(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料を高温冶金法により溶融するための方法及び溶融ユニット
(51)【国際特許分類】
C22B 5/12 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
C22B5/12
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023532482
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2021083555
(87)【国際公開番号】W WO2022117558
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】102020215140.7
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】カウセン・フランク・マーリン
(72)【発明者】
【氏名】ボロフスキ・ニコラウス・ペーター・クルト
(72)【発明者】
【氏名】ルクス・ティム
(72)【発明者】
【氏名】デーゲル・ロルフ
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA01
4K001AA04
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA12
4K001AA15
4K001AA19
4K001AA20
4K001AA24
4K001AA30
4K001AA41
4K001BA22
4K001DA05
4K001GB03
4K001HA09
4K001HA11
4K001JA01
(57)【要約】
【課題】従来技術の欠点を克服する方法及び溶融ユニットを提供する。
【解決手段】金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料Mを高温冶金法により溶融するための方法であって、該材料が、液体状の溶融相9、液体状のスラグ相10及び気体相が形成されるように、溶融ゾーン6、メイン反応ゾーン及びサブ反応ゾーン7,8を含む溶融ユニット1へ粉砕された形態で供給され、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物の存在の下で溶融される、前記方法において、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物Gが、溶融ユニット1における液体状のスラグ相10の上方で該スラグ相に接触せずに配置されつつ水平線に対して5~85°の角度に向けられた少なくとも1つのインジェクタ11を介して液体状のスラグ相10へ吹き込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料(M)を高温冶金法により溶融するための方法であって、該材料が、液体状の溶融相(9)、液体状のスラグ相(10)及び気体相が形成されるように、溶融ゾーン(6)、メイン反応ゾーン及びサブ反応ゾーン(7,8)を含む溶融ユニット(1)へ粉砕された形態で供給され、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物の存在の下で溶融される、前記方法において、
酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物(G)が、溶融ユニット(1)において液体状のスラグ相(10)の上方で該スラグ相に接触せずに配置されつつ水平線に対して5~85°の角度に向けられた少なくとも1つのインジェクタ(11)を介して液体状のスラグ相(10)へ吹き込まれることを特徴とする方法。
【請求項2】
酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物(G)を非接触に液体状のスラグ相(10)へ吹き込む少なくとも1つのインジェクタ(11)が、スラグ相(10)の表面に対して、0.10mの最小間隔、好ましくは0.15mの最小間隔、より好ましくは0.20mの最小間隔、更により好ましくは0.25mの最小間隔、最も好ましくは0.30の最小間隔を有していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのインジェクタ(11)を介して液体状のスラグ相(10)へ吹き込まれる酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物(G)が、少なくとも50m/sの速度で、好ましくは少なくとも100m/sの速度で、より好ましくは少なくとも150m/sの速度で、更により好ましくは少なくとも200m/sの速度で、更に好ましくは少なくとも250m/sの速度で、最も好ましくは少なくとも300m/sの速度で吹き込まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのインジェクタ(11)が、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物(G)を液体状のスラグ相(10)へ吹き込むラバールノズル(14)と、好ましくは更に、第2の酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物(G)を液体状のスラグ相(10)へ吹き付ける同軸ノズル(15)とを含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
第1の酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物(G)が、少なくとも300Nm
3/hの流量で、好ましくは少なくとも350Nm
3/hの流量で、より好ましくは少なくとも400Nm
3/hの流量で、更により好ましくは少なくとも450Nm
3/hの流量で、最も好ましくは少なくとも500Nm
3/hの流量でスラグ相(10)へ吹き込まれることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
溶融ゾーン(6)の上方に配置された溶融ユニット(1)のメイン反応ゾーン(7)が、本質的に円形状及び/又はだ円状に形成された断面を有していることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
第1の酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物(G)が、少なくとも1つのインジェクタ(11)を介して仮想的な流れリング(16)に対して接線方向へ液体状のスラグ相(10)に吹き込まれ、流れリング(16)が、メイン反応ゾーン(7)の内径の0.1~0.9倍に相当する直径を包囲することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのインジェクタ(11)を介して液体状のスラグ相(10)へ吹き込まれる第1の酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物(G)が脈動されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
酸化性気体及び/又は気体混合物(G)が、酸素、空気及び/又は酸素富化された空気を含む群から選択され、還元性気体及び/又は気体混合物が、天然ガス、特にメタン、一酸化炭素、水蒸気、水素、特にグリーン水素及び/又はこれらの気体混合物を含む群から選択され、不活性気体及び/又は気体混合物が、窒素、アルゴン、二酸化炭素及び/又はこれらの気体混合物を含む群から選択されることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
第1の酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物(G)が、少なくとも1つのインジェクタ(11)を介して圧縮されて供給され、溶融ユニット(1)内で断熱膨張され、その後、好ましくは、10J/Nm
3~100kJ/Nm
3の範囲の冷却作用が達成されるように、断熱膨張された気体及び/又は気体混合物として液体状のスラグ相(10)へ吹き込まれることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料が、液体状のスラグ相(10)の上方に配置された開口部(17)を通して液体状のスラグ相(10)の中央へ提供されることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料が、場合によっては追加的に、溶融ユニット(1)の壁部(3)に配置された少なくとも1つのインジェクションランス(18)を通して液体状のスラグ相(10)へ吹き込まれることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのインジェクションランス(18)が、少なくとも1つのインジェクタ(11)の範囲に配置されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
反応炉壁部(3)によって画定された溶融ゾーン(6)と、メイン反応ゾーン及びサブ反応ゾーン(7,8)と、反応炉壁部(3)に配置された少なくとも1つのインジェクタ(11)とを備えた、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物の存在の下で金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料(M)を高温冶金法により溶融するための溶融ユニット(1)において、
少なくとも1つのインジェクタ(11)が、サブ反応ゾーン(8)に配置されているとともに、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物(G)が液体状のスラグ相(10)の上方で該液体状のスラグ相へ吹き込まれることできるように水平線に対して5~85°の角度に向けられていることを特徴とする溶融ユニット。
【請求項15】
少なくとも1つのインジェクタ(11)が、反応炉壁部(3)内の場合によっては冷却されるポート(13)に入れられていることを特徴とする請求項14に記載の溶融ユニット(1)。
【請求項16】
金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料(M)を高温冶金法により溶融するための方法であって、該材料が、液体状の溶融相(9)、液体状のスラグ相(10)及び気体相が形成されるように、溶融ゾーン(6)、メイン反応ゾーン及びサブ反応ゾーン(7,8)を含む溶融ユニット(1)へ粉砕された形態で供給され、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物の存在の下で溶融される、前記方法において、
酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物(G)が、少なくとも1つのインジェクタ(11)を介して圧縮して供給され、溶融ユニット(1)内で断熱膨張され、その後、好ましくは10J/Nm
3の冷却作用が達成されるように、断熱膨張された気体及び/又は気体混合物として液体状のスラグ相(10)へ吹き込まれることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体の存在下において、金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料(M)を高温冶金法により溶融するための方法及び溶融ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料(M)を高温冶金法により溶融するための方法及び対応する溶融ユニットは、従来技術から基本的に知られている。すなわち、例えば特許文献1には、高温冶金法による溶融物へ流体を供給するためのTSL(top submerged lancing)システム及び方法が開示されており、流体、例えば酸素は、溶融物へ直接注入される。
【0003】
特許文献2には、電気的なアーク炉における、スクラップ、スクラップと鋳鉄の混合物及びスクラップと鉄スポンジの混合物のための溶融方法が開示されている。炉では、酸化性気体が、炉の底部に配置されたブローノズルを通して最大で10barの圧力及び168~360Nm3/hの流量で供給される。さらに、酸素が、動作位置において溶融された金属の表面の直上、したがってスラグ相内で動作する超音速ランスを用いて溶融物浴へ供給される。このとき、超音速ランスは、水平線に対して40~50°の角度で溶融物浴へ導入される。
【0004】
さらに、特許文献3には、溶融物反応炉を用いて副次材料から成る金属を回収するための方法が開示されている。当該溶融物反応炉は、冷却可能な反応炉壁部で画定された円形状のチャンバを備えている。酸素が溶融物へ直接注入可能であるとともに溶融物が円形状のチャンバ内で回転され得るように、反応炉壁部には、複数の酸素ランスが、スラグ開口部の下方で水平線に対して5~60°の角度でチャンバの中央に対してオフセットをもって配置されている。
【0005】
溶融物とのランスの直接的な接触によって、従来技術から公知のランスは、非常に粗い条件により大きな摩耗にさらされてしまう。そのため、専門家の間では、このような方法及び対応する溶融ユニットを改善する要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第91/05214号
【特許文献2】欧州特許第0723129号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第104928493号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102011002616号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の基礎となる課題は、従来技術の欠点を克服する方法及び溶融ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
当該課題は、本発明により、請求項1の特徴を有する方法によって、及び請求項14の特徴を有する溶融ユニットによって解決される。
【0009】
金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料を高温冶金法により溶融するための本発明による方法によれば、これら材料は、液体状の溶融相、液体状のスラグ相及び気体相が形成されるように、溶融ゾーン、メイン反応ゾーン及びサブ反応ゾーンを含む溶融ユニットへ粉砕された形態で供給され、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物の存在の下で溶融される。
【0010】
方法は、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物が、溶融ユニットにおける液体状のスラグ相の上方で該スラグ相に接触せずに配置されつつ水平線に対して5~85°の角度に、好ましくは15~80°の角度に、より好ましくは25~75°の角度に、更により好ましくは35~70°の角度に向けられた少なくとも1つのインジェクタを介して液体状のスラグ相へ吹き込まれることを特徴としている。
【0011】
同様に、本発明は、反応炉壁部によって画定された溶融ゾーンと、メイン反応ゾーン及びサブ反応ゾーンと、反応炉壁部に配置された少なくとも1つのインジェクタとを備えた、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物の存在の下で金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料を高温冶金法により溶融するための溶融ユニットを企図している。
【0012】
溶融ユニットは、少なくとも1つのインジェクタが、サブ反応ゾーンに配置されているとともに、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物が液体状のスラグ相の上方で該液体状のスラグ相へ吹き込まれることできるように水平線に対して5~85°の角度に、好ましくは15~80°の角度に、より好ましくは25~75°の角度に、更により好ましくは35~70°の角度に向けられていることを特徴としている。
【0013】
したがって、本発明によれば、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物は、液体状のスラグ相のバスレベル上方に配置された、水平線に対して特有の角度で位置決めされた少なくとも1つのインジェクタを介して当該スラグ相へ吹き込まれるか、吹き込まれることが可能であるように構成されている。酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物のこのような注入によって、液体状のスラグ相は、乱流が液体状のスラグ相の上方に配置されサブ反応ゾーンにある気体相へ噴射されるように、強い乱流にさらされる。このとき、驚くべきことに、これにより、液体状のスラグ相に比べて少なくともファクタ5だけ、好ましくは少なくともファクタ6だけ、より好ましくは少なくともファクト7だけ、最も好ましくは少なくともファクタ8だけ大きな表面がプロセスにおいて達成され、当該表面は、液体状のスラグ相の上方に配置されサブ反応ゾーンにある気体相との特に集中的な接触並びにより大きな物質移動及びエネルギー移動をもたらす。少なくとも1つのインジェクタを水平線に対して特有の角度で配置することにより、液体状のスラグ相は更に回転を受けるため、メイン反応ゾーン内にも、またサブ反応ゾーン内にも、乱流を更に補助する渦が形成される。したがって、特に効果的な冶金上の反応に寄与する最大限に乱れた環境を溶融ユニット内に得ることができる。
【0014】
本発明の有利な更なる形態は、各従属請求項に記載されている。独立請求項において個別に表された特徴は、技術的に意義がある態様で互いに組み合わせられることが可能であるとともに、本発明の別の態様を規定することが可能である。さらに、各請求項に記載された特徴は本明細書において詳細に規定及び説明され、本発明の更なる好ましい形態が示される。
【0015】
「接触せず(あるいは非接触)」という用語は、本発明の意味合いでは、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物を溶融ユニットへ注入可能な少なくとも1つのインジェクタが、吹き込み中にも、またその間のプロセスステップにおいても液体状のスラグ相と連続的に接触せず、液体状のスラグ相に対して特有の間隔をもって、したがってプロセス全体を通してバスレベルの上方に位置決めされていることと理解される。その例外は、プロセス中に強い乱流に依存して生じ、したがって回避できない、液体状のスラグ相及び/又は液体状の溶融相の個々の液滴の一時的な接触である。
【0016】
「インジェクタ」という用語は、本発明の意味合いでは、特にほかに規定しない限り、ランス又は本質的に中空円筒上の要素で形成された噴射パイプと理解される。
【0017】
「溶融ユニット」という用語は、本発明の意味合いでは、円形又は四角形のベース面に立設された中空円筒、中空円すい又は中空立方体を含む通常の溶融ユニットと理解され、中空円筒、中空円すい又は中空立方体の高さは、その長さ及び幅の数倍を有している。そのため、好ましくは、溶融ゾーンの上方に配置された溶融ユニットのメイン反応ゾーンは、本質的に円形状及び/又はだ円状に形成された断面を有しているように構成されている。
【0018】
例えば電気アーク炉(EAF)、サブマージドアーク炉(SAF)又は誘導炉のような、従来技術から当業者に知られている別の溶融ユニットは、本発明には含まれていない。
【0019】
有利には、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物を非接触に液体状のスラグ相へ吹き込む少なくとも1つのインジェクタは、インジェクタ先端部について、液体状のスラグ相の表面に対して、0.10mの最小間隔、好ましくは0.15mの最小間隔、より好ましくは0.20mの最小間隔、更により好ましくは0.25mの最小間隔、最も好ましくは0.30の最小間隔を有するようになっている。既に説明した、特に効果的な冶金上の反応をもたらす、隣り合う気体相との液体状のスラグ相のかき混ぜ作用及び乱流による混合のほかに、液体状のスラグ相に対して離間した配置により、インジェクタの大幅な摩耗低減が更に得られる。これにより、従来技術から公知の解決手段では非常に大きく、コストがかさむメンテナンスの手間が必要なインジェクタの詰まりも効果的に防止される。
【0020】
ただし、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物を非接触に液体状のスラグ相へ吹き込む少なくとも1つのインジェクタは、液体状のスラグ相の表面に対する最大間隔を超過すべきではない。そのため、有利には、少なくとも1つのインジェクタは、インジェクタ先端部について、液体状のスラグ相の表面に対して、2.50mの最大間隔、好ましくは2.0mの最大間隔、より好ましくは1.50mの最大間隔、更により好ましくは1.0mの最大間隔、最も好ましくは0.80の最大間隔を有するようになっている。
【0021】
これに関連して、液体状のスラグ相のバスレベルは、プロセス全体を通して、静的なバスレベルあるいはスラグレベルを有さず、むしろ異なるプロセス段階に基づき変化し得る。そのため、特に有利には、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物を非接触に液体状のスラグ相へ吹き込む少なくとも1つのインジェクタは、液体状のスラグ相の表面に対して、0.30~2.0mの範囲の間隔、特に好ましくは0.50~1.70mの範囲の間隔が保証されるように位置決めされるようになっている。
【0022】
好ましくは、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物は、当該気体が液体状のスラグ相へ1/4の最小深さで、好ましくは1/3の最小深さで、より好ましくは2/4の最小深さで、更により好ましくは2/3の最小深さで、最も好ましくは3/4の最小深さで入り込むように液体状のスラグ相へ吹き込まれる。注入される酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物の速度及び気体流パルスの特有の設定によって、必要に応じて、及び両パラメータに依存して液体状のスラグ相までの入り込みも達成可能であるように、入り込み深さを調整可能である。したがって、必要であれば、液体状のスラグ相の下方に配置された、金属を含む溶融相も操作されることが可能である。加えて、気体噴流によって、液体状のスラグ相におけるキャビテーションが短時間生じ、そして、金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料は、キャビテーションへ巻き込まれ、スラグ相内でより良好に分解されることが可能である。
【0023】
有利な一実施態様では、少なくとも1つのインジェクタ(11)を介して液体状のスラグ相へ吹き込まれる酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物は、少なくとも50m/sの速度で、好ましくは少なくとも100m/sの速度で、より好ましくは少なくとも150m/sの速度で、更により好ましくは少なくとも200m/sの速度で、更に好ましくは少なくとも250m/sの速度で、最も好ましくは少なくとも300m/sの速度で吹き込まれ、ここで挙げた速度値は、各気体がインジェクタから出るとき、すなわちその先端部から出るときに有する出口速度である。
【0024】
最大の速度については、好ましくは、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物が最大で1000m/sの速度で、より好ましくは最大で800m/sの速度で、更により好ましくは最大で600m/sの速度で、更に好ましくは最大で550m/sの速度で、最も好ましくは最大で450m/sの速度で液体状のスラグ相へ吹き込まれるように構成されている。
【0025】
これに関連して、特に好ましくは、少なくとも1つのインジェクタは、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物を液体状のスラグ相へ吹き込むラバールノズルを含むように構成されている。ラバールノズルは、ノズルスロートにおいて互いに隣り合う収束的な部分及び拡散的な部分を含むことを特徴としている。最も狭い断面における半径、出口半径及びノズル長さは、それぞれの設計ケースに依存して異なっていてよい。このようなラバールノズルは特許文献4から知られており、ここでは、当該文献が参照されるとともに本発明の開示の一部である。
【0026】
有利な別の一実施態様では、ラバールノズルは、第2の酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物をスラグ相へ吹き付けることができる同軸ノズルあるいはリング隙間ノズルを更に備えている。第1の酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物が、液体状のスラグ相へ入り込むように、好ましくは超音速性のラバールノズルを含むインジェクタを用いて液体状のスラグ相へ吹き込まれる一方、第2の酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物は、リング隙間ノズルを介してスラグ相へ単に吹き付けられ、当該スラグ相へ入り込まない。したがって、第2の酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物は、本発明の意味合いでは「シース気体」と呼ばれるのに対し、第1の酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/気体混合物は、更に「反応気体」と呼ばれる。
【0027】
第1及び/又は第2の酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物は、好ましくは、酸素、空気及び/又は酸素富化された空気を含む群から選択されている。第1及び/又は第2の酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物は、好ましくは、天然ガス、特にメタン、一酸化炭素、水蒸気、水素、特にグリーン水素及び/又はこれらの気体混合物を含む群から選択されている。第1及び/又は第2の酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物は、好ましくは、窒素、アルゴン、二酸化炭素及び/又はこれらの気体混合物を含む群から選択されている。
【0028】
グリーン水素という用語は、本発明の意味合いでは、水を酸素と水素に電気分解式に分解することで生成されたものと理解され、電気分解に必要な電流は、風、水力及び/又は太陽光のような再生可能エネルギーに由来する。
【0029】
反応気体のほか、更に反応性及び/又は不活性のシースガス及び/又はシースガス混合物を溶融ユニットへ導入する選択肢により、有利には、化学ポテンシャルの制御並びに液体状のスラグ相及び気体相における酸素分圧の調整が可能となる。このとき、気体相の化学ポテンシャルは、溶融されるべき金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料に基づく反応において、インジェクタを介して導入される反応気体の反応において、これにより得られる、液体状の溶融相及びスラグ相における反応気体ブローの反応において、並びに供給されるシース気体の反応において形成される。
【0030】
好ましい一実施態様では、液体状のスラグ相へ吹き込まれる反応気体の組成を一定に維持することができる一方、シース気体の組成は、気体雰囲気の化学ポテンシャルの最適な制御についての要件に依存して目的に合わせて変更されることが可能である。
【0031】
補足的に、又は代替的に、好ましい別の一実施態様では、スラグ相へ吹き込まれるシース気体の組成を一定に維持することができる一方、液体状のスラグ相へ供給される反応気体又は反応気体混合物の組成は、化学ポテンシャルの最適な制御についての要件に依存して目的に合わせて変更されることが可能である。
【0032】
反応気体が液体状のスラグ相へ吹き込まれる好ましい流量は、少なくとも300Nm3/h、好ましくは少なくとも350Nm3/h、より好ましくは少なくとも400Nm3/h、更により好ましくは少なくとも450Nm3/h、最も好ましくは少なくとも500Nm3/hである。流量は基準に依存する量であるため、流量は、ユニットサイズに依存してより大きいこともあり得る。
【0033】
既に上述したように、液体状のスラグ相は、少なくとも1つのインジェクタを水平線に対して特有の角度で配置されることにより回転を受けるため、メイン反応ゾーン内でも、またサブ反応ゾーン内でも渦が形成される。液体状のスラグ相における特に効率的な渦と、また粉砕された金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料の添加に関して有利に作用する渦とを得るために、好ましくは、反応気体は、少なくとも1つのインジェクタを介して仮想的な流れリングに対して接線方向にスラグ相へ吹き込まれ、流れリングは、メイン反応ゾーンの内径の0.1~0.9倍、より好ましくは内径の0.1~0.8倍、更により好ましくは内径の0.2~0.7倍、最も好ましくは内径の0.2~0.6倍に相当する。有利なことに、液体状のスラグ相の特有の回転速度においては、旋回流(旋風)をその中央に形成することができ、当該旋回流を介して、粉砕された金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料を液体状のスラグ相へ直接導入することが可能であり、及び/又は少なくとも直接液体状のスラグ相によって受け入れられることができ、したがって、プロセスにおいて本質的により迅速に分解されることが可能であることが分かった。従来技術から公知のプロセスとは異なり、分解プロセスは、所望のメイン反応ゾーンあるいは液体状のスラグ相において行われ、その表面では行われない。
【0034】
そのため、特に有利な一実施態様では、金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料は、液体状のスラグ相の上方に配置された溶融ユニットの開口部を通して、目的に合わせてスラグ相の中央へ提供されるように構成されている。
【0035】
特に有利には、反応気体が、溶融ユニットの壁部に配置された、少なくとも2つの、より好ましくは少なくとも3つの、更により好ましくは少なくとも4つの、最も好ましくは少なくとも5つのインジェクタを介して液体状のスラグ相へ吹き込まれる場合に上述の作用が生じ、複数のインジェクタは、特に有利には溶融ユニットの周囲に沿って同一の間隔で配置されている。
【0036】
補足的に、及び/又は代替的に、粉砕された及び/又は場合によっては粉末状の金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料を、少なくとも1つのインジェクタの範囲に配置された、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの、より好ましくは少なくとも3つのインジェクタランスを介して液体状のスラグ相へ添加することが可能である。粉砕された、及び/又は場合によっては粉末状の材料は、少なくとも1つの、有利には複数のインジェクションランスを介して、液体状のスラグ相へ直接、より好ましくは少なくとも1つのインジェクタにより生成される液体状のスラグ相内のキャビテーションへ直接、及び/又はインジェクタの気体噴流へ直接吹き込まれることができ、これにより、粉砕された、及び/又は粉末状の金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料がその後液体状のスラグ相へ至る。したがって、これら材料は、最小の損失で効果的に実施されることが可能である。材料が0.01~5.0mmの平均粒径、好ましくは3.5mmより小さな平均粒径、より好ましくは3.0より小さな平均粒径を有していれば、特に効果的な実施が達成される。
【0037】
別の好ましい一実施態様では、少なくとも1つのインジェクタを介してスラグ相へ吹き込まれる反応気体を脈動させることが可能である。
【0038】
本溶融プロセスにおいて用いられる金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料は、当該材料が炭化水素の顕著な割合を含む限り、溶融プロセスの集中的な冷却を必要とする大きなエネルギー容量を有し得る。そのため、特に好ましい一実施態様では、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物は、少なくとも1つのインジェクタを介して圧縮して供給されるとともに、溶融ユニット内で断熱膨張し、その後、断熱膨張した気体及び/又は気体混合物が液体状のスラグ相へ吹き込まれるようになっている。酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物あるいは反応気体の断熱膨張により、溶融ユニットの内部で直接的な冷却作用が生じ、当該冷却作用によって、プロセスのエネルギー収支/熱収支を目的に合わせて制御することが可能である。したがって、好ましくはラバールノズルを含むインジェクタの圧力、流れ及び/又はノズル幾何形状の調整を介して、少なくとも10J/Nm3の冷却作用、より好ましくは少なくとも100J/Nm3の冷却作用、更により好ましくは少なくとも1.0kJ/Nm3の冷却作用、最も好ましくは少なくとも5.0kJ/Nm3の冷却作用を達成可能であるように反応気体の断熱膨張を設定することが可能である。
【0039】
出力値について、これは、DIN1343:1990-01によるノルマルリューベ(Nm3)についての出力表現であることに留意すべきである。
【0040】
達成可能な冷却作用の最大値は、基本的にジュールトムソン効果によって物理的に限定されている。そのため、好ましくはラバールノズルを含むインジェクタの圧力、流れ及び/又はノズル幾何形状の調整を介して、最大で100kJ/Nm3の冷却作用、より好ましくは最大で90kJ/Nm3の冷却作用、更により好ましくは最大で80kJ/Nm3の冷却作用、最も好ましくは最大で70kJ/Nm3の冷却作用を達成可能であるように反応気体の断熱膨張を設定することが可能である。
【0041】
ここで記載される冷却作用は、正のジュールトムソン係数μを有する気体及び/又は気体混合物によってのみ達成可能であることに留意すべきである。
【0042】
さらに、有利には、溶融ユニット内での反応気体の断熱膨張により、液体状のスラグ相の大きな特有の表面の形成を再び高めることができ、当該形成は、最終的に周囲の気体雰囲気との特に集中的な接触につながるとともに、化学反応及びその反応率を高めることが分かった。
【0043】
冷却媒体としても用いられる反応気体を用いた溶融ユニットの内部における直接的な冷却によって、有利には、通常は冷却パネル及び/又は冷却通路を用いて行われる外部の冷却手段を拡張することができ、これにより、冷却マネジメント全体が本質的に単純化及び改善される。また、直接的な冷却によって、溶融ユニットの耐火ライニングの寿命を延長することができ、これは、溶融ユニットの動作経済性に有利に作用する。
【0044】
本発明による方法は、基本的に、金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料を高温冶金法により溶融するために設定されている。特に、これは、特に有機スクラップのような、アンチモン、ビスマス、鉛、鉄、ガリウム、金、インジウム、銅、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、銀、亜鉛及び/又はスズを含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料である。
【0045】
本発明の意味合いでは、有機成分を含むスクラップが有機スクラップとして理解される。好ましい有機スクラップは、電子機器スクラップ、自動車シュレッダスクラップ及び/又は変圧器シュレッダスクラップ、特にシュレッダ軽量断片を含む群から選択されている。
【0046】
「電子機器スクラップ」という用語は、本発明の意味合いでは、EUガイドライン2002/96/EGに適合して規定された古い電子機器と理解される。当該ガイドラインにより把握される機器カテゴリは、大型家庭器具;小型家庭器具;IT機器及び遠距離通信機器;エンターテイメント電子機器;照明機器;電気工具及び電子工具(固定された産業用大型工具を除く);電気式の玩具、スポーツ機器及び娯楽機器;医療機器(移植及び汚染された全ての製品を除く);監視機器及び管理機器並びに自動化された出力機器に関するものである。対応する機器カテゴリに適合する個々の製品については、ガイドラインの付録IBが参照される。
【0047】
別の態様では、本発明は、金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料を高温冶金法により溶融するための方法に関するものであり、該材料は、液体状の溶融相、液体状のスラグ相及び気体相が形成されるように、溶融ゾーン、メイン反応ゾーン及びサブ反応ゾーンを含む溶融ユニットへ粉砕された形態で供給され、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物が、少なくとも1つのインジェクタを介して圧縮して供給され、溶融ユニット内で断熱膨張され、その後、好ましくは10J/Nm3の冷却作用が達成されるように、断熱膨張された気体及び/又は気体混合物として液体状のスラグ相へ吹き込まれる。
【0048】
以下に、本発明及び技術的な周縁を図面に基づき詳細に説明する。本発明は、示される実施例によって限定されるべきではないことに留意すべきである。特に、特に明示しない限り、図面において説明される事項の部分的な太陽を抽出し、本明細書及び/又は図面に基づく他の構成要素及び認識と組み合わせることも可能である。特に、各図及び特に図示の大きさの比率は単に概略的なものであることに留意すべきである。同一の符号は同一の対象を表すため、場合によっては、他の図に基づく説明を補足的に考慮に入れることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明による溶融ユニットの一実施態様の概略的な断面図である。
【
図2】切断線A-Aにより溶融ユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1には本発明による溶融ユニット1の一実施態様が概略的に図示されており、当該溶融ユニットは、酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物Gの存在の下で、以下では溶融されるべき材料Mと呼ばれる金属を含有する原材料、残留材料及び/又は副次残留材料の高温冶金法による溶融のために設けられている。酸化性気体、還元性気体及び/又は不活性気体及び/又は気体混合物Gは、以下では反応気体Gと呼ばれる。
【0051】
ここに示す溶融ユニット1は従来のバス溶融ユニットの形態で形成されており、当該溶融ユニットは、下方の範囲においてベース面2と、ベース面2から垂直に延在する本質的に円筒状に形成された反応炉壁部3とを含んでおり、当該反応炉壁部は、円すい状に形成された第1の範囲4と、円すい状に形成された第2の範囲5とを備えている。溶融ユニット1は、溶融ゾーン6、メイン反応ゾーン7及びサブ反応ゾーン8を含んでいる。
【0052】
溶融ユニット1の円すい状の第1の範囲4は、溶融ゾーン6及びメイン反応ゾーン7を含むように構成されている。メイン反応ゾーン7の上方でサブ反応ゾーン8が延在している。
【0053】
円すい状の第1の範囲4では、液体状の溶融相9と、液体状のスラグ相10が形成されるように、粉砕された溶融されるべき材料Mは、反応気体Gの存在の下で溶融される。
【0054】
図1における図示に基づき分かるように、反応気体Gは、反応炉壁部3に配置されたインジェクタ11を介して溶融ユニット1へ吹き込まれる。インジェクタ11は、リング要素12において、円すい状の第1の範囲4と円すい状の第2の範囲5の間に配置されており、リング要素は、特有に形成されているとともに水冷されるポート13を含んでおり、当該ポートには、インジェクタ11が適当に位置決めされている。
【0055】
ここで示される実施態様では、反応気体Gは、溶融ユニット1において液体状のスラグ相10の上方あるいはサブ反応ゾーン8に配置されたインジェクタ11を介してスラグ相10へ吹き込まれる。図示から分かるように、インジェクタ11は、特有の角度で向けられているとともに、液体状のスラグ相10の上方に配置されている。当該角度は、例えば、水平線Hに対して5~85°の範囲にあり得る。
【0056】
各インジェクタ11はそれぞれラバールノズル14を備えており、反応気体Gは、ラバールノズルを介して超音速でスラグ相10へ吹き込まれることが可能である。また、反応気体Gは、好ましくはそれぞれラバールノズル14を含むインジェクタ11を介して、圧縮されて溶融ユニット1へ供給され、溶融ユニット1内では、断熱的に膨張(断熱膨張)され、そして、特に好ましくは、発熱的に進行する反応プロセスにおいてプロセスに適合する熱量が奪われ得るように、断熱的に膨張(断熱膨張)する反応気体として液体状のスラグ相10へ吹き込まれる。
【0057】
さらに、各インジェクタ11は外側に同軸ノズル15を含んでおり、当該同軸ノズルを介してシース気体(不図示)を液体状のスラグ相10へ吹き付けることが可能である。
【0058】
図2には、切断線A-Aによる溶融ユニット1の図が示されている。分かるように、ここでは、特に互いに同一の間隔で配置された3つのインジェクタ11であり、反応気体Gは、当該インジェクタを介して仮想的な流れリング16に対して接線方向へ液体状のスラグ相10に吹き込まれ、流れリング16は、メイン反応ゾーン7の内径の0.1~0.9倍に相当する直径を包囲し得る。
【0059】
溶融されるべき材料Mは、スラグ相10の上方に配置された溶融ユニット1の開口部17を通してスラグ相の中央へ提供されることが可能である。これに加えて、又はこれに代えて、インジェクタ11の範囲に配置されたインジェクションランス18を介して、溶融されるべき材料を液体状のスラグ相10に供給することも可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 溶融ユニット
2 ベース面
3 反応炉壁部
4 円すい状の第1の範囲
5 円すい状の第2の範囲
6 溶融ゾーン
7 メイン反応ゾーン
8 サブ反応ゾーン
9 溶融相
10 スラグ相
11 インジェクタ
12 リング要素
13 ポート
14 ラバールノズル
15 同軸ノズル
16 仮想的な流れリング
17 開口部/供給システム
18 インジェクションランス
M 溶融されるべき材料
H 水平線
G 反応気体
【国際調査報告】