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特表2023-551306空気吸込式の射程距離が長い発射体及びミサイル用の関節式インレット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】空気吸込式の射程距離が長い発射体及びミサイル用の関節式インレット
(51)【国際特許分類】
   F42B 10/14 20060101AFI20231130BHJP
   B64U 10/25 20230101ALI20231130BHJP
   B64U 30/16 20230101ALI20231130BHJP
   B64U 50/15 20230101ALI20231130BHJP
【FI】
F42B10/14
B64U10/25
B64U30/16
B64U50/15
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532675
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 US2021043130
(87)【国際公開番号】W WO2022119606
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】63/119,692
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ロッティ,アンドリュー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】バルク,ショーン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】メジット,ドナルド ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ジェイラン エス.
(57)【要約】
発射体は、初期の飛行範囲の最中に発射体の推進システムの燃焼用空気を吸入するインレット、および、推進システムの推進エンジンが燃え尽きた後の発射体の揚力面の両方を形成する翼構造を含む。翼構造は、インレットと揚力面の両方として機能して、目標までの発射体の長距離飛行および最適な飛行時間の両方を可能にする。翼構造は、翼が発射体の推進体部に沿って延びてインレットを画定する折り畳み位置から、翼が推進体部から外側に延びて揚力面を形成する展開位置まで、移動可能な少なくとも1つの翼を含む。任意の数の翼を設けてもよいし、用途に応じて、翼を同時に展開し、または、順次展開してもよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発射体であって、
推進体部と、
少なくとも1つの翼であり、 前記発射体の初期の飛行範囲の最中に、インレットを画定するように、前記少なくとも1つの翼が前記推進体部に沿って延びる、折り畳み位置と、
前記初期の飛行範囲の後で、前記発射体のための揚力面を形成するように、前記少なくとも1つの翼が前記推進体部から外側に延びる、展開位置と、
の間で移動可能な、少なくとも1つの翼と、
を含む、発射体。
【請求項2】
前記少なくとも1つの翼は、インレット壁として形成され、
前記折り畳み位置にある場合には、前記インレットを閉じ、かつ、
前記展開位置にある場合には、前記インレットを開く、
請求項1に記載の発射体。
【請求項3】
前記推進体部は、外周面を含み、
前記外周面は、前記少なくとも1つの翼によって覆われており、前記インレットを画定する、凹部を有している、
請求項1または2に記載の発射体。
【請求項4】
前記少なくとも1つの翼は、前記推進体部に対して前記折り畳み位置から前記展開位置まで回転するように構成される、
請求項1乃至3いずれか一項に記載の発射体。
【請求項5】
前記少なくとも1つの翼は、二軸回転するように構成される、
請求項4に記載の発射体。
【請求項6】
前記少なくとも1つの翼は、
第1の回転面内で第1の展開位置まで回転し、かつ、
その後、前記第1の回転面に垂直な第2の回転面内で第2の展開位置まで回転する、
ように構成される、請求項5に記載の発射体。
【請求項7】
前記少なくとも1つの翼は、
取り付け点を中心として枢動し、かつ、前記少なくとも1つの翼の軸を中心として回転する、
ように構成される、請求項5または6に記載の発射体。
【請求項8】
前記少なくとも1つの翼は、第1の翼部及び第2の翼部を含み、
前記第1の翼部及び前記第2の翼部は、
前記インレットを形成するように係合可能であり、かつ、
前記折り畳み位置から前記展開位置まで相対する回転方向に回転することによって、2つの揚力面を形成するように係合解除可能である、
請求項4に記載の発射体。
【請求項9】
前記少なくとも1つの翼は、前記推進体部に対する取り付け点を中心として少なくとも90度だけ枢動するように構成される、
請求項4乃至8いずれか一項に記載の発射体。
【請求項10】
前記少なくとも1つの翼は、前記折り畳み位置および前記展開位置にある場合に、同一平面内に配向されており、
前記少なくとも1つの翼は、前記同一平面内で枢動可能である、
請求項9に記載の発射体。
【請求項11】
前記少なくとも1つの翼は、前記インレットの後方にある、前記推進体部に対する取り付け点において、前記発射体に対して取り付けられている、
請求項1乃至10いずれか一項に記載の発射体。
【請求項12】
前記少なくとも1つの翼は、
前記少なくとも1つの翼が前記展開位置にある場合に、前記推進体部から垂直に延びている、
請求項1乃至11いずれか一項に記載の発射体。
【請求項13】
前記少なくとも1つの翼は、2つ以上の翼を含み、
前記2つ以上の翼と前記推進体部との間に、2つ以上のインレットを画定する、
請求項1乃至12いずれか一項に記載の発射体。
【請求項14】
前記2つ以上のインレットは、前記推進体部を中心として対称に配置される、
請求項13に記載の発射体。
【請求項15】
前記2つ以上のインレットは、環状のインレットの一部である、
請求項13または14に記載の発射体。
【請求項16】
前記発射体は、固体燃料ラムジェット、液体燃料ラムジェット、または、ダクトロケットである、
請求項1乃至15いずれか一項に記載の発射体。
【請求項17】
前記発射体は、さらに、
前記翼を前記折り畳み位置から外へ展開するように構成される、電気モータ、機械的アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、油圧アクチュエータ、または、エネルギー材料のうち少なくとも1つを含む、
請求項1乃至16いずれか一項に記載の発射体。
【請求項18】
ラムジェットであって、
前記ラムジェット用の推進エンジンを含む推進体部と、
少なくとも1つの翼であり、
発射体の初期の飛行範囲の最中に、インレットを画定するように、前記少なくとも1つの翼が前記推進体部に沿って延びて、推進システムの燃焼用空気を吸入する、折り畳み位置と、
前記推進エンジンが燃え尽きた後で、前記発射体のための揚力面を形成するように、前記少なくとも1つの翼が前記推進体部から外側に延びる、展開位置と、
の間で移動可能な、少なくとも1つの翼と、
を含む、ラムジェット。
【請求項19】
前記少なくとも1つの翼は、
前記推進体部の外周に形成された凹部を前記少なくとも1つの翼が覆う、前記折り畳み位置から、
前記凹部から前記少なくとも1つの翼が取り外されて、前記インレットを開く、前記展開位置まで、
回転するように構成される、
請求項18に記載のラムジェット。
【請求項20】
発射体を操作する方法であって、
発射体の初期の飛行範囲の最中に前記発射体の推進体部内の推進エンジンを燃焼させることと、
前記初期の飛行範囲の最中に前記推進エンジンにおける燃焼のために、前記推進体部に対して折り畳まれた位置に配置された少なくとも1つの翼によって画定されるインレットを通して、空気を吸入することと、
前記少なくとも1つの翼を、前記折り畳まれた位置から、前記初期の飛行範囲に対して後続の飛行範囲の最中に前記推進エンジンが燃え尽きた後で、前記少なくとも1つの翼が前記推進体部から外側に延びる展開位置まで、展開させることと、
前記展開位置にある前記少なくとも1つの翼を介して、前記発射体の揚力を生成することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発射体(projectiles)及びミサイル用のインレットに関する。
【背景技術】
【0002】
ミサイルなどの発射体には、通常、スペースの制約があり、誘導電子機器と推進システムの両方に対してスペースのバランスをとる必要がある。例示的なラムジェット型発射体(ramjet-type projectile)において、空気流ダクトを使用する固体燃料ラムジェット推進システムは、発射体内に重大なスペース不足を引き起こす可能性がある。ラムジェット推進システム、シーカー(seeker)ハードウェア及びプロセッサ電子機器、並びに、弾頭によって共有される、発射体内に提供される標準空間の体積制限により、発射体は、初期飛行段階について目標までの飛行範囲を増加させる推進システムで構成されてもよい。しかしながら、従来の発射体では、射程を最大化することが不十分である可能性があり、これは、インレット内及びその周囲の抗力を減らすか、発射体の機体の揚力を増加させるかのどちらかに依存する。
【0003】
目標までの発射体の射程を増加させるための以前の試みの1つは、ラムジェットの推進部を増加することを含む。しかしながら、この解決策は、ラムジェット燃料が消費された後に空気吸込式推進システムのインレットによって生じる抗力源に対処せず、それにより、発射体の性能が不十分になる可能性があるという欠陥がある。
【発明の概要】
【0004】
本願は、翼構造を使用して、初期の飛行範囲の最中に発射体の推進システムの燃焼用空気を吸入するインレットと、推進システムの推進エンジンが燃え尽きた後の発射体の揚力面との両方を形成する発射体を提供する。目標までの最適な飛行時間を提供するが、射程が短いラムジェットのみの変形、および、射程が長いが、飛行時間が望ましくないほど長い翼のみの変形、を含む従来の発射体とは対照的に、インレットおよび揚力面の両方として機能する翼構造は、目標までの長距離および最適な飛行時間の両方を可能にする。
【0005】
翼構造は、翼が発射体の推進体部に沿って延びてインレットを画定する折り畳み位置から、翼が推進体部から外側に延びて揚力面を形成する展開位置まで、移動可能な、少なくとも1つの翼を含む。任意の数の翼を設けてもよいし、用途に応じて翼を同時に展開し、または、順次展開してもよい。
【0006】
発射体の推進体部は、インレットが推進体部と翼との間に画定されるように、翼が折り畳み位置にある場合に、翼によって覆われる凹部を含んでもよい。翼が推進体部から離れると、凹部は、インレットが開くように、露出されるか又は開く。
【0007】
翼は、任意の適切なアクチュエータによって起動され、かつ、推進体部から離れる方向に回転して、展開位置に移動されてもよい。翼は、翼が推進体部への取り付け点を中心として枢動し、その軸を中心としても回転する、単軸回転又は多軸回転に構成されてもよい。翼は、インレットを画定するために、互いに係合し、翼が折り畳み位置から展開位置に移動する場合に、互いに離脱する、2つの翼によって形成されてもよい。
【0008】
本開示の一態様によれば、発射体は、推進中の空気インレットおよび推進後の揚力面の両方として機能する、少なくとも1つの翼を含む。
【0009】
本開示の一態様によれば、発射体は、折り畳み位置にある場合に、インレットを閉じ、展開位置にある場合に、インレットを開く、少なくとも1つの翼を含んでもよい。
【0010】
本開示の一態様によれば、発射体は、ラムジェット、および、ラムジェットの初期推進段階後に揚力面を形成するインレット、を有してもよい。
【0011】
本開示の一態様によれば、発射体は、翼がインレットとして機能する位置から、翼が揚力面を形成する位置まで、移動する場合に、二軸回転するように構成された、少なくとも1つの翼を含んでもよい。
【0012】
本開示の一態様によれば、発射体は、翼がインレットとして機能する位置にある場合、及び、翼が揚力面を形成する位置にある場合に、同一平面内に配向される、少なくとも1つの翼を含んでもよい。
【0013】
本開示の一態様によれば、発射体は、インレットを画定するために係合可能であり、インレットを開いて揚力面を形成するために離脱可能な、2つの翼によって形成される、少なくとも1つの翼を含んでもよい。
【0014】
本開示の一態様によれば、発射体は、発射体を中心として、対称に配置され、かつ、推進中の空気インレット及び推進後の揚力面として機能する、複数の翼を含んでもよい。
【0015】
本開示の一態様によれば、発射体は、推進体部と、発射体の初期の飛行範囲の最中に前記推進体部に沿って延びて、インレットを画定する、折り畳み位置と、前記初期の飛行範囲の後で、前記推進体部から外側に延びて、前記発射体の揚力面を形成する、展開位置との間で移動可能な、少なくとも1つの翼と、を含む。
【0016】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、前記少なくとも1つの翼は、前記折り畳み位置にある場合に、前記インレットを閉じ、前記展開位置にある場合に、前記インレットを開く、インレット壁として形成されてもよい。
【0017】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、前記推進体部は、前記少なくとも1つの翼によって覆われて、前記インレットを画定する凹部、を有する外周面を含んでもよい。
【0018】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、前記少なくとも1つの翼は、前記推進体部に対して前記折り畳み位置から、前記展開位置まで、回転するように構成されてもよい。
【0019】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、前記少なくとも1つの翼は、二軸回転するように構成されてもよい。
【0020】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、前記少なくとも1つの翼は、第1の回転面内で第1の展開位置まで回転し、その後で、前記第1の回転面に垂直な第2の回転面内で第2の展開位置まで回転するように構成されてもよい。
【0021】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、前記少なくとも1つの翼は、取り付け点を中心として枢動し、前記少なくとも1つの翼の軸を中心として回転するように構成されてもよい。
【0022】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、前記少なくとも1つの翼は、前記インレットを形成するために係合可能であり、2つの揚力面を形成するために前記折り畳み位置から前記展開位置まで反対の回転方向に回転することで離脱可能である第1の翼部及び第2の翼部を含んでもよい。
【0023】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、前記少なくとも1つの翼は、前記推進体部への取り付け点を中心として、少なくとも90度枢動するように構成されてもよい。
【0024】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、同一平面内で枢動可能な前記少なくとも1つの翼は、前記折り畳み位置及び展開位置にある場合に、同一平面内に配向されてもよい。
【0025】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、前記少なくとも1つの翼は、前記インレットの後方にある前記推進体部への取り付け点で、前記発射体に取り付けられてもよい。
【0026】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、前記少なくとも1つの翼は、前記展開位置にある場合に、前記推進体部から垂直に延びてもよい。
【0027】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、前記少なくとも1つの翼は、前記推進体部との間に2つ以上のインレットを画定する、2つ以上の翼を含んでもよい。
【0028】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、前記2つ以上のインレットは、前記推進体部を中心として、対称に配置されてもよい。
【0029】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、前記2つ以上のインレットは、環状のインレットの一部であってもよい。
【0030】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、前記発射体は、固体燃料ラムジェット、液体燃料ラムジェット、又はダクトロケットである。
【0031】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、前記発射体は、前記翼を前記折り畳み位置から展開するように構成される電気モータ、機械的アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、油圧アクチュエータ、又はエネルギー材料のうちの少なくとも1つを、さらに含んでもよい。
【0032】
本開示の別の態様によれば、ラムジェットは、前記ラムジェット用の推進エンジンを含む推進体部と、発射体の初期の飛行範囲の最中に少なくとも1つの翼が前記推進体部に沿って延びて、推進システムの燃焼用空気を吸入するインレットを画定する、折り畳み位置と、推進エンジンが燃え尽きた後で、前記少なくとも1つの翼が前記推進体部から外側に延びて、前記発射体の揚力面を形成する、展開位置との間で、移動可能な前記少なくとも1つの翼と、を含む。
【0033】
この概要の任意の段落(複数可)の実施形態によれば、前記少なくとも1つの翼は、前記推進体部の外周に形成された、凹部を覆う折り畳み位置から、前記凹部から取り外されて、前記インレットを開く展開位置まで、回転するように構成されてもよい。
【0034】
本開示のさらに別の態様によれば、発射体を操作する方法は、発射体の初期の飛行範囲の最中に前記発射体の推進体部内の推進エンジンを燃焼させることと、前記初期の飛行範囲の最中の前記推進エンジンにおける燃焼のために、前記推進体部に対して折り畳み位置に配置された、少なくとも1つの翼によって画定される、インレットを通して空気を吸入することと、前記少なくとも1つの翼を、前記折り畳み位置から、前記初期の飛行範囲に対する後続の飛行範囲の最中に前記推進エンジンが燃え尽きた後で、前記少なくとも1つの翼を前記推進体部から外側に延びる展開位置まで展開することと、前記展開位置にある前記少なくとも1つの翼を介して、前記発射体の揚力を生成することと、を含む。
【0035】
前述の及び関連する目的を達成するために、本開示は、以下に十分に説明され、特に特許請求の範囲で指摘される特徴を含む。以下の説明及び添付の図面は、本開示の特定の例示的な実施形態を詳細に説明する。しかしながら、これらの実施形態は、本開示の原理が使用され得る様々な方法のうちのほんの数例を示すものである。本発明のその他の目的、利点、および新規な特徴は、添付図面と関連してなされる、以下の詳細な説明を参照して明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
添付の図面は、必ずしも縮尺通りではないが、本開示の様々な態様を示す。
図1】推進システムを有する発射体の概略図を示す。
図2】発射体の翼が折り畳み位置にあり、インレットを画定する、初期の飛行範囲の最中の図1の発射体を示す。
図3】発射体の翼を展開して揚力面を形成する、後続の飛行範囲の最中の図2の発射体を示す。
図4】翼が折り畳み位置から展開位置まで移動するために、二軸回転するように構成される、例示的な実施形態に係る図1の発射体の翼を示す。
図5】展開位置にある図4の翼を示す。
図6】翼が折り畳み位置から展開位置まで移動するために、単軸回転するように構成される、別の例示的な実施形態に係る図1の発射体の翼を示す。
図7】展開位置にある図6の翼を示す。
図8】翼が折り畳み位置にある場合に、インレットを画定するために、互いに係合する2つの翼によって形成される、さらに別の例示的な実施形態に係る図1の発射体の翼を示す。
図9】翼が2つの揚力面を形成する展開位置にある、図8の翼を示す。
図10図1~9のいずれかに示される発射体のような発射体を操作する方法を示す、フローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書で説明する原理は、砲弾及びミサイルなどの発射体での使用に応用される。発射体は、防衛用途又は非軍事用途を含む、他の任意の適切な発射体用途などの様々な用途に実装されてもよい。本明細書で説明する原理は、固体燃料ラムジェット、液体燃料ラムジェット、又は、ダクトロケットなどの任意の適切な発射体で実装されてもよい。チューブ又は銃発射システムなどの発射体発射システムも、また、本明細書に記載の発射体及び原理と併用されてもよい。
【0038】
まず図1を参照すると、発射体20の概略図を示す。発射体20は、固体燃料ラムジェット、液体燃料ラムジェット、ダクトロケット、又、は他の任意の適切な発射体であってもよい。例えば、発射体20は、ラムジェット用の推進システム及びエンジンを有する推進体部22を含む、ラムジェットであってもよい。推進体部22は、推進エンジンの様々な構成要素を収容する。推進体部22には、ディフューザ24が配置されてもよく、空気インレット26は、ディフューザ24と推進体部22との間に画定されてもよい。燃焼室28は、インレット26の下流に配置され、ノズル30は、燃焼室28の下流に配置される。
【0039】
動作中に、インレット26は、周囲の空気を吸入し、かつ、発射体20の前方移動中に空気を圧縮するように構成される。ラムジェット型発射体20の推進エンジンは、回転圧縮機を使用せずに、発射体20の前方運動を利用して、流入の燃焼用空気を圧縮して燃焼させる。燃焼室28は、インレット26に流体的に接続(fluidly connected)されて、圧縮空気を受け入れる。燃焼室28において、燃料を添加して燃料を燃焼させることにより、圧縮空気を加熱する。ノズル30において、空気の密度が低減されて、加熱された空気の加速が増加し、発射体20の推力を生成する。
【0040】
発射体20の初期の発射の最中に、インレット26は、発射体20の推進前の抗力を低減するために、初期の発射の最中に閉位置にあってもよい。発射体20は、銃又は他の適切な発射システムから発射されてもよい。発射体20が銃から出た後、発射体20の初期の飛行範囲の最中に、インレット26が作動して開いてもよい。初期の飛行範囲の最中に、インレット26は、初期の飛行範囲がラムジェット型発射体20の推進段階となるように、発射体20の前方運動により、燃焼用空気を吸入する。図1に示すように、インレット26は、翼34が発射体20の初期の飛行範囲の最中に、推進体部22に沿って延びる、折り畳み位置を有する、少なくとも1つの翼34によって画定される。
【0041】
図2及び図3を加えて参照すると、翼34のさらなる詳細を示す。図2は、翼34が折り畳み位置にあり、図1に示すインレット26を形成する初期の飛行範囲の最中の発射体20を示す。図3に示すように、推進エンジンが燃え尽きて初期の飛行範囲が終了した後で、翼34は、図2に示す折り畳み位置から、推進体部22から外側に延びる展開位置まで、翼34が移動可能である。翼34が発射体20に取り付けられる取り付け点35は、発射体の前端36に対してインレット26の後方にあってもよい。取り付け点35は、推進体部22に沿った定位置に形成される。翼34は、折り畳み位置から展開位置まで、取り付け点35を中心として、回転するように構成される。例えば、翼34は、取り付け点35を中心として枢動してもよい。展開位置にある場合、翼34は、揚力面を形成して、初期の飛行範囲の後で、発射体20に揚力を生成する。このように、かつて発射体20用の抗力を生成していたインレット26が除去されて、揚力が生じ、そして、発射体20の飛行範囲をさらに拡大する。
【0042】
翼34は、初期推進段階中の発射体20のインレットおよび推進段階後の発射体20の飛行中の揚力面の両方として機能する。対照的に、従来の発射体は、翼のみの変形又はラムジェットのみの変形であってもよい。翼のみの変形では、発射体は、推進中に空気を吸入するように構成されたインレットのない揚力翼を有する。ラムジェットのみの変形では、発射体は、推進段階後の発射体の飛行範囲を拡大するために、いかなる揚力面のないインレットを有する。
【0043】
翼のみの変形は、より長い射程距離を提供し得るだけでなく、目標までの望ましくないほど長い飛行時間を提供するが、一方で、ラムジェットのみの変形は、目標までの最適な飛行時間を提供するだけでなく、目標までの望ましくないほど短い射程を提供する。これにより、両方の変形が欠損する。空気インレット及び揚力面の両方として機能する翼34を使用することにより、翼34が発射体20の長距離及び目標までの最適な飛行時間の両方を可能にするという点で、単一の発射体に両方の変形の利点が得られる。
【0044】
翼34は、折り畳み位置にある場合に、インレット26が推進のための空気吸入に利用できないように、インレット26を閉じ、そして、展開位置にある場合に、推進体部から離れてインレット26を露出するか又は開く、インレット壁として形成される。図3に示すように、推進体部22の外周面37には、翼34が折り畳み位置にある場合に、翼34によって覆われてインレット26を形成する、凹部38が形成される。したがって、インレット26は、推進体部22と翼34との間に画定される。
【0045】
凹部38は、任意の適切な形状を有し、かつ、推進体部22の長軸Lに平行に延びてもよい。翼34は、また、折り畳み位置にある場合に、長軸Lに平行に延びる。例えば、凹部38は、浅い深さを有し、推進体部22の長さに沿って、細長くてもよい。凹部38の長さは、発射体20の動作特性に基づいて、インレット26の所望のサイズに依存してもよい。インレット26は、環状などの任意の適切な形状を有してもよい。
【0046】
翼34は、任意の適切な形状及び長さを有してもよい。翼34は、推進体部22の長さの半分超え又は大部分に沿って、延びてもよい。翼34の長さは、インレット26の所望の長さに依存してもよい。翼34は、厚みが薄く、長さが長い平面状の本体を有する形状であってもよい。翼34の平面39は、翼34が外周面37に係合されて凹部38を覆う場合に、翼34が推進体部22の外周面37と嵌合できるように形成されてもよい。
【0047】
翼34の外周面37及び平面39は、折り畳み位置にある場合に、翼34が外周面37に嵌合するように、相補的な形状を有するように形成されてもよい。平面39は、推進体部22での取り付け点35から翼34の反対端まで先細りになる、先細りの形状を有してもよい。展開位置にある場合に、翼34は、推進体部22によって画定される長軸Lに対して、垂直又は横方向に延びてもよい。翼34は、他の多くの形状を有してもよい。
【0048】
図3に概略的に示すように、発射体20は、推進体部22内に配置され、翼34を折り畳み位置から展開位置に展開するように構成されるアクチュエータ40を含む。任意の適切なアクチュエータが使用され得る。例示的なアクチュエータは、電気モータ、機械的アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、油圧アクチュエータ、又はエネルギー材料を含んでもよい。アクチュエータ40は、任意の適切なピストン、シリンダ、ポンプ、モータ、バルブなど、を含んでもよい。翼34の作動は、射程を延ばすための発射体20の揚力が所望であるように、推進エンジンが燃え尽き、発射体20の初期の飛行範囲が終了した後に発生する。
【0049】
任意の数の翼34及びインレット26を設けてもよい。翼34は、2つ以上設けられてもよい。各翼34は、発射体20が複数のインレット26を含むように、対応する翼34と推進体部22との間に形成された単一のインレット26に対応してもよい。各翼34は、翼34を同時に又は順次に展開できるように、1つのアクチュエータ40を共有するか、又は、ユニークなアクチュエータを有してもよい。翼34の作動順序は、用途及び所望の昇降動作に依存してもよい。翼34は、推進体部22の共通の円周を中心として、対称に間隔を置いて配置されてもよい。用途に応じて、翼34の他の配置も、また適切であり得る。図3に示すように、例示的な実施形態では、発射体20は、互いに直径方向に対向する2つのインレット26を形成する、2つの翼34を含んでもよい。例示的な実施形態では、2つ以上のインレットは、発射体20の環状インレットの一部であってもよい。
【0050】
ここで図4~9を参照すると、1つ又は複数の翼34は、折り畳み位置から展開位置に移動する場合に、回転され得る。翼34の回転は、枢動を含んでもよい。各翼34は、少なくとも90度の角度で回転可能又は枢動可能であってもよい。用途及び翼34の最終展開位置に依存して、より小さい又はより大きい角度の回転又は枢動が、適切であり得る。図4及び5に示すように、発射体20aの第1の例示的な実施形態では、翼34は、折り畳み位置34aから展開位置34bまで二軸回転するように構成されてもよい。翼34の展開中に、翼34は、第1の回転面において第1の回転範囲θを有し、第1の回転範囲θが発生する第1の回転面に垂直な第2の回転面において生じる第2の回転範囲αを有する。
【0051】
例えば、翼34は、翼34が枢動して第1の展開位置34bにおいて推進体部22に垂直に延びるように、第1の回転範囲θ中に推進体部22から離れる取り付け点35を中心として約90度枢動することができる。取り付け点35は、推進体部22に取り付けられる任意の適切なヒンジ機構、ジョイント、又は他のリンケージを含んでもよい。例示的な実施形態では、二軸ヒンジ機構は、適切であってもよい。取り付け点35は、ボールベアリング、バネ、リーフ、ピン、チューブ、クリップなどの任意の適切な構成要素を含んでもよい。翼34は、第1の回転範囲θ中に90度超え又は未満回転してもよい。
【0052】
翼34は、また、第2の回転範囲αで回転し、これは、第1の回転範囲θに続いて発生し得る。例えば、翼34は、初期展開位置であり得る、図4に示す第1の展開位置34bから、最終展開位置であり得る、図5に示す第2の展開位置34cまで、約90度回転してもよい。翼34は、第2の回転範囲α中に、それ自体の軸を中心として回転してもよい。第2の又は最終の展開位置34cでは、翼34の平面は、第1の回転範囲θの回転面に平行な平面内に延びてもよい。図4及び5に示す同じ二軸回転展開を受ける2つ以上の翼が提供されてもよい。2つ以上の翼を同時又は順番に展開してもよい。
【0053】
代替的な実施形態では、翼34は、第1の展開位置34bにある場合に、推進体部22に平行に延びるように、第1の回転範囲θ中に、それ自体の軸を中心として回転してもよい。次に、翼34は、第2の回転範囲α中に、推進体部22から図5に示す第2の展開位置34bまで外側に枢動してもよい。さらに他の例示的な実施形態では、翼34は、取り付け点35を中心に枢動する一方、その軸を中心として回転するように構成されてもよい。さらに他の例示的な実施形態では、翼34は、翼34が3つ以上の異なる軸を中心として回転又は枢動してもよい、多軸展開用に構成されてもよい。翼34の回転は、発射体20aの所望の揚力プロファイルに依存してもよい。
【0054】
図6及び7に示すように、発射体20bの別の例示的な実施形態では、翼34は、回転範囲θが1つだけ生じる単軸回転用に構成されてもよい。翼34は、図6に示す折り畳み位置34aから、翼34の最終展開位置であってもよい、図7に示す展開位置34bまで、取り付け点35を中心として枢動してもよい。翼34は、少なくとも90度枢動してもよいが、翼34は、用途に応じて、90度を超え又は未満で枢動してもよい。翼34の平面は、回転範囲θの回転面内に延びてもよい。翼34が単軸回転すると仮定すると、翼34は、折り畳み位置34aおよび展開位置34bの両方において同一平面内に配向される。この平面は、翼34の回転面と同一平面である。図6及び7に示すのと同じ展開動作を受ける2つ以上の翼が設けられてもよい。
【0055】
図8及び9に示すように、発射体20cのさらに別の例示的な実施形態では、翼34は、第1の翼部42及び第2の翼部44によって形成されてもよい。翼部42、44は、翼34が図8に示す折り畳み位置34aにある場合に、インレット26(図1に示す)を閉じるか又は形成するために、互いに係合可能である。発射体20cの初期の飛行範囲又は推進段階の後で、翼部42、44のそれぞれは、単一の回転範囲θを有してもよい。単一の回転範囲θ中に、翼部42、44は、図8に示す折り畳み位置34aから図9に示す展開位置34bまで移動する場合に、互いに反対回転方向に回転し、インレット26を離脱して、開く。
【0056】
翼部42、44のそれぞれは、用途に応じて、少なくとも90度、又は90度超えて、又は未満で、回転してもよい。翼部42、44のそれぞれの平面39は、翼部42、44が、折り畳み位置34aおよび展開位置34bの両方で同一平面内に配向されるように、回転範囲θの回転面内に延びてもよい。各翼部42、44は、別個の取り付け点35a、35b及び別個のヒンジ機構を有してもよい。あるいは、翼部42、44は、取り付け点及びヒンジ機構を共有してもよい。図8及び9に示すのと同じ展開動作を受ける2つ以上の翼が、提供されてもよい。図9に示すように、各翼34は、2つの係合可能な翼部42、44によって形成されてもよい。他の例示的な実施形態では、翼部42、44は、また、図4及び5に示すように、二軸又は多軸回転するように構成されてもよい。
【0057】
ここで、図10を参照すると、発射体を操作する方法50を示している。方法50は、図1~9のいずれかに示す発射体20、20a、20b、20cを操作するために使用されてもよい。方法50の第1のステップ52は、発射体20、20a、20b、20cの初期の飛行範囲の最中に、発射体20、20a、20b、20cの推進体部22の推進システム内の推進エンジンを燃焼させること、を含む。方法50のステップ54は、初期の飛行範囲の最中に、推進エンジンにおける燃焼のために、推進体部22と、推進体部22に対して折り畳み位置に配置された少なくとも1つの翼34との間に形成されたインレット26を通して、空気を吸入することを含む。
【0058】
方法50のステップ56は、初期の飛行範囲に対する後続の飛行範囲の最中に推進エンジンが燃え尽きた後で、翼34を、折り畳み位置から、翼34が推進体部22から外側に延びてインレット26を開く展開位置まで、展開することを含む。翼34を、図4~9のいずれかに示すように展開してもよい。方法50のステップ58は、展開位置にある少なくとも1つの翼34を介して、発射体20、20a、20b、20c用の揚力を生成することを含む。
【0059】
翼をインレットおよび揚力面の両方として使用することは、発射体の構成が空気吸込式推進システムの利点を維持して飛行時間を最小限に抑えながら、一方で、翼が機体の揚力面になることで、既存のインレットの表面積を使用して射程を延ばす、という点で有利である。例示的な用途では、本明細書に記載の二重機能翼を使用する発射体は、約160キロメートルの最大射程及びマッハ1.8の速度を有し得る。対照的に、翼のみの発射体の変形は、約140キロメートルの最大射程及びマッハ0.4の速度を有し、ラムジェットのみの発射体の変形は、約120キロメートルの最大射程及びマッハ2.0の速度を有する。このように、本願による発射体は、改善の目標範囲及び最適な飛行時間を有する。
【0060】
本開示は、特定の好ましい実施形態(複数可)を示して、説明するが、当業者であれば、本明細書及び添付図面を読み取り、理解すると、同等の変更及び修正を行うことが可能であることが明らかである。特に、上記各構成要素(外付け部品、組立部品、装置、構成部品、等)によって実現される様々な機能については、これらの要素を説明するために用いられる用語(「手段」への参照を含む)は、特に明示した場合を除き、ここで説明した例示的な実施形態又は本開示の実施形態において機能を実現する開示の構造と、構造的に等価ではないが、記載された要素(即ち、機能的に等価)の特定の機能を実現する要素に対応すること、を意図している。また、本開示の特定の特徴は、いくつかの説明した実施形態のうちの1つのみ又は複数に関して、以上のように開示されてもよいが、一方で、このような特徴は、任意の所与の又は特定の応用にとって所望及び有利であるように、他の実施形態の1つ又は複数の他の特徴と組み合わされてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】