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特表2023-551211リサイクル可能なプラスチック用のインク
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  • 特表-リサイクル可能なプラスチック用のインク 図
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】リサイクル可能なプラスチック用のインク
(51)【国際特許分類】
   C09D 101/14 20060101AFI20231130BHJP
   C09D 11/08 20060101ALI20231130BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20231130BHJP
   C09D 11/104 20140101ALI20231130BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20231130BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20231130BHJP
   B41M 3/00 20060101ALI20231130BHJP
   C08J 11/06 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
C09D101/14
C09D11/08
C09D11/102
C09D11/104
C09D7/63
C09D167/00
B41M3/00 Z
C08J11/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023530897
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(85)【翻訳文提出日】2023-05-22
(86)【国際出願番号】 US2021060032
(87)【国際公開番号】W WO2022109230
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/117,072
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】507385165
【氏名又は名称】サン ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤロル・オソリオ
(72)【発明者】
【氏名】エヴェレット・ギャリッシュ
【テーマコード(参考)】
2H113
4F401
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
2H113AA04
2H113BA01
2H113BA03
2H113BB08
2H113BB22
4F401AA02
4F401AA22
4F401AC10
4F401AD02
4F401BA13
4F401CA35
4F401CA53
4F401EA07
4F401FA01Z
4J038BA061
4J038DD001
4J038GA03
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA06
4J038MA09
4J038NA01
4J038NA12
4J038PA18
4J038PC08
4J039AB02
4J039AB12
4J039AE01
4J039AE03
4J039AE06
4J039BA13
4J039BA35
4J039BC07
4J039BC20
4J039BE01
4J039BE25
4J039CA07
4J039FA02
4J039GA03
4J039GA09
(57)【要約】
本発明は、2部からなるインク又はコーティングシステムを提供し、部分Aは、1つ以上のヒドロキシル官能性樹脂と、1つ以上のアミノプラスト架橋剤と、1つ以上のポリエステルポリオールと、1つ以上の溶媒と、を含み、部分Bは、酸触媒を含む。部分A及び部分Bは、基材上への適用直前に組み合わされる。本発明のインク又はコーティングシステムは、高温苛性洗浄液に供されるとき、ポリオレフィンフィルム基材からの除去に耐性がある。ポリオレフィンフィルム基材上に印刷された従来のインク上にオーバーコート(バッキングコート)として適用された場合、本発明のインク又はコーティングシステムはまた、高温苛性洗浄液に供されるとき、ポリオレフィン基材からの従来のインクの除去を防止する。有利には、本発明のインク及びコーティングシステムの使用は、リサイクルされたPETフレークのインク染色及び汚染を低減する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)組成物である部分Aであって、
i. 部分Aの組成物の総重量に基づいて、5重量%~40重量%の1つ以上のヒドロキシル官能性樹脂であって、少なくとも1つの樹脂がセルロースアセテートブチレート樹脂である、樹脂;
ii. 部分Aの組成物の総重量に基づいて、0.5重量%~10重量%の1つ以上のアミノプラスト架橋剤;
iii. 部分Aの組成物の総重量に基づいて、0.5重量%~10重量%の1つ以上のポリエステルポリオール;及び
iv.部分Aの組成物の総重量に基づいて、5重量%~50重量%の1つ以上の溶媒を含む部分A;及び
(b)1つ以上の酸触媒である部分B、を含む、2つの部分からなるインク又はコーティングシステム。
【請求項2】
前記1つ以上の酸触媒が、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、アシッドホスフェート、カルボン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のインク又はコーティングシステム。
【請求項3】
前記1つ以上のヒドロキシル官能性樹脂が、アクリル、ポリエステルジオール、アルキド、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ケトンホルムアルデヒド、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のインク又はコーティングシステム。
【請求項4】
前記1つ以上のアミノプラスト架橋剤が、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のインク又はコーティングシステム。
【請求項5】
前記1つ以上のアミノプラスト架橋剤が、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載のインク又はコーティングシステム。
【請求項6】
前記部分Aの組成物が、接着促進剤、シリコーン、光安定剤、光増白剤、脱ガス添加剤、アンモニア、流動促進剤、消泡剤、酸化防止剤、安定化剤、界面活性剤、分散剤、可塑剤、レオロジー添加剤、ワックス、シリコーン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含み、各添加剤が、独立に、前記部分Aの組成物の総重量に基づいて0.1重量%~5重量%の量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載のインク又はコーティングシステム。
【請求項7】
前記部分Aの組成物が、10重量%~40重量%の二酸化チタンをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のインク又はコーティングシステム。
【請求項8】
部分A及び部分Bが、90:10~95:5の比率でブレンドされる、請求項1~7のいずれか一項に記載のインク又はコーティングシステム。
【請求項9】
(a)浮遊可能なポリオレフィンフィルム基材を準備する工程;
(b)前記基材上に1つ以上のインクを印刷し且つ乾燥又は硬化させる工程;
(c)前記1つ以上の印刷されたインクの上に、請求項1~8のいずれか一項に記載のインク又はコーティングシステムを適用する工程;及び
(d)前記インク又はコーティングシステムを乾燥又は硬化させる工程、
を含む、印刷されたラベルを製造する方法。
【請求項10】
前記浮遊可能なポリオレフィンフィルムが、ポリエチレン又はポリプロピレンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項9又は10のいずれか一項に記載の方法によって調製された、印刷されたラベル。
【請求項12】
請求項11に記載の印刷されたラベルを含む、リサイクル可能なプラスチック容器。
【請求項13】
前記容器が、ポリエチレンテレフタレート(PET)である、請求項13に記載のリサイクル可能なプラスチック容器。
【請求項14】
リサイクルされたPETフレークを得る方法であって、
(a)請求項13に記載のリサイクル可能なプラスチック容器を準備する工程;
(b)前記プラスチック容器を高温苛性洗浄液に浸漬する工程であって、
i.前記高温苛性洗浄液が、前記プラスチック容器から印刷されたラベルを除去し、かつ
ii.前記印刷されたインク、及びインク又はコーティングシステムが、前記ラベルから除去されず、かつ、前記高温苛性洗浄液中で溶解しない、工程;
(c)前記インク、及び/又はインク又はコーティングシステムから変色しないリサイクルされたPETフレークを得る工程であって、前記リサイクルされたPETフレークが、前記リサイクルされたPETフレークと対照PETフレークとの間のCIELAB色値の差によって示した場合に、高温苛性洗浄液中に浸漬された、印刷されていない、きれいなプラスチック容器からの対照PETフレークに対してスペクトルが合致(スペクトルマッチ)しており、ΔL=0±10.0、Δa=0±2.5、及びΔb=0±2.5である工程、
を含む方法。
【請求項15】
ΔL=0±5.0、Δa=0±1.5、及びΔb=0±1.5である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記高温苛性溶液が、85℃の温度において、200mlの溶液中に3gのNaOH及び0.6gの界面活性剤を含む、請求項14又は15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項14~17のいずれか一項に記載の方法によって得られた、リサイクルされたPETフレーク。
【請求項19】
請求項18に記載のリサイクルされたPETフレークを含む、インク又はコーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月23日に出願された米国仮出願第63/117,072号に基づく優先権を主張し、同出願はその全体を本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、プラスチック基材のリサイクルを容易にするインク及びコーティング組成物に関する。本発明のインク及びコーティングは、プラスチック物品、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルに適用されるポリマーフィルムなどのラベルに適用される。本発明のインク及びコーティングは、高温苛性洗浄液によってラベルから除去されず、高温苛性洗浄において溶解せず、したがって、リサイクルされたプラスチック物品を汚染しない。
【背景技術】
【0003】
全体を覆う収縮スリーブラベルは、現在、食品及び飲料容器、並びにポリエチレンテレフタレート(PET)容器などの消費者製品での使用のための非常に人気のある選択肢である。収縮スリーブラベルは、消費者にとって興味を引き、便利であり、ブランド所有者にとって商業的に魅力的である。しかしながら、それらは、多くの人によって成功事例とみなされている一方で、リサイクル産業にとっての困難をもたらす。収縮スリーブラベルは、特にPETボトルのリサイクルに関して問題であり、ボトル及びその上に含まれるラベルは、一緒にリサイクルプロセスに入り、下流で分離することが非常に困難である。加えて、ラベル上に印刷されたインクが、ラベルを除去するために一般に使用される高温苛性洗浄液中に溶解する場合には、インクは、洗浄液を汚染するおそれがあり、それによって、次に、リサイクルされたポリエステルフレークの着色を引き起こす可能性がある。フレークのこの着色は、その品質を低下させ、それによって、リサイクルされたPETフレークの価値を低下させる。更に有害なことに、これは、排水処理コストの増加、並びに市営水源及び環境保護庁(EPA)との潜在的な環境問題につながる可能性がある。
【0004】
全体を覆う収縮スリーブラベルを製造するために典型的に使用されるフィルムのうち、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)は、洗浄水ステップにおいてボトルからのPETフレークとともに沈む傾向があるため、リサイクル業者にとって最も問題となることが多い。その後、PETフレークは、凝集しやすくなり、プロセスから分離及び除去することが非常に困難になる。
【0005】
この問題への対応として、結晶化可能なPETG樹脂とよばれる新しく開発されたポリマーは、ボトルからのPETフレークとともに完全にリサイクル可能であることが示されている。このプロセスでは、結晶化可能なPETGフィルム上に印刷されたインクは、好ましくは、同時にリサイクルされたPETボトル及び結晶化可能なPETGラベルフィルムが高品質(最小の着色、良好な物理的特性、例えば、耐性)であるために、高温苛性(NaOH溶液)洗浄サイクルのあいだに完全に除去される。
【0006】
あるいは、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルムの製造者は、「浮遊可能な」ポリオレフィン系収縮フィルムを設計することによって、この問題に対する異なる解決策を提供する機会を見出した。浮遊可能なポリオレフィンフィルムは、PET容器上の全体を覆う収縮スリーブとして使用することができ、それらは、水に浮遊するため、リサイクルプロセスに干渉せず、プロセスの沈殿/浮遊ステップ中にPETフレークから容易に分離することができる。したがって、これらの浮遊可能なフィルム上に印刷されたインク及びコーティングは、好ましくは、苛性洗浄液及びリサイクルされたPETフレークの汚染を防止するようにラベル上に残る。
【0007】
インク技術の現状は、NaOH溶液に対して耐性がないため、リサイクルプロセスで使用される高温苛性洗浄液中に可溶化することである。高温苛性洗浄液は、典型的には、最大3%のNaOH、及び洗剤特性を有する非イオン性界面活性剤を含む85℃の水である。苛性溶解性インク化学物質は、リサイクルされたPETフレークを着色し、洗浄水をひどく汚染するため、望ましくない。
【0008】
欧州特許出願公開第2 987 822号明細書は、印刷された薄壁PETG基材の連続回収のための方法を開示しており、インクは、処理組成物を使用して、リサイクルプロセス中に基材から除去される。処理組成物は、ケトン、アルデヒド、アルコール、及びエステルからなる群から選択される有機低分子量極性溶媒の水性共沸混合物である。処理組成物で除去することができる例示的な結合剤系は、スチレンアクリルコポリマー、又はポリアミドである。
【0009】
米国特許第6,147,041号明細書は、ビヒクルの主成分として、(A)ウレタン樹脂及び/又はアクリル樹脂、並びに(B)スチレン-アクリル酸コポリマー、スチレン-マレイン酸樹脂、ロジン-マレイン酸樹脂、及びフェノール樹脂からなる群から選択される1つ以上の物質を含む、除去可能なインクを記載している。除去可能なインクは、ビヒクルの成分としてセルロース樹脂を更に含んでもよい。有機溶媒は、不可欠な成分である。これらのインクは、水性アルカリ溶液を用いてプラスチック物品から除去される。
【0010】
国際公開第2021/081288号は、高温苛性洗浄液中でラベルなどのプラスチック基材から除去されるインク組成物を開示している。これらのインクは、プラスチック基材から除去されるとき、高温苛性洗浄液の液中に溶解しにくく、沈殿し、沈殿物は、高温苛性溶液から濾過される。
【0011】
米国特許第5,338,785号明細書は、ポリエチレングリコールメタクリレート/ポリアミドコポリマー樹脂、顔料、溶媒、及び酢酸酪酸セルロースを含む可撓性包装印刷インクを開示している。これらのインクは、ケトン樹脂を含有し得る。アルカリ溶液に対する耐性は、試験されず、議論もされなかった。
【0012】
欧州特許出願公開第2 061 848号明細書は、有機溶媒、溶媒可溶性結合剤樹脂、及び水不溶性キノン染料を含むインクジェットインク組成物を記載している。結合剤樹脂は、芳香族基又は極性官能基、例えば、ヒドロキシル及び/又はカルボキシル基などのキノン染料と相互作用することができる官能基を有する。結合剤樹脂としては、セルロース樹脂及びケトン樹脂が挙げられる。アルカリ溶液に対する耐性は、試験されず、議論もされなかった。
【0013】
国際公開第2019/204994号は、ポリウレタン結合剤、溶媒、及びセルロースアルキレート(遮断防止剤として)を含むアルコール可溶性印刷インク組成物を開示している。
【0014】
国際公開第2004/104121号は、カルボキシアルキルセルロースエステルを含有するコーティングシステムを架橋するためのアミノプラスト架橋剤を開示している。組成物の架橋は、PTSAで触媒される。樹脂の反応性官能基としては、ヒドロキシル、カルボキシル、エポキシ、及びアミン官能基が挙げられる。
【0015】
米国特許第4,551,492号明細書は、本質的にポリエステル樹脂からなる結合剤、部分的にブチル化されたメラミン架橋剤樹脂、ポリ尿素可塑剤、ポリエチレン酢酸ビニルコポリマー分散体、及び低粘度酢酸セルロース酪酸塩と高粘度酢酸セルロース酪酸塩との混合物から本質的になるポリエステルコーティング組成物を開示している。目的は、組成物の固形分を14%から18%に増加させることであった。これは、酢酸セルロース酪酸塩の量を減少させることと、ポリエステル樹脂と比較してより多くの架橋剤が使用することによりポリエステル樹脂に加えてメラミン架橋剤の量を増加させること、によって達成された。組成物は、満足のいく特性を提供するために非常に多量のメラミン架橋剤を必要とする。
【0016】
したがって、除去可能であることとは対照的に、インクがラベルフィルム上に永続的に留まる溶液を提供する必要がある。したがって、ラベルフィルムがプラスチックボトルから取り除かれるとき、インクも同様に取り除かれ、プラスチックボトルに由来するリサイクルフレークを染色又は他の方法で汚染しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2987822号明細書
【特許文献2】米国特許第6,147,041号明細書
【特許文献3】国際公開第2021/081288号
【特許文献4】米国特許第5,338,785号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第2061848号明細書
【特許文献6】国際公開第2019/204994号
【特許文献7】国際公開第2004/104121号
【特許文献8】米国特許第4,551,492号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、プラスチック物品(例えば、プラスチックボトル)上に置かれるラベルに適用された場合に、リサイクルプロセスの高温苛性洗浄中にラベルから除去されないインク及びコーティング組成物を提供する。本発明はまた、インク又はコーティング組成物をラベル基材に適用するための方法も提供する。ラベル上に印刷された他のインクの上にトップコート又は刷り重ねワニスとして適用された場合、本発明の組成物はまた、ラベルからの他のインクの除去を防止する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
特定の態様では、本発明は、
(a)組成物である部分Aであって、
i. 部分Aの組成物の総重量に基づいて、5重量%~40重量%の1つ以上のヒドロキシル官能性樹脂であって、少なくとも1つの樹脂がセルロースアセテートブチレートである、ヒドロキシル官能性樹脂;
ii. 部分A組成物の総重量に基づいて、0.5重量%~10重量%の1つ以上のアミノプラスト架橋剤;
iii. 部分A組成物の総重量に基づいて、0.5重量%~10重量%の1つ以上のポリエステルポリオール;及び
iv. 部分A組成物の総重量に基づいて、5重量%~50重量%の1つ以上の溶媒、を含む部分Aと、
(b)1つ以上の酸触媒である部分B、を含む、2つの部分からなるインク又はコーティングシステムを提供する。
【0020】
別の側面では、本発明は、
(a)浮遊可能なポリオレフィンフィルム基材を準備する工程;
(b)基材上で1つ以上のインクを印刷及び乾燥又は硬化させる工程;
(c)本発明のインク又はコーティングシステムを、1つ以上の印刷されたインクの上に適用する工程;及び
(d)インク又はコーティングシステムを乾燥又は硬化させる工程
を含む、印刷されたラベルを調製する方法を提供する。
【0021】
好ましい実施形態では、ラベルは、浮遊可能なポリオレフィンフィルムである。他の実施形態では、ラベルは、容器又はボトルなどのプラスチック物品に適用され、その物品は、リサイクル可能である。好ましい実施形態では、プラスチック物品は、PETボトルである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、典型的なPETリサイクルプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、プラスチックリサイクルプロセスで使用されるような高温苛性洗浄液による除去に対して耐性であるインク及びコーティング組成物を提供する。本発明のインク及びコーティングは除去されず、コーティング(例えば、透明な収縮フィルム上の従来の印刷されたインク上のバッキング白色コーティング)として使用したとき、本発明のインク及びコーティングは、リサイクルプロセス中に、それらが上に印刷されるインクの除去を防止する。その結果、そのようにして得られたリサイクルされたPETフレークは、インクによって着色又は汚染されない。
【0024】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示的及び説明的なものに過ぎず、特許請求されるいずれの主題も限定するものではないことを理解されたい。
【0025】
見出しは、構成上の目的のためにのみ使用され、決して発明を限定することを意図するものではない。
【0026】
別段の規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、発明が属する技術の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書の開示全体を通して言及される全ての特許、特許出願、公開出願及び刊行物、ウェブサイト、並びに他の公開資料は、別段の注意がない限り、任意の目的のために参照によりその全体を援用する。本明細書に記載のものと同様又は同等の任意の方法及び材料が、本発明の実施又は試験において使用され得るが、好ましい方法が記載されている。
【0027】
定義
本明細書では、単数の使用は、別段具体的に記述されない限り、複数を含む。本明細書で使用される場合、単数形(本願の外国語明細書中の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」)は、文脈が別途明確に示していない限り、複数の形態も同様に含むことが意図されている。
【0028】
本出願では、「又は」の使用は、別段の記載のない限り「及び/又は」を意味する。また、それが使用されている文脈から明らかな場合、「及び」は、一度に全てが真であるか又は存在することが不可能である代替要素のリストにおけるように、「又は」と解釈され得る。
【0029】
本明細書において使用される場合、「含む(comprises)」及び/又は「含む(comprising)」という用語は、記述された特色、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特色、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を除外しない。更に、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、「構成されている(composed)」、「構成されている(comprised)」という用語又はそれらの変形が詳細な説明又は特許請求の範囲のいずれかにおいて使用される限り、そのような用語は、「含む(comprising)」という用語と同様の様式で包括的であることが意図される。
【0030】
本明細書で使用される場合、範囲及び量は、特定の値又は範囲について「約」と表すことができる。「約」は、正確な量も含むことが意図される。したがって、「約5パーセント」は、「約5パーセント」を意味し、「5パーセント」も意味する。「約」は、意図された用途又は目的のための典型的な実験誤差内を意味する。
【0031】
数値範囲が記載されている場合、それは、具体的に列挙されるか否かにかかわらず、エンドポイント(末端値)、その範囲内の全ての値、及びその範囲内の全てのより狭い範囲を含むことを理解されたい。
【0032】
本開示を通して、別段の指示のない限り、全ての部分及び割合は、重量(総重量に基づく重量%又は質量%)であり、全ての温度は、℃である。
【0033】
本明細書で使用される場合、「基材」は、インク又はコーティングが適用され得る任意の表面又は物体を意味する。基材としては、セルロース系基材、紙、紙板、布地(例えば、綿)、皮革、織物、フェルト、コンクリート、石積み、石、プラスチック、プラスチック又はポリマーフィルム、スパンボンド不織布(例えば、ポリプロピレン、ポリエステルなどからなる)、ガラス、セラミック、金属、木材、複合材、それらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。基材は、金属若しくは金属酸化物、又は他の無機材料の1つ以上の層を有し得る。不織布基材が特に好ましい。本発明の目的に関しては、プラスチック基材、特に収縮フィルム及びリサイクル可能なプラスチック基材が好ましい基材である。
【0034】
本明細書で使用される場合、「物品(article)」又は「物品(articles)」という用語は、基材又は製造品を意味する。物品の例としては、セルロース系基材、紙、紙板、プラスチック、プラスチック又はポリマーフィルム、ガラス、セラミック、金属、複合材などの基材、並びに出版物(例えば、小冊子)、ラベル、及び包装材料(例えば、カードボードシート又は段ボール)、容器(例えば、ボトル、缶)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、金属化箔(例えば、ラミネートアルミニウム箔)、金属化ポリエステル、金属容器などの製造品が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の目的に関しては、プラスチック物品、特に収縮フィルム及びリサイクル可能なプラスチック基材が好ましい基材である。
【0035】
本明細書で使用する場合、「インク及びコーティング」、「インク」、及び「コーティング」は交換可能に使用され、本発明の組成物、又は指定された場合、従来技術に見られる組成物(比較)を指す。インク及びコーティングは、典型的には樹脂、溶媒、及び任意選択により場合によっては着色剤を含有する。コーティングは、しばしば、無色又は透明であると考えられ、一方、インクは、典型的には着色剤を含む。
【0036】
本明細書において使用される場合、「高温苛性洗浄液」又は「高温苛性溶液」は、約85℃~90℃に加熱された水及び塩基を含む水溶液を指す。例えば、高温苛性洗浄液は、水及び約3%~20%の水酸化ナトリウム(NaOH)を含有し得る。
【0037】
「のみからなる(consist of)」、「のみからなる(consists of)」、又は「のみからなる(consisting of)」という用語が特許請求の範囲の本文で使用される場合、「のみからなる(consist of)」、「のみからなる(consists of)」、及び/又は「のみからなる(consisting of)」と相殺される特許請求の範囲の用語は、「のみからなる(consist of)」、「のみからなる(consists of)」、又は「のみからなる(consisting of)」の直後に列挙される要素に限定され、その特定の特許請求の範囲の用語に関連する列挙されていない要素に対して閉鎖的である。「それらの組み合わせ」という用語は、「のみからなる(consist of)」、「のみからなる(consists of)」、又は「のみからなる(consisting of)」の後に続く列挙された要素のリストに含まれる場合、列挙された要素のうちの2つ以上のみの組み合わせを意味する。例えば、特許請求の範囲が「アルコール、ケトン、酢酸塩、及びそれらの組み合わせのみからなる群から選択される溶媒」を列挙している場合、これは、列挙されたそれらの溶媒のみを含むことができることを意味し、すなわち、「それらの組み合わせ」は、アルコール、ケトン、及び酢酸塩のみの組み合わせを意味する。
【0038】
リサイクルプロセス
リサイクルプロセスを図に例示する。消費後のボトル原料からのPETの典型的な機械的リサイクルプロセスの一般的な説明は次のとおりである。
(a)路傍又は地方自治体のリサイクル施設からの、ラベルが付いた消費後のPETボトルの収集。
(b)機械的シンギュレータ内で圧縮されたベール梱包(bale)からラベル付きPETボトルを分離する。
(c)温和な(マイルドな)苛性/洗剤水浴中でのラベル付きボトル全体の最初の洗浄。
(d)非PET汚染物質からのPETのNIRF(近赤外蛍光)又は手による選別。
(e)ラベル付きボトル全体の湿式又は乾式機械粉砕。
(f)高温苛性水+洗剤による高せん断タンク内での徹底的な洗浄。
(g)重量物(ボトルからのPETフレーク)から、軽量物(キャップ、蓋、リング、及びポリオレフィンベースのラベル、並びに水に浮くクロージャー)を除去するための沈殿/浮遊分離タンク。
(h)洗浄されたリサイクルPETフレークの排水/乾燥/湿式分級。
【0039】
次いで、リサイクルされたPETフレークをペレットに変換し、PETが使用される用途、例えば、新しいPETボトルを作製するために使用され得る。
【0040】
図を参照すると、混合プラスチックのベール梱包(1)が、シンギュレータ(2)を通って流れ、異なるタイプのプラスチックを分離する。PETボトルは、典型的にはインクを除去する温和(マイルド)な苛性/洗剤水浴(3)中でのボトル全体の洗浄に供される。きれいなPETボトルは、NIRF又は手による選別(4)のいずれかによって選別される。選別は、非PET材料を、混合されたベール(5)へと分離する。PETボトル全体(クリア/青、緑)が分離される(6)。ラベル及びキャップがこの段階ではまだボトルに残っていることに注意されたい。PETボトルは再び手により選別され(7)、湿式又は乾式粉砕機を通って流れて(8)、混合フレーク(すなわち、ボトルからのPETフレーク、及びキャップ及びラベルからのフレーク)を生成する。粉砕後、混合フレークを脱水し(9)、乾燥させる(10)。この時点で、混合フレークは、任意選択により場合によっては湿式分級ステップに供されて、混合フレークをサイズによって分離してもよい(11)。混合されたフレークは、汚れたもの用のサイロ(12)に移され、その後、事前すすぎに供される(13)。混合フレークは脱水される(14)。次に、混合フレークを高せん断洗浄反応器(15)に移し、そこで、それらは高温苛性洗浄液(苛性水+洗剤)に供され、これは、フレーク上に残っているいかなるインクも除去するように設計されている。次に、洗浄された混合フレークは脱水され(16)、沈殿/浮遊タンク(17)に移される。非PETフレークは、PETフレークよりも軽く(浮遊可能な流れ)、タンクの上部に浮き、除去される(18)。PETフレーク(19)は、沈殿/浮遊タンクの底部に沈殿し、脱水(20)及び乾燥(21)によって処理される。PETフレークは、任意選択により場合によって湿式分級されて(22)、サイズによってPETフレークを分離する。PETフレークは、任意選択により場合によってはフレーク選別に供される(23)。きれいなPETフレークの流れ(24)を使用して、プラスチックボトルなどの他の製品を作製することができる(25)。
【0041】
インク及びコーティング組成物、並びにその使用
本発明は、プラスチック物品のリサイクル時など、高温苛性洗浄液に供されるときに基材からの除去に耐性のあるインク及びコーティング組成物を提供する。本発明のインク及びコーティング組成物はまた、高温苛性溶液中に溶解しない。したがって、リサイクルされたPETフレークの汚染及び染色は、本発明のインク及びコーティングの使用によって減少又は除去される。他のインクの上に適用されるトップコート又は刷り重ねワニスとして使用される場合、本発明の組成物はまた、基材からの他のインクが除去されることを防止する。
【0042】
本発明のインク及びコーティング組成物は、2部(2成分形)からなるシステムとして提供される。本発明のインク及びコーティングシステムは、1つ以上のヒドロキシル官能性樹脂と組み合わせた、2部からなる酸触媒/アミノプラスト架橋化学物質に基づく。部分Aの組成物は、1つ以上のヒドロキシル官能性樹脂と、1つ以上のアミノプラスト架橋剤と、1つ以上のポリエステルポリオールと、1つ以上の溶媒とを含む。好ましい実施形態では、少なくとも1つのヒドロキシル官能性樹脂は、セルロースアセテートブチレート(CAB)樹脂である。部分Bは、アミノプラスト架橋剤と反応性である1つ以上の酸触媒を含む。
【0043】
部分Aの組成物は、1つ以上のヒドロキシル官能性樹脂を含む。好適な樹脂としては、アクリル、ポリエステルジオール、アルキド、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、ケトンホルムアルデヒド、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、少なくとも1つの樹脂がCABである。
【0044】
ある特定の実施形態では、2つ以上のCAB樹脂が含まれる。いくつかの実施形態では、異なる粘度を有するCAB樹脂が、組成物の粘度を調節するために異なる量で使用され得る。例えば、組成物が第1のCAB樹脂を含有し、組成物の粘度がその意図された目的(フレキソ印刷など)には高すぎる場合、第1のCAB樹脂よりも低い粘度を有する第2のCAB樹脂を、それに応じて粘度を調整するのに十分な量で添加することができる。当業者は、使用される印刷方法のための所望の粘度を達成するために、好適な粘度のCAB樹脂を選択するであろう。
【0045】
本発明の部分Aの組成物は、典型的には、部分Aの組成物の総重量に基づいて、約5重量%~約40重量%の1つ以上のヒドロキシル官能性樹脂を含む。1つ以上のヒドロキシル官能性樹脂の量は、乾燥重量(すなわち、樹脂固体)である。例えば、部分Aの組成物は、約5重量%~約30重量%、又は約5重量%~約20重量%、又は約5重量%~約10重量%、又は約10重量%~約40重量%、又は約10重量%~約30重量%、又は約10重量%~約20重量%、又は約20重量%~約40重量%、又は約20重量%~約30重量%、又は約30重量%~約40重量%の量のヒドロキシル官能性樹脂を含み得る。ある特定の実施形態では、樹脂は、溶液又は分散液として提供されることができ、溶液又は分散液の量は、樹脂固体の所望の量に到達するように調整される。例えば、ヒドロキシル官能性樹脂が40%の固体を有する分散液として供給される場合、添加されるであろう分散液の量は、5重量%のヒドロキシル官能性樹脂に到達するように、12.5重量%の分散液である。
【0046】
本発明の部分Aの組成物は、1つ以上のアミノプラスト架橋剤を含む。好適なアミノプラスト架橋剤としては、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の部分Aの組成物は、典型的には、部分Aの組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%~10重量%の1つ以上のアミノプラスト架橋剤を含む。1つ以上のアミノプラスト架橋剤の量は、実際の架橋剤の重量である。例えば、部分Aの組成物は、約0.5重量%~5重量%、又は約0.5重量%~約1重量%の量のアミノプラスト架橋剤を含有し得る。ある特定の実施形態では、架橋剤は、溶液又は分散液として提供されることができ、溶液又は分散液の量は、架橋剤自体の所望の量に到達するように調整される。
【0047】
本発明の部分Aの組成物は、1つ以上のポリエステルポリオールを含む。好適なポリエステルポリオールとしては、K-Flex188、K-Flex148、K-Flex171-90、及びそれらの組み合わせ(全てKing Industries社から)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の部分Aの組成物は、典型的には、部分Aの組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%~約10重量%のポリエステルポリオールを含む。例えば、部分Aの組成物は、約0.5重量%~5重量%、又は約0.5重量%~約1重量%の量のポリエステルポリオールを含有し得る。
【0048】
本発明の部分Aの組成物は、1つ以上の溶媒を含む。好適な溶媒としては、アルコール、脂肪族炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、アルデヒド、エーテル、エステル、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の部分Aの組成物は、典型的には、部分Aの組成物の総重量に基づいて、約5重量%~約50重量%の1つ以上の溶媒を含む。例えば、部分Aの組成物は、約5重量%~約40重量%、又は約5重量%~約30重量%、又は約5重量%~約20重量%、又は約5重量%~約10重量%、又は約10重量%~約50重量%、又は約10重量%~約40重量%、又は約10重量%~約30重量%、又は約10重量%~約20重量%、又は約20重量%~約50重量%、又は約20重量%~約40重量%、又は約20重量%~約30重量%の量の溶媒を含有してよい。部分Aの組成物は、好ましくは、水を含有しない。しかしながら、組成物を調製するために使用される材料中に少量の水が不純物として存在してもよい。水が存在する場合、それは、好ましくは、部分Aの組成物の総重量に基づいて、0.5重量%未満の量で存在する。
【0049】
本発明の部分Aの組成物は、1つ以上の非ヒドロキシル官能性樹脂を更に含んでもよい。非ヒドロキシル官能性樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ケトン樹脂、アルデヒド樹脂アルキド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ロジン樹脂、炭化水素樹脂、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。そのような樹脂は、顔料の湿潤、光沢、レオロジー、化学物質耐性、遮断防止特性、及び柔軟性を改善するのに役立つことができる。存在する場合、非ヒドロキシル官能性樹脂は、典型的には、部分Aの組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%~約40重量%の量で存在する。非ヒドロキシル官能性樹脂の量は、乾燥重量(すなわち、樹脂固体)である。例えば、部分Aの組成物は、約0.5重量%~約30重量%、又は約0.5重量%~約20重量%、又は約0.5重量%~約10重量%、又は約0.5重量%~約1重量%、又は約1重量%~約40重量%、又は約1重量%~約30重量%、又は約1重量%~約20重量%、又は約1重量%~約10重量%の量の非ヒドロキシル官能性樹脂を含有し得る。
【0050】
本発明の部分Aの組成物は、1つ以上の増量剤を更に含んでもよい。好適な増量剤としては、粘土、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。存在する場合、増量剤は、典型的には、部分Aの組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%~約10重量%の量で存在する。例えば、部分Aの組成物は、約0.5重量%~5重量%、又は約0.5重量%~約1重量%の量の増量剤を含有し得る。
【0051】
本発明の部分Aの組成物は、1つ以上の添加剤を更に含んでもよい。好適な添加剤には、接着促進剤、シリコーン、光安定剤、光増白剤、脱ガス添加剤、アンモニア、流動促進剤、消泡剤、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、分散剤、可塑剤、レオロジー添加剤、ワックス、シリコーン、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。存在する場合、添加剤は各々、部分Aの組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約5重量%の量で個別に存在する。
【0052】
本発明の部分Aの組成物は、1つ以上の着色剤を更に含んでもよい。好適な着色剤には、有機又は無機の顔料及び染料が含まれるが、これらに限定されない。染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、キサンテン染料、アジン染料、それらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。有機顔料は、例えば、顔料イエロー番号12、13、14、17、74、83、114、126、127、174、188、顔料レッド番号2、22、23、48:1、48:2、52、52:1、53、57:1、112、122、166、170、184、202、266、269、顔料オレンジ番号5、16、34、36、顔料ブルー番号15、15:3、15:4、顔料バイオレット番号3、23、27、及び/又は顔料グリーン番号7などの1つの顔料又は顔料の組み合わせであり得る。無機顔料は、次の非限定的な顔料のうちの1つであり得る:酸化鉄、二酸化チタン、酸化クロム、コンジョウ、黒色酸化鉄、Pigment Black No.7並びに/又はPigment White No.6及び7。所望の色を達成する組み合わせと同様に、他の有機及び無機の顔料及び染料も、採用され得る。着色剤は、典型的には、着色剤分散液として提供される。存在する場合、着色剤分散液は、典型的には、部分Aの組成物の総重量に基づいて、約35重量%~約50重量%の量で本発明の部分A組成物中に含まれる。例えば、着色剤分散液は、約35重量%~約45重量%、又は約35重量%~約40重量%、又は約40重量%~約50重量%、又は約40重量%~約45重量%、又は約45重量%~約50重量%の量で存在し得る。
【0053】
部分Bの組成物は、1つ以上の酸触媒を含む。酸触媒は、アミノプラスト架橋剤と反応する。好適な酸触媒としては、パラトルエンスルホン酸(p-TSA)、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)、ジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA)、アシッドホスフェート(acid phosphates)、カルボン酸、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
部分A及び部分Bは別々に保管され、使用直前に混合される。部分Aの組成物及び部分Bの酸触媒は、約90:10~95:5の部分A:部分Bの比で混合される。
【0055】
好ましい実施形態では、本発明のインク及びコーティングは、プラスチック、好ましくはPETボトル上で使用されるラベル基材上に適用される。ある特定の実施形態では、ラベル基材は、収縮ラップフィルムである。好ましい実施形態では、収縮ラップフィルムは、浮遊しうるポリオレフィンフィルムである。浮遊しうるフィルムは、リサイクル中にPETフレークから容易に分離される。
【0056】
本発明のインク及びコーティングは、リサイクルプロセス中にラベル基材から除去されない。それらはフィルム上に残り、浮遊しうるラベル基材とともに洗浄溶液から分離される。したがって、それらは、高温苛性洗浄液中に溶解せず、洗浄溶液又はPETフレークのいずれも汚染しない。したがって、本発明のインク及びコーティングの使用は、きれいなリサイクルされたPETフレークの回収を可能にする。
【0057】
ある特定の実施形態では、本発明のインク及びコーティングは、ラベル基材からの他のインクの除去を防止するためのバッキング組成物として使用される。これらの実施形態では、任意の着色されたインクは、最初に基材上に印刷される。次に、着色されたインクは、好ましくは着色されたインクの100%の被覆率で、本発明のインク又はコーティングで刷り重ねられる。したがって、本発明のインク又はコーティングで刷り重ねられた、着色されたインクは、リサイクル中の高温苛性洗浄液から保護され、ラベル基材から除去されない。したがって、着色されたインクはまた、リサイクル中に浮遊しうる基材とともに洗浄液から分離される。
【0058】
バッキング組成物として使用される(トップコート/刷り重ねワニスとして他のインクの上に印刷される)場合、本発明のインク及びコーティングは、白色又は透明であり得る。白色バッキング組成物は、部分Aの組成物中に二酸化チタン(TiO)などの白色顔料を含有する。白色バッキング組成物は、典型的には、部分Aの組成物の総重量に基づいて、約10重量%~40重量%の量でTiOを含有する。バッキング組成物が白色顔料を含有しない場合、それらは、透明なコーティングである。
【0059】
インクが模擬のリサイクルプロセス中にラベルから除去されなかったこと、及び/又は高温苛性洗浄液中に溶解されなかったことを確認するために、印刷されたラベルを有する粉砕されたPETフレーク(PETラベル)の色は、ラベルなしで模擬のリサイクルプロセスに供されたPETフレーク(PETクリーン)の色と比較した、すなわち、PETラベルが、PETクリーンに対するスペクトルが合致するかどうか比較した。1976年にCommission Internationale de l’Eclairage(CIE)によってCIELAB色空間で定義されるCIELAB色値、Lは、分光光度計を使用して測定し(実施例を参照されたい)、ここで
=明るさの値;
=赤/緑の値、正の値は、赤の量を示し、負の値は、緑の量を示す;
=黄色/青の値、正の値は、黄色の量を示し、負の値は、青の量を示す。
【0060】
ΔL、Δa、及びΔbとして表される、PETフレークの色値の差を計算した。
ΔL=L ラベル-L クリーン
Δa=a ラベル-a クリーン
Δb=b ラベル-b クリーン
【0061】
PETラベルフレークと対照PETクリーンフレークの色変化の目標値は、Association of Plastics Recyclers(APR)によって確立されている。ある特定の実施形態では、PETラベルは、以下の場合、PETクリーンとスペクトルが合致している(スペクトルマッチ)であると考えられる。
ΔL=0±10.0、又は0±7.5
Δa=0±2.5、又は0±2.0
Δb=0±2.5、又は0±2.0
【0062】
好ましい実施形態では、APRによって確立されているように、PETラベルは、以下の場合に、PETクリーンに対してスペクトルが合致している(スペクトルマッチ)と考えられる。
ΔL=0±5.0
Δa=0±1.5
Δb=0±1.5
【0063】
最も好ましくは、ΔL、Δa、及びΔbは、ゼロである。
【0064】
本発明の2部(2成分形)からなるインク及びコーティング組成物は、フレキソ印刷及びグラビア印刷に好適である。しかしながら、他のタイプの印刷も使用することができることを理解されたい。
【実施例
【0065】
本発明は、本発明を更に例示する以下の非限定的な実施例によって更に説明され、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、またそのように解釈されるべきではない。
【0066】
例1.二成分バッキング白色コーティング
本発明の組成物を、表1に示される配合に従って、二成分白色コーティング組成物を裏付ける2成分として調製した。
【0067】
【表1】
【0068】
部分A及び部分Bを、印刷の直前に95:5の比でブレンドした。
【0069】
組成物を、Ultra Turrax T50ベーシックミキサーを使用して、3000~4000rpmで15~20分間混合した。
【0070】
例1は、フレキソインクとして使用するために配合されているが、バッキングホワイトは、例えば、グラビア印刷などの他の印刷方法に適した粘度及び乾燥特性を有するように再配合することができることがよく理解される。
【0071】
例2.模擬のリサイクルプロセスからのPETフレークを評価する
印刷されたラベル及びPETフレークを、以下に記載するとおり、模擬のリサイクルプロセスに供した。印刷されたラベルからのインク除去を減少又は排除するための本発明の組成物の有効性は、以下に記載するように、色値を測定することによって評価した。
【0072】
方法
<印刷>
個々の黄色、マゼンタ、シアン、及び黒色の印刷ラベルを、黄色、マゼンタ、シアン、及び黒色のSolvawashインク(Sun Chemical Corp.)をTaghleefポリオレフィンの浮遊しうる収縮フィルム上に印刷することによって調製した。Solvawash GRインク(国際公開第2021/081288号の実施例1~7の配合を参照されたい)は、グラビア印刷に好適であり、Taghleef SHAPE 360収縮フィルム上に適用した。Solvawash FLインク(国際公開第2021/081288号の実施例15及び16を参照されたい)は、フレキソ印刷に好適であり、Taghleef SHAPE 360収縮フィルムに適用した。360lpi/6.0BCMアニロックスシリンダーを有するHarperのブレード・ハンド・プルーファーを使用して、インクを適用した。インクを、実験室ヒートガンからの熱風の流れによって5秒間乾燥させた。
【0073】
インクを乾燥させた後、本発明のサンプルラベルを、上述したようにハンドプルーファーを使用して、実施例1のバッキング白色コーティング組成物で刷り重ねた。コーティングを乾燥させ、本発明のサンプルラベルを、PETフレークを用いて模擬のリサイクルに供した。
【0074】
<リサイクルの模擬実験>
ラベル及びPETフレークを、以下に記述するように、リサイクルプロセスの模擬実験に供した。
(1)3gのラベルを0.25インチ×0.25インチの片に切断し、100gのきれいなPETフレークとブレンドした。
(2)3gの水酸化ナトリウム(NaOH)及び0.6gのTriton X-100界面活性剤を含有する200mlの苛性溶液をビーカーに添加し、ホットプレート上で85℃の温度に加熱した。
(3)苛性溶液が85℃に達したとき、ラベルとPETフレークとの混合物をその高温苛性溶液に添加し、ベンチトップミキサーを使用して1000rpmで15分間攪拌した。
(4)15分後、ビーカーを熱源から外し、溶液を沈殿/浮遊ステップに供した。沈殿/浮遊ステップ中に、ラベルフレークが上部に浮き、それを除去した。次いで、PETフレークを含む残りの高温苛性溶液を、フィルター(ふるい又はオーガンジー布)を通してこした。溶液をガラス瓶に回収した。PETフレークをフィルター中に回収した。
(5)PETフレークを、すすぎ液が透明になるか、又は変色が最小限になるまですすぎ、フレークを乾燥させた。例1のバッキング白色で刷り重ねられたラベルとともに、模擬のリサイクルに供されたPETフレークを、PETラベルとして識別する。
(6)対照のPETフレークは、模擬のリサイクルプロセスに供されたきれいなPETフレークであったが、ラベルピースがなく(すなわち、PETフレークのみ)、PETクリーンとして識別される。
【0075】
PETフレークの色を、以下に記載するように評価した。
【0076】
<色変化の評価>
本発明のPETラベルフレーク、対照PETクリーンフレークの色値を以下のように測定した。
(1)PETフレークをLenetaカード(非蛍光白紙)の裏面上に置き、分光光度計の下で平らに押し付けた。
(2)PETフレークの色は、M0に設定されたX-Rite eXact Advanced XP分光光度計、D65光源を10°の角度で使用して測定した。本発明のPETフレーク及び対照PETフレークの各々のL値を測定し、ΔL、Δa、及びΔbを、対照PETフレーク(PETクリーン)と比較して、上述のように本発明のPETラベル)について計算した。
【0077】
本発明のPETフレークのデルタ値は、PETラベルフレークと対照PETクリーンフレークとの測色データの差であり、以下の式を使用して計算した。
PETラベルΔL=PETラベル-PETクリーン
PETラベルΔa=PETラベル-PETクリーン
PETラベルΔb=PETラベル-PETクリーン
【0078】
PETフレークをSolvawash GRインクで印刷されたラベルと組み合わせた試料から得られたPETフレークのΔL、Δa、及びΔbを表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
PETフレークを、Solvawash FLインクで印刷されたラベルと組み合わせた試料から得られたPETフレークのΔL、Δa、及びΔbを表3に示す。
【0081】
【表3】
【0082】
表2及び3のデータは、PETクリーンフレークと比較した、PETラベルフレークの有利な小さな色変化を示している。PETラベルフレークは、任意の印刷されたラベルなしでリサイクルされたPETクリーンフレークに対して近いスペクトルマッチをしており、インクが本発明の組成物で刷り重ねられた場合、印刷されたラベルからのインクが除去されず、かつ/又は高温苛性洗浄液中に溶解されなかったことを示す。驚くべきことに、PETラベルフレークのΔL、Δa、及びΔb値は、APRによって確立された色変化についての前述した目標値よりもかなり低かった。
【0083】
本発明は、その好ましい実施形態を含めて詳細に記載されている。しかしながら、当業者は、本開示を考慮すると、本発明の範囲及び趣旨に含まれる本発明に対する変更及び/又は改善を行うことができることが理解されるであろう。
【図
【国際調査報告】