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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】二重スプリング式手術用衝撃工具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/56 20060101AFI20231130BHJP
   A61B 17/16 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A61B17/56
A61B17/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527766
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 US2021058776
(87)【国際公開番号】W WO2022103835
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】63/111,789
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502427840
【氏名又は名称】ジンマー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー スロカム
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス オブラス
(72)【発明者】
【氏名】トム オドンネル
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL01
4C160LL04
4C160LL11
4C160LL27
(57)【要約】
本明細書中で開示されているのは、二重スプリング式手術用衝撃工具及びその使用方法である。二重スプリング式手術用衝撃工具は、ハウジング、シャトル、ピニオン及び第1及び第2のスプリングを含むことができる。ハウジングは、第1の端部及び第2の端部を有するキャビティを画定することができる。シャトルは、キャビティ内に配置され、複数の刻み目を画定することができる。ピニオンは、シャトルの近傍に配置され、ピニオンの回転中に複数の刻み目と噛合するように寸法決めされた複数の突出部を有することができる。第1及び第2のスプリングは、ハウジング及びシャトルに対して機械的に結合され得る。第1の方向でのピニオンの回転は、シャトルをハウジングの第1の端部に向かって第1の方向に並進運動させることができる。第2の方向でのピニオンの回転は、シャトルをハウジングの第2の端部に向かって第2の方向に並進運動させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重スプリング式手術用衝撃工具において、
第1の端部及び第2の端部を有するキャビティを画定するハウジングと;
前記キャビティ内に配置され、複数の刻み目を画定するシャトルであって、第1の端部及び第2の端部を有するシャトルと;
前記シャトルの近傍に配置され、ピニオンの回転中に複数の前記刻み目と噛合するように寸法決めされた複数の突出部を有するピニオンと;
前記ハウジングの前記第1の端部を前記シャトルの前記第1の端部に機械的に結合する第1のスプリングと;
前記ハウジングの前記第2の端部を前記シャトルの前記第2の端部に機械的に結合する第2のスプリングと;
を含み、
第1の回転方向における前記ピニオンの回転が、前記シャトルを前記ハウジングの前記第1の端部へ向けて第1の直線方向に並進運動させ、第2の回転方向における前記ピニオンの回転が、前記シャトルを前記ハウジングの前記第2の端部へ向けて第2の直線方向に並進運動させる、二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項2】
前記ピニオンは:
ピニオンキャリッジと;
複数の前記突出部を形成する複数の軸受と;
を含む、請求項1に記載の二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項3】
前記ピニオンキャリッジは、複数のスポークを画定するピニオンプレートを含み、複数の前記軸受は、前記ピニオンプレートのスポークに各々連結されている、請求項2に記載の二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項4】
前記ピニオンキャリッジは、複数のスポークを画定する第1のピニオンプレート及び第2のピニオンプレートを含み、複数の前記軸受は、前記第1のピニオンプレート及び前記第2のピニオンプレートの前記スポークの間に各々配置されている、請求項2に記載の二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項5】
前記ハウジングの前記第1の端部から前記ハウジングの前記第2の端部まで延在する前記ハウジングの軸線に沿って配向された駆動ロッドをさらに含み、前記シャトルは前記駆動ロッドに沿って並進可能であり、前記シャトル及び前記駆動ロッドは、前記ハウジングの前記軸線に沿って前記第1の直線方向及び前記第2の直線方向に移動可能である、請求項1に記載の二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項6】
前記第1のスプリング及び前記第2のスプリングは、前記駆動ロッドの長手方向軸線に沿って軸方向に配置されている、請求項5に記載の二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項7】
前記駆動ロッドに取り付けられた駆動ロッドカラーと;
前記第1のスプリングに結合され、複数の前記突出部が複数の前記刻み目から係合解除された時点で、前記駆動ロッドカラーに衝撃を加えるように配設されたインサートと;
をさらに含む、請求項5に記載の二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項8】
モータと;
スイッチと;
前記シャトルの位置を検出するように配設され、前記スイッチと導通状態にあるセンサと、
をさらに含み、
前記シャトルが、前記シャトルの複数の前記刻み目と前記ピニオンの複数の前記突出部との噛合を可能にする位置から外れている場合に、前記スイッチが、電源に対する前記モータの導通状態を切断する、請求項1に記載の二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項9】
前記センサがホール効果センサである、請求項6に記載の二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項10】
前記シャトルに対して機械的に結合されたチャックをさらに含む、請求項1に記載の二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項11】
二重スプリング式手術用衝撃工具において:
ハウジングの第1の端部からハウジングの第2の端部まで延在するハウジング軸線を有するキャビティを画定するハウジングと;
前記ハウジング軸線に対し平行に配向された駆動ロッド軸線を有する駆動ロッドと;
前記駆動ロッドに連結された駆動ロッドカラーと;
前記駆動ロッドに沿って並進運動可能であり、複数のシャトル歯を有するシャトルと;
前記シャトルの近傍に配置され、複数の前記シャトル歯と噛合するように寸法決めされた複数のピニオン歯を有するピニオンと;
前記ハウジングの前記第1の端部を前記シャトルの前記第1の端部に機械的に結合し、前記駆動ロッドと同軸的に配置された第1のスプリングと;
前記ハウジングの前記第2の端部を前記シャトルの前記第2の端部に機械的に結合し、前記駆動ロッドと同軸的に配置された第2のスプリングと;
を含み、
第1の回転方向における前記ピニオンの回転が、前記シャトルを前記ハウジングの前記第1の端部へ向けて第1の方向に並進運動させ、第2の回転方向における前記ピニオンの回転が、前記シャトルを前記ハウジングの前記第2の端部へ向けて第2の方向に並進運動させ、
複数の前記シャトル歯と複数の前記ピニオン歯との噛合を可能にする位置から前記シャトルが外れている場合に、前記シャトルは、前記第1のスプリング及び前記第2のスプリングによって移動可能である、
二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項12】
前記ピニオンは:
ピニオンキャリッジと;
前記歯を形成する複数の軸受と;
を含む、請求項11に記載の二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項13】
前記ピニオンキャリッジは、複数のスポークを画定するピニオンプレートを含み、複数の前記軸受が前記ピニオンプレートのスポークに各々連結されている、請求項12に記載の二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項14】
前記ピニオンキャリッジは、複数のスポークを画定する第1のピニオンプレート及び第2のピニオンプレートを含み、複数の前記軸受は、前記第1のピニオンプレート及び前記第2のピニオンプレートのスポークの間に各々配置されている、請求項12に記載の二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項15】
モータと;
スイッチと;
前記シャトルの位置を検出するように配設され、前記スイッチと導通状態にあるセンサと、
をさらに含み、
前記シャトルが、前記シャトルの複数の前記シャトル歯と複数の前記ピニオン歯との噛合を可能にする位置から外れている場合に、前記スイッチが、電源に対する前記モータの導通状態を切断する、請求項11に記載の二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項16】
二重スプリング式手術用衝撃工具において:
ハウジングの第1の端部からハウジングの第2の端部まで延在するハウジング軸線を有するキャビティを画定するハウジングと;
前記ハウジング軸線に対し平行に配向された駆動ロッド軸線を有する駆動ロッドと;
前記駆動ロッドに連結された駆動ロッドカラーと;
前記駆動ロッドに沿って並進運動可能であり、複数のシャトル歯を有するシャトルと;
前記シャトルの近傍に配置され、複数の前記シャトル歯と噛合するように寸法決めされた複数のピニオン歯を有するピニオンと;
前記ハウジングの前記第1の端部に機械的に結合され、前記駆動ロッドと同軸的に配置された第1のスプリングと;
前記シャトル及び前記第1のスプリングと結合され、前記駆動ロッドカラーと接触し、前記第1のスプリングが生成する第1の力の下で第1の直線方向に前記駆動ロッドを駆動するように配設された第1のインサート肩部を画定する、第1のインサートと;
前記ハウジングの前記第2の端部に機械的に結合され、前記駆動ロッドと同軸的に配置された第2のスプリングと;
前記シャトル及び前記第2のスプリングと結合され、前記駆動ロッドカラーと接触し、前記第2のスプリングが生成する第2の力の下で第2の直線方向に前記駆動ロッドを駆動するように配設された第2のインサート肩部を画定する、第2のインサートと;
を含み、
第1の回転方向における前記ピニオンの回転が、前記シャトルを第2の直線方向に並進運動させ、第2の回転方向における前記ピニオンの回転が、前記シャトルを第1の直線方向に並進運動させ、
複数の前記シャトル歯と複数の前記ピニオン歯との噛合を可能にする位置から前記シャトルが外れている場合に、前記シャトルは、前記第1のスプリング及び前記第2のスプリングによって第1の方向及び第2の方向に移動可能である、二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項17】
前記ピニオンは:
ピニオンキャリッジと;
複数の前記ピニオン歯を形成する複数の軸受と;
を含む、請求項17に記載の二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項18】
前記ピニオンキャリッジは、複数のスポークを画定するピニオンプレートを含み、複数の前記軸受は、前記ピニオンプレートのスポークに各々連結されている、請求項17に記載の二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項19】
前記ピニオンキャリッジは、複数のスポークを画定する第1のピニオンプレート及び第2のピニオンプレートを含み、複数の前記軸受は、前記第1のピニオンプレート及び前記第2のピニオンプレートのスポークの間に各々配置されている、請求項17に記載の二重スプリング式手術用衝撃工具。
【請求項20】
モータと;
スイッチと;
前記シャトルの位置を検出するように配設され、前記スイッチと導通状態にあるセンサと、
をさらに含み、
前記シャトルが、前記シャトルの複数の前記シャトル歯と複数の前記ピニオン歯との噛合を可能にする位置から外れている場合に、前記スイッチが、電源に対する前記モータの導通状態を切断する、請求項16に記載の二重スプリング式手術用衝撃工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、内容全体が参照により本明細書に組込まれている、2020年11月10日出願の「二重スプリング式動力衝撃工具」という表題の米国仮特許出願第63/111,789号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は概して、手術器具及びその使用に関する。より具体的には、本開示は、二重スプリング式手術用衝撃工具及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
整形外科医は、一般に、衝撃力を工具に伝達するためにハンマ又はマレットを必要とする骨の切断又は彫刻用の工具を利用する。一例としては、股関節インプラントを収容するために大腿骨の近位端部を準備するのに使用されるブローチ工具がある。このようなブローチは、医師が扱うハンマ又は空気式「ジャックハンマ」様の工具と共に使用可能である。しかしながら、ハンマを用いてブローチ工具を叩くのは疲れることであり得、医師自身の関節、例えば肩関節に対しストレスがかかる可能性がある。さらに、空気式衝撃工具は、空気ホースへの連結を必要とし、これは不便なことであり得、かつ工具を望ましい形で配向する医師の能力を潜在的に制限する可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
以下の非限定的な実施例は、課題を解決し、なかでも本明細書中で論述される利益を提供するための本主題のいくつかの態様を詳述するものである。
【0005】
実施例1は、二重スプリング式手術用衝撃工具において、第1の端部及び第2の端部を有するキャビティを画定するハウジングと;キャビティ内に配置され、複数の刻み目を画定するシャトルであって、第1の端部及び第2の端部を有するシャトルと;シャトルの近傍に配置され、ピニオンの回転中に複数の刻み目と噛合するように寸法決めされた複数の突出部を有するピニオンと;ハウジングの第1の端部をシャトルの第1の端部に機械的に結合する第1のスプリングと;ハウジングの第2の端部をシャトルの第2の端部に機械的に結合する第2のスプリングと;を含み、第1の回転方向でのピニオンの回転が、シャトルをハウジングの第1の端部に向かって第1の直線方向に並進運動させ、第2の回転方向でのピニオンの回転が、シャトルをハウジングの第2の端部に向かって第2の直線方向に並進運動させる、二重スプリング式手術用衝撃工具である。
【0006】
実施例2において、実施例1に記載の主題には、任意には、ピニオンが;ピニオンキャリッジと;複数の突出部を形成する複数の軸受と;を備えることが含まれる。
【0007】
実施例3において、実施例2に記載の主題には、任意には、ピニオンキャリッジが、複数のスポークを画定するピニオンプレートを含み、複数の軸受の各々がピニオンプレートのそれぞれのスポークに連結されている、ことが含まれる。
【0008】
実施例4において、実施例2から3の何れか1つ又は複数に記載の主題には、任意には、ピニオンキャリッジが、複数のスポークを画定する第1及び第2のピニオンプレートを備え、複数の軸受の各々が、第1及び第2のピニオンプレートのそれぞれのスポークの間に配置されている、ことが含まれる。
【0009】
実施例5において、実施例1から4の何れか1つ又は複数に記載の主題には、任意には、ハウジングの第1の端部からハウジングの第2の端部まで延在するハウジングの軸線に沿って配向された駆動ロッドをさらに含み、シャトルが駆動ロッドに沿って並進可能であり、シャトル及び駆動ロッドがハウジングの軸線に沿って第1及び第2の直線方向に移動可能である、ことが含まれる。
【0010】
実施例6において、実施例5に記載の主題には、任意には、第1及び第2のスプリングが駆動ロッドの長手方向軸線に沿って軸方向に配置されている、ことが含まれる。
【0011】
実施例7において、実施例5から6の何れか1つ又は複数に記載の主題には、任意には、駆動ロッドに取り付けられた駆動ロッドカラーと;第1のスプリングに結合され、複数の突出部が複数の刻み目から係合解除された時点で駆動ロッドカラーに衝撃を加えるように配設されたインサートとが含まれる。
【0012】
実施例8において、実施例1から7の何れか1つ又は複数に記載の主題には、任意には、モータと;スイッチと;シャトルの位置を検出するように配設され、スイッチと導通状態にあるセンサと、が含まれており、ここでシャトルが、シャトルの複数の刻み目とピニオンの複数の突出部との噛合を可能にする位置から外れている場合に、スイッチは電源に対するモータの導通状態を切断する。
【0013】
実施例9において、実施例6から8の何れか1つ又は複数に記載の主題には、任意には、センサがホール効果センサである、ことが含まれている。
【0014】
実施例10において、実施例1から9の何れか1つ又は複数に記載の主題には、任意には、シャトルに対して機械的に結合されたチャックが含まれる。
【0015】
実施例11は、二重スプリング式手術用衝撃工具において、ハウジングの第1の端部からハウジングの第2の端部まで延在するハウジング軸線を有するキャビティを画定するハウジングと;ハウジング軸線に対し平行に配向された駆動ロッド軸線を有する駆動ロッドと;駆動ロッドに連結された駆動ロッドカラーと;駆動ロッドに沿って並進運動可能であり、複数のシャトル歯を有するシャトルと;シャトルの近傍に配置され、複数のシャトル歯と噛合するように寸法決めされた複数のピニオン歯を有するピニオンと;ハウジングの第1の端部をシャトルの第1の端部に機械的に結合し、駆動ロッドと同軸的に配置された第1のスプリングと;ハウジングの第2の端部をシャトルの第2の端部に機械的に結合し、駆動ロッドと同軸的に配置された第2のスプリングと;を含み、第1の回転方向でのピニオンの回転が、シャトルをハウジングの第1の端部に向かって第1の方向に並進運動させ、第2の回転方向でのピニオンの回転が、シャトルをハウジングの第2の端部に向かって第2の方向に並進運動させ、複数のシャトル歯と複数のピニオン歯との噛合を可能にする位置からシャトルが外れている場合に、シャトルは、第1及び第2のスプリングによって移動可能である、二重スプリング式手術用衝撃工具である。
【0016】
実施例12において、実施例11に記載の主題には、任意には、ピニオンが:ピニオンキャリッジと;歯を形成する複数の軸受と;を備えることが含まれる。
【0017】
実施例13において、実施例12に記載の主題には、任意には、ピニオンキャリッジが、複数のスポークを画定するピニオンプレートを含み、複数の軸受の各々がピニオンプレートのそれぞれのスポークに連結されている、ことが含まれる。
【0018】
実施例14において、実施例12から13の何れか1つ又は複数に記載の主題には、任意には、ピニオンキャリッジが、複数のスポークを画定する第1及び第2のピニオンプレートを含み、複数の軸受の各々が、第1及び第2のピニオンプレートのそれぞれのスポークの間に配置されている、ことが含まれる。
【0019】
実施例15において、実施例11から14の何れか1つ又は複数に記載の主題には、任意には、モータと;スイッチと;シャトルの位置を検出するように配設され、スイッチと導通状態にあるセンサと、が含まれており、ここでシャトルが、その複数のシャトル歯と複数のピニオン歯との噛合を可能にする位置から外れている場合に、スイッチは電源に対するモータの導通状態を切断する。
【0020】
実施例16は、二重スプリング式手術用衝撃工具において、ハウジングの第1の端部からハウジングの第2の端部まで延在するハウジング軸線を有するキャビティを画定するハウジングと;ハウジング軸線に対し平行に配向された駆動ロッド軸線を有する駆動ロッドと;駆動ロッドに連結された駆動ロッドカラーと;駆動ロッドに沿って並進運動可能であり、複数のシャトル歯を有するシャトルと;シャトルの近傍に配置され、複数のシャトル歯と噛合するように寸法決めされた複数のピニオン歯を有するピニオンと;ハウジングの第1の端部に機械的に結合され、駆動ロッドと同軸的に配置された第1のスプリングと;シャトル及び第1のスプリングに結合され、駆動ロッドカラーと接触し、第1のスプリングが生成する第1の力の下で第1の直線方向に駆動ロッドを駆動するように配設された第1のインサート肩部を画定する、第1のインサートと;ハウジングの第2の端部に機械的に結合され、駆動ロッドと同軸的に配置された第2のスプリングと;シャトル及び第2のスプリングに結合され、駆動ロッドカラーと接触し、第2のスプリングが生成する第2の力の下で第2の直線方向に駆動ロッドを駆動するように配設された第2のインサート肩部を画定する、第2のインサートと;を含み、第1の回転方向でのピニオンの回転が、シャトルを第2の直線方向に並進運動させ、第2の回転方向でのピニオンの回転が、シャトルを第1の直線方向に並進運動させ、複数のシャトル歯と複数のピニオン歯との噛合を可能にする位置からシャトルが外れている場合に、シャトルは、第1及び第2のスプリングによって第1及び第2の方向に移動可能である、二重スプリング式手術用衝撃工具である。
【0021】
実施例17において、実施例16に記載の主題には、任意には、ピニオンが:ピニオンキャリッジと;複数のピニオン歯を形成する複数の軸受と;を備えることが含まれる。
【0022】
実施例18において、実施例17に記載の主題には、任意には、ピニオンキャリッジが、複数のスポークを画定するピニオンプレートを含み、複数の軸受の各々がピニオンプレートのそれぞれのスポークに連結されていることが含まれる。
【0023】
実施例19において、実施例17から18の何れか1つ又は複数に記載の主題には、任意には、ピニオンキャリッジが、複数のスポークを画定する第1及び第2のピニオンプレートを含み、複数の軸受の各々が、第1及び第2のピニオンプレートのそれぞれのスポークの間に配置されていることが含まれる。
【0024】
実施例20において、実施例16から19の何れか1つ又は複数に記載の主題には、任意には、モータと;スイッチと;シャトルの位置を検出するように配設され、スイッチと導通状態にあるセンサと、が含まれており、ここで、シャトルが、その複数のシャトル歯と複数のピニオン歯との噛合を可能にする位置から外れている場合に、スイッチは電源に対するモータの導通状態を切断する。
【0025】
実施例21において、実施例1から20の何れか1つ又は何れかの組合せの二重スプリング式手術用衝撃工具又はシステムは、任意には、上述の全ての要素又はオプションが、使用のため又はその中から選択するために利用可能となるように構成され得る。
【0026】
必ずしも原寸に比例して描かれていない図面中では、同様の数字は、異なる図中の類似の構成要素を表すことができる。異なる接尾文字を有する同様の数詞は、類似の構成要素の異なる事例を表わし得る。図面は概して、非限定的に、一例として本明細書中で論述されるさまざまな実施形態を例示している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した二重スプリング式動力衝撃工具の等角図を示す。
図2図2は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した二重スプリング式動力衝撃工具の等角断面図を示す。
図3図3は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した二重スプリング式動力衝撃工具の拡大等角断面図を示す。
図4図4は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した二重スプリング式動力衝撃工具の等角断面図を示す。
図5図5は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した二重スプリング式動力衝撃工具の拡大等角断面図を示す。
図6図6は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した二重スプリング式動力衝撃工具の等角断面図を示す。
図7図7は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した二重スプリング式動力衝撃工具の拡大等角断面図を示す。
図8図8は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した二重スプリング式動力衝撃工具の等角断面図を示す。
図9図9は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致したギヤモータハウジングサブアセンブリの等角断面図を示す。
図10図10は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致したギヤモータハウジングの等角断面図を示す。
図11図11は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した部分歯ピニオン(駆動ギヤ)の等角図を示す。
図12図12は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致したシャトルの横断面等角図を示す。
図13図13は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した駆動ロッドサブアセンブリの横断面等角図を示す。
図14図14は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致したシャトル部材の円形ギヤラックの接触半径を示す。
図15図15は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した駆動ギヤの歯の接触半径を示す。
図16A-16C】図16A、16B及び16Cは各々、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した部分歯ピニオンとシャトルのギヤの歯との異なる係合段階を例示する。
図17図17は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した、モノリシック機械加工されたスプリングとシャトルの等角図である。
図18A図18Aは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した二重スプリング式手術用衝撃工具を示す。
図18B図18Bは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した図18Aの二重スプリング式手術用衝撃工具の断面図を示す。
図19A-19C】図19A、19B及び19Cは各々、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した図18Aの二重スプリング式手術用衝撃工具のモータピニオンアセンブリを示す。
図20A-20B】図20A及び20Bは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した図18Aの二重スプリング式手術用衝撃工具の筒形カムアセンブリを示す。
図21A-21C】図21A、21B及び21Cは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した図18Aの二重スプリング式手術用衝撃工具のシャトル及びピニオンアセンブリを示す。
【0028】
対応する参照文字は、複数の図全体を通して、対応する部品を標示する。本明細書中に記載の例証は、本開示の例示的実施形態を示し、このような例証は、決して本開示の範囲を限定しているとみなされるべきものではない。
【発明を実施するための形態】
【0029】
空気圧ピストン駆動型システムに対する一変形形態として、本明細書中では、スプリング駆動型システムが開示されている。具体的には、本明細書中で開示される手術用衝撃工具は、二重スプリング式の設計を含む。本明細書中で開示される手術用衝撃工具は、第1の端部及び第2の端部を有するキャビティを画定するハウジングを含むことができる。キャビティ内に配置されたシャトルは、複数の刻み目を画定し得る。本明細書中で開示されているように、シャトルの近傍に配置されたピニオンは、ピニオンの回転中に複数の刻み目と噛合するように寸法決めされた複数の突出部を有することができる。第1及び第2のスプリングが、ハウジングをシャトルに機械的に結合することができる。第1の方向でのピニオンの回転は、シャトルをハウジングの第1の端部に向かって第1の方向に並進運動させることができ、第2の方向でのピニオンの回転は、シャトルをハウジングの第2の端部に向かって第2の方向に並進運動させることができる。
【0030】
使用中、突出部及び刻み目がもはや噛合係合状態になくなった時点で、スプリングは、駆動ロッドを中心としてシャトルを移動させることができる。駆動ロッドは、ハウジングの軸線に沿って配向させることができ、ハウジングの第1の端部からハウジングの第2の端部まで延在することができる。駆動ロッドに駆動ロッドカラーを取り付けることができる。第1のスプリングにインサートを結合し、複数の刻み目から複数の突出部が係合解除された時点で、駆動ロッドカラーに衝撃を加えるように配設することができる。駆動ロッドカラーを叩くシャトルの衝撃は、駆動ロッドに、手術用衝撃工具のチャックに取付けられたラスプ、ブローチなどの工具に衝撃力を加えさせることができる。
【0031】
ピニオンは、ピニオンキャリッジ及び複数の軸受を含むことができる。軸受は、複数の突出部を形成することができる。ピニオンキャリッジは、複数のスポークを画定する1つ又は複数のピニオンプレートを含むことができる。複数の軸受の各々は、ピニオンプレートのそれぞれのスポークに連結され得る。ピニオンが2つのピニオンプレートを含む場合、複数の軸受の各々を、第1及び第2のピニオンプレートのそれぞれのスポーク間に配置することができる。
【0032】
手術用衝撃工具は、ピニオンを回転させシャトルを移動させるモータを含むことができる。モータ及びセンサに対し、スイッチを電気的に結合させることができる。センサは、シャトルの位置を検出するように配設され得る。シャトルが、その複数の刻み目とピニオンの複数の突出部の噛合を可能にする位置から外れている場合、スイッチは、電源に対するモータの導通状態を切断することができる。センサは、ホール効果センサであり得る。
【0033】
以上の論述は、本特許出願の主題の概要を提供するように意図されたものである。このことは、本発明の排他的又は網羅的説明を提供するように意図されてはいない。以下の説明は、本特許出願についてのさらなる情報を提供するために含められるものである。
【0034】
ここで図を参照すると、図1は、本開示のさまざまな原理に係る二重スプリング式動力衝撃工具1の一実施形態を示す。図2は、作動することを待機するニュートラル位置にある二重スプリング式動力衝撃工具1の等角断面図を示す。図3は、モータ組付けブロック(MMB)150の周りの領域の拡大図を示す。二重スプリング式動力衝撃工具1は、上位ハンドル部分149内のグリップ182とトリガ181とを伴うハンドル180を有することができる。ハンドルのベース183は、制御回路を格納することができ、コードレス動力工具で一般に使用されているような、取外し可能かつ再充電可能なバッテリ184を収容することができる。ハンドル180の頂部は、モータ組付けブロック150に連結可能である。モータ組付けブロック150は、ギヤモータ230(図9及び10を参照)及びスプリング及びシャトル管(SST)110のためのマウントを格納し得る。
【0035】
図2に示されているように、スプリング及びシャトル管110は、遠位スプリング160D及び近位スプリング160P、シャトル170及びドライバ120を格納する外側管111を含むことができる。スプリング及びシャトル管110の遠位端部は、外側管111の遠位端部に連結されたエンドキャップ112Bを含むことができ、このエンドキャップ112Bにカバーキャップ112Aが連結される。エンドキャップ113が、外側管111の近位端部に具備され得る。エンドキャップ113は、開口部を含むことができ、この開口部を通ってドライバ120の近位端部が延在している。工具ホルダ114をドライバ120の近位端部に取付けることができる。ドライバ120は、細長い駆動ロッド122を含むことができる。ロッド122の遠位端部上に、ストッパカラー121を取付けることができる。ストッパカラー121は、クランプオン、スクリューオン、クリップオン又は他の連結方法によって取付け可能である。ロッド122の中央領域上に、衝撃フランジ123を配置することができる。衝撃フランジ123は、構造的無欠性を目的としてロッド122と一体化して形成され得る。工具ホルダ114を、例えば螺切によって駆動ロッド122の近位端部に取付けることができ、こうして必要な場合に容易に交換可能である。
【0036】
駆動ロッド122上にソフトブロークリップ(SBC)444をスナップ留めすることができる。ソフトブロークリップ444は、代替的にはエンドキャップ112B上を摺動させることができ、このエンドキャップは、所望される衝撃強度についての異なる設定値を提供するために所定の場所にクリックすることによって、複数の異なる変位設定値を可能にすることさえ可能にし得る。類似のクリップを、駆動ロッドの遠位端部で使用することができる。
【0037】
別の実施形態においては、エンドキャップ113と工具ホルダ114の間に回転スリーブを配置することができ、回転スリーブには、回転スリーブの一部分の上のみに配置された内部棚を含むことができ、この棚は、エンドキャップ113の近位面上に配置された、嵌合し、かつ、同様に制限された棚と係合するように回転可能である。これらの棚に隣接する螺旋状の傾斜路によって、ユーザは、類似の変位を提供するスリーブの回転によるソフトブロークリップ444の機能性にアクセスできることになる。
【0038】
ニュートラル状態において、遠位ダイスプリング160D及び近位ダイスプリング160Pは、それらの最大撓み状態のおおよそ半分(典型的にはそれらの自由長の約45%)まで圧縮(予圧)され得る。スプリング160D、160Pの端部は、それぞれシャトル170及び駆動ロッド122との同軸整列を維持するためにシャトル170に押圧するそれぞれ遠位及び近位スプリング端部のためのシャトル170内のカウンタボア171D及び171P内に常在し得る。
【0039】
「コイル」が矩形横断面の材料で作られて、スプリングに横方向の剛性を与える傾向が有るため、擦れを導き得る(エネルギ損失、特に強く圧縮された場合)横方向の座屈が起こりにくいので、スプリング160D、160Pは、ダイスプリングであり得る。効率の良いロバスト(低摩耗)なメカニズムの別の設計詳細は、螺旋(コイル)スプリングが、圧縮されたときにわずかに回転できるという点にある。したがって、2つのスプリングがシャトル170に対して予圧される場合、スプリング160D、160Pのうちの一方は、時計回り方向の螺旋を伴って作製され得、スプリング160D、160Pのうちの他方は反時計回り方向の螺旋を伴って作製され得、こうして互いの回転に対抗し、擦れにより誘発されるエネルギ損失及び摩耗を最小限に抑えることができる。さらに、スプリング及びシャトルメカニズムの低い摩擦回転を可能にするため、スラスト座金を使用することができる。
【0040】
図3を参照すると、シャトル170は、順方向及び逆方向の衝撃のための適切な前後位置を可能にするため、シャトル170の中央平面に対してオフセットされた一体型の環状ギヤラック駆動歯175(16のピッチを伴う6個の歯が示されている)を有することができる。部分歯ピニオン300が、シャトル170を駆動係合し得る。シャトル170を順方向に駆動するために、シャトル170の3つの環状歯175(駆動歯175P(近位)、175M(中央)及び175D(遠位))を使用することができ、シャトル170を順方向に後退させるために、3つの環状歯(後退歯175RP、175RM及び175RD)を使用することができる。遠位駆動歯175DがP/2という距離だけシャトル170の中心からオフセットされている場合、遠位駆動歯175Dは、シャトル170を移動させてスプリング160を変位させるためプロセスの開始時点で部分歯ピニオン300の歯302Cの初期係合用に位置付けされる。しかしながら、部分歯ピニオン300のみが使用されることから、歯302aがラックと再係合するために回って来るにつれて、駆動歯175M(中央駆動歯)と衝突しないように保証するべく、約P/2(以下で論述するように16ピッチのギヤについてはプラス約1mm)の追加のオフセットが必要とされる。
【0041】
スプリング160D、160Pは、一体型「環状」ギヤラック駆動歯175(ピッチ直径は無限であるため、歯175の側面はインボリュートである必要がなくむしろ直線である)を用いて、シャトル170のいずれの側にでも組付け可能である。環状歯175はシャトル170の周囲を包み込むことができるが、これは、コイルスプリングが圧縮された時点で、シャトルはわずかに回転し得、(まっすぐ横断し環状に包まれていない)ギヤラックの従来の区分がシャトル170内に機械加工された(又は組付けられた)としても、シャトル170がスプリング(例えば160P及び160D)を圧縮するにつれて、その回転は、まっすぐ横断する歯175を回転させ、駆動ギヤ300をエッジローディングさせ、高い接触応力及び早期のギヤ摩耗を結果としてもたらし得る。シャトル170は、図3に示されたように寸法決めされ得る内側キャビティ176を含むことができる。
【0042】
シャトル170は、それぞれ、遠位及び近位の摺動接触フランジ付き軸受174D、174Pを用いて、駆動ロッド122に対し同心的に保持され得る。フランジ付き軸受174D、174Pは、駆動ロッドひいては工具ホルダ114の回転を防止できる。ひとたび設置され、スプリングがシャトル170に対し予圧された時点で、スプリング160D、160Pの端部は、軸受174D、174Pを所定の場所に保つことができる。軸受は、摺動接触を可能にするためにPEEKから製造され得、かつ、蒸気滅菌可能である。軸受174DD、174PPは、それぞれハウジングエンドキャップ112b、113内で駆動ロッド122を中心に置くことができる。軸受174D、174Pは、コッキング中に駆動ロッド122上でシャトル170を中心に置くことができ、シャトル170が高速で移動してドライバ120の中心衝撃フランジ123に衝撃を加えている間、シャトルを中心に置いた状態に維持することができる。
【0043】
本明細書中で開示されているように、要素は共線的であり得、したがって、結果として駆動ロッド122はスプリング160及びシャトル170の中心下で適合するように細身のものとなり得る。質量の観点から見ると、このことは、駆動ロッド122の質量に工具ホルダ114及びその中に保持された工具の質量を加えたものが全て、シャトル170からの衝撃力によって駆動されているシステム質量とみなされ得ることから、有益であり得る。しかしながら、本明細書中で開示されているように、駆動ロッド122は同様に、コッキングされている間のシャトル170を支持することもでき、ギヤ歯分離力が、サイズにしては過度に激しく駆動ロッド122を半径方向に押した場合、駆動ロッドは撓み、ギヤ歯をスキップさせる可能性がある。
【0044】
ドライバ120の衝撃フランジ123がシャトル170の遠位フランジ173によってその遠位側に衝撃を受けた直後などのニュートラル状態において、スプリング160は、衝撃後数サイクルにわたり振動してはいるものの、典型的には、シャトル170の固有振動数が約40Hzであり得るためおよそ100から200ミリセカンドかかる5から10サイクルの後に休止した可能性がある。衝撃は、弾性と非弾性の混合であり得、エネルギ伝達のためにはシャトル170を重くするのがよいと考えがちではあるものの、過度に重いと、固有振動数は低くなることから休止に至る時間を含め速度は遅くなる。典型的には1から10の範囲内の毎秒打撃数は、外科医によって選択され、ギヤモータ230による部分歯ピニオン(PTP)300の回転によって支配されているベース183内の制御回路によって制御さ得る。ギヤモータ230は、設定された衝撃速度の使用期間中、一定の速度で回転することができ、このことは、かなりの大きさであるPTP300におけるギヤモータ230の反射回転慣性が、別の打撃のためにシャトル170をコッキングする努力に寄与し、このことは、システム全体の効率及びバッテリ寿命の増加に役立つ。
【0045】
設定された衝撃速度について恒常な速度で回転するために、最後の歯302Aがひとたびシャトルの近位駆動歯175Pをクリアした時点で、シャトル170は、スプリング160D、160P内の貯蔵されたエネルギによって順方向に推進され得る。本明細書中で開示されているように、各々kという剛性を有する2つの相対する圧縮スプリングは、両方共、互いに対して予圧されていることから、システムの順方向エネルギに寄与し得る。これらのスプリングは、互いに対し予圧されているかぎりにおいて、2方向性の剛性2kを有する1つのスプリングとして作用する。その間、シャトル170が順方向に加速して、スプリング160D、160P内の貯蔵ポテンシャルエネルギからシャトル170に伝達される運動エネルギを増大させるにつれて、PTP300は回転し続ける。シャトル170は、駆動ロッド120に衝撃を加え、図2及び3においてシステムのニュートラル位置で示されているように、PTP歯302Cが到来してシャトルの遠位駆動歯175Dと接触するのに合わせて静止する。
【0046】
最大強度の順方向衝撃のためには、ソフトブロークリップ(SBC)444(又は別のスペーサ実施形態)がエンドキャップ113の近位表面に対して押圧され得、これにより駆動ロッド120の衝撃フランジ123を後向きに変位させるように、ユーザは、二重スプリング式手術用衝撃工具1を順方向に押すことができる。衝撃フランジ123の遠位面は、このときシャトル170の衝撃フランジ173の近位面に対し押圧され得る。この時点で、PTP歯302Cは、シャトルの遠位駆動歯175Dとすでに係合している可能性があり、図示されている通りに反時計回り方向に回転されると、シャトル170を、図4及び5に示されている発射準備完了位置まで戻るよう移動させることになる。図16は、歯の初期接触時点(a)からインボリュート歯間の回転接触の終了時点(b)まで、歯302Aがシャトルの近位駆動歯175Pとの接触を中断する最終変位位置までのステップの進捗を示す。
【0047】
初期接触から回転の最終時点までのPTP300の回転が、図16に示されているラックの直線運動をひき起こし得る。歯302Aは、シャトル駆動歯175Pとの接触を中断することができ、シャトル170はこうして解放され、ドライバ120の衝撃フランジ123に向かって加速する。この運動期間中、歯302Aと175Pとの間には摺動接触があり得る。運動により細かな分解能が所望される場合、より細かいピッチを使用することができるが、その場合、歯はより小さく弱いものとなり得る。
【0048】
ギヤ歯ベース材料(例えば175及び302)は、硬化され(RC50以上)、研削され、先端部は丸く研磨され、物理蒸着によって適用される炭化タングステンなどの耐摩耗性コーティングでコーティングされ得る。歯は接触応力深さに関して大きくないことから、無心焼入れされ得る。黒鉛/MoSに類似した軟質の層状材料である二硫化タングステンWSなどの乾燥した薄層状の固体潤滑剤も同様に、コーティングプロセス中に適用可能である。同様に、コーティングはギヤのベース鋼よりもはるかに高い弾性係数及び強度を有することから、接触応力は鋼の応力によって制限され得る、ということに留意されたい。これは、鋼がコーティング層の厚み以下で降伏したとすると、コーティングは、剥離することが考えられるからである。全周歯で別のギヤと係合している全周歯ギヤにおいては、歯の先端縁部は高い応力で接触せず、したがって、一般に丸みを帯びない;しかしながら、最後の歯の先端部は、発射の直前にラックの歯と高い力で接触する。この歯の先端部の縁部同士の接触は、トリガシステムの縁部と同様であり、したがって、許容できない摩耗を防止するためには、配慮が必要とされ得る。
【0049】
遠位駆動フランジ173の近位面により対象物(例えば大腿骨)内に工具を駆動するために(近位の)順方向で力を生成するべく、ドライバ120の衝撃フランジ123をその遠位面上に激突させることができる。遠位駆動フランジ173は、最大の応力を受け得ることから、シャトル170と一体的に製造され得る。遠位スプリング160Dは、ドライバ120及びフランジ123と同軸とすることができ、したがって、ドライバフランジ123に衝撃を加えるフランジの反対の側に力を直接加えることができ、こうして非常にロバストな設計が得られる。
【0050】
図6及び7に示されているように(シャトル170の構成要素については図2及び12を参照のこと)、ドライバ120の後退のためには、シャトル170の近位端部においてカウンタボア面177に対して据え付けることのできるフランジインサート178を、内部スナップリング179で所定の場所に保持することができる。後退モードでは、力はさほど強くなくてよい。これは、ストッパカラー121にドライバ120の端部を挟持させることによって、組立て時に調整可能である(図13を参照)。スナップリングは荷重を取り込むことができるものの、一体型フランジ173と比べると幾分か散逸性が高い(すなわち効率が悪い)可能性がある。
【0051】
工具を引き抜くための後方向への衝撃については、ユーザは、二重スプリング式衝撃工具1を後向きに引張り、こうしてストッパエンドカラー121がエンドキャップ112B内のカウンタボアに対し押圧され、ドライバ120の衝撃フランジ123の近位表面がシャトルのフランジインサート178の遠位表面に面するようにすることができる。逆方向を選択し(例えばハンドル180上の逆方向ボタンによる)、ギヤモータ230を作動する(例えばハンドル180上のスイッチ181を用いて)と、PTP300は、順方向衝撃のために反対方向に回転することができ、このときPTP歯302Aはシャトル170の近位後退歯175RPと係合することができ、図示されているように時計回り方向に回転すると、歯302Cがシャトル170の遠位後退歯175RDとの接触を中断するまで、シャトル170を図8に示された発射準備完了位置まで順方向に移動させることができ、この接触中断時点で、スプリング160は、ドライバの衝撃フランジ123の近位表面がシャトルのフランジインサート178の遠位表面による衝撃を受けるまで、高速で後方向にシャトル170を移動させる。シャトル170は、3つの後退用の歯、175RP、175RM、及び175RD(すなわち、それぞれ近位、中央、遠位後退歯)を有することができ、その各々がこの実施形態において、PTP300上の3つの歯によって係合され得る。
【0052】
シャトル170の円形ギヤラックの駆動歯175は、ギヤモータのD字形出力シャフト233上に摺動嵌合するためにD字形のボア301を有し得る、部分歯ピニオン300上の歯302(図11参照)によって駆動され得る。図3には、ギヤモータ230の前方フランジが見えるが、それを所定の場所に保持するボルト234の1つは、部分歯ピニオン300の後ろに隠されている。先端平坦型止めねじ313などの締結具が、部分歯ピニオン300を所定の場所に保持できるが、以下で論述するように、PTP300は、ギヤモータシャフト及びアウトリガ支持軸受によって軸方向に拘束されている(図9参照)。例示されている実施形態については、ラックを何れかの方向に所望の距離だけ駆動するために、ギヤピッチ及びピッチ直径によって決定される3つの歯302A、302B、302Cが必要とされる。
【0053】
ロッド122上の後方カラー121は、固定したクランプカラーとして示されているが、後退力を調整するため、外科医がカラーを回転させフランジ123に対する軸方向位置を調整できるように、シャトル上のねじ付きカラーにすることは容易に可能であると思われる。この場合、後方キャップ112Aが取外し可能であるか、又はねじ付きカラーに、位置をダイヤル調節するための突出部を貫通させることが可能である。
【0054】
順方向及び逆方向の衝撃において、エネルギは、フランジ123に衝撃を加える前にシャトルが走行する(加速する)距離を変更することによって変更可能である。したがって、スプリングの剛性(スプリングサイズ)を、必要とする可能性のある最大値に固定することができ、打撃一回あたりに達成されるエネルギは、シャトルキャビティ176の内部のフランジ123の位置を変更することによって、高い感度で容易に調整される。これは、スリップクラッチ又は他のエネルギを奪う要素でないことから、設計の大きなロバスト性が可能となり得る。
【0055】
モータギヤボックスの組合せ(「ギヤモータ」)、詳細には、高いギヤ比を有する組合せは、非常に大きなトルクを出力することができる。多くの場合、このトルクは、カップリングを用いて別のシャトルに伝達され得る。時として、ギヤ又はプーリを、ギヤモータ出力シャフトに直接取付けることができる。しかしながら、この場合、特に駆動ギヤ(PTP300)上の負荷が突然解放される衝撃荷重があるため、伝達されたトルクをギヤのピッチ半径で除した等価半径方向荷重が、ギヤモータ230の出力シャフト233上の許容可能な半径方向荷重を上回る可能性がある。ギヤ歯(例えば歯302)を、ギヤハブが外部にある状態でモータの面に対し密に位置することが可能であり得るが、ここでは、シャトル170の円形ラック歯175がギヤモータ230の面と接触すると考えられることから、図示されていない。
【0056】
図9及び10に示されているように、ギヤモータの前面には、出力シャフト233を支持するそれらの内側軸受と同心的であり得る精密丸形位置設定用ボスを有することができる。したがって、ボスが精密ボア153に摺動嵌合するように取り付けることができ、この精密ボア153は、シャトル170が通過する領域を横切って、精密アウトリガ支持軸受280を配置することができるMMB150の反対側まで延在することができる。位置設定用ボスのためのボア直径は、アウトリガ軸受280に求められるボア153と同じであり得、したがって、直線的貫通ボア作業を行なうことができ、孔を正確な公差でリーマ加工することができる。
【0057】
精密ボア153が中に作られた構造の中心領域内に、一体として形成されたギヤシャフト構造311上に部分歯ピニオン(PTP)300を格納するキャビティを形成することができる。このギヤシャフト構造311では、ギヤ端部(PTP300)において、直径をギヤモータシャフト233と嵌合するのに十分な精密ボアとすることができ、平坦、キー溝、又は、スプラインなどのシャフト特徴部を含むので、カップリングを必要とせずに優れたトルク伝達を得ることができる。シャフト311のもう一方の端部は、アウトリガ軸受280内に嵌合するシャフト310を有し得る。幾分かの追加のモーメントサポート及び剛性を提供するために、2つの軸受280を使用することができる。この結果、ギヤ(PTP300)を実質的に中間に配置した単純支持シャフト(構造311)とすることができ、ギヤ歯(302B)の接線力によるラジアル荷重とギヤ歯の離間力は、ギヤモータシャフト支持軸受とアウトリガ軸受280によって分担される。しかしながら、この配設によって得られる精密嵌合及び整列は、モータ組付けブロックのモノリシック構造によって可能にすることができる。
【0058】
図9及び10に示されているように、ギヤ歯の接線力及び分離力は、つねに、本質的に加算して、正味の上向き方向を有することになるため、アウトリガ軸受のボア153の下位四分円は解放されて、部分歯ギヤ300が所定の場所へ摺動させられるのを可能にする扇形のアクセス152を形成する。ボア153内のスナップリング溝154は、ボア153内に軸受を軸方向に保定し得るスナップリング281を保持することができ、これは完全に組立てられた装置において、キャップ145によってカバーされ得る(図1参照)。頂部アクセスポート155が、ボルト234を締めてギヤモータ230のギヤヘッド232をしっかりとハウジング149に保持するためのアクセスを可能にし得る。このアクセスポートは、完全に組立てられた装置では、キャップ146によりカバーされ得る(図1参照)。ボア235はボア153と共線的でかつそれと同じ直径を有することができ、こうして、これらのボアは、高い精度を得るようライン穿孔され得る。ギヤモータの前方ボス239は、上述のように同心的に精確に保持され得る。ボス239と同じ外径を有するようにアウトリガ軸受280A、280Bを選択することにより、PTPシャフト310は、軸受280のボア内に嵌合することができ、PTPのD字形ボア301は、ギヤモータシャフト233上を摺動でき、ギヤモータ230内の軸受は、アウトリガ軸受280A、280Bによって過剰に拘束されなくなり、これらをシャフト310の肩部316に接して据え付けることが可能である。その結果、ギヤ歯302上の接線力及びギヤ歯分離力に起因する高い半径方向荷重を、ギヤモータ230及びアウトリガ軸受280内の軸受によって分担することができる。
【0059】
本明細書中で示されている円形ギヤラック歯175の場合、ギヤラック歯のクラウンは、不整列を妨止するように動作し得る。このクラウニングは、駆動ギヤと係合する従来の平坦な側面のギヤラック歯が経験すると思われるものよりも高い接触応力を結果としてもたらし得るものの、これは、ここで示されているように、ギヤ歯の強度の計算のみならず円形ギヤラック歯175と駆動ギヤ歯302との接触応力の計算も含むシステムの最新の解析を用いて工学処理され得る、ということに留意されたい。
【0060】
駆動ロッド122の端部に取付けられ得る工具ホルダ114の後方面は、システムの外側管111の前方エンドキャップ113と接触することができる。駆動ロッド120の中央衝撃フランジ123は、シャトル170がコックされるとき、その近位フランジ(工具ホルダ114に最も近い)の内面がちょうど接触するように、又は、駆動ギヤ300がシャトル170を解放して発射できるようになるまであと少ししかないが、駆動ロッド122の衝撃フランジ123がすでにシャトル170の近位フランジ内面に接触している過剰拘束状態を防止するために、約1mmの公差クリアランスがあるように、システム内に配置され得る(図2及び図3を参照)。
【0061】
図17に示されている第2の実施形態において、モノリススプリングシャトル構造(SSS)500は、2つのスプリング560P、560D及び一体型ギヤ歯を伴うシャトル部570を含むことができる。ばねは、560PがCW(時計回り)であり、560DがCCW(反時計回り)となるように機械加工され得る。それは、棒鋼又は鋼管からスプリングを機械加工することによって一体形成され得る。円形ラック歯175は、なおも、シャトル部570内に機械加工可能である。工具を順方向に駆動するための順方向衝撃表面は、シャトル500と一体にすることができるが、所望する場合には、高い力容量のスナップリングを使用できると考えられる。カスタム機械加工されたスプリングを使用した場合の利点は、スプリング及びシャトル管(SST)110と噛合する必要のあるエンドキャップも包含する、直径がより大きく長さが幾分か短かいスプリングを使用することができるという点にある。この場合、一方のスプリング560は時計回り方向であり、他方は反時計回り方向で機械加工されているため、外側管111に取付けられる端部上に評価可能な正味のトルクは存在せず、したがって摺動又は摩耗は回避される。システムの外側管111がSSS500上に設置され、その近位端部がフランジ561と接して据え付けられたときに、予圧を得ることができる。SSS500は、内部から(例えば拡張工具を用いて)把持され、スナップリングが溝571内に嵌合されるまで、張力で引張られる。SSS500は、シャトル部570の順方向(駆動)及び後方向(後退)衝撃起動のために円形ラックギヤ175P、175M、175D及び175RP、175RM、175RDの外径よりも通常約2~3mm大きい直径を有すると考えられるエンドボス562、572によって、外側ハウジング管111内で中心に維持され得る。
【0062】
図18Aは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した二重スプリング式手術用衝撃工具1800を示す。図18Bは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した二重スプリング式手術用衝撃工具1800の断面図を示す。衝撃工具1800は、チャック1802、チャックシュラウド1804、ハウジング1806、エンドキャップ1808、トリガ群1810、及びバッテリ1812を含むことができる。チャックシュラウド1804は、チャック1802が、本明細書中で開示されている駆動ロッド1816を露出させることなく、矢印1814で標示された通りに移動できるようにすることができる。使用中、外科医は、本明細書中で開示されているように、第1のトリガ1818を押圧して工具を駆動させ、第2のトリガ1820を押圧して工具を引き抜くことができる。例えば、ブローチを駆動するために、外科医は、第1のトリガ1818を押圧でき、ブローチを骨から取り出すために外科医は第2のトリガ1820を押圧することができる。
【0063】
ハウジング1806は、第1の端部1824と第2の端部1826を有するキャビティ1822を画定し得る。シャトル1828は、キャビティ1822の内部に配置され得、時としてシャトル歯と呼ばれる複数の刻み目1830を画定することができる。シャトル1828は、第1の端部1832と第2の端部1834を有することができる。シャトル1828は、貫通孔1836を画定することができる。駆動ロッド1816は、貫通孔1836内を通過することができ、シャトル1828は、衝撃力及び引抜き力を生成するため本明細書中で開示されているように駆動ロッド1816に沿って第1の方向及び第2の方向に並進運動することができる。例えば、ピニオン1838は、シャトル1828の近傍に配置され得、本明細書中で開示されているように、ピニオン1838の回転中に刻み目1830と嵌合するように寸法決めされた、時としてピニオン歯と呼ばれる複数の突出部1840を有することができる。
【0064】
第1のスプリング1842が、ハウジング1806の第1の端部1824をシャトル1828の第1の端部1832に対し機械的に結合させることができる。例えば、第1のスプリング1842は、インサート1844及びプラグ1846の一部分を取り巻くことができる。プラグ1846は、エンドキャップ1808の一部分であるか又はエンドキャップ1808に連結された別個の構成要素であり得る。図18Bに示されているように、インサート1844は、本明細書中で開示されているように第1のスプリング1842がシャトル1828上に力を及ぼしてシャトル1828の直線運動をひき起こすことができるようにする肩部1848を画定することができる。プラグ1846又はエンドキャップ1808は同様に、第1のスプリング1842が静止表面上に載ることができるようにするため、肩部1850を画定することもできる。
【0065】
第2のスプリング1852が、ハウジング1806の第2の端部1826をシャトル1828の第2の端部1834に対し機械的に結合させることができる。例えば、第2のスプリング1852は、インサート1854の一部分及び前方エンドキャップ1858の一部分1856を取り巻くことができる。図18Bに示されているように、インサート1854は、本明細書中で開示されているように第2のスプリング1852がシャトル1828上に力を及ぼしてシャトル1828の直線運動をひき起こすことができるようにする肩部1860を画定することができる。前方エンドキャップ1858は同様に、第2のスプリング1842が静止表面上に載ることができるようにするため、肩部1862を画定することもできる。
【0066】
プラグ1846及び前方エンドキャップ1858は各々、環状キャビティ1864、1866をそれぞれ画定することができる。第1及び第2のスプリング1842、1852は、駆動ロッド1816の長手方向軸線に沿って軸方向に配置され得る。キャビティ1864、1866は、第1のスプリング1842及び第2のスプリング1852が半径方向に撓み無く圧縮できるようにすることができる。軸方向のみに圧縮するように第1のスプリング1842及び第2のスプリング1852を拘束することにより、圧縮時に第1のスプリング1842及び第2のスプリング1852の中に蓄えられたエネルギは、半径方向におけるスプリングの移動によるエネルギの無駄が無いことから、より効率良く放出され得る。
【0067】
本明細書中で開示されているように、矢印1868によって標示されている第1の方向でのピニオン1838の回転は、ハウジング1806の第1の端部1824に向かって、矢印1870により標示されている第1の方向にシャトル1828を並進運動させることができる。矢印1872により標示されている第2の方向でのピニオン1838の回転は、ハウジング1806の第2の端部1826に向かって、矢印1874によって標示された第2の方向にシャトル1828を並進運動させることができる。本明細書中で開示されているように、シャトル1828は、直線的に移動し得る。シャトル1828が位置を外し、ピニオン1838がシャトル1828の刻み目1830と嵌合しなくなった場合、シャトル1828は、第1及び第2のスプリング1842、1852によって自由に移動可能である。
【0068】
駆動ロッドカラー1876を、駆動ロッド1816に取り付けることができる。例えば、図18Bに示されているように駆動ロッドカラー1876を駆動ロッド1816に取り付けるために1つ又は複数のロールピン1878を使用することができる。止めねじ、溶接、エポキシなどの他の取付けメカニズムを使用して、駆動ロッドカラー1876を駆動ロッド1816に取り付けることができる。本明細書中で開示されているように、シャトル1828が矢印1870によって標示されている第1の方向に走行しピニオン1838がもはやシャトル1828と係合しない場合、第1のスプリング1842は、矢印1874によって標示されている第2の方向にシャトル1828を走行させることができ、インサート1844は、駆動ロッドカラー1876と接触して衝撃力を生成することができる。衝撃力は、駆動ロッド1816を介してチャック1802及び例えばラスプなどの工具に伝達され得る。引抜き力を生成するためには、これと反対のことが起こり得る。例えば、シャトル1828を矢印1874によって標示されている第2の方向に移動させることができ、ピニオン1838がもはやシャトル1828と係合していない場合、第2のスプリング1852は、インサート1854を駆動ロッドカラー1876に衝突させて後退力を生成させることができる。後退力は、駆動ロッド1816を介してチャック1802及び工具に伝達され得る。
【0069】
図19A、19B及び19Cは各々、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した図18Aの二重スプリング式手術用衝撃工具1800のモータピニオンアセンブリ1900を示す。モータピニオンアセンブリ1900は、ピニオン1838が組付けられたシャフト1904を有するモータ1902を含むことができる。モータ1902をバッテリ1812、トリガ群1810、スイッチ1906及びセンサ1908に対して電気的に結合させるために、1つ又は複数のケーブル1906を使用することができる。
【0070】
図19Bに示されているように、ピニオン1838は、ピニオンキャリッジ1910を含むことができる。ピニオンキャリッジ1910は、第1のピニオンプレート1912と第2のピニオンプレート1914を含むことができる。第1及び第2のピニオンプレート1912及び1914の間に、1つ又は複数の軸受1916を配置することができる。軸受1916は、刻み目1830と噛合する複数の突出部を形成することができる。軸受1916の非限定的例としては、ころ軸受、ジャーナル軸受などが含まれる。軸受1916は、軸受1916と刻み目1830を形成する表面との間のあそびを最小限に抑える目的で、図18Bに示されている刻み目1830と噛合するように寸法決めされ得る。軸受1916の表面が刻み目1830の表面を横断して回転することから、刻み目1830及び軸受1916の接触表面の摩耗を、グリース、オイル、他の潤滑を必要とすることなく最小限に抑えることが可能である。軸受スリーブを用いて、軸受表面上の均等な半径方向荷重を可能にすることができる。
【0071】
第1及び第2のピニオンプレート1912及び1914は各々、複数のスポーク1918を画定できる。軸受1916の各々を、それぞれのスポーク1918に連結することができる。図19Bは2つのピニオンプレートを示しているものの、本明細書中で開示されている実施形態は、1つ又は2つのピニオンプレートを使用し得る。例えば、第1のピニオンプレート1912などの単一のピニオンプレートを使用し、ボルト又は他の締結具を介して第1のピニオンプレート1912に軸受1916をしっかり固定することができる。同様に、図18Bから19Cは、ピニオンプレート1912、1914に取付けられた軸受1916を示しているものの、軸受1916をシャトル1828に取付けることができ、かつ、ピニオン1838は、シャトル1828に取付けられた軸受1916と噛合する刻み目を画定することができる。
【0072】
モータ1902は、スイッチ1906と導通状態にあり得る。シャトル1828の位置を検出するために、センサ1908を配設することができる。例えば、センサ1908は、その移動が磁場又は磁束の変化をひき起こす可能性のある鉄合金又は他のあらゆる材料であり得る駆動ロッド1816の移動に起因する磁束の変化を測定するホール効果センサであり得る。センサ1908は同様に、スイッチ1906と導通状態にもあり得る。シャトル1828が、軸受1918又はピニオン1838の何れかの突出部と刻み目1830との噛合を可能にする位置から外れていることをセンサ1908が検出した場合、スイッチ1906は、モータ1902と電源(すなわちバッテリ1812)の導通状態を切断することができる。例えば、ピニオン1838とシャトル1828の結合又は他の不一致を防止するためには、センサ1908は、シャトル1828の位置を検出し、シャトル1828がスポーク1918と刻み目1830との噛合を可能にする位置にない場合、モータ1906の回転を停止させることができる。
【0073】
可変的な大きさの衝撃を可能にするべく、筒形カム1880を軸方向に並進運動させて駆動ロッド1816と結合された駆動ロッドカラー1876の位置を連続的に調整するようにエンドキャップ1808を回転させることができる。図20A及び20Bに示されているように、筒形カム1880は、スロット2002及びピン2004を含むことができる(図20A及び20Bには1本のピンしか見られない)。例えばエンドキャップ1808を回転させることによって、又はレンチ、ソケットなどを使用することによって、筒形カム1880を回転させることができる。筒形カム1880の回転により、ピン2004をスロット2002内部で移動させることができる。ピン2004の移動により、駆動ロッド1816を連続して再配置することができる。
【0074】
図21A、21B及び21Cは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致した軸受1916(個別に軸受1916A、1916Bとラベル付けされている)及びシャトル1828を示す。本明細書中で開示されているように、軸受1916及びシャトル1828は、より大きい力及びトルクの生成を可能にし得る。軸受1916及びシャトル1828は同様に、従来のラックアンドピニオンシステムにおいて経験し得る解放点における曲げ荷重及び摺動接触応力に起因するエネルギ損失を削減することもできる。歯間の回転接触は、接触が失われる直前の瞬間でさえも起こり得ることから、接触摩耗は全く存在しない。
【0075】
非限定的な例として、軸受1916は、12.5mmのODを有し、10.4mmの直径を有し得るピニオンプレート1918上に設置され得る。軸受1916は、90度の間隔をおくことができる。シャトル1828は、丸く研磨された頂部2008を含み得る台形歯2006(個別に歯2006A、2006Bと表示される)を含み得る。上述の軸受サイズについては、歯2006は、16.5mm間隔で配置され得る。歯の中心の初期の場所により、5Jのエネルギを有する順方向運動、及び、後退については約2.5Jの運動が可能となり得る。これにはまた、何れかの方向での衝撃のために駆動ロッド1816及びチャック1802を位置付けするのに、ユーザが順方向に12mm又は後向きに12mm引張るだけでよい。
【0076】
図21A、21B及び21Cに示されているように、ピニオンプレート1918が矢印1868によって標示されている第1の回転方向に回転するにつれて、軸受1918Aは、歯2006Aと接触することができる(図21A)。ピニオンプレート1918の継続的回転は、軸受1918Aが歯2006Aとの接触を解除する前に歯1916Bを歯2006Bと接触させ、こうして、ぎくしゃく感及び/又は滑りを低減することができる。ピニオンプレート1918の継続的回転は、最終的に、歯1916に歯2006から接触を断ち、シャトル1828が第1及び第2のスプリング1842及び1852の力の下で移動することを可能にする。
【0077】
図21A、21B及び21Cは、2つの歯を示しているものの、任意の数の歯が存在してもよい。例えば、図18Bは、3つの歯を有するシャトル1828を示す。本明細書中で開示されているように、第3の歯は、2つの主要な歯よりも短かいものであり得る「逆方向歯」であり得る。より短かい歯は、6N-mのトルク容量を有するモータが6Jの順方向エネルギ及び3Jの後退エネルギを達成することを可能にし得る。
【0078】
牽引又は引抜き力を生成するために、ピニオンプレート1918を、矢印1872によって標示されている第2の方向に回転させることができる。第2の方向での回転は、上述の通り、逆方向の順序で軸受1918を歯2006と接触させることができる。
注記
【0079】
以上の詳細な説明は、詳細な説明の一部を成す添付図面に対する参照を含む。図面は、例示として、本発明を実施できる特定の実施形態を示す。これらの実施形態は同様に、本明細書中において「実施例」とも呼ばれている。このような実施例は、図示又は説明されたものに追加の要素を含むことができる。しかしながら、発明人は、図示又は説明されている要素のみが提供されている実施例も企図している。さらに、発明人らは、特定の実施例(又はその1つ又は複数の態様)に関してか又は本明細書中で図示又は説明されている他の実施例(又はその1つ又は複数の態様)に関して、図示又は説明された要素(又はその1つ又は複数の態様)の任意の組合せ又は再配列を用いた実施例をも企図している。
【0080】
参照によりそのように組込まれた何れかの文書と本明細書との間に、矛盾する使用法が存在する場合、本明細書中の使用法が支配する。
【0081】
本書中、「a」又は「an」なる用語は、特許文書中で一般的であるように、「at lieast one(少なくとも1つ)」又は「one or more(1つ又は複数)」の他の任意の事例又は使用法とは独立して、1つ又は2つ以上を内含するように使用される。本書中「or(又は)」なる用語は、非排他的orを意味するものとして使用され、したがって「A or B」は、別段の標示が無いかぎり、「BではなくA」、「AではなくB」そして「AとB」を含むことになる。本書中、「including(~を含む)」及び「in which(ここで)」なる用語は、それぞれの用語「comprising(~を含む)」及び「wherein(ここで)」の平易な英語の等価物として使用されている。同様に、以下の請求の範囲において、「including」及び「comprising」は、オープンエンドである、すなわち、請求の範囲の中でそのような用語の後に列挙されているものに追加した要素を含むシステム、装置、物品、組成、調合又はプロセスはなお、その請求の範囲内に入るものとみなされる。その上、以下の請求の範囲において、「第1」、「第2」及び「第3」などの用語は、単なる「ラベル」として使用され、それらの目的語に対し数値的な要件を課すべく意図されたものではない。
【0082】
以上の説明は、限定的ではなく例示的であるように意図されている。例えば、上述の実施例(又はその1つ又は複数の態様)を互いに組合せて使用することが可能である。例えば、当業者であれば、以上の説明を精査した上で他の実施形態を使用することができる。「要約書」は、読者が技術的開示の内容を素早く確認できるようにするために、37C.F.R.§1.72(b)に適合するように提供されている。これは、請求の範囲又は意味を解釈するか又は限定するために使用されるものではないという理解の下で提出される。また、上述の「詳細な説明」においては、本開示を簡素化するために、さまざまな特徴がまとめられている可能性がある。これは、請求対象でない開示された特徴がいずれの請求の範囲にとっても本質的なものであることを意図するものとして解釈されるべきことではない。むしろ、発明力ある主題は、特定の開示された実施形態の全ての特徴より少ない特徴の中に存在し得る。したがって、以下の請求の範囲は、これにより実施例又は実施形態として「詳細な説明」中に組込まれ、各請求の範囲は、別個の実施形態として自立しており、このような実施形態をさまざまな組合せ又は再配列の中で互いに組合せることができる、ということが企図されている。本発明の範囲は、添付の請求の範囲、ならびにこのような請求の範囲が権利を有する全範囲の等価物を参照して決定されなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
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図16A
図16B
図16C
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図21A
図21B
図21C
【国際調査報告】