(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】溶液中の分析物を検出するための再使用可能なカートリッジ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20231130BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20231130BHJP
G01N 33/547 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G01N33/543 525W
C07K1/22
G01N33/547
G01N33/543 531
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530521
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 US2021059819
(87)【国際公開番号】W WO2022109087
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ポロック, サミュエル ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA30
4H045EA50
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、抗体によって認識される抗原などの試料中の分析物の検出又は濃縮のための、抗体などの検出分子を含むマトリックスを含む再使用可能かつ乾燥可能なカートリッジを調製する方法に関する。いくつかの実施形態では、カートリッジは、マトリックスを保持するチューブ又はウェルを含む。いくつかの実施形態では、マトリックス又は関連するカートリッジは、湿潤又は乾燥保存されてもよい。本開示はまた、カートリッジ及びその使用方法に関する。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液中の分析物を検出するための再使用可能なカートリッジであって、前記カートリッジが、
a)マトリックスと、
b)前記マトリックスに結合した検出分子であって、前記分析物に特異的に結合し、前記マトリックスに任意に架橋された、検出分子と、
c)少なくとも1つの凍結保護剤と、
を含み、
前記カートリッジを、溶液中の前記分析物の検出のために少なくとも10、20、50、又は100回使用することができ、各使用後、前記マトリックスが、乾燥状態で凍結保護剤と共に任意に保存される、再使用可能なカートリッジ。
【請求項2】
前記カートリッジが、両端が開口したチューブ、一端が開口したチューブ、ウェル、ウェルを有するか若しくは有しないプレート、又は前記マトリックスを含むことが可能なチップである、請求項1に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項3】
前記マトリックスが、シリカ又はアガロースを含む粒子(例えば、ビーズ、グレイン、チップ又はペレット)を含み、前記粒子が任意に磁性である、請求項1又は2に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項4】
前記マトリックスが、プロテインA、プロテインG、及び/又はプロテインLを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項5】
前記検出分子が抗体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項6】
前記検出分子が、前記マトリックスに架橋されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項7】
前記検出分子が、ジメチルピメリミデート(DMP)、シアネートエステル、NHSエステル、アズラクトン、カルボニルジイミダゾール(CDI)、マレイミド、ヨードアセチル、ピリジルジスルフィド、ヒドラジド、又はカルボジイミドから選択される架橋剤で前記マトリックスに架橋されている、請求項6に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項8】
前記マトリックス上の前記検出分子によって検出可能な前記分析物が、プロテイン又はペプチドである、請求項1~7のいずれか一項に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項9】
前記分析物が、主要組織適合性複合体I(MHC-I)分子である、請求項8に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項10】
前記カートリッジが、細胞溶解物又は生体液中のプロテイン分析物の検出のために少なくとも10回使用され得る、請求項1~9のいずれか一項に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項11】
前記乾燥状態で保存される、請求項1~10のいずれか一項に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項12】
前記カートリッジが、各使用後に前記乾燥状態で保存後に、細胞溶解物又は生体液中のプロテイン分析物の検出のために少なくとも10回使用され得る、請求項11に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項13】
前記カートリッジが、各使用後に前記乾燥状態で保存後に、細胞溶解物又は生体液中のプロテイン分析物の検出のために少なくとも20回使用され得る、請求項11に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項14】
前記カートリッジが、各使用後に前記乾燥状態で保存後に、細胞溶解物又は生体液中のプロテイン分析物の検出のために少なくとも50回使用され得る、請求項11に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項15】
前記カートリッジが、各使用後に前記乾燥状態で保存後に、細胞溶解物又は生体液中のプロテイン分析物の検出のために少なくとも100回使用され得る、請求項11に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項16】
前記マトリックスが、酸性pHで保存される、請求項11~15のいずれか一項に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項17】
前記マトリックスが、2~8℃で保存される、請求項11~16のいずれか一項に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項18】
前記マトリックスが、湿潤状態で保存される、請求項1~10のいずれか一項に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項19】
前記マトリックスが、酸性pHで保存される、請求項18に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項20】
前記マトリックスが、2~8℃で保存される、請求項18又は19に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項21】
前記凍結保護剤が、スクロース、トレハロース、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(MPD)、又はジメチルスルホキシド(DMSO)のうちの1つ以上を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の再使用可能なカートリッジ。
【請求項22】
再使用のために、以前に使用された、請求項1~21のいずれか一項に記載のカートリッジを調製する方法であって、分析物が前記カートリッジから溶出した後、1~10%酢酸、1%ギ酸、又は1%トリフルオロ酢酸(TFA)中で前記マトリックスを洗浄することと、凍結保護剤を含む緩衝液中で前記マトリックスを洗浄することと、前記マトリックスを乾燥させることと、を含む、方法。
【請求項23】
前記凍結保護剤が、スクロース、トレハロース、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(MPD)、又はジメチルスルホキシド(DMSO)のうちの1つ以上を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記カートリッジを、少なくとも30℃に加熱し、続いて室温で少なくとも1時間保存することによって、前記マトリックスを乾燥させる、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記カートリッジを37℃に加熱し、続いて室温で少なくとも1時間保存することによって、前記マトリックスを乾燥させる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記マトリックスを乾燥させた後、前記カートリッジを再使用するまで2~8℃で乾燥状態で保存する、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
請求項1~21のいずれか一項に記載の再使用可能なカートリッジを調製する方法であって、マトリックスを含むカートリッジを得ることと、前記マトリックスを前記検出分子と接触させることと、前記検出分子を前記マトリックスに架橋させることとを含む、方法。
【請求項28】
溶液中の分析物を検出する方法であって、請求項1~21のいずれか一項に記載の再使用可能なカートリッジの前記マトリックスを、前記分析物を含む溶液と接触させることと、前記カートリッジから前記分析物を任意に溶出させることと、を含む、方法。
【請求項29】
前記分析物が、ペプチド又はプロテインである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記分析物が、MHC-I分子である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記溶液が、生体液又は細胞溶解物である、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記溶液が、前記マトリックスと接触する前に細胞残屑及び膜状物質を除去するためにフィルタにかけられるか又は処理される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記カートリッジが、前記方法での使用前に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、又は100回前記分析物を検出するために以前に使用されている、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
分析物の溶出に続いて、前記カートリッジが、請求項22~26のいずれか一項に記載の方法によって処理される、請求項28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも1つの、請求項1~21のいずれか一項に記載の再使用可能なカートリッジを含む、キット。
【請求項36】
(a)少なくとも1つの緩衝液、(b)検出分子を含まないか若しくは制御検出分子を含む少なくとも1つの制御カートリッジ、(c)保存及び再使用のためにカートリッジを調製するための試薬、並びに/又は(d)使用説明書、を更に含む、請求項35に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月20日に出願された米国仮出願第63/116,575号の優先権の利益を主張し、その全体が任意の目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、抗体によって認識される抗原などの試料中の分析物の検出又は濃縮のための、抗体などの検出分子を含むマトリックスを含む再使用可能かつ乾燥可能なカートリッジを調製する方法に関する。いくつかの実施形態では、カートリッジは、マトリックスを保持するチューブ又はウェルを含む。いくつかの実施形態では、マトリックス又は関連するカートリッジは、湿潤又は乾燥保存されてもよい。本開示はまた、カートリッジ及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
溶液試料中の特定の分析物を検出するために、様々な市販のマトリックスを使用することができる。例えば、プロテインA、プロテインG、及び/又はプロテインLでコーティングされた材料を含むマトリックスを使用して、マトリックス上の抗体定常領域を捕捉し、溶液中の他の成分と比較してそれらを検出し濃縮することができる。マトリックスは、例えば、試料中の抗原分析物を検出又は濃縮するために、直接又はマトリックス上のプロテインA、プロテインG、及び/若しくは又はプロテインLを介して抗体でコーティングすることができる。例えば、それらの抗原に対する抗体を検出又は濃縮するために、マトリックスは、抗原でコーティングされ得る。ハプテンでコーティングされたマトリックスを使用して、溶液中の分析物を検出することもできる。樹脂、ビーズなど、マトリックスを形成する材料は様々である。
【0004】
しかし、そのようなマトリックスを保持する多くのマトリックス及びカートリッジは、例えば、溶液中、特に細胞溶解物中の分析物を検出するために使用されると、効率的に再使用することができず、単回使用後に廃棄される。その結果、例えば定期的なスクリーニング実験でのそのようなカートリッジの使用は、カートリッジをコーティングするためのプロテイン試薬を大量に連続的に入手する必要があり、新鮮なカートリッジを定期的に調製する必要があるため、かなり時間がかかるので、非常に費用がかかる可能性がある。例えば、特定の検出分子を、調製し、使用され得る前にマトリックスに結合させる必要がある場合があり、これにはいくつかのプロセス工程が必要となる場合がある。また、市販の抗体又は抗原などの必要な試薬のいくつかは、十分なコーティングされたマトリックスを調製するのに必要な量で購入するのに非常に費用がかかる場合がある。したがって、マトリックスが再使用され得る場合、多くの時間及びリソースが節約され得る。
【0005】
本明細書の開示は、とりわけ、細胞溶解物などの複合体溶液中を含む溶液中の分析物の検出、並びに関連する再使用可能なカートリッジのために、例えば数回、再使用可能であり、また取り扱いを容易にするために使用間で乾燥状態で保存することができるマトリックスを含むカートリッジを調製するための方法を記載する。本明細書の開示はまた、生体液及び細胞溶解物中の主要組織適合性複合体クラスI(MHC-I)分子及び他のプロテインなどの溶液試料中の特定の分析物の検出のために、本明細書に記載のカートリッジを使用する例示的な方法を記載する。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、とりわけ、溶液中の分析物を検出するための再使用可能なカートリッジを含み、カートリッジは、a)マトリックスと、b)マトリックスに結合した検出分子であって、分析物に特異的に結合し、マトリックスに任意に架橋された、検出分子と、c)少なくとも1つの凍結保護剤と、を含み、カートリッジは、溶液中の分析物の検出のために少なくとも10、20、50、又は100回使用することができ、各使用後、マトリックスは、乾燥状態で凍結保護剤と共に任意に保存される。いくつかの態様では、カートリッジは、両端が開口したチューブ、一端が開口したチューブ、ウェル、ウェルを有するか若しくは有しないプレート、又はマトリックスを含むことが可能なチップである。いくつかの態様では、マトリックスは、シリカ又はアガロースを含む粒子(例えば、ビーズ、グレイン、チップ又はペレット)を含み、粒子は任意に磁性である。場合によっては、マトリックスは、プロテインA、プロテインG、及び/又はプロテインLを含む。場合によっては、検出分子は、抗体である。場合によっては、検出分子は、マトリックスに架橋される。場合によっては、2種類以上の検出分子、例えば溶液中の2つの異なる抗原分析物を検出するための2つの異なる抗体が、マトリックスに結合している。いくつかの態様では、検出分子は、ジメチルピメリミデート(DMP)、シアネートエステル、NHSエステル、アズラクトン、カルボニルジイミダゾール(CDI)、マレイミド、ヨードアセチル、ピリジルジスルフィド、ヒドラジド、又はカルボジイミドから選択される架橋剤で前記マトリックスに架橋される。いくつかの態様では、マトリックス上の検出分子によって検出可能な分析物は、プロテイン又はペプチドである。例えば、場合によっては、分析物は主要組織適合性複合体I(MHC-I)分子である。場合によっては、カートリッジは、細胞溶解物又は生体液中のプロテイン分析物の検出に少なくとも10回使用することができる。場合によっては、再使用可能なカートリッジは乾燥状態で保存される。いくつかの態様では、カートリッジは、調製後に乾燥状態で保存され、次いで、各使用後に湿潤状態で保存後、細胞溶解物又は生体液中のプロテイン分析物の検出のために少なくとも10回使用され得る。いくつかの態様では、カートリッジは、各使用後に乾燥状態で保存後、細胞溶解物又は生体液中のプロテイン分析物の検出のために少なくとも10回使用され得る。いくつかの態様では、カートリッジは、調製後に乾燥状態で保存され、次いで、各使用後に湿潤状態で保存後、細胞溶解物又は生体液中のプロテイン分析物の検出のために少なくとも20回使用され得る。場合によっては、カートリッジは、各使用後に乾燥状態で保存後、細胞溶解物又は生体液中のプロテイン分析物の検出のために少なくとも20回使用され得る。いくつかの態様では、カートリッジは、調製後に乾燥状態で保存され、次いで、各使用後に湿潤状態で保存後、細胞溶解物又は生体液中のプロテイン分析物の検出のために少なくとも50回使用され得る。場合によっては、カートリッジは、各使用後に乾燥状態で保存後、細胞溶解物又は生体液中のプロテイン分析物の検出のために少なくとも50回使用され得る。いくつかの態様では、カートリッジは、調製後に乾燥状態で保存し、次いで、各使用後に湿潤状態で保存後、細胞溶解物又は生体液中のプロテイン分析物の検出のために少なくとも100回使用され得る。場合によっては、カートリッジは、各使用後に乾燥状態で保存後、細胞溶解物又は生体液中のプロテイン分析物の検出のために少なくとも100回使用され得る。いくつかの態様では、マトリックスは、酸性pHで保存される。いくつかの態様では、マトリックスは、2~8℃で保存される。いくつかの態様では、マトリックスは、湿潤状態で保存される。いくつかの態様では、マトリックスは、酸性pHで、任意に2~8℃で保存される。場合によっては、凍結保護剤は、スクロース、トレハロース、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(MPD)、又はジメチルスルホキシド(DMSO)のうちの1つ以上を含む。
【0007】
本開示はまた、例えば、上記又は本明細書に別途記載されるように、再使用のための以前に使用されたカートリッジを調製する方法であって、分析物がカートリッジから溶出した後、1~10%酢酸、1%ギ酸、又は1%トリフルオロ酢酸(TFA)中でマトリックスを洗浄することと、凍結保護剤を含む緩衝液中でマトリックスを洗浄することと、マトリックスを乾燥させることと、を含む方法に関する。いくつかの態様では、凍結保護剤は、スクロース、トレハロース、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(MPD)、又はジメチルスルホキシド(DMSO)の1つ以上を含む。場合によっては、カートリッジを少なくとも30℃に加熱し、続いて室温で少なくとも1時間保存することによって、マトリックスを乾燥させる。場合によっては、カートリッジを37℃に加熱し、続いて室温で少なくとも1時間保存することによってマトリックスを乾燥させる。場合によっては、マトリックスを乾燥させ、カートリッジを再使用するまで2~8℃で乾燥状態で保存する。
【0008】
本開示は更に、マトリックスを含むカートリッジを得ることと、マトリックスを検出分子と接触させることと、検出分子をマトリックスに架橋することと、を含む、上記又は本明細書に別途記載されるように、再使用可能なカートリッジを調製する方法に関する。
【0009】
本開示は更に、溶液中の分析物を検出する方法であって、上記又は本明細書に別途記載される再使用可能なカートリッジのマトリックスを、分析物を含む溶液と接触させることと、任意に、分析物をカートリッジから溶出させることと、を含む方法に関する。いくつかの態様では、分析物は、ペプチド又はプロテインである。いくつかの態様では、分析物は、MHC-I分子である。場合によっては、溶液は、生体液又は細胞溶解物である。場合によっては、溶液は、マトリックスと接触する前に細胞残屑及び膜状物質を除去するためにフィルタにかけられるか又は処理される。場合によっては、カートリッジは、方法での使用前に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、又は100回前記分析物を検出するために以前に使用されている。場合によっては、分析物の溶出に続いて、カートリッジは、本明細書で以前に使用されたカートリッジ、例えば上記のカートリッジを調製する方法によって処理される。
【0010】
本開示はまた、上記のような、少なくとも1つの、本明細書に記載の再使用可能なカートリッジを含むキットを包含する。いくつかの態様では、キットは、本明細書に記載の少なくとも1つのカートリッジと、(a)少なくとも1つの緩衝液、(b)検出分子を含まないか若しくは制御検出分子を含む少なくとも1つの制御カートリッジ、(c)保存及び再使用のためにカートリッジを調製するための試薬と、並びに/又は(d)使用説明書、を含む。
【0011】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、いずれも例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、特定の実施形態又は態様を示し、説明とともに、本明細書に記載の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本米国仮出願には、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれている。本米国仮出願が、本米国仮出願に対する優先権を主張する非仮又は国際出願の公開に起因して将来公衆に利用可能となる場合には、カラー図面を伴う本仮出願の写しが、請求及び必要な料金の支払いに応じて特許庁によって提供される。
【0013】
図1A~Eは、MHC-I複合体を検出する方法における本明細書に記載の再使用可能なカートリッジの使用の概要を示す。
【
図1A】MHC-I関連ペプチド(MAP)内因性プロセシング及び提示濃縮ワークフロー、並びに質量分析に基づく分析及び定量化における段階の概要を提供する。標準的な提示では、細胞内プロテインは、細胞内でポリユビキチン化され、分解のためにプロテアソームに移動される。得られたペプチド断片は、TAPプロテインを介して小胞体に輸送される。次いで、これらをMHC-I複合体(MHC-I重鎖及びB2Mからなる)にロードし、ERAPによって更にトリミングし、安定なMHC-Iペプチド複合体を細胞表面に移動させる。各固有のペプチドのディスプレイレベルは、所与の細胞におけるその存在量、分解速度、及びMHC-I対立遺伝子に対する親和性によって決定される。濃縮は、MHC-I複合体を含有する溶解物を抗MHC-I抗体を含有する固体支持体に適用し、未結合の夾雑物を洗浄し、次いで、酸処理によってMHC-Iプロテイン及び関連ペプチドを溶出することを含む。分析は、ペプチドの単離及び脱塩、クロマトグラフィー分離、並びに質量分析による分析、続いて同定及び定量化工程に関わるデータ処理を含む。
【
図1B】小及び大容量のカートリッジを示し、組換えプロテイン容量、細胞存在量、及びカスタマイズされた抗体カートリッジにロードされる量を含む、小及び大容量のカートリッジ特性の表を提供する。
【
図1C】種及び有効細胞数によって分離された、標準的な単回使用のAssayMAP(商標)濃縮ワークフローを用いて同定された固有のMHC-Iペプチドを示す。
【
図1D】抗体カートリッジ再使用スキーム及び循環濃縮ワークフローを提供する。プロテインAカートリッジに抗体をロードし、架橋し、MHC-I複合体を濃縮するために使用し、酸溶出の前に洗浄する。次いで、酸及びTBSによるプライミングによってカートリッジを浄化し、4℃で保存し、同様の方法で再使用する。
【
図1E】GRANTA溶解物を使用して、常に湿潤しているか、乾燥してから再湿潤したカートリッジを使用して、カスタム抗体カートリッジの連続使用後に観察された固有のペプチド数を示す。
【0014】
【
図2】再使用された常に湿潤しているか、乾燥してから再湿潤したカートリッジを使用して、濃縮された分析物とを比較するゲル電気泳動を示す。レーン1~3は、左において、精製HLAプロテイン標準の滴定を示す。Y軸上の数字は、キロダルトン単位の分子量ラダーバンドの位置を示す。レーン4~6は、湿潤保存カートリッジから溶出したHLA標準のレベルを示し、右側の3つのレーン7~9は、乾燥保存/再湿潤カートリッジから溶出したHLAのレベルを示す。レーン4~9のそれぞれにおける同様のレベルは、乾燥保存及び再湿潤カートリッジが、常に湿潤保存されたカートリッジと同様に、標準プロテインを検出又は濃縮することができることを示している。
【0015】
【
図3】以前に使用された大容量抗体架橋カートリッジ上の組換えMHC-I複合体の検量線及び推定容量を作成するために使用されたクーマシー電気泳動ゲルデータを示す。
【0016】
図4A~Bは、カートリッジからのMHC-I分子の濃縮に対する架橋の効果を示す。
【
図4A】組換えHLA及びB2Mプロテイン(MHC-I分子のサブユニット)並びに試料ペプチド分子及びMHC-I分子を認識する抗体がそれぞれ、カートリッジ上のMHC-I分子の濃縮後に液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)手順で溶出するはずの時間を示す。
【
図4B】MHC-I認識抗体が架橋されている(上)又は架橋されていない(下)カートリッジでのMHC-I濃縮後のLC-MS実行の比較を示す。結果は、架橋がMHC-I濃縮に明らかな影響を及ぼさないことを示す(「架橋」の最大ピークを「非連結」の直下のピークのサイズと比較する)。抗体ピーク(「非連結」の最大ピーク)は架橋溶出では見えず、抗体保持を示している。カラムからの第2の溶出(溶出2)は、架橋がカートリッジ材料への更なる非特異的結合ももたらさないことを示す。
【0017】
【
図5】グラフのバーの下及び下の実施例に記載されている様々な条件下でスピンフィルタの上部に保持された体積に基づく溶解物の粘度の分析を表す棒グラフを示す。記載の条件下(500μLを0.45umのCostarフィルタ上に置き、4℃で1分間16,000gで回転させた)では、水及び溶解緩衝液は保持された体積を示さず(陰性対照)、室温で1日経過したMC38溶解物(B緩衝液1mL当たり50M細胞、陽性対照)は、400μL超の保持を示す。新鮮なGRANTA溶解物(B緩衝液1mL当たり50M細胞)は保持を示さないが、室温(典型的な最適化されていないロード条件)で4時間は、粘度の大きな増加を示す。温度を4℃に下げると、18時間にわたって維持される様式で凝集が減少する。溶解物をPBS、スクロース(1M出発、最終200mM)又はグリセロール(グリセロール出発50%、最終10%)で急速凍結し、次いで解凍した場合、室温で4時間後でも粘度は低い(しかしながら、室温で24時間は粘度の大きな増加をもたらす)。スクロースとグリセロールの保存を組み合わせると(更に希薄な溶解物溶液をもたらす)、すぐに、又は室温で4時間後に、明らかな保持なしに凍結解凍が可能になる。
【0018】
図6A~
図6Hは、GRANTA溶解物の同じバッチの異なるカートリッジ濃縮物間の組成の重複を示すいくつかのベン図を示す(実施例2参照)。各データセット中のペプチドを、TICシグナルを使用して存在量について重み付けしたが(はるかに豊富なペプチドが計算された重複により寄与するように)、存在量については補正しなかった(LC-MS/MS実行間で異なる量のシグナルが計算において保存されるように)。数字は、MHC-I複合体を含む溶液からのMS/MS実行において検出された固有のペプチドの数を表す。ここで行われる比較には、「湿潤」カートリッジと「乾燥」カートリッジとの間、同じタイプの複製カートリッジの間、及び過剰な再使用が含まれる。
【
図6A】具体的に、以前に湿潤保存されたカートリッジ(E1W1)の最初の使用(第1の溶出又はE1)と、乾燥保存されたもの(E1D1)とを比較する。
【
図6B】異なるセットの湿潤保存カートリッジ及び乾燥保存カートリッジ(W2/D2及びW3/D3)を使用した同様の比較を示す。
【
図6C】異なるセットの湿潤保存カートリッジ及び乾燥保存カートリッジ(W2/D2及びW3/D3)を使用した同様の比較を示す。
【
図6D】すべて乾燥保存された(D1、D2、D3)、同じタイプの3つの異なるカートリッジの最初の溶出(すなわち、第1の使用;E1)からの結果の重複を示す。
【
図6E】3つの異なる湿潤保存カートリッジ(W1、W2、又はW3)の第2の溶出(E2)との重複を示す。
【
図6F】3つの異なる乾燥保存カートリッジ(D1(
図6F)、D2(
図6G)、D3(
図6H))での第1、第5及び第9の使用(E1、E5、及びE9)の比較を示す。
【
図6G】3つの異なる乾燥保存カートリッジ(D1(
図6F)、D2(
図6G)、D3(
図6H))での第1、第5及び第9の使用(E1、E5、及びE9)の比較を示す。
【
図6H】3つの異なる乾燥保存カートリッジ(D1(
図6F)、D2(
図6G)、D3(
図6H))での第1、第5及び第9の使用(E1、E5、及びE9)の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
別段の定義がない限り、本発明に関連して使用される科学的及び技術的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。
【0020】
本出願では、「又は」の使用は、特に明記しない限り、「及び/又は」を意味する。多数項従属請求項の文脈では、「又は」の使用は、1つよりも多くの先行する独立請求項又は従属請求項のいずれかのみを指す。また、「要素」又は「構成成分」などの用語は、特に明記しない限り、1つの単位を含む要素及び構成成分と、1つよりも多くのサブユニットを含む要素及び構成成分の両方を包含する。
【0021】
本明細書に記載される場合、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率の範囲、又は整数範囲は、別途指示がない限り、列挙された範囲内のあらゆる整数、及び適切な場合には、それらの分数(整数の10分の1及び100分の1など)の値を含むと理解されるべきである。
【0022】
単位、接頭辞、及び記号は、国際単位系(SI)で受け入れられている形式で示されている。数値範囲は、範囲を定義する数を含む。本明細書で提供される見出しは、本明細書全体を参照することによって有することのできる本開示の種々の態様の限定ではない。したがって、以下に定義される用語は、明細書全体を参照することによって更に詳細に定義される。
【0023】
本開示に従って利用される場合、以下の用語は、他に別段の指示がない限り、以下の意味を有するものと理解すべきである。
【0024】
本明細書で使用される「試料」は、検出又は濃縮のための分析物を含み得る任意の試験片を指す。本明細書における「溶液」は、液体形態の試料を指す。
【0025】
本明細書における「分析物」は、最も広い意味で使用され、試料又は溶液中に見出すことができ、マトリックス上の検出分子に結合(すなわち、によって認識されるか、又は検出される)し、それによって検出又は濃縮されることを意図した分子又は物質を指す。分析物は、場合によってはプロテイン若しくはペプチド又は別の種類の生物学的分子であり得る。
【0026】
本明細書で使用される「検出分子」は、分析物に直接又は間接的に特異的に結合する任意の分子である。検出分子は、例えば、抗体、抗原分子、ハプテン分子、又は分析物に特異的に結合し、マトリックスと適合する任意の分子であり得る。本明細書で使用される場合、マトリックスに結合した「検出分子」は、単一の分子種の分子であってもよく、あるいは2つ以上の異なる分子種の分子の混合物であってもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、分析物及び/又は検出分子は、プロテイン又はポリペプチド又はペプチド分子であり得る。「ポリペプチド」及び「プロテイン」という用語は互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。このようなアミノ酸残基のポリマーは、天然及び/又は非天然アミノ酸残基を含有し得、限定されないが、アミノ酸残基のペプチド、オリゴペプチド、二量体、三量体、及び多量体が挙げられる。この用語はまた、例えば、グリコシル化、シアリル化などの修飾を有するか、又は他の分子と複合体化したアミノ酸のポリマーを含む。本明細書における「ペプチド」は、4~50アミノ酸程度などのアミノ酸の比較的短いポリマーである。
【0028】
プロテインは、場合によっては、抗体であり得る。本明細書における「抗体」又は「Ab」という用語は、最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体(「mAb」)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、抗体コンジュゲート、及び抗原結合断片を含むがこれらに限定されない様々な抗体構造を包含する。本明細書で使用される場合、この用語は、少なくとも重鎖の相補性決定領域(CDR)1、CDR2、及びCDR3と、少なくとも軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3とを含む分子であって、抗原に結合することができる分子を指す。この用語は、抗原結合断片も包含する。「抗原結合断片」という用語は、Fv、一本鎖Fv(scFv)、Fab、Fab’、及び(Fab’)2などの抗原に結合することができる抗体の断片を含むが、これらに限定されない。対照的に、「完全長抗体」は、その正常な可変領域部分及び定常領域部分のすべてを含む抗体分子を指す。抗体コンジュゲートは、別の分子に直接又は間接的に結合した完全長抗体又は抗原結合断片を含み得る。他のプロテイン及びペプチドと同様に、いくつかの実施形態では、抗体は、グリコシル化などの様々なタイプの翻訳後修飾を含み得る。
【0029】
本明細書における「検出」は、最も広い意味で使用され、溶液中の他の分子に対する溶液中の分析物の選択的結合を包含し、例えば、分析物が溶液中に存在するかどうかを判定するため、並びに分析物を溶液の他の成分から単離し、それによって分析物を濃縮するために使用される。場合によっては、本明細書の方法は、分析物の存在を検出するために使用される。場合によっては、本明細書の方法は、例えば、溶液中の他の分子と比較して分析物を「濃縮」又は「単離」するために使用され、その結果、更なる分析が、分析物に対して実行され得る。「濃縮する」及び「単離する」という用語は、本明細書のこの文脈において互換的に使用される。
【0030】
「カートリッジ」は、「マトリックス」を含有又は保持する製品全体を指すために広義に使用される。「カートリッジ」は、任意の有用な形状又は構造を有してもよく、ガラス又はプラスチック材料又はポリマー材料などの任意の有用な材料から作製されてもよい。「カートリッジ」は、マトリックスを封入するか又は含み、所定の位置に保持することができるように構成又は成形された任意の有用な材料を含むことができる。一般に、カートリッジは、流体がマトリックスを横切って及び/又はマトリックスを通って流れることを可能にする。いくつかの実施形態では、マトリックスは、自動液体分注装置などを介して、使用中にカートリッジとの間での液体溶液の移動を容易にするために、両端に開口部(例えば、ピペットチップ、毛細管、カラム、又は他の構造体のように、)を有するチューブ形状又は円筒状カートリッジ内に配置されてもよい。場合によっては、カートリッジは、U字形を有してもよく、又はマトリックスの一端からの流体の移動を可能にするウェルを含んでもよく、又は例えば、その表面を横切って流体が流れることを可能にする、マトリックスが中又は上に位置するプレート状又は平坦なチップ状構造を有してもよい。
【0031】
「マトリックス」は、検出分子が結合し得る物質を広く指す。本明細書における適切なマトリックスには、C4、C8若しくはC18などのクロマトグラフィーマトリックス、又はシリカ、ポリマービーズ及び/若しくは金属ビーズなどの様々な種類のビーズ、粒子若しくは樹脂が含まれる。場合によっては、マトリックスは、検出分子を認識し得る抗体、抗原、抗体定常領域結合プロテイン、又はハプテンなどのプロテインでコーティングされてもよい。例えば、プロテインA、G又はLは、抗体検出分子を認識するためにマトリックス上に存在することができ、又はストレプトアビジンは、ビオチン化検出分子を認識するためにマトリックス上で使用することができる。ビーズ又は樹脂粒子で構成されるマトリックスにおいて、粒子は、球形若しくはほぼ球形のビーズなどの検出分子、又はペレット、チップ、タブレットなどの他の形状を保持することができる限り、任意の適切な形状又はサイズであり得る。いくつかの実施形態では、マトリックス粒子は磁性であり得る。
【0032】
検出分子は、共有結合的又は非共有結合的にマトリックスに「結合」され得る。いくつかの実施形態では、検出分子をマトリックスに架橋するために架橋試薬を使用することができる。結合はまた、直接的又は間接的であってもよく、すなわち、マトリックス材料と検出分子との間に介在分子が存在しないか、又は存在するかのいずれであってもよい。
【0033】
カートリッジは、第1の溶液中の分析物を検出するために使用することができ、次いで洗浄され、再平衡化されて、同じ溶液を使用する複数の試験で分析物を検出する能力に有意な観察可能な差なしに、第2の溶液中の分析物を検出することができる場合、「再使用可能」であり得る。
【0034】
本明細書のマトリックスは、湿潤又は乾燥状態で保存され得る。「湿潤状態」での保存は、マトリックスが緩衝溶液などの液体溶液中に浸漬されて維持されることを意味する。「乾燥状態」での保存は、保存中にマトリックスが少なくとも部分的に空気に曝されること、又はそうでなければ保存前又は保存中に液体をマトリックスから蒸発させることを意味する。
【0035】
検出分子と分析物との間の結合に関して本明細書で使用される「特異的結合」又は「に特異的に結合する」又は「を特異的に認識する」又は同様の用語は、分子間の結合が、分析物と検出分子との間の結合が非特異的結合に起因する場合よりも高い親和性であることを意味する。
【0036】
「質量分析」又は「MS」は、試料中の1つ又は複数の分子の質量電荷比(m/z)を測定する技法を指す。本明細書で使用される場合、「タンデムMS」又は「MS/MS」は、単一のイオン、複数のイオン、又は全質量エンベロープ(前駆体)が、断片化チャンバに移動され、断片化された産物が、次いで、質量分析装置に送られる、プロセスを指す。質量分析計の設計に応じて、断片化事象は、単一の質量分析装置の前、2つ若しくは複数の異なる分析装置の間、又は単一の質量分析装置内に発生し得る。
【0037】
初期使用及び再使用のためのカートリッジ及びその調製方法
本開示は、とりわけ、溶液中の分析物を検出するための再使用可能なカートリッジに関し、カートリッジは、カートリッジによって、又はカートリッジ内に含まれる構造によって定位置に任意に保持されたマトリックスを含み、分析物を特異的に認識する検出分子は、例えばマトリックス中の物質への非共有結合によってマトリックスに結合される。場合によっては、例えば、様々な処理中にマトリックスから脱落するのを回避するために、検出分子をマトリックスに架橋することができる。
【0038】
本明細書の再使用可能なカートリッジは、分析物の検出を行うことができるようにマトリックスを保持するための任意の適切な形状であってもよい。いくつかの実施形態では、開始カートリッジは、マトリックスを保持するように作用するチューブ又は円筒状の構成要素を含んでもよい。例えば、カートリッジは、遠心分離又は重力流のいずれかによって、内部に埋め込まれたマトリックスを横切って流体が流れることを可能にするスピン若しくは重力流カラム又はピペットチップ若しくはクロマトグラフィーカラムの形状であってもよい。あるいは、カートリッジは、マトリックスを保持する軟質チューブ又は毛細管を含んでもよい。場合によっては、マトリックスは、溶液成分が自由に通過することを可能にするのに十分に粗いが、マトリックス材料を定位置に保持するのに十分に細かいフィルタによって囲まれてもよい。いくつかの実施形態では、カートリッジは、一端が開口したチューブ状若しくはウェル状の構造、又はマトリックスを定位置に保持するプレート状構造又は平坦なチップ状構造を有してもよい。例えば、チューブ、ウェル又はプレートは、緩衝液及び分析物を含有する溶液との接触及びそれらの溶液の除去を可能にするために、一端又は片側が開口していてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、1つのカートリッジを使用していくつかの異なる検出反応を行うことができるように、単一のカートリッジは、マトリックスを含む2つ以上の空間、空洞、位置又はウェルを含む。他の実施形態では、単一のカートリッジは、異なる検出反応を並行して実行するために複数のカートリッジが必要とされるように、単一のマトリックス成分を含む。いくつかの実施形態では、カートリッジは、例えば、自動化された取り扱い及び液体分注のために、96-試料又は384-試料システムなどのマルチ試料システムに配置することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、カートリッジは、例えば、10μL~500μL、2μL~50μL、2μL~25μL、2μL~10μL、10μL~50μL、20μL~30μL、20μL~100μL、20μL~200μL、又は50μL~500μL、又は100μL~1mL、又は200μL~1mLなどの2μL~1mLの体積容量を有する。いくつかの実施形態では、カートリッジは、例えば、5μL又は10μL又は20μL又は25μL又は50μL又は100μLの体積容量を有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、マトリックスは、検出分子が結合され得る任意の形状の粒子、例えばグレイン又はビーズ又はチップ又は球又はペレット又はタブレットなどを含む。粒子は、いくつかの実施形態では、シリカ又はアガロースなどの物質で作製されてもよい。いくつかの実施形態では、粒子は、例えば、必要に応じてアッセイ中に移動させることができるように、又はカートリッジ内の所定の位置に保持することができるように、磁性であってもよい。例えば、場合によっては、磁性粒子は、アッセイ中にカートリッジの内外で移動され得る。他の実施形態では、マトリックスは、検出分子が結合され得るフィルム又はシートである。いくつかの実施形態では、マトリックスは、例えばフィルタを介して(例えば、各端部に開口部を有するチューブにおいて)、又は重力によって(例えば、一端に開口部を有するチューブにおいて)、又はカートリッジ表面との疎水性若しくは静電相互作用(例えば、プレート又はチップ上に配置されたマトリックスシート又はフィルム)によってカートリッジ内の定位置に保持することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、検出分子は、例えば非共有結合によってマトリックスに直接結合する。いくつかの実施形態では、それらはマトリックス中の分子への共有結合を介して結合している。いくつかの実施形態では、検出分子は、それ自体がマトリックスに結合している中間分子を介して間接的にマトリックスに結合している。例えば、いくつかの実施形態では、マトリックスは、ビオチン化分子に結合する特定の種類の検出分子、例えばストレプトアビジンに結合する分子、若しくはプロテインA、プロテインG、若しくはプロテインLなどの免疫グロブリンを認識する分子、又はこれらの分子の2つ以上の組み合わせを含む。例えば、プロテインAを含むマトリックスを抗体検出分子と接触させることにより、マトリックス上のプロテインAによる結合を介して抗体検出分子をマトリックス上に組み込むことが可能になる。いくつかの実施形態では、マトリックスはストレプトアビジン又はプロテインA及び/若しくはGなどの試薬を含み得るが、これらの分子は、特定の分析物を特異的に認識するために使用されるのではないため、本明細書で使用されているように、本明細書の検出分子が結合しているだけの分子であるため、この用語が本明細書で使用される「検出分子」ではない。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、マトリックスがプロテインAを含む場合、検出分子は、プロテインAによってマトリックスに結合した抗体又は他の免疫グロブリン若しくはFc含有分子を含み得る。プロテインAは、検出分子自体としてではなく、マトリックス粒子と検出分子との間の中間結合として使用される。
【0043】
いくつかの実施形態では、マトリックスに添加された検出分子もマトリックスに架橋され得る。例えば、ジメチルピメリミデート(DMP)、又はシアネートエステル、NHSエステル、アズラクトン、カルボニルジイミダゾール(CDI)、マレイミド、ヨードアセチル、ピリジルジスルフィド、ヒドラジド、若しくはカルボジイミド試薬などの架橋試薬、又はマトリックス上に親和性試薬を固定化するのに適した他の試薬を使用して、検出分子をマトリックスに結合させることができる。(分子をアガロースマトリックスに結合させるためにこれら及び更なる架橋試薬をどのように使用し得るかの更なる考察については、例えば、www.thermofisher.com/us/en/home(slash)life-science(slash)protein-biology(slash)protein-biology-learning-center(slash)protein-biology-resource-library(slash)pierce-protein-methods(slash)covalent-immobilization-affinity-ligands.htmlを参照のこと。)他の実施形態では、カートリッジの予想される使用及び検出分子の性質に応じて、架橋は必要ではない場合がある。いくつかの実施形態では、DMPが架橋剤として使用される場合、1~10mM DMP、1~5mM、1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、又は10mM DMPが、検出分子をマトリックスに架橋するために使用される。本明細書のいくつかの実施形態では、架橋反応に使用されるDMPの濃度は、反応に通常使用される濃度の約1/4~1/5である。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書のカートリッジはまた、スクロース、トレハロース、エチレングリコール又はプロピレングリコールなどのグリコール、グリセロール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(MPD)、又はジメチルスルホキシド(DMSO)などの少なくとも1つの凍結保護剤を含む。例えば、凍結保護剤は、例えば、保存中、例えば乾燥状態での保存中に、検出分子及び/又は他のマトリックス成分を損傷又は変性から保護するためにマトリックスと接触していてもよい。場合によっては、凍結保護剤は、グルコース及び/又はトレハロースを含む。場合によっては、凍結保護剤は、トレハロースを含む。
【0045】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書の再使用可能なカートリッジは、(a)マトリックスと、b)マトリックスに結合した検出分子であって、分析物に特異的に結合し、マトリックスに任意に架橋された検出分子と、を含む。いくつかの実施形態では、本明細書の再使用可能なカートリッジは、(a)マトリックスと、b)マトリックスに結合した検出分子であって、分析物に特異的に結合し、マトリックスに任意に架橋される検出分子と、(c)少なくとも1つの凍結保護剤と、を含む。
【0046】
分析物検出のための特定の市販のカートリッジ及びマトリックスは、一般に、1回だけ使用され、廃棄されることが意図されており、使用前に湿潤状態に維持されることも意図されている。(例えば、AssayMap(登録商標)Bravoカートリッジ、Agilentを参照されたい。)本開示は、驚くべきことに、本明細書に記載のカートリッジが、細胞培養上清又は細胞溶解物中の分析物を検出するために、有意なシグナル損失なしに何度も再使用され得ること、及びカートリッジが乾燥状態で保存され得ることを示す。いくつかの実施形態では、カートリッジは、乾燥状態で保存される。いくつかのそのような場合、カートリッジは、凍結保護剤を含み、乾燥状態で保存される。場合によっては、カートリッジは、冷蔵庫又は低温室などの2~8℃、又は4℃などの乾燥状態で保存される。場合によっては、乾燥状態で保存されたカートリッジは、分析物を検出するために使用する前に再湿潤される。場合によっては、カートリッジマトリックスは、少なくとも30℃、例えば30~45℃、30~37℃、30℃、又は37℃に、例えば少なくとも30分間、30~60分間、又は60~120分間加熱することによって乾燥され、次いで、室温で少なくとも1時間、例えば少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも8時間、少なくとも12時間、又は一晩冷却された後、再使用前に任意に低温で保存される。いくつかの実施形態では、カートリッジは湿潤状態で保存され、例えばマトリックスは緩衝溶液に浸漬される。場合によっては、カートリッジは、冷蔵庫又は低温室などの2~8℃、又は4℃などの湿潤状態で保存される。いくつかのそのような場合、カートリッジは、凍結保護剤を含み、湿潤状態で保存される。
【0047】
いくつかの実施形態では、カートリッジは、7.0以下のpHで上記のように保存される。いくつかの実施形態では、カートリッジは、酸性pH(すなわち、7.0未満のpHで)で保存される。いくつかの実施形態では、カートリッジは、pH4~7、例えばpH4~6、pH4~6.5、pH4.5~6.5、pH4.8~6.8、pH5~7、pH4~5、pH5~6、pH6~6.5又はpH6~7で保存される。いくつかの実施形態では、カートリッジは、EDTA及び/又はアジ化ナトリウムを含む緩衝液に保存される。
【0048】
本明細書のいくつかの実施形態では、カートリッジは、溶液中の分析物の検出のために少なくとも1回以前に使用されたカートリッジである。例えば、いくつかの実施形態では、カートリッジを使用して溶液中の分析物を検出し、検出された分析物を溶出してカートリッジから除去し、カートリッジマトリックスを、使用間の保存のために凍結保護剤を含む緩衝液と接触させる。いくつかの実施形態では、緩衝液は、任意に酸性pHであり、及び/又はEDTA及び/又はアジ化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、検出能力の著しい観察可能な低下なしに、カートリッジを少なくとも9回再使用することができる。例えば、場合によっては、カートリッジは、最初の実行と最後の実行との間に検出される試料からの分析物の組成又は量の著しい変化なしに、同じ試料で少なくとも9回再使用され得る。(例えば、
図6A~
図6Hを参照されたい。)いくつかの実施形態では、検出能力の著しい観察可能な低下なしに、カートリッジを少なくとも10、20、50、又は100回再使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも10、20、50、又は100回の使用後、抗体検出分子を含むマトリックスを有するカートリッジは、最初の使用で溶出された分析物と比較して、細胞溶解物又は生体液から少なくとも90%のプロテイン分析物を溶出することができるままである。いくつかの実施形態では、抗体検出分子を含むマトリックスを有するカートリッジは、少なくとも10、20、50、又は100回の使用後、最初の使用で溶出した分析物と比較して、細胞溶解物又は生体液から少なくとも95%のプロテイン分析物を溶出することができるままである。いくつかの実施形態では、少なくとも10、20、50、又は100回の使用後、抗体検出分子を含むマトリックスを有するカートリッジは、その最初の使用におけるカートリッジの効率の少なくとも90%で、生物学的試料中のプロテイン分析物の濃縮物を検出することができるままである。いくつかの実施形態では、少なくとも10、20、50、又は100回の使用後、抗体検出分子を含むマトリックスを有するカートリッジは、その最初の使用におけるカートリッジの効率の少なくとも95%で、生物学的試料中のプロテイン分析物の濃縮物を検出することができるままである。いくつかのそのような場合、カートリッジは、各使用の間に凍結保護剤と共に乾燥状態で保存される。いくつかのそのような場合、カートリッジは、各使用の間に凍結保護剤の有無にかかわらず湿潤状態で保存される。場合によっては、カートリッジは、冷蔵庫又は低温室などの2~8℃、又は使用間の4℃などで乾燥又は湿潤のいずれかで保存される。場合によっては、各使用の間に、酸性pHの緩衝液及び/又はEDTA及び/又はアジ化ナトリウムを含む緩衝液で保存される。
【0049】
いくつかの実施形態では、カートリッジは、溶液中の分析物の検出のために少なくとも2回使用されたものである。いくつかの実施形態では、カートリッジは、溶液中の分析物の検出のために少なくとも3回使用されたものである。いくつかの実施形態では、カートリッジは、溶液中の分析物の検出のために少なくとも4回使用されたものである。いくつかの実施形態では、カートリッジは、溶液中の分析物の検出のために少なくとも5回使用されたものである。いくつかの実施形態では、カートリッジは、溶液中の分析物の検出のために少なくとも6回使用されたものである。いくつかの実施形態では、カートリッジは、溶液中の分析物の検出のために少なくとも7回使用されたものである。いくつかの実施形態では、カートリッジは、溶液中の分析物の検出のために少なくとも8回使用されたものである。いくつかの実施形態では、カートリッジは、溶液中の分析物の検出のために少なくとも9回使用されたものである。いくつかの実施形態では、カートリッジは、溶液中の分析物の検出のために少なくとも10回使用されたものである。いくつかの実施形態では、カートリッジは、溶液中の分析物の検出のために少なくとも20回使用されたものである。いくつかの実施形態では、カートリッジは、溶液中の分析物の検出のために少なくとも50回使用されたものである。いくつかの実施形態では、カートリッジは、溶液中の分析物の検出のために少なくとも100回使用されたものである。いくつかのそのような場合、カートリッジは、以前の使用又は使用後に凍結保護剤と共に乾燥状態で保存されている。いくつかのそのような場合、カートリッジは、各使用後に凍結保護剤の有無にかかわらず湿潤状態で保存されている。場合によっては、カートリッジは、冷蔵庫又は低温室などの2~8℃で乾燥又は湿潤のいずれかで、又は使用間に4℃などで保存されている。場合によっては、各使用の間に、酸性pHの緩衝液及び/又はEDTA及び/又はアジ化ナトリウムを含む緩衝液で湿潤保存される。場合によっては、それは各使用の間に凍結保護剤で乾燥保存されるが、EDTA及び/又はアジ化ナトリウムを含む酸性pHの緩衝液で処理した後に乾燥される。
【0050】
カートリッジが冷蔵庫又は低温室などで2~8℃、又は4℃などで乾燥状態で保存される場合、カートリッジは、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、又は少なくとも6ヶ月間保存されてもよい。場合によっては、凍結保護剤の添加後、乾燥状態で少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、又は少なくとも6ヶ月間、冷蔵庫又は低温室などの2~8℃、又は4℃などで保存することができる。更に、いくつかの実施形態では、乾燥前にEDTA及び/又はアジ化ナトリウムを含む酸性緩衝液で前処理した後、上記条件下で保存することができる。カートリッジが湿潤状態で保存される場合、カートリッジは、EDTA及び/又はアジ化ナトリウムを含む酸性pHの緩衝液中で、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、又は少なくとも1年間、使用間に2~8℃、例えば冷蔵庫又は低温室などで、又は4℃で保存することができる。他の場合には、マトリックスが緩衝液に浸漬されたままであるような条件、すなわち湿潤したままであるような条件で、カートリッジを保存することを条件として、カートリッジを室温でそのような緩衝液に湿潤保存することができる。本開示はまた、使用間で保存するための再使用可能なカートリッジを調製する方法に関する。例えば、いくつかの方法では、事前の分析物検出溶出後、カートリッジを緩衝液、例えば1~10%酢酸、例えば1%、5%、若しくは10%酢酸、1%ギ酸、又は1%トリフルオロ酢酸(TFA)中で少なくとも1回洗浄し、次いでマトリックスを凍結保護剤と、例えばpH7以下の緩衝液中、又はpH4~7の緩衝液中、又はpH4~6、pH4~6.5、pH4.5~6.5、pH4.8~6.8、pH5~7、pH4~5、pH5~6、pH6~6.5、若しくはpH6~7の酸性緩衝液中で接触させる。いくつかの実施形態では、凍結保護剤は、スクロース、トレハロース、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(MPD)、又はジメチルスルホキシド(DMSO)の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、凍結保護剤は、スクロース及び/又はトレハロースを含む。いくつかの実施形態では、凍結保護剤は、トレハロースを含む。いくつかの実施形態では、凍結保護剤含有緩衝液は、EDTA及び/又はアジ化ナトリウムも含む。いくつかの実施形態では、次いで、カートリッジを乾燥させる。場合によっては、カートリッジマトリックスは、少なくとも30℃、例えば30~45℃、30~37℃、30℃、又は37℃に、例えば少なくとも30分間、30~60分間、又は60~120分間加熱することによって乾燥され、次いで、室温で少なくとも1時間、例えば少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも8時間、少なくとも12時間、又は一晩冷却された後、再使用前に任意に低温で保存される。
【0051】
いくつかの実施形態では、再使用可能なカートリッジは、マトリックスを含むカートリッジを得るか、又はマトリックスをカートリッジに任意に添加し、マトリックスを検出分子と接触させ、分子をマトリックスに結合させ、検出分子をマトリックスに任意に架橋することによって調製される。場合によっては、次いで、過剰な非結合検出分子が除去される。使用前に、カートリッジを適切な緩衝液を用いて平衡化してもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、再使用可能なカートリッジは、検出分子として抗体を用いて調製される。いくつかのそのような場合、マトリックスは、Fcドメイン又は他の定常領域などの抗体の一部を特異的に認識し、理想的には、抗体がそれらの抗原結合機能を妨害しない領域でマトリックスに結合することを可能にする分子を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、精製又は単離された抗体を、例えば、プロテインA、プロテインG若しくはプロテインL、又はプロテインA及びプロテインGなどのこれらの組み合わせを含むマトリックスに曝露し、過剰な抗体を除去してマトリックスに結合させる。場合によっては、架橋剤を使用して、抗体検出分子を、マトリックスを含むプロテインA、G及び/又はLに架橋する。同様に、検出される分析物のハプテン又は他の結合剤などの他の検出分子が使用される場合、それらはマトリックスに架橋されてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、特定の抗原に特異的な抗体などの1種類の検出分子がマトリックスに結合している。他の実施形態では、2種類以上の検出分子がマトリックスに結合していてもよい。場合によっては、2つの異なる抗原を標的とする2つの異なる抗体、又は一群の分析物を標的とするいくつかの異なる抗体など、複数の分析物を認識する検出分子を単一のマトリックスに含めることができる。他の場合では、例えば、同じ抗原の異なる部分を認識する2つ以上の異なる抗体が、マトリックスに結合し得る。したがって、いくつかの実施形態では、マトリックスは、例えば、マトリックスが溶液中の分析物の系列又はパネルを認識することができるように、2、3、4、5、10、20、100、又は2~5、5~10、10~20、10~50、10~100、若しくは50~100個の異なる検出分子によって結合され得る。
【0054】
場合によっては、検出分子は、例えば、繰り返し使用してマトリックスから浸出するのを防ぐために、マトリックスに架橋される。いくつかの実施形態では、架橋剤は、ジメチルピメリミデート(DMP)、シアネートエステル、NHSエステル、アズラクトン、カルボニルジイミダゾール(CDI)、マレイミド、ヨードアセチル、ピリジルジスルフィド、ヒドラジド、又はカルボジイミドから選択される。いくつかの実施形態では、架橋は、DMPを使用して行われる。いくつかの実施形態では、DMPとの架橋反応は、そのような架橋反応の通常推奨濃度の1/4~1/5のDMP濃度でカートリッジ中で行われる。したがって、例えば、DMPは約20~25mMでの使用が推奨され得るが、この場合、抗体などのプロテイン検出分子をマトリックスに架橋するために10mM未満のDMPが使用され得る。場合によっては、3~10mM DMP、3~7mM DMP、5~10mM DMP、又は4~6mM DMPを使用することができる。場合によっては、5mM DMPを使用してもよい。いくつかの実施形態では、一般に推奨される濃度と比較して架橋剤の濃度を低下させると、分析物を検出するカートリッジマトリックスの能力を有意に損なうことなく、カートリッジを再使用する能力が改善された。
【0055】
ポリペプチドの検出のための再使用可能なカートリッジの例示的な使用
本開示はまた、本明細書のカートリッジを使用及び再使用する方法も包含する。いくつかの実施形態では、分析物は、例えば、ペプチド又はプロテインである。例えば、分析物は、抗体検出分子によって特異的に認識されるペプチド又はプロテインであり得る。例えば、本明細書に記載されるように、プロテイン分析物の一例は、MHC-I複合体分子である。
【0056】
場合によっては、プロテイン又は他の生物学的分子などの分析物は、体液(例えば、血液、血漿、尿など)又は細胞溶解物などの生物学的溶液中で検出され得る。例えば、本明細書の方法は、生体液又は細胞溶解物からのMHC-I複合体分子の濃縮を可能にし得、その結果、それらはクロマトグラフィー及び質量分析などの後続の工程で更に分析され得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、溶液は、カートリッジに曝露する前にフィルタにかけられる。例えば、ろ過は、マトリックスを詰まらせるか、又はその後の再使用を妨げる可能性がある大きな微粒子を除去するのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、溶液は、1μm、0.2μm、0.22μm、0.3μm、0.4μm、0.45μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、若しくは0.8μmフィルタなどの0.1μm~1μmフィルタで、又は0.1μm~0.5μmフィルタ、例えば0.1μm、0.2μm、0.22μm、0.3μm、0.4μm、0.45μm、若しくは0.1μmフィルタなどの0.5μm~0.5μmフィルタにかけられる。いくつかの実施形態では、生体液又は細胞溶解物が分析物検出に使用される場合、流体は、カートリッジマトリックスと接触する前に、例えば氷上で、又は例えば2~15℃の温度まで冷却される。例えば、いくつかの実施形態では、試料を2~10℃又は4~10℃又は10~15℃の温度まで冷却する。いくつかの実施形態では、温度を下げる前に、スクロース、グリセロール、又はトレハロースなどの凍結保護剤を溶液に添加する。いくつかの実施形態では、凍結保護剤を添加した後、溶液を急速凍結する。いくつかの実施形態では、生体液又は細胞溶解物は、カートリッジマトリックスと接触する前に、例えば等張緩衝液で希釈される。いくつかの実施形態では、溶液中の総プロテイン濃度は、ビシンコニン酸(BCA)アッセイなどで、マトリックスと接触する前に決定され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、分析物が本明細書のカートリッジから溶出されると、電気泳動、クロマトグラフィー若しくは構造分析、又は質量分析若しくはクロマトグラフィーとそれに続く質量分析などのプロセスによって更に分析され得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、マトリックスに結合した分析物の量も定量することができる。例えば、分析物の量は、例えば電気泳動及びデンシトメトリーによって、又はクロマトグラフィーピークにおける分析物からのシグナルの積分によって決定され得る。
【0060】
場合によっては、使用方法は、以前に同じ又は類似の分析物の検出又は濃縮に以前に使用されたカートリッジで分析物を検出又は濃縮することを含む。場合によっては、カートリッジは、以前に少なくとも1回使用されている。場合によっては、カートリッジは、以前に少なくとも2回使用されている。場合によっては、カートリッジは、以前に少なくとも3回使用されている。場合によっては、カートリッジは、以前に少なくとも4回使用されている。場合によっては、カートリッジは、以前に少なくとも5回使用されている。場合によっては、カートリッジは、以前に少なくとも6回使用されている。場合によっては、カートリッジは、以前に少なくとも7回使用されている。場合によっては、カートリッジは、以前に少なくとも8回使用されている。場合によっては、カートリッジは、以前に少なくとも9回使用されている。
【0061】
場合によっては、使用は、分析物を溶出した後、1~10%酢酸、例えば1%、5%、若しくは10%酢酸、1%ギ酸、又は1%トリフルオロ酢酸(TFA)などの緩衝液で少なくとも1回カートリッジを洗浄し、マトリックスを凍結保護剤と任意に接触させることなどによって、その後の使用のためにカートリッジを調製することを含む。凍結保護剤は、pH7以下の緩衝液などの緩衝液中、又はpH4~7などの緩衝液中、又はpH4~6、pH4~6.5、pH4.5~6.5、pH4.8~6.8、pH5~7、pH4~5、pH5~6、pH6~6.5、若しくはpH6~7などの酸性緩衝液中にあり得る。いくつかの実施形態では、凍結保護剤は、スクロース、トレハロース、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(MPD)、又はジメチルスルホキシド(DMSO)の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、凍結保護剤は、スクロース及び/又はトレハロースを含む。いくつかの実施形態では、凍結保護剤は、トレハロースを含む。いくつかの実施形態では、凍結保護剤含有緩衝液は、EDTA及び/又はアジ化ナトリウムも含む。いくつかの実施形態では、次いで、カートリッジを乾燥させる。場合によっては、カートリッジマトリックスは、少なくとも30℃、例えば30~45℃、30~37℃、30℃、又は37℃に、例えば少なくとも30分間、30~60分間、又は60~120分間加熱することによって乾燥され、次いで、室温で少なくとも1時間、例えば少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも8時間、少なくとも12時間、又は一晩冷却された後、再使用前に任意に低温で保存される。
【0062】
カートリッジを含むキット
本開示はまた、本明細書のカートリッジを含むキットも包含する。いくつかの実施形態では、カートリッジは、まだ使用されていない。他の実施形態では、それらは以前に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、又は100回使用されている。いくつかの実施形態では、キットは、上記のように乾燥状態で保存されたカートリッジを含む。いくつかの実施形態では、キットは、上記のように湿潤状態で保存されたカートリッジを含む。いくつかの実施形態では、キットは、使用説明書を更に含む。いくつかの実施形態では、キットは、試料中の分析物を検出又は濃縮するための試薬、例えば平衡化、洗浄及び/又は溶出緩衝液を更に含む。いくつかの実施形態では、キットは、検出分子を含まないブランクカートリッジ又は分析物を認識することを意図しない構造的に類似した検出分子を有するカートリッジなどの対照を更に含む。いくつかの実施形態では、キットは、他の場所に輸送するために包装されてもよい。いくつかの実施形態では、カートリッジを含むキットは、上記のように、少なくとも24時間、48時間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、又は少なくとも6ヶ月間、場合によっては室温、他の場合では2~8℃で乾燥状態で保存され得る。いくつかの実施形態では、カートリッジを含むキットは、上記のように、少なくとも24時間、48時間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、又は少なくとも1年間、場合によっては室温、他の場合では2~8℃で湿潤状態で保存され得る。いくつかの実施形態では、キットはまた、凍結保護剤、EDTA及びアジ化ナトリウムの1つ以上を含む緩衝液など、カートリッジを洗浄及び保存するために使用される試薬を含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、例えば、10、50、100(例えば、96個のウェルカートリッジを含む96ウェルプレート、又は96ウェルプレートシステムに嵌合する約100個のチューブ形状カートリッジのセット)、500又は1000個のカートリッジのパックを含む。
【0063】
以下の実施例は、本明細書の例示的なカートリッジ並びにそれらを調製、保存及び使用する方法の更なる説明を提供するが、本明細書の開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0064】
実施例1.再使用可能なカートリッジの調製及び試験
カートリッジ準備
抗体コーティングカートリッジを調製するために以下の材料を得た:6つの大きなAssayMAP(商標)プロテインAカートリッジ(Agilent)、Seahorse 1-wellμプレート、Eppendorf PCRプレート(ディープウェルプレート)、PBS、TBS、及び25mM Tris緩衝液、1%酢酸溶出緩衝液、及び抗ヒトHLA A、B、C抗体w6/32(PBS中1mg/mL)の溶液。カートリッジを、プレート内の所定の列にアセンブルし、PBSで平衡化し、抗体溶液と接触させて、抗体をカートリッジマトリックス上のプロテインAに結合させ、洗浄し、次いで架橋試薬に曝露した。具体的には、カートリッジを、マルチウェルプレートに配置し、自動液体分注装置(Agilent AssayMAP(商標)Bravo)を使用して、カートリッジを最初にプライミングし、PBSで平衡化し、250μLのPBSを300μL/分の流量で使用し、次いで150μLのPBSを20μL/分の流量で使用した。次いで、抗体溶液を、20μL/分の流量で1mLで添加し、次いで、カートリッジをPBSで洗浄して過剰の抗体を除去した。
【0065】
次いで、カートリッジを、架橋試薬で処理して、抗体をプロテインAマトリックスに架橋した。カートリッジを、最初にプライミングし、200mMトリエタノールアミン(TEA)緩衝液pH8.2で平衡化し、次いで5μL/分の流量で200μLの体積の5mM DMPで処理した。次いで、カートリッジを、最初に250μLのTBSで洗浄し、次にそれぞれ20μL/分の流量で250μLの25mM Trisで洗浄し、次いで1%酢酸の溶出緩衝液(10μL/分で50μL)と接触させた。次いで、カートリッジを、酢酸、Tris、次いでTBS緩衝液(それぞれ20μL/minの流量で100μL、200μL、200μL容量)で2回処理して、190μLのTBS及び1mMのEDTA及び0.025%アジ化ナトリウムの保存緩衝液に入れて、液体が各カートリッジカラムのマトリックスの上部より上に残ることを確認した。
【0066】
特定のカートリッジを、以下のように乾燥させ、他のカートリッジを保存緩衝液に保存した。20mM His-酢酸、200mMトレハロース、pH6の乾燥緩衝液を調製した。270μLの乾燥緩衝液を、乾燥保存のために選択したカートリッジに添加した。次いで、カートリッジを、37℃に1時間置いて乾燥させ、次いで、使用前に室温で一晩保存した。
【0067】
カートリッジ試験
次いで、上記のように調製した、湿潤状態で保存し、使用前に乾燥状態で保存した抗体コーティング及び架橋カートリッジを、AssayMap(商標)Bravoシステム中の溶液中の分析物への結合について試験した。具体的には、3つの湿潤保存及び3つの乾燥保存w6/32抗体カートリッジを試験に使用した。カートリッジを、プライミングし、TBS(プライミングのために300μL/分で150μL、次いで平衡化のために20μL/分で100μL)で平衡化し、分析物溶液を添加した(10μL/分で50μL)。HLA含有溶液を、湿潤又は乾燥保存w6/32カートリッジのそれぞれに添加した。次いで、カートリッジを、250μLのTBSで20μL/分の流量で洗浄し、次いで250μLの25mM Tris pH8.0で20μL/分で洗浄し、続いて50μLの1%酢酸で10μL/分の流量で溶出した。次いで、溶出液を、アクリルアミド電気泳動ゲルにロードし、次いで、マイクロ波中で1.5分間加熱し、続いて10分間振盪し、水中で1時間染色除去することによってSimplyBlue(商標)(ThermoFisher Scientific)で染色した。
【0068】
ゲルレーンは以下の通りであり、結果は
図2に示す通りである。
【表1】
【0069】
図2に見られるように、湿潤及び乾燥保存カートリッジ(
図2の右側のレーン4~9)からのHLA溶出は同等に見え、カートリッジが湿潤又は乾燥保存のいずれかの後に使用され得ることを示している。
【0070】
実施例2:生物学的試料中のMHC-I複合体の濃縮のためのカートリッジの使用
材料及びペプチド合成
特に明記しない限り、全ての化学物質はSigma-Aldrichから購入した。抗体は、CST(マサチューセッツ州ダンバーズ)又はAbcam(カリフォルニア州バーリンゲーム)から購入した。dTag13デグレーダ化合物は、Tocrisから購入した。一般的なプラスチック製品は、Corningから購入し、AssayMAP(商標)プラスチック製品は、ユーザマニュアルにおいてAssayMAP(商標)Bravoと共に使用するために指定されたようにAgilentから購入した。ペプチドを、JPT Peptide Technologies(ベルリン、ドイツ)から購入し、50%エチレングリコール(Sigma)に溶解し、-20℃で保存した。
【0071】
HLA及びB2Mの精製
組換えHLA対立遺伝子及びβ2Mを、大腸菌で過剰発現させ、封入体から精製し、変性条件下(6MグアニジンHCL、25mM Tris、pH8.0)で-80℃で保存した。簡潔には、β2M及びHLAバイオマスペレットを、溶解緩衝液(PBS+1% Triton X-114)に5mL/gの濃度で再懸濁した。再懸濁したペレットを、1000バールでのマイクロ流動化に2回供した。得られた懸濁液を、超遠心機で30,000gで20分間回転させた。ペレットを回収し、500mLの溶解緩衝液で洗浄し、30,000gで20分間遠心分離した。ペレットを回収し、上記のように2回目の洗浄を行った。次いで、精製された封入体を、10mL/gの濃度で変性緩衝液(20mM MES、pH6.0、6MグアニジンHCl)に溶解した。次いで、懸濁液を、4℃で一晩撹拌した。溶解したペレットを、40,000gで60分間遠心分離し、上清を回収し、0.22μmフィルタにかけた。濃度を、BCAアッセイを使用して判定した。試料を、急速凍結し、MHC-I複合体の生成に使用する前に-80℃で保存した。
【0072】
組換えMHC-I複合体の生成
5L反応において、選択されたペプチド(0.01mM)、酸化型グルタチオン及び還元型グルタチオン(それぞれ0.5mM及び4.0mM)、組換えHLA対立遺伝子(0.03mg/ml)並びにβ2M(0.01mg/ml)をすべて、リフォールディング緩衝液(100mM Tris、pH8.0、400mM L-アルギニン、2mM EDTA)中で合わせた。リフォールディング混合物を、4℃で4日間撹拌した。リフォールディング溶液を、0.22μmフィルタを通してフィルタにかけて、濃縮し、タンジェンシャルフローろ過(TFF)(Millipore)によって緩衝液交換して25mM Tris(pH7.5)にした。次いで、HLAが適切な還元状態にあることを確実にするために、プロテイン成分を、LC/MSによって分析した。リフォールディングされたMHC-I複合体を、AKTA Pur FPLCで5mLのHiTrap(商標)Q HPカラムを使用するイオン交換クロマトグラフィーによって精製した。カラムを、10カラム容量(CV)の25mM Tris(pH7.5)で、5mL/分の流量で平衡化した。MHC-I複合体を、5mL/分の流量でカラムにロードし、0~60%の25mM Tris、pH7.5、30CVにわたって1M NaCl勾配を用いて溶出した。溶出したピーク全体の画分を、SDS-PAGEで泳動し、β2M及びHLAバンドを含有する画分をプールした。プールした画分を保存緩衝液(25mM Tris、pH8.0、150mM NaCl)に交換した。プロテイン濃度を、280nmでのUV吸光度によって決定し、試料を急速凍結し、-80℃で保存した。
【0073】
接着性及び懸濁細胞培養
MC38細胞を、凍結ストックとして得て、直ちに作業ストック中で培養し、増殖培地+10% DMSO中で凍結した。MC38を、RPMI-1640、10% FBS、2mMグルタミン、1×pen-strep、及び25mM HEPES中で増殖させた。細胞を、37℃及び5% CO2で、18時間の倍加時間で継代した。GRANTA-519(GRANTA)細胞も、上記のように作業用ストック中で培養した。GRANTA細胞をRPMI-1640、10% FBS、2mMグルタミン、及び1×pen-strep中で培養した。細胞を、Infors Minitron中、110rpmで、37℃及び5% CO2で、48時間の倍加時間で継代した。
【0074】
細胞処理及び回収
細胞を処理し、37℃及び5% CO2(接着性MC38細胞)、及び110rpm(懸濁GRANTA細胞)でインキュベートした。接着性MC38細胞を回収するために、培地を吸引し、冷Accutase(Innovative Cell Technologies,Inc.)を直ちにプレートに添加した。プレートを室温で5分間静置した後、撹拌を使用して細胞をプレートから持ち上げた。次いで、Accutase細胞混合物を、増殖培地を含むファルコンチューブに添加し、細胞をViCell XRを使用して計数し、1mL当たりの生存細胞濃度を決定し、次いで、2億5000万個の細胞を条件ごとに50mLのファルコンチューブに移した。懸濁GRANTA細胞を回収するために、細胞を計数し、上記のように移した。次いで、すべての細胞を遠心分離によってペレット化し、上清を除去し、ペレットを液体窒素中で急速凍結した後、-80℃に置いた。
【0075】
細胞溶解及び保存
細胞ペレットを、-80℃から取り出し、37℃の水浴で急速に解凍した後、氷上に置いた。2億5000万個の細胞GRANTAペレットを、5mLの非変性OG界面活性剤緩衝液(PBS、0.25%デオキシコール酸ナトリウム、0.2mMヨードアセトアミド、1mM EDTA、1%オクチル-ベータ-dグルコピラノシド(OG)、1×プロテアーゼ+ホスファターゼ阻害剤(Sigma))に溶解させ、溶解物を1本の5mLエッペンドルフチューブに移した。2億5000万個の細胞MC38ペレットをそれぞれ10mLのOG緩衝液に溶解し、2本の5mLエッペンドルフチューブに移した。溶解物を氷上に30分間置き、次いで、20,000gを4℃で60分間スピンダウンして清澄化した。清澄化した溶解物を直ちに50mLファルコンチューブ真空フィルタ(0.45μm、Corning)にデカントし、穏やかな真空下でフィルタにかけた。フィルタにかけた溶液を、氷上のそれぞれの15mLファルコンチューブに4mLアリコート(GRANTA 250M細胞溶解全体又はMC38 250M細胞溶解の半分)で移し、続いてそれぞれ1.33mLの50%グリセロール及び1Mスクロース(10%グリセロール及び200mMスクロースの最終濃度)で移した。チューブを均質になるまで反転によって混合し、BCA分析のために10μLを除去し、ウエスタンブロッティング及びゲル内消化(包括的プロテオミクスのため)のために30μLを除去した。次いで、ファルコンチューブを急速凍結し、-80℃に置いた。
【0076】
カートリッジの調製、保存及び再使用
カートリッジ架橋は、以下のように行った。簡潔には、乾燥プロテインAカートリッジをPBS中でプライミングした後、1mgの抗体を1mg/mLでロードし、続いてPBSで洗浄した(すべてのカートリッジサイズについて、プライミングを300μL/分で行った。小型カートリッジの洗浄及びロードを、それぞれ10μL及び5μL/分で行った。洗浄及び大きなカートリッジのロードを、20μL/分で行った)。次いで、カートリッジを200mMトリエタノールアミン(TEA、Sigma)中で平衡化させ、室温で40分間にわたってTEA、pH8.2中の5mMジメチルピメリミデート(DMP、Sigma)をロードし、次いで、TBS、25mM Tris、pH8.0(Tris緩衝液)、1%酢酸、Tris緩衝液、最後にTBSで、連続して洗浄した。次いで、カートリッジを、TBS、1mM EDTA、0.025%アジ化ナトリウムを充填した空のカートリッジラックに4℃で保存し、次いで、パラフィルムした。乾燥したカートリッジを作製するために、カートリッジ緩衝液を、20mMヒスチジン、200mMトレハロース、pH6.0に交換し、37℃で1時間置いた後、室温で暗所に少なくとも18時間放置して乾燥を完了させた。次いで、乾燥したカートリッジを、乾燥プロテインAカートリッジと同じ方法で再構成した。
【0077】
再使用したカートリッジを、AssayMAP(商標)Bravoに移し、各カートリッジのネックを綿スワブで乾燥させ(4℃から移した場合)、次いで、水でプライミングし、1%酢酸でプライミングし、かつ再使用前に水で洗浄した。
【0078】
カートリッジを用いたMHC濃縮
希釈した凍結細胞溶解物を、ドライアイス上に-80℃の冷凍庫から取り出し、37℃の水浴で急速に解凍し、次いで混合せずに湿潤した氷上に置いた。架橋したカートリッジを冷蔵庫から取り出し、AssayMAP(商標)システムに移し、カップをQtipを使用して軽くたたいて乾燥させ、水でプライミングし、1%酢酸でプライミングし、水で洗浄した。
【0079】
各溶解物から500μLを、0.45μm Costarスピンフィルタチューブに移し、16,000gで4℃で1分間スピンダウンし、次いで氷上に置いた。スピンフィルタチューブは、フィルタ上の溶解物の保持についてチェックされた。保持された溶解物の量が10~20μLを超える場合、カートリッジを詰まらせる可能性があると考えられたので、材料をカートリッジ実験に使用しなかった。それぞれの15mLファルコンチューブへの還流フロースルーを氷上で保存した。試料を10℃に冷却した。
【0080】
それぞれの8.3mLファルコンチューブから、1ウェル当たり1.1mLをDeepwell(商標)試料プレートの4つのウェルに移した(3.9mLの試料がファルコンチューブに残っていた)。AssayMAP(商標)Bravoシステムを使用して、以下のようにカートリッジをプライミング及び平衡化し、試料をロードした:カートリッジTBSプライミング(250μL/分で150μL)、TBS平衡化(20μL/分で100μL)、及び試料ロード(20μL/分で1mL)。フロースループレートを交換し、更に800μLの試料を4つのウェルのそれぞれに添加した。更なる試料ロード(20μL/分で800μL)、続いてTBS洗浄(25μL/分で250μL)、Tris洗浄(25μL/分で250μL)、及び1%酢酸塩溶出(10μL/分で60μL)を行った。各ウェルから10μLを除去して、クーマシー染色電気泳動ゲルによるMHC-I複合体濃縮を検証した。残りの4×50μLを、単一の1.5mL容量のチューブに合わせて、急速凍結し、-80℃に置いた。次いで、カートリッジを1%酢酸でプライミングし、Tris緩衝液及びTBSで洗浄した後、4℃でTBS、1mM EDTA、0.025%アジ化ナトリウムを充填した空のカートリッジラックに保存し、次いでパラフィルムした。
【0081】
図1Dは、細胞溶解物中のMHC-I複合体を検出するためのカートリッジの調製及び使用のためのワークフローを示す。最初に、本発明者らは、最初の使用後にカートリッジが詰まると、それらを再使用する能力が妨げられることを見出した。しかし、より大きな溶解物フィルタを使用してDMP架橋剤(例えば、25mM~5mM)の量を減少させ、フィルタにかけた溶解物をグリセロール及びスクロースで1.33倍希釈し、濃縮中に溶解物の温度を低下させることによって、沈殿が最小限に抑えられ、繰り返し使用時にカートリッジが、それ以上詰まらないことがわかった。
【0082】
具体的には、
図5に示すように、本明細書に記載の条件下(500μLを0.45μmのCostarフィルタ上に置き、4℃で1分間16,000gで回転させる)では、水及び溶解緩衝液は保持された容量を示さず(陰性対照)、室温で1日経過したMC38溶解物(B緩衝液1mL当たり50M細胞、陽性対照)は400μLを超える保持を示す。新鮮なGRANTA溶解物(B緩衝液1mL当たり50M細胞)は保持を示さないが、溶解物を室温(典型的な最適化されていないロード条件)で4時間保存すると、粘度の大きな増加を示す。温度を4℃に下げると、18時間にわたって維持される様式で凝集が減少する。溶解物をPBS、スクロース(1M出発、200mM最終)又はグリセロール(グリセロール出発50%、最終10%)で急速凍結し、次いで解凍した場合、室温で4時間後でも粘度は低い(しかしながら、室温で24時間保存すると粘度が大きく上昇する)。スクロースとグリセロールの保存を組み合わせると(更なるより希釈された溶解物溶液をもたらす)、直ちに、及び室温で4時間後の両方で、明らかな保持なしに凍結解凍サイクルが可能になる。
【0083】
この最適化されたワークフローを使用して、本発明者らは、観察された固有のペプチドの減少又は検出されたペプチドの組成の変化をほとんど伴わずに、単一のカートリッジを使用して上記アッセイで少なくとも9回溶解物を濃縮できることを実証した(
図1E、
図6F-6Hを参照されたい)。この知見は、抗体架橋カートリッジが架橋後に乾燥され、乾燥状態で保存され、次いで使用前に再湿潤された場合であっても当てはまる。
【0084】
本明細書において別段の記載がない限り、すべての引用及び参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
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【国際調査報告】