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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】湿式マルチプレートクラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 13/74 20060101AFI20231130BHJP
   F16D 13/72 20060101ALI20231130BHJP
   F16D 13/62 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
F16D13/74 A
F16D13/72 B
F16D13/62 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532430
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 DE2021100853
(87)【国際公開番号】W WO2022111750
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】102020131567.8
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021112393.3
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン デンダ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン シュタインメッツ
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン クレープス
(72)【発明者】
【氏名】イェンス クラーマー
(72)【発明者】
【氏名】ローラン イネシェン
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ヘプゲン
【テーマコード(参考)】
3J056
【Fターム(参考)】
3J056AA60
3J056BB12
3J056BE13
3J056BE23
3J056CA07
(57)【要約】
本発明は、連帯回転のためにプレートキャリア(8)に接続され、一方で軸方向に変位可能であるクラッチプレート(4)を有し、プレートキャリアが、流体通路開口部(2)を有する、湿式マルチプレートクラッチであって、クラッチプレート(4)のうちの少なくとも1つ、好ましくはクラッチプレート(4)の各々が、溝(1)を有する摩擦プレートとして設計されている、湿式マルチプレートクラッチに関する。本発明は、摩擦プレートの溝(1)、特に、溝(1)の少なくとも幾何学的中心線(61)が、流体通路開口部(2)を通る径方向の広がりに沿ってプレートキャリア(8)内に延在するという点で際立っている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連帯回転のためにプレートキャリア(8;9)に接続され、一方で軸方向に変位可能であるクラッチプレート(4;5;6;7)を有し、かつ前記プレートキャリア(8;9)が、流体通路開口部(2)を有し、前記クラッチプレート(4;5;6;7)のうちの少なくとも1つ、好ましくは前記クラッチプレート(4;5;6;7)の各々が、溝(1)を有する摩擦プレートとして設計されている、湿式マルチプレートクラッチ(10)であって、前記摩擦プレートの前記溝(1)、特に、前記溝(1)の少なくとも1つの幾何学的中心線(61;62)が、前記プレートキャリア(8;9)内の前記流体通路開口部(2)を通る径方向の広がりに沿って前記プレートキャリア(8;9)内に延在することを特徴とする、湿式マルチプレートクラッチ(10)。
【請求項2】
連帯回転のためにプレートキャリア(8;9)に接続され、一方で軸方向に変位可能であるクラッチプレート(4;5;6;7)を有し、かつ前記プレートキャリア(8;9)が、流体通路開口部(2)を有し、前記クラッチプレート(4;5;6;7)のうちの少なくとも1つ、好ましくは前記クラッチプレート(4;5;6;7)の各々が、溝(1)を有する摩擦プレートとして設計されている、湿式マルチプレートクラッチ(10)であって、前記摩擦プレートの前記溝(1)が、前記プレートキャリア(8;9)内の2つのすぐ隣に隣接する流体通路開口部(2)間の中心を通り径方向範囲に沿って延在することを特徴とし、特に、前記溝(1)を区切る少なくとも1つの摩擦パッド(12;51)の幾何学的中心線(63;64)が、前記流体通路開口部(2)を通る径方向の広がりに沿って延在することを特徴とする、湿式マルチプレートクラッチ(10)。
【請求項3】
前記溝(1)が、キャリア要素(15;55)に固定された摩擦パッド(12、13;51、52)によって区切られた溝(16;56)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の湿式マルチプレートクラッチ。
【請求項4】
全ての前記流体通路開口部(2)が、前記プレートキャリア(8;9)の歯部(50;60)の歯先領域内に配置されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の湿式マルチプレートクラッチ。
【請求項5】
前記プレートキャリア(8;9)の歯部(50;60)の歯先領域内の流体通路開口部(2)に加えて、前記プレートキャリア(8;9)が、前記プレートキャリア(8;9)の歯基部領域(50;60)内に更なる流体通路開口部を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の湿式マルチプレートクラッチ。
【請求項6】
前記摩擦プレートが、前記プレートキャリア(8;9)の前記歯部(50;60)の前記歯基部領域内の前記流体通路開口部を通る径方向の広がりに沿って延在する更なる溝を有することを特徴とする、請求項5に記載の湿式マルチプレートクラッチ。
【請求項7】
前記摩擦プレートが、前記プレートキャリア(8;9)の前記歯部(50;60)の前記歯基部領域内の前記流体通路開口部を通る径方向の広がりに沿って延在する更なるエンボス加工された溝を有することを特徴とする、請求項5又は6に記載の湿式マルチプレートクラッチ。
【請求項8】
前記摩擦プレートが、前記摩擦パッド(12;52)内に形成されたエンボス加工された溝(18、19;58、59)を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の湿式マルチプレートクラッチ。
【請求項9】
前記摩擦パッド(11~14;51、52)が、台形の形状を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の湿式マルチプレートクラッチ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の湿式マルチプレートクラッチ(10)のためのクラッチプレート(4;5;6;7)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の特徴を有する湿式マルチプレートクラッチに関する。
【0002】
本発明の適用範囲:軸方向に変位可能でありかつ流体通路開口部、例えば、油孔を有するプレートキャリアに、連帯回転するために接続されているクラッチプレートを有する、湿式マルチプレートクラッチ。
【背景技術】
【0003】
湿式マルチプレートクラッチ及びブレーキは、従来のパワーシフト可能な変速機、ヘビーデューティー駆動トレインの革新的なハイブリッドモジュール、又はシフト可能なe-axleにおいて広く使用されており、高性能で頑丈なコンポーネントを表している。自動車用途におけるCO2排出量の削減及び駆動トレインの効率向上の要求は、非常に重要である。シフト要素の負荷に依存しない損失を削減することに加えて、熱負荷及び適切な冷却を考慮する必要がある。摩擦特性、熱バランス、及び効率の間の緊張の領域では、摩擦プレートの溝パターンの構成及び摩擦システム内のターゲットを絞った油の流れが中心的な役割を果たす。
【0004】
DE102017124330A1は、連帯回転のためにプレートキャリアに接続されたクラッチプレートを有するが、プレートキャリアが軸方向に変位可能であり、かつプレートキャリアが流体通路開口部を有する、湿式マルチプレートクラッチを開示している。
【0005】
DE102014221577A1は、流体ポケット及び流体通路開口部を有するプレートキャリアを有する、湿式クラッチを開示している。
【0006】
DE102015201550A1は、内側キャリア及び外側キャリアを有し、内側キャリア及び外側キャリアが、共通の回転軸を中心とした連帯回転のために配置されている、クラッチであって、内側キャリア、外側キャリア、及び摩擦パートナーを収容するためのハウジングが、液体で満たされており、いずれの場合も、摩擦パートナーの領域における液体の径方向通過のために、内側キャリアが、第1の凹部を有し、外側支持体が、第2の凹部を有する、クラッチを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、摩擦プレートの溝をプレートキャリア内の穴パターンに好適に位置合わせすることによって、対流冷却/冷却効果を改善し、かつ/又はドラグ損失を最小限に抑える目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
目的は、請求項1に記載の特徴を有する湿式マルチプレートクラッチによって達成される。
【0009】
したがって、本発明によれば、湿式マルチプレートクラッチは、連帯回転のためにプレートキャリアに接続されたクラッチプレートが設けられているが、プレートキャリアが、軸方向に変位可能であり、かつプレートキャリアが、流体通路開口部(2)を有し、摩擦プレートの溝(1)、特に、溝(1)の少なくとも1つの幾何学的中心線(61;62)が、プレートキャリア内の流体通路開口部(2)を通る径方向の広がりに沿って延在することを特徴とする。
【0010】
有利なことに、摩擦プレートのプロファイルは、流れ抵抗が低減されるように、請求項1に記載の溝の特許請求された配置によって流体的に改善され、したがって、流体によってマルチプレートクラッチの脱油が改善され、ドラグトルクが低減される。
【0011】
目的は、請求項2に記載の特徴を有する湿式マルチプレートクラッチによって達成される。
【0012】
したがって、本発明によれば、湿式マルチプレートクラッチは、連帯回転のためにプレートキャリアに接続されたクラッチプレートが設けられており、プレートキャリアが、軸方向に変位可能であり、かつプレートキャリアが、流体通路開口部(2)を有し、摩擦プレートの溝(1)が、プレートキャリア内の2つのすぐ隣に隣接する流体通路開口部(2)間の中心を通る径方向の広がりに沿って延在し、溝(1)を区切る少なくとも1つの摩擦パッド(12;51)の幾何学的中心線(63;64)が、流体通路開口部(2)を通り径方向範囲に沿って延在することを特徴とする。
【0013】
有利なことに、溝の配置、特に、請求項2に記載の摩擦パッドの配置は、流れ抵抗が増加するように、流れの観点から摩擦プレートのプロファイルを改善し、したがって、油の流れを偏向させることによって冷却効果の増加が達成される。
【0014】
摩擦パッドは、好ましくは等脚台形の形状を有する。台形摩擦パッドは、担体プレート、例えば、キャリアシートに取り付けられている。担体プレートは、本質的に円形のリングプレートの形状を有する。歯部が、担体プレートの内側又は外側に径方向に設けられており、これは、プレートキャリアとの連帯回転のための接続を作成するのに役立つ。有利なことに、担体プレート上の縁部は、径方向内側に、かつ径方向外側に摩擦パッドがないままである。このようにして、摩擦パッドのサイズ及び/又は形状の公差は、それらが担体プレートに固定されたときに補償され得る。加えて、摩擦パッドは、円周方向に互いに均等に離間していることが有利である。
【0015】
台形摩擦パッドは、有利なことに、それぞれのより長いベース側を内側にして径方向に配置される。このように配置された摩擦パッド間の距離は、径方向内側から径方向外側に広がる摩擦パッド間の溝をもたらす。溝自体は、径方向に延在する。摩擦パッドは、その角が丸くなっている。
【0016】
流体通路開口部は、流体として油が使用される場合、油孔とも呼ばれ、通路開口部が孔として構成されている。プレートキャリアは、例えば、2つ、4つ以上の流体通路開口部を含み、これらは、有利なことに、対で直径方向に配置される。摩擦パッドと同様に、流体通路開口部は、円周方向に均一に分布することが好ましい。この意味において、分割についても言うことができる。クラッチプレートは、通常、プレートキャリア内のいくつかの流体通路開口部よりも多い、いくつかの摩擦パッドを備える。その場合、摩擦パッドの数は、好ましくは、プレートキャリア内の流体通路開口部の数の整数倍である。
【0017】
湿式マルチプレートクラッチの好ましい例示的な実施形態は、溝が、キャリア要素に固定された摩擦パッドによって区切られる溝を備えることを特徴とする。溝は、摩擦ライニングパッド間の摩擦ライニングがない領域によって形成されている。溝の深さは、キャリア要素上の摩擦パッドの厚さに起因する。
【0018】
湿式マルチプレートクラッチの更なる好ましい例示的な実施形態は、全ての流体通路開口部が、プレートキャリアの歯部の歯先領域内に配置されていることを特徴とする。歯先領域は、内部歯部上又は外部歯部上のいずれかの外側に径方向に配置された径方向の外側歯部領域である。同様に、プレートキャリアの歯部の径方向の内側歯部領域は、歯基部領域と呼ばれる。キャリア要素には、プレートキャリアの歯部に相補的であるように構成された歯部が径方向内側又は径方向外側に装備されている。相互噛み合い歯部は、プレートキャリアと、キャリア要素又はそれぞれのクラッチプレートと、の間の連帯回転のための接続を作成する。
【0019】
湿式マルチプレートクラッチの更なる好ましい例示的な実施形態は、プレートキャリアが、プレートキャリアの歯部の歯先領域内の流体通路開口部に加えて、プレートキャリアの歯部の歯基部領域内に追加の流体通路開口部を有することを特徴とする。このようにして、摩擦空間内で利用できる油を大幅に有利に増やすことができ、これは以下で説明される。
【0020】
湿式マルチプレートクラッチの別の好ましい例示的な実施形態は、摩擦プレートが、プレートキャリアの歯部の歯基部領域内の流体通路開口部を通り径方向範囲に沿って延在する追加の溝を有することを特徴とする。このようにして、摩擦空間を通る油の効果的な流れもまた、ここで達成され得る。
【0021】
湿式マルチプレートクラッチの別の好ましい例示的な実施形態は、摩擦プレートが、プレートキャリアの歯部の歯基部領域内の流体通路開口部を通り径方向範囲に沿って延在する追加のエンボス加工された溝を有することを特徴とする。その結果、流体が利用できる流れ断面が増加され得る。
【0022】
湿式マルチプレートクラッチの更なる好ましい例示的な実施形態は、摩擦プレートが摩擦パッド内に形成されたエンボス加工された溝を有することを特徴とする。摩擦パッドのエンボス加工された溝は、摩擦パッド間の溝よりも著しく浅い。摩擦空間を通る流体の流れは、エンボス加工された溝の形状及びサイズによって更に影響を受けるか、又は制御され得る。
【0023】
湿式マルチプレートクラッチの更なる好ましい例示的な実施形態は、ブラインド溝が長方形の形状を有することを特徴とする。上述したように、摩擦パッド間の溝は、単純な方法で、径方向内側から径方向外側に広がり得る。
【0024】
本発明はまた、上述したように、湿式マルチプレートクラッチのためのクラッチプレートに関する。クラッチプレートは、別個に取り扱うことができる。
【0025】
本発明はまた、任意選択で、そのようなクラッチプレートのための摩擦パッド、プレートキャリア、及び/又はキャリア要素に関係し得る。
【0026】
本発明の更なる利点及び有利な構成は、以下の図及びその説明の主題である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1の例示的な実施形態による、内側プレートキャリアとして構成されたプレートキャリアに連帯回転のために接続されたキャリア要素に固定された摩擦パッドを有する摩擦プレートとして構成された、クラッチプレートを示す。
図2】外側プレートキャリアとして構成されたプレートキャリアを有する第1の例示的な実施形態の変形例を示す。
図3】第2の例示的な実施形態による図1と同様の図を示す。
図4】第2の例示的な実施形態による図2と同様の図を示す。
図5】例示的な実施形態の更なる詳細を示すための図1の拡大図を示す。
図6】例示的な実施形態の更なる詳細を示すための図2の拡大図を示す。
図7】例示的な実施形態の更なる詳細を示すための図3の拡大図を示す。
図8】例示的な実施形態の更なる詳細を示すための図4の拡大図を示す。
図9】吸気とドラグトルクとの関係を示すための3つのデカルト座標図を示す。
図10】説明される例示的な実施形態によって達成されるタスク及び改善を示すための2つの更なるデカルト座標図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
湿式マルチプレートクラッチは、2つのプレートキャリアを備え、そのうちの一方は、外側プレートキャリアとして構成され、他方は、内側プレートキャリアとして構成されており、そのうちの1つのプレートキャリアのみが図の各々に示されている。湿式マルチプレートクラッチはまた、クラッチプレートを有するプレートパックを備える。クラッチプレートは、摩擦プレートとして及び鋼プレートとして交互に構成されている。内側プレートキャリア及び外側プレートキャリアには、歯部が装備されている。歯部は、歯先領域及び歯基部領域を交互に有する。以下では、径方向の外側歯部領域は、外側プレートキャリアの場合と内側プレートキャリアの場合との両方で歯先領域と呼ばれ、一方、径方向の内側歯部領域は、歯基部領域と呼ばれる。
【0029】
この文書の範囲内では、摩擦パッド間に摩擦ライニングのない領域1のみが明示的に溝1と呼ばれ、称される。これらの溝1に加えて、エンボス加工された溝も図に示されている。これらは、この文書の文脈ではエンボス加工された溝と呼ばれ、称される。
【0030】
プレートキャリア内、内側マルチプレートキャリアとも呼ばれる内側プレートキャリア内、及び/又はマルチ外側プレートキャリアとも呼ばれる外側プレートキャリア内には、円周上の様々な軸方向位置に分布する流体通路開口部(油孔2)が存在し、そこを通って流体が摩擦空間に入れられる。2つのプレートキャリア間の環状空間として構成することが好ましい空間は、摩擦空間と呼ばれる。軸方向の変位により、マルチプレートクラッチが作動したとき、クラッチプレートの軸方向位置又はクラッチプレートの一部が変化する。クラッチプレートは、本質的に長方形のプロファイルを有する。摩擦プレートの軸方向位置に応じて、1つの摩擦プレート又はいくつかの摩擦プレートの摩擦ライニングが、油孔2(流体通路開口部)のうちの1つの上又は前に位置し、したがって、摩擦空間内への流体供給を妨げることが起こり得る。この場合、流体は制限された流れ断面のみが利用可能であり、これは流体の流れを損ない、一般に、流体の流れ抵抗を増加させる。
【0031】
請求項1に記載の溝の配置により、流れ抵抗が低減されるように、摩擦プレートのプロファイルが流体的に改善され、したがって、マルチプレートクラッチへの流体の供給が改善され、かつドラグトルクが低減される。
【0032】
請求項2に記載の溝の配置により、流れ抵抗が増加するように、流れの観点から摩擦プレートのプロファイルが改善され得、したがって、油の流れを偏向させることによって、冷却効果の増加が達成される。
【0033】
図1及び図2は、プレートキャリア内の油孔に対して径方向にある溝の配置を示している。図1Aは、内側プレートキャリアの例を使用してこれを示しており、図2は、外側プレートキャリアの例を使用してこれを示している。
・直接的な油供給による摩擦システムの最適な脱油によるドラグトルクの低減。
・内部歯部(図1):摩擦システムを通る最適な径方向の流れ、及びより低い回転速度(ドラグトルクの低減)に向けた吸気の脱油/変位の改善。孔は、ここでは、内部歯部の歯先領域内に示されている。溝の同じ配置、すなわち、溝が油孔に対して径方向に配置された状態において、孔は、代替的に、各場合において内部歯部の歯基部領域にも設けることができる。歯基部領域内の追加の孔の場合、更なる溝が設けられていないか、又は代替的に、更なる溝若しくはエンボス加工された溝が、歯基部領域内の追加の孔に対して径方向に設けられているかのいずれかである。
・外部歯部(図2):摩擦システムを通る最適な径方向の流れ、及び外側プレートキャリア上の改善された脱油。外径上の冷却油の蓄積の低減、及び油中の剪断の低減(ドラグトルクの低減)。孔は、ここでは、外部歯部の歯先領域内に示されている。溝の同じ配置、すなわち、溝が油孔に対して径方向に配置された状態において、孔は、代替的に、各場合において外部歯部の歯基部領域上にも設けることができる。歯基部領域内の追加の孔の場合、更なる溝が設けられていないか、又は代替的に、更なる溝若しくはエンボス加工された溝が、歯基部領域内の追加の孔に対して径方向に設けられているかのいずれかである。
図3及び図4は、プレートキャリア内の油孔に対してオフセットされた溝の配置を示している:
・摩擦システム内の油の流れをリダイレクトすることによって冷却効果を高める
・内部歯部(図3):冷却油の体積流をリダイレクトすることにより、摩擦システム内の冷却油の分布が改善され、対流熱伝達のための接触面積(冷却油/鋼フィン)がより広がる。
・外部歯部(図4):冷却油の体積流をリダイレクトすることにより、冷却油上にダム効果が生じる。これにより、冷却油による鋼積層の改善された湿潤がもたらされ、したがって、改善された冷却効果をもたらす。
【0034】
油の除去及びドラグトルクに関する、プレートキャリア内の孔に対する溝の位置合わせ:
図5:摩擦プレートの摩擦ライニングの溝付け/区分1は、プレートキャリアの歯部ピッチに適合されている。
・溝/区分1の位置合わせは、内側プレートキャリアの油孔2の方向に径方向に配向されている。
・溝付けは、例えば、エンボス加工、フライス加工、又はパンチ加工(区分)によって行うことができる。
・穴の数は、摩擦ライニングの溝/区分の数と異なる場合がある。
・油孔2の直径及び溝の幅は、異なる場合がある。
【0035】
図6は、図5に類似しているが、外側プレートキャリア内に油孔2を有する:
・溝/区分1の位置合わせは、外側プレートキャリアの油孔2の方向に径方向に配向されている。
【0036】
冷却に関するプレートキャリア内の穴に対する溝の位置合わせ:
図7:摩擦プレートの摩擦ライニングの溝付け/区分1は、プレートキャリアの歯部ピッチに適合されている。
・内側プレートキャリアの径方向貫通油孔2からオフセットされた円周方向における溝/区分1の、径方向の位置合わせ。
・溝付けは、例えば、エンボス加工、フライス加工、又はパンチ加工(区分)によって行うことができる。
・穴の数は、摩擦ライニングの溝/区分の数と異なる場合がある。
・油孔径及び溝幅は、異なる場合がある。
【0037】
図8は、図7に類似しているが、外側プレートキャリア内に油孔2を有する:
・外側プレートキャリアの径方向貫通油孔2からオフセットされた円周方向における溝/区分1の、径方向の位置合わせ。
【0038】
一般的なドラグトルク、油の除去、吸気:
図9は、因果関係を示している。
【0039】
図10は、目標/改善を示している:
吸気の開始をより低い回転速度にシフトする:
油の除去/吸気は、プレートキャリア内の孔まで径方向範囲内に溝を径方向に配置することによって改善される。
【0040】
図9は、搬送された体積流24が供給された体積流25を超える場合、吸気26が搬送された体積流24によってどのように影響されるかを示している。この限界から、ギャップ充填レベル26が減少し、プレート間の潤滑ギャップが空気を包有する。この限界を超えると、供給された体積流25は、空気を包有する。図10の下部は、吸気26が最大ドラグトルク27で発生することを示している。
【0041】
吸気は、プレートキャリア内の孔まで径方向範囲内に溝を径方向に配置することによって改善される。
【0042】
図10には、吸気28の低回転速度へのシフトがどのように達成されるかが、ドラグトルク曲線30にて示されている。冷却及び/又は潤滑媒体の搬送効果は、図1図8に示されている溝/区分1によって改善され得る。
【0043】
図1、2、及び3、4では、湿式マルチプレートクラッチ10のクラッチプレート4、5;6、7の構成のための2つの例示的な実施形態が、各々クラッチプレート4、5、6、7のセクションの上面図に示されている。
【0044】
図1及び3のクラッチプレート4及び6は、内部プレートキャリアとして構成されたプレートキャリア8の相補的な外部歯部内に内部歯部によって引っ掛けられている。図2及び4のクラッチプレート5及び7は、外部プレートキャリアとして構成されたプレートキャリア9の相補的な内部歯部内に外部歯部によって吊り下げられている。
【0045】
クラッチプレート4、6の内部歯部は、キャリア要素55上に設けられている。キャリア要素55は、例えば、台形摩擦パッド11~14が上に接着されたキャリアシートである。キャリア要素55上に各々設けられた図2及び図4のクラッチプレート5、7の外側歯部は、摩擦パッド51、52に接着されている。図1及び3の摩擦パッド11~14と同様に、摩擦パッド51、52は各々、台形の形状を有し、台形のより長いベース側は、それぞれのキャリア要素15、55上の径方向内側に配置されている。
【0046】
図1~4の矢印は、流体、特に油が、冷却及び/又は潤滑のための摩擦空間を通ってどのように誘導されるかを示しており、マルチプレートクラッチ10内の摩擦空間は、本質的に環状空間の形状を有する。図1及び2では、径方向の矢印は、流体が摩擦パッド11~14;51、52の間の溝1を通り径方向に妨げられずにどのように通過するか示している。図3及び4では、分岐矢印は、内側に径方向に入る流体が、どのように溝1を通り摩擦パッド11~14;51、52を迂回して流れるかを示している。
【0047】
図5~8では、図1~4の例示的な実施形態は拡大され、追加の参照番号とともに示されている。図1~4のように、2は、流体がそれぞれのプレートキャリア8、9を介して内側に径方向に通って供給される流体通路開口部を称する。溝1を通って、内側に径方向に供給された流体は、それぞれのクラッチプレート4;5;6;7によって制限された摩擦空間を通って異なるように誘導される。
【0048】
図5及び7に示すクラッチプレート4及び6の場合、溝1は、各場合において、2つの隣接する摩擦パッド12、13によって区切られた溝16を備える。図5では、溝16は、プレートキャリア8の流体通路開口部2の径方向範囲内に配置されている。図7では、溝16は、2つの流体通路開口部2間に、円周方向にオフセットされている。
【0049】
図6及び8において、溝1は、2つの摩擦パッド51及び52によって区切られた溝56を備える。図6では、溝56は、プレートキャリア9の流体通路開口部2とともに共通の径方向線上に配置されている。図8では、溝56は、プレートキャリア9の2つの流体通路開口部2間に、円周方向にオフセットされるように配置されている。
【0050】
摩擦パッド11~14及び51、52には、エンボス加工された溝18、19;58、59が装備されている。エンボス加工された溝18、19、58、59は、各パッド上に互いに平行に延在する。個々の摩擦パッド11~14及び51、52は、各々径方向に位置合わせされている。
【0051】
図7では、エンボス加工された溝18は、プレートキャリア8の流体通路開口部2とともに共通の径方向線上に配置されている。エンボス加工された溝19は、円周方向に隣接する、プレートキャリア8の流体通路開口部2に割り当てられている。
【0052】
図5及び7において、内部歯部として構成されたキャリア要素15の歯部は、17によって示されている。この歯部17により、キャリア要素15は、相補的な外部歯部として構成されたプレートキャリア8の歯部50内に引っ掛けられている。歯部17及び50の噛み合いを介して、プレートキャリア8とそれぞれのクラッチプレート4;6との間の連帯回転のための接続が作成されている。
【0053】
図6、8では、キャリア要素55には、プレートキャリア9の相補的な歯部60に係合する、外部歯部として構成された歯部57が装備されている。ここでは、キャリア要素55とプレートキャリア9との間に、連帯回転のための接続も作成されている。
【0054】
幾何学的中心線61は、図5において、摩擦パッド12と13との間の溝1の溝が、プレートキャリア8内の流体通路開口部2を通り径方向範囲に沿って延在することを示している。
【0055】
幾何学的中心線62は、図6において、摩擦パッド51と52との間の溝1の溝が、プレートキャリア9の流体通路開口部2を通り径方向範囲に沿って延在することを示している。
【0056】
摩擦パッド12の幾何学的中心線63が、図7に描かれている。図7に示すものとは異なり、幾何学的中心線63は、摩擦パッド12の対称軸に対応する。
【0057】
摩擦パッド12の幾何学的中心線63又は対称軸は、プレートキャリア8の流体通路開口部2を通り径方向範囲に沿って延在する。同時に、図7の摩擦パッド12の幾何学的中心線63又は対称軸は、エンボス加工された溝18の幾何学的中心線63と一致する。
【0058】
図8では、摩擦パッド51の対称軸に対応する幾何学的中心線64が描かれている。幾何学的中心線64又は対称軸は、プレートキャリア9の流体通路開口部2を通り径方向範囲に沿って延在する。
【符号の説明】
【0059】
1 溝付け
2 流体通路開口部
4 クラッチプレート
5 クラッチプレート
6 クラッチプレート
7 クラッチプレート
8 プレートキャリア(内側)
9 プレートキャリア(外側)
10 湿式マルチプレートクラッチ
11 摩擦パッド
12 摩擦パッド
13 摩擦パッド
14 摩擦パッド
15 キャリア要素
16 溝
17 歯部
18 エンボス加工された溝
19 エンボス加工された溝
20 X軸
21 Y軸
22 Y軸
23 Y軸
24 搬送された体積流
25 供給された体積流
26 吸気
27 ドラグトルク
28 吸気
30 ドラグトルク曲線
50 歯部
51 摩擦パッド
52 摩擦パッド
55 キャリア要素
56 溝
57 歯部
58 エンボス加工された溝
59 エンボス加工された溝
60 歯部
61 幾何学的中心線
62 幾何学的中心線
63 幾何学的中心線
64 幾何学的中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】