(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】分離膜用多孔性基材及びそれを含む電気化学素子用分離膜
(51)【国際特許分類】
H01M 50/417 20210101AFI20231130BHJP
H01M 50/491 20210101ALI20231130BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20231130BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20231130BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20231130BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20231130BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20231130BHJP
【FI】
H01M50/417
H01M50/491
H01M50/489
H01M50/451
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/446
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531083
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-05-23
(86)【国際出願番号】 KR2022006519
(87)【国際公開番号】W WO2022235126
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2021-0059551
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジ-ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ジュン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ドン-ウク・スン
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE04
5H021EE21
5H021EE32
5H021HH01
5H021HH02
5H021HH03
5H021HH04
(57)【要約】
本発明は分離膜用多孔性基材に関するものである。本発明に係る多孔性基材は、気孔のサイズが小さく均一であるため、物理的強度及び耐久性に優れ、高い絶縁破壊電圧を確保することができるので、短絡発生率が低い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離膜用多孔性基材であり、
前記多孔性基材はポリオレフィン系高分子樹脂を含み、前記高分子樹脂はポリエチレン及び/またはポリプロピレンを含み、前記基材は内部に複数の気孔を含む多孔性特性を有し、
その気孔度が30vol%~60vol%であり、
前記気孔の分布は、気孔サイズ分布(pore size distribution)の分布を通じて測定されたガウス分布の半値幅(FWHM)の値が4.0nm以下のものである分離膜用多孔性基材。
【請求項2】
前記気孔の分布は、半値幅の値が3.0nm以下のものである、請求項1に記載の分離膜用多孔性基材。
【請求項3】
前記気孔の分布は、半値幅の値が2.0nm以下でのものである、請求項1に記載の分離膜用多孔性基材。
【請求項4】
最大気孔サイズ(Mps)と平均気孔サイズ(mps)との差が30nm以下のものである、請求項1に記載の分離膜用多孔性基材。
【請求項5】
最大気孔サイズ(Mps)と平均気孔サイズ(mps)との差が20nm以下のものである、請求項1に記載の分離膜用多孔性基材。
【請求項6】
前記平均気孔サイズ(mps)は10nm~100nmのものである、請求項4に記載の分離膜用多孔性基材。
【請求項7】
前記平均気孔サイズ(mps)は20nm~30nmのものである、請求項4に記載の分離膜用多孔性基材。
【請求項8】
前記多孔性基材は、BETが20m
2/g~60m
2/gのものである、請求項1に記載の分離膜用多孔性基材。
【請求項9】
厚さが5μm~20μmである、請求項1に記載の分離膜用多孔性基材。
【請求項10】
前記高分子樹脂は、高分子樹脂100wt%に対してポリオレフィン系樹脂を90wt%以上含むものである、請求項1に記載の分離膜用多孔性基材。
【請求項11】
前記ポリオレフィン系樹脂は、PDI(poly dispersity index)の値が2.5~6.5のものである、請求項10に記載の分離膜用多孔性基材。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の分離膜用多孔性基材及び前記多孔性基材の表面の一側面または両面に形成された耐熱層を含み、
前記耐熱層はバインダー樹脂と無機物粒子とを含むものである電気化学素子用分離膜。
【請求項13】
負極、正極、及び前記負極と正極との間に介在した分離膜を含み、前記分離膜は請求項12に記載のものである電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年5月7日付で出願された韓国特許出願第10-2021-0059551号に基づく優先権を主張する。本発明は電気化学素子用分離膜に関するものであり、前記電気化学素子は一次電池であるか、或いは二次電池であり得、前記二次電池はリチウムイオン二次電池を含み得る。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン微細多孔膜は、リチウム電池用を始めとする電池用セパレータ、電解コンデンサ用隔膜、透湿防水衣料、各種濾過膜などの用途に幅広く用いられている。このようなポリオレフィン微細多孔膜を電池用セパレータとして用いる場合、その性能は電池の特性、生産性及び安全性と深く関わっている。そのため、特にリチウムイオン電池用セパレータには、優れた機械的特性及び透過性の他にも、外部回路の短絡、過充電などにより引き起こされる電池の発熱、発火、破裂事故などを防止するため、異常時の発熱により細孔が閉塞して電池反応を停止する性能(シャットダウン特性)や、高温になっても形状を維持して正極物質と負極物質が直接反応する危険な事態を防止する性能(耐熱収縮性)なども要求される。
【0003】
一般的に、ポリエチレンのみで形成される微細多孔膜はメルトダウン温度が低く、またポリプロピレンのみで形成される微細多孔膜はシャットダウン温度が高い。したがって、ポリエチレン及びポリプロピレンを主成分とする微細多孔膜で形成される電池用セパレータが提案されている。
【0004】
例えば、特許第3235669号公報では、耐熱収縮性及びシャットダウン特性に優れた電池用セパレータとして、低密度ポリエチレン、エチレン-ブテン共重合体またはエチレン-ヘキセン共重合体から選択されたポリマーで形成される少なくとも一つの第1層と、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンまたはポリプロピレンから選択されたポリマーで形成される少なくとも一つの第2層を有する電池用セパレータが開示されている。
【0005】
特許第3422496号公報では、シャットダウン特性に優れた電池用セパレータとして、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-メタアクリレート共重合体またはポリエチレンから選択されたポリマーで形成される少なくとも一つの第1層と、ポリエチレンまたはポリプロピレンから選択されたポリマーで形成される少なくとも一つの第2層を有する電池用セパレータが開示されている。
【0006】
特許第2883726号公報では、シャットダウン特性及びメルトダウン特性に優れた電池用セパレータとして、融点が150℃以上のポリプロピレン及び融点が100℃~140℃のポリエチレンを同時に圧出し、得られた積層フィルムを-20℃[ポリエチレンの融点(Tm0)-30]℃の温度で一軸延伸し、さらに同じ方向に(Tm0-30)℃~(Tm0-2)℃の温度で延伸することにより、多孔質化して形成される電池用セパレータが開示されている。
【0007】
特開平11-329390号公報では、シャットダウン特性及び強度に優れた電池セパレータとして、2層のポリプロピレン材質の微細多孔質強度層と、それらの間に介在する充填材含有のポリエチレン材質の遮断層で形成され、充填材含有のポリエチレン材質の遮断層が粒子延伸法により製造される微細多孔質膜で形成される電池セパレータが提案されている。
【0008】
このようなセパレータを電極と接合して電池を製造するが、前記接合は、電極とセパレータを積層した後、熱及び/または圧力を印加するラミネーション工程により行われる。このようなラミネーション工程で加わる熱と圧力条件が高いほど、電極との接着力が高くなる。近年、生産性を向上させるために工程速度を上げて分離膜に熱が加わる時間が短いため、接着力の確保のために圧力を増加させる方式で接着力を確保しているが、高圧により分離膜が変形する問題がある。特に、熱と圧力に弱い分離膜用多孔性基材が使用される場合、その厚さの減少が大きく現れ、気孔の損傷が大きくて電池の性能だけでなく、分離膜の絶縁破壊電圧が減少し、結果的にはハイポット(Hi-pot)不良及び低電圧不良をもたらしかねない。そこで、高圧ラミネーションの条件下でも変形が少ない分離膜用多孔性高分子フィルム基材の開発が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、厚さ変形率が低く絶縁破壊電圧が高い分離膜用多孔性基材及びそれを含む分離膜を提供することを目的とする。本発明の目的及び利点は、特許請求の範囲に記載された手段または方法及びその組み合わせにより実現できることが容易に分かるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は分離膜用多孔性基材に関するものであって、前記多孔性基材はポリエチレン及び/またはポリプロピレンを含み、前記基材は内部に複数の気孔を含む多孔性特性を有し、その気孔度が30vol%~60vol%であり、前記気孔の分布は、気孔サイズ分布(pore size distribution)の分布を通じて測定されたガウス分布の半値幅(FWHM)の値が4.0nm以下のものである。
【0011】
本発明の第2側面は、前記第1側面において、前記気孔の分布は半値幅の値が3.0nm以下のものである。
【0012】
本発明の第3側面は、前記第1または第2側面において、最大気孔サイズ(Mps)と平均気孔サイズ(mps)との差が30nmのものである。
【0013】
本発明の第4側面は、前記第1~第3側面のうちのいずれか一つにおいて、最大気孔サイズ(Mps)と平均気孔サイズ(mps)との差が20nmのものである。
【0014】
本発明の第5側面は、前記第3側面において、前記平均気孔サイズ(mps)は10nm~100nmのものである。
【0015】
本発明の第6側面は、前記第3側面において、前記平均気孔サイズ(mps)は20nm~30nmのものである。
【0016】
本発明の第7側面は、前記第1~第6側面のうちのいずれか一つにおいて、前記多孔性基材は、BETが20m2/g~60m2/gのものである。
【0017】
本発明の第8側面は、前記第1~第7側面のうちのいずれか一つにおいて、前記多孔性基材は、厚さが5μm~20μmのものである。
【0018】
本発明の第9側面は、前記第1~第8側面のうちのいずれか一つにおいて、前記高分子樹脂は、高分子樹脂100wt%に対してポリオレフィン系樹脂を90wt%以上含むものである。
【0019】
本発明の第10側面は、前記第1~第9側面のうちのいずれか一つにおいて、前記ポリオレフィン系樹脂は、PDI(poly dispersity index)の値が2.5~6.5のものである。
【0020】
また、本発明の第10側面は電気化学素子用分離膜に関するものであって、前記分離膜は、第1~第9側面のうちのいずれか一つの側面に係る分離膜用多孔性基材及び前記多孔性基材の表面の一側面または両面に形成された耐熱層を含み、前記耐熱層はバインダー樹脂と無機物粒子とを含むものである。
【0021】
また、本発明の第11側面は電気化学素子に関するものであって、負極、正極、及び前記負極と正極との間に介在した分離膜を含み、前記分離膜は第10側面に係るものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る多孔性基材は、気孔のサイズが小さく均一な気孔分布を有するものであって、分離膜に適用されたとき、分離膜と電極とを貼り合わせてラミネーション工程に投入される場合、厚さ変形が少なく高い絶縁破壊電圧を示す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本明細書に添付される図面は、本発明の好ましい実施例を例示したものであり、前述した発明の内容とともに本発明の技術思想をよりよく理解させる役割を果たすものであるため、本発明はそのような図面に記載された事項のみに限定されて解釈されるわけではない。一方、本明細書に記載された図面における要素の形状、大きさ、縮尺または比率などは、より明確な説明を強調するために誇張されることがある。
【0024】
【
図1】比較例の多孔性基材の断面で、圧縮による変形状態を図式化して示したものである。
【
図2】実施例の多孔性基材の断面で、圧縮による変形状態を図式化して示したものである。
【
図3】気孔サイズの半値幅を確認するための気孔のガウス分布を例示的に示したものである。
【
図4】ポロメーターを通じて得ることができる乾燥試料曲線、湿潤試料曲線、及び1/2乾燥試料曲線のグラフを例示的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。それに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語または単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解釈されるべきではなく、発明者は、その自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に基づいて、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈されなければならない。したがって、本明細書に記載された実施例と図面に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないので、本出願の時点においてこれらを代替できる様々な均等物と変形例があり得るということを理解しなければならない。
【0026】
本願明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0027】
また、本願明細書全体で使用される用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示される際、その数値でまたはその数値に近い意味で使用され、本願の理解を助けるために正確な数値や絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防ぐために使用される。
【0028】
本願明細書全体において、「A及び/またはB」の記載は、「AまたはBまたはその両方」を意味する。
【0029】
本発明は、電気化学素子用分離膜に適用できる多孔性基材に関するものである。本発明において、前記電気化学素子は、電気化学的反応により化学的エネルギーを電気的エネルギーに変換する装置であって、一次電池と二次電池(Secondary Battery)を含む概念であり、前記二次電池は充電と放電が可能なものであって、リチウムイオン電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-水素電池などを包括する概念である。
【0030】
分離膜
本願明細書において分離膜は、電気化学素子で負極と正極との間の電気的接触を遮断しながらイオンを通過させるイオン伝導性バリア(porous ion-conducting barrier)の役割を果たすものである。その内部には複数の気孔が形成されており、前記気孔同士はお互いに連結された構造となっているため、分離膜の一側面から他側面へと気体または液体が通過可能であることが好ましい。
【0031】
本発明に係る分離膜は、複数の気孔を含む高分子素材の多孔性基材を含む。また、前記分離膜は、必要に応じて前記多孔性基材の少なくとも一側の表面上に素材や機能の側面から他の層をさらに配置することができる。本発明の一実施態様において、前記分離膜は前記多孔性基材及び耐熱層を含んで構成され得、例えば、前記耐熱層は前記多孔性基材の少なくとも一側の表面に形成され得る。前記耐熱層は、無機物粒子及び/またはバインダー樹脂を含むことができる。
【0032】
本発明の一実施態様において、前記耐熱層の中で無機物粒子は、バインダー樹脂により結着されている層状構造を有することができ、無機物粒子同士の間に形成された空間(インタースティシャル・ボリューム、interstitial volume)から起因する多孔性構造を表すことができる。このような多孔性構造により分離膜の電解液保持力が向上する効果がある。一方、本発明の一実施態様において、前記分離膜が耐熱層を含む場合、前記分離膜は、全体の総体積100vol%に対して耐熱層が3vol%~40vol%であり得、これと同時にまたは独立に、分離膜全体の総厚さ100%に対して耐熱層が5%~50%であり得る。
【0033】
多孔性基材
本発明の一実施態様において、前記多孔性基材は、高分子樹脂を含み複数の気孔を有する多孔性シート(sheet)の形態を有することができる。前記気孔は開放型気孔を含み、前記開放型気孔同士はお互いに連結された構造となっているため、多孔性基材の一側面から他側面へと気体または液体が通過可能である。本発明の一実施態様において、前記多孔性基材は、電池の出力及びサイクル特性の側面から、2000sec/100ml以下の通気度及び30vol%~60vol%の気孔度を有することが好ましい。
【0034】
本発明において、前記通気度(sec/100ml)は、100mlの空気が一定の空気圧力の下で1平方インチサイズの多孔性基材または分離膜のような試料を通過するのにかかる時間(秒)を意味する。本発明の一実施態様において、前記通気度は、本技術分野の標準規定に従って測定することができる。例えば、前記通気度は、ASTM D726-58またはASTM D726-94に従って公知されたガーレー透気度試験機(Gurley Densometer)を使用して測定することができ、例えば、0.304(kPa)の圧力の空気や1.215kN/m2の水の圧力下で1平方インチ(または6.54cm2)の試料を通過する100mlの空気に対する秒単位の時間であり得る。別の実施態様によれば、前記通気度は、日本産業標準(JIS-P8117)のガーレー測定法に従い、常温で4.8インチH2Oの一定の圧力下で、100mlの空気が1平方インチの試料を通過するのにかかる時間を測定して時間(秒)で表すことができる。本発明の一実態様において、前記通気度は、例えば前記標準規定に従ってAsahi seiko社のEG01-55-1MR装置を使用して測定することができる。
【0035】
前記気孔度(porosity)とは、全体積に対して気孔が占める体積の比率を意味し、その単位としてvol%を使用し、空隙率、多孔度などの用語と相互に交換して使用することができる。本発明において、前記気孔度の測定は特に限定されるものではなく、本技術分野における公知の方法を適用することができる。例えば、窒素気体を使用したBET(Brunauer-Emmett-Teller)測定法、ウォーターイントルージョンポロシメータ(water intrusion porosimeter)法、毛細管流動気孔測定法(capillary flow porometer)、または水銀浸透法(Hg porosimeter)により測定することができる。または、本発明の一実施態様において、得られた多孔性基材の密度(見掛け密度)と多孔性基材に含まれる材料の組成比と各成分の密度から多孔性基材の真密度を計算し、見掛け密度(apparent density)と真密度(net density)との差から多孔性基材の気孔度を計算することができる。例えば、下記[数式1]により気孔度を算出することができる。
【0036】
[数式1]
気孔度(vol%)={1-(見掛け密度/真密度)}×100
【0037】
一方、前記式において見掛け密度は下記[数式2]から算出することができる。
【0038】
[数式2]
見掛け密度(g/cm3)={多孔性基材の重量[g]/(多孔性基材の厚さ[cm]×多孔性基材の面積[cm2])}
【0039】
本発明において、前記多孔性基材は気孔のサイズが小さく均一なものであって、電気化学素子用分離膜に適用される場合、優れた形態安定性及び耐電圧特性を発揮することができる。
【0040】
本発明において、前記多孔性基材は、最大気孔のサイズ(Mps)が80nm以下であり、最大気孔(Mps)のサイズと平均気孔(mps)のサイズとの差が30nm以下、好ましくは20nm以下であることが好ましい。また、前記平均気孔のサイズ(mps)は、10nm~100nmの範囲を有することが好ましい。
【0041】
本発明の一実施態様において、前記気孔のサイズは、毛細管流動気孔測定法(Capillary flow Porometer)を用いて測定された気孔サイズ分布(pore size distribution)から算出することができる。前記毛細管流動気孔測定法(Capillary flow Porometer)は、Porous Materials Inc.社のポロメーター及びガルウィック溶液(galwick solution)を用いて測定することができ、下記に記載された測定方法を参照することができる。
【0042】
具体例として、乾燥状態の多孔性基材(乾燥試料)と湿潤状態の多孔性基材(湿潤試料)それぞれに対してポロメーターを用いて空気圧と流量との関係を測定し、
図4に示すように乾燥試料の通気曲線(乾燥曲線、dry curve)及び湿潤試料の通気曲線(wet曲線)を得て、そこから気孔のサイズ及び分布を確認することができる。
【0043】
前記毛細管流動気孔測定法は、表面張力の低い湿潤液(wetting solution)を用いて多孔性基材を浸潤(wetting)させた後、気体を用いて加圧して多孔性基材の気孔を充填している前記湿潤液を追い出すのに必要な圧力を通して気孔サイズを測定することである。例えば、測定対象の多孔性基材をガルウィック溶液(galwick solution)のような湿潤液(wetting solution)で湿らせた後、多孔性基材の一側面の空気圧を徐々に増加させる。このとき、加えた空気圧が気孔内に存在する湿潤液の毛細管引力よりも大きくなると、気孔を塞いでいる湿潤液が追い出され、追い出された瞬間の圧力と流量を通じて気孔のサイズ及び分布を測定することができる。本発明の一実施態様において、前記空気に代わって非反応性ガスを使用することができる。
【0044】
本発明の具体的な一実施態様において、前記測定は、測定圧力0~3500MPaの範囲で測定することができ、前記範囲内で最小空気圧は30psi以上であり、最大空気圧は500psi以下であり得る。
【0045】
前記最小空気圧はバブルポイント圧力を意味し得る。前記バブルポイントは、毛細管流動気孔測定法(Capillary flow Porometer)で圧力曲線が描かれる開始点の圧力を意味するものであって、多孔性基材の気孔直径のうちの最大気孔サイズを反映することができる。すなわち、分離膜基材の気孔内に充填された湿潤液は、空気圧を徐々に上げると、直径の大きい気孔の順に圧力により追い出されて移動するようになり、それに伴い空気流量が徐々に増加し最終的に試料が乾燥する。ここで、湿潤液が移動する開始点の圧力をバブルポイント圧力という。
【0046】
一方、前記最大空気圧は、最終的に試料が乾燥状態になったときの圧力であり得、最小気孔サイズを反映することができる。或いは、前記最大空気圧は、前記湿潤液を用いて測定される毛細管流動気孔測定法(Capillary flow Porometer)の圧力曲線(湿潤曲線)が乾燥試料の通気曲線と交差する地点の圧力を意味し得る。前記「乾燥試料の通気曲線(dry curve)」は、湿潤液で浸潤されていない乾燥状態の分離膜基材を空気や非反応性気体などを用いて加圧して気孔を充填している既存の気体を追い出すのに必要な圧力分布を意味する。
【0047】
図4は、毛細管流動気孔測定法(capillary flow porometer)を用いた湿潤試料の圧力曲線と乾燥試料の圧力曲線を示すものであって、前記湿潤試料の圧力曲線と乾燥試料の圧力曲線とが交差する部分を最大空気圧とすることができる。
【0048】
一方、本発明において、直径Dの気孔内に圧力Pの空気が侵入する条件は、湿潤液の表面張力をγ、湿潤液の接触角をθとし、下記[式3]に示すウォッシュバーン(Washburn)の式で表現することができる。
P=(4γcosθ)/D……(式3)
【0049】
したがって、湿潤液が気孔から圧出されるときの圧力を測定することにより、気孔の直径を算出することができる。
【0050】
一方、圧力Pjでの湿潤試料の空気流量をFw、j、乾燥試料の空気流量をFd、jとするとき、累積フィルタ流量(CFF:Cumulative Filter Flow、単位:%)及び気孔径分布(PSF:Pore Size Frequency、単位:%)は、それぞれ以下の式4及び式5により算出される。
CFF=[(Fw、j/Fd、j)×100]……(式4)
PSF=(CFF)j+1-(CFF)j……(式5)
【0051】
前記式3~式5を組み合わせることにより、乾燥状態及び湿潤状態での空気流量の圧力変化を基に、気孔の直径Dと細孔径分布PSFとの関係を示す気孔サイズ分布曲線を求めることができる。こうした気孔径分布曲線の一例を
図3に示す。
図3に示す気孔径分布曲線から気孔に関する様々な物性値を得ることができる。
【0052】
本発明の一実施態様において、バブルポイント(bubble point)は気孔の最大直径を表すことができ、湿潤試料曲線と乾燥試料曲線とが交差する点は、気孔の最小直径を表すことができる。また、乾燥試料の通気曲線の値の1/2値に該当する値である1/2乾燥試料の通気曲線と湿潤試料曲線とが交差する点は、気孔直径の平均値を表すことができる(
図4参照)。
【0053】
また、本発明において、前記多孔性基材は、前記気孔サイズ分布図(Pore size distribution)を通じて測定された正規分布(ガウス分布)による気孔直径分布(
図3参照)において、半値幅(FWHM、Full width at half maximum peak height)が4.0nm以下、または3.0nm以下、2.0nm以下、または1.5nm以下のものである。好ましくは3.0nm以下であり得る。前記半値幅は、多孔性基材内部に形成された気孔をサイズに応じて分類して示した気孔サイズ分布に対する正規分布において、y軸最大値(気孔サイズのうちの最頻値)の半分となるx軸上の2地点の大きさの差と定義することができる。前記分布において、x軸は気孔のサイズ(直径)を表し、y軸はx軸上の気孔のサイズに該当する気孔の数の頻度(気孔の数または気孔の数の比率%など)を表す。本発明において、前記x軸の単位はnmまたはμmで表すことができる。
図3を参照すると、前記半値幅(FWHM)は、y軸最頻値(T)の1/2(1/2T)に該当するx軸上の2地点であるX
2とX
1の差で表すことができる。前記差は絶対値で表すことができる。一方、前記正規分布は、最大値を基準として対称及び非対称、そして正規以外の任意の分布を表すことができる。
【0054】
本発明の好ましい一実施態様において、前記半値幅は、最大直径を有する気孔を除く残りの気孔の分布から決定することができる。一方、本発明において、前記気孔の形状は円形、楕円形または無定形であり、その断面は閉曲線であり得る。前記気孔の直径は、前記閉曲線内の任意の2点間の距離のうちの最長の長さを意味する。前記範囲を満足する場合、多孔性基材は気孔のサイズが小さく、気孔のサイズの均一度が高い。こうした特徴を有する多孔性基材は、形態安定性が高く、高い絶縁破壊電圧を表すことができる。
【0055】
一方、前記多孔性基材は、BET表面積が20m2/g~60m2/gの範囲を有することが好ましい。前記BET表面積が大きいほど気孔率が高く、気孔のサイズが小さい。また、同じ気孔率では気孔のサイズが小さいほどBET表面積が大きい。本発明では、BET(Brunauer、Emmett及びTeller)モデルの吸着式を用いてBET表面積を測定することができ、-196℃の窒素の沸点温度で吸着等温曲線を1bar(1気圧)まで測定したとき、測定されたN2吸着等温線から吸着量を測定して計算することができる。
【0056】
本発明において、前記多孔性基材は、電気化学素子の薄膜化及び高エネルギー密度化の側面から、その厚さが5μm~20μmであり得る。多孔性基材の厚さが前記数値範囲に満たない場合は、伝導性バリアの機能が十分ではなく、反面、前記範囲を過度に超える場合(すなわち、厚すぎると)分離膜の抵抗が過度に増加する可能性がある。
【0057】
一方、本発明の一実施態様において、前記高分子樹脂は、シャットダウン機能を付与する観点から融点200℃未満の熱可塑性樹脂を含むことができ、好ましくはポリオレフィン系樹脂のうちの1種以上を含むことができる。シャットダウン機能とは、電池温度が高くなった場合に、高分子樹脂が溶けて多孔性基材の気孔を閉塞することにより、正極と負極との間のイオンの移動を遮断して、電池の熱暴走を防止する機能のことをいう。
【0058】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどを例に挙げることができ、そのうちの1種または2種以上の混合物を含むことができる。具体例として、前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリペンテンの中から選択される2つ以上を含むことができる。別の例としては、前記ポリオレフィン系樹脂はポリエチレン及び/またはポリプロピレンであり得る。
【0059】
本発明の具体的な一実施態様において、前記多孔性基材はポリエチレンを含み、必要に応じてポリプロピレンを含むことができる。このときポリプロピレンの含有量は基材100wt%に対して0wt%~5wt%のものである。例えば、ポリプロピレンの含有量は5wt%未満であり得る。一方、本発明の一実施態様において、前記ポリエチレンは、後述する圧縮率範囲を具現化する側面から、重量平均分子量(Mw)が300,000g/mol~1,800,000g/molであり得、好ましくは300,000g/mol~1,500,000g/mol、または300,000mol~1,000,000mol、または300,000mol~500,000molであり得る。
【0060】
一方、本発明において、前記ポリオレフィン系樹脂は、前記高分子材料100wt%のうち90wt%以上または95wt%以上含まれることが好ましい。
【0061】
前記ポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンからなる群から選択された1種または2種以上の混合物を含むことができる。特に、前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン及び/またはポリプロピレンであり得る。
【0062】
一方、本発明の具体的な一実施態様において、前記高分子樹脂は、多分散指数(poly dispersity index、PDI)の値が2.5~6.5の範囲を満足することが好ましい。一実施態様において、2種以上の高分子樹脂が混合される場合は、混合された高分子樹脂が前記PDIを満足することができる。より好ましい一実施態様において、高分子樹脂は、前記PDIを満足する範囲内で、高分子材料100wt%に対して単一成分であるいずれか一つの種類の高分子樹脂の含有量が50wt%超過、70wt%以上または90wt%以上含まれることが好ましい。例えば、前記高分子樹脂は単一成分のみからなり得る。前記単一成分は、高分子樹脂の化学構造(特に、繰り返し単位)が同じであり、前記PDIが2.5~6.5の範囲を満足することを意味する。
【0063】
本発明の具体的な一実施態様において、前記高分子材料100wt%に対してPDI2.5~6.5のポリエチレンを90wt%以上含むか、或いはこれらのみから構成することができる。
【0064】
前記のようにPDI数値を満足するか、或いはそれと共にまたは独立に高分子樹脂の含有量範囲を満足する場合、高分子基材の中での気孔のサイズと分布の側面から均一度が改善されるのに役立つ。一方、前記多分散指数は、数平均分子量(Mn)/重量平均分子量(Mw)の比率から求めることができる。
【0065】
一方、本願発明において、前記重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography、PL GPC220、Agilent Technologies)で測定することができ、測定条件は以下のように設定することができる。
-カラム:PL Olexis(Polymer Laboratories社)
-溶媒:TCB(トリクロロベンゼン(Trichlorobenzene))
-流速:1.0ml/min
-試料濃度:1.0mg/ml
-注入量:200μl
-カラム温度:160℃
-検出器(Detector):Agilent High Temperature RI detector
-標準(Standard):ポリスチレン(Polystyrene)(3次関数で補正)
【0066】
別の実施態様において、前記高分子材料は、メルトインデックス(Melting Index)(MI)が0.02g/10min~1.0g/10minの範囲を有することができる。前記MIは、190℃で21.6kgの荷重が印加される条件を基準とするものである。
【0067】
本発明の一実施態様において、前記多孔性基材はポリプロピレンを含むことができるが、多孔性基材の中でポリプロピレンの含有量は5wt%以下、例えば5wt%未満に制御することが好ましい。ポリプロピレンの含有量が高いほど、高分子の結晶化度が減少し、これにより気孔度が高く貫通強度が低くても圧縮率や永久変形率が低下せず、耐電圧特性であるハイポット(Hi-Pot)の不良率が低く維持できる。しかし、ポリプロピレンの含有量の前記範囲を超える場合は、湿式法により多孔性基材を製造する際に、化学的に不安定で気孔がうまく形成されないので、多孔性特性の発達に不利であることから、その含有量は前記範囲内で適切に調節することが好ましい。
【0068】
また、ポリプロピレン含有量が高い場合、気孔がうまく発達した多孔性基材を得るためには、湿式法よりも乾式法で製造することが容易であるが、乾式製造方法を適用する場合は、湿式製造方法を適用した場合に比べて多孔性基材の厚さを薄く制御することが難しい。
【0069】
一方、本発明の具体的な一実施態様において、前記多孔性基材は、必要に応じてポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレンといった高分子樹脂の中の少なくともいずれか一つをさらに含むことができる。
【0070】
本発明の一実施態様において、前記厚さ範囲を満足する高分子素材の多孔性基材は、ポリエチレンを適用して湿式製造方法により製造することができる。
【0071】
一方、本発明の具体的な一実施態様において、前記多孔性基材は、後述する方式により製造された多孔性高分子フィルムであり得、1枚の単層フィルムであるか、或いは2枚以上が積層されて形成された多層フィルムであり得る。
【0072】
本発明において、前記数値を満足する分離膜は、電池の耐電圧特性が改善されて、絶縁破壊電圧が高くなり、高電圧の条件でも短絡発生率(Hi-Pot不良率)が低減される。
【0073】
一方、本発明において、絶縁破壊電圧は絶縁体が耐えられる最高電圧であって、絶縁破壊は絶縁体に電圧を印加する場合、ある値以上の電圧になると絶縁物が破壊されて絶縁性能を失うことを意味する。
【0074】
本発明の一実施態様において、前記耐電圧特性は、分離膜の絶縁破壊電圧を測定する方法で確認することができ、これは2つの導体の間に絶縁体である分離膜を配置し、電圧を印加して絶縁破壊が起こる電圧を測定する方式で確認することができる。
【0075】
このような絶縁破壊電圧は、例えば、AC/DC/IR Hi-Potテスターで測定することができる。例えば、ステンレススチール素材のメッシュと多孔性基材を90℃、4MPa、1secの条件でホットプレス接着させた後、ここにDC電流を0.5mA、昇圧100V/s(voltage 3kV、ramp up time 3s)に設定する。実験を開始すると、電圧が上昇して短絡が生じたときに測定が完了し、そのときの電圧を絶縁破壊電圧と定義する。
【0076】
また、本発明の一実施態様において、短絡発生率(Hi-Pot不良率)の評価は、テストされる全試験片数のうちワイブル分布(Weibull)分析を通じて低い絶縁破壊電圧を示す下位1%の試験片が示す電圧を確認する方法で測定することができる。
【0077】
多孔性基材の製造方法
本発明の一実施態様において、前記多孔性基材は、高分子フィルムを製造する方法、好ましくは湿式製造方法により製造することができる。例えば、前記湿式製造方法は、(S1)混合物の準備ステップ、(S2)混合物の圧出及び圧出シートの形成ステップ、(S3)圧出シートの延伸ステップ、(S4)気孔形成剤の除去ステップ、(S5)圧出シートの熱固定ステップを含む。
【0078】
前記(S1)ステップでは、分離膜の最終物性に応じて適切に高分子樹脂の種類を選択し、このように選択された高分子樹脂を気孔形成剤と混合する。前記高分子樹脂は、多孔性基材の高分子樹脂について説明した前述の内容を参照することができる。例えば、前記高分子樹脂は、ポリオレフィン系高分子樹脂であり得る。前記ポリオレフィン系高分子樹脂の例としては、ポリエチレン、例えば高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンまたは超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどから選択される1種、またはこれらのうちの2種以上の組合せ物を含むことができる。
【0079】
前記気孔形成剤は、高分子内に分散され、圧出、延伸などを経て製造された基材の不均一性(heterogeneity)を示し、後に基材から除去される物質である。したがって、基材の中で気孔形成剤が位置していた部分は基材の気孔の形態で残る。前記気孔形成剤は、圧出過程において好ましくは液体である物質であるが、固体状態を維持する物質を使用することもできる。前記気孔形成剤は、液体パラフィン、パラフィンオイル、鉱油、またはパラフィンワックスなどといった脂肪族炭化水素系溶媒;大豆油、ヒマワリ油、菜種油、パーム油、ヤシ油、ココナッツ油、トウモロコシ油、グレープシードオイル、綿実油などといった植物性油;または、ジアルキルフタレートなどといった可塑剤であり得る。特に、前記可塑剤は、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(di-2-ethylhexyl phthalate、DOP)、ジ-ブチル-フタレート(di-butyl-phthalate、DBP)、ジ-イソノニルフタレート(di-isononyl phthalate、DINP)、ジ-イソデシルフタレート(di-isodecyl phthalate、DIDP)、ブチルベンジルフタレート(butyl benzyl phthalate、BBP)などであり得る。これらの中でも特に液体パラフィン(LP、「液状パラフィン」ともいう)が好ましい。
【0080】
また、分離膜の製造時における気孔形成剤の含有量は、希望する水準の気孔度を具現化するために適切に調節することができる。通気度を向上させる側面を考慮すると、気孔形成剤の含有量が高いことが好ましいが、過量に含有する場合、最終的に生成された基材の強度に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、気孔形成剤の含有量は、高分子樹脂と気孔形成剤との合計100wt%に対して1wt%~80wt%であり得、必要に応じて前記範囲内で70wt%以下、60wt%以下、または50wt%以下に調節することができ、1wt%以上、20wt%以上、40wt%以上に調節することができる。一方、本発明の具体的な一実施態様において、多孔性基材の適切な気孔度を具現化する側面から、例えば約45%以下の気孔度を具現化するために、前記気孔形成剤は、高分子樹脂と気孔形成剤との総量に対して1wt%~60wt%の範囲で含むことができる。
【0081】
次に、前記ステップで準備した混合物は、圧出機を通じて圧出されて圧出シートを得る。前記圧出機は特に制限されず、当業界で通常使用される圧出機(extruder)、例えば非制限的にT-ダイ(T-die)または円形管-ダイ(tubular die)が取り付けられた圧出機であり得る。圧出工程は通常の圧出温度で行うことができるが、使用された高分子樹脂の溶融点より10℃~100℃高い温度条件で行うことが好ましい。圧出工程が前記範囲を過度に超える場合は、高分子樹脂が熱分解(thermal degradation)されて、製膜成形が困難となり、製造された基材の物性が低下するため好ましくない。このような圧出工程により圧出シートを得ることができる。
【0082】
その後、前記圧出シートを延伸工程に投入する。このような延伸工程は、当業界で通常使用される延伸機を通じて実施される。延伸機は、逐次二軸延伸機などを使用することができるが、特にこれに限定されるものではない。このように圧出シートの延伸により多孔性基材の機械的強度を高めることができる。延伸工程は、縦方向(machine direction(MD)、機械方向、長手方向)及び/または横方向(transverse direction(TD)、垂直方向)で実施される。これらの全てまたはこれらのうちの一つの方向への延伸工程により、該当する延伸方向への引張強度が高くなる。必要に応じて、本発明の分離膜は、延伸工程において縦方向(MD)延伸及び/または横方向(TD)延伸を単独で(例えば、一軸延伸)、同時にまたは順次に(例えば、二軸延伸)実行することができる。一方、本発明の一実施態様において、前記延伸は、膜の温度を100℃~130℃、好ましくは110℃~125℃に制御することができる。例えば、前記延伸時の膜の温度を115℃~121℃の範囲に制御することができる。前記温度範囲で延伸工程を行う場合、気孔が小さく均一な膜を得ることができる。
【0083】
次に、前記で得られた圧出シートから気孔形成剤を除去する。気孔形成剤は、溶媒を使用して抽出及び乾燥させることにより除去される。また、このような除去により気孔形成剤が占めていた空間が気孔として形成するようになる。前記気孔形成剤の抽出に使用可能な溶媒は、気孔形成剤を抽出できるいかなる溶媒も使用可能であるが、好ましくは抽出効率が高く乾燥が速いメチルエチルケトン、メチレンクロライド(methylene chloride)、ヘキサンなどが適切である。好ましくは、溶媒は、メチレンクロライド、例えばメチレンジクロライド(methylene dichloride、MC)であり得る。抽出方法は、浸積(immersion)方法、溶媒スプレー(solvent spray)方法、超音波(ultrasonic)方法など、一般的なあらゆる溶媒抽出方法をそれぞれ或いは組み合わせで使用することができる。
【0084】
前記気孔形成剤の抽出後に基材を熱固定するステップを行い、これにより最終的に目的とする物理的特性、空隙率及び通気度を有する分離膜を得ることになる。前記熱固定ステップは、熱固定に必要な適正温度を印加できる加熱装置、例えばオーブンなどを用いて行うことができる。特に、先に乾燥した膜は、最後に残留する応力を除去することにより最終膜の収縮率を減少させるために熱固定を経る。熱固定は、膜を固定し、熱を加えることで収縮しようとする膜を強制的に把持して残留応力を除去することである。熱固定の温度は高い方が収縮率を下げるのには有利であるが、高すぎる場合、膜が部分的に溶けてしまうため、形成された気孔が閉塞してしまい透過性が低下する。好ましい熱固定の温度は、膜の結晶部分の約10~30wt%が溶ける温度範囲で選択されるのがよい。前記熱固定温度を前記膜の結晶部分の約10wt%が溶ける温度よりも低い温度に選択すると、膜中のポリエチレン分子の再配向(reorientation)が不十分なので膜の残留応力を除去する効果がなく、膜の結晶部分の約30wt%が溶ける温度よりも高い温度に選択されると、部分的溶融により気孔が閉塞してしまい透過度が低下する。
【0085】
本発明の一実施態様において、前記多孔性基材は単一層であり得る。または、前記多孔性基材は、2層以上のフィルムがラミネートされた積層フィルムであり得る。このとき、前記積層フィルムに含まれるフィルムは、少なくともいずれか一つが前述した方法により形成されたものであり得る。
【0086】
耐熱層
本発明の一実施態様において、前記分離膜は、前記多孔性基材の少なくとも一側の表面に形成された耐熱層を含むことができる。前記耐熱層は、粘着性バインダー樹脂及び無機物粒子を含み、内部に多数の微細孔を有し、これらの微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体或いは液体が通過可能となった多孔質層の構造的特徴を有することができる。本発明の一実施態様において、前記耐熱層の中でバインダー樹脂と前記無機物粒子は、重量比で1:99~30:70の比率で含むことができる。前記比率は前記範囲内で適切に調節することができ、例えば、バインダー樹脂と無機物粒子との合計100wt%、バインダー樹脂が1wt%以上、5wt%以上、または10wt%以上であり得、無機物粒子が80wt%以上、85wt%以上、90wt%以上、または95wt%以上であり得る。本発明において、前記耐熱層はイオン透過性という観点から多孔化された構造であることが好ましい。
【0087】
前記耐熱層は、無機物粒子がバインダー樹脂を媒介として結合されて形成され得、前記無機物粒子間のインタースティシャル・ボリューム(interstitial volume)により気孔が形成され得る。前記インタースティシャル・ボリュームは、無機物粒子の充填構造(closed packed or densely packed)で実質的に面接触する無機物粒子により限定される空間である。
【0088】
本発明の一実施態様において、前記耐熱層の気孔度は30vol%~70vol%のものであり、前記範囲内で気孔度は35vol%以上、または40vol%以上であり得、これと同時にまたはそれぞれ独立に65vol%以下、または60vol%であり得る。例えば、前記気孔度は40vol%~60vol%であり得る。気孔度が70vol%以下であると、電極と接着させるプレス工程に耐えられる力学特性を確保することができ、また表面開口率が高くなりすぎないので、接着力を確保するのに適している。一方、前記気孔度が30vol%以上であると、イオン透過性の観点で有利である。
【0089】
一方、本発明において、気孔度は、窒素などの吸着気体を用いてBEL JAPAN社のBELSORP(BET装置)を用いて測定するか、或いは水銀圧入法(Mercury intrusion porosimetry)のような方法で測定することができる。または、本発明の一実施態様において、得られた電極(電極活物質層)の密度(見掛け密度)と電極(電極活物質層)に含まれる材料の組成比と各成分の密度から電極活物質層の真密度を計算し、見掛け密度(apparent density)と真密度(net density)との差から電極活物質層の気孔度を計算することができる。
【0090】
前記耐熱層の厚さは、多孔性基材の片面で1μm~6μmであり得る。前記範囲内で、必要に応じて耐熱層の厚さは2μm以上、または3μm以上とすることができる。前記数値範囲内で電極との接着力に優れ、その結果、電池のセル強度が増加する。一方、前記厚さが6μm以下である場合は、電池のサイクル特性及び抵抗特性の側面で有利である。この観点からは、前記厚さは4μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。
【0091】
本願発明において前記耐熱層に使用可能なバインダー樹脂の非制限的な例としては、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、ポリビニリデンフルオリド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリアリレート(polyarylate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)及びカルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)からなる群から選択されたいずれか一つの高分子樹脂またはこれらのうちの2種以上の混合物を挙げることができる。しかし、特にこれに限定されるものではない。
【0092】
本発明の具体的な一実施態様において、前記耐熱層に使用可能な前記無機物粒子は、電気化学的に安定さえしていれば特に制限されない。すなわち、本発明で使用できる無機物粒子は、適用される電気化学素子の作動電圧の範囲(例えば、Li/Li+を基準として0~5V)で酸化及び/または還元反応が起こらないものであれば、特に制限されない。
【0093】
前記無機物粒子の非制限的な例としては、BaTiO3、Pb(Zr、Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiyO3(PLZT、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3(PMN-PT)、ハフニア(HfO2)、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、Mg(OH)2、NiO、CaO、ZnO、ZrO2、SiO2、Y2O3、Al2O3、SiC、Al(OH)3、TiO2、アルミニウム過酸化物、亜鉛錫水酸化物(ZnSn(OH)6)、錫-亜鉛酸化物(Zn2SnO4、ZnSnO3)、三酸化アンチモン(Sb2O3)、四酸化アンチモン(Sb2O4)、五酸化アンチモン(Sb2O5)などを挙げることができ、これらのうちの一つまたは二つ以上を含むことができる。
【0094】
それとは独立に、または前記に例示した成分と共に、前記無機物粒子はリチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子を含むことができる。このようなリチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子の非制限的な例としては、リチウムホスフェート(Li3PO4)、リチウムチタンホスフェート(LixTiy(PO4)3、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LixAlyTiz(PO4)3、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、14Li2O-9Al2O3-38TiO2-39P2O5などといった(LiAlTiP)xOy系ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LixLayTiO3、0<x<2、0<y<3)、Li3.25Ge0.25P0.75S4などといったリチウムゲルマニウムチオホスフェート(LixGeyPzSw、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、Li3Nなどといったリチウムナイトライド(LixNy、0<x<4、0<y<2)、Li3PO4-Li2S-SiS2などといったSiS2系ガラス(LixSiySz、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、LiI-Li2S-P2S5などといったP2S5系ガラス(LixPySz、0<x<3、0<y<3、0<z<7)またはこれらの混合物などがある。
【0095】
また、無機物粒子の平均直径(D50)は、特に制限はないが、均一な厚さのコーティング層形成及び適切な空隙率のために、0.3μm~1μmの範囲であることが好ましい。0.3μm未満である場合、耐熱層製造のために準備されたスラリーで無機物粒子の分散性が低下する可能性があり、1μmを超える場合、形成されるコーティング層の厚さが増加する可能性がある。
【0096】
本発明の一実施態様において、前記耐熱層を形成する方法は、例えば以下の通りである。まず、バインダー樹脂を適切な有機溶媒に溶解させて高分子溶液を製造する。溶媒としては、使用しようとするバインダー高分子と溶解度指数が類似しており、沸点(boiling point)が低いことが好ましい。これは均一な混合とその後の溶媒除去を容易にするためである。使用可能な溶媒の非制限的な例としては、アセトン(acetone)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、メチレンクロライド(methylene chloride)、クロロホルム(chloroform)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、シクロヘキサン(cyclohexane)、水またはこれらの混合体などがある。
【0097】
次に、製造された高分子溶液に無機物粒子を添加及び分散させる。本願発明において、前記無機物粒子とバインダーの含有量比は前述の通りであり、最終的に製造される本発明の耐熱層の厚さ、気孔サイズ及び気孔度を考慮して適切に調節する。
【0098】
次に、前記で製造された無機物粒子スラリーを分離膜の少なくとも一側面に塗布し乾燥する。前記スラリーを多孔性基材上にコーティングする方法は、特にいずれか一つの方法に限定されるものではなく、当業界で知られている通常のコーティング方法を使用することができる。例えば、ディップ(Dip)コーティング、ダイ(Die)コーティング、ロール(roll)コーティング、コンマ(comma)コーティング、またはこれらの混合方式など様々な方式を用いることができる。
【0099】
前記乾燥工程は、前記複合多孔層表面の表面欠陥の発生を最小限に抑えるために、温度と時間の条件を適切に設定する。前記乾燥は、適切な範囲内で乾燥オーブンや熱風などの乾燥補助装置を使用することができる。
【0100】
また、本発明の分離膜は、耐熱層と多孔性基材を別途に作製しておき、これらのシートを重ね合わせ、熱圧着や接着剤により複合化する方法などによっても製造することができる。耐熱層を独立したシートとして得る方法としては、前記スラリーを剥離シート上に塗布し、詳述した方法により耐熱層を形成し、耐熱層のみを剥離する方法などを挙げることができる。
【0101】
一方、本発明は、前記分離膜を含む二次電池を提供する。前記電池は、負極、正極、及び前記負極と正極との間に介在した分離膜を含み、前記分離膜は、前述した特徴を備えた低抵抗分離膜である。
【0102】
本発明において、正極は、正極集電体及び前記集電体の少なくとも一側の表面に正極活物質、導電材及びバインダー樹脂を含む正極活物質層を備える。前記正極活物質は、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn2O4、LiMnO2など)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物や、1またはそれ以上の遷移金属に置換された化合物;化学式Li1+xMn2-xO4(ここで、xは0~0.33である)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiV3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01~0.3である)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn1-xMxO2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01~0.1である)またはLi2Mn3MO8(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンに置換されたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3のうちの1種または2種以上の混合物を含むことができる。
【0103】
本発明において、前記負極は、負極集電体及び前記集電体の少なくとも一側の表面に負極活物質、導電材及びバインダー樹脂を含む負極活物質層を備える。前記負極は、負極活物質として、リチウム金属酸化物、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;錫系合金;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4、及びBi2O5などの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料;チタン酸化物の中で選択された1種または2種以上の混合物を含むことができる。
【0104】
本発明の具体的な一実施態様において、前記導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維または金属繊維、金属粉末、導電性ウィスカー、導電性金属酸化物、活性カーボン(activated carbon)及びポリフェニレン誘導体からなる群から選択されたいずれか一つ、またはこれらのうちの2種以上の導電性材料の混合物であり得る。より具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、スーパーピー(super-p)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、デンカ(denka)ブラック、アルミニウム粉末、ニッケル粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウム及び酸化チタンからなる群から選択された1種またはこれらのうちの2種以上の導電性材料の混合物であり得る。
【0105】
前記集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを使用することができる。
【0106】
前記バインダー樹脂としては、当業界で電極に通常使用される高分子を使用することができる。このようなバインダー樹脂の非制限的な例としては、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、ポリビニリデンフルオリド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチルヘキシルアクリレート(polyethylhexyl acrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリアリレート(polyarylate)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetatepropionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)及びカルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)などを挙げることができ、これに限定されるものではない。
【0107】
前記のように準備された電極組立体は、適切なケースに装入し、電解液を注入して電池を製造することができる。
【0108】
本発明において、前記電解液はA+B-のような構造の塩であって、A+はLi+、Na+、K+のようなアルカリ金属陽イオンまたはこれらの組み合わせからなるイオンを含み、B-はPF6
-、BF4
-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、AsF6
-、CH3CO2
-、CF3SO3
-、N(CF3SO2)2
-、C(CF2SO2)3
-のような陰イオンまたはこれらの組み合わせからなるイオンを含む塩が、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ガンマブチロラクトン(g-ブチロラクトン)またはこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解または解離したものがあるが、これだけに限定されるものではない。
【0109】
また、本発明は、前記電極組立体を含む電池を単位電池として含む電池モジュール、前記電池モジュールを含む電池パック、及び前記電池パックを電源として含むデバイスを提供する。前記デバイスの具体例としては、電池的モーターにより動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグ-インハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電動スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0110】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は、種々の異なる形態に変形することができ、本発明の範囲が下記に詳述する実施例に限定されると解釈されるべきではない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0111】
[実施例]
1.多孔性基材の準備
[実施例1]
ポリエチレン樹脂(Mw475,500g/mol、PDI3.6)30重量部、液状パラフィンオイル(40℃での動粘度:40cSt)70重量部を二軸圧出機に投入及び混練した後圧出した。圧出後、T-ダイと冷却キャスティングロールを通ってシート状に成形し、その後、MD延伸後TD延伸のテンター型同時延伸機で二軸延伸した。延伸したシートからメチレンクロライドで希釈剤である液状パラフィンオイルを抽出し、約128℃で熱固定して分離膜用多孔性基材を得た。
【0112】
[実施例2]
ポリエチレン樹脂(Mw930,800g/mol、PDI3.3)30重量部、液状パラフィンオイル(40℃での動粘度:40cSt)70重量部を二軸圧出機に投入及び混練した後圧出した。圧出後、T-ダイと冷却キャスティングロールを通ってシート状に成形し、その後、MD延伸後TD延伸のテンター型逐次延伸機で二軸延伸した。延伸したシートからメチレンクロライドで希釈剤である液状パラフィンオイルを抽出し、約128℃で熱固定して分離膜用多孔性基材を得た。
【0113】
[比較例1]
第1ポリエチレン樹脂(Mw250,000g/mol)及び第2ポリエチレン樹脂(Mw800,000g/mol)を混合してポリエチレン樹脂組成物を準備した。前記組成物は分子量(Mw)が497,000g/mol、PDIが12.8であった。次に、前記実施例と同一の方法で分離膜用多孔性基材を得た。
【0114】
[比較例2]
第1ポリエチレン樹脂(Mw250,000g/mol)及び第2ポリエチレン樹脂(Mw800,000g/mol)を混合してポリエチレン樹脂組成物を準備した。前記組成物は分子量(Mw)が381,000g/mol、PDIが10.5であった。次に、前記実施例と同一の方法で分離膜用多孔性基材を得た。
【0115】
各実施例及び比較例で得られた多孔性基材について下記[表1]にまとめた。
【0116】
【0117】
2.多孔性基材の物性評価
(1)気孔サイズ分布関連
各実施例及び比較例で得られた多孔性基材の幅方向の中央部分からTD方向5cm、MD方向5cmの大きさで試料を得た。得られた各試料に対して、Porous Materials Inc.(PMI)社のパームポロメーター(Perm-Porometer、CFP-1500A)を用いて乾燥曲線を得た。また、ガルウィック溶液を用いて多孔性基材を充填させた後、湿潤曲線を得た。前記測定圧力は0~3500MPaの範囲とした。ここから、気孔の最大サイズ(Mps)、気孔の平均サイズ(mps)、半値幅の値、最大気孔サイズ(Mps)と平均気孔サイズ(mps)との差を算出した。また、算出された気孔サイズ分布の結果を
図3に示す。
【0118】
得られた曲線で、バブルポイント(bubble point)は気孔の最大直径を表すことができ、湿潤試料曲線と乾燥試料曲線とが交差する点は、気孔の最小直径を表すことができる。また、乾燥試料の通気曲線の値の1/2値に該当する値である1/2乾燥試料の通気曲線と湿潤試料曲線とが交差する点は、気孔直径の平均値を表すことができる(
図4参照)。
【0119】
(2)BET表面積の測定
各実施例及び比較例で得られた多孔性基材に対してBET-比表面積分析器(BEL、Microtrac社)を用いて、-196℃の条件で吸着等温曲線(adsorption isotherm)を1barまで測定したとき、測定されたN2吸着等温線からBrunauer-Ennett-Tellerモデル(BET)を使用してBET表面積を計算した。
【0120】
(3)気孔度測定
気孔度は下記[数式1]及び[数式2]により算出した。
[数式1]
気孔度(vol%)={1-(見掛け密度/真密度)}×100
[数式2]
見掛け密度(g/cm3)={多孔性基材の重量[g]/(多孔性基材の厚さ[cm]×多孔性基材の面積[cm2])}
【0121】
各実施例及び比較例の多孔性基材からMD/TD方向5cmの大きさの試料3個を得た。前記多孔性基材の厚さは、各試料に対して5ポイント測定後の平均値を使用し、天秤を用いて各試料の重量を測定した。試料3個の平均値を算出し、前記数式1及び数式2に導入して気孔度を算出した。一方、各試料における真密度は、適用された各成分に対する分子量など理論的に確認された数値を基に適用した。
【0122】
(4)通気度及び通気度変化率の測定
各実施例及び比較例で得られた多孔性基材に対して通気度を確認した。ASTM D737の規定に基づくフレイザー試験方法に従って通気度を測定し、Asahi seiko社のEG01-55-1MR空気透過テスター機器を使用した。
【0123】
[空気透過テスター機器の設定条件]
測定圧力:0.5kg/cm2、シリンダー圧力:2.5kg/cm2、設定時間(set time):10秒
【0124】
各実施例及び比較例で得られた多孔性基材から試験片を10個以上抽出してデータ(DATA)の平均を記載した。
【0125】
一方、各多孔性基材を90℃、4MPa、1secでホットプレスした後、その通気度を測定し、下記[式1]により各多孔性基材の通気度変化率(%)を算出した。
[式1]
[(初期通気度-プレス後の通気度)/初期通気度]X100
【0126】
(5)厚さ変形率
接触式厚さ測定器を用いて多孔性基材の初期厚さ及びプレス後の厚さを測定した。測定は、多孔性基材のTD方向に沿って30cmの距離にわたって5mmの間隔で行った。そして、前記TD方向に沿う測定を、相違するMD位置で5回行い、その算術平均を多孔性基材の厚さとした。一方、下記[式4]により各多孔性基材の厚さ変化率(%)を計算した。
[式4]
[(初期厚さ-プレス後の厚さ)/初期厚さ]X100
【0127】
実施例1の多孔性基材は、厚さ変化率が比較例1及び比較例2に比べて低いことが確認された。
【0128】
(6)絶縁破壊電圧
各実施例及び比較例に対して、試験片をそれぞれ30個ずつ用意し、これらの耐電圧特性を評価した。ステンレススチール素材のメッシュと多孔性基材を90℃、4MPa、1secの条件でホットプレス接着させた後、ここにDC電流を0.5mA、昇圧100V/s(voltage 3kV、ramp up time 3s)に設定した。実験を開始すると、電圧が上昇して各試験片に短絡が生じるときに測定が完了し、そのときの電圧を絶縁破壊電圧として測定した。テストされる全試験片数のうちワイブル分布(Weibull)分析を通じて低い絶縁破壊電圧を示す下位1%の試験片が示す電圧を測定し、それを表1にまとめて示した。
【0129】
本実験で確認されたように、実施例に係る多孔性基材の場合、気孔のサイズが小さく均一であり、そのため比較例に係る多孔性基材に比べて耐電圧特性及び厚さ変形率に優れている。
【0130】
(7)多分散指数の測定
多分散指数は、下記式5に従って算出した。
[式5]
多分散指数=数平均分子量(Mn)/重量平均分子量(Mw)
【0131】
前記重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography、PL GPC220、Agilent Technologies)で測定し、測定条件は以下のように設定した。
-カラム:PL Olexis(Polymer Laboratories社)
-溶媒:TCB(1,2,4-Trichlorobenzene、Wako Pure Chemical Industries,Ltd.)
-流速:1.0ml/min
-試料濃度:1.0mg/ml
-注入量:200μl
-カラム温度:160℃
-検出器(Detector):Agilent High Temperature RI detector
-標準(Standard):ポリスチレン(Polystyrene)(3次関数で補正)
【国際調査報告】