(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】創傷治療のための流体排出及び送達デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 39/02 20060101AFI20231130BHJP
A61M 27/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A61M39/02 102
A61M27/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531052
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 NZ2021050207
(87)【国際公開番号】W WO2022114967
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517218653
【氏名又は名称】アロア・バイオサージェリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AROA BIOSURGERY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ウォード,ブライアン・ロデリック
(72)【発明者】
【氏名】メイソン,アイザック・トリストラム・ターン
(72)【発明者】
【氏名】ローズ,ヘイミッシュ・ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】ジョウジー,アリスター・トッド
(72)【発明者】
【氏名】ラブランド,マイケル・アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス,リアム・ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,サミュエル・バリー
(72)【発明者】
【氏名】オニール,ブレンダン・アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ゴーマン,ショーン・ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】アセフィ,ドリン
(72)【発明者】
【氏名】チトック,ヘンリー・デイビッド
【テーマコード(参考)】
4C066
4C267
【Fターム(参考)】
4C066AA01
4C066AA07
4C066BB01
4C267AA04
4C267AA38
4C267AA74
4C267BB02
4C267GG01
4C267JJ01
(57)【要約】
患者の体内の治療部位における、治療部位からの流体の除去のための埋め込み用デバイス。デバイスは、流体除去ルーメンを少なくとも部分的に画定する導管構造体と、導管構造体の一部分を囲む多孔質生体吸収性シースと、を含む。導管構造体は、治療の完了時の治療部位からの除去のために構成された除去可能な構成要素を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内の治療部位における、前記治療部位からの流体の除去のための埋め込み用デバイスであって、前記デバイスが、流体除去ルーメンを少なくとも部分的に画定する導管構造体、及び前記導管構造体の一部分を囲む多孔質生体吸収性シースを備え、
前記導管構造体が、治療の完了時の前記治療部位からの除去のために構成された除去可能な構成要素を備える、デバイス。
【請求項2】
前記デバイスが、前記治療部位に流体を送達するように構成されており、前記導管構造体が、流体供給ルーメンを更に画定している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記流体供給ルーメンの一方の端部が、前記流体除去ルーメンの一方の端部と流体連通している、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
1つ以上の外部構成要素との接続のためのデュアルルーメンポートを備え、前記ポートの第1のルーメンが、前記流体除去ルーメンと流体連通している、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記生体吸収性シースが、前記治療部位と前記導管構造体との間の流体連通を可能にするように位置付けられた複数の孔を備え、前記孔が各々、約1mm
2以下の面積を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記シース内の前記孔が、各々約0.2mm
2~約0.8mm
2の面積を有する、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記シースは、前記導管構造体の頂部分を包む頂部シート及び前記導管構造体の底部分を包む底部シートを備え、前記頂部及び底部シートが、側部継ぎ目に沿って前記導管構造体の周りで接合されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記頂部及び底部シートが、一緒に縫い合わされている、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記シースが、前記デバイスを前記治療部位の組織に固定するために、前記側部継ぎ目を越えて延在する1つ以上のフランジ又はタブを形成している、請求項7又は8記載のデバイス。
【請求項10】
前記フランジ又はタブが、2つの層を備え、前記層が、前記フランジ又はタブの縁部又はその近くで取り付けられている、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記シース内の前記孔が、前記デバイスの上面及び下面に提供されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記シースが、前記導管構造体内への創傷破片の進入を防止又は最小化するように構成された、前記デバイスの入口及び出口に近接する端区分を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記シースの前記端区分が、貫通孔を備えない、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記デバイスの入口及び出口の遠位側の前記シースの端部が閉鎖されている、請求項1~13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記デバイスの入口及び出口の遠位側の前記シースの端部が開放している、請求項1~13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記シースが、細胞外マトリックス(ECM)又はポリマー材料の1つ以上の層を備える、請求項1~15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記ECMが、反芻動物の前胃の脱細胞化された固有層-粘膜下層から形成されている、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
除去可能な導管構造体の前記流体供給ルーメンが、前記構造体の長さの少なくとも大部分に沿った非多孔質壁を備える、請求項1~17のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記除去可能な導管構造体の前記流体除去ルーメンが、前記構造体の前記長さの大部分に沿った多孔質壁を備える、請求項1~18のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記除去可能な導管構造体の前記流体除去ルーメンの少なくとも大部分を画定するトラスを備える、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記トラスが、複数の交差横断ノードで互いに周期的に交差するように巻かれた2つの可撓性細長壁部材を備える、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
各細長壁部材が、略螺旋状であり、前記2つの壁部材が、対向して巻かれている、請求項1~21のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項23】
前記トラスが、円形又は楕円形の断面を有する可撓性チューブを形成している、請求項1~22のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項24】
少なくとも2つの可撓性細長ブレーシング部材を備え、各ブレーシング部材が、複数の前記交差横断ノードにおいて2つの細長壁部材に連結されている、請求項21又は22に記載のデバイス。
【請求項25】
前記ブレーシング部材が、チャネルの側部に沿って略長手方向に延在している、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
ブレーシングトラス部材が、前記チャネルの対向する側部に提供されている、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
各ブレーシング部材が、それぞれの交差横断ノードで前記2つの細長壁部材に接合されている、請求項24~26のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項28】
前記流体供給ルーメンに前記流体除去ルーメンの前記トラスを固定するように巻かれた固定トラス部材を更に備える、請求項20~27のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項29】
前記除去可能な導管構造体が、シリコーン形態を備える、請求項1~19のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項30】
前記流体除去ルーメンが、少なくとも7mm
2の断面積を有する、請求項1~29のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項31】
前記流体除去ルーメンが、約18mm
2の断面積を有する、請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記流体除去ルーメンが、入口端部及び出口端部を有し、前記流体供給ルーメンが、前記流体除去ルーメンの前記入口端部に隣接して流体を供給するように構成されている、請求項1~31のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項33】
前記流体供給ルーメン及び前記流体除去ルーメンが、略同じ長さであり、互いに隣接して位置付けられている、請求項1~32のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項34】
前記流体供給ルーメン及び前記流体除去ルーメンが、同一直線上にある、請求項1~32のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項35】
前記デバイスが、ループを形成している、請求項34に記載のデバイス。
【請求項36】
前記ループが、突き合わされた端部を有する前記導管構造体の2つの枝を備える、請求項35に記載のデバイス。
【請求項37】
前記流体除去及び/又は流体供給ルーメンと流体連通しており、陰圧源又は陽圧源に接続可能であるポートを備える、請求項1~36のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項38】
前記治療部位が、手術中に又は外傷の結果として分離されている筋肉組織、結合組織、及び/又は皮膚組織の表面若しくは平面間の領域、又は組織の層内の領域である、請求項1~37のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項39】
前記シースが、孔を有さず、前記導管構造体の下にある部分との緊密な嵌合を有する封止端区分を備える、請求項1~38のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項40】
前記シースの前記封止端区分が、流体不浸透性壁を備える前記導管構造体の一部分の上に延在している、請求項39に記載のデバイス。
【請求項41】
前記シース及び下にある前記導管構造体の断面積が、封止区分の少なくとも一部分に沿って低減している、請求項39又は40に記載のデバイス。
【請求項42】
前記シース及び前記下にある導管構造体の断面積が、前記封止区分の少なくとも一部分に沿ってテーパ状である、請求項41に記載のデバイス。
【請求項43】
患者の体内の治療部位における、前記治療部位への流体の送達及び/又は前記治療部位からの流体の除去のための埋め込み用デバイスであって、前記デバイスが、
流体供給及び/又は除去ルーメンを画定する導管構造体と、
除去可能な前記導管構造体の一部分を囲み、前記デバイス内の閉塞を防止しながら、前記治療部位と前記導管構造体との間の流体連通を可能にするようにサイズ決定され、位置付けられた複数の孔を備える、生体吸収性シースと、を備える、デバイス。
【請求項44】
前記シース内の前記孔が各々、約0.2mm~約0.8mm
2の面積を有する、請求項43に記載のデバイス。
【請求項45】
前記シースが、孔を有さず、前記導管構造体の下にある部分との緊密な嵌合を有する封止端区分を備える、請求項43又は44に記載のデバイス。
【請求項46】
前記シースの前記封止端区分が、流体不浸透性壁を備える前記導管構造体の一部分の上に延在している、請求項45に記載のデバイス。
【請求項47】
前記シース及び前記下にある導管構造体の断面積が、封止区分の少なくとも一部分に沿って低減している、請求項45又は46に記載のデバイス。
【請求項48】
前記シース及び前記下にある導管構造体の断面積が、前記封止区分の少なくとも一部分に沿ってテーパ状である、請求項47に記載のデバイス。
【請求項49】
前記導管構造体の前記ルーメンと流体連通するポートを備える、請求項43~48のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項50】
前記導管構造体が、治療の完了時の前記治療部位からの除去のために構成された除去可能な構成要素を備える、請求項43~49のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項51】
患者の体内の治療部位における、前記治療部位への流体の送達及び/又は前記治療部位からの流体の除去のための埋め込み用デバイスであって、前記デバイスが、
流体供給ルーメン及び多孔質流体除去ルーメンを画定している導管構造体であって、前記流体供給ルーメンの一方の端部が、前記流体除去ルーメンの第1の端部と流体連通している、導管構造体と、
除去可能な前記導管構造体の一部分を囲む生体吸収性シースと、
前記流体供給ルーメン及び/又は前記流体除去ルーメンと流体連通しているポートと、を備える、デバイス。
【請求項52】
デュアルルーメンポートを備え、前記ポートの第1のルーメンが、前記流体供給ルーメンと流体連通し、前記ポートの第2のルーメンが、前記流体除去ルーメンと流体連通している、請求項51に記載のデバイス。
【請求項53】
前記流体供給ルーメンを画定している前記導管構造体の一部分が、前記流体除去ルーメンを画定している前記導管構造体の一部分と一体的に形成されている、請求項51又は52に記載のデバイス。
【請求項54】
前記流体供給ルーメン及び前記流体除去ルーメンが、同軸である、請求項51~53のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項55】
前記流体供給ルーメン及び前記流体除去ルーメンが実質的に平行である、請求項51~53のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項56】
前記ポートが、1つ以上の外部構成要素との接続のために構成されている、請求項51~55のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項57】
前記シースが、前記シースを横切る流体移送を容易にするための複数の孔を備え、各孔が、約0.2mm
2~約0.8mm
2の面積を有する、請求項51又は52に記載のデバイス。
【請求項58】
前記シースが、孔を有さず、前記導管構造体の下にある部分との緊密な嵌合を有する封止端区分を備える、請求項43又は44に記載のデバイス。
【請求項59】
前記導管構造体が、治療の完了時の前記治療部位からの除去のために構成された除去可能な構成要素を備える、請求項43~49のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項60】
患者の体内の治療部位から流体を排出し、治療部位に流体を送達するためのシステムであって、
(vi)請求項1~59のいずれか一項に記載のデバイスと、
(vii)前記デバイスのポート又は流体不透過性被覆材のいずれかに解放可能に結合された導管と、
(viii)前記患者の体外に位置し、治療流体を収容するリザーバであって、流体供給ルーメンと流体連通している、リザーバと、
(ix)前記患者の体外に位置する第2のリザーバであって、前記デバイスから流体を受容するように流体除去ルーメンと流体連通している、第2のリザーバと、
(x)陽圧又は陰圧を前記デバイスに送達するために前記導管に結合された圧力源と、を備える、システム。
【請求項61】
前記圧力源は、流体が、前記治療部位から前記デバイス内に排出され、前記導管を通して前記リザーバに移送されるように、前記デバイスに陰圧を送達することができる、請求項60に記載のシステム。
【請求項62】
前記デバイスの前記ポートが、前記患者の体外に位置付けられる、請求項60に記載のシステム。
【請求項63】
請求項1~59のいずれか一項に記載のデバイスを形成するための部品のキットであって、流体除去ルーメンを画定している導管構造体と、前記導管構造体の受容のための通路を画定している生体吸収性シースと、を備える、部品のキット。
【請求項64】
前記生体吸収性シースが、2つの開放端部を有する略管状である、請求項63に記載の部品のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷治療部位における、その部位への流体の送達及びその部位からの流体の排出のための埋め込み用デバイスに関する。具体的には、デバイスは、流体供給ルーメンと、流体除去ルーメンと、生体吸収性シースと、を有する。
【背景技術】
【0002】
外科的又は外傷性創傷からの流体の排出及び死腔の低減は、患者の適時かつ効果的な回復における重要な要因であることが多い。漿液腫及び血腫は、術後に創傷部位に蓄積する漿液又は血液のポケットであり、回復を妨げることがある。適切な排液及び死腔閉鎖がない場合、治癒不良、感染、又は離開は、追加の手術及びより長い入院の必要性につながることがある。漿液腫及び血腫は、再建形成外科手術、外傷、乳房切除、腫瘍切除、帝王切開、ヘルニア修復、並びに多くの組織上昇及び分離を伴う切開外科手術の後に一般的である。
【0003】
死腔を低減し、創傷部位からの流体の排出を提供することは、多くの事例で非常に望ましいが、流体を創傷部位に直接送達して、創傷治癒プロセスを支援することができる他の状況で有用である。例えば、感染を予防するために抗菌溶液を局所的に点滴する。同様に、局所麻酔薬の点滴は、疼痛管理を支援し得る。
【0004】
従来技術の流体除去デバイスは、遮断する傾向があり、軟組織空洞内の漿液腫の形成を防止するのに効果的ではない。緩い結合組織及び脂肪(adipose)(脂肪(fat))組織などの、手術後に部位に残る緩い組織破片は、フィブリノーゲン及び溶解細胞などの様々な生物学的因子と組み合わさって、これらのデバイスを使用中に実質的に又は完全に遮断する傾向がある。閉塞は、閉鎖された外科的創傷から流体を除去する任意のデバイスの能力を低減させ、治療部位への真空圧の効果的な送達を制限する。
【0005】
結果として、従来技術の流体除去デバイスは、概して、低レベルの吸引(典型的には60mmHg未満の真空)しか適用しない。更に、これらのデバイスをより高い真空で動作させる試みは、それらの有効性を改善せず、デバイスが遮断する速度を早めるだけである。
【0006】
したがって、本発明の目的は、上述の欠点のうちの1つ以上に対処する流体排出若しくは送達デバイスを提供すること、及び/又は少なくとも既存のデバイスに対する有用な代替物を提供することである。
【0007】
特許明細書、他の外部文書、又は他の情報源が参照されているこの明細書では、一般に、本発明の特徴を考察するための文脈を提供するためのものである。特に明記されていない限り、そのような外部文書又は情報源への参照は、そのような文書又はそのような情報源が、いかなる司法管轄においても、先行技術であるか、又は当該技術分野における一般常識の一部を形成することを認めるものとして解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様では、本発明は、患者の体内の治療部位における、治療部位からの流体の除去のための埋め込み用デバイスを提供する。デバイスは、流体除去ルーメンを少なくとも部分的に画定する導管構造体と、導管構造体の一部分を囲む多孔質生体吸収性シースと、を備える。導管構造体は、治療の完了時の治療部位からの除去のために構成された除去可能な構成要素を備える。
【0009】
一実施形態では、デバイスは、流体を治療部位に送達するように構成され、導管構造体は、流体供給ルーメンを更に画定する。流体供給ルーメンの一方の端部は、流体除去ルーメンの一方の端部と流体連通し得る。
【0010】
一実施形態では、デバイスは、1つ以上の外部構成要素との接続のためのデュアルルーメンポートを備え、ポートの第1のルーメンは、流体除去ルーメンと流体連通している。
【0011】
一実施形態では、生体吸収性シースは、治療部位と導管構造体との間の流体連通を可能にするように位置付けられた複数の孔を備え、孔は、約1mm2以下の面積を各々有する。例えば、シース内の孔は各々、約0.2mm2~約0.8mm2の面積を有し得る。
【0012】
一実施形態では、シースは、導管構造体の頂部分を包む頂部シートと、導管構造体の底部分を包む底部シートと、を備え、頂部及び底部シートは、側部継ぎ目に沿って導管構造体の周りで接合されている。頂部及び底部シートは、一緒に縫い合わされ得る。
【0013】
一実施形態では、シースは、デバイスを治療部位の組織に固定するために、側部縫い目を越えて延在する1つ以上のフランジ又はタブを形成する。フランジ又はタブは、2つの層を備え得、層は、フランジ又はタブの縁部又はその近くで取り付けられる。
【0014】
一実施形態では、シース内の孔は、デバイスの上面及び下面に提供される。
【0015】
一実施形態では、シースは、導管構造体内への創傷破片の進入を防止又は最小化するように構成された、デバイスの入口及び出口に近接する端区分を備える。シースの端区分は、好ましくは、貫通孔を備えない。
【0016】
一実施形態では、デバイスの入口及び出口の遠位側のシースの端部は、閉鎖されている。代替的に、デバイスの入口及び出口の遠位側のシースの端部は、開放されてもよい。
【0017】
一実施形態では、シースは、細胞外マトリックス(extracellular matrix、ECM)又はポリマー材料の1つ以上の層を備える。ECMが、反芻動物の前胃の脱細胞化された固有層-粘膜下層から形成され得る。
【0018】
一実施形態では、除去可能な導管構造体の流体供給ルーメンは、構造体の長さの少なくとも大部分に沿った非多孔質壁を備える。
【0019】
除去可能な導管構造体の流体除去ルーメンは、構造体の長さの大部分に沿った多孔質壁を備え得る。
【0020】
一実施形態では、除去可能な導管構造体は、除去可能な導管構造体の流体除去ルーメンの少なくとも大部分を画定するトラスを備える。一実施形態では、トラスは、複数の交差横断ノードで互いに周期的に交差するように巻かれた2つの可撓性細長壁部材を備える。各細長壁部材は、略螺旋状であってもよく、2つの壁部材は、反対方向に巻かれる。トラスは、円形又は楕円形断面を有する可撓性チューブを形成し得る。
【0021】
いくつかの実施形態のトラスでは、トラスは、少なくとも2つの可撓性細長ブレーシング部材を含み得、各ブレーシング部材は、複数の交差横断ノードで2つの細長壁部材に機械的に連結される。ブレーシング部材は、チャネルの側部に沿って略長手方向に延在し得る。ブレーシングトラス部材は、チャネルの対向する側部に提供され得る。各ブレーシング部材は、それぞれの交差横断ノードで2つの細長壁部材に接合され得る。
【0022】
一実施形態では、トラスは、流体除去ルーメンのトラスを流体供給ルーメンに固定するように巻かれた固定トラス部材を含み得る。
【0023】
一実施形態では、除去可能な導管構造体は、シリコーン形態を備える。
【0024】
一実施形態では、流体除去ルーメンは、少なくとも7mm2の断面積、例えば、約18mm2の断面積を有する。
【0025】
一実施形態では、流体除去ルーメンは、入口端部及び出口端部を有し、流体供給ルーメンは、流体除去ルーメンの入口端部に隣接して流体を供給するように構成される。
【0026】
一実施形態では、流体供給ルーメン及び流体除去ルーメンは、略同じ長さであり、互いに隣接して位置付けられる。
【0027】
一実施形態では、流体供給ルーメン及び流体除去ルーメンは、同一直線上にある。例えば、デバイスはループを形成し得る。一実施形態では、ループは、突き合わされた端部を有する導管構造体の2つの枝を備える。
【0028】
一実施形態では、デバイスは、流体除去及び/又は流体供給ルーメンと流体連通し、陰圧源又は陽圧源に接続可能であるポートを備える。
【0029】
治療部位は、手術中に又は外傷の結果として分離されている筋肉組織、結合組織、及び/又は皮膚組織の表面若しくは平面間の領域、又は組織の層内の領域であり得る。
【0030】
一実施形態では、シースは、孔を有さず、導管構造体の下にある部分との緊密な嵌合を有する封止端区分を備える。シースの封止端区分は、流体不浸透性壁を備える導管構造体の一部分の上に延在する。
【0031】
一実施形態では、シース及び下にある導管構造体の断面積は、封止区分の少なくとも一部分に沿って低減する。
【0032】
一実施形態では、シース及び下にある導管構造体の断面積は、封止区分の少なくとも一部分に沿ってテーパ状である。
【0033】
第2の態様では、本発明は、患者の体内の治療部位における、治療部位への流体の送達及び/又は治療部位からの流体の除去のための埋め込み用デバイスを提供する。デバイスは、流体供給及び/又は除去ルーメンを画定する導管構造体と、除去可能な導管構造体の一部分を囲む生体吸収性シースと、を備える。シースは、デバイス内の閉塞を防止しながら、治療部位と導管構造体との間の流体連通を可能にするようにサイズ決定され、位置付けられる、複数の孔を備える。
【0034】
一実施形態では、シース内の孔は各々、約0.2mm2~約0.8mm2の面積を有する。
【0035】
一実施形態では、シースは、孔を有さず、導管構造体の下にある部分との緊密な嵌合を有する封止端区分を備える。
【0036】
一実施形態では、シースの封止端区分は、流体不浸透性壁を備える導管構造体の一部分の上に延在する。
【0037】
一実施形態では、シース及び下にある導管構造体の断面積は、封止区分の少なくとも一部分に沿って低減する。
【0038】
一実施形態では、シース及び下にある導管構造体の断面積は、封止区分の少なくとも一部分に沿ってテーパ状である。
【0039】
一実施形態では、デバイスは、導管構造体のルーメンと流体連通するポートを備える。
【0040】
一実施形態では、導管構造体は、治療の完了時の治療部位からの除去のために構成された除去可能な構成要素を備える。
【0041】
第2の態様によるデバイスは、第1の態様に関連して上述された特徴のうちの任意の1つ以上を含み得る。
【0042】
第3の態様では、本発明は、患者の体内の治療部位における、治療部位への流体の送達及び/又は治療部位からの流体の除去のための埋め込み用デバイスであって、デバイスが、
流体供給ルーメン及び多孔質流体除去ルーメンを画定する導管構造体であって、流体供給ルーメンの一方の端部が、流体除去ルーメンの第1の端部と流体連通している、導管構造体と、
除去可能な導管構造体の一部分を囲む生体吸収性シースと、
流体供給ルーメン及び/又は流体除去ルーメンと流体連通するポートと、を備える、デバイスを提供する。
【0043】
一実施形態では、デバイスは、デュアルルーメンポートを備え、ポートの第1のルーメンは、流体供給ルーメンと流体連通し、ポートの第2のルーメンは、流体除去ルーメンと流体連通する。
【0044】
流体供給ルーメンを画定する導管構造体の一部分は、流体除去ルーメンを画定する導管構造体の一部分と一体的に形成され得る。
【0045】
一実施形態では、流体供給ルーメン及び流体除去ルーメンは、同軸である。代替的に、流体供給ルーメン及び流体除去ルーメンは、実質的に平行であり得る。
【0046】
一実施形態では、ポートは、1つ以上の外部構成要素との接続のために構成される。
【0047】
一実施形態では、シースは、シースを横切る流体移送を容易にするための複数の孔を備え、各孔は、約0.2mm2~約0.8mm2の面積を有する。
【0048】
一実施形態では、シースは、孔を有さず、導管構造体の下にある部分との緊密な嵌合を有する封止端区分を備える。
【0049】
一実施形態では、導管構造体は、治療の完了時の治療部位からの除去のために構成された除去可能な構成要素を備える。
【0050】
第3の態様によるデバイスは、第1又は第2の態様に関連して上述された特徴のうちの任意の1つ以上を含み得る。
【0051】
第4の態様では、本発明は、患者の体内の治療部位から流体を排出し、治療部位に流体を送達するためのシステムであって、
(i)第1、第2、又は第3の態様によるデバイスと、
(ii)デバイスのポート又は流体不透過性被覆材のいずれかに解放可能に結合された導管と、
(iii)患者の体外に位置し、治療流体を収容するリザーバであって、流体供給ルーメンと流体連通するリザーバと、
(iv)患者の体外に位置する第2のリザーバであって、デバイスから流体を受容するために流体除去ルーメンと流体連通している、第2のリザーバと、
(v)陽圧又は陰圧をデバイスに送達するために導管に結合された圧力源と、を備える、システムを提供する。
【0052】
一実施形態では、圧力源は、流体が治療部位からデバイス内に排出され、導管を通してリザーバに移送されるように、デバイスに陰圧を送達することができる。
【0053】
一実施形態では、デバイスのポートは患者の体外に位置付けられる。
【0054】
第5の態様では、本発明は、第1、第2、又は第3の態様によるデバイスとしてのデバイスを形成するための部品のキットであって、流体除去ルーメンを画定する導管構造体と、導管構造体の受容のための通路を画定する生体吸収性シースと、を備える、部品のキットを提供する。
【0055】
一実施形態では、生体吸収性シースは、2つの開放端部を有する略管状である。
【0056】
第6の態様では、本発明は、創傷を治療するためのシステムを提供し、システムは、創傷に位置する創傷治療デバイスへの接続のための流体入力部及び流体排出部を備える。創傷治療デバイスは、上記に説明されるとおりであり得る。流体入力部は、創傷治療デバイスの上流側に流体接続されるように適合され、流体排出部は、創傷治療デバイスの下流側に流体接続されるように適合される。システムは、流体排出部の上流に空気入口弁と、空気入口弁を開放位置と閉鎖位置との間で駆動するアクチュエータと、流体入力部の下流のポンプと、ポンプを駆動して創傷治療デバイスに陰圧を提供するモータと、アクチュエータ及びモータと通信して空気入口弁及びポンプを動作させるコントローラと、を更に備える。コントローラは、i)空気入口弁を開放し、ポンプを動作させて、創傷治療デバイスにおいて第1の真空圧力を維持し、空気を創傷治療デバイス内に導入することと、ii)空気入口弁を閉鎖し、ポンプを動作させて、創傷治療デバイスにおいて第2の真空圧力を維持し、空気及び流体を創傷治療デバイスから除去することと、を行うように構成されている。第1の真空圧力は、第2の真空圧力以下である。
【0057】
一実施形態では、コントローラは、空気弁が開閉されるとき、ポンプを動作させて、創傷治療デバイスにおいて陰圧環境を連続的に維持するように構成されている。
【0058】
一実施形態では、第1及び第2の真空圧力は、効果的な陰圧創傷治療を提供する。
【0059】
一実施形態では、コントローラは、ステップi)及びii)を繰り返して、空気入口弁を開放位置と閉鎖位置との間でサイクルさせるように構成されている。
【0060】
一実施形態では、コントローラは、ステップi)及びii)を繰り返して、空気入口弁を開放位置と閉鎖位置との間で連続的にサイクルさせるように構成されている。
【0061】
一実施形態では、コントローラは、空気入口弁が開放されたときにポンプを動作させて、実質的に一定の第1の真空圧力を維持するように構成されている。
【0062】
一実施形態では、コントローラは、空気入口弁を通るシステム内への空気の流量がポンプの流量に等しくなるように、空気入口弁が開放された状態でポンプを動作させるように構成されている。
【0063】
一実施形態では、コントローラは、空気入口弁が閉鎖されたときにポンプを動作させて、実質的に一定の第2の真空圧力を維持するように構成されている。
【0064】
一実施形態では、コントローラは、ステップ(i)において、システムが、治療デバイスにわたるゼロ又は一定の圧力差を伴う平衡状態にあるように、空気入口弁が開放された状態でポンプを動作させるように構成されている。
【0065】
一実施形態では、コントローラは、ステップ(i)において、システムが、治療デバイスにわたるゼロ又は一定の圧力差を伴う平衡状態にあるように、空気入口弁が閉鎖された状態でポンプを動作させるように構成されている。
【0066】
一実施形態では、コントローラは、空気入口弁を開放と閉鎖との間で動作させて、創傷治療デバイスからの流体流に混入された空気の気泡又はスラグを含む気泡流又はスラグ流を生成するシステム内にある流量の空気を導入するように構成されている。
【0067】
一実施形態では、コントローラは、空気入口弁を開放と閉鎖との間で動作させて、創傷における流体の密度を低減させて、創傷からの流体を重力に逆らって持ち上げるように構成されている。
【0068】
一実施形態では、コントローラは、空気入口弁を周期的に開閉するように構成されている。
【0069】
一実施形態では、ステップi)において、コントローラは、所定の時間にわたって空気入口弁を開放するように構成されている。一実施形態では、ステップi)において、コントローラは、空気入口弁を少なくとも10秒間開放するように構成されている。
【0070】
一実施形態では、ステップii)において、コントローラは、所定の時間にわたって空気入口弁を閉鎖するように構成されている。
【0071】
一実施形態では、空気入口弁は、サイクルピッチの少なくとも10%、又はサイクルピッチの少なくとも20%、又はサイクルピッチの少なくとも30%、又はサイクルピッチの少なくとも40%、又はサイクルピッチの少なくとも50%の間、開放される。
【0072】
一実施形態では、ステップi)において、空気入口弁は、システムを通して送達される空気の体積が、システムの総体積の少なくとも実質的な部分であるように、十分な時間にわたって開放される。例えば、ステップ(i)では、空気入口弁は、システムに送達される空気の体積が、システムの総体積の少なくとも50%、又は少なくとも100%であるように、十分な時間にわたって開放され得る。
【0073】
一実施形態では、第1の真空圧力は、第2の真空圧力の約30%~100%である。
【0074】
一実施形態では、第1の真空圧力は、約50~100mmHg、好ましくは約80~約90mmHgである。
【0075】
一実施形態では、第2の真空圧力は、約100~150mmHg、好ましくは約100~約110mmHgである。
【0076】
一実施形態では、第1の真空圧力は、第2の圧力よりも約10~50mmHg低い。
【0077】
一実施形態では、ステップ(i)において、コントローラは、真空圧力閾値を達成するようにポンプを動作させるように構成されている。一実施形態では、ステップ(ii)において、コントローラは、真空圧力閾値を達成するようにポンプを動作させるように構成されている。
【0078】
一実施形態では、システムは、創傷治療デバイスの下流に位置し、コントローラと通信する下流圧力センサを備える。コントローラは、ステップi)において、下流圧力センサによって感知された圧力に基づいて、真空圧力閾値を達成するようにポンプを動作させるように構成され得る。
【0079】
一実施形態では、システムは、創傷治療デバイスの上流に位置し、コントローラと通信する上流圧力センサを備える。コントローラは、ステップi)において、上流圧力センサによって感知された圧力に基づいて、真空圧力閾値を達成するようにポンプを動作させるように構成され得る。
【0080】
一実施形態では、システムは、
創傷治療デバイスの上流に位置し、コントローラと通信する上流圧力センサと、
創傷治療デバイスの下流に位置し、コントローラと通信する下流圧力センサと、
コントローラであって、ステップi)において、下流圧力センサによって感知された圧力に基づいて、第1の真空圧力閾値を達成するようにポンプを動作させることと、
ステップii)において、上流圧力センサによって感知された圧力に基づいて、第2の真空圧力閾値を達成するようにポンプを動作させることと、を行うように構成されている、コントローラと、を備える。
【0081】
一実施形態では、第1の真空圧力閾値は、第2の真空圧力閾値以下である。
【0082】
一実施形態では、システムは、入口絞りを備え、上流圧力センサは、空気入口弁が開放されたときに上流圧力センサが周囲圧力を測定するように、入口絞りの上流に位置する。
【0083】
一実施形態では、システムは、周囲圧力と創傷治療デバイスにおける真空圧力との間の所定の圧力降下を提示するための入口絞りを備える。
【0084】
一実施形態では、システムは、システムに導入される空気を濾過するためのフィルタを備え、フィルタは、入口絞りであるか、又はそれを備える。
【0085】
一実施形態では、圧力降下は、約20~130mmHgである。
【0086】
一実施形態では、空気入口弁が開放されたとき、周囲圧力と創傷治療デバイスの下流の圧力との間の実質的に全ての圧力差が入口絞りにある。
【0087】
一実施形態では、システムは、創傷から除去された流体を収集するためのリザーバを備え、リザーバは、創傷から除去された流体がポンプを通してリザーバに通過するように、ポンプの下流に位置する。
【0088】
一実施形態では、リザーバは、可撓性バッグを含む。
【0089】
一実施形態では、リザーバは、リザーバを周囲雰囲気に通気するための通気口を備える。
【0090】
一実施形態では、システムは、治療流体の供給を接続するために、流体出口の上流に治療流体入口を備える。
【0091】
一実施形態では、システムは、ステップi)において、創傷治療デバイスへの治療流体の導入が、第1の真空圧力による創傷治療デバイスへの空気の導入によって防止又は低減され、ステップii)において、治療流体が、第2の真空圧力によって創傷治療デバイスに引き込まれるように、構成されている。
【0092】
一実施形態では、システムは、
治療流体入口と流体出口との間の治療流体弁と、
治療流体入口弁を開放位置と閉鎖位置との間で駆動するアクチュエータと、を備え、コントローラが、流体入口弁アクチュエータと通信し、コントローラが、流体供給状態において、
iii)流体入口弁を開放し、ポンプを動作させて、創傷治療デバイスにおいて真空圧力を維持し、治療流体を創傷治療デバイスに導入することと、
iv)流体入口弁を閉鎖し、ポンプを動作させて、創傷治療デバイスにおいて真空圧力を維持し、創傷治療デバイスから流体を除去することと、を行うように構成されている。
【0093】
一実施形態では、コントローラは、流体入口弁が開閉されるとき、ポンプを動作させて、創傷治療デバイスにおいて陰圧環境を連続的に維持するように構成されている。
【0094】
一実施形態では、コントローラは、ステップ(iii)において、ポンプを動作させて、創傷治療デバイスで第3の真空圧力を生成することと、ステップ(iv)において、ポンプを動作させて、創傷治療デバイスで第4の真空圧力を生成することと、を行うように構成されており、第3の真空圧力は、第4の真空圧力以下である。
【0095】
一実施形態では、第3の真空圧力は、第1の真空圧力と等しいか又は同様であり、第4の真空圧力は、第2の真空圧力と等しいか又は同様である。
【0096】
一実施形態では、第3及び第4の真空圧力は、効果的な陰圧創傷治療を提供する。
【0097】
一実施形態では、流体入口弁を閉鎖し、ポンプを動作させて創傷で真空圧を生成した後、コントローラは、
(v)創傷から治療流体を洗い流すように構成されており、これは、
(v)(a)空気入口弁を開放し、ポンプを動作させて、創傷治療デバイスで真空圧力(例えば、第1の真空圧力)を維持し、創傷治療デバイスに空気を導入することと、
(v)(b)空気入口弁を閉鎖し、ポンプを動作させて、創傷治療デバイスで真空圧力(例えば、第2の真空圧力)を維持し、創傷治療デバイスから流体を除去することと、による。
【0098】
一実施形態では、ステップ(v)において、コントローラは、創傷から治療流体を除去するために、ステップ(v)(a)及び(v)(b)を所定の回数(例えば、3回)繰り返すように構成されている。
【0099】
一実施形態では、流体治療状態において、コントローラは、ステップ(iii)~(v)を所定の回数繰り返すように構成されている。
【0100】
一実施形態では、コントローラは、ステップ(iv)において、流体入口弁を閉鎖し、所定の時間待機し、ポンプを動作させて、創傷治療デバイスにおいて真空圧力を生成し、創傷治療デバイスから流体を除去するように構成されている。
【0101】
一実施形態では、コントローラは、流体供給状態を周期的に起動するように構成されている。
【0102】
一実施形態では、流体供給状態を起動する間の時間は、空気入口弁のサイクル時間よりもはるかに長い。
【0103】
一実施形態では、システムは、コントローラと通信する上流圧力センサ及び/又は下流圧力センサを備え、ステップ(iii)において、コントローラは、上流及び/又は下流圧力センサによって感知された圧力に基づいて、真空圧力閾値を達成するようにポンプを動作させるように構成されている。
【0104】
一実施形態では、システムは、コントローラと通信する上流圧力センサ及び/又は下流圧力センサを備え、ステップ(iv)において、コントローラは、上流及び/又は下流圧力センサによって感知された圧力に基づいて、真空圧力閾値を達成するようにポンプを動作させるように構成されている。
【0105】
本発明は、本明細書で言及又は示される部品、要素、及び特徴、個別に又は集合的に、任意の2つ以上の当該部品、要素、又は特徴の任意若しくは全ての組み合わせで構成されると広く言うこともできる。本発明が関係する技術分野において既知の均等物を有する特定の整数が本明細書で言及される場合、そのような既知の均等物は、あたかも個別に説明されているかのように本明細書に組み込まれるものとみなされる。
【0106】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される「含む」という用語は、「少なくとも部分的に~からなる」ことを意味する。「含んでいる」という用語を含む本明細書及び特許請求の範囲の記述を解釈するときに、この用語で始まるもの以外の他の特徴も存在する可能性がある。「含む」及び「含まれた」などの関連用語も同様に解釈される。
【0107】
本明細書に開示されている数値の範囲(例えば、1~10)への参照は、その範囲内の全ての有理数及びその範囲内の任意の有理数の範囲(例えば、1~6、1.5~5.5、及び3.1~10)への参照も組み込まれることを意図する。
【0108】
したがって、本明細書に明示的に開示された全ての範囲の全ての部分範囲は、本明細書に明示的に開示されている。
【0109】
本明細書で使用される場合、名詞に続く「(複数可)」という用語は、その名詞の複数形及び/又は単数形を意味する。本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、「及び」若しくは「又は」、又は文脈が許す場合にはその両方を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0110】
ここで、本発明は、添付の図面を参照し、例としてのみ説明される。
【
図1】固定タブを有する第1の実施形態のデバイスを示す右上斜視図である。
【
図2】
図1のデバイスを示す左下面側斜視図である。
【
図7】トラス形態を有する例示的な導管構造体の斜視図である。
【
図11A】流体除去ルーメンの多孔質部分を通して取られた、
図10のトラスを通る断面図である。
【
図11B】デバイス入口及び出口を示す、
図7~
図10の導管構造体の一体形成部分の端面図である。
【
図11C】流体除去ルーメンの多孔質部分を通して取られた、
図7~
図10の導管構造体を通る断面図である。
【
図13】トラスタイプの導管構造体を有する代替的な実施形態のデバイスを示す上面切り欠き図である。
【
図16】連続固定フランジを有する更なる実施形態のデバイスを示す右上斜視図である。
【
図22A】代替的な実施形態の導管構造体を示しており、
図22Aは、部分斜視断面図であり、
図22Bは、部分上面詳細図である。
【
図22B】代替的な実施形態の導管構造体を示しており、
図22Aは、部分斜視断面図であり、
図22Bは、部分上面詳細図である。
【
図23】デバイスの長さを短くするように調節可能である、更なる実施形態のデバイスを示す切り欠き斜視図である。
【
図24】
図23のデバイスのデュアルルーメン導管の斜視図である。
【
図25(i)】
図23のデバイスを短くするプロセスを示す部分上面図であり、
図25(i)は、デバイスの切断を示し、
図25(ii)は、デバイスの切断端部を示し、
図25(iii)は、切断されたデバイスを示す切り欠き図であり、
図25(iv)は、管構造体がその新しい位置に調節されたことを示す切り欠き図であり、
図25(v)は、デバイスの端部を平らにすることを示し、
図25(vi)は、封止部を形成するために折り畳まれた端部を示す。
【
図25(ii)】
図23のデバイスを短くするプロセスを示す部分上面図であり、
図25(i)は、デバイスの切断を示し、
図25(ii)は、デバイスの切断端部を示し、
図25(iii)は、切断されたデバイスを示す切り欠き図であり、
図25(iv)は、管構造体がその新しい位置に調節されたことを示す切り欠き図であり、
図25(v)は、デバイスの端部を平らにすることを示し、
図25(vi)は、封止部を形成するために折り畳まれた端部を示す。
【
図25(iii)】
図23のデバイスを短くするプロセスを示す部分上面図であり、
図25(i)は、デバイスの切断を示し、
図25(ii)は、デバイスの切断端部を示し、
図25(iii)は、切断されたデバイスを示す切り欠き図であり、
図25(iv)は、管構造体がその新しい位置に調節されたことを示す切り欠き図であり、
図25(v)は、デバイスの端部を平らにすることを示し、
図25(vi)は、封止部を形成するために折り畳まれた端部を示す。
【
図25(iv)】
図23のデバイスを短くするプロセスを示す部分上面図であり、
図25(i)は、デバイスの切断を示し、
図25(ii)は、デバイスの切断端部を示し、
図25(iii)は、切断されたデバイスを示す切り欠き図であり、
図25(iv)は、管構造体がその新しい位置に調節されたことを示す切り欠き図であり、
図25(v)は、デバイスの端部を平らにすることを示し、
図25(vi)は、封止部を形成するために折り畳まれた端部を示す。
【
図25(v)】
図23のデバイスを短くするプロセスを示す部分上面図であり、
図25(i)は、デバイスの切断を示し、
図25(ii)は、デバイスの切断端部を示し、
図25(iii)は、切断されたデバイスを示す切り欠き図であり、
図25(iv)は、管構造体がその新しい位置に調節されたことを示す切り欠き図であり、
図25(v)は、デバイスの端部を平らにすることを示し、
図25(vi)は、封止部を形成するために折り畳まれた端部を示す。
【
図25(vi)】
図23のデバイスを短くするプロセスを示す部分上面図であり、
図25(i)は、デバイスの切断を示し、
図25(ii)は、デバイスの切断端部を示し、
図25(iii)は、切断されたデバイスを示す切り欠き図であり、
図25(iv)は、管構造体がその新しい位置に調節されたことを示す切り欠き図であり、
図25(v)は、デバイスの端部を平らにすることを示し、
図25(vi)は、封止部を形成するために折り畳まれた端部を示す。
【
図26】代替的な実施形態の導管構造体の一方の端部の斜視図である。
【
図28】代替的な実施形態の導管構造体の一方の端部の斜視図である。
【
図30】代替的な実施形態の導管構造体の一方の端部の斜視図である。
【
図32】代替的な実施形態の導管構造体の一方の端部の斜視図である。
【
図34】代替的な実施形態の導管構造体の一方の端部の斜視図である。
【
図36】ループ構造を有する第4の実施形態のデバイスを示す斜視図である。
【
図41】ループ構造を有する更なる実施形態のデバイスを示す切り欠き斜視図である。
【
図42】
図41のデバイスの流体除去ルーメンを通って取られた断面図である。
【
図43】デバイスを通る流れの方向を示す、
図41のデバイスの導管構造体の平面図である。
【
図46】ループ構造を有する更なる実施形態のデバイスを示す切り欠き斜視図である。
【
図47】
図46に示される実施形態に対応する切り欠き平面図である。
【
図49】デバイスを通る流れの方向を示す、
図46~
図48のデバイスの導管構造体の平面図である。
【
図52】ループ構造を有する第5の実施形態のデバイスを示す上面斜視図である。
【
図55】ループ構造を有する更なる実施形態のデバイスを示す上面斜視図である。
【
図57】ループ構造を有する更なる実施形態のデバイスを示す上面斜視図である。
【
図58】上部シースの一部が切り取られた、ループ構造を有する更なる実施形態のデバイスを示す上面斜視図である。
【
図59A】ECMシートを通る方向性のある流体の流れを示し、
図59Aは、処理前の例示的なECM構造を示し、
図59Bは、処理後の構造及びECMシートを通る流体流れの方向性バイアスを示す。
【
図59B】ECMシートを通る方向性のある流体の流れを示し、
図59Aは、処理前の例示的なECM構造を示し、
図59Bは、処理後の構造及びECMシートを通る流体流れの方向性バイアスを示す。
【
図60】本明細書に記載される少なくとも1つの実施形態による陰圧治療(negative pressure treatment、NPT)システムの高位の概略図を提供する。
【
図64】更なる実施形態の陰圧治療(NPT)システムのシステムの概略図である。
【
図65】陰圧治療(NPT)システムの更なる代替的な実施形態の概略図である。
【
図66】空気が液体の流れに混入した状態の様々な流れ特性を示す。
【
図67】本明細書に記載される陰圧治療(NPT)システムの様々な実施形態の高位の制御フロー図を提供する。
【
図70】
図67の制御フロー図の保持圧力状態についての制御フロー図を提供する。
【
図71】
図67及び
図72の制御フロー図のタイムアウト状態についての制御フロー図を提供する。
【
図72】本明細書に記載されるNPWTシステムの様々な実施形態の高位の制御フロー図を提供する。
【
図73】
図72の制御フロー図の保持圧力状態についての制御フロー図を提供する。
【
図74】
図72の制御フロー図の流体流状態についての制御フロー図を提供する。
【
図75】
図72の流体流状態の洗い流しサイクルについての制御フロー図を提供する。
【
図76】治療システム試験セットアップのシステム性能を示すチャートを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0111】
定義
本明細書で使用される場合、「生体吸収性」という用語は、身体によって分解及び吸収又は再構築されることができ、したがって、手動で除去される必要がないことを意味する。
【0112】
本明細書で使用される場合、「治療部位」という用語は、筋肉組織、結合組織、又は皮膚組織の表面が、外科手術中に、又は外傷若しくは除去の結果として分離されている、ヒト又は動物の身体における部位を指す。
【0113】
本明細書で使用される場合、「固有層-粘膜下層」という用語は、反芻動物の前胃における粘膜固有層と粘膜下層との混合によって形成される組織構造を指す。
【0114】
本明細書で使用される場合、「粘膜固有層」という用語は、細胞外マトリックスの緻密層を含む、固有層-粘膜下層のルーメン部分を指す。
【0115】
本明細書で使用される場合、「細胞外マトリックス」(ECM)という用語は、脱細胞化されている動物又はヒト組織を指し、構造的完全性のためのマトリックス及び他の材料を担持するための枠組みを提供する。
【0116】
本明細書で使用される場合、「脱細胞化された」という用語は、組織又は臓器の一部分からの、例えば、ECMからの、細胞及びそれらの関連する破片の除去を指す。
【0117】
本明細書で使用される場合、「螺旋状」という用語は、概して渦巻き状の形態を指し、それは、円形断面を有する形態に関連し得るが、非円形断面を有する形態も指す。
【0118】
本明細書で使用される「ポリマー材料」という用語は、多くの繰り返しサブユニットを含む大きい分子又は高分子を指し、ポリペプチド及びタンパク質(例えば、コラーゲン)、多糖類(例えば、アルギネート)、並びに糖タンパク質などの他のバイオポリマーを含むがこれらに限定されない天然材料であり得るか、又はポリグリコール酸、ポリ乳酸、P4HB(Poly-4-hydroxybutyrate、ポリ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ乳酸及びポリグリコール酸コポリマー、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、並びにポリ(トリメチレンカーボネート)を含むが、これらに限定されない合成生体吸収性材料であり得、又はそれらは、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、及びポリエチレンなどの非吸収性材料であり得る。
【0119】
デバイス
ここで、本発明のデバイス及びシステムの様々な実施形態が、
図1~
図59Bを参照して説明されることになる。これらの図では、別段の説明がない限り、同様の特徴を示すために同様の参照番号が使用される。様々な実施形態が例示される場合、同様の参照番号は、後続の実施形態における同様又は類似の特徴に対して使用され得るが、100の倍数の加算を伴い、例えば、2、102、202、302などである。
【0120】
以下の説明で使用される方向に関する用語は、説明及び参照を容易にするためだけのものであり、限定することを意図するものではない。例えば、「前」、「後」、「上」、「下」という用語、及び他の関連する用語は、一般に、デバイスが図面に例示される向きを参照して使用される。
【0121】
図1は、患者の体内の治療部位における、治療部位に流体を送達し、また治療部位から流体を排出するための埋め込み用の一実施形態のデバイス1を示す。排出された流体は、治療流体及び/又は創傷滲出液を含み得る。デバイスは、除去可能な導管構造体11を囲む生体吸収性多孔質シース3を備える。導管構造体11は、創傷治療部位の2つの組織表面を離隔して保持して、流体を送達及び除去するためのチャネルを作るように作用する。
【0122】
デバイス1は、デバイスが創傷部位の輪郭に概ね適合することができるような可撓性デバイスである。デバイスは、細長くてもよいが、他の形態を有してもよい。
【0123】
導管構造体11は、導管構造体が治療の終わりに除去されるように構成されるように、身体によって非吸収性である材料を備える可撓性構造体である。導管構造体は、流体供給ルーメン13及び流体除去ルーメン15を画定する。流体供給ルーメン及び流体除去ルーメンは、並んで位置付けられてもよく、又は同軸であってもよい。
【0124】
流体供給ルーメン13は、流体除去ルーメンの入口端部に流体を供給するように構成された略閉鎖壁ルーメンである。対照的に、流体除去ルーメン15は、ルーメンの長さに沿って略多孔質の壁を有し、流体除去導管と治療領域との間の流体連通を可能にする。流体除去ルーメンは、円形又は非円形断面を有し得る。流体除去ルーメンは、少なくとも16mm2の断面積、例えば18mm2の面積を有する。
【0125】
導管構造体を囲む生体吸収性シース3は、治療部位と導管構造体との間でシース3を横切る流体連通を可能にするように位置付けられた複数の孔5を備える。孔5は各々、約1mm2以下、好ましくは約0.8mm2以下、例えば約0.2mm2~約0.5mm2の面積を有する。孔が小さすぎる場合、デバイス1は、漿液腫形成の防止に効果がない場合がある。孔5が大きすぎる場合、脂肪組織などの創傷破片がデバイス内に引き込まれ、閉塞を引き起こす可能性がある。
【0126】
導管構造体11上へのシース3の嵌合は、シースが陰圧の適用時に流体除去ルーメン内に吸引されないことを確保し、創傷破片がシース孔5以外を通って導管構造体に入る可能性を最小化するように緊密であるべきである。好ましい実施形態では、シース3は、頂部シート3a及び底部シート3bを備え、頂部シート3a及び底部シート3bは、導管構造体11を包み、導管構造体11をシート間に挟む。頂部シート3a及び底部シート3bは、導管構造体11の側部に沿って、側部継ぎ目9に沿って互いに接合され、側部継ぎ目9は、例えば、1列以上の縫い合わせ部を含み得る。
【0127】
シース3は、例えば、フランジ又はタブ7を創傷治療部位の組織に縫合することによって、デバイス1を創傷治療部位に固定するための1つ以上のフランジ又はタブ7を備える。デバイスを固定するこの能力は、創傷部位におけるデバイス1の正確な配置を可能にし、特に高位の動きを受ける治療部位に対して、デバイスが設置位置から離れるように移動する可能性を低減する。デバイス1のシース3を治療部位の組織に固定することにより、シース3の動きを最小限に抑えながら除去可能な導管構造体11を除去することも可能になり、それによって、シース3と接合している可能性がある周囲の組織の破壊が低減される。
【0128】
フランジ又はタブ7は、側部継ぎ目9を越えて延在し、好ましくは、頂部シース層3a及び底部シース層3bの両方を備えて、固定縫合糸とのより強い接続を提供し、フランジ又はタブを補強して縫い合わせの容易さを改善する。フランジ又はタブ7は、シート3a、3bが分離するのを防止するために、周縁ステッチ線10に沿って、タブ7のフランジの縁部又はその近くで一緒に縫い合わされ得る。
【0129】
本発明のいくつかの実施形態では、シース3は、細胞外マトリックス(ECM)から形成される。ECMシートは、典型的には、高度に保存されたコラーゲン、糖タンパク質、プロテオグリカン、及びグリコサミノグリカンをそれらの天然の構成及び天然の濃度で含むコラーゲンベースの生分解性シートである。ECMは、様々な供給源、例えば、ブタ、ウシ、及びヒツジ、又は他の温血脊椎動物を含む、食肉生産のために飼育された動物から採取された真皮心膜又は腸組織から取得され得る。
【0130】
本発明における使用に好適なECM組織は、天然に結合したECMタンパク質、糖タンパク質、及びECMの供給源に依存してECM内に天然に見出される他の因子を含む。ECM組織の1つの供給源は、温血脊椎動物の前胃組織である。本発明における使用に好適なECMは、メッシュ又はスポンジのシートの形態であり得る。
【0131】
前胃組織は、本発明における使用のためのECM組織の好ましい供給源である。好適な前胃ECMは、典型的には、反芻動物の前胃の固有層-粘膜下層を含む。本発明の特定の実施形態では、固有層-粘膜下層は、前胃の第一胃、第二胃、又は第三胃からのものである。これらの組織足場は、典型的には、輪郭付きルーメン表面を有する。一実施形態では、ECM組織は、上皮、基底膜、又は胃筋層の部分、及びそれらの組み合わせを含む、脱細胞化された組織を含有する。組織はまた、コラーゲンI、コラーゲンIII、又はエラスチン、及びそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、1つ以上の線維性タンパク質を含み得る。これらのシートは、脊椎動物種の供給源に依存して厚さ及び定義が変化することが知られている。
【0132】
本発明による使用のためのECM組織を調製する方法は、米国特許第8,415,159号に説明されている。
【0133】
本発明のいくつかの実施形態では、ポリマー材料のシートが使用され得る。ポリマー材料は、シート又はメッシュの形態であり得る。ポリグリコール酸、ポリ乳酸、及びポリグレカプロン-25などの合成材料は、短期的には追加の強度を提供することになるが、長期的には再吸収されることになる。代替的に、ポリマー材料は、天然材料であってもよく、又はタンパク質(例えば、コラーゲン)、多糖類(例えば、アルギネート)、及び糖タンパク質(例えば、フィブロネクチン)などの、天然材料由来であってもよい。
【0134】
任意の望ましい生物活性分子が、ECM又はポリマー材料に組み込まれてもよい。好適な分子としては、例えば、小分子、ペプチド若しくはタンパク質、又はそれらの混合物が挙げられる。生物活性材料は、ECMに対して内因性であり得るか、又は移植片製造プロセス中若しくはその後にECM及び/若しくはポリマー材料に組み込まれる材料であり得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の別個の生物活性分子がECM又はポリマーに非共有結合的に組み込まれ得る。生物活性分子は、懸濁液、カプセル化された粒子、微粒子、及び/若しくはコロイドとして、又はそれらの混合物として、材料に非共有結合的に組み込まれ得る。生物活性分子は、ECM/ポリマー材料の層間に分布され得る。生物活性材料としては、限定されるものではないが、タンパク質、成長因子、抗菌剤、並びにドキシサイクリン、テトラサイクリン、銀、FGF-2、TGF-B、TGF-B2、BMR7、BMP-12、PDGF、IGF、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、及びヒアルロナンを含む抗炎症剤が挙げられ得る。
【0135】
図1~
図6は、上部シート3a及び下部シート3bを備えたシース3を有する第1の例示的な実施形態のデバイス1を示す。前述したように、上部シート3a及び下部シート3bは、導管構造体11の側部に沿って縫われた継ぎ目9において接合されており、タブ7が継ぎ目から突出している。孔5は、頂部シースシート3a及び底部シースシート3bの両方に提供される。
図4を参照すると、孔5は、孔5のうちのいくつかがデバイスの側部上に位置付けられるように分布される。これらの側部孔は、頂部孔が組織表面と接触している場合に、陰圧が治療部位に適用され続けることを可能にするために、いくつかの用途において有用であり得る。示される実施形態では、上部シート3a上の外側の2列の孔5は、上向き及び外向きの角度に開放しており、下部シート3b上の外側の2列の孔5は、下向き及び外向きの角度に開放している。
【0136】
デバイス1は、細長形状を有し、デバイスの入口ポート及び出口ポートの両方が同じ端部に提供され、デバイスの反対側の閉鎖した端部3cを有する。シース3は、入口及び出口に近接するシースの端部に封止端区分3dを備え、導管11はシース3から突出する。この端区分3dは、孔を有さず、流体不浸透性壁を備える導管構造体11Aの一部分の上に延在している(
図7~
図10に更に示される)。この端区分3dは、下にある導管構造体11と緊密な嵌合を形成し、閉塞を引き起こす可能性がある、シース3と導管構造体11との間の創傷破片、組織破片、及び脂肪の進入を防止又は低減する、導管構造体11とのあるタイプの封止部を提供するように作用する。
【0137】
導管構造体11及びシース3は、
図3に最もよく示されているように、シース3の開放部においてより小さい断面を作るために、スリーブ3の封止端区分3dにおいて、又は封止端区分3dに沿って細くなっていてもよい。この細くなった区分は、端部領域3dにおけるシース3と導管構造体11の外面との間の封止部を更に強化し、シース3内での導管構造体11の保持を改善する。この構成は、以下でより詳細に説明するように、導管構造体がトラスを備える実施形態での使用を特に意図している。
【0138】
いくつかの実施形態では、封止端区分3dと導管構造体11との間の封止部は、この端区分3dを長くすることによって更に改善することができる。追加的に、又は代替的に、シース3は、この区分3dにおいて、シースの周りを緊密に包むように、輪タイプのひもを使用して導管構造体11に結合され得る。いくつかの実施形態では、生体吸収性材料の追加のシートが、封止を改善するために、この端区分3dで導管11の周りに巻かれてもよい。
【0139】
図1に示される実施形態では、デバイス1は、並んで配置された流体供給ルーメン13と、除去ルーメン15を有する除去可能な導管構造体11と、を備える。この実施形態では、導管構造体11の長さ(シースの外側の長さを含む)は、押出成形されたデュアルルーメン導管からなる。流体供給ルーメン13は、流体不浸透性壁を有する略閉鎖壁チューブであり、シース3内に位置付けられて、流体をデバイス1の遠位閉鎖端部3cに送達し、それによって流体除去ルーメン15の入口端部に送達する。入口ルーメン13の出口端部は、流体除去ルーメン15の入口端部に隣接し、これと流体連通している。流体供給ルーメン13のどの部分も創傷部位から下流方向に流体連通していないので、供給された流体は、供給ルーメン13内で閉塞が生じることなく、一貫して流体除去ルーメン15に送達される。
【0140】
図7~
図12は、
図1~
図6の実施形態における使用のための1つの例示的な実施形態の導管構造体11を示す。この実施形態では、導管構造体は、2つの部分、すなわち、シース3の第1の端部の近位側に位置付けられ、シースから突出する第1の一体形成部分11Aと、シース3内に完全に収容される第2の部分11Bと、を備える。
【0141】
導管構造体11の一体形成部分11Aは、入口ルーメン13の第1の部分及び出口ルーメン15の第2の部分を画定し、デバイス1への入口及び出口を形成するデュアルルーメン導管を備える。一体形成部分11Aのルーメン13、15は、貫通孔を有しない不浸透性壁を備える。典型的には、流体供給のための入口ルーメン13は、より大きい流体除去ルーメン15よりも著しく小さい。一体形成部分11Aは、成形部品であってもよく、好ましくは、シリコーンなどの材料から形成されてもよい。
【0142】
導管構造体11の第2の部分11Bは、流体供給ルーメン13の第2の部分を画定する別個の流体供給導管12と、流体除去ルーメン15の第1の部分を画定する可撓性トラス構造体21と、を備える。流体供給導管12は、一体形成部分11Aの流体供給ルーメンと、好ましくは同軸に配設された流体供給ルーメンの第1及び第2の部分と流体連通するように配置される。流体供給導管12は、例えばシリコーンなどの材料から形成された流体不浸透性壁を有する押出成形された構成要素であってもよい。
図11Cを参照すると、流体供給導管12の外部は、トラス構造体21を補完するように成形され得る。
【0143】
可撓性トラス構造体21は、流体除去導管15の多孔質区分の壁を形成する。トラス21は、本質的に管状であり、非円形又は円形断面を有する(この実施形態では、トラスは、実質的に楕円形の断面を有するルーメン15を画定する)。トラス21は、使用時に、全ての略半径方向において周囲の組織表面に支持を提供するように構成されている。トラス21は、その長手方向及び横断方向において可撓性であり、チャネルが、治療部位の輪郭に実質的に一致するように屈曲することを可能にするが、一方で、少なくとも埋め込み時に、移動又は陰圧の臨床的に適切なレベルの適用下におけるトラスの座屈又はチャネルの崩壊若しくはねじれを伴わず、2つの組織表面を離して保持するのに十分な強度を有する。トラス21は、トラス21の長手方向に相対的に非圧縮性であることが好ましい。
【0144】
トラス21は、2つの可撓性細長壁部材23a、23bを備え、これらの壁部材は、流体除去ルーメン15のための枠組みを形成し、それによって流体除去ルーメン15を画定するように巻かれ、流体除去ルーメン15の中に治療部位からの流体を排出することができ、又は流体除去ルーメン15から治療部位に流体を送達することができる。壁部材は、複数の交差横断ノードで互いに周期的に交差するように巻かれる。壁部材23a、23bは、最も一般的には螺旋状に巻かれており、2つの壁部材は、反対(左回り及び右回り)の巻きを有する。代替的に、トラス21は、同じ方向であるが異なるピッチで巻かれた螺旋部材、又は代替的な非螺旋反復形状の複数の壁部材を備えてもよく、それにより壁部材は交差横断ノードで互いに周期的に交差する。
【0145】
トラス21は、少なくとも2つの可撓性細長ブレーシング部材25を更に備え、各ブレーシング部材は、トラスに沿って周期的な相互係止点を形成する複数の壁部材交差横断ノードにおいて、例えば熱接合によって、2つの細長い壁部材23a、23bに接合又は連結される。好ましい実施形態では、各ブレーシング部材25は、出口ルーメン15の壁に沿って略長手方向に延在する。これらのブレーシング部材25は、壁部材23a、23bの周期的な交差横断ノードを離隔した関係に保持し、これらの点の相対移動によるルーメン壁の崩壊を低減又は防止し、それによって、圧潰及びねじれの可能性を防止又は最小化するように作用する。
【0146】
最後に、1つ以上の固定トラス部材27が、除去ルーメン15を画定するトラス21に沿って別個の流体供給導管12を固定するために提供される。示される実施形態における固定トラス部材27は、出口ルーメン15及び別個の流体供給導管12を画定する流体除去トラス21の外側の周りに巻かれる螺旋部材27を備える。この固定トラス部材27はまた、シース3を流体供給導管12の不浸透性壁から有利に離隔させ、それによって、流体供給導管12の壁を越えて流体除去ルーメン15への流体経路を作る。これにより、デバイス1の全幅にわたる流体の供給及び除去が可能になる。
【0147】
壁トラス部材23a、23b及び固定トラス部材27は、それぞれの端部分24、28、29で緊密に巻かれ得る。これらの緊密に巻かれた部分24、28、29は、螺旋部材を固定し、一体形成部分11Aとの結合など、様々なデバイス構成要素間の接続を容易にする。
【0148】
トラス21を製造するために、第1のステップにおいて、フィラメントは、クランプによって一方の端部でクランプされ、第1の端部分29の一部を形成するように第1のピッチ長さで螺旋様式で第1のロッド状マンドレルの周囲に巻かれる。次に、フィラメントは、第1のマンドレルの周囲に第2のピッチ長さで螺旋様式で更に巻かれて第1の壁部材23aを形成し、次にフィラメントは、反対側の端部で適所にクランプされる。次に、2つの細長ブレーシング部材25もクランプによってそれらの端部でクランプされ、マンドレルの対向する側部、典型的には頂部及び底部に沿って、第1の壁部材23aの上に置かれる。次に、第2のフィラメントがクランプによってクランプされ、第1の壁部材23aとは反対方向に第1のピッチ長さで第1のロッド状マンドレルの周りに巻かれて、第2の端部分24を形成する。次いで、第2のフィラメントは、第2のピッチ長さでマンドレルの周りに更に巻かれて、第2の壁部材23bを形成する。第1の端部分29の第1の部分に到達すると、第2のフィラメントは、第3のピッチ長さで巻かれて、第1の端部分29の緊密な巻きを完成する。第1の螺旋部材、ブレーシング部材、第2の螺旋部材、及び第1のロッド状マンドレルは、内側トラスを形成する。
【0149】
次のステップでは、第2のマンドレルが内側トラス及び第1のロッド状マンドレルに沿って位置付けられる。固定部材27を形成するためのフィラメントは、クランプされ、第1のピッチ長さで螺旋状様式で巻かれて、緊密に巻かれた第1の端部分28を生成する。次いで、フィラメントは、第1の端部分28の反対側の端部に第2の端部分28を形成するように緊密に巻かれる前に、トラスの長さの大部分に沿って固定トラス部材27を形成するように、増加したピッチ長さで螺旋状様式で更に巻かれる。次いで、巻かれたフィラメントは加熱されて、ブレーシング部材25を第1の壁部材23a及び第2の壁部材23bに、それらが重なり合う点で融着させる。トラスは冷却され、それによってトラス部材の形状を設定することが可能になる。冷却後、クランプ及びマンドレルは除去されて、
図10及び
図12に示されるような中空トラスを残す。押し出された隣接する除去ルーメンの端部11Aは、トラス構造体21の端部分29上に押し込まれ、押し出された流体供給ルーメン12が挿入されて、
図9に示される構造を形成する。方法ステップの順序は変化してもよく、全てのステップが必要であるわけではないことは明らかであろう。
【0150】
トラス部材23a、23b、25、27は、好ましくは、モノフィラメントポリプロピレンなどの非吸収性ポリマーフィラメントを含むが、任意の好適な吸収性又は非吸収性ポリマーが使用され得る。好ましくは、フィラメントは、フィラメントの機械的特性をある程度変更するであろう過度の溶融が生じることなく、フィラメントを融点まで加熱することができるように選択される。
【0151】
図13~
図15は、上述されたトラス構造体21と同様であるが、代替的な形態のシース203内にあるトラスタイプの導管構造体221を備える第2の実施形態のデバイス201を示す。このデバイス201では、シース203は、複数のタブ7ではなく、デバイスの正中線から突出する単一のフランジ207を備える。単一のフランジ207は、有利には、デバイス201が、デバイスが骨などに取り付けられ得ない別個の領域を収容する起伏のある部位又は側部において使用されるとき、より良好な固定を可能にする。
【0152】
この実施形態では、シース203の開口端部203dは、一定の幅を有しており、狭くなることはない。これは、入口で狭くなる実施形態と比較して、より容易な組み立てを提供する。
【0153】
生体吸収性材料の2枚のシートの間に挟まれるのではなく、線形導管構造体を有する上述されたようなデバイスでは、シースは、導管構造体の周りで包まれ、導管構造体の一方の側部に沿って接合された生体吸収性材料の単一のシートを備え得る。固定フランジは、吸収性シートを折り畳み、折り目に沿って及び折り目から縫い付けることによって、導管の対向する側部に沿って作られ得る。
【0154】
代替的な実施形態では、導管構造体は代替的な形態を有し得る。
図16~
図22Bは、第2の実施形態のデバイス101を示しており、ここでは、導管構造体111の全長が、前述したトラスを備える構造体とは対照的に、可撓性のデュアルルーメン押出成形部を備える。
【0155】
デュアルルーメン押出成形部111は、典型的には、シリコーンなどの材料から形成され、流体供給ルーメン115及び流体除去ルーメン113は、並んで形成される。特に
図21の断面図を参照すると、この実施形態では、流体供給ルーメン113は、円形断面及び流体不透過性壁を有する。流体除去ルーメン115は、流体供給ルーメン113よりも著しく大きく、断面がD字形である。D形状は、導管構造体111の外径を考慮すると、円形断面と比較して増加した除去ルーメン容積を提供する。孔106が流体除去導管の壁内に提供されて、そのチャネルへの流体の出入りを可能にする。孔106は各々、約0.5mm
2の面積を有する。
【0156】
シース103の入口端部103dは、一定の幅であり、デバイス入口に向かって狭くならず、これは、必要なときに導管構造体111の容易な除去を容易にする。
【0157】
図23~
図25(vi)は、様々な創傷に適合するようにデバイスをカスタマイズするために長さ調節可能な代替的な形態のデバイス501を示す。デバイス501は、より小さい治療部位に適合するように必要に応じて短くするために、
図23に示される第1の長さで提供される。
【0158】
この実施形態のデバイス501は、第1の実施形態のデバイス1のシース3と実質的に同じシース503を備える。導管構造体511は、流体不浸透性壁を有する流体供給ルーメン513と、より大きい流体除去ルーメン515とを有する、
図24に示される可撓性のデュアルルーメン押出成形部を備える。流体除去ルーメン515の壁は、導管構造体511の長さTDに沿って対向して位置付けられた2列の孔506を備える。この実施形態の導管511の孔506は、先の実施形態111の孔よりも大きく、したがって、シース503のより小さい孔505と重なり合う可能性が高い。したがって、より大きい孔506は、治療部位から導管内への流体の改善された交換を提供し得る。
【0159】
孔506は、典型的にはシースの長さよりも短いデバイスの長さELに沿って提供される。デバイスのこの長さELは、真空が維持されることを確保するために、封止された環境内(すなわち、封止された治療部位内)に収容されなければならない。加えて、この実施形態では、この導管上の孔は、閉塞を防止するための最小閾値寸法(例えば、0.5mm2)よりも大きく、それらはまた、閉塞を防止するために、デバイス501のシース503内に収容されなければならない。
【0160】
導管構造体511の遠位端部は、流体供給ルーメン513の出口を流体除去ルーメン515への入口よりもデバイスに沿って遠くに位置付けるように角度付けされた、角度付き表面516を備える。この角度付き表面は、流体供給ルーメン513の出口から流体除去ルーメン515への流体流れFを受け入れるために、表面516とシース503cの端部との間でシース503内に空洞を作る。
【0161】
図25(i)~
図25(vi)は、デバイス501の長さを短くするプロセスを示す。
図25(i)~
図25(iii)に示される第1のステップでは、デバイス501が切断線CLに沿って切断される。切断線CLは、デバイスの長手方向に対してある角度にあり、導管構造体511の角度付き端部516表面と実質的に平行であるべきである。このようにデバイス501をある角度で切断することは、短くされたデバイスが、流体流Fを受け入れるために表面516とシースの端部との間でシース503内に空洞を留めることを確保する。切断線CLの位置は、以下で説明されるように、シース端部の封止部を受け入れるためにデバイスの所望の長さよりもわずかに長くなるように選択されるべきである。
【0162】
第2のステップでは、導管構造体511は、
図25(iii)の同様のMLによって示されるように、シースに対して入口の方向に引っ張られる。これにより、
図25(iv)に示されるように、導管構造体516の切断された角度付き端部511’とシース503の切断された端部503c’との間に間隔Sが作られる。デバイスのサイズを変更するためのシース内での導管構造体511のこの予想される移動を受け入れるために、導管構造体は、孔506を有しない封止長さSLを有し得る。この長さSLは、大きい孔506が、シースを越えて、又はデバイスの封止を損なうか、若しくはデバイスが短くされるときに閉塞をもたらし得る位置まで引っ張られないことを確保する。
【0163】
これを軽減し、より長い有効長さELを有するデバイスを提供するために、遮断閾値よりも小さい寸法を有する小さい孔が、長さSLに沿って任意選択で提供され得る。より長い有効長さELは、最も近い孔506までの距離によって決定されるデバイスの有効治療面積を増加させるため、有利である。一例として、
図23の実施形態では、デバイスは、最も近い孔に対して約25mm以内までのみ治療を提供し得る。
【0164】
図25(v)及び
図25(vi)を参照すると、最終ステップにおいて、シース503の端部における余分な材料530は、シースの端部を閉鎖するために、平坦化され、垂直な折り目FLに沿って折り重ねられる。折り畳まれた部分530は、治療部位で組織に固定され、デバイスの切断端部を通るあらゆる望ましくない組織の進入を防止する。
【0165】
一実施形態では、
図25(i)~
図25(vi)に示されるデバイスは、使用前に臨床医によって組み立てられる別個の構成要素として提供され得る。そのような実施形態では、シース503は、2つの開放端部を有する略管状形態であってもよく、近位区分503dは、実質的に、様々な実施形態に関連して本明細書に記載されるようなものであり、対向する遠位端部503cは、
図25(ii)に示されるものと同様の形態で開放している。503cにおける開放端部は、正方形の縁部又は角度付き縁部などの任意の好適な形状を有し得る。頂部及び底部シースの端縁部は、整列してもよく(
図25(ii)に示されるように)、又はデバイスの一方のシースは、導管構造体との組み立てを容易にするように、他方のシースを越えて延在してもよい。この代替的な実施形態のデバイスは、
図25(iii)~
図25(v)に示されるステップに従って、埋め込み前に臨床設定内で組み立てられてもよく、デバイス503cの遠位端部は、埋め込み中に折り畳まれ、適所に固定される(
図25(vi)に示されるように)。
【0166】
図22A及び
図24は、特に、
図23のデバイスにおける使用のための2つの代替的な非吸収性デュアル導管タイプの構造体を示す。しかしながら、代替の設計も想到される。
図23~
図25(vi)の実施形態では、流体除去ルーメン515は、約18mm2の面積を有するD字形断面を有し、流体供給ルーメンは、約1.4mmの直径を有する円形断面を有する。しかしながら、これらのルーメンの他のサイズ及び形状も想定される。例えば、入口ルーメンは、約1mm~約2mmの直径を有し得る。
【0167】
図22A及び
図22Bの導管構造体111が使用される実施形態では、小さい0.5mmの孔106は、孔がデバイスのより長い長さを覆うことを可能にする。デバイスの長さを調節するとき、導管構造体111は、孔のうちのいくつかがシースの封止領域503d内にあるように、又はシースの外側にあるように引っ張られてもよいが、孔の小さいサイズは、流体除去ルーメンの遮断を防止する。
【0168】
更なる実施形態では、小さいサイズの孔106は、シースの封止端部503dの近くの局所的なゾーン(ただし、シースの内部)にのみ提供され得る。流体除去導管の残りの長さは、導管と治療領域との間のより高度の流体交換を提供するために、より大きい孔を含み得る。これは、孔のいくつかがシースの外側になるようにデバイスを短くするステップ中に、ユーザが不注意にスリーブからチューブを過度に多く除去した場合、孔のサイズが小さいことにより、流体除去ルーメンの遮断が防止されることを意味する。
【0169】
例として、
図26~
図35は、いくつかの更なる実施形態の導管構造体を示す。
図26及び
図27は、内部コール614によって分離された流体供給ルーメン613及び流体除去ルーメン615を有する一実施形態の導管構造体611を示す。この実施形態では、流体除去ルーメン615は、1列のスロット状孔606を備える。孔606は、ルーメン壁の湾曲に追従し、それらのより大きいサイズは、治療部位から流体除去ルーメン616の中への流体の通過を改善する。導管611の端面606は、流体供給ルーメン613及び流体除去ルーメン615のそれぞれの端部に少なくとも部分的にわたって延びる凹面616を有する。この凹面は、流体供給ルーメン613の出口から流体除去ルーメン615への流体流Fを受け入れるために、凹面616とシースの端部との間のシース内に空洞を作り、流体供給ルーメン613の出口も流体除去ルーメン615の入口もシースによって遮断されないことを確保する。
【0170】
図28及び
図29は、別の実施形態の導管構造体711を示す。この実施形態では、流体供給ルーメン713と流体除去ルーメン715とを分離する内壁714は、導管716の端部の手前で終端する。分割壁714のこの後退は、導管端壁716から離隔した点において、流体が導管711内の2つのルーメン間を流動するための通路Fを提供する。これは、スリーブが使用中に導管716の露出した端部に対して又はその中に吸引される場合、ルーメン713、715の間の通路が維持されることを確保する。
【0171】
図30及び
図31は、更なる実施形態の導管構造体811を示す。この実施形態では、流体除去導管に沿った孔806は、孔の列及びスリットの列の両方によって提供される。孔806は、細長いスリット状の孔であり、輪郭がV字形である。貫通孔817は、導管端部816から離隔した点において、導管811の長手方向に垂直に導管を貫通して提供される。この貫通孔は、流体供給ルーメン813を分離する内壁814を貫通して延在し、導管端壁816から離隔した点において、導管811内の2つのルーメン間を流体が流れる通路Fを作る。これは、スリーブが使用中に導管816の露出した端部に対して又はその中に吸引される場合、ルーメン813、815の間の通路が維持されることを確保する。
【0172】
図32及び
図33及び
図34及び
図35は、前述した実施形態の変形例を示す2つの更なる実施形態の導管911、1011を示す。
図32及び
図33の導管は、短くされた内壁914と、流体除去導管915に沿った1列のスリット状孔と、を備える。
図34及び
図35の導管は、横断貫通孔1017と、2列のスリット状孔1006と、を備える。特徴部は、上述された実施形態のうちの異なるものから選択されてもよく、更なる実施形態を作るために所望に応じて組み合わせられてもよいことが理解されるであろう。
【0173】
図36~
図40は、大きい創傷に特に好適であり得る代替的な形態のデバイス301を示す。いくつかの用途では、この実施形態のデバイス301は、組織の平面に沿って、例えば、修復された筋肉の筋膜に固定され得るか、又は修復された組織の平面にわたって、例えば、組織の皮下層の閉鎖などの組織の層にわたる修復に組み込まれ得る。この実施形態では、流体供給ルーメン313及び流体除去ルーメン315は同軸であり、ループを形成する。
【0174】
この実施形態301における導管構造体311は、デバイス301の結合入口/出口構成要素320を備え、これは、流体供給ルーメン313の一部分及び流体除去ルーメン315の出口部分を画定する。構成要素320は、Y字形であり、ルーメン313、315は、構成要素を通る長さにわたって略平行であり、並んでおり、次いで、入口/出口ポートに対して遠位の構成要素320の端部において分岐する。ルーメン313、315は、同じ断面形状及びサイズを有する。この例では、ルーメン313、315は断面が円形であるが、他の形状も想定される。
【0175】
結合入口/出口構成要素320の分岐端部は、流体除去ルーメン315の残りの長さのための枠組みを形成する構造体321に流体結合するように構成される。したがって、この実施形態では、流体供給ルーメン313は、結合構成要素320(及び任意選択で任意の上流の結合構成要素)のみを通って延在し、したがって、ループの周り及び結合構成要素320を通って延在する流体除去ルーメン315よりも長さがはるかに短い。
【0176】
流体供給ルーメン313及び流体除去ルーメン315の両方の壁は、デバイス321に供給される流体の100パーセントが導管構造体311のループ状部分321に供給されるように、結合構成要素320を通して実質的に流体不浸透性である。結合構成要素320は、例えばシリコーンから成形された成形構成要素であり得る。
【0177】
この間隔が近すぎる場合、供給された流体は、ループ状部分321を迂回し、それによって、治療部位の大部分を迂回し、代わりに、デバイス301から真っ直ぐに引き出され得る。
【0178】
細長チャネルを画定する任意の導管構造体は、導管構体311のループ状部分321における使用に好適であり得、例えば、トラスベースの又は中空押出成形タイプの導管構造体である。構造体321は、創傷部位からの除去を必要としない生体吸収性材料を備え得るか、又は構造体321が治療が完了すると除去されるように、非吸収性材料を備え得る。
【0179】
ループ状構造体は、有利には、デバイスの中心部分への真空圧の適用を可能にし、これは、欠損部位の縁部から最も遠く離れて位置付けられる治療部位の中心領域(移動しているか又は分離されたままである可能性が最も高い)に直接真空圧を適用する。
【0180】
図40は、
図36~
図39の実施形態における使用のための導管構造体321の一形態を示す。構造体321は、シリコーンなどの非吸収性材料から形成され、X字形断面を有する押出成形部を備える。X字形は、流体除去ルーメン315に沿って4つの流路を画定する。各クロス部材の端部上の湾曲フランジ322は、シース303を十分に支持して、陰圧の適用時にシースが流体除去導管の中に引き込まれることを防止するように作用する。フランジ322は、4つのそれぞれの通路への4つの細長いスリット状開放部を画定して、供給された流体のルーメンから外への通過、及び創傷流体のルーメン315内への通過を可能にする。
【0181】
図36~
図40のデバイス301では、構造体321を囲むシース303は、頂部シート303a及び底部シート303bを備え、単一のフランジ307がデバイスの外周の周りに形成され、第2の内部フランジがループの中心に開放部を有する。孔305は、頂部及び底部シースシート303の両方に提供される。
【0182】
シースは、Y字形カップリング320を包む孔を有しない入口部分303dを形成する。
【0183】
図41~
図45及び
図46~
図51は、2つの代替的なループタイプの実施形態1101、1201を示す。これらの実施形態では、別個のY字形コネクタが省略され、代わりに、導管構造体1111、1211は、接合部において2つの別個の単一のルーメン枝1111b、1211b、1111c、1211cに分割するデュアルルーメン部分1111a、1211aを有する一体構成要素として作製される。各枝1111b、1211b、1111c、1211cは、構造体1111、1211の壁を通して流体を交換するための複数の孔1106、1206を備える。
【0184】
図45及び
図51は、デバイス1101、1201の組み立て前のそれぞれの導管構造体1111、1211を示す。デバイスを組み立てるために、導管構体枝1111b、1211b、1111c、1211cの端部は、同軸になるように一緒に突き合わされ(1118、1218)、デバイス1101、1201を通る単一の連続したルーメンを形成する。次に、シースは、2枚のシートが導管構造体の周りで一緒に縫い合わされたときに枝を定位置に保持する。代替的に、生体吸収性材料の追加のスリーブが、導管を定位置にしっかりと維持するように、それらがともに突き合わされる(1118、1218)導管体枝の周囲に緊密に包まれてもよい。当業者には、これらの導管枝を定位置に維持するための他の手段が想定される。
【0185】
これら2つの実施形態1101、1201の導管構造体1111、1211上の孔配置1106、1206は単なる例であり、多くの異なる孔形状及びレイアウトが可能である。導管構造体の各枝について、Y接合部に隣接する導管の第1の長さの壁は、孔1106、1206を有さず、その結果、その長さにわたってルーメン内への又はルーメンからの流体移送は不可能である。枝1111b、1211b、1111c、1211cのこれらの孔のない部分は、供給された流体がシース1103、1203を通って創傷部位に移動することができる第1の点と、流体が創傷部位から引き出されることができる第1の点との間に間隔Sを作るために重要である。この間隔Sが近すぎる場合、供給された流体は、ループ状部分を迂回し、それによって、治療部位の大部分を迂回し、代わりに、デバイス1101、1201から真っ直ぐに引き出されることがある。
【0186】
上記の実施形態に関して、シース1103、1203は、孔を備え得るか、又は孔を有さずに、流体移送のためにシースの多孔性に依存し得る。
図41に示される実施形態1101では、シースは、孔を有さず、シースの多孔性に依存して、シース1103を横切る流体移送を容易にする。
図59Bは、ECM材料の処理された層を横切る流れAFを示す。シース1203は、
図46~
図48の実施形態では、頂部シースシート1203a及び底部シースシート1203bの両方に複数列の孔を備える。
【0187】
図52~
図54は、更なる実施形態401を示しており、流体排出及び供給デバイスは、多層強化外科用メッシュに組み込まれている。外科用メッシュは、吸収性又は非吸収性であり得る。外科用メッシュは、シース403bの下層を形成する。材料の頂部シートは、シース403aの頂部層を形成する。シースの頂部層403aには孔405が提供される。この頂部層403aは、外科用メッシュ全体を覆ってもよく、又は導管構造体411のみを覆うように成形されてもよい。多層外科用メッシュは、導管構造体411を受け入れ、治療が終了したときに導管構造体411が除去され得ることを確保するパターンで、縫い合わせ部410を使用して補強される。
【0188】
この実施形態401は、腹壁修復のための特定の用途を有し得る。例えば、複雑なヘルニア修復において使用される場合、シース孔405は、典型的には、皮膚に向かって、腹腔から離れる方向に面する。これは、有利なことに、真空がデバイスの上にある分離された組織に適用されることを確保し、効果的な流体除去及び死腔の除去を確保する。デバイス403bの下側は孔を有さず、これは、下にある組織が外科用メッシュに付着することになる真空圧の適用を防止することによって、腹壁の治癒を助けることができる。孔405がある一方で、頂部シース層403aは、分離された皮下組織のデバイス401への並置を改善して、手術の完了後に残る臨床的死腔を低減するように作用する。
【0189】
代替的な実施形態では、複数の導管及び/又は上部シース層が、単一メッシュに固着され得る。
【0190】
図55~
図57は、同様の実施形態のデバイスを示すが、
図49~
図51に関して説明したものと実質的に同じ代替導管構造体1311を有する。この実施形態では、シース1303aの頂部は一連の孔を有し、シース403bの下側は孔を有しない。デバイス1301の下部シース1303bは、インプラントとして、又は創傷を覆って真空シールを達成するためのカバーとしての使用のために、ポリマー材料、例えば、ECM、ポリマー、発泡体などの1つ以上の層から形成され得る。
【0191】
図58の例示的な実施形態1401によって示されるように、多層製品又は構造に組み込まれた導管構造体1411は、任意の所望の経路に追従し得る。より大きい領域を覆うデバイスに関して、
図58に示されるような導管構造体の蛇行は、流体除去ルーメンの長さを増加させ、それによって、流体及び/又は陰圧が横切って送達される領域を増加させるために望ましくあり得る。
【0192】
外科用メッシュの表面にわたるより大きい導管被覆は、治療部位に供給される総力を増加させ、それは、完全な死腔閉鎖及び流体除去を達成する可能性を改善し、治療の臨床転帰を改善する可能性が高い。
【0193】
全ての実施形態について、デバイスは、生体吸収性材料の追加の層をデバイスのシースに追加することによって、又はより迅速に吸収されるシース層を提供することによって、より長い又はより短い吸収時間を提供するように設計され得る。より長い再吸収時間は、長期間の真空圧、排液、又は流体の送達及び除去を必要とする部位に有利であり得る。デバイスの延長された「使用寿命」はまた、トラスベースの導管構造体における非吸収性縫合糸材料又は継ぎ目特徴部上の縫い合わせための長持ちする吸収性材料のいずれかの使用を通して得ることができる。デバイス孔のサイズはまた、流体の長期除去が周囲組織への真空圧の適用よりも好まれる状況において、低減され得る。
【0194】
本明細書に記載されるデバイス1...1401は、効果的な治療部位への流体の供給及び治療部位からの流体の除去を可能にするように構成される。具体的には、流体は、60mmHg~150mmHgの一貫した真空圧力を受容している治療部位に供給され、そこから除去される。
【0195】
治療部位は、手術中に又は外傷の結果として分離されている筋肉組織、結合組織、若しくは皮膚組織の表面間の空間、及び/又は軟組織が除去又は修復されている任意の部位であり得る。デバイスはまた、真空圧の適用及び/又は流体の送達及び除去が所望される、皮下層又は筋肉層などの組織の層内に完全に収容され得る。いくつかの例には、術後の腹壁、又は乳房切除若しくは乳房再建後の乳房が挙げられる。治療部位は、漿液腫若しくは血腫の部位であり得るか、又は組織の外科的切除後の予防薬として使用され得る。代替的に、治療部位は、壊死組織又は感染組織の外傷、組織の外科的切除などの開放創傷であってもよく、組織弁の前進によって閉鎖されるか、又はドレープなどの閉塞層を使用して封止されて、真空圧のレベルが維持され得ることを確保することができる。
【0196】
治療部位はまた、組織の1つ以上の層を横切って、例えば、皮下組織層の全部又は一部分を横切って、下にある筋肉層とのインターフェースから皮膚の真皮層又は表皮層との接続部を横切る部位であり得る。一例は、デバイスのフランジが一方の側部で筋膜に係留又は固着され、残りのデバイスが、帝王切開又は開腹術後などの主外科切開の閉鎖中に組織の皮下層内に位置付けられた、治療部位であり得る。
【0197】
デバイス1...1401のタブ又はフランジ7...1407は、有利には、真空圧の適用、流体除去、及び/又は治療流体の標的送達が最も所望される位置において、タブ又はフランジを組織に縫合することによって、デバイスが創傷部位に固定されることを可能にする。これは、手術部位、例えば、内部腫瘍部位又はドナー部位の主閉鎖後に、結果として生じる組織間隙又は不整合が存在する広範切除を伴う部位などの、術後死腔の閉鎖及び流体の除去から最も利益を得るであろう治療部位の領域への真空圧の標的化投与を可能にする。
【0198】
デバイスを治療部位の適所に留める能力はまた、患者が移動し始めると、デバイスが長期間機能し続けることを確保するのに役立つ。他の従来技術のデバイスでは、治療部位内でのデバイスの望ましくない移動は、更なる内部外傷を引き起こし得、以前に分離された組織平面が、任意の投与された真空によって一緒に保持されることを妨げ得、骨及び/又は筋肉の移動が、体内で導管を遮断又は締め付け得る部位に導管を移動させ得る。
【0199】
好適に成形されたデバイスが選択されてもよく、又はいくつかの実施形態では、デバイスの長さ又は形状は、創傷部位及び所望の治療領域に最良に適合するように調節されてもよい。これはまた、陰圧の適用が望ましくない可能性がある、例えば、それが安全でない可能性がある領域への近接を回避するように、デバイスを選択又は調節又は成形することを含み得る。そのような部位は、結紮された血管、露出した神経、又は他の敏感な血管の領域を含み得る。
【0200】
デバイス1...1401は、治療部位から流体を送達及び排出するためのシステムの一部として使用される。デバイス導管構造体は、2つの組織表面を離隔して保持し、それによって、チャネルを画定し、チャネル内に治療部位からの流体が排出し得るか、又はチャネルから流体が治療部位に送達され得る。2つの組織表面は、離れて保持される必要があり、これは、それらが、そうでなければ、特に流体排出を補助するために陰圧又は低減された圧力(真空)の適用下で、一緒に崩壊するためである。
【0201】
デバイス1...1401の一方の端部における開放部又は一対の開放部の形態のポートは、チャネルと陰圧源又は陽圧源との接続を可能にする。ポートは、デュアルルーメン導管であってもよく、かつ/又は供給及び除去導管13...1413、15...1416の露出した開放端部によって提供されてもよい。流体供給導管は、流体供給ルーメンと流体連通するようにポートに解放可能に結合され、流体除去導管は、流体除去ルーメンと流体連通するように結合される。
【0202】
いくつかの実施形態では、ポートは、皮膚の切開部の周囲の気密密閉封止部、及び導管が被覆材に解放可能に結合される代替手段を提供する、患者の皮膚の外面上に位置する不透過性被覆材に結合され得る。他の実施形態では、ポートは、導管構造体及び外部デバイスとインターフェースするコネクタによって提供され得る。
【0203】
リザーバは、患者の体外に位置し、デバイスから流体を受容するために流体除去ルーメンと流体連通するように配置される。圧力源は、流体が治療部位からデバイス内に排出され、導管を通してリザーバに移送されるように、及び/若しくは治療流体が導管を通してデバイス内に引き込まれ、治療部位に送達されるように、陰圧をデバイスに送達することが可能であってもよく、又はリザーバ内の流体が導管を通してデバイス内及び治療部位に移送されるように、陽圧をデバイスに送達することが可能であってもよい。治療流体は、液体又は気体であり得、例えば、濾過された空気、又は蒸気若しくは加湿空気などの他の混合相流体を含み得る。治療液体が導入される実施形態では、治療流体を収容又は保持する更なるリザーバが、治療流体をデバイスに送達するために流体供給ルーメンに結合され得る。
【0204】
圧力源は、典型的には、治療部位への送達のためにリザーバからデバイス内へ流体を圧送するためのポンプ、又は治療部位から流体を排出するために陰圧を適用するための真空ポンプである。システムは、濾過された空気及び/又は他の治療流体の導入中、治療部位の陰圧を実質的に維持するように動作する。ポンプは、例えば、スクイーズ球を使用して手動で動作されてもよく、又は部位への流体のより精密な送達のために電子制御されてもよい。1つの特に好適なポンプは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第63/117,995号に記載されている。
【0205】
流体が治療部位に送達されているシステムでは、送達される流体は、1つ以上の栄養素、導管を介して依然として輸送され得るチキソトロピーゲル又は高粘性流体などの「流動性流体」、創傷治癒を促進するための細胞懸濁液治療薬を含有し得る。流体は、例えば、ECM、ヒアルロン酸、治癒を支援する成長因子、感染症の治療のための抗菌薬、鎮痛のためのフェンタニル又はモルヒネなどの鎮痛薬、及びケトロラク又はジクロフェナクなどの抗炎症薬に由来する流動性ゲルを含み得るが、他の流体が想定され、当業者には明らかであろう。
【0206】
いくつかの代替的な実施形態では、デバイスは、同じ圧力源を用いてそれぞれの部位を治療するために異なるそれぞれの部位に埋め込まれた、1つ以上の他のデバイスに動作可能に接続され得る。
【0207】
動物研究
試験1
動物試験を開始する前に、ベンチ試験を実施し、この試験では、
図41~
図45に示されるデバイス1101を封止ポリウレタンバッグ内に配置し、我々の米国特許出願第63/117,995号に記載のポンプデバイスに接続した。血液バッグからの血液を、遅い凝血塊をシミュレートするために凝固剤と混合し、デバイス1101内に注入し、濾過された空気のインプラントへの繰り返し送達を介して、接続されたポンプによって凝血流体が除去されているときに、治療部位における真空圧力を維持するインプラントの能力を評価した。
【0208】
試験設定は、シース孔を有しない、
図41~
図45のデバイス1101などのインプラントデバイスが、真空圧力を治療部位に効果的に送達することができることを確認した。
【0209】
このインプラントの内部導管構造体は、約260mmの長さであり、2つのφ3.2mmマンドレルを使用して構築され、φ450μm(410~450μm)の単繊維ポリプロピレン縫合糸を使用して、約16mm2の内部ルーメン面積を証明するノード間の2.5mmのピッチ長さを有するトラスを構築した。デバイス1111は、導管構造体1111の上に上部シースシート1103a及び下部シースシート1103bを固定するために、導管構造体の両方の側部の継ぎ目1109に沿ってφ125μm(100~149μm)のPGAマルチフィラメント縫い合わせの2つのランで縫われた。
【0210】
図59A及び
図59Bに図示されるように、ECMシートを通る流体流量は、ある方向において、他の方向においてよりも高い。試験された実施形態では、ECMシートを、ECMの乳頭(ルーメン)表面が内部導管構造体1111から離れて外側に面するように配置した。
【0211】
デバイス1101は、全広背筋が除去された(体重195g)体重90kgのヒツジに配置された。デバイスの導管構造体1111を、9.65mm2の内部導管面積を有する押込嵌合コネクタを介して、1.65mm2の流体供給ルーメンサイズ(φ1.45mm)及び約9mm2の流体除去ルーメンサイズ(φ3.39mmの等価直径)を有するデュアルルーメンシリコーンチューブに結合した。
【0212】
次に、マルチルーメンシリコーンチューブを、60mmHg~115mmHgの流体供給ルーメンに沿って測定される真空圧の維持を標的とする外部電池式真空デバイスに接続し、ポンプを、流体除去ルーメンに沿って供給される真空を最大150mmHgに制限するように構成した。ポンプを、このレベルの真空圧が、14秒開放及び20秒閉鎖のサイクルでプログラムされた弁を介して制御される濾過された周囲空気の導入中に維持されることを確保するように構成した。弁サイクルは、流体供給ルーメンに沿って測定された圧力が60mmHgの真空圧力閾値に達するまで連続サイクルで動作しており、その時点でシステムは弁の動作を停止する。
【0213】
インプラントの遠端部で/チューブの流体供給ルーメンに沿って測定された真空圧は、手術後約5日半の期間にわたって、標的60~115mmHg真空圧を維持し、この時間中に総量349gの滲出液が除去されることが見出された。
【0214】
研究動物を安楽死させると、大きい漿液腫がインプラントデバイスの頂部にわたって形成されたことが見出され、デバイスは、治療の全持続時間にわたって流体を除去するのに有効であったが、広背筋の完全な切除によって作られた術後の死腔を管理するのに有効ではなかったことが結論付けられた。
【0215】
試験2
シースにφ0.5mmの孔特徴部を有する、
図46~
図51に示されるインプラントデバイス1201を使用して、上記の試験1について上述された動物試験を繰り返した。この試験において、変更された唯一の他の変数は、フィブリン/フィブリノーゲン又は他の血液成分のような任意の凝固因子をデバイス1201から取り除くのを補助するために、術後の治療の最初の3日間にわたって周期的な間隔で流体供給ルーメンを介して供給される滅菌生理食塩水の添加であった。滅菌生理食塩水は、インプラントデバイス内で維持されている真空圧を利用することによってインプラントを通して滅菌生理食塩水を引き込む手動手段を使用して治療部位に送達され、これにより、生理食塩水の導入を通して治療部位で真空圧が維持された。
【0216】
この試験では、手術の翌日(t=0)に92g、手術の2日後(t=2)に142g、及び手術の3日後(t=3)に111gを含む、合計345gの生理食塩水を添加した。流体供給ルーメンに沿って測定された真空圧力は、手術後約2日半で60mmHgのより低い真空圧力閾値を下回り、その時点で、空気弁の開放及び閉鎖が機能を停止し、システムは、単一圧力レベルでシステム内の一定真空圧力レベルを標的としていることが見出された。
【0217】
体重87kgのヒツジを研究に使用し、除去された広背筋の重量は116グラムであった。合計800グラムの滲出液を、手術後5日間にわたって動物から除去した。
【0218】
研究動物を安楽死させると、デバイスの約50~70%が周囲組織と良好に一体化された状態で、デバイスの中央を横断して交差する高度に対向した組織の明確に画定された線が見出された。デバイスの約30~50%を占める、尺骨(動物の頭側端部)により近接して位置する欠損部位の領域は、漿液腫を有することが見出され、欠損領域の反対側は、後部(動物の尾側端部)に向かって延在し、十分に対向した組織で完全に治癒していることが見出された。
【0219】
この安楽死からの肉眼的観察は、以前のデバイスと比較した場合、治療後の死腔管理についての臨床転帰が有意に改善されたことを見出した。
【0220】
試験3
更なる動物試験を実施して、
図16~
図21に示されるデバイス101と同様の線形デバイスの治療結果を既存の従来技術の閉鎖創傷排液デバイス(対照デバイス)と比較した。
【0221】
閉鎖創傷排液(対照)デバイスは、穿孔された15Fr(φ5mmO.Dチューブ-φ3mmIDチューブ)サイズのPVC排出部(部品番号SU130-403D)を有するCardinal Health 3-バネ機械的動力式閉鎖創傷排液デバイスであった。これらのリザーバは、完全にプライミングされたときに約70mmHgの真空圧を送達することが知られている。
【0222】
治療デバイスは、長さ約100mmであり、中心導管デバイスは、
図21に示される断面形状を伴うマルチルーメンシリコーンチューブであった。流体供給ルーメン113はφ1.4mmであり、流体除去ルーメン111は、面積が約18mm
2である。導管は、
図28及び
図29の実施形態に示されるように加工され、3×φ3mmサイズの一連の切断孔106が、流体除去ルーメンの頂部、側部、及び底部の周りに位置付けられ、これらの孔は、スリーブ内に位置付けられる導管の長さに沿って分布された。2つのルーメン113、115の間の内壁は、
図28及び
図29に示される様式でバックカットされ、デバイスが真空下にあるとき、流体供給ルーメンと流体除去ルーメンの開放部との間の経路が保たれることを確保した。
【0223】
インプラントデバイスは、デバイスの乳頭(ルーメン表面)側が導管に向かって内側に面するようにスリーブを固定するように、両方の側部の継ぎ目に沿ってφ125μm(100~149μm)のPGAマルチフィラメント縫合を使用して縫われた2枚のECM材料シートを用いて製造した。スリーブデバイスの両方の側部は、デバイスの長さに沿って直径φ0.5mmの一連の孔を収容した。
【0224】
このインプラントに接続された外部真空ポンプデバイスは、流体供給弁を14秒間開放し、閉鎖持続時間が2分であるように構成されており、この流体供給弁は、濾過された空気の注入中、システムが80mmHgの真空圧力レベルに維持された状態で、濾過された空気を流体供給ルーメンを介して導管に導入した。空気弁が閉鎖されると、デバイスは100mmHgの第2の平衡圧力に戻る。このサイクルは、デバイスの流体供給ルーメンに沿って測定される圧力が60mmHg以下に低下する時点まで動作し続け、この時点で、弁の開放サイクルは動作を停止し、システムは、デバイスの流体除去ルーメンに沿って100mmHgの一定の送達を標的とする。システムは、安全機構として、流体除去導管に沿った真空圧力レベルが150mmHgを超えないことを確保するようにプログラムされる。
【0225】
2つのデバイスを比較するために、ヒツジの両側外部腹部斜位死腔漿液腫モデルを使用した。この研究では、体重58.5kgのヒツジを使用し、一方の側部が治療デバイスを受容し、他方の側部が閉鎖創傷排液(対照)デバイスを受容した。
【0226】
閉鎖創傷排液デバイス欠損部位は、外腹斜筋18グラムを筋肉の上の脆弱な領域から切除して、結果として約38cm2の欠損面積を作ることによって作られた。排液カテーテルを創傷の最下面で創傷内に配置し、チューブも創傷の最下面に移植した。チューブをヒツジの外面に沿って引き回し、動物の背中に位置する機器ハーネス内に位置するバネリザーバに接続し、このバネリザーバは、カテーテルに真空圧を提供した。創傷が閉鎖されると、リザーバをプライミングし、治療デバイスに接続して、穿孔されたカテーテルに70mmHgの真空圧を投与した。
【0227】
治療デバイスを、動物の反対側に作られた欠損内に配置した。約82cm2の面積の欠損部位を、外部腹部斜筋19.5グラムを筋の上の薄弱な領域から切除することによって作った。インプラントデバイスを欠損部位の縦軸に沿って位置付け、欠損部位を一定の角度でわたって垂直に延在させた。インプラントデバイスを、インプラントを適所に固定するために結紮された一連の通された縫合糸を使用して治療部位に固定した。治療部位が閉鎖されると、インプラントデバイスを、プログラムされたように機能するように外部に取り付けられた真空ポンプデバイスに接続した。
【0228】
この動物研究のために、治療デバイス及び対照デバイスの両方についての治療持続時間を、手術後14日間にわたって実行するように設定した。手動動力式閉鎖創傷排液(対照)デバイスを毎日プライミングして、陰圧の継続的な適用を確保し、両方のデバイスによって収集された創傷滲出液の量も毎日秤量し、記録した。
【0229】
術後7日目及び14日目に超音波評価を実施して、両方のデバイスについて欠損部位で形成される任意の漿液腫のサイズを評価した。欠損部位で測定された任意の漿液腫の体積を、楕円体の体積を決定するための式を使用して計算した。
【0230】
除去力を決定するためにフォースゲージを使用して、治療デバイス及び対照デバイスの両方を術後14日目に除去した。動物を術後28日目に安楽死させて、両方の動物について欠損部位の肉眼的評価を実施した。
【0231】
試験の結果を以下の表に示す。
【0232】
【0233】
7日間の治療後、閉鎖創傷排液(対照)デバイスは、合計55mLの創傷滲出液を収集することが見出され、治療デバイスは、153mLの滲出液を収集することが見出された。治療デバイスについては、術後7日目又は14日目のいずれの時点においても漿液腫は存在せず、閉鎖創傷排液(対照)デバイスは、7日目の時点においてゼロ個の漿液腫を有し、術後14日目に設定された欠損部において約521mL(cm3)という大きい漿液腫を有することが見出された。
【0234】
術後14日目の治療終了点で治療デバイスの導管を除去するのに必要な力は最大5.5Nで記録され、閉鎖創傷排液(対照)デバイスからのPVCチューブは最大8.1Nを必要とした。
【0235】
治療デバイス及び閉鎖創傷排液(対照)デバイスの両方についての欠損部位の肉眼的検査を、術後28日目に実施した。治療デバイスを有する欠損部位は、欠損部位にいずれの漿液腫又は創傷流体の徴候も伴わず、完全に一体化されていることが見出された。閉鎖創傷排液(対照)デバイスを有する欠損部位は、術後14日目の時点で超音波検査結果と一致する大きい漿液腫を有することが見出され、欠損部位の分離された組織面のあらゆる一体化の徴候は実質的にゼロであった。
【0236】
この観察からの結果は、治療デバイスが手術後に欠損部位の完全な死腔閉鎖を提供したことを確認した。
【0237】
本発明を例として説明してきたが、特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、変形及び修正を行うことができることを理解されたい。本明細書に記載される実施形態は、デバイスの様々な特徴の代替を例示するために提供される。特許請求される本発明の範囲内で他の実施形態を作るために、これらの特徴の多くの置換が可能であることが理解されるであろう。すなわち、一実施形態からの特徴を別の実施形態の特徴と組み合わせて、本発明の範囲内に留まる新しい実施形態を作成することができる。更に、特定の特徴について既知の均等物が存在する場合、そのような均等物は、本明細書で具体的に言及されているかのように組み込まれる。
【0238】
本明細書で説明されるデバイスは、有利には、任意の所与の用途のために、デバイスが生体内原位置で機能する持続時間を調節するようにカスタマイズされ得る。例えば、トラス部材のチャネルサイズ、壁厚、又は厚さ若しくは密度、あるいはブレーシング部材の数及びタイプを調節することによる。
【0239】
システム
図60~
図64は、創傷治療デバイス2003を使用する、創傷からの流体の除去のための、又は創傷2004に治療流体を供給し、創傷からの流体を除去するための陰圧治療システム2100、2200、2300(本明細書では治療システム)の例示的な実施形態を示す。システムの創傷治療デバイス2003は、本明細書に記載されているデバイス1...1401のうちのいずれか1つであり得る。
【0240】
例示的な実施形態のシステムに関連して、同様の参照番号が、同様の特徴を示すために異なる実施形態に対して使用される。
【0241】
図60を参照すると、一般的なレベルにおいて、治療システム2100は、創傷治療部位2004(「創傷」)に位置する創傷治療デバイス2003と、治療デバイス2003を介して創傷2004に陰圧を適用するための真空ポンプアセンブリを含む真空圧力ユニット2002と、創傷2004から戻された流体を収集するための流体収集リザーバ2006と、を備える。
図61は、患者の胸部に位置する内部創傷部位を例示するが、システムは、他の部位に位置する内部創傷を治療するために、例えば、腹部創傷を治療するために使用され得る。
【0242】
真空圧力ユニット(又は真空ユニット)2002は、ポンプアセンブリ2015を流体収集リザーバ2006の上流及び創傷治療デバイス2003の下流に位置付けるように構成されている。創傷治療デバイス2003は、局所的に適用される創傷被覆材、埋め込まれた治療デバイス、又は結合された構成における両方の組み合わせを含み得る。流体収集リザーバ2006は、流体収集リザーバ2006及び接続された導管2005cを周囲圧力レベルに維持するために、1つ以上の空気透過性フィルタ又は通気口2006aを含むように構成されている。
【0243】
真空ユニット2002は、少なくとも1つの導管を介して創傷治療デバイス2003に流体結合する。真空ユニット2002から創傷治療デバイス2003への導管は、真空ユニット2002から延在する第1の導管2005b、及び創傷治療デバイス2003から延在する第2の導管2005aを有する、2分割導管を備え得る。第2の導管は、創傷治療デバイス2003の一部であり得るか、又はコネクタ(図示せず)によって治療デバイス2003に接続され得る。コネクタ2007は、第1の導管2005a及び第2の導管2005bを流体結合するために提供される。代替的に、連続導管が真空ユニット2002と治療デバイス2003との間に延在し得る。
【0244】
コネクタ2007は、創傷2004から真空ユニット2002に向かう方向の流体の流れを可能にし、ポンプから創傷への流体の逆流を防止するように配向された一方向弁を備え得る。代替的な実施形態では、一方向弁が、代わりに、真空ユニット2002内、導管2005a、2005b上の他の場所、又は治療デバイス2003の一部として提供され得る。更なる代替例では、治療システム2100は、治療デバイス2003と真空ユニットとの間に一方向弁がなくてもよい。
【0245】
いくつかの実施形態では、真空ユニット2002と治療デバイス2003との間の導管は、創傷からポンプアセンブリ2015に流れる流体の通過のための主ルーメンと、副ルーメンと、を伴う、デュアルルーメン導管を備え得る。副ルーメンは、創傷部位における圧力の測定を可能にし得る。副ルーメンは、創傷2004への空気及び/又は治療流体の送達を提供する。しかしながら、代替的な実施形態では、複数の導管が、真空ユニット2002と治療デバイス2003との間に提供され得、各々、単一ルーメンを伴う。
【0246】
ポンプアセンブリ2015をリザーバ2006に流体結合するために、真空ユニット2002とリザーバ2006との間に更なる導管2005cが提供される。導管2005cをリザーバ2006に流体結合するために、コネクタ2008が提供され得る。
【0247】
好ましい実施形態では、真空ユニット2002は、ポータブルハンドヘルドユニットである。真空ユニット2002は、1人の患者に使用されるように意図されている単回使用ユニットであり得る。代替的な実施形態では、真空ユニット2002は、複数の患者の使用のために構成され得る。真空ユニット2002は、ポンプアセンブリ2015及び他の構成要素を収納するための(プラスチック)シェル又は筐体を備える。真空ユニット2002は、真空ユニット2002を動作させるためのユーザインターフェース2014を備える。ユーザインターフェースは、システム2100のポンプアセンブリ2015をオン及びオフにするための制御を含み得、オペレータが、適用されている真空圧力のレベル、又は上方設定点と下方設定点との間の圧力振動の長さ、サイズ、及び周波数などの、創傷2004に適用されている圧力治療のパラメータを制御することを可能にし得る。
【0248】
代替的な実施形態では、ユーザインターフェース2014はまた、監視デバイスを真空ユニットに遠隔接続して、システムのオペレータ又はユーザへのデータの送信を可能にして、治療の監視を支援することを可能にするための制御を含み得る。
【0249】
ここで
図60と一緒に
図62を参照すると、真空ユニット2002は、以下でより詳細に説明される真空ポンプアセンブリ2015と、バッテリ又は他の電源と、創傷治療部位2004から流体を送達及び受容するために導管2005b、2005aと流体連通している真空ユニットコネクタ2009と、ポンプアセンブリ2015からリザーバ2006への流体流のためにリザーバ2006への導管2005cと流体連通している真空ユニット出口コネクタ2010と、を収納する、ハウジング又は筐体を備える。コネクタ2009、2010は、それぞれの導管2005b、5cの端と結合するように構成され、任意の好適な形態であり得、例えば、それらは、ルアータイプコネクタを含み得る。
【0250】
一実施形態では、真空ユニットコネクタ2009は、副コネクタ2009b内の一方向弁が、滅菌フィルタ(
図64及び
図65のフィルタ2019)を通過している周囲空気などの上流源から、又は治療流体リザーバ(
図64及び
図65のリザーバ2026)から、創傷2004への流体の流れを可能にするように配向されるように、2つの一方向弁を備え得る。主コネクタ2009a内の対応する一方向弁は、創傷2004から真空ユニット2002に向かう方向の流体の流れを可能にするように配向される。いくつかの実施形態では、主コネクタ2009a及び副コネクタ2009b内の一方向弁は、真空ユニットコネクタ2009が真空ユニット2002から接続解除されたとき、閉鎖されるように構成され得る。次いで、これらの弁は、その後に開放されて、接続された真空ユニット2009が真空ユニット2002に再接続されたときに流体の通過を可能にする。そのような特徴を保有する既知の先行技術のコネクタの例としては、BD(登録商標)MaxPlus(商標)無針コネクタなどのIV用途内で使用するための無針又は不必要コネクタを含み、これは、適切なルアー係止コネクタと係合されると流体の通過を可能にするだけである。
【0251】
真空ユニットコネクタ2009の内外への流体流のための導管2005bは、主ルーメン2011及び副ルーメン2012を伴うデュアルルーメン導管である。コネクタ2009は、主ルーメン2011に接続するための流体入口を提供する主コネクタ2009aと、副ルーメン2012に接続するための流体出口を提供する副コネクタ2009bと、を含み、これらのルーメンからの流れを分離されたままにする。より大きい主ルーメン2011は、創傷から主コネクタを通って真空ポンプアセンブリ2015に流れる流体の通過を可能にする。副コネクタ又は供給コネクタ2009bは、主コネクタ又は除去コネクタ2009aから分離し得る。
【0252】
主ルーメン2011及び副ルーメン2012は、好ましくは、それらの長さの大部分に沿って、単一本体/導管内の隣接する通路として提供される。しかしながら、真空ユニット2002に隣接して、かつ/又は創傷治療デバイス2003に隣接して、デュアルルーメン導管2005a、2005bは、真空ユニット2002への結合の容易さのために、かつ/又は供給導管が除去導管とは異なる場所で創傷又は創傷治療デバイス2003に入ることを可能にするために、2つの別個の枝又は導管である、副ルーメン2012を備える供給導管と、主ルーメン2011を備える除去導管又は滲出液導管とに分割又は分離され得る。主導管又は除去導管及びルーメンは、互換的に参照され、参照番号2011によって参照され得、副導管又は供給導管及びルーメンは、互換的に参照され、参照番号2012によって参照され得る。
【0253】
供給導管2012は、圧力センサPvと流体連通して、創傷治療デバイス2003の上流側の圧力の測定を可能にする。
【0254】
真空ユニット2002は、供給導管2012と流体連通する空気入口弁2018を備える。空気入口弁2018は、以下でより詳細に説明されるように、創傷部位2004から流体を持ち上げるのを補助するために治療システム2100内に空気を導入する様式で制御される。
【0255】
図62に示されるように、空気入口弁2018は、周囲空気を真空ユニット2002筐体の外側からシステムに引き込むための入口を有し得る。代替的に、空気入口弁の入口は、真空ユニットハウジング/筐体の内側から空気を取り込み得る。
【0256】
滅菌フィルタ2019は、システム2100及び創傷部位2004への生物汚染及び非滅菌空気の進入を防止するために提供される。
図62では、フィルタ2019は、空気入口弁2018の入口に提供されるが、フィルタは、空気入口弁2018と真空ユニット流体供給コネクタ2009bとの間、又は空気入口弁2018と創傷部位2004との間の別の場所に配置され得る。
【0257】
図63は、治療システム2100をより詳細に概略的に例示する。真空ユニット2002の境界又は外側筐体は、
図63に破線によって例示されている。治療デバイス2003の上流側では、真空ユニット2002は、空気入口弁2018、任意選択で圧力センサPv及び滅菌フィルタ2019を備え、治療デバイス2003の下流側では、真空ユニット2002は、ポンプアセンブリ2015、及び任意選択でポンプアセンブリ2015と治療デバイス2003との間の圧力センサPpを備える。真空ユニット2002はまた、治療デバイス2003への導管2005a、2005bと真空ユニット2002との間の接続インターフェースを提供する、接続マニホールド2020を備え得る。接続マニホールド2020は、
図63において点線によって例示され、
図62に示されるコネクタ2009を置換する。
【0258】
図65の実施形態のシステム2300では、真空ユニット2002は、真空ユニットコントローラ2017に電子的に接続されている色センサ2024を追加的に含む。この実施形態2300では、色センサ2024は、ポンプ2015の出口と出口コネクタ2010との間に位置付けられた流体流路に沿って位置付けられる。しかしながら、色センサは、代替的に、ポンプ2015の入口の上流の任意の好適な位置で、流体経路に沿って位置付けられてもよい。
【0259】
色センサ2024は、創傷部位2004において治療デバイス2003からシステムを通って流れる創傷滲出液流体の色変化を検出するのに有益であり得る。例えば、手術直後の最初の血液が豊富な創傷滲出液から、漿液血液状の排液(血液及び血清)のピンク色へ、かつ/又は透明な漿液(血清のみ)排液への自然な色の変化。色センサ2024のこの動作は、治療デバイス2003の上流から濾過された空気を供給することによって増強され得る。濾過された空気は、針を介した治療部位2004からの流体の直接吸引の場合と同様に、短い時間枠の間、流体を変位させて、その短い時間枠内で流体の可読試料を生成する。
【0260】
創傷に治療流体を供給し、創傷から治療流体を除去する様々な実施形態のシステム内に色センサを含めることは、更なる利点を提案し得る。例えば、色センサ2024は、治療流体リザーバ2026から供給され、上流流体経路、除去導管2011、創傷治療デバイス3、及び供給導管2012を通過して、真空ユニット2002に至る治療流体の通過を検出し、接続されたシステムを通る治療流体の完全な飽和を示すように構成され得る。他の実施形態では、治療流体は、感染、バイオフィルム、又は他の創傷に基づく病変の存在に応答して創傷における変化の検出のための色に基づくインジケータと組み合わせられ得る。
【0261】
図64及び
図65は、創傷に流体を供給し、創傷から流体を除去するための更なる実施形態の治療システム2200、2300を例示する。
図64及び
図65の実施形態は、
図60~
図63を参照して上記に説明されたシステム2100と同じ又は同様の特徴を含むが、創傷治療デバイス2003に治療流体を提供するように追加的に構成される。
【0262】
図64及び
図65を参照すると、真空ユニット2002は、創傷部位への送達のための治療流体を受容するための1つ以上のポート2025を備え得る。ポート2025は、好ましくは、治療流体リザーバ2026から接続解除されたときに液体の通路に対して名目上閉鎖されるように構成され、治療流体リザーバ2026は、その後、ルアーコネクタと係合されたときに開放する。B.Braun Medical(登録商標)CARESITE(商標)不必要コネクタは、そのようなポートの一例を提供する。
【0263】
治療流体の形態の治療薬は、供給導管2012を介して創傷治療デバイス2003に選択的に送達され得る。流体源又は治療流体リザーバ2026は、例えば、Baxter(登録商標)EMC 9608 Admin Set、B.Braun Medical(登録商標)Single Chamber IV Infusion Set、又は同様の滅菌IV注入療法セットなどの、静脈内(intravenous、IV)流体投与セットへの導管又は接続を介して、真空ユニット2002の流体ポート2025に結合され得る。治療流体リザーバは、治療システムに接続されている間、大気圧にあることが好ましい。これは、Baxter(登録商標)Sodium Lactate(Hartmann又は複合乳酸ナトリウム)IV Bagなどの可撓性流体バッグと組み合わせて、非通気式IV注入療法セットを使用することによって達成され得るか、又はB.Braun Medical(登録商標)によるProntosan(登録商標)Wound Irrigation Solutionなどの、治療流体の剛性又は半剛性コンテナに通気式IV注入療法セットを接続することによっても達成され得る。
【0264】
例示的な治療流体としては、限定されるものではないが、乳酸ナトリウム化合物、生理食塩水(0.9%NaCL-塩化ナトリウム)、及び0.45%生理食塩水(0.45NaCL)が挙げられる。抗菌剤及び溶液は、感染症の治療にも適用され得、ポリヘキサニド(polyhexanide、PHMB)、硝酸銀、次亜塩素酸(hypochlorous acid、HOCl)、次亜塩素酸ナトリウム、ベタイン、次亜塩素酸ナトリウム、中性pHの超酸化水、又は任意の他の抗菌創傷灌注溶液などの薬剤を含有し得る。
【0265】
他の治療流体はまた、創傷治癒を促進するための細胞懸濁液及び細胞ベースの流体を含み得る。送達される流体は、1つ以上の栄養素、導管を介して依然として輸送され得るチキソトロピーゲル又は高粘性流体などの「流動性流体」、創傷治癒を促進するための細胞懸濁液治療薬を含有し得る。流体は、例えば、ECM、ヒアルロン酸、治癒を支援する成長因子、感染症の治療のための抗菌薬、鎮痛のためのフェンタニル又はモルヒネなどの鎮痛薬、及びケトロラク又はジクロフェナクなどの抗炎症薬に由来する流動性ゲルを含み得るが、他の流体が想定され、当業者には明らかであろう。
【0266】
多血小板血漿、幹細胞、間質細胞、ケラチノサイト、リンパ球、骨髄穿刺液、血清及び樹状細胞のいずれかを含有する自己又は同種異系細胞ベースの療法の注入は、創傷の修復及び治癒を支援し得る。
【0267】
化学療法薬の点滴はまた、手術可能でない可能性があるがん性細胞の局所的治療を支援し得るか、又はがん性組織の切除後の全体的な治療計画として使用され得る。
【0268】
図64の実施形態2200を参照すると、治療流体入口弁2022は、流体が治療流体リザーバ2026から創傷につながる供給導管2012内に流れることを可能にするように選択的に動作可能である。流体のリザーバは、大気圧である。治療流体入口弁2022が選択的に開放されたとき、除去導管2011を介して創傷2004に適用されるポンプアセンブリ2015からの陰圧は、治療流体リザーバ2026から被覆材又は創傷治療デバイス2003に向かって流体を引き込むように作用する。治療流体入口弁2022の起動時に、真空ユニット2002内のコントローラ(この図には図示せず)は、Pv及び/又はPp圧力センサにおける真空圧力レベルのその後の低下を検出し、ポンプアセンブリ2015を起動して、真空圧力を真空圧力の標的レベルに維持する。制御アルゴリズムは、以下でより詳細に説明される。例示される実施形態では、空気入口弁2018及び滅菌フィルタ2019は、治療流体弁2022の上流に提供される。
【0269】
図65の実施形態2300では、システムは、治療流体入口弁2022を有していない。システム2300は、陰圧治療中にシステムに導入される治療流体の量を制御するためのオリフィス又は他の流量絞りを含み得る。一実施形態では、治療流体の投与は、流体ポート2025を介してユニット2002に接続される、Baxter(登録商標)EMC 9608 Admin Set、B.Braun Medical(登録商標)Single Chamber IV Infusion Set、又は同様の滅菌IV注入療法セットなどの、静脈内(IV)流体投与セットの使用を介して制御される。供給導管2012に導入される治療流体の流体流量は、セット内のローラクランプを介して制御され、ローラクランプは、ローラクランプ構成要素とインターフェースするチューブの区分内の流量絞りを変化させるように調節される。この実施形態では、流体点滴速度は、チャンバが直立に配向されたときに、IV注入セットのドリップチャンバを介して視覚的にチェックされ得、任意の更なる流量調節がローラクランプ調節を介して行われる。この実施形態は、創傷治療デバイス2003を介して治療流体を創傷2004に導入する手動手段を提供する。
【0270】
代替的な実施形態では、真空ユニット2002は、流体ポート2025を介して注入ポンプに接続されて、流体が選択可能かつ制御可能な様式で創傷治療デバイス2003に供給されることを可能にし得る。そのような注入ポンプシステムは、例えば、B.Braun Medical(登録商標)Vista(登録商標)基本大容量注入ポンプ又はBD(登録商標)Alaris(登録商標)Syringe Moduleを含み得、それらは、間欠的又は一定の流体送達基準のいずれかで、0.1ml/時間~1200ml/時間の治療流体を制御可能に送達し得る。これらのシステムは、典型的には、治療流体が分注される量、流量、及び頻度を選択する手段を提案する。治療流体が真空ユニット2に導入されたとき、システムは、Pv及び/又はPp圧力センサで設定真空圧力レベルのその後の低下を検出し、ポンプアセンブリ2015を起動して、真空圧力のシステム標的レベルを維持する。制御アルゴリズムは、以下でより詳細に説明される。
【0271】
図64及び
図65の実施形態では、真空ユニット2は、流体ポート2025を介して、治療デバイス2003への導管2005a、2005bと真空ユニット2002との間、及び真空ユニット2002と治療流体リザーバ2026との間の接続インターフェースを提供する接続マニホールド2021を備える。接続マニホールド21は、
図64及び
図65において点線で例示されており、
図62に示されているコネクタ2009を置換する。マニホールドは、以下により詳細に説明される。
【0272】
説明されるように、治療システム2100、2200、2300は、創傷部位2004から除去された液体、例えば、創傷滲出液を収集するためのリザーバ2006を備える。好ましい実施形態では、リザーバ2006は、創傷から最も離れた位置に位置付けられ、したがって、ポンプアセンブリ2015を通過した後に創傷から除去された流体を収集するために、ポンプアセンブリ2015の下流にある。示される実施形態では、リザーバ2006は、可撓性バッグを含む。代替的に、剛性リザーバが提供されてもよい。
【0273】
リザーバ2006は、リザーバの壁に提供された1つ以上の空気透過性フィルタ又は通気口2006a、例えば、不透過性膜の孔の上に提供された疎水性通気膜を備える。空気透過性フィルタ又は通気口は、ガスの通気を可能にし、それによって、効果的なポンピングを妨げるリザーバ内の圧力上昇を防止する。例示的なリザーバは、8つの通気口2006aを有し、各々、システムを通過する高レベルの空気流を持続させるために、8mmの直径及び3ミクロンの孔径を有する。
【0274】
血餅、フィブリン、及び他の凝固した流体又は組織破片は、通気膜を閉塞させ得、これは、流体経路に導入された空気でバッグを膨張させる。この膨張は、バッグを破裂させて流体を漏出させる可能性があるか、又は過剰な陽圧下で出口弁を強制的に開放させることによって、必要とされる真空圧力をポンプが生成することを妨げる可能性がある。
【0275】
これらの問題を回避するために、高塩適合性ポリアクリル酸ナトリウムポリマー、又は他の同等の血液適合性超吸収性ポリマーが、バッグ内の血液及び創傷流体を凝固させるためにリザーバに添加され得る。これらのポリマーは、遊離粒子、溶解可能なPVAフィルムパウチ内に懸濁された粒子、又は織物/布様媒体内に懸濁されたポリマーのいずれかとして入手可能である。バッグ上の1つ以上の通気口と連携したこのポリマーの使用は、バッグの膨張を回避し、治療システムの流体経路が、システム内に導入される際にはるかに多くの空気に対処することを可能にする。
【0276】
ポンプアセンブリ2015は、入口及び出口を含み、モータによって駆動される。一実施形態では、ポンプアセンブリ2015は、実質的に、PCT国際出願第PCT/NZ2021/050205号に説明されているとおりであり得、斜板と、複数の可撓性チャンバ(ダイヤフラム)と、複数対の可撓性弁であって、各対の弁がそれぞれの可撓性チャンバと流体連通している、複数対の可撓性弁と、ポンプ入口及び出口と、を備える。
【0277】
ポンプアセンブリ2015は、ポンプ入口からポンプ出口までのポンプを通る流体流路を備える。好ましい実施形態では、滲出液リザーバ2006は、ポンプアセンブリ2015の下流にある。これは、創傷からの流体がポンプアセンブリ2015を通過することを意味する。
【0278】
ポンプアセンブリ2015は、好ましくは、弁開閉サイクル時間のかなりの時間部分にわたって空気入口弁2018が開放している状態で、治療システム2100、2200、2300にかなりの量の空気を導入しながら、陰圧を維持するように構成された大容量ポンプを備える。創傷2004における陰圧を有効な治療陰圧レベルに維持し続けながら、増加した量の空気を移動させ、流体を創傷2004から滲出液リザーバ2006に持ち上げるために、大容量ポンプアセンブリ2015が必要とされる。
【0279】
空気入口弁2018は、弁を開放位置と閉鎖位置との間で駆動するためにコントローラと電気通信するソレノイドなどのアクチュエータを含み得る。空気入口弁2018は、圧力解放弁として動作せず、すなわち、空気入口弁は、創傷における圧力を制限するために「こじ開ける」ように制御されない。空気入口弁は、所定の時間に基づいて開閉され、すなわち、空気入口弁の制御は、以下でより詳細に説明されるように、圧力制御ではなく、時間制御である。
【0280】
流体入口弁2022は、弁を開放位置と閉鎖位置との間で駆動するためにコントローラと電気通信するソレノイドなどのアクチュエータを含み得る。
【0281】
真空ユニット2002と治療デバイス2003との間を接続するために、デュアルルーメン導管が提供され得る。導管は、円形外壁を有し得る。この導管は、導管が創傷を開放せずに、その後、除去されなければならない創傷治療に好ましい。丸い又は円形の外壁は、患者に不快感を引き起こし得る導管の側部に付着した組織を穏やかに解放するために、除去時に導管を回転させることを可能にする。
【0282】
システム動作
ここで、
図62及び
図63を参照して上記に説明された治療システム2100の動作が、
図66~
図76を参照して説明される。システム2100は、ユーザがシステムを動作させることを可能にするユーザインターフェース2014を備える。ユーザインターフェース2014は、システム設定のユーザに視覚(例えば、LED)及び音声指示を提供し得、入力、例えば、1つ以上のボタンが、例えば、ユニットをオン/オフするか、ポンプを動作させるか、又は動作モードを選択することを可能にする。コントローラは、空気弁アクチュエータ、ポンプモータ2013、及び圧力センサPv、Ppと電気的に通信するシステム論理及び制御アルゴリズムを提供して、空気入口弁2018及びポンプアセンブリ2015を制御する。コントローラはまた、電力管理及びセンサ回路と通信して、電源を管理して、例えば、ユーザインターフェースを介してバッテリ充電指示をユーザに提供し得る。
【0283】
コントローラは、空気入口弁を開閉しながら、創傷治療デバイス2003を介して創傷2004で陰圧を維持するようにポンプアセンブリ2015を動作させるように構成されている。空気入口弁2018は、創傷部位に空気を導入するために開放されるが、一方、ポンプアセンブリは、創傷で陰圧を維持するために動き続ける。
【0284】
陰圧治療は、創傷が滲出液を生成し続けるときであっても、停滞したシステムを結果的にもたらし得る。停滞したシステムでは、システムは、周囲環境から効果的に封止され、創傷から滲出液リザーバ2006への流体移送又は流れは達成されない。これは、創傷及び/又はシステム内の他の場所における血液、フィブリンなどの凝固に起因するシステム閉塞を悪化させ得る。閉塞は、最終的に、創傷で陰圧を提供することの失敗を結果的にもたらし、陰圧治療を無効化する。
【0285】
停滞したシステムを回避するために、コントローラは、ポンプアセンブリ2015を動かし続けながら、空気入口弁2018を開閉して、創傷における陰圧を維持する。
【0286】
例えば、治療システム2100は、少なくとも40mmHg、好ましくは少なくとも50mmHgの創傷治療デバイス2003の創傷部位2004における真空圧力(第1の真空圧力)を維持しながら、空気入口弁2018を開放して、空気を創傷部位に導入するように構成されている。例示的な実施形態では、治療システムは、空気入口弁が開放されて、空気を創傷に導入している状態で、創傷部位/創傷治療デバイスで、約50mmHg~100mmHg、又は約60mmHg~100mmHg、又は70mmHg~100mmHg、又は80mmHg~100mmHgの真空圧力を維持することができる。コントローラが空気入口弁を閉鎖したとき、ポンプは、創傷における陰圧を維持するように動作し続ける。空気弁が閉鎖された状態で、創傷部位2004における真空圧力は、約100mmHg~150mmHg(第2の真空圧力)であり得る。
【0287】
好ましくは、空気入口弁が開放されているときに創傷治療デバイスで維持される真空圧力は、空気入口弁が閉鎖されているときに創傷で維持される真空圧力の少なくとも実質的な部分であるか、又は空気入口弁が閉鎖されているときに創傷で維持される真空圧力と等しくてもよい。例えば、空気弁が開放された状態で創傷で維持される真空圧力は、空気弁が閉鎖された状態で創傷で維持される真空圧力の約30%~100%、又は空気弁が閉鎖された状態で創傷で維持される真空圧力の約50%~100%、若しくは70%~100%、若しくは約80%であり得る。
【0288】
空気入口弁が閉鎖された状態で、創傷における真空圧力は、空気入口弁が開放されているときの創傷における真空圧力よりも約20~50mmHg高くてもよく、又は空気入口弁が開放されているときの創傷における真空圧力と等しくてもよい。
【0289】
好ましい実施形態では、システムは、創傷における陰圧を維持し続けながら、空気入口弁を開放位置と閉鎖位置との間でサイクルさせるように構成されている。空気入口弁が閉鎖された状態で、システムは、迅速に停滞した状態に戻る。閉塞形成につながり得る停滞した状態のままであることを回避するために、コントローラは、創傷で陰圧を維持しながら空気入口弁を再び開放し、次いで、空気入口弁を再び閉鎖するように構成されている。空気弁の開閉は、継続する。創傷で陰圧を維持しながらのシステム内への導入空気は、創傷からリザーバへの流体の移動を促進し、閉塞のリスクを低減する。いくつかの実施形態では、治療システムは、空気入口弁を開閉し続けて、ポンプの連続動作を達成して、流体流を維持し、長時間にわたって流れなしの又は停滞した状態のままであることを回避するように構成され得る。
【0290】
好ましい実施形態では、システムは、空気入口弁2018が開放された状態で、システムが平衡状態を達成するように構成され、空気入口弁2018を通る治療システム内への空気の流量は、ポンプを通る流体(例えば滲出液)及び空気の流量と等しい。平衡状態では、創傷治療デバイス2003における真空圧力は、定常状態又は一定の真空圧力レベル(第1の真空圧力)に維持されるか、又はそれに到達する。システムは、短い持続時間、例えば、数秒以下、例えば、5秒以下の後に一定の真空圧力レベルを達成し得る。いくつかの実施形態では、空気弁が開放された状態で平衡状態において、治療デバイスにわたる圧力降下は、実質的にゼロであり、システム真空圧力と周囲圧力との間の圧力降下の実質的に全てが、例えば、空気入口フィルタによって提供される入口絞りにわたって生じている。いくつかの実施形態では、空気入口弁が開放された状態で平衡状態において、治療デバイスにわたる圧力降下は一定である。創傷に空気を導入することは、治療デバイスの上流側と治療デバイスの下流側との間の創傷部位にわたって圧力降下を生じさせ得、創傷2004からリザーバ2006への流体の移動を可能にし、それによって、凝固及びシステム閉塞のリスクを低減する。
【0291】
空気弁が閉鎖された状態で、ポンプは、創傷における陰圧を維持するように制御され、創傷からポンプへの流量は、患者の創傷応答に比例し、すなわち、流量は、創傷で生成される滲出液に比例する。空気入口弁が閉鎖された状態で、ポンプは、創傷治療デバイスにおける真空圧力を定常状態又は一定の真空圧力レベル(第2の真空圧力)に維持するように制御される。繰り返しになるが、システムは、非常に短い持続時間、例えば、数秒以下、例えば、5秒以下の後に一定の真空圧力レベルを達成し得る。上記に説明されたように、第1の真空圧力は、第2の真空圧力以下である。
【0292】
空気入口弁2018が開放された状態の創傷治療デバイス2003における定常状態真空圧力は、空気入口弁が閉鎖された状態の創傷治療デバイスにおける定常状態真空圧力未満であり得る。しかしながら、空気入口弁が開放された状態の創傷治療デバイス2003における真空圧力は、効果的な陰圧治療に十分である。上記に説明されたように、第1の真空圧力は、第2の真空圧力の少なくとも実質的な部分であり、第2の真空圧力と等しくてもよい。したがって、治療陰圧を連続的に達成するためにポンプを動かしながら空気入口弁を周期的に開閉することは、滲出液の除去を改善し、システム閉塞のリスクを低減するのみならず、効果的な創傷治療のために創傷における陰圧環境も維持する。
【0293】
創傷における陰圧を維持しながら空気入口弁の開閉をサイクルさせることは、空気の導入によって創傷部位における低減された流体密度を達成する。多くの場合、例えば、患者が直立しているとき、又は立位にあるとき、創傷部位に高さの差が存在する。創傷における高さの差は、創傷の上部分のみに流れを伴って、創傷の最も下の場所に静止したままの流体を結果的にもたらし得る。創傷部位にわたって空気を導入することによって、創傷の最も下の部分に到達する空気は、それらの最も下の部分から流体を持ち上げ、創傷全体にわたる流体移動を改善し得る。空気の導入は、本質的に、システムが空気ポンプのように動作することを可能にし、より低い密度の流体が「上りの」又は重力に逆らって移動することを可能にする。
【0294】
本発明者らは、創傷部位からリザーバへの「気泡流」又は「スラグ流」を達成する流量の空気をシステムに導入するために、創傷において陰圧を維持しながら空気弁が開放位置と閉鎖位置との間で動作する、好ましい動作モードを追加的に識別した。
図66は、液体及び気体状態の両方を含む流体における流れのタイプの範囲を例示する。空気入口弁を過剰に長く開放したままにすることに起因して過剰に多くの空気を導入することは、滲出液が導管の内壁に沿って流れ、空気が導管の中央を通って流れる環状タイプの流れを結果的にもたらし得る。
【0295】
これは、滲出液を導管の壁に停滞させ得、これは、流体の凝固につながり得る。凝固した流体の層は、経時的に増加し、閉塞につながり得る。空気入口弁の開閉をサイクルさせることによって、液体滲出液は、空気弁が閉鎖されているときにシステムの流路内で均一な柱を再形成し得、空気を導入するための空気入口弁のその後の開放は、滲出液を通過する空気の気泡又はスラグを結果的にもたらす。環状タイプの流れが達成される前に、空気弁が再び閉鎖される。本発明者らは、これが滲出液の改善された除去、及び閉塞の低減を結果的にもたらすと考えている。
【0296】
ここで、
図67~
図71を参照して、NPT中に空気入口弁を開放と閉鎖との間でサイクルさせる例示的な実施態様が説明される。
図67に例示されるように、コントローラは、空気入口弁が開放され、ポンプが創傷で陰圧を達成するように動作される、空気流モード又は状態と、空気入口弁が閉鎖され、ポンプが創傷で陰圧を達成するように動作される、非空気流モード又は状態と、を実装するように構成されている。例示された実施形態では、非空気流状態は、加圧状態、保持状態、及びタイムアウト状態を含む。
【0297】
図68を参照すると、空気流状態では、コントローラは、空気入口弁を開放して、空気が、治療デバイスの上流側でシステムに進入することを可能にし、圧力閾値を達成するようにポンプを動かす。例えば、治療デバイスの下流側で圧力センサPpによって感知された圧力が圧力閾値未満である場合、コントローラは、ポンプを動かす(ポンプをオンにする)。言い換えると、Ppにおける圧力が閾値圧力以上である場合、コントローラは、ポンプをオフにする。
【0298】
例示された実施形態では、治療デバイスの下流側の圧力閾値(Pp)は、空気入口弁が閉鎖されているときの治療デバイスの上流側の圧力閾値(Pv)の一部分である。例示された実施形態では、治療デバイスの下流側の圧力閾値(Pp)は、空気入口弁が閉鎖されているときの治療デバイスの上流側の圧力閾値(Pv)の80%である。例えば、空気入口弁が閉鎖されているとき、Pvにおける治療デバイスの上流側の圧力閾値は、100mmHgであり、空気入口弁が開放されている空気流状態では、Ppにおける圧力閾値は、80mmHgである。
【0299】
ポンプは、空気入口弁が開放された状態で創傷治療デバイスの下流側で真空圧力を維持するために、例えば、コントローラによるPID制御下で、繰り返しオンオフし得る。好ましくは、システムは、非常に短時間で、すなわち、数秒以内、例えば、5秒以内で、Ppにおける治療デバイスの下流側で閾値圧力を達成するように構成されている。空気入口弁は、ある時間にわたって開放位置のままである。空気入口弁が開放されたとき、創傷における圧力は、一定に維持される。例示される実施形態では、空気入口弁は、14秒間開放位置に維持される。14秒が経過すると、コントローラは、空気入口弁を閉鎖し、コントローラは、非空気流状態の加圧状態に移行する。
【0300】
上記に説明された空気流状態のパラメータは、一例として提供されている。いくつかの実施形態では、システムは、治療デバイスの下流側に圧力センサPpがなくてもよい。ポンプは、ポンプが特定のシステム性能に対応する所定の速度で動かされて、空気入口弁が開放された状態で創傷治療デバイスで既知の又は許容可能な圧力レベル(第1の真空圧力)を達成するように、好適な容量を備え得る。追加的に、又は代替的に、システムは、ポンプによって生成される真空圧力が過剰に高く増加しないことを確保するために、ポンプ入口においてシステムに空気を導入するための圧力解放弁を含んでもよい。しかしながら、好ましい実施形態では、システムは、圧力センサPpを含み、コントローラは、圧力が所定の圧力閾値、上記の例では80mmHgを超えて増加しないようにポンプを動作させる。所望の治療計画に応じて、他の圧力閾値が可能である。好ましくは、コントローラは、ポンプの正確な制御、したがって、創傷における真空圧力の制御を達成するために、PID制御を実装する。コントローラは、ポンプモータの制御において、パルス幅変調(pulse-width modulation、PWM)又はパルス同期変調方法を使用し得る。
【0301】
図62~
図65に示されるように、例示的な実施形態では、圧力センサPvは、フィルタの周囲環境側にある。滅菌フィルタ2019は、空気入口弁が開放されているときに治療デバイスにおける真空圧力が周囲圧力まで落ち込むことを防止するために、既知の圧力降下を提示する。圧力センサPvがフィルタの周囲環境側にある状態で、センサPvは、本質的に、空気入口弁が開放されているときの周囲圧力を測定する。したがって、空気入口弁が開放されたとき、センサPvによって感知された圧力は、ポンプの制御に使用されず、ポンプは、Ppによって感知された圧力が圧力閾値を上回って増加するまで動くことになる。いくつかの実施形態では、Ppにおける圧力は、弁が開放されたときに圧力閾値に到達しないことになる。ポンプは、空気入口弁が開放されたときに連続的に動き得るが、これはあまり好ましくない。
【0302】
図69を参照すると、加圧状態では、空気入口弁が閉鎖され、コントローラは、ポンプを動かして圧力閾値を達成し、創傷治療デバイスにおける既知の又は許容可能な真空圧力(第2の真空圧力)を達成する。空気弁が閉鎖された状態で、創傷治療デバイスにおける真空圧力は、空気流モードで達成される真空圧力と比較して増加し得る。例示された実施形態では、治療デバイスの上流側の圧力センサPvによって感知された圧力が100mmHg未満であり、治療デバイスの下流側の圧力センサPpによって感知された圧力が150mmHg未満である場合、コントローラは、ポンプを動かす。言い換えると、圧力Pvが100mmHg以上であるか、又は圧力Ppが150mmHg以上である場合、コントローラは、ポンプをオフにする。
【0303】
システムは、空気入口弁を閉鎖又は開放する非常に短い持続時間後、すなわち、数秒以内、例えば、5秒以内に、閾値圧力を達成するように構成され得る。空気弁が閉鎖された状態で、システムが閉鎖又は封止されるため、システムは、治療デバイスにわたるゼロの圧力降下を伴う、したがって、Pvにおける圧力=Ppにおける圧力である、停滞した又は流れなしの状態に非常に迅速に到達する。例示された実施形態では、Pvにおける圧力閾値がPpにおける圧力閾値未満であるため、コントローラは、2つの圧力閾値のうちの低い方である上流圧力センサPvに基づいてポンプを制御する。しかしながら、システムを通る圧力降下は、組織破片及び/又はフィブリンなどの凝固材料が創傷治療デバイス及び/又はポンプ内に蓄積するときに発生し得、その場合、圧力差が、センサPv及びPpによって測定されるように、治療デバイスの上流側と下流側との間で発現し得る。下限閾値が治療デバイスの上流側で到達される前に、システム制約は、システム圧力を、治療デバイスの下流側で上限閾値に到達させ得、その場合、ポンプは、下流圧力センサPpに基づいて、Ppにおいて上限圧力閾値に制御される。
【0304】
圧力閾値に到達すると、コントローラは、ポンプをオフにし、保持状態に移行する。加圧状態は、ポンプが120秒以内に圧力閾値(例えば、Pp)に到達しなかった場合、モータがオフにされ、コントローラがタイムアウト状態に移行するように、タイムアウトチェックを含む。これは、例えば、システム内の閉塞又は漏れなどの他の故障モードに起因して起こり得る。
【0305】
図70を参照すると、保持状態では、コントローラは、空気入口弁を閉鎖位置に維持し、ポンプを動作させ続けて、例えば、Pv又はPpで所望の圧力閾値を達成するようにPID制御下で、ポンプをオン及びオフにすることによって、創傷治療デバイスで所望の又は許容可能な真空圧力を維持する。コントローラは、ある時間にわたって空気入口弁を閉じた状態で真空圧力を維持する。例示された実施形態では、空気入口弁は、20秒間閉鎖される。20秒が経過すると、コントローラは空気流モードに戻り、空気入口弁の開閉のサイクルが繰り返される。空気入口弁の開閉は、上記に説明された利益を達成するために、連続的にサイクルされ得る。
【0306】
上記の例示的な実施態様は、14秒の空気入口弁開放時間及び20秒の空気入口弁閉鎖時間を提供する。これらの時間は一例であり、代替的な時間が実装されてもよい。しかしながら、空気入口弁が、全開閉サイクルの実質的な部分にわたって開放されることに留意されたい。この実施形態では、全開閉サイクル又は「サイクルピッチ」は、34秒であり、空気入口弁は、34秒間のうちの14秒間、又は全サイクルの約40%にわたって開放する。いくつかの実施形態では、空気入口弁は、サイクルピッチの少なくとも10%、又はサイクルピッチの少なくとも20%、又はサイクルピッチの少なくとも30%、又はサイクルピッチの少なくとも40%にわたって開放される。例えば、空気入口弁開放時間は、閉鎖時間とほぼ同じであってもよい(サイクルピッチの50%)。いくつかの実施形態では、空気入口弁は、全サイクルの50%超にわたって開放され得る。
【0307】
上記の例示的なシステム構成は、34秒のサイクル時間を提供する。しかしながら、より長い又はより短いサイクル時間が可能である。上記に説明されたように、創傷における陰圧を維持しながら創傷部位からリザーバへのスラグ又は気泡流を達成するのに必要な空気入口弁の開閉が理想的である。最大弁サイクル時間は、1分又は数分であり得る。しかしながら、空気入口弁は、十分な空気がシステムに導入されることを確保するために、上記の圧力で少なくとも約10秒間開放されるべきである。空気入口弁は、各空気入口弁開閉サイクルにおいて10~40秒間開放され得る。
【0308】
空気入口弁が開閉される時間は、空気入口流量絞り、ポンプ容量、治療デバイス構成、並びに供給及び滲出液導管の長さ及び直径に依存する。上記に説明されたシステム構成要素及び制御パラメータは、例として提供される。しかしながら、本発明者らは、システムパラメータが、創傷における陰圧を創傷の陰圧治療に有用なレベルに維持しながら、空気入口弁が実質的な持続時間にわたって開放されることを可能にするように選択されるべきであると考える。
【0309】
図71を参照すると、例示的な実施形態は、システムが意図された陰圧レベルに到達することができない状況を安全に管理するためのタイムアウト状態を含む。
図69を参照して上記に説明されたように、所定の時間(例えば、2分)後に空気入口弁が閉鎖されたときにシステムが加圧することができない場合、コントローラは、タイムアウト状態に入る。コントローラは、ポンプ動作を30秒間休止し、タイムアウトカウンタを増分する。タイムアウトカウンタが所定のカウント閾値未満である場合、コントローラは、加圧状態に戻り、創傷治療部位を加圧しようとする。タイムアウトカウンタ閾値に到達した場合、コントローラは、空気流状態に戻る。上記に説明されたように、空気を導入することは、閉塞を低減し得る。システムは、閉塞に起因して加圧に失敗する場合がある。空気流状態に戻ることは、加圧状態に戻る前に閉塞を除去し得る。
【0310】
いくつかの実施形態では、治療システムは、
図67~
図71に提示されていない他の制御パラメータを実装し得る。例えば、いくつかの実施形態では、システムは、治療デバイスの上流側に圧力センサPvを備え、治療デバイスの下流側に圧力センサPpを備える。コントローラは、2つの圧力センサ間で測定された圧力差に基づいてポンプ及び/又は空気入口弁を動作させ得る。例えば、コントローラは、圧力差が上限閾値を上回って増加したとき、又は所定の時間にわたって上限閾値を上回ったときに、空気入口弁を開放し得る。システム圧力差は、特に空気入口弁が閉鎖されたときに、システム内の閉塞を示し得る。空気弁が閉鎖され、システムが停滞した状態にある状態で、治療デバイスの上流側及び下流側の圧力は、実質的に等しくなるはずである。コントローラは、圧力差が下限閾値を下回って減少したとき、又は所定の時間にわたって下限閾値を下回ったとき、空気弁を閉鎖し得る。コントローラは、圧力差が上限又は最大閾値を上回って増加したとき、ポンプ及び/又は空気流状態を停止し得る。
【0311】
図64及び
図65を参照して上記で説明されるように、いくつかの実施形態では、システムは、治療流体を創傷に導入するように構成されている。
図64のシステムでは、コントローラは、空気入口弁2018の動作と同様の方式で治療流体を導入するために治療流体入口制御弁2022を動作させるように構成され得る。治療流体リザーバ2026は、好ましくは周囲圧力にある。
【0312】
コントローラは、ポンプを動作させながら、流体入口弁2022を開放して、創傷治療デバイスで陰圧を維持し、治療流体を治療デバイス内に引き込む。好ましい実施形態では、システムは、流体入口弁2022が開放した状態で、システムが平衡状態を達成し、治療流体リザーバ2026から治療システム内への治療流体の流量が、ポンプを通る流体(例えば、滲出液及び治療流体)の流量に等しくなるように構成されている。平衡状態では、創傷治療デバイスにおける真空圧力は、定常状態又は一定の真空圧力レベル(すなわち、第3の真空圧力)に維持されるか、又はそれに到達する。システムは、非常に短い持続時間、例えば、数秒以下、例えば、5秒以下の後に一定の真空圧力レベルを達成し得る。好ましい実施形態では、流体入口弁が開放されて平衡状態にある状態で、治療デバイス全体の圧力は、実質的にゼロである。
【0313】
流体入口弁が開放されているとき、コントローラは、空気入口弁が開放されているときに治療システムが達成するのと同じ圧力を治療デバイスで達成するようにポンプを動作させ得る。
【0314】
流体入口弁が閉鎖された状態で、ポンプは、創傷において陰圧を維持するように制御される。流体入口弁が閉鎖された状態で、ポンプは、創傷治療デバイスにおける真空圧力を定常状態又は一定の真空圧力レベル(第4の真空圧力)に維持するように制御され得る。繰り返しになるが、システムは、非常に短い持続時間、例えば、数秒以下、例えば、5秒以下の後に一定の真空圧力レベルを達成し得る。流体入口弁が閉鎖されているとき、コントローラは、空気入口弁が閉鎖されているときに治療システムが達成するのと同じ圧力を治療デバイスで達成するようにポンプを動作させ得る。
【0315】
流体入口弁が開放された状態の創傷治療デバイスにおける定常状態真空圧力は、流体入口弁が閉鎖された状態の創傷治療デバイスにおける定常状態真空圧力未満であり得る。しかしながら、流体入口弁が開放された状態の創傷治療デバイスにおける真空圧力は、効果的な陰圧治療に十分である。治療流体は、陽圧下では導入されない。したがって、治療陰圧を連続的に達成するためにポンプを動かしながら流体入口弁を開閉することは、効果的な治療のために創傷における陰圧環境を維持するのみならず、治療を改善するための治療流体の導入、滲出液の除去、及びシステム閉塞のリスクの低減も提供する。
【0316】
システムに投与される治療流体の量は、流体入口弁が開放されている時間に基づいて制御され得る。治療流体リザーバ2026と創傷治療デバイスの上流に位置付けられたPv圧力センサとの間に流量絞り(収縮オリフィスなど)が配置され得る。この絞りにわたる結果として生じる圧力降下は、流体の速度が、センサPvによって測定される結果として生じる圧力降下から決定されること、及び投与される治療流体の総量が計算されることを可能にし得る。代替的に、治療流体入口弁は、差圧閾値が達成されるまで、又はある時間にわたって達成されるまで開放され得るか、又は弁は、所定の時間にわたって開放され得る。治療流体入口弁は、好ましくは、空気入口弁が閉鎖されたときに開放される。
【0317】
図65の実施形態を参照すると、システムは、コントローラによって制御される治療流体入口弁を伴わない。創傷における真空圧が周囲の治療流体をシステム内に引き込むため、システムは、治療陰圧の間に治療流体を投与する。空気弁が開放されたとき、空気は、治療デバイスに流れ、システム内への空気の流れは、治療流体の密度と比較して空気のはるか低い密度に起因して、治療流体リザーバからの流体の流れを停止する傾向がある。空気入口弁が閉鎖されたとき、創傷における陰圧が、治療流体リザーバからシステム内に流体を引き込み、創傷内に溢れる。ポンプが創傷で真空圧力を維持すると、治療流体は、治療デバイス及び創傷を通過し、ポンプを通ってリザーバに流れる。空気弁を再開放すると、治療流体の流れが再び停止し、圧力差が生じて、治療流体及び滲出液を含む流体を創傷から移動させる。したがって、空気入口弁をサイクルさせることはまた、周期的様式における創傷への治療流体の追加及び創傷からの治療流体の除去を達成し得る。添加される治療流体の量は、どれだけ長く、又はどれだけ多くの空気が導入されているかに依存する。システムに導入される治療流体の量は、システムに導入される空気の量に比例し得る。
【0318】
ここで、
図64のシステムの例示的な実施態様が、
図72~
図75を参照して説明される。
図72に例示されるように、コントローラは、上記に説明された空気流状態に加えて、流体供給モード又は状態を実装するように構成されている。コントローラは、非供給/非空気流モードを実装し、このモードでは、空気入口弁及び治療流体弁が閉鎖され、ポンプが動作されて、創傷で陰圧を達成する。例示された実施形態では、非空気流状態は、加圧状態、保持状態、及びタイムアウト状態を含む。
【0319】
図72の空気流状態及び加圧状態は、
図68及び
図69を参照して上記に説明されるとおりである。
図68及び
図69の空気流状態及び加圧状態が動かされると、コントローラは、
図73の流体供給保持状態を実装する。
【0320】
図73を参照すると、保持状態では、コントローラは、空気入口弁を閉鎖位置に維持し、ポンプを動作させ続けて、例えば、所望の圧力閾値(Pv又はPpで)を達成するようにPID制御下で、ポンプをオン及びオフにすることによって、創傷治療デバイスで所望の又は許容可能な真空圧力を維持する。コントローラは、ある時間、例えば、20秒間にわたって空気入口弁を閉じた状態で真空圧力を維持する。20秒が経過すると、コントローラは、ポンプをオフにし、流体供給状態が必要であるかどうかを確認するためにチェックする。流体供給状態が必要とされない場合、コントローラは、空気流モードに戻り、
図67を参照して上記に説明されたように、空気入口弁の開閉のサイクルが繰り返される。コントローラは、治療流体供給が所定の時間、例えば、8時間にわたって提供されていない場合、又はユーザが設定した流体供給サイクル時間がトリガされた場合、又はユーザが、例えば、真空ユニットのユーザインターフェース上のボタンを押すことによって、流体供給を手動で要求した場合、流体供給状態を実装する。
【0321】
流体供給状態を起動する間の時間は、空気入口弁開閉サイクル時間よりもはるかに長い。例えば、空気入口弁サイクル時間は、1分未満であってもよく、流体供給状態の間の時間は、1時間超であってもよい
【0322】
図74を参照すると、流体供給状態では、コントローラは、流体弁を開放して、治療流体が、治療流体リザーバから治療デバイスの上流側にシステムに流れることを可能にし、圧力閾値を達成するようにポンプを動かす。治療デバイスの上流側の圧力センサPvによって感知された圧力が100mmHg未満であり、治療デバイスの下流側の圧力センサPpによって感知された圧力が150mmHg未満である場合、コントローラは、ポンプを動かす。治療流体弁が開放されているときのポンプの制御は、上記に説明されたように空気入口弁が開放されているときのポンプ制御と同じ又は同様であってもよい。例示された例では、コントローラは、流体弁を10秒間開放して維持するが、他の時間も可能である。コントローラは、流体弁を閉鎖し、流体接触滞留時間を可能にして、創傷に導入された流体が、設定された時間にわたって、創傷部位に溢れるか、又はそこに留まることを可能にし得る。コントローラは、ユーザ入力が0分~10分又は他の時間の滞留時間を設定することを可能にし得る。創傷内における流体接触を可能にするための遅延に続いて、コントローラは、創傷から治療流体を洗い流すための洗い流しサイクルに入る。例示された実施形態では、コントローラは、洗い流しサイクルを3回繰り返すが、コントローラは、洗い流しサイクルを1回、2回、又は3回超実施してもよい。例示された実施形態では、コントローラは、加圧状態に戻る前に流体供給状態を3回繰り返すが、コントローラは、流体供給状態を1回、2回、又は3回超実施してもよい。
【0323】
図75を参照すると、洗い流しサイクルでは、コントローラは、
図74に示されるように必要とされる場合に流体供給状態を継続して、流体供給状態を繰り返し、流体弁を再び開放する前に、それぞれ、
図69、
図73、及び
図68を参照して上記に説明されたように、加圧状態、保持状態、及び空気流状態をステップスルーする。流体供給状態の最後に、コントローラは、
図69の加圧状態に戻る。システムは、上記に説明されたように、加圧し、圧力を保持し、空気入口弁の開閉をサイクルすることを継続する。
【0324】
例示された実施形態では、流体入口弁は、流体入口弁の各開閉サイクルで、10秒間開放され、102秒間閉鎖される。閉鎖時間は、滞留時間及び組み合わせられた洗い流しサイクル実行時間に依存する。例示された実施形態では、流体供給状態は、3つの洗い流しサイクルを含む。各洗い流しサイクルが34秒を必要とする状態で、ゼロの例示的な滞留時間に関して、例示される例では、流体供給弁は、合計102秒間閉鎖される。例示される例では、流体入口弁は、サイクルピッチの約10%にわたって開放される。流体入口弁は、サイクルピッチの少なくとも5%、又はサイクルピッチの少なくとも10%、又はサイクルピッチの少なくとも20%にわたって開放され得る。
【0325】
流体供給及び洗い流し状態は、陰圧を維持しながら創傷に治療流体を提供し、空気の導入を使用して創傷から治療流体を洗い流して、流体及び滲出液を創傷から除去する。上記に説明されたように、いくつかの治療流体の洗い流しが提供され得る。この手順は、創傷内の停滞した流体を低減し、それによって、システム内の閉塞を低減し、陰圧が創傷部位に継続的に適用されることを確保する。
【0326】
システム2100、2200、2300の動作は、ユーザがシステムを選択的に動作させることを可能にするユーザインターフェース14を介してもよい。ユーザインターフェースは、システム設定を通信するために、視覚(例えば、LED)及び/又は音声指示をユーザに提供し得る。ユーザインターフェース2014は、接続された創傷治療デバイス2003への陰圧の送達を開始又は停止するために、ユニット電源をオン又はオフにするために、可聴アラームを消音するために、かつ/又はデバイスを遠隔無線受信デバイスに接続して、システムの動作若しくは状態に関するデータを伝送するために、数個のボタンを含み得る。
【0327】
コントローラは、空気弁2018用のアクチュエータ、ポンプ2015のモータ、及び圧力センサPv、Ppと電気通信するシステム論理及び制御アルゴリズムを提供し得る。コントローラ2017は、圧力センサPv、Ppにおける読み取り値に基づいて空気入口弁2018及びポンプアセンブリ2015を制御するように構成されている。コントローラはまた、電力管理及びセンサ回路と通信して、電源を管理するか、又はバッテリレベル警告アラームを提供し得る。
【0328】
コントローラ2017は、空気入口弁2018を開閉しながら、埋め込まれた創傷治療デバイス2003を介して創傷2004で陰圧を維持するようにポンプアセンブリ2015を動作させるように構成されている。空気入口弁2018は、本明細書内の他の箇所で説明されたように、創傷部位に空気を導入するために開放されるが、一方、ポンプアセンブリは、創傷で陰圧を維持するために動き続ける。
【0329】
陰圧治療は、創傷及び/又はシステム内の他の場所における血液、フィブリンなどの凝固に起因するシステム閉塞を悪化させ得る停滞したシステムを結果的にもたらし得る。閉塞は、最終的に、創傷で陰圧を提供することの失敗を結果的にもたらし得、陰圧治療の有効性を低減する。
【0330】
コントローラは、創傷治療部位2004及び埋め込まれた治療デバイス2003で生じる変化に応答してシステムに生じ得る予想される変化に適合するように構成され得る。治療デバイスが加圧状態、保持状態、及び空気流状態を通じて繰り返されたサイクルに供されるとき、Pv圧力センサとPp圧力センサとの間の圧力差が、組織の内部成長、創傷破片の蓄積、及び多くの他の要因の結果として、治療部位4及び/又は埋め込まれた創傷治療デバイス2003の変化に応答して生じ得ることが発見されている。
【0331】
これらの動的変化に応答して、システムは、治療デバイス2003の変化を補償するために、圧力部位の間にPv圧力センサに適用される標的圧力レベルを調節する。例えば、Pp圧力センサが150mmHgを上回った結果としてモータが停止した場合、システムは、保持状態に進む前に、例えば、Pv圧力センサで適用されている標的1(100mmHg)圧力から90mmHgの標的2圧力まで10mmHgだけ標的真空圧力レベルを低下させるように構成され得る。埋め込まれた治療デバイス2003にわたる圧力降下が再び増加する場合、システムは、Pv圧力レベルが60mmHg(標的5)を下回る圧力に到達するまで、標的レベルを1ステップだけ低下させ続けることになる。
【0332】
【0333】
Pv圧力センサで測定された圧力レベルがこのレベルに到達すると、システムは、保持状態から空気流状態への移行を停止することになり、システムを連続真空圧力レベルシステムに戻すことになる。
【0334】
保持状態中に60mmHg(標的5)を下回って低下した後、Pvにおける真空圧力レベルが90mmHg(標的2)に戻った場合、システムは、保持、空気流、及び加圧の間のサイクルが再開することになる、空気流状態に進むことを再開することになる。
【0335】
動物研究
一連の動物研究を実施して、片側のヒツジ外部腹部斜位死腔漿液腫モデル内の漿液腫防止の臨床転帰に対する様々な弁サイクルタイミングの効果を比較した。
【0336】
動物実験では、
図46に示されるデバイス1201と形状が類似した埋め込まれた創傷治療デバイス2003を利用した。埋め込まれた創傷治療デバイス2003は、約18mm
2の内部導管面積を有する中心導管に沿って約2mm間隔で配置された繰り返される4列のφ0.5mm±0.2mmサイズの穿孔を備える約260mm長の穿孔された中心導管を備えていた(φ4.8mmの等価内部チューブ直径)。埋め込まれた創傷治療デバイスは、約120mmの外径及び約60mmの内径を有していた。
【0337】
長さ約1000mm、内径3/16インチ(φ4.8mmID)の除去導管2011を、穿孔された中心導管の下流端部に接続し、長さ約1000mm、内径1/16インチ(φ1.6mmID)の供給導管2012を中心導管の上流端部に接続した。
【0338】
各埋め込まれた創傷治療デバイスは、
図67~
図71に関連して上述された治療アルゴリズムを用いて、
図63に表される実施形態の治療システム2100を反映するように構築された外部に取り付けられた真空デバイス2に接続した。
【0339】
このインプラント2003に接続された外部真空ポンプデバイス2002は、空気入口弁を14秒間開放するように構成されており、閉鎖持続時間は、変動する保持長さと関連付けられる臨床転帰の差異を評価するように変動された。試験は、「保持状態」において20秒、120秒、240秒、360秒の弁閉鎖タイミングで行った。
【0340】
システムは、「空気流状態」中の濾過された空気の注入中に80mmHgの真空圧力レベルに維持され、システムは、「加圧状態」中に100mmHgの第2の平衡圧力に戻った。このサイクルは、安全機構として150mmHgに上限を定められた流体除去導管2011に沿った真空圧力レベルで連続パターンで動作した。
【0341】
試験は5匹のヒツジで行われ、各動物は単一の埋め込まれた創傷治療デバイス2003を受容した。約110cm2の面積の欠損部位は、60グラムの外部腹部斜筋を、筋の上の薄弱な領域から切除することによって作った。インプラントデバイスを欠損部位の最下腹側面に配置し、インプラントを適所に固定するために結紮された一連の通された縫合糸を使用して治療部位に固定した。除去導管2011及び供給導管2012は両方とも、創傷の上及び最前方の腹側頭蓋面において創傷から出ており、導管は、ステイ縫合糸を使用して皮膚ポータルにおいて適所に保持されている。治療部位が閉鎖されると、インプラントデバイスは、プログラムされたように機能するために、外部に取り付けられた真空ポンプデバイス2002に接続された。
【0342】
術後7日目に超音波評価を実施して、欠損部位で形成された任意の漿液腫のサイズを評価し、欠損部位で測定された任意の漿液腫の体積を、楕円体の体積を決定するための式を使用して計算した。
【0343】
デバイスのリザーバ内に収集された創傷滲出液の体積を毎日測定して、術後7日間にわたって収集された流体の総量を決定した。全ての動物を術後14日目に安楽死させ、治療部位の肉眼的評価を行ったが、ただし、動物ID5は術後7日目に安楽死させた。動物実験の結果を以下の表に示す。
【0344】
【0345】
術後14日目の時点で安楽死させた後の動物ID1、2、及び3について、欠損部位に漿液腫又は創傷流体の徴候はなく、埋め込まれた創傷治療デバイス3は周囲組織と完全に一体化されていることが見出された。
【0346】
術後7日目に安楽死させた動物ID5では、欠損部位に漿液腫の中等度の徴候があり、結果は同じ時点での超音波評価とも一致した。
【0347】
動物ID4の欠損部位は、術後14日目の時点で大きい漿液腫を有することが見出され、これは、術後7日目の時点でのものと一致し、欠損部位の分離された組織平面の任意の一体化の徴候は実質的にゼロであった。
【0348】
この動物研究からの結果は、120秒以下の空気入口弁閉鎖時間が、完全な死腔閉鎖及び動物による欠損部位での漿液腫形成の防止をもたらす可能性がより高いという結論を支持する。
【0349】
本明細書で説明されるシステムは、以下のうちの1つ以上を含むが、それらに限定されない、有意な利益を提供し得る。
・過剰な滲出液の除去による低減された浮腫などの改善された治癒利益を提供する、創傷部位からの改善された流体除去。
・システム内で形成する閉塞の低減されたリスク。
・効果的な治療を確保するために、空気の追加中であっても、創傷における効果的な陰圧の維持。
・創傷に高さの差が存在する場合、創傷の下部分からの滲出液の除去。
・ポータブル創傷治療システムにおける用途に好適な低電力消費。
・効果的な治療を確保するために、創傷における効果的な陰圧を維持しながらの創傷への治療流体の適用。
・治療空間全体にわたる治療を改善するために、治療空間のより大きい部分への陰圧の提供。
・創傷への治療流体供給の提供を伴う及び伴わないシステムの構成可能性。
・空気入口と創傷部位との間に無菌インターフェースを提供することの容易さ。
【国際調査報告】