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特表2023-551296航空機を停止させるための発射体および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】航空機を停止させるための発射体および方法
(51)【国際特許分類】
   F41H 11/02 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
F41H11/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023532564
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 FI2021050800
(87)【国際公開番号】W WO2022112653
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】20206193
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523195658
【氏名又は名称】パトリア ランド オーイー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サーリッコ、マッティ
(72)【発明者】
【氏名】レンメテュイネン、ヤリ
(72)【発明者】
【氏名】トイヴォネン、ヴェサ
(72)【発明者】
【氏名】パイヤ、マルック
(57)【要約】
航空機を停止させるための発射体および方法。発射体(101)は、シェル(120)およびフィラメント束(105)を備える。束(105)をコイル状に巻き、シェル(120)の内部に配置する。解決策による発射体(101)は、異なる方法および異なる手段を利用して標的に到達することができる。例えば、圧縮空気兵器またはロケット発射装置を使用することにより、圧縮空気または推進装薬によって発射体(101)を発射することができる。さらに、発射体(101)は、ロケットまたは航空機を使用して標的に到達することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発射体(101)であって、前記発射体は、
シェル(120)と、
フィラメントの束(105)と、を備え、
前記束(105)はコイル状に巻かれ、
前記束(105)は前記シェル(120)の内部に配置され、
前記フィラメントは炭素繊維であり、それによって前記フィラメントの束(105)は少なくとも1000本のフィラメントを含む炭素繊維トウである、
ことを特徴とする、発射体。
【請求項2】
前記束(105)に含まれる前記フィラメントは、実質的に一端で結合されている、請求項1に記載の発射体。
【請求項3】
前記フィラメントの束(105)は、最大でも50000本のフィラメントを備える、請求項1または請求項2に記載の発射体。
【請求項4】
前記フィラメントの束(105)は、10000から30000本のフィラメントを備える、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の発射体。
【請求項5】
前記フィラメントの束(105)の長さが8から16メートルである、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の発射体。
【請求項6】
前記発射体(101)の外形が40から120mmである、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の発射体。
【請求項7】
パッキングプレート(110)を備える、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の発射体。
【請求項8】
前記パッキングプレート(110)は、プラスチック、ボール紙、紙、または厚紙製である、請求項7に記載の発射体。
【請求項9】
前記フィラメントの束(105)をコイル状に巻いて形成されるフィラメントコイル(100)と前記パッキングプレート(110)とが互いに平行である、請求項7または請求項8に記載の発射体。
【請求項10】
前記フィラメントの束(105)の一端が前記パッキングプレート(110)の中心部に固定されている、請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の発射体。
【請求項11】
少なくとも3個のフィラメントコイル(100)が、前記シェル(120)の内部に配置される、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の発射体。
【請求項12】
前記シェル(120)を開くための手段を備える、請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の発射体。
【請求項13】
推進装薬(130)および、その最外部としてのケース(135)を備える、請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の発射体。
【請求項14】
航空機を停止させる方法であって、前記方法は、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の発射体(101)を利用することによって空中に障害物を形成するステップを備える、航空機を停止させる方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本解決策は、無人航空機(UAV)の抑止に関する。UAVを抑止するための解決策は、例えば、公報US10435153、WO2020112245A2、US20180257780A1、WO2019074573A1、US20180299231A1、WO2020208330A1およびCN110806147Aに開示されている。
【発明の概要】
【0002】
さまざまな種類の無人航空機がより一般的になるにつれて、その無人航空機から防護する必要性もより一般的になっている。UAVは入手しやすく、制御性、航続距離、積載量が増え続けているため、UAVの使用により損害をもたらすことも増えている。
【0003】
本解決策の目的は、無人航空機および空中を移動する他の小型装置を撃退するための新しい種類の解決策を開発することである。本解決策は、独立請求項に述べる内容によって特徴付けられる。解決策のいくつかの実施形態は、従属請求項に開示される。
【0004】
開示された解決策は、シェルおよびフィラメントの束を含む発射体を含み、フィラメントの束はコイル状に巻かれ、その束はシェル内に配置される。本発明による発射体は、さまざまな方法およびさまざまな手段を用いて標的に到達することができる。例えば、圧縮空気兵器または擲弾発射器を使用することにより、圧縮空気または推進装薬を利用することによって発射体を発射することができる。発射体は、ロケットまたは航空機を使用することによって標的に到達することもできる。
【0005】
発射体が空中を飛行すると、シェルに含まれるコイル状のフィラメント束が空中に放出される。空中に浮遊するフィラメント束は、航空機の飛行に対して空中で障害物を生じさせる。航空機に衝突すると、航空機のプロペラからの気流、または航空機のプロペラによって、フィラメントがフィラメント束から緩む。束に含まれるフィラメントは、例えば、航空機のモーターに吸い込まれたり、ローターに絡まってローターを停止させたり、航空機の表面に引っかかり、それにより飛行特性を損なったりする可能性がある。
【0006】
一例による解決策では、フィラメントは炭素繊維である。炭素繊維の利点は、その軽さおよび優れた引張強度を含む。炭素繊維は軽いため、発射体の中に多数の長いフィラメントを詰め込むことが可能である。軽いことは、フィラメントが急速に落下することなく空中に浮遊するのにも役立つ。炭素繊維の引張強度は優れているため、フィラメントが航空機のローターに絡まったり、航空機のモーターに吸い込まれたりすると、切れることはないが、モーター部品に絡みつき、ローターまたはモーターが動かなくなったり破損したりすることがある。
【0007】
一例による解決策では、フィラメントは導電性材料からなる。導電性材料は、例えば炭素繊維であってもよい。フィラメントを導電性材料で作る利点は、例えば、フィラメントが電気駆動航空機のモーターに入り込むと、フィラメントが短絡または他の電気的故障を引き起こすことによってモーターを破損させる可能性があることである。
【0008】
一例による解決策では、フィラメント束は少なくとも1000本のフィラメントを含む。炭素繊維製の場合、束の中に多数のフィラメントを含むことができる。炭素繊維製のフィラメントからなるフィラメント束が炭素繊維トウである。フィラメントの数が多いと、1本またはいくつかのフィラメントが航空機またはローターの内部に入り込んだり、航空機の表面に引っかかったりしやすくなる。
【0009】
一例による解決策では、フィラメントの長さは8から16メートルである。このような解決策を用いると、かなり大きな障害物を設けることができるが、フィラメント束の重量は依然として比較的小さく、コイルに巻かれた場合、その外形寸法に関しても比較的小さく保たれる可能性がある。
【0010】
一例による解決策では、束に含まれるフィラメントは、実質的にフィラメントの一端で一緒に結合される(fastened together)。一端で一緒に結合することは、フィラメントの束の取り扱いが容易になるという利点があるであろう。
【0011】
一例による解決策では、発射体はパッキングプレートを含む。パッキングプレートは、実質的にコイル状に巻かれたフィラメント束によって形成されるコイル、すなわちフィラメントコイル、の直径の大きさに実質的に対応する略円形の板状片からなる。パッキングプレートを使用する利点は、フィラメントコイルの詰め込みおよび取り扱いに関連して、フィラメントコイルが互いに引っかからない状態を保つことであろう。
【0012】
一例による解決策では、パッキングプレートはプラスチック、ボール紙、紙、または厚紙製である。
【0013】
パッキングプレートの大きさは異なってもよい。パッキングプレートの大きさは、例えば、フィラメントの長さ、太さ、または素材などによって異なってもよい。一例では、パッキングプレートの直径は40から120mmである。パッキングプレートを用いる利点は、フィラメントコイルが互いに引っかからないので、コイル状のフィラメント束の取り扱いが容易になることでもあろう。さらに、コイルが格納しやすくなる。
【0014】
一例による解決策では、フィラメント束の一端がパッキングプレートに結合される。一例による解決策では、フィラメント束の一端がパッキングプレートの中心部に結合される。フィラメント束をパッキングプレートの中心に結合することによって、開いた発射体が地面に向け浮遊する際のバランスを、可能な限り良好にできるという利点を得ることができる。フィラメント束の一端がパッキングプレートの中心に結合され、残りのフィラメント束がその周りに巻かれるように、パッキングプレートに一端が結合されたフィラメント束は、コイル状に巻かれることができる。そのような場合、コイルが空中に放出されると、コイルが最外端からほどけ始め、コイルの中心に向かって移動する。最後に、開いたフィラメント束がパッキングプレートの中心から吊り下がる。フィラメント束をパッキングプレートの中心に結合することによって、開いた発射体が地面に向け浮遊する際のバランスを、可能な限り良好にできるという利点を得ることができる。フィラメント束がパッキングプレートの中央から吊り下がっている場合、パッキングプレートは最善な水平姿勢を保ち、最大の空気抵抗を得て、降下速度は可能な限り遅くなる。フィラメント束が空中で外縁からほどけることによって形成されるコイルのさらなる利点は、フィラメント束が最も絡みづらい状態を保つことであろう。
【0015】
一例による解決策では、コイル状に巻かれたフィラメントによって形成されるフィラメントコイルおよびパッキングプレートは相互に平行である。平行とは、パッキングプレートの平面と、フィラメントコイルの上面または下面とが同じ方向を向いていることを意味する。例えば、フィラメントコイルはパッキングプレート上に置かれていてもよい。フィラメントコイルおよびパッキングプレートが平行であることの利点は、コイル表面の可能な限り大きな部分がパッキングプレートによって保護されるため、コイルの取り扱いが容易になることであろう。
【0016】
発射体は、その最外部としてシェルを含み、その中に1つ以上のフィラメントコイルを配置することができる。一例の解決策によれば、少なくとも3個のフィラメントコイルが発射体シェルの内部に配置される。複数のフィラメントコイルを発射体に配置することによって、単一の発射で空中に複数のフィラメントコイルが生成されるため、空に障害物をより速く形成できるという利点があるだろう。また、発射体に含まれる潜在的に開かないフィラメントコイルの影響に対して量で補償する場合、信頼性が向上するという利点もあるだろう。
【0017】
一例による解決策では、発射体はシェルを開く手段を含む。シェルを開くための手段の利点は、発射体の信頼性の向上である。
【0018】
一例による解決策では、発射体および推進装薬の両方がケースの内部に配置される。これは、発射体が推進装薬および、最外部としてのケースを含むことを意味する。推進装薬を用いる利点は、発射体の射程が増加することであろう。さらなる利点は、発射体の速度の増加であろう。速度および射程を増加させる利点は、障害物をできるだけ短い時間で、空中で散開できることである。障害物は、予測する代わりに、探知された航空機の軌道に基づいて散開することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】フィラメントコイルの概略上面図である。
図2】フィラメントコイルの概略側面図である。
図3】下降するフィラメントコイルの概略側面図である。
図4】下降するフィラメントコイル群の概略側面図である。
図5】側面から見た発射体の一実施形態の概略断面図である。
図6】側面から見た発射体の一実施形態の概略断面図である。
図7】側面から見た発射体の一実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を、好ましい実施形態に関連して、および添付図面を参照して、より詳細に説明する。
【0021】
開示された解決策は、シェルおよびフィラメントの束を含む発射体を含む。フィラメント束をコイル状に巻き、シェルの内部に配置する。本発明による発射体は、さまざまな方法およびさまざまな手段を用いて標的に到達することができる。例えば、圧縮空気兵器または擲弾発射器などを使用することにより、圧縮空気または推進装薬を利用することによって発射体を発射することができる。発射体は、ロケットまたは航空機を使用して標的に到達することもできる。標的に到達することは、発射体を空中の意図した領域に運ぶまたは動かすことを含む。意図した領域は、公共のイベントに関連して特定の領域の安全確保をするために事前に決定することもできるし、観察に基づき反応して決定することもできる。
【0022】
空中では、シェル内に含まれるコイル状に巻かれた少なくとも1つのフィラメント束がシェルから空中に放出され、フィラメント束が開いてパッキングプレートによって支持された状態で地面に向け降下する。空中で浮遊するフィラメント束は、航空機の飛行に対して空中で障害物を生じさせる。航空機に衝突すると、航空機のプロペラからの気流、または航空機のプロペラによって、フィラメント束が緩む。束に含まれるフィラメントは、例えば、航空機のモーターに吸い込まれたり、ローターに絡まってローターを停止させたり、航空機の表面に引っかかり、それにより飛行特性を損なったりする可能性がある。
【0023】
図1は、フィラメントコイル100の上面図を示す。フィラメントコイル100は、コイル状に巻かれたフィラメント束105を含む。さらに、図1の例では、フィラメントコイルはパッキングプレート110を含む。フィラメント束105は少なくとも100本のフィラメントを含む。一例によるフィラメント束は、500から50000本のフィラメント、有利には10000から30000本のフィラメント、特に有利には10000から15000本のフィラメントを含むことができる。一例によるフィラメント束は、少なくとも1000本のフィラメントを含む。一例によるフィラメント束は、50000本以下のフィラメントを含む。
【0024】
フィラメント束に含まれるフィラメントの数が増加すると、フィラメント束の太さも増す。太さが増すと、フィラメントコイルの直径を大きくしない場合は、フィラメント束の長さを短くしなければならない。例えば、擲弾発射器または圧縮空気兵器を用いて発射体を発射することが目的の場合、それらに合わせて発射体の直径を調整しなければならない。他の手段で発射するために、より大きな直径の発射体を作製することも可能であり、その場合、それらの発射体に用いられる炭素繊維トウは、50000本を超えるフィラメントを含む可能性があり、および/または炭素繊維トウの長さは、本明細書に開示されるものよりも長くなる可能性がある。
【0025】
フィラメント束の太さは、例えば、0.1から10mmであってもよく、例えば、0.1から5mmであってもよい。フィラメント束の断面は円形であってもよく、あるいは平面形状など円形断面から逸脱していてもよい。平面形状のフィラメント束の厚さは、例えば0.1から5mmであり、この場合の幅は、例えば0.3から10mmである。
【0026】
フィラメントの長さは、フィラメント束が空中に作る障害物の大きさおよび、長くなるにつれて重量が増加することによるフィラメント束の降下速度に影響する。フィラメント束の重量は、その太さおよび長さによって影響される。フィラメントの長さは1から30メートルの間で変化してもよい。フィラメントの長さは、有利には8から16メートル、好ましくは10から14メートルであってもよく、これにより、フィラメント束は、長さによる重量増加によって引き起こされる急降下を伴うことなく、十分に大きな浮遊障害物を生成する。
【0027】
フィラメントは、異なる素材で作ることができる。フィラメントは、例えば炭素繊維で作られてもよい。フィラメントが炭素繊維で作られる場合、炭素繊維トウという用語がフィラメント束を表す場合がある。フィラメント束では、フィラメントは絡み合ったり撚れたりせず、側面に沿って平行に束ねられる。炭素繊維の製造の利点は炭素繊維の軽さにあり、これにより1つの発射体に多数のフィラメントを詰めることができる。炭素繊維のさらなる利点は、優れた引張強度であるため、フィラメントが航空機のローターまたはモーターに入り込む際に切れることはないが、モーターまたはローターに絡まり、モーターまたはローターが停止したり破損したりする可能性がある。炭素繊維のさらなる利点は、その導電性であり、航空機のモーターに吸い込まれると短絡やその他の電気的故障を引き起こす可能性がある。
【0028】
フィラメント束に含まれるフィラメントは、実質的に一端で結合される。実質的に一端で結合することは、フィラメントの最遠端で、またはフィラメントの長さに関連させると、最遠端に近接して結合することを含む。フィラメントは一端のみで結合することができ、それによってフィラメント束の他端に含まれるフィラメントは自由なままである。フィラメントを一端で互いに接続することは、フィラメント束を結合するために用いられる別の結合手段を用いることなく接続することを含むこともできる。例えば、フィラメント束をパッキングプレートに直接結合してもよい。フィラメント束の一端を結合することにより、フィラメントの規制されない広がりが防止され、それによって発射体の製造時のフィラメント束の取り扱いや、開いた発射体の片づけが容易になる。
【0029】
図1に示すフィラメントコイルはパッキングプレートを含む。パッキングプレートは、プラスチック、紙、ボール紙、厚紙などのさまざまな素材で作られてよい。パッキングプレートの物理的形状は実質的に円形であり、その形状はコイル状のフィラメント束の形状に対応している。パッキングプレートの大きさは、フィラメント束の直径がパッキングプレートの直径と実質的に一致するように、フィラメント束の大きさに実質的に合わせることができる。フィラメント束の一端をパッキングプレートに固定してパッキングプレートと平行にコイル状に巻いてもよいし、コイル状に巻いたフィラメント束の一端をパッキングプレートに結合してもよい。パッキングプレートの中心点とフィラメントディスクの中心点は実質的に同じ点にある。
【0030】
一旦、発射体が空中に発射されるか、あるいは標的に運ばれ、発射体に含まれるフィラメントコイルが空中に放出されると、コイル状に巻かれたフィラメント束が空中で開く。パッキングプレートの空気抵抗はフィラメント束の空気抵抗よりも大きいため、下降時にパッキングプレートがフィラメント束の沈下に対する減速機として機能する。パッキングプレートの空気抵抗は、フィラメント束の空気抵抗よりも大きいため、一端でパッキングプレートに固定されたフィラメント束は、パッキングプレートから実質的に下方に吊るされる状態になる。下方に吊るすことの利点は、フィラメントが開くことによって生じる空中の障害物をできるだけ大きくすることと、障害物の位置を予測して、その予測によって所望の距離で発射体を発射できることである。
【0031】
パッキングプレートに固定されるフィラメント束は、フィラメント束に含まれるフィラメントが結合される位置でフィラメント束の端部がパッキングプレートに固定されるように、パッキングプレートに固定される。結合されていないフィラメントを含むフィラメント束の端部は、パッキングプレートから最も遠くなる。フィラメントディスクが空から降下し、パッキングプレートによって減速されると、パッキングプレートから吊られたフィラメント束がその長さの範囲内で空域に広がる。航空機、航空機からの気流、または航空機のプロペラがフィラメント束に衝突すると、フィラメント束が緩み、フィラメントが束から分離される。
【0032】
フィラメント束の一端がパッキングプレートの中心に結合され、残りのフィラメント束がその周りに巻かれるように、パッキングプレートに一端で結合されたフィラメント束は、コイル状に巻かれることができる。さらに、フィラメント束に含まれるフィラメントが一端で結合された状態で、フィラメント束に含まれるフィラメントが一緒に固定されている端部でフィラメント束がパッキングプレートに取り付けられ、これにより、フィラメント束に含まれるフィラメントの自由端は、パッキングプレートから最も遠くなる。
【0033】
一旦空中に放出されると、フィラメントコイルが開き始める。パッキングプレートの空気抵抗によりパッキングプレートの速度が低下し、それによってコイルに巻かれたフィラメント束が重力の効果によってほどけ始める。最後に、開いたフィラメント束がパッキングプレートの中心点から吊り下がる。フィラメント束をパッキングプレートの中心に結合することによって、開いたフィラメントディスクが地面に向け浮遊している際に、可能な限り良好なバランスが達成されるという利点を結果として得ることができる。フィラメント束がパッキングプレートの中心から吊り下がっている場合、パッキングプレートは最善な水平姿勢を保ち、最大の空気抵抗を得て、降下速度は可能な限り遅くなる。
【0034】
一例による解決策では、フィラメント束に含まれるフィラメントは、フィラメント束の実質的に中心で結合され、フィラメント束はその中心点付近でパッキングプレートに固定される。この場合、開いたフィラメントディスクがパッキングプレートに支えられて空から浮遊しながら降りるので、結合された点の両側から実質的に同じ長さのフィラメント束の端が吊り下がっている。
【0035】
一例による解決策では、パッキングプレートは、パッキングプレートに対して実質的に90度の角度でパッキングプレートの外縁を取り囲む縁を含む。この例では、パッキングプレートの丸い部分が底部を形成し、縁部が壁を形成し、その高さはその中に配置されるフィラメントコイルの側面高さに実質的に一致する。パッキングプレートが縁を含む場合、その利点は、フィラメントコイルの取り扱いがさらに容易になることであろう。
【0036】
一例による解決策では、パッキングプレートは、発射体が下向きに浮遊しているときに空気が流れることができる穴または他の開口部を含む。パッキングプレートに含まれる開口部の利点は、空気流の規制であってよく、これにより、開いたフィラメントディスクが下向きに浮遊し、パッキングプレートが減速機として機能するため、より良いバランスが達成され、それによって飛行時間が可能な限り長くなる。
【0037】
図2は、フィラメントコイル100の側面図を示す。図2に示すように、フィラメント束105およびパッキングプレート110は実質的に互いに平行である。さらに、パッキングプレートおよびコイル状に巻かれたフィラメント束は、実質的に同じ大きさである。平行であることは、フィラメントコイル100を取り扱う際に有利である可能性がある。というのは、パッキングプレート110およびフィラメント束105が互いによりよい状態に保たれるからである。さらに、パッキングプレート110を含む複数のフィラメントコイル100を、発射体シェルの内側に互いに積み重ねて配置することが可能である。交互に配置すると、完成した発射体の形状が縦長となり、空気抵抗が可能な限り小さくなり、飛行特性が可能な限り良好になるという利点がある。さらなる利点は、発射体の直径が十分に小さく保たれるため、発射するための別の手段が必要なく、擲弾発射器または圧縮空気兵器などの一般的に使用される手段を使用できることである。
【0038】
図3は、空から降下する開いたフィラメントコイル100を示し、コイルからほどけたフィラメント束105がパッキングプレート110から吊り下がっている。図3に示す例では、フィラメント束に含まれるフィラメントは一端で結合されている。フィラメント束に含まれるフィラメントは、一端のみで一緒に結合されている。フィラメント束は、フィラメントが一緒に結合されている端部でパッキングプレートに固定されているため、フィラメントが自由であるフィラメント束の端は、パッキングプレートから最も遠くに吊り下がることになる。図3では、フィラメント束およびパッキングプレートが下向きに浮遊しており、パッキングプレートが減速機として機能している。航空機または別の飛行装置がフィラメント束に衝突した場合、またはフィラメント束に十分近づいた場合、衝突または空気の流れによってフィラメントが束から分離する可能性がある。束から分離したフィラメントは、例えば、航空機のローターに付着したり、空気取り入れ口を介してモーターに吸い込まれたりして、航空機の落下を引き起こす可能性がある。炭素繊維製のフィラメントも航空機の表面に付着し、航空機を落下させたり、飛行特性および制御性を損なったりする可能性がある。
【0039】
図4は、空から浮遊する複数の開いたフィラメントコイル100によって形成されるカーテン状の障害物の例を示す。そのようなカーテン状の障害物は、複数のフィラメントコイルを含む発射体を空中に発射することによって作りだすことができる。一旦、発射体に含まれるフィラメントコイルが空中に放出されると、それらに含まれるフィラメント束が開き、開いたフィラメントコイルがパッキングプレートから吊り下がって地面に向け浮遊する。
【0040】
図5の例は、発射体101の断面の側面図を示し、フィラメントコイル100が、交互にまたは次々に積み重ねられてシェル120の内部に配置される。シェル120は、一端に開口部121を含み、一旦発射体が空中に発射されると、シェルの内部に配置されたフィラメントコイルをその開口部を介して放出することができる。
【0041】
一例による解決策では、フィラメントコイルはシェルの内部に配置され、交互にも放射状にも配置される。放射状の配置は、フィラメントコイルを扇状に、部分的に平行で部分的に交互に配置することを含み、これにより、1つの層が1つではなく複数のフィラメントコイルを含む。このような複数の層が交互になっていてもよい。このような配置は、目的が発射体に多数のフィラメントコイルを含めることである場合には有利である。
【0042】
一例による解決策では、少なくとも2つの積み重ねが隣り合うように、シェルの内部に交互に次々に配置されたフィラメントコイルで形成された積み重ねが存在する。シェルの内部にフィラメントコイルを配置することは、他の方法でも行うことができる。
【0043】
発射体の外径は、40から120mmであってもよく、例えば、有利には66から81mmである。発射体の外径によって、どの手段で発射可能かが決まる。有利には66から81mmの間の直径を有する発射体は、擲弾発射器または圧縮空気兵器を用いて発射することができる。一方、直径120mmを超える大きな発射体が発射される場合は、必要に応じて他の手段が使用されるか、ロケットまたは航空機などの他の方法で目的地まで運ばれる場合がある。
【0044】
発射体に含まれるシェルは、ケース、シース、またはフィラメントコイルなどの必要な手段を内部に配置することができる別の補強材を含んでもよい。発射体に含まれるシェルの内部には、1個以上のフィラメントコイルを配置できる。一例では、シェルの内部に少なくとも3個のフィラメントコイルが配置されている。一例では、シェルの内部に10から20個のフィラメントコイルが配置されている。
【0045】
発射体に含まれるシェルの素材は、鋼鉄またはアルミニウムなどの金属であってもよいし、例えばプラスチックまたはボール紙であってもよい。一例による解決策では、シェルはポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)で作られている。シェルは、例えば、一旦発射体が適切な高さに達し拡散装薬が爆発した場合には、燃焼によって破壊される材料で作られていてもよい。
【0046】
シェルの前部は発射方向に第1の端部を含み、シェルの後端は発射方向に第2の端部を含む。シェルは前部および後端の両方で開いてもよい。シェルは、一端が開いていて、他端が閉じていてもよい。シェルは両端が閉じていてもよい。
【0047】
シェルは、シェルを開く手段をさらに含んでもよい。図6の例は、発射体101の断面の側面図を示しており、フィラメントコイル100および拡散装薬125がシェル120の内部に配置されている。拡散装薬は、シェルを開き、またはフィラメントコイルをシェルの外に押し出すことができる。拡散装薬は、大量のガス圧力または大量のガス量を生成する火薬または別の火工物質を含むことができる。拡散装薬を使用する利点は、発射体の信頼性の向上およびフィラメントディスクの放出の適時性であろう。拡散装薬の使用は、発射体が遠くから発射される場合、または発射体のシェルに強力または耐久性のある材料を使用する場合に適用可能であろう。
【0048】
シェルを開くための手段は、シェルを開くよう促進するためにシェルに施された変更を含んでもよい。例えば、発射体のシェルに障害が発生する可能性があり、これによってシェルが開くよう促進し、その中に含まれるフィラメントコイルが放出される。一例では、シェルの一端が開いており、それによってフィラメントコイルを、開口部を介して空中に放出することができる。
【0049】
図7の例は、発射体101の断面の側面図を示し、フィラメントコイル100および拡散装薬125がシェル120の内部にはめ込まれている。さらに、図7の例は、推進装薬130および最外部としてのケース135を含む。推進装薬130と、フィラメントコイル100および拡散装薬125を含むシェル120は、ケース135の内部に配置されている。推進装薬は、例えば、大量のガス圧力または大量のガス量を生成する火薬または別の火工物質を含むことができる。
【0050】
推進装薬を使用する利点は、推進装薬を使用しない場合よりも発射体をさらに遠くまで発射できること、またはより速い飛行速度が達成されることであろう。推進装薬は、例えば、大量のガス圧力または大量のガス量を生成する火薬または別の火工物質を含むことができる。推進装薬は、推進装薬なしで達成される距離よりも遠い所望の距離まで発射体を上昇させる、または方向付けることができる。ケース135は、例えば、鋼などの金属または他の適切な素材で作ることができる。ケースを使用することで推進装薬の使用が可能となる利点がある。
【0051】
開示された解決策による発射体の利点は、特定の領域を防護するために必要に応じて空中に障害物を形成できることであろう。状況を予測することにより、空中で安全側に障害物が形成されることもあれば、探知された航空機の飛行経路に反応して発射体が発射されることもある。この解決策による発射体は環境的に安全であり、例えば実弾射撃に基づいた予防措置がとれない都市中心部で使用することができる。この発射体のさらなる利点は、大きさおよび発射方法の両方に関する拡張性である。さらに、発射体の利点はそのシンプルさであるため、発射体を探知したり妨害したりすることが困難である場合がある。
【0052】
当業者であれば、技術が進歩するにつれて、本発明の基本的な考え方が多くの異なる方法で実現され得ることが明らかになるであろう。本発明およびその実施形態は、上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で変更することができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】