IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オッドリーグッド・グローバル・オサケユフティオの特許一覧

特表2023-551337非乳製品チーズの製造方法、および非乳製品チーズ
<>
  • 特表-非乳製品チーズの製造方法、および非乳製品チーズ 図1
  • 特表-非乳製品チーズの製造方法、および非乳製品チーズ 図2A
  • 特表-非乳製品チーズの製造方法、および非乳製品チーズ 図2B
  • 特表-非乳製品チーズの製造方法、および非乳製品チーズ 図3
  • 特表-非乳製品チーズの製造方法、および非乳製品チーズ 図4
  • 特表-非乳製品チーズの製造方法、および非乳製品チーズ 図5
  • 特表-非乳製品チーズの製造方法、および非乳製品チーズ 図6
  • 特表-非乳製品チーズの製造方法、および非乳製品チーズ 図7A
  • 特表-非乳製品チーズの製造方法、および非乳製品チーズ 図7B
  • 特表-非乳製品チーズの製造方法、および非乳製品チーズ 図7C
  • 特表-非乳製品チーズの製造方法、および非乳製品チーズ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】非乳製品チーズの製造方法、および非乳製品チーズ
(51)【国際特許分類】
   A23C 20/02 20210101AFI20231130BHJP
【FI】
A23C20/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533344
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 FI2021050814
(87)【国際公開番号】W WO2022117916
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】20206230
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521510958
【氏名又は名称】オッドリーグッド・グローバル・オサケユフティオ
【氏名又は名称原語表記】Oddlygood Global Oy
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】レフトネン,カイテュ-マリン
(72)【発明者】
【氏名】マキネン,オウティ
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC03
4B001AC05
4B001AC15
4B001AC25
4B001AC30
4B001AC32
4B001AC43
4B001AC46
4B001AC99
4B001BC08
4B001BC14
4B001BC99
4B001EC04
4B001EC05
4B001EC99
(57)【要約】
本発明は食品技術の分野に関する。本発明は、食用の植物ベースの食品、特に乳製品代替製品として適した非乳製品チーズ、その製造方法、およびそれに関連する使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a.水、非乳タンパク質、植物性油脂を含む均質化されたエマルジョンを提供すること、
b.該均質化エマルジョンを約60℃~約160℃の温度で約30秒~30分間熱処理して、熱処理エマルジョンを得ること、
c.熱処理エマルジョンを酸性化して酸性化エマルジョンを得ること、
d.酸性化エマルジョンを酵素処理して、酵素処理された植物ベースのチーズカードを得ること、
e.チーズカードを約4℃~約45℃の温度で8~12時間冷却および硬化させて、固化した植物ベースのチーズカードを得ること、
f.固化したチーズカードをチーズ型の中で一体にプレスすることによってホエイを排出すること、および
g.プレスされたチーズカードを型から取り出して、乳製品を含まないチーズブロックを得ること、
を含むことを特徴とする、非乳製品チーズの製造方法。
【請求項2】
非乳タンパク質の供給源がタンパク質分離物またはタンパク質濃縮物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非乳タンパク質は、組換え生産されたタンパク質および組換え株を使用して生産されたタンパク質が含まれる、植物タンパク質、昆虫タンパク質、藻類タンパク質、および細菌タンパク質、真菌タンパク質および酵母タンパク質などの微生物タンパク質からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
非乳タンパク質が植物タンパク質、好ましくはマメ科タンパク質であり、好ましくはマメ科タンパク質がソラマメおよびエンドウから選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
タンパク質が粉末形態であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
均質化されたエマルジョンが、工程b.において、60℃~78℃の温度、好ましくは75℃の温度で熱処理に供されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
脂肪、多糖類、糖類または他の発酵性炭水化物、香料、着色料、強化成分、保存料、抗酸化剤および塩からなる群から選択される1つまたは複数のさらなる成分が添加されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
発酵性炭水化物が、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、マルトトリオース、ラフィノース、スタキオース、ベルバスコース、ケストース、ガラクトース、メリビオース、セロビオース、リボース、ツラノース、キシロース、ラムノース、アラビノース、トレハロース、イヌリン、およびイノシトールを含む添加された炭水化物、内因性炭水化物、原料の加水分解によって形成された炭水化物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
油脂が、キャノーラ、ココナッツ、シア、ヒマワリの種などの植物性油脂、藻類由来の油脂、微生物源由来の油脂、組換え株を使用して生成された油脂からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
グループ。
【請求項10】
多糖類が、ジェラン、寒天、カラギーナン、ペクチン、キサンタン、またはデンプンなどの、植物、藻類または微生物由来のゲル化多糖類または他のテクスチャー形成多糖類からなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
工程c.において、酸性化が微生物学的または化学的に行われることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程c.において、熱処理エマルジョンにスターター培養物を添加し、30℃~50℃の温度、より好ましくは35℃~45℃の温度、好ましくは45℃の温度で、15分間~1時間、好ましくは30分間、pH4~pH7、好ましくはpH5.8~6.8、より好ましくはpH6.0~pH6.5のpHでインキュベートすることによって酸性化が行われることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程d.における酵素処理が、トランスグルタミナーゼ、チロシナーゼ、カテコールオキシダーゼおよびラッカーゼからなる群から選択される架橋酵素、ここで、好ましくは、架橋酵素はトランスグルタミナーゼである、を使用して行われることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程d.における酵素処理が30℃~50℃の温度で行われ、酸性化エマルジョンがトランスグルタミナーゼ、チロシナーゼ、カテコールオキシダーゼおよびラッカーゼからなる群から選択される架橋酵素、ここで、好ましくは架橋酵素はトランスグルタミナーゼである、を使用する酵素処理に供されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程d.における酵素処理が30℃~50℃の温度で行われ、酸性化エマルジョンがトランスグルタミナーゼによる酵素処理に供されることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
架橋酵素の量が約0.01~1.0重量%、好ましくは0.05~0.8重量%、より好ましくは0.01~0.5重量%、最も好ましくは0.5重量%の架橋酵素であることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
酵素処理された植物ベースのチーズカードを2時間かけてpH4.5~5.9まで凝固させることを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
チーズカードの冷却および硬化が、約4℃~約6℃の温度で8~12時間、好ましくは12時間行われ、固化した植物ベースのチーズカードを得ることを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の方法で得られる非乳製品ベースのチーズブロック。
【請求項20】
約5~30重量%、好ましくは約6~25重量%、より好ましくは約10~20重量%、最も好ましくは12~18重量%、さらに最も好ましくは14重量%の植物性タンパク質、
約5~30重量%、好ましくは約10~20重量%、より好ましくは約15重量%の植物性油脂、及び
約40~70重量%、好ましくは約50~66重量%、より好ましくは53~57重量%の水、
を含むことを特徴とする、非乳製品ベースのチーズブロック。
【請求項21】
約1~5重量%、好ましくは2~4重量%、より好ましくは3重量%の砂糖、
約0.0~2.0重量%、好ましくは0.5重量%の塩、
約0.001~1.0重量%、好ましくは0.01~0.25重量%、より好ましくは0.1重量%の酸化防止剤、
約0.05~1.0重量%、好ましくは0.08~0.5重量%、より好ましくは0.1重量%のスターター培養物、および
約0.01~1.0重量%、好ましくは0.05~0.8重量%、より好ましくは0.01~0.5重量%、0.5重量%の架橋酵素、
約0.1~0.5重量%、好ましくは0.2重量%の香料、および
約0.5~2.0重量%、好ましくは1.5重量%の食用色素、
からなる群から選択される成分をさらに含むことを特徴とする、請求項20に記載の非乳製品ベースのチーズブロック。
【請求項22】
14重量%の非乳タンパク質、65.1重量%の水、15重量%の植物性脂肪、3重量%の砂糖、0.5重量%の食塩、0.1重量%のアスコルビン酸、0.1重量%のスターターカルチャー、0.5重量%の架橋酵素、0.2重量%の香料、および1.5重量%の食用色素、を含むことを特徴とする、請求項20または21に記載の非乳製品ベースのチーズブロック。
【請求項23】
チーズブロックが、5,000~40,000g、好ましくは20,000~30,000g、より好ましくは26,000gの硬度、0.3~0.9、好ましくは0.6~0.9、より好ましくは0.8のバネ性、および2,000~14,000、好ましくは8,000~12,000、より好ましくは11,785の粘着性、を有することを特徴とする、請求項20~22のいずれか一項に記載のチーズブロック。
【請求項24】
チーズブロックが、20,000~30,000g、より好ましくは26,000gの硬度、0.6~0.9、より好ましくは0.8のバネ性、および8,000~12,000、より好ましくは11,785の粘着性、を有することを特徴とする、請求項23に記載のチーズブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品技術の分野に関する。本発明は、食用の植物ベースの食品、特に乳製品代替製品として適した非乳製品チーズ、その製造方法、およびそれに関連する使用に関する。
【背景技術】
【0002】
乳糖不耐症や乳タンパク質に対するアレルギーなどの理由で、乳製品を避ける必要がある人もいる。さらに、自発的にベジタリアンまたはビーガンの食事を好む消費者の数も増加している。植物ベースの代替食品は、再生可能資源を利用することで持続可能な開発を確実にするのに役立つため、環境の観点からも有益である。
乳製品のさまざまな代替品が市場に導入されており、植物ベースの製品など、そのような乳製品の代替品または乳製品の置き換え品に対する需要が高まっている。
【0003】
非乳製品チーズは通常、他の成分に加えて、デンプン、脂肪またはナッツペースト、低温セット多糖類から製造される。また、他の成分(例えば、香料、砂糖、安定剤など)や少量のタンパク質も使用される。一般的なプロセスは以下のとおり:成分を混合し、塊を加熱し、型または最終包装中で塊をセットさせる(US20190037872A1;US20180000105A1;US2017/0172169A1)。
【0004】
ミンテルのグローバル新製品データベースには、2018年4月から2020年4月の間に発売された269件のビーガンチーズ代替製品(ブロック、スライス、シュレッド)が見つけられる。これらのうち、233の製品はデンプンと飽和脂肪をベースにしており、タンパク質含有量は2%未満含まれており、27の製品はナッツペーストをベースにしており、タンパク質が2~16%含まれており、5つは主にデンプンと脂肪をベースにしており、タンパク質が豊富な粉末が追加されているため、わずかに多くのタンパク質が含まれており、2つは飽和脂肪ベースで、豆腐と大豆タンパク質からのタンパク質を多く含んでいた(タンパク質と脂肪の比率1:3)。
【0005】
デンプンベースの非乳製品チーズの例は、Valio OddlyGoodチーズである。OddlyGoodチーズの製造プロセスを図1に示す。脂肪、でんぷん、水、および微量成分を混合し、調理し、冷却し、沈降させ、切断し、包装する。このようなデンプンベースの製品の組成は、タンパク質と脂肪で構成される乳製品チーズに匹敵しない。デンプンベースのチーズ代替品は、栄養成分が乏しいことに加えて、ゴムのような口当たりなどの不快な感覚的特徴があることが知られており、多くの熱心なビーガンさえこれらの製品を避けている。他の乳製品の模造品(ヨーグルト、牛乳、アイスクリーム)とは異なり、チーズ様食品は、主流で受け入れられるのに必要な感覚的品質にまだ達していない:ミンテルの報告によると、非乳製品チーズは、他の乳製品サブカテゴリと比較して、乳製品相当品に対する消費者の認識に最大のギャップをもたらしている(Mintel 2019)。
【0006】
広く知られ、さまざまな料理本で出版されている非乳製品チーズを製造する別の方法は、ナッツペーストを寒天または他のゲル化多糖類でセットさせる方法である。伝統的なタンパク質ベースの豆腐(豆腐やベスケ(beske)など)は、豆乳を加熱し、塩で凝固させ、チーズクロスまたはふるいを使用して粒状のカードを圧縮してホエイを排出することによって製造される(Oyeyinka et al., 2019)。絹ごし豆腐タイプのカードは最終包装時に凝固し、プレスされないため、非常に繊細なゲルが得られる。トランスグルタミナーゼで凝固させたパック豆腐が特許取得済み(US6042851A)である。豆腐は感覚的にはチーズに似ておらず、料理の材料として連想される。ナッツペーストベースの「職人製(artisan)」チーズは小規模生産者から入手でき、特にソフトチーズ模造品が一般に優れていると考えられている。このような製品の価格は非常に高くなる可能性があります(たとえば、Juustotytot(フィンランド)のカシューナッツベースのブリータイプチーズの価格は80ユーロ/kg、Uncreamery(米国)のClassic Brieの価格は71ドル/kg)である。ナッツはアレルゲンであるため、ナッツアレルギーのある消費者は使用できない。また、アレルゲンの取り扱いや相互汚染のリスクにより生産が複雑になるため、他のさまざまな製品を生産する工場ではナッツ原料を使用できる可能性が限られている。
【0007】
タンパク質を架橋酵素でゲル化することで、タンパク質ベースの非乳製品チーズの製造が可能になる。得られた非乳製品チーズカードは、乳製品チーズと同様に加工される:すなわち、カードを切断および加熱し、カード顆粒を型に移し、プレスする。ホエイを十分に排出するには、高圧下で非常に長い処理時間(24時間)が必要である(EP2731451B1/US9011949B2)。「植物由来のレンネット」を使用した同様のプロセスが特許取得されている(EP3366144A1)。カードを破壊した後に連続した強力な構造を得るのは難しいため、これらの特許に記載されている方法は、ヤギチーズやリコッタチーズタイプのようなソフトチーズの模造品の製造に適している。植物性タンパク質で作られたタンパク質ベースのチーズ模造品にも、豆のような風味、ボール紙のような風味、苦い風味などの不快な異臭があり、微生物による熟成だけでは取り除くことができない。
【0008】
特許出願(WO2019133679A2)では、高アシルジェランガムを使用して適切な圧縮特性を備えたタンパク質ベースの構造を作製するための配合物が記載されている。このプロセスは、タンパク質、デンプン、ジェランガムを含む混合物を調理するものと思われ、乳製品のチーズのように加工されるものではない。他の特許出願(CA3058199A1)には、乳酸菌で発酵させた非乳製品ミルクを他の成分(デンプン、ガム、油)と混合し、乳化し、高せん断下で加熱するプロセスが記載されている。圧縮率が向上したとしても、これらの製品には他のデンプンベースのチーズ模造品と同じ制限がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、植物ベースの乳製品代替製品、特にチーズを製造する従来技術に関連する問題を克服することである。
【0010】
乳製品チーズの製造プロセスでは、牛乳をレンネットで凝固させ、その結果得られるカードと呼ばれる弱く高水分のゲルを細かく切断して、ゲルのネットワークから液体(ホエイ)を排出する。ゲルネットワークからホエイが除去されると、カードの機械的強度が増加し、チーズ型内で高圧を適用できるようになり、その結果、チーズ、特にセミハードチーズに典型的な強くて弾力のある構造が得られる。
【0011】
非乳タンパク質および植物性油脂またはからセミハードまたはハードチーズ様食品を加工する場合、十分なホエイ排出には高圧下で非常に長い加工時間が必要であることが判明した。さらに、そのようなハードな加工条件および加工時間であっても、セミハードまたはハードのスライス可能な乳製品チーズに似た植物ベースのチーズの良好なチーズテクスチャーは得られなかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従来技術に関連する上述の問題は、本開示において克服される:カード形成中にカード/塊を切断せずにチーズ塊全体またはチーズカードをプレスすることと、ホエイ排出との関連で、ホエイ排出中常にカード内の連続的なゲルネットワークが維持され、その結果、高密度で弾力性があり、滑らかで切断可能な黄色の乳製品チーズの官能的な質感の特性によく似た構造が得られる。得られた非乳製品チーズ模造品は硬度が高く、ホエイ排水中の乾物の損失が明らかに5%未満少ない可能性がある。処理時間も比較的短く、通常の24時間から6時間に短縮され、処理工程が1つ、すなわちホエイ排水中のカードの切断工程が省略される。
【0013】
したがって、本発明は、非乳製品チーズを製造する方法に関し、その方法は以下の工程:
a.水、非乳タンパク質および植物性油脂を含む均質化されたエマルジョンを提供すること、
b.該均質化エマルジョンを約60℃~約160℃の温度で約30秒~約30分間熱処理して、熱処理エマルジョンを得ること、
c.熱処理エマルジョンを酸性化して酸性化エマルジョンを得ること、
d.酸性化エマルジョンを酵素処理して、酵素処理された植物ベースのチーズカードを得ること、
e.チーズカードを約5℃~約45℃の温度で8~12時間冷却および硬化させて、固化した植物ベースのチーズカードを得ること、
f.固化したチーズカードをチーズ型の中で一体にプレスすることによってホエイを排出すること、および
g.プレスされたチーズカードを型から取り出して、乳製品を含まないチーズブロックを得ること、
を含む。
【0014】
本発明はまた、本発明の方法で得られる非乳製品ベースのチーズにも関する。
【0015】
植物性タンパク質に典型的な異臭を抑えるために、微生物発酵、pH最適化、酸化防止剤、およびホエイ排水中に製品から不要な風味化合物を洗い流すことが組み合わせて使用される。これらの方法を組み合わせることで、マイルドな風味と明るい色の食品が得られる。
【0016】
本発明の方法では、従来技術の方法(図3)のように凝固後にチーズ塊を小片に切断するのではなく、冷蔵室で一晩冷却して硬化させ、翌日塊を切断せずにプレスする。硬化したチーズブロックを凝固型から取り出し、プレス型に入れる。チーズブロックを6時間プレスし、型から取り出し、塩水で塩漬けする。
【0017】
したがって、本方法は、緻密な構造を得るために、より短いプレス時間を利用する。さらに、ホエイの分離によって失われる乾物も少なくなり、より多くの乾物がチーズ中に保持されることになる。本発明のプロセスを図4に示す。
【0018】
本発明の利点は図5および図6に示されており、切断せずにプレスする利点はより高い硬度とより高い乾物含量であることが示されている。乳製品チーズに匹敵する硬さは、既知の方法では24時間必要であったところ、6時間で達成できる。切断工程を行わずにプレス時間を短くすることで、密度が高く、スライス可能で、乳製品のチーズに似たより良い構造が得られた。さらに、ホエイの分離に伴う乾物の損失は、切断工程プロセスを行わずに長いプレス時間で行った場合と比較して少なかった。
【0019】
本発明の特徴は、特許請求の範囲に規定される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、デンプンベースの非乳製品チーズの製造プロセスを示す。
図2A図2Aは、カードカット後にプレスされた非乳製品チーズを示す。
図2B図2Bは、カードを切断せずにプレスされた非乳製品チーズを示す。
図3図3は、タンパク質ベースのチーズの製造プロセスを示す。
図4図4は、本発明のプロセスの一実施形態のプロセススキームを示す。
図5図5は、TA.XT テクスチャー分析によって測定された、さまざまなプレス時間と方法でのチーズの硬さを示す。
図6図6は、さまざまな圧搾方法による非乳製品チーズの乾物含有量を示す。
図7A図7A~7Cは、本プロセスを使用して製造されたチーズと従来技術を使用して製造されたチーズとの官能比較を示す(n=13)。脂肪分24%のセミハード乳製品チーズを参照として使用した。参照となる乳製品チーズが常に最初に試食され、次に植物ベースのチーズがランダムな順序で試食された。評価項目は「参照と比較した食感・口当たり」および「参照と比較した密度・弾力」である。本開示のプロセスを使用して生成されたサンプルは、両方の属性において乳製品基準に近いスコアを示した。図7Aは、官能評価サンプルa)従来技術、b)現在のプロセス、c)参照乳製品チーズを示す。
図7B図7Bは、食感/口当たりの結果を示す。スコア100=参照と比較してまったく異なる、スコア0=参照と同一。
図7C図7Cは密度/弾性を示す。スコア100=参照よりもはるかに高密度、0=参照と同様、-100=参照よりもはるかに脆い。
図8図8は、本発明に従って凝固され、プレスされた植物ベースのチーズ(右側の山のシュレッドチーズ)と、ホエイ排出中およびチーズプレス型でカードをプレスする前にカードを切断して伝統的に調製された植物ベースのチーズ(左側の山のシュレッドチーズ)とのテクスチャー特性および機械的特性の違いを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
本明細書および特許請求の範囲において、以下の単語および表現は、以下に定義される意味を有する。
【0022】
「非乳製品タンパク質」または「乳製品を含まないタンパク質」は、植物性タンパク質(plant protein)または植物性タンパク質(vegetable protein)、昆虫タンパク質、藻類タンパク質、細菌タンパク質、真菌タンパク質、および酵母タンパク質などの微生物タンパク質、ならびに組換えにより生産されたタンパク質、または組換え株を使用して生産されたタンパク質からなる群から選択される。
【0023】
「植物ベースの食品」とは、ヨーグルト、飲むヨーグルト、クレームフレッシュ(creme fraiche)またはサワークリーム、サワーミルク、クワルク、クリームチーズ(フィラデルフィアタイプのソフトチーズ)、セットタイプのヨーグルト、スムージーまたはプリンなどの伝統的な乳製品ベースの製品など、発酵、酸性化、または非酸性(中性)食品を指し得る。本開示において、「植物ベースの食品」は、特にチーズである。
【0024】
「植物ベース」とは、食品技術用途における食用製品の製造に適した植物由来のことを指す。本発明の製品および方法に適した植物ベースの原料は、乾燥および新鮮な豆、大豆、乾燥および新鮮なエンドウ豆、レンズ豆、ひよこ豆およびピーナッツなどのマメ科植物から選択される少なくとも1つの植物からのものであり得、より好ましくは、ソラマメおよびエンドウから選択され、最も好ましくはソラマメから選択される。
【0025】
「マメ科植物(legume)」または「マメ科植物(leguminous plant)」とは、マメ科(family Fabaceae)(またはマメ科(Leguminosae))に属する植物を指し、その科はマメ科(legume)、エンドウ科、またはマメ科(bean family)として一般に知られている。該科は顕花植物の大科である。マメ科植物は、マメ科植物の果実または種子も指す。種子はパルスとも呼ばれる。マメ科植物には、例えば、アルファアルファ(Medicago sativa)、クローバー(Trifolium spp.)、エンドウ豆(Pisum)、豆(Phaseolus spp.、Vigna spp.、Vicia spp.)、ひよこ豆(Cicer)、レンズ豆(Lens)、ルピナス(Lupinus spp.)、メスキート(Propsis spp.)、イナゴマメ(Ceratonia siliqua)、大豆(Glycine max)、ピーナッツ(Arachis Hypogaea)、ベッチ(Vicia)、タマリンド(Tamarindus indica)、クズ(Pueraria spp.)、およびルイボス(Aspalathus linearis)が含まれる。マメ科植物は、植物学的にユニークなタイプの果物、つまり単純な心皮から発生し、通常は両側で裂開(縫い目に沿って開く)する単純なドライフルーツを生成する。
【0026】
「タンパク質分離物」と「タンパク質濃縮物」という用語は、タンパク質の量の点で異なる。これらの違いは処理方法によって発生する。「タンパク質濃縮物」粉末は、重量の最大80%のタンパク質で構成されている。濃縮粉末の残り20%には炭水化物と脂肪が含まれる。脂肪と炭水化物の含有量を減らすためにさまざまな加工ステップを使用すると、重量で90%以上のタンパク質を含む「タンパク質分離物」粉末を製造できる。全体として、分離物の生産に使用される処理ステップにより、タンパク質含有量が増加し、脂肪と炭水化物含有量が減少する。ただし、両方の形態のホエイに含まれるアミノ酸の種類は、同じタンパク質に由来しているため、実質的に同じである。
【0027】
「高タンパク質成分」とは、タンパク質/乾物あたり約70%を超えるタンパク質含有量を有する、タンパク質が豊富な成分を指す。好ましくは、高タンパク質成分は、(N×6.25)で、約90%タンパク質/乾物、好ましくは少なくとも約100%タンパク質/乾物、を超えるタンパク質含量を有する分離物である。
【0028】
「スターター培地」とは、発酵を行う微生物の培地のことである。スターターは通常、発酵に使用される微生物が十分に定着した栄養液などの培養培地で構成される。
【0029】
発明の詳細な説明
チーズ製造プロセスでは、牛乳をレンネットで凝固させ、その結果得られる弱く高水分のゲル(カード)を小片に切断して、ゲルのネットワークから液体(ホエイ)を排出する。ゲルネットワークから液体が除去されると、カードの機械的強度が増加し、高圧を適用できるようになり、その結果、チーズに典型的な強力で弾性のある構造が得られる。
【0030】
乳製品チーズは、動的で非共有結合的に架橋されたシステムであり、熟成中に最終構造を形成する。これらの構造変化には、カゼインのより厚い繊維への融合や部分的な脂肪球の合体が含まれる。その結果、カード顆粒は融合して固体の弾性構造になる。非乳製品チーズの製造では、このような融合は起こらず、カードの切断と圧搾によって得られるチーズの構造はもろい、または砂状のままで柔らかいため、乳製品のチーズのようにスライスすることはできない(図1)。
【0031】
チーズ様食品を調製するための既知の方法は、製造時に十分なホエイ排水のために高圧下で非常に長い処理時間(24時間)を必要とする。また、そのような加工を行っても、硬くてスライス可能な乳製品チーズに似た食感は得られない。既知の方法は、ソフトチーズの模造品(ヤギのチーズ、カビで熟成させたチーズ、またはリコッタチーズタイプ)の製造にはより適しているが、ハードでスライス可能なチーズには適していない。
【0032】
本発明者らは、従来技術に関連する上述の問題が本開示において克服されることを見出した。ホールチーズを切断せずにプレスすると、ホエイ排出全体にわたって連続的なゲルネットワークが保存され、その結果、黄色の乳製品チーズの官能的な質感特性によく似た、緻密で弾力性があり、滑らかで切断可能な構造が得られる(図2b)。得られた非乳製品チーズ模造品は、硬度が高く(図5)、ホエイ排水中の乾物の損失が5%少なくなっている(図6)。処理時間も24時間から6時間に短縮され、処理ステップが1つ削減され、プロセスがより経済的になる。
【0033】
本開示は、以下の工程:
a.水、非乳タンパク質および植物性油脂を含む均質化されたエマルジョンを提供すること、
b.該均質化エマルジョンを約60℃~約160℃の温度で約30秒~30分間熱処理して、熱処理エマルジョンを得ること、
c.熱処理エマルジョンを酸性化して酸性化エマルジョンを得ること、
d.酸性化エマルジョンを酵素処理して、酵素処理された植物ベースのチーズカードを得ること、
e.チーズカードを約5℃~約45℃の温度で8~12時間冷却および硬化させて、固化した植物ベースのチーズカードを得ること、
f.固化したチーズカードをチーズ型の中で一体にプレスすることによってホエイを排出すること、および
g.プレスされたチーズカードを型から取り出して、乳製品を含まないチーズブロックを得ること、
を含む非乳製品チーズの製造方法に関する。
【0034】
本発明の一実施形態では、非乳製品チーズの製造方法は、以下の工程:
a.水と、非乳タンパク質を含む少なくとも1つの非乳ベースの原材料とを混合して、水性タンパク質懸濁液を得ること、
b.植物性油脂を水性タンパク質懸濁液に混合すること、
c.該水性タンパク質懸濁液と植物油脂を均質化してエマルジョンを得ること、
d.該均質化エマルジョンを約60℃~約160℃の温度で約30秒~30分間熱処理して、熱処理エマルジョンを得ること、
e.熱処理エマルジョンを酸性化して酸性化エマルジョンを得ること、
f.酸性化エマルジョンに架橋酵素を添加し、30℃~50℃の温度でインキュベートすることにより酵素処理を施し、酵素処理された植物ベースのチーズカードを得ること、
g.酵素処理された植物ベースのチーズカードを約5℃~約45℃の温度で8~12時間硬化させて、固化した植物ベースのチーズカードを得ること、
h.チーズ塊からホエイを排出するためにプレス型に切り込まずにカードを一体にセットすること、
i.チーズ塊を型内で24時間未満、好ましくは4~6時間、5~12バール、好ましくは9バールでプレスすること、
j.塩漬けすること、および
k.乳製品を使用していないチーズブロックを得ること、
を含む。
【0035】
上記のステップa.~k.は、連続して実行されてもよい。
【0036】
本発明のプロセスの一実施形態では、非乳製品ベースのタンパク質は、タンパク質分離物およびタンパク質濃縮物から選択される。タンパク質分離物およびタンパク質濃縮物はタンパク質の調製物である。
【0037】
一実施形態では、非乳タンパク質は、植物性タンパク質、昆虫タンパク質、藻類タンパク質、細菌タンパク質、真菌タンパク質、および酵母タンパク質などの微生物タンパク質、ならびに組換え生産されたタンパク質および組換え株を使用して生産されたタンパク質からなる群から選択される。
【0038】
一実施形態によれば、非乳タンパク質は植物性タンパク質、好ましくはマメ科タンパク質であり、好ましくはマメ科タンパク質はソラマメおよびエンドウから選択される。本発明の製品および方法に適した植物ベースの原料は、乾燥および新鮮な豆、大豆、乾燥および新鮮なエンドウ豆、レンズ豆、ひよこ豆およびピーナッツなどのマメ科植物、より好ましくはソラマメおよびエンドウ、最も好ましくはソラマメから選択される少なくとも1つの植物に由来し得る。
【0039】
一実施形態では、タンパク質は粉末の形態である。
【0040】
典型的には、均質化は、100~400バールの圧力で、好ましくは125~300バールの圧力で、より好ましくは150バールの圧力で行われる。圧力は、100、125、150、200、250、300、350、または400バール、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲内であり得る。
【0041】
典型的には、均質化されたエマルジョンは、約60℃~約160℃、好ましくは約60℃~約78℃、より好ましくは75℃の温度で熱処理に供される。熱処理は、約30秒~約30分間、好ましくは5分間行われ、熱処理懸濁液が得られる。好ましくは、均質化されたエマルジョンを約60℃~約160℃の温度で約30秒~30分間熱処理して、熱処理エマルジョンを得る。一般に、温度が高いほど、熱処理に必要な時間は短くなる。
【0042】
熱処理は、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、または160℃の温度、またはこれらのいずれか2つの値によって定義される範囲で実施することができる。熱処理は、30秒間、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、または30分間、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲で実施することができる。
【0043】
一実施形態では、脂肪、多糖類、糖類、または他の発酵性炭水化物、香料、食用色素、強化成分、保存料、酸化防止剤および塩からなる群から選択される1つまたは複数のさらなる成分が添加される。
【0044】
一実施形態では、発酵性炭水化物は、添加された炭水化物、内因性炭水化物、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、マルトトリオース、ラフィノース、スタキオース、ベルバスコース、ケストース、ガラクトース、メリビオース、セロビオース、リボース、ツラノース、キシロース、ラムノース、アラビノース、トレハロース、イヌリン、イノシトールなどの原料の加水分解によって形成される炭水化物からなる群から選択される。
【0045】
一実施形態では、油脂は、キャノーラ、ココナッツ、シア、およびヒマワリの種などの植物由来の油脂、藻類由来の油脂、微生物源由来の油脂、および組換え株を使用して生成された油脂からなる群から選択される。
【0046】
一実施形態では、多糖類は、ジェラン、寒天、カラギーナン、ペクチン、キサンタン、およびデンプンなどの、植物、藻類または微生物由来のゲル化またはテクスチャー形成多糖類からなる群から選択される。
【0047】
一実施形態では、酸性化は微生物学的または化学的に行われる。
【0048】
一実施形態では、酸性化は、熱処理されたエマルジョンにスターター培養物を添加し、30℃~50℃の温度、より好ましくは35℃~45℃の温度、好ましくは45℃の温度で、15分~1時間、好ましくは30分間、pH4~pH7のpHで、好ましくはpH6~pH6.5のpHでインキュベートすることによって行われる。
【0049】
酸性化は、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49℃、または50℃、または、これらの値のいずれか2つによって定義される範囲内の温度で実行され得る。酸性化は、pH4、4.5、5、5.5、6、6.5または7のpHで、またはこれらの値の任意の2つによって定義される範囲内で実行され得る。
【0050】
スターター培養物は、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス/ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクチス・バイオバー・ジアセチルラクティス、ロイコノストック種からなる群から選択され得る。
【0051】
ロイコノストック種には、例えば、以下:ロイコノストック・メセンテロイデス、ロイコノストック・クレモリス、ロイコノストック・シュードメセンテロイデス、ロイコノストック・ラクティスが含まれる。
【0052】
スターター培養物は:ストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・デルブルエッキー亜種ブルガリクス、ラクトバチルス・アシドフィルスNCFM、ビフィドバクテリウム・ラクティスHN019、ラクトバチルス・デルブルエッキー亜種ラクティス、ラクトバチルス・カゼイ/パラカゼイ、ラクトバチルス・プランタルム、ペディオコッカス・ペントサセウス、スタフィロコッカス・キシロサス、ラクトバチルス・サケイ、スタフィロコッカス・カルノーサス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・カーバトゥス、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・ジョンソニー、ラクトバチルス・ロイテリ、ペディオコッカス・アシディラクティシ、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ、アシディプロピオニバクテリウム・トエニイ、アシディプロピオニバクテリウム・ジェンセニィ、アシディプロピオンバクテリウム・アシディプロピオニシ、ブレビバクテリウム・リネンス、ブレビバクテリウム・オーランティアクム、コリネバクテリウム・カゼイ、コリネバクテリウム・バリアビレ、アースロバクター、マイクロバクテリウム、ペニシリウム・ロックフォルティ、ペニシリウム・カマンベルティ、ペニシリウム・カンディダム、ジェオトリクム・カンディダム、ジェオトリクム・カンディダム、サッカロマイセス・セレビシエ、デバロミセス・ハンセニ、クルイベロミセス・ラクティス、クルイベロミセス・マルシアヌス、ヤロウィア・リポリティカ、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ビフィダムからなる群からさらに選択され得る。
【0053】
好ましくは、スターター培養に使用される微生物は、ラクトバチルス種およびロイコノストック種からなる群から選択される。
【0054】
一実施形態によれば、工程d.の酵素処理は、架橋酵素を使用して実行される。
【0055】
一実施形態によれば、架橋酵素は、トランスグルタミナーゼ、チロシナーゼ、カテコールオキシダーゼおよびラッカーゼからなる群から選択され、好ましくは、架橋酵素はトランスグルタミナーゼである。しかしながら、食品への使用が許可されている他のトランスグルタミナーゼも適用可能である。
【0056】
一実施形態によれば、工程d.の酵素処理は30℃~50℃の温度で行われ、酸性化されたエマルジョンは、トランスグルタミナーゼ、チロシナーゼ、カテコールオキシダーゼおよびラッカーゼからなる群から選択される架橋酵素を使用する酵素処理に供され、好ましくは、架橋酵素はトランスグルタミナーゼである。
【0057】
一実施形態によれば、工程d.の酵素処理は30℃~50℃の温度で行われ、酸性化エマルジョンはトランスグルタミナーゼによる酵素処理に供される。酵素処理は、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50℃、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲内の温度で実施することができる。
【0058】
一実施形態では、架橋酵素の量は、約0.01~1.0重量%、好ましくは0.05~0.8重量%、より好ましくは0.01~0.5重量%、最も好ましくは0.5重量%の架橋酵素である。架橋酵素の量は、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、もしくは1.0重量%、あるいはこれらの値の任意の2つによって定義される範囲であってよい。
【0059】
一実施形態では、酵素処理ベースのチーズカードの硬化または固化は、好ましくは約5℃~約45℃の温度で8~12時間実行され、固化した植物ベースまたは非乳製品のチーズカードが得られる。カードは、チーズ塊からホエイを排出するためにプレス型にカットすることなく、一体化される。固化は、8、9、10、11、12時間、またはこれらの値の任意の2つによって定義される範囲で実行できる。
【0060】
一実施形態では、チーズ塊は、5~12バール、好ましくは9バールで、24時間未満、好ましくは4~6時間、型内でプレスされる。塊は、5、6、7、8、9、10、11、または12バール、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲でプレスできる。
【0061】
プレスされたチーズ塊に対して塩漬けが行われ、非乳製品ベースのチーズブロックが得られる。
【0062】
一実施形態において、本開示は、非乳製品チーズを製造するためのプロセスに関し、このプロセスは、以下の工程:
a.水、非乳タンパク質、植物性油脂を含む均質化されたエマルジョンを提供すること、
b.該均質化エマルジョンを約60℃~約160℃の温度で約30秒~約30分間熱処理して、熱処理エマルジョンを得ること、
c.熱処理エマルジョンを酸性化して酸性化エマルジョンを得ること、
d.酸性化エマルジョンを酵素処理して、酵素処理された植物ベースのチーズカードを得ること、
e.チーズカードを約5℃~約45℃の温度で8~12時間冷却および硬化させて、固化した植物ベースのチーズカードを得ること、
f.固化したチーズカードをチーズ型の中で一体にプレスすることによってホエイを排出すること、およびプレスされたチーズカードを型から取り出して、乳製品を含まないチーズブロックを得ること、
を含む。
【0063】
一実施形態において、本開示は、非乳製品チーズを製造するためのプロセスに関し、このプロセスは、以下の工程:
a.水、非乳製品の植物ベースのタンパク質、植物性油脂を含む均質化されたエマルジョンを提供すること、
b.該均質化エマルジョンを約60℃~約160℃の温度で約30秒~約30分間熱処理して、熱処理エマルジョンを得ること、
c.熱処理エマルジョンを酸性化して酸性化エマルジョンを得ること、
d.酸性化エマルジョンをトランスグルタミナーゼによる酵素処理に供して、酵素処理された植物ベースのチーズカードを得ること、
e.チーズカードを約5℃~約45℃の温度で8~12時間冷却および硬化させて、固化した植物ベースのチーズカードを得ること、
f.固化したチーズカードをチーズ型の中で一体にプレスすることによってホエイを排出すること、および
g.プレスされたチーズカードを型から取り出して、乳製品を含まないチーズブロックを得ること、
を含む。
【0064】
一実施形態において、本開示は、非乳製品チーズを製造するためのプロセスに関し、このプロセスは、以下の工程:
a.水、非乳製品の植物ベースのタンパク質分離物および植物性油脂を含む均質化されたエマルジョンを提供すること、
b.該均質化エマルジョンを約60℃~約160℃の温度で約30秒~約30分間熱処理して、熱処理エマルジョンを得ること、
c.熱処理エマルジョンを酸性化して酸性化エマルジョンを得ること、
d.酸性化エマルジョンをトランスグルタミナーゼによる酵素処理に供して、酵素処理された植物ベースのチーズカードを得ること、
e.チーズカードを約5℃~約45℃の温度で8~12時間冷却および硬化させて、固化した植物ベースのチーズカードを得ること、
f.固化したチーズカードをチーズ型の中で一体にプレスすることによってホエイを排出すること、および
g.プレスされたチーズカードを型から取り出して、乳製品を含まないチーズブロックを得ること、
を含む。
【0065】
本開示は、本発明の方法で得られる非乳製品ベースのチーズブロックにも関する。
【0066】
本開示は、約5~30重量%、好ましくは約6~25重量%、より好ましくは約10~20重量%、最も好ましくは12~18重量%、さらに最も好ましくは14重量%の非乳タンパク質、約5~30重量%、好ましくは約10~20重量%、より好ましくは約15重量%の植物性油脂、および約40~70重量%、好ましくは約50~66重量%、好ましくは約50~60重量%、より好ましくは53~57重量%の水を含む、非乳製品ベースのチーズブロックに関するものである。
【0067】
好ましくは、非乳タンパク質は植物性タンパク質である。
【0068】
一実施形態では、非乳製品ベースのチーズブロックは、約1~5重量%、好ましくは2~4重量%、より好ましくは3重量%の砂糖、約0.0~2.0重量%、好ましくは0.5重量%の塩、約0.001~1.0重量%、好ましくは0.01~0.25重量%、より好ましくは0.1重量%の酸化防止剤、約0.05~1.0重量%、好ましくは0.08~0.5重量%、より好ましくは0.1重量%のスターター培養物、約0.01~1.0重量%、好ましくは0.05~0.8重量%、より好ましくは0.01~0.5重量%、0.5重量%の架橋酵素、約0.1~0.5重量%、好ましくは0.2重量%の香料、および約0.5~2.0重量%、好ましくは1.5重量%の食用色素からなる群から選択される成分をさらに含む。
【0069】
一実施形態では、非乳製品ベースのチーズブロックは、約5~30重量%、好ましくは約6~25重量%、より好ましくは約10~20重量%、最も好ましくは12~18重量%、さらに最も好ましくは14重量%の非乳タンパク質、約5~30重量%、好ましくは約10~20重量%、より好ましくは約15重量%の植物性脂肪、約40~70重量%、好ましくは約50~66重量%、好ましくは約50~60重量%、より好ましくは53~57重量%の水、約1~5重量%、好ましくは2~4重量%、より好ましくは3重量%の砂糖、約0.0~2.0重量%、好ましくは0.5重量%の塩、約0.001~1.0重量%、好ましくは0.01~0.25重量%、より好ましくは0.1重量%の酸化防止剤、約0.05~1.0重量%、好ましくは0.08~0.5重量%、より好ましくは0.1重量%のスターター培養物、約0.01~1.0重量%、好ましくは0.05~0.8重量%、より好ましくは0.01~0.5重量%、0.5重量%の架橋酵素、約0.1~0.5重量%、好ましくは0.2重量%の香料、および約0.5~2.0重量%、好ましくは1.5重量%の食用色素を含む。
【0070】
一実施形態では、非乳製品ベースのチーズブロックは、14重量%の非乳タンパク質、56.1重量%の水、15重量%の植物性油脂、3重量%の砂糖、0.5重量%の食塩、0.1重量%のアスコルビン酸、0.1重量%のスターターカルチャー、0.5重量%の架橋酵素、0.2重量%の香料、および1.5重量%の食用色素を含む。
【0071】
一実施形態では、非乳製品ベースのチーズブロックは、14重量%の非乳タンパク質、65.1重量%の水、15重量%の植物性油脂、3重量%の砂糖、0.5重量%の塩、0.1重量%のアスコルビン酸、0.1重量%のスターターカルチャー、0.5重量%の架橋酵素、0.2重量%の香料、および1.5重量%の食用色素を含む。
【0072】
一実施形態では、非乳製品チーズブロックは、アスコルビン酸などの抗酸化剤を約0.001~1.0重量%、好ましくは約0.01~0.25重量%、より好ましくは0.1重量%含む。
【0073】
非乳製品チーズブロックは、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸カルシウムなどのアスコルビン酸の塩、ポリフェノール系酸化防止剤、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、トコフェロール、トコトリエノール、ポリフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤含有植物抽出物、オイゲノール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、エリソルビン酸、エリソルビン酸の塩、例えば、エリソルビン酸ナトリウム、ローズマリー抽出物、tert-ブチルヒロキノール、ブチルヒドロキシアニゾン、ブチルヒドロキシトルエン、4-ヘキシルレゾルシノールからなる群から選択される抗酸化剤および/または抗酸化特性を有する成分を含んでもよい。
【0074】
チーズなどの製品のテクスチャーは、圧縮テストを実行するTA.XTテクスチャーアナライザーで測定できる。圧縮試験は、機器によるテクスチャー測定の中で最も簡単で一般的な試験である。サンプルを平らな面に置き、平らなプラテンを所定の力または距離までサンプル上に下げる。サンプルが変形し、変形の程度および/またはサンプルによってもたらされる抵抗が記録される。硬さ、バネ性(springiness)(弾力性(elasticity))、粘着性を測定する。
【0075】
硬度は、チーズを臼歯の間、または舌と口蓋の間で所定の変形または貫通点まで圧縮するのに必要な力である。硬度の値は、最初の圧縮中に発生するピークの力、すなわち、最初の圧縮の最大の力として表される。硬度は典型的にほとんどの製品で発生するが、最も深い圧縮点で発生する必要はない。
【0076】
バネ性(弾力性)とは、変形したチーズから変形力を取り除いた後の回復の程度である。バネ性とは、製品が最初の圧縮中に変形し、ストローク間の目標待ち時間を待った後に物理的にどれだけよく戻るかということである。スプリングバックは2回目の圧縮のダウンストロークで測定される。場合によっては、待ち時間が長すぎると、調査対象の条件下での製品以上の反発が発生する可能性がある(たとえば、咀嚼の間に60秒間待機しない場合など)。バネ性は、製品の元の高さに対する比率またはパーセンテージとして表される。バネ性はいくつかの方法で測定されるが、最も典型的には、2回目の圧縮中に検出された高さの距離を元の圧縮距離で割った値によって測定される。
【0077】
粘着性とは、咀嚼を通じて持続する密度であり、チーズを飲み込める状態まで崩壊させるのに必要なエネルギーである。製品は同時に半固体と固体の両方にはならないため、粘着性と噛みごたえは両立しない。
【0078】
本開示の非乳製品チーズブロックは、以下の特徴を有する。硬度は5,000~40,000g、好ましくは20,000~30,000g、より好ましくは26,000g、バネ性は0.3~0.9、好ましくは0.6~0.8、より好ましくは0.8、粘着性は2,000~14,000、好ましくは8,000~12,000、より好ましくは11,785。
【0079】
硬度は、5,000g、10,000g、15,000g、20,000g、21,000g、22,000g、23,000g、24,000g、25,000g、26,000g、27,000g、28,000g、29,000g、30,000g、31,000g、32,000g、33,000g、34,000g、35,000g、36,000g、37,000g、38,000g、39,000g、または40,000gなど、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲内であり得る。
【0080】
バネ性は、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、または0.9など、またはこれらの値の任意の2つによって定義される範囲であり得る。
【0081】
粘着性は、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、または12,000など、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲であり得る。
【0082】
弾力性と粘着性は計算パラメータであり、相対的な尺度である。
【0083】
好ましい実施形態では、非乳製品ベースのチーズブロックは、20,000~30,000g、より好ましくは26,000gの硬度、0.6~0.9、より好ましくは0.8のバネ性、及び8,000~12,000、より好ましくは11,785の粘着性を有する。
【0084】
タンパク質含有量は、ISO8968-1、IDF20-1:2014の方法を使用して、油脂含有量はISO1735、IDF5:2004の方法を使用して、乾物含有量はISO6731、IDF21:2010の方法を使用して分析された。炭水化物含有量は、脂肪、タンパク質、および乾物含有量に基づいて計算された。
【0085】
本発明を以下の実施例によりさらに説明する。
【実施例
【0086】
実施例1
チーズ模造品
セミハード乳製品チーズに似た食感を有するタンパク質ベースの非乳製品チーズが製造された。本開示のタンパク質ベースの非乳製品チーズを製造するためのレシピを表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
非乳製品チーズ模造品の製造プロセスは次のとおり:植物タンパク質分離物を水と混合した。他の原料(油脂、砂糖、塩、食用色素)を加え、混合物を60℃に加熱し、150バールで均質化した。
【0089】
混合物をさらに75℃で5分間低温殺菌し、インキュベーション温度(45℃)まで冷却した。スターター培養物、アスコルビン酸および香料を添加し、混合物を約30分間pH5.8~6.8まで発酵させた。架橋酵素(トランスグルタミナーゼ、味の素)を添加した後、混合物を凝固型に注ぎ、混合物をpH4.5~5.9まで2時間凝固させた。この塊を冷蔵保存(4~6℃)で12時間さらに硬化させた。次に、チーズ塊をプレス型に移動し、余分なホエイを水圧プレス(9バール、4~6時間)で押し出しました。プレス後、チーズ模造品を塩水中で、または乾式塩漬けによって塩漬けした。
【0090】
植物タンパク質に典型的な異臭を抑えるために、微生物発酵、pH最適化、酸化防止剤、およびホエイ排出中に製品から不要な風味化合物を洗い流すことを組み合わせた。これらの方法を組み合わせることで、マイルドな風味と明るい色の製品が得られる。
【0091】
本発明のプロセスでは、チーズ塊を凝固させた後、切断するのではなく、冷蔵庫で一晩冷やし固め、翌日塊を切断せずにプレスした。硬化したチーズブロックを凝固型から取り出し、プレス型に入れた。チーズブロックを6時間プレスし、型から取り出し、塩水で塩漬けした。この方法を使用すると、緻密な構造を得るためにプレス時間が短縮され、ホエイの分離で失われる乾物も少なくなり、より多くの乾物がチーズ中に保持されることになる。本発明のプロセスを図4に示す。
【0092】
チーズの硬さは、圧縮試験を実施するTA.XTテクスチャーアナライザーによって測定された。圧縮試験は、機器によるテクスチャー測定の中で最も簡単で一般的な試験である。サンプルを平らな表面上に置き、平らなプラテンを所定の力または距離までサンプル上に下げた。サンプルを変形させ、変形の程度および/またはサンプルによってもたらされた抵抗を記録した。使用した分析はTPA75(テクスチャープロファイル分析、不可逆的方法、75%)であった。プローブはP75で、分析された製品は2段階で初期高さの75%に圧縮された。
【0093】
本発明の利点は図5および図6に示されており、切断せずにプレスすることによってより高い硬度とより高い乾物含量がもたらされることが示されている。乳製品チーズに匹敵する硬さは、これまでに知られている方法では24時間必要であったのに対し、6時間で達成できる。切断工程を行わずにプレス時間を短縮すると、乳製品チーズに似た、より緻密でスライス可能な構造というより良い構造が得られた。さらに、ホエイの分離に伴う乾物の損失は、切断工程プロセスを行わずに長いプレス時間で行った場合と比較して少なかった。
【0094】
TA.XTテクスチャー分析によって比較したチーズを表2に示す。本発明のプロセスで製造した非乳製品チーズ模造品のテクスチャーは、表4に示すセミハード乳製品チーズに似ていた。
【0095】
【表2】

【0096】
さまざまな方法でプレスされたチーズの乾物含有量は、ISO6731:2010(牛乳、クリームおよび無糖練乳-総固形分含有量の測定)の方法を使用して化学分析された。結果を図6に示す。
【0097】
本プロセスを用いて製造されたチーズと既知の方法を用いて製造されたチーズを官能的に比較した(n=13)。脂肪分24%のセミハード乳製品チーズを参照として使用した。参照となる乳製品チーズが常に最初に試食され、次に植物ベースのチーズがランダムな順序で試食された。評価項目は「参照と比較した食感・口当たり」および「参照と比較した密度・弾力」である。本開示のプロセスを使用して生成されたサンプルは、両方の属性において乳製品基準に近いスコアを示した(図7A~7C)。
【0098】
図8は、本発明に従って凝固され、プレスされた植物ベースのチーズ(右側の山のシュレッドチーズ)と、ホエイ排出中およびチーズプレス型でカードをプレスする前にカードを切断して伝統的に調製された植物ベースのチーズ(左側の山のシュレッドチーズ)とのテクスチャー特性および機械的特性の違いを示す。本発明に従って製造されたチーズは、崩れたりひび割れたりせず、細断された形態でも形状を維持する。プレスする前にチーズのホエイを排出して切断すると、崩れてひび割れを起こし、シュレッドチーズの良好な形状が崩れる。
【0099】
実施例2
セミハードチーズ模造品
本開示のプロセスで製造されたチーズ模造品は、タンパク質および脂肪も含み、以前の既存の製品よりも乳製品チーズにはるかに近い(図2b)。デンプンベースの非乳製品チーズおよび乳製品チーズと比較した本発明の非乳製品チーズの化学組成を表3に示す。
【0100】
【表3】

【0101】
【表4】

【0102】
実施例3
植物ベースのチーズ
0.02重量%の亜硫酸ナトリウム(NaSO)を、8重量%の空気分級ソラマメタンパク質濃縮粉と混合した後、水に可溶化し、0.1%のアスコルビン酸を懸濁液に可溶化した。水酸化ナトリウムを使用して懸濁液のpHを7.0に調整し、次いで懸濁液を室温で90分間混合した。懸濁液は、デカンター遠心分離機およびノズルボウル分離器を用いて不溶性固体を除去することによって清澄化された。清澄化した懸濁液を、既知のタンナーゼ活性を有する市販の酵素(Viscozyme L、Novozymes)0.1%を添加することによって酵素処理し、一定の混合下、室温で30分間インキュベートした。この後、酵素を80℃、5分間の加熱処理により失活させる。次いで、熱処理した懸濁液を、10kDaのスパイラル巻き膜を使用する限外濾過で濃縮し、ダイアフィルトレーションで洗浄した。続いて、濃縮されたソラマメタンパク質保持液を噴霧乾燥して、タンパク質含量が90重量%/乾物であるソラマメタンパク質分離物を生成した。
【0103】
ソラマメタンパク質分離物の構造形成特性を決定するために、ソラマメタンパク質分離物をビーガンチーズ用途で試験した。ソラマメタンパク質分離物を水と混合し、他の原材料(脂肪、砂糖、塩、食用色素)を混合物に添加した。混合物を60℃に加熱し、150バールで均質化した。混合物をさらに75℃で5分間低温殺菌し、インキュベーション温度(45℃)まで冷却した。次に、微生物スターター培養物、アスコルビン酸および香料を添加し、混合物をpH6.0まで約30分間発酵させた。トランスグルタミナーゼ酵素を添加した後、混合物を凝固型に注ぎ、混合物をpH5.0まで2時間凝固させた。塊は冷蔵保存(4~6℃)で約12時間さらに硬化した。次に、チーズ塊をプレス型に移動し、余分なホエイを水圧プレス(9bar、4~6時間)で押し出した。圧搾後、ビーガンチーズを乾燥塩漬けした。
【0104】
参照文献
Everett, D.W. 2007. Microstructure of natural cheeses In: A.Y. Tamime (Ed.), Structure of dairy products, Blackwell Publishing Ltd., Oxford, UK.

Mintel, 2019. What's holding back alternative cheese? Powerpoint presentation by Jane Hurh, April 2019.

Oyeyinka, A.T., Odukoya, J.O. and Adebayo, Y.S., 2019. Nutritional composition and consumer acceptability of cheese analog from soy and cashew nut milk. Journal of Food Processing and Preservation, 43(12), p.e14285.

CA3058199A1
EP2731451B1
EP3366144A1
US6042851A
US9011949B2
US2017/0172169A1
US20180000105A1
US20190037872A1
WO2019133679A2
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
【国際調査報告】