(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】二次電池用電極、それを含む二次電池および電極製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/131 20100101AFI20231130BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20231130BHJP
H01M 4/1391 20100101ALI20231130BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20231130BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/62 Z
H01M4/1391
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531089
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-05-23
(86)【国際出願番号】 KR2021017314
(87)【国際公開番号】W WO2022119217
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0168896
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョンギル・キム
(72)【発明者】
【氏名】テゴン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミョンス・キム
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA12
5H050AA14
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA24
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA06
5H050HA07
5H050HA12
(57)【要約】
本発明の一実施形態による二次電池用電極は、電極集電体;および前記電極集電体上に位置する電極層を含み、前記電極層は活物質、導電材、バインダが乾式で混合された電極組成物を含み、前記導電材に形成されている細孔(Macropore)の平均直径は前記バインダの平均大きさと同じであるかそれより大きい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極集電体、および
前記電極集電体上に位置する電極層を含み、
前記電極層は活物質と導電材とバインダとの乾式混合電極組成物を含み、
前記導電材に形成されている細孔の平均直径は前記バインダの平均大きさ以上である、二次電池用電極。
【請求項2】
前記導電材の細孔の平均直径は30nm以上1000nm以下である、請求項1に記載の二次電池用電極。
【請求項3】
前記バインダの粒子の平均大きさは30nm以上1000nm以下である、請求項1に記載の二次電池用電極。
【請求項4】
前記導電材の比表面積は1m
2/g以上100m
2/g以下である、請求項2に記載の二次電池用電極。
【請求項5】
前記導電材の含有量は前記乾式混合電極組成物の全重量を基準として0.1重量%以上10重量%以下である、請求項1に記載の二次電池用電極。
【請求項6】
前記導電材は三次元多孔性炭素素材を含み、
前記バインダはポリテトラフルオロエチレン()を含む、請求項1に記載の二次電池用電極。
【請求項7】
前記活物質はリチウムマンガン酸化物(LMO)を含む、請求項1に記載の二次電池用電極。
【請求項8】
前記乾式混合電極組成物はフリースタンディングフィルムであり、
前記フリースタンディングフィルムが前記電極集電体上に付着する、請求項1に記載の二次電池用電極。
【請求項9】
前記フリースタンディングフィルムは30MPa以上400MPa以下の弾性係数値を有する、請求項8に記載の二次電池用電極。
【請求項10】
導電材およびバインダを乾式で混合して混合物を製造する段階、
前記混合物に活物質を追加した後、剪断力を加えて電極組成物を製造する段階、および
前記電極組成物を電極集電体上に付着させて二次電池用電極を製造する段階を含み、
前記導電材に形成されている細孔の平均直径は前記バインダの平均大きさと同じであるかそれより大きい、二次電池用電極の製造方法。
【請求項11】
前記導電材の細孔の平均直径は30nm以上1000nm以下である、請求項10に記載の二次電池用電極の製造方法。
【請求項12】
前記バインダの平均大きさは30nm以上1000nm以下である、請求項10に記載の二次電池用電極の製造方法。
【請求項13】
前記導電材の比表面積は1m
2/g以上100m
2/g以下である、請求項10に記載の二次電池用電極の製造方法。
【請求項14】
前記導電材の含有量は前記電極組成物の全重量を基準として0.1重量%以上10重量%以下である、請求項10に記載の二次電池用電極の製造方法。
【請求項15】
前記導電材は三次元多孔性炭素素材を含み、
前記バインダはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む、請求項10に記載の二次電池用電極の製造方法。
【請求項16】
前記活物質はリチウムマンガン酸化物(LMO)を含む、請求項10に記載の二次電池用電極の製造方法。
【請求項17】
前記電極組成物を電極集電体上に付着させて二次電池用電極を製造する段階において、前記電極組成物はフリースタンディングフィルムとして製造され、前記電極集電体上に付着する、請求項10に記載の二次電池用電極の製造方法。
【請求項18】
前記フリースタンディングフィルムは30MPa以上400MPa以下の弾性係数値を有する、請求項17に記載の二次電池用電極の製造方法。
【請求項19】
請求項1に記載の二次電池用電極を含む二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2020年12月4日付韓国特許出願第10-2020-0168896号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は二次電池用電極、それを含む二次電池、および電極製造方法に関し、より具体的には弾性係数および抵抗減少効果が向上した二次電池用電極、それを含む二次電池、および電極製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術開発と需要の増加によりエネルギ源としての二次電池の需要が急激に増加しており、そのような二次電池のうち高いエネルギ密度と電圧を有し、サイクル寿命が長く、かつ自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0004】
特に、二次電池は携帯電話、デジタルカメラ、ノートパソコン、ウェアラブルデバイスなどのモバイル機器だけでなく、電気自転車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車などの動力装置のエネルギ源としても多くの関心を集めている。
【0005】
また、環境問題への関心が大きくなるにつれ、大気汚染の主な原因の一つのガソリン車両、ディーゼル車両など化石燃料を使用する車両の代わりとなる電気自動車、ハイブリッド電気自動車などについて多くの研究が進められている。このような電気自動車、ハイブリッド電気自動車などの動力源としては主にニッケル水素金属二次電池が使用されているが、高いエネルギ密度と放電電圧のリチウム二次電池を使用する研究が活発に進められており、一部は商用化の段階にある。
【0006】
既存の二次電池用電極は一般に湿式方法で製造された。しかし、湿式方法で電極を製造する場合、高温での熱処理過程が必須として求められ、金属酸化物が損傷する恐れがあった。そのため、乾式方法で製造された電極開発に対する必要性が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、弾性係数および抵抗減少効果が向上した二次電池用電極、それを含む二次電池、および電極製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は上述した課題に制限されるものではなく、言及されていない課題は本明細書および添付する図面から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による二次電池用電極は、電極集電体;および前記電極集電体上に位置する電極層を含み、前記電極層は活物質、導電材、バインダが乾式で混合された電極組成物を含み、前記導電材に形成されている細孔(Macropore)の平均直径は前記バインダの平均大きさと同じであるかそれより大きい。
【0010】
前記導電材の細孔の平均直径は30nm以上1000nm以下であり得る。
【0011】
前記バインダの粒子の平均大きさは30nm以上1000nm以下であり得る。
【0012】
前記導電材の比表面積は1m2/g以上100m2/g以下であり得る。
【0013】
前記導電材の含有量は前記電極組成物の全重量を基準として0.1重量%以上10重量%以下であり得る。
【0014】
前記導電材は三次元多孔性炭素素材を含み、前記バインダはポリテトラフルオロエチレン(PTFE,Polytetrafluoroethylene)を含み得る。
【0015】
前記活物質はリチウムマンガン酸化物(LMO,Lithium Manganese Oxide)を含み得る。
【0016】
前記電極組成物はフリースタンディングフィルムに製造され、前記フリースタンディングフィルムが前記電極集電体上に付着し得る。
【0017】
前記フリースタンディングフィルムは30MPa以上400MPa以下の弾性係数値を有し得る。
【0018】
本発明の他の一実施形態による二次電池用電極の製造方法は、導電材およびバインダを乾式で混合して混合物を製造する段階;前記混合物に活物質を追加した後、剪断力を加えて電極組成物を製造する段階;前記電極組成物を電極集電体上に付着させて二次電池用電極を製造する段階を含み、前記導電材に形成されている細孔(Macropore)の平均直径は前記バインダの平均大きさと同じであるかそれより大きい。
【0019】
前記導電材の細孔の平均直径は30nm以上1000nm以下であり得る。
【0020】
前記バインダの1次粒子の平均大きさは30nm以上1000nm以下であり得る。
【0021】
前記導電材の比表面積は1m2/g以上100m2/g以下であり得る。
【0022】
前記導電材の含有量は前記電極組成物の全重量を基準として0.1重量%以上10重量%以下であり得る。
【0023】
前記導電材は三次元多孔性炭素素材を含み、前記バインダはポリテトラフルオロエチレン(PTFE,Polytetrafluoroethylene)を含み得る。
【0024】
前記活物質はリチウムマンガン酸化物(LMO,Lithium Manganese Oxide)を含み得る。
【0025】
前記電極組成物を電極集電体上に付着させて二次電池用電極を製造する段階で、前記電極組成物はフリースタンディングフィルムに製造され、前記電極集電体上に付着し得る。
【0026】
前記フリースタンディングフィルムは30MPa以上400MPa以下の弾性係数値を有し得る。
【0027】
本発明の他の一実施形態による二次電池は上述した二次電池用電極を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態による二次電池用電極の製造方法に関するフローチャートである。
【
図2】本発明の実施例および比較例における、二次電池用電極の導電材の細孔平均直径に応じた弾性係数および初期放電容量をそれぞれ比較したグラフである。
【
図3】本発明の実施例および比較例における、二次電池用電極の導電材の比表面積に応じた弾性係数および初期放電容量をそれぞれ比較したグラフである。
【
図4】本発明の実施例および比較例における、二次電池用電極のバインダの含有量に応じた弾性係数および初期放電容量をそれぞれ比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施形態に限られない。
【0030】
以下では、本発明の一実施形態による二次電池用電極について説明する。
【0031】
本発明の一実施形態による二次電池用電極は、電極集電体;および前記電極集電体上にフリースタンディングフィルム(free standing film)で形成された電極層を含む。電極層は、活物質、導電材、およびバインダが乾式で混合されている電極組成物を含む。
【0032】
前記電極層はフリースタンディングフィルムが先に製造され、前記フリースタンディングフィルムが前記電極集電体上に付着した後ラミネーション工程によって形成されることができる。ここで、前記フリースタンディングフィルムは30MPa以上400MPa以下の弾性係数値を有することができる。ここで、弾性係数値はDMA(Dynamic Mechanical Analysis)装置で測定され、25℃で400μm厚さのフリースタンディングフィルムに対して測定した値で定義されることができる。
【0033】
そのため、前記フリースタンディングフィルムは前記電極組成物に含まれる活物質、導電材、およびバインダが互いに高い結着力で混合された状態であり得、前記フリースタンディングフィルムはロール(roll)形態で容易に保管されることができる。また、生産性が向上して、電極の柔軟性改善に効果的であり得る。しかし、前記フリースタンディングフィルムの弾性係数値が30MPa未満の場合、セル製作工程中の破損の危険性があり、充放電時に電極内の電極活物質の間に亀裂が発生するので、工程性および耐久性が低下して、製造工程上保管が容易でない。
【0034】
以下では、本発明の一実施形態による二次電池用電極に含まれる各構成要素について詳細に説明する。
【0035】
前記バインダは活物質粒子の間の付着および活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする。具体的な例としてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ビニリデンフルオリド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物を使用することができる。
【0036】
一例として、前記バインダはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むことができる。ここで、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、剪断力が加えられることにより粒子から繊維が抜け出る特徴を有する。すなわち、本発明の一実施形態による二次電池用電極において、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をバインダとして含む電極組成物に強い剪断力が加えられ、前記電極組成物はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の繊維化による物理的混合方式により混合されることができる。
【0037】
そのため、本発明の一実施形態による二次電池用電極は、前記電極組成物が別途の溶媒または添加剤なしで乾式で混合されることができ、活物質粒子の間のブリッジングまたは活物質粒子と集電体の間のブリッジングに非常に効果的でありながらも、既存の混合方式による電極ローディングの限界を克服することができ、乾燥炉が不要であるため工程コストを節減することができる。
【0038】
また、前記バインダの含有量は前記電極組成物の全重量を基準として0.1重量%以上5重量%以下であり得る。より好ましくは、前記バインダの含有量は前記電極組成物の全重量を基準として1重量%以上4重量%以下であり得る。一例として、前記バインダの含有量は前記電極組成物の全重量を基準として2重量%以上3重量%以下であり得る。
【0039】
そのため、本実施形態による二次電池用電極は、前記バインダが上述した範囲の含有量で含まれ、バインダの繊維化が極大化されることができ、電極組成物の内部の粒子間のブリッジング効果に優れるため弾性係数に優れる。これと共に、前記バインダの固まる現象を防止し、分散性を向上させることができるため、前記電極組成物を含む電極の抵抗減少効果に優れる。
【0040】
これとは異なり、前記バインダの含有量が0.1重量%未満の場合は、前記電極組成物内部の粒子間のブリッジング効果が不十分であるため、引張強度もまた、大きく減少し得る。また、前記バインダの含有量が5重量%を超える場合は、前記電極組成物を含む電極で前記バインダが抵抗として作用され、高い出力を期待しにくい問題がある。
【0041】
また、前記バインダの粒子の平均大きさは30nm以上1000nm以下であり得る。より好ましくは、前記バインダの粒子の平均大きさは35nm以上500nm以下であり得る。一例として、前記バインダの粒子の平均大きさは40nm以上400nm以下であり得る。ここで、前記バインダの粒子の平均大きさは、前記バインダの繊維化が進行する前の粒子の平均大きさであり、これは1次粒子の平均大きさと定義することもできる。
【0042】
そのため、本実施形態による二次電池用電極は、上述した範囲の平均大きさを有する前記バインダが含まれ、前記バインダが前記電極組成物内で効果的に分散している。これと共に、前記バインダの分散性向上により抵抗減少効果が向上することができる。また、前記バインダの繊維化が増大し得るため、電極強度もまた向上することができる。
【0043】
これとは異なり、前記バインダの粒子の平均大きさが30nm未満の場合は、前記バインダの繊維化の進行が不十分であるため、電極強度が減少する問題がある。また、前記バインダの粒子の平均大きさが1000nmを超える場合は、前記電極組成物内で前記バインダの繊維化が進行するための剪断力が相対的に大きいものである必要があり、製造工程上、別途の段階が求められるか、工程上の条件が複雑になる問題がある。
【0044】
前記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさずに電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としてはカーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、グラフェン、炭素繊維などの炭素系物質;天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの導電性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物を使用することができる。
【0045】
一例として、前記導電材は三次元多孔性炭素素材(3D Porous carbonmaterial)を含むことができる。ここで、三次元多孔性炭素素材は前記バインダの担持体としての役割もまた遂行することができる。一例として、前記バインダとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が使用される場合、電極組成物内で前記導電材はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の担持体として活用することができる。
【0046】
前記導電材の細孔の平均直径は30nm以上1000nm以下であり得る。より好ましくは、前記導電材の細孔の平均直径は35nm以上800nm以下であり得る。一例として、前記導電材の細孔の平均直径は40nm以上700nm以下であり得る。
【0047】
そのため、本実施形態による二次電池用電極は、上述した範囲の細孔の平均直径を有する前記導電材が含まれ、前記導電材の細孔の平均直径と前記バインダの平均大きさの差が相対的に小さい。そのため、前記導電材は前記バインダに対する担持体の役割を十分にすることができ、前記バインダが前記電極組成物内で効果的に分散していることができる。これと共に、前記バインダの分散性向上により抵抗減少効果が向上することができる。また、前記バインダの繊維化が増大できるため、電極強度もまた向上することができる。
【0048】
これとは異なり、前記導電材の細孔の平均直径が30nm未満の場合は、前記バインダの分散性が低下し、前記バインダ自体の固まる現象が増加し得、抵抗減少効果もまた低下し得る。また、前記導電材の細孔の平均直径が1000nmを超える場合は、該当平均直径を満たす前記導電材の製造が難しくて製造工程が複雑になり、製造コストもまた、増加する問題がある。
【0049】
また、前記導電材の比表面積は1m2/g以上100m2/g以下であり得る。より好ましくは、前記導電材の比表面積は20m2/g以上80m2/g以下であり得る。一例として、前記導電材の比表面積は30m2/g以上70m2/g以下であり得る。
【0050】
そのため、本実施形態による二次電池用電極は、上述した範囲の比表面積を有する前記導電材が含まれ、前記二次電池用電極を含む電池セルの駆動時の電解液副反応による内部ガス生成発生を防止することができる。これとは異なり、前記導電材の比表面積が100m2/gを超える場合は、前記二次電池用電極を含む電池セルの駆動時の電解液副反応による内部ガスが過度に発生する問題がある。また、前記導電材の比表面積が1m2/g未満である場合は、前記電極組成物内で活物質および/またはバインダの間の結着力が減少して、電池性能が減少し得る。
【0051】
また、前記導電材は電極組成物の全重量を基準として0.1重量%~10重量%で含まれ得る。より好ましくは、前記導電材は全重量を基準として0.3重量%~9.5重量%で含まれ得る。一例として、前記導電材は全重量を基準として0.5重量%~9重量%で含まれ得る。
【0052】
そのため、本実施形態による二次電池用電極は、前記導電材が上述した範囲の含有量で含まれ、前記バインダの繊維化を極大化させることができ、これによる電極組成物内部の粒子間のブリッジング効果に優れるため、弾性係数に優れる。これと共に、前記バインダの固まる現象を防止し、分散性を向上させることができるため、前記電極組成物を含む電極の抵抗減少効果に優れる。
【0053】
これとは異なり、前記導電材の含有量が0.1重量%未満の場合は、前記電極組成物内部の粒子間のブリッジング効果が不十分であるため、弾性係数もまた、大きく減少し得る。また、前記導電材の含有量が10重量%を超える場合は、前記電極組成物内の活物質またはバインダの含有量が相対的に減って、電池性能または弾性係数が減少する問題がある。
【0054】
前記活物質は正極活物質であり得る。前記正極活物質は、一例として、リチウム遷移金属酸化物として、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiaCobMnc)O2(0<a<1,0<b<1,0<c<1,a+b+c=1)、LiNi1-yCoyO2(O<y<1)、LiCo1-yMnyO2、LiNi1-yMnyO2(O<y<1)、Li(NiaCobMnc)O4(0<a<2,0<b<2,0<c<2,a+b+c=2)、LiMn2-zNizO4(0<z<2)、LiMn2-zCozO4(0<z<2)およびその組み合わせから選択され得る。
【0055】
一例として、前記活物質はリチウムマンガン酸化物(LMO,Lithium Manganese Oxide)を含むことができる。ここで、前記活物質は電極組成物の全重量を基準として85重量%~99重量%で含まれ得る。より好ましくは、前記活物質は電極組成物の全重量を基準として87重量%~98重量%で含まれ得る。一例として、前記活物質は電極組成物の全重量を基準として89重量%~97重量%で含まれ得る。
【0056】
上述した二次電池用電極は、本発明の他の一実施形態による二次電池で正極として含まれ得る。より具体的には、本発明の他の一実施形態による二次電池は、前記正極、負極、および前記正極と前記負極の間に介在する分離膜を含む電極組立体と電解質を含むことができる。
【0057】
前記負極は前記二次電池用電極のように、負極活物質、高分子物質、導電材などが含まれた負極スラリーが負極集電体に塗布されて製造されることができる。
【0058】
前記負極もまた、負極活物質を含む負極スラリーが負極集電体上に付着または塗布される形態で製造されることができ、前記負極スラリーは同様に負極活物質と共に、前記で説明したような導電材および高分子物質をさらに含むことができる。
【0059】
前記負極活物質は、当業界で通常のリチウム二次電池用負極活物質を使用することができ、一例として、リチウム金属、リチウム合金、石油コークス、活性炭(activated carbon)、グラファイト(graphite)、ケイ素、スズ、金属酸化物またはその他炭素類などのような物質を使用することができる。
【0060】
前記負極集電体は電池に化学的変化を誘発せず、かつ高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などを使用することができる。
【0061】
前記分離膜は負極と正極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常リチウム二次電池でセパレータとして使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、かつ電解液含湿能力に優れるものが好ましい。
【0062】
また、本発明で使用される電解液としてはリチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0063】
具体的には、前記電解液は有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。前記有機溶媒としては電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割をすることができるものであれば、特に制限なく使用することができる。前記リチウム塩はリチウム二次電池で使用されるリチウムイオンを提供できる化合物であれば、特に制限なく使用することができる。
【0064】
前記電解液には前記構成成分の他にも電池の寿命特性向上、電池容量減少抑制、電池の放電容量向上などを目的に、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリメチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。この時、前記添加剤は電解液総重量に対して0.1重量%~5重量%で含まれ得る。
【0065】
図1は本発明の他の一実施形態による二次電池用電極の製造方法に関するフローチャートである。
【0066】
図1を参照すると、本実施形態による電極製造方法は、導電材およびバインダを混合して、前記バインダが均一に分散した混合物を製造するプレミキシング段階(S10)、前記混合物に活物質を追加した後剪断力を加えて電極組成物を製造するミキシング段階(S20)、前記電極組成物を使用してフリースタンディングフィルムを製造する段階(S30)、および前記フリースタンディングフィルムを電極集電体上に付着させた後ラミネーション工程により電極を製造する段階(S40)を含む。
【0067】
プレミキシング段階(S10)は導電材およびバインダを乾式で混合することができる。前記導電材に形成されている細孔(Macropore)の平均直径は前記バインダの平均大きさと同じであるかそれより大きい。
【0068】
以下では、より具体的な実施例により本発明の内容を説明するが、下記実施例は本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではない。
【0069】
<実施例1>
導電材およびバインダをWaring社のブレンダ(blender)設備を用いて乾式で混合した混合物を製造するプレミキシング段階を行う。この時、プレミキシング段階(S10)は5000rpmで1分間行われ、導電材およびバインダの混合のみが誘導される。その後、入江商会社のBench Kneader PBV‐0.1L設備を用いて、前記プレミキシング段階(S10)で製造された前記混合物に活物質を追加して、電極組成物を製造するミキシング段階(S20)を行う。
【0070】
ここで、前記活物質は97重量%のリチウムマンガン酸化物(LMO,Lithium Manganese Oxide)であり、前記導電材は比表面積が50m2/gであり、細孔平均直径が50nmである2重量%の三次元多孔性炭素素材である。また、前記バインダは50nmの1重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【0071】
<実施例2>
前記実施例1で、前記導電材の細孔平均直径が100nmである。この点を除いては実施例1と同一に電極組成物を製造した。
【0072】
<実施例3>
前記実施例1で、前記導電材の比表面積が80m2/gである。この点を除いては実施例1と同一に電極組成物を製造した。
【0073】
<実施例4>
前記実施例1で、前記バインダの含有量が10重量%であり、前記正極活物質の含有量が88重量%である。この点を除いては実施例1と同一に電極組成物を製造した。
【0074】
<実施例5>
前記実施例1で、前記導電材の比表面積が2000m2/gである。この点を除いては実施例1と同一に電極組成物を製造した。
【0075】
<比較例1>
前記実施例1で、前記導電材の細孔平均直径が2nmである。この点を除いては実施例1と同一に電極組成物を製造した。
【0076】
<実験例1(弾性係数(Modulus)の測定)>
実施例1~5、比較例1でそれぞれ製造された前記電極組成物は井上製作所社のロールミル(Roll Mill)設備を用いて、800mmの長さおよび500mmの幅、400μmの厚さを有するフリースタンディングフィルムを製造するフリースタンディングフィルム製造段階(S30)が行われた。製造されたそれぞれのフリースタンディングフィルムに対して両端を治具で固定した後、TA Instruments社のDMA設備を用いてフリースタンディングフィルムの弾性係数を周波数(Frequency)1Hz、歪み(Strain)0.1%の条件でそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0077】
【0078】
<実験例2(放電容量測定)>
実施例1~5、比較例1について、実験例1でそれぞれ製造された正極と共に、200μmの厚さを有するリチウム金属を負極としてコインハーフセルを製造した。その後、製造されたそれぞれのコインハーフセルに対して3.0~4.3V電圧範囲で0.1C/0.1C条件で充放電後に最初のcycleの放電容量値計算し、その結果を表2に示した。
【0079】
【0080】
<実験結果分析>
図2は本発明の実施例および比較例における、二次電池用電極の導電材の細孔平均直径に応じた弾性係数および初期放電容量をそれぞれ比較したグラフである。特に、
図2は表1および表2に示す結果のうち、実施例1、実施例2、および比較例1の弾性係数および初期放電容量をそれぞれ比較したグラフである。この時、実施例1、実施例2、および比較例1は、正極活物質、バインダ、および導電材の含有量が同一であり、導電材の比表面積もまた、同一である。ただし、導電材の細孔平均直径が比較例1、実施例1、および実施例2順に増加する。
【0081】
図2を参照すると、比較例1のように導電材の細孔平均直径(2nm)がバインダの粒子の平均大きさ(50nm)より小さい場合、弾性係数および初期放電容量がいずれも低下することを確認することができる。これは導電材の細孔平均直径がバインダの粒子の平均大きさより小さいため、導電材の細孔内にバインダを担持することが不可能であるからある。
【0082】
これとは異なり、実施例1および2の場合、導電材の細孔平均直径がそれぞれバインダの粒子の平均大きさと類似するかそれより大きいため、弾性係数および初期放電容量がいずれも優れることを確認することができる。
【0083】
ただし、実施例1のように導電材の細孔平均直径(50nm)がバインダの粒子の平均大きさ(50nm)と類似する場合に比べて、弾性係数が若干減少することを確認することができる。これは、実施例2のように導電材の細孔平均直径(100nm)がバインダの粒子の平均大きさより大きい場合、バインダの分散性が低下するからである。
【0084】
そのため、導電材の細孔平均直径が、実施例1および実施例2のような範囲内にある場合、弾性係数および初期放電容量が全般的にすべて優れることを確認することができる。
【0085】
図3は本発明の実施例で、二次電池用電極の導電材の比表面積に応じた弾性係数および初期放電容量をそれぞれ比較したグラフである。特に、
図3は表1および表2に示す結果のうち、実施例1、実施例3、および実施例5の弾性係数および初期放電容量をそれぞれ比較したグラフである。この時、実施例1、実施例3、および実施例5は、正極活物質、バインダ、および導電材の含有量が同一であり、導電材の細孔平均直径は類似するが、導電材の比表面積が互いに異なる。ここで、実施例1、実施例2、および比較例5の順に、導電材の比表面積が徐々に増加する。
【0086】
図3を参照すると、実施例5のように、導電材の比表面積(2000m
2/g)が過度に大きい場合は、弾性係数は優れることに対して、比較例1ほどではないが、初期放電容量が低下することを確認することができる。これは実施例5のように、導電材の比表面積が過度に大きいと、水分に弱く、これによる電極内の副反応が増加するからである。
【0087】
これとは異なり、実施例1および実施例3の場合、導電材の比表面積が過度に多くないため、弾性係数および初期放電容量が全般的に優れることを確認することができる。そのため、導電材の比表面積が、実施例1および実施例3と同じ範囲内にある場合、弾性係数および初期放電容量が全般的にすべて優れることを確認することができる。
【0088】
図4は本発明の実施例で、二次電池用電極のバインダの含有量に応じた弾性係数および初期放電容量をそれぞれ比較したグラフである。特に、
図4は表1および表2に示す結果のうち、実施例1および実施例4の弾性係数および初期放電容量をそれぞれ比較したグラフである。この時、実施例1および実施例4のバインダの粒子の平均大きさが同一であり、導電材の含有量、比表面積、および細孔平均直径が同一であるが、正極活物質およびバインダの含有量が異なる。ここで、実施例1および実施例4の順にバインダの含有量が増加して、正極活物質の含有量が減少する。
【0089】
図4を参照すると、実施例4のように、バインダの含有量(10重量%)が大きいほど、弾性係数が増加するが、比較例1ほどではないが初期放電容量が減少することを確認することができる。これは、バインダの含有量が増加するにつれて、バインダの繊維化が相対的に多く進行して弾性係数が増加するが、バインダ自体が抵抗として作用して初期放電容量が減少することを確認することができる。
【0090】
これとは異なり、実施例1の場合、弾性係数が実施例4に比べて低いが、初期放電容量が実施例4に比べて高いことを確認することができる。そのため、弾性係数および初期放電容量の側面においてすべて好ましい構成はバインダの含有量が、実施例1と同じ範囲内にある場合であり、これを満たすとき、弾性係数および初期放電容量が全般的にすべて優れることを確認することができる。
【0091】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、次の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の実施形態によれば、比表面積が小さく、細孔の平均直径が大きい導電材を使用して、二次電池用電極およびそれを含む二次電池を製造することによって、電極の弾性係数および抵抗減少効果が向上することができる。
【0093】
本発明の効果は上述した効果に制限されるものではなく、言及されていない効果は、本明細書および添付する図面から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解されるものである。
【国際調査報告】