(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】創傷を処置するためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20231130BHJP
A61M 27/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A61M1/00 135
A61M27/00
A61M1/00 150
A61M1/00 140
A61M1/00 137
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531051
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 NZ2021050205
(87)【国際公開番号】W WO2022114965
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517218653
【氏名又は名称】アロア・バイオサージェリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AROA BIOSURGERY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ウォード,ブライアン・ロデリック
(72)【発明者】
【氏名】メイソン,アイザック・トリストラム・ターン
(72)【発明者】
【氏名】アセフィ,ドリン
(72)【発明者】
【氏名】ローズ,ヘイミッシュ・ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】ゴーマン,ショーン・ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】チトック,ヘンリー・デイビッド
【テーマコード(参考)】
4C077
4C267
【Fターム(参考)】
4C077AA15
4C077BB10
4C077CC02
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4C077DD12
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4C077JJ05
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4C267AA03
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4C267JJ12
4C267JJ14
(57)【要約】
創傷を処置するためのシステムであって、創傷処置デバイス、デバイスの上流側の流体入力部、デバイスの下流の流体出力部と、流体出力部の上流の空気入口弁と、空気入口弁を開放位置と閉鎖位置との間で駆動するアクチュエータと、流体入力部の下流のポンプと、ポンプを駆動して、デバイスに陰圧を提供するためのモータと、空気入口弁及びポンプを動作させるように構成されたコントローラと、を有する、システム。コントローラは、i)空気入口弁を開放し、ポンプを動作させて、創傷処置デバイスにおいて第1の真空圧力を維持し、創傷処置デバイス内に空気を導入し、ii)空気入口弁を閉鎖し、ポンプを動作させて、創傷処置デバイスにおいて第2の真空圧力を維持し、デバイスから空気及び流体を除去するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷を処置するためのシステムであって、
前記創傷に位置する創傷処置デバイスへの接続のための流体入力部及び流体出力部であって、前記流体入力部が、前記創傷処置デバイスの上流側に流体接続されるように適合されており、前記流体出力部が、前記創傷処置デバイスの下流側に流体接続されるように適合されている、流体入力部及び流体出力部と、
前記流体出力部の上流の空気入口弁と、
前記空気入口弁を開放位置と閉鎖位置との間で駆動するアクチュエータと、
前記流体入力部の下流のポンプと、
前記ポンプを駆動して、前記創傷処置デバイスに陰圧を提供するためのモータと、
前記アクチュエータ及び前記モータと通信して、前記空気入口弁及び前記ポンプを動作させるコントローラと、を備え、前記コントローラが、
i)前記空気入口弁を開放し、前記ポンプを動作させて、前記創傷処置デバイスにおいて第1の真空圧力を維持し、前記創傷処置デバイス内に空気を導入し、
ii)前記空気入口弁を閉鎖し、前記ポンプを動作させて、前記創傷処置デバイスにおいて第2の真空圧力を維持し、前記創傷処置デバイスから空気及び流体を除去するように構成されており、
前記第1の真空圧力が、前記第2の真空圧力以下である、システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記空気弁が開閉されるときに、前記ポンプを動作させて、前記創傷処置デバイスにおいて陰圧環境を連続的に維持するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1及び第2の真空圧力が、効果的な陰圧創傷治療を提供する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラが、ステップi)及びii)を繰り返して、前記空気入口弁を前記開放位置と前記閉鎖位置との間で循環させるように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラが、ステップi)及びii)を繰り返して、前記空気入口弁を前記開放位置と前記閉鎖位置との間で連続的に循環させるように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記空気入口弁が開放されているときに前記ポンプを動作させて、実質的に一定の第1の真空圧力を維持するように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、前記空気入口弁を通る前記システム内への空気の流量が前記ポンプの流量に等しくなるように、前記空気入口弁を開放して前記ポンプを動作させるように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記空気入口弁が閉鎖されているときに前記ポンプを動作させて、実質的に一定の第2の真空圧力を維持するように構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、
ステップ(i)において、前記システムが前記処置デバイスの両端間でゼロ又は一定の圧力差を有する平衡状態にあるように、前記空気入口弁を開放して前記ポンプを動作させるように構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、
ステップ(ii)において、システムが前記処置デバイスの両端間でゼロ又は一定の圧力差を有する平衡状態にあるように、前記空気入口弁を閉鎖して前記ポンプを動作させるように構成されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラが、前記空気入口弁を開放と閉鎖との間で動作させて、前記創傷処置デバイスからの流体流に取り込まれた空気の気泡又はスラグを含む気泡流又はスラグ流を生成する流量の空気を前記システム内に導入するように構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントローラが、前記空気入口弁を開放と閉鎖との間で動作させて、前記創傷における流体の密度を低減して、重力に逆らって前記創傷から前記流体を持ち上げるように構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記コントローラが、前記空気入口弁を周期的に開閉するように構成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
ステップi)において、前記コントローラが、所定の期間にわたって前記空気入口弁を開放するように構成されている、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
ステップii)において、前記コントローラが、所定の期間にわたって前記空気入口弁を閉鎖するように構成されている、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
ステップi)において、前記コントローラが、少なくとも10秒間、前記空気入口弁を開放するように構成されている、請求項1~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記空気入口弁が、サイクルピッチの少なくとも10%、又は前記サイクルピッチの少なくとも20%、又は前記サイクルピッチの少なくとも30%、又は前記サイクルピッチの少なくとも40%、又は前記サイクルピッチの少なくとも50%にわたって開放されている、請求項1~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
ステップi)において、前記空気入口弁は、前記システムを通して送達される空気の体積が、前記システムの総体積の少なくとも実質的な部分であるように、十分な期間にわたって開放される、請求項1~17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
ステップ(i)において、前記空気入口弁は、前記システムに送達される前記空気の体積が前記システムの総体積の少なくとも50%、又は少なくとも100%であるように、十分な期間にわたって開放される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記第1の真空圧力が、前記第2の真空圧力の約30%~100%である、請求項1~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記第1の真空圧力が、約50~100mmHgである、請求項1~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記第2の真空圧力が、約100~150mmHgである、請求項1~21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記第1の真空圧力が、前記第2の圧力よりも約10~50mmHg低い、請求項1~22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
ステップ(i)において、前記コントローラが、前記ポンプを動作させて真空圧力閾値を達成するように構成されている、請求項1~23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
ステップ(ii)において、前記コントローラが、前記ポンプを動作させて、真空圧力閾値を達成するように構成されている、請求項1~24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記システムが、
前記創傷処置デバイスの下流に位置し、かつ前記コントローラと通信する下流圧力センサを備え、
前記コントローラが、ステップi)において、前記下流圧力センサによって感知された圧力に基づいて、前記ポンプを動作させて、前記真空圧力閾値を達成するように構成されている、請求項24又は25に記載のシステム。
【請求項27】
前記システムが、
前記創傷処置デバイスの上流に位置し、かつ前記コントローラと通信する上流圧力センサを備え、
前記コントローラが、ステップii)において、前記上流圧力センサによって感知された圧力に基づいて、前記ポンプを動作させて、前記真空圧力閾値を達成するように構成されている、請求項24~26のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
前記システムが、
前記創傷処置デバイスの上流に位置し、かつ前記コントローラと通信する上流圧力センサと、
前記創傷処置デバイスの下流に位置し、かつ前記コントローラと通信する下流圧力センサを備え、
前記コントローラが、ステップi)において、前記下流圧力センサによって感知された圧力に基づいて、前記ポンプを動作させて、第1の真空圧力閾値を達成し、
ステップii)において、前記上流圧力センサによって感知された圧力に基づいて、前記ポンプを動作させて、第2の真空圧力閾値を達成するように構成されている、請求項24~27のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
前記第1の真空圧力閾値が、前記第2の真空圧力閾値以下である、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記システムが、入口絞りを備え、前記上流圧力センサは、前記空気入口弁が開放されているときに前記上流圧力センサが周囲圧力を測定するように、前記入口絞りの上流に位置する、請求項28又は29に記載のシステム。
【請求項31】
前記システムが、周囲圧力と前記創傷処置デバイスにおける真空圧力との間の所定の圧力降下を提示するための入口絞りを備える、請求項1~30のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記システムが、前記システムに導入される空気を濾過するフィルタを備え、前記フィルタが、前記入口絞りであるか、又は前記入口絞りを含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記圧力降下が、およそ20~130mmHgである、請求項31又は32に記載のシステム。
【請求項34】
前記空気入口弁が開放されているとき、周囲圧力と前記創傷処置デバイスの下流の圧力との間の実質的に全ての圧力差が、前記入口絞りにある、請求項31~33のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項35】
前記システムが、前記創傷から除去された流体を収集するためのリザーバを備え、前記リザーバは、前記創傷から除去された流体が前記ポンプを通過して前記リザーバに至るように、前記ポンプの下流に位置する、請求項1~34のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項36】
前記リザーバが、可撓性バッグを含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記リザーバが、前記リザーバを周囲雰囲気に通気するための通気孔を含む、請求項35又は36に記載のシステム。
【請求項38】
前記システムが、前記創傷処置デバイスを更に備え、前記創傷処置デバイスが、
外傷腔内に受容され、かつ前記創傷の処置空間を実質的に充填するポーティング構成要素と、
前記創傷を被覆する被覆層と、
前記流体出口と流体連通した流体供給導管であって、前記流体供給導管が、1つ以上の供給導管出口を有する、流体供給導管と、
前記流体入口と流体連通した流体除去導管であって、前記流体除去導管が、1つ以上の除去導管入口を有する、流体除去導管と、を備え、
前記供給導管及び除去導管は、前記除去導管入口及び前記供給導管出口が前記ポーティング構成要素と流体連通しており、かつ前記出口から前記入口への流体流が前記ポーティング構成要素及び前記処置空間の実質的な部分を通るように前記出口が前記入口から離隔されて、前記処置空間に配置されている、請求項1~37のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項39】
前記システムが、処置流体の供給を接続するために前記流体出口の上流に処置流体入口を備える、請求項1~38のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項40】
前記システムは、ステップi)において、前記創傷処置デバイスへの処置流体の導入が、前記第1の真空圧力による前記創傷処置デバイスへの空気の導入によって防止又は低減され、ステップii)において、処置流体が、前記第2の真空圧力によって前記創傷処置デバイスに引き込まれるように、構成されている、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記システムが、
前記処置流体入口と前記流体出口との間の処置流体弁と、
前記処置流体入口弁を開放位置と閉鎖位置との間で駆動するアクチュエータと、を備え、前記コントローラが、前記流体入口弁アクチュエータと通信し、前記コントローラが、流体供給状態において、
iii)前記流体入口弁を開放し、前記ポンプを動作させて、前記創傷処置デバイスにおいて真空圧力を維持し、前記創傷処置デバイス内に処置流体を導入し、
iv)前記流体入口弁を閉鎖し、前記ポンプを動作させて、前記創傷処置デバイスにおいて真空圧力を維持し、前記創傷処置デバイスから流体を除去するように構成されている、請求項39に記載のシステム。
【請求項42】
前記コントローラが、前記流体入口弁が開閉されているときに、前記ポンプを動作させて、前記創傷処置デバイスにおいて陰圧環境を連続的に維持するように構成されている、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記コントローラが、ステップ(iii)において、前記ポンプを動作させて、前記創傷処置デバイスにおいて第3の真空圧力を生成し、かつステップ(iv)において、前記ポンプを動作させて、前記創傷処置デバイスにおいて第4の真空圧力を生成するように構成されており、前記第3の真空圧力が、前記第4の真空圧力以下である、請求項41又は42に記載のシステム。
【請求項44】
前記第3の真空圧力が、前記第1の真空圧力と等しいか又は同様であり、前記第4の真空圧力が、前記第2の真空圧力と等しいか又は同様である、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記第3及び第4の真空圧力が、効果的な陰圧創傷治療を提供する、請求項43に記載のシステム。
【請求項46】
前記流体入口弁を閉鎖し、かつ前記ポンプを動作させて、前記創傷において前記真空圧力を生成した後、前記コントローラが、
(v)前記創傷から前記処置流体を洗い流すことであって、
(v)(a)前記空気入口弁を開放し、かつ前記ポンプを動作させて、前記創傷処置デバイスにおいて真空圧力(例えば、前記第1の真空圧力)を維持し、前記創傷処置デバイスに空気を導入することと、
(v)(b)前記空気入口弁を閉鎖し、かつ前記ポンプを動作させて、前記創傷処置デバイスにおいて真空圧力(例えば、前記第2の真空圧力)を維持し、前記創傷処置デバイスから流体を除去することと、によって、洗い流すように構成されている、請求項41~45のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項47】
ステップ(v)において、前記コントローラが、ステップ(v)(a)及び(v)(b)を所定の回数(例えば、3回)繰り返して、前記創傷から処置流体を除去するように構成されている、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記流体処置状態において、前記コントローラが、ステップ(iii)~(v)を所定の回数繰り返すように構成されている、請求項46又は47に記載のシステム。
【請求項49】
前記コントローラが、ステップ(iv)において、前記流体入口弁を閉鎖し、かつ所定の期間待機し、かつ前記ポンプを動作させて、前記創傷処置デバイスにおいて前記真空圧力を生成し、かつ前記創傷処置デバイスから流体を除去するように構成されている、請求項41~48のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項50】
前記コントローラが、前記流体供給状態を周期的に作動させるように構成されている、請求項41~49のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項51】
前記流体供給状態を作動させる間の期間が、前記空気入口弁のサイクル時間よりもはるかに長い、請求項50に記載のシステム。
【請求項52】
前記システムが、前記コントローラと通信する上流圧力センサ及び/又は下流圧力センサを備え、ステップ(iii)において、前記コントローラが、前記ポンプを動作させて、前記上流及び/又は下流圧力センサによって感知された圧力に基づいて、真空圧力閾値を達成するように構成されている、請求項41~51のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項53】
前記システムが、前記コントローラと通信する上流圧力センサ及び/又は下流圧力センサを備え、ステップ(iv)において、前記コントローラが、前記ポンプを動作させて、前記上流及び/又は下流圧力センサによって感知された圧力に基づいて、真空圧力閾値を達成するように構成されている、請求項41~52のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項54】
創傷処置デバイスを介して創傷に陰圧を適用するためのポンプであって、
駆動機構と、
少なくとも1つの可撓性チャンバであって、前記駆動機構が、前記チャンバを駆動して前記チャンバを圧縮及び膨張させるように構成されている、少なくとも1つの可撓性チャンバと、
前記チャンバと流体連通した一方弁の対であって、前記チャンバ内への流体流のための入口弁と、前記チャンバから外への流体流のための出口弁と、を含む、一方弁の対と、
前記少なくとも1つの入口弁と流体連通するポンプ入口と、
前記少なくとも1つの出口弁と流体連通するポンプ出口と、を備え、
前記チャンバの圧縮が、前記チャンバから前記出口弁及び前記ポンプ出口を通る流体流を引き起こし、その後の前記チャンバの膨張が、前記ポンプ入口から前記入口弁を通して前記チャンバ内に流体を引き込み、
前記一方入口弁及び前記一方出口弁が各々、前記入口弁、チャンバ、及び出口弁を介して前記ポンプ入口から前記ポンプ出口までの前記ポンプを通る流体流路内でのみ単一のオリフィスを提示して、開放時に前記弁を通る流体及び組織残屑の通過を可能にする、ポンプ。
【請求項55】
前記単一のオリフィスは、前記弁が開放されているときに、前記ポンプ入口と前記ポンプ出口との間の前記流体流路の最小面積と同様の又は前記最小面積よりも大きい面積を有する、請求項54に記載のポンプ。
【請求項56】
前記単一のオリフィスが、前記ポンプ入口の面積と同様の又は前記面積よりも大きい面積を有する、請求項54又は55に記載のポンプ。
【請求項57】
各入口弁及び出口弁が、一体の可撓性弁部材を含む、請求項54~56のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項58】
各一方入口弁及び一方出口弁が、ダックビル弁を含む、請求項54~57のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項59】
前記一方入口弁及び一方出口弁のうちの任意の1つ以上が、フラッパ弁、排水弁、逆止弁、クロススリット弁、及びドーム弁を含む、請求項54~58のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項60】
前記駆動機構が、モータ及び斜板を含み、前記斜板の回転が、前記モータによって駆動され、前記少なくとも1つのチャンバが、前記斜板の回転により圧縮及び膨張するように、前記斜板に接続されている、請求項54~59のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項61】
各チャンバが、関連付けられたコネクタを含み、前記コネクタは、前記コネクタが軸方向に移動して前記斜板の移動によりそれぞれの前記リザーバの圧縮及び膨張をもたらすように、前記チャンバ及び前記斜板に取り付けられている、請求項60に記載のポンプ。
【請求項62】
複数の可撓性チャンバと、入口弁及び出口弁の複数対とを備え、入口弁及び出口弁の各対が、それぞれのチャンバに対応する、請求項54~61のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項63】
外傷に陰圧を適用するための創傷処置デバイスであって、
外傷腔内に受容され、かつ前記創傷の処置空間を実質的に充填するポーティング構成要素、
前記創傷を被覆する被覆層、
流体供給導管であって、前記流体供給導管が、1つ以上の供給導管出口を有する、流体供給導管、
流体除去導管であって、前記流体除去導管が、1つ以上の除去導管入口を有する、流体除去導管を備え、
前記供給導管及び除去導管は、前記除去導管入口及び前記供給導管出口が前記ポーティング構成要素と流体連通しており、かつ前記出口から前記入口への流体流が前記ポーティング構成要素及び処置空間の実質的な部分を通るように前記出口が前記入口から離隔されて、前記処置空間に配置されている、創傷処置デバイス。
【請求項64】
前記供給導管及び除去導管は、前記出口及び前記入口を前記ポーティング構成要素の周囲部分に又は前記周囲部分に隣接して位置付けるように、前記処置空間内に配置されている、請求項63に記載の創傷処置デバイス。
【請求項65】
前記出口及び前記入口が、前記ポーティング構成要素の対向する周囲部分にあるか、又は前記対向する周囲部分に隣接する、請求項64に記載の創傷処置デバイス。
【請求項66】
前記供給導管及び除去導管は、前記出口から前記入口までの直接的な流路を回避するように前記処置空間内に配置されている、請求項63~65のいずれか一項に記載の創傷処置デバイス。
【請求項67】
前記供給導管が、前記供給導管の少なくとも末端部分に沿って離隔された穿孔又は開口を有し、前記穿孔又は開口が、前記供給導管出口を提供する、請求項63に記載のデバイス。
【請求項68】
前記供給導管及び除去導管は、前記除去導管入口と前記供給導管出口との間の最小距離が、隣接する供給導管出口間の最大距離の何倍も大きくなるように、前記処置空間内に配置されている、請求項67に記載の創傷処置デバイス。
【請求項69】
前記入口と前記出口との間の前記最小距離が、隣接する出口間の前記最大距離の少なくとも5倍、又は隣接する出口間の前記最大距離の少なくとも6倍、7倍、8倍、9倍、若しくは10倍である、請求項68に記載の創傷処置デバイス。
【請求項70】
前記除去導管が、前記除去導管の少なくとも末端部分に沿って離隔された穿孔又は開口を有し、前記穿孔又は開口が、前記除去導管入口を提供する、請求項63~69のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項71】
前記供給導管及び除去導管は、前記除去導管入口と前記供給導管出口との間の最小距離が、隣接する除去導管入口間の最大距離の何倍も大きくなるように、前記処置空間内に配置されている、請求項70に記載の創傷処置デバイス。
【請求項72】
前記入口と前記出口との間の前記最小距離が、隣接する入口間の前記最大距離の少なくとも5倍、又は隣接する入口間の前記最大距離の少なくとも6倍、7倍、8倍、9倍、若しくは10倍である、請求項71に記載の創傷処置デバイス。
【請求項73】
前記供給導管及び除去導管は、前記出口と前記入口との間に一定の距離を提供するように配置されている、請求項63~72のいずれか一項に記載の創傷処置デバイス。
【請求項74】
前記供給導管及び除去導管が、前記処置空間内に別個に位置付けられている、請求項63~73のいずれか一項に記載の創傷処置デバイス。
【請求項75】
前記処置デバイスが、2つの別個のリムに分割された二重管腔導管の末端部分を有する二重管腔導管と、前記処置空間内に前記除去導管を提供する除去管腔リムと、前記処置空間内に前記供給導管を提供する供給管腔リムと、を備える、請求項63~74のいずれか一項に記載の創傷処置デバイス。
【請求項76】
前記出口及び/又は入口が、前記それぞれの導管の壁における切り込み又は切り欠きによって形成されており、前記壁が、前記二重管腔導管の内壁の一部分を含む、請求項75に記載の創傷処置デバイス。
【請求項77】
前記出口及び/又は入口が、前記それぞれの導管に沿った螺旋状の切り込みによって形成されている、請求項75に記載の創傷処置デバイス。
【請求項78】
前記螺旋状の切り込みが、前記導管の外壁部分を貫通することなく、前記導管の内壁部分を貫通する、請求項77に記載の創傷処置デバイス。
【請求項79】
前記被覆層が、前記創傷を取り囲む皮膚との流体密封封止を提供する、請求項63~78のいずれか一項に記載の創傷処置デバイス。
【請求項80】
前記デバイスが、創傷治癒を促進するための、前記創傷と前記ポーティング構成要素との間に創傷接触構成要素、例えば、細胞外マトリックス(ECM)グラフト材料を備える、請求項63~79のいずれか一項に記載の創傷処置デバイス。
【請求項81】
創傷に陰圧処置を提供するための創傷処置システムのための可搬型真空ユニットであって、
空気入口弁と、
前記空気入口弁を開放位置と閉鎖位置との間で駆動するアクチュエータと、
ポンプ入口及びポンプ出口を含むポンプと、
前記ポンプを駆動するためのモータと、
前記アクチュエータ及び前記モータと通信して、前記空気入口弁及び前記ポンプを動作させて、創傷に陰圧処置を適用するコントローラと、
インターフェースマニホールドと、を備え、前記インターフェースマニホールドが、
第1の入口及び第1の出口を有する第1の流体流路であって、前記第1の入口が、前記空気入口弁に接続されており、前記第1の出口が、前記処置デバイスの上流側に接続するための真空ユニット流体出口を提供する、第1の流体流路、及び
第2の流体入口及び第2の流体出口を有する第2の流体流路であって、前記第2の出口が、前記ポンプ入口に接続されており、前記第2の入口が、前記処置デバイスの下流側に接続するための真空ユニット流体入口を提供する、第2の流体流路、
前記空気入口弁、アクチュエータ、ポンプ、モータ、コントローラ、及びインターフェースマニホールドを収容するための筐体を含み、
前記インターフェースマニホールドが、前記筐体内の別個のアセンブリであり、前記空気入口弁と前記創傷処置デバイスの前記上流側との間のインターフェースと、前記ポンプ入口と前記創傷処置デバイスの前記下流側との間のインターフェースと、を提供する、可搬型真空ユニット。
【請求項82】
前記インターフェースマニホールドが、前記第2の流路に、前記ポンプ入口から前記処置デバイスの前記下流側への逆流を防止するための一方弁を含む、請求項81に記載の可搬型真空ユニット。
【請求項83】
前記真空ユニットが、処置流体リザーバに接続するためのポートを有し、前記インターフェースマニホールドの前記第1の流体流路が、前記処置流体リザーバを前記処置デバイスに流体接続するように前記ポートに接続された処置流体入口を有する、請求項81又は82に記載の可搬型真空ユニット。
【請求項84】
前記可搬型真空ユニットが、前記マニホールドと、前記ポートと、前記ポートを前記インターフェースマニホールドの前記処置流体入口に接続するチューブと、を含む接続アセンブリを備え、前記接続アセンブリが、前記処置流体リザーバと前記処置デバイスとの間に無菌接続アセンブリを提供する、請求項83に記載の可搬型真空ユニット。
【請求項85】
前記可搬型真空ユニットが、閉鎖位置で前記チューブを挟み、かつ開放位置で前記チューブを解放するように構成された流体入口ピンチ弁を備える、請求項84に記載の可搬型真空ユニット。
【請求項86】
前記インターフェースマニホールドが、ハウジングを有し、前記第1の出口及び前記第2の入口が、前記真空ユニットから前記処置デバイスに空気を供給する供給管腔と、前記処置デバイスから前記真空ユニットに流体を移送する除去管腔と、を含む二重管腔導管に接続するために、前記インターフェースマニホールドハウジング上に合わせて配置されている、請求項81~85のいずれか一項に記載の可搬型真空ユニット。
【請求項87】
前記インターフェースマニホールドが、前記第1の流体経路に、前記第1の入口に入る空気を濾過するための滅菌フィルタを含み、前記インターフェースマニホールドが、前記空気入口弁と前記創傷処置デバイスの前記上流側との間に滅菌インターフェースを提供する、請求項81~86のいずれか一項に記載の可搬型真空ユニット。
【請求項88】
前記真空ユニットが、圧力センサを備え、前記インターフェースマニホールドが、前記圧力センサと前記創傷処置デバイスの前記上流側との間に滅菌インターフェースを提供する、請求項85に記載の可搬型真空ユニット。
【請求項89】
前記マニホールドが、前記真空ユニット筐体内で前記ポンプに解放可能に接続されている、請求項81~88のいずれか一項に記載の可搬型真空ユニット。
【請求項90】
前記インターフェースマニホールドが、前記ポンプ入口に直接接続している、請求項81~89のいずれか一項に記載の可搬型真空ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷を処置するためのシステムに関し、具体的には、創傷から流体を除去するためのシステム、創傷に流体を供給し、かつ創傷から流体を除去するためのシステム、及びそのようなシステムのための関連する構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷滲出液を管理し、かつ様々な創傷の治癒を加速するために陰圧を適用する技法が、しばらくの間利用されてきた。外傷に陰圧を適用して治療上の利益をもたらすことは、一般に、陰圧創傷治療又はNPWT(negative pressure wound therapy)と称される。この治療は、糖尿病性足潰瘍、裂開した手術創、並びに様々な急性創傷及び慢性創傷などの開放性外傷における肉芽組織の形成を加速して、二次治癒及び三次治癒をサポートすることができる。陰圧源から創傷に陰圧を送るために、多様な特殊な局所ドレッシングシステムがこれらの創傷に適用される(
図1)。また、内部閉鎖手術創は、手術の後に続いて創傷流体を除去するために、内部に配置されたドレーン又はデバイスを介して、手術部位に吸引(真空)を適用することによって処置されてきた。
【0003】
適用された陰圧は、創傷処置空間の自由体積を低減して、創傷滲出液を陰圧源に向けて引き込み、滲出液は、典型的には創傷と陰圧源との間にあるリザーバ又は収集ドレッシング内に排出される。
【0004】
陰圧は、真空ユニット又は真空デバイスによって創傷処置空間に提供される。創傷処置のための真空デバイスは、いくつかの設計課題に直面している。真空デバイスは、使い捨て又は再使用可能のいずれかであり、理想的には容易に持ち運び可能である必要があり、したがって、構成要素は、軽量で、エネルギー効率がよく、好ましくは安価であるべきである。
【0005】
既存のシステムは、凝固した血液、フィブリン、脂肪組織、失われた組織残屑、及び創傷滲出液によって閉塞しやすい可能性がある。陰圧処置システムで使用するための機械式真空ポンプも、特に真空システムのサイズが小さい場合に、閉塞しやすい可能性がある。加えて、真空システムは、典型的には、創傷から遠隔に位置し、そこでは、機械式真空ポンプアセンブリ内又はシステム内の他の場所で生じる閉塞の潜在性、及び流体収集リザーバ内の変化する体積に起因して、標的部位で直接圧力の正確な測定及び調節を達成することが困難であり得る。
【0006】
いくつかの先行技術のシステムは、例えば米国特許出願公開第2007/0179460号に記載されているように、創傷における陰圧を制御するための圧力逃がし弁を備える。圧力逃がし弁は、空気をシステムに導入して、適用された真空圧力が上限閾値圧力を超えて増加するのを防止するように、又はシステムを周囲圧力に戻すように動作する。そのようなシステムは、創傷処置部位における陰圧の損失をもたらす可能性があり、創傷治癒プロセスに悪影響を及ぼし得る。
【0007】
システムが所望の陰圧に達すると、システムは、典型的には、周囲環境から封止又は閉鎖されたままであり、唯一の入力は、創傷部位において産生される滲出液である。システムは平衡状態に達することができ、その結果、システム内に保持された創傷流体は、創傷部位で追加の滲出液が産生された場合であっても、静止又は停滞する。この静止又は停滞した流体は、血液の凝固、組織残屑の沈降、及びフィブリンの形成を更に悪化させる可能性があり、このことは、閉塞のリスクの増加、及び創傷における陰圧の適用の失敗につながる可能性がある。更に、過剰な創傷滲出液の停滞は、感染、浮腫のリスクを増加させる可能性があり、また、バイオフィルム形成及びその後の治癒の停止につながり得る。
【0008】
陰圧処置を施すことに伴う更なる困難は、例えば、患者が直立しているか又は立位にあるときに、創傷部位に高さの差があることが多いことである。創傷における高さの差は、創傷の上側部分からの流体の優先的な流れをもたらす可能性があり、創傷の最下部分では流体が静止したままである。
【0009】
治療圧力処置のために創傷に陰圧を適用することに加えて、創傷部位に及び創傷部位を横切って流体を注入する能力は、創傷洗浄流体、生理食塩水、鎮痛剤、細胞懸濁液、処置溶液、及び細菌を抑制するか又は創傷を洗い流すための他の液体薬剤を投与するのに有用であり得る。
【0010】
処置流体を注入することもできる既存の真空デバイスは、標準的な非投与型と同じ設計上の制限を受ける。これらの真空デバイスは、典型的には、真空ポンプと創傷との間に位置付けられる統合された剛性廃棄物収集容器に起因して、サイズが大きく、かつ/又はシステムのサイズ及び複雑性を増し得る、デバイス内のポンプ作用構成要素に動力を供給するために大量のエネルギーを必要とする。
【0011】
処置流体は、典型的には、創傷部位の完全な飽和を確実にするために陽圧に曝される流体供給導管を介して創傷に送達され、その結果、創傷部位は、周囲圧力レベル又は陽圧レベルに留まる。次いで続いて、これらのシステムは、創傷部位に真空を適用し、適用された陰圧に応答した処置空間の自由体積の低減を介して、処置流体及び滲出液を創傷部位から引き離し、続いて、処置流体及び滲出液は、取り付けられたリザーバ又は収集容器に収集される。創傷処置部位に適用された陽圧は、創傷ドレッシングから、典型的には創傷周囲と被覆ドレッシングとの間で漏れを誘発するなどの、意図しない結果をもたらす可能性がある。真空圧力の損失はまた、発泡体ポーティング層/創傷界面又は流体供給及び滲出液導管などの、特殊な局所創傷ドレッシングの様々な要素を移動させ、このことが、創傷を通した流体流路の短絡につながり得る。この短絡により、創傷への処置流体送達がもたらされない場合がある。
【0012】
本発明の目的は、上述の欠点のうちの1つ以上に対処すること、及び/又は少なくとも公衆に有用な代替案を提供することである。
【0013】
特許明細書、他の外部文書、又は他の情報源が参照されている本明細書では、一般に、本発明の特徴を考察するための文脈を提供するためのものである。特に明記されていない限り、そのような外部文書又は情報源への参照は、そのような文書又はそのような情報源が、いかなる司法管轄においても、先行技術であるか、又は当該技術分野における一般常識の一部を形成することを認めるものとして解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0014】
第1の態様において、本発明は、創傷を処置するためのシステムを提供し、このシステムは、
創傷に位置する創傷処置デバイスへの接続のための流体入力部及び流体出力部であって、流体入力部が、創傷処置デバイスの上流側に流体接続されるように適合されており、流体出力部が、創傷処置デバイスの下流側に流体接続されるように適合されている、流体入力部及び流体出力部と、
流体出力部の上流の空気入口弁と、
空気入口弁を開放位置と閉鎖位置との間で駆動するアクチュエータと、
流体入力部の下流のポンプと、
ポンプを駆動して、創傷処置デバイスに陰圧を提供するためのモータと、
アクチュエータ及びモータと通信して、空気入口弁及びポンプを動作させるコントローラと、を備え、コントローラが、
i)空気入口弁を開放し、ポンプを動作させて、創傷処置デバイスにおいて第1の真空圧力を維持し、創傷処置デバイス内に空気を導入し、
ii)空気入口弁を閉鎖し、ポンプを動作させて、創傷処置デバイスにおいて第2の真空圧力を維持し、創傷処置デバイスから空気及び流体を除去するように構成されており、
第1の真空圧力が、第2の真空圧力以下である。
【0015】
第2の態様において、本発明は、創傷を処置するためのシステムを提供し、このシステムは、
創傷に位置する創傷処置デバイスへの接続のための流体入力部及び流体出力部であって、流体入力部が、創傷処置デバイスの上流側に流体接続されるように適合されており、流体出力部が、創傷処置デバイスの下流側に流体接続される、流体入力部及び流体出力部と、
流体出口の上流の空気入口弁、及び空気入口弁を開放位置と閉鎖位置との間で駆動するためのアクチュエータと、
処置流体の供給を接続するための、流体出口の上流の処置流体入口と、
処置流体入口と流体出口との間の処置流体弁、及び流体入口弁を開放位置と閉鎖位置との間で駆動するためのアクチュエータと、
流体入力部の下流のポンプと、
ポンプを駆動して、創傷処置デバイスに陰圧を提供するためのモータと、
空気入口弁アクチュエータ、流体弁アクチュエータ、及びモータと通信して、空気入口弁、流体弁、及びポンプを動作させるためのコントローラと、を備え、コントローラが、
i).空気入口弁を開放し、ポンプを動作させて、創傷処置デバイスにおいて第1の真空圧力を維持し、創傷処置デバイス内に空気を導入し、
ii).空気入口弁を閉鎖し、ポンプを動作させて、創傷処置デバイスにおいて第2の真空圧力を維持し、創傷処置デバイスから空気及び流体を除去し、第1の真空圧力が第2の真空圧力以下であり、
流体供給状態において、空気入口弁が閉鎖され、
iii).流体入口弁を開放し、ポンプを動作させて、創傷処置デバイスにおいて真空圧力を維持し、創傷処置デバイスに処置流体を導入し、
iv).流体入口弁を閉鎖し、ポンプを動作させて、創傷処置デバイスにおいて真空圧力を維持し、創傷処置デバイスから流体を除去するように構成されている。
【0016】
本発明の第1又は第2の態様は、本発明の第3、第4、及び第5の態様に関連して記載された任意の1つ以上の特徴を含んでもよい。
【0017】
第3の態様において、本発明は、創傷処置デバイスを介して創傷に陰圧を適用するためのポンプを提供し、このポンプは、
駆動機構と、
少なくとも1つの可撓性チャンバであって、駆動機構が、チャンバを駆動してチャンバを圧縮及び膨張させるように構成されている、少なくとも1つの可撓性チャンバと、
チャンバと流体連通する一方弁の対であって、チャンバ内への流体流のための入口弁と、チャンバから外への流体流のための出口弁と、を含む、一方弁の対と、
少なくとも1つの入口弁と流体連通するポンプ入口と、
少なくとも1つの出口弁と流体連通するポンプ出口と、を備え、
チャンバの圧縮が、チャンバから出口弁及びポンプ出口を通る流体流を引き起こし、その後のチャンバの膨張が、ポンプ入口から入口弁を通してチャンバ内に流体を引き込み、
一方入口弁及び一方出口弁が各々、入口弁、チャンバ、及び出口弁を介してポンプ入口からポンプ出口までのポンプを通る流体流路内でのみ単一のオリフィスを提示して、開放時に弁を通る流体及び組織残屑の通過を可能にする。
【0018】
第4の態様において、本発明は、外傷に陰圧を適用するための創傷処置デバイスを提供し、このデバイスは、
外傷腔内に受容され、かつ創傷の処置空間を実質的に充填するポーティング構成要素、
創傷を被覆する被覆層、
流体供給導管であって、流体供給導管が、1つ以上の供給導管出口を有する、流体供給導管、
流体除去導管であって、流体除去導管が、1つ以上の除去導管入口を有する、流体除去導管を備え、
供給及び除去導管は、除去導管入口及び供給導管出口がポーティング構成要素と流体連通しており、かつ出口から入口への流体流がポーティング構成要素及び処置空間の実質的な部分を通るように出口が入口から隔設されて、処置空間に配置されている。
【0019】
第5の態様において、本発明は、創傷に陰圧処置を提供するための創傷処置システムのための可搬型真空ユニットを提供し、真空ユニットは、
空気入口弁と、
空気入口弁を開放位置と閉鎖位置との間で駆動するアクチュエータと、
ポンプ入口及びポンプ出口を含むポンプと、
ポンプを駆動するためのモータと、
アクチュエータ及びモータと通信して、空気入口弁及びポンプを動作させて、創傷に陰圧処置を適用するコントローラと、
インターフェースマニホールドと、を備え、インターフェースマニホールドが、
第1の入口及び第1の出口を有する第1の流体流路であって、第1の入口が、空気入口弁に接続されており、第1の出口が、処置デバイスの上流側に接続するための真空ユニット流体出口を提供する、第1の流体流路、及び
第2の流体入口及び第2の流体出口を有する第2の流体流路であって、第2の出口が、ポンプ入口に接続されており、第2の入口が、処置デバイスの下流側に接続するための真空ユニット流体入口を提供する、第2の流体流路、
空気入口弁、アクチュエータ、ポンプ、モータ、コントローラ、及びインターフェースマニホールドを収容するための筐体を含み、
インターフェースマニホールドが、筐体内の別個のアセンブリであり、空気入口弁と創傷処置デバイスの上流側との間のインターフェースと、ポンプ入口と創傷処置デバイスの下流側との間のインターフェースと、を提供する。
【0020】
本発明の上記の態様の更なる特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0021】
定義
本明細書及び特許請求の範囲において、文脈が別段示さない限り、「滲出液」という用語は、患者の創傷部位から除去された任意の流体を意味することが意図されている。滲出液は、患者によって生成された滲出液、及び/又は空気又は生理食塩水若しくは薬剤を提供する流体などの処置流体を含むシステムによって創傷部位に適用された流体、若しくは注射などの別個のルートを介して創傷部位に処置流体を導入又は投与し得る外科的介入を介した流体を含み得る。
【0022】
本明細書及び特許請求の範囲において、文脈が別段示さない限り、「流体」及び「処置流体」という用語は、創傷洗浄溶液などの液体流体及び液体処置流体を意味することが意図されている。したがって、文脈が別段示唆しない限り、「流体」及び「液体」という用語は、互換的に使用され得る。
【0023】
本明細書及び特許請求の範囲において、「陰圧」及び「真空圧力」という用語は、大気圧未満のゲージ圧力及び大気圧未満の絶対圧を意味するために互換的に使用され得、大気圧未満の圧力又は吸引圧とも称され得る。例えば、100mmHgの陰圧又は真空圧力は、-100mmHgゲージ圧又は約660mmHg絶対圧である。陰圧又は真空圧力に関連して使用される場合の「高い」、「増加する」という用語又は他の同様の用語は、より高い又は増加する陰圧を意味することが意図されており、例えば、-150mmHg(610mmHg絶対)のゲージ圧力は、-100mmHg(660mmHg絶対)のゲージ圧力よりも「高い」と記述され得る。同様に、「低い」、「減少する」という用語、又は陰圧若しくは真空圧力に関して使用されるときの他の同様の用語に関して、-100mmHgのゲージ圧力は、-150mmHgのゲージ圧力よりも「低い」ものとして記述され得る。
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲において、文脈が別段示さない限り、「NPT」という用語は、「陰圧」又は「真空圧力」を施して、任意の内傷又は外傷に処置を提供するように構成されるシステム又は装置に関する陰圧処置(negative pressure treatment、NPT)を意味することが意図されている。明確にする目的で、外傷に陰圧創傷治療を施すように構成されるシステムは、内部の閉鎖された手術部位に吸引を施すように構成されるシステムと同様に、陰圧処置システムの一種とみなされる。
【0025】
本発明は、本出願の本明細書で個々に又はまとめて言及又は示される部品、要素、及び特徴と、任意の2つ以上の当該部品、要素、又は特徴の任意若しくは全ての組み合わせと、にあると広く言うこともできる。本発明が関係する技術分野において知られている均等物を有する特定の整数が本明細書で言及される場合、そのような知られている均等物は、あたかも個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれるものとみなされる。
【0026】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される「含む」という用語は、「少なくとも部分的に~からなる」ことを意味する。「含んでいる」という用語を含む本明細書及び特許請求の範囲の記述を解釈するときに、この用語で始まるもの以外の他の特徴も存在する可能性がある。「含む」及び「含まれた」などの関連用語も同様に解釈される。
【0027】
本明細書に開示されている数値の範囲(例えば、1~10)への参照は、その範囲内の全ての有理数及びその範囲内の任意の有理数の範囲(例えば、1~6、1.5~5.5、及び3.1~10)への参照も組み込まれることを意図する。したがって、本明細書に明示的に開示された全ての範囲の全ての部分範囲は、本明細書に明示的に開示されている。
【0028】
本明細書で使用される場合、名詞に続く「(複数可)」という用語は、その名詞の複数形及び/又は単数形を意味する。本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、「及び」若しくは「又は」、又は文脈が許す場合にはその両方を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
ここで、本発明は、添付の図面を参照し、例としてのみ説明される。
【
図1】外傷を処置するように構成された先行技術の陰圧処置システムの概略図である。
【
図2】本明細書に記載された少なくとも1つの実施形態による陰圧処置(NPT)システムの高位の概略図を提供する。
【
図3】外傷に適用された
図2のシステムを例示するものである。
【
図4】内傷に適用された
図2のシステムを例示するものである。
【
図5】
図2のシステムの真空ユニットの概略図である。
図5(ii)及び
図5(iii)は、
図5(i)の平面A及びBに沿った二重管腔導管の概略断面図である。
【
図7】
図2のシステムの更なる概略図であり、
図6の概略図と同等であるが、システムの真空ユニットの追加の構成要素を追加的に例示するものである。
【
図8】
図2のシステムの特徴を備え、かつ処置流体リザーバを追加的に含むNPTシステムの代替的な実施形態の概略図である。
【
図10】
図8のシステムの更なる概略図であり、
図9の概略図と同等であるが、システムの真空ユニットの追加の構成要素を追加的に例示するものである。
【
図11】NPTシステムの更なる代替的な実施形態の概略図である。
【
図12】
図11の概略図と同等の更なる概略図であるが、システムの真空ユニットの追加の構成要素を追加的に例示するものである。
【
図13】本明細書に記載されたNPTシステムなどのNPTシステムで使用するためのポンプの2つの図を提供する。
【
図17】
図13のポンプを、
図11及び
図12のシステムに対応する、ポンプの入口に取り外し可能に取り付けられたインターフェースマニホールドとともに例示するものである。マニホールドは、
図9及び
図10のシステムとともに使用するように適合させることもできる。
【
図18】インターフェースマニホールドがポンプから分離された、
図17からのポンプ及びインターフェースマニホールドを例示するものである。
【
図20】
図17~
図19に示されるインターフェースマニホールドとほぼ同じインターフェースマニホールドの2つの図を提供する。
【
図21】図に提示された端面図に示されるマニホールドを通る断面を有する、
図20のマニホールドの断面図である。
【
図22】図に提示された端面図に示されるマニホールドを通る断面を有する、
図20のマニホールドの別の断面図である。
【
図24】
図6及び
図7に示されるシステムに対応する代替的なインターフェースマニホールドを例示するものである。
【
図26】図に提示された端面図に示されるマニホールドを通る断面を有する、
図24のマニホールドの断面図である。
【
図27】代替的なポンプを、ポンプを駆動するためのモータとともに例示するものである。
【
図29】本明細書に記載されたポンプアセンブリに組み込まれ得るダックビル弁の端面図である。
【
図33】
図5~
図7のシステムの可搬型真空ユニットの正面図及び側面図を提供する。
【
図34】
図24のインターフェースマニホールドを明らかにするための、
図33の真空ユニットの部分分解図を提供する。
【
図36】ユニットの筐体又はハウジングの上部カバーが取り外されて、筐体の内部に組み立てられたユニットの構成要素が明らかにされた、
図33の真空ユニットを示し、配線及びチュービング接続は、明確にするために省略されている。
【
図37】
図11及び
図12のシステムの可搬型真空ユニットの正面図、側面図、及び背面図を提供する。
【
図38】ユニットの筐体又はハウジングの後部カバーが取り外されて、
図19のインターフェースマニホールドが明らかにされた、
図37のユニットの背面図及び部分分解図を提供する。
【
図40】
図39に例示された創傷処置デバイスの断面図である。
【
図41】
図40に示されるような外傷処置デバイスにおけるポーティング構成要素とともに提供される供給及び除去導管配置を示す。
【
図42】
図40に示されるような外傷処置デバイスにおけるポーティング構成要素とともに提供される別の供給及び除去導管配置を示す。
【
図43】空気が液体の流れに混入した、様々な流れ特性を例示するものである。
【
図44】本明細書に記載されたNPTシステムの様々な実施形態のシステムアーキテクチャを示す。
【
図45】本明細書に記載されたNPTシステムの様々な実施形態のシステムアーキテクチャを示す。
【
図46】本明細書に記載されたNPTシステムの様々な実施形態の高位の制御フロー図を提供する。
【
図49】
図46の制御フロー図の保持圧力状態についての制御フロー図を提供する。
【
図50】
図46及び
図51の制御フロー図のタイムアウト状態についての制御フロー図を提供する。
【
図51】本明細書に記載されたNPWTシステムの様々な実施形態の高位の制御フロー図を提供する。
【
図52】
図51の制御フロー図の保持圧力状態についての制御フロー図を提供する。
【
図53】
図51の制御フロー図の流体流状態についての制御フロー図を提供する。
【
図54】
図53の流体流状態の洗い流しサイクルについての制御フロー図を提供する。
【
図55】処置システム試験セットアップのシステム性能を示すチャートを提供する。
【
図56】内傷処置デバイス及び外傷処置デバイスの両方を含む別の処置システムの概略図である。
【
図58】
図56及び
図57のNPTシステムの様々な実施形態の高位の制御フロー図を提供する。
【
図62】
図46又は
図58の制御フロー図のタイムアウト状態についての制御フロー図を提供する。
【
図63】
図46又は
図58の制御フロー図のドレッシング加圧状態についての制御フロー図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図において、同様の特徴を示すために、異なる実施形態に対して同様の参照番号が使用される。
【0031】
図2~
図12、
図39、並びに
図56及び
図57は、創傷から流体を除去するための、又は創傷に処置流体を供給し、かつ創傷から流体を除去するための陰圧処置システム(本明細書では処置システム)の例示的な実施形態を示す。
【0032】
図2を参照すると、一般的なレベルにおいて、処置システム100は、創傷処置部位(「創傷」)4に位置する創傷処置デバイス3と、処置デバイス3を介して創傷4に陰圧を適用するための真空ポンプアセンブリ(例えば、
図5のポンプアセンブリ15)を備える真空圧力ユニット2と、創傷4から戻された流体を収集するための流体収集リザーバ6と、を備える。
【0033】
真空圧力ユニット(又は真空ユニット)2は、ポンプアセンブリ15を流体収集リザーバ6の上流及び創傷処置デバイス3の下流に位置付けるように構成されている。創傷処置デバイス3は、局所的に適用される創傷ドレッシング(
図39)、植え込まれた処置デバイス、又は結合された構成での両方の組み合わせ(
図56)を備え得る。流体収集リザーバ6は、流体収集リザーバ6及び接続された導管5cを周囲圧力レベルに維持するために、1つ以上の空気透過性フィルタ又は通気口6aを含むように構成されている。
【0034】
真空ユニット2は、少なくとも1つの導管を介して創傷処置デバイス3に流体結合する。真空ユニット2から創傷処置デバイス3への導管は、真空ユニット2から延在する第1の導管5b、及び創傷処置デバイス3から延在する第2の導管5aを有する、2分割導管を備え得る。第2の導管は、創傷処置デバイス3の一部であり得るか、又はコネクタ(図示せず)によって処置デバイス3に接続され得る。第1の導管5a及び第2の導管5bを流体結合するためのコネクタ7が提供されている。代替的に、連続導管が真空ユニット2と処置デバイス3との間に延在し得る。
【0035】
陰圧創傷治療用途における使用のための局所的に適用されるドレッシングは、陰圧の適用のために創傷部位を密閉するために創傷又は切開を覆って接着される、実質的に空気不透過性及び液体不透過性の閉塞層を含む。典型的には、導管5aは、ドレッシングから延在するが、代替的に、ドレッシングが、真空ユニット2からの導管を受容するためのコネクタを有してもよく、又は閉塞層が、単に、導管を覆って接着及び密閉してもよい。
【0036】
コネクタ7は、創傷4から真空ユニット2に向かう方向の流体の流れを可能にし、かつポンプから創傷への流体の逆流を防止するように配向された、一方弁を備え得る。代替的な実施形態では、一方弁が、代わりに、真空ユニット2内、導管5a、5b上の他の場所、又は処置デバイス3の一部として提供されてもよい。更なる代替例では、処置システム100は、処置デバイス3と真空ユニットとの間に一方弁がなくてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、真空ユニット2と処置デバイス3との間の導管は、創傷からポンプアセンブリ15に流れる流体の通過のための主管腔と、副管腔と、を伴う、二重管腔導管を備え得る。副管腔は、創傷部位における圧力の測定を可能にし得る。副管腔は、創傷4への空気及び/又は処置流体の送達を提供する。しかしながら、代替的な実施形態では、各々が単一の管腔を有する複数の導管が、真空ユニット2と処置デバイス3との間に提供されてもよい。
【0038】
ポンプアセンブリ15をリザーバ6に流体結合するための更なる導管5cが、真空ユニット2とリザーバ6との間に提供されている。導管5cをリザーバ6に流体結合するためのコネクタ8が提供され得る。
【0039】
好ましい実施形態では、真空ユニット2は、可搬のハンドヘルドユニットである。真空ユニット2は、1人の患者に使用されるように意図されている単回使用ユニットであり得る。代替的な実施形態では、真空ユニット2は、複数の患者の使用のために構成され得る。真空ユニット2は、ポンプアセンブリ15及び他の構成要素を収容するための(プラスチック)シェル又は筐体を備える。真空ユニット2は、真空ユニット2を動作させるためのユーザインターフェース14を備える。ユーザインターフェースは、システム100のポンプアセンブリ15をオン及びオフするための制御を含み得、オペレータが、適用されている真空圧力のレベル、又は上側設定点と下側設定点との間の圧力振動の長さ、サイズ、及び周波数などの、創傷4に適用されている圧力処置のパラメータを制御することを可能にし得る。
【0040】
代替的な実施形態では、ユーザインターフェース14はまた、監視デバイスを真空ユニットに遠隔接続して、システムのオペレータ又はユーザに処置の監視を支援するためのデータを送信することを可能にするための制御を含んでもよい。
【0041】
図3は、開放された脚創傷のためのドレッシング又は外傷処置デバイス30とともに使用される、
図2のシステム100を例示している。しかしながら、システム100は、
図4に例示されているように、内傷部位に使用するのにも好適である。
図4は、患者の胸部に位置する内傷部位を例示しているが、システムは、他の部位に位置する内傷を処置するために、例えば、腹部創傷を処置するために使用されてもよい。
【0042】
ここで
図5(i)~
図5(iii)を
図2とともに参照すると、真空ユニット2は、以下でより詳細に記載されている真空ポンプアセンブリ15と、バッテリ(
図7の16)又は他の電源と、創傷処置部位4から流体を送達及び受容するための、導管5b、5aと流体連通する真空ユニットコネクタ9と、ポンプアセンブリ15からリザーバ6への流体流のためのリザーバ6への導管5cと流体連通する真空ユニット出口コネクタ10と、を収容するハウジング又は筐体を備える。コネクタ9、10は、それぞれの導管5b、5cの端部と結合するように構成されており、任意の好適な形態であり得、例えば、これらのコネクタは、ルアータイプコネクタを含み得る。
【0043】
一実施形態では、真空ユニットコネクタ9は、副コネクタ9b内の一方弁が、滅菌フィルタ(
図6のフィルタ19)を通過した周囲空気などの上流源から、又は処置流体リザーバ(
図8のリザーバ26)から、創傷4への流体の流れを可能にするように配向されるように、2つの一方弁を備え得る。主コネクタ9a内の対応する一方弁は、創傷4から真空ユニット2に向かう方向の流体の流れを可能にするように配向されている。いくつかの実施形態では、主コネクタ9a及び副コネクタ9b内の一方弁は、真空ユニットコネクタ9が真空ユニット2から接続解除されたときに閉鎖されるように構成され得る。次いで、これらの弁は、その後に開放されて、接続された真空ユニット9が真空ユニット2に再接続されたときに流体の通過を可能にする。そのような特徴を保有する知られている先行技術のコネクタの例としては、BD(登録商標)MaxPlus(商標)無針コネクタなどのIV用途内で使用するための無針又は不要コネクタを含み、これは、適切なルアー係止コネクタと係合されると流体の通過を可能にするだけである。
【0044】
真空ユニットコネクタ9の内外への流体流のための導管5bは、主管腔11及び副管腔12を有する二重管腔導管である。コネクタ9は、主管腔11に接続するための流体入口を提供する主コネクタ9aと、副管腔12に接続するための流体出口を提供する副コネクタ9bと、を含み、これらの管腔からの流れを分離されたままにする。より大きい主管腔11は、創傷から主コネクタを通って真空ポンプアセンブリ15に流れる流体の通過を可能にする。副コネクタ又は供給コネクタ9bは、主コネクタ又は除去コネクタ9aから分離し得る。
【0045】
主管腔11及び副管腔12は、好ましくは、
図5(i)の切断線Bに沿った
図5(iii)の断面図に例示されているように、これらの管腔の長さの大部分に沿って、単一の本体/導管内の隣接する通路として提供される。しかしながら、真空ユニット2に隣接して、かつ/又は創傷処置デバイス3に隣接して、二重管腔導管5a、5bは、真空ユニット2への結合の容易さのために、かつ/又は供給導管が除去導管とは異なる場所で創傷又は創傷処置デバイス3に入ることを可能にするために、
図5(i)の切断線Aに沿った
図5(ii)の断面図に示されるように、2つの別個のリム又は導管である、副管腔12を備える供給導管と、主管腔11を備える除去導管又は滲出液導管と、に分割又は分離され得る。主導管又は除去導管及び管腔は、互換的に呼称され、参照番号11によって参照され得、副導管又は供給導管及び管腔は、互換的に呼称され、参照番号12によって参照され得る。
【0046】
供給導管12は、圧力センサPvと流体連通して、創傷処置デバイス3の上流側での圧力の測定を可能にする。
【0047】
真空ユニット2は、供給導管12と流体連通する空気入口弁18を備える。空気入口弁18は、以下でより詳細に記載されているように、創傷部位4から流体を持ち上げるのを補助するために処置システム100内に空気を導入する様式で制御される。
【0048】
図5(i)に示されるように、空気入口弁18は、周囲空気を真空ユニット2筐体の外側からシステムに引き込むための入口を有し得る。代替的に、空気入口弁の入口は、真空ユニットハウジング/筐体の内側から空気を取り込み得る。
【0049】
システム100及び創傷部位4への生物汚染及び非滅菌空気の進入を防止するための滅菌フィルタ19が提供されている。
図5(i)では、フィルタ19は、空気入口弁18の入口に提供されているが、フィルタが、空気入口弁18と真空ユニット流体供給コネクタ9bとの間、又は空気入口弁18と創傷部位4との間の別の場所に配置されてもよい。
【0050】
図6は、処置システム100をより詳細に概略的に例示している。真空ユニット2の境界又は外側筐体は、
図6に破線によって例示されている。処置デバイス3の上流側では、真空ユニット2は、空気入口弁18、任意選択で圧力センサPv及び滅菌フィルタ19を備え、処置デバイス3の下流側では、真空ユニット2は、ポンプアセンブリ15、及び任意選択でポンプアセンブリ15と処置デバイス3との間の圧力センサPpを備える。真空ユニット2はまた、処置デバイス3への導管5a、5bと真空ユニット2との間の接続インターフェースを提供する、接続マニホールド20を備えてもよい。接続マニホールド20は、
図6では点線で、
図7では破線で例示されており、
図5に示されているコネクタ9を置換する。マニホールドは、以下により詳細に記載されている。
【0051】
図7は、
図6と同等の処置システム100の更なる概略図を提供するが、追加的に、電源(バッテリ又はバッテリパック16の形態で)、ユーザインターフェース14と、コントローラ17と、ポンプアセンブリ15を駆動するための駆動モータ13と、を備える、真空ユニット2を例示している。モータ、圧力センサPv、Pp、及び空気入口弁18を駆動するためのアクチュエータ(図示せず)は、コントローラ17と電気的に通信する。この実施形態では、ポンプコントローラ17は、当業者に知られている好適な電子部品を介した無線送信の短波又は長波形態のいずれかを含む。
【0052】
図8~
図12は、創傷に流体を供給し、かつ創傷から流体を除去するための処置システムの更なる実施形態を例示している。
図8~
図12の実施形態は、
図2~
図7を参照して上述したシステム100と同じ又は同様の特徴を含むが、創傷処置デバイス3に処置流体を提供するように追加的に構成されている。
【0053】
図9~
図12を参照すると、真空ユニット2は、創傷部位への送達のための処置流体を受容するための1つ以上のポート25を備え得る。ポート25は、好ましくは、処置流体リザーバ26から接続解除されたときに液体の通路に対してノミナルクローズであるように構成されており、処置流体リザーバ26は、その後、ルアーコネクタと係合したときに開放される。B.Braun Medical(登録商標)CARESITE(商標)不要コネクタは、そのようなポートの一例を提供する。
【0054】
処置流体の形態の治療薬が、供給導管12を介して創傷処置デバイス3に選択的に送達され得る。流体源又は処置流体リザーバ26は、例えば、Baxter(登録商標)EMC 9608 Admin Set、B.Braun Medical(登録商標)Single Chamber IV Infusion Set、又は同様の滅菌IV注入治療セットなどの、静脈内(intravenous、IV)流体投与セットへの導管又は接続を介して、真空ユニット2の流体ポート25に結合され得る。処置流体リザーバは、処置システムに接続されている間、大気圧にあることが好ましい。これは、Baxter(登録商標)Sodium Lactate(Hartmann又は複合乳酸ナトリウム)IV Bagなどの可撓性流体バッグと組み合わせて、非通気式IV注入治療セットを使用することによって達成され得るか、又はB.Braun Medical(登録商標)によるProntosan(登録商標)創傷洗浄溶液などの、処置流体の剛性又は半剛性コンテナに通気式IV注入治療セットを接続することによっても達成され得る。
【0055】
例示的な治療流体としては、限定されるものではないが、乳酸ナトリウム化合物、生理的食塩水(0.9%NaCL-塩化ナトリウム)、及び0.45%通常生理食塩水(0.45NaCL)が挙げられる。抗菌剤及び溶液は、感染症の処置にも適用され得、ポリヘキサニド(polyhexanide、PHMB)、硝酸銀、次亜塩素酸(hypochlorous acid、HOCl)、次亜塩素酸ナトリウム、ベタイン、次亜塩素酸ナトリウム、中性pHの超酸化水、又は任意の他の抗菌創傷灌注溶液などの薬剤を含有し得る。
【0056】
他の処置流体がまた、創傷治癒を促進するための細胞懸濁液及び細胞ベースの流体を含んでもよい。流体は、ECMに由来し、かつ注射用水、ヒアルロン酸、治癒を補助する成長因子、鎮痛のためのフェンタニル又はモルヒネなどの鎮痛薬、及びケトロラク又はジクロフェナクなどの抗炎症薬と混合された流動性ゲルを含み得るが、他の流体が想定され、当業者には明らかであろう。
【0057】
多血小板血漿、幹細胞、間質細胞、ケラチノサイト、リンパ球、骨髄穿刺液、血清及び樹状細胞のいずれかを含有する自己又は同種異系細胞ベースの治療の注入は、創傷の修復及び治癒を補助し得る。
【0058】
化学療法薬の点滴はまた、手術可能でない可能性があるがん性細胞の局所的処置を補助し得るか、又はがん性組織の切除後の全体的な処置計画として使用され得る。
【0059】
図9及び
図10の実施形態200を参照すると、処置流体入口弁22は、流体が処置流体リザーバ26から創傷につながる供給導管12内に流れることを可能にするように選択的に動作可能である。流体のリザーバは、大気圧にある。処置流体入口弁22が選択的に開放されたとき、除去導管11を介して創傷4に適用されるポンプアセンブリ15からの陰圧は、処置流体リザーバ26からドレッシング又は創傷処置デバイス3に向けて流体を引き込むように作用する。処置流体入口弁22の作動時に、真空ユニット2内のコントローラ(この図には図示せず)は、Pv及び/又はPp圧力センサにおける真空圧力レベルのその後の降下を検出し、ポンプアセンブリ15を作動させて、真空圧力を目標レベルの真空圧力に維持する。制御アルゴリズムは、以下により詳細に記載されている。例示された実施形態では、空気入口弁18及び滅菌フィルタ19は、治療流体弁22の上流に提供されている。
【0060】
図11及び
図12の実施形態300では、システムは、処置流体入口弁22を有していない。システム300は、陰圧処置中にシステムに導入される処置流体の量を制御するためのオリフィス又は他の流量絞りを含み得る。一実施形態では、処置流体の投与は、流体ポート25を介してユニット2に接続された、Baxter(登録商標)EMC 9608 Admin Set、B.Braun Medical(登録商標)Single Chamber IV Infusion Set、又は同様の滅菌IV注入治療セットなどの、静脈内(IV)流体投与セットの使用を介して制御される。供給導管12に導入される処置流体の流体流量は、セット内のローラクランプを介して制御され、ローラクランプは、ローラクランプ構成要素とインターフェースするチューブの区分内の流量絞りを変化させるように調節される。この実施形態では、流体点滴速度は、チャンバが直立に配向されたときに、IV注入セットのドリップチャンバを介して視覚的にチェックされ得、任意の更なる流量調節がローラクランプ調節を介して行われる。この実施形態は、創傷処置デバイス3を介して処置流体を創傷4に導入する手動手段を提供する。
【0061】
代替的な実施形態では、真空ユニット2は、流体ポート25を介して注入ポンプに接続されて、流体が選択可能かつ制御可能な様式で創傷処置デバイス3に供給されることを可能にし得る。そのような注入ポンプシステムは、例えば、B.Braun Medical(登録商標)Vista(登録商標)基本大容量注入ポンプ又はBD(登録商標)Alaris(登録商標)Syringe Moduleを含み得、それらは、間欠流体送達式又は一定流体送達式のいずれかで、0.1ml/時間~1200ml/時間の処置流体を制御可能に送達し得る。これらのシステムは、典型的には、処置流体が分注される量、流量、及び頻度を選択する手段を提案する。処置流体が真空ユニット2に導入されたとき、システムは、Pv及び/又はPp圧力センサで設定真空圧力レベルのその後の降下を検出し、ポンプアセンブリ15を起動して、システムの目標レベルの真空圧力を維持する。制御アルゴリズムは、以下により詳細に記載されている。
【0062】
図8~
図12の実施形態では、真空ユニット2は、流体ポート25を介して、処置デバイス3への導管5a、5bと真空ユニット2との間、及び真空ユニット2と処置流体リザーバ26との間の接続インターフェースを提供する接続マニホールド21を備える。接続マニホールド21は、
図9~
図12において点線で例示されており、
図8に示されているコネクタ9を置換する。マニホールドは、以下により詳細に記載されている。
【0063】
図11及び
図12の実施形態のシステム300では、真空ユニット2は、真空ユニットコントローラ17に電子的に接続されている色センサ24を追加的に含む。この実施形態300では、色センサ24は、ポンプ15の出口と出口コネクタ10との間に位置付けられた流体流路に沿って位置付けられている。しかしながら、色センサは、代替的に、ポンプ15の入口の上流の任意の好適な位置で、流体経路に沿って位置付けられてもよい。
【0064】
色センサ24は、創傷部位4において処置デバイス3からシステムを通って流れる創傷滲出液の色変化を検出するのに有益であり得る。例えば、手術直後の最初の血液が豊富な創傷滲出液から、漿液血液状の排液(血液及び血清)のピンク色へ、かつ/又は透明な漿液(血清のみ)排液への自然な色の変化。色センサ24のこの動作は、処置デバイス3の上流から濾過された空気を供給することによって増強され得る。濾過された空気は、針を介した処置部位4からの流体の直接吸引の場合と同様に、短い時間枠の間、流体を変位させて、流体の可読試料を生成する。
【0065】
創傷に処置流体を供給し、創傷から処置流体を除去する様々な実施形態のシステム内に色センサを含めることは、更なる利点を提案し得る。例えば、色センサ24は、処置流体リザーバ26から供給され、上流流体経路、除去導管11、創傷処置デバイス3、及び供給導管12を通過して、真空ユニット2に至る処置流体の通過を検出し、接続されたシステムを通る処置流体の完全な飽和を示すように構成され得る。他の実施形態では、処置流体は、感染、バイオフィルム、又は他の創傷に基づく病変の存在に応答した創傷における変化の検出のための色に基づくインジケータと組み合わせられ得る。
【0066】
図56及び
図57の実施形態の処置システム400は、
図6の実施形態100と同様であるが、副創傷処置デバイスに結合するための追加の制御弁29を含む。制御弁29は、ポンプ15の入口に結合され、この入口と流体連通している。
図57に示される構成では、外傷処置デバイス30は、マニホールド20を介して主創傷処置デバイス3をポンプ15の出口に結合する主管腔11への更なる流体導管32を介して真空ユニット2に接続されている。実施形態400では、真空ユニット2は、導管32を介して外傷処置デバイス30をポンプ15の入口に接続するためのドレッシングポート31を含む。外傷処置デバイス30への真空圧力の供給は、ドレッシング圧力制御弁29のアクチュエータを介して制御される。
【0067】
図57に示される実施形態400では、システムのコントローラ17は、ポンプ15及びドレッシング圧力制御弁29の上流かつドレッシングポート31の下流に位置付けられるドレッシング圧力センサPdに接続されており、コントローラは、ポンプ15から創傷処置デバイス30に真空圧力を供給するように構成されている。この実施形態のシステムのコントローラは、以下により詳細に記載されている。
【0068】
ここで、処置システム100、200、300、400の様々な構成要素について記載する。
【0069】
リザーバ
記載したように、処置システム100、200、300、400は、創傷部位4から除去された液体、例えば創傷滲出液、を収集するためのリザーバ6を備える。好ましい実施形態では、リザーバ6は、創傷から最も離れた位置に位置付けられ、したがって、ポンプアセンブリ15を通過した後に創傷から除去された流体を収集するために、ポンプアセンブリ15の下流にある。
【0070】
示される実施形態では、リザーバ6は、可撓性バッグを含む。代替的に、剛性リザーバが提供されてもよい。
【0071】
リザーバ6は、リザーバの壁に提供された1つ以上の空気透過性フィルタ又は通気口6a、例えば不透過性膜のアパーチャを覆って提供された疎水性通気膜、を備える。空気透過性フィルタ又は通気口は、ガスの通気を可能にし、それによって、効果的なポンピングを妨げるリザーバ内の圧力上昇を防止する。例示的なリザーバは、8つの通気口6aを有し、各々、システムを通過する高レベルの空気流を持続させるために、8mmの直径及び3ミクロンの孔径を有する。
【0072】
血餅、フィブリン、及び他の凝固した流体又は組織残屑は、通気膜を閉塞させ得、これは、流体路に導入された空気でバッグを膨張させる。この膨張は、バッグを破裂させて流体を漏出させる可能性があるか、又は過剰な陽圧下で出口弁を強制的に開放させることによって、必要とされる真空圧力をポンプが生成することを妨げる可能性がある。
【0073】
これらの問題を回避するために、高塩適合性ポリアクリル酸ナトリウムポリマー、又は他の同等の血液適合性超吸収性ポリマーが、バッグ内の血液及び創傷流体を凝固させるためにリザーバに添加され得る。これらのポリマーは、遊離粒子、溶解可能なPVAフィルムパウチ内に懸濁された粒子、又は織物/布様媒体内に懸濁されたポリマーのいずれかとして入手可能である。
図56に示す実施形態では、リザーバ6は、吸収性ポリマー33の2つのバッグを備えるように示されている。
【0074】
バッグ上の1つ以上の通気口と連携したこのポリマーの使用は、バッグの膨張を回避し、処置システムの流体路が、システム内に導入される際にはるかに多くの空気に対処することを可能にする。
【0075】
ポンプアセンブリ
ここで、
図13~
図16を参照して真空ポンプアセンブリ15について記載する。ポンプアセンブリ15は、
図7、
図10、及び
図12に例示されているように、モータ13によって駆動される。ポンプアセンブリ15は、斜板52と、複数の可撓性チャンバ53(ダイヤフラム)と、弁の各対がそれぞれの可撓性チャンバ53と流体連通している複数対の可撓性弁54、55と、ポンプ入口56及び出口57と、を備える。
【0076】
ポンプカバー/入口/出口
ポンプ入口56及び出口57は、ポンプカバー58上に提供されている。示される実施形態では、入口56及び出口57は、ポンプカバー58上に並んで提供されており、入口56は、ポンプカバー58の縁部のより近くに位置し、出口57は、ポンプカバー58の中心のより近くに位置付けられている。
【0077】
入口56及び出口57の各々は、それぞれ、ポンプ内への及びポンプ外への流体の通過のためにポンプカバーを貫通して延在するアパーチャを備える。
図16の分解図を参照すると、ポンプカバー58の下側は、2つのチャネル、すなわち、(内側)出口チャネル62を取り囲む(外側)入口チャネル61を備える。入口56からのアパーチャは、入口56を通ってポンプに流入する流体が入口チャネル61に流入するように、入口チャネル61内に開口している。出口57からのアパーチャは、ポンプから流出する流体が出口チャネル62に流入し、かつ出口57を通って流出するように、出口チャネル62内に開口している。
【0078】
入口チャネル61及び出口チャネル62は、別異のものであり、流体が一方のチャネルから他方のチャネルに直接流れることができないように、流体的に分離されている。
【0079】
弁
図14~
図16を参照すると、ポンプは、2対の弁を備え、各弁対は、それぞれのチャンバ53に対応し、それぞれのチャンバ53と位置整合している。各弁対は、入口弁54及び出口弁55からなる。弁支持構成要素は、入口チャネルからの流体が入口弁54と流体連通するように、入口弁54を入口チャネル61と位置整合するように位置付ける。出口弁55は各々、出口弁55からの流体が出口チャネル62に流入するように、出口チャネル62と位置整合し、かつ出口チャネル62と流体連通するように位置付けられている。
【0080】
弁54、55は、流体が弁を一方向に通ることを可能にし、かつ流体が反対方向に弁を通って流れることを防止するための一方弁である。各弁対において、入口弁54及び出口弁55は、流体がそれぞれの入口弁54を通って対応するチャンバ53に流入し、かつそれぞれの出口弁55を通ってチャンバ53から流出することのみができるように、反対に配向されている。
【0081】
弁54、55は各々、弾性「ダックビル」型弁を備える。これらのダックビル弁は各々、2つの反対方向に傾斜した壁を有し、2つの壁の先端に単一のスリット型開口部を有する。2つの壁の間の流体からの圧力下で、スリットは、2つの壁が離れることによって、強制的に開放されて、流体が弁を通って流れることを可能にする。
【0082】
図29及び
図30を参照すると、いくつかの実施形態では、各可撓性弁54、55は、傾斜壁の下流表面上に複数の補強リブ59を備え得る。これらのリブ59は、背圧下で弁形状を維持するのに役立ち、薄壁可撓性弁が別様に影響を受け得るような、背圧下での弁の圧壊、折れ曲がり、又は反転の可能性を低減する。リブ59は、流れの下で弁の屈曲及び開放を妨げることなく、壁に剛性を提供する。示される実施形態では、リブは、断面が実質的に三角形であるが、代替的な実施形態では、これらのリブは、他の形状を有してもよい。また、補強リブによって、弁を通る逆方向の漏れの発生を低減するように弁を補強してもよい。
【0083】
図13~
図16を参照すると、弁54、55は、弁ハウジング63内に支持されている。弁ハウジングは、2つの部分64及び65を備える。2つの部分は、弁54、55を2つの部分64、65の間に保持して互いに固定されている。弁ハウジングの各部を、弁支持構成要素として記載することができる。弁54、55のフランジ部分が、2つの弁ハウジング部64、65間で圧縮されて、封止を提供し、漏れを防止する。弁ハウジング63は、入口弁54が入口チャネル61と流体連通し、出口弁55が出口チャネル62と流体連通し、かつ弁54、55が上述したように単一のチャンバ53に対応するように対で配置されるように、弁54、55を支持する。
【0084】
弁ハウジング63は、ポンプカバー58に固設されていることによって、ポンプカバーで流体密封され、内側チャネル61及び外側チャネル62、したがって、ポンプ入口56及び出口57を分離する。例えば、弁ハウジング63の一部64は、ポンプカバー58に超音波溶接されている。次いで、ねじを使用してポンプアセンブリ15全体を互いに締結して、弁54、55を弁ハウジング63内にクランプする。
【0085】
ポンプアセンブリ15は、入口弁54、チャンバ53、及び出口弁55を介して、ポンプ入口56からポンプ出口57までの、ポンプを通る流体流路を備える。例示された実施形態では、入口弁54及び出口弁55は各々、開放時に流路に単一のオリフィスを提示する。
【0086】
上述したように、好ましい実施形態では、滲出液リザーバ6は、ポンプアセンブリ15の下流にある。このことは、創傷からの流体がポンプアセンブリ15を通過することを意味する。単一のオリフィスを提示する弁54、55は、創傷4から戻された組織残屑、フィブリン、血餅、疎性結合組織、及び脂肪(脂肪性)組織などの残屑が真空ポンプアセンブリを通過及び遮断することによって引き起こされるポンプアセンブリ15における閉塞のリスクを低減する。アンブレラ弁などの他の弁タイプは、複数のより小さいアパーチャを備え、したがって、弁において閉塞を発生させる傾向がより強い。
【0087】
各弁54、55の単一オリフィスは、弁が開放されているときに、ポンプ入口56からポンプ出口57までの流体流路の最小面積と同様の又は最小面積よりも大きい面積を有する。好ましくは、各弁54、55の単一オリフィスの開口面積は、ポンプ入口56の面積以上である。したがって、ポンプアセンブリで閉塞が発生すると、これは、ポンプアセンブリの内部の点ではなくポンプ入口56で発生する。好ましくは、単一のオリフィスの開口面積は、供給導管11の管腔の断面積より大きい。
【0088】
例示された実施形態は、ダックビル弁54、55を含む。しかしながら、ポンプ流路に対して単一の大きなオリフィスを提示する他の弁、例えば、フラッパ弁、スクアッパ弁、逆止弁、クロススリット弁、及びドーム弁などが可能であり得る。しかしながら、単一の一体型可撓性部材からなる弁が好ましい。弁は、好ましくは、フィブリンなどの創傷からのタンパク質が弁に結合する可能性を低減するために、液体シリコーンゴム(liquid silicone rubber、LSR)から成形されている。
【0089】
例示された実施形態では、弁ハウジング63は、ポンプアセンブリ15を通る流体流路から分離された流体管腔を都合よく固設するためにホースを取り付けるための対向するスピゴットを有する貫通ポート66を備える。貫通ポート66及びスピゴットが、ポンプアセンブリ上の他の場所に、例えばポンプカバー58の一部として設けられてもよく、又はポンプアセンブリが、貫通孔及びスピゴットを有していなくてもよい。例示された実施形態は、処置デバイスの下流のシステム圧力を示す、ポンプの入口チャネルにおける圧力を測定するために、例えばチューブを介して、圧力センサ(Pp)を接続するためのポート71を含む。
【0090】
他の実施形態では、ポート71は、真空圧力を副創傷処置デバイス30に供給するために、制御弁、例えば
図56及び
図57の実施形態400におけるドレッシング制御弁29、をポンプ入口に接続するように構成され得る。代替的又は追加的に、ポンプカバー58は、圧力センサ及び弁との接続を容易にするための1つ以上の更なるポート71を含むことができる。
【0091】
シリンダ/ピストン斜板
弁54、55の各対は、それぞれの可撓性チャンバ53と流体連通している。例示された実施形態は、2対の弁54、55に対応する2つのチャンバ53を備える。しかしながら、代替的な実施形態は、単一のチャンバ又は3つ以上のチャンバを有してもよい。好ましくは、ポンプアセンブリ15は、2つ以上のチャンバ53及び関連付けられた対の弁54、55を備え、常に、一方のチャンバが圧縮され、一方のチャンバが膨張するようにする。
【0092】
例示された実施形態では、チャンバ53は、単一の構成要素として一体的に提供されている。構成要素は、シリコーンなどの可撓性、弾性、及び空気不透過性の材料を含む。チャンバハウジング67は、チャンバ構成要素を支持及び収容し、弁支持ハウジング63に取り付けられて、チャンバ53をそれぞれの弁54、55と位置整合させて保持する。
【0093】
可撓性チャンバ53は、実質的に円筒形である。各チャンバは、チャンバ53の下側から突出してチャンバ53を圧縮及び拡張するように軸方向に(シリンダの軸に沿って)移動可能である、関連付けられたコネクタ68を備える。
【0094】
例示された実施形態では、コネクタ68は、斜板52に接続しており、斜板52は、コネクタ68をチャンバに取り付けるための取り付け特徴部を有する。
【0095】
斜板52は、回転連結部51を介してモータ13(これらの図に図示せず)によって駆動される。カプラ51は、カプラ51が駆動軸とともに駆動軸を中心に回転するように、モータ13の駆動軸に固定されている。カプラ51は、カプラ51の回転軸からオフセットした装着アパーチャ70を有する。
【0096】
図15及び
図16を参照すると、斜板52は、カプラ51上のオフセットアパーチャ70によって受容される中央スピゴット69を有する。これにより、斜板52の横方向の動きがチャンバ53及びチャンバハウジング67との接続によって拘束されているため、斜板52が傾く。
【0097】
スピゴット69は、カプラ51が斜板69に対して回転することができるように、カプラ51のオフセットアパーチャ70内に枢動可能に装着されている。カプラ51がモータ13の駆動軸によって回転するように駆動されると、カプラ51において装着されたスピゴット69の端部が駆動軸の周りを円運動し、斜板52を周期的かつ軸方向にシーソー式に傾斜させる。
【0098】
斜板52が周期的に傾斜するにつれて、斜板52は、各チャンバ53を順次圧縮し、続いて、各チャンバ53を順次膨張させる。チャンバ53の圧縮は、チャンバ53に存在する流体を、それぞれの出口弁55を通して、出口チャネル62内に、及びポンプ出口57を通して排出させる。チャンバ53のその後の膨張は、チャンバ53内に真空を生成し、流体をポンプ入口56から入口チャネル61及びそれぞれの入口弁54を通してチャンバ53内に引き込む。このプロセスは、ポンプ入口56からポンプ出口57へ流体を圧送するために周期的に繰り返される。
【0099】
モータ13、カプラ51、及び斜板52は、チャンバ53の膨張及び圧縮を駆動するための駆動機構を形成する。斜板52及びカプラ51は、モータ13の回転運動を軸方向運動に変換して、チャンバ53を膨張させ、圧縮する。他の駆動機構、例えば、モータシャフトに取り付けられたクランクアーム、及びチャンバとクランクアームとの間の接続ロッドが可能である。しかしながら、2つ以上のチャンバがある場合、カプラ及び斜板を有するモータが好ましい駆動機構である。
図13~
図16に例示された実施形態では、斜板52及びカプラ51は、駆動機構ハウジング77に収容されている。モータ13は、(例えば、
図27の実施形態に示されるように)駆動機構ハウジング77に装着され得る。
【0100】
図27及び
図28は、3つのチャンバ53と、これらの関連付けられた3対の入口弁54及び出口弁55と、を備える代替的なポンプ配置を示す。複数対の可撓性弁54、55は、弁構成要素72によって一体的に提供されている。弁構成要素72は、シリコーンなどの可撓性の弾性材料を含み、実質的に剛性の弁支持体73上に装着されている。弁支持体73は、弁構成要素72に対応する形状を有する凹部を備え、弁構成要素72を位置決め及び受容する。弁支持体73は、各弁対54、55に対応する複数対のアパーチャ74、75を更に備える。各対の2つのアパーチャ74、75は、封止バー76によって分離されている。
図28に示されるように、弁構成要素72は、ポンプカバー58と弁支持体構成要素73との間に着座し、入口弁54を弁支持体73における対応するアパーチャ74内に突出させて、弁支持体73上に据え付けられている。弁構成要素72は、弁54、55を位置決めし、かつ動作中にアセンブリを通る漏れを防止するのに役立たせるために、それぞれのアパーチャの縁部に当接するように成形及び位置付けられた位置決めフランジを備え得る。
【0101】
封止バー76は、それぞれの入口弁54と出口弁55との間に位置付けられている。封止バー76は、ポンプカバー58の入口チャネル61と出口チャネル62とを分離するポンプカバーの一部分と位置整合している。構成要素が組み立てられると、封止バー76は、2つの弁54、55間の弁構成要素に衝接し、その箇所で弁構成要素を圧縮して封止を形成し、流体が弁54、55を迂回して入口チャネル61と出口チャネル62との間に直接流れることを防止する。
【0102】
図27及び
図28の実施形態では、斜板52は、それぞれの3つの圧縮可能チャンバ53に接続するための3つのアームを有するY字形状を有する。このY字形状は、この実施形態において、斜板と他の構成要素との間に最適なクリアランスを提供する。しかしながら、斜板は、斜板が駆動するコネクタの数に応じて代替的な形状を有してもよく、又は実質的に円形の形状を有してもよい。
【0103】
図13~
図16並びに
図27及び
図28を参照して上述した好ましい記載されたポンプ構成は、低電力使用量で高流量容量を達成し、ポンプを、NPTシステム、特に可搬型NPTシステムにとって、特に有用にする。
【0104】
例えば、2つのチャンバを備える
図13~
図16を参照して記載したポンプは、表1に記述されたポンプ特性を有する。比較のために、蠕動ポンプの特性を以下の表2に提供する。本明細書に記載されたポンプは、所与の電力消費に対してはるかに高い流量容量を有する。例えば、6Vでは、記載されたポンプは、0.33Wの電力消費で220mL/分の流量を有するのに対して、蠕動ポンプは、0.9Wの電力消費で38mL/分の流量を有する。
【0105】
【0106】
【0107】
ポンプアセンブリ15は、以下により詳細に記載されているように、創傷4において陰圧を維持し続けながら空気入口弁18が開放されて空気を導入する好ましいNPTシステム100、200、300、400において特に有益である。そのようなシステム動作は、弁開閉サイクル時間のかなりの時間部分にわたって空気入口弁18が開放されて、処置システム100、200、300、400にかなりの体積の空気を導入しながら陰圧を維持するために、高容量ポンプ15を必要とする。更に、ポンプアセンブリ15は、濾過された空気を処置部位4の全体積の大部分に導入するように構成された処置デバイス3を備える処置システムにおいて特に有用である。好ましい処置デバイス3について、
図39及び
図40を参照して以下に記載する。創傷4における陰圧を効果的な処置陰圧レベルに維持し続けながら、増加した量の空気を移動させ、かつ流体を創傷4から滲出液リザーバ6まで持ち上げるために、大容量ポンプアセンブリ15が必要とされる。
【0108】
流体収集リザーバの上流及び創傷処置デバイスの下流に真空ポンプアセンブリを有して構成された先行技術のNPTシステムは、これらのNPTシステムが、通過する組織残屑に対処し、閉鎖システムの利益を提供し、かつ流体がポンプの可動部分との直接接触から分離され得ることから、典型的には、蠕動ポンプを使用する。しかしながら、蠕動ポンプは、この必要とされる処置陰圧と、好ましいシステム構成において必要とされる流量と、を達成するために、実用的なサイズ及び電力では不十分な容量しか提供しない。
【0109】
本明細書に記載された好ましいシステムに好適な流量を提供する蠕動ポンプは、そのサイズ及び電力要件に起因して、可搬型システムには好適でないであろう。記載されたポンプアセンブリ15は、血液、脂肪組織、フィブリン、溶解細胞、及び大きい生物学的粒子(サイズ2mm)などの生物学的物質が、閉塞を引き起こすことなくポンプアセンブリ15を通過することを可能にしながら、先行技術のポンプと比較して、より低い電力で改善された容量(増加した流速)を可能にする。
【0110】
記載されたポンプアセンブリ15は、比較的低い電力入力に対して高容量出力を有するポンプを必要とする他の用途において有用性を有し得る。例えば、記載されたポンプは、可搬型透析デバイス、又は大体積の移動が必要とされる任意の他の可搬型デバイス、特に、周囲レベルを上回る又は下回る圧力レベルで大体積の移動を必要とする用途での使用に特に好適であり得る。
【0111】
滅菌フィルタ
滅菌空気入口フィルタ19は、PTFE膜、例えば、Steriltech(商標)から入手可能なPTFEシリンジ型フィルタを備え得る。一例では、フィルタ19は、およそ0.2ミクロンのフィルタ膜孔サイズを含む。フィルタ膜は、約1cm
2の面積を有し得る。フィルタは、フィルタ膜又は要素を封入するための、かつ入口及び出口を有するハウジングを含む、フィルタアセンブリを備え得る(例えば、
図25のフィルタアセンブリ19は、入口19b及び出口19cを有するハウジング19aを備える)。好適なフィルタは、Steriltech(商標)によって提供されるフィルタ部品番号PT021350である。
【0112】
フィルタ19は、好ましくは、処置システム100、200、300、400の外部の周囲圧力と、処置デバイス3の上流側の処置システム100、200、300、400内の圧力と、の間に所定の圧力降下を追加的に提供する。圧力降下は、フィルタアセンブリを通る流路におけるフィルタ膜及び/又はオリフィスによって提供され得る。例えば、フィルタは、約20~130mmHgの圧力降下を与えるように選定される。例示的実施形態では、フィルタは、約100mmHgの圧力降下を提供する。代替的に、周囲環境と創傷処置デバイスの上流側との間の圧力降下は、創傷処置デバイスのシステム上流に位置するオリフィス板又は他の入口絞りなどの別の構成要素によって提供されてもよい。空気入口弁が開放されているとき、入口絞りは、創傷における圧力を、処置デバイス3の下流側のポンプアセンブリの制御とともに決定する。
【0113】
図8~
図12の実施形態に示されるような、真空圧力ユニット2の副導管12又は供給経路が空気入口弁18と処置流体リザーバ26との間の共通接続部を含む、特定の実施形態では、フィルタ/フィルタ要素は、好ましくは、フィルタ19が処置リザーバ26からの処置流体と接触した後に閉塞するのを防止するために疎水性である。それ以外では、任意のタイプの好適なフィルタ媒体が使用されてもよい。
【0114】
空気フィルタ19は、処置システム100、200、300、400への空気入口に、又は処置システムの空気流路内に提供され得る。例えば、真空圧力ユニット筐体は、真空ユニット2内への流体(シャワー又は雨等からの水などのような)の望ましくない進入を防止し、筐体の外部開口部を介して空気入口弁18への通路を提供するように、密封され得る。この事例では、滅菌フィルタ膜は、創傷への空気路が滅菌され、かつ生体適合性であることを確実にするために、ハウジングのポートに溶接され得るか、又は別様に取り付けられ得る。このことの欠点は、空気入口弁18を含むシステムの全ての流体接触部を滅菌しなければならないことである。
【0115】
好ましい実施形態では、フィルタ19は、
図6、
図7、
図9~
図12、及び
図57に示されるように、空気入口弁18と創傷部位との間に位置する。これにより、非滅菌空気入口弁アセンブリ18が、真空ユニットハウジング内のシステム100、200、300、400内に組み込まれ、周囲環境から弁18内に周囲空気を引き込むことが可能になる。上流圧力センサPvが提供される場合、これは、好ましくは、フィルタ19の上流にあり、それにより、センサも滅菌を必要としない。
【0116】
空気入口弁及び流体入口弁
空気入口弁18は、弁を開放位置と閉鎖位置との間で駆動するためにコントローラと電気通信するソレノイドなどのアクチュエータを含む。空気入口弁18として使用するのに好適な弁の一例は、Koge(商標)部品番号KSV2WM-5Aによって提供されるミニソレノイド弁である。この特定のソレノイド弁は、内部ばねによって提供される力を介した内部ゴム封止に対してノミナルクローズのままである中央強磁性プランジャ構成要素を有する。この弁は、ばねの力に抗してプランジャを開放する磁界を発生させるための電流を適用することによって開放される。この弁は、電流が喪失したときに自動的に閉鎖されて、処置デバイス3内の真空圧力のレベルを保つという利点を有し、このことは、電力が予期せずに喪失したとき、例えばバッテリが充電を喪失したときに、有利である。この弁の欠点は、弁を長時間開放されたままにするのに必要とされるエネルギーの総量である。
【0117】
好適な空気入口弁18の別の例は、高砂流体システム(高砂電気工業)によって提供されるNLV-2-MFFマイクロラッチングソレノイドダイヤフラムアイソレーション弁である。このソレノイド弁は、永久磁石を使用して、弁を開放位置又は閉鎖置のいずれかに維持する。ソレノイドへの第1の方向への電流の供給は、弁を開放状態から閉鎖状態に移行させる一方、第2の逆方向への電流の供給は、弁を閉鎖状態から開放状態に移行させる。このラッチングソレノイド弁は、弁の開放/閉鎖状態を変化させるのに電気エネルギーを必要とするだけであり、したがって、上述のKOGE(商標)の例とは異なり、弁位置を維持するのにエネルギーを必要としない。この弁のより低いエネルギー需要は、弁タイミングの長い持続時間がコントローラによって適用され得る、本明細書に記載された処置システム100、200、300、400にとって特に有利である。しかしながら、このソレノイド弁の電力節減の利点はまた、真空圧力ユニット2への電力が喪失した場合に、創傷処置デバイス3への全真空圧力喪失のリスクをもたらし、このことは、ソレノイド弁に接続する電気回路内にコンデンサ構成要素を含めることによって軽減され得る。
【0118】
空気入口弁18は、圧力解放弁として動作せず、すなわち、空気入口弁は、創傷における圧力を制限するために「こじ開ける」ように制御されない。空気入口弁は、所定の期間に基づいて開閉され、すなわち、空気入口弁の制御は、以下でより詳細に説明されるように、圧力制御ではなく、時間制御である。
【0119】
流体入口弁22は、弁を開放位置と閉鎖位置との間で駆動するためにコントローラと電気通信するソレノイドなどのアクチュエータを含む。上述したKOGE(商標)ソレノイド及び高砂流体システムラッチングソレノイド弁は、この目的で使用され得る。これらの弁は両方とも、処置流体リザーバ26から副導管12を介して創傷処置デバイス3に流れる処置流体に直接接触する可動部を含む。ヒトの使用に好適であるためには、流体接触構成要素は、生体適合性材料から作製され、同時に無菌で供給されることが必要とされるであろう。
【0120】
この場合、ピンチ弁、又はASCO(登録商標)390NO12330の2方向ノミナルクローズピンチ弁などの類似の非流体接触流体制御弁の使用が望ましい。これらのピンチ弁は、IVバッグなどの処置流体リザーバ26に接続されたチューブを受容するための開放チャネル又はレセプタクルを有する。一例は、Braun Medical(登録商標)Single Chamber IV Infusion Set内に含まれる小チューブであり、この場合に、ピンチ弁は、IV注入セット内のローラクランプ構成要素に取って代わるであろう。
図9及び
図10に例示された実施形態では、流体ポート25と接続マニホールド21との間に延在するチューブに、ソレノイド作動ピンチ弁が適用され得る。ソレノイド作動ピンチ弁は、チューブが弁に挿入されたときに強磁性プランジャ構成要素がチューブを締め付けて閉鎖させることを確実にする内部ばねを有する。コントローラは、ソレノイドの内部コイルに電流を供給し、そこで、結果として生じる磁力が、ばねによって提供される力に抗してプランジャを開放位置に後退させてチューブを解放し、それによって、処置流体がチューブを通って流れることを可能にする。コントローラは、流体の供給が必要とされると、ソレノイドに電流を供給し続ける。リザーバ26からの処置流体の供給が必要とされなくなると、コントローラは、ソレノイドに電流を供給することを停止し、その結果、プランジャは、内部ばねによって適用される力を介して閉鎖位置に戻る。
【0121】
ドレッシング制御弁
ドレッシング制御弁31は、弁を開放位置と閉鎖位置との間で駆動するためにコントローラと電気通信するソレノイドなどのアクチュエータを含む。上述したKOGE(商標)ソレノイド及び高砂流体システムラッチングソレノイド弁などの任意の好適なアクチュエータを、この目的で使用することができる。
【0122】
チュービング
図31及び
図32は、真空ユニット2と処置デバイス3との間を接続するための2つの二重管腔導管の断面を提示している。
図31に示される導管は、円形の外壁を有する。この導管は、創傷を開かずに、例えば内傷処置なしで、導管をその後除去しなければならない創傷処置に好ましい。丸い又は円形の外壁は、患者に不快感を引き起こし得る導管の側面に付着した組織を穏やかに解放するために、除去時に導管を回転させることを可能にする。
【0123】
円形の外壁を提供するために、主管腔11及び副管腔12は、並んで提供されている。副管腔又は供給管腔12は、円形断面を備え、主管腔又は除去管腔11は、副管腔12を部分的に包み込むか、又は副管腔12の周りを取り囲むための三日月形断面を備える。主管腔11は、副管腔12の断面積よりも大きい断面積を有する。
【0124】
図32の導管断面は、
図39~
図42を参照して以下に記載されているように、外傷を処置するための創傷処置デバイスとともに、又は創傷処置デバイスの一部として使用するために好ましい。導管は、主管腔又は除去管腔11及び副管腔又は供給管腔12を、2つの管腔を分離する内壁Wと並べて備え、2つの管腔は、円形断面を備える。
【0125】
例として、供給管腔は、約1.7mm2の断面積を有し得、除去管腔は、約9mm2の断面積を有し得る。真空ユニットと処置デバイスとの間のチュービングの典型的な長さは、約1000mmである。他の実施形態では、供給管腔の断面積は、およそ0.7mm2~3mm2の範囲であり得、主管腔は、およそ2mm2~およそ30mm2で様々であり、供給されるチューブの長さは、およそ200mmの長さ~約1500mmの長さのいずれかである。
【0126】
創傷処置デバイス
内傷で使用するための例示的な処置デバイス3が
図7に示されており、これは、創傷処置部位に単一の管状流路を備える
図6に概略的に示された処置デバイスと同様である。処置デバイス3は、創傷処置部位4を通る流体流路を提供する。処置デバイス3は、上流端部3b及び下流端部3cを有する穿孔導管3aを含む。流体、例えば空気は、処置デバイス3の上流端部3bを介して処置デバイス及び創傷部位に提供される。流体、例えば空気及び滲出液は、処置デバイス3の下流端部3cを介して創傷及び処置デバイス3から除去される。例示された実施形態では、処置デバイス3は、処置デバイスを通る単一の流路を提供し、すなわち、処置デバイス導管は、分岐を含まない。そのような配置では、処置デバイス導管の部分が互いに近接している場合、「短絡」経路SCが存在する可能性があり、それによって、流れは、互いに近接している処置デバイス導管3aの2つの部分の間で優先的に生じる。これにより、流体流が処置部位の他の領域に到達することを防止し、それらの領域への及びそれらの領域からの流れを防止することができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、処置システムは、処置流体及び/又は空気を送達し、かつ準大気(陰)圧環境を維持しながら、創傷からの流体の後続の除去を提供するための、外傷処置デバイスを備え得る。
【0128】
図39は、外傷処置デバイス40を備える処置システムを示す。
図8~
図12の実施形態200及び300について前述したように、真空ユニット2は、導管を介して治療流体源26及び創傷滲出液リザーバ6に、かつ二重管腔導管5を介して処置デバイス40に接続されている。しかしながら、創傷処置システムは、
図6及び
図7の実施形態100について記載したように、治療流体供給部を備えていなくてもよい。
【0129】
図40は、
図39に示される外傷処置デバイス40の例示的な断面図であり、断面図は、
図39において「x」で表された線に対応する。
【0130】
外傷処置デバイス40は、ポーティング構成要素又は層41(創傷充填材)と、被覆ドレッシング又は層42と、供給導管12と、(別個の)除去導管11と、を備える。ポーティング構成要素41は、創腔内に配置されて創傷の処置空間を充填するように示されている。被覆ドレッシングは、創傷を取り囲む損なわれていない無傷の皮膚の領域(創傷周囲としても知られている)に接着されている。ドレッシング被覆42は、創傷部位内の真空圧力の維持を可能にするために、感圧アクリル接着剤の層を含むポリウレタンフィルムなどの気密封止を提供しながら、創傷周囲への接着を可能にする材料から作製されている。そのような材料は、当該技術分野において知られている。
【0131】
処置デバイス40は、創傷の処置空間内に2つの分離された導管11、12を備える。導管11、12は、先述した処置デバイス40と真空ユニット2との間に延在する供給導管12及び除去導管11の末端部分であり得る。二重管腔導管の例では、二重管腔導管の末端部分は、2つの別個のリムである、除去又は滲出液リム(除去導管)と供給リム(供給導管)とに分割され得る。
【0132】
上で考察されたように、供給導管12は、処置剤及び治療薬を含む空気、又は空気及び流体の創傷への供給、並びに無菌空気の供給を提供する。除去導管11は、創傷からの滲出液の除去を提供する。
【0133】
図39では、両方の導管11、12は、標的処置部位への流体の交換を可能にするために、等しい又は異なるサイズの穿孔又はアパーチャ11a、12aを有する。導管の末端部は、それぞれの導管からの、及びそれぞれの導管への流れが、これらの導管の長さに沿った穿孔を通るように、遮断され/塞がれ得る。代替的に、末端部はまた、それぞれ、供給導管及び除去導管のための出口及び入口を提示する。穿孔は、導管に沿って離隔されており、導管の長さに沿って生じ得る潜在的な圧力損失を低減するために、導管に沿った繰り返しの又は様々な距離に配置され得る。穿孔又はアパーチャ11a、12aは、供給導管12からの1つ以上の出口、及び滲出液導管11への1つ以上の入口を提供する。
【0134】
ポーティング構成要素又はポーティング層41は、ポーティング層41を通して、又はポーティング層41の周囲で流体の流れを促進することができる任意の好適な生体適合性材料から形成され得、ポリウレタン発泡体、ポリビニルアルコール発泡体、不織布、スペーサ織物、ガーゼ、網状発泡体、プラスチックメッシュ材料、又は適用された真空圧力下で創傷内への被覆ドレッシング材料の圧壊を防止するために十分な構造的完全性を提供する、シリコーン、熱可塑性エラストマー、若しくはポリウレタンから構築されたエラストマー構成要素を含むが、これらに限定されない。
【0135】
創傷接触構成要素はまた、創傷治癒を促進するために創傷とポーティング構成要素との間に追加的に配置されてもよく、様々な器官から、並びに多様な動物結合組織及び基底膜源から分離された脱細胞化ヒト又は動物組織などの細胞外マトリックス(ECM)移植材料を含んでもよい。他の可能な創傷接触構成要素としては、タンパク質、多糖、糖タンパク質、プロテオグリカン、又はグリコサミノグリカンなどの天然ポリマー材料が挙げられる。例としては、コラーゲン、アルギネート、キトサン、及び絹が挙げられ得る。代替的又は追加的に、創傷接触構成要素は、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリシロキサン(シリコーン)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグレカプロン-25、又はポリエステルなどの合成ポリマー材料を含んでもよい。創傷接触構成要素は、上記材料のうちの1つ以上の複数層の組み合わせを含んでもよい。
【0136】
図40に示される創傷の処置空間は、被覆ドレッシング42及び外傷(開放創)の創傷処置表面によって画定される。処置デバイス40は、創傷の処置空間に適用されて、処置空間への流体の供給、及び処置空間からの流体の除去を容易にする。処置空間は、流体供給導管12、滲出液除去導管11、及びポーティング構成要素又は層41を含む。
【0137】
供給導管12からポーティング構成要素41を通って滲出液除去導管11に出る流体流は、
図40の矢印によって示されている。ポーティング構成要素41は、創傷処置空間内の陰圧のレベルを維持しながら、供給された治療流体及び/又は空気が創傷内の処置表面に分配されることを確実にする。
【0138】
図39及び
図40に示されるように、流体供給導管12及び滲出液又は除去導管12は、2つの導管間及び創傷処置空間を通る「短絡」流路を回避又は防止するように配置されている。この配置は、処置空間の実質的な部分、好ましくは実質的に処置空間全体、を通る流体流を改善する。短絡は、実質的に処置空間全体への流体の供給ではなく、処置空間の部分のみへの流体の優先的な流れをもたらし得る。
【0139】
創傷処置空間を通る短絡経路を回避するために、好ましい実施形態では、2つの導管11、12は、ポーティング層の対向する場所に、すなわち、ポーティング層及び/又は創傷処置部位の周囲部分に、又は周囲部分に隣接して位置付けられている。
図39及び
図40では、2つの導管は、ポーティング層又は創傷処置空間の対向する周囲部分に、又は周囲部分に隣接して配置されている。供給導管12及び除去導管11は、好ましくは創傷処置空間内で最大距離だけ離れて、位置付けられている。
【0140】
例示された実施形態では、供給導管及び除去導管は、ポーティング層の片側に配置されている。しかしながら、他の実施形態では、導管は、ポーティング層の対向する両側に配置されてもよく、又はポーティング層に埋め込まれてもよい。ポーティング層の側面(例えば、最も外側の表面、創傷から最も離れた表面)に配置される場合、好ましくは、供給導管及び除去導管は、入口アパーチャ11a及び出口アパーチャ12aがポーティング層41の表面の方を向くか、又は表面に衝接して配置されるように、ポーティング層に提供されている。
【0141】
図39では、供給導管12及び除去導管11は、それぞれの導管の出口12aと入口11aとの間に一定の距離があるように配置されている。入口11aと出口12aとの間の最小距離は、供給導管12の長さに沿って隣接する出口12a間の最大距離の何倍も大きい。入口11aと出口12aとの間の最小距離は、滲出液導管11の長さに沿った隣接する入口11a間の最大距離の何倍も大きい。例えば、入口と出口との間の最小距離は、隣接する入口間及び/又は隣接する出口間の最大距離の5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍大きい場合がある。
【0142】
いくつかの実施形態では、穿孔/アパーチャ12aは、除去導管11に沿って穿孔又はアパーチャを伴わずに、供給導管12のみに提供され得る。
図41及び
図42を参照すると、供給導管12は、上述したように、供給導管12の長さに沿って出口12aを備えており、除去導管11には、除去導管11の長さに沿って入口がない。供給導管12から除去導管11への流体流は、
図41及び
図42の破線によって示されるように、供給導管12と供給導管11の開放端部とに沿って離隔された出口12aから、ポーティング層41を介して除去導管11の端部に至る。除去導管11の開放端部は、入口アパーチャ11aを提供する。
【0143】
代替的に、穿孔/アパーチャ11aは、供給導管12に沿った穿孔又はアパーチャを伴わずに、除去導管11のみに提供されてもよく、この場合、除去導管12の開放端部は、入口アパーチャ12aを提供する。
【0144】
好ましい実施形態では、処置デバイス40は、供給管腔及び除去管腔を備える二重管腔導管5を備える。導管5の端部部分は、端部部分の長さに沿って分割されて、導管を、供給管腔を備える供給導管部分12と、除去管腔を備える除去導管部分11と、に分離する。例えば、
図32に示される導管は、2つの管腔を分離する内壁Wを通って導管の長さに沿って分割され、いずれの管腔にも分断されない。供給導管又は出口導管の側壁にアパーチャを形成するために、導管の長さに沿って切り込みが提供され得る。例えば、
図41に示されるように、離隔された切り欠きが導管壁を貫通して作製されて、管腔内に入り込み、導管の壁を貫通するアパーチャを形造っている。例示された実施形態では、切り込み又は切り欠きは、導管の内壁Wを貫通して作製されている。
図42では、導管の長さに沿った流路を提供するために、導管12の長さに沿って螺旋状の切り込みが作製されている。いくつかの実施形態では、二重管腔導管の内壁Wが2つのリム間で分離されているため、内壁は、導管の外壁部分よりも薄い部分を有することができ、その結果、螺旋切り込みは、導管の外壁部分を完全に貫通することなく導管の内壁部分を完全に貫通して、導管の長さに沿って離隔されたアパーチャ12aを提示する。
図41及び
図42の実施形態は、創傷処置デバイスに供給導管及び除去導管を提供するための便利で費用効果の高い方法を提供し、コネクタの必要性を回避する。各切り欠き又は切り込みは、好ましくは、導管の壁を通る小さいアパーチャを提供し、例えば、供給導管については、約0.6mm以下の直径を有するアパーチャを提供する。
【0145】
図41及び
図42に示されるように、処置デバイスは、米国特許仮出願第62/568,914号(その内容は、参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されているように、二重管腔導管5が通過する、ブリッジング構成要素43を含み得る。ブリッジング構成要素43は、患者の皮膚に固設され、処置デバイスの上部カバー42と患者の皮膚との間の封止を容易にする。
【0146】
マニホールド
図3、
図6、
図7、
図9、及び
図10を参照して記載したように、いくつかの実施形態では、真空ユニット2は、創傷処置デバイス3、30、40を真空圧力ユニット2に接続するための接続又はインターフェースマニホールド20、21を備え、
図9~
図12、及び
図39の実施形態では、処置流体リザーバ26を真空ユニット2の流体供給経路に接続するための接続又はインターフェースマニホールド20、21を備える。
【0147】
図24~
図26は、
図6及び
図7の実施形態で使用するためのインターフェースマニホールド20を例示している。マニホールド20は、第1の入口202及び第1の出口203を有する第1の流体流路201と、第2の流体入口205及び第2の流体出口206を有する第2の流体流路204と、を備える。第1の入口202は、空気入口弁18に接続しており、第1の出口203は、真空ユニット2から処置デバイス3までの供給導管12に接続している。第2の入口205は、処置デバイス3から真空ユニット2までの除去導管11に接続しており、第2の出口206は、ポンプ入口56に接続している。第1の出口203及び第2の入口205は、処置デバイス3への流体出口と、処置デバイス3からの流体入口と、を提供する。例示された実施形態では、マニホールドは、第1の流体路201に滅菌フィルタ19を備える。この実施形態では、滅菌フィルタは、ハウジング19a及び内部フィルタ要素を備える別個のアセンブリとして提供されており、フィルタハウジング19aは、マニホールド20(
図26では省略)の第1の流路201内に受容されている。したがって、接続マニホールド20は、処置デバイス3に対するシステムの入力と出力との間の便利な接続インターフェースを提供すると同時に、処置システム100への空気入口のための無菌インターフェースも確保する。例示された実施形態はまた、ポンプから処置デバイスまでの除去導管における逆流を防止するために、第2の流路204に一方弁207を備える。
【0148】
図20~
図23は、
図9~
図12の実施形態で使用するためのインターフェースマニホールド21を例示している。マニホールド21は、第1の出口203と流体連通する、空気入口202及び処置流体入口208を有する第1の流体流路201と、第2の流体入口205及び第2の流体出口206を有する第2の流体流路204と、を備える。空気入口202は、空気入口弁18に接続しており、処置流体入口208は、処置流体リザーバ26に接続している。第1の出口203は、真空ユニット2から処置デバイス3までの供給導管12に接続している。第2の入口205は、処置デバイス3から真空ユニット2までの除去導管11に接続しており、第2の出口206は、ポンプ入口56に接続している。第1の出口203及び第2の入口205は、処置デバイス3への流体出口と、処置デバイス3からの流体入口と、を提供する。
【0149】
例示された実施形態では、マニホールド21は、第1の流体路に滅菌フィルタ19を備える。滅菌フィルタ19は、第1の流体流路201に受容されたフィルタ膜を備える。したがって、接続マニホールド21は、処置デバイス3に対するシステムの入力と出力との間の便利な接続インターフェースを提供すると同時に、システム200、300への空気入口のための無菌インターフェースを確保する。好ましい実施形態では、マニホールドは、ポンプから処置デバイスまでの除去導管における逆流を防止するために、第2の流路204に一方弁207を備える。接続マニホールド21は、処置流体からの流体進入が滅菌フィルタ19を損傷することを防止するために、第1の流路に、滅菌フィルタ19に隣接して位置付けられた追加の一方弁33を備え得る。
【0150】
図19は、
図20~
図23のマニホールド21に非常に類似したマニホールド21aを例示している。マニホールド21aは、上述したマニホールド21と同じ内部特徴を有する。マニホールド21aは、真空ユニット2の外部の処置流体リザーバ26に接続するためのチューブ27を介して接続ポート25に接続されている。マニホールド21a(又は21)、チューブ27、及び接続ポート25は、好ましくは、ポンプユニット2のための単一の滅菌接続アセンブリとして提供されている。したがって、接続アセンブリは、処置デバイス3に対するシステムの入力と出力との間の便利な接続インターフェースを提供すると同時に、システム200、300への空気入口及び処置流体入口のための滅菌インターフェースを確保する。
【0151】
処置流体が必要とされなくなるとチューブ27をクランプして閉じるための手段を提供するためのチューブクランプ28が、チューブ27に提供され得る。代替的な実施形態では、チューブクランプ28は、部分的に閉鎖されて、システム内への処置流体の流れを制御するための手段を提供してもよく、又はローラクランプと交換されて、システム内への処置流体の流れを制御するための手段を提供してもよい。追加的又は代替的に、例えばチューブ27内又はマニホールド21aに、オリフィスを含んで、Pvセンサが、処置流体が流れているときに、オリフィスを横断して結果として生じる圧力降下を測定することを可能にしてもよい。Pv圧力センサで測定された圧力は、リザーバ26からの処置流体の流量をベルヌーイの式の適用を介して計算することを可能にする。代替的な実施形態では、チューブクランプ28は、コントローラと電気的に通信する電気作動弁、例えば
図9及び
図10を参照して前述した弁22、と置き換えられてもよい。例えば、弁22は、ソレノイド作動弁、例えば、ばねによって閉鎖位置に付勢されたプランジャを動作させるソレノイド作動ピンチ型弁であってもよい。コントローラ17は、ソレノイドを動作させて、ばね付勢に抗してプランジャを後退させて、弁を開放する。弁は、チューブライン27を締め付けて閉じて、真空気密封止を作成し得る。いくつかの実施形態では、
図11及び
図12に例示されているように、システムは、コントローラによって制御される処置流体弁を有していなくてもよい。
【0152】
図17及び
図18は、ポンプアセンブリ15に接続された
図19のマニホールド21aを示し、ポンプ入口56は、マニホールドの第2の流路204の第2の出口206に直接接続されており、マニホールドの空気入口202は、空気入口弁18に接続するためにポンプアセンブリ15の貫通スピゴット66に直接接続されている。
【0153】
マニホールド一方弁207は、好ましくは、ポンプアセンブリ15に組み込まれた一方弁に関して上述したように、弾性/可撓性弁、例えばダックビル弁である。
【0154】
接続マニホールド20、21、21aは、好ましくは、流体密及び気密アセンブリを形成するために溶接されるか又は別様に互いに組み立てられた成形部品を備える。マニホールド20、21、21aは、システムの他の部分に流体接続するためのコネクタ、例えば、嵌合チュービング/導管又は弁/ポンプに受容されるか、又はこれを受容するためのスピゴット又はレセプタクルを提供する。弁は、液体シリコーンゴムから成形されることが好ましい。
【0155】
全体アセンブリ
図33~
図36は、
図6及び
図7の実施形態の真空ユニット7の全体アセンブリ図面を提示している。
【0156】
先述したように、真空ユニット2は、モータ13を有するポンプアセンブリ15と、ユーザインターフェース14と、バッテリ16と、コントローラ17と、アクチュエータを有する空気入口弁18と、圧力センサPv、Ppと、滅菌フィルタ19と、を含む、ユニットの様々な構成要素を収容するための筐体を備える。この実施形態では、真空ユニット2は、
図24~
図26を参照して上述した接続マニホールド20を備える。収集リザーバ6と連通するためのコネクタ10も図に示されているが、マニホールド20と空気入口弁18との間、及びコネクタ10とポンプ出口57との間の接続ホース又はチュービング/導管、並びにマニホールド20から処置デバイス3までの導管は、明確にするために省略されている。電気配線もまた、明確にするために省略されている。
【0157】
図37及び
図38は、
図19を参照して上述したように、マニホールド21/21aを処置流体リザーバ26に接続するチューブ27上のチューブクランプ28を追加的に含む、
図11及び
図12の実施形態の真空ユニット2の全体アセンブリ図面を提示している。例示された実施形態は、
図33~
図36の実施形態と同様であるが、代替的なインターフェースマニホールド21、21aが、チューブ27、チューブクランプ28、及び処置流体リザーバ26を接続するための関連付けられた接続ポート25とともに備えられており、筐体は、接続ポート25を受容するためのアパーチャを組み込んでいる。
【0158】
図33~
図38の2つの実施形態から分かるように、真空ユニットは、適切なインターフェースマニホールド20、21と、処置流体リザーバ接続ポート25のためのアパーチャを有するか、又は有さない筐体と、を選定することによって、2つの実施形態の間で容易に構成され得る。各真空ユニットの実施形態のコントローラは、「空気のみ」の実施形態又は処置流体供給オプションも備える実施形態のためにコントローラを構成するためのスイッチを備え得る。
【0159】
システム動作
ここで、
図6及び
図7を参照して上述した処置システム100の動作について、
図44~
図50を参照して記載する。最初に
図44及び
図45を参照すると、システムは、ユーザがシステムを動作させることを可能にするためのユーザインターフェース14を備える。ユーザインターフェースは、システム設定のユーザに視覚(例えば、LED)及び音声指示を提供し得、入力、例えば1つ以上のボタン23(
図56)が、例えば、ユニットをオン/オフするか、ポンプを動作させるか、又は動作モードを選択することを可能にする。コントローラ17は、空気弁アクチュエータ(
図35及び
図36の18a)、ポンプモータ13、及び圧力センサPv、Ppと電気的に通信して、空気入口弁18及びポンプアセンブリ15を制御するためのシステムロジック及び制御アルゴリズムを提供する。コントローラはまた、電力管理及びセンサ回路と通信して、電源16を管理して、例えば、ユーザインターフェースを介してバッテリ充電指示をユーザに提供してもよい。
【0160】
コントローラは、ポンプアセンブリ15を動作させて、空気入口弁を開閉しながら、創傷処置デバイス3を介して創傷4における陰圧を維持するように構成されている。空気入口弁18は、創傷部位に空気を導入するために開放される一方、ポンプアセンブリは、稼働し続けて、創傷における陰圧を維持する。
【0161】
陰圧処置は、創傷が滲出液を産生し続けるときであっても、停滞したシステムをもたらし得る。停滞したシステムでは、システムは、周囲環境から効果的に封止され、創傷から滲出液リザーバ6への流体移送又は流れは達成されない。このことは、創傷及び/又はシステムにおける他の箇所における血液、フィブリンなどの凝固に起因するシステム閉塞を悪化させ得る。閉塞は、最終的に、創傷における陰圧を提供することの失敗をもたらし、陰圧処置を無効化する。
【0162】
停滞したシステムを回避するために、コントローラは、ポンプアセンブリ15を稼働させ続けて創傷における陰圧を維持ながら、空気入口弁18を開閉する。
【0163】
例えば、処置システム100は、少なくとも40mmHg、好ましくは少なくとも50mmHgの創傷部位4/創傷処置デバイス3における真空圧力(第1の真空圧力)を維持しながら、空気入口弁18を解放して、空気を創傷部位に導入するように構成されている。例示的な実施形態では、処置システムは、空気入口弁を開放して空気を創傷に導入し、創傷部位/創傷処置デバイスにおける、およそ50mmHg~100mmHg、又はおよそ、60mmHg~100mmHg、又は70mmHg~100mmHg、又は80mmHg~100mmHgの真空圧力を維持することができる。コントローラが空気入口弁を閉鎖すると、ポンプは、動作し続けて、創傷における陰圧を維持する。空気弁が閉鎖されると、創傷部位4における真空圧力は、約100mmHg~150mmHg(第2の真空圧力)であり得る。
【0164】
好ましくは、空気入口弁が開放されているときに創傷処置デバイスで維持される真空圧力は、空気入口弁が閉鎖されているときに創傷で維持される真空圧力の少なくとも実質的な部分であるか、又は空気入口弁が閉鎖されているときに創傷で維持される真空圧力と等しくてもよい。例えば、空気弁を開放して創傷において維持される真空圧力は、空気弁を閉鎖して創傷において維持される真空圧力のおよそ30%~100%であり得るか、又は空気弁を閉鎖して創傷において維持される真空圧力のおよそ50%~100%、又は70%~100%、又は約80%であり得る。
【0165】
空気入口弁が閉鎖されると、創傷における真空圧力は、空気入口弁が開放されているときの創傷における真空圧力よりも約20~50mmHg高い場合があるか、又は空気入口弁が開放されているときの創傷における真空圧力と等しい場合がある。
【0166】
好ましい実施形態では、システムは、創傷における陰圧を維持し続けながら、空気入口弁を開放位置と閉鎖位置との間で循環させるように構成されている。空気入口弁が閉鎖されると、システムは、迅速に停滞した状態に復帰する。閉塞形成につながり得る停滞した状態のままになることを回避するために、コントローラは、創傷における陰圧を維持しながら空気入口弁を再び開放し、次いで、空気入口弁を再び閉鎖するように構成されている。空気弁の開閉は、継続する。創傷における陰圧を維持しながらシステム内に空気を導入することは、創傷からリザーバへの流体の移動を促進し、閉塞のリスクを低減する。いくつかの実施形態では、処置システムは、空気入口弁を開閉し続けて、ポンプの連続動作を達成して、流体流を維持し、長期間にわたって流れなしの又は停滞した状態のままになることを回避するように構成され得る。
【0167】
好ましい実施形態では、システムは、空気入口弁18が開放されると、空気入口弁18を通る処置システム内への空気の流量が、ポンプを通る流体(例えば、滲出液)及び空気の流量と等しくなり、システムが平衡状態を達成するように構成されている。平衡状態では、創傷処置デバイス3における真空圧力は、定常状態又は一定の真空圧力レベル(第1の真空圧力)に維持されるか、又はこの真空圧力レベルに到達する。システムは、短い持続時間、例えば数秒以下、例えば5秒以下の後に、一定の真空圧力レベルを達成し得る。いくつかの実施形態では、空気弁が開放されて平衡状態にあると、処置デバイス全体にわたる圧力降下は、実質的にゼロであり、システム真空圧力と周囲圧力との間の圧力降下の実質的に全てが、例えば空気入口フィルタによって提供された、入口絞り全体にわたって生じる。いくつかの実施形態では、空気入口弁が開放されて平衡状態にあると、処置デバイス全体にわたる圧力降下は、一定である。創傷に空気を導入することは、処置デバイスの上流側と処置デバイスの下流側との間の創傷部位全体にわたって圧力降下を生じさせ得、創傷4からリザーバ6への流体の移送を可能にして、それによって、凝固及びシステム閉塞のリスクを低減する。
【0168】
空気弁が閉鎖されると、ポンプは、創傷における陰圧を維持するように制御され、創傷からポンプへの流量は、患者の創傷応答に比例し、すなわち、流量は、創傷で産生される滲出液に比例する。空気入口弁が閉鎖されると、ポンプは、創傷処置デバイスにおける真空圧力を定常状態又は一定の真空圧力レベル(第2の真空圧力)に維持するように制御される。繰り返しになるが、システムは、非常に短い持続時間、例えば数秒以下、例えば5秒以下の後に、一定の真空圧力レベルを達成し得る。上述したように、第1の真空圧力は、第2の真空圧力以下である。
【0169】
空気入口弁18が開放された創傷処置デバイス3における定常状態真空圧力は、空気入口弁が閉鎖された創傷処置デバイスにおける定常状態真空圧力未満であり得る。しかしながら、空気入口弁が開放された創傷処置デバイス3における真空圧力は、効果的な陰圧処置に十分である。上述したように、第1の真空圧力は、第2の真空圧力の少なくとも実質的な部分であり、第2の真空圧力と等しくてもよい。したがって、ポンプを稼働させて処置陰圧を連続的に達成しながら空気入口弁を周期的に開閉することは、滲出液の除去を改善し、システム閉塞のリスクを低減するのみならず、効果的な創傷処置のために創傷における陰圧環境を維持する。
【0170】
創傷における陰圧を維持しながら空気入口弁の開閉を循環させることは、空気の導入によって創傷部位における低減された流体密度を達成する。多くの場合、例えば、患者が直立しているとき、又は立位にあるとき、創傷部位に高さの差が存在する。創傷における高さの差は、創傷の上部分のみに流れを伴って、創傷の最も下の場所に静止したままの流体をもたらし得る。創傷部位全体にわたって空気を導入することによって、創傷の最も下の部分に到達する空気は、それらの最も下の部分から流体を持ち上げ、創傷全体を通した流体移動を改善し得る。空気の導入は、本質的に、システムがほぼ空気ポンプのように動作することを可能にし、より低い密度の流体が「上り」移動するか、又は重力に逆らって移動することを可能にする。創傷のいくつかの部分において流れが低減されたか又はゼロである領域を回避するために流体流を提供するための好ましい実施形態の処置デバイスは、
図39~
図42を参照して上述されている。
【0171】
本発明者らは、創傷部位からリザーバへの「気泡流」又は「スラグ流」を達成する流量の空気をシステムに導入するために、創傷における陰圧を維持しながら、空気弁を開放位置と閉鎖位置との間で動作させる、好ましい動作モードを追加的に識別した。
図43は、液体状態及び気体状態の両方を含む流体における流れのタイプの範囲を例示している。空気入口弁を過剰に長く開放したままにすることに起因して多くの空気を導入することは、滲出液が導管の内壁に沿って流れ、かつ空気が導管の中央を通って流れる環状タイプの流れをもたらし得る。これは、滲出液を導管の壁に停滞させ得、このことは、流体の凝固につながり得る。凝固した流体の層は、経時的に増加し、閉塞につながり得る。空気入口弁の開閉を循環させることによって、液体滲出液は、空気弁が閉鎖されているときにシステムの流路内で均一な柱を再形成し得、空気を導入するための空気入口弁のその後の開放は、滲出液を通過する空気の気泡又はスラグをもたらす。環状タイプの流れが達成される前に、空気弁が再び閉鎖される。本発明者らは、このことが滲出液の改善された除去、及び閉塞の低減をもたらすと考える。
【0172】
ここで、
図46~
図50を参照して、NPT中に空気入口弁を開放と閉鎖との間で循環させる例示的な実装態様について記載する。
図46に例示されているように、コントローラは、空気入口弁が開放され、かつポンプが創傷における陰圧を達成するように動作する空気流モード又は状態と、空気入口弁が閉鎖され、かつポンプが創傷における陰圧を達成するように動作する非空気流モード又は状態と、を実装するように構成されている。例示された実施形態では、非空気流状態は、加圧状態、保持状態、及びタイムアウト状態を含む。
【0173】
図47を参照すると、空気流状態では、コントローラは、空気入口弁を開放して、空気が、処置デバイスの上流側でシステムに入ることを可能にし、ポンプを稼働させて、圧力閾値を達成する。例えば、処置デバイスの下流側で圧力センサPpによって感知された圧力が圧力閾値未満である場合、コントローラは、ポンプを稼働させる(ポンプをオンにする)。言い換えると、Ppにおける圧力が閾値圧力以上である場合、コントローラは、ポンプをオフにする。
【0174】
例示された実施形態では、処置デバイスの下流側の圧力閾値(Pp)は、空気入口弁が閉鎖されているときの処置デバイスの上流側の圧力閾値(Pv)の一部分である。例示された実施形態では、処置デバイスの下流側の圧力閾値(Pp)は、空気入口弁が閉鎖されているときの処置デバイスの上流側の圧力閾値(Pv)の80%である。例えば、空気入口弁が閉鎖されているとき、Pvにおける処置デバイスの上流側の圧力閾値は、100mmHgであり、空気入口弁が開放されている空気流状態では、Ppにおける圧力閾値は、80mmHgである。
【0175】
ポンプは、空気入口弁が開放された創傷処置デバイスの下流側で真空圧力を維持するために、例えばコントローラによるPID制御下で、繰り返しオンオフし得る。好ましくは、システムは、非常に短期間で、すなわち数秒以内、例えば5秒以以下で、Ppにおける処置デバイスの下流側で閾値圧力を達成するように構成されている。空気入口弁は、ある期間にわたって開放位置のままである。空気入口弁が開放されているとき、創傷における圧力は、一定に維持される。例示された実施形態では、空気入口弁は、14秒間開放位置のままである。14秒が経過すると、コントローラは、空気入口弁を閉鎖し、コントローラは、非空気流状態の加圧状態に移行する。
【0176】
上述した空気流状態のパラメータは、一例として提供されている。いくつかの実施形態では、システムは、処置デバイスの下流側に圧力センサPpを有していなくてもよい。ポンプは、ポンプが特定のシステム性能に対応する所定の速度で稼働して、空気入口弁が開放された創傷処置デバイスで既知の又は許容可能な圧力レベル(第1の真空圧力)を達成するように、好適な容量を備え得る。追加的又は代替的に、システムは、ポンプによって生成される真空圧力が過剰に高く増加しないことを確保するために、ポンプ入口においてシステムに空気を導入するための圧力解放弁を含んでもよい。しかしながら、好ましい実施形態では、システムは、圧力センサPpを含み、コントローラは、圧力が、上記の例では80mmHgである所定の圧力閾値を超えて増加しないようにポンプを動作させる。所望の処置計画に応じて、他の圧力閾値が可能である。好ましくは、コントローラは、ポンプの正確な制御、したがって、創傷における真空圧力の制御を達成するために、PID制御を実装する。コントローラは、ポンプモータの制御において、パルス幅変調(pulse-width modulation、PWM)法又はパルス期間変調法を使用し得る。
【0177】
図6、
図7、及び
図9~
図12、及び
図57に示されるように、例示的な実施形態では、圧力センサPvは、フィルタの周囲側にある。滅菌フィルタ19は、空気入口弁が開放されているときに、処置デバイスにおける真空圧力が周囲圧力に崩壊することを防止するために、既知の圧力降下を提示する。圧力センサPvがフィルタの周囲側にあると、センサPvは、本質的に、空気入口弁が開放されているときの周囲圧力を測定する。したがって、空気入口弁が開放されているとき、センサPvによって感知された圧力は、ポンプの制御に使用されず、ポンプは、Ppによって感知された圧力が圧力閾値を上回って増加するまで稼働する。いくつかの実施形態では、Ppにおける圧力は、弁が開放されているときに圧力閾値に到達しない。ポンプは、空気入口弁が開放されているときに連続的に稼働し得るが、これはあまり好ましくない。
【0178】
図48を参照すると、加圧状態では、空気入口弁が閉鎖され、コントローラは、ポンプを稼働させて圧力閾値を達成して、創傷処置デバイスにおける既知の又は許容可能な真空圧力(第2の真空圧力)を達成する。空気弁が閉鎖されると、創傷処置デバイスにおける真空圧力は、空気流モードで達成される真空圧力と比較して増加し得る。例示された実施形態では、処置デバイスの上流側の圧力センサPvによって感知された圧力が100mmHg未満であり、かつ処置デバイスの下流側の圧力センサPpによって感知された圧力が150mmHg未満である場合、コントローラは、ポンプを稼働させる。言い換えると、圧力Pvが100mmHg以上であるか、又は圧力Ppが150mmHg以上である場合、コントローラは、ポンプをオフにする。
【0179】
システムは、空気入口弁を閉鎖又は開放する非常に短い持続時間後、すなわち数秒以内、例えば5秒以下で、閾値圧力を達成するように構成され得る。空気弁が閉鎖されると、システムが閉鎖又は封止されるため、システムは、処置デバイス全体にわたるゼロの圧力降下を伴う、したがって、Pvにおける圧力=Ppにおける圧力である、停滞した流れ又は流れなしの状態に非常に迅速に到達する。例示された実施形態では、Pvにおける圧力閾値がPpにおける圧力閾値未満であるため、コントローラは、2つの圧力閾値のうちの低い方である上流圧力センサPvに基づいてポンプを制御する。しかしながら、システムを通した圧力降下は、組織残屑、及び/又はフィブリンなどの凝固材料が創傷処置デバイス及び/又はポンプ内に蓄積すると発生し得、その場合、センサPv及びPpによって測定される圧力差が、処置デバイスの上流側と下流側との間で発生し得る。処置デバイスの上流側で下限閾値に到達する前に、システム制約は、システム圧力を、処置デバイスの下流側で上限閾値に到達させ得、その場合、ポンプは、下流圧力センサPpに基づいて、Ppにおいて上限圧力閾値に制御される。
【0180】
圧力閾値に到達すると、コントローラは、ポンプをオフにし、保持状態に移行する。加圧状態は、ポンプが120秒以内に圧力閾値(例えば、Ppにおける)を達成しなかった場合にモータがオフにされ、かつコントローラがタイムアウト状態に移行するように、タイムアウトチェックを含む。これは、例えば、システム内の閉塞、又は漏れなどの他の故障モードに起因して行われ得る。
【0181】
図49を参照すると、保持状態では、コントローラは、空気入口弁を閉鎖位置に維持し、ポンプを動作させ続けて、例えばPv又はPpで所望の圧力閾値を達成するためのPID制御下で、ポンプをオン及びオフにすることによって、創傷処置デバイスにおける所望の又は許容可能な真空圧力を維持する。コントローラは、ある期間にわたって空気入口弁を閉じて、真空圧力を維持する。例示された実施形態では、空気入口弁は、20秒間閉鎖される。20秒が経過すると、コントローラは、空気流モードに戻り、空気入口弁の開閉の循環が繰り返される。空気入口弁の開閉は、上述した利益を達成するために、連続的に循環され得る。
【0182】
上記の例示的な実装態様は、14秒の空気入口弁開放時間及び20秒の空気入口弁閉鎖時間を提供する。これらの期間は一例であり、代替的な期間が実装されてもよい。しかしながら、空気入口弁が、全開閉サイクルの実質的な部分にわたって開放されることに留意されたい。この実施形態では、全開閉サイクル又は「サイクルピッチ」は、34秒であり、空気入口弁は、34秒の期間のうちの14秒間、又は全サイクルの約40%にわたって開放される。いくつかの実施形態では、空気入口弁は、サイクルピッチの少なくとも10%、又はサイクルピッチの少なくとも20%、又はサイクルピッチの少なくとも30%、又はサイクルピッチの少なくとも40%にわたって開放される。例えば、空気入口弁開放期間は、閉鎖期間とほぼ同じであってもよい(サイクルピッチの50%)。いくつかの実施形態では、空気入口弁は、全サイクルの50%超にわたって開放され得る。
【0183】
上記の例示的なシステム構成は、34秒のサイクル時間を提供する。しかしながら、より長い又はより短いサイクル時間が可能である。上述したように、創傷における陰圧を維持しながら創傷部位からリザーバへのスラグ流又は気泡流を達成するのに必要とされる空気入口弁の開閉が理想的である。最大弁サイクル時間は、1分又は数分であり得る。しかしながら、空気入口弁は、十分な空気がシステムに導入されることを確保するために、上記の圧力で少なくともおよそ10秒間開放されるべきである。空気入口弁は、各空気入口弁開放/閉鎖サイクルにおいて、10~40秒間開放され得る。
【0184】
空気入口弁が開閉される期間は、空気入口流量絞り、ポンプ容量、処置デバイス構成、並びに供給及び滲出液導管の長さ及び直径に依存する。上述のシステム構成要素及び制御パラメータは、例として提供されている。しかしながら、本発明者らは、システムパラメータが、創傷における陰圧を創傷の陰圧処置で有用なレベルに維持しながら、空気入口弁がかなりの持続時間にわたって開放されることを可能にするように選択されるべきであると考える。
【0185】
図50を参照すると、例示的な実施形態は、システムが意図された陰圧レベルに到達することができない状況を安全に管理するためのタイムアウト状態を含む。
図48を参照して上述したように、所定の期間(例えば、2分)後に空気入口弁が閉鎖されたときにシステムが加圧することができない場合、コントローラは、タイムアウト状態に移行する。コントローラは、ポンプ動作を30秒間休止し、タイムアウトカウンタをインクリメントする。タイムアウトカウンタが所定のカウント閾値未満である場合、コントローラは、次いで、加圧状態に戻り、創傷処置部位を加圧しようとする。タイムアウトカウンタ閾値に到達した場合、コントローラは、空気流状態に戻る。上述したように、空気を導入することは、閉塞を低減し得る。システムは、閉塞に起因して加圧に失敗する場合がある。空気流状態に戻ることは、加圧状態に戻る前に閉塞を除去し得る。
【0186】
いくつかの実施形態では、処置システムは、
図46~
図50に提示されていない他の制御パラメータを実装し得る。例えば、いくつかの実施形態では、システムは、処置デバイスの上流側に圧力センサPvを備え、処置デバイスの下流側に圧力センサPpを備える。コントローラは、2つの圧力センサ間で測定された圧力差に基づいて、ポンプ及び/又は空気入口弁を動作させ得る。例えば、コントローラは、圧力差が上限閾値を上回って増加したとき、又は所定の期間にわたって上限閾値を上回ったときに、空気入口弁を開放し得る。システム圧力差は、特に空気入口弁が閉鎖されたときに、システム内の閉塞を示し得る。空気弁が閉鎖され、かつシステムが停滞した状態にあると、処置デバイスの上流側及び下流側の圧力は、実質的に等しくなるはずである。コントローラは、圧力差が下限閾値を下回って減少したとき、又は所定の期間にわたって下限閾値を下回ったとき、空気弁を閉鎖し得る。コントローラは、圧力差が上限又は最大閾値を上回って増加したとき、ポンプ及び/又は空気流状態を停止し得る。
【0187】
図8~
図12を参照して上述したように、いくつかの実施形態では、システムは、処置流体を創傷に導入するように構成されている。
図9及び
図10のシステムでは、コントローラは、空気入口弁18の動作と同様の方式で処置流体を導入するために処置流体入口制御弁22を動作させるように構成され得る。処置流体リザーバ26は、好ましくは、周囲圧力である。
【0188】
コントローラは、ポンプを動作させて、創傷処置デバイスにおける陰圧を維持しながら、流体入口弁22を開放して、処置流体を処置デバイス内に引き込む。好ましい実施形態では、システムは、流体入口弁22が開放されると、システムは、ポンプを通る流体(例えば、滲出液及び処置流体)の流量に等しい処置流体リザーバ26から処置システム内への処置流体の流量で、平衡状態を達成するように構成されている。平衡状態では、創傷処置デバイスにおける真空圧力は、定常状態又は一定の真空圧力レベル(すなわち、第3の真空圧力)に維持されるか、又はこの真空圧力レベルに到達する。システムは、非常に短い持続時間、例えば数秒以下、例えば5秒以下の後に、一定の真空圧力レベルを達成し得る。好ましい実施形態では、流体入口弁が開放されて平衡状態にあると、処置デバイス全体にわたる圧力は、実質的にゼロである。
【0189】
流体入口弁が開放されているとき、コントローラは、ポンプを動作させて、空気入口弁が開放されているときに処置システムが達成するのと同じ処置デバイスにおける圧力を達成し得る。
【0190】
流体入口弁が閉鎖されると、ポンプは、創傷における陰圧を維持するように制御される。流体入口弁が閉鎖されると、ポンプは、創傷処置デバイスにおける真空圧力を定常状態又は一定の真空圧力レベル(第4の真空圧力)に維持するように制御され得る。繰り返しになるが、システムは、非常に短い持続時間、例えば数秒以下、例えば5秒以下の後に、一定の真空圧力レベルを達成し得る。流体入口弁が閉鎖されているとき、コントローラは、ポンプを動作させて、空気入口弁が閉鎖されているときに処置システムが達成するのと同じ処置デバイスにおける圧力を達成し得る。
【0191】
流体入口弁が開放された創傷処置デバイスにおける定常状態の真空圧力は、流体入口弁が閉鎖された創傷処置デバイスにおける定常状態の真空圧力未満であり得る。しかしながら、流体入口弁が開放された創傷処置デバイスにおける真空圧力は、効果的な陰圧処置に十分である。処置流体は、陽圧下では導入されない。したがって、ポンプを稼働させて処置陰圧を連続的に達成しながら流体入口弁を開閉することは、効果的な処置のために創傷における陰圧環境を維持するのみならず、処置を改善するための処置流体の導入、滲出液の除去を提供し、システム閉塞のリスクを低減する。
【0192】
システムに投与される処置流体の量は、流体入口弁が開放されている時間に基づいて制御され得る。処置流体リザーバ26と創傷処置デバイスの上流に位置付けられたPv圧力センサとの間に流量絞り(制限オリフィスなど)が配置され得る。この絞り全体にわたる結果として生じる圧力降下は、流体の速度が、センサPvによって測定される結果として生じる圧力降下から決定されること、及び投与される処置流体の総量が計算されることを可能にし得る。代替的に、処置流体入口弁が、差圧閾値が達成されるまで、又はある期間にわたって達成されるまで開放されてもよく、又は弁が、所定の期間にわたって開放されてもよい。処置流体入口弁は、好ましくは、空気入口弁が閉鎖されたときに開放される。
【0193】
図11及び
図12の実施形態を参照すると、システムは、コントローラによって制御される処置流体入口弁を有していない。創傷における真空圧が周囲の処置流体をシステム内に引き込むため、システムは、処置陰圧の間に処置流体を投与する。空気弁が開放されているとき、空気は、処置デバイスに流れ、システム内への空気の流れは、処置流体の密度と比較して空気のはるかに低い密度に起因して、処置流体リザーバからの流体の流れを停止する傾向がある。空気入口弁が閉鎖されているとき、創傷における陰圧が、処置流体リザーバからシステム内に流体を引き込み、創傷内に溢れる。ポンプが創傷における真空圧力を維持するため、処置流体は、処置デバイス及び創傷を通過し、ポンプを通ってリザーバに至る。空気弁を再開放すると、処置流体の流れが再び停止し、圧力差が、処置流体及び滲出液を含む流体を創傷から移動させる。したがって、空気入口弁を循環させることはまた、周期的様式で、創傷への処置流体の追加及び創傷からの処置流体の除去を達成し得る。追加される処置流体の量は、どれだけの時間、又はどれだけの量の空気が導入されたかに依存する。システムに導入される処置流体の量は、システムに導入される空気の量に比例し得る。
【0194】
ここで、
図51~
図54を参照して、
図9及び
図10のシステムの例示的な実装態様について記載する。
図51に例示されているように、コントローラは、上述した空気流状態に加えて、流体供給モード又は状態を実装するように構成されている。コントローラは、非供給/非空気流モードを実装し、このモードでは、空気入口弁及び処置流体弁が閉鎖され、ポンプが動作して、創傷で陰圧を達成する。例示された実施形態では、非空気流状態は、加圧状態、保持状態、及びタイムアウト状態を含む。
【0195】
図51の空気流状態及び加圧状態は、
図47及び
図48を参照して上述したとおりである。
図47及び
図48の空気流状態及び加圧状態が稼働されると、コントローラは、
図52の流体供給保持状態を実装する。
【0196】
図52を参照すると、保持状態では、コントローラは、空気入口弁を閉鎖位置に維持し、ポンプを動作させ続けて、例えば、所望の圧力閾値(Pv又はPpで)を達成するためのPID制御下で、ポンプをオン及びオフにすることによって、創傷処置デバイスにおける所望の又は許容可能な真空圧力を維持する。コントローラは、ある期間、例えば20秒間にわたって、空気入口弁を閉じて真空圧力を維持する。20秒が経過すると、コントローラは、ポンプをオフにし、流体供給状態が必要とされるかどうかを確認するためにチェックする。流体供給状態が必要とされない場合、コントローラは、空気流モードに戻り、
図46を参照して上述したように、空気入口弁の開閉のサイクルが繰り返される。コントローラは、処置流体供給が所定の期間、例えば8時間にわたって、提供されなかったか、又はユーザが設定した流体供給サイクル時間がトリガされた場合、又はユーザが、例えば真空ユニットのユーザインターフェース上のボタンを押すことによって、流体供給を手動で要求した場合、流体供給状態を実装する。
【0197】
流体供給状態を作動する間の期間は、空気入口弁開閉サイクル期間よりもはるかに長い。例えば、空気入口弁サイクル期間は、1分未満であってもよく、流体供給状態の間の期間は、1時間超であってもよい。
【0198】
図53を参照すると、流体供給状態では、コントローラは、流体弁を開放して、処置流体が、処置流体リザーバから処置デバイスの上流側に流れることを可能にし、ポンプを稼働させて、圧力閾値を達成する。処置デバイスの上流側の圧力センサPvによって感知される圧力が100mmHg未満であり、処置デバイスの下流側の圧力センサPpによって感知される圧力が150mmHg未満である場合、コントローラは、ポンプを稼働させる。処置流体弁が開放されているときのポンプの制御は、上述したように、空気入口弁が開放されているときのポンプ制御と同じ又は同様であり得る。例示された例では、コントローラは、流体弁を10秒間開放して維持するが、他の期間が可能である。コントローラは、流体弁を閉鎖し、流体接触滞留時間を可能にして、創傷に導入された流体が、設定された期間にわたって、創傷部位に溢れるか、又は留まることを可能にし得る。コントローラは、ユーザ入力が0分~10分又は他の期間の滞留時間を設定することを可能にし得る。創傷内における流体接触を可能にするための遅延に続いて、コントローラは、創傷から処置流体を洗い流すための洗い流しサイクルに移行する。例示された実施形態では、コントローラは、洗い流しサイクルを3回繰り返すが、コントローラは、洗い流しサイクルを1回、2回、又は3回超実施してもよい。例示された実施形態では、コントローラは、加圧状態に戻る前に流体供給状態を3回繰り返すが、コントローラは、流体供給状態を1回、2回、又は3回超実施してもよい。
【0199】
図54を参照すると、洗い流しサイクルでは、コントローラは、
図53に示されるように、必要とされる場合に、流体供給状態を継続して、流体供給状態を繰り返して、流体弁を再び開放する前に、
図48及び
図49を参照して上述したように、加圧状態、保持状態、及び空気流状態をステップスルーする。流体供給状態の最後に、コントローラは、
図48の加圧状態に戻る。システムは、上述したように、加圧し、圧力を保持し、空気入口弁の開閉を循環することを継続する。
【0200】
例示された実施形態では、流体入口弁は、流体入口弁の各開閉サイクルで、10秒間開放され、102秒間閉鎖される。閉鎖時間は、滞留時間及び組み合わせられた洗い流しサイクル実行時間に依存する。例示された実施形態では、流体供給状態は、3回の洗い流しサイクルを含む。各洗い流しサイクルが34秒を必要とすると、ゼロの例示的な滞留時間に関して、例示された例では、流体供給弁は、合計102秒間閉鎖される。例示された例では、流体入口弁は、サイクルピッチの約10%にわたって開放される。流体入口弁は、サイクルピッチの少なくとも5%、又はサイクルピッチの少なくとも10%、又はサイクルピッチの少なくとも20%にわたって開放され得る。
【0201】
流体供給及び洗い流し状態は、陰圧を維持しながら創傷に処置流体を提供し、空気の導入を使用して創傷から処置流体を洗い流して、流体及び滲出液を創傷から除去する。上述したように、いくつかの処置流体の洗い流しが提供され得る。この手順は、創傷内の停滞した流体を低減し、それによって、システム内の閉塞を低減し、陰圧が創傷部位に継続的に適用されることを確保する。
【0202】
ここで、
図58~
図63を参照して、
図56及び
図57のシステム400の例示的な実装態様について記載する。システム400は、内傷処置部位4内に位置付けられた植え込まれた創傷処置デバイス3への、インターフェース滅菌マニホールドコネクタ20及び接続された導管5を介した第1の接続と、閉じた外科的切開部4aの上の位置の外傷処置デバイス30への第2の接続と、を備える。好適な外傷処置デバイス30は、創傷4a全体にわたって局所的に陰圧を適用するように構成された、当該技術分野で周知の外傷処置デバイスを含み得る。この局所的に適用される陰圧は、一次切開に沿った固定、例えば、縫合糸、ステープル、及び/又はストリップなどの様々な機械的手段によって提供される固定を、「オフロード」するように作用し得る。外傷処置デバイス30は、導管32を介してドレッシングポート31によって真空ユニット2に流体結合されている。
【0203】
システム400の動作は、ユーザがシステムを選択的に動作させることを可能にするユーザインターフェース14を介する。ユーザインターフェースは、システム設定を伝達するために、視覚(例えば、LED)及び/又は音声指示をユーザに提供し得る。
図56に例示されているように、システム400において、ユーザインターフェース14は、接続された外傷処置デバイス30への陰圧の送達を開始又は停止し、ユニット電源をオン又はオフにし、可聴アラームを消音し、かつ/又はデバイスを遠隔無線受信デバイスに接続して、システムの動作又はステータスに関するデータを送信するためのいくつかのボタン23を含む。
【0204】
コントローラ17は、空気弁18用のアクチュエータ、ドレッシング制御弁29用のアクチュエータ、ポンプ15のモータ、及び圧力センサPv、Pp、Pdと電気通信するシステムロジック及び制御アルゴリズムを提供する。コントローラ17は、圧力センサPv、Pp、Pdでの読み取り値に基づいて、空気入口弁18、ドレッシング制御弁29、及びポンプアセンブリ15を制御するように構成されている。コントローラはまた、電力管理及びセンサ回路と通信して、電源16を管理するか、又はバッテリレベル警告アラームを提供してもよい。
【0205】
コントローラ17は、ポンプアセンブリ15を動作させて、空気入口弁18を開閉しながら、植え込まれた創傷処置デバイス3を介して内傷4における陰圧を維持するように構成されている。空気入口弁18を開放して、創傷部位に空気を導入する一方、本明細書内の他の箇所に記載されているように、ポンプアセンブリは、稼働し続けて、創傷における陰圧を維持する。追加的に、コントローラ17は、ドレッシング制御弁29を開放して、ポンプアセンブリ15によって生成される陰圧を、外傷4aの上に位置付けられた流体接続された外傷処置デバイス30に送るように構成されている。
【0206】
他のシステム実施形態に関連して本明細書に記載されているように、陰圧処置は、創傷及び/又はシステム内の他の箇所における血液、フィブリンなどの凝固に起因して、システム閉塞を悪化させ得る停滞システムをもたらし得る。閉塞は、最終的に、創傷に陰圧を提供することの失敗をもたらし、陰圧処置の有効性を低減し得る。
【0207】
図58に例示されているように、システム400のコントローラ17は、主埋め込み創傷処置デバイス3の第1の制御システムと、副外傷処置デバイス30の副制御システムと、を備える。
【0208】
システム400の例示的な実施形態では、コントローラ17は、システムが最初にオンにされたときに、ポンプアセンブリ15を動作させて、加圧状態で弁圧力センサPvにおいて100mmHgの真空圧力レベルを達成するように構成されている。その真空圧力レベルは、Pv圧力センサにおける「目標1」圧力レベルとも称される(
図59参照)。システム400が目標真空圧力に到達すると、システムは、
図60に例示された保持状態に遷移する。保持状態では、ユーザによって指定された動作モードに応じて、外傷処置デバイス30に陰圧が適用され続け得る。
【0209】
図63を参照すると、ドレッシング加圧状態は、ドレッシング弁29を動作させて、ドレッシング制御弁29とドレッシング接続ポート31との間のドレッシング圧力センサ(Pd)によって測定される70mmHg~95mmHgの真空圧力が外傷部位4aに供給されることを確保するように構成されている。この状態は、主創傷処置デバイス制御が保持状態にある間、同時に動作し続ける。
【0210】
図60に例示されているように、保持状態は、内傷処置デバイス3を主目標圧力に維持するように構成されており、この例では、Pvで測定されるときに100mmHgの目標であり、150mmHgの最大圧力がポンプ圧力センサPpに供給される。システム400は、所定の期間、この例では120秒の持続時間にわたって、保持状態に保持される。所定の期間の後、システムは、Pv真空圧力レベルが60mmHgを下回らない限り、
図61に例示された空気流状態に進む。
【0211】
図61に例示された空気流は、
図47に例示されたプロセスと同様である。この例では、コントローラは、空気入口弁が開放されているときに、ポンプ圧力Ppが80mmHgの真空圧力レベルを目標とするように構成されている。他の上述の実施形態に関して、空気弁は、14秒間開放されたままであり、その後、システムが加圧状態に遷移すると、空気入口弁が閉鎖されるように構成されている。また、他の実施形態に関連して記載されているように、空気入口弁は、各空気入口弁開放/閉鎖サイクルにおいて10~40秒間開放されてもよく、又は開放時間の持続時間が別様に変動するか、又はデバイスに接続された導管の等価長を検出するように構成されてもよい。
【0212】
この実施形態では、コントローラは、創傷処置部位4及び植え込まれた処置デバイス3で生じる変化に応答してシステムに生じ得る予想される変化に適応するように構成されている。主処置デバイスが加圧状態、保持状態、及び空気流状態にわたって繰り返されるサイクルに供されるとき、Pv圧力センサとPp圧力センサとの間の圧力差が、組織の内部成長、創傷残屑の蓄積、及び多くの他の要因の結果として、処置部位4及び/又は植え込まれた創傷処置デバイス3の変化に応答して生じ得ることが発見されている。
【0213】
これらの動的変化に応答して、システムは、処置デバイス3の変化を補償するように、圧力部位の間にPv圧力センサに適用される目標圧力レベルを調節する。例えば、Pp圧力センサが150mmHgを上回った結果としてモータが停止した場合、システムは、保持状態に進む前に、目標真空圧力レベルを、Pv圧力センサに適用されている目標1(100mmHg)圧力から90mmHgの目標2圧力まで10mmHgだけ降下させる。植え込まれた処置デバイス3全体にわたる圧力降下が再び増加する場合、システムは、Pv圧力レベルが60mmHg(目標5)を下回る圧力に到達するまで、目標レベルを1整数だけ降下させ続ける。Pv圧力センサで測定された圧力レベルがこのレベルに到達すると、システムは、保持状態から空気流状態への遷移を停止し、システムを連続真空圧力レベルシステムに復帰させる。
【0214】
保持状態中に60mmHg(目標5)を下回って降下した後、Pvにおける真空圧力レベルが90mmHg(目標2)に戻った場合、システムは、空気流状態に進むことを再開し、保持、空気流、及び加圧の間の循環が再開する。
【0215】
図62内に記載されたタイムアウト状態は、状態が加圧状態又は空気流状態のいずれかに向けて進められる前に、システムが120秒間休止することを除いて、
図50のタイムアウト状態とほぼ同様である。
【0216】
外傷処置デバイスのシステム特有の動作
再び
図9~
図12及び
図39を参照すると、真空ユニット2は、それぞれの導管を介して治療流体源26及び創傷滲出液リザーバ6に、かつ二重管腔導管5を介して処置デバイス3に接続されている。いくつかの実施形態では、創傷処置デバイス3は、外傷ドレッシング40(
図39)であってもよく、創傷処置システム200、300は、(
図2、
図3、
図6、及び
図7の実施形態100についても記載したように)治療流体供給部6を含まなくてもよい。
【0217】
そのようなシステムは、空気入口弁18を周期的に開放して、濾過された空気を外傷処置デバイス内に導入し、治療流体供給の不在下で第1の真空圧力レベルを達成するように構成され得る。真空ユニット2のユーザインターフェース14は、任意選択で、ボタン及び/又は他の好適なユーザ入力などの調節手段と、グラフィカルスケール及び/又はLEDインジケータライトなどの対応するインジケータと、を提供するように構成されてもよく、調節手段は、ユーザが、任意の所与の創傷及び対応するドレッシングサイズに対して産生される滲出液のレベルを補償するように、空気入口弁開放時間を調節することを可能にする。
【0218】
産生される滲出液、したがって、空気入口弁18の開放時間は、創傷のサイズ、タイプ、又は治癒の進行に応じて変動し得る。例えば、少量の滲出液で創傷領域を覆うために10cm×10cmのドレッシングを必要とする小さな創傷は、日1でおよそ30mLの創傷滲出液を産生すると予想され得る。
【0219】
1つの例示的な実施形態のシステムでは、1/16インチの内径(φ1.6mmID)を有する供給導管12と、3/16インチの内径(φ4.8mm)を有する除去導管11と、を備えた100cmの長さの二重管腔導管5は、システムによって占有される総自由体積に対して20cm3の体積の寄与を与える。総自由体積は、内部導管によって占有される体積及び創傷処置デバイス40によって占有される体積として定義される。本出願人の出願である米国特許出願第63/280787号に開示されているような薄型非接着性ドレッシングシステムが、5mmの総ドレッシング高さで創傷に適用される場合、処置デバイス40のポーティング層41によって占有される体積は、およそ50ミリリットル(50mL)であり、この例では70mLの総システム体積をもたらす。
【0220】
一実施形態では、真空ユニット2は、ポンプアセンブリ15に3.3Vを供給するように構成されている。これにより、178mL/分の自由流量の空気がもたらされ、空気流状態を通して単一サイクル中にシステムから流体を変位させるために、上記の例に対して計算される、必要とされる70mL又は70cm3の体積の濾過された空気を供給するために、少なくとも23.6秒の空気入口弁サイクル時間が必要とされる。
【0221】
上述した10cm×10cmの創傷を処置するためにポーティング層に連続気泡網状ポリウレタン発泡体構成要素(Granufoam(登録商標)など)を利用する代替的な実施形態のドレッシングでは、処置デバイスのポーティング層によって占有される体積は、同じサイズの創傷(78.7cm3の発泡体+20cm3の導管から構成される)に対しておよそ98.7cm3となる。Granufoam(商標)PU発泡体材料は、創傷処置空間が-150mmHgの真空圧力に曝されると、100mm×104mm×25mm~82mm×96mm×10mmに収縮することが分かっている。これには、およそ33.3秒(約10秒よりも長い)の弁開放時間が必要となる。
【0222】
更なる例では、創傷を覆うために25cm×25cmのドレッシングを必要とし、かつ大量の滲出液を伴う、より大きい創傷は、日1におよそ1,750mLを産生すると予想され得る。上述した実施形態のシステム及び創傷処置装置の同じ真空ユニット2が創傷に適用される場合、332.5mLの総システム体積は、空気流状態を通した単一サイクル中に流体を変位させるために必要とされる332cm3(332mL)の体積の濾過された空気を供給するために少なくとも112秒の空気入口弁サイクル時間を必要とする。
【0223】
この例では、創傷における高レベルの滲出液を管理するために、所与の日における空気流サイクルの頻度を増加させるオプションをユーザに提供するユーザインターフェース14を提供することも有利であり得、この例の場合、産生される1,750ミリリットルの滲出液に対処するために、24時間の期間内に少なくとも6サイクルを必要とする。
【0224】
主ドレッシングが外傷ドレッシングであるいくつかのシステムでは、真空ユニット2は、
図8~
図12の実施形態200及び300について前述したように、治療流体源26に更に接続されてもよい。そのような実施形態では、ユーザインターフェース14は、ユーザが、創傷処置システム40の総システム体積を補償するように、流体の分注体積を調節することを可能にする入力手段を提供し得る。
【0225】
そのような一実施形態では、真空ユニット2のユーザインターフェース14は、創傷で産生される滲出液のレベルの調節とは別個の調節でドレッシングの体積を設定するための手段を提供することができる。ユーザインターフェース14は、例えば、30mmHgなどの設定された真空圧力レベルでシステムを通して流体を引き込むためのボタンを押して保持することによって、ユーザがシステムの自由体積を設定することを可能にする、ボタンを含み得る。システム内に流体を導入及び保持するための設定された真空圧力レベルは、10mmHg~200mmHgのいずれかに設定され得るが、最も好ましくは、10mmHg~125mmHgである。
【0226】
真空ユニット2のユーザインターフェース14は、任意の注入された流体が処置デバイス40内に保持されるための滞留時間を調節するための手段を追加的に提供してもよい。保持時間は、任意の期間として指定されてもよいが、最も好ましくは、1分~30分の持続時間である。ポンプユニット2は、第1の圧力レベル及び第2の圧力レベルで費やされる持続時間を含めて、真空圧力レベルを第1の流体点滴注入圧力レベルから第2の圧力レベルまで振動させる手段を追加的に含んでもよい。
【0227】
真空ユニットのユーザインターフェース14を介して調節する有用さを供給し得る他の変数は、振動圧力モードと連続供給真空圧力モードとの間で切り替わるポンプの動作モード、又は各真空圧力レベルで経過した時間を調節することを含む。
【0228】
調節に有用さを提供し得る他の変数は、当業者に知られている。
【0229】
例示的な実施形態
本発明による、創傷から流体を除去するための処置システムの有効性を、ここで記載する例示的なシステム構成によって例示する。
【0230】
2つのチャンバを備える(
図13~
図16を参照して)上述したポンプを1L容器に接続した。ポンプを0.25アンペアの最大電流で12VのDCモータによって駆動して、容器に真空圧力を適用し、容器内の真空圧力を測定して、ポンプの流体及び圧力関連特性を得た。
【0231】
この試験からのポンプ特性を、以下の表1にまとめる。
【0232】
【0233】
システム構成要素:
・58mm2濾過面積を有する0.22ミクロンフィルタ(Steriltech部品番号PT021350)
・空気入口弁-ミニソレノイド弁(KOGE部品番号KSV2WM-5A)-定格電圧=4.5VDC、最大電流225mA
・創傷処置デバイス有効内径=φ3.7mm
・創傷処置デバイス有効チューブ長=470mm
・創傷処置デバイス内容積=5.1mL
・創傷処置デバイスチューブ穿孔=有効チューブ長に沿って配置された穿孔の2つの平行な列、隣接する穿孔間1.5mm、及び2つの平行な列間2mm、各穿孔は、直径0.5mm±0.2mm
・除去導管有効内径=φ3.4mm
・除去導管長さ=1000mm
・除去管路内容積=9.1mL
・空気供給管路内径φ1.45mm
・空気供給導管長=1000mm
・空気供給導管内容積=1.7mL
・総システム体積(処置デバイス体積、除去導管体積、及び供給導管体積)=16mL。
・ポンプと滲出液収集リザーバとの間の導管ID=φ3.2mm
・ポンプと滲出液収集リザーバとの間の導管の長さ=300mm
・リザーバ通気孔=8つ 0.45ミクロン、各々が約8mm径の通路を有する。
【0234】
上記のシステム構成要素を、
図6及び
図7のシステム構成に従ってセットアップし、創傷処置デバイスを、創傷処置空間を表すための20mlの流体を収容する可撓性バッグ内に提供した。システムは、空気入口弁の開閉を3サイクル実行した。異なる空気入口弁開閉サイクル時間で3サイクルを繰り返した。
【0235】
空気入口弁が開放された空気流状態で、処置デバイスにおいて、80~90mmHgのポンプ圧力で、50mm~90mmHgの圧力を維持した。空気入口弁が閉鎖された保持状態で、処置デバイス及びポンプにおいて100mmHgの圧力を維持した。
【0236】
容器に残る流体の量を、空気入口弁の開閉の3サイクル後に測定した。次いで、空気入口弁を開閉で循環することを継続しながら、システムを15分間稼働させておき、容器に残る流体を再び測定した。試験の結果を以下の表2に提示する。
【0237】
【0238】
試験によって例示されたシステムの重要な利益は、空気入口弁の開閉を循環させ、かつサイクル時間のかなりの部分にわたって空気入口弁を開放することによる、システムからの実質的に全ての流体の効果的な除去速度である。この試験では、流体の効果的な除去は、空気入口弁がサイクル期間のかなりの部分(58%)にわたって開放されたときに最大であった。更なる試験は、空気入口弁開放時間の更なる増加が、流体を除去するためのシステムの有効性の更なる改善をもたらさないことを示した。
【0239】
創傷から流体を除去するシステムの有効性における重要な要因は、システムの体積に対する各空気入口弁サイクルにおいてシステムに導入される空気の体積の比率である一方、空気入口弁の開閉を循環し続け、創傷における真空圧力を効果的な陰圧処置レベルに維持すると仮定される。各弁サイクルにおいてシステムを通して送達される空気の体積は、処置システムの体積の少なくとも実質的な部分であるべきである。処置システムの体積は、供給導管、処置デバイス、及び戻り導管の組み合わされた内容積、例えば、入口絞り(入口フィルタ)からポンプ入口までのシステムの体積として定義される。
【0240】
入口弁サイクル中にシステムに加えられる空気の体積を決定するために、上述したものと同じ試験セットアップを使用したが、12.5mm
2の入口フィルタ面積と、供給導管、処置デバイス、及び戻り導管を表す4.8mm直径1.5m長のチューブとを有し、27mLのシステム体積を提示した。システムの性能は、
図55に提示されたチャートによって例示されている。
【0241】
図55を参照すると、空気入口弁が閉鎖され、保持状態中の空気の体積流量は、0L/分である。空気入口弁が開放されてシステムを空気流状態に遷移させると、上流圧力センサ(Pv)における圧力は、およそ0mmHg又は周囲圧力レベルに降下する。ポンプは、空気流状態の間、下流圧力センサ(Pp)において80mmHgを維持するように制御される。空気流状態は、14秒間動作する。空気流状態に続いて、空気入口弁が閉鎖され、システムは、加圧状態に遷移し、加圧状態では、ポンプがPv圧力センサにおいて100mmHgを達成するように制御されて、空気の体積流量が0LPMに急速に減少する。サイクルは、更なるホールド状態を継続する。
【0242】
空気流状態の間、空気体積流量は、およそ3.7秒の空気入口弁開放の後に、およそ0.111LPM、すなわち111mL/分の平衡を達成する。空気流状態の合計14秒の持続時間の全体を通して、システムは、106mL/分の平均空気流量を達成し、これは、25mLの空気がシステムを通して送達されることに等しい。システムは、27mLの体積を有する。したがって、単一の14秒の空気流サイクルにおいてシステムを通して送達される空気の体積は、処置システムの内容積のおよそ75%である。14秒~16秒への空気入口弁開放時間の増加は、処置システムを通しておよそ28mLの空気を送達することになり、これは、処置システムの内容積のおよそ100%に等しいことになる。
【0243】
16mLの全内容積を含む上記の例示的なセットアップに関して、同じシステム動作に対しては、14秒の弁開放持続時間中に同様の空気流量が達成されることになり、およそ25mLの空気の総体積がシステムを通して送達される結果になると予想される。この空気の体積は、処置システムの体積のおよそ150%に等しい。システムに送達される空気の体積は、全システム体積の少なくとも50%、又は全システム体積の少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%であるべきであることが示唆される。しかしながら、試験は、上記の表2に提示された結果によって示されるように、処置部位に含まれる流体の約99%を除去するために、複数の空気流サイクルが必要とされることを示す。入口弁は、開閉を循環されなければならないことに留意されたい。空気入口弁が連続的に開放されたままであるか、又は過剰な長さの時間にわたって開放される場合、環状タイプの流れが結果として生じる可能性がある。更に、空気入口弁を連続的に開放すると、ポンプが連続的に稼働する結果となる可能性があり、このことは、可搬型システムにとって望ましくない。1つの弁サイクルにおいてシステムを通して送達される空気の最大体積は、全システム体積の200%未満であるか、又は全システム体積の300%未満であるか、又は全システム体積の400%未満であることが示唆される。
【0244】
模擬閉塞試験
図13~
図16を参照して以下に記載するポンプと比較した、いくつかの中型から大型の市販のダイヤフラムポンプの閉塞特性を比較するための一連の実験を行った。試験ポンプデバイスは、φ6.8mmの外径及びφ3mmの内径を有する入口56と、φ4.6mmの外径及びφ3mmの内径を有するポンプ出口57と、を備えていた。ポンプの入口チャネル61を、出口チャネル62及びポンプ出口57に流体接続された2つの出口弁55を備える出口流路を有する2つの別個のチャンバ53に流体接続された2つの入口弁54に接続した。2つの入口弁54及び2つの出口弁55は、5mmの全高と、弁の入口開口部から最も遠い距離に位置付けられた弁の頂点で閉じるテーパ状の弁につながるφ2.8mmの内部開口部と、を有する、液体シリコーンゴム(LSR)から成形されたダックビル弁を備えていた。弁の全体的なアセンブリは、
図14に示される断面図に相当する。
【0245】
以下の表は、試験された3つの市販のダイヤフラムポンプの性能特性の概要を示す。
【0246】
【0247】
試験媒体を、30グラムのチアシードを300グラムの水(300mL)に合わせて撹拌し、少なくとも12時間放置して増粘させ、チアシードを浸漬及び軟化させることによって調製した。
【0248】
チアシードは、典型的には、乾燥時に平均して2.15mm×1.40mm×0.83mmの寸法を有する小さな楕円形の種子であり2、かなりの量の液体を吸収して多糖ベースのゲルを生成し3、このゲルは、システムを通過する際にフィブリン又はフィブリノーゲン閉塞との類似性を示す粘着性のゼラチン様物質を形成するように見える。
【0249】
各試験について、好適なチューブは、各ダイヤフラムポンプの入口を、チアシードゲルで満たされたガラスビーカーに接続し、好適な出口チューブは、チアシードゲルを同じガラスビーカーに戻した。チアシードゲルを数分間、出口から通過するチアシードの不在が閉塞として認められたポンプを通して吸引した。3つの市販のダイヤフラムポンプデバイスの各々は、以下の表に示されるように、1分未満の試験で閉塞した。
【0250】
【0251】
本明細書に記載された試験ポンプは、試験中に数分間、チアシードゲルを試験ビーカに出力し続け、合格結果を示した。
【0252】
動物実験
一連の動物研究を実施して、片側性ヒツジ外部腹部斜位死腔漿液腫モデル内の漿液腫予防の臨床転帰に対する様々な弁サイクルタイミングの効果を比較した。
【0253】
動物実験では、
図56に例示されたものと形状が類似した植え込まれた創傷処置デバイス3を利用した。植え込まれた創傷処置デバイス3は、18mm
2のおよその内部導管面積(φ4.8mmの内チューブ径と同等)を有する中心導管3aに沿っておよそ2mm間隔で配置された4つのφ0.5mm±0.2mmサイズの穿孔の反復列を含むおよそ260mm長の穿孔中心導管3aを備えていた。植え込まれた創傷処置デバイスは、およそ120mmの外径及び約60mmの内径を有していた。
【0254】
およそ1000mmの長さで3/16インチの内径(φ4.8mmID)を有する除去導管11を、穿孔中心導管3aの下流端部3cに接続し、およそ1000mmの長さで1/16インチの内径(φ1.6mmID)を有する供給導管12を、中心導管3aの上流端部3bに接続した。
【0255】
図46~
図50に関連して上述した処置アルゴリズムを用いて、
図6及び
図7に表された実施形態の処置システム100を反映するように構築された、外部に装着された真空デバイス2に、各植え込まれた創傷処置デバイスを接続した。
【0256】
このインプラント3に接続された外部真空ポンプデバイス2を、変動する保持長さと関連付けられた臨床転帰の差を評価するために閉鎖持続時間を変動させて、空気入口弁を14秒間開放するように構成した。試験を、「保持状態」で、20秒、120秒、240秒、及び360秒の弁閉鎖タイミングで実施した。
【0257】
システムを、空気流状態中の濾過された空気の滴下中に80mmHgの真空圧力レベルに維持し、システムは、加圧状態中に100mmHgの第2の平衡圧力に戻った。このサイクルは、流体除去導管11に沿った真空圧力レベルが安全機構として150mmHgに上限を定められた連続パターンで動作した。
【0258】
試験を、各動物が単一の植え込まれた創傷処置デバイス3を受容した、5匹のヒツジで実施した。面積が約110cm2の欠損部位を、筋肉の上の掘り下げられた領域からおよそ60グラムの外腹斜筋を切除することによって作成した。インプラントデバイスを欠損部位の最下腹側面に位置付け、インプラントを適所に固定するために結紮された一連の縫合糸を使用して、処置部位に固設した。除去導管11及び供給導管12は両方とも、創傷の最上及び最前方の腹側-頭蓋側面において創傷から出ており、導管は、ステイ縫合糸を使用して皮膚ポータルにおいて適所に保持された。処置部位が閉じられると、インプラントデバイスを、外部に装着された真空ポンプデバイス2に接続して、プログラム通りに機能させた。
【0259】
術後7日目に超音波評価を実施して、欠損部位で形成された任意の漿液腫のサイズを評価し、欠損部位で測定された任意の漿液腫の体積を、楕円体の体積を決定するための式を使用して計算した。
【0260】
デバイスのリザーバ内に収集された創傷滲出液の体積を毎日測定して、術後7日間にわたって収集された流体の総量を判定した。術後7日目に安楽死させた動物ID5を除いて、全ての動物を術後14日目に安楽死させて、処置部位の肉眼的評価を実施した。動物実験の結果を以下の表に示す。
【0261】
【0262】
術後14日目の時点で安楽死させた後の動物ID1、2、及び3について、欠損部位に漿液腫又は創傷液の徴候がなく、植え込まれた創傷処置デバイス3は、周囲の組織と完全に一体化されていることが見出された。
【0263】
術後7日目に安楽死させた動物ID5では、欠損部位に漿液腫の中等度の徴候があり、結果は、同じ時点での超音波評価とも一致した。
【0264】
動物ID4の欠損部位は、術後14日目の時点で大きな漿液腫を有することが見出され、これは、術後7日目の時点での超音波発見と一致し、欠損部位の分離された組織平面の任意の統合の徴候は実質的にゼロであった。
【0265】
この動物実験からの結果は、120秒以下の空気入口弁閉鎖時間が、完全な死腔閉鎖及び動物による欠損部位での漿液腫形成の防止をもたらす可能性がより高いという結論を支持する。
【0266】
本明細書に記載された実施形態によるシステムは、以下のうちの1つ以上を含むが、それらに限定されない、有意な利益を提供する:
・過剰な滲出液の除去による浮腫の減少などの改善された治癒利益を提供する、創傷部位からの改善された流体除去、
・システム内に形成される閉塞のリスクの低減、
・空気の追加中であっても、創傷において効果的な陰圧を維持して、効果的な処置を確保すること、
・創傷に高さの差がある場合の、創傷の下部分からの滲出液の除去、
・可搬型創傷処置システムの用途に適した低電力消費、
・創傷において効果的な陰圧を維持して効果的な処置を確保しながらの、創傷への処置流体の適用、
・処置空間の全体を通した処置を改善するための、処置空間のより大きい部分への陰圧の提供、
・創傷への処置流体供給の提供を伴う及び伴わないシステムの構成可能性、
・空気入口と創傷部位との間に滅菌インターフェースを提供することの容易さ。
【0267】
参考文献
1.Malmsjo,M.,Huddleston,E.,& Martin,R.(2014).Biological effects of a disposable,canisterless negative pressure wound therapy system.Eplasty,14。
【0268】
2.Ixtaina,V.Y.,Nolasco,S.M.,& Tomas,M.C.(2008).Physical properties of chia(Salvia hispanica L.)seeds.Industrial crops and products,28(3),286-293。
【0269】
3.Coorey,R.,Tjoe,A.,& Jayasena,V.(2014).Gelling properties of chia seed and flour.Journal of food science,79(5),E859-E866。
【国際調査報告】