の混合物取入ゾーンから高圧/出力ゾーンまでの通路におけるチャンバの軸方向位置に応じた、Cチャンバの容積の変化率の一例を示す図である。
図10】本発明の二軸スクリューアセンブリの好適な実施形態における、実際の流量の進行とスクリューの回転軸に沿ったCチャンバの容積の変化の一例を示す図である。ねじ山の頂部の局所的な幅(W)がx軸に沿って示されている。
図11】ねじ山の回転角度を変化させたときの、本発明によるスクリューの貫流チャネルの断面の概略図である。
図12】aからeは、本発明によるスクリューのジオメトリの例を示す図である。
図13】aからeは、図12によるそれぞれのスクリューによって各々形成される、ミラー配置における、噛み合い逆回転スクリューの対の例を示す図である。
図14図14A図14Eは、ねじ山の巻き角度に応じた、図13による二軸スクリューアセンブリの貫流セクションの特徴的な進行の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図示されているように、単に説明を容易にするためであり、限定的な意味を持たずに、スクリューの軸方向の長さ寸法および混合物の供給方向に対応する長手方向X‐Xと、スクリューの径方向の幅寸法に対応する横方向Y‐Yと、二軸スクリューアセンブリにおける使用中に、2つのスクリューの回転軸の間の軸間面に平行し、かつ他の二方向と直行する垂直方向Z‐Zと、の、3つの基準軸のセットを仮定する。本発明によるスクリューは、ねじ部を有する。そのねじ切りは、一条タイプであり、ねじ山はコアに対して盛り上がっており、3つの異なる長手方向セクターを画定する。すなわち、それぞれ30、40、50である。
【0036】
図2および図6を参照して、以下に、本発明によるスクリューのいくつかの特徴的なパラメータを説明する。こられの特徴的なパラメータは、説明の続きにおいて参照される。
P=スクリューのピッチ。互いに対して360°(スクリューの軸を中心としたねじ山の完全な回転)の距離に配置された、ねじ山の2つの頂部の中心線の間の、軸方向の距離として測定される。本発明の用途において、ピッチは、スクリュー全体に沿って概して一定であり、好適には外径Dと一致する。
D=スクリューの外径。スクリュー全体に沿って概して一定。
d=コアの直径に対応するスクリューの内径。dは、スクリューの長さに沿って変化してもよいが、好適には、取入および高圧セクターにおいては一定である。
貫流チャネル:ねじ山の隣接するフランクの間に含まれる自由容積(ねじ山の溝に相当)。
頂部:2つの連続するフランクを結合する上面。
(チャネルの)貫流断面:スクリューの回転軸に沿って通過する軸面に沿った貫流チャネル(または溝)の断面。
W=ねじ山の頂部の軸方向に沿って測定された幅。
H=混合物貫流チャネルの高さ。
L=スクリューのねじ部の長さ。
【0037】
好適には、ねじ山のプロファイルは、台形または扁平三角形を有することができる。
【0038】
本発明による二軸スクリューアセンブリの説明のために、以下の更なる定義も提供される。
I=スクリューアセンブリのスクリューの間の軸間距離(図6)。
O’=一方のスクリューの頂部と他方のスクリューのコアとの間の距離(図6)。
δ=1つのスクリューの頂部と、収容シリンダのハウジングキャビティの内面との間の距離(図6)。
Cチャンバ:収容シリンダ内部のスクリューの間の自由容積によって定義されて、1つのスクリューのねじ山の1回転(換言すると「ピッチ」)に含まれる、C字型のチャンバ。
(流れの)貫流チャネル:混合物流路を画定する収容シリンダ内部のスクリュー間の自由容積。流れのための貫流チャネルは、2つのスクリューのすべてのCチャンバを結合することによって形成される。
【0039】
図3および図4を参照すると、濾過される混合物の取入ゾーンに対応する上流部分Mおよび濾過された混合物の出力ゾーンに対応する下流部分Vも定義されている。本発明による二軸スクリューアセンブリは、実質的に以下を含む。
混合物の取入に適した上部の上流開口部13および下流軸方向出口開口部12を有するボディ11を備える、「シリンダ」10。シリンダは、その組み立てを容易にするために、2つの半円筒11a、11bに分割することができると都合がよい。
【0040】
シリンダは、2つのスクリュー21および22をそれぞれ収容するのに適した形状を有する適切な内部キャビティを有する。2つのスクリュー21、22は、それらの回転軸が、平行し、噛み合い、また使用中に逆回転するように配置されている。
【0041】
出力ゾーン60は、二軸スクリューアセンブリの下流端に配置されている。前出のゾーンは、濾過ゾーン70(図5)を含む。混合物は、濾過ゾーン70に入り、供給方向で排出口に向かい、フィルタ(図示せず)を通過させられる。
【0042】
説明をより容易にするために、本説明では、常に、スクリューが互いにミラー配置にある二軸スクリューアセンブリについて言及する。しかしながら、本発明による二軸スクリューアセンブリの、2つの、噛み合って逆回転するスクリューの異なる構成を想定することも可能である。
【0043】
シリンダおよびスクリューのアセンブリは、2軸スクリューアセンブリの長手方向(図3)において、スクリューのねじ部の3つの長手方向セクターに対応する3つの異なるセクターを画定する。すなわち、
取入、または上流、セクター30。混合物が、周囲圧力でシリンダ10内に導入され、スクリュー21、22の回転によって「キャプチャ」される。
中間または移行セクター40。取入セクター30の下流にあり、2つのスクリュー21、22の作動によって、混合物を下流に押す押圧力が徐々に増加する。
高圧セクター50。移行セクターと以下の出力ゾーン60との間に位置する。
【0044】
図7に示すように、また以下でより明らかになるように、大量の混合物の流入を促進可能な大きな「自由」容積を作り出すために、混合物の取入セクター30に沿って、スクリューの間には大量の遊びがある。移行セクター40に沿って、スクリューの間の遊びは徐々に小さくなる。また、高圧セクター50に沿って、スクリューの間の遊びは、非常に小さく、すなわち取入ゾーン30および移行ゾーン40の遊びよりも小さい。これは、逆流を最小限に抑え、濾過に必要な高圧を達成できる小さな貫流チャネルまたは自由容積を作り出すためである。
【0045】
スクリューの3つの長手方向セクターは、回転角度に対して、シリンダ内部の自由容積において形成される貫流チャネルの変化に応じて、画定することができる。
【0046】
これに関連して、噛み合う一対のスクリューの、スクリューの間に画定され、1つのスクリューのねじ山の1回転(換言すると「ピッチ」)に含まれる、Cの形の自由容積を有するチャネルCx(図8c)を識別するために使用される「Cチャンバ」(図8a~図8c)の既知の概念も参照される。
【0047】
詳細には、本発明によれば、本発明による二軸スクリューアセンブリは、単一の貫流チャネルを特徴とする。単一の貫流チャネルは、上流から下流まで、長手方向(X‐X)に沿って、スクリューの少なくとも3つの異なるセクター(20、30、40)を備える。すなわち、
取入セクター(30)。流路を形成するCチャンバc1‐c3の十分な容積を有する。外部から供給される混合物をキャプチャし、長手方向(X‐X)に沿ってそれを下流に押し出すように最適化されている。各スクリューのねじ山の少なくとも2ピッチにわたって一定に留まる。
移行セクター(40)。取入セクターの下流にあり、Cチャンバc1‐c3の可変の容積を有する。これは、特に、長手方向X‐Xに通過中の混合物に作用する押圧力を増加させ、混合物がロードされるときに閉じ込められた状態の空気を排出するように、(前進運動の方向X‐Xに)減少しつつ、取入セクター30のCチャンバの容積よりも少ない。
高圧セクター50。移行セクター40の下流に配置され、貫流チャネルを形成するCチャンバc6、c7の容積を有する。これは、少なくとも1ピッチにわたって一定であり、取入および移行セクターの容積よりも小さい。したがって、最小容積のCチャンバを有するこのセクター50は、混合物を圧縮し、出力ゾーン60における混合物の最大圧力を得るように最適化されている。
【0048】
本発明の好適な実施形態によれば、各スクリューの3つの長手方向セクターのジオメトリの構成は、各セクターが意図する特定の機能のための最適化された構成を保証する貫流チャネルの、したがってCチャンバの、変化の法則を作り出すように開発されている。特に、このジオメトリは、大容積のCチャンバ、したがって小さな頂部幅Wが必要とされる取入セクターに対応して、同時に大気圧での取入性能を最大化するようなものである。その結果、流量の最大化、および濾過ゾーンのすぐ上流に配置された高圧セクター50における、混合物の圧縮が最大化される。
【0049】
特に、本発明による二軸スクリューアセンブリで使用するスクリューの好適な実施形態において、取入セクターは以下のパラメータを有する。
W=(0.025‐0.20)D、少なくとも2、3、または4ピッチで一定、好適には(0.05‐0.10)D。
Pは一定、好適には=D。
O’=(0.0025‐0.030)D、好適には(0.005-0.015)D。
δ=(0.0025‐0.030)D、好適には(0.005-0.015)D。
H=(0.3‐0.8)D、好適には(0.54‐0.6)D。
Li(取入ゾーンの軸方向の長さ)=(3‐4)D。
【0050】
取入セクターにおけるスクリューの好適な幾何学的変数は、一条ねじ山のスクリューの場合、以下の通りである。
比較的低いW値と高いH値によって、Cチャンバの最大容積を得ることができる。
O’とδの値が低く、軸方向搬送値(P=D)である場合、押出機への入力時の混合物の「キャプチャ」と、混合物の供給の両方の性能を最大化できる。
【0051】
フィルタに隣接する高圧セクターのみで必要な圧力を生成し、熱の発生および逆流損失を低減するために、このゾーンにおけるCチャンバは、スクリューの他のゾーンにおけるよりも小さい一定の容積を有し、遊びは機械的に可及的に小さい。
【0052】
詳細には、高圧セクターは次のパラメータを有することが好ましい。
W=(0.3‐0.4)D、好適には(0.33‐0.37)D、1または2ピッチで一定。
Pは一定、好適には=D。
σ=(0.0025‐0.020)D、好適には(0.005‐0.015)D。
δ=(0.0025‐0.030)D、好適には(0.005‐0.015)D。
H=(0.3‐0.8)D、好適には(0.54‐0.6)D。
Lp(高圧セクターの軸方向の長さ)=1‐2D。
概して一定の貫流断面。
【0053】
高圧ゾーンの幾何学的変数は以下の通りである。すなわち、
δとσの値が低く、Wの値が高い場合、ポンピング性能が最大化される。つまり、主流(供給方向)と主な動きに対向する逆流との間の比率が、最大になる。
Hが高く、P=Dである値によって、同時に流量が最大になる。
【0054】
したがって、本発明による二軸スクリューアセンブリのスクリューは、有利には、(主な動きに対向する逆流を減らすために)スクリューの間およびスクリューとシリンダとの間の遊びが比較的小さいフィルタに近いセクター50において高圧を得ること、自由容積つまり混合物によって潜在的に満たされ得る空間が高いことに起因して、取入ゾーンにおける混合物のキャプチャと流量とを高くすること、を同時に得ることができるように、構成することができる。
【0055】
前述の2つのセクター、すなわち、上流/周囲圧力取入セクターおよび下流/高圧セクターに要求される異なる性能特徴を考慮して、低圧で大容積のCチャンバを有する取入セクターと、濾過ゾーンの上流にある低容積のCチャンバを有する高圧セクターと、は、有利には、特に以下を達成するために、可変のCチャンバの容積を有して構成されている。すなわち、
混合物が押出機に入るときに、混合物中に閉じ込められた状態の空気を除去する。
処理中の材料における均一性の欠如、および局所的な圧力ピークが発生する可能性があるような、急激で予期せぬジオメトリの変化を避ける。
【0056】
したがって、好適には、移行セクター40は、Cチャンバの減少する容積を有する。特に、混合物の貫流チャネルの断面は、実質的に連続する、特に少なくとも部分的に概して一次および/または二次および/または二次より大きい次数の変化の法則に従って、混合物の前進運動の方向に好適には減少する。
【0057】
好適には、移行セクターにおける混合物の貫流チャネルの変化は、スクリューのねじ山の頂部幅Wを変化させるジオメトリによって得られる、一方、スクリューの他のパラメータは、移行セクターにおいて一定に留めることができる。
【0058】
本発明による二軸スクリューアセンブリで使用するスクリューの特に好適なジオメトリによれば、移行セクターは以下のパラメータを有する。すなわち、
W=取入セクターのW値と高圧セクターのW値との間で連続的に可変である。
Pは一定、好適には=D。
σ=(0.0025‐0.030)D、好適には(0.005‐0.015)D。
δ=(0.025‐0.030)D、好適には(0.005‐0.015)D。
H=(0.3‐0.12)D、好適には(0.54‐0.6)D。
Lt(移行セクターの軸方向の長さ)=1‐3D。
【0059】
したがって、取入性能と高圧性能との間で緩やかな移行が得られる。貫流チャネルの変化は、要求される性能を最適化するなど、適切な法則に従ってもよい。
【0060】
当該技術分野で既知のL/D>10などの長い押出機の場合に典型的である、不所望な温度上昇を制限するために、比率L/D≦8、すなわち短い比率が得られるように、スクリューのねじ部の軸方向の長さを制限することが、特に好適である。
【0061】
前述の法則に従って、内部チャネルの変化の法則に基づいて得られて、かつ前述の3つの異なる処理ゾーンを画定するように設計されたジオメトリを有するスクリューが、提供される。
【0062】
再び図8cと、二軸スクリューアセンブリのCチャンバによって画定される混合物の貫流チャネルと、を参照すると、流量損失がなければ、一条ねじ山と、ミラー配置で噛み合って逆回転するスクリューと、を備える二軸スクリュー押出機の理論的最大流量Qthは、2つのCチャンバの容積Vcに前述のスクリューの回転速度Nを乗じたものに等しくなる。
理論的最大流量:Qth=2・Vc・N。
Vc=Cチャンバの容積。
N=回転数(rpm)
【0063】
さらに、実際には、スクリューの間およびスクリューとシリンダとの間の遊びによる流量の損失と、主な動きに対向する逆流と、によって、理論的最大流量には決して到達しないこと、また、遊びが大きいほど流量損失が大きいこと、これはローディングゾーンと濾過ゾーンとの間の圧力の進行にも依存する、が知られている。
【0064】
さらに図8cを参照すると、主な流量損失は以下のとおりである。すなわち、
Qc=カレンダの漏れ(calendar leakage)。
Qt=四面体の漏れ(tetrahedral leakage)。
Qf=フライトギャップの漏れ。
Qs=サイドギャップの漏れ。
【0065】
したがって、結果として得られる有効流量Qは、Cチャンバの容積から直接に導出される理論的最大流量(Qth)と、スクリューの間およびスクリューとシリンダとの間の遊びおよび圧力による逆流に起因する総流量損失(Ql)と、の代数和から得られる。
流量/逆流の総損失:
Ql=Qf+Qs+Qt+Qc
有効流量:Q=Qth-Ql
【0066】
二軸スクリューアセンブリの好適な構成によれば、前述のアセンブリは、取入セクターから高圧セクターの端部まで混合物が前進運動する長手方向に沿って、実質的に一定の有効流量Qが得られるように構成されている。したがって、効率は、比率Q/Qthとして計算され、出力ゾーンに向かって徐々に増加する。
【0067】
この構成の特に好適な例は、逆回転スクリューのジオメトリと、混合物流路を形成する関連するCチャンバの変化の法則と、を示す図9に示されている。流路を通る対応する有効流量Q=Qth-Qlは、押出方向に一定であり、図10の図では黒い破線で示されている。
【0068】
図11は、本発明によるスクリューのねじ山の回転角度を変化させたときの、貫流チャネルの断面Sの概略図を示す。
【0069】
本発明によるスクリューおよび対応する二軸スクリューアセンブリの更なる好適な実施形態が、それぞれ図12および図13に示される。
【0070】
対応する二軸スクリューアセンブリの混合物の貫流チャネルの断面の変化が図14に示される。
【0071】
より詳細には、図12のaのスクリューは、以下のような貫流チャネルの断面を有する。すなわち、取入セクター30では、ねじ山(3ピッチ)の3回の360°回転(3I)にわたって一定(かつ最大)で、移行ゾーンでは、ねじ山の3回転にわたって減少し、高圧ゾーンでは、2ピッチ(2P)にわたって一定(最小)である。
【0072】
図13のaによる二軸スクリューアセンブリ用のCチャンバおよび混合物の貫流チャネルの断面は、図14aに示されるように、同様の変化の法則に従う。
【0073】
図12のbのスクリューは、以下のような貫流チャネルの断面を有する。すなわち、取入セクター30では、ねじ山の4回の360°回転にわたって一定(かつ最大)で、移行ゾーンでは、ねじ山の1回の360°にわたって減少し、高圧ゾーンでは、2ピッチにわたって一定(最小)である。図13のbによる二軸スクリューアセンブリ用のCチャンバおよび混合物の貫流路の断面は、図14bに示されるように、同様の変化の法則に従う。
【0074】
図12のcのスクリューは、以下のような貫流チャネルの断面を有する。すなわち、取入セクター30では、ねじ山の4回の360°回転にわたって一定(かつ最大)で、移行ゾーンでは、ねじ山の2ピッチ(2L)にわたって減少し、高圧ゾーンでは、2ピッチにわたって一定(最小)である。図13のcによる二軸スクリューアセンブリ用のCチャンバおよび混合物の貫流路の断面は、図14cに示されるように、同様の変化の法則に従う。
【0075】
図12のd、図13のd、図14dのスクリューおよび二軸スクリューアセンブリは、図12のc、図13のc、図13のdのものと同様である。しかしながら、この場合の移行セクター40における断面の変化は、減少する二次進行(quadratic progression)(2L)を有する。
【0076】
図12のeのスクリューは、以下のような貫流チャネルの断面を有する。すなわち、取入セクター30では、ねじ山(3ピッチ)の4回の360°回転にわたって一定(かつ最大)で、移行ゾーンでは、ねじ山の3回転にわたって減少し、高圧ゾーン50では、ねじ山の360°回転にわたって一定(最小)である。
【0077】
図13のeによる二軸スクリューアセンブリ用のCチャンバおよび混合物の貫流路の断面は、図14eに示されるように、同様の変化の法則に従う。
【0078】
有利なことに、これらは可能なジオメトリの一部にすぎないが、図示のすべての好適な例は、スクリューのねじ部の長さを、10の、好適には8の、ねじ山ピッチ内に保つことができる。
【0079】
これに加えて、以下のことが可能である。すなわち、
スクリューの長さと、制限された比率L/D=移行ゾーンの長さ/直径+圧力ゾーンが5に等しい場合に、高圧(300barを超えさえする)および高流量に達することができる。そのため、極めて細かいメッシュ(<0.1mm)を使用した場合でも、濾過が可能である。
高い回転数と流量でも、混合物における温度上昇を制御し制限できる。
スクリューが短いため、比較的低い駆動トルクを使用可能である。
スクリューが著しくたわむことを防止可能であり、スクリューがシリンダに接触することを防止可能である。
混合物が入ったときに閉じ込められた状態になる可能性のある空気を、取入開口部から排出可能である。
【0080】
本発明による押出機の好適な実施形態において、押出される混合物の濾過/出力セクション70は、フィルタホルダプレート71を備えることが想定される。フィルタホルダプレート71は、接続フランジ60に結合され、成形ヘッド73によって閉じられる。
【0081】
一般に1つまたは複数の金属メッシュからなる「フィルタ」(ここには図示されず)は、接続フランジ61とフィルタホルダプレート71との間に配置される。混合物は、スクリューの回転によって発生される推力によって、強制的にこのフィルタの向こう側に流れる。このフィルタが、メッシュの開口部より大きい不純物を保持する。
【0082】
好適には、1つまたは複数の圧力および温度センサ61は、フランジ60に配置される。圧力および温度センサ61によって、濾過ステップにわたる完全な制御のために、処理される混合物の圧力および温度を常に監視できる。
【0083】
図6図7は、シリンダ10内部の、スクリュー21および22のハウジングを通る断面図を示す。
【0084】
各スクリューの頂部とシリンダ10との間の遊びδ、および一方のスクリューの頂部と他方のスクリューのコアとの間の遊びδが、非常に小さく、いずれの場合でもポンピング動作を同時に保証することができて、スクリューとシリンダとの間に接触がないこと、が分かる。
【0085】
したがって、本発明による、スクリュー、二軸スクリューアセンブリ、およびこの二軸スクリューアセンブリを備える押出機が、どのようにして従来技術の問題の解決策を提供し、その結果以下がもたらされるか、が明らかである。すなわち、
濾過されるエラストマー混合物を周囲圧力でロードするための、更なる補助的装置が存在しない。
狭い限定されたゾーン内で高圧を発生させて、温度上昇を制限する。これは、有利にも、エラストマー混合物の加硫温度(一般に100‐120℃未満)よりも低く保つことができる。
3つのゾーンの各々が正確なタスク専用であり、それに関連して構成された3つのゾーンによって、全体的な性能が最適化される。
移行ゾーンが特定のジオメトリであることに起因して、局所的な温度ピークが存在しない。
混合物が取入ゾーンに導入されるときに、混合物内に閉じ込められた空気を効果的に除去する。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態およびいくつかの好適な実施例に関連して説明がされたが、本特許の保護範囲は以下の特許請求の範囲によってのみ決定される、と理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図8c
図9
図10
図11
図12a)】
図12b)】
図12c)】
図12d)】
図12e)】
図13a)】
図13b)】
図13c)】
図13d)】
図13e)】
図14-1】
図14-2】
図14-3】
【国際調査報告】