IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プラッサー ウント トイラー エクスポート フォン バーンバウマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特表2023-551253軌道の位置補正のための補正値を求めるための方法およびシステム
<>
  • 特表-軌道の位置補正のための補正値を求めるための方法およびシステム 図1
  • 特表-軌道の位置補正のための補正値を求めるための方法およびシステム 図2
  • 特表-軌道の位置補正のための補正値を求めるための方法およびシステム 図3
  • 特表-軌道の位置補正のための補正値を求めるための方法およびシステム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】軌道の位置補正のための補正値を求めるための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/06 20060101AFI20231130BHJP
   E01B 35/04 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B61L25/06 Z
E01B35/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532103
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(85)【翻訳文提出日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2021080937
(87)【国際公開番号】W WO2022111983
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】A51026/2020
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514318345
【氏名又は名称】プラッサー ウント トイラー エクスポート フォン バーンバウマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Plasser & Theurer, Export von Bahnbaumaschinen, Gesellschaft m.b.H.
【住所又は居所原語表記】Johannesgasse 3, A-1010 Wien, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】べアンハート メツガー
【テーマコード(参考)】
2D057
【Fターム(参考)】
2D057AB01
2D057AB06
(57)【要約】
本発明は、軌道(5)の位置補正のための補正値(26)を求めるための方法であって、軌道(5)の走行中に、測定車両(1)に配置された慣性測定装置(8)を用いて軌道区分の実際の幾何形状(10)が捕捉され、慣性測定装置(5)から、捕捉された軌道区分の測定データ(18)が評価装置(19)に出力される方法に関する。目標幾何形状(16)についてのシミュレートされた測定データ(25)を得るために、シミュレーション装置(24)を用いて目標幾何形状(16)を有する同じ軌道区分の仮想慣性測定が計算され、計算ユニット(23)を用いて、慣性測定装置(8)の測定データ(18)からシミュレートされた測定データ(25)を減算することにより、軌道(5)の位置補正のための補正値(26)が求められる。本発明による方法を用いることにより、補正値(26)は、慣性測定装置(8)の測定データ(18)に基づいて直接求められる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道(5)の位置補正のための補正値(26)を求めるための方法であって、
前記軌道(5)の走行中に、測定車両(1)に配置された慣性測定装置(8)を用いて軌道区分の実際の幾何形状(10)が捕捉され、前記慣性測定装置(8)から、前記捕捉された軌道区分の測定データ(18)が評価装置(19)に出力される、方法において、
目標幾何形状(16)についてのシミュレートされた測定データ(25)を得るために、シミュレーション装置(24)を用いて、前記目標幾何形状(16)を有する同じ軌道区分の仮想慣性測定が計算され、
計算ユニット(23)を用いて、前記慣性測定装置(8)の前記測定データ(18)から前記シミュレートされた測定データ(25)を減算することにより、前記軌道(5)の位置補正のための補正値(26)が求められることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記シミュレーション装置(24)では、前記目標幾何形状(16)は、一連の幾何学的なアライメント要素として予め設定される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記慣性測定装置(8)の前記測定データ(18)は、フィルタアルゴリズムを用いてフィルタリングされ、前記シミュレーション装置(24)において前記シミュレートされた測定データ(25)が、同じフィルタアルゴリズムを用いてフィルタリングされる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記慣性測定装置(8)において、前記測定データ(18)は、100m~300mの間の長さ、特に200mの長さを有する仮想補償直線に基づいて求められる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記慣性測定装置(8)を用いて、15cm~50cmの間の間隔、特に、それぞれ25cmの間隔の測定距離(s)に沿って前記測定データ(18)が捕捉される、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記測定車両(1)に配置されたGNSS受信装置(12)を用いて前記軌道(5)上の測定箇所が位置データ(20)として捕捉され、前記慣性測定装置(8)の前記測定データ(18)が前記位置データ(20)と結合される、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
位置補正のために求められた前記補正値(26)から、前記計算ユニット(23)を用いて前記軌道(5)の水平調整値および垂直リフト値が導出される、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法を実施するためのシステムであって、軌道(5)上を走行するための測定車両(1)を含み、該測定車両(1)は、軌道区分の実際の幾何形状(10)を捕捉するための慣性測定装置(8)を備えており、評価装置(19)が前記慣性測定装置(8)からの測定データ(18)を処理するように構成されている、システムにおいて、
シミュレーション装置(24)が、目標幾何形状(16)に基づいて、同じ軌道区分の仮想慣性測定をシミュレートするように構成され、
前記軌道(5)の位置補正のための補正値(26)を求めるために、計算ユニット(23)が、前記慣性測定装置(8)の測定データ(18)から前記シミュレートされた測定データ(25)を減算するように構成されていることを特徴とする、システム。
【請求項9】
前記測定車両(1)は、位置データ(20)を捕捉するためのGNSS受信装置(12)を備えている、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
通信システムが、前記補正データ(26)を軌道敷設機械に伝送するように構成されており、前記軌道敷設機械の制御装置は、駆動制御されたリフト/調整ユニットを用いて前記軌道(5)を予め設定された目標幾何形状(16)にもたらすために、前記補正値(26)を処理するように構成されている、請求項8または9記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道の位置補正のための補正値を求めるための方法であって、軌道の走行中に、測定車両に配置された慣性測定装置を用いて軌道区分の実際の幾何形状が捕捉され、慣性測定装置から、捕捉された軌道区分の測定データが評価装置へ出力される方法に関する。さらに、本発明は、本方法を実施するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
バラスト軌道の場合、バラスト床に支持されている軌道グリッドの局所的な位置は、走行や天候の影響を受ける。それゆえ、現在の実際の幾何形状の検査のために(軌道の保線管理)、特に保守作業の前に、この検査専用に設けられた測定台車を用いて定期的に測定が行われる。相応に装備された軌道敷設機械も測定台車として使用することができる。通常、軌道幾何形状は、水平位置(方向)および垂直位置(軌道勾配)によって定義される。絶対的な軌道幾何形状を確定するためには、さらに外部の参照系に対する位置も必要である。
【0003】
公知の測定方法は、軌道に隣接して存在する外部基準点を使用しており、これらは電柱のような固定装置に取り付けられている。そのような外部基準点は、マーキングピンまたはその他のマーキング対象として確定されてよい。軌道に対する各外部基準点の想定された位置は、ディレクトリに文書化される。このようにして、鉄道主要区間に対し、絶対的な軌道幾何形状が正確に定義される(=軌道の設計幾何形状)。
【0004】
さらに、軌道の目標幾何形状が内部基準を用いて確定可能である。この場合、アライメントは、一連のアライメント要素の長さおよびサイズに関して示される。直線の場合、長さの呈示で十分である。移行曲線および曲線は、それぞれ長さおよび曲線サイズの指定によって確定される。いわゆる主要軌道点は、特に円形曲線および移行曲線ならびに勾配の切れ目について、異なるアライメント要素間の切り換えを示している。
【0005】
したがって、軌道の水平位置は、一連の直線区分、移行曲線、および円形曲線としての軌道曲率からなる。軌道の垂直位置は、勾配の指示、ならびにその丸み半径を含む勾配切り換えによって決定される。軌道の片勾配経過は、片勾配ランプを含む一連の片勾配によって定義される。軌道幾何形状の確定の際、軌道の片勾配および方向が、アライメントガイドライン(例えば、EN13803)に応じて相互に調整される。
【0006】
高い品質を有する所望の軌道位置の再現は、いわゆる精密な方法を用いることで達成することができる。この方法では、正確で絶対的な軌道幾何形状(設計幾何形状)は、定義された一連のアライメント要素と、主要軌道点の地理的位置とによって既知となる。メンテナンス過程の前に、既存の軌道幾何形状と、定義された基準点(定点、固定点)に対する軌道位置とが測定される。測定結果は、設計幾何形状と比較され、この場合、求められた差分から軌道位置補正のためのリフト値および調整値が決定される。この方法は非常に正確であり、最適なメンテナンスが必要な高速区間に適している。ここでは、幾何形状パラメーターが高いプロセス信頼性で処理され、幾何形状基準点は定期的に追従測定されることが必要である。
【0007】
コスト上の理由から、要求の低い区間では、いわゆる補償法が適用される。この方法は、軌道の設計幾何形状が既知でなくても実施可能である。例えば、軌道マルチプルタイタンパーの測定システムが使用される場合、軌道上を案内される測定台車の間に測定コード(ウォールコード)が張られ、基準システムとして用いられる。このウォールコードの測定原理の様々な実施形態は、例えば独国特許第102008062143号明細書または独国特許出願公開第10337976号明細書に見いだされる。既存の軌道位置誤差は、ここでは、測定台車の長手方向距離に対する測定コードのスパン幅の割合で減少される。4点方式では、既存の相対的軌道幾何形状は、付加的な測定コードによって捕捉される。対応する機械および方法は、オーストリア国特許出願公開第520795号明細書に開示されている。
【0008】
事前の軌道測定を伴う補償方法では、軌道の既存の相対的な実際の幾何形状は、軌道マルチプルタイタンパーまたは測定台車の予備走行で測定される。この目的のために、最新の軌道測定車両では、いわゆる慣性測定ユニット(Inertial Measurement Unit, IMU)が使用される。慣性測定システムについては、専門誌Eisenbahningenieur (52) 9/2001の6~9頁に記載されている。独国特許第102008062143号明細書も、軌道位置を捕捉するための慣性測定原理を開示している。この測定に基づいて補償計算が行われ、その際、実際の幾何形状に基づいて事前に未知の目標幾何形状が計算される。
【0009】
通常、軌道の実際の幾何形状は、矢高経過および長手方向高さ経過ならびに一連の片勾配値の形態で捕捉される。この記録に基づいて、計算ユニットは、事前に確定された軌道の速度クラス、ならびに予め定められた変位値およびリフト値についての上限を考慮に入れて、電子的な矢高補償を計算する。その際、測定された矢高は、所与の条件に対するできるだけ理想的な経過を得るために平滑化される。アライメント要素間の移行点(主要軌道点)の位置は、補償計算の過程で生じる。
【0010】
次のステップでは、矢高からデジタルフィルタの適用により、計算された矢高経過が生じ得るように軌道を補正する必要がある結果として生じる変位量およびリフト量が計算される。したがって、これらのさらなる計算の結果は、軌道マルチプルタイタンパーを用いた軌道の位置補正のためのリフト値および調整値(補正値)である。
【0011】
補償方法を繰り返し適用することは、(確定された元の設計幾何形状に従った)主要軌道点が、それらの元の位置から離れるようにドリフトするという欠点を有している。したがって、軌道の経年劣化は、補償方法を用いた補正にもかかわらず、元の設計幾何形状からの偏差の増加につながる。
【0012】
主要軌道点の比較的小さな位置変化は、通常は問題ない。多くの場合、路線設計では、軌道位置の確定のための十分な余裕がある。しかしながら、例えば、橋、トンネル、踏切などのいわゆる制約点または制約位置では困難が生じる。そこでは、軌道の移動のための余裕がない。それゆえ、従来技術によれば、補償計算のもとでこれらの箇所における変位値をゼロに設定することが一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が基礎とする課題は、冒頭に述べたような形式の方法において、慣性測定装置の求められた測定値に基づき、軌道位置補正のための補正値を効率的に求めることが実施可能となるように改善を行うことである。さらに、本発明の課題は、対応するシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、これらの課題は、請求項1に記載の方法および請求項8に記載のシステムによって解決される。従属請求項には、本発明の好適な実施形態が示される。
【0015】
ここでは、目標幾何形状についてのシミュレートされた測定データを得るために、シミュレーション装置を用いて、目標幾何形状を有する同じ軌道区分の仮想慣性測定値が計算され、計算ユニットを用いて、慣性測定装置の測定データからシミュレートされた測定データを減算することにより、軌道の位置補正のための補正値が求められることが提供される。
【0016】
本発明による方法を用いることにより、補正値は、十分な精度の慣性測定装置の測定データに基づいて直接求められる。慣性測定装置の測定データは、軌道位置誤差を直接再現する正当な形式の測定データである。シミュレートされた測定データを用いることにより、補正データを決定するための比較値が直接使用可能になる。したがって、本発明によるシミュレーションは、総じて、データ処理プロセスの明確な簡略化につながる。
【0017】
この場合、好適には、シミュレーション装置では、目標幾何形状は、一連の幾何学的なアライメント要素として予め設定される。例えば、既知の絶対的な軌道幾何形状(設計幾何形状)が用いられる。この場合、主要軌道点は、異なるアライメント要素の切り換えを示している。そのようなアライメント要素は、特に直線、円形曲線、移行曲線、勾配の切れ目である。実際の幾何形状と目標幾何形状との比較のために、例えば、測定走行の開始点を原点とする定常的な座標系が選択される。もちろん、他の座標系もジオリファレンスに使用可能である。
【0018】
本方法のさらに形成される変形形態では、慣性測定装置の測定データは、フィルタアルゴリズムを用いてフィルタリングされ、シミュレーション装置においてシミュレートされた測定データが、同じフィルタアルゴリズムを用いてフィルタリングされる。これは、データフィルタリング機能が統合された慣性測定装置の場合に特に有利である。この場合、測定装置の出力データは、既に、フィルタリングされた測定データとして存在する。それゆえ、シミュレートされた測定データも、直接のデータ比較によって補正値を得るためのフィルタリングされたデータとして提供される。
【0019】
さらなる改善として、慣性測定装置において、測定データが、100m~300mの間の長さ、特に200mの長さを有する仮想補償直線に基づいて求められることが想定される。このようなデータを求めることにより、長波の位置誤差も確実に識別されるため、高速区間のための方法の使用が許容される。
【0020】
データ品質の向上のために、好適には、慣性測定装置を用いて、15cm~50cmの間の間隔、特に、それぞれ25cmの間隔の測定距離に沿って測定データが捕捉される。これにより、軌道に沿って動く慣性測定装置の正確な3次元軌道がマッピングされ、この場合、極短波の位置誤差も捕捉される。
【0021】
改善されたジオリファレンスのために、好適には、測定車両に配置されたGNSS受信装置を用いた軌道上の測定箇所が位置データとして捕捉され、これらの慣性測定装置の測定データが位置データと結合される。このようにして、位置関連測定データが自動的に捕捉される。慣性測定装置のこれらの位置関連測定データは、さらなる処理なしで、シミュレートされた測定データと比較可能である。(例えば走行距離計を用いた)さらなる位置データの捕捉は不要である。
【0022】
本方法のさらなる発展形態では、位置補正のために求められた補正値から、計算ユニットを用いて軌道の水平調整値および垂直リフト値が導出される。これらの処理された補正値は、軌道を予め設定された位置にもたらすために、軌道敷設機械のリフト/調整ユニットの駆動制御のために直接使用可能である。
【0023】
記載された方法の1つを実施するための本発明によるシステムは、軌道上を走行するための測定車両を含み、測定車両は、軌道区分の実際の幾何形状を捕捉するための慣性測定装置を備えており、評価装置が慣性測定装置の測定データを処理するように構成されており、シミュレーション装置が、目標幾何形状に基づいて、同じ軌道区分の仮想慣性測定をシミュレートするように構成され、軌道の位置補正のための補正値を求めるために、計算ユニットが、慣性測定装置の測定データからシミュレートされた測定データを減算するように構成されている。このシステムにより、高速な測定速度のもとで補正値を直接決定することが可能である。振り子測定またはコード測定による測定不精度や歪みが回避される。慣性測定装置を用いて捕捉されたデータを目標幾何形状と比較するための伝達関数は不要である。また、軌道座標を計算する必要もない。なぜなら、慣性測定装置の元の測定データからシミュレートされた測定データが減算されるからである。
【0024】
慣性測定装置は、いわゆる慣性測定ユニット(Inertial Measurement Unit, IMU)を含み、これは測定車両の測定プラットフォーム上に配置されている。軌道のレールに対する測定プラットフォームの正確な位置は、非接触型位置測定装置を用いて決定される。慣性測定ユニットを使用する場合、特にカーブ走行時に測定データにアーチファクトが発生し得る。これらのアーチファクトは、使用される慣性測定方法固有の特徴から結果として生じる。同じ慣性測定法を仮想形態で目標幾何形状に適用した場合、同じアーチファクトが発生する。引き続き、補正値を求めるための測定データの減算により、アーチファクトが相互に相殺される。これにより、全体として必要な計算能力が削減される。なぜなら、測定データの場合によっては手間のかかるデジタルフィルタリングが省かれるからである。
【0025】
システムの改善として、測定車両は、位置データを捕捉するためのGNSS受信装置を備えていることが想定される。このようにして、シミュレートされた測定データとの位置関連の比較を実施するために、捕捉された測定データは自動的にGNSSデータと結合可能である。具体的には、GNSS受信装置を用いて、測定値が捕捉される測定点が、測地参照系において決定される。
【0026】
本システムの好適なさらなる発展形態では、通信システムが、補正データを軌道敷設機械に伝送するように構成されており、軌道敷設機械の制御装置は、軌道を駆動制御されたリフト/調整ユニットを用いて予め設定された目標幾何形状にもたらすために、補正値を処理するように構成されている。このシステムには、実際の幾何形状を捕捉し、補正値を提供し、軌道位置を修正するためのすべてのコンポーネントが含まれている。このようにして、軌道の継続的なメンテナンスが実施可能となる。
【0027】
以下では本発明を、添付の図面を参照しながら例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】軌道上の測定車両を概略的に示した図である。
図2】補正値を決定するための概略的なブロック図である。
図3】軌道経過の線図とフィルタリングされていない測定データとを概略的に示した図である。
図4】軌道経過の線図とフィルタリングされた測定データとを概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、車両フレーム2を有する測定車両1を示しており、この車両フレーム2上には車体3が取り付けられている。測定車両1は、軌道台車4を用いて軌道5上を走行可能である。より良好な説明のために、車両フレーム2は、車体3とともに、軌道台車4から浮かせて示されている。車両1は、軌道敷設機械、特にマルチプルタイタンパーとして構成されてもよい。この場合、軌道5の測定および補正に必要とされる機械は1台だけである。
【0030】
軌道台車4は、好適にはボギーとして構成される。測定プラットフォーム6は、測定フレームとしてボギーの車軸に接続されており、それによって、車輪の動きが弾性作用なしで測定フレーム6に伝達される。したがって、軌道5に対しては、測定フレーム6の横方向運動または振り子運動のみが生じる。これらの運動は、測定フレーム6に配置された位置測定装置7を用いて捕捉される。これらは、例えば、レーザー線区センサとして構成されている。
【0031】
位置測定装置7は、測定プラットフォーム6に取り付けられた慣性測定装置8のコンポーネントであり、この慣性測定装置8は慣性測定ユニット9を含んでいる。慣性測定ユニット9を用いることにより、測定走行中に軌道5の実際の幾何形状10の測定データが捕捉され、軌道5に対する慣性測定ユニット9の相対運動が、位置測定装置7のデータを用いて補償される。位置測定装置7の測定結果を用いることにより、さらに慣性測定ユニット9の測定データを、軌道5のそれぞれのレール11に変換可能である。その結果は、各レール11についての実際の幾何形状10である。
【0032】
測定車両1はさらに、測定車両1のそれぞれ現在の位置を捕捉可能であるGNSS受信装置12を備えている。それにより、軌道5に対する測定車両1の既知の位置に基づいて、目下走行中の軌道箇所の位置座標も捕捉可能である。この場合、捕捉された軌道箇所は、慣性測定装置8が測定データを収集する一連の測定箇所に対応している。
【0033】
例えば、GNSS受信装置12は、支持体13を介して車両フレーム2と剛性結合されている。ここでは、GNSS受信装置12は、測定車両1のGNSS位置を正確に捕捉するために、相互に位置合わせされた複数のGNSSアンテナ14を含む。車両フレーム2の軌道5に対する振り子運動を捕捉するために、車両フレーム2にはさらなる位置測定装置7が配置されている。ここでも、例えばレーザー線区センサが使用される。本発明の簡単な実施形態では、1つのGNSSアンテナ14で十分である。このようにして、軌道5上のまたは同一軸15に沿った実際の位置が連続的に捕捉される。
【0034】
代替的または補足的に、位置捕捉は走行距離計を用いて行われ、この走行距離計により、測定された軌道区分に沿ったキロ数を決定可能である。いずれにせよ、これらの結果は、慣性測定装置の測定データに結合された位置データである。さらなる続きでは、この位置基準を介して、軌道5の既知の目標幾何形状16との比較が実施可能である。
【0035】
例えば、測定結果のジオリファレンスに対して、測定走行の開始時点に自身の原点を有する定常的な座標系が用いられる。X軸は、開始時点において、測定すべき軌道5の方向を示している。Y軸は、X軸を横切る水平方向に配向される。Z軸上では、軌道5の高さ位置が生じる。測定走行中は、さらに距離sも捕捉され、これはタイムスタンプの他に異なるシステム8,12の測定結果の同期のために用いることができる。測定された軌道区分に沿って、いわゆる主要軌道点17が存在する。これらの主要軌道点は、それぞれ、幾何学的なアライメント要素(例えば、直線、移行曲線、円形曲線、または完全曲線)の間の境界をマーキングする。
【0036】
図2のブロック図は、関与するシステムコンポーネントの例示的なスキームを示している。慣性測定装置8によって捕捉された測定データ18は、評価装置19に供給される。好適には、評価装置19においてデータ統合アルゴリズムが構成され、これを用いて慣性測定装置8の測定データ18、ならびにGNSS受信装置12および/または走行距離計21のGNSSデータまたは位置データ20が結合される。ここでは、すべての座標が共通の座標系に関連付けられることに留意すべきである。システムプロセッサを用いて、GNSSアンテナ14から受信した信号の共同評価と、軌道5に対する相対運動の補償とが行われる。
【0037】
本発明の一変形形態では、慣性測定装置8は、慣性測定ユニット9のフィルタリングされていない測定データ18を出力し、この場合、レール11に対する測定プラットフォーム6の相対運動が補償される。評価装置19を用いて提供される位置関連測定データ22は、計算ユニット23に供給される。
【0038】
この実際の幾何形状10の捕捉の他に、既知の目標幾何形状16は、さらなる方法ステップのための起点ベースを形成する。この場合、目標幾何形状16は、シミュレーション装置24の最適な仮想軌道経過として予め設定される。シミュレーション装置24は、例えば、仮想シナリオを処理するように構成された別個のコンピュータである。ハードウェアを最適化するために、評価装置19、計算ユニット23、およびシミュレーション装置24を統合されたコンピュータシステムに総括することも有意であり得る。
【0039】
シミュレーション装置24には、測定プラットフォーム6に取り付けられた慣性測定装置8と同じ特性を有する仮想の慣性測定装置が構成されている。この仮想の慣性測定装置を用いることにより、予め設定された目標幾何形状16に基づいて軌道経過の仮想測定が行われる。同じ軌道区分を用いることにより、それについての実際の幾何形状10も捕捉される。ここでは、実際の測定装置と仮想の測定装置とが同じ慣性測定法を使用する。これらの仮想の測定の結果は、シミュレートされた測定データ25であり、これらは、好適には、実際の位置に関連する測定データ22との直接の比較を実施するために位置基準を有している。
【0040】
計算ユニット23では、実際の慣性測定装置8の測定データ18からシミュレートされた測定データ25を位置に関連して減算することが行われる。この減算の結果は、捕捉された実際の幾何形状10を所望の目標幾何形状16に変換するための軌道5用の補正値26となる。その際、好適には、これらの補正値26から計算ユニット23を用いて軌道5の水平調整値および垂直リフト値が導出される。例えば、基礎とする座標系のXY平面およびZ方向への補正値26の投影が行われる。片勾配の設定については、各レール11に固有のリフト値が割り当てられる。
【0041】
さらなる続きでは、リフト値および調整値は、それ自体公知の軌道敷設機械、例えば区間用または汎用マルチプルタイタンパーのリフト/調整ユニットの駆動制御のために用いられる。好適には、測定車両1を用いて求められた補正データ26を軌道敷設機械に直接伝送するために、無線通信システムが設置される。他の実施形態では、軌道敷設機械も、本明細書で説明した測定車両1のすべての機能を含む。
【0042】
軌道位置の修正のために、軌道5は、事前測定の後、軌道敷設機械を用いて走行される。予め設定された補正値26に応じて、リフト/調整ユニットを用いて、軌道グリッドがその所望の位置にもたらされ、突き固めユニットを用いてそこに固定される。軌道位置の検査のために、軌道敷設機械に取り付けられたコード測定システムが用いられる。統合された機械1の場合、いわゆる軌道幾何形状主体コンピュータ(自動制御コンピュータALCとも称する)は、計算ユニット23と評価装置19とを含む。この主体コンピュータは、ここでは、補正値26の決定および軌道敷設機械の制御のための中央ユニットとして用いられる。
【0043】
図3は、最上部の線図に、定常的な座標系における軌道区分の位置画像を示している。横軸はX座標に対応し、縦軸はY座標に対応する。図示の軌道区分は、直線で始まり、次いで引き続き、第1の円形曲線(完全曲線)において曲率が一定に維持されるまで曲率が増加する移行曲線に移行する。それに続いて、軌道区分は、曲率が低下する移行曲線、第2の円形曲線、さらなる移行曲線、および直線を含む。
【0044】
シミュレーションのために予め設定された軌道区分の目標幾何形状16が、太い連続線で示されている。この場合、個々のアライメント要素は、主要軌道点17において相互に接している。主要軌道点17の絶対的な位置決めに伴い、この最適な軌道位置は、軌道5の設計幾何形状とも称される。相対的な目標幾何形状16を設定する際、場合によっては、軌道位置を、踏切、橋、トンネル、または類似の制約装置において確定するための制約点を確定することが有利である。細い連続線は、慣性測定装置8を用いて捕捉された実際の幾何形状10を示している。
【0045】
図示された位置画像の下方には、慣性測定装置8を用いて捕捉された空間曲線の側方位置が示されている。ここでは、これはフィルタリングされていない測定データ18であり、これによって、経過はほぼ曲率線図(曲率画像)に対応している。横軸には距離sがプロットされている。縦軸には、距離sにわたる現在の振幅a(曲率)が示されている。データ捕捉については、それ自体公知の空間曲線アルゴリズムが使用される。これは、冒頭で述べた専門誌Eisenbahningenieur (52) 9/2001の6~9頁の記事に記載されているApplanix社の慣性測定システムにも当てはまる。例えば、現在の測定箇所における振幅aを計算するために、200mの長さの補償直線が選択される。その際には、軌道5に沿って25cmごとに再計算が行われ、それによって、捕捉された測定データ18のより正確でほぼ連続的な経過が生じる。
【0046】
一番下の線図には、理想化された仮想軌道5の空間曲線の側方位置が示されている。ここでは、縦軸にシミュレートされた測定データ25がプロットされており、これは、シミュレーション装置24内に構成された仮想測定装置を用いた測定シミュレーションにおいて生じている。このシミュレートされた測定についても、200mの長さの補償直線と、25cmの測定間隔とを基礎とするものである。シミュレーションで測定された仮想軌道は、予め設定された目標幾何形状16を有している。
【0047】
引き続き補正値26を求めることについては、同じ軌道区分についての測定データ18,25が用いられる。その際の局所的な補償は、キロ数に基づくかまたはGNSSデータに基づいて行われる。次いで、補正値26は、図示された2つの空間曲線の減算によって直接生じる。
【0048】
別の変形形態では、慣性測定装置8のフィルタリングされた測定データが用いられる(図4)。仮想測定の場合、シミュレートされた測定データ25は、同じようにフィルタリングされる。例えば、FIRフィルタ(Finite Impulse Response Filter)が使用される。設定仕様は、欧州規格EN13848に見られる。この規格によれば、最大区間速度が250km/hを超える区間について、70m~200mの波長範囲における誤差振幅も評価する必要がある。図4の線図では、慣性測定装置8の測定信号(細線)と、シミュレートされた測定信号(太線)とが、波長範囲が3m~70mのバンドパスフィルタを用いてフィルタリングされている。
【0049】
実際の測定においても仮想の測定においても、方法に起因するアーチファクトが発生する可能性がある。フィルタリングされた測定値の図示の線図では、そのようなアーチファクトは、アライメント要素間の移行時に視認可能である。実際の幾何形状10の得られた測定データと目標幾何形状16との減算により、これらのアーチファクトが相殺される。その結果として、対応する軌道区分についての補正値26が生じる。測定データ18,25の直接的な減算により、XYZ座標の形態で3D軌道を決定する必要性は生じない。これにより、必要なシミュレーションにもかかわらず、全体として、補正値26を決定するためのより簡単でより正確な方法が生じる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】