(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】抗体関連型拒絶反応を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/57 20060101AFI20231130BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A61K38/57
A61P37/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530546
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 US2021059872
(87)【国際公開番号】W WO2022109124
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597070264
【氏名又は名称】ツェー・エス・エル・ベーリング・ゲー・エム・ベー・ハー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ロバーツ
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ウグニス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーネ・フォークト
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084CA18
4C084CA53
4C084DC32
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB08
(57)【要約】
本発明は、対象において抗体関連型拒絶反応を処置する方法であって、以下の工程:(a)1回分またはそれ以上のiv用量のC1-INHを静脈内投与する工程、(b)少なくとも10回分のsc用量のC1-INHを数週間にわたって皮下投与し、各週に少なくとも1回分のsc用量が投与される工程を含むスケジュールに従って、対象にC1-INHを投与することを含む、方法に関する。本発明はさらに、移植レシピエントにおいて抗体関連型拒絶反応を処置する方法であって、C1-INHを少なくとも10週間にわたって皮下投与することを含み、各週に少なくとも1回分のsc用量が投与される、方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植レシピエントにおける抗体関連型拒絶反応を処置する方法であって、
以下の工程:
(a)1回分またはそれ以上のiv用量のC1-INHを静脈内投与する工程、次いで
(b)C1-INHを少なくとも10週間にわたって皮下投与し、各週に少なくとも1回分のsc用量が投与される工程
を含むスケジュールに従って、レシピエントにC1-INHを投与すること
を含む、方法。
【請求項2】
C1-INHはヒトC1-INHである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ヒトC1-INHは血漿由来である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ヒトC1-INHは組換え型である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)において、C1-INHは40~180IU/kgのiv用量で投与される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)において、C1-INHは40~180IU/kgのsc用量で投与される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
各iv用量および/または各sc用量は40~120IU/kgのC1-INHを含む、請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)において、少なくとも10回分のsc用量のC1-INHが投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも2回分のiv用量のC1-INHが2~21日間にわたって投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
3~10回分のiv用量のC1-INHが4~16日間にわたって投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
3~5回分のiv用量のC1-INHが7~13日間にわたって投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
iv用量は、1日おき、2日おきまたは3日おきに投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程(a)において、総量7,000~36,000IUのC1-INHが静脈内投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程(b)において、総量4,000~15,000IUのC1-INHが毎週投与される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
sc用量のC1-INHが毎週約2回または約3回投与される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも20回分のsc用量のC1-INHが投与される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
sc用量は、iv用量の投与の期間の少なくとも5倍長い期間にわたって投与される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
静脈内投与される場合よりも少なくとも2倍多いC1-INHが皮下投与される、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
合計で50,000IUより多いC1-INHが投与される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
合計で100,000IUより多いC1-INHが投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
iv用量およびsc用量のためのC1-INHの製剤は同一である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
各iv用量は各sc用量と同じ量のC1-INHを含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
C1-INHは200~800IU/mLの濃度で静脈内および/または皮下投与される、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
レシピエントは同種移植片レシピエントである、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
レシピエントは移植レシピエントである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
レシピエントは腎臓、肺、心臓、肝臓、腸、または膵臓移植レシピエントである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
レシピエントは腎臓移植レシピエントである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
レシピエントは以下の特徴:
(a)移植の60日以内に≧40mL/分/1.73m
2の移植後eGFRを有する;
(b)尿量の50%増加を有する;
(c)移植後の最初の7日間の間の血清クレアチンの50%減少を有する;または
(d)血漿交換ありまたはなしでのIVIgでの処置に不応性である
の1つまたはそれ以上を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
対象は:
(a)血漿交換ありもしくはなしおよびリツキシマブありもしくはなしでのIVIg;または
(b)IVIgありもしくはなしでの副腎皮質ステロイドおよびカルシニューリン阻害剤
で以前に処置されている、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
移植の後に開始される、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
移植の3ヵ月よりも後に開始される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
移植の前に開始される、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
移植の4週間以内に開始される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
抗体関連型拒絶反応は不応性抗体関連型拒絶反応である、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
抗体関連型拒絶反応は活動性抗体関連型拒絶反応である、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
抗体関連型拒絶反応は慢性活動性抗体関連型拒絶反応である、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
C1-INHの投与に加えてIVIgが投与される、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
IVIgは3~5週間毎に輸注として投与され、各輸注は0.1~2g/kgのIVIgを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
sc用量の少なくとも一部はレシピエントによって自己投与される、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
同種移植片移植レシピエントにおける抗体関連型拒絶反応を処置する方法であって、
以下の工程:
(a)3~10回分のiv用量の40~120IU/kgのC1-INHを4~16日間にわたって静脈内投与する工程、次いで
(b)少なくとも20回分のsc用量の40~120IU/kgのC1-INHを毎週約2回または3回、10週間またはそれ以上にわたって皮下投与する工程
を含むスケジュールに従って、レシピエントにC1-INHを投与すること
を含む、方法。
【請求項41】
同種移植における抗体関連型拒絶反応を処置する方法であって、
以下の工程:
(a)各iv用量が2,500~8,500IUのC1-INHを含む3~10回分のiv用量を静脈内投与する工程、次いで
(b)各sc用量が2,500~85,00IUのC1-INHを含む少なくとも20回分のsc用量を、毎週2~3回、10週間またはそれ以上にわたって皮下投与する工程
を含むスケジュールに従って、レシピエントにC1-INHを投与すること
を含む、方法。
【請求項42】
同種移植における抗体関連型拒絶反応を処置する方法であって、
以下の工程:
(a)7,000~36,000IUのC1-INHを分割iv用量で2~21日間にわたって静脈内投与する工程、次いで
(b)少なくとも50,000IUのC1-INHを分割sc用量で少なくとも10週間にわたって皮下投与し、各週に少なくとも1回分のsc用量が投与される工程
を含むスケジュールに従って、レシピエントにC1-INHを投与すること
を含む、方法。
【請求項43】
移植の後3ヵ月以内のような、移植の後に開始される、請求項40~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
抗体関連型拒絶反応は不応性抗体関連型拒絶反応、活動性抗体関連型拒絶反応、または慢性抗体関連型拒絶反応である、請求項40~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
レシピエントは腎臓、肺、心臓、肝臓、腸、または膵臓移植レシピエントのような移植レシピエントである、請求項40~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
移植レシピエントにおける抗体関連型拒絶反応を処置する方法であって、C1-INHを少なくとも10週間にわたって皮下投与することを含み、各週に少なくとも1回分のsc用量が投与される、方法。
【請求項47】
C1-INHはヒトC1-INHである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ヒトC1-INHは血漿由来である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
ヒトC1-INHは組換え型である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
C1-INHは40~240IU/kg、40~180IU/kg、40~120IU/kg、40~90IU/kg、60~200IU/kg、60~180IU/kg、120~200IU/kg、または120~180IU/kgのiv用量で投与される、請求項46~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
少なくとも10回分のsc用量のC1-INHが投与される、請求項46~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
4,000~15,000IUの量のC1-INHが毎週投与される、請求項46~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
sc用量のC1-INHが毎週約2回または約3回投与される、請求項46~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
少なくとも20回分のsc用量のC1-INHが投与される、請求項46~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
合計で50,000IUより多いC1-INHが投与される、請求項46~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
合計で100,000IUより多いC1-INHが投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
C1-INHは200~800IU/mLの濃度で皮下投与される、請求項46~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
レシピエントは同種移植片レシピエントである、請求項46~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
レシピエントは臓器移植レシピエントである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
レシピエントは腎臓、肺、心臓、肝臓、腸、または膵臓移植レシピエントである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
レシピエントは腎臓移植レシピエントである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
レシピエントは以下の特徴:
(a)移植の60日以内に≧40mL/分/1.73m
2の移植後eGFRを有する;
(b)尿量の50%増加を有する;
(c)移植後の最初の7日間の間の血清クレアチンの50%減少を有する;または
(d)血漿交換ありまたはなしでのIVIgでの処置に不応性である
の1つまたはそれ以上を有する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
対象は:
(a)血漿交換ありもしくはなしおよびリツキシマブありもしくはなしでのIVIg;または
(b)IVIgありもしくはなしでの副腎皮質ステロイドおよびカルシニューリン阻害剤
で以前に処置されている、請求項46~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
対象は、IVIgでの処置に対する補助剤としてのC1-INHで処置される、請求項46~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
移植の3ヵ月よりも後のような、移植の後に開始される、請求項46~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
移植の前に開始される、請求項46~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
移植の4週間以内に開始される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
抗体関連型拒絶反応は不応性抗体関連型拒絶反応である、請求項46~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
抗体関連型拒絶反応は活動性抗体関連型拒絶反応である、請求項46~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
抗体関連型拒絶反応は慢性活動性抗体関連型拒絶反応である、請求項46~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
C1-INHの投与に加えてIVIgが投与される、請求項46~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
IVIgは3~5週間毎に輸注として投与され、各輸注は0.1~2g/kgのIVIgを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
sc用量の少なくとも一部はレシピエントによって自己投与される、請求項46~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
静脈内用量のC1-INHはレシピエントに投与されない、請求項46~73のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、本明細書に記載される投与計画に従って、C1阻害剤(C1-INH)を静脈内投与し、その後に皮下投与することによって、対象における抗体関連型拒絶反応(AMR)を処置するための方法に関する。本開示はさらに、C1阻害剤(C1-INH)を皮下にのみ投与することによって対象における抗体関連型拒絶反応(AMR)を処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固形臓器移植は、近代医学の最も難解な分野の一つである。末期の腎臓、心臓、肝臓、肺または膵臓の疾患を患う患者の命を救い得るが、現代の免疫抑制にもかかわらず、臓器拒絶反応による同種移植片喪失は、依然として主な移植後合併症である。抗体関連型拒絶反応(AMR)は、移植片喪失の最も重要な原因の一つとして認識されてきた(非特許文献1)。免疫グロブリン静注(IVIg)または血漿交換のような従来の療法でのAMRの処置は、いつもうまくいくわけではない(非特許文献2)。患者が処置に反応しない場合、移植片機能は一般に、同種移植片が喪失されるまで徐々に減退する。抗体関連型拒絶反応は、同種移植片に対するドナー特異的抗体(DSA)によって媒介される。これらのドナー特異的抗体は、移植の前に存在し得るか、または移植後にde novo生成される。それらはしばしば移植された臓器の血管内皮および細管に存在するヒト白血球抗原(HLA)分子を標的とする(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。ドナー特異的抗体と同種移植片の抗原との間の相互作用は、補体カスケードの伝統的な経路を活性化させる。この活性化は、同種移植片の炎症媒介性組織損傷に有意に寄与する。したがって、抗体関連型拒絶反応の処置のために探究されている一つのアプローチは、補体系の下方制御である(非特許文献2)。
【0003】
補体カスケードの伝統的な経路を阻害する糖タンパク質は、C1阻害剤(C1-INH)である。これは、セリンプロテアーゼの活性を、それらの触媒活性を阻害することによって制御する、セリンプロテアーゼ阻害剤(セルピン)のタンパク質ファミリーに属する(非特許文献6)。いくつかの研究が、抗体関連型拒絶反応を処置するためのその使用を探究することを開示している。例えば、1つの研究において、20IU/kgのC1阻害剤(Berinert(登録商標))が10人の患者に手術中に静脈内投与され、次いで7回分の用量について毎週2回投与された(特許文献1;非特許文献7)。後の研究において、20IU/kgのC1阻害剤(Berinert(登録商標))が6人の患者に1、2、および3日目に静脈内投与され、次いで6ヵ月間毎週2回投与された(非特許文献8)。さらなる研究において、9人の対象がC1阻害剤(Cinryze(登録商標))を、1日目に5,000IUの初回輸注で、その後3、5、7、9、11、および13日目に2,500IUで、静脈内投与された(特許文献2;非特許文献9;特許文献3も参照のこと)。この投与計画はまた、第III相臨床試験において研究されたが、データ監視委員会によって行われた臨時の分析に従って、予め規定された不要の基準を満たした場合に、試験は早期終了していた(特許文献4)。連続した7日間にわたる、毎日の100IU/kgの組換えC1阻害剤の静脈内投与についてのさらなる研究は、一人の患者も登録する前に取りやめになった(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】NCT01134510
【特許文献2】NCT01147302
【特許文献3】EP3071219B1
【特許文献4】NCT02547220
【特許文献5】NCT01035593
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Davisら、Transplant.Rev.2017年;31(1)47~54頁
【非特許文献2】Levineら、Semin.Immunol.2012年;24(2):136~142頁
【非特許文献3】Valenzuelaら、J.Clin.Invest.2017年;127(7):2492~2504頁
【非特許文献4】Crossら、Front.Immunol.2018年;9(106):1~7頁
【非特許文献5】Irureら、Transplant.Proc.2016年;48(9):2888~2890頁
【非特許文献6】Bockら、Biochemistry.1986年;25(15):4292~4301頁
【非特許文献7】Voら、Transplantation.2015年;99(2):299~308頁
【非特許文献8】Vigliettiら、Am.J.Transplant.2016年;16(5):1596~1603頁
【非特許文献9】Montgomery、Am.J.Transplant.2016年;16(2):3468~3478頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の研究は、C1阻害剤についての種々の投与計画が探究されているが、依然として、従来の療法がうまくいかない場合に使用し得る、抗体関連型拒絶反応を処置する改良された方法の必要性があることを示す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、抗体関連型拒絶反応を処置するための、改良された投与計画を見出した。本開示は、以下の実施形態(1)~(109)を含む:
【0008】
(1)移植レシピエントにおける抗体関連型拒絶反応を処置する方法であって、
以下の工程:
(a)1回分またはそれ以上のiv用量のC1-INHを静脈内投与する工程、次いで
(b)C1-INHを少なくとも10週間にわたって皮下投与し、各週に少なくとも1回分のsc用量が投与される工程
を含むスケジュールに従って、レシピエントにC1-INHを投与すること
を含む、方法。
【0009】
(2)C1-INHはヒトC1-INHである、実施形態(1)に記載の方法。
【0010】
(3)ヒトC1-INHは血漿由来である、実施形態(2)に記載の方法。
【0011】
(4)ヒトC1-INHは組換え型である、実施形態(2)に記載の方法。
【0012】
(5)工程(a)において、C1-INHは40~240IU/kgのiv用量で投与される、実施形態(1)~(4)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0013】
(6)工程(a)において、各iv用量は40~180IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(5)に記載の方法。
【0014】
(7)工程(a)において、各iv用量は40~120IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(5)に記載の方法。
【0015】
(8)工程(a)において、各iv用量は40~90IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(5)に記載の方法。
【0016】
(9)工程(a)において、各iv用量は60~240IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(5)に記載の方法。
【0017】
(10)工程(a)において、各iv用量は60~180IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(5)に記載の方法。
【0018】
(11)工程(a)において、各iv用量は60~120IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(5)に記載の方法。
【0019】
(12)工程(a)において、各iv用量は60~90IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(5)に記載の方法。
【0020】
(13)工程(a)において、各iv用量は120~240IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(5)に記載の方法。
【0021】
(14)工程(a)において、各iv用量は120~200IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(5)に記載の方法。
【0022】
(15)工程(b)において、各sc用量は40~240IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(1)~(14)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0023】
(16)工程(b)において、各sc用量は40~180IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(15)に記載の方法。
【0024】
(17)工程(b)において、各sc用量は40~120IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(15)に記載の方法。
【0025】
(18)工程(b)において、各sc用量は40~90IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(15)に記載の方法。
【0026】
(19)工程(b)において、各sc用量は60~240IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(15)に記載の方法。
【0027】
(20)工程(b)において、各sc用量は60~180IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(15)に記載の方法。
【0028】
(21)工程(b)において、各sc用量は60~120IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(15)に記載の方法。
【0029】
(22)工程(b)において、各sc用量は60~90IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(15)に記載の方法。
【0030】
(23)工程(b)において、各sc用量は120~240IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(15)に記載の方法。
【0031】
(24)工程(b)において、各sc用量は40~200IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(15)に記載の方法。
【0032】
(25)各iv用量および/または各sc用量は少なくとも40IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(1)~(24)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0033】
(26)各iv用量および/または各sc用量は少なくとも60IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(25)に記載の方法。
【0034】
(27)各iv用量および/または各sc用量は40~200IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(1)~(26)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0035】
(28)各iv用量および/または各sc用量は40~120IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(27)に記載の方法。
【0036】
(29)各iv用量および/または各sc用量は40~90IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(28)に記載の方法。
【0037】
(30)各iv用量および/または各sc用量は60~200IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(27)に記載の方法。
【0038】
(31)各iv用量および/または各sc用量は60~180IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(30)に記載の方法。
【0039】
(32)工程(b)において、少なくとも10回分のsc用量のC1-INHが投与される、実施形態(1)~(31)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0040】
(33)少なくとも2回分のiv用量のC1-INHが2~21日間にわたって投与される、実施形態(1)~(32)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0041】
(34)3~10回分のiv用量のC1-INHが4~16日間にわたって投与される、実施形態(33)に記載の方法。
【0042】
(35)3~5回分のiv用量のC1-INHが7~13日間にわたって投与される、実施形態(34)に記載の方法。
【0043】
(36)iv用量は、1日おき、2日おきまたは3日おきに投与される、実施形態(1)~(35)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0044】
(37)工程(a)において、総量7,000~36,000IUのC1-INHが静脈内投与される、実施形態(1)~(36)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0045】
(38)工程(b)において、4,000~15,000IUの量のC1-INHが毎週投与される、実施形態(1)~(37)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0046】
(39)sc用量のC1-INHが毎週約2回または約3回投与される、実施形態(1)~(38)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0047】
(40)少なくとも20回分のsc用量のC1-INHが投与される、実施形態(1)~(39)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0048】
(41)sc用量は、iv用量の投与の期間の少なくとも5倍長い期間にわたって投与される、実施形態(1)~(40)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0049】
(42)静脈内投与される場合よりも少なくとも2倍多いC1-INHが皮下投与される、実施形態(1)~(41)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0050】
(43)合計で50,000IUより多いC1-INHが投与される、実施形態(1)~(42)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0051】
(44)合計で100,000IUより多いC1-INHが投与される、実施形態(43)に記載の方法。
【0052】
(45)iv用量およびsc用量のためのC1-INHの製剤は同一である、実施形態(1)~(44)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0053】
(46)各iv用量は各sc用量と同じ量のC1-INHを含む、実施形態(1)~(45)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0054】
(47)C1-INHは200~800IU/mLの濃度で静脈内および/または皮下投与される、実施形態(1)~(46)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0055】
(48)レシピエントは同種移植片レシピエントである、実施形態(1)~(47)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0056】
(49)レシピエントは移植レシピエントである、実施形態(48)に記載の方法。
【0057】
(50)レシピエントは腎臓、肺、心臓、肝臓、腸、または膵臓移植レシピエントである、実施形態(49)に記載の方法。
【0058】
(51)レシピエントは腎臓移植レシピエントである、実施形態(50)に記載の方法。
【0059】
(52)レシピエントは以下の特徴:
(a)移植の60日以内に≧40mL/分/1.73m2の移植後eGFRを有する;
(b)尿量の50%増加を有する;
(c)移植後の最初の7日間の間の血清クレアチンの50%減少を有する;または
(d)血漿交換ありまたはなしでのIVIgでの処置に不応性である
の1つまたはそれ以上を有する、実施形態(51)に記載の方法。
【0060】
(53)対象はIVIgで以前に処置されており、場合によりさらに血漿交換および/もしくはリツキシマブおよび/もしくは副腎皮質ステロイドで処置されているか、または
対象は:
(a)血漿交換ありもしくはなしおよびリツキシマブありもしくはなしでのIVIg;または
(b)IVIgありもしくはなしでの副腎皮質ステロイドおよびカルシニューリン阻害剤
で以前に処置されている、実施形態(1)~(52)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0061】
(54)移植の後に開始される、実施形態(1)~(53)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0062】
(55)移植の3ヵ月よりも後に開始される、実施形態(54)に記載の方法。
【0063】
(56)移植の前に開始される、実施形態(1)~(53)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0064】
(57)移植の4週間以内に開始される、実施形態(1)~(56)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0065】
(58)抗体関連型拒絶反応は不応性抗体関連型拒絶反応である、実施形態(1)~(57)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0066】
(59)抗体関連型拒絶反応は活動性抗体関連型拒絶反応である、実施形態(1)~(58)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0067】
(60)抗体関連型拒絶反応は慢性活動性抗体関連型拒絶反応である、実施形態(1)~(58)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0068】
(61)C1-INHの投与に加えてIVIgが投与される、実施形態(1)~(60)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0069】
(62)IVIgは3~5週間毎に輸注として投与され、各輸注は0.1~2g/kgのIVIgを含む、実施形態(61)に記載の方法。
【0070】
(63)sc用量の少なくとも一部はレシピエントによって自己投与される、実施形態(1)~(62)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0071】
(64)同種移植片移植レシピエントにおける抗体関連型拒絶反応を処置する方法であって、
以下の工程:
(a)3~10回分のiv用量の40~120IU/kgのC1-INH、または40~90IU/kgのC1-INHを4~16日間にわたって静脈内投与する工程、次いで
(b)少なくとも20回分のsc用量の40~120IU/kgのC1-INH、または40~90IU/kgのC1-INHを毎週約2回または3回、10週間またはそれ以上にわたって皮下投与する工程
を含むスケジュールに従って、レシピエントにC1-INHを投与すること
を含む、方法。
【0072】
(65)同種移植における抗体関連型拒絶反応を処置する方法であって、
以下の工程:
(a)各iv用量が2,500~8,500IUのC1-INHを含む3~10回分のiv用量を静脈内投与する工程、次いで
(b)各sc用量が2,500~85,00IUのC1-INHを含む少なくとも20回分のsc用量を、毎週2~3回、10週間またはそれ以上にわたって皮下投与する工程
を含むスケジュールに従って、レシピエントにC1-INHを投与すること
を含む、方法。
【0073】
(66)同種移植における抗体関連型拒絶反応を処置する方法であって、
以下の工程:
(a)7,000~36,000IUのC1-INHを分割iv用量で2~21日間にわたって静脈内投与する工程、次いで
(b)少なくとも50,000IUのC1-INHを分割sc用量で少なくとも10週間にわたって皮下投与し、各週に少なくとも1回分のsc用量が投与される工程
を含むスケジュールに従って、レシピエントにC1-INHを投与すること
を含む、方法。
【0074】
(67)移植の後3ヵ月以内のような、移植の後に開始される、実施形態(64)~(66)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0075】
(68)抗体関連型拒絶反応は不応性抗体関連型拒絶反応、活動性抗体関連型拒絶反応、または慢性抗体関連型拒絶反応である、実施形態(64)~(67)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0076】
(69)レシピエントは腎臓、肺、心臓、肝臓、腸、または膵臓移植レシピエントのような移植レシピエントである、実施形態(64)~(68)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0077】
(70)実施形態(1)~(63)のいずれか1つに従う、実施形態(64)~(69)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0078】
(71)移植レシピエントにおける抗体関連型拒絶反応を処置する方法であって、C1-INHを少なくとも10週間にわたって皮下投与することを含み、毎週少なくとも1回分のsc用量が投与される、方法。
【0079】
(72)C1-INHはヒトC1-INHである、実施形態(71)に記載の方法。
【0080】
(73)ヒトC1-INHは血漿由来である、実施形態(72)に記載の方法。
【0081】
(74)ヒトC1-INHは組換え型である、実施形態(73)に記載の方法。
【0082】
(75)各sc用量は40~240IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(71)~(74)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0083】
(76)各sc用量は40~180IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(75)に記載の方法。
【0084】
(77)各sc用量は40~120IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(75)に記載の方法。
【0085】
(78)各sc用量は40~90IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(75)に記載の方法。
【0086】
(79)各sc用量は60~240IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(75)に記載の方法。
【0087】
(80)各sc用量は60~180IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(75)に記載の方法。
【0088】
(81)各sc用量は60~120IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(75)に記載の方法。
【0089】
(82)各sc用量は60~90IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(75)に記載の方法。
【0090】
(83)各sc用量は少なくとも40IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(71)~(82)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0091】
(84)各sc用量は少なくとも60IU/kgのC1-INHを含む、実施形態(83)に記載の方法。
【0092】
(85)C1-INHは40~240IU/kg、40~180IU/kg、40~120IU/kg、40~90IU/kg、60~200IU/kg、60~180IU/kg、120~200IU/kg、または120~180IU/kgのiv用量で投与される、実施形態(71)~(84)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0093】
(86)少なくとも10回分のsc用量のC1-INHが投与される、実施形態(71)~(85)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0094】
(87)4,000~15,000IUの量のC1-INHが毎週投与される、実施形態(71)~(86)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0095】
(88)sc用量のC1-INHが毎週約2回または約3回投与される、実施形態(71)~(87)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0096】
(89)少なくとも20回分のsc用量のC1-INHが投与される、実施形態(71)~(88)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0097】
(90)合計で50,000IUより多いC1-INHが投与される、実施形態(71)~(89)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0098】
(91)合計で100,000IUより多いC1-INHが投与される、実施形態(90)に記載の方法。
【0099】
(92)C1-INHは200~800IU/mLの濃度で皮下投与される、実施形態(71)~(91)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0100】
(93)レシピエントは同種移植片レシピエントである、実施形態(71)~(92)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0101】
(94)レシピエントは臓器移植レシピエントである、実施形態(71)~(93)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0102】
(95)レシピエントは腎臓、肺、心臓、肝臓、腸、または膵臓移植レシピエントである、実施形態(94)に記載の方法。
【0103】
(96)レシピエントは腎臓移植レシピエントである、実施形態(95)に記載の方法。
【0104】
(97)レシピエントは以下の特徴:
(a)移植の60日以内に≧40mL/分/1.73m2の移植後eGFRを有する;
(b)尿量の50%増加を有する;
(c)移植後の最初の7日間の間の血清クレアチンの50%減少を有する;または
(d)血漿交換ありまたはなしでのIVIgでの処置に不応性である
の1つまたはそれ以上を有する、実施形態(96)に記載の方法。
【0105】
(98)対象はIVIgで以前に処置されており、場合によりさらに血漿交換および/もしくはリツキシマブおよび/もしくは副腎皮質ステロイドで処置されているか、または
対象は:
(a)血漿交換ありもしくはなしおよびリツキシマブありもしくはなしでのIVIg;または
(b)IVIgありもしくはなしでの副腎皮質ステロイドおよびカルシニューリン阻害剤
で以前に処置されている、実施形態(71)~(97)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0106】
(99)対象は、IVIgでの処置に対する補助剤としてのC1-INHで処置され、場合によりさらに血漿交換および/もしくはリツキシマブおよび/もしくは副腎皮質ステロイドで処置されるか、または以下のレジメン:
(a)血漿交換ありもしくはなしおよびリツキシマブありもしくはなしでのIVIg;または
(b)IVIgありもしくはなしでの副腎皮質ステロイドおよびカルシニューリン阻害剤
の1つまたはそれ以上での処置に対する補助剤としてC1-INHで処置される、
実施形態(71)~(98)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0107】
(100)移植の3ヵ月よりも後のような、移植の後に開始される、実施形態(71)~(99)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0108】
(101)移植の前に開始される、実施形態(71)~(100)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0109】
(102)移植の4週間以内に開始される、実施形態(71)~(101)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0110】
(103)抗体関連型拒絶反応は不応性抗体関連型拒絶反応である、実施形態(71)~(102)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0111】
(104)抗体関連型拒絶反応は活動性抗体関連型拒絶反応である、実施形態(71)~(103)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0112】
(105)抗体関連型拒絶反応は慢性活動性抗体関連型拒絶反応である、実施形態(71)~104のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0113】
(106)C1-INHの投与に加えてIVIgが投与される、実施形態(71)~(105)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0114】
(107)IVIgは3~5週間毎に輸注として投与され、各輸注は0.1~2g/kgのIVIgを含む、実施形態(71)~(106)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0115】
(108)sc用量の少なくとも一部はレシピエントによって自己投与される、実施形態(71)~(107)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0116】
(109)静脈内用量のC1-INHはレシピエントに投与されない、実施形態(71)~(108)のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0117】
本発明はまた、本明細書に記載される方法のいずれかにおける使用のためのC1-INHに関する。さらなる実施形態は、全体として本開示中に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【
図1】実施例1の研究デザインの概略図である。5回分のiv用量のC1-INH(60IU/kg)を、最初の13日間にわたって各対象に静脈内投与した。その後、C1-INH(60IU/kg、毎週約2回)を10週間にわたって各対象に皮下投与した。実施例2の処置期間1は、類似したデザインを有する。
【
図2】実施例2に従った臨床試験のデザインの図である。臨床試験は、非盲検処置期間1および二重盲検処置期間2を含む。
【
図3】実施例1に記載されているような、ベースライン(左)および処置期間1の終わり(11週目および12週目の値の平均、中央)での平均eGFRを、ベースラインから処置期間1の終わりまでのeGFRの平均変化とともに示す図である。バーは平均値の標準誤差(SEM)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0119】
本明細書で使用される見出しは、組織化を目的とするのみであって、記載される主題を限定すると解釈されるべきではない。特許出願および特許公開を含む、本明細書に引用される全ての参考文献は、任意の目的でその全体を参照によって本明細書に組み入れる。参照によって組み入れる文献が、本明細書に含まれる発明と矛盾する限り、本明細書は任意の矛盾する資料に取って代わる。
【0120】
定義
他に定義されない限りは、本発明に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。
【0121】
他に示されない限りは、単位については国際単位系(SI)が使用される。さらに、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比の範囲または整数範囲は、挙げられた範囲内の任意の整数の値、および適切な場合、その端数(整数の10分の1および100分の1のような)を含むと理解される。
【0122】
本願において、「または」の使用は、他に述べられていない場合、「および/または」を意味する。さらに、文脈によって他に求められない場合、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0123】
本開示に従って利用される場合、以下の用語は、他に示されない限りは、以下の意味を有すると理解されるものとする:
【0124】
「毎週約1回」、「毎週約2回」、および「毎週約3回」は、投与のそれぞれの頻度をいい、用語「約」は、整数に四捨五入された平均頻度に関することを示す(毎週1回については整数「1」、毎週2回については整数「2」等)。例えば、1週間あたり2回分の用量が2週間投与される場合、これはちょうど毎週2回に相当し、「毎週約2回、2週間にわたって」に包含される。代わりに第1週に2回分の用量が投与され、第2週に1回分の用量が投与される場合、これは1週間あたり平均1.5回分の用量に相当し、これもまた、語句「毎週約2回、2週間にわたって」に包含される(1.5は四捨五入されて、次に大きい整数である2になるため)。「毎週約2回~約3回」の、数週間の期間にわたる投与範囲は、1週間あたり2~3回分の間の用量に四捨五入される、1週間あたりの平均数の投与を包含する(例えば、1週間あたり1.5~3.4回分の用量)。
【0125】
「投与」は、当業者に公知の種々の方法および送達系のいずれかを使用した、薬物を含む製剤の、対象への物理的導入をいう。薬物の一般的な投与経路としては、例えば注射による、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄または他の非経口投与経路が挙げられる。投与は、例えば、1回、複数回および/または1つもしくはそれ以上の長期間にわたって行われ得る。「静脈内」投与は、特に注射による、対象の静脈への投与を意味する。「皮下」投与は、特に注射による、対象の皮下組織への投与を意味する。用語「注射」はまた、長時間にわたる注射(輸注)を包含する。皮下投与のための部位としては、上腕、腹部、大腿、上背および臀部を挙げることができる。
【0126】
「抗体関連型拒絶反応」または「AMR」は、移植された細胞または組織に対するドナー特異的抗体(DSA)の作用による、レシピエントへの移植の拒絶反応をいう。ドナー特異的抗体は、例えば、同種移植片の、ドナー特異的HLA分子、血液型抗原(ABO)-同種凝集素、および/または内皮細胞抗原に対するものであり得る。AMRは、Banff分類に従って、「活動性AMR」または「慢性活動性AMR」として分類し得る。活動性AMRおよび慢性活動性AMRを診断するための基準は、AMRの改訂版Banff2017分類中で定義されている(Haasら、Am.J.Transplant.2018年;18(2):293~307頁;Roufosseら、Transplantation.2018年;102(11):1795~1814頁)。本明細書で使用される場合、用語「急性AMR」、「急性/活動性AMR」および「活動性AMR」は互換可能である。用語「慢性AMR」および「慢性活動性AMR」もまた、互換可能に使用し得る。
【0127】
用語「不応性AMR」または「rAMR」は、本明細書で使用される場合、C1-INHのような補体阻害剤なしでの免疫調節剤/免疫抑制剤での療法に反応した臓器機能の改善を示さないAMRをいう。一般に、AMRは、従来の療法がうまくいかない場合に、不応性と考えられる。例えば、従来の療法は、C1-INHなしの標準治療処置(SOC)であり得る。例えば、腎臓の臓器機能の改善の欠如を決定するために、当業者に公知の方法によって、例えばeGFRを考慮することによって、腎機能を評価し得る。一部の実施形態では、不応性AMR(rAMR)は、場合により血漿交換を伴う(C1-INHの投与なし)、IVIgの投与を含む療法に反応した臓器機能の改善を示さないAMRをいう。
【0128】
本発明によれば、用語「C1阻害剤」または「C1-INH」は、セリンプロテアーゼ阻害剤として機能して補体系に関連するプロテアーゼ、例えばC1rおよびC1sならびにMASP-1およびMASP-2、カリクレイン-キニン系に関連するプロテアーゼ、例えば血漿カリクレインおよび第XIIa因子、ならびに凝集系に関連するプロテアーゼ、例えば第XIa因子および第XIIa因子を阻害するタンパク質またはその断片をいう。C1-INHの構造および機能についてのさらなる開示については、全体が本明細書に組み入れられる、US4,915,945、US5,939,389、US6,248,365、US7,053,176、およびWO2007/073186を参照のこと。
【0129】
「ヒトC1-INH」または「hC1-INH」は、ヒトにおける天然起源のC1阻害剤(ヒト血液中で循環している)のアミノ酸配列と同一または本質的に同一なアミノ酸配列を含むタンパク質をいう。ヒトC1-INHは、例えばヒト血漿から得られた、ヒトから単離されたC1阻害剤であり得る(「pdC1-INH」とも呼ばれる、ヒト血漿由来C1-INH)。しかしながら、用語ヒトC1-INHはまた、ヒトにおける天然起源のC1阻害剤と同じまたは本質的に同じアミノ酸配列を含むがヒトから単離されず、代わりに組換えによって、例えば組換えDNAを宿主細胞にトランスフェクトさせることによって生成される、組換えC1阻害剤をいい得る。かかる組換えC1阻害剤において、天然起源のヒトC1阻害剤のアミノ酸配列はまた、半減期延長部分に融合させ得る。ヒトC1-INHの一部の製剤は、Berinert(登録商標)(血漿由来)、Cinryze(登録商標)(血漿由来)またはRuconest(登録商標)(組換え)の商品名で市販されている。一部の実施形態では、ヒトC1-INHは、ヒトにおける天然起源のC1阻害剤のアミノ酸配列と同一なアミノ酸配列からなるタンパク質である。
【0130】
「日」は、本明細書で理解される場合、特にある深夜12時から次の深夜12時までから起算される、24時間の期間に関し、処置が行われる位置の時間帯を深夜12時と限定する。1週間、1ヵ月、または1年は、かかる日に分割される。好ましくは、用語日および「暦日」は、互換可能に使用し得る。2日間にわたって薬物が投与される場合、これは必ずしも投与と投与との間に24時間が経過したことを意味しないが、最初の用量が1(暦)日目に投与され、最後の用量が2(暦)日目に投与されることを意味する。しかしながら、当業者はしばしば、1日のだいたい同じ時間、例えば患者の訪問の間に毎朝午前8:00~10:00の間に薬物を投与する。「週」は7日間に等しく、「月」は本明細書で28日間(4週間)として定義される。
【0131】
1回分の「用量」のC1-INHは、一度に摂取されるC1-INHの、例えばある特定の日に投与される静脈内または皮下注射としての、ある特定の量をいう。一部の場合では、1回分の用量の投与は、数時間にわたるような有意な量の時間をとり得る。他の場合では、注射は、例えば数分~1時間以内のような、より短い時間をとる。「IU/kg」、「mg/kg」または「g/kg」の任意の参照は、薬物を受ける対象の体重(kgで)に関する薬物の量(U、mg、またはgで)をいう。用量のための量が提供される場合、実際の投与量は、最も近い実用的な体積に四捨五入し得、再構成された溶液については、これは通常全ミリリットルの溶液(小部分でない)を投与することに相当し得、例えば9.5mLまたは10.2mLの代わりに、最も近い実用的な体積はいずれの場合も10mLであろうということは、指摘されるべきである。さらに、その代わりに、投与される実際の体積もまた、実際の体積から切り捨てられる体積に関する、最も近い、より少ない実用的な体積に四捨五入し得る(計算された用量よりも高い任意の用量を避けるため)。
【0132】
「iv用量」のC1-INHは、静脈内投与される用量、すなわち、用量それ自体のみをいうのではなく、投与の様式も定義する用語をいう。同様に、「sc用量」のC1-INHは、皮下投与される用量である。したがって、用語「iv用量」は、「静脈内投与される用量」と互換可能に使用し得、「sc用量」は「皮下投与される用量」と互換可能に使用し得る。異なる接頭辞「iv/sc」は、必ずしも用量が投与の様式の他のいかなる態様も異なることを意味しない。iv用量およびsc用量に含まれる製剤は、例えば体積、重量、量、活性成分の濃度および賦形剤に関して、同一であってもよく、他に特定されない限りは異なってもよい。用語「iv用量」および「sc用量」は、本明細書で、他に特定されない限りは(例えば、薬物Xのiv用量)、C1-INHを含む用量のために使用される。
【0133】
IVIg(免疫グロブリン静注)は、静脈内投与される免疫グロブリンをいう。一部の場合では、IVIgは、投与に数時間かかり得、そのため、IVIgは、例えば患者の利便性および快適性のために必要に応じて定期的な中断ありで、数時間にわたって投与し得る。
【0134】
「わたって」は、本明細書で「ある特定の期間にわたって」の文脈で使用される場合、薬物投与の持続期間、例えば「5日間にわたる」または「10週間にわたる」薬物の投与を表す。これに関連して、薬物の最初の用量の投与は最初の日を示し、薬物の最後の用量の投与は最後の日を示し、持続期間は最初の日から最後の日までから数えられる日数によって示され、投与の様式もまた、これに関連して薬物を特徴づけ得る。例えば、「5日間にわたるiv用量」の投与は、1日目および5日目の2回分の用量、または1、3および5日目の3回分の用量、または1、2、3、4、5日目の5回分の用量の静脈内投与をいい得る(網羅しているわけではないリスト)。したがって、ある特定の数の週にわたって薬物や投与される場合にもこれが適用され、例えば、薬物の最初の用量の投与は最初の週を示し、薬物の最後の用量の投与は最後の週を示し(その週の特定の日を特定する必要がない)、持続期間は、最初の週から最後の週までから数えられた週の数によって示される。
【0135】
「有効量」は、疾患または障害を処置するために使用された場合に有益効果を達成するのに十分な薬物の量をいう。これは、疾患もしくは障害の発症の後に疾患もしくは障害および/もしくはそれに関する症状を排除、軽減もしくは低速化するか、または疾患もしくは障害および/もしくはそれに関する症状の発症のリスクを低下させるか、予防するか、もしくは遅延させる、薬物の量をいう。有効量はまた、所望の治療または予防効果を達成するのに必要な投与量および期間で有効な量をいう。治療効果は、既存の疾患もしくは障害の排除、軽減もしくは低速化であり得るか、またはその重症度の低下にあり得る。予防効果は、現在疾患または障害を有さない対象が将来疾患もしくは障害または疾患もしくは障害の症状および/もしくは徴候を発症するリスクの低下、予防または遅延であり得る。本明細書で使用される場合、疾患または障害はAMRであり得る。
【0136】
「推算糸球体濾過量」(eGFR)は、対象間のある特定の差異を説明するための種々の要因(血清クレアチニン、年齢、人種および性別)に基づいて決定される。これはMDRD式を用いて計算し得る。以下のIDMSトレーサブルMDRD式を使用して、対象のeGFRを計算し得る(Leveyら、Ann.Intern.Med.2009年;150(9):604~612頁):
【数1】
【0137】
血清クレアチニンScrはmg/dLで表され、対象の年齢は年で表される。eGFRは患者の体表面積(BSA)1.73m2あたりのmL/分として表される。
【0138】
用語「対象」および「患者」はヒトをいう。対象または患者は、本明細書で使用される場合、「同種移植片移植レシピエント」または「臓器移植レシピエント」のような、移植を受けるヒトをいい得る(「移植レシピエント」または「レシピエント」)をいい得る。対象または患者またはレシピエントはまた、本明細書で使用される場合、移植を受けるよう予定された、および/または移植を受けることになる、例えば1ヵ月または1週間以内に臓器移植または同種移植片移植を受けることになる、ヒトをいい得る。
【0139】
本明細書で使用される場合、「同種移植片」は、一般に同じ種の同一でないドナー由来の、細胞、組織、または1つもしくはそれ以上の臓器の移植である。「移植」は、臓器、組織または細胞の移植をいう。「臓器移植」は、完全または本質的に完全な臓器の移植をいう。一部の実施形態では、移植レシピエントは、同種移植片を受け得る。他の実施形態では、移植レシピエントは、異なる種(例えば、ブタまたは他の哺乳動物)のドナー由来の細胞、組織、または1つもしくはそれ以上の臓器の移植である「異種移植片」を受け得る。一部の実施形態では、移植は固形臓器、例えば腎臓である。
【0140】
「標準治療」(SOC)は、本明細書で使用される場合、1つまたはそれ以上の免疫調節/免疫抑制剤での処置をいう。一部の実施形態では、免疫調節/免疫抑制剤は、免疫グロブリン静注(IVIg)、抗CD20抗体(例えばリツキシマブ)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、シクロスポリン、副腎皮質ステロイド(例えばメチルプレドニゾロン、プレドニゾロン)、カルシニューリン阻害剤(例えばタクロリムス)、ボルテゾミブおよび抗胸腺細胞グロブリン(ATG)から選択される。一部の場合では、それらはB細胞またはT細胞活性を阻害する(例えば、細胞分裂もしくはシグナル伝達を減少させること、または細胞の枯渇によって)。また、SOC処置は、血漿交換および/または免疫吸着を含み得る。SOC処置は、IVIgの投与を含み得る。SOC処置は、血漿交換および/もしくはリツキシマブありまたはなしでのIVIgの投与を含み得る。例えば、SOC処置は、必要に応じて場合により血漿交換ありでの、および場合によりリツキシマブありでの、IVIgの投与であり得る。一部の場合では、1つまたはそれ以上の副腎皮質ステロイドおよびカルシニューリン阻害剤は、IVIgありで、またはIVIgの代わりに、投与し得る。一部の場合では、投与されるIVIgの量は、血漿交換あり(例えば100mg/kg)では、血漿交換なし(例えば1または2g/kg)より低い。用語SOC処置は、C1-INHの投与を含まないが、他に特定されない限りは、SOC処置と並行して本明細書に記載される投与計画に従ってC1-INHを投与することが可能である。例えば、一部の実施形態では、患者はC1-INHの投与なしでSOCで処置してもよいが、SOC処置単独でうまくいかなければ、SOC処置を、追加的な療法として、本明細書に記載される投与計画に従って並行してC1-INHの投与に加えて継続し得る。他の状況では、C1-INHは、SOC処置に対する補助剤として投与し得る。
【0141】
用語「処置」、「処置する」または「処置すること」は、本明細書で使用される場合、薬物を投与して(i)特定の疾患もしくは障害の少なくとも1つの症状もしくは徴候を減少させるか、もしくは排除すること、または(ii)特定の疾患もしくは障害の進行を低速化、軽減もしくは停止させること、または(iii)特定の疾患もしくは障害の発症を遅延させるか、妨げるか、もしくは停止させることをいい得る。したがって、用語「処置」、「処置する」または「処置すること」は、薬物での、疾患または障害の治療処置および予防処置(予防とも呼ばれる)をいい得る。「治療処置」および「治療処置すること」は、既存の疾患または障害の処置、すなわち疾患または障害の発症後の処置をいい、その狙いは既存の疾患もしくは障害を排除、軽減もしくは低速化すること、またはその重症度を低下させることである。対照的に、「予防処置」、「予防」、「予防する」または「予防すること」は、特にAMRの発症前の移植のような事象の後、現在疾患または障害を有さない対象が将来それまたはその症状もしくはその徴候を発症するリスクを低下、予防または遅延させることを意図した、疾患または障害のための処置のタイプをいう。「慢性処置」は、本明細書で使用される場合、2ヵ月またはそれ以上の比較的長い持続期間での処置をいい、何年も続いてもよい。
【0142】
1「単位」(「U」)のC1-INHは、健常ドナーの1mLの新鮮なクエン酸血漿中のC1-INH活性と同等である。C1-INHはまた、「国際単位」(「IU」)で決定し得る。これらの国際単位は、C1-INH濃縮物についての現在の世界保健機関(WHO)標準(NIBSCコード:08/256)に基づき、これは正常な地方特有のヒト血漿プールを使用した共同比較研究において較正された。UおよびIUは同等であり、本明細書で互換可能に使用される。
【0143】
上記で定義された用語について、その文法上の変化は全ての場合で明示的に論じられていないが、定義は、それらが明示的に言及されていなくても、いかなる文法上の変化にもそれに応じて適用されることが理解されるべきである。さらに、上記で定義された用語は、明細書全体を参照することによって、より完全に定義される。
【0144】
AMRの処置
本開示は、移植レシピエント対象において抗体関連型拒絶反応を処置する方法を含む。本明細書で、一部の方法は、以下の工程:(a)1回分またはそれ以上のiv用量のC1-INHを静脈内投与する工程、(b)少なくとも10回分の用量のC1-INHを少なくとも10週間のような数週間にわたって皮下投与し、各週に少なくとも1回分のsc用量が投与される工程を含むスケジュールに従って、対象にC1-INHを投与することをこの順序で含む。一部の実施形態では、iv用量のC1-INHは、40~180IU/kgのような、40~120IU/kgのような、40~90IU/kgのような、60~200IU/kgのような、60~180IU/kgのような、90~200IU/kgのような、90~180IU/kgのような、120~200IU/kgのような、または120~180IU/kgのような、40~240IU/kgである。一部の実施形態では、iv用量は40~180IU/kgである。一部の実施形態では、iv用量は40~90IU/kgである。一部の実施形態では、sc用量のC1-INHは、40~120IU/kgのような、40~90IU/kgのような、60~200IU/kgのような、60~180IU/kgのような、90~200IU/kgのような、90~180IU/kgのような、120~200IU/kgのような、または120~180IU/kgのような、40~240IU/kgである。一部の実施形態では、sc用量は40~180IU/kgである。一部の実施形態では、iv用量およびsc用量はともに40~180IU/kgである。一部の実施形態では、sc用量は40~90IU/kgである。一部の実施形態では、iv用量およびsc用量はともに40~90IU/kgである。
【0145】
本開示はまた、移植レシピエント対象において抗体関連型拒絶反応を処置する方法であって、以下の工程:(a)3~10回分のiv用量を4~16日間にわたって静脈内投与する工程、(b)少なくとも20回分の用量のC1-INHを毎週約2回または3回、10週間またはそれ以上にわたって皮下投与し、各週に少なくとも1回分のsc用量が投与される工程を含むスケジュールに従って、対象にC1-INHを投与することをこの順序で含む、方法を含む。一部の実施形態では、iv用量および/またはsc用量は40~120IU/kgである。
【0146】
本開示はまた、移植レシピエント対象において抗体関連型拒絶反応を処置する方法であって、以下の工程:(a)それぞれが2,500~8,500IUのC1-INHを伴う3~10回分のiv用量を静脈内投与する工程、(b)それぞれが2,500~8,500IUのC1-INHを含む少なくとも20回分の用量を毎週約2回または3回、10週間またはそれ以上にわたって皮下投与する工程を含むスケジュールに従って、対象にC1-INHを投与することをこの順序で含む、方法を含む。
【0147】
本開示はさらに、移植レシピエント対象において抗体関連型拒絶反応を処置する方法であって、以下の工程:(a)総量7,000~36,000IUのC1-INHを、分割iv用量で2~21日間にわたって静脈内投与する工程、(b)少なくとも50,000IUの量のC1-INHを、分割sc用量で少なくとも10週間にわたって皮下投与し、各週に少なくとも1回分のsc用量が投与される工程を含むスケジュールに従って、対象にC1-INHを投与することをこの順序で含む、方法を含む。
【0148】
さらなる方法は、C1-INHを少なくとも10週間にわたって皮下投与することを含む、移植レシピエントにおいて抗体関連型拒絶反応を処置することを含み、各週に少なくとも1回分のsc用量が投与される。方法の一部では、C1-INHは専ら皮下投与される。
【0149】
さらなる例示的な実施形態は、移植レシピエント対象において抗体関連型拒絶反応を処置する方法であって、少なくとも10回分の、40~180IU/kgのような、40~120IU/kgのような、40~90IU/kgのような、60~200IU/kgのような、60~180IU/kgのような、90~200IU/kgのような、90~180IU/kgのような、120~200IU/kgのような、または120~180IU/kgのような、40~200IU/kgのsc用量のC1-INHを少なくとも10週間にわたって対象に皮下投与することによって、工程(b)に従ってのみC1-INHを投与することを含み、各週に少なくとも1回分のsc用量が投与される、方法を含む。この処置の代替的方法において、工程(a)はなく、全てのC1-INHは皮下投与される。
【0150】
本開示はまた、腎同種移植片(例えば腎臓移植)を受けた対象において腎機能またはeGFRを改善する方法であって、以下の工程:(a)1回分またはそれ以上の、40~180IU/kgのような、40~120IU/kgのような、40~90IU/kgのような、60~200IU/kgのような、60~180IU/kgのような、90~200IU/kgのような、90~180IU/kgのような、120~200IU/kgのような、または120~180IU/kgのような、40~200IU/kgのiv用量のC1-INHを静脈内投与する工程、(b)少なくとも10回分のsc用量の、40~180IU/kgのような、40~120IU/kgのような、40~90IU/kgのような、60~200IU/kgのような、60~180IU/kgのような、90~200IU/kgのような、90~180IU/kgのような、120~200IU/kgのような、または120~180IU/kgのような、40~200IU/kgのC1-INHを少なくとも10週間にわたって皮下投与し、各週に少なくとも1回分のsc用量が投与される工程を含むスケジュールに従って、対象にC1-INHを投与することを含む、方法を包含する。
【0151】
本開示はさらに、移植レシピエントにおいて抗体関連型拒絶反応を処置する方法であって、C1-INHを、場合により40~180IU/kgのような、40~120IU/kgのような、40~90IU/kgのような、60~200IU/kgのような、60~180IU/kgのような、90~200IU/kgのような、90~180IU/kgのような、120~200IU/kgのような、または120~180IU/kgのような、40~200IU/kgの用量で皮下投与することを含む、方法を包含する。一部の実施形態では、C1-INHは、少なくとも10週間、各週に少なくとも1回投与される。一部の実施形態では、C1-INHは、SOC処置に対する補助剤として投与される。一部の実施形態では、C1-INHは、血漿交換ありまたはなしおよびリツキシマブありまたはなしでのIVIgに加えて投与される。一部の実施形態では、C1-INHは、IVIgありまたはなしでの、副腎皮質ステロイドおよびカルシニューリン阻害剤を含む処置に対する補助剤として投与される。一部のかかる実施形態では、静脈内C1-INHはレシピエントに投与されない。
【0152】
工程(a)におけるC1-INHの静脈内投与について下記で示される情報は、C1-INHの静脈内投与のさらなる工程なしのみでC1-INHの皮下投与を含む方法に適用されない。
【0153】
上記の方法のいずれにおいても、対象は、腎臓、肺、心臓、肝臓、腸または膵臓移植レシピエントのような移植レシピエントのような、同種移植片移植レシピエントであり得る。方法は、予定された移植の前または移植が起こった後に開始される。上述の方法の実施形態を、下記でさらに論じる。
【0154】
一部の実施形態では、C1-INHはヒトC1-INHである。一部の実施形態では、ヒトC1-INHはヒト血漿由来C1-INH(pdC1-INH)である。一部の実施形態では、ヒトC1-INHは組換えC1-INHである。一部の実施形態では、C1-INHはプロテアーゼC1rおよびC1sならびにMASP-1およびMASP-2を阻害する。
【0155】
一部の実施形態では、C1-INHは、ヒト成人への静脈内投与の後少なくとも10時間、少なくとも20時間または少なくとも30時間の平均半減期を有する。一部の実施形態では、C1-INHは、ヒト成人への静脈内投与の後20~90時間の平均半減期を有する。一部の実施形態では、C1-INHは、ヒト成人への静脈内投与の後40~80時間の平均半減期を有する。一部の実施形態では、C1-INHは、ヒト成人への静脈内投与の後60時間より長い半減期を有する融合タンパク質である。
【0156】
一部の実施形態では、C1-INHは、融合パートナーを含む。一部の実施形態では、ヒトにおける天然起源のC1阻害剤と同じまたは本質的に同じアミノ酸配列が、融合パートナーに連結される。一部の実施形態では、融合パートナーは、半減期増強ポリペプチド(HLEP)を含む。一部の実施形態では、半減期増強ポリペプチドは、ヒトにおける天然起源のC1阻害剤と同じまたは本質的に同じアミノ酸配列のC末端に融合させる。一部の実施形態では、半減期増強ポリペプチドは、XTEN配列を含む。一部の実施形態では、XTENは、ヒトにおける天然起源のC1阻害剤と同じまたは本質的に同じアミノ酸配列のC末端に融合させる。一部の実施形態では、半減期増強ポリペプチドは、アルブミン、アファミン、α-フェトプロテイン、ビタミンD結合タンパク質、ヒトアルブミン、XTEN配列、C末端ペプチド(CTP)、免疫グロブリン、およびIgGのFcからなる群から選択される。例えば、半減期増強ポリペプチドは、アルブミンまたはそのバリアントであり得る。一部の実施形態では、半減期増強ポリペプチドは、アルブミンまたはそのバリアントを含む。一部の実施形態では、アルブミンバリアントは、ヒトアルブミン(HA)の特異的ドメインの一部または全てを含む。アルブミンバリアントは、アミノ酸置換、欠失、または付加、保存的もしくは非保存的置換のいずれかを含み得、かかる変化は、半減期増強ポリペプチドの治療活性を与える活性部位または活性ドメインを実質的に変化させない。これらのバリアントは、ヒトアルブミン(HA)配列と約70%、または約75%、または約80%、または約85%、または約90%、または約91%、または約92%、または約93%、または約94%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%または約99%の同一性を共有し得る。一例において、アルブミンバリアントは断片である。一例において、アルブミンバリアントは、少なくとも1つのアルブミンのドメインおよび/またはそれらのドメインの断片を含む。一部の実施形態では、半減期増強ポリペプチドは、免疫グロブリン(Ig)、またはFc領域または1つもしくはそれ以上のIg定常ドメインのような、その機能的断片もしくはバリアントである。一例において、Igは、免疫グロブリン定常ドメインのFc領域または部分を含む。定常領域は、IgM、IgG、IgD、IgA、またはIgE免疫グロブリンのものであり得る。一例において、治療用ポリペプチド部分を、切断可能であり得る、抗体のヒンジ領域またはペプチドリンカーを介してIgに結合させる。治療用タンパク質のインビボでの半減期を延長するための、治療用タンパク質の、免疫グロブリン定常領域への融合のための方法は、当該分野で公知であり、例えばUS2004/0087778、WO2005/001025、WO2005/063808、WO2003/076567、WO2005/000892、WO2004/101740、US6,403,077に記載されている。一例において、半減期増強ポリペプチドは、免疫グロブリン領域である。例えば、免疫グロブリン領域は、免疫グロブリンのFcドメイン、もしくはFc断片、および/またはそのバリアントである。一部の実施形態では、ヒトにおける天然起源のC1阻害剤のアミノ酸配列は、HLEPとして、免疫グロブリン定常領域のFcドメインまたは部分に融合させる。一部の実施形態では、上述の融合タンパク質は、原核または真核宿主細胞において発現される組換え分子として調製される。例えば、融合タンパク質は、細菌、もしくは酵母、もしくは植物、もしくは動物(昆虫を含む)もしくはヒト細胞系において、または遺伝子導入動物において、調製され得る。原核または真核細胞における融合タンパク質の発現の方法は当該分野で公知であり、例えば、WO2008/098720に記載されている。いくつかのC1-INHベースの融合タンパク質のバリアントが、WO2016/070156に提供されている。一部の実施形態では、融合タンパク質は、静脈内投与された場合、少なくとも血漿由来C1-INHの半減期程長い半減期を有する。一部の実施形態では、融合タンパク質は、静脈内投与された場合、より長い半減期を有するが、血漿由来C1-INHの半減期の2倍よりは長くない。
【0157】
(a)静脈内および(b)皮下投与を含む一部の実施形態では、工程(a)において、少なくとも2回分または少なくとも3回分のiv用量のC1-INHが投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、15回分未満もしくは10回分未満のiv用量または5回分未満のiv用量のC1-INHが投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10回分のiv用量のC1-INHが投与される。
【0158】
一部の実施形態では、工程(a)において、少なくとも2回分のiv用量のC1-INHが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23日間にわたって静脈内投与される。一部の実施形態では、iv用量のC1-INHは、工程(a)において、22日間未満、17日間未満、または14日間未満にわたって投与される。一部の実施形態では、iv用量は、工程(a)において、少なくとも2日間にわたって、または少なくとも3日間にわたって、投与される。
【0159】
一部の実施形態では、工程(a)において、少なくとも2回分のiv用量のC1-INHが、2~21日間にわたって投与される。一部の実施形態では、工程(a)は、少なくとも2回分のiv用量の40~180IU/kgのC1-INHを2~21日間にわたって静脈内投与することを含む。一部の実施形態では、少なくとも3回分のiv用量のC1-INHが、2~21日間にわたって投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、3~10回分のiv用量のC1-INHが、2~21日間にわたって投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、3~5回分のiv用量のC1-INHが、2~21日間にわたって投与される。
【0160】
一部の実施形態では、工程(a)において、少なくとも2回分のiv用量のC1-INHが、4~16日間にわたって投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、3~10回分のiv用量のC1-INHが、4~16日間にわたって投与される。したがって、一部の実施形態では、工程(a)は、3~10回分のiv用量の40~180IU/kgのC1-INHを4~16日間にわたって静脈内投与することを含む。一部の実施形態では、工程(a)において、3~5回分のiv用量のC1-INHが、4~16日間にわたって投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、3~10回分のiv用量のC1-INHが、7~13日間にわたって投与される。
【0161】
一部の実施形態では、工程(a)において、少なくとも2回分のiv用量のC1-INHが、7~13日間にわたって投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、3~5回分のiv用量のC1-INHが、7~13日間にわたって投与される。したがって、一部の実施形態では、工程(a)は、3~5回分のiv用量の40~180IU/kgのC1-INHを7~13日間にわたって静脈内投与することを含む。一部の実施形態では、工程(a)において、3回分のiv用量のC1-INHが、13日間にわたって投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、4回分のiv用量のC1-INHが、13日間にわたって投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、5回分のiv用量のC1-INHが、13日間にわたって投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、3回分のiv用量のC1-INHが、10日間にわたって投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、4回分のiv用量のC1-INHが、10日間にわたって投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、5回分のiv用量のC1-INHが、10日間にわたって投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、5回分のiv用量のC1-INHが、7日間にわたって投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、4回分のiv用量のC1-INHが、7日間にわたって投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、3回分のiv用量のC1-INHが、7日間にわたって投与される。
【0162】
一部の実施形態では、iv用量は、工程(a)において、1日おき、2日おきまたは3日おきに投与される。一部の実施形態では、工程(a)は、少なくとも2回分のiv用量の40~180IU/kgのC1-INHを対象に静脈内投与し、iv用量は1日おき、2日おきまたは3日おきに投与されることを含む。
【0163】
一部の実施形態では、iv用量のC1-INHの各投与と投与との間に、工程(a)におけるiv用量のC1-INHの投与のない少なくとも1日がある。一部の実施形態では、工程(a)は、少なくとも2回分のiv用量の40~180IU/kgのC1-INHを対象に静脈内投与し、iv用量のC1-INHのうちの1回分の各投与と投与との間に、iv用量のC1-INHのうちの1回分の投与のない少なくとも1日があることを含む。一部の実施形態では、iv用量のC1-INHのうちの1回分の各投与と投与との間に、iv用量のC1-INHのうちの1回分の投与のない少なくとも2日がある。例えば、投与は1、4、13日目であり得、これは、C1-INHの投与のない少なくとも2日が1日目と4日目との間および4日目と13日目との間にあることを意味する。
【0164】
一部の実施形態では、工程(a)において、総量7,000~36,000IUのC1-INHが静脈内投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、総量40,000IU未満のC1-INHまたは30,000IU未満のC1-INHが投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、総量5,000IUより多いC1-INHまたは10,000IUより多いC1-INHが投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、総量10,000~30,000IUのC1-INHが静脈内投与される。一部の実施形態では、工程(a)において、総量13,000~25,000IUのC1-INHが静脈内投与される。
【0165】
一部の実施形態では、工程(a)および(b)において投与されるC1-INHの組み合わせた量は、本明細書に記載されるように静脈内投与および皮下投与した場合に抗体関連型拒絶反応を処置するのに有効な量である。一部の実施形態では、工程(b)において投与されるC1-INHの量は、抗体関連型拒絶反応を処置するのに有効な量である。
【0166】
一部の実施形態では、4,000~15,000IUの量のC1-INHが1週間あたりに皮下投与される。一実施形態では、皮下投与は、少なくとも10週間にわたって、少なくとも10回分のsc用量の40~180IU/kgのC1-INHを対象に皮下投与し、4,000~15,000IUの量のC1-INHが毎週皮下投与されることを含む。一部の実施形態では、皮下投与の間に、各週に4,000~10,000の量のC1-INHが投与される。一部の実施形態では、皮下投与の間に、各週に5,000~9,000IUの量のC1-INHが投与される。
【0167】
一部の実施形態では、皮下投与の間に、各週に80~360IU/kgの量のC1-INHが、例えば毎週2回分の40~180IU/kgのsc用量に分割して、投与される。一部の実施形態では、皮下投与の間に、各週に80~240IU/kgの量のC1-INHが、例えば毎週2回分の40~120IU/kgのsc用量に分割して、投与される。一部の実施形態では、皮下投与の間に、各週に80~180IU/kgの量のC1-INHが、例えば毎週2回分の40~90IU/kgのsc用量に分割して、投与される。一部の実施形態では、皮下投与の間に、各週に80~160IU/kgの量のC1-INHが、例えば毎週2回分の40~80IU/kgのsc用量に分割して、投与される。一部の実施形態では、皮下投与の間に、各週に80~140IU/kgの量のC1-INHが、例えば毎週2回分の40~70IU/kgのsc用量に分割して、投与される。一部の実施形態では、皮下投与の間に、各週に100~160IU/kgの量のC1-INHが、例えば毎週2回分の50~80IU/kgのsc用量に分割して、投与される。一部の実施形態では、皮下投与の間に、各週に100~140IU/kgの量のC1-INHが、例えば毎週2回分の50~70IU/kgのsc用量に分割して、投与される。
【0168】
一部の実施形態では、各iv用量および/または各sc用量は、40~240IU/kgのC1-INHを含む。一部の実施形態では、各iv用量および/または各sc用量は、40~180IU/kgのC1-INHを含む。一部の実施形態では、各iv用量および/または各sc用量は、40~120IU/kgのC1-INHを含む。一部の実施形態では、各iv用量および/または各sc用量は、40~100IU/kgのC1-INHを含む。一部の実施形態では、各iv用量および/または各sc用量は、40~90IU/kgのC1-INHを含む。一部の実施形態では、各iv用量および/または各sc用量は、40~80IU/kgのC1-INHを含む。一部の実施形態では、各iv用量および/または各sc用量は、50~70IU/kgのC1-INHを含む。一部の実施形態では、各iv用量および/または各sc用量は、40、45、50、55、65、70、75、80,85、90、100、110または120IU/kgのC1-INHを含む。一部の実施形態では、各iv用量および/または各sc用量は、60IU/kgのC1-INHを含む。
【0169】
一部の実施形態では、各iv用量および/または各sc用量は、2,500~8,500IU/kgのC1-INHを含む。一部の実施形態では、各iv用量および/または各sc用量は、2,500~5,000IU/kgのC1-INHを含む。
【0170】
一部の実施形態では、工程(b)の完了の後に、対象は、少なくとも1ヵ月間、少なくとも2ヵ月間、少なくとも3ヵ月間、または少なくとも6ヵ月間、C1-INHを受けない。一部の実施形態では、工程(b)の完了の後に、対象は、本明細書に開示される一連の処置の一部として、それ以上C1-INHを受けない。
【0171】
一部の実施形態では、全てのC1-INHは、工程(a)および(b)において投与され、方法は、これの他にC1-INHの投与を含まない。一部の実施形態では、全ての静脈内投与されるC1-INHは工程(a)および(b)において投与され、全ての皮下投与されるC1-INHは工程(b)において投与される。
【0172】
一部の実施形態では、C1-INHは、工程(b)に続く工程(c)における、C1-INHのさらなる投与を含む。この工程(c)はまた、再処置工程と呼ばれ得る。一部の実施形態では、工程(c)は工程(b)の繰り返しである。一部の実施形態では、任意選択の工程(c)は、工程(b)と、同じ量のsc用量あたりのC1-INH、同じ投与の頻度および同じ皮下投与の様式を有するが、工程(b)よりも、短いまたは長い期間にわたってより多いまたは少ない量のC1-INHを投与することを含み得る。一部の実施形態では、工程(c)は、工程(b)よりも、より多いまたは少ない量のsc用量あたりのC1-INHを有し得る。再処置は、C1-INH投与の中断の直後の再発の場合に役立ち得る。一部の実施形態では、工程(b)と(c)との間に、C1-INHの投与のない、少なくとも1週間または少なくとも1ヵ月ある。一部の実施形態では、工程(b)は、任意選択の再処置期を含み得る。
【0173】
一部の実施形態では、sc用量のC1-INHは毎週約1回、毎週約2回、毎週約3回または毎週約4回投与される。一部の実施形態では、sc用量は、工程(b)において毎週約2回投与される。一部の実施形態では、sc用量は、工程(b)において毎週約3回投与される。一部の実施形態では、sc用量は、工程(b)において毎週約1回投与される。一部の実施形態では、sc用量は、工程(b)において毎週2回投与される。一部の実施形態では、sc用量は、工程(b)において毎週3回投与される。一部の実施形態では、sc用量は、工程(b)において毎週1回投与される。
【0174】
一部の実施形態では、皮下投与の間に、C1-INHを含む少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20または少なくとも25回分のsc用量が投与される。一部の実施形態では、皮下投与の間に、少なくとも20回分のsc用量のC1-INHが投与される。静脈内および皮下投与の両方が工程(a)および(b)において使用される一部の実施形態では、工程(b)において、工程(a)において投与されるiv用量の少なくとも2倍多いか、少なくとも3倍多いか、少なくとも4倍多いかまたは少なくとも5倍多いsc用量が投与される。一部の実施形態では、工程(b)において、工程(a)において静脈内投与されるよりも少なくとも2倍多いか、少なくとも3倍多いか、少なくとも4倍多いかまたは少なくとも5倍多いC1-INHが皮下投与される。
【0175】
一部の実施形態では、sc用量は、iv用量の投与のための期間の少なくとも2倍長いか、少なくとも3倍長いか、少なくとも4倍長いか、少なくとも5倍長いか、少なくとも6倍長いか、少なくとも7倍長いか、少なくとも8倍長いか、少なくとも9倍長いかまたは少なくとも10倍長い期間にわたって投与される。一部の実施形態では、sc用量は、iv用量の投与のための期間の少なくとも5倍長い期間にわたって投与される。工程(a)においてC1-INHを静脈内投与するための持続期間はまた、第1の期間ともいうことができ、工程(b)においてC1-INHを皮下投与するための持続期間は第2の期間ともいうことができる。したがって、一部の実施形態では、第2の期間は、第1の期間の少なくとも2倍長いか、少なくとも3倍長いか、少なくとも4倍長いか、少なくとも5倍長いか、少なくとも6倍長いか、少なくとも7倍長いか、少なくとも8倍長いか、少なくとも9倍長いかまたは少なくとも10倍長い。一実施形態では、方法は、以下の工程:(a)第1の期間にわたって、1回分またはそれ以上のiv用量の40~180IU/kgのC1-INHを静脈内投与する工程、(b)少なくとも10週間の第2の期間にわたって、少なくとも10回分のsc用量の40~180IU/kgのC1-INHを皮下投与する工程を含み、第2の期間は第1の期間の少なくとも5倍長い。
【0176】
一部の実施形態では、静脈内投与される場合の少なくとも2倍多いC1-INHが皮下投与される。一部の実施形態では、工程(b)において、ある量のC1-INHが投与され、これは工程(a)において投与されるC1-INHの量の少なくとも2倍多い。一部のさらなる実施形態では、工程(b)において皮下投与されるC1-INHの量は、工程(a)において静脈内投与されるC1-INHの量よりも少なくとも2倍、少なくとも3倍または少なくとも4倍多い。
【0177】
一部の実施形態では、工程(a)および(b)において、または投与計画全体の間に、合計で50,000IUより多いC1-INHが投与される。一部の実施形態では、合計で100,000IUより多いC1-INHが投与される。一部の実施形態では、合計で150,000IUより多いC1-INHが投与される。一部の実施形態では、合計で200,000IUより多いC1-INHが投与される。
【0178】
静脈内(工程(a))および皮下(工程(b))投与の両方を伴う一部の実施形態では、工程(b)において50,000IUより多いC1-INHが皮下投与される。一部の実施形態では、工程(b)において100,000IUより多いC1-INHが皮下投与される。一部の実施形態では、工程(b)において150,000IUより多いC1-INHが皮下投与される。一部の実施形態では、工程(b)において200,000IUより多いC1-INHが皮下投与される。一部の実施形態では、工程(a)において総量7,000~36,000IUのC1-INHが静脈内投与され、工程(b)において50,000IUより多い量のC1-INHが皮下投与される。一部の実施形態では、工程(b)において1,000,000IU未満のC1-INHが皮下投与される。一部の実施形態では、工程(b)において750,000IU未満のC1-INHが皮下投与される。一部の実施形態では、工程(b)において500,000IU未満のC1-INHが皮下投与される。一部の実施形態では、工程(b)において皮下投与されるC1-INHの量については上限がなく、皮下投与は可能な限り、例えば対象の死亡または同種移植片喪失まで、継続される。
【0179】
一部の実施形態では、投与される製剤中のC1-INHの濃度は、特に再構成の後、50~1,500IU/mLの範囲である。一部の実施形態では、投与の間のC1-INHの濃度は、100~1,000IU/mL、特に200~800IU/mLまたは400~600IU/mLの範囲である。例えば、投与されるC1-INH製剤は、再構成の後に500IU/mLのC1-INHの濃度を有し得る。
【0180】
一部の実施形態では、iv用量およびsc用量のための製剤は同一である。一部の実施形態では、iv用量とsc用量は、例えばC1-INHの濃度に関して、異なる。一部の実施形態では、sc用量のための製剤は、iv用量のための製剤よりも高い濃度を有する。
【0181】
一部の実施形態では、各iv用量は同じ量のC1-INHを含み、例えば、各iv用量は、60IU/kgのC1-INHを含み得る。一部の実施形態では、各sc用量は同じ量のC1-INHを含み、例えば、各sc用量は、60IU/kgのC1-INHを含み得る。一部の実施形態では、最初のiv用量は、その後のiv用量よりも多いC1-INHを含み得、例えば120IU/kgの負荷iv用量のC1-INHと、その後の各60IU/kgのiv用量を含み得る。
【0182】
一部の実施形態では、各iv用量は、各sc用量と同じ量のC1-INHを含む。例えば、静脈内および皮下注射のための用量は、ともに1回分の用量あたり60IU/kgのC1-INHであり得る。一部の実施形態では、各iv用量のC1-INHの量は各sc用量のC1-INHの量と同じであり、iv用量およびsc用量のための製剤も同一であり、すなわち、かかる実施形態については、iv用量とsc用量との違いは投与の様式のみである。
【0183】
一部の実施形態では、対象は同種移植片レシピエントである。一部の実施形態では、対象は異種移植片レシピエントである。一部の実施形態では、対象は移植レシピエントである。一部の実施形態では、同種移植片は、腎臓(すなわち、腎同種移植片)、心臓、肝臓、肺、腸または膵臓から選択される。一部の実施形態では、同種移植片は、心臓、肺または腎臓である。一部の実施形態では、対象は腎同種移植片レシピエントである。一部の実施形態では、対象は、工程(a)に従ってC1-INHを投与する、少なくとも1週間または少なくとも2週間または少なくとも3週間または少なくとも1ヵ月前に、同種移植片を受けている。一部の実施形態では、対象は、AMRと診断されているか、またはAMRのリスクがある。
【0184】
一部の実施形態では、対象は、将来同種移植片、特に腎臓、心臓、肝臓、肺、腸または膵臓から選択される同種移植片を受けるよう予定されている患者である。例えば、対象は、何週間(例えば、1~4週間)か何日後かに腎移植手術が計画されている患者であり得る。手術の前に工程(a)に従って処置を開始して、手術後のAMRの発生を予防することが有益であり得る。一部の実施形態では、対象は、計画された移植手術を考慮して、将来のAMRのリスクがある。
【0185】
一部の実施形態では、C1-INHでの対象の処置は、移植の3ヵ月より後に開始される。
【0186】
一部の実施形態では、移植は、対象が腎同種移植片を受ける手術である。
【0187】
一部の実施形態では、方法は、抗体関連型拒絶反応の治療的処置のためのものである。これらの実施形態の一部では、方法は、腎同種移植片レシピエントにおける抗体関連型拒絶反応の治療的処置のためのものである。代替的な実施形態では、方法は、例えば移植後AMRの症状の発症の前にC1-INHを投与することによって、または代わりに移植前にC1-INHを投与することによって、抗体関連型拒絶反応を予防するためのものである。
【0188】
一部の実施形態では、方法は、不応性抗体関連型拒絶反応を処置するためのもの、特に不応性抗体関連型拒絶反応の治療的処置のためのものである。不応性抗体関連型拒絶反応の処置は、以前のうまくいかなかったSOC処置を考慮すると成功の機会が一般により低いので、特に難しい。
【0189】
一部の実施形態では、方法は、活動性抗体関連型拒絶反応を処置するためのものである。一部の実施形態では、方法は、慢性活動性抗体関連型拒絶反応を処置するためのものである。
【0190】
一部の実施形態では、レシピエントは、移植後に抗体関連型拒絶反応を患っている。一部の実施形態では、レシピエントは、活動性抗体関連型拒絶反応を有する。一部の実施形態では、レシピエントは、慢性活動性抗体関連型拒絶反応を有する。
【0191】
一部の実施形態では、方法は、AMRの慢性処置のためのものである。活動的AMRおよび慢性活動性AMRは、慢性処置から利益を得ることができる。一部の実施形態では、方法は、活動性AMRの慢性処置のためのものである。一部の実施形態では、方法は、慢性活動性AMRの慢性処置のためのものである。一部の実施形態では、方法は、不応性AMRの慢性処置のためのものである。慢性処置において、工程(b)に従った投与は、何ヵ月も、もしくは何年も継続し得るか、または可能な限り長く、例えば対象の死亡もしくは臓器不全まで、継続し得る。例えば、C1-INHの長期の皮下投与は、移植片機能に有益効果を有し得る。
【0192】
一部の実施形態では、IVIgは、本明細書に記載されるようなC1-INHの投与に加えて投与される。工程(a)および(b)を伴う静脈内および皮下投与を伴う一部の実施形態では、IVIgは、本明細書に記載されるC1-INHの静脈内投与に加えて、工程(a)において投与される。一部の実施形態では、IVIgは、工程(b)におけるC1-INHの皮下投与に加えて投与される。一部の実施形態では、IVIgは、C1-INHに加えて、工程(a)において、および(b)において、投与される。C1-INHが皮下にのみ投与される一部の実施形態では、IVIgは、皮下C1-INH投与とともに投与される。他の場合では、C1-INHは、少なくとも1回のIVIgの投与の後に投与される。一部の実施形態では、IVIgは、3~5週毎に、輸注として投与される。一部の実施形態では、各輸注は0.05~3g/kgのIVIgを含む。一部の実施形態では、各輸注は0.1~2g/kgのIVIgを含む。一部の実施形態では、少なくとも1回の輸注は、50mg/kg~500mg/kgのIVIgを含む。一部の実施形態では、少なくとも1回の輸注は、100mg/kg~200mg/kgのIVIgを含む。一部の実施形態では、少なくとも1回の輸注は、1g/kg~3g/kgのIVIgを含む。一部の実施形態では、輸注は、12~96時間以内、特に24~48時間以内に投与し得る。一部の実施形態では、IVIgは、12~96時間にわたって、特に24~48時間以内に、例えば対象の睡眠時間の間の輸注を避けるように中断を可能にするための数回の輸注で、投与される。一部の実施形態では、IVIgは、数日間投与され、各日に2~6時間にわたって少なくとも1回の輸注が投与される。C1-INHの投与に加えてIVIgが投与される場合、これは、必ずしも両方の薬物が同時に投与されることを意味しない。例えば、それらは順次に、または同時に投与し得る。例えば、IVIgは、2回分の用量のC1-INH投与の間のいつでも投与し得る。しかしながら、IVIgがC1-INHの投与に加えて投与される場合、両方の療法は並行して行われ、すなわち、対象は同じ処置期間、例えば工程(a)および/または工程(b)の処置期間の間に、両方の薬物を受ける。一部の実施形態では、投与の頻度は、C1-INHの場合よりもIVIgの場合の方が低くあり得る。
【0193】
一部のさらなる実施形態では、C1-INHの投与のない標準治療処置が、本明細書に記載されるC1-INH処置の開始の前に行われる。これは、SOC処置単独ではうまくいかないことから、特に特許請求される発明に従った処置が開始される前の場合に、適用される。一部のさらなる実施形態では、SOC処置は、例えば工程(a)および/または(b)に従って、その後でC1-INHでの処置と並行して継続される。一部の実施形態では、工程(a)および/または(b)に従ったC1-INHの投与は、SOC処置単独に不応性であるAMRのための、SOCへの追加的な療法である。一部の実施形態では、C1-INHなしでのSOCは第一選択処置であり得、その後のC1-INHおよびSOCでの処置は第二選択処置に相当し、例えば先にSOCが開始し、工程(a)および/または(b)に従ってC1-INHが投与される場合に並行してSOC処置が継続される。一部の実施形態では、C1-INHなしでのSOCは第一選択処置であり得、その後のSOCなしでのC1-INHでの処置は第二選択処置に相当する。
【0194】
静脈内および皮下投与の両方を伴う一部の実施形態では、工程(b)は工程(a)の後である。一部の実施形態では、工程(a)に従ったiv用量の最後の投与と工程(b)に従ったsc用量の初回投与との間に時間窓(C1-INHの投与が全くない)がある。一部の実施形態では、時間窓は12~96時間である。一部の実施形態では、時間窓は18~72時間である。一部の実施形態では、時間窓は24~48時間である。
【0195】
一部の実施形態では、iv用量は、医療専門家によって投与される。
【0196】
一部の実施形態では、sc用量の少なくとも一部は、工程(b)において対象によって自己投与される。一部の実施形態では、全てのsc用量は自己投与され、他の実施形態では、それらの一部が自己投与されるか、または全く自己投与されない。自己投与されないsc用量は、例えば、医療専門家によって投与される。不全の移植片のおよそ50%に非付着性が検出されると推定されており(Moresoら、Transplant Research and Risk Management 2015年;7:27~34頁)、移植片がその後に不全になった患者において、移植片が不全にならなかった者よりも非付着性についての懸念が10倍高い頻度で記録されたことが、さらに報告されている(Sellaresら、Am.J.Transplant.2012年;12(2):388~399頁)。自己投与の選択肢は、対象の付着率を増加させ、同種移植片生着を増大させ得る。
【0197】
実施例
下記で論じられる実施例は、純粋に本発明の例示を意図するものであり、決して本発明を限定すると考えられるべきではない。使用される数(例えば、量、持続期間等)に関して、正確性が保証されるよう努力されているが、いくらかの実験誤差および偏差が考慮に入れられるべきである。
【実施例1】
【0198】
12週間にわたる、成人腎移植片レシピエントにおける抗体関連型拒絶反応の処置のための標準治療への追加としてのヒト血漿由来C1エステラーゼ阻害剤の効能および安全性を評価するための研究
成人腎移植片レシピエントにおける抗体関連型拒絶反応の処置のための標準治療への追加としてのヒト血漿由来C1阻害剤の効能および安全性を評価するための研究を行った。
【0199】
治験製品
ICH医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理規則ガイドラインならびに地方特有の法的規制に従って、pdC1-INH(500IU/mL)を製造し、凍結乾燥粉末として提供した(単回使用バイアルあたり1,500IUのC1-INH)。使用前に、C1-INHの各バイアルを注射のために3mLの水で再構成した。再構成の後、C1-INHは静脈内および皮下投与のために500IU/mLの濃度で使用可能であった。60IU/kgのC1-INHは、0.12mL/kgの体積と同等であった。C1-INHの実際の用量は、これが実用的な体積の1mLのC1-INHに相当するので、最も近い500IUに四捨五入した。
【0200】
適格条件
研究母集団は、本明細書で後述する組み入れおよび除外基準に基づいて選択した。適格な患者は、少なくとも18歳であり、Banff2015に従った急性AMRの基準を満たす腎臓移植のレシピエントであった(Loupyら、Am.J.Transplant.2017年;17(1):28~41頁)。これは、好中球および/または単球の存在(g>0、v>0、および/またはptc>0)、ならびにC4d陽性、またはC4d陰性の場合g+ptc≧2(g=糸球体炎のBanff病変スコア;v=内膜動脈炎のBanff病変スコア;ptc=尿毛細管周囲毛細血管炎のBanff病変スコア;詳細についてはBanff基準を参照のこと)を用いて急性組織炎症の組織学的証拠によって確認された。活動性AMRおよび慢性活動性AMRについてのBanff基準を満たす患者も組み入れた。Banff2015に従って、少なくとも1つのドナー特異的抗体(DSA)の証拠を示した患者のみを組み入れた。他の適格基準は、移植の60日以内の定常状態の移植後eGFR≧40mL/分1.73m2または移植片機能低下もしくは移植片機能遅延を伴う対象における移植後の最初の7日間にわたる血清クレアチンの50%減少を伴う尿量の50%増加であった。en bloc腎移植のレシピエントは除外した。さらなる除外基準は、C型肝炎;活動性の細菌または真菌感染;>2週間の進行中の透析;既知の先天的出血障害または凝固障害;現在の癌または癌の既往歴;妊娠中または授乳中の女性の対象;避妊法を使用したがらない、または外科的に不妊でない、男性または女性の対象であった。
【0201】
臨床的利用の許可を受けていない、他の補体阻害剤、プロテアソーム阻害剤、免疫抑制剤、または任意の他の治験薬の投与は、本研究の間に許可されていなかった。対象は、これらの禁止された療法のいずれかを受けている場合、研究に登録されていない。
【0202】
AMRの第一選択処置としての標準治療(SOC)に反応しなかった患者のみが、C1-INHでの処置に適格であった。本研究のために、SOC処置をa)IVIg≧100mg/kgおよび血漿交換;またはb)血漿交換なしでIVIg>1グラム/kgのいずれかとして規定した。SOCに反応しないことを、SOCレジメンa)について≧7日間またはSOCレジメンb)について≦45日間で、処置している医師によって決定される腎機能(例えばeGFR)の改善なしとして定義した。任意選択のSOCの構成要素として、リツキシマブ使用を許可した。C1-INHの使用は、この第一選択処置については許可されなかった。上記で特定された標準治療処置に不応性の患者は、その後に後述のようにC1-INHで処置した。
【0203】
研究デザインおよび介入
研究は、世界的に複数の場所で行った。63人の患者が上記の適格基準を満たし、61人がC1-INHでの初回処置を開始し、そのうち47人がその後本明細書に記載されるようにC1-INHで処置され、処置を完了した(研究の完了の前に7人を研究から取り消し、7人はまだ研究を完了していない)。
【0204】
これらの47人のそれぞれに、13日間にわたって5回分の用量のC1-INH(60IU/kg)を静脈内投与した(1、4、7、10、13日目に予定された投与)。その後、さらに10週間(合計12週間)、C1-INH(毎週2回、60IU/kg)を皮下投与した。これらの12週間の処置の間、全ての患者に4週毎に1回の輸注あたり2グラム/kgで免疫グロブリン静注(IVIg)を投与した(1、4、8および12週目にIVIg)。IVIgの各投与は2~5週間かかった(毎日2~4時間、輸注中および/または輸注間に中断のある輸注)。
図1は、C1-INHの処置スケジュールを示す(SOCは示さず)。血漿交換は、対象が高いDSAを有する場合に行い得た。高いDSAは、正規化されたMFI値≧5000で、少なくとも1つのDSA(HLAクラスIおよび/またはクラスIIに対する)として定義された。予定された用量のC1-INHが血漿交換と同じ日であった場合、血漿交換の後に投与された。血漿交換が、予定されたIVIg投与の間に起こった場合、IVIgの投与は、血漿交換のセッションが完了するまで延期された。
【0205】
結果
レシピエントの年齢の中央値は41歳であった(18~71歳の範囲)。ほとんどのレシピエント(56%)は男性であった。人種の分布は63%が白人、18%が黒人、8%がアジア人、および11%が複数またはその他であった。体重の中央値は72kgであり(26~162kgの範囲)、肥満度指数の中央値は25.9であった。ほとんどのドナーは死亡しており(66%)、そのおよそ49%は脳死後のドナーであり、およそ16%は循環系に関係する死亡後のドナーであり、34%についてはドナータイプの情報を欠いている;脳死のドナーは標準治療ドナーであった。ドナー年齢の中央値は46歳であった(9~74歳の範囲)。ドナーの性別は均一に分布していた(48%が男性、48%が女性、5%がデータを欠いていた)。KDPIスコアの中央値は53%であった。
【0206】
かかるデータが利用可能なレシピエントのうち、およそ3分の2がC4d堆積を示した。患者の75%はde novo DSAを有し、21%の患者は移植前にDSAを有した。直近の移植からAMR診断までの時間の中央値は148日間であった。AMRの診断からC1-INHでの処置の開始までの時間の中央値は43日間であった。
【0207】
12週間のC1-INH処置期間の間のeGFR値の変化を比較したものを以下に示す:
【0208】
【0209】
これらの結果に基づき、本明細書に開示される投与計画に従ったC1-INHの長期の皮下投与は安全であると結論付けられ、処置された患者集団内で+0.41mL/分/1.73m2の平均eGFRの増大が観察された。rAMRにおいてeGFRは一般に低下することは公知であり、医学文献に基づく。例えばIVIg/血漿交換での、従来の処置の際に改善しないAMRの患者は、典型的にはeGFRを損ない、これらの状況における有効な処置の欠如および結果は、文献に記載されている。文献で報告されている速度は約-4~-8mL/分/1.73m2/年であり、これは12週間にわたる1~2mL/分/1.73m2の喪失に相当する(Anら、J.Immunol.Res.2014年;2014(828732)、1~7頁;Sablikら、BMC Nephrol.2019年;20(1):218頁;Eskandaryら、Am.Soc.Nephrol.2018年;29(2):591~605頁;Bohmigら、Transpl.Int.2019年;32(8):775~788頁;Larpparisuthら、Transplant Proc.2019年;51(10):3293~3296頁)。eGFRは、移植片喪失およびAMRの処置における成功の公知の代用マーカーである(Claytonら、J.Am.Soc.Nephrol.2016年;27(11):3440~3446頁;Bohmigら、Transpl.Int.2019年;32(8):775~788頁)。eGFRの、より程度の低い低下は、より良い移植片機能およびより長い移植片寿命に関連している。
【0210】
この研究で、eGFRは、以前報告されたように低下するのではなく、平均して、患者群において平均0.41mL/分/1.73m
2増大したことが見出された。この増大は、
図3に示される。結論として、本明細書に記載される処置を受けた患者群は、ヒストリカルコントロールと比較して、改善された腎機能を示す。
【実施例2】
【0211】
成人腎移植片レシピエントにおける不応性抗体関連型拒絶反応の処置のための標準治療への追加としてのヒト血漿由来C1阻害剤の効能および安全性を評価するための二重盲検プラセボ対照無作為化退薬研究。
治験製品および適格基準
治験製品および患者選択のための適格基準は、実施例1と同一である。プラセボは、ICH医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理規則ガイドラインならびに地方特有の法的規制に従って製造する。これは、再構成のために、凍結乾燥粉末として提供される。使用前に、プラセボの各バイアルを注射のために3mLの水で再構成する。プラセボの実際の用量は、最も近い、より小さい実用的な体積の、1mLに四捨五入される。60IU/kgの用量のC1-INHは、0.12mL/kgの体積と同等であり、プラセボもまた、C1-INHと同じスケジュールに従って、0.12mL/kgの用量で皮下注射される。C1-INHおよびプラセボのバイアルは同様に梱包し、それぞれのパッケージはキット番号によってのみ同定し得る。
【0212】
研究デザインおよび介入
この研究は、期:非盲検の処置期間1、盲検の処置期間2および任意選択の再処置を伴う追跡調査期間に分割される。
図2は、これらの期を示す。
【0213】
処置期間1は、実施例1の処置に従って行われる(同じ投与計画および他の介入)。しかしながら、実施例1と異なり、47人の患者の代わりに、およそ120人の対象がこの非盲検の処置期間1に参加するよう計画される。この実施例2は実施例1の研究の継続であり、すなわち実施例2の120人の患者は実施例1の患者を含み得るということは指摘されるべきである(実施例1は処置期間1に相当する)。非盲検の処置期間1の処置に反応する患者(レスポンダー)のみが盲検無作為化処置期間2に参加する。レスポンダーは、20mL/分/1.73m2と等しいか、またはより高い、かつ処置期間1の終わりにベースラインeGFR値の90%と等しいか、またはより高い、eGFR値を必ず有する。処置期間1のC1-INHでの記載される処置に何らかの理由で反応しない患者を除外するために、ノンレスポンダーは処置期間2に参加しない。研究に留まる者については、C1-INHのさらに長い投与の効果が研究される。
【0214】
処置期間2の間、適格の対象は、26週間、皮下に毎週約2回盲検の治験製品(C1-INH(60IU/kg)またはプラセボ)での処置を受けるよう、1:1で無作為化される。処置期間1(12週間)および処置期間2(26週間)は、総計で38週間の組み合わせ処置持続期間になる。全ての対象は、処置期間1を通して、および場合により処置期間2を通して、4週毎に1回、IVIg 2グラム/kgを受ける。血漿交換は、必要に応じて行われる。
【0215】
38週目の処置期間2の終わりに、対象は~3.5年の処置後追跡調査期間に入る。追跡調査期間の間、対象は、彼らの地方特有の標準治療と調和した処置を受け、彼らの同種移植片の状態および生着がモニタリングされる。対象は、処置期間2において彼らが無作為化された盲検の治験製品で、処置後の追跡調査期間の間に再処置を受け得る。再処置は、生検によるAMRの再発の診断の後に起こり得る。再処置は、処置後の追跡調査期間の間の任意の時点で開始し得、26週間またはそれ未満続き得る。実施例2の異なる処置期間を表2に示す。
【0216】
【0217】
それぞれの対象についての研究の持続期間は、およそ210週間(~4年間)と予想される。これは、処置期間1および2ならびに3.5年間の処置後の追跡調査期間を含む。研究の第一の目的は、腎同種移植片レシピエントにおける不応性AMRの処置におけるC1-INHの長期の効能をさらに確認することである。第二の目的は、腎同種移植片レシピエントにおける不応性AMRの処置の間のC1-INHの薬物動態をさらに研究することである。
【0218】
一部の実施形態では、eGFRの安定化に反映される腎機能、ならびに対象の生存および同種移植片生着の発生率は、C1-INHを受けた群について、より良い。一部の患者では、結果として起こる移植片喪失は、C1-INH群では、プラセボ群よりも頻度がより少ないか、または起こるまでにより長い時間がかかる。追跡調査期間を使用して、対象における移植片喪失が評価される。
【国際調査報告】