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  • 特表-ポリウレタンの分解方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ポリウレタンの分解方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/28 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
C08J11/28 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023532660
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2021083434
(87)【国際公開番号】W WO2022112581
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】102020131581.3
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523196965
【氏名又は名称】ネベオン ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ベッティンガー、 ヘルベルト
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA26
4F401AD06
4F401CA14
4F401CA22
4F401CA68
4F401CA75
4F401CB14
4F401EA66
4F401FA01Z
4F401FA02Z
4F401FA06Z
4F401FA07Z
(57)【要約】
本発明は、ポリウレタン含有材料を、尿素を1~45質量%含む水溶液の存在下、過圧下で190℃~250℃まで加熱する、ポリウレタンの分解方法に関連する。本発明はさらに、そのような方法で得られる液体処理媒体にも関連する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンの分解方法であって、ポリウレタン含有材料を、尿素を1~45質量%含む水溶液の存在下、過圧下で190℃~250℃の温度に加熱する方法。
【請求項2】
加熱が1.05 bar~100 barの圧力下で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記過圧が、加熱によって確立される平衡圧力であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱が20分~240分間にわたって行われることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶液が2.5~10質量%の尿素を含み、前記加熱が45~250分間、特に45~240分間行われることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
尿素含有水溶液とポリウレタン含有材料との間の比が、0.4 ml/g~5 ml/gの値を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
加熱後、得られた液体処理媒体の少なくとも一部が回収されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記回収された液体処理媒体から固体が除去されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水溶液が、ポリオールを含まない、および/またはカルボン酸を含まない、および/またはアンモニアを含まないことを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記水溶液が水および尿素からなることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
先行する請求項のいずれか一項に記載の方法で得られる、液体処理媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンを分解する方法およびこの方法で得られる処理媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは調整可能な性質が多いため、工業用、家庭用を問わず幅広い製品に使用されている。そのような製品の例としては、フォーム、塗料、接着剤、流し込み式シーリングコンパウンド、ホース、シール、床カバー、マットレス、自動車部品、スポーツ用具用部品、靴用部品などがある。
【0003】
そのため、製品が破損したり、耐用年数を超えたりすると、相応の高い割合のポリウレタン廃材が産出される。
【0004】
そのため、過去には、ポリウレタン廃材のリコンディショニングには様々な解決策が提案されてきた。多くの特許は、ポリウレタン廃物を脂肪族ジオールに溶解する方法に関するものであり、例えば、米国特許4,044、04、3,632,530および4,162,995や、ドイツ未審査特許出願2304444などがある。米国特許4,316,992は高沸点の飽和アルコールへの溶解を示唆しており、米国特許4,039,568は様々なアルコラートの存在下での溶解を示唆している。これらすべての方法の欠点は、このプロセスにジオールの形の炭化水素が必要であるという事実である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、好ましくは環境への悪影響がより少ない物質が使用される代替的な解決策を提供することにある。
【0006】
本発明は、独立請求項の特徴から生じる。有利な更なる改良および変形は、従属請求項の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この問題は、第一の態様においては、ポリウレタン含有材料を、尿素を1~45質量%含む水溶液の存在下、過圧下で190℃~250℃まで加熱する、ポリウレタンの分解方法によって解決される。この方法の開始時においては、ポリウレタン含有材料が、尿素を含む水溶液中に、または尿素を含む水溶液と一緒に存在する。選択された処理期間が終了すると、もともと固体の形態であったポリウレタン含有材料のポリウレタン画分が、部分的または完全に液体処理媒体中の物質に変換されるが、これはプロセスの開始時に存在していた尿素を含む水溶液に起因する。処理媒体はさらに固体物、例えば、固体のポリウレタンに埋め込まれていた、もしくはその上に吸着されていた固体、またはポリウレタン以外のプラスチックも含み得る。液体処理媒体は、元から存在するポリウレタンの結果である分解生成物および/または他の二次生成物を含む。液体処理媒体への変換は、もともと固体であったポリウレタンをより扱いやすい形に変換し、特定の状況下では、得られた液体処理媒体から再利用可能な材料を分離し、またはさらなる反応に有用に含めることができる能力を有利に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ポリウレタン含有材料の分解度合を温度と、この方法が行われた時間の関数として表した3次元チャートである。
図2図2は、選択された加熱時間における各種ポリウレタン含有材料の分解に対する尿素の影響を表す3次元チャートである。
図3図3は、尿素がポリウレタン含有物質の分解に与える影響を時系列で表した3次元チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
過圧という用語は、大気圧よりも大きな任意の圧力を意味すると理解される。一変形によれば、加熱は1.05 bar~100 barの圧力で行われる。圧力範囲の例は10 bar~45 barであり、例えば12 bar~40 bar、または25 bar~35 barである。単純なプロセス管理を目的とするなら、過圧は加熱によって確立される平衡圧力であり、例えば圧力容器内の加熱によって確立される平衡圧力である。
【0010】
方法は、20分~240分、特に45分~240分、90分~240分、例えば120分~240分の期間で完了することが望ましい。好ましい期間の例は、30分~180分の期間、例えば40分~180分の期間(40分~180分)である。これに関連して、反応温度は、例えば温度調節によって所定の目標値に達するように、指定された温度範囲内の値で一定のままであり得、または指定された温度範囲内の様々な値を持ちうる。期間は、1つの連続した期間であることが好ましいが、意図された温度条件が維持される別々の期間から累積的に構成もされ得る。広範な実験の過程で、固体の形成の最初の兆候が、245°Cの温度と240分の期間で発生することが見いだされた。したがって、熱処理の事前設定された240分の期間を考慮すると、250°Cが実用的な温度の上限であると考えられる。
【0011】
この方法により、尿素、すなわち環境中に自然に存在し、それゆえに自然に分解もされる物質を用いてポリウレタンの分解を行うことが可能になる。
【0012】
ポリウレタン含有材料は、ポリウレタンに加えて、ポリウレタンとは別に、例えばスチレン-アクリロニトリルの粒子のような他のプラスチックの成分、金属からなる成分、ガラスからなる成分、または例えば炭酸カルシウムのような無機材料からなる成分を組み合わせたポリウレタンのような、非ポリウレタン成分を含む材料であり得る。そのようなものの非限定的な例は、金属の固定要素を含むポリウレタンの物体、または、例えば断熱層としてポリウレタンを含み、レジストコーティングとして他のプラスチックを含む冷蔵庫部品を含むような、ポリウレタンと他のプラスチックの複合材料を含む。しかし、ポリウレタン含有材料は、全体がポリウレタンからなる材料を意味するとも理解され得る。ポリウレタン自体は、純粋なポリウレタンであり得、あるいは可塑剤、殺菌剤、酸化防止剤、紫外線に対する安定剤などの他の物質、例えば難燃剤、染料または重合開始剤の残留物を含むポリウレタンでもあり得る。「ポリウレタン含有材料」という用語は、様々なポリウレタン含有材料、例えばそれぞれが異なる種類のポリウレタンを含む材料、の混合物を意味し得る。
【0013】
ポリウレタンの分解は、部分的に行われる場合もあれば、選択された処理パラメータによっては、材料に含まれるポリウレタンが完全に分解されて固体として存在しなくなるまで、ポリウレタンが縮小した形態で存在する中間段階を経る場合もある。
【0014】
標準的な技術的定義による「ポリウレタン」という用語は、以下の式 (I) によるウレタン基を特徴的な基として含むポリマーであると理解される。
【0015】
【化1】
【0016】
ポリウレタンは一般に、式(II) で表される2価またはこれ以上の価数のアルコール
HO-R´-OH (II)
と、一般式 (III) の一般式を有するジイソシアネート
O=C=N-R-N=C=O (III)
との重付加によって得ることができ、
ここでR´は任意でさらに少なくとも1つのヒドロキシル基を含む、低分子であるかまたは既にポリマーである脂肪族または芳香族のラジカルを表し、
RはR’と同じ意味である。
【0017】
ポリウレタンの化学並びに技術的製造および加工は、一般的に当業者には知られており、例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Wiley-VHC Verlag GmbH&Co.KGaA,ヴァインハイム,ドイツ, 2003, Volume 28,667-722ページに記述されている。ポリウレタンフォーム(以下ではPURフォームとも呼ばれる)のほとんどは、芳香族イソシアネートを基に製造される。このグループの最も重要な代表は、異性体2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、およびジフェニルメタン-2,2'-ジイソシアネート(2,2'-MDI)、ジフェニルメタン-2,4'-ジイソシアネート(2,4'-MDI)およびジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネート(4,4'-MDI)が非限定的な例として挙げられるジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の異性体の混合物、ならびにプレポリマー化MDIである。TDI 80は、ソフトフォーム製造において最も重要なジイソシアネートである。TDI 65は多くのソフトフォーム、特にエステルフォームにも使用されている。前記2つの呼称では、80と65という数字は、反応性の高い異性体2, 4-トルエンジイソシアネートの質量パーセントを表し、100%質量までの残りは異性体2, 6-トルエンジイソシアネートによって供給される。ポリオール成分としてポリエーテル、ポリエステルまたはジアミンが好ましく使用される。また、シリコン-ポリエーテル共重合体、エポキシ、ベンゾフェノンおよびその他の物質のような安定剤を添加することによって、特性をさらに変更することもできる。フォームの特性は、添加物によっても変化させることもできる。たとえばリン酸エステルは難燃剤として使用される。炭素繊維などの機械的な補強剤がフォームに組み込まれ得、これらはポリウレタン含有材料にさらなる成分として含まれ得る非ポリウレタンの例である。炭酸カルシウムなどの充填材も使用し得る。
【0018】
ポリウレタンは、ポリウレタンフォームまたは非多孔性ポリウレタンであり得、非多孔性ポリウレタンの非限定的な例は、ポリウレタンホースまたはポリウレタン封止化合物である。
【0019】
前記方法の特定の変形によれば、ポリウレタン(PUR)は、ポリウレタンソフトフォーム(PURソフトフォーム)、ポリウレタンハードフォーム(PURハードフォーム)、軽量シュレッダー残滓またはそれらの2つ以上の代表の混合物を含むか、あるいは特にそれらから成る。軽量シュレッダー残滓という用語は、当業者には知られており、一般的に、様々なプラスチック、有機材料および無機材料から成る不均一な混合物を表し、実際の組成は、細断されたスクラップの性質に依存する。軽量シュレッダー残滓の例は、空隙のフォーム充填物が、任意に他のプラスチック、例えばケーブルパススルーに由来するプラスチックを伴うPURハードフォームからなる冷蔵庫をリサイクルする際に生成される。冷蔵庫のリサイクルによる軽量シュレッダー残滓は、例えばポリウレタンに含まれる充填材のために、さらにミネラル画分を含み得る。
【0020】
ポリウレタン含有材料の発生源の非限定的な例は、マットレス、バンパー、インストルメントパネル、ヘッドサポート、アームレスト、またはカーペットのような車体またはその他の車両部品、壁パネルまたはパイプ断熱材、家具または家具部品、例えば靴底やつま先のキャップのような靴や靴の部品、ケーブル被覆、プラグ、電源ストリップまたはそれらの部品、またはスノーボードやローラースケートの車輪などのスポーツ用具のような、マットレス産業、自動車産業、建築産業、家具製造産業、履物産業、電子産業、スポーツ/レジャー産業における生産からの廃棄物、および/または当該産業の不良品またはもはや使用されていない製品である。
【0021】
本発明による方法の目的のために、以下のものをポリウレタン含有材料として使用し得る。特に、以下の組成から選択されるポリウレタンフォーム(以下、PURフォームともいう)を使用し得る。充填された(SANコポリマー、すなわちスチレンアクリロニトリルコポリマーで)または未充填の、3000 g/molのオーダーの分子量を有する非反応性ポリエーテルポリオール(「標準ポリエーテルポリオール」)をベースとするPURソフトフォーム、充填された(SANコポリマーまたはPHD、すなわちポリ尿素分散で)または未充填の分子量3000 g/molを超える反応性高反発ポリエーテルポリオールをベースとするPURソフトフォーム、反応性6官能基ポリエーテルポリオールをベースとするPURソフトフォーム、ハイパーソフトポリエーテルポリオールをベースとするPURソフトフォーム、粘弾性フォームの前駆体として機能し、成分としてPEG(ポリエチレングリコール)も含み得るポリエーテルポリオールおよびその混合物をベースとするPURソフトフォーム、充填されたまたは未充填のポリエステルポリオールをベースとするPURソフトフォーム、TDIまたはMDIと組み合わせた上記のポリオール混合物をベースとするPURソフトフォーム、およびTDIまたはMDIと組み合わせた上記のポリオール混合物をベースとするPURハードフォームまたはセミハードフォーム、および上記の成分からなるハードインテグラルフォーム。
【0022】
特定のさらなる展開によれば、PURフォームは、ソフトフォームの製品ファミリーの1つ以上の代表者および/またはハードフォームの製品ファミリーの1つ以上の代表者を含む。
【0023】
ソフトフォームは、標準的なポリエーテルフォーム、高反発ポリエーテルフォーム、燃焼修正ポリエーテルフォーム(CME)、燃焼修正高反発ポリエーテルフォーム(CMHR)、粘弾性ポリエーテルフォーム、ポリエステルフォームなどのプラスチックを含む。例示的な組成物は当業者には知られており、例えば文献DE 3630225 C2、US 3,905,924およびDE 10 2007 051 089 A1に記載されている。
【0024】
これらのソフトフォームは、好ましくは以下の成分を含むか、またはそれらの2つ以上の代表の組み合わせからなる。
【0025】
イソシアネート:
2,4-および/または2, 6-トルイレンジイソシアネート(TDI)並びにこれらの異性体の任意の混合物、4,4'-および/または2,2'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)並びにこれらの異性体の任意の混合物、高分子MDI(「生の」MDI)および多価ポリオール(好ましくは二価および/または三価ポリエーテル)で前重合したMDI、および/または上記の異性体および生成物からのTDIおよびMDIの任意の混合物。
【0026】
ポリオール:
それ自体がセル状で均質なポリウレタンフォームを製造するために知られており、例えば、DE-A 2 832 253(11-18ページ)に記載されている、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオール。ここでは例として以下を挙げる。好ましくは2と3のヒドロキシル基(官能基)を有する(標準)ポリエーテル、SAN(スチレンアクリロニトリル)固体を充填した、好ましくは2と3のヒドロキシル基 (官能基)を有する(標準)ポリエーテル、官能基が好ましくは3のハイパーソフトポリエーテル、好ましくは、3,5,6の官能基を有する、第一級ヒドロキシル基を有する反応性ポリエーテル、SAN(スチレンアクリロニトリル)固体またはPHD(ポリ尿素分散体)で充填された、第一級ヒドロキシル基を持つ、3官能基を有する反応性ポリエーテル、好ましくは3官能基を有する、TDIで予備重合された反応性ポリオール、好ましくは3官能性で、ポリオールはTDIよりも大量に存在する、技術コミュニティでは「準プレポリマー」(QPP)としても知られているTDIで前重合された非反応性ポリオール、再生可能な原料と異なる官能基をベースとしたポリオール、非限定的な例としてヒマシ油を挙げることができる、異なる数の水酸基を有する天然油製品、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ソルビトール、グリセリンおよび尿素のような、鎖延長剤または架橋剤として機能し、典型的にはイソシアネートと反応できる水素原子を2~8個、好ましくは2~4個有するアミノ基または水酸基を持つ化合物。
【0027】
以下に記載されるハードフォームと同様に、これらのソフトフォームは、任意に以下から選択される1つ以上の追加物質を含んでいた。第三級アミンや反応性(インテグラブル)アミンなど、それ自体が既知のタイプの触媒、スズ (II) 化合物や亜鉛化合物、乳化剤などの界面活性剤添加剤、泡安定剤、難燃剤、ソルビトール、グリセリン、ジアミン、尿素、第三級アミン、シロキサンベースまたは非シロキサンベースの安定剤。
【0028】
この特定のさらなる展開のハードフォームは、例えば断熱パネル(様々な被覆層を持つサンドイッチ要素としても)、現場フォーム、スプレー塗布フォーム、オーバーレイ工法で製造されたフォーム、ソーラーパネル充填材用フォーム、パイプ断熱用フォーム、充填および膨張フォーム、ブロックフォームなどの製品に見られる。これらの化合物は、当業者には十分になじみがあり、例えば、文献EP 0 318 784 A2に包括的に記載されている。
【0029】
ハードフォームは、以下の構成要素から成るか、またはそれらの代表の2つ以上の組み合わせから成ることが望ましい。
【0030】
イソシアネート:
2, 4-および/または2, 6-トルイレンジイソシアネート (TDI) 並びにこれらの異性体の任意の混合物、4, 4'-および/または2, 2'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、およびこれらの異性体の任意の混合物、高分子MDI(「生の」MDI)および多価ポリオール(好ましくは二価および/または三価ポリエーテル)で前重合したMDI、好ましくはポリマーMDI(生MDI)である、上記の異性体および生成物からのTDIおよびMDIの任意の混合物。
【0031】
フォームの他に、ポリウレタン含有材料に含まれるポリウレタンのさらなる例は、ポリウレタンエラストマーとポリウレタンデュロプラストである。
【0032】
本発明による方法は、不連続的、連続的または半連続的に行うことができる。
【0033】
バッチ法としても知られる不連続法においては、原料が反応器に導入され、反応条件に曝され、反応生成物は処理期間終了後に除去される。この後、反応器には新鮮な原料バッチが投入される。
【0034】
連続法では、反応開始前に一度だけでなく、連続的に反応器内にポリウレタン含有物質と尿素含有水溶液が投入される。同様に、液体処理媒体も連続的に除去される。通常、投入と除去は異なる場所で行われ、特にポリウレタン含有材料は尿素含有水溶液と共に、反応器の中で注入点から除去点まで、能動的な搬送手段を介して押される(pushed)かまたは輸送される。したがって、投入点に近い領域では分解の程度が低く、ポリウレタン含有材料は尿素含有水溶液と共に除去点まで移動し、または搬送され、除去点に近づくにつれてポリウレタンに対してより大きな分解度を示す。
【0035】
半連続法は、前に説明した2つの方法の間で考えられる任意の中間的な形態である。例えば、液体処理媒体は、不連続法の終了後、実質的に完全には除去されない場合がある。更なる例として、連続法の変形では、新鮮なポリウレタン含有物質および/または尿素含有水溶液が常に供給されているのではなく、むしろ特定の時間において、例えば定期的に、または反応器内のポリウレタンの一定の程度の分解が観察された場合にのみ供給されるように、新鮮なポリウレタン含有物質および/または尿素含有水溶液が連続的に供給されないことがあり得る。
【0036】
この分野で一般的に使用されるあらゆる種類の装置が、反応器としての役割を果たし得、または当業者が本発明に従った方法の目的のために容易に適応され得る。そのようなものの例は、バッチ充填用に設計され、例えば、0.1リットル~10リットルの実験室スケールから、10リットル~1立方メートルまでの中間範囲を経て、1立方メートル~数十立方メートルまたは数百立方メートルの大規模な工業スケールまでの反応体積の容量を備える、圧力容器または圧力反応器である。あるいは、圧力容器または圧力反応器は、連続的または半連続的に動作するように設計され得、ポリウレタン含有材料の供給および/または液体処理媒体の除去のための圧力ロックを含み得る。
【0037】
ポリウレタン含有材料は、縮小されない形で導入することができる。例えば、ポリウレタンフォームを尿素含有水溶液で湿潤するか、または完全に飽和させた後、190℃~250℃の範囲の温度に加熱することができる。
【0038】
ただし、ポリウレタン含有材料は縮小された状態で導入することが望ましい。このプロセスでは、標準的な技術的粉砕方法を実施することができ、例えば、ポリウレタン含有材料は、任意にその脆弱性を高めるために事前に温度を下げた後に、切断し、引き裂き、フレーク状にすりおろし、細断し、造粒し、細粉または粉砕することができる。このようにして得られる粉砕生成物のサイズの非限定的な例は、特に、多孔質であるか表面積が大きいポリウレタン含有材料については約0.5 cm3~10 cm3(0.5 ml~10 ml)、例えば約1 cm3~5 cm3であり、または約10、5、2、1、0.5、0.1、0.05または0.01ミリメートルを超えない、最も広い点で測定された直径を有する粉砕生成物である。粉砕は、対応する装置を使用しての前記方法の進行中に反応器内で実行することができるが、反応器が既に粉砕された状態のポリウレタン含有材料で充填されていることが好ましい。ポリウレタン含有材料が単に尿素含有溶液で湿潤されているだけでなく、その中に完全に浸漬されている場合、生成される物質は実質的にポリウレタン含有材料の尿素含有水溶液中の懸濁物である。
【0039】
水溶液の全質量に対して、尿素は1~45質量%、特に1~20質量%、例えば1~10質量%、例えば1~7質量%、例えば1.5~5質量%、1.5~4質量%、2~4質量%、2.5~3.5質量%、または3質量%の水溶液中の割合を構成する。さらなる範囲またはさらなる濃度の例は、5~10質量%、1質量%、5質量%、7.5質量%、10質量%である。使用する尿素の量とポリウレタンの分解度との比の観点から好ましいのは、1質量%~10質量%、例えば2.5~10質量%、2質量%~7.5質量%、例えば約3質量%~5質量%の範囲である。
【0040】
この方法は、空気を排除して行うことが好ましく、任意に少量の空気の残留量、例えば分解プロセスが行われる反応器の体積の20%または10%が許容されるか、または空気の非存在下で行われるか、または不活性ガス、例えば窒素ガスの存在下で行われる。この方法は、好ましくは不活性ガスの存在下で行われる。
【0041】
特定のバリエーションでは、水溶液は2.5~10質量%の尿素を含み、45~250分、特に45~240分の期間にわたって加熱が行われる。
【0042】
一変形によれば、尿素含有水溶液とポリウレタン含有物質の比は、0.2 ml/g~5 ml/g、例えば約0.4 ml/g~5 ml/g、例えば0.2 ml/g~2.5 ml/g、0.2 ml/g~2.0 ml/g、0.2 ml/g~1.7 ml/g、0.2 ml/g~1.2 ml/gまたは0.2 ml/g~1.0 ml/g、あるいは例えば0.4 ml/g~2.5 ml/g、0.4 ml/g~2.0 ml/g、0.4 ml/g~1.7 ml/g、0.4 ml/g~1.2 ml/gまたは0.4 ml/g~1.0 ml/gである。特に、尿素含有水溶液の体積とそこで処理されるポリウレタンの量との比が小さい場合には、分解法を行うために利用できる体積を効率的に利用することができる。ポリウレタンフォームでの使用に関しては、0.2 ml/、特に0.25 ml/g、特に0.29 ml/g、特に0.4 ml/gの量が下限であり、この場合、ポリウレタンフォームは、望ましいポリウレタンの分解を可能にするために、依然として十分に尿素含有水溶液で湿潤することができる。
【0043】
前記方法の文脈において、加熱後に得られた液体処理媒体の少なくとも一部を回収することが、さらなる処理工程として任意に提供される。したがって、液体処理媒体は反応器から部分的または完全に除去される。これにより、例えば、より選択的に廃棄することができ、または最良の場合には原材料の供給源として利用できる個々の物質または物質グループへの分画のような、その後のさらなる任意のステップに利用することが可能になる。
【0044】
ある変形によれば、回収された液体処理媒体に固体が含まれている場合、それを除去することが提供される。これらは、例えば、金属部品、他のプラスチックの粒子、またはポリウレタンまたはポリウレタン成分の反応または分解の粒子状生成物である。固体を除去する方法は、当業者には知られており、例えば、沈殿、遠心分離または濾過を含む。
【0045】
好ましい変形によれば、前記1~45質量%の尿素を含む水溶液は、例えばジオールのようなポリオールを含まず、および/またはカルボン酸を含まず、および/またはアンモニアを含まない。これは、環境に有害な物質を回避するのに有利に役立つ。特定の変形によると、水溶液は水と1~45質量%の尿素からなる。
【0046】
分解法の過程で、ポリウレタンが部分的または完全に液体処理媒体に変換される。したがって、体積の要求が大きい可能性がある(特にポリウレタンがフォームの状態である場合)、もともと固体の状態であったポリウレタン含有材料は、体積の要求が小さい、より簡単に処理できる液体、すなわち液体処理媒体に変換することができる。また、液体処理媒体に含まれる物質を分画する、および/またはそれらを分離する、および/または任意でさらに使用または再利用するためにそれらを送達する可能性も存在する。
【0047】
従って、本発明は、本明細書に記載された方法を介して得られる、または得ることができる処理媒体に関する。特に、それは、この方法によって分解されたポリウレタンを製造するために使用されたポリオールを含むような、またはこのようなポリオールの修飾物を含むような、および/またはジアミンまたはこのようなジアミンの修飾物を含むような種類の処理媒体に関連し、ここで、ジアミンは、この方法によって分解されたポリウレタンを製造するために使用されたジイソシアネートの前駆体である。
【0048】
修飾の非限定的な例は、環形成または脱アミノ化である。このような種類の処理媒体には、化学工業、特にポリウレタンのリサイクル経済のための貴重な原料が含まれており、場合によっては処理媒体から分離された後に再び使用することができる。
【0049】
さらなる利点、特徴および特殊性は、以下の記載から認識できる。ここでは、任意で図を参照しながら、少なくとも1つの例示的な実施形態が詳細に記載される。
【実施例
【0050】
(実施例1)ポリウレタンソフトフォーム
【0051】
重量がそれぞれ20.0 gと19.6 gの、TDIベースまたはMDIベースの二つのポリウレタンソフトフォーム(製品名:R 4030およびR 5535、出典:Eurofoam Deutschland GmbH Schaumstoffe、Wiesbaden、Deutschland)をそれぞれ32.2 mlと35.7 mlの7.5%尿素溶液に吸収させ、密閉圧力容器内で190°Cで180分間処理した。
【0052】
【表1】
【0053】
採取したサンプルは、冷却された後、固体ポリウレタンの分解の程度と、それに対応する観察可能な固体材料の消失と、液体処理媒体への変換の視覚的な評価によって半定量的に分類された。ここで、(その後の他のすべての実験と同様に)「0%」はポリウレタンの分解がまだ行われておらず、したがって当初使用されていた固体ポリウレタンの量がまだ完全に存在していたことを示し、「100%」はポリウレタンが完全に分解され、それに対応して液体処理媒体に変換されることを意味する。
【0054】
どちらの場合も、部分分解が行われ、液体処理媒体中には、明らかに凝縮したフォーム残留物の形で、異なる量の固体がまだ存在していた。
【0055】
(実施例2)ポリウレタンインテグラルフォーム
【0056】
それぞれ元の重量が25 gと35 gであるポリウレタンインテグラルフォームのサンプル2個、エーテルベースのもの1個、およびColo-Fast(登録商標)(BASF, SE, ルートヴィヒスハーフェン,ドイツ)の商品名で販売されている柔軟性のあるキャストエラストマー1個を、40 mlの3%尿素溶液に吸収させ、容量の80%まで満たした密閉圧力容器内で245°Cで240分間処理した。
【0057】
【表2】
【0058】
使用されたポリウレタン材料は完全に分解されたが、おそらく重合に起因すると思われるわずかな粒子が観察された。
【0059】
(実施例3)非発泡ポリウレタン
【0060】
分解方法の一連の試験では、固体の非発泡ポリウレタンが使用された。これらの試験では、「PUN」タイプの青いプラスチック製ポリウレタンホース(Festo Gesellschaftm.b.H,ウィーン,オーストリア)を粉砕し、それぞれ1 gずつを密閉圧力容器内で25 mlの尿素含有量1質量%、5質量%、7.5質量%、10質量%の尿素水溶液中で、150分間210°Cまで加熱した。
【0061】
この一連の試験は、基本的に尿素濃度の影響を決定し、固体ポリウレタンの分解性を計算するために行われた。
【0062】
【表3】
【0063】
その結果、いずれの試料にも当初使用されていた固体ポリウレタンの画分は観察されなかった。したがって、非発泡ポリウレタンは前述の実験条件下で分解可能である。
【0064】
(実施例4)デュロプラスチックポリウレタン
【0065】
非発泡ポリウレタンの更なる例として、スキーに使用されるような、容積重量165 g/lのデュロプラストポリウレタンコアが分解法に用いられた。コアを粉砕し、40 mlの尿素含有量3質量%の尿素水溶液中の、その15gを、使用可能容量の80%の充填体積(残りの20%の体積:空気)の密閉圧力容器内で150分間210°Cまで加熱した。
【0066】
【表4】
【0067】
その結果、得られた液相中には、当初使用していた非発泡ポリウレタンの画分はもはや観察されないことが分かった。
【0068】
(実施例5)エラストマーポリウレタン
【0069】
エラストマーポリウレタンの例としては、Cellasto(登録商標)(BASF,SE,ルートヴィヒスハーフェン,ドイツ)の商品名で販売されているマイクロセルラーポリウレタン製スプリング、およびキャストエラストマーColo-Fast(登録商標)(BASF,SE,ルートヴィヒスハーフェン,ドイツ)が使用された。サンプルは粉砕され、使用可能な容量の80%の充填体積(残りの20%の体積:空気)の密閉圧力容器内で、尿素含有量3質量%の尿素水溶液40 mlの中で、150分間、別々のロットで210°Cまで加熱された。
【0070】
【表5】
【0071】
その結果、得られた液相中に、当初使用されていたエラストマーポリウレタンの画分はもはや観察されないことが分かった。
【0072】
(実施例6)時系列
【0073】
一連の試験において、前述のR 4030およびR 5535ポリウレタンフォームを、尿素含有量7.5質量%の尿素水溶液中、230°Cの温度で60分間、90分間、または120分間、密閉圧力容器内で加熱した。
【0074】
【表6】
【0075】
50%として分類される分解率で泡状の構造物が溶液に変化してペースト様の粘度となり、90%として分類される分解率で泡状の構造物がほぼ完全に液化し、分解率100%で完全に液化した。
【0076】
(実施例7)時系列と温度系列
【0077】
これまでの実験で、原理的にはどのような種類のポリウレタン含有材料でもこの方法で分解できることが示されていたことから、分解の温度依存性と時間依存性を系統的に計算することを目的とした新たな一連の実験では、異なるポリウレタン含有材料の混合物、具体的には重量割合が等しく、元の重量がそれぞれ4.15 gの混合物が使用された。
a) 充填材(炭酸カルシウム)とSANポリマー粒子(N 4045 WS)をベースとした標準フォームグレードTDI 80、
b) 充填材(炭酸カルシウム)とSANポリマー粒子(R 4040 WS)をベースとした高反発 (HR) ポリウレタンフォームグレードTDI 80/TDI65
c) 充填材(炭酸カルシウム)とSANポリマー粒子(R 5535 WS) をベースした高反発 (HR) ポリウレタンフォームグレードMDI、および
d) 充填剤をベースとしない粘弾性フォームグレードMDI(V 5018 WS、Eurofoam Deutschland GmbH Schaumstoffe)。
【0078】
こうして得られたポリウレタン含有物を、細断された形態で、3%尿素溶液とポリウレタン含有物グラム当たり0.582 mlの尿素溶液の比で、反応させた。温度系列を実行するために、密閉圧力容器内のサンプルをヒートキャビネット内で190°C、210°C、230°C、245°Cに加熱して平衡圧力を確立し、それぞれの温度で60分、90分、120分、180分、240分の滞留時間後に除去した。3つのサンプルがテストされ、各時点で並行して評価された。
【0079】
除去された試料は冷却され、固体ポリウレタンの分解度とそれに対応した観察可能な固体材料の消失および液体処理媒体への変換について、3試料セットごとの平均値を得るために、目視評価によって半定量的に分類された。その結果は図1に示され、所定の温度での熱処理時間が水平のx軸に沿って分単位でプロットされ、半定量的な分解度が垂直のz軸にパーセントで示され、190°C、210°C、230°C、245°Cの3つの選択された温度が画像面に対して進行するy軸にプロットされている。245°Cまで温度が上昇すると、より速い分解速度が達成できることは明らかである。
【0080】
(実施例8)過圧なしの対照実験
【0081】
対照実験では、2 gのTDIポリウレタンフォーム(商品名:R 4030; 入手先:EurofoamDeutschland GmbH Schaumstoffe,ヴィ―スバーデン, ドイツ)とMDIポリウレタンフォーム(商品名:R 5535;入手先:Eurofoam Deutschland GmbH Schaumstoffe,ヴィ―スバーデン,ドイツ)からなる2つの別々のサンプルをそれぞれ40 mlの7.5%尿素溶液と反応させ、ガラスフラスコ内で、ヒートキャビネット内の周囲圧力下で100°C~110°Cの温度で処理し、液体の損失は水の添加によって補われた。4.5時間後、いかなる種類の分解も観察されなかった。
【0082】
(実施例9)過圧下で尿素を用いない第一の対照実験
【0083】
さらなる対照実験として、4つの異なるサンプル:
9.66 ml H2Oに16.6gの黒色PURインテグラルフォーム(窓断熱材)、
9.66 ml H2Oに16.6gの白色PURインテグラルフォーム(靴の部品)、
8.15 mL H2Oに14.0g のPURセミハードフォーム(BASF)、および
9.66 ml H2Oに16.0g のPURエラストマー(BASF社製Cellasto(登録商標))
は、それぞれ密閉圧力容器内で245°C、30分間加熱され、ここで示された量の水は尿素を含まないか、3質量%の尿素を含んでいた。
【0084】
結果は図2に示されており、上記のサンプルは「PURインテグラル窓」、「PURインテグラル靴」、「PURセミハード」および「PURエラストマー」として識別される。変換の度合いは、y軸にパーセントで示されている。すべての場合において、尿素の添加によって分解の著しい増加が達成できることが分かった。インテグラルフォームとエラストマーの場合、この方法によって固体材料の完全またはほぼ完全な分解を開始することが可能であり、30分間の熱処理後に完全に分解されなかったPURセミハードフォームの場合でも、尿素の添加後に分解速度の明確な増加が依然として記録された。体積重量が133g/Lのセミハードフォームは、"PURインテグラル窓" (850g/L) 、"PURインテグラル靴" (790-830g/L) 、および"PURエラストマー" (400-550g/L) よりも密度がかなり低いため、セミハードフォームの分解の効率が低いのは、フォーム材料内の熱伝導が悪いためであるかもしれない。この場合、PURセミハードフォームは圧力容器内のより多くの空間を占有し、そのため、尿素を含まない、および尿素を含む水溶液では効果的に湿潤せず、このため、気孔内の空気の体積が大きくなることにより、熱伝導がより困難になる。
【0085】
(実施例10)過圧下で尿素を用いない第二の対照実験
【0086】
さらなる対照実験では、ポリウレタンソフトフォームの混合物(9.66 mlの水に16.6g、または3質量%の尿素を含む9.66mlの水に16.6g)の複数のサンプルを密閉圧力容器内で245°Cで加熱し、異なる時点(40,60,90,120,180,240分)で除去した。実施例9で使用したサンプルと比較して、材料特性の点では、ポリウレタンソフトフォームの混合物はPURセミハードフォームと最も類似していた。結果は図3に示され、x軸に分単位の時点、y軸にパーセント単位の変換度が示されている。3質量%の尿素存在下では、わずか40分の加熱時間後に完全分解が記録されたが、尿素を含まない水では40分後に部分分解のみが発生し、これも加熱時間が進むにつれて増加したが、いずれの場合も尿素を含む水を用いた処理で得られる分解を下回っていることがわかった。
【0087】
(実施例11)単純構造のソフトフォーム系(単一ポリオールフォーム)での実験、分解生成物の分析
【0088】
この方法を実施した後に生成する分解生成物を決定するために、可能な限り簡単な化学構造を持つポリウレタンソフトフォームが実験室で製造された(表7)。影響因子間の区別を維持するために、分子量3500 MWの標準エーテルポリオールを一つだけ使用し、トルエンジイソシアネートTDI 80がイソシアネートとして実施された。フォームの容積重量は22 kg/m3であった
【0089】
【表7】
【0090】
このPURソフトフォームを粉砕し、11.5リットルのBuechi反応器(BuechiAG,ウスター、スイス)で本方法を使用して処理した。400グラムのフォームを236ミリリットルの3%水-尿素溶液であらかじめ湿潤し、約10.2リットルの体積を持つステンレス製の消化容器 (Inliner容器とも呼ばれる)に注いだ。容器の底部には、生成された液体処理媒体を受け止めるために、リムの高さが5 cmのアルミホイルを敷いた。急速に水蒸気を発生させるために、反応器に挿入されたInliner容器の下に200 mlの水を入れた。本発明による方法は240分間行われ、反応器の外殻温度は最初に60分間260°Cに、その後180分間250°Cに設定された。このプロセスにより、反応器の内部チャンバーは230°Cをわずかに下回る温度(229.3°C)に達した。
【0091】
得られた処理媒体の化学分析を行うため、媒体1 mlを99 mlのアセトニトリルに溶解し、実験室の振動板で24時間混合した。次に、アクリロニトリルのサンプル混合物をシリンジフィルター(例えばChromafil Xtra、RC、25 mm、0.45 μm)でろ過した後、サンプル1~5マイクロリットルがAgilent 8890 GC型ガスクロマトグラフィー装置(Agilent,サンタクララ,米国)に直接導入された。GCカラムは最初に40°Cで2分間維持され、その後10ケルビン/分の加熱速度で40°C~250°Cに温められた。最後に5分間の保持時間が追加された。測定時間は全部で28分間であった。測定は1:10分割で行われた。方法はRamp40-250_28min_1.5ml_split1-10.Mと名付けられた。結合されたAgilent 5977B GC/MSD質量分析計システムで測定されたスペクトルは、保持時間1.37~1.75分と13.71分に二つの顕著なピークを示す。スペクトルは、"NIST17"ソフトウェアパッケージ(国立標準技術研究所,ゲイサーズバーグ,米国)を使用して分析されたが、これは実施例12の文脈でより詳細に説明されているTG/STA-GC-MSシステムの提供範囲に含まれており、また定性的GC-MS分析のための"AMDIS32"ソフトウェア、データベースALKANES、NISTCW、NISTDRUG、NISTEPA、NISTFAD、NISTFF、NISTTOXおよびPESTPLUS、ならびにMSSEARCHソフトウェアも含み、この最後のソフトウェアプログラムは、個々の測定スキャンと使用されているデータベースを選択的に比較するために使用することが出来る。ピークの分析を表8に示す。ここで、MF (Match Factor)は測定されたスペクトルをデータベースのスペクトルと比較することを表し、RFM (Reverse Match Factor)は利用可能なデータベースのスペクトルを測定されたスペクトルと比較することを意味する。どちらの場合も、ソフトウェアに格納されている特別なアルゴリズムが使用される。これらの要素は、NISTソフトウェアで1000=100%一致となるように標準化される。
【0092】
【表8】
【0093】
アセトニトリルは、使用された溶媒であるアセトニトリルに起因する可能性がある。1, 3-ベンゼンジアミン、4-メチル- (CAS 95-80-7)の同義語は2, 4-ジアミノトルエンである。2, 4-ジアミノトルエンのピークは、本発明による方法の過程でこの化合物を得ることができることを示している。2, 4-ジアミノトルエンは、トルエンジイソシアネートTDI 80の前駆体であり、ホスゲン化によってこれに変換することができるため、特にポリウレタン経済の文脈において、工業的に価値のある再利用可能な原料である。
【0094】
また、分子量を測定するために、処理媒体のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析も行った(BASF Lemfoerde-Central Analytic Lemfoerde, BASF Polyurethanes GmbH, Elastogranstr 60, 49448 レムフェルデ,ドイツにおける外部測定)。
【0095】
この解析の過程で、3700 g/molに顕著な主ピークを持つモル質量分布が測定された。処理媒体の粘度も決定された。粘度は1100 mPasのオーダーの値を持つ。処理媒体のOH数も決定し、325 mgKOH/gであることが分かった。
【0096】
その結果は、処理媒体の実質的な成分はポリオールであるという理論を支持した。そのモル質量は元々使用されていたポリオールのそれと非常に似ており、(おそらく方法中に受けた処理のために)わずかに高い粘度を有し(ポリオール標準エーテル-3500 MW=25 700-900 mPa・s、OH 48)、高いOH数を有する。
【0097】
したがって、本発明の方法はポリオールを回収し、貴重な原料として再利用するために用いることが出来る。
【0098】
(実施例12)PURソフトフォーム混合物の実験、TG-GC/MSによる分解生成物の分析
【0099】
この実施例は、本発明による方法の過程で生成されたポリオールが、得られた処理媒体中に存在したことを証明する試みである。この目的のために、処理媒体は約380°Cの温度で熱分解され、それによって得られた分解生成物から、処理媒体中にポリオールが存在することを示すことができる。これを行うために、TG/STA-GC-MSの結合測定(ガスクロマトグラフィー質量分析計と熱分析の結合、ここでTGは熱重量測定(thermogravimetry)、STAは 「同時熱分析(simultaneous thermal analysis)」 を意味する)を通した経路が選択された。使用された測定機器はSTA 449 F3 Jupiter (Netzsch、ゼルプ、ドイツ)で、これはAgilent 8890 GC型ガスクロマトグラフィーシステム(Agilent,サンタクララ,米国)とAgilent 5977B GC/MSD質量分析計システムに加熱された移送ラインを介して接続された。
【0100】
まず、準備段階において、以下のように参照データベースが作成された。
【0101】
これには、以下の表9に示すポリオールが使用されたが、これは後にデータベースを参照して実際に分析された混合物に使用されるソフトフォームの構成成分であるためである(表10参照)。
【0102】
【表9】
【0103】
これらは、前述のTG/STA-GC-MSシステムの熱分解ステージで380°Cで個別に分解された。主ピークはNISTとAMDISのデータベースで決定され(実施例11を参照)、これらのデータベースに従って割り当てられた化合物の名前と分解生成物のGC保持時間が参照データベースに格納され、表9に従った適切なサフィックスが各分解生成物に割り当てられた。異なるポリオールで同じ分解生成物が発生した場合は、それぞれのサフィックスが追加された。これらの分解生成物と対応する識別生成物コードは、次に表11に記載される(表11では、表10による混合物の分解生成物が示されている)。
【0104】
参照データベースが作成された後、本発明による方法を実施した後に、ポリオールが処理媒体中にどの程度出現するかという疑問に答えるために、ソフトフォームの混合物を本発明による方法に供した。
【0105】
この目的のために、11.5リットルのBuechi反応器で、400グラムのソフトフォームの混合物を本発明に従った方法で処理した。混合物は以下のソフトフォームの性質を持っていた(Neveon Holding GmbH、エーベルスバッハフィルス、ドイツから得た)。
【0106】
【表10】
【0107】
400グラムのフォーム混合物を236ミリリットルの3%水-尿素溶液であらかじめ湿潤し、ステンレス製の消化容器(体積約10.2リットル)に注いだ。容器の底部には、生成された液体処理媒体を受け止めるために、リムの高さが5 cmのアルミホイルを敷いた。急速に水蒸気を発生させるために、200 mlの水をInliner容器の下に入れた。
【0108】
本方法は240分間行われ、反応器の外殻温度は最初に60分間260°Cに、その後180分間250°Cに設定された。このプロセスにより、反応器の内部室は236°Cをわずかに下回る温度に達した。
【0109】
回収された処理媒体は、結合されたTG/STA-GC-MS測定によって再度分析された。
【0110】
379°Cでのスペクトルは、AMDISで、80%のデフォルトの最小一致係数(MF)の設定で準備段階において作成された参照データベースを使用して分析された。一致係数とは、測定されたスペクトルとAMDISデータベースのスペクトルとの一致をパーセントで表したものである。この係数は、ソフトウェアに保存されているアルゴリズムによって計算される。主なピークは、表9に従って単一ポリオールについて測定されたピークに対応する。
【0111】
このデータの相関関係を表11に示す。分析の結果、本来使用されていたポリオールのほか、分解法の過程で生成された転化生成物および/または分解生成物が処理媒体に含まれていることがわかった。
【0112】
【表11】
【0113】
265°Cでのスペクトルは、AMDISおよびAMDISとNISTのデータベースを使用して、90%のデフォルト最小一致係数(MF)設定を用いて分析された。先行する実験では、265°Cの温度で、ポリウレタン中のジイソシアネートまで遡ることができる処理媒体に含まれる成分は熱的に分解されるが、ポリウレタン中のポリオールまで遡ることができる成分はこの温度では分解されないことが発見された。
【0114】
主なピークは、ソフトフォームに使用されるジイソシアネートのジアミン前駆体に相当する(表12)。このように、本発明による方法が実施された後に得られる液体処理媒体は、ジイソシアネートのホスゲン化という工業的工程の前からの前駆体を含む。
【0115】
【表12】
【0116】
記載の方法は、ポリウレタンの分解を可能にし、そのため商業利用可能である。さらに、得られた処理媒体から原料を回収することができ、これらは化学工業で再び使用され得、特にそれらはポリウレタンのリサイクル経済に有用である。
【0117】
本発明は、その好ましい実施形態の助けを借りてより詳細に図示され、説明されているが、本発明は、開示された例によって限定されるものではなく、そこから本発明の保護の範囲から逸脱することなく、当業者によって他の変形が派生することがある。したがって、複数の変形の可能性が存在し、特定された変形またはその要素が互いに組み合わせることができることは明らかである。また、例示的な目的のために特定された変形は、実際には、保護範囲、適用可能性または発明の構成の限定を構成するものとしていかなる方法でも解釈されない実施例のみを表していることも明らかである。むしろ、先の記載および図の記載は、開示された発明思想の知識を有する当業者が、例えば、例示的な変形において特定された個々の要素の機能または配置に関して、特許請求の範囲および、明細書におけるより詳細な説明のようなその法的対応物によって定義される発明の保護範囲から逸脱することなく、多くの変更を導入することができるように、当業者が具体的に例示的な実施形態を再現できるように設計されている。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンの分解方法であって、ポリウレタン含有材料を、尿素を1~45質量%含む水溶液の存在下、過圧下で190℃~250℃の温度に加熱する方法。
【請求項2】
加熱が1.05 bar~100 barの圧力下で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記過圧が、加熱によって確立される平衡圧力であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱が20分~240分間にわたって行われることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶液が2.5~10質量%の尿素を含み、前記加熱が45~250分間、特に45~240分間行われることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
尿素含有水溶液とポリウレタン含有材料との間の比が、0.4 ml/g~5 ml/gの値を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
加熱後、得られた液体処理媒体の少なくとも一部が回収されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記回収された液体処理媒体から固体が除去されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水溶液が、ポリオールを含まない、および/またはカルボン酸を含まない、および/またはアンモニアを含まないことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記水溶液が水および尿素からなることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記加熱が、190℃~250℃の温度で、20分~240分間にわたって行われ、前記水溶液が、1~10質量%の尿素を含み、尿素含有水溶液とポリウレタン含有材料との間の比が、0.4 ml/g~5 ml/gの値を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法で得られる、液体処理媒体。
【国際調査報告】