(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】非乳製品ゲルの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23J 3/00 20060101AFI20231130BHJP
A23J 3/14 20060101ALI20231130BHJP
A23J 3/04 20060101ALI20231130BHJP
A23J 3/20 20060101ALI20231130BHJP
A23C 20/02 20210101ALI20231130BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20231130BHJP
A23L 11/50 20210101ALI20231130BHJP
A23L 11/40 20210101ALI20231130BHJP
【FI】
A23J3/00 511
A23J3/14
A23J3/04
A23J3/20
A23C20/02
A23L11/00 F
A23L11/50
A23L11/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533345
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 FI2021050817
(87)【国際公開番号】W WO2022117919
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521510958
【氏名又は名称】オッドリーグッド・グローバル・オサケユフティオ
【氏名又は名称原語表記】Oddlygood Global Oy
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ムーロネン,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】マキネン,オウティ
(72)【発明者】
【氏名】レフトネン,カイテュ-マリン
(72)【発明者】
【氏名】サーレントラ,ヴァイノ
【テーマコード(参考)】
4B001
4B020
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC05
4B001AC15
4B001AC25
4B001AC31
4B001AC43
4B001AC46
4B001AC99
4B001BC01
4B001BC04
4B001BC07
4B001BC08
4B001BC14
4B001BC99
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4B001EC99
4B020LB27
4B020LC05
4B020LG09
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4B020LK19
4B020LK20
4B020LP02
4B020LP03
4B020LP09
4B020LP15
4B020LP17
4B020LP18
4B020LP19
4B020LP24
(57)【要約】
本発明は食品技術の分野に関する。本発明は、食用の植物ベースの食品、特に乳製品代替製品として適した非乳製品チーズに使用される非乳製品タンパク質ゲルの製造方法、その製造方法、およびそれに関連する用途に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a.水と、非乳タンパク質を含む少なくとも1つの非乳ベースの原材料とを混合して、水性タンパク質懸濁液を得ること、
b.該水性タンパク質懸濁液を均質化して、均質化された水性タンパク質懸濁液を得ること、
c.該均質化された水性タンパク質懸濁液を約60℃~約160℃の温度で約1秒~約5分間熱処理して、熱処理タンパク質懸濁液を得ること、
d.熱処理タンパク質懸濁液を酸性化して酸性化タンパク質懸濁液を得ること、
e.約5℃~約120℃の温度で酸性化タンパク質懸濁液を修飾して、非乳タンパク質ゲルを得ること、
f.非乳タンパク質ゲルを約5℃~約45℃の温度で8~12時間凝固させて、凝固した非乳タンパク質ゲルを得ること、
を含むことを特徴とする非乳タンパク質ゲルの製造方法。
【請求項2】
非乳タンパク質の供給源がタンパク質分離物またはタンパク質濃縮物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非乳タンパク質が、植物タンパク質、昆虫タンパク質、藻類タンパク質、細菌タンパク質、真菌タンパク質、および酵母タンパク質などの微生物タンパク質、ならびに組換え生産されたタンパク質および組換え菌株を使用して生産されたタンパク質からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
非乳タンパク質が植物タンパク質、好ましくはマメ科タンパク質であり、好ましくはマメ科タンパク質がソラマメおよびエンドウから選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
タンパク質が粉末形態であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程a.で得られたタンパク質水性懸濁液を40℃~80℃の温度、好ましくは50℃~70℃の温度、より好ましくは55℃~65℃の温度、最も好ましくは60℃の温度に加熱することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程b.において、油脂、多糖類、糖類または他の発酵性炭水化物、香料、着色料、強化成分、保存料、酸化防止剤、塩からなる群から選択される1つまたは複数のさらなる成分を添加することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記発酵性炭水化物が、添加された炭水化物、内因性炭水化物、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、マルトトリオース、ラフィノース、スタキオース、ベルバスコース、ケストース、ガラクトース、メリビオース、セロビオース、リボース、ツラノース、キシロース、ラムノース、アラビノース、トレハロース、イヌリン、およびイノシトールを含む原料の加水分解によって形成される炭水化物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記油脂が、キャノーラ、ココナッツ、シア、ヒマワリの種などの植物由来の油脂、藻類由来の油脂、微生物源由来の油脂、組換え株を使用して生産された油脂からなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
多糖類が、ジェラン、寒天、カラギーナン、ペクチン、キサンタン、またはデンプンなどの、植物、藻類または微生物由来のゲル化多糖類または別のテクスチャー形成多糖類からなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
工程b.における均質化が、40℃~80℃の温度、好ましくは50℃~70℃の温度、より好ましくは55℃~65℃の温度、最も好ましくは60℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程b.における均質化が、100~400バールの圧力で、好ましくは125~300バールの圧力で、より好ましくは150バールの圧力で行われることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程c.における熱処理が、約75℃~約105℃、好ましくは約60℃~約78℃、好ましくは75℃の温度で、約30秒~30分間、好ましくは約30秒~5分間、より好ましくは5分間行われ、熱処理された懸濁液を得ることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程c.における熱処理が、75℃~105℃の温度で30秒~5分間、好ましくは75℃の温度で5分間行われることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程d.において、酸性化が微生物学的または化学的に行われることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程d.において、酸性化が、スターター培養物を熱処理されたタンパク質懸濁液に添加し、30℃~50℃の温度、より好ましくは35℃~45℃の温度、好ましくは45℃の温度で、15分間~1時間、好ましくは30分間、pH4~pH7、好ましくはpH5.8~pH6.8、より好ましくはpH6.0~pH6.5でインキュベートすることによって行われることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程d.において、アスコルビン酸、および任意に香料を添加することを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程e.において、修飾が30℃~50℃の温度、好ましくは35℃~45℃の温度、より好ましくは45℃の温度で行われ、酸性化されたタンパク質懸濁液は、酵素処理、熱処理、風味改変、色改変、および酸、塩および多糖補助ゲル化による、架橋酵素を酵素的に使用するゲル化多糖による処理、選択されたタンパク質のゲル化点を超えて酸性化することによる処理、および/またはプロトン(酸、塩)を添加することによる処理からなる群から選択される1つ以上の処理に供されることを特徴とし、好ましくは修飾が酵素処理である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
工程e.において、酵素処理が、トランスグルタミナーゼ、チロシナーゼ、カテコールオキシダーゼおよびラッカーゼからなる群から選択される架橋酵素を用いて行われることを特徴とし、好ましくは、架橋酵素がトランスグルタミナーゼである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程e.において、修飾が30℃~50℃の温度で行われ、酸性化されたタンパク質懸濁液がトランスグルタミナーゼ、チロシナーゼ、カテコールオキシダーゼおよびラッカーゼからなる群から選択される架橋酵素を使用する酵素処理に供されることを特徴とし、好ましくは、架橋酵素がトランスグルタミナーゼである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
工程e.において、修飾が30℃~50℃の温度で行われ、酸性化タンパク質懸濁液がトランスグルタミナーゼによる酵素処理に供されることを特徴とする、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
架橋酵素の量が約0.01~1.0重量%、好ましくは0.05~0.8重量%、より好ましくは0.01~0.5重量%、最も好ましくは0.5重量%の架橋酵素であることを特徴とする、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
工程e.において、酵素処理中に、タンパク質懸濁液を2時間かけてpH4.5~5.9まで凝固させることを特徴とする、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
工程f.において、非乳タンパク質ゲルの固化が、約4℃~約6℃の温度で12時間行われ、固化した非乳タンパク質ゲルを得ることを特徴とする、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
工程f.の後に、固化した非乳タンパク質ゲルが、以下:
a.5~12バール、好ましくは9バールで24時間、好ましくは4~6時間プレスすること、
b.塩漬け、および
c.2~15mmのサイズの粒子に切断し、その後プレスすること、
からなる群から選択される1つ以上のさらなる処理を受けることを特徴とする、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載の方法で得られる非乳タンパク質ゲル。
【請求項27】
非乳タンパク質を含むことを特徴とする非乳タンパク質ゲル。
【請求項28】
非乳製品チーズにおける非乳製品タンパク質ゲルの使用。
【請求項29】
約5~30重量%、好ましくは約6~25重量%、より好ましくは約10~20重量%、最も好ましくは12~18重量%、さらに最も好ましくは14重量%の植物性タンパク質、約5~30重量%、好ましくは約10~20重量%、より好ましくは約15重量%の植物性油脂、および約40~70重量%、好ましくは約50~66重量%、好ましくは約50~60重量%、より好ましくは53~57重量%の水、を含むことを特徴とする非乳製品チーズ。
【請求項30】
前記非乳製品チーズが、
約1~5重量%、好ましくは2~4重量%、より好ましくは3重量%の砂糖、
約0.0~2.0重量%、好ましくは0.5重量%の塩、
約0.001~1.0重量%、好ましくは0.01~0.25重量%、より好ましくは0.1重量%の酸化防止剤、
約0.05~1.0重量%、好ましくは0.08~0.5重量%、より好ましくは0.1重量%のスターター培養物、および
約0.01~1.0重量%、好ましくは0.05~0.8重量%、より好ましくは0.01~0.5重量%、0.5重量%の架橋酵素、
約0.1~0.5重量%、好ましくは0.2重量%の香料、および
約0.5~2.0重量%、好ましくは1.5重量%の食用色素、
からなる群から選択される成分をさらに含むことを特徴とする、請求項29に記載の非乳製品チーズ。
【請求項31】
14重量%の非乳タンパク質、65.1重量%の水、15重量%の植物性油脂、3重量%の砂糖、0.5重量%の食塩、0.1重量%のアスコルビン酸、0.1重量%のスターター培養物、0.5重量%の架橋酵素、0.2重量%の香料、1.5重量%の食用色素、を含むことを特徴とする、請求項29または30に記載の非乳製品チーズ。
【請求項32】
14重量%の非乳タンパク質、63重量%の水、20重量%の植物性油脂、1.0重量%の砂糖、1.0重量%のグルコノデルタラクトン、0.1重量%のスターター培養物、0.5重量%の架橋酵素、0.3重量%の香料、0.1重量%の食用色素、を含むことを特徴とする、請求項29または30に記載の非乳製品チーズ。
【請求項33】
非乳タンパク質ゲルを含み、5,000~40,000g、好ましくは20,000~30,000g、より好ましくは26,000gの硬度、0.3~0.9、好ましくは0.6~0.9、より好ましくは0.8のバネ性、および2,000~14,000、好ましくは8,000~12,000、より好ましくは11,785の粘着性、を有することを特徴とする、請求項29~32のいずれか一項に記載の非乳製品チーズ。
【請求項34】
非乳製品チーズの構造が、セミハードチーズ、セミソフトチーズ、またはクリームチーズであることを特徴とする、請求項29~33のいずれか一項に記載の非乳製品チーズ。
【請求項35】
キューブ、スライス、すりおろし、個別に包装、パンの上に乗せる、温かい料理、ベーキング、サラダ、スナック、グリルなどとしての、請求項29~34のいずれか一項に記載の非乳製品チーズの使用。
【請求項36】
請求項29~34のいずれか一項に記載の非乳製品チーズの食品における使用。
【請求項37】
前記食品が、サラダ、ピザ、ラザニア、チーズバーガー、パスタ、ホットドッグ、サンドイッチ、ワッフル、フォンデュ、グラタン、ペストリー、およびパイからなる群から選択される、請求項36に記載の非乳製品ベースのチーズの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品技術の分野に関する。本発明は、食用の植物ベースの食品、特に乳製品代替製品として適した非乳製品チーズ、それに使用される非乳製品タンパク質ゲルの製造方法、その製造方法、およびそれに関連する使用に関する。
【背景技術】
【0002】
乳糖不耐症や乳タンパク質に対するアレルギーなどの理由で、乳製品を避ける必要がある人もいる。さらに、自発的にベジタリアンまたはビーガンの食事を好む消費者の数も増加している。植物ベースの代替食品は、再生可能資源を利用することで持続可能な開発を確実にするのに役立つため、環境の観点からも有益である。
乳製品のさまざまな代替品が市場に導入されており、植物ベースの製品など、そのような乳製品の代替品または乳製品の置き換え品に対する需要が高まっている。
【0003】
非乳製品チーズは通常、他の成分に加えて、デンプン、脂肪またはナッツペースト、低温セット多糖類から製造される。また、他の成分(例えば、香味料、砂糖、安定剤など)や少量のタンパク質も使用される。一般的なプロセスは以下のとおり:成分を混合し、塊を加熱し、型または最終包装中で塊をセットさせる(WO2017150973A1)。
【0004】
このようなデンプンベースの製品の組成は、タンパク質と脂肪で構成される乳製品チーズに匹敵しない。
【0005】
デンプンベースのチーズ模造品は、栄養組成が貧弱であることに加えて、ゴム状の口当たりや高い破壊性/圧縮性の欠如など、チーズ様製品に求められる官能特性を欠いている。これらの問題を解決するために、例えば、高アシルジェランを使用してデンプンおよび脂肪ベースのチーズ様製品を破裂させることなく圧縮率を高めること(US2020323231A1)、ジャガイモデンプンとタンパク質を使用して食感、味および栄養価を改善すること(WO2017150973A1)など、いくつかの解決策が提案されている。WO2020089383A1は、0.5~15%の非親水コロイド食物繊維、2~15%の植物タンパク質、0.5~5%のカルシウム塩および5~30%の脂質を使用し、これらを高せん断下で混合し、pH4~6に調整し、冷却してゲル化する、「ナチュラル」チーズ様製品を製造する方法を開示している。US2010196575A1は、デンプンおよび親水コロイドを使用してゲル化された大豆タンパク質加水分解物溶液から製造される、少なくとも50%の水分を含むチーズ模造品の製造方法を開示している。
【0006】
広く知られ、さまざまな料理本で出版されている、またはオンラインで示される非乳製品チーズを製造する別の方法は、ナッツペーストを寒天または他のゲル化多糖類でセットさせる方法である。伝統的なタンパク質ベースの豆腐(豆腐やベスケ(beske)など)は、豆乳を加熱し、塩で凝固させ、チーズクロスまたはふるいを使用して粒状のカードを圧縮してホエイを排出することによって製造される。
【0007】
タンパク質を架橋酵素でゲル化することで、タンパク質ベースの非乳製品チーズの製造が可能になる。得られた非乳製品チーズカードは、乳製品チーズと同様に加工される:すなわち、カードを切断および加熱し、カード顆粒を型に移し、プレスする。ホエイを十分に排出するには、高圧下で非常に長い処理時間(24時間)が必要である(EP2731451B1)。「植物由来のレンネット」を使用した同様のプロセスが特許取得されている(EP3366144A1)。カードを破壊した後に連続した強力な構造を得るのは難しいため、これらの特許に記載されている方法は、ヤギチーズやリコッタチーズタイプのようなソフトチーズの模造品の製造に適している。植物性タンパク質で作られたタンパク質ベースのチーズ模造品にも、豆のような風味、ボール紙のような風味、苦い風味などの不快な異臭があり、微生物による熟成だけでは取り除くことができない。
【0008】
チーズ製造プロセスでは、牛乳をレンネットで凝固させ、その結果得られる弱く高水分のゲル(カード)を小片に切断して、ゲルのネットワークから液体(ホエイ)を排出する。ゲルネットワークから液体が除去されると、カードの機械的強度が増加し、高圧を適用できるようになり、その結果、チーズに典型的な強力で弾性のある構造が得られる。タンパク質ベースの非乳製品チーズは、同様のプロセス(EP2731451B1)を使用して製造できるが、レンネットの代わりに、タンパク質は架橋酵素を使用してゲル化される。
【0009】
乳製品チーズは、動的で非共有結合的に架橋されたシステムであり、熟成中に最終構造を形成する。これらの構造変化には、カゼインのより太い繊維への融合や部分的な脂肪球の合体が含まれる(Everett、2007)。その結果、カード顆粒は融合して固体の弾性構造になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、植物ベースの乳製品代替製品を製造する従来技術に関連する問題を克服することである。
【0011】
従来技術に関連する上述の問題は、本開示において克服される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、乳製品チーズに近い栄養組成および食感を有する非動物性タンパク質および脂肪ベースのチーズ代替品を製造する方法に関する。この方法は、スプレッドからフェタタイプのサラダチーズ、熟成したハードおよびセミハードチーズ模造品に至るまで、幅広い種類のチーズ模造品を製造するために使用できる。
【0013】
本開示は、非乳タンパク質ゲルを製造するためのプロセスに関し、このプロセスは、以下の工程:
a.水と、非乳タンパク質を含む少なくとも1つの非乳ベースの原材料とを混合して、水性タンパク質懸濁液を得ること、
b.該水性タンパク質懸濁液を均質化して、均質化された水性タンパク質懸濁液を得ること、
c.該均質化された水性タンパク質懸濁液を約60℃~約160℃の温度で約1秒~約5分間熱処理して、熱処理タンパク質懸濁液を得ること、
d.熱処理タンパク質懸濁液を酸性化して酸性化タンパク質懸濁液を得ること、
e.約5℃~約120℃の温度で酸性化タンパク質懸濁液を修飾して、非乳タンパク質ゲルを得ること、
f.非乳タンパク質ゲルを約5℃~約45℃の温度で8~12時間固化させて、固化した非乳タンパク質ゲルを得ること、
を含む。
【0014】
本発明はまた、本発明の方法で得られる非乳製品タンパク質ゲルにも関する。
【0015】
さらに、本発明は非乳製品タンパク質ゲルに関する。
【0016】
本発明はまた、本開示による方法で得られる非乳製品タンパク質ゲルの非乳製品チーズにおける使用にも関する。
【0017】
本発明は、本開示による非乳製品タンパク質ゲルを含む非乳製品チーズにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、非乳製品チーズ模造品の製造プロセスを示す。
【
図2】
図2は、実施例1による非乳製品チーズ模造品の製造プロセスを示す。加熱および均質化中に、脂肪、砂糖(スクロース)、塩(塩化ナトリウム)および水を添加する。発酵ステップ中にスターターカルチャーとアスコルビン酸が添加される。ゲル化はトランスグルタミナーゼを使用して行われる。プレス後、チーズ模造品は塩水または乾式塩漬けによって塩漬けされる。
【
図3】
図3は、実施例3による非乳製品チーズ模造品の製造プロセスを示す。
【
図4】
図4は、圧縮および熟成させたセミハードチーズ模造品を示す。
【
図5】
図5は、圧縮および熟成させたセミハードチーズ模造品を示す。
【
図6】
図6は、カードを切断してプレスすることによって製造された低脂肪サラダチーズ模造品を示す。
【
図7】
図7は、カードを切断せずに製造された、さいの目に切った低脂肪サラダチーズ模造品を示す。
【
図8】
図8は、a):チーズ塊を型に流し込むこと、b):チーズ塊を硬化させること、c):スライス可能で弾性のある最終製品、を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本明細書および特許請求の範囲において、以下の単語および表現は、以下に定義される意味を有する。
【0020】
「非乳製品タンパク質」または「乳製品を含まないタンパク質」は、植物性タンパク質、昆虫タンパク質、藻類タンパク質、細菌タンパク質、真菌タンパク質、および酵母タンパク質などの微生物タンパク質、ならびに組換えにより生産されたタンパク質、または組換え株を使用して生産されたタンパク質からなる群から選択される。
【0021】
「高タンパク質成分」とは、タンパク質/乾物あたり約70%を超えるタンパク質含有量を有する、タンパク質が豊富な成分を指す。好ましくは、高タンパク質成分は、(N×6.25)で、約90%タンパク質/乾物、好ましくは少なくとも約100%タンパク質/乾物、を超えるタンパク質含量を有する分離物である。
【0022】
「タンパク質分離物」と「タンパク質濃縮物」という用語は、タンパク質の量の点で異なる。これらの違いは処理方法によって発生する。「タンパク質濃縮物」粉末は、重量の最大80%のタンパク質で構成されている。濃縮粉末の残り20%には炭水化物と脂肪が含まれる。脂肪と炭水化物の含有量を減らすためにさまざまな加工ステップを使用すると、重量で90%以上のタンパク質を含む「タンパク質分離物」粉末を製造できる。全体として、分離物の生産に使用される処理ステップにより、タンパク質含有量が増加し、脂肪と炭水化物含有量が減少する。ただし、両方の形態のホエイに含まれるアミノ酸の種類は、同じタンパク質に由来しているため、実質的に同じである。
【0023】
「スターター培地」とは、発酵を行う微生物の培地のことである。スターターは通常、発酵に使用される微生物が十分に定着した栄養液などの培養培地で構成される。
【0024】
「植物ベースの食品」とは、ヨーグルト、飲むヨーグルト、クレームフレッシュ(creme fraiche)またはサワークリーム、サワーミルク、クワルク、クリームチーズ(フィラデルフィアタイプのソフトチーズ)、セットタイプのヨーグルト、スムージーまたはプリンなどの伝統的な乳製品ベースの製品など、発酵、酸性化、または非酸性(中性)食品を指し得る。本開示において、「植物ベースの食品」は、スプレッドからフェタタイプのサラダチーズ、および熟成したハードおよびセミハードチーズの模造品に及ぶチーズ模造品の選択からなる群から特に選択される。
【0025】
「植物ベース」とは、食品技術用途における食用製品の製造に適した植物由来のことを指す。本発明の製品および方法に適した植物ベースの原料は、乾燥および新鮮な豆、大豆、乾燥および新鮮なエンドウ豆、レンズ豆、ひよこ豆およびピーナッツなどのマメ科植物から選択される少なくとも1つの植物からのものであり得、より好ましくは、ソラマメおよびエンドウから選択され、最も好ましくはソラマメから選択される。
【0026】
「マメ科植物(legume)」または「マメ科植物(leguminous plant)」とは、マメ科(family Fabaceae)(またはマメ科(Leguminosae))に属する植物を指し、その科はマメ科(legume)、エンドウ科、またはマメ科(bean family)として一般に知られている。該科は顕花植物の大科である。マメ科植物は、マメ科植物の果実または種子も指す。種子はパルスとも呼ばれる。マメ科植物には、例えば、アルファアルファ(Medicago sativa)、クローバー(Trifolium spp.)、エンドウ豆(Pisum)、豆(Phaseolus spp.、Vigna spp.、Vicia spp.)、ひよこ豆(Cicer)、レンズ豆(Lens)、ルピナス(Lupinus spp.)、メスキート(Propsis spp.)、イナゴマメ(Ceratonia siliqua)、大豆(Glycine max)、ピーナッツ(Arachis Hypogaea)、ベッチ(Vicia)、タマリンド(Tamarindus indica)、クズ(Pueraria spp.)、およびルイボス(Aspalathus linearis)が含まれる。マメ科植物は、植物学的にユニークなタイプの果物、つまり単純な心皮から発生し、通常は両側で裂開(縫い目に沿って開く)する単純なドライフルーツを生成する。
【0027】
本開示は、チーズ代替品もしくはスプレッドとしてそのまま使用できる、またはプレスされたハードチーズ模造品にさらに加工できる、酸性化された非動物性タンパク質ベースのゲルを製造するための方法を記載する。ゲルは、1つ以上のタンパク質原料(60~95%のタンパク質)を水中で再構成することによって生成される。タンパク質に加えて、脂肪や多糖類などの他の化合物を添加して、得られるゲルの質感や保水特性を変えることができる。他の成分には、1つ以上の砂糖または他の発酵性炭水化物、香料、着色料、栄養強化剤、保存料、抗酸化剤、塩が含まれる。
【0028】
本開示は、非乳タンパク質ゲルを製造するためのプロセスに関し、このプロセスは、以下の工程:
a.水と、非乳タンパク質を含む少なくとも1つの非乳ベースの原材料とを混合して、水性タンパク質懸濁液を得ること、
b.該水性タンパク質懸濁液を均質化して、均質化された水性タンパク質懸濁液を得ること、
c.該均質化された水性タンパク質懸濁液を約60℃~約160℃の温度で約1秒~約5分間熱処理して、熱処理タンパク質懸濁液を得ること、
d.熱処理タンパク質懸濁液を酸性化して酸性化タンパク質懸濁液を得ること、
e.約5℃~約120℃の温度で酸性化タンパク質懸濁液を修飾して、非乳タンパク質ゲルを得ること、
f.非乳タンパク質ゲルを約5℃~約45℃の温度で8~12時間固化させて、固化した非乳タンパク質ゲルを得ること、
を含む。
【0029】
上述の工程a.~f.は、連続して実行されてもよい。
【0030】
一実施形態によれば、非乳タンパク質はタンパク質分離物またはタンパク質濃縮物である。
【0031】
さらに、一実施形態によれば、非乳タンパク質は、植物タンパク質、昆虫タンパク質、藻類タンパク質、細菌タンパク質、真菌タンパク質、酵母タンパク質などの微生物タンパク質、組換え生産されたタンパク質、および組換え株を使用して生産されたタンパク質からなる群から選択される。
【0032】
一実施形態では、非乳タンパク質は植物タンパク質、好ましくはマメ科タンパク質であり、好ましくはマメ科タンパク質はソラマメおよびエンドウから選択される。
【0033】
一実施形態によれば、非乳タンパク質は植物性タンパク質、好ましくはマメ科タンパク質であり、好ましくはマメ科タンパク質はソラマメおよびエンドウから選択される。本発明の製品および方法に適した植物ベースの原料は、乾燥および新鮮な豆、大豆、乾燥および新鮮なエンドウ豆、レンズ豆、ひよこ豆およびピーナッツなどのマメ科植物、より好ましくはソラマメおよびエンドウ、最も好ましくはソラマメから選択される少なくとも1つの植物に由来し得る。
【0034】
一実施形態では、タンパク質は粉末の形態である。
【0035】
一実施形態において、工程a.で得られた水性タンパク質懸濁液は、40℃と80℃の間の温度、好ましくは50℃と70℃の間の温度、より好ましくは55℃と65℃の間の温度、最も好ましくは60℃の温度、に加熱される。この温度は、非乳製品植物材料に含まれる油脂の融解温度に依存する。
【0036】
一実施形態では、工程b.において、脂肪、多糖類、糖類または他の発酵性炭水化物、香味料、着色料、強化成分、保存料、酸化防止剤および塩からなる群から選択される1つまたは複数のさらなる成分が添加される。
【0037】
一実施形態では、抗酸化剤は、アスコルビン酸などの抗酸化剤約0.001~1.0重量%、好ましくは約0.01~0.25重量%、より好ましくは0.1重量%の量で使用される。酸化防止剤の量は、例えば0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または1.0重量%であってよい。
【0038】
抗酸化剤および/または抗酸化特性を有する成分は、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸カルシウムなどのアスコルビン酸の塩、ポリフェノール系酸化防止剤、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、トコフェロール、トコトリエノール、ポリフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤含有植物抽出物、オイゲノール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、エリソルビン酸、エリソルビン酸の塩、例えば、エリソルビン酸ナトリウム、ローズマリー抽出物、tert-ブチルヒロキノール、ブチルヒドロキシアニゾン、ブチルヒドロキシトルエン、4-ヘキシルレゾルシノールからなる群から選択され得る。
【0039】
一実施形態では、発酵性炭水化物は、添加された炭水化物、内因性炭水化物、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、マルトトリオース、ラフィノース、スタキオース、ベルバスコース、ケストース、ガラクトース、メリビオース、セロビオース、リボース、ツラノース、キシロース、ラムノース、アラビノース、トレハロース、イヌリン、イノシトールなどの原料の加水分解によって形成される炭水化物からなる群から選択される。
【0040】
一実施形態では、油脂は、キャノーラ、ココナッツ、シア、およびヒマワリの種などの植物由来の油脂、藻類由来の油脂、微生物源由来の油脂、および組換え株を使用して生成された油脂からなる群から選択される。
【0041】
一実施形態では、多糖類は、ジェラン、寒天、カラギーナン、ペクチン、キサンタン、およびデンプンなどの、植物、藻類または微生物由来のゲル化またはテクスチャー形成多糖類からなる群から選択される。
【0042】
一実施形態では、工程b.の均質化は、40℃~80℃の温度、好ましくは50℃~70℃の温度、より好ましくは55℃~65℃の温度、最も好ましくは60℃の温度で行われる。
【0043】
一実施形態では、工程b.の均質化は、100~400バールの圧力で、好ましくは125~300バールの圧力で、より好ましくは150バールの圧力で行われる。圧力は、100、125、150、200、250、300、350、または400バール、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲内にすることができる。
【0044】
一実施形態では、均質化された水性タンパク質懸濁液を約60℃~約160℃の温度で約1秒~約5分間熱処理して、熱処理タンパク質懸濁液を得る。
【0045】
一実施形態では、工程c.の熱処理は、約75℃~約105℃、好ましくは約60℃~約78℃、好ましくは75℃の温度で約30秒~30分間、好ましくは約30秒~5分間、より好ましくは5分間実施され、熱処理された懸濁液を得る。温度が高いほど、熱処理に必要な時間は短くなる。例えば、熱処理温度が160℃であれば、必要な処理時間はわずか1~5秒である。処理温度が30℃など低い場合は60分間程度となる場合がある。熱処理工程は低温殺菌であってもよく、これは約75℃~約105℃の温度で約30秒~約5分間実施することができ、好ましくは、低温殺菌は約75℃の温度で約30秒~約5分間、好ましくは約5分間行われる。
熱処理工程、つまり低温殺菌は衛生上の理由から行われる。熱処理された懸濁液は
図8aのようになる。
【0046】
熱処理は、約60℃~約160℃の温度で約1秒~約60分間熱処理して、熱処理タンパク質懸濁液を得ることができる。熱処理は、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、または160℃の温度、またはこれらのいずれか2つの値によって定義される範囲で実施することができる。熱処理は30秒間行ってもよいし、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、55、60分間、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲内で行ってもよい。
【0047】
一実施形態では、工程d.において、酸性化は微生物学的または化学的に行われる。
【0048】
一実施形態では、工程d.において、酸性化は、熱処理されたタンパク質懸濁液にスターター培養物を添加し、30℃~50℃の温度、より好ましくは35℃~45℃の温度、好ましくは45℃の温度で、15分~1時間、好ましくは30分間、pH4~pH7、好ましくはpH6~pH6.5のpHでインキュベートすることによって行われる。
【0049】
酸性化は、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49℃、または50℃、または、これらの値のいずれか2つによって定義される範囲内の温度で実行され得る。酸性化は、pH4、4.5、5、5.5、6、6.5または7のpHで、またはこれらの値の任意の2つによって定義される範囲内で実行され得る。
【0050】
一実施形態では、工程d.において、アスコルビン酸、および任意に香料が添加される。
一実施形態では、工程e.において、修飾は30℃~50℃の温度、好ましくは35℃~45℃の温度、より好ましくは45℃の温度で行われ、酸性化されたタンパク質懸濁液は、酵素処理、熱処理、風味改変、色改変、および酸、塩および多糖補助ゲル化による、架橋酵素を酵素的に使用するゲル化多糖による処理、選択されたタンパク質のゲル化点を超えて酸性化することによる処理、および/またはプロトン(酸、塩)を添加することによる処理からなる群から選択される1つ以上の処理に供され、好ましくは修飾は酵素処理である。
【0051】
好ましくは、酸性化タンパク質懸濁液の修飾は、架橋酵素を使用して酵素的に、酸、塩および多糖類によるゲル化によって、選択したタンパク質のゲル化点を超えて酸性化することによって、および/またはプロトン(酸、塩)を添加することによって行われる。より好ましくは、修飾は酵素処理である。
【0052】
一実施形態では、酵素処理は、トランスグルタミナーゼ、チロシナーゼ、カテコールオキシダーゼおよびラッカーゼからなる群から選択される架橋酵素を用いて行われ、好ましくは、架橋酵素はトランスグルタミナーゼである。
【0053】
一実施形態では、工程e.における修飾は30℃から50℃の温度で行われ、酸性化されたタンパク質懸濁液は、トランスグルタミナーゼ、チロシナーゼ、カテコールオキシダーゼおよびラッカーゼからなる群から選択される架橋酵素を使用する酵素処理に供され、好ましくは、架橋酵素はトランスグルタミナーゼである。
【0054】
一実施形態では、工程e.における修飾は30℃から50℃の温度で行われ、酸性化されたタンパク質懸濁液はトランスグルタミナーゼによる酵素処理に供される。
【0055】
酵素処理は、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50℃、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲内の温度で実施することができる。
一実施形態では、架橋酵素の量は、約0.01~1.0重量%、好ましくは0.05~0.8重量%、より好ましくは0.01~0.5重量%、最も好ましくは0.5重量%の架橋酵素である。架橋酵素の量は、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、もしくは1.0重量%、あるいはこれらの値の任意の2つによって定義される範囲であってよい。
【0056】
一実施形態では、タンパク質懸濁液は、pH4.5~5.9で約2時間凝固される。
【0057】
一実施形態では、工程f.における非乳成分ゲルの固化は、約4℃~約6℃の温度で12時間実行され、固化された非乳タンパク質ゲルが得られる。
【0058】
一実施形態では、工程f.の後、固化した非乳タンパク質ゲルは、以下からなる群から選択される1つ以上のさらなる処理に供される:5~12バール、好ましくは9バールで24時間未満、好ましくは4~6時間プレスすること、塩漬け、または2~15mmのサイズの粒子に切断し、その後プレスすること。
【0059】
一実施形態では、固化した非乳製品ゲルのプレスは、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、または4時間、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲内の時間、実行される。固化した非乳製品ゲルのプレスは、5、6、7、8、9、10、11、または12バールで、またはこれらの値の任意の2つによって定義される範囲で実行することができる。固化した非乳製品ゲルは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15mmの粒子に、またはこれらの値のうち任意の2つの値によって定義される範囲に切断できる。
【0060】
一実施形態において、本開示は、非乳タンパク質ゲルを製造するためのプロセスに関し、このプロセスは、以下の工程:
a.水と、非乳タンパク質を含む少なくとも1つの非乳ベースの原材料とを混合して、水性タンパク質懸濁液を得ること、
b.該水性タンパク質懸濁液を均質化して、均質化された水性タンパク質懸濁液を得ること、
c.該均質化された水性タンパク質懸濁液を約60℃~約160℃の温度で約1秒~約5分間熱処理して、熱処理タンパク質懸濁液を得ること、
d.熱処理タンパク質懸濁液を酸性化して酸性化タンパク質懸濁液を得ること、
e.約30℃~約50℃の温度での酵素処理によって酸性化タンパク質懸濁液を修飾して、非乳タンパク質ゲルを得ること、
f.非乳タンパク質ゲルを約5℃~約45℃の温度で8~12時間固化させて、固化した非乳タンパク質ゲルを得ること、
を含む。
【0061】
一実施形態において、本開示は、非乳タンパク質ゲルを製造するためのプロセスに関し、このプロセスは、以下の工程:
a.水と、非乳タンパク質を含む少なくとも1つの非乳ベースの原材料とを混合して、水性タンパク質懸濁液を得ること、
b.該水性タンパク質懸濁液を均質化して、均質化された水性タンパク質懸濁液を得ること、
c.該均質化された水性タンパク質懸濁液を約60℃~約160℃の温度で約1秒~約5分間熱処理して、熱処理タンパク質懸濁液を得ること、
d.熱処理タンパク質懸濁液を酸性化して酸性化タンパク質懸濁液を得ること、
e.約30℃~約50℃の温度で、トランスグルタミナーゼ、チロシナーゼ、カテコールオキシダーゼおよびラッカーゼからなる群から選択される架橋酵素を用いた酵素処理によって酸性化タンパク質懸濁液を修飾して、非乳タンパク質ゲルを得ること、
f.非乳タンパク質ゲルを約5℃~約45℃の温度で8~12時間固化させて、固化した非乳タンパク質ゲルを得ること、
を含む。
【0062】
一実施形態において、本開示は、非乳タンパク質ゲルを製造するためのプロセスに関し、このプロセスは、以下の工程:
a.水と、非乳タンパク質を含む少なくとも1つの非乳ベースの原材料とを混合して、水性タンパク質懸濁液を得ること、
b.該水性タンパク質懸濁液を均質化して、均質化された水性タンパク質懸濁液を得ること、
c.該均質化された水性タンパク質懸濁液を約60℃~約160℃の温度で約1秒~約5分間熱処理して、熱処理タンパク質懸濁液を得ること、
d.熱処理タンパク質懸濁液を酸性化して酸性化タンパク質懸濁液を得ること、
e.約30℃~約50℃の温度でトランスグルタミナーゼを用いた酵素処理によって酸性化タンパク質懸濁液を修飾して、非乳タンパク質ゲルを得ること、
f.非乳タンパク質ゲルを約5℃~約45℃の温度で8~12時間固化させて、固化した非乳タンパク質ゲルを得ること、
を含む。
【0063】
一実施形態において、本開示は、非乳タンパク質ゲルを製造するためのプロセスに関し、このプロセスは、以下の工程:
a.水と植物タンパク質分離物を混合して水性タンパク質懸濁液を得ること、
b.該水性タンパク質懸濁液を均質化して、均質化された水性タンパク質懸濁液を得ること、
c.該均質化された水性タンパク質懸濁液を約75℃~約105℃の温度で約30秒~約5分間熱処理して、熱処理タンパク質懸濁液を得ること、
d.熱処理タンパク質懸濁液を酸性化して酸性化タンパク質懸濁液を得ること、
e.約30℃~約50℃の温度でトランスグルタミナーゼを用いた酵素処理によって酸性化タンパク質懸濁液を修飾して、非乳タンパク質ゲルを得ること、
f.非乳タンパク質ゲルを約5℃~約45℃の温度で8~12時間固化させて、固化した非乳タンパク質ゲルを得ること、
を含む。
【0064】
本開示の好ましい実施形態では、植物タンパク質分離物、油脂、水、着色料、香味料および砂糖を調理用ミキサー内で均質になるまで混合して、水性タンパク質懸濁液を得る。水性タンパク質懸濁液は、高せん断下で75~95℃で1~10分間加熱することにより均質化され、低温殺菌される。塊を30~50℃に冷却する。次に、微生物スターターまたはグルコノデルタラクトン、またはその両方を使用して塊(熱処理したタンパク質懸濁液)を酸性化する。pHがpH5.0~5.7に達したら、酸性化したタンパク質懸濁液に架橋酵素を添加する。酵素処理された塊(非乳タンパク質ゲル)は、型またはパッケージに移される。塊を室温で3~15時間放置してゲル化させる。最終的なゲル化製品のpHは、pH4.2~4.8である。このpHでは、一部の水が製品から自然に排出される。これにより、塊の固形分含有量が35~45%に増加する。製品はブロック、スライス、キューブ、またはスティックにカットできる。
【0065】
さらに、本開示は、本明細書による方法で得られる非乳タンパク質ゲルに関する。
【0066】
本開示は、本開示による方法で得られる非乳製品チーズにも関する。
【0067】
一実施形態では、非乳製品チーズは、約5~30重量%、好ましくは約6~25重量%、より好ましくは約10~20重量%、最も好ましくは12~18重量%、さらに最も好ましくは14重量%の植物性タンパク質、約5~30重量%、好ましくは約10~20重量%、より好ましくは約15重量%の植物性油脂、約40~70重量%、好ましくは約50~66重量%、好ましくは約50~60重量%、より好ましくは53~57重量%の水を含む。
【0068】
一実施形態では、非乳製品チーズは、約1~5重量%、好ましくは2~4重量%、より好ましくは3重量%の砂糖、約0.0~2.0重量%、好ましくは0.5重量%の塩、約0.001~1.0重量%、好ましくは0.01~0.25重量%、より好ましくは0.1重量%の酸化防止剤、約0.05~1.0重量%、好ましくは0.08~0.5重量%、より好ましくは0.1重量%のスターター培養物、および約0.01~1.0重量%、好ましくは0.05~0.8重量%、より好ましくは0.01~0.5重量%、0.5重量%の架橋酵素、約0.1~0.5重量%、好ましくは0.2重量%の香料、および約0.5~2.0重量%、好ましくは1.5重量%の食用色素からなる群から選択される成分をさらに含む。
【0069】
一実施形態では、非乳製品チーズは、14重量%の非乳タンパク質、65.1重量%の水、15重量%の植物性油脂、3重量%の砂糖、0.5重量%の食塩、0.1重量%のアスコルビン酸、0.1重量%のスターター培養物、0.5重量%の架橋酵素、0.2重量%の香料、および1.5重量%の食用色素を含む。
【0070】
一実施形態では、非乳製品チーズは、14重量%の非乳タンパク質、56.1重量%の水、15重量%の植物性油脂、3重量%の砂糖、0.5重量%の食塩、0.1重量%のアスコルビン酸、0.1重量%のスターター培養物、0.5重量%の架橋酵素、0.2重量%の香料、および1.5重量%の食用色素を含む。
【0071】
一実施形態では、非乳製品チーズは、14重量%の非乳タンパク質、63重量%の水、20重量%の植物性油脂、1.0重量%の砂糖、1.0重量%のグルコノデルタラクトン、0.1重量%のスターター培養物、0.5重量%の架橋酵素、0.3重量%の香料、および0.1重量%の食用色素を含む。
【0072】
本開示による非乳タンパク質ゲルを使用して調製された非乳チーズは、以下の特徴を有する。硬度は5,000~40,000g(グラム)、好ましくは20,000~30,000g、より好ましくは26,000g、バネ性は0.3~0.9、好ましくは0.6~0.8、より好ましくは0.8、粘着性は2,000~14,000、好ましくは8,000~12,000、より好ましくは11,785。
【0073】
一実施形態では、本開示による非乳タンパク質ゲルを使用して調製された非乳チーズは、以下の特性を有し得る:硬度は20,000~30000g、好ましくは26,000g、バネ性は0.6~0.8、好ましくは0.8、粘着性は8,000~12,000、好ましくは11,785。
【0074】
硬度は、5,000g、10,000g、15,000g、20,000g、21,000g、22,000g、23,000g、24,000g、25,000g、26,000g、27,000g、28,000g、29,000g、30,000g、31,000g、32,000g、33,000g、34,000g、35,000g、36,000g、37,000g、38,000g、39,000g、または40,000gなど、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲内であり得る。
【0075】
バネ性は、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、または0.9など、またはこれらの値の任意の2つによって定義される範囲であり得る。
【0076】
粘着性は、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、または12,000など、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲であり得る。
【0077】
弾力性と粘着性は計算パラメータであり、相対的な尺度である。
【0078】
一実施形態では、チーズは、セミハードチーズ、セミソフトチーズ、またはクリームチーズである。
【0079】
塊は低温殺菌され(62~160℃で1秒~60分間、より好ましくは75~105℃で30秒~5分間)、例えば低温殺菌装置、ホモジナイザー、高せん断ミキサー、混合タンクまたはクッキングミキサーを使用して均質化され得る。低温殺菌後、塊は微生物学的または化学的に酸性化され得る。さらに、原料中の妨害成分を加水分解したり、色や風味を変えたりするために、塊を酵素で処理することもできる。選択したタンパク質のゲル化点を超えて塊を酸性化し、プロトン(酸)または他のイオン(塩)によって硬化することにより、塊をゲル形成用に修飾できる。イオン強度は塊のゲル化特性に強く影響し、そのレベルを使用して得られるテクスチャーを最適化できる。酸性化された塊のpHが5.8~6.8に達したときに、架橋酵素、好ましくはタンパク質架橋酵素を添加することによって酵素的に硬化させることによって塊を修飾することもできる。代替的または追加的に、他の化合物を混合する前に、水に溶解したタンパク質原料に対して酵素硬化を実行することもできる。また、代替的または追加的に、酵素硬化塊を硬化後に濃縮して、生成されるゲルの構造特性に影響を与えることもできる。また、代替的または追加的に、酸性化された塊は、ゲル化のために80~121℃に加熱することによって修飾することができる。あるいは、発酵塊をゲル化多糖類で硬化させることもできる。発酵温度はスターター微生物の特性に基づいて選択されるが、通常は30~45℃である。
【0080】
次に、塊を固化させる。温度はゲル化方法によって異なり、酸および多糖類を利用したゲル化の場合は5~30℃、酵素架橋ゲルの場合は5~45℃である。固化工程中にこれらの範囲内で段階的に温度を下げることもできる。
【0081】
固化後、生成物は塩水中で塩漬けするか、乾式塩漬けして包装することができる。あるいは、製品をプレスしてホエイを除去し、乾物含有量と硬度を高めることもできる。あるいは、目的のチーズの種類に応じて、製品を2~30mmの粒子サイズに切断し、乳製品チーズと同様にプレスすることもできる。この時点で架橋酵素を添加して、プレス中に粒子を結合させることができる。
【0082】
非乳タンパク質は、植物タンパク質(例えば、マメ科植物または穀物の種子、塊茎または他の植物組織由来)、藻類タンパク質、微生物タンパク質(例えば、細菌、真菌、酵母)であり得る。タンパク質は、組換え株を使用して生産できる。
【0083】
発酵には、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ビフィドバクテリウム属、スタフィロコッカス属、ペディオコッカス属、プロピオニバクテリウム属、アシディプロピオニバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、ペニシリウム属、ジェオトリクム属、サッカロミセス属、デバロマイセス属、アースロバクター属、マイクロバクテリウム属、クルイベロミセス属、または酸性化または発酵に役立つ他の細菌を含む、大量に増殖できるあらゆるスターターを使用できる。
【0084】
発酵性炭水化物は、外因性、内因性、または原料の加水分解によって形成される場合がある。発酵性炭水化物には、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、マルトトリオース、ラフィノース、スタキオース、ベルバスコース、ケストース、ガラクトース、メリビオース、セロビオース、リボース、ツラノース、キシロース、ラムノース、アラビノース、トレハロース、イヌリン、およびイノシトールが含まれる。
【0085】
油脂は、所望の質感および融解特性を有する、単一の油脂であってもよいし、混合物であってもよい。油脂は植物(例えば、キャノーラ、ココナッツ、シア、ヒマワリの種)、藻類、または微生物源に由来し得る。油脂は、組換え株を使用して生産できる。
【0086】
多糖類は、植物、藻類、微生物由来のゲル化多糖類、またはテクスチャー形成多糖類(例えば、ジェラン、寒天、カラギーナン、ペクチン、キサンタン、デンプン)であり得る。
【0087】
植物タンパク質に典型的な異臭を抑えるために、微生物発酵、酸化防止剤、およびホエイ排出中に製品から不要な風味化合物を洗い流すことが組み合わせて使用される。これらの方法を組み合わせることで、マイルドな風味と明るい色の製品が得られる。
【0088】
本発明の非乳製品チーズは、タンパク質含量が高く、精製豆類タンパク質分離物から製造される。
【0089】
本発明のプロセスで使用される豆類タンパク質はソラマメタンパク質であるが、豆、エンドウ豆、ひよこ豆またはレンズ豆等の他の豆類タンパク質であってもよい。
【0090】
本発明のプロセスのレシピで使用される脂肪は、ココナッツ油とシアバターの混合物であるが、乳脂肪の機能を模倣する同様のトリグリセリド含量を有する植物油の他の任意の混合物であってもよい。我々のレシピで使用する砂糖はサッカロースであるが、スターター培養細菌が発酵できる他の単糖類または二糖類であってもよい。
【0091】
レシピに含まれるアスコルビン酸は酸化防止剤として使用されており、最終製品の明るい色を保証する。
【0092】
タンパク質は、共有結合または非共有結合で架橋されたゲル構造を形成できる任意の方法(酵素、化学、酸または熱誘導架橋を含む)によって架橋することができる。
【0093】
チーズなどの製品のテクスチャーは、圧縮テストを実行するTA.XTテクスチャーアナライザーで測定できる。圧縮試験は、機器によるテクスチャー測定の中で最も簡単で一般的な試験である。サンプルを平らな面に置き、平らなプラテンを所定の力または距離までサンプル上に下げる。サンプルが変形し、変形の程度および/またはサンプルによってもたらされる抵抗が記録される。硬さ、バネ性(springiness)(弾力性(elasticity))、粘着性を測定する。
【0094】
硬度は、チーズを臼歯の間、または舌と口蓋の間で所定の変形または貫通点まで圧縮するのに必要な力である。硬度の値は、最初の圧縮中に発生するピークの力、すなわち、最初の圧縮の最大の力として表される。硬度は典型的にほとんどの製品で発生するが、最も深い圧縮点で発生する必要はない。
バネ性(弾力性)とは、変形したチーズから変形力を取り除いた後の回復の程度である。バネ性とは、製品が最初の圧縮中に変形し、ストローク間の目標待ち時間を待った後に物理的にどれだけよく戻るかということである。スプリングバックは2回目の圧縮のダウンストロークで測定される。場合によっては、待ち時間が長すぎると、調査対象の条件下での製品以上の反発が発生する可能性がある(たとえば、咀嚼の間に60秒間待機しない場合など)。バネ性は、製品の元の高さに対する比率またはパーセンテージとして表される。バネ性はいくつかの方法で測定されるが、最も典型的には、2回目の圧縮中に検出された高さの距離を元の圧縮距離で割った値によって測定される。
【0095】
粘着性とは、咀嚼を通じて持続する密度であり、チーズを飲み込める状態まで崩壊させるのに必要なエネルギーである。製品は同時に半固体と固体の両方にはならないため、粘着性と噛みごたえは両立しない。
【0096】
タンパク質含有量は、ISO8968-1、IDF20-1:2014の方法を使用して、油脂含有量はISO1735、IDF5:2004の方法を使用して、乾物含有量はISO6731、IDF21:2010の方法を使用して分析された。炭水化物含有量は、脂肪、タンパク質、および乾物含有量に基づいて計算された。
【0097】
本発明を以下の実施例によりさらに説明する。
【実施例】
【0098】
実施例1
セミハードタイプの熟成チーズ模造品
セミハード乳製品チーズに似た食感を持つ、タンパク質ベースの非乳製品チーズを製造するためのレシピとプロセスが開発された。本開示のタンパク質ベースの非乳製品チーズを製造するためのレシピを表1に示す。プロセスを
図2に示す。
【0099】
【0100】
乳製品を含まないチーズ模造品の製造プロセスは以下のとおり:ソラマメタンパク質分離物を水、その他の原材料:脂肪、砂糖(スクロース)、塩(塩化ナトリウム)および食用色素、と混合し、混合物を60℃に加熱し、150バールで均質化した。
【0101】
均質化した混合物をさらに75℃で5分間低温殺菌し、インキュベーション温度(45℃)まで冷却した。スターター培養物、アスコルビン酸および香料を添加し、混合物を約30分間、pH5.8~6.8まで発酵させた。その後、酸性化した懸濁液をゲル化するため、架橋酵素(味の素社製、トランスグルタミナーゼ)を添加し、凝固型に流し込み、pH4.5~5.9になるまで2時間凝固させた。ゲル化した塊を冷蔵保存(4~6℃)で12時間さらに硬化させた。次に、チーズ塊をプレス型に移動し、余分なホエイを水圧プレス(9バール、4~6時間)で押し出した。プレス後、チーズ模造品を塩水中で、または乾式塩漬けによって塩漬けした。
【0102】
我々のプロセスで製造された非乳製品チーズ模造品の質感は、表2に示すセミハード乳製品チーズに似ていた。
【0103】
【0104】
チーズのテクスチャーは、圧縮試験を実行するTA.XTテクスチャーアナライザーによって測定された。圧縮試験は、機器によるテクスチャー測定の中で最も簡単で一般的な試験である。サンプルを平らな表面上に置き、平らなプラテンを所定の力または距離までサンプル上に下げた。サンプルが変形し、変形の程度および/またはサンプルによってもたらされた抵抗が記録される。使用した分析はTPA75(テクスチャープロファイル分析、不可逆的方法、75%)であった。プローブはP75で、分析された製品は2段階で初期高さの75%圧縮された。
【0105】
食用色素と香料を加えることで、見た目と味も乳製品のチーズに似たものとなった。
【0106】
平均的なデンプンベースの非乳製品チーズと比較した本発明の非乳製品チーズの化学組成を表3に示す。
【0107】
【0108】
プレスして熟成させたセミハードチーズ模造品を
図2と3に示す。
【0109】
実施例2
固形分含有量の高い植物ベースのチーズ
エンドウ豆タンパク質分離物(市販のプロファム580)、植物性油脂(ココナッツ油とシア油の混合物)、水、着色料、香味料および砂糖を調理用ミキサー(ステファン・クッカー)内で50℃~60℃で均質になるまで混合した。この塊を低温殺菌し、高剪断下で75℃~95℃で1~10分間加熱することによって均質化した(ステファン・クッカー中)。塊を30℃~50℃に冷却した。次に、微生物スターター(Flora 1060、ラクトコッカス・ラクチス亜種クレモリス、ラクトコッカス・ラクチス亜種ラクチス、ラクトコッカス・ラクチス亜種ラクチスバイオバー、ジアセチラクチス、ロイコノストック)およびグルコノデルタラクトンを使用して塊を酸性化した。pH5.0~5.7に達したとき、架橋酵素トランスグルタミナーゼ(味の素)を塊に添加した。次いで、その塊を型に流し込んだ。塊の粘度は約1000cPであった。この塊を型内で室温で3~15時間ゲル化させた。最終的なゲル化生成物のpHは、pH4.4~4.6であった。このpHでは、一部の液体が生成物から自然に排出された。塊はプレスされなかった。これにより、塊の総固形分含有量が42.5%に増加した。製品はブロック、スライス、キューブ、またはスティックにカットできる。ビーガンチーズ製品は弾力性があり、スライスにカットすることができ、乳ベースの熟成チーズ(エダム、ゴーダなどのセミソフトチーズ)のようにロール状に巻いたときに崩れることがない。
【0110】
【0111】
実施例3
低脂肪サラダチーズ模造品
低脂肪サラダチーズ模造品のレシピを表5に示す。このプロセスを
図3に示す。植物タンパク質を水に混合し、調理用ミキサーで10%のせん断力下で水和させた。香料、油脂およびスパイスを加え、混合物をせん断下で10分間60℃に加熱して油脂を溶かし、ブレンドした。せん断速度を30%に増加させ、混合物を75℃まで5分間急速に加熱した。次に、せん断速度を10%に下げ、混合物を30℃に冷却した。グルコノデルタラクトン(GDL)を完全にブレンドし、混合物を容器に注ぎ、室温で5~10時間硬化させた。硬化したゲルを2~15mmの粒子に切断した。水に分散させた架橋酵素をカードと容器内で混合し、その混合物をプレス用のチーズ型に注いだ。型をチーズプレスに置き、圧力を9バールまで徐々に加えた。所望の乾物含有量が達成された後、チーズをプレス機から取り出し、所望の塩分含有量まで乾燥塩漬けした。チーズはそのまま包装することも、スライス、スティック、キューブなどにカットすることもできる。
【0112】
【0113】
カードを切断してプレスすることによって製造された低脂肪サラダチーズ模造品を
図4に示す。
【0114】
実施例5
植物ベースのチーズ
0.02重量%の亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)を、8重量%の空気分級ソラマメタンパク質濃縮粉と混合した後、水に可溶化し、0.1%のアスコルビン酸を懸濁液に可溶化した。水酸化ナトリウムを使用して懸濁液のpHを7.0に調整し、次いで懸濁液を室温で90分間混合した。懸濁液は、デカンター遠心分離機およびノズルボウル分離器を用いて不溶性固体を除去することによって清澄化された。清澄化した懸濁液を、既知のタンナーゼ活性を有する市販の酵素(Viscozyme L、Novozymes)0.1%を添加することによって酵素処理し、一定の混合下、室温で30分間インキュベートした。この後、酵素を80℃、5分間の加熱処理により失活させる。次いで、熱処理した懸濁液を、10kDaのスパイラル巻き膜を使用する限外濾過で濃縮し、ダイアフィルトレーションで洗浄した。続いて、濃縮されたソラマメタンパク質保持液を噴霧乾燥して、タンパク質含量が90重量%/乾物であるソラマメタンパク質分離物を生成した。
【0115】
ソラマメタンパク質分離物の構造形成特性を決定するために、ソラマメタンパク質分離物をビーガンチーズ用途で試験した。ソラマメタンパク質分離物を水と混合し、他の原材料(脂肪、砂糖(サッカロース)、塩(NaCl)、食用色素)を混合物に添加した。混合物を60℃に加熱し、150バールで均質化した。混合物をさらに75℃で5分間低温殺菌し、インキュベーション温度(45℃)まで冷却した。次に、微生物スターター培養物、アスコルビン酸および香料を添加し、混合物をpH6.0まで約30分間発酵させた。トランスグルタミナーゼ酵素を添加した後、混合物を凝固型に注ぎ、混合物をpH5.0まで2時間凝固させた。塊は冷蔵保存(4~6℃)で約12時間さらに硬化した。次に、チーズ塊をプレス型に移動し、余分なホエイを水圧プレス(9bar、4~6時間)で押し出した。圧搾後、ビーガンチーズを乾燥塩漬けした。
【0116】
参照文献
Everett, D.W. 2007. Microstructure of natural cheeses In: A.Y. Tamime (Ed.), Structure of dairy products, Blackwell Publishing Ltd., Oxford, UK.
Mintel, 2019. What's holding back alternative cheese? Powerpoint presentation by Jane Hurh, April 2019.
Oyeyinka, A.T., Odukoya, J.O. and Adebayo, Y.S., 2019. Nutritional composition and consumer acceptability of cheese analog from soy and cashew nut milk. Journal of Food Processing and Preservation, 43(12), p.e14285.
EP2731451B1
EP3366144A1
US2010196575A1
US2020323231A1
WO2017150973A1
WO2020089383A1
【国際調査報告】