(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】二次電池の低電圧不良判定システムおよびそれを用いた二次電池の不良判定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/367 20190101AFI20231130BHJP
G01R 31/396 20190101ALI20231130BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20231130BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20231130BHJP
H01M 10/058 20100101ALN20231130BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/396
H01M10/04 Z
H01M10/052
H01M10/058
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532335
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 KR2022016101
(87)【国際公開番号】W WO2023075297
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0143263
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン、ジョーン スプ
(72)【発明者】
【氏名】スン、ナク ギ
(72)【発明者】
【氏名】キム、スン テ
【テーマコード(参考)】
2G216
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
2G216BB01
2G216CB11
5H028AA10
5H028BB11
5H028HH10
5H029AJ14
5H029AL07
5H029AM03
5H029BJ21
5H029HJ16
(57)【要約】
本発明は、二次電池の低電圧不良判定システムおよびそれを用いた二次電池の不良判定方法に関するものであり、電池の製造工程条件、活性化工程条件、電圧測定条件および活性化工程後に測定された電池の電圧に対する既存データが保存されたデータベース部と、測定の対象となる電池の製造工程条件、活性化工程条件、電圧測定条件および活性化工程後に測定された電池の電圧に対する実験データを感知する感知部と、上記データベース部に保存された既存データと上記感知部によって感知された実験データに基づいて目標電圧降下量補正データとを算出する演算部と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の製造工程条件、活性化工程条件、電圧測定条件および活性化工程後に測定された電池の電圧に対する既存データが保存されたデータベース部と、
測定の対象となる電池の製造工程条件、活性化工程条件、電圧測定条件および活性化工程後に測定された電池の電圧に対する実験データを感知する感知部と、
前記データベース部に保存された既存データと、前記感知部によって感知された実験データに基づいて、目標電圧降下量補正データを算出する演算部と、を含む、二次電池の低電圧不良判定システム。
【請求項2】
前記目標電圧降下量補正データと正常電池の基準電圧降下量データとを比較して、電池の低電圧不良の有無を導出する判断部をさらに含む、請求項1に記載の二次電池の低電圧不良判定システム。
【請求項3】
前記データベース部に保存された既存データおよび前記感知部が感知する実験データは、電池の大きさ、電解液注液量、活物質の種類、電極ローディング量、N/P Ratio、エージング温度、エージング時間、エージング回数、充放電温度、充放電容量、充放電回数、充放電時間、電解液吐出量、電圧測定待機時間、測定電圧/電流モード、測定された電圧および測定された電圧降下量のうち1種以上である、請求項1に記載の二次電池の低電圧不良判定システム。
【請求項4】
前記データベース部は、既存データと電圧降下量補正データとの相関関係分析を介した相関関係式を定義する、請求項1に記載の二次電池の低電圧不良判定システム。
【請求項5】
前記相関関係分析は、既存データを独立変数にし、電圧降下量補正データを従属変数にする回帰分析である、請求項4に記載の二次電池の低電圧不良判定システム。
【請求項6】
前記演算部は、感知部で感知されたデータを独立変数にし、前記相関関係式に代入して目標電圧降下量補正データを算出する、請求項4に記載の二次電池の低電圧不良判定システム。
【請求項7】
前記相関関係分析のための母集団になる前記電池の個数は1,000~30,000である、請求項4に記載の二次電池の低電圧不良判定システム。
【請求項8】
請求項1に記載のデータベース部に電池の製造工程条件、活性化工程条件、活性化工程後の電圧測定条件および測定された電池の電圧に対する既存データを保存するステップと、
請求項1に記載の感知部が測定の対象となる電池の製造工程条件、活性化工程条件、活性化工程後の電圧測定条件および測定された電池の電圧に対する実験データを感知するステップと、
請求項1に記載の演算部が、前記保存された既存データと感知された実験データに基づいて、補正された電圧降下量を算出するステップと、を含む、二次電池の低電圧不良判定方法。
【請求項9】
前記補正された電圧降下量を算出するステップ以降、前記補正された電圧降下量と正常電池の基準電圧降下量とを比較して、電池の低電圧不良の有無を判断するステップをさらに含む、請求項8に記載の二次電池の低電圧不良判定方法。
【請求項10】
前記保存された既存データおよび感知された実験データは、電池の大きさ、電解液注液量、活物質の種類、電極ローディング量、N/P Ratio、エージング温度、エージング時間、エージング回数、充放電温度、充放電容量、充放電回数、電解液吐出量、電圧測定待機時間、測定電圧/電流モード、測定された電圧および測定された電圧降下量のうち1種以上である、請求項8に記載の二次電池の低電圧不良判定方法。
【請求項11】
前記保存するステップは、前記既存データの中から独立変数と従属変数を決定するステップと、
前記独立変数と従属変数との相関関係分析のための相関関係式を定義するステップと、を含む、請求項8に記載の二次電池の低電圧不良判定方法。
【請求項12】
前記相関関係分析は、既存データを独立変数にし、電圧降下量補正データを従属変数にする回帰分析である、請求項11に記載の二次電池の低電圧不良判定方法。
【請求項13】
前記補正された電圧降下量を算出するステップは、前記感知された実験データを前記相関関係式の独立変数に代入するステップと、
前記相関関係式により従属変数である目標電圧降下量補正データを算出するステップと、を含む、請求項11に記載の二次電池の低電圧不良判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年10月26日付の韓国特許出願第10-2021-0143263号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、二次電池の低電圧不良判定システムおよびそれを用いた二次電池の不良判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、化石燃料の枯渇によるエネルギー源の価格上昇、環境汚染への関心が増幅され、環境にやさしい代替エネルギー源に対する要求が未来生活のための必須不可欠な要因となっている。そのため、原子力、太陽光、風力、潮力など多様な電力生産技術に対する研究が続いており、このように生産されたエネルギーをより効率的に使用するための電力貯蔵装置にも大きな関心が寄せられている。
【0004】
特に、モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するにつれて、エネルギー源としての電池の需要が急激に増加しており、それに応じて多様な要求に応え得る電池に対する多くの研究が行われている。
【0005】
代表的には、電池の形状面では薄い厚さで携帯電話などの製品に適用され得る角形二次電池とパウチ型二次電池に対する需要が高く、材料面では高いエネルギー密度、放電電圧、出力安定性などの長所を持つリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池などのリチウム二次電池に対する需要が高い。
【0006】
一般的には、このような二次電池は、電池ケースに正極、負極、およびこれらの間に介在される分離膜からなる電極組立体と電解液が共に収容された構造の1次の二次電池を準備する工程、上記1次の二次電池に対する熟成(aging)工程、上記1次の二次電池を充放電する活性化工程、上記熟成工程および充放電工程で発生したガスを除去するための脱気(degas)工程など多様な工程を経て製造される。
【0007】
このような工程を経て製造された二次電池は、低電圧電池の出荷を防止するために、二次電池の活性化工程のうち最後の工程である出荷充電の後、一定期間の経時変化による電圧降下量を測定して低電圧不良を診断した。ここで、低電圧不良とは、電池が予め設定された自己放電率以上の電圧降下挙動を示す現象を意味する。
【0008】
一方、低電圧不良のセルの場合、正極と負極を絶縁している分離膜自体の欠陥や組立中の衝撃や異物挿入による分離膜破損などによる絶縁抵抗の弱化により漏洩電流が持続的に発生され、正常セルに比べて漏洩電流量が多い。
【0009】
既存の二次電池の低電圧不良挙動を判定するための方法として、単純電圧降下量の絶対値を基準に不良の有無を判定するか、または特定のグループ単位で相対判定を行い、グループ単位の不良の有無を判定する方式を適用してきたが、実際の二次電池の電圧降下挙動は、二次電池の製造工程条件、活性化工程条件および充電条件に大きく影響され得るため、正確度が低いという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような問題点を解決するために創案されたものであって、電圧降下に影響を及ぼし得る全ての変数要因を数値化し、それを関係式に適用して電圧降下量補正データを算出し得る二次電池の低電圧不良判定システムおよびそれを用いた低電圧不良判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一例に係る二次電池の低電圧不良判定システムは、電池の製造工程条件、活性化工程条件、電圧測定条件および活性化工程後に測定された電池の電圧に対する既存データが保存されたデータベース部と、測定の対象となる電池の製造工程条件、活性化工程条件、電圧測定条件および活性化工程後に測定された電池の電圧に対する実験データを感知する感知部と、上記データベース部に保存された既存データと、上記感知部によって感知された実験データに基づいて、目標電圧降下量補正データを算出する演算部と、を含み得る。
【0012】
他の一例において、上記目標電圧降下量補正データと正常電池の基準電圧降下量データとを比較して、電池の低電圧不良の有無を導出する判断部をさらに含み得る。
【0013】
具体例において、上記データベース部に保存された既存データおよび上記感知部が感知する実験データは、電池の大きさ、電解液注液量、活物質の種類、電極ローディング量、N/P Ratio、エージング温度、エージング時間、エージング回数、充放電温度、充放電容量、充放電回数、充放電時間、電解液吐出量、電圧測定待機時間、測定電圧/電流モード、測定された電圧および測定された電圧降下量のうち1種以上であり得る。
【0014】
一方、上記データベース部は、既存データと電圧降下量補正データとの相関関係分析を介した相関関係式を定義し得る。
【0015】
具体例において、上記相関関係分析は、既存データを独立変数にし、電圧降下量補正データを従属変数にする回帰分析であり得る。
【0016】
他の具体例において、上記演算部は、感知部で感知されたデータを独立変数にし、上記相関関係式に代入して目標電圧降下量補正データを算出するものであり得る。
【0017】
一方、上記相関関係分析のための母集団になる上記電池の個数は1,000~30,000であり得る。
【0018】
本発明の一実施形態に係る二次電池の低電圧不良判定方法は、データベース部に電池の製造工程条件、活性化工程条件、活性化工程後の電圧測定条件および測定された電池の電圧に対する既存データを保存するステップと、感知部が測定の対象となる電池の製造工程条件、活性化工程条件、活性化工程後の電圧測定条件および測定された電池の電圧に対する実験データを感知するステップと、演算部が上記保存された既存データと感知された実験データに基づいて、補正された電圧降下量を算出するステップと、を含み得る。
【0019】
他の一例において、上記補正された電圧降下量を算出するステップ以降、上記補正された電圧降下量と正常電池の基準電圧降下量とを比較して、電池の低電圧不良の有無を判断するステップをさらに含み得る。
【0020】
別の一例において、上記保存された既存データおよび感知された実験データは、電池の大きさ、電解液注液量、活物質の種類、電極ローディング量、N/P Ratio、エージング温度、エージング時間、エージング回数、充放電温度、充放電容量、充放電回数、電解液吐出量、電圧測定待機時間、測定電圧/電流モード、測定された電圧および測定された電圧降下量のうち1種以上であり得る。
【0021】
具体例において、上記保存するステップは、上記既存データの中から独立変数と従属変数を決定するステップと、上記独立変数と従属変数との相関関係分析のための相関関係式を定義するステップと、を含み得る。
【0022】
他の具体例において、上記相関関係分析は、既存データを独立変数にし、電圧降下量補正データを従属変数にする回帰分析であり得る。
【0023】
別の具体例において、上記補正された電圧降下量を算出するステップは、上記感知された実験データを上記相関関係式の独立変数に代入するステップと、上記相関関係式により従属変数である目標電圧降下量補正データを算出するステップと、を含み得る。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一例によると、ビッグデータを用いた回帰分析により自動的に電圧降下量補正データを算出することにより、電圧降下に影響を及ぼす全ての変数要因を考慮した補正された電圧降下量を提供し得る。これにより、正確度が向上された低電圧不良判定が可能になり、安定性が向上された二次電池を選別し得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る二次電池の低電圧不良判定システムを概略的に図示したものである。
【
図2】本発明の二次電池の低電圧不良判定システムおよび二次電池の低電圧不良判定過程を全体的に図示したものである。
【
図3】一実施形態の二次電池の低電圧不良判定方法を概略的に示したフローチャートである。
【
図4】一実施形態の二次電池の低電圧不良判定方法を具体的に示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について詳細に説明する。その前に、本明細書および特許請求の範囲で使用された用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者が彼自身の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義し得るという原則に基づいて、本発明の技術的な思想に合致する意味と概念として解釈されるべきである。
【0027】
各図面を説明しながら、類似の参照符号を類似の構成要素に対して使用した。添付された図面において、構造物の寸法は、本発明の明確性のために実際より拡大して図示したものである。第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するために使用され得るが、上記構成要素は上記用語によって限定されてはならない。上記用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使用される。例えば、本発明の権利範囲から逸脱することなく、第1構成要素は第2構成要素と命名され得、同様に第2構成要素も第1構成要素と命名され得る。単数の表現は文脈上明らかに異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。
【0028】
本出願において「含む」や「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとする場合、これは他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あるとする場合、それは他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるということは、上部のみならず下部に配置される場合も含むものであり得る。
【0029】
以下に説明される実施形態において、二次電池は、充電と放電が行われる間にリチウムイオンが作動イオンとして作用して正極と負極で電気化学的反応を誘発する電池を総称する。
【0030】
一方、二次電池に使用された電解液や分離膜の種類、二次電池を包装するために使用された電池ケース(または包装材)の種類、二次電池の内部または外部の構造などにより名称が変更されても、リチウムイオンが作動イオンとして使用される電池であれば、いずれも上記二次電池の範疇に含まれるものとして解釈しなければならない。
【0031】
本発明に係る二次電池の低電圧不良判定システムおよび低電圧不良判定方法に適用され得る二次電池セルの組立と活性化工程の一例を挙げると、次の通りである。
【0032】
組立ステップは、製造室で電極組立体と電解液を電池ケースに収容して密封するステップを含む。
【0033】
まず、正極、負極、およびその間に介在された分離膜を含む電極組立体を製造する。上記電極組立体を製造するステップは、活物質およびバインダーを含む電極スラリーを電極集電体に塗布してそれぞれ正極および負極を製造した後、上記正極と負極との間に分離膜を介在するステップを含む。このような電極組立体を製造するステップは特に制限されず、公知された方法に従って行われ得る。また、上記電極組立体は、正極、負極、および分離膜を含む構造であれば特に制限されず、例えば、ジェリーロール型、スタック型またはスタック/フォウルディング型構造が挙げられる。
【0034】
電極組立体内の負極は、カーボン系負極活物質を含み得る。上記カーボン系負極活物質は、人造黒鉛または天然黒鉛であり得る。
【0035】
電解液は有機溶媒およびリチウム塩を含み得る。上記有機溶媒は、電池の充放電過程で酸化反応などによる分解が最小化され得、所望の特性を発揮し得るものであれば制限がなく、例えば環状カーボネート、線状カーボネート、エステル、エーテルまたはケトンなどであり得る。これらは単独で使用され得、2種以上が混用されて使用され得る。上記有機溶媒のうち、特にカーボネート系有機溶媒が好適に使用され得るが、上記環状カーボネート化合物の具体例としては、エチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate,PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートおよびこれらのハロゲン化物からなる群から選択されるいずれか1つまたはこれらのうち2種以上の混合物がある。これらのハロゲン化物としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate,FEC)などがあり、これに限定されるものではない。
【0036】
また、線状カーボネート化合物の具体例としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネートおよびエチルプロピルカーボネートからなる群から選択されるいずれか1つまたはこれらのうち2種以上の混合物などが代表的に使用され得るが、これに限定されるものではない。
【0037】
次に、このように製造された二次電池は活性化工程を進行する。
【0038】
一般的に、活性化工程は、プリエージング(Pre-aging)工程、フォーメーション(Formation)工程、エージング(Aging)工程、デガッシング(Degassing)工程、出荷充電工程を含み得る。プリエージング工程は、電極組立体を電池容器に収容した後に電解液を注入し、電池容器を密封して製造された電池セルの電解液が含浸されるように待機する工程である。フォーメーションは、プリエージングされた電池セルを予め設定された電圧条件(例えば、負極のSEI被膜形成以上の電圧)で初期充電する工程である。エージングは、予め設定された電圧条件(例えば、3.4-3.6V)および温度条件(例えば、50度~70度)で電池セルが一定の状態で安定されるまで電池セルを保存しておく工程である。ここで、プリエージング工程、フォーメーション工程およびエージング工程は、ウェッティング(wetting)期間に該当する。デガッシング工程は、エージングされた電池セルから不要なガスを除去する工程である。一例として、二次電池が円形、角形である場合、デガッシング工程は省略され得る。出荷充電は、出荷前の電池セルを予め設定された電圧条件(例えば、SOC20~50%)で充電する工程であり、出荷充電時には当該電池セルに対して予め設定された特性検査(例えば、セル抵抗、出力、充/放電容量など)が行われ得る。
【0039】
本発明は、二次電池の出荷前の電池の電圧降下量を算出して低電圧不良判定を行う二次電池の低電圧不良判定システムに関するものである。
【0040】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る二次電池の低電圧不良判定システム1000について説明する。
【0041】
図1は、本発明の一実施形態に係る二次電池の低電圧不良判定システム1000の概略的な構成図である。
図1に図示したように、二次電池の低電圧不良判定システム1000は、データベース部10、感知部20および演算部30を含み得る。
【0042】
一般的に、二次電池の低電圧不良判定は、二次電池の活性化工程のうち最後の工程である出荷充電の後、一定期間の経時変化による電圧降下量を測定して低電圧不良を診断した。
【0043】
既存の二次電池の低電圧不良挙動を判定するための方法として、単純電圧降下量の絶対値を基準に不良の有無を判定するか、または特定のグループ単位で相対判定を行い、グループ単位の不良の有無を判定する方式を適用してきたが、実際の二次電池の電圧降下挙動は、二次電池の製造工程条件、活性化工程条件および充電条件に大きく影響され得る。従来には、工程条件または二次電池の特性を考慮しないまま、いずれも同一の方法で電圧降下量を測定して電池の低電圧不良の有無を判定したため、不正確に判定する可能性があり、電圧降下に影響を及ぼす変数要因を部分的に人が直接適用させて電圧降下量を補正したためヒューマンエラーが発生する可能性があり、条件別に毎回人が補正作業を行う必要があるため煩わしさもあった。
【0044】
そこで、本発明は、二次電池の電圧降下量測定に影響を及ぼし得る変数要因を考慮して補正された電圧降下量を算出することにより、正確度が向上された二次電池の低電圧不良の有無を判定するシステムを提供するものである。
【0045】
上記目的を達成するために、本発明の発明者らは、二次電池の電圧降下量測定に影響を及ぼし得る変数要因を区分し、それぞれの変数要因と補正された電圧降下量データとの相関関係を統計学的方法で導出し、それをデータベース部10に保存し、上記データベース部10に基づいて測定の対象である二次電池の変数因子をはじめとする実験データを感知部20で感知し、演算部30を介して目標電圧降下量補正データを算出して自動的に電池の低電圧不良判定を行うビッグデータ基盤のスマートシステムを発明することになった。
【0046】
本発明の一実施形態によると、電池の製造工程条件、活性化工程条件、電圧測定条件および活性化工程後に測定された電池の電圧に対する既存データが保存されたデータベース部10と、測定の対象となる電池の製造工程条件、活性化工程条件、電圧測定条件および活性化工程後に測定された電池の電圧に対する実験データを感知する感知部20と、上記データベース部10に保存された既存データと、上記感知部20によって感知された実験データに基づいて、電圧降下量補正データを算出する演算部30とを含む二次電池の低電圧不良判定システム1000であり得る。
【0047】
具体的には、上記データベース部10に保存された既存データおよび上記感知部20が感知する実験データは、電池の大きさ、電解液注液量、活物質の種類、電極ローディング量、N/P Ratio、エージング温度、エージング時間、エージング回数、充放電温度、充放電容量、充放電回数、充放電時間、電解液吐出量、電圧測定待機時間、測定された電圧および測定された電圧降下量のうちの1種以上であり得る。
【0048】
一方、電圧降下量測定方法の一例としては、二次電池の電圧が予め設定された電圧に到達した後、自己放電の開始時から予め設定された時間までの電池セルの電圧降下量(すなわち、電圧変化量)を測定する方法であり得る。これにより、定電流モードで予め設定された電圧まで充電後、予め設定された時間の間を自己放電させ、自己放電期間(すなわち、休止期間)の間の電圧降下量を測定し得る。
【0049】
このとき、自己放電期間は24時間以内に予め設定され得る。また、自己放電期間は、少なくとも従来の出荷充電時にOCV(Open Circuit Voltage)を測定するためにかかる時間より短い時間に設定され得る。
【0050】
具体例として、二次電池を定電流モードで1/200Cで微細電流を印加して充電し、充電電圧が目標電圧である2.0Vに到達した場合、24時間自己放電を開始しながら、電圧の変化量を測定する方法であり得る。
【0051】
また、電圧降下量測定方法の他の一例としては、プリエージングおよび初期充電を完了し、高温エージングを行った後に二次充電を完了した時点で二次電池の開放回路電圧(V1)を測定し、常温エージングを完了した時点で二次電池の開放回路電圧(V2)を測定して電圧降下量(OCV=V1-V2)を導出する方法であり得る。
【0052】
一方、電圧降下量測定の変数要因として、電池の大きさ、電解液注液量、正極または負極活物質の種類、電極ローディング量、N/P Ratioなどは、二次電池セルの製造工程で発生し得る電圧降下量測定時の変数要因になり得る。
【0053】
また、エージング温度、エージング時間、エージング回数、充放電温度、充放電容量、充放電回数、充放電時間、電解液吐出量などは、二次電池の活性化工程で発生し得る電圧降下量測定時の変数要因になり得る。
【0054】
さらに、電圧測定待機時間、測定電圧/電流モード、測定された電圧などは、二次電池の電圧測定工程で発生し得る電圧降下量測定時の変数要因になり得る。
【0055】
他の一例において、上記電圧降下量補正データと正常電池の基準電圧降下量とを比較して電池の低電圧不良の有無を導出する判断部40をさらに含み得る。
【0056】
一方、データベース10は、独立変数と従属変数との間の相関関係に応じた相関関係式を定義し得る。ここで、相関関係分析は回帰分析であり得る。回帰分析は、2つまたはそれ以上の変数間の依存関係を把握することによって、ある特定の変数(従属変数)の値を他の1つまたはそれ以上の変数(独立変数)から説明して予測する統計学である。この場合、独立変数は、上記データベース部10に保存された既存データのうち1種以上であり得、従属変数は電圧降下量補正データであり得る。すなわち、データベース部10は、データベース部10に保存された既存データと電圧降下量補正データとの回帰分析による相関関係式を定義することになる。
【0057】
上記相関関係式は、下記の式1のように定義し得る。
【0058】
【0059】
このとき、独立変数は上記データベース部10に保存された既存データのうち1種以上であり、従属変数は電圧降下量補正データであり得る。独立変数の係数値は、母集団の二次電池データによって算出される。式1において、αは常数値であり、相関関係式で従属変数を予測するために加算される値である。式1のような相関関係式は、独立変数である既存データの種類または優先順位に従ってそれぞれ定義され得る。ただし、上記相関関係式は場合によっては変動され得る。すなわち、本発明に係る相関関係式は、上記データベース部10に保存された既存データの種類および適用の優先順位を反映して多様な独立変数の係数値を有し得、最終の電圧降下量補正データの算出に適用される既存データの種類および適用の優先順位を反映した相関関係式を用いて従属変数を算出することもできる。
【0060】
このとき、相関関係分析のための母集団となる二次電池の個数は1,000~30,000であり得、これに限定されるものではない。
【0061】
一方、感知部20は、測定の対象となる電池の製造工程条件、活性化工程条件、電圧測定条件および活性化工程後に測定された電池の電圧に対する実験データを感知し得る。すなわち、式1において独立変数は従属変数を算出するために代入される値であり、感知部20によって感知される実験データは独立変数に該当され得る。
【0062】
一方、演算部30は、上記データベース部10に保存された既存データと、感知部20によって感知された実験データに基づいて目標電圧降下量補正データを算出し得る。演算部30は、データベース部10に保存された既存データによって定義された相関関係式を用いて目標電圧降下量補正データを算出することになる。
【0063】
具体的には、演算部30は、感知部20によって入力された実験データを独立変数にして、データベース部10によって定義された相関関係式に代入することになる。このとき、演算部30は、感知部20によって感知された実験データにより相関関係式を決定し得、決定された相関関係式に独立変数である1種以上の実験データを代入することになる。演算部30は、相関関係式に1種以上の電圧降下量測定に影響を及ぼす変数要因を独立変数に代入することにより、変数要因が考慮された目標電圧降下量補正データを算出することになる。
【0064】
一方、判断部40は、上記演算部30によって算出された電圧降下量補正データと正常電池の基準電圧降下量データとを比較して、電池の低電圧不良の有無を導出し得る。
【0065】
一例として、算出された電圧降下量補正データが、補正目標値で作業された正常作業電池の電圧降下量データを通じて統計的方法で計算された基準電圧降下量データの数値が3mVの場合、それを超えない場合は正常二次電池として判断し、それを超える場合は低電圧不良の二次電池として判断し得る。すなわち、算出された補正電圧降下量が、補正目標値で作業された正常電池の電圧降下量を通じて求められた基準電圧降下量データの数値以下であると正常二次電池として判断し得、それを超えると低電圧不良の二次電池として判断し得る。
【0066】
図2は、本発明の二次電池の低電圧不良判定システム1000および二次電池の低電圧不良判定過程を全体的に図示したものである。
図2を参照すると、低電圧不良判定過程は、二次電池セルを製造する工程、活性化工程および電圧を測定する手順であり得る。このとき、低電圧不良判定方法で電圧降下量を測定して判断する場合、各工程で多様な電圧降下量測定の変数要因が発生し得る。
【0067】
上記電圧降下量測定の変数要因としては、電池の大きさ、電解液注液量、活物質の種類、電極ローディング量、N/P Ratio、エージング温度、エージング時間、エージング回数、充放電温度、充放電容量、充放電回数、充放電時間、電解液吐出量、電圧測定待機時間、測定された電圧のうち1種以上であり得る。
【0068】
測定の対象である二次電池の電圧降下量判定過程で発生された変数要因と実際に測定された電圧降下量とを含む実験データは、感知部20を介して感知され、演算部30に伝達され得る。このとき、演算部30は、データベース部10から上記データベース部10に保存された既存データ情報が伝達され得る。一方、データベース部10は、事前に多様な電圧降下量測定の変数要因が考慮されて算出された電圧降下量補正データが保存された保存所である。
【0069】
上記演算部は、データベース部に保存された情報に基づいて、感知部を介して伝達された電圧降下量測定の変数要因と実際に測定された電圧降下量を特定の相関関係式を経て補正された電圧降下量を算出し得る。その後、上記演算部を介して算出された電圧降下量と正常電池の基準電圧降下量とを比較し、電池の低電圧不良を判定して良品の二次電池を選別し得る。
【0070】
本発明の一実施形態に係る二次電池の低電圧不良判定システム1000は、上述したように、データベース部10に既存データを基盤にした回帰分析による電圧降下量補正データが保存されており、感知部20により実験データが入力されると、演算部30により自動的に電圧降下量補正データが算出され、このようなビッグデータ基盤の電圧降下量補正データを正常電池の基準電圧降下量と比較して低電圧不良を判定し得る。また、電圧降下量測定時に発生し得る多様な変数要因を考慮した電圧降下量の数値を提供することにより、正確性が向上された低電圧不良電池の選別が可能になって、電池の安定性を向上させ得る。
【0071】
また、本発明は、二次電池の低電圧不良判定方法を提供する。
【0072】
一方、本発明の二次電池の低電圧不良判定方法は、上述した二次電池の低電圧不良判定システムと重複される内容を含み得、重複される説明は省略され得る。
【0073】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る二次電池の低電圧不良判定方法を説明する。
図3は、本発明の低電圧不良判定システム1000を適用した二次電池の低電圧不良判定方法を概略的に示したフローチャートである。
【0074】
図3に図示したように、二次電池の低電圧不良判定方法は、既存データを保存するステップ(S100)、実験データを感知するステップ(S200)、補正された電圧降下量を算出するステップ(S300)、および低電圧不良の有無を判断するステップ(S400)からなり得る。
【0075】
上記既存データを保存するステップ(S100)は、電池の製造工程条件、活性化工程条件、活性化工程後の電圧測定条件および測定された電池の電圧に対する既存データを保存するステップであり得る。
【0076】
一方、実験データを感知するステップ(S200)は、測定の対象となる電池の製造工程条件、活性化工程条件、活性化工程後の電圧測定条件および測定された電池の電圧に対する実験データを感知するステップであり得る。
【0077】
具体的には、上記既存データを保存するステップ(S100)の既存データおよび上記実験データを感知するステップ(S200)の実験データは、電池の大きさ、電解液注液量、活物質の種類、電極ローディング量、N/P Ratio、エージング温度、エージング時間、エージング回数、充放電温度、充放電容量、充放電回数、電解液吐出量、電圧測定待機時間、測定電圧/電流モード、測定された電圧および測定された電圧降下量のうち1種以上であり得る。
【0078】
さらに具体的には、電圧降下量測定の変数要因として、電池の大きさ、電解液注液量、正極または負極活物質の種類、電極ローディング量、N/P Ratioなどは、二次電池セルの製造工程で発生し得る電圧降下量測定時の変数要因になり得る。
【0079】
また、エージング温度、エージング時間、エージング回数、充放電温度、充放電容量、充放電回数、充放電時間、電解液吐出量などは、二次電池の活性化工程で発生し得る電圧降下量測定時の変数要因になり得る。
【0080】
さらに、電圧測定待機時間、測定電圧/電流モード、測定された電圧などは、二次電池の電圧測定工程で発生し得る電圧降下量測定時の変数要因になり得る。一方、既存データを保存するステップにおいて、保存された既存データのうち独立変数と従属変数を決定するステップ(S110)の後、決定された独立変数と従属変数との相関関係分析のための相関関係式を定義するステップ(S120)の手順で構成され得る。ここで、相関関係分析は回帰分析であり得る。この場合、独立変数は保存された既存データであり、従属変数は電圧降下量補正データであり得る。相関関係式は、上記式1のように定義し得る。このとき、独立変数は保存された既存データのうちいずれか1種以上であり得、従属変数は独立変数として指定された既存データに基づく電圧降下量補正データであり得る。このとき、相関関係式は、独立変数である既存データの種類または優先順位によってそれぞれ定義され得る。
【0081】
実験データを感知するステップ(S200)は、上述したように、測定の対象となる電池の製造工程条件、活性化工程条件、活性化工程後の電圧測定条件および測定された電池の電圧に対する実験データを感知するステップであり得る。
【0082】
補正された電圧降下量を算出するステップ(S300)は、保存された既存データによる電圧降下量補正データと感知された実験データに基づいて補正された電圧降下量を算出するステップであり得る。具体的には、保存された既存データにより上記定義された相関関係式を用いて目標電圧降下量補正データを算出し得る。より具体的には、補正された電圧降下量を算出するステップ(S300)は、相関関係式に実験データを独立変数として代入するステップ(S310)および相関関係式により従属変数である目標電圧降下量補正データを算出するステップ(S320)を含み得る。上述したように、実験データは、測定の対象である二次電池の電圧降下量測定時に電圧降下に影響を及ぼし得る多様な変数要因のうち1種以上の実験データを相関関係式に代入される独立変数にして、指定された独立変数に応じた目標電圧降下量補正データを算出することになる。
【0083】
また、上記補正された電圧降下量を算出するステップ(S300)以降、上記補正された電圧降下量と正常電池の基準電圧降下量とを比較して、電池の低電圧不良の有無を判断するステップ(S400)をさらに含み得る。
【0084】
これにより、本発明の二次電池の低電圧不良判定方法は、二次電池の電圧降下測定時の変数要因を考慮した実際に測定された電圧降下量の補正値を算出することにより、二次電池の低電圧不良判定の正確度を向上させ得る。
【0085】
以上においては本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、当該技術分野の熟練した当業者または当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、後述する特許請求の範囲に記載された本発明の思想および技術領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させ得ることを理解し得るだろう。
【0086】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0087】
10:データベース部
20:感知部
30:演算部
40:判断部
1000:二次電池の低電圧不良判定システム
【国際調査報告】