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特表2023-551191耐漏れ性が向上したねじ付き管の連結
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】耐漏れ性が向上したねじ付き管の連結
(51)【国際特許分類】
   F16L 15/04 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
F16L15/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530544
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 US2021060543
(87)【国際公開番号】W WO2022109464
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/117,227
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518399313
【氏名又は名称】ユナイテッド ステイツ スチール コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】UNITED STATES STEEL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーネット,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ガリカパティ,チャンドラシェカー
(72)【発明者】
【氏名】ベネット,フレデリック シー.
(72)【発明者】
【氏名】クラットワーシー,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】トゥーマ,キース エイ.
【テーマコード(参考)】
3H013
【Fターム(参考)】
3H013JA01
3H013JA03
(57)【要約】
提供されるねじ付き管は、ボックス部材に連結するピン部材を有する。ピン部材は、その管の端部の外面の周りを螺旋方向に延びるくさび形のピンねじを含む。ピン部材は、その管の前端部から離れる方向にピンねじの直径が大きくなるテーパが付けられている。ボックス部材は、その管の端部の内面の周りを螺旋方向に延びるくさび形のボックスねじを含む。ボックス部材は,その管の前端部から離れる方向にボックスねじの直径が小さくなるテーパが付けられている。ピン部材のピンクレストはピンねじに沿って幅が大きくなり、ボックスねじのボックスルートはボックスねじに沿って幅が小さくなる。ピン部材とボックス部材が組み立てられると、ピンねじのクレストの幅は、ボックスねじのルートの幅が大きくなる割合とは異なる割合で大きくなる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の管状コンポーネントと第2の管状コンポーネントとを含むねじ連結体であって、
前記第1の管状コンポーネントは、前記第1の管状コンポーネントの前面から、前記第1の管状コンポーネントの前面とは反対側の前記第1の管状コンポーネントの後面に向けて、長手方向軸線に沿って前記第1の管状コンポーネントの周りを螺旋方向に延びる少なくとも1つのピンねじを含み、
前記第2の管状コンポーネントは、前記第2の管状コンポーネントの前面から、前記第2の管状コンポーネントの前面とは反対側の前記第2の管状コンポーネントの後面に向けて、長手方向軸線に沿って前記第2の管状コンポーネントの周りを螺旋方向に延びる少なくとも1つのボックスねじを含み、前記第1の管状コンポーネントと連結できるよう構成されており、
前記少なくとも1つのピンねじは、前記第1の管状コンポーネントの前面と前記第1の管状コンポーネントの後面との間で、前記第1の管状コンポーネントの一部分に沿って、ピンテーパ角度でテーパが形成され、
前記少なくとも1つのボックスねじは、前記第2の管状コンポーネントの前面と前記第2の管状コンポーネントの後面との間で、前記第2の管状コンポーネントの一部分に沿ってボックステーパ角度でテーパが形成され、
前記ボックステーパ角度は、前記ピンテーパ角度とは異なり、
前記少なくとも1つのピンねじのクレストの幅は、前記少なくとも1つのピンねじの始点と前記少なくとも1つのピンねじの終点との間で、前記少なくとも1つのピンねじの少なくとも一部分に沿って、ピンクレストの幅の比率で変化し、
前記少なくとも1つのボックスねじのルートの幅は、前記少なくとも1つのボックスねじの始点と前記少なくとも1つのボックスねじの終点との間で、前記少なくとも1つのボックスねじの少なくとも一部分に沿って、ボックスルートの幅の変化率で変化し、及び
前記ボックスルートの幅の変化率は、前記ピンクレストの幅の変化率と異なる、ねじ連結体。
【請求項2】
前記ピンテーパ角度は、前記ボックステーパ角度より少なくとも2°小さい、請求項1に記載のねじ連結体。
【請求項3】
前記ピンテーパ角度は、前記ボックステーパ角度より少なくとも1°小さい、請求項1に記載のねじ連結体。
【請求項4】
前記ルートの幅の比率は、前記ピンの幅の比率より少なくとも10%大きい、請求項1に記載のねじ連結体。
【請求項5】
前記ルートの幅の比率は、前記ピンの幅の比率より少なくとも5%大きい、請求項1に記載のねじ連結体。
【請求項6】
前記少なくとも1つのピンねじの終点における前記少なくとも1つのピンねじのクレストの幅は、前記少なくとも1つのピンねじの始点における前記少なくとも1つのピンねじのクレストの幅の2倍より小さい、請求項1に記載のねじ連結体。
【請求項7】
前記ルートの幅の比率は、前記クレストの幅の比率より大きい、請求項1に記載のねじ連結体。
【請求項8】
前記ピンテーパ角度は、前記ボックステーパ角度より小さい、請求項1に記載のねじ連結体。
【請求項9】
前記ねじ連結体は、金属対金属シーリング部材を含む、請求項1に記載のねじ連結体。
【請求項10】
第1の端部を含むねじ付き管であって、
前記第1の端部は、前記第1の端部の前面から、前記第1の端部の前面とは反対側の前記第1の端部の後面に向けて、長手方向軸線に沿って前記第1の端部の周りを螺旋方向に延びる少なくとも1つのピンねじを含み、
前記少なくとも1つのピンねじは、前記第1の端部の前面と前記第1の端部の後面との間で、前記第1の端部の一部分に沿ってピンテーパ角度でテーパが形成され、
前記少なくとも1つのピンねじのクレストの幅は、前記少なくとも1つのピンねじの始点と前記少なくとも1つのピンねじの終点との間で、前記少なくとも1つのピンねじの少なくとも一部分に沿ってピンクレストの幅の変化率で変化し、
前記第1の端部は、第2の管の第2の端部と連結できるよう構成されており、
前記第2の端部は、前記第2の端部の前面から、前記第2の端部の前面とは反対側の第2の端部の後面に向けて、前記長手方向軸線に沿って前記第2の端部の周りを螺旋方向に延びる少なくとも1つのボックスねじを含み、前記第1の端部と連結できるよう構成されており、
前記少なくとも1つのボックスねじは、前記第2の端部の前面と前記第2の端部の後面との間で、前記第2の端部の一部分に沿ってボックステーパ角度でテーパが形成され、
前記ボックステーパ角度は、前記ピンテーパ角度と異なり、
前記少なくとも1つのボックスねじのルートの幅は、前記少なくとも1つのボックスねじの始点と前記少なくとも1つのボックスねじの終点との間で前記ボックスねじの少なくとも一部分に沿ってボックスルートの幅の変化率で変化し、
前記ボックスルートの幅の変化率は、前記ピンクレストの幅の変化率と異なる、ねじ付き管。
【請求項11】
前記ねじ付き管は、前記第1の端部と反対側に位置する反対側の端部をさらに具えており、
前記反対側の端部は、反対側の前面から前記第1の端部の前面に向けて、前記長手方向軸線に沿って前記反対側の端部の周りを螺旋方向に延びる少なくとも1つの反対側のボックスねじを含み、前記第1の端部と連結できるよう構成されており、
前記少なくとも1つの反対側のボックスねじは、前記反対側の端部の前面と前記第1の端部の前面との間で、前記反対側端部の一部分に沿って反対側のボックステーパ角度でテーパが形成され、
前記反対側のボックステーパ角度は、前記ピンテーパ角度とは異なり、
前記少なくとも1つの反対側のボックスねじのルートの幅は、前記少なくとも1つの反対側のボックスねじの始点と前記少なくとも1つの反対側のボックスねじの終点との間で、前記少なくとも1つの反対側のボックスねじの少なくとも一部分に沿って反対側のボックスルートの幅の変化率で変化し、
前記反対側のボックスルートの幅の変化率は、前記ピンクレストの幅の変化率と異なる、請求項11に記載のねじ付き管。
【請求項12】
前記ピンテーパ角度は、前記ボックステーパ角度より少なくとも2°小さい、請求項10に記載のねじ連結体。
【請求項13】
前記ピンテーパ角度は、前記ボックステーパ角度より少なくとも1°小さい、請求項10に記載のねじ連結体。
【請求項14】
前記ボックスルートの幅の変化率は、前記ピンクレストの幅の変化率より少なくとも10%大きい、請求項10に記載のねじ連結体。
【請求項15】
前記ボックスルートの幅の変化率は、前記ピンクレストの幅の変化率より少なくとも5%大きい、請求項10に記載のねじ連結体。
【請求項16】
前記少なくとも1つのピンねじの終点における前記少なくとも1つのピンねじのクレストの幅は、前記少なくとも1つのピンねじの始点における前記少なくとも1つのピンねじのクレストの幅の2倍より小さい、請求項10に記載のねじ連結体。
【請求項17】
前記ルートの幅の比率は、前記クレストの幅の比率より大きい、請求項10に記載のねじ連結体。
【請求項18】
前記ピンテーパ角度は、前記ボックステーパ角度より小さい、請求項10に記載のねじ連結体。
【請求項19】
前記ねじ連結体は、金属対金属シーリング部材を含む、請求項10に記載のねじ連結体。
【請求項20】
第1の端部を含むねじ付き管であって、
前記第1の端部は、前記第1の端部の前面から、前記第1の端部の前面とは反対側の第1の端部の後面に向けて、長手方向軸線に沿って前記第1の端部の周りを螺旋方向に延びる少なくとも1つのボックスねじを含み、
前記少なくとも1つのボックスねじは、前記第1の端部の前面と前記第1の端部の後面との間で、前記第1の端部の一部分に沿ってボックステーパ角度でテーパが形成され、
前記少なくとも1つのボックスねじのルートの幅は、前記少なくとも1つのボックスねじの始点と前記少なくとも1つのボックスねじの終点との間で、前記少なくとも1つのボックスねじの少なくとも一部分に沿ってボックスルートの幅の変化率で変化し、
前記第1の端部は、第2の管の第2の端部と連結できるよう構成されており、
前記第2の端部は、前記第2の端部の前面から、前記第2の端部の前面とは反対側の第2の端部の後面に向けて、前記長手方向軸線に沿って前記第2の端部の周りを螺旋方向に延びる少なくとも1つのピンねじを含み、前記第1の端部と連結できるよう構成されており、
前記少なくとも1つのピンねじは、前記第2の端部の前面と前記第2の端部の後面との間で、前記第2の端部の一部分に沿ってピンテーパ角度でテーパが形成され、
前記ピンテーパ角度は、前記ボックステーパ角度と異なり、
前記少なくとも1つのピンねじのクレストの幅は、前記少なくとも1つのピンねじの始点と前記少なくとも1つのピンねじの終点との間で、前記少なくとも1つのピンねじの少なくとも一部分に沿ってピンクレストの幅の変化率で変化し、及び
前記ピンクレストの幅の変化率は、前記ボックスルートの幅の変化率と異なる、ねじ付き管。
【請求項21】
前記ねじ付き管は、前記第1の端部と反対側に位置する反対側の端部をさらに具えており、
前記反対側の端部は、反対側の前面から前記第1の端部の前面に向けて、前記長手方向軸線に沿って前記反対側の端部の周りを螺旋方向に延びる少なくとも1つの反対側のピンねじを含み、前記第1の端部と連結できるよう構成されており、
前記少なくとも1つの反対側のピンねじは、前記反対側の端部の前面と前記第1の端部の前面との間で、前記反対側の端部の一部分に沿って反対側のピンテーパ角度でテーパが形成され、
前記反対側のピンテーパ角度は、前記ボックステーパ角度とは異なり、
前記少なくとも1つの反対側のピンねじのクレストの幅は、前記少なくとも1つの反対側のピンねじの始点と前記少なくとも1つの反対側のピンねじの終点との間で、前記少なくとも1つの反対側のピンねじの少なくとも一部分に沿って反対側のピンクレストの幅の変化率で変化し、
前記反対側のピンクレストの幅の変化率は、前記ボックスルートの幅の変化率と異なる、請求項20に記載のねじ付き管。
【請求項22】
前記ピンテーパ角度は、前記ボックステーパ角度より少なくとも2°小さい、請求項20に記載のねじ連結体。
【請求項23】
前記ピンテーパ角度は、前記ボックステーパ角度より少なくとも1°小さい、請求項20に記載のねじ連結体。
【請求項24】
前記ボックスルートの幅の変化率は、前記ピンクレストの幅の変化率より少なくとも10%大きい、請求項20に記載のねじ連結体。
【請求項25】
前記ボックスルートの幅の変化率は、前記ピンクレストの幅の変化率より少なくとも5%大きい、請求項20に記載のねじ連結体。
【請求項26】
前記少なくとも1つのピンねじの終点における前記少なくとも1つのピンねじのクレストの幅は、前記少なくとも1つのピンねじの始点における前記少なくとも1つのピンねじのクレストの幅の2倍より小さい、請求項20に記載のねじ連結体。
【請求項27】
前記ボックスルートの幅の変化率は、前記ピンクレストの幅の変化率より大きい、請求項20に記載のねじ連結体。
【請求項28】
前記ピンテーパ角度は、前記ボックステーパ角度より小さい、請求項20に記載のねじ連結体。
【請求項29】
前記ねじ連結体は、金属対金属シーリング部材を含む、請求項20に記載のねじ連結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2020年11月23日に出願された米国仮特許出願第63/117,227号の非仮出願であって、当該仮特許出願の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
<発明の分野>
本発明は、ねじ付き管の連結に関し、より具体的には、耐漏れ性(leak tightness)を向上させるためのくさび形状を有するねじ付き管の連結に関する。
【背景技術】
【0003】
<背景情報>
ねじ付き管の連結は、石油・ガス産業で使用され、特に、米国特許第6,722,706号に開示されているくさびねじ形態を有するねじ連結がある。他のねじ付き管の連結は、米国特許第6,976,711号、第7,562,911号、及び米国出願公開第2011/0278838号に開示されている。これらの米国特許及び米国出願公開はすべて、引用を以て本明細書に組み込まれるものとする。
【0004】
ねじ連結は、連結部のシーリング能力を向上させるために金属対金属シール部材を含んだり、又は余分の金属対金属シーリング部材を使用することなく連結部のねじのシーリング能力を向上させるために、軟質金属のコーティング及び/又は嫌気性(anaerobic)のねじコンパウンドを含む場合がある。金属対金属シール、軟質金属コーティング、又は特殊な嫌気性ねじコンパウンドを使用しないねじの場合、所望のシール性能を得るために、通常、比較的高いトルクを必要とするが、これは局部的応力(localized stress)が高くなり、疲労寿命に悪影響を与え得る。また、このようなねじ形状は、ねじコンパウンドをトラップする傾向があり、これがブレイクアウトトルク低下(low breakout torques)の原因ともなり、性能に悪影響を及ぼし得る。
【発明の概要】
【0005】
<発明の要旨>
本発明は、ボックス部材に連結するピン部材を有するねじ付き管(threaded pipe)を提供する。ピン部材は、その管の端部の外面の周りを螺旋方向に延びるくさび形のピンねじ(wedge-shaped pin threads)を含む。ピン部材は、その管の前端部から離れる方向にピンねじの直径が大きくなるようにテーパが形成されている。ボックス部材は、その管の端部の内面の周りを螺旋方向に広がるくさび形のボックスねじを含む。ボックス部材は、その管の前端部から離れる方向にボックスねじの直径が小さくなるようにテーパが形成されている。ピン部材のねじクレストは、ピンねじに沿って幅が大きくなり、ボックスねじのねじルートは、ボックスねじに沿って幅が小さくなる。ボックス部材とピン部材が組み立てられると、ピンねじのクレストの幅は、ボックスねじのルートの幅の増加とは異なる割合で増加する。
【0006】
本発明の一態様は、第1の管状コンポーネントと第2の管状コンポーネントとを含むねじ連結体(threaded connection)を提供するもので、第1の管状コンポーネントは、第1の管状コンポーネントの前面から、該前面とは反対側の第1の管状コンポーネントの後面に向けて、当該第1の管状コンポーネントの長手方向軸線に沿って該第1の管状コンポーネントの周りを螺旋方向に延びるピンねじを含み、第2の管状コンポーネントは、第2の管状コンポーネントの前面から、該前面とは反対側の第2の管状コンポーネントの後面に向けて、当該第2の管状コンポーネントの長手方向軸線に沿って該第2の管状コンポーネントの周りを螺旋方向に延びるボックスねじを含み、第2の管状コンポーネントは第1の管状コンポーネントと連結できるよう構成されている。ピンねじは、第1の管状コンポーネントの前面と第1の管状コンポーネントの後面との間で、第1の管状コンポーネントの一部分にピンテーパ角度でテーパが形成されている。ボックスねじは、第2の管状コンポーネントの前面と第2の管状コンポーネントの後面との間で、第2の管状コンポーネントの一部分にボックステーパ角度でテーパが形成されている。ボックステーパ角度は、ピンテーパ角度と異なる。ピンねじのクレストの幅は、ピンねじの始点(start)とピンねじの終点(end)との間でピンねじの少なくとも一部分に沿ってクレストの幅の割合で変化する。ボックスねじのルートの幅は、ボックスねじの始点と終点との間のボックスねじの少なくとも一部分に沿ってルートの幅の割合で変化する。ボックスねじルートの幅の変化率は、ピンねじクレストの幅の変化率と異なる。
【0007】
本発明の他の態様は、第1の管端部を提供するもので、該第1の管端部は、第1の端部の前面から、該前面とは反対側の第1の端部の後面に向けて、当該第1の端部の長手方向軸線に沿って該第1の端部の周りを螺旋方向に延びるピンねじを含む。ピンねじは、第1の端部の前面と第1の端部の後面との間で、第1の端部の一部分にピンテーパ角度でテーパが形成されている。ピンねじのクレストの幅は、ピンねじの始点とピンねじの終点との間でピンねじの少なくとも一部分に沿ってピンクレストの幅の変化率で変化する。第1の端部は、第2の管の第2の端部と連結できるよう構成されている。第2の端部は、第2の端部の前面から、該前面とは反対側の第2の端部の後面に向けて、当該第2の管の長手方向軸線に沿って該第2の端部の周りを螺旋方向に延びるボックスねじを含み、第2の端部は第1の端部と連結できるよう構成されている。ボックスねじは、第1の端部の前面と第1の端部の後面との間で、第1の端部の一部分にボックステーパ角度でテーパが形成されている。ボックステーパ角度は、ピンテーパ角度とは異なる。ボックスねじのルートの幅は、ボックスねじの始点とボックスねじの終点との間でボックスねじの少なくとも一部分に沿ってボックスルートの幅の変化率で変化する。ボックスのルート幅変化率は、ピンのクレスト幅変化率と異なる。
【0008】
本発明のさらなる態様は、ねじ付き管を提供するもので、該ねじ付き管は、第1の端部を含み、当該第1の端部は、第1の端部の前面から、該第1の端部の前面とは反対側の第1の端部の後面に向けて、当該第1の端部の長手方向軸線に沿って該第1の端部の周りを螺旋方向に延びるボックスねじを含む。ボックスねじは、第1の端部の前面と第1の端部の後面との間で、第1の端部の一部分にボックステーパ角度でテーパが形成されている。ボックスねじのルートの幅は、ボックスねじの始点と終点との間で、ボックスねじの少なくとも一部分に沿ってボックスルートの幅の変化率で変化する。第1の端部は、第2の管の第2の端部と連結できるよう構成されている。第2の端部は、第2の端部の前面から、該前面とは反対側の第2の端部の後面に向けて、当該第2の端部の長手方向軸線に沿って該第2の端部の周りを螺旋方向に延びるピンねじを含み、第2の端部は第1の端部と連結できるよう構成されている。ピンねじは、第1の端部の前面と第1の端部の後面との間で、第1の端部の一部分にピンテーパ角度でテーパが形成されている。ピンテーパ角度は、ボックステーパ角度と異なる。ピンねじのクレストの幅は、ピンねじの始点とピンねじの終点との間で、ピンねじの少なくとも一部分に沿ってピンクレストの幅の変化率で変化する。ピンクレストの幅の変化率は、ボックスルートの幅の変化率と異なる。
【0009】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】図lは、本発明の一実施形態に係る2つのねじ付き管について、ボックス(雌)部材とピン(雄)部材の連結を示す側断面図である。
【0011】
図2図2は、本発明の一実施形態に係る耐漏れ性が向上したねじ付き管の連結について、ボックス(雌)部材とピン(雄)部材を示す側断面図である。
【0012】
図3a図3a~3cは、ねじ付き管の連結について3つの異なる形態における応力集中を示しており、図3aは、名目上テーパ(nominal taper)に対して、最小のルートクレスト応力(root crest stresses)が示されている。
図3b図3bは、バイアステーパ(biased taper)形態に対して、ピンノーズに近いねじにおけるルートクレスト応力が示されている。
図3c図3cは、ルートクレスト応力に加えて1番目から幾つかのねじに集中するフランク荷重が、本発明の一実施形態に係るバイアスねじ(biased thread)の幅の変化率に対して示されている。
【0013】
図4a図4a~4cは、図3a~3cに示されたねじ付き管の連結について、ピンノーズ部を拡大した図を含んでおり、図4aは、図3aに示されたねじ付き管の連結におけるピンノーズ部の拡大図である。
図4b図4bは、図3bに示されたねじ付き管の連結におけるピンノーズ部の拡大図である。
図4c図4cは、図3cに示されたねじ付き管の連結におけるピンノーズ部の拡大図である。
【0014】
図5図5は、有限コンポーネント解析グラフであり、図3a~3c及び図4a~4cに示された異なる3種類の管の連結について、様々なねじの特徴におけるロードフランク、スタブフランク及びピンルートでの平均接触応力を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<発明の詳細な説明>
本発明のねじ付き管の連結は、くさびねじ形状を有するねじ連結体であり、余分な金属対金属シーリング部材や、特別なコーティングや特別なねじコンパウンドを必要とせずに、シーリング能力を向上させるものである。ねじ要素は、ピンノーズに近いねじでシーリング能力が向上するように改変されており、管内部の圧力に曝されるねじ連結体のシーリング性能を向上させることができる。本発明のねじ付き管の連結は、シーリング能力の向上に加えて、疲労破壊を起こしやすい重要なピンねじにおける局所的応力を低減する。同じ原理を用いて、ボックス面に近いねじのシーリング能力を向上させて、管外部の圧力に曝されるねじ連結体のシーリング性能を向上させることができる。改変されたねじの特徴により、ねじコンパウンドの排出の制御が容易になるため、ねじコンパウンドのトラッピング(trapping)の可能性及びその結果生じ得る問題を低減することができる。また、連結のブレイクアウトトルク(breakout torque)も有意に向上し、一部のバックオンマシン(buck-on machines)の制限に適合するのに十分な低トルクにて、また、重要な高トルク用途に対応できる高トルクにて、所望通りの機能を発揮することができる。これらの原理を組み合わせることで、ピンノーズに近いねじ及びボックス面に近いねじのシーリング能力を向上させて、外部圧力と内部圧力の両方の圧力に曝されるねじ連結部のシーリング性能を向上させることができる。
【0016】
ねじ連結体に対する要求の高まりにより、安価な製造コストを維持し、かつ、容易にアクセス可能なバックオンユニットのトルク制限に対応し得る十分に低い締付けトルク(make-up torques)で機能することができると共に、液体及び気体のシーリング能力の向上、運転トルク容量の向上、及び疲労性能の向上を達成できるねじ連結体が求められている。本発明のねじ付き管の連結は、以下を組み込むことにより、これらの要件を満たすものである。
【0017】
本発明のねじ付き管の連結は、くさび形ねじを少なくとも組み込むことにより、これらの要件を満たすことができる。組み立てられたねじのくさび作用により、より大きなトルク容量が可能になり、延長された水平シェール井戸にケーシングを設置する際、狭い場所から引き出す(get out of tight spots)のに使用する高いトルクが作業者に提供される。
【0018】
また、本発明のねじ付き管の連結は、異なるねじリードを少なくとも組み込むことにより、これらの要件を満たすことができる。雄部材すなわちピンと、雌部材すなわちボックスとの間を異なるリードにすることにより、ピンノーズに近いねじは、他のすべてのねじよりも確実に係合される。ピンノーズに近いねじに高いひずみがもたらされ、ねじ形状の隙間が最終的に埋められるので、高い運転トルク容量での機能を失うことなく、比較的低いトルクで、気体及び液体に対する耐漏れ性が向上する。
【0019】
本発明のねじ付き管の連結は、異なるねじテーパを少なくとも組み込むことにより、これらの要件を満たすことができる。テーパの組合せにより、ピンノーズに向かってねじ干渉(thread interference)をより高くすることができ、ピンノーズ近傍の接触応力が高くなるのでシーリング能力が向上し、連結部の端部に近い応力が低くなるので疲労寿命が向上する。
【0020】
ねじ付き管の連結の複合的な特徴は、高トルクが必要な用途、合理的な気密性が求められる用途、100%軸方向効率(100% axial efficiencies)が求められる用途、及びクリアランスが厳しい(tight clearance)用途において有用である。
【0021】
本発明は、ねじ連結体、組み立てられた連結体、一体型のアプセットされたねじ連結体、及び一体型ねじ連結体を含み、ボックス/連結部ねじのクレストの直径が、ボックスねじと完全に係合する1番目の完全な形態のピンねじにおけるピンねじのルート径と同じであるか、又は該ルート径よりも小さい。
【0022】
ねじ付き連結体が組み立てられると、ピンねじの変化幅は、ボックスねじの変化幅よりも小さい。ねじ幅の変化の差によって生じる歪みは、性能を損なわない程度の歪みである。ピンねじのテーパは,ボックスねじのテーパよりも小さく、これもまた、生じる歪みは性能を損なわない程度の歪みである。
【0023】
形態の限定(configuration limits)は、隣接する金属対金属シールの有無にかかわらず、くさび作用(wedging action)を有するねじに適用可能であり、ダブテール(dovetail)ねじ又はカットされた(faceted)ダブテールねじの形状を有する。
【0024】
図1及び図2は、本発明の一実施形態であって、耐漏れ性が向上したねじ付き管連結体のボックス部材及びピン部材を示す。図1に示す上側ボックス/雌部材及び下側ピン/雄部材の特徴、及び該特徴に関連する幾何学的パラメータ又は制限事項(constraints)は、耐漏れ性を高めるために制御される。本明細書で使用する「ロードフランク(load flank)」という用語は、ねじが形成されているそれぞれの雄部材又は雌部材の外側端部から離れる方向を向いているねじの側壁を意味する。「スタブフランク(stab flank)」という用語は、それぞれの雄部材又は雌部材の外側端部に接近する方向を向いている側壁面を意味し、部材の初期組立中の継手の重量を支える。
【0025】
図1及び図2に示す本発明のねじ付き管の連結は、ボックス部材の内径に近い位置で一番目に係合したピンねじでのピンとボックスとの相互作用がよりタイトになるため、耐漏れ性が向上する。内圧に対するシーリング性能は、螺合位置(make-up position)において一番目のねじが他のねじよりもタイトに接触している場合に向上する。
【0026】
図1を参照すると、2つの管の端部間にねじ連結体100が示されている。ねじ連結体100は、雌管連結部210を含む第1の管200と、雄管連結部310を含む第2の管300との間での連結である。管200、300は、筒状の形状であり、管200は、管外径202、管内径204を有し、管300は、管外径302、管内径304を有する。管内径204、304は、管流路206、306を囲んでおり、これら管流路により、液体又は気体などの流体が管200、300の中心を通って移動することができる。
【0027】
図1及び図2を参照すると、雌管連結部210は、第1の管200の内面に形成されたボックスねじ220を含む。ボックスねじ220は、ボックスねじ溝230を含み、該ボックスねじ溝230は、第1の管200の端面212から第1の管200の反対側端部に向けて、第1の管200の内面の周りを、長手方向軸線110に沿って長手方向を螺旋方向に回転する。個々のボックスねじ231は、第1の管200の内面の周りをボックスねじ溝230が1回転したものである。ボックスねじ220は、雌管連結部210において、個々のボックスねじ231をそれぞれ含む。
【0028】
図1及び図2を参照すると、雄管連結部310は、第2の管300の外面に形成されたピンねじ320を含む。ピンねじ320は、ピンねじ歯330を含み、該ピンねじ歯330は、第2の管300の端面312から第2の管300の反対側端部に向けて、第2の管300の外面の周りを、長手方向軸線110に沿って長手方向を螺旋方向に回転する。個々のピンねじ331は、第2の管300の外面の周りをピンねじ歯330が1回転したものである。ピンねじ320は、雄管連結部310において、個々のピンねじ331をそれぞれ含む。
【0029】
次いで図2を参照すると、幾つかの非限定的な実施形態又は態様において、雌管連結部210の断面図を示しており、一連の個々のボックスねじ231が見られる。個々のボックスねじ231は、一番目のボックスねじ232、2番目のボックスねじ234、中間のボックスねじ235、最後から2番目のボックスねじ236、及び最後のボックスねじ238を含む。断面図に見られる個々のボックスねじ231の数は、ボックスねじ溝230がボックスねじ220の長さを通して回転する全回転数に依存し得る。例えば、ボックスねじ溝230がボックスねじ220の長さ全体にわたって回転する全回転数が5つの場合、雌管連結部210の断面図において、5つの個々のボックスねじ231が見られることができる。ボックスねじ220の長さ全体にわたる回転の全回転数は、5つよりも少なくても多くてもよく、この場合、断面図において見られる個々のボックスねじ231は5つよりも少ないか、又は5つよりも多くなる。
【0030】
ボックスねじ溝230は、ボックスルート242、ボックスクレスト244、ボックスロードフランク246、及びボックススタブフランク248を含み得る。ボックスルート242は、第1の管200の外径に最も近い表面である。雌管連結部210のボックスねじ220は、ボックスねじ220の直径が、第1の管の端面212で大きく、長手方向軸線110に沿って、第1の管200の反対側の端部に向けて小さくなるように、半径方向内向きにテーパが付けられている。図2に示されるように、ボックスねじ220は、管の長手方向軸線110から測定されたボックステーパ角度Aを有する。ボックステーパ角度Aは、典型的には、0.1°~10°であり、例えば、1.5°~5°の範囲であり得る。ボックステーパ角度Aは、典型的には、少なくとも0.1°、又は少なくとも0.5°、又は少なくとも1°であってよい。
【0031】
ボックステーパ角度Aは、ボックスねじ220を通して一定であってよく、その結果、それぞれの個々のボックスねじ231を横切る直線となる。幾つかの非限定的な実施形態又は態様において、ボックステーパ角度Aは、ボックスねじ220を横切って変化してもよく、その結果、個々のボックスねじ231は、雌管連結部210のボックスねじ220を横切って凹状曲線又は凸状曲線を形成する。幾つかの非限定的な実施形態又は態様において、ボックステーパ角度Aは、ボックスねじ220を横切って変化し、その結果、ボックスねじ220を横切る直線、凸状曲線及び/又は凹状曲線の幾つかの組合せとなる。
【0032】
ボックスねじ溝230が長手方向軸線110と平行して雌管連結部210に沿って螺旋状に進むにつれて、ボックスルート242の直径は、ボックスねじ溝230の少なくとも一部分が雌管連結部210のテーパに沿って減少し得る。ボックスルート242の直径が減少すると、ボックスねじ溝230のその位置では、ボックスルート242の直径が大きいボックスねじ溝230の別の位置と比較して、管壁の厚さが増加する。
【0033】
ボックススタブフランク248は、第1の管の端面212に向いたボックスねじ溝230の側面である。ボックススタブフランクエッジ258は、ボックススタブフランク248におけるボックスねじ溝230の外縁である。長手方向軸線110に沿った同一断面図において隣接する2つのボックススタブフランクエッジ258間の距離は、ボックススタブフランクリードSFLである。ボックススタブフランクリードSFLは、ボックスねじ溝230の少なくとも一部を通して等しいか又は実質的に等しくてよい。長手方向軸線110に沿う第1の管200の断面図においてボックススタブフランクリードSFLは、ボックスねじ溝230の全体を通じて一定又は実質的に一定のままであってよい。例えば、1番目のボックスねじ232のボックススタブフランクリードSFL及び2番目のボックスねじ234のボックススタブフランクリードSFLは、最後から2番目のボックスねじ236のボックススタブフランクリードSFL及び最後のボックスねじ238のボックススタブフランクリードSFLに等しいか又は実質的に等しくてよい。
【0034】
ボックスロードフランク246は、第1の管の端面212から離れる方向を向いたボックスねじ溝230の側面である。ボックスロードフランクエッジ256は、ボックスロードフランク246のボックスねじ溝230の外縁である。長手方向軸線110に沿った同じ断面図において隣接する2つのボックスロードフランクエッジ256間の距離は、ボックスロードフランクリードLFLである。ボックスロードフランクリードLFLは、ボックスねじ溝230の少なくとも一部分を通して等しいか、又は実質的に等しくてよい。第1の管200の長手方向軸線110に沿う断面図におけるボックスロードフランクリードLFLは、ボックスねじ溝230の全体にわたって一定又は実質的に一定のままであってよい。例えば、1番目のボックスねじ232のボックスロードフランクリードLFLと2番目のボックスねじ234のボックスロードフランクリードLFLとの間の距離は、最後から2番目のボックスねじ236のボックスロードフランクリードLFLと最後のボックスねじ238のボックスロードフランクリードLFLと等しいか又は実質的に等しくてもよい。
【0035】
ボックスクレスト244は、1つのボックスねじ231のボックススタブフランクエッジ258と、隣接するボックスねじ231のボックスロードフランクエッジ256との間にあって、ボックスねじ溝230の外側のボックスねじ220の表面である。
【0036】
ボックススタブフランク248及び/又はボックスロードフランク246は角度を形成されたボックスねじ溝230がダブテール形状に形成され、ボックスルート242が、同じボックスねじ231のボックススタブフランクエッジ258とボックスロードフランクエッジ256の間の水平距離よりも広くなるようにしている。
【0037】
ボックスねじ220のボックスルート242は、長手方向軸線110に沿う長手方向において、第1の管の端面212から第2の管の反対側端部の長手方向の幅が減少し得る。図2に示すように、ボックスのルートの幅はWBNで表され、Nは、1番目のボックスのルートの幅WB1から最後のボックスのルートの幅WBLまでのボックスの番号である。例えば、WB2は、2番目のボックスのルートの幅を表し、WB3は、3番目のボックスのルートの幅を表し、WB4は、4番目のボックスのルートの幅を表す。ボックスねじ220の幅の変化率は、典型的には、WBLがWB1よりも80%小さくてよく、例えば、75%以下、又は50%以下である。ボックスねじ220の幅の変化率の結果、最後のボックスのルートの幅WBLは、1番目のボックスのルートの幅WB1よりも小さい。ボックスの各ボックスルートは、前のボックスのボックスルートよりも小さくすることができる。例えば、WB1>WB2>WB3>WB4>・・・>WBLである。ボックスルート242の幅の変化率は、ボックスねじ220の全体を通じて一定であってもよい。幾つかの非限定的な実施形態又は態様において、ボックスルート242の幅の変化率は、ボックスねじ220の全体にわたって可変であってよく、例えば、ボックスルート242の幅の変化は増加率及び/又は減少率である。幾つかの非限定的な実施形態又は態様において、ボックスルート242の幅の変化率は、ボックスねじ220の一部を0とすることができ、その結果、ボックスねじの一部を通してボックスルート242の幅は一定である。例えば、WB1>WB2=WB3=WB4>・・・>WBL、又はWB1>WB2>WB3=WB4=・・・=WBLである。
【0038】
引き続き図2における幾つかの非限定的な実施形態又は態様において、雄管連結部310の断面図を参照すると、一連の個々のピンねじ331があり、該ピンねじは、1番目のピンねじ332、2番目のピンねじ334、中間のピンねじ335、最後から2番目のピンねじ336、及び最後のピンねじ338を含む。断面図に見られる個々のピンねじ331の数は、ピンねじ歯330がピンねじ320の長さを通して回転する全回転数に依存し得る。例えば、ピンねじ歯330がピンねじ320の長さ全体にわたって回転する数が5回転の場合、5つの個々のピンねじ331が雄管連結部310の断面図に見られることができる。ピンねじ320の長さ全体にわたる回転数は5回より少なくてもよく、5回より多くてもよく、その場合、断面図に見られるピンの数は5つよりも少ないか、又は5つよりも多い。
【0039】
ピンねじ歯330は、ピンルート342、ピンクレスト344、ピンロードフランク346、及びピンスタブフランク348を含み得る。ピンルート342は、第2の管300の外径に最も近い表面である。雄管連結部310のピンねじ320の直径は、第2の管の端面312で小さく、第2の管300の反対側端部に向けて長手方向軸線110に沿う方向で大きくなるように、半径方向外向きにテーパが付けられている。図2に示されるように、ピン331は、管の長手方向軸線110から測定されたピンテーパ角度Aを有する。ピンテーパ角度Aは、典型的には、0°~10°であり、例えば、1.5°~5°の範囲であってよい。ピンテーパ角度Aは、少なくとも0.1°、又は少なくとも0.5°、又は少なくとも1°であってよい。
【0040】
ピンテーパ角度Aは、ピンねじ320を通して一定であってよく、その結果、個々の各ピンねじ331を横切って直線となる。幾つかの非限定的な実施形態又は態様において、ピンテーパ角度Aは、ピンねじ320を横切って変化してもよく、その結果、個々のピンねじ331は、雄管連結部310のピンねじ320を横切って凹状曲線又は凸状曲線を形成する。幾つかの非限定的な実施形態又は態様において、ピンテーパ角度Aは、ピンねじ320を横切って変化し、その結果、ピンねじ320を横切る直線、凸状曲線、及び/又は凹状曲線の幾つかの組合せとなる。
【0041】
ピンスタブフランク348は、第2の管の端面312に向いたピンねじ歯330の側面である。ピンスタブフランクエッジ358は、ピンスタブフランク348のピンルート342の外縁である。長手方向軸線110に沿った同じ断面図において隣接する2つのピンスタブフランクエッジ358の間の距離は、ピンスタブフランクリードSFLである。ピンスタブフランクリードSFLは、ピンねじ歯330の少なくとも一部分を通して等しいか、又は実質的に等しくてよい。長手方向軸線110に沿った第2の管300の断面図における2つの隣接するピンスタブフランクリードSFLは、ピンねじ歯330の全体を通じて一定又は実質的に一定のままであってもよい。例えば、1番目のピンねじ332のピンスタブフランクリードSFL及び2番目のピンねじ334のピンスタブフランクリードSFLは、最後から2番目のピンねじ336のピンスタブフランクリードSFL及び最後のピンねじ338のピンスタブフランクリードSFLと等しいか又は実質的に等しくてよい。長手方向軸線110に沿った第2の管300の断面図におけるピンスタブフランクリードSFLは、長手方向軸線110に沿った第1の管200の断面図におけるボックススタブフランクリードSFLより小さくてもよいし、大きくてもよい。
【0042】
ピンロードフランク346は、第2の管の端面312から離れる方向を向いたピンねじ歯330の側面である。ピンロードフランクエッジ356は、ピンロードフランク346のピンルート342の外縁である。長手方向軸線110に沿った同じ断面図において隣接する2つのピンロードフランクエッジ356の間の距離は、ピンロードフランクリードLFLである。ピンロードフランクリードLFLは、ピンねじ歯330の少なくとも一部分を通して等しいか、又は実質的に等しくてよい。第2の管300の長手方向軸線110に沿った断面図における2つの隣接するピンロードフランクリードLFLは、ピンねじ330の全体を通して一定又は実質的に一定のままであってよい。例えば、1番目のピンねじ332のピンロードフランクリードLFL及び2番目のピンねじ334のピンロードフランクリードLFLは、最後から2番目のピンねじ336のピンロードフランクリードLFL及び最後のピンねじ338のピンロードフランクリードLFLと同じか実質的に同じであってよい。長手方向軸線110に沿った第2の管300の断面図におけるロードフランクリードLFLは、長手方向軸線110に沿った第1の管200の断面図におけるボックスロードフランクリードLFLよりも大きくてよいし、小さくてもよい。
【0043】
ピンクレスト344は、ピンねじ歯330に沿った個々のピンねじ331の先端部におけるピンねじ320の外面である。
【0044】
ピンスタブフランク348及びピンロードフランク346は、角度が形成されたピンねじ歯330がダブテール形状に形成され、ピンルート342がピンねじ歯330の隣接する個々のピンねじ331の2つのピンクレスト344間の水平距離よりも広くなるようにしている。
【0045】
ピンねじ320のクレスト344は、長手方向軸線110に沿った長手方向において、第2の管の端面312から第2の管の反対側端部に向けて長手方向の幅が大きくなり得る。図2に示すように、ピンのクレストの幅は、WPNで表され、Nは、最初のピンのクレストの幅WP1から最後のピンのクレストの幅WPLに至るピンの番号である。例えば、WP2は2番目のピンのクレストの幅を表し、WP3は3番目のピンのクレストの幅を表し、WP4は4番目のピンのクレストの幅を表す。ピンねじ320の幅の変化率は、典型的には、WP1がWPLよりも80%小さく、例えば、75%以下、又は50%以下であってよい。ピンのクレストの幅の変化率は、ピンねじ320の全体にわたって一定であってよい。幾つかの非限定的な実施形態又は態様において、ピンクレストの幅の変化率は、ピンねじ320の全体を通して可変であってよく、例えば、ピンクレストの幅は、増加率及び/又は減少率であってよい。幾つかの非限定的な実施形態又は態様において、ピンクレストの幅の変化率は、ピンねじ320の一部分を通して0であり、その結果、ピンクレスト344の幅はピンねじ320の一部分を通して一定の結果となる。例えば、WPL>...>WP4=WP3=WP2>WP1、又はWPL=...=WP4=WP3>WP4>WP1である。
【0046】
ボックスねじ220は、ピンねじ320を受けるように構成され、第1の管200と第2の管300の組立体が作られる。組立体は、液密及び/又は気密であるため、漏れは最小又はゼロになる。組立体は、管の端部どうしを連結するためのバックオンユニットなどの典型的なツールを通じて達成されるトルク(例えば、5,000フィート・ポンド~50,000フィート・ポンド)等の低トルクを通じて達成され得る。
【0047】
この組立体では、2つの管を連結する際に、ねじコンパウンド(例えばドープ)の使用を最小限に抑えることができる。2つの管の端部が組み立てられる際、ねじは、ねじコンパウンドが連結の全体を通じて様々な位置でトラップされることなく、組立体の一端に向けて押し込まれる。このため、組み立てに使用されるねじコンパウンドを少なくすることができる。組立体は、2つの管の間を、金属対金属シーリング部材を用いて作られることもできるし、金属対金属シーリング部材を使用することなく作られることもできる。
【0048】
第1の管200のテーパと第2の管300のテーパは、ボックスねじ220が、ピンねじ320の一部分と最初に接触して係合する部分が、連結時の内径に近いピンねじ320の部分(例えば、第2の管の端面312に近い部分)で行われるようにバイアスされている(biased)。これにより、半径方向が係合した連結部が得られる。ボックステーパ角度Aは、ピンテーパ角度Aと異なっていてもよい。ボックステーパ角度Aは、ピン角度Aよりも大きくてもよい。ピンテーパ角度Aは、典型的には、ボックステーパ角度Aより少なくとも2°小さい。例えば、ピンテーパ角度Aは、ボックステーパ角度Aよりも少なくとも1°小さくてもよく、ボックステーパ角度Aよりも少なくとも0.5°小さくてもよい。幾つかの非限定的な実施形態又は態様において、ボックステーパ角度Aは、係合を反対方向にバイアスさせるために、ピンテーパ角度Aよりも小さくてよい。幾つかの非限定的な実施形態又は態様において、ピンテーパ角度Aは0°であってよく、ボックステーパ角度Aはピンテーパ角度Aよりも大きくてよく、又は小さくてもよい。幾つかの非限定的な実施形態又は態様において、ボックステーパ角度Aは0°であってよく、ピンテーパ角度Aはボックステーパ角度Aより大きくてもよく、又は小さくてもよい。
【0049】
ボックスねじ220及び/又はピンねじ320の幅の変化は、最後のボックスのルートの幅WBが最初のピンのクレストの幅WP1よりも小さくなるようにバイアスされることができる。ボックススタブフランクリードSFLは、ピンスタブフランクリードSFLより小さくてもよい。幾つかの非限定的な実施形態又は態様において、ボックススタブフランクリードSFLは、ピンスタブフランクリードSFLより大きくても、又は等しくてもよい。ボックスロードフランクリードLFLは、ピンロードフランクリードLFLより大きくてもよい。幾つかの非限定的な実施形態又は態様において、ボックスロードフランクリードLFLは、ピンロードフランクリードLFLより小さくてもよいし、等しくてもよい。
【0050】
ボックスねじ220のボックスルート242の幅の変化率は、ピンねじ320のピンクレスト344の幅の変化率と異なってもよい。ボックスねじ220のボックスルート242がボックスねじ220の螺旋方向に沿って第1の管の前面212の方向に広くなる割合は、ピンクレスト344がピンねじ320の螺旋方向に沿って第2の管の前面312から離れる方向に広くなる割合よりも速くてもよい。組み立てられると、ボックスルートとピンクレストの幅の変化率の差によって、ピンが第2の管の前面312から離れる方向でのボックスに対するタイトさが弱くなり得る。また、ボックスルートの幅とピンクレストの幅との差は、第2の管の端面312と第1の管の端面212との間で増加してもよい。例えば、WB1-WPL>...>WB2-WP4>WB3-WP3>WB4-WP2>WBL-WP1。ボックスねじ220のボックスルート242の幅の変化率は、ピンねじ320のピンクレスト344の幅の変化率よりも0%~10%大きい範囲であってよく、例えば、0.5%~5%の範囲である。ボックスねじ220のボックスルート242の幅の変化率は、ピンねじ320のピンクレスト344の幅の変化率より少なくとも0.1%大きくてよく、例えば、少なくとも0.5%、又は少なくとも1%である。
【0051】
ピンねじ320のピンクレスト344の幅の変化率は、ピンねじ320の長さ全体にわたって一定であってもよいし、ピンねじ320の一部分のみが一定であってもよい。ボックスねじ220のボックスシート242の幅の変化率は、ボックスねじ220の長さ全体にわたって一定であってもよいし、ボックスねじ220の一部分のみが一定であってもよい。幾つかの非限定的な実施形態又は態様において、幅の変化率は、ボックスねじ220及びピンねじ320の一部分が等しくてもよい。例えば、WB1-WPL>...>WB2-WP4=WB3-WP3=WB4-WP2>WBL-WP1。幾つかの非限定的な実施形態又は態様において、ボックスシート242の幅の拡がり率は、ピンクレスト344の幅の増加率よりも小さくてよい。
【0052】
テーパバイアス及び幅バイアスは、連結の力を、ロードフランク面246、346、及び/又はスタブフランク面258、358に集中させることができる。バイアスを設けることにより、連結プロセスでの管の回転に際して、一番目のピンねじ332がボックスねじ220と接触する最初のピンとすることができる。次いで、2番目のピンねじ334及びそれ続く各ピンは、制御された順番にてボックスねじ220に接触することができる。
【0053】
組み立てられた後は、第1の管200と第2の管300の連結部は、極めて高いトルクに耐えることができる。
【0054】
管は、管の一方の端部にボックスねじ220、管の反対側の端部にピンねじ320、管の両端部にボックスねじ220、又は管の両端部にピンねじ320を有することができる。
【0055】
図3a~3c及び図4a~4cは、ねじ付き管の連結の3つの異なる構成における応力集中を示す。図3a~3c及び図4a~4c中、色の濃い陰影部は、応力が増加したことを表している。応力が大きいほど、連結部の耐漏れ性が高いことを示す。
【0056】
図3aには、名目上テーパのねじを有するボックスねじ520と連結されたピンねじ510が示されており、ルートクレスト応力(root crest stresses)が最小である。拡大された図4aに示されるように、最小のルートクレスト応力は、ピンねじ510の先端部410で見られることができる。1番目のピンねじ602、2番目のピンねじ604、及び3番目のピンねじ606の周囲の陰影は、ピンねじ510の反対側の端部の周囲の陰影よりも有意に暗くない。なお、チャンファー部600は、この分析のためのピンねじとして考慮されていないことに留意される。
【0057】
図3bには、バイアスされたテーパを有するボックスねじ540と連結されたピンねじ530が示されており、ルートクレスト応力が増加している。拡大された図4bに示されるように、ルートクレスト応力の増加は、ピンねじ530の先端部420で見られることができる。1番目のピンねじ612の周囲の陰影は、名目上テーパの1番目のピンねじ602と比較してはるかに暗く、応力が増加したことを示している。2番目のピンねじ614及び3番目のピンねじ616での応力は、順次減少したことを示しているが、それでもその応力は、名目上テーパに関するピンの応力よりも依然として高い。図3aと同様に、チャンファー部610は、この解析のためのピンとして考慮されない。
【0058】
図3cには、バイアスされたテーパを有し、最初の幾つかのピンねじにフランクロードが集中的に負荷するボックスねじ560と連結されたピンねじ550が示されており、ルートクレスト応力は、バイアスされたテーパだけの場合と比較して有意に増加している。拡大された図4cに示されるように、増加したルートクレスト応力は、ピンねじ550の先端部430で見られることができる。1番目のピンねじ622の周囲の陰影は、1番目のピンねじ622の側面での応力集中が非常に大きいことを示している。この高い応力集中は、1番目のピンねじ622の後のピンねじでは順次減少するが、2番目のピンねじ624、3番目のピンねじ626、及びその後のピンねじにも高い応力集中が存在する。図3cにも示されるように、個々のピンねじの先端部430における応力は、ピンねじ550の後端における個々のピンねじの応力よりも有意に高い。図3a及び図3bと同様に、チャンファー部620は、この解析のためのピンとして考慮されない。
【0059】
図5は、有限要素解析グラフを含み、図3a~3c及び図4a~4cに示される3つの異なるタイプのねじ連結体の様々なねじの特徴について、ロードフランク、スタブフランク及びピンルートでの平均接触応力を示している。有限要素解析では、バイアスされたテーパ及びバイアスされたくさびを導入することで、ねじのロードフランク、スタブフランク、ルート及び/又はクレストにおける接触応力が向上することを実証している。接触応力の向上は、ねじのシーリング性能の向上に直接関係する。
【0060】
本発明の管セクション及びねじ付き管の連結体は、当業者に既知の適切な材料から作られることができる。例えば、管セクション及び連結体は、全米腐食技術者協会(NACE)規格に適合した耐食性合金(Corrosion Resistant Alloys;CRAs)を含むことができる。CRA材料の代表例として、ステンレス鋼、オーステナイト鋼、高合金オーステナイト鋼、マルテンサイト鋼、析出硬化鋼、二相鋼、フェライト鋼、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリマー管材料などが挙げられる。
【0061】
本明細書で使用される「含む(including)」、「含む(containing)」及び同様の用語は、本願の文脈において「含む(comprising)」と同義であると理解される。したがって、制限や制約の無いオープンエンドであり、記載されていない追加の要素、材料、段階又は方法ステップの存在を排除するものではない。本明細書で使用される「...からなる(consisting of)」の用語は、本願の文脈において、特定されていない任意の要素、材料、段階又は方法ステップの存在を排除するものと理解される。本明細書で使用される「本質的に...からなる」の用語は、本願の文脈において、該当する場合には、特定された要素、材料、段階、又は方法ステップを含み、また、本発明の基本的特性又は新規特性に実質的に影響を与えなければ、特定されていない要素、材料、段階、又は方法ステップを含むのと理解される。
【0062】
本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるが、具体的実施例で示された数値は、可能な限り正確に報告されている。しかし、どの数値も、それぞれの試験測定で存在する標準偏差から必然的に生じるある程度の誤差を本質的に含んでいる。
【0063】
また、本明細書で記載されたすべての数値範囲は、そこに包含されるすべての下位範囲を含むことが意図されていることを理解されるべきである。例えば、「1~10」の範囲は、記載された最小値である1と、記載された最大値である10を含み、さらに1と10との間にあるすべてのサブ範囲を含むことが意図されており、すなわち、最小値は1に等しいか又は1よりも大きく、最大値は10に等しいか又は10よりも小さい。
【0064】
本明細書において、特に記載のない限り、単数形の使用は複数形を含み、複数形は単数形を包含する。また、本明細書において、「又は」の使用は、特に記載のない限り、「及び/又は」を意味し、特定の例において「及び/又は」が明示的に使用されることがあっても、その限りではない。本明細書及び添付の請求項において、冠詞「a」、「an」、及び「the」は、明示的かつ明白に1つの物に限定されない限り、複数の物を含む。
【0065】
本発明について、具体的な実施形態を例示目的で記載したが、当業者であれば、発明から逸脱することなく多くの変形が可能であることは明らかであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
【国際調査報告】