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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ベーンモーター
(51)【国際特許分類】
   F01C 1/344 20060101AFI20231130BHJP
   F01C 1/44 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
F01C1/344
F01C1/44
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532102
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 KR2020018807
(87)【国際公開番号】W WO2022114366
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0164743
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522240966
【氏名又は名称】イーエックスディーエル カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110434
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】チェ ウォンソク
(57)【要約】
圧力流体が投入され、排出される圧力流体入口及び圧力流体出口を有するケーシングと、ケーシング内において圧力流体の圧力を伝達されて、ケーシングに据置された回転軸を中心として回転するように構成されるローターと、を備え、ローターは、回転軸と一致する中心軸を有する全体的に円柱状のローター本体と、前記ローター本体の側面に形成されたベーンガイド溝に配設され、回転位相に応じて前記ベーンガイド溝から突出する幅が変化するベーンと、を有するベーンモーターにおいて、回転軸の長手方向にみるとき、ベーンは、円弧状を呈し、ベーンガイド溝は、ベーンを収容できるように円弧状の溝をなし、ベーンは、ベーンの一方の側に配設されるリンクロッドによりローター本体の一部に回転自在に結合されることを特徴とするベーンモーターが開示される。本発明によれば、ベーンを円弧状に形成し、この円弧状のベーンが、直線往復運動の代わりに、円弧の軌跡に沿った回転運動をするようにすることにより、ベーンの動作異常、摩耗、摩擦などの問題を軽減することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力流体が投入され、排出される圧力流体入口及び圧力流体出口を有するケーシングと、
前記ケーシング内において圧力流体の圧力を伝達されて、前記ケーシングに据置された回転軸を中心として回転するように構成されるローターと、
を備え、
ローターは、回転軸と一致する中心軸を有する全体的に円柱状のローター本体と、前記ローター本体の側面に形成されたベーンガイド溝に配設され、回転位相に応じて前記ベーンガイド溝から突出する幅が変化するベーンと、を有するベーンモーターにおいて、
前記回転軸の長手方向にみるとき、前記ベーンは、円弧状を呈し、前記ベーンガイド溝は、前記ベーンを収容できるように円弧状の溝をなし、前記ベーンは、前記ベーンの一方の側に配設されるリンクロッドにより前記ローター本体の一部に回転自在に結合されることを特徴とする、ベーンモーター。
【請求項2】
前記回転軸の長手方向に(側面図において)みるとき、前記ベーンを収容する前記ベーンガイド溝の入口において前記ローターの回転方向を基準として後側を部分的に除去して前記ベーンの後方面をさらに露出させるように拡張部が形成され、
前記拡張部は、前記ベーンが最大限に外側に移動するとき、前記ベーンの下端を露出させないように形成されることを特徴とする、請求項1に記載のベーンモーター。
【請求項3】
前記ケーシングは、円筒状のケーシング本体の部分と前記ケーシング本体の長手方向の両端を仕上げる仕上げ板の部分を備えてなり、
前記圧力流体入口は、前記ケーシング本体の部分の側面に形成されることを特徴とする、請求項1に記載のベーンモーター。
【請求項4】
前記ケーシングは、円筒状のケーシング本体の部分と前記ケーシング本体の長手方向の両端を仕上げる仕上げ板の部分を備えてなり、
前記圧力流体入口は、前記仕上げ板の部分に形成されることを特徴とする、請求項1に記載のベーンモーター。
【請求項5】
前記ベーンの後方面の上部には、前記ベーンの一部の厚さに対して前記ベーンの前方面の方向に凹むように形成された圧力増強溝が配設されることを特徴とする、請求項1に記載のベーンモーター。
【請求項6】
前記圧力増強溝は、一部が前記ローターの回転軸側に凹んだ部分をなすように、または前記回転軸方向にみるとき(側面図上において)前記圧力増強溝の入口の真ん中の前記ローターの回転軸側の入口の部分に鋭角爪が形成されるように刻設されることを特徴とする、請求項5に記載のベーンモーター。
【請求項7】
前記ケーシング内において前記ローターを収容し、前記流体入口を介して投入された圧力流体が前記流体出口を介して排出されるまで圧力流体を内部に保持しながら、前記ベーンの終端が内壁面に接するように構成されて、前記ローターが回転するときに一緒に回転するが、互いに異なる回転数にて回転できるように構成されたシリンダー状内筒をさらに備え、
前記圧力流体入口は、前記ローターの回転につれて前記内筒と前記ローター本体と前記ベーンの後方面とにより取り囲まれた仕切り空間と重なり合うとき、または遭遇するとき、前記仕切り空間に圧力流体を投入できるように形成されることを特徴とする、請求項4に記載のベーンモーター。
【請求項8】
前記回転軸の長手方向に(側面図において)みるとき、前記ベーンを収容する前記ベーンガイド溝の入口において前記ローターの回転方向を基準として後側を部分的に除去して前記ベーンの後方面をさらに露出させるように拡張部が形成され、
前記圧力流体入口は、前記ローターが回転するとき、前記拡張部が移動する軌跡の一部の区間と重なり合うように構成された1本の孔、または並べられた複数本の孔を備えてなることを特徴とする、請求項7に記載のベーンモーター。
【請求項9】
前記拡張部は、前記ローターの長手方向の全体の区間にわたって前記ローター本体を除去して形成される形状の1次拡張部と、前記1次拡張部の前記ローターの長手方向の両端の部分において前記ローター本体をさらに除去して前記仕上げ板の部分と前記ベーンの後方面を眺める凹状の面を有するように形成される2次拡張部と、を備えてなることを特徴とする、請求項8に記載のベーンモーター、
【請求項10】
前記ケーシング内において、前記内筒の回転中心軸と前記ローターの回転軸は、一定の位置を保持し、前記内筒をなすシリンダーが前記ケーシング内において回転するとき、前記シリンダーの外側の壁面と前記ケーシングの内壁面との摩擦を低減するように転がり手段がさらに配備されることを特徴とする、請求項7に記載のベーンモーター。
【請求項11】
前記圧力流体入口は、並べられた複数本の孔を備えてなり、
前記複数本の孔にそれぞれ1本ずつ連結される複数本の圧力流体流路と前記複数本の圧力流体流路ごとに別途に形成される開閉調節手段を備えて、前記開閉調節手段を介して出力またはトルクを段階別に(多段に)調節できるように構成されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のベーンモーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーンモーターに関し、より詳細には、空圧を用いて回転力を生じさせることのできるベーンモーターにおいて、ベーンが溝において安定的に動くことができ、ベーンの摩耗を効果的に低減することのできる構成に関する。
【背景技術】
【0002】
ベーンモーターは、流体圧力を回転動力に切り換える機械装置の一種である。図1は、既存のベーンモーターの一例を示す。
【0003】
ここで、ケーシング211内に回転するローターが配設され、ケーシング211の一部には、圧力を働かせる流体が流れ込む流体入口253と流体が放出される流体出口255がある。流体入口253に圧力流体を流れ込ませると、流体圧力は、ローターの外側に伸び、その伸びた長さが可変であるベーン235に働くことになる。したがって、ベーン235は、圧力方向に移動しながら、ローターの全体がケーシング211内において回転することになる。ベーン235に圧力を伝達した流体は、ケースの流体出口255に達すると、圧力の低い流体出口255を介して放出される。
【0004】
すなわち、流体入口に入ってきた圧力流体が圧力の低い流体出口と遭遇すると、流体出口に抜け出ながら、その過程においてベーン235に圧力を与えてローターを回転させる。
【0005】
このとき、ベーン235は、ローター本体231に結合され、ベーン235の本体231から突出する長さは可変である。このために、ベーン235は、ローター本体231の溝231aに挿し込まれ、溝231a内において溝の長手方向に移動することができる。ケーシング211の内壁面とローター本体231の回転軸233は、ケーシングの内壁面の位置に応じてその間隔が異なるため、間隔の広い個所においては、ベーン235の多くの部分が本体231の溝231aから抜け出てベーン235の突出長さが増加し、間隔の狭い個所においては、ベーンのほとんどは、本体溝に挿し込まれた状態となってベーンの突出長さが減少することになる。
【0006】
ベーン235が本体231の溝231aに円滑に出入りするために、溝の底部は、ベーンとの間にバネなどの弾性体を備えていてもよい。あるいは、ローターの回転遠心力によりベーンは溝から抜け出ることができるので、別途のバネは配設されなくてもよい。
【0007】
ローター本体231と内壁面との間隔が狭くなる区間においては、ローター本体231が回転するとき、ベーン235の終端は、内壁面と接しながら溝231aに挿し込まれるようにする圧力を受けることになる。
【0008】
ところが、既存のベーンモーターにおいては、ベーン235の終端とケーシング211の内壁面との間の隙間が大き過ぎると、流体がこの隙間に抜け出て圧力のロスを招き、隙間が小さ過ぎると、ベーンとケーシングの内壁面との摩擦が甚大であるため、流体圧力によるエネルギーが摩擦によりかなり損失され、ベーンと内壁面との摩耗により取り替え及びメンテナンスのコストが高騰してしまうという問題がある。このような問題は、互いにトレードオフ(trade off)の関係があり、既存のベーンモーターにおいて完全に解決できない問題であるため、様々な材質を有し、かつ、様々なサイズを有する個々のベーンモーターの種類において実験的に最も効率が抜群であり、しかも、耐久性がある適切な隙間の大きさを把握しなければならない。
【0009】
また、流体圧力によるローターの回転力を大きくするためには、ベーンに及ぼされる流体の力の総量を増やさなければならず、この力は、単位面積当たりに働く力である圧力にこの圧力が働く面積を乗じた値であるため、ローターが回転するとき、ベーンと流体とが当接し合う面積を増やす必要がある。
【0010】
しかしながら、ベーンが溝からあまりにも遠く抜け出てしまうと、完全に抜脱されたり、あるいは、ベーンがケーシングの内壁面において摩擦される中で、振動やその他の不安定な状態に陥ったりする虞があるため、ローターへの安定的な結合を保持する範囲内において、流体との接続面積を増やす設計形態をなすことが重要になる。
【0011】
併せて、ベーンモーターにおいて少ない量の圧力流体により回転力を高められる効率よい構成を得ることは常に要請されることであり、特に、限られた量の圧力流体タンクに圧力流体を載せて移動する機構に配設されるベーンモーターにおいては、このような効率よい構成の必要性がさらに高くなる。したがって、ベーンと圧力流体との接触面積を増やす設計においても、このような必要性は常に考慮の対象となる。
【0012】
一方、以上において述べたベーンの摩擦、摩耗と動作異常の問題を解決するための一つの方法として、ベーン溝の刻設角度がローターの放射方向と一定の角度だけずれるようにベーン溝を刻設する方法もまた提案されている。このような刻設角度は、ベーンの材質、大きさ、ベーンと当接するケーシングの材質、表面状態などを考慮して定められ得る。しかしながら、ベーンがローターに対してローターの回転中心軸からの放射方向と一定の角度だけずれることもまた、ベーンの摩擦、摩耗の問題を根本的に解決することではなく、ベーンの放射方向となす角度が大き過ぎると、ベーンを駆動する圧力流体による圧力をむしろ上手く利用できなくなることが懸念される。
【0013】
大韓民国登録特許第10-1199197号には、平板状を呈するベーンをアーク状(Arc)に変え、このアークの中心をリンクとして形成してベーンが回転往復運動をするように構成されたベーン機構が開示される。このような構成は、平板状のベーンの直線状の往復動作に起因する問題、例えば、ベーンの摩擦、摩耗とベーンの動作異常の問題を解決するためのものであるが、ここでは、アーク状のベーンをローターにリンクさせるためのコネクターの動きのためにローターにあまりにも大き過ぎる溝を形成してこの溝に圧力流体が満たされ、この溝に満たされた圧力流体の圧力は、位置に応じて常に同一であるわけではない。したがって、圧力流体を入口に供給するとき、この空間を高い圧力の空間にするためにさらに多量の圧力流体が供給されなければならないため、少ない量の圧力流体にて大きな出力が出せるようにするベーンモーターの効率性を低下させる虞がある。
【0014】
一方、本発明の発明者が出願した大韓民国特許出願第10-2019-0171567号には、ベーンとケーシングとの間の摩耗、摩擦を減らすために、ローターとケーシングとの間にシリンダー状の内筒を配設する図2のようなベーンモーターが開示される。
【0015】
ここで、ケーシング内において圧力流体の圧力を伝達されてケーシングに据置された回転軸を中心として回転するように構成されたローターは、回転軸と一致する中心軸を有する全体的に円柱状の本体と、本体の側面に形成された溝に配設され、回転位相に応じて溝から突出する幅が変化するベーンと、を有する。
【0016】
ケーシングは、ローターを収容するシリンダー状の外筒の両端を仕上げ板で閉じる円筒状の閉鎖容器の形状を呈し、仕上げ板の少なくとも1枚に圧力流体の入口が配設され、圧力流体の入口は、シリンダー状の内筒の内側でありながら、ローター本体の外側である空間とつながる円弧状の曲線状を呈する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上述した既存のベーンモーターにおいて、ベーンが直線往復運動をすることに起因するベーンの動作異常、摩耗、摩擦などの問題を軽減することのできる構成を提供することを目的とする。
【0018】
本発明は、これと同時に、少ない量の圧力流体にて高い出力またはトルクを提供可能な構成を有するベーンモーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するための本発明は、圧力流体が投入され、排出される圧力流体入口及び圧力流体出口を有するケーシングと、ケーシング内において圧力流体の圧力を伝達されて、ケーシングに据置された回転軸を中心として回転するように構成されるローターと、を備え、ローターは、回転軸と一致する中心軸を有する全体的に円柱状のローター本体と、前記ローター本体の側面に形成されたベーンガイド溝に配設され、回転位相に応じて前記ベーンガイド溝から突出する幅が変化するベーンと、を有するベーンモーターにおいて、回転軸の長手方向にみるとき、ベーンは、円弧状を呈し、ベーンガイド溝は、ベーンを収容できるように円弧状の溝をなし、ベーンは、ベーンの一方の側に配設されるリンクロッドによりローター本体の一部に回転自在に結合されることを特徴とする。
【0020】
本発明において、ベーンがリンクロッドを介してローター本体に回転可能な結合をするために、リンクロッドをローター本体の一部に回転自在に結合するヒンジが使用可能である。
【0021】
本発明において、リンクロッドは、ベーンの上端に結合され、ヒンジ軸は、ローター本体の表面層に配設されて、前記ベーンが前記ベーンガイド溝に最大限に収容されるとき、ローターの表面には、別途のリンクロッド収容溝は刻設されないことが好ましく、収容溝が刻設される場合であっても、リンクロッドのみが収容されるように最小の体積に形成されることが好ましい。
【0022】
例えば、ローター回転軸が指向する方向を基準として、リンクロッドは、ローター本体の全体の長さあるいは厚さ(ローターを円柱状とみなさず、厚い円板状とみなす場合)よりも遥かに小さな厚さを有し、ローター本体の表面においてリンクロッドを収容する溝は、溝の底面が、ベーンがベーンガイド溝に収容されるとき、リンクロッドに直接的に衝突しない範囲内において、リンクロッドと微小な隙間をもってかろうじて収容できるように構成されることが好ましい。
【0023】
このような場合、リンクロッドは、ローターの長手方向の中間部分や長手方向の一方の端あるいは両端に配設されてもよく、それにより、ヒンジ軸もまたローターの長手方向の中間部分、一方の端面または両端面に配設されることができる。
【0024】
本発明において、ベーンガイド溝の入口において回転方向を基準として後方の入口には、ローター本体が一部除去された拡大部が配設されてもよく、拡大部をなすためのローター本体の除去は、ベーンガイド溝の入口を面取りしたり丸み付け(ラウンド)処理したりする方式により行われ得る。但し、このとき、ベーンの下側の終端(ローターの中心側の終端)は、ベーンが外側に最大限に出張るときにも拡大部まで出張らないようにすることが好ましい。そうしなければ、ベーンの下側の終端の下に拡大部を介して圧縮流体がベーンの前側の空間に漏れ出てそのベーンを前方に押す圧力が弱くなり、ベーン効率が低下する虞がある。
【0025】
本発明において、ベーンの背面の上部には、入流空気の圧力がベーンに上手く働けるように凹状の溝が形成されてもよい。このとき、溝は、単に前方の方向に凹んだ溝になることもあるが、側面図上からみるとき、溝の一部がローターの中心側に凹んだ部分をなすように、あるいは、溝の中心側(側面図上において、ローターの回転中心軸の方向)の入口に鋭角爪が形成されるように刻設することが好ましい。このような場合、流入流体の圧力がこの溝の部分に働いて、ベーンをベーンガイド溝の内部に入り込ませる傾向を帯び、これは、高圧の圧力流体がいきなりベーンに働いてベーンが前方に押されながら、これと同時に、ベーンがケーシングの内壁面と密着されて内壁面において自然に滑れないようにする回転妨害現象を防ぐ役割を果たすことができる。
【0026】
本発明において、圧力流体の入口は、1つまたは複数で分散されて配設されてもよく、ケーシングの円筒状の本体に回転方向に沿って配設されてもよく、ケーシングの円筒状の本体の両端を仕上げる仕上げ板の部分に形成されて側方からローターに向かって圧力流体を供給するように構成されてもよい。
【0027】
本発明において、ベーンの往復動作のために、外側に(ケーシングの内壁側に)復元力を働かせる弾性手段、例えば、バネが配設されてもよく、この弾性手段は、ベーンガイド溝に配設されてもよく、ヒンジ軸の周りに配設されてもよい。
【0028】
本発明において、ケーシング内にローターを収容し、ケーシングの入口を介して投入された圧力流体がケーシング出口を介して排出されるまで圧力流体を内部に保持しながら、ベーンの終端がその内壁面に接するように構成されて、ケーシング内において回転中心の位置は回転軸から離れるが、ローターが回転するときに一緒に回転できるように構成されたシリンダー状の内筒をさらに備えていてもよい。
【0029】
このような場合、ケーシングは、内筒及びローターを包括し、内部において内筒が回転可能な空間を確保できる概ねシリンダー状の胴体と、シリンダー状の胴体の両端を仕上げる部分もしくは仕上げ板と、を有する円筒状の閉鎖容器の形状を呈し、このとき、仕上げ板の部分は、内筒の長手方向(回転軸の方向)の両端、ローター本体及びベーンの両端と接する部分において相互間に滑ること(摺動)は可能であり、圧力流体は漏れ出にくい微小な隙間を有するように配設されてもよく、出口及び入口は、両側または片側の仕上げ板に配設されてローター回転軸の方向にみるとき、シリンダー状の内筒の内側でありながら、ローター本体の外側である空間と重なり合うとき、圧力流体がその空間に流れ込んだり、その空間から流出されたりするようにすることができる。
【0030】
このとき、ベーンガイド溝の後側の入口の部分にローターを部分的に除去して側面拡張部を配設し、圧力流体の入口は、側面拡張部が配設された空間に限定して重なり合うように仕上げ板に円弧に近い曲線状に、さらに正確には、側面拡張部が移動しながら描く軌跡の一部分に沿って配設されてもよい。いうまでもなく、側面拡張部は、ベーンとローターと内筒の内側面とに取り囲まれた空間と連結されて、その空間の一部を形成することになる。このとき、入口は、ローターが回転するとき、ローターと内筒との間の空間もしくは隙間が生じ、さらに拡開され始める位置において最初に遭遇するようにしてもよい。
【0031】
一方、本発明において、圧力流体入口は、並べられた複数本の孔を備えてなる場合、本発明のベーンモーターは、複数本の孔にそれぞれ1本ずつ連結される複数本の圧力流体管路(流路)と、これらの複数の圧力流体管路ごとに別途に形成される開閉調節手段と、を備え、これらの開閉調節手段を用いて、ベーンモーターの出力またはトルクを段階別に(多段に)調節することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ベーンを円弧状に形成し、この円弧状のベーンが、直線往復運動の代わりに、円弧の軌跡に沿った回転運動をするようにすることにより、ベーンの動作異常、摩耗、摩擦などの問題を軽減することができる。
【0033】
本発明の一側面によれば、ベーンの動作異常、摩耗、摩擦を軽減するとともに、少ない量の圧力流体にて高い出力またはトルクを提供して回転効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】既存のベーンモーターの構成を示す斜視図。
図2】他のベーンモーターの構成を示す分解斜視図。
図3】本発明の第1の実施形態に対する分解斜視図。
図4】本発明の第1の実施形態を回転軸と垂直な平面に切り取った断面を示す側断面図。
図5】本発明の第1の実施形態においてローター本体に結合されるベーンを別途に示す斜視図。
図6】本発明の第1の実施形態においてベーンの後方面の上部に刻設される圧力増強溝とそれに置き換えて適用可能な圧力増減溝とを対比させて示す部分側面図。
図7】本発明の第2の実施形態に対する分解斜視図。
図8】本発明の第2の実施形態に対する透視的な側面図。
図9】本発明の第2の実施形態においてローター本体及びベーンの結合により形成されるローターを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面に基づいて、具体的な実施形態を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0036】
(実施形態1)
【0037】
図3から図5を参照すると、この実施形態において、ベーンモーターは、最外郭をなすケーシングと、このケーシング内に位置するローターと、を備えてなり、ここで、特に説明する事項を除けば、概して既存のケーシングとローターの構成と略同様に構成され得る。
【0038】
例えば、ケーシングは、概ねシリンダー状のケーシング本体311と、このケーシング本体311の長手方向の両端を仕上げる仕上げ板313、315と、を備えてなる。
【0039】
ローター本体330は、円柱状または厚い円板状を呈し、円柱の側面には、ベーン335が配設されるベーンガイド溝331aが形成される。
【0040】
但し、この実施形態においては、図3から図5から明らかなように、ベーン335は、円弧状を有する厚い板状を呈し、ベーンガイド溝331aは、このようなベーンを収容できる円弧状の溝からなる。
【0041】
また、ベーン335は、ベーンの一方の側(回転方向を考慮するとき、前側である前方側)に配設されるリンクロッド337によりローター本体330の一部に連結され、このリンクロッド337及びヒンジ軸339により回転可能なようにローター本体に結合される。
【0042】
リンクロッド337及びヒンジ軸339は、ローターの全体の長さもしくは厚さ(ローター本体を厚い円板とみなすとき)にわたって形成されず、一部の厚さにかけて形成されてもよく、ここでは、ローターの回転軸の方向の中間部分においてローターの厚さに比べて薄い厚さに形成される。なお、リンクロッド337は、ベーン335の上端(ローターの回転中心軸を基準として最外郭)に結合され、ヒンジ軸339は、ローター本体330の表面層(外郭層)に配設される。
【0043】
したがって、ここでは、ベーンがベーンガイド溝331aに最大限に収容されるとき、ローター本体の長手方向の中間部に刻設されるリンクロッド収容溝331cは、最小の深さに形成されて刻設し易く、リンクロッドが占める体積が最小限に抑えられる。但し、リンクロッド収容溝331cは、ベーンが動くとき、リンクロッド337が直接的にローター本体とぶつかって振動を生じさせないように僅かな余分の深さを有するようにすることが好ましく、ベーンガイド溝もまた同様に、僅かな余分の深さを有するようにすることが好ましい。
【0044】
いうまでもなく、リンクロッド337は、ローター本体において回転軸を指向する方向の一方の端にのみ配設されてもよく、他方の端にも1本がさらに配設されて2本が回転軸の方向の両端に対称状に配設されてもよく、このような場合、より一層安定的に往復角運動が行えるようにベーンをローターに支持することができる。
【0045】
図4の側面図においてみるとき、円形のローター本体330にベーンガイド溝331aは単にベーンが挿し込み可能なように形成する場合、ベーンガイド溝の入口において回転方向を基準として後側のローター本体の部分は、ローター本体の表面と溝は鋭角をなすことになるが、この実施形態においては、ベーンガイド溝の入口において後側のローター本体の部分が一部除去されて丸み付け処理などのようなスムーズでかつ緩やかな曲線をなしている。これは、一種の面取りによる拡張部331bの配設であるとみなすこともできる。
【0046】
この除去された部分もしくは拡張部331bを用いて、ベーンの後方面と、ケーシングの内壁面及びローター本体の表面により取り囲まれた仕切り空間はさらに大きく形成され、拡張部がない場合に比べてさらに早く圧力流体入口と遭遇し、さらに多くのベーンの後方面を露出させてベーンの後方面のさらに広い面積を通して圧力を働かせるようにする。
【0047】
但し、このとき、ベーン337の下側の終端(ローターの中心側の終端)は、ベーン337が外側に最大限に出張るときにも、拡張部331bまで出張らないようにする。もし、ベーンの下側の終端が拡張部と遭遇すれば、ベーンの下側の終端の下に拡張部を介して圧縮流体がベーンの前側の空間に漏れ出て前側の空間の圧力は大きくなり、後側の空間の圧力は減って、そのベーンを前方に押す圧力が弱くなり、ベーン効率が低下する。
【0048】
仕上げ板313、315には、ローターに連結される回転軸が据置されたり通過したりする回転軸取付穴351が配設される。回転軸は、ローター本体330と一体に形成されてもよい。
【0049】
ここでは、圧力流体入口と圧力流体出口は、ケーシング本体311である概ね円筒状部分の側壁に形成され、外部の高圧の流体が投入される圧力流体入口355は、ここで、4本の孔355a、355b、355c、355dに仕切られており、圧力流体出口353もまた2本の孔353a、353bに仕切られている。これらは、側面図上においてみるとき、円周方向に並べられて、ローターが回転するとき、ベーンと、ローター本体及びケーシングにより取り囲まれたそれぞれの仕切り空間と順番に遭遇することになる。
【0050】
ここでは、図示はしないが、回転軸取付穴が形成された仕上げ板には、軸受けが配設されて、回転軸は、仕上げ板313と直接的に当接することなく、軸受けにより回転するときに摩擦を減らすことができる。このような構成において、ローターは、ケーシング本体311の内側面と接しながら回転することになる。
【0051】
4本に仕切られて圧力流体入口を構成する孔のうち、回転方向を考慮するとき、各ベーンが最初に遭遇する第1の孔355aの位置は、ローターが回転するとき、ベーン337がベーンガイド溝331aに完全に(もしくは、最大限に)収容された後、ローターとケーシング本体の内面との間の空間もしくは隙間が生じ始めてベーンもまた外側に移動できる位置になるようにすることができる。
【0052】
このような場合、ベーンの後方面と、ローター本体の表面及びケーシングの内面により取り囲まれた仕切り空間に外部の圧力流体が流れ込みながら、仕切り空間は、高い圧力の空間となり、圧力流体は、ベーンの後方面に圧力を働かせて、ベーンを前方側に押すことになる。したがって、ローターは、ここでみるとき、時計回り方向に回転することができる。
【0053】
この仕切り空間は、ローターの回転につれてベーン337がさらに外郭側に抜け出、ローターとケーシングの内面との間隔が広がりながら体積が大きくなり、かつ、この仕切り空間は、順番に第2の孔355b、第3の孔355c、第4の孔355dと遭遇しながら圧力流体を供給され続けることができる。したがって、仕切り空間の拡張にも拘わらず、かなりの高圧を保持することができ、仕切り空間の内部の高圧の流体の圧力がベーンの後方面に働き続け、ローターを時計回り方向に回すトルクを働かせることができる。
【0054】
この後、ローターが回転すれば、この仕切り空間は、圧力流体入口をなすすべての孔から遮断され、ベーンが最大限に外郭に押し出され、最大の体積を有しながら、内部圧力は減ることになる。
【0055】
そして、再びベーンが内壁面に押されてベーンガイド溝311aに挿し込まれていくことになり、この仕切り空間の体積が小さくなることになる。体積が小さくなると、仕切り空間の圧力は高くなるが、位置においては、第1の出口353b、第2の出口353aと順番に遭遇して圧力流体を排出することになるため、圧力はさらに下がることができ、ベーンは、ベーンガイド溝に最大限に収容される。
【0056】
したがって、圧力流体入口をなす孔及び圧力流体出口をなす孔の位置と空間の体積拡張比率に応じて僅かに異なってくる可能性があるが、ほとんどの場合、第1の孔311aと遭遇する仕切り空間に最大の圧力が働き、その前側の仕切り空間は順番に圧力流体による圧力が順番に小さくなって、それぞれのベーンには時計回り方向にローターが回転するようにするトルクが働くことになり、ローターの回転軸により外部にトルクまたは出力を伝達することができる。
【0057】
一方、ここで、ベーン337の後方面の上部には、ベーンの厚さを変化させる凹状の圧力増強溝336もまた形成されている。この凹状の圧力増強溝336は、回転軸が指向する方向を長手方向にみるとき、全体の長さにわたってベーンの前方面の方向に凹むように形成されるが、長手方向の一部の区間においてのみ形成されることも可能である。
【0058】
一般に、流体は、流体が当接する面に接する平面と垂直な方向に圧力を働かせ、このような圧力増強溝336の形成により流入流体の圧力がベーンにより一層効率よい方向に働いてローターの回転効率を高めることができる。
【0059】
このとき、圧力増減溝336は、単に前方の方向に凹んだ溝になることもあるが、圧力増強溝336’の一部がローターの中心側に凹んだ部分336a’をなすように、すなわち、回転軸の方向に眺めた図6の側面図上において見られるように、溝の入口に鋭角爪が形成されるように刻設してもよい。
【0060】
このような場合、流入流体の圧力がこの圧力増強溝336’の凹んだ部分336a’に働いてベーン337をベーンガイド溝331aの内部の方向に挿し込ませる傾向を帯び、これは、第1の孔355aにおいて高圧の圧力流体がいきなりベーンに働いてベーンが前方に押されながら、これと同時にベーン337がケーシングの内壁面と密着されて内壁面において自然に滑れないようにする回転妨害現象を防ぐ役割を果たすことができる。
【0061】
図6の部分側面図は、以上で説明したように、ベーンに形成される2つの類型の溝を対比させて示している。
【0062】
本発明において図示はしないが、ベーンの往復動作がより一層確実に行われるようにするために、外側に(ケーシングの内壁側に)復元力を働かせる弾性手段、例えば、バネが配設されてもよく、この弾性手段は、ベーンガイド溝に配設されてもよく、ヒンジ軸の周りに配設されてもよい。
【0063】
(実施形態2)
【0064】
図7から図9を参照すると、この実施形態においても、第1の実施形態とかなりの部分の構成を共有し、ベーンとローター本体との結合構成において基本的に同じ形態を備えて、ベーンは基本的に同じ動作をするように構成される。
【0065】
但し、この実施形態においては、前述した第1の実施形態の構成に加えて、ケーシング内にローターを収容し、ケーシングの圧力流体入口455を介して投入された圧力流体がケーシングの圧力流体出口を介して排出されるまで圧力流体を内部に保持しながら、ベーンの終端がその内壁面に接するように構成されて、ケーシング内において回転中心位置は回転軸433から離れるが、ローターが回転するときに一緒に回転できるように構成されたシリンダー状の内筒420をさらに備えて、これにより、圧力流体入口と出口は、内筒420の内側に圧力流体が送れるように仕上げ板413、415の部分に配設される。
【0066】
より具体的に全般的な構成について述べると、ここで、ケーシングは、内筒420及びローターを包括し、内部において内筒420が回転可能な空間を確保できるシリンダー状の胴体411aと、このシリンダー状の胴体411aの両端を仕上げる仕上げ板413、415と、を有する円筒状の閉鎖容器の形状を呈し、このとき、仕上げ板の部分は、内筒の長手方向(回転軸の方向)の両端、ローター本体430及びベーン435の両端と接する部分において相互間に滑ること(摺動)は可能であり、圧力流体は漏れ出にくい微小な隙間を有するように配設されてもよく、圧力流体出口及び圧力流体入口455は、両側または片側の仕上げ板に配設されてローター回転軸433の方向にみるとき、シリンダー状の内筒の内側でありながらも、ローター本体の外側である仕切り空間と重なり合うとき、圧力流体がその仕切り空間に流れ込んだりその仕切り空間から流出されたりするようにすることができる。
【0067】
ここでも、ベーン435は、ベーンの一方の側(回転方向を考慮するとき、前側である前方側)に配設されるリンクロッド437によりローター本体430の一部に配設されたヒンジ軸439に連結され、このリンクロッド437及びヒンジ軸439により回転可能なようにローター本体430に結合される。リンクロッド437が収容できるように、ローター本体の表面には、リンクロッド収容溝431bが配設される。
【0068】
ベーンガイド溝431aの入口の後側の部分においてローター本体を部分的に除去して1次拡張部431cが配設される。但し、この実施形態においては、ローター本体430に形成されたベーンガイド溝431aの長手方向の両端においてベーンガイド溝をなす入口のうち、後方部の入口が部分的に除去されて1次拡張部431cをなした状態で、この拡張部のローターの長手方向の両端部においてさらに除去することで、仕上げ板とベーンの後方面に向かって凹むように曲面状に形成される2次拡張部431dをさらに備える。
【0069】
したがって、2次拡張部431dは、1次拡張部431cと空間的に連結される。2次拡張部431dは、仕上げ板に形成された圧力流体入口455を介して圧力流体が注入されるとき、これをより一層手軽に受け入れられる空間を形成し、1次拡張部431cを後側に僅かに延ばしてローターの回転中にさらに長い時間の間に拡張部が圧力流体入口と重なり合うようにし、さらに多くの量の流体の流れ込みが行われるようにすることができる。
【0070】
回転軸の長手方向からみた図8のような透視的な側面図において、仕上げ板に配設された圧力流体入口455及び圧力流体出口は、ケーシング本体411aの内側でありながら、ローター本体430の外側である空間に重なり合うだけではなく、内筒420の内側でありながら、ローター本体430の外側である仕切り空間と重なり合うように位置することになる。特に、圧力流体入口は、複数本、ここでは、3本の孔からなり、複数本の孔及び圧力流体出口は、円弧と略同じ曲線に沿って概ね一定の幅を有するように構成される。
【0071】
各仕上げ板において圧力流体入口をなす複数本の孔は、仕上げ板の円周と略同じ形状の曲線軌跡に沿って並べられる。さらに正確には、側面図においてみるとき、2次拡張部が移動する軌跡に沿って並べられて、ベーンの後側のローター本体に配設された1次拡張部の一部及び2次拡張部と重なり合う位置に限定的に配設される。このような場合、孔を通過した圧力流体は、これらの拡張部を介してローターと内筒との間でありながら、ベーンの後方面によっても制限された仕切り空間に入っていくことになる。
【0072】
回転するローターは、図8のような局面において、もしくは瞬間において、回転方向を基準として最も後側の円弧状の第1の孔455aの最も後ろの部分が後側の仕切り空間の1次拡張部と最初に連通し始め、第1の孔455aの最も前側の部分は、前側の仕切り空間の2次拡張部431dと断絶される状態を示している。第2の孔455b及び第3の孔455cは、さらに前側の仕切り空間に圧力流体を供給することを終え、断絶され始める直前の状態をなしている。
【0073】
このような状態で、ローターの回転が進むと、ローターの回転方向を基準として最も後側の仕切り空間をなす拡張部と流体入口の最も後側の第1の孔とが重なり合い始めるときから、この仕切り空間には圧力流体が流れ込んで狭い空間において高い圧力の状態となり、第1の孔との重なり合いを保持する間に圧力流体の流れ込みが行われ続ける。第1の孔と重なり合う状態が経過すると、この仕切り空間の拡張部は、順番に第2の孔、第3の孔と遭遇して重なり合う状態となり、さらに多くの圧力流体の供給を受けることになる。いうまでもなく、実施形態に応じては、流体入口をなすさらに多くの孔があるため、ローターの拡張部は、さらに多くの孔から圧力流体の供給を受けることができる。
【0074】
このような構成のベーンモーターにおける構成要素の作用または動作について述べると、ローターが回転しながら、図7に示されたように、1次拡張部の部分が仕上げ板413、415の圧力流体入口をなす第1の孔455aと遭遇する位置にくると、圧力流体入口から強い圧力にて流れ込む流体は、ローターの長手方向の両端から入ってきて、拡張部をはじめとする全体の仕切り空間に満たされ、その仕切り空間を制限するベーンの後方面と遭遇しながら、圧力を働かせることになる。
【0075】
ローターは、流体圧力により回転しながら、ローター本体31と内筒20の内壁面とがさらに広がる区間に入り、ベーンの終端は、遠心力により内筒20の内壁面と当接する状態を保持しながら、ベーンガイド溝31aからさらに外側に出張り続けることになり、内筒とローター本体31との間の空間は増加する。
【0076】
この実施形態の場合、流体入口が略90°ほどの中心角に対応する概ね円弧状の曲線の軌跡に沿って並べられた3本の円弧状の孔から形成され、ローターの回転中に孔とローターの1次及び2次拡張部とが重なり合う時間の間にのみ、内筒420とローター本体430との間の仕切り空間は、流体入口と連結されながら、圧力流体の流れ込みが行われる。
【0077】
内筒とローター本体31との間の空間は、ローター本体31と内筒とが広がり始める位置において拡張部が流体入口と最初に遭遇し、この部分においては、ローター本体と内筒との間の隙間(空間)は非常に狭いため、圧力流体が投入されながら、高い圧力状態を保持して、圧力流体の少ない量でも回転力を効率よく伝達することが可能になる。
【0078】
このようにして内筒がさらに配備され、仕上げ板に圧力流体入口が配設される構成の変化があるが、ここでも、ローター本体とベーンとの相互間の位置関係及び往復角運動の動作は、基本的に第1の実施形態と同様であり、但し、ローターのベーンが固定されたケーシングの内壁面を滑りながら通る代わりに、ここでは、ベーンが内筒の内壁面に当接した状態でローターが回転しながら、ベーンが往復角運動をしながらガイド溝を出入りするという点で相違点があり、内筒もまた、ケーシングの内部においてローターと一緒に回転するという点で相違点がある。このとき、通常、ローターの実効円周と内筒の円周の長さに違いがあるため、ローターと内筒の回転数は、違いを有するのが一般的である。
【0079】
一方、ここでも、ベーン435の後方面の上部には、ベーンの厚さを変化させる凹状の圧力増強溝436もまた形成されている。この凹状の圧力増強溝436は、回転軸433が指向する方向を長手方向にみるとき、全体の長さにわたってベーンの前方面の方向に凹むように形成されている。
【0080】
以上では、限られた実施形態を挙げて本発明について説明しているが、これは、本発明の理解への一助となるために例示的に説明されたものに過ぎず、本発明は、これらの特定の実施形態に何ら限定されない。
【0081】
例えば、上述した実施形態においては、ベーンガイド溝の入口において後側の部分にローター本体の一部を除去して面取りや丸み付け処理を施しながら拡張部を形成したことに重点をおいて説明したが、このような拡張部が全くない実施形態もまた可能である。
【0082】
また、上述した実施形態においては、ベーンの後方面の上部に圧力流体の作用効率を高めるための圧力増強溝を形成し、圧力流体入口が複数である場合について説明しているが、このような圧力増強溝が全くないようにベーンを形成し、圧力流体の入口は1つにすることもまた可能である。
【0083】
よって、当該発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、本発明に基づいて様々な変更や応用を実施することができる筈であり、当然のことながら、このような変形例や応用例は、特許請求の範囲に属するということはいうまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6(a)】
図6(b)】
図7
図8
図9
【国際調査報告】