IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウモジャ バイオファーマ インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-551220複数のポリヌクレオチドを送達するためのベクター系およびその使用法
<>
  • 特表-複数のポリヌクレオチドを送達するためのベクター系およびその使用法 図1
  • 特表-複数のポリヌクレオチドを送達するためのベクター系およびその使用法 図2
  • 特表-複数のポリヌクレオチドを送達するためのベクター系およびその使用法 図3
  • 特表-複数のポリヌクレオチドを送達するためのベクター系およびその使用法 図4
  • 特表-複数のポリヌクレオチドを送達するためのベクター系およびその使用法 図5
  • 特表-複数のポリヌクレオチドを送達するためのベクター系およびその使用法 図6
  • 特表-複数のポリヌクレオチドを送達するためのベクター系およびその使用法 図7-1
  • 特表-複数のポリヌクレオチドを送達するためのベクター系およびその使用法 図7-2
  • 特表-複数のポリヌクレオチドを送達するためのベクター系およびその使用法 図8
  • 特表-複数のポリヌクレオチドを送達するためのベクター系およびその使用法 図9
  • 特表-複数のポリヌクレオチドを送達するためのベクター系およびその使用法 図10
  • 特表-複数のポリヌクレオチドを送達するためのベクター系およびその使用法 図11
  • 特表-複数のポリヌクレオチドを送達するためのベクター系およびその使用法 図12
  • 特表-複数のポリヌクレオチドを送達するためのベクター系およびその使用法 図13
  • 特表-複数のポリヌクレオチドを送達するためのベクター系およびその使用法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】複数のポリヌクレオチドを送達するためのベクター系およびその使用法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/867 20060101AFI20231130BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231130BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231130BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231130BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20231130BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20231130BHJP
   C07K 14/725 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
C12N15/867 Z ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/12
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/725
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531056
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 US2021059931
(87)【国際公開番号】W WO2022109162
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/116,611
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523190284
【氏名又は名称】ウモジャ バイオファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】シャレンバーグ アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ベイツ ローリー
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、少なくとも2種類のポリヌクレオチドを含むベクター系に関連し、ポリヌクレオチドはそれぞれ、高分子複合体のポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。前記ポリヌクレオチドを形質導入された細胞における前記高分子複合体の集合体は、細胞の増殖および/または生存を促進し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類のポリヌクレオチドを含むベクター系であって、
ポリヌクレオチドがそれぞれ、高分子複合体のポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチド配列を含み、
前記少なくとも2種類のポリヌクレオチドを形質導入された細胞における前記高分子複合体の集合体が、細胞の増殖および/または生存を促進する、
前記ベクター系。
【請求項2】
前記高分子複合体がマルチパータイト型細胞表面受容体である、請求項2に記載のベクター系。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドのうちの2種類を含む単一のベクターを含む、請求項1または請求項2に記載のベクター系。
【請求項4】
前記単一のベクターが、単一のレンチウイルスベクターである、請求項3に記載のベクター系。
【請求項5】
前記ベクター系が、2種類のベクターを含み、それぞれのベクターが、前記ポリヌクレオチドのうちの1種類を含む、請求項1または請求項2に記載のベクター系。
【請求項6】
前記ベクターが、2種類のレンチウイルスベクターである、請求項5に記載のベクター系。
【請求項7】
前記高分子複合体の集合体がリガンドによって制御される、請求項1~6のいずれか一項に記載のベクター系。
【請求項8】
前記ベクター系が、
前記高分子複合体の第1のポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチド配列を含む第1のポリヌクレオチドであって、前記第1のポリペプチド構成要素が、FKBP-ラパマイシン複合体結合ドメイン(FRBドメイン)もしくはその機能的なバリアントを含む、前記第1のポリヌクレオチド、および
前記高分子複合体の第2のポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチド配列を含む第2のポリヌクレオチドであって、前記第2のポリペプチド構成要素が、FK506結合タンパク質(FKBP)ドメインもしくはその機能的なバリアントを含む、前記第2のポリヌクレオチド
を含み;かつ/または
前記リガンドがラパマイシンである、
請求項7に記載のベクター系。
【請求項9】
FRBドメインポリペプチドが、SEQ ID NO: 1に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する、請求項8に記載のベクター系。
【請求項10】
FKBPポリペプチドが、SEQ ID NO: 2に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する、請求項8に記載のベクター系。
【請求項11】
前記高分子複合体の発現が、誘導性である遺伝子的系または生化学的系の制御下にある、請求項1~10のいずれか一項に記載のベクター系。
【請求項12】
それぞれのポリヌクレオチドがプロモーターに機能的に連結されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のベクター系。
【請求項13】
前記プロモーターが誘導性プロモーターである、請求項12に記載のベクター系。
【請求項14】
前記ポリヌクレオチドのうちの少なくとも1種類が、免疫抑制剤に対する耐性を付与するポリヌクレオチド配列を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のベクター系。
【請求項15】
免疫抑制剤に対する耐性を付与する前記ポリヌクレオチド配列が、ラパマイシンに結合するポリペプチドをコードしており、任意で、前記ポリペプチドがFRBである、請求項14に記載のベクター系。
【請求項16】
少なくとも1種類のポリヌクレオチド配列が、T細胞、NK細胞、またはNKT細胞への形質導入の能力を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載のベクター系。
【請求項17】
少なくとも1種類のポリヌクレオチド配列が、インビボでのT細胞、NK細胞、またはNKT細胞への形質導入の能力を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載のベクター系。
【請求項18】
少なくとも1種類のポリヌクレオチド配列が、インビトロでのT細胞、NK細胞、またはNKT細胞への形質導入の能力を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載のベクター系。
【請求項19】
少なくとも1種類のレトロウイルス粒子を含み、
ここで、前記レトロウイルス粒子が、1種類または複数種類の形質導入エンハンサーを含み、
前記形質導入エンハンサーが、T細胞活性化受容体、NK細胞活性化受容体、および共刺激分子からなる群より選択される、
請求項1~18のいずれか一項に記載のベクター系。
【請求項20】
前記1種類または複数種類の形質導入エンハンサーが、抗CD3 scFv、CD86、およびCD137Lのうちの1つまたは複数を含む、請求項19に記載のベクター系。
【請求項21】
第1のベクターが、
(a) プロモーター;
(b) FK506結合タンパク質(FKBP)ドメインまたはその一部分;
(c) IL-2受容体膜貫通ドメイン;
(d) インターロイキン-2受容体γサブユニット(IL2Rγ)ドメイン;および
(e) 第1のキメラ抗原受容体(CAR)
をコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のベクター系。
【請求項22】
第2のベクターが、
(a) プロモーター;
(b) FKBP-ラパマイシン結合(FRB)ドメインまたはその一部分;
(c) IL-2受容体膜貫通ドメイン;
(d) インターロイキン-2受容体βサブユニット(IL2Rβ)ドメイン;および
(e) 第2のCAR
をコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載のベクター系。
【請求項23】
前記FKBPドメインまたはその一部分とFRBドメインまたはその一部分とが、ラパマイシンの存在下でヘテロ二量体化して、細胞の増殖および/または生存を促進する、請求項21または22に記載のベクター系。
【請求項24】
前記プロモーターがMNDである、請求項1~23のいずれか一項に記載のベクター系。
【請求項25】
MNDプロモーターが、SEQ ID NO: 3に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する、請求項24に記載のベクター系。
【請求項26】
IL2Rγドメインポリペプチドが、SEQ ID NO: 4に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する、請求項21に記載のベクター系。
【請求項27】
IL2Rβドメインポリペプチドが、SEQ ID NO: 5に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する、請求項22に記載のベクター系。
【請求項28】
第1のCARポリペプチドが、細胞表面抗原であるCD19に特異的に結合する抗原結合分子を含む、請求項21~27のいずれか一項に記載のベクター系。
【請求項29】
第2のCARポリペプチドが、細胞表面抗原であるCD20に特異的に結合する抗原結合分子を含む、請求項21~27のいずれか一項に記載のベクター系。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか一項に記載のベクター系を対象に投与する段階を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年11月20日に提出された米国特許仮出願第63/116,611号の優先権および恩典を主張する。上述の特許仮出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本開示は、全体として、高分子複合体の構成要素をコードするウイルスベクター系、それを含む組成物、およびそれを使用する方法に関連する。
【0003】
配列表
本出願は配列表を含んでおり、前記配列表はEFS-Webを通じてASCIIフォーマットで提出されており、かつその全体が参照により本明細書に組み入れられる。前記ASCIIコピーは2021年11月17日に作成されたものであり、「UMOJ-008-01WO_SeqList_ST25.txt」との名称を有し、かつ47 KBのサイズである。
【背景技術】
【0004】
背景
ポリヌクレオチドを細胞内へと送達するためのベクター系の多くにおいては、送達されようとするポリヌクレオチドのサイズに上限がある。たとえば、AAVベクターは約5 kb程度のパッケージング限界を有している。レンチウイルスベクターは約10 kB程度のパッケージング限界を有している。より大きな遺伝子を送達するため、さまざまな技術が開発されている。既知の方法は概して、細胞におけるポリヌクレオチドの相互作用、たとえば相同組み換えまたはトランススプライシングなどを利用している。たとえばTornabene, P.ら (2020) Human Gene Therapy 31(47-56)(非特許文献1)は、より大きな遺伝子を送達するために複数のAAVベクターを使用することを開示している。Zufferey, R.ら (1998) Journal of Virology 72;12(9873-9880)(非特許文献2)は、導入遺伝子の安定的な発現のために、より大きなクローニング能力を有する自己不活性化型HIV-1ベクターを使用することを開示している。Cockrell, A.S.およびKafri, T. (2007) Molecular Biotechnology 36(184-204)(非特許文献3)は、非分裂細胞への形質導入およびトランスジェニック動物の作製のために、レンチウイルスベクターを使用することを開示している。
【0005】
ポリヌクレオチドの送達技術については、満たされていないニーズがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Tornabene, P.ら (2020) Human Gene Therapy 31(47-56)
【非特許文献2】Zufferey, R.ら (1998) Journal of Virology 72;12(9873-9880)
【非特許文献3】Cockrell, A.S.およびKafri, T. (2007) Molecular Biotechnology 36(184-204)
【発明の概要】
【0007】
概要
本開示の1つの局面は、少なくとも2種類のポリヌクレオチドを含むベクター系を提供し、ポリヌクレオチドはそれぞれ、高分子複合体のポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチド配列を含み、ここで、前記少なくとも2種類のポリヌクレオチドを形質導入された細胞における高分子複合体の集合体は、細胞の増殖および/または生存を促進する。
【0008】
いくつかの態様において、ベクター系は、マルチパータイト型細胞表面受容体である高分子複合体を含む。
【0009】
いくつかの態様において、ベクター系は、ポリヌクレオチドのうちの2種類を含む単一のベクターを含む。
【0010】
いくつかの態様において、ベクター系は、単一のレンチウイルスベクターである単一のベクターを含む。
【0011】
いくつかの態様において、ベクター系は2種類のベクターを含み、それぞれのベクターが、ポリヌクレオチドのうちの1種類を含む。
【0012】
いくつかの態様において、ベクター系は、2種類のレンチウイルスベクターであるベクターを含む。
【0013】
いくつかの態様において、高分子複合体の集合体はリガンドによって制御される。
【0014】
いくつかの態様において、ベクター系は、
高分子複合体の第1のポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチド配列を含む第1のポリヌクレオチドであって、第1のポリペプチド構成要素が、FKBP-ラパマイシン複合体結合ドメイン(FRBドメイン)もしくはその機能的なバリアントを含む、第1のポリヌクレオチド、および
高分子複合体の第2のポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチド配列を含む、第2のポリヌクレオチドであって、第2のポリペプチド構成要素が、FK506結合タンパク質(FKBP)ドメインもしくはその機能的なバリアントを含む、第2のポリヌクレオチド
を含み;かつ/または
リガンドはラパマイシンである。
【0015】
いくつかの態様において、ベクター系はFRBドメインポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0016】
いくつかの態様において、ベクター系はFRBドメインポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは、SEQ ID NO: 2に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0017】
いくつかの態様において、ベクター系はFKBPポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは、SEQ ID NO: 6に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0018】
いくつかの態様において、高分子複合体の発現は、誘導性である遺伝子的系または生化学的系の制御下にある。
【0019】
いくつかの態様において、ベクター系のポリヌクレオチドはそれぞれ、プロモーターに機能的に連結されている。
【0020】
いくつかの態様において、プロモーターは誘導性プロモーターである。
【0021】
いくつかの態様において、ポリヌクレオチドのうちの少なくとも1種類は、免疫抑制剤に対する耐性を付与するポリヌクレオチド配列を含む。
【0022】
いくつかの態様において、免疫抑制剤に対する耐性を付与するポリヌクレオチド配列は、ラパマイシンに結合するポリペプチドをコードしており、ここで任意で、ポリペプチドはFRBである。
【0023】
いくつかの態様において、少なくとも1種類のポリヌクレオチド配列は、T細胞、NK細胞、またはNKT細胞への形質導入の能力を有する。
【0024】
いくつかの態様において、少なくとも1種類のポリヌクレオチド配列は、インビボでのT細胞、NK細胞、またはNKT細胞への形質導入の能力を有する。
【0025】
いくつかの態様において、少なくとも1種類のポリヌクレオチド配列は、インビトロでのT細胞、NK細胞、またはNKT細胞への形質導入の能力を有する。
【0026】
いくつかの態様において、両方のベクターゲノムを形質導入された細胞は、選択的に選択される。いくつかの態様において、両方のベクターゲノムを用いた形質導入は、形質導入された細胞の増殖および/または生存を促進する。
【0027】
いくつかの態様において、ベクター系は、少なくとも1種類のレトロウイルス粒子を含み、
ここで、レトロウイルス粒子は、1種類または複数種類の形質導入エンハンサーを含み、形質導入エンハンサーは、T細胞活性化受容体、NK細胞活性化受容体、および共刺激分子からなる群より選択される。
【0028】
いくつかの態様において、1種類または複数種類の形質導入エンハンサーは、抗CD3 scFv、CD86、およびCD137Lのうちの1つまたは複数を含む。
【0029】
いくつかの態様において、第1のベクターは、以下をコードするポリヌクレオチド配列を含む:
(a) プロモーター;
(b) FK506結合タンパク質(FKBP)ドメインまたはその一部分;
(c) IL-2受容体膜貫通ドメイン;
(d) インターロイキン-2受容体γサブユニット(IL2Rγ)ドメイン;および
(e) 第1のキメラ抗原受容体(CAR)。
【0030】
いくつかの態様において、第2のベクターは、以下をコードするポリヌクレオチド配列を含む:
(a) プロモーター;
(b) FKBPラパマイシン結合(FRB)ドメインまたはその一部分;
(c) IL-2受容体膜貫通ドメイン;
(d) インターロイキン-2受容体βサブユニット(IL2Rβ)ドメイン;および
(e) 第2のCAR。
【0031】
いくつかの態様において、FKBPドメインまたはその一部分と、FRBドメインまたはその一部分は、ラパマイシンの存在下でヘテロ二量体化して、細胞の増殖および/または生存を促進する。
【0032】
ベクター系のいくつかの態様において、プロモーターはMNDである。
【0033】
いくつかの態様において、MNDプロモーターは、SEQ ID NO: 3に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0034】
いくつかの態様において、IL2Rγドメインポリペプチドは、SEQ ID NO: 4に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0035】
いくつかの態様において、IL2Rβドメインポリペプチドは、SEQ ID NO: 5に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0036】
いくつかの態様において、第1のCARポリペプチドは、細胞表面抗原であるCD19に特異的に結合する抗原結合分子を含む。
【0037】
いくつかの態様において、第2のCARポリペプチドは、細胞表面抗原であるCD20に特異的に結合する抗原結合分子を含む。
【0038】
本開示の1つの局面は、上述の態様のうちの任意のもののベクター系を対象に投与する段階を含む方法を提供する。
【0039】
本発明のさらなる局面および態様は、以下の詳細な説明によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】2種類のポリヌクレオチド配列をコードするデュアルベクター系の1つの態様を示す概略図であり、前記ポリヌクレオチド配列はそれぞれ、高分子複合体の構成要素であって、ラパマイシンに結合しかつこれに対する耐性を付与する、高分子複合体の構成要素(RACRγおよびRACRβ)をコードする。ベクター系はまた、細胞質型FRBドメインタンパク質もコードし得、これは、FKBPとの複合体形成によってラパマイシンをさらに封鎖する。
図2】2種類のポリヌクレオチド配列をコードするデュアルベクター系の態様を示す概略図であり、前記ポリヌクレオチド配列はそれぞれ、高分子複合体の構成要素(RACRγおよびRACRβ)、細胞質型FRBドメイン、ならびにCARをコードする。
図3】「pRRL-MND-ヒト-Frb-RACCRb-CD19_CAR-VTw」のベクターマップを示す。
図4】「pRRL-MND-ヒト-Frb-RACCRg-CD20_CAR-VTw」のベクターマップを示す。
図5図5A~5Bはレンチウイルス粒子の力価のグラフを示す。上清試料(図5A)についてのレンチウイルスの力価は3.65×105 TU/mlであり、かつ濃縮された試料(図5B)についてのレンチウイルスの力価は1.12×108 TU/mlであった。
図6図6A~6Bは、形質導入されたT細胞における、表面でのCD19 CARおよびCD20 CARの発現を示すフローサイトメトリー染色プロットである。図6Aは、デュアルベクター系を形質導入された細胞であって、ラパマイシンを用いた刺激を受けなかった、細胞、のフローサイトメトリー染色プロットを示す。図6Bは、デュアルベクター系を形質導入され、かつ10 mMのラパマイシンを用いて刺激された細胞の、フローサイトメトリー染色プロットを示す。
図7-1】図7A~7Dは、腫瘍細胞と共培養されたCAR T細胞を示すフローサイトメトリー染色プロットである。CD19陰性/CD20陰性K562腫瘍細胞は、デュアルベクター系を形質導入されたT細胞の非存在下(図7A)でも存在下(図7B)でも、影響を受けないままであった。CD19陽性/CD20陰性K562 KI腫瘍細胞は、デュアルベクター系を形質導入されたT細胞の非存在下では影響を受けなかった(図7C)が、デュアルベクター系を形質導入された細胞は、CD19陽性/CD20陰性腫瘍細胞を根絶させた(図7D)。
図7-2】図7-1の説明を参照のこと。
図8図8A~8Bは、CD20 CARを発現するT細胞であって、CD19 KO/CD20+ RAJI腫瘍細胞と共培養された、T細胞を示す、フローサイトメトリー染色プロットである。CD19 KO/CD20+ RAJI腫瘍細胞は、形質導入されていないT細胞による影響を受けなかった(図8A)が、デュアルベクター系を形質導入された細胞は、CD19陰性/CD20陽性RAJI腫瘍細胞を根絶させた(図8B)。
図9】デュアルベクター系を形質導入されたT細胞での応答としてのサイトカインであるIFNγの産生であって、対照(標的細胞のみ)において、形質導入されていないT細胞(CARなし)において、および形質導入されたT細胞(DP CAR)において、対照細胞(標的なし)との、K562細胞(表面抗原なし)との、K562 CD19ノックイン(KI)細胞(K562 +19)との、RAJI CD19ノックアウト(KO)細胞(Raji -19)との、またはRAJI CD19+/CD20+(Raji)細胞との68時間の共培養を行った後での、IFNγの産生を示す、グラフである。
図10】デュアルベクター系を形質導入されたT細胞での応答としてのサイトカインであるIL-2の産生であって、対照(標的細胞のみ)において、形質導入されていないT細胞(CARなし)において、および形質導入されたT細胞(DP CAR)において、対照細胞(標的なし)との、K562細胞(表面抗原なし)との、K562 CD19ノックイン(KI)細胞(K562 +19)との、RAJI CD19ノックアウト(KO)細胞(Raji -19)との、またはRAJI CD19+/CD20+(Raji)細胞との68時間の共培養を行った後での、IL-2の産生を示す、グラフである。
図11】デュアルベクター系を形質導入されたT細胞での応答としてのサイトカインであるTNFαの産生であって、対照(標的細胞のみ)において、形質導入されていないT細胞(CARなし)において、および形質導入されたT細胞(DP CAR)において、対照細胞(標的なし)との、K562細胞(表面抗原なし)との、K562 CD19ノックイン(KI)細胞(K562 +19)との、RAJI CD19ノックアウト(KO)細胞(Raji -19)との、またはRAJI CD19+/CD20+(Raji)細胞との68時間の共培養を行った後での、TNFαの産生を示す、グラフである。
図12】デュアルベクター系を形質導入されたT細胞での応答としてのサイトカインであるIL-13の産生であって、対照(標的細胞のみ)において、形質導入されていないT細胞(CARなし)において、および形質導入されたT細胞(DP CAR)において、対照細胞(標的なし)との、K562細胞(表面抗原なし)との、K562 CD19ノックイン(KI)細胞(K562 +19)との、RAJI CD19ノックアウト(KO)細胞(Raji -19)との、またはRAJI CD19+/CD20+(Raji)細胞との68時間の共培養を行った後での、IL-13の産生を示す、グラフである。
図13図13A~13Cは、ラパマイシン刺激後のデュアルCAR T細胞の富化を示すフローサイトメトリー染色プロットである。表面でのCD19 CARおよびCD20 CARの両方の発現は、FITC-CD19抗原およびPE-CD20抗原を用いて解析された。デュアルベクター系を形質導入されたT細胞は、刺激前に(図13A)、抗原を発現していないK562細胞との共培養後に(図13B)、およびCD19を発現しているK562細胞との共培養後に(図13C)解析された。
図14】標的RAJI細胞との7日間にわたる共培養への応答としての、デュアルベクター系を形質導入されたT細胞の増大を示すグラフである。細胞数は、形質導入されたエフェクターT細胞:標的RAJI細胞、という比の関数として解析された。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な説明
本開示は、全体として、少なくとも2種類のポリヌクレオチドを含むベクター系に関連し、ポリヌクレオチドはそれぞれ、高分子複合体のポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチド配列を含み、ここで、前記少なくとも2種類のポリヌクレオチドを形質導入された細胞における高分子複合体の集合体は、細胞の増殖および/または生存を促進する。
【0042】
定義
別途定義されない限り、本明細書において使用される全ての用語(技術用語および科学用語が含まれる)は、本発明が属する技術分野における当業者が通常理解しているものと、同じ意味を有する。用語、たとえば一般的に使用されている辞書に定義されている用語などは、本出願の文脈および関連する技術分野におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであって、かつ、本明細書において明示的にそう定義されない限り、理想化された意味または過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことが、さらに理解される。本説明において使用される用語は、ある特定の態様のみを記述することを目的とするのであって、限定することを意図するものではない。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それらの全体が参照により組み入れられる。用語において不一致のある場合には、本明細書に従う。
【0043】
本発明の説明および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」には、文脈が明確に他を示していない限り、複数形も同様に含まれることが意図される。
【0044】
「対象」には、本明細書において使用される場合、哺乳動物が含まれ、これはたとえば、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジ、またはブタなどであり、好ましくはヒトである。
【0045】
本明細書において使用される場合、「処置する(Treat)」、「処置する(treating)」、または「処置(treatment)」もまた、疾患または障害を有する対象に恩恵を与える、任意のタイプの活動または投与を指し、これには、患者の状態の改善(たとえば、1種類または複数種類の症状の低減または好転)、治癒等が含まれる。
【0046】
また、本明細書において使用される場合、「および/または」とは、列挙された項目の連続物のうちの1つまたは複数の項目のあらゆる可能な組み合わせを指し、かつ前記組み合わせを包含し、加えて、選択肢において解釈される場合には(または)、ある組み合わせの不在を指し、かつ前記組み合わせの不在を包含する。
【0047】
文脈が他を示していない限り、本明細書において記載されるさまざまな特徴は任意の組み合わせにおいて使用可能であることが、特に意図される。さらに、いくつかの態様において、本明細書において記載される、任意の特徴、または特徴の任意の組み合わせが、除外または省略され得ることもまた、本開示は意図する。説明すると、ある複合体が構成要素であるA、B、およびCを含む、と本明細書が記載している場合、A、B、もしくはCのうちの任意のものかまたはそれらの組み合わせを省略可能でありかつ排除可能であることが、特に意図される。
【0048】
本明細書において使用される場合、「例」との用語、「例示」との用語、およびそれらの文法上の変体は、本明細書において論じられる、非限定的な例および/またはさまざまな態様を指すことが意図されるのであって、かつ、本明細書において論じられる1つまたは複数の態様の、1つまたは複数の他の態様に対する優先性を示すことを意図するものではないこともまた、理解される。
【0049】
本明細書において引用される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それらへの参照が存在する文および/または段落に関連する教示に関して、それらの全体が参照により組み入れられる。
【0050】
文脈が他を示していない限り、本明細書において記載されるさまざまな特徴は任意の組み合わせにおいて使用可能であることが、特に意図される。
【0051】
さらに、いくつかの態様において、本明細書において記載される、任意の特徴、または特徴の任意の組み合わせが、除外または省略され得ることもまた、本開示は意図する。
【0052】
遺伝コードの縮重の結果として、多数の異なるポリヌクレオチドおよび核酸が同じポリペプチドをコードすることが可能であることを、当業者であれば理解するであろう。加えて、任意の特定の宿主生物であって、そこでポリペプチドを発現させようとする、宿主生物のコドン使用を反映させるために、当業者は慣用の技術を用いて、本明細書に記載されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列に対して影響を及ぼさないヌクレオチド置換を生じさせることが可能であることが、理解される。
【0053】
核酸はDNAまたはRNAを含んでよい。これらは1本鎖であってよいか、または2本鎖であってもよい。これらはまた、その中に合成ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであってもよい。当技術分野においては、オリゴヌクレオチドに対する多数の異なるタイプの修飾が公知である。これらには、メチルホスホネートおよびホスホロチオネートのバックボーン、分子の3'末端および/または5'末端におけるアクリジンまたはポリリジン鎖の付加が含まれる。本明細書に記載される用途の目的については、当技術分野において利用可能な任意の手法によってポリヌクレオチドが修飾され得ることが理解される。そのような修飾は、関心対象のポリヌクレオチドのインビボでの活性または寿命を増大させるために実施され得る。
【0054】
ヌクレオチド配列に関連する「バリアント」、「ホモログ」、または「誘導体」との用語には、前記配列からの、または前記配列への、1つ(または複数)の核酸の任意の置換、変更、修飾、置き換え、欠失、または付加が含まれる。核酸は、マイトジェン性の形質導入エンハンサーをコードする1種類もしくは複数種類の配列および/またはサイトカインベースの形質導入エンハンサーをコードする1種類もしくは複数種類の配列を含むポリペプチドを、産生し得る。ポリペプチドが産生された際に、外部からの切断活性を一切必要とすることなく、受容体構成要素とシグナル伝達構成要素とに速やかに切断されるように、切断部位は自己切断型であってよい。
【0055】
態様
本開示の1つの局面は、少なくとも2種類のポリヌクレオチドを含むベクター系を提供し、ポリヌクレオチドはそれぞれ、高分子複合体のポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチド配列を含み、ここで、前記少なくとも2種類のポリヌクレオチドを形質導入された細胞における高分子複合体の集合体は、細胞の増殖および/または生存を促進する。
【0056】
いくつかの態様において、ベクター系は、マルチパータイト型細胞表面受容体である高分子複合体を含む。
【0057】
いくつかの態様において、マルチパータイト型細胞表面受容体は、増殖を引き起こす(proliferatory)受容体である。
【0058】
いくつかの態様において、増殖を引き起こす受容体、任意で、リガンドによって誘導される、増殖を引き起こす受容体は、2種類の異なるポリヌクレオチドとして細胞へと送達される。
【0059】
いくつかの態様において、ベクター系は、ポリヌクレオチドのうちの2種類を含む単一のベクターを含む。
【0060】
いくつかの態様において、ベクター系は、単一のレンチウイルスベクターである単一のベクターを含む。
【0061】
いくつかの態様において、ベクター系は2種類のベクターを含み、それぞれのベクターが、ポリヌクレオチドのうちの1種類を含む。
【0062】
いくつかの態様において、ベクター系は、2種類のレンチウイルスベクターである2種類のベクターを含む。
【0063】
いくつかの態様において、ベクター系は少なくとも2種類のポリヌクレオチドを含み、かつポリヌクレオチドはそれぞれ、別々のカプシドに覆われている。
【0064】
いくつかの態様において、少なくとも2種類のポリヌクレオチドは、単一のレンチウイルス粒子に共にパッケージングされる。いくつかの態様において、少なくとも2種類のポリヌクレオチドは、少なくとも2種類のレンチウイルス粒子内にパッケージングされる。
【0065】
いくつかの態様において、2種類のレンチウイルスゲノムが同じ細胞に形質導入され、そして同じ細胞に組み込まれる。
【0066】
いくつかの態様において、高分子複合体の集合体はリガンドによって制御される。
【0067】
いくつかの態様において、リガンドはラパマイシンである。
【0068】
いくつかの態様において、リガンドは、タンパク質、抗体、小分子、または薬剤である。いくつかの態様において、リガンドは、ラパマイシンまたはラパマイシンアナログ(ラパログ)である。いくつかの態様において、ラパログは、ラパマイシンと比較した際に以下の修飾の1つまたは複数を有する、ラパマイシンのバリアントを含む:C7、C42、および/またはC29におけるメトキシの脱メチル化、除去、または置き換え;C13、C43、および/またはC28におけるヒドロキシの除去、誘導体化、または置き換え;C14、C24、および/またはC30におけるケトンの還元、除去、または誘導体化;五員環プロリンでの六員環ピペコリン酸の置き換え;ならびにシクロヘキシル環における別の置換、または置換シクロペンチル環でのシクロヘキシル環の置き換え。したがって、いくつかの態様において、ラパログは以下のものである:エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダホロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、ゾタロリムス、CCI-779、C20-メタリルラパマイシン、C16-(S)-3-メチルインドールラパマイシン、C16-iRap、AP21967、ミコフェノール酸ナトリウム(sodium mycophernolic acid)、ベニジピン塩酸塩、ラパミューン(rapamine)、AP23573、もしくはAP1903か、またはそれらの代謝物、それらの誘導体、および/もしくはそれらの組み合わせ。いくつかの態様において、リガンドはIMIDクラスの薬剤(たとえば、サリドマイド、ポマリドミド(pomalidimide)、レナリドミド、または関連するアナログ)である。
【0069】
いくつかの態様において、分子は以下から選択される:FK1012、タクロリムス(FK506)、FKCsA、ラパマイシン、クーママイシン、ジベレリン、HaXS、TMP-HTag、およびABT-737、またはそれらの機能的な誘導体。
【0070】
いくつかの態様において、ベクター系は、高分子複合体の第1のポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチド配列を含む第1のポリヌクレオチドであって、第1のポリペプチド構成要素が、FKBP-ラパマイシン複合体結合ドメイン(FRBドメイン)またはその機能的なバリアントを含む、第1のポリヌクレオチドを含む。
【0071】
いくつかの態様において、ベクター系は、高分子複合体の第2のポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチド配列を含む第2のポリヌクレオチドであって、第2のポリペプチド構成要素が、FK506結合タンパク質(FKBP)ドメインまたはその機能的なバリアントを含む、第2のポリヌクレオチドを含む。
【0072】
いくつかの態様において、ベクター系は、
高分子複合体の第1のポリペプチド構成要素コードするポリヌクレオチド配列を含む第1のポリヌクレオチドであって、第1のポリペプチド構成要素が、FKBP-ラパマイシン複合体結合ドメイン(FRBドメイン)またはその機能的なバリアントを含む、第1のポリヌクレオチド、および
高分子複合体の第2のポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチド配列を含む第2のポリヌクレオチドであって、第2のポリペプチド構成要素が、FK506結合タンパク質(FKBP)ドメインまたはその機能的なバリアントを含む、第2のポリヌクレオチド
を含む。
【0073】
いくつかの態様において、ベクター系はFRBドメインポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0074】
いくつかの態様において、ベクター系はFRBドメインポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは、SEQ ID NO: 2に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0075】
いくつかの態様において、ベクター系はFKBPポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは、SEQ ID NO: 6に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0076】
いくつかの態様において、ポリヌクレオチドのうちの少なくとも1種類は、免疫抑制剤に対する耐性を付与するポリヌクレオチド配列を含む。
【0077】
いくつかの態様において、免疫抑制剤に対する耐性を付与するポリヌクレオチド配列は、ラパマイシンに結合するポリペプチドをコードしており、ここで任意で、ポリペプチドはFRBである。
【0078】
いくつかの態様において、ベクター系のポリヌクレオチドのうちの少なくとも1種類は、細胞質型FRBドメインを含む。
【0079】
いくつかの態様において、FRBドメインまたはその一部分と、FKBPまたはその一部分とは、形質導入された細胞において、ラパマイシンを封鎖する複合体を形成する。
【0080】
いくつかの態様において、FKBPドメインまたはその一部分と、FRBドメインまたはその一部分は、ラパマイシンの存在下でヘテロ二量体化して、細胞の増殖および/または生存を促進する。
【0081】
いくつかの態様において、高分子複合体の発現は、誘導性である遺伝子的系または生化学的系の制御下にある。
【0082】
いくつかの態様において、ベクター系のポリヌクレオチドはそれぞれ、プロモーターに機能的に連結されている。
【0083】
いくつかの態様において、プロモーターは誘導性プロモーターである。
【0084】
いくつかの態様において、本開示のレトロウイルス粒子および/またはレンチウイルス粒子は、リガンドに特異的に結合する受容体をコードする配列を含むポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、リガンドに特異的に結合する受容体をコードする配列は、プロモーターに機能的に連結されている。例示的なプロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、CAGプロモーター、SV40プロモーター、SV40/CD43プロモーター、およびMNDプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
ベクター系のいくつかの態様において、プロモーターはMNDである。
【0086】
いくつかの態様において、MNDプロモーターは、SEQ ID NO: 3に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0087】
いくつかの態様において、ベクター系は、少なくとも1種類のレトロウイルス粒子を含み、
ここで、レトロウイルス粒子は、本明細書に記載される1種類または複数種類の形質導入エンハンサーを含む。
【0088】
いくつかの態様において、ベクター系は、少なくとも1種類のレトロウイルス粒子を含み、
ここで、レトロウイルス粒子は1種類または複数種類の形質導入エンハンサーを含み、形質導入エンハンサーは、T細胞活性化受容体、NK細胞活性化受容体、および共刺激分子からなる群より選択される。
【0089】
いくつかの態様において、1種類または複数種類の形質導入エンハンサーは、抗CD3 scFv、CD86、およびCD137Lのうちの1つまたは複数を含む。
【0090】
いくつかの態様において、少なくとも1種類のポリヌクレオチド配列は、T細胞への形質導入の能力を有する。いくつかの態様において、少なくとも1種類のポリヌクレオチド配列は、NK細胞への形質導入の能力を有する。いくつかの態様において、少なくとも1種類のポリヌクレオチド配列は、NKT細胞への形質導入の能力を有する。
【0091】
いくつかの態様において、少なくとも1種類のポリヌクレオチド配列は、インビボでのT細胞への形質導入の能力を有する。いくつかの態様において、少なくとも1種類のポリヌクレオチド配列は、インビボでのNK細胞への形質導入の能力を有する。いくつかの態様において、少なくとも1種類のポリヌクレオチド配列は、インビボでのNKT細胞への形質導入の能力を有する。
【0092】
いくつかの態様において、少なくとも1種類のポリヌクレオチド配列は、インビトロでのT細胞への形質導入の能力を有する。いくつかの態様において、少なくとも1種類のポリヌクレオチド配列は、インビトロでのNK細胞への形質導入の能力を有する。いくつかの態様において、少なくとも1種類のポリヌクレオチド配列は、インビトロでのNKT細胞への形質導入の能力を有する。
【0093】
いくつかの態様において、第1のベクターは、以下をコードするポリヌクレオチド配列を含む:
(a) プロモーター;
(b) FK506結合タンパク質(FKBP)ドメインまたはその一部分;
(c) IL-2受容体膜貫通ドメイン;
(d) インターロイキン-2受容体γサブユニット(IL2Rγ)ドメイン;および
(e) 第1のキメラ抗原受容体(CAR)。
【0094】
いくつかの態様において、第2のベクターは、以下をコードするポリヌクレオチド配列を含む:
(a) プロモーター;
(b) FKBPラパマイシン結合(FRB)ドメインまたはその一部分;
(c) IL-2受容体膜貫通ドメイン;
(d) インターロイキン-2受容体βサブユニット(IL2Rβ)ドメイン;および
(e) 第2のCAR。
【0095】
いくつかの態様において、IL2RγドメインとIL2Rβドメインはヘテロ二量体化する。いくつかの態様において、IL2RγドメインとIL2Rβドメインは、リガンドの存在下でヘテロ二量体化して、細胞の増殖および/または生存を促進する。いくつかの態様において、IL2RγドメインとIL2Rβドメインは、ラパマイシンの存在下でヘテロ二量体化して、細胞の増殖および/または生存を促進する。
【0096】
いくつかの態様において、IL2Rγドメインポリペプチドは、SEQ ID NO: 4に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0097】
いくつかの態様において、IL2Rγドメインポリペプチドは、SEQ ID NO: 23に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0098】
いくつかの態様において、IL2Rγドメインポリペプチドは、SEQ ID NO: 24に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0099】
いくつかの態様において、IL2Rγドメインポリペプチドは、SEQ ID NO: 25に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0100】
いくつかの態様において、IL2Rβドメインポリペプチドは、SEQ ID NO: 5に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0101】
いくつかの態様において、第1のCARは、以下を含めた細胞表面抗原に対して特異的であり得る:ABT-806、CD3、CD28、CD134、CD137、葉酸受容体、4-1BB、PD1、CD45、CD8a、CD4、CD8、CD4、LAG3、CD3e、CD69、CD45RA、CD62L、CD45RO、CD62F、CD95、5T4、αフェトプロテイン(AFP)、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、BCMA、B-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、CA-125、癌胎児性抗原(CEA)、癌胎児性抗原(CEA)、CD123、CD133、CD138、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD25、CD30、CD33、CD34、CD40、CD44、CD56、CLL-1、c-Met、CMV特異的抗原、CS-1、CSPG4、CTLA-4、DLL3、ジシアロガングリオシドGD2、導管上皮ムチン、EBV特異的抗原、EGFR、EGFRバリアントIII(EGFRvIII)、ELF2M、エンドグリン、エフリンB2、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮腫瘍抗原、ErbB2(HER2/neu)、線維芽細胞関連タンパク質(fap)、FLT3、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、グリオーマ関連抗原、スフィンゴ糖脂質、gp36、HBV特異的抗原、HCV特異的抗原、HER1・HER2の組み合わせ、HER2・HER3の組み合わせ、HERV-K、高分子量黒色腫関連抗原(FDVTW-MAA)、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、HPV特異的抗原、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、IGF1受容体、IGF-II、IL-11Rα、IL-13R-a2、インフルエンザウイルス特異的抗原;CD38、インスリン成長因子1(IGF1)、腸カルボキシルエステラーゼ、κ鎖、LAGA-1a、λ鎖、ラッサウイルス特異的抗原、レクチン反応性AFP、系列特異的抗原もしくは組織特異的抗原、MAGE、MAGE-A1、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、腫瘍特異的ペプチドエピトープを提示している主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、M-CSF、黒色腫関連抗原、メソテリン、MN-CA IX、MUC-1、mut hsp70-2、変異p53、変異ras、好中球エラスターゼ、NKG2D、Nkp30、NY-ESO-1、p53、PAP、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺癌腫瘍抗原1(PCTA-1)、前立腺特異的抗原タンパク質、STEAP1、STEAP2、PSMA、RAGE-1、ROR1、RU1、RU2(AS)、表面接着分子、サバイビン(surviving)およびテロメラーゼ、TAG-72、フィブロネクチンのエクストラドメインA(EDA)およびエクストラドメインB(EDB)、テネイシンCのA1ドメイン(TnC Al)、サイログロブリン、腫瘍間質抗原、血管内皮細胞成長因子受容体2(VEGFR2)、HIV gp120、またはこれらの表面抗原の、誘導体、バリアント、もしくは断片。
【0102】
いくつかの態様において、第2のCARは、以下を含めた細胞表面抗原に対して特異的であり得る:ABT-806、CD3、CD28、CD134、CD137、葉酸受容体、4-1BB、PD1、CD45、CD8a、CD4、CD8、CD4、LAG3、CD3e、CD69、CD45RA、CD62L、CD45RO、CD62F、CD95、5T4、αフェトプロテイン(AFP)、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、BCMA、B-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、CA-125、癌胎児性抗原(CEA)、癌胎児性抗原(CEA)、CD123、CD133、CD138、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD25、CD30、CD33、CD34、CD40、CD44、CD56、CLL-1、c-Met、CMV特異的抗原、CS-1、CSPG4、CTLA-4、DLL3、ジシアロガングリオシドGD2、導管上皮ムチン、EBV特異的抗原、EGFR、EGFRバリアントIII(EGFRvIII)、ELF2M、エンドグリン、エフリンB2、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮腫瘍抗原、ErbB2(HER2/neu)、線維芽細胞関連タンパク質(fap)、FLT3、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、グリオーマ関連抗原、スフィンゴ糖脂質、gp36、HBV特異的抗原、HCV特異的抗原、HER1・HER2の組み合わせ、HER2・HER3の組み合わせ、HERV-K、高分子量黒色腫関連抗原(FDVTW-MAA)、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、HPV特異的抗原、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、IGF1受容体、IGF-II、IL-11Rα、IL-13R-a2、インフルエンザウイルス特異的抗原;CD38、インスリン成長因子1(IGF1)、腸カルボキシルエステラーゼ、κ鎖、LAGA-1a、λ鎖、ラッサウイルス特異的抗原、レクチン反応性AFP、系列特異的抗原もしくは組織特異的抗原、MAGE、MAGE-A1、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、腫瘍特異的ペプチドエピトープを提示している主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、M-CSF、黒色腫関連抗原、メソテリン、MN-CA IX、MUC-1、mut hsp70-2、変異p53、変異ras、好中球エラスターゼ、NKG2D、Nkp30、NY-ESO-1、p53、PAP、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺癌腫瘍抗原1(PCTA-1)、前立腺特異的抗原タンパク質、STEAP1、STEAP2、PSMA、RAGE-1、ROR1、RU1、RU2(AS)、表面接着分子、サバイビン(surviving)およびテロメラーゼ、TAG-72、フィブロネクチンのエクストラドメインA(EDA)およびエクストラドメインB(EDB)、テネイシンCのA1ドメイン(TnC Al)、サイログロブリン、腫瘍間質抗原、血管内皮細胞成長因子受容体2(VEGFR2)、HIV gp120、またはこれらの表面抗原の、誘導体、バリアント、もしくは断片。
【0103】
本開示の1つの局面は、本開示において記載される態様のうちの任意のもののベクター系を対象に投与する段階を含む方法を提供する。
【0104】
レトロウイルス粒子
レトロウイルスには、レンチウイルス、ガンマレトロウイルス、およびアルファレトロウイルスが含まれ、これらのそれぞれは、当技術分野において公知の手法を用いて、ポリヌクレオチドを細胞へと送達するのに使用され得る。レンチウイルスは複雑なレトロウイルスであり、これは、一般的なレトロウイルス遺伝子であるgag、pol、およびenvに加えて、制御機能または構造上の機能を有する他の遺伝子を含む。その高い複雑性により、潜伏感染の間に前記ウイルスがその生活環を調節することが可能となっている。レンチウイルスのいくつかの例には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1およびHIV-2)ならびにサル免疫不全ウイルス(SIV)が含まれる。レトロウイルスベクターは、HIVの病原性遺伝子を複数回弱毒化することによって作製されており、これはたとえば、env遺伝子、vif遺伝子、vpr遺伝子、vpu遺伝子、およびnef遺伝子を欠失させるものであって、それにより、ベクターは生物学的に安全となる。
【0105】
例示的なレンチウイルスベクターには、以下に記載されているものが含まれる:Naldiniら (1996) Science 272:263-7;Zuffereyら (1998) J. Virol. 72:9873-9880;Dullら (1998) J. Virol. 72:8463-8471;米国特許第6,013,516号;および米国特許第5,994,136号、これらの全体は参照によりそれぞれ本明細書に組み入れられる。一般的にはこれらのベクターは、前記ベクターを含む細胞を選択するのに必須である配列、レンチウイルス粒子に外来核酸を組み込むのに必須である配列、および標的細胞内に前記核酸を移送するのに必須である配列を担持するように、構成される。
【0106】
一般的に使用されているレンチウイルスベクター系は、いわゆる第3世代の系である。第3世代のレンチウイルスベクター系は4種類のプラスミドを含む。「トランスファープラスミド」は、レンチウイルスベクター系によって標的細胞に送達されるポリヌクレオチド配列をコードする。トランスファープラスミドは一般的には、長い末端反復(LTR)配列に挟まれた、関心対象の導入遺伝子配列の1つまたは複数を有し、ここで、前記長い末端反復(LTR)配列により、トランスファープラスミド配列の宿主ゲノムへの組み込みが容易になる。安全性の理由から、トランスファープラスミドは一般的には、結果的に得られるベクターが複製不能となるように設計される。たとえば、トランスファープラスミドは、宿主細胞内で感染性粒子を産生するのに必要な遺伝子エレメントを欠いている。加えて、トランスファープラスミドは3' LTRを欠失させるように設計され得、これはウイルスを「自己不活性化型」(SIN)にする。Dullら (1998) J. Virol. 72:8463-71;Miyoshiら(1998) J. Virol. 72:8150-57を参照されたい。ウイルス粒子はまた3'非翻訳領域(UTR)および5' UTRも含み得る。UTRはレトロウイルスの制御エレメントを含み、前記制御エレメントは、レトロウイルス粒子が細胞に接触した後で、パッケージング、逆転写、および細胞内へのプロウイルスゲノムの組み込みを支援する。
【0107】
第3世代の系はまた、一般的には2種類の「パッケージングプラスミド」と1種類の「エンベローププラスミド」も含む。「エンベローププラスミド」は、一般的にはプロモーターに機能的に連結されているEnv遺伝子をコードする。例示的な第3世代の系において、Env遺伝子はVSV-Gであり、かつプロモーターはCMVプロモーターである。第3世代の系は、さらなる安全上の特徴 - いわゆる第2世代の系では単一のパッケージングプラスミドである点に対する改善点として、2種類のパッケージングプラスミドを使用しており、一方はgagおよびpolをコードし、かつもう一方はrevをコードする。より安全ではあるものの、第3世代の系は、追加のプラスミドを加えたことに起因して、より扱いづらいものとなる可能性があり、かつウイルス力価の低下が生じる可能性がある。例示的なパッキングプラスミドには、pMD2.G、pRSV-rev、pMDLG-pRRE、およびpRRL-GOIが含まれるが、これに限定されない。
【0108】
多くのレトロウイルスベクター系は、「パッケージング細胞株」を使用する必要がある。一般的にはパッケージング細胞株とは、トランスファープラスミド、パッケージングプラスミド、およびエンベローププラスミドが前記細胞株の細胞内に導入された場合に、前記細胞が感染性のレトロウイルス粒子を産生可能となる、という細胞株である。プラスミドを細胞内に導入するさまざまな手法が使用されてよく、これにはトランスフェクションまたはエレクトロポレーションが含まれる。いくつかの例において、パッケージング細胞株は、レトロウイルス粒子内へのレトロウイルスベクター系の高効率パッケージングに適応している。
【0109】
本明細書において使用される場合、「レトロウイルスベクター」または「レンチウイルスベクター」との用語は、核酸であって、ゲノムのパッケージングに必要なレトロウイルスまたはレンチウイルスのシス核酸配列と、標的細胞内に送達されようとする1種類または複数種類のポリヌクレオチド配列とをコードする、核酸を意味することが意図される。レトロウイルス粒子およびレンチウイルス粒子は一般的には、RNAゲノム(トランスファープラスミドに由来する)と、Envタンパク質が埋め込まれている脂質二重層エンベロープと、他のアクセサリータンパク質であって、インテグラーゼ、プロテアーゼ、およびマトリックスタンパク質を含めた、他のアクセサリータンパク質とを含む。本明細書において使用される場合、「レトロウイルス粒子」および「レンチウイルス粒子」との用語は、ウイルス粒子であって、エンベロープを含み、レンチウイルスの特徴の1つまたは複数を有し、かつ標的宿主細胞に侵入可能である、ウイルス粒子を指す。そのような特徴には、たとえば以下が含まれる:非分裂宿主細胞に感染すること、非分裂宿主細胞への形質導入を行うこと、宿主免疫細胞に感染することもしくは前記細胞への形質導入を行うこと、gag構造ポリペプチドの1種類もしくは複数種類、たとえばp7、p24、およびp17などを含むレトロウイルスビリオンもしくはレンチウイルスビリオンを含むこと、envにコードされる糖タンパク質の1種類もしくは複数種類、たとえばp41、p120、およびp160などを含むレトロウイルスエンベロープもしくはレンチウイルスエンベロープを含むこと、レトロウイルスもしくはレンチウイルスの、1種類もしくは複数種類のシス作用性配列であって、複製、プロウイルスの組み込み、もしくは転写において機能する、シス作用性配列、を含むゲノムを含むこと、レトロウイルスもしくはレンチウイルスのプロテアーゼ、逆転写酵素、もしくはインテグラーゼをコードするゲノムを含むこと、または制御活性、たとえばTatもしくはRevなどをコードするゲノムを含むこと。トランスファープラスミドは、米国特許第8,093,042号に記載されるように、cPPT配列を含んでよい。
【0110】
ベクター系の効率は、ベクターを遺伝子操作する上で重要な関心事である。レトロウイルスベクター系またはレンチウイルスベクター系の効率は、当技術分野において公知のさまざまな様式で評価されてよく、これには、たとえば定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)などによる、ベクターのコピー数(VCN)もしくはベクターゲノム(vg)の測定、または1ミリリットルあたりの感染単位(IU/mL)としてのウイルスの力価の測定が含まれる。たとえば、Humbertら "Development of Third-generation Cocal Envelope Producer Cell Lines for Robust Retroviral Gene Transfer into Hematopoietic Stem Cells and T-cells" Molecular Therapy 24:1237-1246 (2016)に記載されるように、力価は、培養された腫瘍細胞株であるHT1080において実施される機能アッセイを用いて評価されてよい。連続的に分裂している培養細胞株において力価が評価される場合、刺激は不要であり、かつしたがって、測定される力価は、レトロウイルス粒子の表面の遺伝子操作によって影響を受けることはない。レトロウイルスベクター系の効率を評価するための他の手法は、Gaerertsら "Comparison of retroviral vector titration methods" BMC Biotechnol. 6:34 (2006)に提供されている。
【0111】
いくつかの態様において、本開示のレトロウイルス粒子および/またはレンチウイルス粒子は、リガンドに特異的に結合する受容体をコードする少なくとも1種類の配列を含むベクター系を含む。いくつかの態様において、リガンドに特異的に結合する受容体をコードする少なくとも1種類の配列は、プロモーターに機能的に連結されている。例示的なプロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、CAGプロモーター、SV40プロモーター、SV40/CD43プロモーター、およびMNDプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
いくつかの態様において、レトロウイルス粒子は形質導入エンハンサーを含む。いくつかの態様において、レトロウイルス粒子は、T細胞活性化因子タンパク質をコードする配列を含むポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、レトロウイルス粒子は少なくとも1種類のポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはそれぞれ、キメラ抗原受容体をコードする配列を含む。いくつかの態様において、レトロウイルス粒子はタグタンパク質を含む。
【0113】
いくつかの態様において、レトロウイルス粒子は、標的宿主細胞上のリガンドに結合する細胞表面受容体を含み、これは宿主細胞への形質導入を可能にする。ウイルスベクターは、シュードタイプウイルスベクターをもたらす、異種ウイルスエンベロープ糖タンパク質を含み得る。たとえば、ウイルスエンベロープ糖タンパク質は、RD114もしくはそのバリアントの1つ、VSV-G、テナガザル白血病ウイルス(GALV)に由来し得、またはアンホトロピックエンベロープ糖タンパク質か、麻疹エンベロープ糖タンパク質か、もしくはヒヒレトロウイルスエンベロープ糖タンパク質である。いくつかの態様において、細胞表面受容体は、コカル株(Cocal strain)由来のVSV Gタンパク質か、またはその機能的なバリアントである。
【0114】
シュードタイプレンチウイルスベクターにはさまざまな融合糖タンパク質が使用され得る。レンチウイルスベクターをシュードタイプ化するために最も一般的に使用されている例は、水疱性口内炎ウイルス(VSVG)由来のエンベロープ糖タンパク質であるが、他の多くのウイルスタンパク質もまた使用されている。Joglekarら Human Gene Therapy Methods 28:291-301 (2017)を参照されたい。本開示は、さまざまな融合糖タンパク質の置換を意図する。特に、いくつかの融合糖タンパク質は、より高いベクター効率をもたらす。
【0115】
いくつかの態様において、融合糖タンパク質またはその機能的なバリアントのシュードタイプ化により、ある特定の細胞型を標的とする形質導入が容易になり、前記細胞型にはT細胞またはNK細胞が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、融合糖タンパク質またはその機能的なバリアントは、以下のものの、全長ポリペプチドであるか、機能的な断片であるか、ホモログであるか、または機能的なバリアントである:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のgp160、マウス白血病ウイルス(MLV)のgp70、テナガザル白血病ウイルス(GALV)のgp70、ネコ白血病ウイルス(RD114)のgp70、アンホトロピックレトロウイルス(Ampho)のgp70、10A1 MLV(10A1)のgp70、エコトロピックレトロウイルス(Eco)のgp70、ヒヒ白血病ウイルス(Baboon ape leukemia virus)(BaEV)のgp70、麻疹ウイルス(MV)のHおよびF、ニパウイルス(NiV)のHおよびF、狂犬病ウイルス(RabV)のG、モコラウイルス(MOKV)のG、エボラザイールウイルス(EboZ)のG、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)のGP1およびGP2、バキュロウイルスのGP64、チクングニアウイルス(CHIKV)のE1およびE2、ロスリバーウイルス(RRV)のE1およびE2、セムリキフォレストウイルス(SFV)のE1およびE2、シンドビスウイルス(SV)のE1およびE2、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)のE1およびE2、西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)のE1およびE2、インフルエンザA、B、C、もしくはDのHA、家禽ペストウイルス(FPV)のHA、水疱性口内炎ウイルスのVSV-G、またはチャンディプラウイルス(Chandipura virus)およびピリーウイルス(Piry virus)のCNV-GおよびPRV-G。
【0116】
いくつかの態様において、融合糖タンパク質またはその機能的なバリアントは、以下のもののGタンパク質の、全長ポリペプチドであるか、機能的な断片であるか、ホモログであるか、または機能的なバリアントである:水疱性口内炎アラゴアスウイルス(Vesicular Stomatitis Alagoas Virus)(VSAV)、カラジャスベシクロウイルス(Carajas Vesiculovirus)(CJSV)、チャンディプラベシクロウイルス(Chandipura Vesiculovirus)(CHPV)、コカルベシクロウイルス(Cocal Vesiculovirus)(COCV)、水疱性口内炎インディアナウイルス(Vesicular Stomatitis Indiana Virus)(VSIV)、イスファハンベシクロウイルス(Isfahan Vesiculovirus)(ISFV)、マラバベシクロウイルス(Maraba Vesiculovirus)(MARAV)、水胞性口内炎ニュージャージーウイルス(Vesicular Stomatitis New Jersey virus)(VSNJV)、バスコンゴウイルス(Bas-Congo Virus)(BASV)。いくつかの態様において、融合糖タンパク質またはその機能的なバリアントは、コカルウイルス(Cocal virus)のGタンパク質である。
【0117】
いくつかの態様において、融合糖タンパク質またはその機能的なバリアントは、以下のもののGタンパク質の、全長ポリペプチドであるか、機能的な断片であるか、ホモログであるか、または機能的なバリアントである:水疱性口内炎アラゴアスウイルス(VSAV)、カラジャスベシクロウイルス(CJSV)、チャンディプラベシクロウイルス(CHPV)、コカルベシクロウイルス(COCV)、水疱性口内炎インディアナウイルス(VSIV)、イスファハンベシクロウイルス(ISFV)、マラバベシクロウイルス(MARAV)、水胞性口内炎ニュージャージーウイルス(VSNJV)、バスコンゴウイルス(BASV)。いくつかの態様において、融合糖タンパク質またはその機能的なバリアントは、コカルウイルスのGタンパク質である。
【0118】
本開示は、さまざまなレトロウイルスベクターをさらに提供し、前記レトロウイルスベクターにはガンマレトロウイルスベクター、アルファレトロウイルスベクター、およびレンチウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されない。
【0119】
形質導入エンハンサー
いくつかの態様において、本開示によるウイルス粒子は形質導入エンハンサーを含む。
【0120】
「形質導入エンハンサー」とは、本明細書において使用される場合、T細胞を活性化させる膜貫通タンパク質を指す。形質導入エンハンサーは、本開示によるウイルス粒子のウイルスエンベロープへと組み込まれ得る。形質導入エンハンサーは、マイトジェン性のドメインおよび/またはサイトカインベースのドメインを含み得る。形質導入エンハンサーは、T細胞活性化受容体、NK細胞活性化受容体、共刺激分子、またはそれらの一部分を含み得る。
【0121】
マイトジェン性の形質導入エンハンサー
本発明のウイルスベクターは、マイトジェン性の形質導入エンハンサーをウイルスエンベロープ内に含み得る。いくつかの態様において、マイトジェン性の形質導入エンハンサーは、レトロウイルスベクターの産生の際に、宿主細胞に由来して生じる。いくつかの態様において、マイトジェン性の形質導入エンハンサーはパッケージング細胞によって産生され、そして細胞表面に発現する。新生レトロウイルスベクターが宿主の細胞膜から出芽する際に、パッケージング細胞に由来する脂質二重層の一部として、マイトジェン性の形質導入エンハンサーはウイルスエンベロープに組み込まれ得る。
【0122】
いくつかの態様において、形質導入エンハンサーは宿主細胞に由来する。「宿主細胞に由来する」との用語は、上述のようにマイトジェン性の形質導入エンハンサーが宿主細胞に由来しており、かつ前記エンハンサーが、ウイルス遺伝子の1つに由来する融合物またはキメラとして産生されてはいないこと、たとえば、主たる構造タンパク質をコードするgag、またはエンベロープタンパク質をコードするenvなどに由来する融合物またはキメラとして産生されてはいないことを示す。
【0123】
エンベロープタンパク質は2つのサブユニットから形成されており、これらは、エンベロープタンパク質を脂質膜に固定する膜貫通(TM)サブユニットと、細胞受容体に結合する表面(SU)サブユニットである。いくつかの態様において、パッケージング細胞に由来する、本発明のマイトジェン性の形質導入エンハンサーは、エンベロープの表面サブユニット(SU)を含まない。
【0124】
マイトジェン性の形質導入エンハンサーはM-S-TMとの構造を有し得、ここでMはマイトジェン性のドメインであり;Sは任意のスペーサードメインであり;かつTMは膜貫通ドメインである。
【0125】
形質導入エンハンサーのマイトジェン性のドメイン
マイトジェン性のドメインは、T細胞の活性化を引き起こすマイトジェン性の形質導入エンハンサーの、一部分である。これは、直接的または間接的に、T細胞と結合し得るか、あるいはT細胞と相互作用し得るものであり、T細胞の活性化をもたらす。特に、マイトジェン性のドメインはT細胞の表面抗原に、たとえば、CD3、CD28、CD134、およびCD137などに、結合し得る。
【0126】
CD3はT細胞共受容体である。CD3は、4つの異なる鎖から構成されるタンパク質複合体である。哺乳動物においては、前記複合体は1つのCD3y鎖、1つのCD35鎖、および2つのCD3e鎖を含む。これらの鎖はT細胞受容体(TCR)およびζ鎖と会合して、Tリンパ球において活性化シグナルを生じさせる。TCR、ζ鎖、およびCD3分子はともに、TCR複合体を構成する。
【0127】
いくつかの態様において、マイトジェン性のドメインはCD3ε鎖に結合し得る。
【0128】
CD28は、T細胞上に発現しているタンパク質の1つであり、これは、T細胞の活性化および生存に必要な共刺激シグナルを提供する。T細胞受容体(TCR)に加えて、CD28を介してT細胞を刺激することで、さまざまなインターロイキン(特にIL-6)を産生するための強力なシグナルを提供することが可能である。CD134、別名OX40は、受容体であるTNFRスーパーファミリーのメンバーであり、これはCD28とは違って、休止ナイーブT細胞において構成的に発現しているわけではない。OX40は二次共刺激分子であり、活性化の24~72時間後に発現する;そのリガンドであるOX40Lもまた、休止抗原提示細胞においては発現していないが、その活性化後は発現する。OX40の発現は、T細胞の完全な活性化に依存性である;CD28がないと、OX40の発現は遅れ、かつ1/4という低レベルとなる。
【0129】
CD137、別名4-1BBは、腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーのメンバーである。CD137は活性化T細胞によって発現され得るが、その発現量はCD4 T細胞よりもCD8 T細胞において多い。加えて、CD137の発現は、樹状細胞、濾胞樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、顆粒球、および炎症部位の血管壁の細胞において見いだされる。CD137の最も特徴付けされている活性は、活性化T細胞に対するその共刺激活性である。CD137の架橋は、T細胞の、増殖、IL-2分泌、生存、および細胞溶解活性を増強する。
【0130】
マイトジェン性のドメインは、T細胞表面抗原に特異的に結合する抗体または他の分子の、全長または一部分を含み得る。前記抗体は、TCRまたはCD28を活性化し得る。前記抗体は、TCR、CD3、またはCD28に結合し得る。そのような抗体の例には以下が含まれる:OKT3、15E8、およびTGN1412。他の好適な抗体には以下が含まれる:
抗CD28:CD28.2、10F3、
抗CD3/TCR:UCHT1、YTH12.5、TR66。
【0131】
マイトジェン性のドメインは、以下に由来する結合ドメインを含み得る:OKT3、15E8、TGN1412、CD28.2、10F3、UCHT1、YTH12.5、またはTR66。
【0132】
マイトジェン性のドメインは、共刺激分子の、たとえばOX40Lおよび41 BBLなどの、全長または一部分を含み得る。たとえば、マイトジェン性のドメインは、OX40Lまたは41 BBLに由来する結合ドメインを含み得る。
【0133】
形質導入エンハンサーのスペーサードメイン
マイトジェン性の形質導入エンハンサーおよび/またはサイトカインベースの形質導入エンハンサーは、抗原結合ドメインを膜貫通ドメインと連結するためのスペーサー配列を含み得る。柔軟性のあるスペーサーにより、抗原結合ドメインをさまざまな方向に向けることが可能になり、結合が容易になる。
【0134】
スペーサー配列は、たとえば、IgG1 Fc領域、IgG1ヒンジ、またはヒトCD8ストークもしくはマウスCD8ストークを含み得る。あるいはスペーサーは、IgG1 Fc領域、IgG1ヒンジ、もしくはCD8ストークと同様の長さを有する、および/またはそれらと同様のドメイン間隔調整特性を有する、別のリンカー配列を含み得る。ヒトIgG1スペーサーは、Fc結合モチーフを除去するように改変され得る。
【0135】
形質導入エンハンサーの膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインは、膜を横切っている、マイトジェン性の形質導入エンハンサーおよび/またはサイトカインベースの形質導入エンハンサーの配列である。膜貫通ドメインは疎水性のαヘリックスを含み得る。膜貫通ドメインはCD28に由来し得る。いくつかの態様において、膜貫通ドメインはヒトタンパク質に由来する。
【0136】
膜貫通ドメインの別の選択肢は、膜を標的とするドメインであり、これはたとえばGPIアンカーなどである。GPIアンカーの付与は、小胞体において生じる翻訳後修飾である。あらかじめ組み立てられていたGPIアンカー前駆体は、C末端のGPIシグナル配列を担持するタンパク質へと移送される。プロセシングの間に、GPIアンカーはGPIシグナル配列と置き換わり、そしてアミド結合を介して標的タンパク質と結合する。GPIアンカーは、成熟タンパク質を膜へと指向させる。いくつかの態様において、本発明でのタグタンパク質は、GPIシグナル配列を含む。
【0137】
サイトカインベースの形質導入エンハンサー
本発明のウイルスベクターは、サイトカインベースの形質導入エンハンサーをウイルスエンベロープ内に含み得る。いくつかの態様において、サイトカインベースの形質導入エンハンサーは、ウイルスベクターの産生の際に、宿主細胞に由来して生じる。いくつかの態様において、サイトカインベースの形質導入エンハンサーは宿主細胞によって産生され、そして細胞表面に発現する。新生ウイルスベクターが宿主の細胞膜から出芽する際に、パッケージング細胞に由来する脂質二重層の一部として、サイトカインベースの形質導入エンハンサーはウイルスエンベロープに組み込まれ得る。
【0138】
サイトカインベースの形質導入エンハンサーは、サイトカインドメインおよび膜貫通ドメインを含み得る。これはC-S-TMとの構造を有し得、ここでCはサイトカインドメインであり、Sは任意のスペーサードメインであり、かつTMは膜貫通ドメインである。スペーサードメインおよび膜貫通ドメインは、上で定義されたとおりである。
【0139】
形質導入エンハンサーのサイトカインドメイン
サイトカインドメインは、T細胞活性化サイトカインの、たとえばIL2、IL7、およびIL15などの、一部分または全長を含み得る。サイトカインドメインが、その特定の受容体に結合しかつT細胞を活性化するという能力を保持するのであれば、前記サイトカインドメインは、サイトカインの一部分を含んでいてよい。
【0140】
IL2は、T細胞から分泌されて、T細胞およびある特定のB細胞の増殖および分化を制御する因子の1つである。IL2は、応答性T細胞の増殖を誘導するリンフォカインである。IL2は、グリコシル化された単一のポリペプチドとして分泌され、かつその活性には、シグナル配列の切断が必要である。IL2の構造には4つのヘリックス(A~Dと呼ばれる)のバンドルが含まれており、前記バンドルは2つのより短いヘリックスと、いくつかのほとんど定義されていないループとに挟まれていることが、溶液NMRにより示唆されている。受容体の結合には、ヘリックスAにおける残基、およびヘリックスAとBとの間のループ領域における残基が重要である。IL2の配列はSEQ ID NO: 18として示される。
【0141】
IL7は、B細胞系列およびT細胞系列両方の初期のリンパ球系細胞のための成長因子として働くサイトカインである。IL7の配列はSEQ ID NO: 19として示される。
【0142】
IL15は、IL2に対して構造上の類似性を有するサイトカインである。IL2と同様に、IL15は、IL2/IL15受容体β鎖および共通γ鎖から構成される複合体に結合し、かつ前記複合体を介してシグナル伝達を行う。IL15は、ウイルス感染の後で、単核貪食細胞およびいくつかの他の細胞から分泌される。このサイトカインは、ナチュラルキラー細胞の細胞増殖を誘導する;ナチュラルキラー細胞は、その主たる役割が、ウイルスに感染した細胞を死滅させることである、自然免疫系の細胞である。IL15の配列はSEQ ID NO: 20として示される。
【0143】
サイトカインベースの形質導入エンハンサーは、以下の配列のうちの1つか、またはそれらのバリアントを含み得る。
膜-IL7:
膜-IL15:
【0144】
サイトカインベースの形質導入エンハンサーは、以下の場合に、SEQ ID NO: 21または22として示される配列のバリアントであって、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する、バリアントを含み得る:レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターのエンベロープタンパク質に存在する際、前記バリアント配列が、必要とされる特性を有する、すなわちT細胞を活性化する能力を有する、サイトカインベースの形質導入エンハンサーである場合。
【0145】
形質導入エンハンサーの例示的な利点
いくつかの態様において、本開示は、形質導入エンハンサーが組み込まれているウイルスベクターを提供する。前記ベクターは、T細胞を刺激し、かつ遺伝子の挿入も引き起こすという、両方の能力を有し得る。これは、以下を含めた1つまたは複数の利点をもたらし得る:(1) 1種類の構成要素を加えるだけでよいため、T細胞を遺伝子操作するプロセスを単純化する;(2) ウイルスは易動性があり、かつ除去する必要がないため、ビーズの除去およびそれに付随する収量の減少が不要になる;(3) 1種類の構成要素を製造するだけでよいため、T細胞を遺伝子操作するコストを低減させる;(4) T細胞の遺伝子操作プロセスはそれぞれ、ある遺伝子のトランスファーベクターを作製することを伴い、当該産物は、それに「合った」形質導入エンハンサーを有するように作製することもまた可能であるため、より大きな設計柔軟性を可能にする;(5) 作製プロセスを短縮する:可溶性の抗原/ビーズベースのアプローチにおいては典型的に、1日、2日、またはときおり3日あけてマイトジェンおよびベクターを順に加えるが、この点は、本発明のレトロウイルスベクターでは形質導入増強およびウイルス侵入は同期しておりかつ同時であるために、不要となり得る;(6) 多数の異なる融合タンパク質を、発現および機能性に関して試験する必要がないため、遺伝子操作が単純化される;(7) 同時に複数のシグナルを加える機会を実現可能にする;ならびに(8) それぞれのシグナル/タンパク質の、発現および/または発現レベルを別々に制御することを可能にする。
【0146】
形質導入エンハンサーを含むウイルスベクターの例示的な態様
いくつかの態様において、ウイルスエンベロープは1種類または複数種類の形質導入エンハンサーを含む。いくつかの態様において、形質導入エンハンサーは、T細胞活性化受容体、NK細胞活性化受容体、および/または共刺激分子を含む。いくつかの態様において、1種類または複数種類の形質導入エンハンサーは、抗CD3 scFv、CD86、およびCD137Lのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの態様において、形質導入エンハンサーは、抗CD3 scFv、CD86、およびCD137Lのいずれも含む。
【0147】
いくつかの態様において、ウイルスが活性化およびT細胞への形質導入の両方を行うように、形質導入エンハンサーは、マイトジェン性の刺激因子、および/またはサイトカイン性の刺激因子を含み、これらはレトロウイルスカプシドまたはレンチウイルスカプシドへと組み込まれる。これにより、ベクター、マイトジェン、およびサイトカインを別々に追加する必要がなくなる。いくつかの態様において、形質導入エンハンサーは、マイトジェン性の膜貫通タンパク質および/またはサイトカインベースの膜貫通タンパク質を含み、これらエンハンサーはプロデューサー細胞またはパッケージング細胞に含まれており、レトロウイルスがプロデューサー細胞/パッケージング細胞の細胞膜から出芽する際に、レトロウイルスに組み込まれることになる。いくつかの態様において、形質導入エンハンサーは、ウイルスエンベロープ糖タンパク質の一部にはならずに、プロデューサー細胞上で別々の細胞表面分子として発現する。
【0148】
いくつかの態様において、本開示は、以下を含むウイルスエンベロープを有する、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを提供する:
(i) マイトジェン性のドメインおよび膜貫通ドメインを含む、マイトジェン性の形質導入エンハンサー;ならびに/または
(ii) サイトカインドメインおよび膜貫通ドメインを含む、サイトカインベースの形質導入エンハンサー。
【0149】
いくつかの態様において、形質導入エンハンサーは、ウイルスエンベロープ糖タンパク質の一部となってはいない。いくつかの態様において、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターは、env遺伝子によってコードされるウイルスエンベロープ糖タンパク質を別に含む。マイトジェン性の刺激因子および/またはサイトカイン性の刺激因子は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質とは別の分子として提供されるため、ウイルスエンベロープ糖タンパク質の完全性は維持され、かつウイルスの力価に対する負の影響はない。
【0150】
いくつかの態様において、以下を含むウイルスエンベロープを有する、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターが提供される:
(i) ウイルスエンベロープ糖タンパク質:ならびに
(ii) M-S-TMとの構造を有するマイトジェン性の形質導入エンハンサーであって、ここでMがマイトジェン性のドメインであり、Sが任意のスペーサーであり、かつTMが膜貫通ドメインである、マイトジェン性の形質導入エンハンサー;ならびに/または
(iii) サイトカインドメインおよび膜貫通ドメインを含む、サイトカインベースの形質導入エンハンサー。
【0151】
いくつかの態様において、マイトジェン性の形質導入エンハンサーおよび/またはサイトカインベースの形質導入エンハンサーは、ウイルスエンベロープ糖タンパク質の一部となってはいない。いくつかの態様において、前記エンハンサーは、ウイルスエンベロープにおいて別々のタンパク質として存在し、かつ別々の遺伝子によってコードされる。いくつかの態様において、マイトジェン性の形質導入エンハンサーは以下の構造:
M-S-TM
を有し、ここでMはマイトジェン性のドメインであり;Sは任意のスペーサーであり;かつTMは膜貫通ドメインである。
【0152】
いくつかの態様において、マイトジェン性の形質導入エンハンサーは、活性化T細胞表面抗原に結合する。いくつかの態様において、抗原は、CD3、CD28、CD134、またはCD137である。マイトジェン性の形質導入エンハンサーは、そのような活性化T細胞表面抗原についてのアゴニストを含み得る。
【0153】
マイトジェン性の形質導入エンハンサーは、抗体、たとえばOKT3、15E8、TGN1412などに由来する、結合ドメイン;または共刺激分子、たとえばOX40Lもしくは41 BBLなどに由来する、結合ドメインを含み得る。ウイルスベクターは、マイトジェン性の形質導入エンハンサーを2種類以上ウイルスエンベロープ内に含み得る。たとえば、ウイルスベクターは、CD3に結合する、第1のマイトジェン性の形質導入エンハンサーと、CD28に結合する、第2のマイトジェン性の形質導入エンハンサーとを含み得る。サイトカインベースの形質導入エンハンサーは、たとえば、IL2、IL7、およびIL15から選択されるサイトカインを含み得る。
【0154】
いくつかの態様において、以下を含むウイルスエンベロープを有する、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターが提供される:
(a) CD3に結合する、第1のマイトジェン性の形質導入エンハンサー;および
(b) CD28に結合する、第2のマイトジェン性の形質導入エンハンサー。
【0155】
いくつかの態様において、以下を含むウイルスエンベロープを有する、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターが提供される:
(a) CD3に結合する、第1のマイトジェン性の形質導入エンハンサー;
(b) CD28に結合する、第2のマイトジェン性の形質導入エンハンサー;および
(c) IL2を含む、サイトカインベースの形質導入エンハンサー。
【0156】
いくつかの態様において、以下を含むウイルスエンベロープを有する、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターが提供される:
(a) CD3に結合する、第1のマイトジェン性の形質導入エンハンサー;
(b) CD28に結合する、第2のマイトジェン性の形質導入エンハンサー;
(c) IL7を含む、サイトカインベースの形質導入エンハンサー;および
(d) IL15を含む、サイトカインベースの形質導入エンハンサー。
【0157】
T細胞活性化因子タンパク質
本開示はまた、T細胞活性化因子タンパク質をコードするかまたはT細胞活性化因子タンパク質複合体をコードする配列を含むポリヌクレオチドを含むウイルスベクターも提供する。本明細書において言及される場合、「T細胞活性化因子タンパク質」および「T細胞活性化因子タンパク質複合体」との用語は互換性をもって使用され得、かつ、1種類のタンパク質を、または別々のタンパク質の複合体を指し得る。いくつかの態様において、宿主T細胞がT細胞活性化因子タンパク質を発現するように、ウイルスベクターによって、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドでの、前記宿主T細胞への形質導入を行う。T細胞活性化因子タンパク質はその後、形質導入されたT細胞を活性化するように作用し得る。いくつかの態様において、T細胞活性化因子タンパク質は、薬剤誘導性のT細胞活性化因子タンパク質である。いくつかの態様において、T細胞活性化因子タンパク質は、化学的に誘導されるシグナル伝達複合体を形成する。いくつかの態様において、T細胞活性化因子タンパク質は、遺伝子操作された複合体を形成し、前記複合体は、リガンドに誘導される二量体化の直接的なアウトカムとして、細胞の内側へ向けてシグナルを開始させる。T細胞活性化因子タンパク質は、ホモ二量体(同一である2つの構成要素の二量体化)に含まれてよいか、またはヘテロ二量体(異なる2つの構成要素の二量体化)に含まれてもよい。T細胞活性化因子タンパク質複合体は、本明細書に記載される合成複合体であってよい。当業者であれば、T細胞活性化因子タンパク質複合体の構成要素部分が、前記複合体への組み込みに有用である天然または合成の構成要素から構成され得ることを、認識するであろう。したがって、本明細書に提供される例は、限定することを意図したものではない。本明細書において実践され得るさらなるT細胞活性化因子タンパク質は、国際公開公報第2016/139463号および国際公開公報第2018/111834号に見いだされるものであってよく、前記公報の開示はそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0158】
いくつかの態様において、T細胞活性化因子タンパク質の配列は、第1の配列および第2の配列を有し得る。第1の配列は、T細胞活性化因子タンパク質複合体の第1の構成要素をコードし得、前記第1の構成要素は、第1の細胞外結合ドメインまたはその一部分、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、およびシグナル伝達ドメインまたはその一部分を含み得る。第2の配列は、T細胞活性化因子タンパク質複合体の第2の構成要素をコードし、前記第2の構成要素は、第2の細胞外結合ドメインまたはその一部分、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、およびシグナル伝達ドメインまたはその一部分を含み得る。いくつかの態様において、第1の構成要素および第2の構成要素は、発現した際にそれらがリガンドの存在下で二量体化するように配置され得る。
【0159】
本明細書において使用される場合、「ラパマイシン活性化サイトカイン受容体」または「RACR」との用語は、ラパマイシンの存在下で、細胞の増殖および/または活性を促進する細胞内シグナルを誘導性に生じさせるマルチパータイト型受容体を、互換性をもって指す。RACRは、ラパマイシンの存在下でIL-2R細胞内ドメインまたはそのバリアントを介して、T細胞においてIL2様のシグナルを伝達し得る。
【0160】
いくつかの態様において、本開示は、ヘテロ二量体である二要素型のT細胞活性化因子タンパク質複合体のための、1種類または複数種類のタンパク質配列を提供する。いくつかの態様において、第1の構成要素はIL2Rγ複合体である。いくつかの態様において、IL2Rγ複合体はSEQ ID NO: 4に記載のアミノ酸配列を含む。
【0161】
いくつかの態様において、IL2Rγ複合体はSEQ ID NO: 23に記載のアミノ酸配列を含む。
【0162】
いくつかの態様において、IL2Rγ複合体はSEQ ID NO: 24に記載のアミノ酸配列を含む。
【0163】
いくつかの態様において、IL2Rγ複合体はSEQ ID NO: 25に記載のアミノ酸配列を含む。
【0164】
いくつかの態様において、T細胞活性化因子タンパク質複合体の第1の構成要素のためのタンパク質配列は、細胞外結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、またはシグナル伝達ドメインをコードするタンパク質配列を含む。ある態様はまた、細胞外結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、またはシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列も含む。
【0165】
いくつかの態様において、T細胞活性化因子タンパク質複合体の第2の構成要素はIL2Rβ複合体である。いくつかの態様において、IL2Rβ複合体はSEQ ID NO: 5に記載のアミノ酸配列を含む。
【0166】
いくつかの態様において、IL2Rβ複合体はSEQ ID NO: 26に記載のアミノ酸配列を含む。
【0167】
いくつかの態様において、IL2Rβ複合体はSEQ ID NO: 27に記載のアミノ酸配列を含む。
【0168】
いくつかの態様において、IL2Rβ複合体はSEQ ID NO: 28に記載のアミノ酸配列を含む。
【0169】
いくつかの態様において、T細胞活性化因子タンパク質複合体の第2の構成要素はIL7Rα複合体である。いくつかの態様において、IL7Rα複合体はSEQ ID NO: 29に記載のアミノ酸配列を含む。
【0170】
いくつかの態様において、T細胞活性化因子タンパク質複合体の第2の構成要素のためのタンパク質配列は、細胞外結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、またはシグナル伝達ドメインをコードするタンパク質配列を含む。ある態様はまた、T細胞活性化因子タンパク質複合体の第2の構成要素の、細胞外結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、またはシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列も含む。
【0171】
いくつかの態様において、タンパク質配列はリンカーを含み得る。いくつかの態様において、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸、たとえばグリシンなどを含むか、またはこれらの数の任意の2つによって定義される範囲のうちのいくつかのアミノ酸、たとえばグリシンなどを含む。いくつかの態様において、グリシンスペーサーは少なくとも3個のグリシンを含む。いくつかの態様において、グリシンスペーサーは、SEQ ID NO: 30:GGGS(SEQ ID NO: 30)、SEQ ID NO: 31:GGGSGGG(SEQ ID NO: 31)、またはSEQ ID NO: 32:GGG(SEQ ID NO: 32)に記載の配列を含む。ある態様はまた、SEQ ID NO: 30~SEQ ID NO: 32をコードする核酸配列も含む。いくつかの態様において、膜貫通ドメインはシグナル伝達ドメインのN末端側に位置し、ヒンジドメインは膜貫通ドメインのN末端側に位置し、リンカーはヒンジドメインのN末端側に位置し、かつ細胞外結合ドメインはリンカーのN末端側に位置する。
【0172】
いくつかの態様において、ホモ二量体である二要素型のT細胞活性化因子タンパク質複合体のための、1種類または複数種類のタンパク質配列が提供される。いくつかの態様において、T細胞活性化因子タンパク質複合体の第1の構成要素はIL2Rγ複合体である。いくつかの態様において、IL2Rγ複合体はSEQ ID NO: 4に記載のアミノ酸配列を含む。
【0173】
いくつかの態様において、T細胞活性化因子タンパク質複合体の第1の構成要素のためのタンパク質配列は、細胞外結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、またはシグナル伝達ドメインをコードするタンパク質配列を含む。ある態様はまた、細胞外結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、またはシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列も含む。いくつかの態様において、T細胞活性化因子タンパク質複合体の第1の構成要素であって、第1の細胞外結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、および/またはシグナル伝達ドメインを含む、第1の構成要素、のタンパク質配列は、SEQ ID NO: 4に記載の配列に対して100%、99%、98%、95%、90%、85%、もしくは80%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含むか、またはこれらのパーセンテージの任意の2つによって定義される範囲のうちの配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0174】
いくつかの態様において、T細胞活性化因子タンパク質複合体の第2の構成要素はIL2Rβ複合体またはIL2Rα複合体である。いくつかの態様において、IL2Rβ複合体はSEQ ID NO: 5に記載のアミノ酸配列を含む。
【0175】
いくつかの態様において、IL2Rα複合体はSEQ ID NO: 33に記載のアミノ酸配列を含む。
【0176】
いくつかの態様において、T細胞活性化因子タンパク質複合体の第2の構成要素のためのタンパク質配列は、細胞外結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、またはシグナル伝達ドメインをコードするタンパク質配列を含む。ある態様はまた、T細胞活性化因子タンパク質複合体の第2の構成要素の、細胞外結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、またはシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列も含む。いくつかの態様において、T細胞活性化因子タンパク質複合体の第2の構成要素であって、第2の細胞外結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、および/またはシグナル伝達ドメインを含む、第2の構成要素、のタンパク質配列は、SEQ ID NO: 5もしくはSEQ ID NO: 33に記載の配列に対して100%、99%、98%、95%、90%、85%、もしくは80%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含むか、またはこれらのパーセンテージの任意の2つによって定義される範囲のうちの配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0177】
いくつかの態様において、ホモ二量体化する二要素型のT細胞活性化因子タンパク質複合体のための配列は、リガンドであるAP1903を伴うホモ二量体化のための、FKBP F36Vドメインを包含する。
【0178】
いくつかの態様において、少なくとも1種類のT細胞活性化因子タンパク質は、第1の二量体化ドメインを含む第1の受容体タンパク質、および第2の二量体化ドメインを含む第2の受容体タンパク質を含み、ここで、第1の二量体化ドメインおよび第2の二量体化ドメインは、ある分子に応答して、特異的に互いに結合する。T細胞活性化因子タンパク質が結合する分子は、「リガンド」または「作用物質」との用語でも呼ばれるものであり、これは、所望の生物学的作用を有する分子を指す。いくつかの態様において、リガンドは、細胞外結合ドメインによって認識され、かつ細胞外結合ドメインと結合し、そしてリガンドと、T細胞活性化因子タンパク質複合体の結合した2つの構成要素とを含む、トリパータイト型複合体を形成する。リガンドには以下が含まれるが、これらに限定されない:タンパク質性の分子であって、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、翻訳後修飾されたタンパク質、抗体等が含まれるがこれらに限定されない、タンパク質性の分子;小分子(1000ダルトン未満)、無機化合物または有機化合物;ならびに核酸分子であって、2本鎖もしくは1本鎖のDNAまたは2本鎖もしくは1本鎖のRNA(たとえば、アンチセンス、RNAi等)、アプタマー、および三重らせん核酸分子が含まれるがこれらに限定されない、核酸分子。リガンドは、公知の任意の生物(動物(たとえば哺乳動物(ヒトおよび非ヒト哺乳動物))、植物、細菌、真菌、ならびに原生生物、もしくはウイルスが含まれるが、これらに限定されない)に由来してよく、もしくは前記生物から得られてもよいか、または合成分子のライブラリーに由来してよく、もしくは前記ライブラリーから得られてもよい。いくつかの態様において、リガンドは、タンパク質、抗体、小分子、または薬剤である。いくつかの態様において、リガンドは、ラパマイシンまたはラパマイシンアナログ(ラパログ)である。いくつかの態様において、ラパログは、ラパマイシンと比較した際に以下の修飾の1つまたは複数を有する、ラパマイシンのバリアントを含む:C7、C42、および/またはC29におけるメトキシの脱メチル化、除去、または置き換え;C13、C43、および/またはC28におけるヒドロキシの除去、誘導体化、または置き換え;C14、C24、および/またはC30におけるケトンの還元、除去、または誘導体化;五員環プロリンでの六員環ピペコリン酸の置き換え;ならびにシクロヘキシル環における別の置換、または置換シクロペンチル環でのシクロヘキシル環の置き換え。したがって、いくつかの態様において、ラパログは以下のものである:エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダホロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、ゾタロリムス、CCI-779、C20-メタリルラパマイシン、C16-(S)-3-メチルインドールラパマイシン、C16-iRap、AP21967、ミコフェノール酸ナトリウム(sodium mycophernolic acid)、ベニジピン塩酸塩、ラパミューン(rapamine)、AP23573、もしくはAP1903か、またはそれらの代謝物、それらの誘導体、および/もしくはそれらの組み合わせ。いくつかの態様において、リガンドはIMIDクラスの薬剤(たとえば、サリドマイド、ポマリドミド(pomalidimide)、レナリドミド、または関連するアナログ)である。
【0179】
いくつかの態様において、分子は以下から選択される:FK1012、タクロリムス(FK506)、FKCsA、ラパマイシン、クーママイシン、ジベレリン、HaXS、TMP-HTag、およびABT-737、またはそれらの機能的な誘導体。
【0180】
キメラ抗原受容体
「キメラ抗原受容体」または「CAR」または「キメラT細胞受容体」との用語は、合成により設計された受容体であって、ある分子に結合する抗体または他のタンパク質配列のリガンド結合ドメインと、膜貫通ドメインと、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインと、1つまたは複数の共刺激ドメインとを含む、受容体を指す。リガンド結合ドメインは、T細胞受容体の、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインと、または他の受容体の、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメイン、たとえば共刺激ドメインなどと、スペーサードメインを介して連結されている。キメラ受容体はまた、人工T細胞受容体、キメラT細胞受容体、キメラ免疫受容体、およびキメラ抗原受容体(CAR)とも称され得る。これらのCARは、免疫受容体細胞に任意の特異性を付け足すことができる、遺伝子操作された受容体である。いくつかの態様において、キメラ抗原受容体のためのスペーサーは、CARが所望の結合特性を達成できるように選択される(たとえば、スペーサーにおけるアミノ酸のある特定の長さに関して選択される)。さまざまな長さのスペーサーを有するCAR、たとえば細胞上に存在するそのようなCARは、その後、前記CARが指向する分子と結合または相互作用する能力に関してスクリーニングされる。
【0181】
本明細書でのいくつかの態様において、CARは1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは以下に由来する:CD27、CD28、4-IBB、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-I(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、もしくはリガンドであってCD83に特異的に結合するリガンドか、またはそれらの一部分。
【0182】
いくつかの態様において、CARは1つまたは複数の共刺激ドメインを含む。「共刺激ドメイン」とは、たとえばTCR/CD3複合体のCD3ζ鎖から与えられる主たるシグナルに加えて、T細胞にシグナルを与えるシグナル伝達モエティであって、活性化、増殖、分化、サイトカイン分泌等が含まれるがこれらに限定されないT細胞応答を媒介する、シグナル伝達モエティを指す。共刺激ドメインには、以下のものの全長または一部分が含まれ得るが、これらに限定されない:CD27、CD28、4-IBB、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-I(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、またはリガンドであってCD83に特異的に結合するリガンド。いくつかの態様において、共刺激ドメインは、他の細胞内メディエーターと相互作用して、活性化、増殖、分化、およびサイトカイン分泌等を含めた細胞応答を媒介する、細胞内シグナル伝達ドメインである。本明細書でのいくつかの態様において、共刺激ドメインは41bbおよびCD3ζを含む。いくつかの態様において、ベクター系は、CD19に対して特異的なCARを含む。いくつかの態様において、ベクター系は、CD20に対して特異的なCARを含む。いくつかの態様において、T細胞は806 CAR(抗EGFR 806 - 41BB - CD3ζ CAR)をさらに含む。
【0183】
いくつかの態様において、CARは二量体化活性化受容体開始複合体(dimerization activated receptor initiation complex)(DARIC)である。DARICは、それぞれ別々の融合タンパク質として発現する結合構成要素およびシグナル伝達構成要素を提供する一方で、細胞表面において前記2つの機能的な構成要素を再連結させるための細胞外多量体形成機構(橋渡し因子(bridging factor))を含んでいる(その全体が参照により本明細書に明示的に組み入れられる、米国特許出願公開第2016/0311901号を参照されたい)。重要なことに、DARIC系における橋渡し因子は、ヘテロ二量体である受容体複合体を形成するが、前記複合体はそれ自体では有意なシグナル伝達を引き起こさない。上述のDARIC複合体は、他のDARIC複合体とのさらなる共局在化の後で、生理学的に関連するシグナルを開始させるのみである。したがって、DARIC複合体は、DARIC複合体のさらなる多量体形成のための機構(たとえば、DARICの構成要素のうちの1つに組み込まれた結合ドメインが結合するリガンドを発現している、腫瘍細胞との接触によるもの)がない場合には、所望の細胞型を選択的に増大させることができない。
【0184】
いくつかの態様において、CARの抗原結合部分は、抗体の抗原結合部分か、または抗原に結合する抗体誘導体を含み得る。抗体の抗原結合部分、または抗体の誘導体は、Fab、Fab'、F(ab')2、Fd、Fv、scFv、ダイアボディ、線状抗体(linear antibody)、単鎖抗体、ミニボディ等であり得る。いくつかの態様において、CARの抗原結合部分はダーピン(DARPin)またはセンチリン(centyrin)を含み得る。
【0185】
CARは、疾患または障害に関連する分子に結合し得る。いくつかの態様において、CARが結合するかまたは相互作用する抗原は、基材上に存在してよく、これはたとえば、膜、ビーズ、もしくは支持体(たとえばウェル)などであり、または前記抗原は、結合性の作用物質であってもよく、これはたとえば、脂質(たとえばPLE)、ハプテン、リガンド、もしくは抗体かもしくはその結合断片などである。いくつかの態様において、CARは、がん細胞に存在する抗原に対して特異性を有する。いくつかの態様において、CARは病原体、たとえばウイルスまたは細菌などに対して特異性を有する。1つのアプローチとして、所望の抗原を含む基材を、前記抗原に対して特異的なCARを含む複数の細胞と接触させ、そして前記CARを含む細胞が、基材上に存在する抗原に結合したレベルもしくは量、または結合性の作用物質に結合したレベルもしくは量が決定される。結合のそのような評価には、アダプター分子に結合した細胞に関して染色を行うこと、または蛍光を評価することもしくは蛍光の喪失を評価することが含まれ得る。さらに、CARの構造の改変、たとえば、スペーサーの長さの変更などもまた、この様式で評価可能である。いくつかのアプローチにおいては、標的細胞もまた提供され、その場合には方法は以下の段階を含む:標的モエティおよび抗原を含むアダプター分子に対して特異的であるCARを含む細胞、たとえばT細胞などを、標的細胞、たとえばがん細胞もしくは細菌細胞などの存在下で、もしくは標的ウイルスの存在下で、接触させる段階、ならびに、CARを含む細胞の、アダプター分子への結合を評価する段階、ならびに/またはCARを含む細胞の、標的細胞もしくは標的ウイルスへの結合を評価する段階。CARのさまざまなエレメントの変更は、たとえば、ある特定のエピトープまたは抗原に対する、より強力な結合親和性をもたらし得る。
【0186】
本明細書に記載されるいくつかの態様において、CARは、腫瘍細胞またはがん細胞を標的とする脂質またはペプチドに対して特異的であり、ここで脂質またはペプチドは抗原を含み、かつCARは、前記抗原との相互作用を介して、前記脂質に特異的に結合し得る。いくつかの態様において、脂質はエーテル型リン脂質である。本明細書に記載されるいくつかの態様において、CARはエーテル型リン脂質に対して特異的であり、ここでエーテル型リン脂質は抗原を含み、かつCARは、前記抗原との相互作用を介して、前記エーテル型リン脂質に特異的に結合する。
【0187】
いくつかの態様において、CARは、抗体またはその結合断片に固定されている抗原に対して特異的であり、ここでCARは、前記抗原との相互作用を介して、前記抗体またはその結合断片に特異的に結合する。前記抗体またはその結合断片にコンジュゲートされ得る例示的な抗原には、以下が含まれる:ポリ(his)タグ、Strepタグ、FLAGタグ、VSタグ、Mycタグ、HAタグ、NEタグ、ビオチン、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質、橙色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、遠赤色蛍光タンパク質、またはフルオレセイン(たとえばフルオレセインイソチオシアネート(FITC))。いくつかの態様において、前記抗体またはその結合断片は、抗原またはリガンドであって、がん細胞に存在するかまたは病原体(たとえば、ウイルス性もしくは細菌性の病原体)に存在する、抗原またはリガンド、に対して特異的である。いくつかの態様において、前記抗体またはその結合断片は、抗原またはリガンドであって、腫瘍細胞、ウイルス、好ましくは慢性ウイルス(たとえば、HBVもしくはHCVなどといった肝炎ウイルス、またはHIV)、または細菌細胞に存在する、抗原またはリガンド、に対して特異的である。
【0188】
いくつかの態様において、CAR核酸は、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む。膜貫通ドメインは、キメラ受容体を膜に固定するために提供される。
【0189】
いくつかの態様において、複合体が提供され、ここで複合体は、脂質と連結しているCARを含み、前記脂質は抗原を含み、かつ前記CARは、前記抗原との相互作用を介して、前記脂質と連結している。
【0190】
いくつかの態様において、複合体が提供され、ここで複合体は、抗体またはその結合断片と連結しているCARを含み、前記抗体またはその結合断片は、抗原(たとえば、ポリ(his)タグ、Strepタグ、FLAGタグ、VSタグ、Mycタグ、HAタグ、NEタグ、ビオチン、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質、橙色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、遠赤色蛍光タンパク質、またはフルオレセイン(たとえばフルオレセインイソチオシアネート(FITC))を含み、かつ前記CARは、前記抗原との相互作用を介して、前記抗体またはその結合断片と連結している。いくつかの態様において、前記抗体またはその結合断片は、抗原またはリガンドであって、がん細胞に存在するかまたは病原体(たとえばウイルス性もしくは細菌性の病原体)に存在する、抗原またはリガンド、とさらに連結している。いくつかの態様において、前記抗体またはその結合断片は、抗原またはリガンドであって、腫瘍細胞、ウイルス、好ましくは慢性ウイルス(たとえば、HBVもしくはHCVなどといった肝炎ウイルス、またはHIV)、または細菌細胞に存在する、抗原またはリガンド、と連結している。いくつかの態様において、上記の抗原が、前記抗体またはその結合断片に存在しており、前記抗体またはその結合断片は、がん細胞または病原体(たとえば、ウイルスもしくは細菌細胞)における抗原に対して特異的であり、かつ上記の抗原には、細胞(たとえばT細胞)の表面に存在するCARが結合し、それに伴って、前記CARを有する前記細胞は、がん細胞または病原体へとリダイレクトされる。
【0191】
いくつかの態様において、本開示のCARまたはT細胞活性化因子タンパク質は、免疫抑制剤または抗増殖剤に対する耐性を免疫細胞に付与する。いくつかの例において、レンチウイルスベクターは、形質導入された細胞に、免疫抑制剤または抗増殖剤に対する耐性を付与することによって、標的細胞の選択的な増大を容易にするものであり、したがって標的細胞の選択的な増大が容易になる。本開示は、免疫抑制剤または抗増殖剤に対する耐性を付与する核配列のうちの任意のものを含む、レンチウイルスベクターを提供する。免疫抑制剤または抗増殖剤の例には以下が含まれるが、これらに限定されない:ラパマイシンまたはその誘導体、ラパログまたはその誘導体、タクロリムスまたはその誘導体、シクロスポリンまたはその誘導体、メトトレキサートまたはその誘導体、およびミコフェノール酸モフェチル(MMF)またはその誘導体。当技術分野においてはさまざまな耐性遺伝子が公知である。ラパマイシンに対する耐性は、タンパク質ドメインであるFRBをコードするポリヌクレオチド配列によって付与され得、前記FRBは、mTORドメイン中に見いだされるものであって、かつFKBP-ラパマイシン複合体の標的であることが知られている。タクロリムスに対する耐性は、カルシニューリン変異体であるCNa22またはカルシニューリン変異体であるCNb30をコードするポリヌクレオチド配列によって付与され得る。シクロスポリンに対する耐性は、カルシニューリン変異体であるCNa12またはカルシニューリン変異体であるCNb30をコードするポリヌクレオチド配列によって付与され得る。これらのカルシニューリン変異体は、Brewinら (2009) Blood 114:4792-803に記載されている。メトトレキサートに対する耐性は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)のさまざまな変異体型によってもたらされ得、Volpatoら (2011) J Mol Recognition 24:188-198、かつ、MMFに対する耐性は、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH)のさまざまな変異体型によってもたらされ得る、Yamら (2006) Mol Ther 14:236-244。
【0192】
いくつかの態様において、キメラ抗原受容体は、標的抗原に特異的に結合する抗原結合分子を含む。いくつかの態様において、標的抗原は以下のものである:CD3、CD28、CD134およびCD137、葉酸受容体、4-1BB、PD1、CD45、CD8a、CD4、CD8、CD4、LAG3、CD3e、CD69、CD45RA、CD62L、CD45RO、CD62F、CD95、5T4、αフェトプロテイン(AFP)、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、BCMA、B-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、CA-125、癌胎児性抗原(CEA)、癌胎児性抗原(CEA)、CD123、CD133、CD138、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD25、CD30、CD33、CD34、CD40、CD44、CD56、CLL-1、c-Met、CMV特異的抗原、CS-1、CSPG4、CTLA-4、DLL3、ジシアロガングリオシドGD2、導管上皮ムチン、EBV特異的抗原、EGFR、EGFRバリアントIII(EGFRvIII)、ELF2M、エンドグリン、エフリンB2、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮腫瘍抗原、ErbB2(HER2/neu)、線維芽細胞関連タンパク質(fap)、FLT3、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、グリオーマ関連抗原、スフィンゴ糖脂質、gp36、HBV特異的抗原、HCV特異的抗原、HER1・HER2の組み合わせ、HER2・HER3の組み合わせ、HERV-K、高分子量黒色腫関連抗原(FDVTW-MAA)、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、HPV特異的抗原、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、IGF1受容体、IGF-II、IL-11Rα、IL-13R-a2、インフルエンザウイルス特異的抗原;CD38、インスリン成長因子1(IGF1)、腸カルボキシルエステラーゼ、κ鎖、LAGA-1a、λ鎖、ラッサウイルス特異的抗原、レクチン反応性AFP、系列特異的抗原もしくは組織特異的抗原、MAGE、MAGE-A1、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、腫瘍特異的ペプチドエピトープを提示している主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、M-CSF、黒色腫関連抗原、メソテリン、MN-CA IX、MUC-1、mut hsp70-2、変異p53、変異ras、好中球エラスターゼ、NKG2D、Nkp30、NY-ESO-1、p53、PAP、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺癌腫瘍抗原1(PCTA-1)、前立腺特異的抗原タンパク質、STEAP1、STEAP2、PSMA、RAGE-1、ROR1、RU1、RU2(AS)、表面接着分子、サバイビン(surviving)およびテロメラーゼ、TAG-72、フィブロネクチンのエクストラドメインA(EDA)およびエクストラドメインB(EDB)、テネイシンCのA1ドメイン(TnC Al)、サイログロブリン、腫瘍間質抗原、血管内皮細胞成長因子受容体2(VEGFR2)、HIV gp120、またはこれらの表面抗原の、誘導体、バリアント、もしくは断片。
【0193】
免疫抑制剤または抗増殖剤(たとえば免疫抑制薬)は通常、ACTの前に、最中に、および/または後に使用される。いくつかの例においては、免疫抑制薬を使用すると、処置のアウトカムが改善し得る。いくつかの例においては、免疫抑制薬を使用すると、処置の副作用が軽減され得、これはたとえば、急性移植片対宿主病、慢性移植片対宿主病、および移植後リンパ増殖性疾患などであるが、これらに限定されない。本開示は、疾患または異常を処置または予防する本開示の方法のうちの任意のものとともに、免疫抑制薬を使用することを意図するものであり、前記方法には、本開示の方法であって、それにおいてレンチウイルスベクターが、形質導入された細胞に、免疫抑制薬に対する耐性を付与することが行われる、本開示の方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0194】
ポリヌクレオチド
本開示はまた、核酸およびポリヌクレオチドであって、開示される、形質導入エンハンサー、T細胞活性化因子タンパク質、アダプター分子、およびCARをコードする、核酸およびポリヌクレオチドにも関連する。核酸は、上述のタンパク質のうちの任意のものをコードする複数の配列を含む構築物の形態であり得る。本明細書において使用される場合、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、および「核酸」との用語は互いに同義であることが意図される。
【0195】
遺伝コードの縮重の結果として、多数の異なるポリヌクレオチドおよび核酸が同じポリペプチドをコードすることが可能であることを、当業者であれば理解するであろう。加えて、任意の特定の宿主生物であって、そこでポリペプチドを発現させようとする、宿主生物のコドン使用を反映させるために、当業者は慣用の技術を用いて、本明細書に記載されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列に対して影響を及ぼさないヌクレオチド置換を生じさせることが可能であることが、理解される。
【0196】
核酸はDNAまたはRNAを含んでよい。これらは1本鎖であってよいか、または2本鎖であってもよい。これらはまた、その中に合成ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであってもよい。当技術分野においては、オリゴヌクレオチドに対する多数の異なるタイプの修飾が公知である。これらには、メチルホスホネートおよびホスホロチオネートのバックボーン、分子の3'末端および/または5'末端におけるアクリジンまたはポリリジン鎖の付加が含まれる。本明細書に記載される用途の目的については、当技術分野において利用可能な任意の手法によってポリヌクレオチドが修飾され得ることが理解される。そのような修飾は、関心対象のポリヌクレオチドのインビボでの活性または寿命を増大させるために実施され得る。
【0197】
ヌクレオチド配列に関連する「バリアント」、「ホモログ」、または「誘導体」との用語には、前記配列からの、または前記配列への、1つ(または複数)の核酸の任意の置換、変更、修飾、置き換え、欠失、または付加が含まれる。核酸は、マイトジェン性の形質導入エンハンサーをコードする1種類もしくは複数種類の配列および/またはサイトカインベースの形質導入エンハンサーをコードする1種類もしくは複数種類の配列を含むポリペプチドを、産生し得る。ポリペプチドが産生された際に、外部からの切断活性を一切必要とすることなく、受容体構成要素とシグナル伝達構成要素とに速やかに切断されるように、切断部位は自己切断型であってよい。
【0198】
さまざまな自己切断部位が公知であり、これには、口蹄疫ウイルス(FMDV)の2a自己切断ペプチドおよびさまざまなバリアント、ならびに2A様ペプチドが含まれる。
【0199】
共発現配列は配列内リボソーム進入配列(IRES)であってよい。共発現配列は内部プロモーターであってよい。
【0200】
いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドでの形質導入が行われる免疫細胞に、抗血管新生剤に対する耐性を付与するタンパク質を、コードする。
【0201】
ウイルス粒子のタグタンパク質
ウイルスベクターのウイルスエンベロープはまた、タグタンパク質も含み得、前記タグタンパク質は、捕捉モエティに結合する結合ドメインと、膜貫通ドメインとを含む。
【0202】
タグタンパク質には以下が含まれ得る:捕捉モエティに結合する結合ドメイン;スペーサー;および膜貫通ドメイン。
【0203】
タグタンパク質は捕捉モエティに結合するため、細胞上清からのウイルスベクターの精製が前記タグタンパク質によって容易になる。「結合ドメイン」とは、たとえばエピトープである、あるエンティティであって、たとえば捕捉モエティである標的エンティティを認識可能でありかつそれに特異的に結合可能である、あるエンティティを指す。結合ドメインは、捕捉モエティに特異的に結合可能である1つまたは複数のエピトープを含み得る。たとえば、結合ドメインは、捕捉モエティに特異的に結合可能である少なくとも1つの、2つの、3つの、4つの、または5つのエピトープを含み得る。結合ドメインが複数のエピトープを含む場合、それぞれのエピトープは、本明細書に記載されるように、リンカー配列によって隔てられていてよい。
【0204】
結合ドメインと比較して、捕捉モエティに対してより高い結合親和性を有するエンティティが添加された場合に、結合ドメインは捕捉モエティから放出可能であり得る。
【0205】
結合ドメインは、1つまたは複数のストレプトアビジン結合エピトープを含み得る。たとえば、結合ドメインは、少なくとも1つの、2つの、3つの、4つの、または5つのストレプトアビジン結合エピトープを含み得る。
【0206】
ストレプトアビジンは、細菌であるストレプトマイセス・アビジニイ(Streptomyces avidinii)から精製された52.8 kDaのタンパク質である。ストレプトアビジンホモ四量体は、ビオチン(ビタミンB7またはビタミンH)に対して非常に高い親和性を有する。ストレプトアビジンは当技術分野において周知であり、かつ、ストレプトアビジン・ビオチン複合体が、有機溶媒、変性剤、タンパク質分解酵素、ならびに極端な温度およびpHに対して耐性であることに起因して、分子生物学およびバイオナノテクノロジーの分野において広く使用されている。ストレプトアビジン・ビオチンの強力な結合は、さまざまな生体分子を互いに結び付けるのに、または前記分子を固体の基材上に結び付けるのに、使用可能である。ストレプトアビジン・ビオチンの相互作用を分断するには厳しい条件が必要となるが、これは、精製される関心対象のタンパク質を変性させる可能性がある。
【0207】
結合ドメインは、たとえばビオチン模倣物であってよい。「ビオチン模倣物」とは、ストレプトアビジンに特異的に結合する短いペプチド配列 - たとえば、6~20個、6~18個、8~18個、または8~15個のアミノ酸 - を指す。上述のように、ビオチン/ストレプトアビジン相互作用の親和性は非常に高い。したがって、ビオチンそれ自体と比較してストレプトアビジンに対してより低い親和性を有するビオチン模倣物を、結合ドメインが含み得るという点は、本発明の利点の1つである。
【0208】
特に、ビオチン模倣物は、ビオチンよりも低い結合親和性でストレプトアビジンに結合し得、したがって、ストレプトアビジンに捕捉されたレトロウイルスベクターを溶出するために、ビオチンが使用可能である。たとえば、ビオチン模倣物は1 nM~100 uMのKdでストレプトアビジンに結合し得る。
【0209】
ビオチン模倣物は以下の群より選択されてよい:Strep-tag II、Flankedccstreptag、およびccstreptag。結合ドメインは複数のビオチン模倣物を含み得る。たとえば、結合ドメインは、少なくとも1つの、2つの、3つの、4つの、または5つのビオチン模倣物を含み得る。結合ドメインが複数のビオチン模倣物を含む場合、それぞれの模倣物は同じであってよいか、または異なっていてもよい。
【0210】
本開示はまた、精製され得るウイルス粒子も提供し、かつ前記粒子の精製方法も提供する。いくつかの態様において、ウイルスベクターのウイルスエンベロープはまた、タグタンパク質も含んでよく、前記タグタンパク質は、捕捉モエティに結合する結合ドメイン;スペーサー;および膜貫通ドメインを含むものであり、前記タグタンパク質は前記捕捉モエティに結合するため、細胞上清からのウイルスベクターの精製が前記タグタンパク質によって容易になる。
【0211】
タグタンパク質の結合ドメインは、1つまたは複数のストレプトアビジン結合エピトープを含み得る。ストレプトアビジン結合エピトープはビオチン模倣物であってよく、これはたとえば、ビオチンよりも低い親和性でストレプトアビジンに結合するビオチン模倣物であり、したがって、パッケージング細胞によって産生され、ストレプトアビジンに捕捉されたレトロウイルスベクターを溶出するために、ビオチンが使用可能である。好適なビオチン模倣物の例には以下が含まれる:Strep-tag II、Flankedccstretag、およびccstreptag。本発明の第1の局面のウイルスベクターは、T細胞受容体またはキメラ抗原受容体をコードする核酸配列を含み得る。ウイルスベクターはウイルス様粒子(VLP)であってよい。
【0212】
産生細胞株/パッケージング細胞株
本開示は、本開示によるウイルス粒子を作製するための宿主細胞を提供する。いくつかの態様において、宿主細胞は、マイトジェン性の形質導入エンハンサー、および/またはサイトカインベースの形質導入エンハンサーを細胞表面に発現する。宿主細胞は、前述の態様によるウイルスベクターを作製するためのものであり得る。いくつかの態様において、宿主細胞は、ウイルス粒子を精製するのに有用なタグタンパク質を含み得る。
【0213】
宿主細胞はパッケージング細胞であってよく、かつ以下の遺伝子のうちの1つまたは複数を含んでよい:gag、pol、env、およびrev。レトロウイルスベクター用のパッケージング細胞は、gag遺伝子、pol遺伝子、およびenv遺伝子を含み得る。レンチウイルスベクター用のパッケージング細胞は、gag遺伝子、pol遺伝子、env遺伝子、およびrev遺伝子を含み得る。
【0214】
宿主細胞はプロデューサー細胞であってよく、かつgag遺伝子、pol遺伝子、env遺伝子、および任意でrev遺伝子を含んでよく、かつレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターのゲノムを含んでよい。遺伝子療法に使用するための典型的な組み換えレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターにおいては、gag-polタンパク質およびenvタンパク質のコーディング領域の1つまたは複数のうちの少なくとも一部は、ウイルスから除去されてよく、かつパッケージング細胞によって提供されてよい。ウイルスはそのゲノムを宿主ゲノムに組み込むことができるが、改変されたウイルスゲノムでは、構造タンパク質を欠いているために自身を増殖させることができず、したがって、上記によりウイルスベクターは複製不能となる。
【0215】
パッケージング細胞は、ある量のウイルスベクターを増殖させかつ単離するのに使用される、すなわち、標的細胞の形質導入を行うために適切な力価のレトロウイルスベクターを調製するのに使用される。
【0216】
いくつかの例において、増殖および単離は、レトロウイルスのgagpol遺伝子およびenv遺伝子(レンチウイルスの場合にはrev遺伝子も)を単離すること、ならびに、それら遺伝子を宿主細胞へと別々に導入して、パッケージング細胞株を作製することを伴い得る。パッケージング細胞株は、レトロウイルスDNAをパッケージングするのに必要なタンパク質を産生するが、psi領域を欠いていることに起因して、カプシド形成を引き起こすことができない。しかしながら、psi領域を担持する組み換えベクターがパッケージング細胞株に導入された場合には、ヘルパータンパク質がpsi陽性組み換えベクターをパッケージングして、組み換えウイルスストックを産生することが可能である。
【0217】
利用可能なパッケージング株の概要は、Coffin, J.M.,ら(1997) "Retroviruses" 449に示されている。
【0218】
野生型ウイルスを産生するには3回の組み換えイベントが必要となるように、ウイルスのコーディング領域であるgag、pol、およびenv(レンチウイルスベクターの場合にはrevも)が別々の発現プラスミドに担持されており、前記発現プラスミドが独立してパッケージング細胞株にトランスフェクトされる、というパッケージング細胞もまた、開発されている。
【0219】
安定なベクター産生細胞株を作製する場合には長い時間が必要となるが、一過性のトランスフェクションはそれが不要であり、かつ一過性のトランスフェクションは、ベクターまたはレトロウイルスのパッケージング構成要素が細胞に対して毒性である場合に使用される。レトロウイルスベクター/レンチウイルスベクターを作製するために典型的に使用される構成要素は、以下を含む:Gag/Polタンパク質をコードするプラスミド、Envタンパク質(レンチウイルスベクターの場合にはrevタンパク質も)をコードするプラスミド、ならびにレトロウイルスベクター/レンチウイルスベクターのゲノム。ベクターの作製は、これらの構成要素のうちの1つまたは複数を、必要とされる他の構成要素を含む細胞に、一過性にトランスフェクトすることを伴う。本発明のパッケージング細胞は、レトロウイルスベクター/レンチウイルスベクターの粒子を作製可能である、哺乳動物の任意の細胞型であってよい。パッケージング細胞は293T細胞であってよいか、または293T細胞のバリアントであって、懸濁状態で増殖するようにかつ無血清で増殖するように適応させた、293T細胞のバリアントであってもよい。
【0220】
パッケージング細胞は、以下を一過性にトランスフェクトすることによって作製され得る:
a) トランスファーベクター、
b) gagpol発現ベクター、
c) env発現ベクター。
env遺伝子は異種性であってよく、その場合にはシュードタイプレトロウイルスベクターが得られる。たとえば、env遺伝子は、RD114またはそのバリアントの1つに、VSV-Gに、テナガザル白血病ウイルス(GALV)に、アンホトロピックエンベロープ糖タンパク質か麻疹エンベロープ糖タンパク質かまたはヒヒレトロウイルスエンベロープ糖タンパク質に、由来し得る。
【0221】
レンチウイルスベクターの場合には、revベクターを一過性にトランスフェクトすることもまた実施される。
【0222】
本開示は、前述の態様によるウイルス粒子を発現する宿主細胞を提供する。いくつかの態様において、宿主細胞は、細胞表面に1種類または複数種類の形質導入エンハンサーを発現する。いくつかの態様において、パッケージング細胞によって産生されたレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターが、前述の態様に記載されるようなものとなるように、本発明は、
(a) マイトジェン性のドメインおよび膜貫通ドメインを含む、マイトジェン性の形質導入エンハンサー;ならびに/または
(b) サイトカインドメインおよび膜貫通ドメインを含む、サイトカインベースの形質導入エンハンサー
を細胞表面に発現する宿主細胞を提供する。
【0223】
いくつかの態様において、パッケージング細胞によって産生されたレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターが、前述のセクションに記載される特徴を有するものとなるように、宿主細胞はまた、細胞表面に、タグタンパク質であって、捕捉モエティに結合する結合ドメイン;および膜貫通ドメインを含む、タグタンパク質も発現してよく、前記タグタンパク質は前記捕捉モエティに結合するため、細胞上清からのウイルスベクターの精製が前記タグタンパク質によって容易になる。
【0224】
タグタンパク質はまた、結合ドメインと膜貫通ドメインとの間にスペーサーも含んでよい。
【0225】
宿主細胞との用語は、パッケージング細胞またはプロデューサー細胞を表すために使用され得る。パッケージング細胞は、以下の遺伝子のうちの1つまたは複数を含み得る:gag、pol、env、および/またはrev。プロデューサー細胞はまた、gag遺伝子、pol遺伝子、env遺伝子、および任意でrev遺伝子も含み得、かつ、レトロウイルスゲノムまたはレンチウイルスゲノムも含み得る。いくつかの態様において、宿主細胞は、マイトジェン性のエンハンサーおよび/またはサイトカイン形質導入エンハンサーを安定的に発現する、任意の好適な細胞株であり得る。前記宿主細胞には、複製不能レトロウイルスベクター/レンチウイルスベクターを作製するために、トランスファーベクター、gagpol、env(レンチウイルスの場合にはrevも)が一過性にトランスフェクトされ得る。
【0226】
本開示はまた、上記のような宿主細胞を作製するための方法も提供し、前記方法は、1種類または複数種類の形質導入エンハンサーをコードする核酸を用いて細胞への形質導入またはトランスフェクションを行う段階を含む。前述の態様によるウイルスベクターを作製するための方法もまた提供され、前記方法は、本発明の第2の局面による細胞において、レトロウイルスまたはレンチウイルスのゲノムを発現させる段階を含む。
【0227】
トランスジェニック免疫細胞
本開示は、活性化されたトランスジェニック免疫細胞を作製するための方法を提供し、前記方法は、前述の態様のうちの任意のものによるウイルスベクターを、免疫細胞に接触させる段階を含む。免疫細胞は、インビボまたはエクスビボで形質導入されてよい。いくつかの態様において、ウイルスベクターは生きている対象に投与され、その場合には、宿主細胞をエクスビボで単離および操作する必要はなく、免疫細胞はインビボで形質導入される。いくつかの態様において、免疫細胞はエクスビボで操作され、そしてその後、それを必要とする対象に戻される。
【0228】
免疫細胞は一般的には哺乳動物細胞であり、かつ典型的にはヒト細胞であり、より典型的には初代ヒト細胞であり、これはたとえば、同種ドナー細胞または自家ドナー細胞である。細胞は、試料から、たとえば生物学的試料などから単離されてよく、これはたとえば、対象から得られたか、または対象に由来する生物学的試料である。いくつかの態様において、細胞の単離元となる対象は、疾患もしくは異常を有する対象であるか、または細胞療法を必要とする対象であるか、または細胞療法が施される予定の対象である。対象は、いくつかの態様においては、ある特定の治療的介入を必要とするヒトであり、前記治療的介入はたとえば、それを行うために細胞が単離され、処理され、および/または遺伝子操作される、養子細胞療法などである。いくつかの態様において、細胞は、血液、骨髄、リンパ、またはリンパ器官に由来するものであり、また、細胞は、免疫系の細胞、たとえば自然免疫系または適応免疫系の細胞などであり、これはたとえば、リンパ球を含めた、典型的にはT細胞および/またはNK細胞を含めた、骨髄系細胞またはリンパ系細胞である。他の例示的な細胞は幹細胞を含み、これはたとえば、人工多能性幹細胞(iPSC)を含めた、複能性幹細胞および多能性幹細胞などである。細胞は、典型的には初代細胞であり、これはたとえば、対象から直接単離された細胞、および/または対象から単離されそして凍結された細胞などである。いくつかの態様において、細胞には、T細胞または他の細胞型の、1つまたは複数のサブセットが含まれ、これはたとえば、全T細胞集団、CD4+細胞、CD8+細胞、およびそれらのサブ集団などであり、前記サブ集団はたとえば、以下によって定義されるものである:機能、活性化状態、成熟度、分化についての潜在能力、拡大についての潜在能力、再循環についての潜在能力、局在化についての潜在能力、および/もしくは持続性についての潜在能力、抗原特異性、抗原受容体のタイプ、ある特定の臓器もしくは区画における存在、マーカーのプロファイルもしくはサイトカイン分泌のプロファイル、ならびに/または分化の程度。
【0229】
T細胞のサブタイプおよびサブ集団、ならびに/またはCD4+ T細胞および/もしくはCD8+ T細胞のサブタイプおよびサブ集団には、以下のものがある:ナイーブT細胞(TN)、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞およびそのサブタイプであってたとえば幹細胞メモリーT細胞(TSCM)、セントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞(TEM)、または最終分化型エフェクターメモリーT細胞などのサブタイプ、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未成熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT)、内在性のおよび適応性の制御性T細胞(Treg)、ヘルパーT細胞であってたとえばTH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞ヘルパーT細胞などのヘルパーT細胞、α/βT細胞、ならびにδ/γT細胞。
【0230】
本明細書でのいくつかの態様において、提供される細胞は細胞傷害性Tリンパ球である。「細胞傷害性Tリンパ球」(CTL)には、たとえば、その表面にCD8を発現しているTリンパ球(たとえばCD8+ T細胞)が含まれ得るが、これに限定されない。いくつかの態様において、そのような細胞は、好ましくは、抗原を経験した「メモリー」T細胞(TM細胞)である。いくつかの態様において、細胞は前駆T細胞である。いくつかの態様において、前駆T細胞は造血幹細胞である。いくつかの態様において、細胞は、以下からなる群より選択されるCD8+ T細胞傷害性リンパ球細胞である:ナイーブCD8+ T細胞、セントラルメモリーCD8+ T細胞、エフェクターメモリーCD8+ T細胞、およびバルクCD8+ T細胞。いくつかの態様において、細胞は、以下からなる群より選択されるCD4+ Tヘルパーリンパ球細胞である:ナイーブCD4+ T細胞、セントラルメモリーCD4+ T細胞、エフェクターメモリーCD4+ T細胞、およびバルクCD4+ T細胞。
【0231】
本方法において使用され得る遺伝子操作された細胞の好適な集団には、細胞溶解活性を有する任意の免疫細胞、たとえばT細胞などが含まれるが、これらに限定されない。T細胞の例示的なサブ集団には、CD3+CD8+ T細胞、CD3+CD4+ T細胞、およびNKT細胞を含めた、CD3+を発現しているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0232】
本開示のベクター系において使用される細胞は、以下から選択される細胞傷害性リンパ球である:細胞傷害性T細胞(細胞傷害性Tリンパ球、CTL、Tキラー細胞、細胞溶解性T細胞、CD8+ T細胞、およびキラーT細胞としてもさまざまに知られている)、ナチュラルキラー(NK)細胞、ならびにリンフォカイン活性化キラー(LAK)細胞。活性化されると、これらの細胞傷害性リンパ球のそれぞれは、標的腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
【0233】
「ナチュラルキラー」細胞、NK細胞は、自然免疫系の主要な構成要素である細胞傷害性リンパ球である。NK細胞は、腫瘍の形成およびウイルスに感染した細胞に反応し、そして感染した細胞においてアポトーシス(細胞死)を誘導する。
【0234】
本開示のベクター系の形質導入において使用されるNK細胞は、文献に記載されるNK細胞を含んでよく、かつ任意の供給源に由来する1種類または複数種類のマーカーを発現しているNK細胞を含んでもよい。
【0235】
いくつかの態様において、NK細胞はCD3- CD56+細胞として定義される。
【0236】
いくつかの態様において、NK細胞はCD7+ CD127- NKp46+ T-bet+ Eomes+細胞として定義される。
【0237】
いくつかの態様において、NK細胞はCD3- CD56dim CD16+細胞として定義される。
【0238】
いくつかの態様において、NK細胞はCD3- CD56bright CD16-細胞として定義される。
【0239】
いくつかの態様において、NK細胞は細胞表面受容体を含み、これには以下が含まれるが、これらに限定されない:ヒトキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)、マウスLy49ファミリー受容体、CD94-NKG2ヘテロ二量体受容体、NKG2D、自然細胞傷害性受容体(NCR)、またはそれらの組み合わせ。
【0240】
いくつかの態様において、T細胞またはNK細胞は同種ドナー細胞である。
【0241】
いくつかの態様において、T細胞またはNK細胞は自家ドナー細胞である。
【0242】
本明細書において使用される場合、トランスジェニックT細胞もしくは形質導入されたT細胞への言及、またはそれらの使用への言及はいずれも、本明細書に開示される他の免疫細胞型の任意のものに対しても適用され得る。
【0243】
本開示はまた、1種類または複数種類の外来核酸分子を含むトランスジェニック免疫細胞も提供する。いくつかの態様において、トランスジェニック免疫細胞は、本開示のベクター系をコードする少なくとも2種類のポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、トランスジェニック免疫細胞は、形質導入エンハンサーをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、トランスジェニック免疫細胞は、T細胞活性化因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、トランスジェニック免疫細胞は、本開示のベクター系をコードする少なくとも2種類のポリヌクレオチドと、T細胞活性化因子タンパク質をコードするポリヌクレオチドとを含む。
【0244】
開示される本組成物を用いて対象を処置する方法
本開示は、それを必要とする対象を、本明細書に開示される組成物、治療用組成物、細胞、ベクター、およびポリヌクレオチドを用いて処置する方法を提供する。いくつかの態様において、本開示は、対象においてがんを処置する、および/またはがん細胞を死滅させる方法を提供し、前記方法は、開示されるウイルス粒子の治療的有効量を対象に投与する段階を含む。
【0245】
いくつかの態様において、本明細書に開示される方法は、前述の態様のうちの任意のものによるレンチウイルス粒子の治療的有効量を対象に投与することによって、対象においてがんを処置する、および/またはがん細胞を死滅させるために使用され得る。いくつかの態様において、本明細書に開示される方法は、ベクター系を投与することによって、がんを処置するために、および/またはがん細胞を死滅させるために、使用され得る。
【0246】
本開示はまた、対象においてがんを処置する、および/またはがん細胞を死滅させる方法を提供し、前記方法は、前述の態様のうちの任意のものの系を対象に投与する段階を含む。
【0247】
投与様式および薬学的組成物
開示されるウイルス粒子は、局所性の処置が望まれるのかまたは全身性の処置が望まれるのかに応じて、多数の様式で投与され得る。
【0248】
本明細書に記載される組成物または態様は、投与用に、公知の技術にしたがって薬学的担体中に製剤化され得る。たとえば、Remington, "The Science and Practice of Pharmacy" (21st Ed. 2005)を参照されたい。薬学的製剤の製造においては、典型的には組成物を、主として、許容される担体と、混合する。担体は当然のことながら、製剤中の他の成分と適合性であるという意味で、許容されるものでなくてはならず、かつ、対象に対して有害であってはならない。担体は、固体もしくは液体、または両方であってよく、かつ好ましくは、単位用量の製剤として、化合物とともに製剤化されるものであり、これはたとえば、重量で、0.01%または0.5%から、95%または99%までの活性化合物を含み得る錠剤である。本明細書に開示される製剤には、1つまたは複数の態様が包含され得、前記製剤は、1種類または複数種類の補助的な成分を任意で含む構成要素を混合することを含む、製剤学における周知の技術の任意のものによって調製され得る。
【0249】
さらに、たとえば、糖、担体、賦形剤、または希釈剤などといった、本開示による組成物の「薬学的に許容される」成分とは、(i) 本開示の組成物が意図する目的に関して前記組成物を不適切な状態にすることなしに、前記組成物と組み合わせることが可能であるという点で、組成物の他の成分と適合性であり、かつ(ii) 過度な有害副作用(たとえば、毒性、刺激作用、およびアレルギー応答など)なしに、本明細書において提供されるように対象に使用されるのに好適である、成分である。副作用は、それによるリスクが組成物によってもたらされる恩恵を上回った場合に、「過度」となる。薬学的に許容される成分の非限定的な例には、標準的な薬学的担体の任意のものが含まれ、これはたとえば、生理食塩水、水、たとえば油/水エマルションなどのエマルション、マイクロエマルション、およびさまざまなタイプの湿潤剤などである。
【0250】
一般的には投与は、局所投与、非経口投与、または腸投与であり得る。本開示の組成物は、典型的には非経口投与に好適である。本明細書において使用される場合、薬学的組成物の「非経口投与」とは、対象の組織に物理的な開口部を作ること、および前記組織における前記開口部を介して薬学的組成物を投与することによって特徴付けられる、任意の投与経路を含むものであり、したがってこれは、一般的には、血流内への、筋肉内への、または内臓への直接投与をもたらす。したがって非経口投与には、以下による薬学的組成物の投与が含まれるが、これらに限定されない:前記組成物の注入、外科的切開を介した前記組成物の適用、組織に到達した非外科的創傷を介した組成物の適用等。特に、非経口投与には以下が含まれるがこれらに限定されないことが、意図される:皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内、静脈内、動脈内、髄腔内、脳室内、尿道内、頭蓋内、腫瘍内、滑膜内への、注射または注入;および腎臓透析注入技術。1つの好ましい態様において、本開示の組成物の非経口投与には静脈内投与が含まれる。
【0251】
非経口投与に好適な薬学的組成物の製剤は、典型的かつ一般的には、薬学的に許容される担体と組み合わせられた、たとえば滅菌水または滅菌等張生理的食塩水などと組み合わせられた、有効成分を含む。そのような製剤は、ボーラス投与または連続投与に好適な形状として、調製、包装、または販売されてよい。注入可能な製剤は、単位剤形として、たとえば、アンプルとして、または保存剤を含む複数用量の容器として、調製、包装、または販売されてよい。非経口投与用の製剤には、懸濁液、溶液、油性媒体または水性媒体におけるエマルション、ペースト等が含まれるが、これらに限定されない。そのような製剤は、1種類または複数種類の追加の成分をさらに含んでよく、前記成分には懸濁剤、安定剤、または分散剤が含まれるが、これらに限定されない。非経口投与用の製剤の1つの態様において、有効成分は乾燥した形状(すなわち粉末または顆粒の形状)として提供され、これは、適切なビヒクル(たとえば滅菌したパイロジェンフリー水)を用いて再構成し、その後再構成された組成物を非経口投与するためのものである。非経口製剤には、賦形剤、たとえば塩、炭水化物、および緩衝剤(好ましくはpH 3~9へ緩衝)などを含み得る水性溶液も含まれるが、一方でいくつかの適用のためには、非経口製剤は、滅菌非水性溶液としてもより好適に製剤化され得、または、好適なビヒクルと組み合わせて、たとえば滅菌したパイロジェンフリー水などと組み合わせて使用するための乾燥した形状としても、より好適に製剤化され得る。非経口投与の例示的な形状には、滅菌水性溶液としての溶液または懸濁液が含まれ、これはたとえば、水性プロピレングリコール溶液または水性デキストロース溶液などである。そのような剤形は、必要に応じて適切に緩衝され得る。非経口的に投与可能である有用な他の製剤には、微結晶の形状としてまたはリポソーム調製物として有効成分を含むものが含まれる。非経口投与用の製剤は、即時放出性製剤および/または修飾放出性製剤として製剤化され得る。修飾放出性製剤には、遅延放出性、持続放出性、パルス放出性、制御放出性、標的型放出性、およびプログラム放出性のものが含まれる。
【0252】
本発明の組成物は、薬学的組成物において通常見いだされる他の添加物成分を追加で含んでもよい。したがって、たとえば前記組成物は、適合性であって薬学的に活性な追加の材料、たとえば、鎮痒剤、収れん剤、局所麻酔剤、もしくは抗炎症剤などを含んでよいか、または本発明の組成物のさまざまな剤形を実際に製剤化するのに有用な追加の材料、たとえば、染料、香味剤、保存剤、酸化防止剤、乳白剤、増粘剤、および安定剤などを含んでもよい。しかしながらそのような材料は、添加された場合に、本発明の組成物の成分の生物学的活性を過度に妨害してはならない。製剤は滅菌されてよく、かつ望ましい場合には、薬学的調製物は補助剤と混合されてよく、これはたとえば、前記製剤中の核酸と有害な相互作用をしない、滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼす塩、緩衝剤、着色剤、香味剤、および/または芳香物質等である。
【0253】
本ウイルス粒子組成物は、疾患または異常を処置または予防するのに有効な量で、たとえば治療的有効量または予防的有効量などで、投与されてよい。いくつかの態様において、治療状上または予防上の有効性は、処置を受けた対象を定期的に評価することによってモニターされる。数日間またはより長い期間にわたる反復投与に関し、状態に応じて、疾患症状の望ましい抑制が生じるまで、処置は繰り返される。しかしながら、他の投薬レジメンが有用である可能性があり、そのような投薬レジメンを決定することも可能である。所望の投薬量は、組成物の単回のボーラス投与によって送達されてよく、組成物の複数回のボーラス投与によって送達されてよいか、または組成物の連続的な注入投与によって送達されてもよい。
【0254】
ウイルス粒子を投与する文脈において、ウイルス粒子の量、およびそのような粒子の投与回数は、本教示の恩恵を有する当業者の理解の範囲内である。いくつかの態様において、開示される組成物の治療的有効量の投与は、単回投与によって達成され得、これはたとえば、そのような処置を受けている患者に対して治療上の恩恵を提供するのに十分な数のウイルス粒子を1回注入することなどである。いくつかの態様において、対象は、本レンチウイルスベクター組成物の投与を監督する医師がなし得る判断にしたがって、比較的短い期間か比較的長い期間のいずれかにわたって、そのような組成物の複数回の投与または連続的な投与を受ける。たとえば、哺乳動物に投与される感染性粒子の数は、1 mlあたりウイルス粒子約107個、108個、109個、1010個、1011個、1012個、1013個のオーダーか、またはさらに多数であり得、これは、処置されている特定の疾患または障害の治療を達成するのに必要であり得る場合、単回投与として、または2回以上の投与に分割されるかのいずれかとして投与される。いくつかの態様において、対象は、2種類以上の異なるウイルスベクター組成物の投与を受けてよく、これは単独か、またはある特定の治療レジメンの所望の効果を達成するための1種類または複数種類の他の治療薬との組み合わせのいずれかで行われる。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、トランスジェニック免疫細胞と組み合わせて投与される。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、まだ形質導入されていない免疫細胞と組み合わせて投与される。「組み合わせ」との表現は、同時を含んでよいか、またはある短い期間内の異なる時点を含んでもよく、前記短い期間とは、たとえば1週間以内、1日以内、20時間以内、6時間以内、1時間以内、30分以内、10分以内、5分以内、または1分以内などである。
【0255】
本明細書において言及される全ての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許がそれぞれ参照により組み入れられるように具体的にかつ個々に指示されている場合と同程度に、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。不一致のある場合には、本明細書におけるいずれの定義も含め、本出願に従うものとする。しかしながら、本明細書において引用される参考文献、論文、刊行物、特許、特許公報、および特許出願への言及はいずれも、それら文献等が有効な先行技術を構成している旨を認めるものではなく、その旨を認めていると解釈されるべきでもなく、その旨を何らかの形で示唆するものではなく、その旨を何らかの形で示唆していると解釈されるべきでもなく、それら文献等が世界のいずれかの国における通常の一般知識の一部分を形成している旨を認めるものではなく、その旨を認めていると解釈されるべきでもなく、その旨を何らかの形で示唆するものではなく、その旨を何らかの形で示唆していると解釈されるべきでもない。
【0256】
本明細書において使用されるセクションの見出しは、系統化するという目的のためだけのものであり、かつ、記載される内容を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0257】
例示的な態様が例示されかつ説明されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなしにさまざまな変更が本発明になされ得ることが、理解されるであろう。
【実施例
【0258】
以下の実施例は、本明細書に記載される組成物および方法が、どのように使用され得、作製され得、かつ評価され得るのかについての説明を当業者に提供するために提示されるものであり、かつ以下の実施例は、本発明を純粋に例示することを意図するものであるが、本発明とみなされるものの範囲を限定することを意図するものではない。
【0259】
実施例1:レンチウイルス粒子の作製
4つのT175フラスコに、5% DMEM培地中の27×106個のHEK293T細胞が播種された。トランスフェクション混合物は、表1に記載のプラスミドをSF培地(添加物なしのDMEM)に加えることによって、表2のように調製され、その後に、ポリエチレンイミン(PEI)が混合物に加えられ、ボルテックスによって混合され、そして室温(RT)で20分間インキュベートされた。トランスフェクション混合物はその後、T175フラスコ1つにつき25 mlの新鮮5% DMEMに加えられた(全量100 ml)。播種培地はその後、293T細胞から吸引除去され、そしてトランスフェクション培地が加えられた。2日間のインキュベート後、上清が採取され、そして25 mlが細胞に加え戻された。翌日、上清は採取され、0.45ミクロンのフィルターを通過させてろ過され、25,400 rpmで105分間4度で遠心分離され、そして450 μlのPBSに再懸濁された。
【0260】
【表1】
【0261】
【表2】
【0262】
レンチウイルス粒子の力価決定のため、293T細胞は1×105細胞/ウェルの濃度で12ウェルプレートに播種された。翌日、細胞は計数され、そして上述の混合物を用いて形質導入された。自己プロセシングペプチドである2Aのパーセントに関して解析された上清の量は、図5Aに示されるように以下を含む:200 μl、100 μl、50 μl、20 μl、10 μl、および5 μl。2Aペプチドのパーセントに関して解析された、濃縮された上清の量は、図5Bに示されるように以下を含む:1 μl、0.5 μl、0.2 μl、0.1 μl、0.05 μl、および0.02 μl。
【0263】
レンチウイルス粒子力価の形質導入の3日後、細胞は、CD20-His、His-PE、CD19-FITC、および2Aのそれぞれを用いて30分間染色された。細胞はその後、作製されたレンチウイルスの力価を測定するため、フローサイトメトリーによって解析された。上清試料においてレンチウイルスの力価は3.65×105 TU/mlであり(図5A)、かつ濃縮された試料においてレンチウイルスの力価は1.12×108 TU/mlであった(図5B)。
【0264】
実施例2:デュアルベクター系での細胞への形質導入
本実施例は、ヒト初代T細胞における、CD19とCD20とが別々のRACR系の発現を証明する。
【0265】
プロトコルの第1日に、初代CD3+ T細胞(およそ1500万個の細胞、Bloodworks社のドナー3251BW)が解凍され、そして前記細胞は、10% FBS、ペニシリン、ストレプトマイシン、および50 IU/ml huIL2を含むRPMI-1640培地(これ以降「RPMI完全培地」という)中に加えられた。
【0266】
第2日に、抗CD3・抗CD28であるThermofisher社のDynabeadsを用いて、T細胞はビーズ刺激を受けた(1:1)。
【0267】
第4日に、ビーズで活性化されたT細胞は、上述のレンチウイルス調製物を12.5の感染多重度(MOI)で形質導入された。形質導入されなかったT細胞のアリコート(MOI 0)は対照として残された。
【0268】
第6日に、形質導入されたT細胞は、刺激条件においてRPMI中でおよそ0.5×106細胞/mlを維持するよう、必要に応じて分割された。
【0269】
第7日に、細胞は0.5×106細胞/mlに希釈され、そして以下の2つの処理条件に分割された:
条件1:10 nMラパマイシン添加RPMI完全培地、
条件2:IL2含有RPMI完全培地(ラパマイシンなし)。
【0270】
第14日に、細胞はそれぞれの培地で50%に希釈された。
【0271】
第20日に、CD19 CARおよびCD20 CARの両方の発現に関して、T細胞は染色され、そしてフローサイトメトリーによって解析された(図6Aおよび6B)。フローサイトメトリー解析は、以下の3種類の試料からの、200K細胞/試料(およそ200 ul/試料)を含むものであった:
1) 0 MOI、
2) 12.5 MOI、
3) 12.5 MOI + ラパマイシン。
【0272】
デュアルベクター系を形質導入されたがラパマイシンで処理されなかったT細胞の場合(5.87%)と比較して、デュアルベクター系を形質導入されたT細胞は、ラパマイシンを加えた後にCD19 CARおよびCD20 CARの両方の発現が増大すること(42.6%)を証明している。
【0273】
染色法
フローサイトメトリー解析には以下のフルオロフォアが使用された:
a. CD19-FITC(表面抗原)、
b. CD20-PEコンジュゲート(表面抗原)、
c. DAPI(生/死)。
【0274】
細胞はスピンダウンされ、PBSで1回擬似的に洗浄され、そしてその後PBSで洗浄された。表面抗原の染色のため、細胞は、上述の染色試薬を含有するMACS/0.5% BSA(「FACS」)中に懸濁された。細胞は次にFACSで擬似的に洗浄され、その後FACSを用いて洗浄され、そして固定剤であるFluoroFix(Biolegend社)中に再懸濁された。フローサイトメトリー解析は、Cytoflex S(Beckman Coulter社)を使用し、複数のチャネル(紫、青、黄、赤)を用いて実施された。1種類での染色および蛍光マイナスワン(Fluorescence Minus One)対照(FMO対照)が、試料3からの細胞(12.5 MOI + ラパマイシン)を用いて実施された。
【0275】
実施例3:デュアルCAR T細胞は標的細胞を死滅させる
CD19/CD20デュアルCAR T細胞への曝露がCD19+および/またはCD20+標的細胞を死滅させる能力を評価するため、表3のように共培養プレートがセットアップされた。
【0276】
【表3】
【0277】
96ウェル未処理U底プレートにおいて10% FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシン含有RPMI培地中で、形質導入された200,000個のT細胞は40,000個の標的細胞と37度かつ5% CO2で共培養された。対照として、以下の標的細胞が単独で培養された:RAJI、RAJI 10KO、K562、およびK562 KI。細胞は、60時間にわたり共培養された。
【0278】
60時間後、標的細胞の消失についての解析のため、T細胞は染色され、そしてフローサイトメトリーによって解析された(図7および8)。
【0279】
フローサイトメトリー解析には以下のフルオロフォアが使用された:
a. 抗CD3-FITC(CAR T細胞)、
b. 抗CD19-APC(Raji細胞、およびCD19を発現しているK562 KI細胞)、
c. CD20-APC-Cy7(Raji細胞)。
【0280】
デュアルベクター系を形質導入されたT細胞は、CD19陽性/CD20陰性腫瘍細胞を根絶させた(図7C~7D)が、CD19陰性/CD20陰性腫瘍は、デュアルベクター系CARによる影響を受けないままであった(図7A~7B)。このデータは、デュアルベクター系を形質導入されたT細胞上に発現しているCD19 CARが機能的であり、かつ腫瘍の著しい消失を引き起こすことを支持するものである。
【0281】
デュアルベクター系を形質導入されたT細胞は、CD19陰性/CD20陽性腫瘍細胞を根絶させた(図8A~8B)。このデータは、デュアルベクター系を形質導入されたT細胞上に発現しているCD20 CARが機能的であり、かつ腫瘍の著しい消失を引き起こすことを支持するものである。
【0282】
サイトカイン解析は、INFγ(図9)、IL-2(図10)、TNFα(図11)、およびIL-13(図12)に関して実施された。サイトカイン産生は、デュアルベクター系を形質導入されたT細胞において、抗原での刺激に応答して増加した。標的細胞単独、および形質導入されなかった細胞(CARを有さない細胞)はサイトカインを産生しなかった。
【0283】
デュアルCAR T細胞の富化に対するラパマイシン選択の効果を評価するため、両方のCARの表面での発現に関して、上述のFITC-CD19抗原およびPE-CD20抗原を用いて、試料「12.5 MOI + ラパマイシン」(試料3)がフローサイトメトリーによって解析された。CD19 CARおよびCD20 CARの両方の発現は、刺激前に(図13A)、抗原を発現していないK562細胞との共培養後に(図13B)、およびCD19を発現しているK562細胞との共培養後に(図13C)解析された。ラパマイシン選択は、刺激前のT細胞(43.0%)と比較して、CD19 CARおよびCD20 CARの両方を発現するT細胞の富化(64.5%)を引き起こした。
【0284】
デュアルベクター系を形質導入されたT細胞の増大は、標的細胞との共培養への応答として解析された(図14)。デュアルベクター系を形質導入された1×106個のT細胞は一定に維持され、そして標的RAJI細胞とのさまざまな比で、全量3 ml/ウェルとして、6ウェル平底プレート中の10 nM ラパマイシン添加RPMI完全培地にプレーティングされた。細胞は、標的RAJI細胞単独か、10:1、5:1、または2:1の比(形質導入されたエフェクターT細胞:標的RAJI細胞)でプレーティングされた。細胞は7日間にわたり共培養され、そして続いて、両方のCARの表面での発現に関して、上述のFITC-CD19抗原およびPE-CD20抗原を用いてフローサイトメトリーによって解析された。細胞の計数はviaCellを用いて実施された。デュアルベクター系を形質導入されたT細胞は、表面抗原であるCD19およびCD20を含む標的腫瘍細胞の存在に応答して増大することが示された(図14)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
2023551220000001.app
【国際調査報告】