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特表2023-551244リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、及びそれを含むリチウム二次電池
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  • 特表-リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、及びそれを含むリチウム二次電池 図1
  • 特表-リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、及びそれを含むリチウム二次電池 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、及びそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20231130BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231130BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531687
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 KR2021017565
(87)【国際公開番号】W WO2022114824
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0159518
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジ-ヘ・キム
(72)【発明者】
【氏名】テ-グ・ヨ
(72)【発明者】
【氏名】ワン-モ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ-ジュン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チ-ホ・ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン-ウク・ホ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、一次巨大(macro)粒子の凝集体を含む少なくとも一つの二次粒子を含む正極活物質、その製造方法、及びそれを含むリチウム二次電池に関する。本発明の一態様によれば、一次巨大粒子の平均粒径(D50)の成長と同時に結晶サイズも成長して抵抗が改善した二次粒子を含む正極活物質を提供することができる。本発明の一態様によれば、真密度を高めた正極活物質を提供することができる。これにより、リチウムイオンの移動経路を確保し、正極活物質の結晶構造の欠陥を最小化することで、寿命及び抵抗特性が改善されたニッケル系正極活物質を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巨大粒子の凝集体を含む少なくとも一つの二次粒子を含み、
前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)は2μm以上であり、
前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)と前記一次巨大粒子の平均結晶サイズとの比は8以上であり、
前記二次粒子の平均粒径(D50)は3μm~10μmであり、前記二次粒子の真密度(結晶密度)は4.74以上である、リチウム二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記一次巨大粒子の平均結晶サイズが200nm以上である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記二次粒子の平均粒径(D50)と前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)との比が2~4である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記二次粒子がニッケル系リチウム遷移金属酸化物を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記ニッケル系リチウム遷移金属酸化物が、LiNi1-x-yCoM1M2(1.0≦a≦1.5、0≦x≦0.2、0≦y≦0.2、0≦w≦0.1、0≦x+y≦0.2、M1はMn及びAlからなる群より選択される少なくとも一種、M2はBa、Ca、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb及びMoからなる群より選択される少なくとも一種)を含む、請求項4に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記リチウム二次電池用正極活物質が焼成添加剤としてジルコニウム、イットリウム、及びストロンチウムのうちの少なくともいずれか一つを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記リチウム二次電池用正極活物質の表面にホウ素含有物質がコーティングされている、請求項1から6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項8】
前記リチウム二次電池用正極活物質の表面にコバルト含有物質がコーティングされている、請求項1から7のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項9】
請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質を含むリチウム二次電池用正極。
【請求項10】
請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質を含むリチウム二次電池。
【請求項11】
請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法であって、
(S1)タップ密度が2.0g/cc以下であるニッケル系遷移金属酸化物前駆体とリチウム前駆体とを混合して一次焼成する段階と、
(S2)一次焼成物を二次焼成する段階と、を含み、
前記一次焼成及び二次焼成を通じて、一次巨大粒子の凝集体を含む少なくとも一つの二次粒子を含むリチウム二次電池用正極活物質を製造し、
前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)は2μm以上であり、
前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)と前記一次巨大粒子の平均結晶サイズとの比は8以上であり、
前記二次粒子の平均粒径(D50)は3μm~10μmであり、前記二次粒子の真密度(結晶密度)は4.74以上である、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記一次焼成の温度が780℃~900℃である、請求項11に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次巨大粒子を含むリチウム二次電池用正極活物質及びその製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2020年11月25日付け出願の韓国特許出願第10-2020-0159518号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、携帯電話、ノートパソコン、電気自動車など電池を使用する電子機器の急速な普及に伴って、小型軽量でありながらも相対的に高容量を有する二次電池の需要が急増している。特に、リチウム二次電池は、軽量であって高エネルギー密度を有しており、携帯機器の駆動電源として脚光を浴びている。そこで、リチウム二次電池の性能を向上させるための研究開発が活発に行われている。
【0004】
リチウム二次電池は、リチウムイオンの挿入(intercalation)及び脱離(deintercalation)が可能な活物質からなる正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充填した状態で、リチウムイオンが正極及び負極において挿入/脱離するときの酸化反応及び還元反応によって電気エネルギーを発生させる。
【0005】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リチウムマンガン酸化物(LiMnOまたはLiMnなど)、リン酸鉄リチウム化合物(LiFePO)などが使用されている。中でも、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)は、作動電圧が高くて容量特性に優れるという長所から広く使用され、高電圧用正極活物質として適用されている。しかし、コバルト(Co)の価格上昇及び供給不安定のため、電気自動車などのような分野の動力源としての大量使用には限界があり、これに代替可能な正極活物質の開発が求められている。
【0006】
そこで、コバルト(Co)の一部をニッケル(Ni)とマンガン(Mn)で置換したニッケルコバルトマンガン系リチウム複合遷移金属酸化物(以下、単に「NCM系リチウム複合遷移金属酸化物」とする)が開発されている。
【0007】
一方、従来開発されたNCM系リチウム複合遷移金属酸化物は、一次微細(micro)粒子が凝集された二次粒子の形態であって、比表面積が大きく、粒子強度が低い。また、電極を製造した後、圧延する場合、二次粒子の割れによってセル駆動時のガス発生量が多く、サイクル性能が劣って安定性が低下する問題がある。特に、高容量を確保するためにニッケル(Ni)の含量を増加させた高含量ニッケル(High-Ni)のNCM系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、構造的及び化学的な安定性がさらに低下し、熱安定性もさらに確保し難い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、従来と同一または類似水準の平均粒径(D50)を有する二次粒子でありながらも、従来と異なって一次巨大粒子を含むことで、正極活物質の圧延時の粒子割れを最小化する正極活物質を提供することである。
【0009】
また、真密度(結晶密度、crystal density)を高めた正極活物質を提供することを課題とする。
【0010】
これにより、寿命特性及び抵抗特性が改善された正極活物質を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、下記具現例による正極活物質を提供する。
【0012】
具体的には、一次巨大(macro)粒子の凝集体を含む少なくとも一つの二次粒子を含み、
前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)が2μm以上であり、
前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)と前記一次巨大粒子の平均結晶サイズとの比が8以上であり、
前記二次粒子の平均粒径(D50)が3μm~10μmであり、前記二次粒子の真密度(結晶密度)が4.74以上であるリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0013】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、前記一次巨大粒子の平均結晶サイズが200nm以上であり得る。
【0014】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、前記二次粒子の平均粒径(D50)と前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)との比が2~4であり得る。
【0015】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、前記二次粒子がニッケル系リチウム遷移金属酸化物を含み得る。
【0016】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、前記ニッケル系リチウム遷移金属酸化物がLiNi1-x-yCoM1M2(1.0≦a≦1.5、0≦x≦0.2、0≦y≦0.2、0≦w≦0.1、0≦x+y≦0.2、M1はMn及びAlからなる群より選択される少なくとも一種、M2はBa、Ca、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb及びMoからなる群より選択される少なくとも一種)を含み得る。
【0017】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、前記正極活物質が焼成添加剤としてジルコニウム、イットリウム、及びストロンチウムのうちの少なくともいずれか一つを含み得る。
【0018】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、前記正極活物質の表面にホウ素含有物質がコーティングされ得る。
【0019】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、前記正極活物質の表面にコバルト含有物質がコーティングされ得る。
【0020】
本発明の他の一態様は、上述した正極活物質を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0021】
本発明のさらに他の一態様は、上述した正極活物質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0022】
本発明のさらに他の一態様は、正極活物質の製造方法を提供する。
【0023】
具体的には、(S1)タップ密度が2.0g/cc以下であるニッケル系遷移金属酸化物前駆体とリチウム前駆体とを混合して一次焼成する段階と、
(S2)前記一次焼成物を二次焼成する段階と、を含み、
前記一次焼成及び二次焼成を通じて、一次巨大(macro)粒子の凝集体を含む少なくとも一つの二次粒子を含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法であって、
前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)が2μm以上であり、
前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)と前記一次巨大粒子の平均結晶サイズとの比が8以上であり、
前記二次粒子の平均粒径(D50)が3μm~10μmであり、前記二次粒子の真密度(結晶密度)が4.74以上であるリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0024】
前記リチウム二次電池用正極活物質の製造方法は、前記一次焼成の温度が780℃~900℃であり得る。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によれば、一次巨大粒子の平均粒径(D50)の成長と同時に結晶サイズも成長して抵抗が改善した二次粒子を含む正極活物質を提供することができる。
【0026】
本発明の一態様によれば、真密度を高めた正極活物質を提供することができる。これにより、リチウムイオンの移動経路を確保し、正極活物質の結晶構造の欠陥(defect)を最小化することで、寿命及び抵抗特性が改善されたニッケル系正極活物質を提供することができる。
【0027】
本明細書に添付される図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。一方、本明細書に添付される図面における要素の形状、大きさ、縮尺または比率などはより明確な説明を強調するため誇張されることもある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施例及び比較例による容量維持率及び抵抗を示したグラフである。
図2】本発明の実施例及び比較例による抵抗及びSOCを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の具現例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲において使用された用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施形態に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0030】
本明細書の全体において、ある部分が他の構成要素を「含む」とは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0031】
本明細書及び特許請求の範囲において、「多数の結晶粒を含む」とは、特定範囲の平均結晶サイズを有する二つ以上の結晶粒子が集まってなる結晶体を意味する。このとき、前記結晶粒の結晶サイズは、CuKαX線(Xrα)によるX線回折分析(XRD)を用いて定量的に分析され得る。具体的には、製造した粒子をホルダーに入れ、X線を前記粒子に照射して作られる回折パターンを分析することで、結晶粒の平均結晶サイズを定量的に分析可能である。
【0032】
本明細書及び特許請求の範囲において、D50は、粒度分布の50%基準における粒子径として定義され得、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定され得る。
【0033】
本発明において、「一次粒子」とは、走査型電子顕微鏡を用いて5,000倍~20,000倍の視野で観察したとき、外観上粒界が存在しない粒子を意味する。
【0034】
本発明において、「二次粒子」とは、前記一次粒子が凝集されて形成された粒子である。
【0035】
本発明において、「単粒子」とは、前記二次粒子とは独立的に存在し、外観上粒界が存在しない粒子であって、例えば、粒径が1μm以上の粒子を意味する。
【0036】
本発明において、「粒子」と記載する場合は、単粒子、二次粒子、一次粒子のうちのいずれか一つまたは全てが含まれる意味であり得る。
【0037】
<正極活物質>
本発明の一態様は、従来と異なる二次粒子形態の正極活物質を提供する。
【0038】
具体的には、
1)一次巨大(macro)粒子の凝集体を含む少なくとも一つの二次粒子を含み、
2)前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)が2μm以上であり、
3)前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)と前記一次巨大粒子の平均結晶サイズとの比が8以上であり、
4)前記二次粒子の平均粒径(D50)が3~10μmであり、
5)前記二次粒子の真密度(結晶密度)が4.74以上であるリチウム二次電池用正極活物質である。
【0039】
一次粒子及び二次粒子は、前記1)~5)の特徴を有することで、寿命特性及び抵抗特性が改善されたニッケル系正極活物質を提供することができる。
【0040】
以下、前記一次粒子及び二次粒子が有する前記1)~5)特性を詳しく説明する。
【0041】
<粒子の形態及び一次巨大粒子>
一般に、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物は二次粒子である。このような二次粒子は一次粒子が凝集された形態であり得る。
【0042】
具体的には、共沈法によって製造された密度の高い(dense)ニッケル系リチウム遷移金属水酸化物二次粒子を前駆体とし、該前駆体をリチウム前駆体と混合して960℃未満の温度で焼成すると、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物二次粒子が収得され得る。しかし、このような従来の二次粒子を含む正極活物質を集電体上に塗布してから圧延する場合、粒子自体が割れて比表面積が広くなる。比表面積が広くなれば、表面に岩塩(rock salt)型構造が形成されて抵抗が高くなるという問題がある。
【0043】
このような問題を解決しようとして、従来、単粒子からなる正極活物質がさらに開発された。具体的には、上述した密な(dense)ニッケル系リチウム遷移金属水酸化物二次粒子を前駆体とする従来方法と異なり、従来の前駆体に比べて多孔性(porous)である前駆体を使用することで、同一ニッケル含量に対比して低い焼成温度で合成可能であり、それ以上の二次粒子の形態を持たず、単粒子化されたニッケル系リチウム遷移金属酸化物が収得され得る。しかし、このような単粒子を含む正極活物質を集電体上に塗布してから圧延する場合、単粒子自体は割れないが、他の活物質が割れるなどの問題がある。
【0044】
本発明の一態様は、このような問題を解決するためのものである。
【0045】
従来と同様に密度の高い前駆体をもって焼成温度のみを高めて焼成する場合、一次粒子の平均粒径(D50)だけでなく、二次粒子の平均粒径(D50)も大きくなることが不可避であった。
【0046】
一方、本発明の一態様による二次粒子は、従来の単粒子収得方法と次のような点で相違する。
【0047】
従来の単粒子は、上述したように、従来の二次粒子用前駆体をそのまま使用し、一次焼成温度のみを高めて単粒子を形成した。一方、本発明の一態様による二次粒子は、気孔度の高い前駆体を別途に使用する。これにより、焼成温度を高めなくても粒径の大きい一次巨大粒子が成長でき、その一方で二次粒子は従来に比べて相対的に不十分に成長する。
【0048】
これにより、本発明の一態様による二次粒子は、従来と同一または類似の平均粒径(D50)を有しながらも、一次粒子の平均粒径(D50)が大きい形態である。すなわち、従来の正極活物質が有する一般的な形態、すなわち平均粒径の小さい一次粒子が集まって二次粒子を形成する形態とは異なって、一次粒子を大きくした一次巨大粒子が凝集された二次粒子の形態を提供する。
【0049】
具体的には、本発明の一態様による二次粒子は、一次巨大粒子の凝集体を意味する。本発明の具体的な一実施形態において、前記二次粒子は、前記一次巨大粒子が1個~10個凝集されたものであり得る。より具体的には、前記二次粒子は、上記の数値範囲内で前記一次巨大粒子が1個以上、2個以上、3個以上、または4個以上凝集されたものであり得、上記の数値範囲内で前記一次巨大粒子が10個以下、9個以下、8個以下、または7個以下に凝集されたものであり得る。
【0050】
本発明において、「一次巨大粒子」は、平均粒径(D50)が2μm以上のものである。
【0051】
本発明の具体的な一実施形態において、前記一次巨大粒子の平均粒径は、2μm以上、2.5μm以上、3μm以上、または3.5μm以上であり得、5μm以下、4.5μm以下、または4μm以下であり得る。前記一次巨大粒子の平均粒径が2μm未満である場合、従来の二次粒子に該当し、圧延時に粒子割れが発生する問題があり得る。
【0052】
一方、本発明において「一次巨大粒子」は、平均粒径(D50)と平均結晶サイズとの比が8以上である。すなわち、前記一次巨大粒子は、従来の二次粒子を構成する一次微細(micro)粒子と比べるとき、一次粒子の平均粒径と平均結晶サイズとが同時に成長したものである。
【0053】
クラック(crack)の観点から見ると、従来の単粒子のように、外観上粒界が存在しないながらも平均粒径が大きいものが有利である。そこで、本発明者らは一次粒子の平均粒径(D50)を成長させることに集中した。その過程で、過焼成などによって一次粒子の平均粒径(D50)のみを増加させると、一次粒子の表面に岩塩型構造が形成されて最初(initial)抵抗が高くなる問題があることを見つけた。本発明者らは、このような問題を解決するため、抵抗を下げる方法を創案し、抵抗を下げるためには、一次粒子の結晶サイズも一緒に成長させねばならないことを確認した。
【0054】
したがって、本発明における一次巨大粒子は、平均粒径だけでなく平均結晶サイズも大きく、外観上粒界が存在しない粒子を意味する。
【0055】
このように一次粒子の平均粒径と平均結晶サイズとが同時に成長する場合、高温での焼成によって表面に岩塩型構造が生じて抵抗の増加が大きい従来の単粒子に比べて、抵抗が低くなって長寿命の面でも有利である。
【0056】
このとき、前記一次巨大粒子の平均結晶サイズは、CuKαX線(X-ray)によるX線回折分析(XRD)を用いて定量的に分析され得る。具体的には、製造した粒子をホルダーに入れ、X線を粒子に照射して作られる回折パターンを分析することで、一次巨大粒子の平均結晶サイズを定量的に分析可能である。
【0057】
本発明の具体的な一実施形態において、前記平均粒径(D50)と平均結晶サイズとの比は8以上、望ましくは10以上である。
【0058】
また、前記一次巨大粒子の平均結晶サイズは、200nm以上、250nm以上、300nm以上であり得る。
【0059】
<二次粒子>
本発明の一態様による二次粒子は、従来と同一または類似の平均粒径(D50)を有しながらも、一次粒子の平均粒径(D50)が大きい形態である。すなわち、従来の正極活物質が有する一般的な形態、すなわち平均粒径の小さい一次粒子が集まって二次粒子を形成する形態とは異なって、一次粒子を大きくした一次巨大粒子が凝集された二次粒子の形態を提供する。
【0060】
本発明の一態様による二次粒子は、平均粒径(D50)が3μm~10μmである。より具体的には、4μm~8μmであり得、4μm以上、4.5μm以上、5μm以上、5.5μm以上、または6μm以上であり、8μm以下、7.5μm以下、7μm以下、または6.5μm以下であり得る。
【0061】
一般に粒子の形態にかかわらず、同じ組成であると、焼成温度が上昇するほど粒子のサイズ及び粒子内の平均結晶サイズが増加する。一方、本発明の一態様による二次粒子は、従来に比べて焼成温度を高めなくても粒径の大きい一次巨大粒子が成長でき、その一方で二次粒子は従来に比べて相対的に不十分に成長する。
【0062】
これにより、本発明の一態様による二次粒子は、従来の二次粒子と平均粒径(D50)が同一または類似でありながらも、従来の一次微細粒子に比べて平均粒径及び平均結晶サイズが大きい一次巨大粒子からなっている。
【0063】
例えば、平均粒径(D50)2.5μm程度の一次巨大粒子が10個以内で凝集された、平均粒径(D50)が約5μmである二次粒子を含み得る。このような二次粒子は、正極活物質の圧延時に粒子割れがなく、他の粒子と混合(blending)して圧延するときの粒子割れが最小化される特徴がある。
【0064】
より具体的には、少なくとも一つ以上の前記二次粒子を9トン(ton)で圧延するとき、前記一次巨大粒子が離れ落ち、前記一次粒子自体は割れない特徴がある。
【0065】
これにより、本発明の一態様による正極活物質は、9トンで圧延した後の1μm以下の微粒子が10%未満のものである。
【0066】
本発明の具体的な一実施形態において、前記二次粒子の平均粒径(D50)と前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)との比は2~4であり得る。
【0067】
一方、本発明による二次粒子は、真密度(結晶密度)が4.74以上のものである。
【0068】
本発明者らは、正極活物質の寿命特性と抵抗特性とを同時に改善するために研究を重ね続けた。その過程で、一次巨大粒子の平均粒径及び結晶サイズを大きくしても、場合によって電気化学性能で差異が生じることを見つけた。
【0069】
このような問題を解決しようと、多方面から研究した結果、驚くべきことに一次粒子の平均粒径と結晶サイズ、及び二次粒子の真密度を同時に制御する場合、寿命特性及び抵抗特性が同時に改善された正極活物質を提供できることを確認した。
【0070】
本発明の具体的な一実施形態において、前記二次粒子の真密度は4.74以上、4.77以上、または4.78以上であり得、4.80以下であり得る。
【0071】
<組成>
前記二次粒子は、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物を含み得る。
【0072】
このとき、前記ニッケル系リチウム遷移金属酸化物は、LiNi1-x-yCoM1M2(1.0≦a≦1.5、0≦x≦0.2、0≦y≦0.2、0≦w≦0.1、0≦x+y≦0.2、M1はMn及びAlからなる群より選択される少なくとも一種、M2はBa、Ca、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb及びMoからなる群より選択される少なくとも一種)を含み得る。
【0073】
上記の式において、a、x、y及びwは、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物内の各元素のモル比を示す。
【0074】
このとき、前記二次粒子の結晶格子内にドーピングされた金属M1とM2は、元素M1及び/又は元素M2の位置選好度に応じて、粒子の一部表面のみに位置してもよく、粒子の表面から中心方向に減少する濃度勾配を有しながら位置してもよく、または粒子全体にかけて均一に存在してもよい。
【0075】
前記二次粒子は、金属M1及びM2によってドーピング、またはコーティング及びドーピングされる場合、特に表面構造の安定化によって活物質の長寿命特性がさらに改善できる。
【0076】
前記正極活物質は、表面にリチウムホウ素酸化物のようなホウ素含有物質がコーティングされ得、ホウ素含量が例えば2,000ppm以下の含量になるようにコーティングされ得る。ホウ素含有物質のコーティング方法は当業界に周知である。
【0077】
前記正極活物質は、表面にリチウムコバルト酸化物のようなコバルト含有物質がコーティングされ得、コバルト含量が例えば20,000ppm以下の含量になるようにコーティングされ得る。コバルト含有物質のコーティング方法は当業界に周知である。
【0078】
<正極活物質の製造方法>
本発明の一態様による正極活物質は、次のような方法で製造され得るが、これに制限されるものではない。
【0079】
具体的には、(S1)タップ密度が2.0g/cc以下であるニッケル系遷移金属酸化物前駆体とリチウム前駆体とを混合して一次焼成する段階と、(S2)前記一次焼成物を二次焼成する段階と、を含み、
前記一次焼成及び二次焼成を通じて、一次巨大(macro)粒子の凝集体を含む少なくとも一つの二次粒子を含むリチウム二次電池用正極活物質を製造する。
【0080】
前記正極活物質の製造方法を段階毎にさらに説明する。
【0081】
まず、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含み、タップ密度が2.0g/cc以下である正極活物質前駆体を用意する。
【0082】
このとき、正極活物質の製造のための前駆体は、市販の正極活物質前駆体を使用するか、または、当技術分野で周知の正極活物質前駆体の製造方法によって製造され得る。
【0083】
例えば、前記前駆体は、ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質、及びマンガン含有原料物質を含む遷移金属溶液に、アンモニウム陽イオン含有キレート剤と塩基性化合物を添加して共沈反応させて製造されるものであり得る。
【0084】
前記ニッケル含有原料物質は、例えば、ニッケル含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物、またはオキシ水酸化物などであり得、具体的には、Ni(OH)、NiO、NiOOH、NiCO・2Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HO、NiSO、NiSO・6HO、脂肪酸ニッケル塩、ニッケルハロゲン化物、またはこれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されることはない。
【0085】
前記コバルト含有原料物質は、コバルト含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物、またはオキシ水酸化物などであり得、具体的には、Co(OH)、CoOOH、Co(OCOCH・4HO、Co(NO・6HO、CoSO、Co(SO・7HO、またはこれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されることはない。
【0086】
前記マンガン含有原料物質は、例えば、マンガン含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物、またはこれらの組み合わせであり得、具体的には、Mn、MnO、Mnなどのようなマンガン酸化物;MnCO、Mn(NO、MnSO、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン塩、クエン酸マンガン、脂肪酸マンガン塩のようなマンガン塩;オキシ水酸化マンガン、塩化マンガン、またはこれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されることはない。
【0087】
前記遷移金属溶液は、ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質、及びマンガン含有原料物質を溶媒、具体的には水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(例えば、アルコールなど)の混合溶媒に添加して製造されるか、または、ニッケル含有原料物質の水溶液、コバルト含有原料物質の水溶液、及びマンガン含有原料物質を混合して製造されたものであり得る。
【0088】
前記アンモニウム陽イオン含有キレート剤は、例えば、NHOH、(NHSO、NHNO、NHCl、CHCOONH、(NHCO、またはこれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されることはない。一方、前記アンモニウム陽イオン含有キレート剤は、水溶液の形態で使用されてもよく、このときの溶媒としては、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水との混合物が使用され得る。
【0089】
前記塩基性化合物は、NaOH、KOHまたはCa(OH)などのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、これらの水和物、またはこれらの組み合わせであり得る。前記塩基性化合物も水溶液の形態で使用されてもよく、このときの溶媒としては、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水との混合物が使用され得る。
【0090】
前記塩基性化合物は、反応溶液のpHを調節するために添加されるものであって、金属溶液のpHが9~11になる量で添加され得る。
【0091】
一方、前記共沈反応は、窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気で、40℃~70℃の温度で行われ得る。
【0092】
上記のような工程によってニッケル-コバルト-マンガン水酸化物の粒子が生成され、反応溶液内に沈殿する。ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質、及びマンガン含有原料物質の濃度を調節して、金属全体含量中のニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である前駆体を製造し得る。沈殿したニッケル-コバルト-マンガン水酸化物粒子を通常の方法によって分離し、乾燥してニッケル-コバルト-マンガン前駆体を収得し得る。前記前駆体は、一次粒子が凝集されて形成された二次粒子であり得る。
【0093】
その後、上述した前駆体とリチウム原料物質とを混合して一次焼成する。
【0094】
前記リチウム原料物質としては、リチウム含有硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、またはオキシ水酸化物などが使用され得、水に溶解可能なものであれば特に限定されない。具体的には、前記リチウム原料物質は、LiCO、LiNO、LiNO、LiOH、LiOH・HO、LiH、LiF、LiCl、LiBr、LiI、CHCOOLi、LiO、LiSO、CHCOOLi、またはLiなどであり得、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得る。
【0095】
前記一次焼成は、ニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である高含量ニッケル(high-Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、700℃~1,000℃で焼成し得、より望ましくは780℃~980℃、さらに望ましくは780℃~900℃で焼成し得る。前記一次焼成は、空気または酸素雰囲気下で行われ得、10時間~35時間行われ得る。
【0096】
次いで、前記一次焼成の後、追加的な二次焼成を行うことができる。
【0097】
前記二次焼成は、ニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である高含量ニッケル(high-Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、650℃~800℃で焼成し得、より望ましくは700℃~800℃、さらに望ましくは700℃~750℃で焼成し得る。前記二次焼成は、空気または酸素雰囲気下で行われ得、二次焼成時に酸化コバルトまたは水酸化コバルトを20,000ppmで追加してもよい。
【0098】
一方、前記(S1)段階と前記(S2)段階との間に別途の水洗過程を含まないことを特徴とする。
【0099】
このような工程を経て、一次巨大粒子を含む二次粒子凝集体を備えた正極活物質を製造することができる。
【0100】
<正極及びリチウム二次電池>
本発明のさらに他の一態様によれば、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池を提供する。
【0101】
具体的には、前記正極は、正極集電体、及び前記正極集電体上に形成されて前記正極活物質を含む正極活物質層を含む。
【0102】
前記正極において、正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されなく、例えばステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用され得る。また、前記正極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有し得、前記正極集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めてもよい。例えばフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用され得る。
【0103】
前記正極活物質層は、上述した正極活物質とともに、導電材及びバインダーを含み得る。
【0104】
このとき、前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池に化学変化を引き起こさず電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうちの1種単独でまたは2種以上の混合物が使用され得る。前記導電材は、通常、正極活物質層の総重量に対して1~30重量%で含まれ得る。
【0105】
また、前記バインダーは、正極活物質粒子同士の間の付着及び正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体的な例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などが挙げられ、これらのうちの1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して1~30重量%で含まれ得る。
【0106】
前記正極は、上述した正極活物質を用いることを除き、通常の正極の製造方法によって製造され得る。具体的には、前記正極活物質、及び選択的にバインダー及び導電材を含む正極活物質層形成用組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することで製造され得る。このとき、前記正極活物質、バインダー、導電材の種類及び含量は、上述した通りである。
【0107】
前記溶媒は、当技術分野で一般に使用される溶媒であり得、ジメチルスルホキシド(DMSO)、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、または水などが挙げられ、これらのうちの1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造収率を考慮して前記正極活物質、導電材及びバインダーを溶解または分散させ、以後の正極製造のための塗布時に優れた厚さ均一度を実現可能な粘度を持たせる程度であれば十分である。
【0108】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極活物質層形成用組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることで製造されてもよい。
【0109】
本発明のさらに他の一態様によれば、前記正極を含む電気化学素子が提供される。前記電気化学素子は、具体的には電池またはキャパシタなどであり得、より具体的にはリチウム二次電池であり得る。
【0110】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極、前記正極と対向して位置する負極、前記正極と負極との間に介在されるセパレータ及び電解質を含み、前記正極は、上述した通りである。また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレータの電極組立体を収納する電池容器、及び前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含み得る。
【0111】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体、及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含む。
【0112】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず高い導電性を有するものであれば特に制限されなく、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。また、前記負極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有し得、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の接着力を高めてもよい。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用され得る。
【0113】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに、選択的にバインダー及び導電材を含む。前記負極活物質層は、一例として負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダー及び導電材を含む負極形成用組成物を塗布して乾燥するか、又は、前記負極形成用組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネーションすることで製造され得る。
【0114】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的な挿入(intercalation)及び脱離(deintercalation)が可能な化合物が使用され得る。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などのリチウムと合金化可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドーピング及び脱ドーピング可能な金属酸化物;若しくはSi-C複合体またはSn-C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料とを含む複合物などが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得る。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が使われてもよい。また、炭素質材料としては、低結晶性炭素及び高結晶性炭素などがすべて使用され得る。低結晶性炭素としては、軟質炭素及び硬質炭素が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球形または繊維形の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛、熱分解炭素、メソフェーズピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソカーボンマイクロビーズ(meso-carbon microbeads)、メソフェーズピッチ(mesophase pitches)、及び石油または石炭系コークスなどの高温焼成炭素が代表的である。
【0115】
また、前記バインダー及び導電材は、正極に対して上述したものと同様である。
【0116】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは負極と正極とを分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常リチウム二次電池のセパレータとして使われるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して抵抗が低く且つ電解液含浸能力に優れたものが望ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子から製造した多孔性高分子フィルム、または、これらの2層以上の積層構造体が使用され得る。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性または機械的強度の確保のため、セラミックス成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用され得、選択的に単層または多層構造で使用され得る。
【0117】
また、本発明で使われる電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0118】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含み得る。
【0119】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割を果たせるものであれば、特に制限なく使用され得る。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンなどのエステル系溶媒;ジブチルエーテルまたはテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ベンゼン、フルオロベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(RはC2~C20の直鎖状、分枝状または環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含み得る)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン類などが使用され得る。中でも、カーボネート系溶媒が望ましく、電池の充放電性能を向上可能な高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)との混合物がより望ましい。この場合、環状カーボネートと線状カーボネートとは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが電解液性能に優れて望ましい。
【0120】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で使われるリチウムイオンを提供可能な化合物であれば、特に制限なく使用され得る。具体的には、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(Cなどが使用され得る。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0M範囲内であり得る。リチウム塩の濃度が上記の範囲に含まれれば、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するため、優れた電解質性能を示し、リチウムイオンが効果的に移動可能である。
【0121】
前記電解質には、上述した電解質構成成分の外にも、電池寿命特性の向上、電池容量減少の抑制、電池の放電容量向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、または三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれ得る。このとき、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1~5重量%で含まれ得る。
【0122】
本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯機器、及びハイブリッド電気自動車(HEV)などの電気自動車分野などにおいて有用である。
【0123】
これにより、本発明のさらに他の一態様によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール、及びそれを含む電池パックが提供される。
【0124】
前記電池モジュールまたは電池パックは、電動工具;電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)を含む電気車両;または電力貯蔵用システムのうちのいずれか一つ以上の中大型デバイスの電源として用いられ得る。
【0125】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者が本発明を容易に実施できるように実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明は多様な他の形態で具現可能であって、後述する実施例に限定されることはない。
【0126】
<実施例1>
(正極活物質の製造)
タップ密度が1.8g/ccであるニッケル-コバルト-マンガン含有水酸化物(Ni0.86Co0.07Mn0.07(OH))正極活物質前駆体とリチウム原料物質LiOHを最終Li/M(Ni,Co,Mn)モル比が1.01になるようにヘンシェルミキサー(700L)に投入し、中心部300rpmで20分間混合した。混合された粉末を大きさ330mm×330mmのアルミナるつぼに入れ、酸素(O)雰囲気下、900℃で10時間一次焼成して一次焼成物を形成した。
【0127】
その後、前記一次焼成物をジェットミル(jet mill)を用いて、フィーディング(feeding)80psi、グラインディング(grinding)60psiで粉砕した。
【0128】
粉砕された一次焼成物を大きさ330mm×330mmのアルミナるつぼに入れ、酸素(O)雰囲気下でCo(OH)を10,000ppm添加し、700℃で5時間二次焼成して正極活物質を製造した。
【0129】
<実施例2>
前駆体のタップ密度を1.5g/ccにし、一次焼成温度を20℃に下げ、LiOHを最終Li/M(Ni,Co,Mn)モル比が1.05になるようにヘンシェルミキサー(700L)に投入し、二次コーティング時にLiを0.02mol%さらに添加したことを除き、実施例1と同様の方法で正極活物質を製造した。
【0130】
<比較例>
共沈反応器(容量20L)に蒸留水4リットルを入れた後、温度50℃を維持しながら28重量%濃度のアンモニア水溶液100mLを投入した。その後、NiSO、CoSO、MnSO、Al(SOをニッケル:コバルト:マンガン:アルミニウムのモル比が82:5:11:2になるように混合した3.2mol/L濃度の遷移金属溶液を300mL/hrで、28重量%のアンモニア水溶液を42mL/hrで反応器に連続的に投入した。400rpmのインペラ速度で撹拌し、pH維持のため、40重量%の水酸化ナトリウム溶液をpHが11.0に維持されるように投入した。24時間共沈反応させて前駆体粒子を形成した。前記前駆体粒子を分離して洗浄した後、130℃のオーブンで乾燥して前駆体を製造した。
【0131】
共沈反応に合成されたNi0.82Co0.05Mn0.11Al0.02(OH)前駆体をLiCOとLi/Me(Ni,Co,Mn、Al)モル比が1.03になるように混合し、酸素雰囲気下、800℃で10時間熱処理してLiNi0.82Co0.05Mn0.11Al0.02リチウム複合遷移金属酸化物を含む正極活物質を製造した。
【0132】
【表1】
【0133】
[実験例1:平均粒径]
D50は、粒度分布の50%基準での粒子サイズと定義され、レーザー回折法を用いて測定した。
【0134】
[実験例2:一次粒子の結晶サイズ]
LynxEye XE-T位置検出素子が取り付けられたブルカー社製のEndeavor(CuKα、λ=1.54Å)を用いてFDS 0.5°、2θ 15°~90°領域に対し、ステップサイズ0.02°で全スキャン時間が20分になるように試料を測定した。
【0135】
測定されたデータに対し、各位置(site)から電荷(charge)(遷移金属サイトでの金属は+3、LiサイトのNiは+2)とカチオンミキシングを考慮してリートベルト解析を行った。結晶サイズ分析の際、計器的拡張(instrumental broadening)はブルカー社製のTOPASプログラムに実装されているファンダメンタルパラメータアプローチ(Fundemental Parameter Approach:FPA)を用いて考慮され、フィッティング時、測定範囲の全体ピークが使われた。ピーク形態はTOPASで使用可能なピークタイプのうちのFP(First Principle)でローレンツコントリビューション(Lorenzian contribution)のみを用いてフィッティングし、このときストレインは考慮しなかった。結晶サイズ結果を表1に示した。
【0136】
[実験例3.真密度の測定]
X LynxEye XE-T位置検出素子が取り付けられたブルカー社製のEndeavor(CuKα、λ=1.54Å)を用いてFDS 0.5°、2θ 15°~90°領域に対し、ステップサイズ0.02°で全スキャン時間が20分になるように試料を測定した。測定したデータに基づいて真密度=(単位セル内の元素の重量、g)/(単位セル体積、cm)で計算した。
【0137】
[実験例4.コイン型フルセルの高温寿命特性]
実施例1、2、比較例で製造されたそれぞれの正極活物質を使用して下記のように製造されたリチウム二次電池フルセルに対し、45℃でCC(定電流(Constant Current))-CV(定電圧(Constant Voltage))モードで0.7Cで4.25Vになるまで充電し、0.5Cの定電流で2.5Vまで放電して300回充放電実験を行ったときの容量維持率を測定して寿命特性を評価した。その結果を図1及び表2に示した。
【0138】
【表2】
【0139】
[実験例5:SOC毎のDCR抵抗の測定]放置
コイン型フルセルを製作し、10時間放置した後、フォーメーション(0.2C/0.2C)充放電した。4.25V充電後、フォーメーション時に測定された放電容量を基準にしてSOCをセットし、放電パルス(1.0Cパルスを10秒)を印加して、各SOCにおける抵抗値を計算した。
【0140】
DC-IR計算の場合、DCIR=(V0-V1)/I
(V0=パルス以前電圧、V1=パルス10秒後の電圧、I=印加電流)で計算した。
【0141】
その結果を図2、表2、及び表3に示した。
【0142】
【表3】
図1
図2
【国際調査報告】