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特表2023-551342スクロールヒドロキシル化材料のアシル化のためのプロセスおよび装置
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  • 特表-スクロールヒドロキシル化材料のアシル化のためのプロセスおよび装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】スクロールヒドロキシル化材料のアシル化のためのプロセスおよび装置
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/10 20060101AFI20231130BHJP
   D21H 17/11 20060101ALI20231130BHJP
   D21H 21/16 20060101ALI20231130BHJP
   D06M 13/188 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
D21H19/10 Z
D21H17/11
D21H21/16
D06M13/188
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555861
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 FR2020052238
(87)【国際公開番号】W WO2022117926
(87)【国際公開日】2022-06-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523204237
【氏名又は名称】セルロテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】サマン,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4L033
4L055
【Fターム(参考)】
4L033AB05
4L033AB07
4L033AC03
4L033AC15
4L033BA17
4L055AA00
4L055AG34
4L055AG37
4L055BE08
4L055BE10
4L055EA20
4L055EA25
4L055EA26
4L055EA32
4L055FA19
4L055FA30
4L055GA47
4L055GA50
(57)【要約】
本発明は、ヒドロキシル化材料(30)として知られている、反応生成ヒドロキシルとして知られているヒドロキシル基(-OH)(アクセス可能で、ガス形態の少なくとも1つの脂肪酸クロライド(29)と反応することができる)を有する固体材料のアシル化のためのプロセスに関し、前記ヒドロキシル化材料(30)は、アシル化チャンバ(5)として知られている、ガス雰囲気下の内部空間を区切るチャンバを通してスクロールされる。発明はまた、前記プロセスを実施するためのアシル化装置に関する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシル化材料(30)として知られている、反応生成ヒドロキシルとして知られているヒドロキシル基(-OH)(アクセス可能で、ガス形態の少なくとも1つの脂肪酸クロライド(29)と反応することができる)を有する、固体材料のアシル化のためのプロセスであって、
-前記ヒドロキシル化材料(30)はアシル化チャンバ(5)として知られている、ガス雰囲気下の内部空間を区切る、チャンバを通してスクロールされ;
-液体形態の脂肪酸クロライド(28)が前記スクロールヒドロキシル化材料(30)の表面に適用され;
-前記アシル化チャンバ(5)の前記ガス雰囲気は、前記アシル化チャンバ(5)内で前記スクロールヒドロキシル化材料(30)と接触する前記ガス雰囲気の温度が、グラフト温度(Tg)として知られ、前記脂肪酸クロライドの気化温度より低く、前記アシル化チャンバ(5)を通過する前記ヒドロキシル化材料(30)のアシル化を可能にするには十分である温度となるように加熱され;
-前記アシル化チャンバ(5)において、前記スクロールヒドロキシル化材料(30)に対して逆流するように下流から上流に流れるガス状組成物のストリームが維持され;これにより:
○前記アシル化材料(40)として知られているスクロール材料が、前記アシル化チャンバ(5)において前記反応生成ヒドロキシルの少なくとも一部とガス形態の脂肪酸クロライド(29)の間で起こる共有結合グラフトにより、アシル化反応の結果として形成され;ならびに
○前記アシル化反応の結果として生成された塩酸(35)がガス状組成物の前記ストリームにより下流から上流へ同伴される、プロセスにおいて、
前記ガス状組成物(36)の前記ストリームは、前記脂肪酸クロライドが前記アシル化チャンバ(5)の前記ガス雰囲気中で、ガス形態の前記脂肪酸クロライド(29)が前記アシル化チャンバ(5)の前記ガス雰囲気中、前記グラフト温度(Tg)での前記脂肪酸クロライドの飽和蒸気圧に実質的に等しい分圧で存在するような濃度で維持されるように調整されることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
前記脂肪酸クロライドおよび前記塩酸(35)が、前記アシル化チャンバ(5)から出て行くガス状組成物(36)の前記ストリームおよび前記アシル化チャンバ(5)の前記ガス雰囲気から選択された流体の少なくとも1つにおいて定量されること;ならびに
下記から形成される群より選択されたパラメータの少なくとも1つ:
-前記スクロールヒドロキシル化材料(30)の単位面積あたりの適用される前記脂肪酸クロライド(28)の量;
-前記アシル化チャンバ(5)を通る前記ヒドロキシル化材料(30)のスクロール速度;
-前記アシル化チャンバ(5)における前記ヒドロキシル化材料(30)の滞留時間;
-ガス状組成物(36)の前記ストリーム;
-前記ガス状組成物(36)の温度;ならびに
-前記アシル化チャンバ(5)における前記グラフト温度(Tg);
が、前記アシル化チャンバ(5)の上流のガス状組成物(36)の前記ストリームにおいて:
■ガス状塩酸(35)の濃度を最大化する;ならびに
■脂肪酸クロライドの濃度を最小に抑える;
ように、この定量の関数として調整されることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記スクロールアシル化材料(40)は、前記過剰脂肪酸クロライドのリサイクルに供せられることを特徴とし、
-前記スクロールアシル化材料(40)は、前記リサイクルチャンバ(12)として知られている、前記アシル化チャンバ(5)の下流に存在し、ガス雰囲気下の内部空間を区切る、チャンバを通過し;
-前記リサイクルチャンバ(12)の前記ガス雰囲気は、前記抽出温度(Te)として知られ、前記グラフト温度(Tg)より高く、各脂肪酸クロライドの気化温度より低い温度にされ;
-ガス状組成物(36)の前記ストリームは、前記リサイクルチャンバ(12)において前記アシル化材料(40)のスクロールに対して逆流するように、次いで、前記アシル化チャンバ(5)において、前記アシル化材料(40)により前記リサイクルチャンバ(12)中に同伴され、前記抽出温度(Te)の結果として気化される過剰脂肪酸クロライド(28)がガス形態で前記アシル化チャンバ(5)中にリサイクルされるように流れる、請求項1および2のいずれかに記載のプロセス。
【請求項4】
前記スクロールヒドロキシル化材料(30)は、予熱チャンバ(16)として知られており、前記アシル化チャンバ(5)の上流に配列され、ガス雰囲気下の内部空間を区切るチャンバにおいて予熱に供せられ、これは前記スクロールヒドロキシル化材料(30)の通過に好適であり;
前記予熱チャンバ(16)の前記ガス雰囲気は、予熱勾配として知られている、前記予熱チャンバ(16)中への前記ヒドロキシル化材料のための上流入口(17)と前記アシル化チャンバ(5)に向かう前記ヒドロキシル化材料のための下流出口(18)の間に存在する増加する温度勾配を有することを特徴とする、請求項1~3の一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ヒドロキシル化/アシル化材料(30、40)は、区分化チャンバ(21)を通して、前記区分化チャンバ(21)の上流入口(22)と下流出口(23)の間でスクロールされることを特徴とし、
-前記区分化チャンバ(21)の第1のコンパートメントは前記区分化チャンバ(21)の上流部分に存在する前記予熱チャンバ(16)により形成され;
-前記区分化チャンバ(21)の第2のコンパートメントは前記区分化チャンバ(21)の下流部分に存在する前記リサイクルチャンバ(12)により形成され;ならびに
-前記区分化チャンバの第3のコンパートメント(21)は前記予熱チャンバ(16)と前記リサイクルチャンバ(12)の間に配置された前記アシル化チャンバ(5)により形成され;
そのため、前記ヒドロキシル化/アシル化材料(30、40)は前記予熱チャンバ(16)、前記アシル化チャンバ(5)および前記リサイクルチャンバ(12)を、上流から下流まで通過する、請求項3および4に記載のプロセス。
【請求項6】
アシル化反応器(1)として知られている、反応生成ヒドロキシルとして知られているヒドロキシル基(-OH)(アクセス可能で、ガス形態の脂肪酸クロライド(29)と反応することができる)を有する固体「ヒドロキシル化」材料(30)のアシル化のための装置であって、前記アシル化反応器(1)は、
-前記アシル化反応器(1)の上流部分に存在する前記ヒドロキシル化材料(30)のリール(3)と前記アシル化反応器(1)の下流部分に存在するアシル化材料を収集するための部材(4)の間で前記ヒドロキシル化材料(30)をスクロールするための手段(2);
-前記アシル化チャンバ(5)として知られている、
○前記アシル化チャンバ(5)の上流入口(6)と下流出口(7)の間でスクロールされる前記ヒドロキシル化材料(30)の通過に好適であり;
○ガス雰囲気下の空間(8)を区切り;ならびに
○このガス雰囲気をグラフト温度(Tg)として知られ、前記脂肪酸クロライドの気化温度より低く、かつ、前記アシル化チャンバ(5)を通過する前記ヒドロキシル化材料(30)のアシル化を可能にできる温度で加熱するための手段(9)が備えられた、チャンバ;
-液体形態の脂肪酸クロライドを前記スクロールヒドロキシル化材料(30)の表面に適用するための装置(10)であって、前記アプリケーター装置(10)は前記アシル化チャンバ(5)の上流に存在する装置;ならびに
-ガス状組成物の前記ストリームが前記アシル化チャンバ(5)を、前記アシル化チャンバの下流から上流へ、前記ヒドロキシル化材料(30)のスクロールに対して逆流するように通過するように適合されたガス状組成物(36)のストリームを確立するための手段(11);
を備える装置であって、
前記アシル化反応器は、前記アシル化チャンバの前記ガス雰囲気において、脂肪酸クロライドの濃度を、ガス形態の脂肪酸クロライド(29)が前記アシル化チャンバ(5)のガス雰囲気中に、前記グラフト温度(Tg)での前記脂肪酸クロライドの飽和蒸気圧に実質的に等しい分圧で存在するように維持するのに好適である、ガス状組成物の前記ストリームを調整するための手段を含むことを特徴とする装置。
【請求項7】
ガス状組成物の前記ストリーム中に存在する化学種を分析し、定量するのに好適な分析装置(37)を備え、前記分析装置(37)はガス状組成物の前記ストリーム中の前記脂肪酸クロライドの濃度および塩酸(35)の濃度を表す定量データを生成することができることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記定量データを受け取り、これらの定量データを使用して、下記により形成される群から選択される、前記アシル化反応器(1)の部材の少なくとも1つを制御するように構成されるコンピュータ手段(50)を備えることを特徴とする、請求項7に記載の装置:
-前記ヒドロキシル化材料(30)をスクロールするための手段(2);
-前記脂肪酸クロライドを前記ヒドロキシル化材料(30)の表面に適用するための装置(10);
-前記アシル化チャンバ(5)の前記ガス雰囲気を前記グラフト温度(Tg)まで加熱するための手段(9);
-前記リサイクルチャンバ(12)の前記ガス雰囲気を前記リサイクル温度(Tr)まで加熱するための手段;
-前記予熱チャンバ(16)の前記ガス雰囲気を前記予熱勾配で加熱するための手段;
-ガス状組成物(36)の前記ストリームを確立するための手段(11);ならびに
-前記ガス状組成物(36)の温度を制御するための手段。
【請求項9】
前記リサイクルチャンバ(12)として知られており、前記アシル化チャンバ(5)の下流に配列され、ガス雰囲気下の空間(39)を区切り、前記リサイクルチャンバ(12)の上流入口(13)と下流出口(14)の間でスクロールされる前記アシル化材料(40)の通過に好適であるチャンバを備え、
前記アシル化チャンバ(5)および前記リサイクルチャンバ(12)はガス状組成物と連通しており、そのため、前記アシル化チャンバ(5)を前記アシル化反応器(1)の下流から上流へ通過するガス状組成物の前記ストリームは、最初に、前記リサイクルチャンバ(12)、次いで、前記アシル化チャンバ(5)を、前記アシル化材料(40)のスクロールに対して逆流するように通過し;
前記リサイクルチャンバ(12)は、前記リサイクルチャンバの前記ガス雰囲気(12)を、抽出温度(Te)として知られ、前記グラフト温度(Tg)より高く、前記脂肪酸クロライドの気化温度より低い温度まで加熱するための手段(15)を含むことを特徴とする、請求項6~8の一項に記載の装置。
【請求項10】
予熱チャンバ(16)として知られており、前記アシル化チャンバ(5)の下流に配列され、前記予熱チャンバ(16)の上流入口(17)と下流出口(18)間でスクロールされる前記ヒドロキシル化材料の通過に好適であり、ガス雰囲気下の内部空間(38)を区切るチャンバを備え;
前記予熱チャンバ(16)には、前記予熱チャンバ(16)の前記ガス雰囲気を、予熱勾配として知られており、前記予熱チャンバ(16)中への前記ヒドロキシル化材料のための上流入口(17)と前記予熱チャンバ(16)からの前記ヒドロキシル化材料ための下流出口(18)の間に存在する、増加する温度勾配に沿って加熱するための手段(19)が備えられることを特徴とする、請求項6~9の一項に記載の装置。
【請求項11】
前記区分化チャンバ(21)の入口(22)と出口(23)の間でスクロールされる前記ヒドロキシル化/アシル化材料(30、40)が長手方向に通過する区分化チャンバ(21)から形成され、
前記区分化チャンバ(21)の第1のコンパートメントは前記区分化チャンバ(21)の上流部分に存在する前記予熱チャンバ(16)により形成され、前記区分化チャンバ(21)の第2のコンパートメントは前記区分化チャンバ(21)の下流部分に存在する前記リサイクルチャンバ(12)により形成され、前記区分化チャンバ(21)の第3のコンパートメントは前記予熱チャンバ(16)と前記リサイクルチャンバ(12)の間に配置された、前記区分化チャンバ(21)の中間部分に存在する前記アシル化チャンバ(5)により形成されることを特徴とする、請求項6~10の一項に記載の装置。
【請求項12】
ガス状組成物(36)の前記ストリームと共に同伴される前記塩酸を保持するため、および、塩酸を実質的に含まないガス状組成物のストリームを放出するための部材(24)が備えられることを特徴とする、請求項6~11の一項に記載の装置。
【請求項13】
前記予熱チャンバ(16)、前記アシル化チャンバ(5)および前記リサイクルチャンバ(12)のうちの少なくとも1つには、前記アシル化反応器(1)内でスクロールされる前記ヒドロキシル化/アシル化材料(30、40)をガイドするための、前記スクロールヒドロキシル化/アシル化材料(30、40)を非線形経路に沿ってガイドするように配置される複数のロール(25)が備えられることを特徴とする、請求項6~12の一項に記載の装置。
【請求項14】
液体形態の前記脂肪酸クロライドを前記ヒドロキシル化材料(30)の表面に適用するための前記装置(10)は前記脂肪酸クロライドを前記ヒドロキシル化材料(30)の表面上で広げるための装置(27)を含み、前記展着装置(27)は、前記脂肪酸クロライドに対して非反応性であり、
○前記脂肪酸クロライドとの接触により脂肪酸クロライドを吸収する;ならびに
○前記ベルベット糸状要素の前記ヒドロキシル化材料との接触により、前記ヒドロキシル化材料の接触で脂肪酸クロライドを放出する
ことができる、ベルベット糸状要素が提供されたベルベットから形成された適用表面を有する回転展着装置であることを特徴とする、請求項6~13の一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応生成(reaction-generating)ヒドロキシルとして知られているヒドロキシル基(-OH)(アクセス可能で、ガス形態の脂肪酸クロライドと反応することができる)を有する固体「ヒドロキシル化」材料のクロマトジェニック(chromatogenic)合成によるアシル化のためのプロセスおよび装置に関し、前記ヒドロキシル化材料はスクロールされる。
【背景技術】
【0002】
WO2012/066015号は、下記を含むアシル化装置を使用して実施されるスクロールヒドロキシル化基材のアシル化のためのプロセスを開示する:
-ヒドロキシル化基材のコイルを受け取るように設計された上流リール;
-グラフト試薬をスクロールヒドロキシル化基材のヒドロキシル化面に適用するための装置;
-加熱ロールと共に、加熱ロールと接触してスクロールヒドロキシル化基材を受け取るためのギャップを形成するカウルでの回転加熱ロール;
-ヒドロキシル化基材のヒドロキシル化面と反対の面を加熱ロールと接触させて配置するための、加熱ロールと関連するバー供給システム;
-加熱ロールの下流に配列され、ヒドロキシル化基材に対して逆流するように流れ、基材をフラッシングし、過剰のグラフト試薬および形成された塩酸を同伴するように意図されたエアナイフをギャップ内に導入するための部材;ならびに
-加熱ロールの上流に配置された塩酸抽出装置;
-処理済み基材を巻き戻すための下流装置。
【0003】
発明者は、WO2012/066015号の装置を使用してアシル化された基材は、脂肪酸クロライドを含むペンタンの溶液をこの同じヒドロキシル化基材に適用し、続いてガスストリームを適用することにより得ることができるものより低い疎水性を有することを見出した。WO2012/066015号のプロセスは最適化されていない。それはアシル化基材に、最適で、十分長く持続する疎水性および水不透過性を与えない。この点において、WO2012/066015号のプロセスに従いアシル化された基材上に置かれた純水滴の接触角値は、明らかに、90°より大きいが、脂肪酸クロライドを含むペンタンの溶液を適用することにより得られる150°の最適値より低いままである。
【0004】
発明者は、WO2012/066015号の装置のギャップにおけるヒドロキシル化基材をフラッシングするエアナイフは、反応の結果形成された塩酸を除去するのを可能にするが、それはまた、ガス状グラフト試薬を同伴し、そのヒドロキシル化基材との最適反応ができなくすると考える。これにより不十分な疎水性特性という結果になる。
【0005】
よって、アシル化反応の効率および収率を改善する解決策が求められる。特に、ヒドロキシル化材料を準工業または工業規模で処理する、ならびに、それを、疎水性の観点からのその性能品質が十分であるアシル化材料に変換することができるようにそのような解決策が求められる。
【0006】
よって、発明は、反応生成ヒドロキシルを有する固体材料(前記反応生成ヒドロキシルのために親水性である)を、疎水性かつ水不透過性材料に効率的変換することができるクロマトジェニックアシル化プロセスおよびそのようなプロセスを実施するための装置を提案することに向けられる。
【0007】
特に、発明は、通気性かつ水不透過性であるアシル化紙材料を生成するためのそのようなプロセスおよびそのような装置を提案することに向けられる。
【0008】
より特定的には、発明は、濾過による汚染除去のためのアシル化紙材料の生成のためのそのようなプロセスおよびそのような装置を提案することに向けられる。
【0009】
よって、発明はセルロース繊維から本質的に構成されるヒドロキシル化材料をアシル化するためのそのようなプロセスおよびそのような装置を提案することに向けられる。
【0010】
発明はまた、クロマトジェニック合成によるアシル化反応の最適化を可能にするヒドロキシル化材料をアシル化するためのそのようなプロセスおよびそのような装置を提案することに向けられる。
【0011】
発明は特に、スクロール幅の形態で紙材料をアシル化するためのそのようなプロセスおよびそのような装置を提案することに向けられる。
【0012】
よって、発明は、ヒドロキシル化材料として知られている、反応生成ヒドロキシルとして知られているヒドロキシル基(-OH)(アクセス可能で、少なくとも1つのガス形態の脂肪酸クロライドと反応することができる)を有する固体材料のアシル化のためのプロセスに関し:
-前記ヒドロキシル化材料はアシル化チャンバとして知られている、ガス雰囲気下の内部空間を区切るチャンバを通してスクロールされ;
-液体形態の脂肪酸クロライドが前記スクロールヒドロキシル化材料の表面に適用され;
-前記アシル化チャンバのガス雰囲気は、前記アシル化チャンバ内で前記スクロールヒドロキシル化材料と接触するガス雰囲気の温度が、グラフト温度(Tg)として知られ、脂肪酸クロライドの気化温度より低く-特に150℃~220℃、特に約180℃-、前記アシル化チャンバを通過する前記ヒドロキシル化材料のアシル化を可能にするのに十分である温度となるように加熱され;
-前記アシル化チャンバにおいて下流から上流に、前記スクロールヒドロキシル化材料に対して逆流するように流れるガス状組成物のストリーム-特に大気のストリーム-が維持され;
これにより:
○アシル化材料として知られているスクロール材料が、前記アシル化チャンバにおいて、前記反応生成ヒドロキシルの少なくとも一部とガス形態の脂肪酸クロライドの間で起こる共有結合グラフトによるアシル化反応の結果として形成され;ならびに
○アシル化反応の結果として生成されたガス状塩酸がガス状組成物のストリームにより下流から上流へ同伴され;
ガス状組成物のストリームが、脂肪酸クロライド(ガス形態または前記アシル化チャンバのガス雰囲気に分散されたエアロゾル液体形態)が、前記アシル化チャンバのガス雰囲気において、ガス形態の脂肪酸クロライドが前記アシル化チャンバのガス雰囲気中、前記グラフト温度(Tg)での脂肪酸クロライドの飽和蒸気圧に実質的に等しい分圧で存在するような濃度で維持されように調整されることが特徴とされる。
【0013】
本文全体を通して:
-「ヒドロキシル化/アシル化材料」という表現は、前記アシル化反応器内にヒドロキシル化形態(遊離ヒドロキシル)で導入された場合、アシル化チャンバ内でのそのスクロール中に少なくとも部分的にアシル化された材料に変換される材料を示し、この場合、前記ヒドロキシル化材料のヒドロキシル基の少なくとも一部は前記アシル化材料のアシル基に変換され;ならびに
-「上流」および「下流」という用語は前記アシル化チャンバの上流に存在する前記ヒドロキシル化材料のリールから、アシル化反応の結果としてアシル化された材料を収集するための部材に向かう前記ヒドロキシル化材料のスクロールの方向に対して規定され、収集部材は前記アシル化チャンバの下流に存在する。前記アシル化チャンバ内でヒドロキシル化/アシル化材料のスクロールの方向に対して逆流するようなガス状組成物のストリームの循環の方向に関しては、前記ヒドロキシル化/アシル化材料のスクロールの方向に対して規定される「上流」および「下流」という用語の定義は、本文全体を通して保存される。ガス状組成物のストリームは前記ヒドロキシル化/アシル化材料に対して逆流するように、かつ、全体的に前記アシル化チャンバおよびアシル化反応器の下流から前記アシル化チャンバおよびアシル化反応器の上流へ流れる。
【0014】
よって、発明は、そのアシル化の目的での、ヒドロキシル化材料、すなわち、遊離反応生成ヒドロキシル基(アクセス可能で、少なくとも1つのガス形態の脂肪酸クロライドと反応することができる)を有する材料のストリップまたは幅-特にロールとしてまたは折り畳まれたシートとして調整されている-の大気圧での工業および/または前工業処理のためのプロセスに関し、前記ヒドロキシル化材料は前記アシル化チャンバ内で前記ヒドロキシル化/アシル化材料のストリップの長手方向軸に沿ってスクロールされる。
【0015】
クロマトジェニックアシル化反応の一般原理によれば、脂肪酸クロライド、特に長鎖脂肪酸クロライドは、下記式に従い、ガス形態で、ヒドロキシル化材料の反応生成ヒドロキシルと反応し、前記ヒドロキシル化材料と脂肪酸クロライドの炭化水素ベースの脂肪鎖(R)の間でエステル結合を形成する:
【数1】
【0016】
そのような反応生成ヒドロキシルを有するセルロース系材料、例えば紙に適用されるクロマトジェニックアシル化反応が特に知られている。炭化水素ベースの脂肪鎖(R)と共に形成されたエステル結合におけるセルロース系材料の反応生成かつ親水性ヒドロキシルの使用により、アシル化セルロース系材料のセルロース繊維の疎水性の増加が可能になり、疎水性および水不透過性特性が与えられる。クロマトジェニックアシル化反応は、溶媒なしで、特に有機溶媒なしで起こる。これは触媒なしで進行し、反応の終わりでの前記触媒の除去が必要とされない。これは、脂肪酸クロライドをその気化温度より低い温度まで、大気圧で加熱することにより起こる。これはまた、反応の結果として生成されたガス状塩酸(HCl)がガス状組成物のストリームにより同伴されるという事実により促進される。この同伴により、形成されたエステルの加水分解を制限し、または完全に防止すること、ならびに、反応平衡を反応生成物およびアシル化材料(材料-O-CO-R)の形成の方向でシフトさせることが可能になる。
【0017】
本発明によるプロセスにおいては、ガス状組成物のストリームが、反応の結果形成された塩酸を同伴し、この反応の平衡をシフトさせるのに十分なものとなるように、しかし、前記アシル化チャンバのガス雰囲気中で、脂肪酸クロライドを、ガス形態の脂肪酸クロライドが前記アシル化チャンバのガス雰囲気中に、前記グラフト温度(Tg)での脂肪酸クロライドの飽和蒸気圧に可能な限り近い、特に実質的に等しい分圧で存在するような濃度で維持するのに十分小さなものになるように調整される。
【0018】
本発明によるプロセスのある一定の実施形態では、脂肪酸クロライド、特にガス形態の脂肪酸クロライド、および塩酸が、前記アシル化チャンバから出て行くガス状組成物のストリームおよび前記アシル化チャンバのガス雰囲気から選択された流体の少なくとも1つにおいて定量され;ならびに、下記から形成される群より選択されるパラメータの少なくとも1つ、特に各々:
-前記スクロールヒドロキシル化材料の単位面積あたりの適用される脂肪酸クロライドの量;
-前記アシル化チャンバを通るヒドロキシル化材料のスクロール速度;
-前記アシル化チャンバにおける前記ヒドロキシル化材料の滞留時間;
-ガス状組成物の流速;
-ガス状組成物の温度;ならびに
-前記アシル化チャンバにおける前記グラフト温度(Tg)
が、前記アシル化チャンバの上流のガス状組成物のストリームにおいて、
■ガス状塩酸の濃度を最大化する;ならびに
■脂肪酸クロライドの濃度を最小に抑える、ようにこの定量の関数として調整される。
【0019】
これらの実施形態では、上記パラメータの少なくとも1つが、前記アシル化チャンバの上流出口でのガス状組成物のストリーム中の塩酸の濃度を最大化するように調整され、塩酸に富むガス状組成物のストリームの生成はアシル化反応の的確な進行の指標を構成する。上記パラメータの少なくとも1つが、前記アシル化チャンバの上流出口でのガス状組成物のストリーム中の脂肪酸クロライドの濃度を最小に抑えるように調整される。
【0020】
特に、これらのパラメータの少なくとも1つ、特に前記ヒドロキシル化材料の表面に適用される前記脂肪酸クロライドの量および/または前記グラフト温度(Tg)および/またはガス状組成物のストリームおよび/または前記ヒドロキシル化材料のスクロール速度および/または前記アシル化チャンバにおける前記ヒドロキシル化材料の滞留時間は、前記ヒドロキシル化材料の端にあり、これと接触する、前記アシル化チャンバのガス雰囲気中の脂肪酸クロライドの濃度が、前記グラフト温度(Tg)での脂肪酸クロライドの飽和蒸気圧に実質的に対応するように調整される。
【0021】
前記アシル化チャンバの上流のガス状組成物のストリーム中の過剰濃度での脂肪酸クロライド(ガス形態およびガス雰囲気に分散されたエアロゾル液体形態)の存在は、脂肪酸クロライドの大部分および前記ヒドロキシル化材料の反応を可能にするには不適切である反応条件を示す。これらの条件の不適切性は特に下記から起こり得る:
-前記ヒドロキシル化材料上に堆積された過剰量の脂肪酸クロライド;および/または
-前記ヒドロキシル化材料の不適切なスクロール速度;および/または
-前記アシル化チャンバにおいて脂肪酸クロライドの十分な濃度を維持することができないガス状組成物の過剰ストリーム;および/または
-アシル化反応ができない前記アシル化チャンバにおける温度値。
【0022】
本発明によるプロセスにおいては、ガス状組成物のストリーム中の脂肪酸クロライドは前記アシル化チャンバの上流で、および/または前記アシル化チャンバ内で提供される任意の好適な手段により定量される。それは、特に分析ガスクロマトグラフィー(GC)の分野における任意の公知の検出手段により連続して定量することができる。そのような定量は、例えば、水素炎イオン化検出器(FID)により、または、質量分析により実施することができる。塩酸はガス状組成物のストリーム中で任意の好適な手段により、例えば、ガス状組成物のストリームの水性組成物中でのスパージング、この水性組成物のpH測定滴定により定量することができる。前記アシル化チャンバにおける、および/または前記アシル化チャンバの上流での、ガス状組成物のストリーム中の塩酸および脂肪酸クロライドのそのような定量化は、少なくとも1つの上記パラメータの調整およびアシル化反応進行の最適化を可能にする。
【0023】
ある一定の実施形態では、前記アシル化チャンバのガス雰囲気は:
-前記ヒドロキシル化/アシル化材料と前記アシル化チャンバのガス雰囲気の間での熱交換を促進する;
-液体脂肪酸クロライドの蒸発、および、前記アシル化チャンバ内で生じるガス状脂肪酸クロライドの拡散を可能にする;
-アシル化反応の結果として形成された塩酸を同伴し、この塩酸により引き起こされる前記ヒドロキシル化/アシル化材料の分解を制限する
ように、好適なブレンディングに供せられる。
【0024】
組合わせて;
-ガス形態の脂肪酸クロライドの分圧が前記グラフト温度(Tg)での脂肪酸クロライドの飽和蒸気圧に実質的に等しくなるような前記アシル化チャンバのガス雰囲気中の脂肪酸クロライドの濃度値;
-前記アシル化チャンバの上流のガス状組成物のストリームにおける脂肪酸クロライドの低濃度値;ならびに
-前記ヒドロキシル化材料に適用される脂肪酸クロライドの量の結果として到達され得る最大理論濃度値の大きさのオーダーの、前記アシル化チャンバの上流のガス状組成物のストリーム中の塩酸の濃度値;
が最適反応条件の指標を構成する。
【0025】
本発明によるプロセスにおいては、上記パラメータの少なくとも1つは、前記アシル化チャンバのガス雰囲気中の脂肪酸クロライドの濃度が、ガス形態の脂肪酸クロライドの分圧が前記グラフト温度(Tg)での飽和蒸気圧に実質的に等しくなるように調整される。
【0026】
本発明によるアシル化プロセスおよび装置では、前記アシル化チャンバは密閉チャンバである。これはガス雰囲気下の空間を制限し、その中で、ガス形態の脂肪酸クロライドが、少なくとも前記ヒドロキシル化材料の閉環境で存在することができ、前記グラフト温度(Tg)での脂肪酸クロライドの飽和蒸気圧に実質的に等しい分圧を有し、これにより、アシル化反応が有利になる。
【0027】
好ましくは、前記アシル化チャンバのガス雰囲気は加熱手段により、加熱表面の前記ヒドロキシル化材料との接触なしで加熱される。しかしながら、これらの加熱手段が、加熱手段の加熱表面の前記ヒドロキシル化材料との接触により加熱するための追加の手段を含むことが想定されることを妨げることはない。
【0028】
ある一定の有利な実施形態では、前記スクロールアシル化材料は、過剰の脂肪酸クロライドのリサイクルに供せられ、この場合:
-前記スクロールアシル化材料は、前記アシル化チャンバの下流に存在し、ガス雰囲気下の内部空間を区切る、リサイクルチャンバとして知られているチャンバを通過し;
-前記リサイクルチャンバのガス雰囲気は、抽出温度(Te)として知られ、前記グラフト温度(Tg)より高く、脂肪酸クロライドの気化温度より低い、特に180℃~240℃、特に約200℃の温度にされ;
-ガス状組成物のストリームは、前記リサイクルチャンバ内で、前記アシル化材料のスクロールに対して逆流するように、次いで、前記アシル化チャンバ内で流れ、そのため、前記アシル化材料により前記リサイクルチャンバ中に同伴され、および、前記抽出温度(Te)の結果として気化される過剰脂肪酸クロライドはガス形態で前記アシル化チャンバ中にリサイクルされ、前記アシル化チャンバ内で温度低減の結果として凝結する。
【0029】
本発明によるプロセスにおいては、前記アシル化材料は前記グラフト温度(Tg)より高い前記抽出温度(Te)にされた前記リサイクルチャンバを通過する。前記アシル化材料上に堆積された液体形態の脂肪酸クロライドの少なくとも一部は前記アシル化材料が、前記グラフト温度(Tg)の前記リサイクルチャンバに入る結果としてガス形態になり、ガス状組成物のストリームにより同伴され、前記アシル化チャンバ中にリサイクルされる。脂肪酸クロライドの前記アシル化チャンバ中への同伴は、前記アシル化チャンバ中での温度減少と組み合わされて、前記アシル化チャンバ内での脂肪酸クロライドの凝結を促進する。アシル化が有利になる。
【0030】
ある一定の実施形態では、前記リサイクルチャンバのガス雰囲気は加熱手段により加熱表面の前記アシル化材料との接触なしで加熱される。とはいうものの、前記リサイクルチャンバのガス雰囲気を加熱するための手段が、前記リサイクルチャンバのガス雰囲気の加熱に寄与する、前記アシル化材料との接触により加熱するための追加の手段を含むことを妨げることはない。
【0031】
ある一定の実施形態では、前記スクロールヒドロキシル化材料は、前記アシル化チャンバの上流に配列され、前記スクロールヒドロキシル化材料の通過に好適なガス雰囲気下の内部空間を区切る予熱チャンバとして知られているチャンバ内で予熱、特に乾燥に供せられ;
前記予熱チャンバのガス雰囲気は、前記ヒドロキシル化材料の前記予熱チャンバ中への上流入口と前記ヒドロキシル化材料の前記アシル化チャンバに向かう下流出口の間に存在する、予熱勾配として知られている増加する温度勾配を有する。
【0032】
前記予熱勾配は上流入口で大気温度、特に20℃~50℃から、前記予熱チャンバの下流出口で前記グラフト温度(Tg)、特に150℃~220℃まで広がることができる。前記予熱勾配は下記を組合わせて形成させることができる:
-前記予熱チャンバの中央部分を予熱温度(Ts)として知られている温度、大気温度~前記グラフト温度(Tg)まで加熱することにより;ならびに
-前記予熱チャンバ内で流れ、前記予熱チャンバに前記グラフト温度(Tg)で入るガス状組成物のストリームにより。
【0033】
これらの実施形態では、ガス状組成物のストリームは:
-前記予熱チャンバ内で、前記ヒドロキシル化材料に対して逆流するように;次いで、
-前記アシル化チャンバ内でのアシル化反応の結果として形成された塩酸を抽出するための部材において
流れる。
【0034】
前記予熱勾配は最初に、前記予熱チャンバ内を流れる前記ヒドロキシル化材料を乾燥させることができ、前記ヒドロキシル化材料がガス状組成物のストリームにより同伴されることにより水蒸気が排出される。これにより、次に、前記予熱チャンバの下流から上流への温度の降下のために、前記予熱チャンバ中にガス状組成物のストリームと共に同伴されるガス形態の脂肪酸クロライドの凝結が可能になる。
【0035】
ある一定の実施形態では、前記予熱チャンバのガス雰囲気は加熱手段により、加熱表面の前記ヒドロキシル化材料との接触なしで加熱される。しかしながら、他の実施形態では、加熱手段が、前記ヒドロキシル化材料との接触により加熱するための表面を有する追加の手段、特に加熱ロールを含むと想定されることを妨げることはない。そのような加熱手段は、前記ヒドロキシル化材料を、前記予熱チャンバの下流出口で可能な限り前記グラフト温度(Tg)に近い温度にするように選択される。
【0036】
ある一定の実施形態では、前記予熱チャンバのガス雰囲気は、前記予熱チャンバのガス雰囲気と前記ヒドロキシル化材料の間の熱交換および前記ヒドロキシル化材料上での脂肪酸クロライドの凝結を促進するのに好適なブレンディングに供せられる。前記予熱チャンバは区分化され得、各コンパートメントには、そのコンパートメントのガス雰囲気をブレンドするための部材が備えられる。
【0037】
本発明によるプロセスのある一定の有利な実施形態では、前記ヒドロキシル化/アシル化材料は、区分化チャンバを通して、前記区分化チャンバの上流入口と下流出口の間でスクロールされ、この場合:
-前記区分化チャンバの第1のコンパートメントは前記区分化チャンバの上流部分に存在する前記予熱チャンバにより形成され;
-前記区分化チャンバの第2のコンパートメントは前記区分化チャンバの下流部分に存在する前記リサイクルチャンバにより形成され;ならびに
-前記区分化チャンバの第3のコンパートメントは前記予熱チャンバと前記リサイクルチャンバの間に配置された前記アシル化チャンバにより形成され;
そのため、前記ヒドロキシル化/アシル化材料は前記予熱チャンバ、前記アシル化チャンバおよび前記リサイクルチャンバを、上流から下流まで通過する。
【0038】
発明によるプロセスのある一定の実施形態では、塩酸および脂肪酸クロライドのうちの少なくとも1つがガス状組成物のストリームにおいて分析され、アッセイされ、少なくとも1つのプロセスパラメータがこのアッセイの結果の関数として調整され、調整されるパラメータは下記パラメータから選択される:
-前記ヒドロキシル化材料の単位面積あたりに適用される脂肪酸クロライドの量;
-前記アシル化チャンバを通るヒドロキシル化材料のスクロール速度;
-ガス状組成物のストリーム;
-ガス状組成物のストリームの温度;
-前記グラフト温度(Tg);
-前記予熱勾配;
-前記リサイクル温度(Tr);
-前記予熱チャンバを通る前記ヒドロキシル化材料の移動長さ;
-前記アシル化チャンバを通る前記ヒドロキシル化/アシル化材料の移動長さ;ならびに
-前記リサイクルチャンバを通る前記アシル化材料の移動長さ。
【0039】
これらの実施形態では、上記パラメータの少なくとも1つが、前記区分化チャンバの上流出口でのガス状組成物のストリーム中の塩酸の濃度を最大化するように調整される。塩酸に富むそのようなガス状組成物のストリームは、アシル化反応の的確な進行の指標を構成する。上記パラメータの少なくとも1つが、前記区分化チャンバの上流出口でのガス状組成物のストリーム中の脂肪酸クロライドの濃度を最小に抑えるように調整される。上記パラメータの少なくとも1つが、前記アシル化チャンバ中のガス状組成物のストリーム中の脂肪酸クロライドの濃度を最適化するように調整される。
【0040】
発明はまた、反応生成ヒドロキシルとして知られているヒドロキシル基(-OH)(アクセス可能で、ガス形態の脂肪酸クロライドと反応することができる)を有する、固体「ヒドロキシル化」材料のアシル化のためのアシル化反応器として知られている装置に関し、前記アシル化反応器は下記を含み:
-前記ヒドロキシル化材料を、前記アシル化反応器の上流部分に存在する前記ヒドロキシル化材料のリールと前記アシル化反応器の下流部分に存在するアシル化材料を収集するための部材の間でスクロールするための手段;
-アシル化チャンバとして知られているチャンバであって;
○前記アシル化チャンバの上流入口と下流出口の間でスクロールされる前記ヒドロキシル化材料の通過に好適であり;
○ガス雰囲気下の空間を区切り;ならびに
○このガス雰囲気をグラフト温度(Tg)として知られ、脂肪酸クロライドの気化温度より低く-特に150℃~220℃、特に約180℃-、前記アシル化チャンバを通過する前記ヒドロキシル化材料のアシル化を可能にできる温度で加熱し維持するための手段が備えられる、チャンバ;
-特に連続して、液体形態の脂肪酸クロライドを前記スクロールヒドロキシル化材料の表面に適用するための装置であって、アプリケーター装置は前記アシル化チャンバの上流に存在する、装置;ならびに
-ガス状組成物のストリームが前記アシル化チャンバを前記アシル化チャンバの下流から上流に、前記ヒドロキシル化材料のスクロール対して逆流するように通過するように適応されたガス状組成物のストリームを確立するための手段;
前記アシル化チャンバのガス雰囲気中で脂肪酸クロライド(ガス形態またはガス雰囲気に分散された液体エアロゾル形態)の濃度を、ガス形態の脂肪酸クロライドが、前記アシル化チャンバのガス雰囲気中に、前記グラフト温度(Tg)での脂肪酸クロライドの飽和蒸気圧に実質的に等しい分圧で存在するように維持するのに好適である、ガス状組成物のストリームを調整するための手段を含むことを特徴とする。
【0041】
発明はまた、本発明によるプロセスを実施するための、反応生成ヒドロキシルとして知られている、ヒドロキシル基(-OH)(アクセス可能で、ガス形態の脂肪酸クロライドと反応することができる)を有する、固体「ヒドロキシル化」材料のアシル化のためのアシル化反応器として知られている装置に関する。
【0042】
前記ヒドロキシル化材料をアシル化するためのプロセスと関連して以上で記載される利点はまた、前記アシル化反応器に当てはまる。
【0043】
ある一定の実施形態では、本発明による前記アシル化反応器は、前記アシル化チャンバとは異なり、前記アシル化チャンバの下流に配列され、ガス雰囲気下の空間を区切り、前記リサイクルチャンバの上流入口と下流出口の間で(前記ヒドロキシル化/アシル化材料のスクロールの方向に対して)スクロールする前記アシル化材料の通過に好適な、リサイクルチャンバとして知られているチャンバを備え、
前記アシル化チャンバおよび前記リサイクルチャンバはガス状組成物と連通しており、そのため、前記アシル化チャンバを前記アシル化反応器の下流から上流へ通過するガス状組成物のストリームが最初に前記リサイクルチャンバ、次いで前記アシル化チャンバを、前記アシル化材料のスクロールに対して逆流するように通過し;
前記リサイクルチャンバは、前記リサイクルチャンバのガス雰囲気を、抽出温度(Te)として知られており、前記グラフト温度(Tg)より高く、大気圧での脂肪酸クロライドの気化温度より低い温度、特に180℃~240℃の温度、特に約200℃まで加熱するための手段を含む。
【0044】
ある一定の有利な実施形態では、本発明による前記アシル化反応器は、予熱チャンバとして知られている、前記アシル化チャンバおよび前記リサイクルチャンバとは異なり、前記アシル化チャンバの上流に配列され、前記予熱チャンバの上流入口と下流出口の間でスクロールする前記ヒドロキシル化材料の通過に好適であり、ガス雰囲気下の内部空間を区切るチャンバを備え;
前記予熱チャンバには、前記予熱チャンバのガス雰囲気を予熱勾配として知られている、前記ヒドロキシル化材料のための前記予熱チャンバ中への上流入口と、前記予熱チャンバから出て行く前記ヒドロキシル化材料のための下流出口の間に存在する、増加する温度勾配に沿って加熱するための手段が備えられる。
【0045】
ある一定の実施形態では、前記アシル化反応器は区分化チャンバから形成され、これを前記区分化チャンバの入口と出口の間でスクロールされる前記ヒドロキシル化/アシル化材料が長手方向に通過し、前記区分化チャンバの第1のコンパートメントは区分化チャンバの上流部分に存在する前記予熱チャンバにより形成され、前記区分化チャンバの第2のコンパートメントは前記区分化チャンバの下流部分に存在する前記リサイクルチャンバにより形成され、前記区分化チャンバの第3のコンパートメントは、前記予熱チャンバと前記リサイクルチャンバの間に配置された区分化チャンバの中間部分に存在する前記アシル化チャンバにより形成される。
【0046】
前記アシル化反応器は便宜的に小型である。デザインが簡単で、3つのアシル化、予熱およびリサイクルチャンバの各々を、スクロールヒドロキシル化/アシル化材料が通過し、よって、前記予熱チャンバのガス雰囲気と前記予熱勾配に沿って接触して、次いで、前記アシル化チャンバのガス雰囲気と前記グラフト温度(Tg)で接触し、次いで、前記リサイクルチャンバのガス雰囲気と前記リサイクル温度(Tr)で接触して、連続して配置される。その上、ガス状組成物のストリームは、前記リサイクルチャンバ(本質的にガス形態の脂肪酸クロライドが提供される)、次いで、前記アシル化チャンバ(温度の降下のために、アシル化反応の結果として、脂肪酸クロライドが解放され、アシル化反応の結果として塩酸が提供される)、次いで、前記予熱チャンバを、連続して通過する。よって、一方で、前記アシル化チャンバと前記リサイクルチャンバを分離する壁、および、他方で、前記アシル化チャンバと前記予熱チャンバを分離する壁に作られた、前記ヒドロキシル化/アシル化材料およびガス状組成物のストリームのための開口部を提供することで十分である。
【0047】
前記区分化チャンバの加熱手段、特に前記アシル化チャンバ、前記予熱チャンバおよび前記リサイクルチャンバの加熱手段は任意の型とすることができる。ある一定の実施形態では、これらの加熱手段は、前記スクロールヒドロキシル化/アシル化材料の遠隔加熱のための、前記ヒドロキシル化/アシル化材料との接触なしの手段であり、それらは:
-前記アシル化チャンバのガス雰囲気を前記グラフト温度(Tg)で;
-前記リサイクルチャンバのガス雰囲気を前記抽出温度(Te)で;ならびに
-前記予熱チャンバのガス雰囲気を前記予熱勾配で
加熱し維持するのに好適である。
【0048】
ある一定の実施形態では、加熱手段は少なくとも1つの熱交換器を含むことができ、その少なくとも1つの加熱表面は、前記ガス雰囲気と接触する。特に、ある一定の実施形態では、前記熱交換器は前記アシル化チャンバ、前記予熱チャンバおよび/または前記リサイクルチャンバの外壁を形成する。しかしながら、これらの加熱手段が、加熱手段の加熱表面の前記ヒドロキシル化材料との接触により加熱するための追加の手段を含むことを妨げることはない。
【0049】
本発明による前記アシル化反応器には、ガス状組成物のストリーム中に、特に、前記アシル化チャンバ、前記リサイクルチャンバまたは前記予熱チャンバ中を流れるガス状組成物のストリーム中に、および/または、前記アシル化チャンバまたは前記予熱チャンバまたは前記区分化チャンバの上流出口で、存在する化学種、特に脂肪酸クロライドおよび塩酸を分析し、定量するのに好適な分析装置が備えられる。分析装置は、ガス状組成物のストリーム中の脂肪酸クロライドの濃度および塩酸の濃度を表す定量データを生成することができる。分析装置は前記アシル化チャンバのガス雰囲気中の脂肪酸クロライドの濃度および塩酸の濃度を表す定量データを生成することができる。そのような分析装置は、前記アシル化反応器の任意の部分における脂肪酸クロライドの濃度および塩酸の濃度のモニタリング(または化学モニタリング)、特に、連続およびリアルタイムモニタリングを可能にする。
【0050】
そのような分析装置はまた、アシル化反応の調整可能なパラメータ、例えば前記グラフト温度(Tg)、前記予熱温度(Ts)勾配、前記リサイクル温度(Tr)、ヒドロキシル化材料のスクロール速度、前記アシル化チャンバにおける前記ヒドロキシル化材料の滞留時間、前記ヒドロキシル化材料に適用される前記脂肪酸クロライドの面積密度、および、特に、ガス状組成物のストリームの調整、特にリアルタイム調整を可能にする。
【0051】
ある一定の実施形態では、前記アシル化反応器は定量データを受け取り、これらの定量データを使用して、下記により形成される群から選択される前記アシル化反応器の部材の少なくとも1つ、特に各々を制御するように構成される、コンピュータ手段を備える:
-前記ヒドロキシル化材料をスクロールするための手段;
-脂肪酸クロライドを前記ヒドロキシル化材料の表面に適用するための装置;
-前記アシル化チャンバのガス雰囲気を前記グラフト温度(Tg)まで加熱するための手段;
-前記リサイクルチャンバのガス雰囲気を前記リサイクル温度(Tr)まで加熱するための手段;
-前記予熱チャンバのガス雰囲気を前記予熱勾配で加熱するための手段;
-ガス状組成物のストリームを確立するための手段;ならびに
-ガス状組成物の温度を制御するための手段。
【0052】
ある一定の実施形態では、前記アシル化チャンバには、前記アシル化チャンバ内で、ヒドロキシル化/アシル化材料の平面に実質的に平行で、ヒドロキシル化/アシル化材料のスクロール方向に実質的に直角な流れ方向のガス状組成物の、クロスストリームとして知られているストリームを形成するための手段が備えられる。そのような手段は段ボールから形成されるヒドロキシル化材料をアシル化するのに好適である。この実施形態では、前記クロスストリームの流れ方向は段ボールの波型に実質的に平行であり、そのため、前記クロスストリームは段ボールの波型により形成される穴を通って長手方向に流れ、通過する。
【0053】
ある一定の実施形態では、前記アシル化反応器には、ガス状組成物のストリームと共に同伴される塩酸を保持し、塩酸を実質的に含まないガス状組成物のストリームを放出するための部材が備えられる。任意の塩酸保持/トラップ部材が可能である。それはガス状組成物のストリームがスパージされる少なくとも1つの塩基性化合物の水溶液を含むトラップであってもよい。便宜的に、前記アシル化反応器の外側に放出されたガス状組成物のストリームは塩酸を実質的に含まない。
【0054】
本発明によるアシル化反応器のある一定の実施形態では、前記予熱チャンバ、前記アシル化チャンバおよび前記リサイクルチャンバのうちの少なくとも1つには、スクロールヒドロキシル化/アシル化材料をガイドするための複数のロールが備えられ、それらは、スクロールヒドロキシル化/アシル化材料を非線形経路に沿ってガイドするように配置される。
【0055】
本発明によるアシル化反応器のある一定の有利な実施形態では、液体形態の脂肪酸クロライドを前記ヒドロキシル化材料の表面に適用するための装置は脂肪酸クロライドを前記ヒドロキシル化材料の表面上で広げるための装置を含み、展着装置は、脂肪酸クロライドに対して非反応性であり、:
○前記少なくとも1つの脂肪酸クロライドとの接触により脂肪酸クロライドを吸収し;ならびに
○ベルベット糸状要素の前記ヒドロキシル化材料との接触により、前記ヒドロキシル化材料の接触で脂肪酸クロライドを放出する
ことができる、ベルベット糸状要素が備えられたベルベットから形成された適用表面を有する回転展着装置である。ある一定の実施形態では、展着装置は「ラッカーロール」型を有する。
【0056】
展着装置により、均一に、再現性良く、かつ均質に少量の脂肪酸クロライドを前記ヒドロキシル化材料の表面上で広げることが可能になるが、しかしながら、この少量はアシル化材料に、発明以前のプロセスにより得られたアシル化材料の疎水性、耐漏性および撥水性に少なくとも等しいか、さらには一般にこれより大きい、疎水性、水性液体に対する耐漏性および撥水性を与えるのに十分である。
【0057】
発明はまた、反応生成ヒドロキシルとして知られているヒドロキシル基(-OH)(アクセス可能で、ガス形態の脂肪酸クロライドと反応することができる)を有する固体材料のアシル化のためのプロセスおよび装置に関し、以上または以下で言及される特性の全てかいくつかによる組合わせを特徴とする。与えられる形式的な提示に関係なく、明確に別記されない限り、以上または以下で言及される様々な特性は、厳密にまたは密接に共に関連していると考えられるべきではなく、発明は、これらの構造または機能特性の1つのみ、またはこれらの構造または機能特性の一部のみ、またはこれらの構造または機能特性の1つの一部のみ、あるいはこれらの構造または機能特性の全てまたは一部の任意の群、組合わせまたは並置に関することができる。
【0058】
発明の他の目的、特性および利点は、発明のある一定の実施形態の非限定的な例示的な実施例、および、添付の図面を示す、下記説明を読むと明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本発明によるアシル化反応器の第1の特定の実施形態の概略断面図である。
図2】本発明によるアシル化反応器の第2の特定の実施形態の概略断面図である。
図3】本発明によるアシル化反応器のアシル化チャンバの1つの特定の実施形態の概略斜視図である。
図4】本発明によるアシル化プロセスの特定の実施形態を示す概観図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1、2および3では、アシル化反応器の要素の寸法および比率は縮尺通りではない。特に、ヒドロキシル化材料のスクロール方向に延在するアシル化反応器の長さは、明快にするためにアシル化反応器の断面に対して低減される。
【0061】
発明者は、下記を決定した:
-脂肪酸クロライドの気化がアシル化反応には必要である;
-ヒドロキシル化材料を、グラフト温度にてガス形態の脂肪酸クロライドで飽和させた(すなわち、ガス状組成物のストリームがない)閉チャンバ内に入れると、ヒドロキシル化材料の遅いアシル化のみが引き起こされ、これは、スクロールヒドロキシル化材料の処理と両立しない;
-液体形態の脂肪酸クロライドを支持するヒドロキシル化材料上への激しい空気ストリームの適用は、ガス形態の脂肪酸クロライドを同伴することができ、ヒドロキシル化材料の低アシル化のみが可能になり、ガス形態の脂肪酸クロライドの実質的な損失につながる。
【0062】
発明者は、アシル化反応を促進するためには、従うべきアプローチは、1)液体形態の脂肪酸クロライドをヒドロキシル化材料の表面に適用すること、2)反応温度を前記グラフト温度(Tg)に調整すること、および3)反応の結果形成された塩酸を同伴するのに全く十分であるが、また、前記アシル化チャンバのガス雰囲気中、脂肪酸クロライドを飽和条件下で維持するには十分低い空気ストリームを適用することであることを発見した。発明者によれば、クロマトジェニックアシル化反応は、脂肪酸クロライドの気化および/または凝結に伴う「遷移状態」と呼ばれる脂肪酸クロライドの特定の物理的状態から進行し、脂肪酸クロライドの状態の変化(気化/凝結)はその反応性に有利である。この理由は、もし、脂肪酸クロライドの濃度が前記グラフト温度(Tg)での脂肪酸クロライドの飽和蒸気圧に対応する濃度より低い場合、液体脂肪酸クロライドは蒸発し、ガス雰囲気に移行し、ガス状組成物のストリームは前記ヒドロキシル化/アシル化材料上で再凝結しないからである。脂肪酸クロライドの濃度が、飽和蒸気圧に対応する濃度に少なくとも等しい場合、ガス状脂肪酸クロライドはガス状組成物のストリーム中に同伴される前に再凝結する。発明者は、WO2012/066015号の装置において形成された空気ストリーム(または「エアナイフ」)により、塩酸を同伴することが可能になるが、他方、前記ヒドロキシル化材料の接触で、十分な濃度の脂肪酸クロライド、特に、この「遷移状態」の脂肪酸クロライドを有するガス雰囲気を維持することができなくなると考える。
【0063】
WO2012/066015号の塩酸を同伴するエアナイフは最適アシル化条件を促進しない。WO2012/066015号のプロセスおよび装置は、ヒドロキシル化材料の脂肪酸クロライドを含む有機溶媒、特にペンタンの溶液を用いた含浸による非工業プロセスを介して得られるアシル化材料のそれに匹敵する疎水性を有するアシル化材料を生成することができない。WO2012/066015号により得られたアシル化材料の疎水性と非工業プロセスにより得られたアシル化材料の疎水性を-Cobb指数を測定することにより、アシル化基材の表面上に堆積させた1滴の水により形成された接触角を測定することにより、およびそのようなアシル化基材から形成された水ポケットの漏水性(leaktightness)の試験により-比較することにより、WO2012/066015号のプロセスにより得られたアシル化材料の疎水性は、非工業プロセスにより得られたアシル化材料の疎水性よりも低いこと、および、WO2012/066015号のプロセスおよび装置はアシル化反応を促進しないことが観察された。加えて、WO2012/066015号のプロセスでは、不完全にアシル化された材料のみしか得られず、かつ、過剰の脂肪酸クロライドを堆積させるという代償を払うことしかできず、その過剰分はプロセスの終わりに材料から除去する必要がある。
【0064】
よって、アシル化条件は、前記ヒドロキシル化材料に適用される脂肪酸クロライドに関して調整されなければならないことが決定された。例として、パルミチン酸塩化物(CH-(CH14-CO-Cl)の飽和蒸気圧は、160℃の温度で107g/mのオーダーであり、180℃の温度で205g/mのオーダーである。ステアリン酸塩化物(CH-(CH16-CO-Cl)の飽和蒸気圧は、160℃の温度で9g/mのオーダーであり、180℃の温度で117g/mのオーダーである。よって、前記アシル化チャンバにおける温度は、脂肪酸クロライドの濃度および前記アシル化チャンバのガス雰囲気中のガス形態の脂肪酸クロライドの分圧を最大化するように調整されるべきである。ガス状組成物のストリームもまた、この温度に関して調整されるべきである。
【0065】
本発明によるプロセスにおいては、前記アシル化チャンバの出口でのガス状組成物のストリーム中の塩酸の濃度、前記アシル化チャンバの出口でのガス状組成物のストリーム中の脂肪酸クロライドの濃度および前記アシル化チャンバのガス雰囲気中の脂肪酸クロライドの濃度が特に測定され、前記アシル化チャンバにおけるグラフト温度(Tg)および/または前記ヒドロキシル化材料の単位面積あたりに適用される脂肪酸クロライドの量および/またはヒドロキシル化材料のスクロール速度および/または前記アシル化チャンバ、前記予熱チャンバおよび/または前記リサイクルチャンバにおける前記ヒドロキシル化材料の滞留時間および/またはガス状組成物のストリームが、これらの測定の結果に従い調整される。
【0066】
前記アシル化チャンバの上流のガス状組成物のストリームにおける塩酸の低い濃度は不十分なアシル化効率を示す。それは、脂肪酸クロライドの前記ヒドロキシル化材料への適用の欠陥、または、前記アシル化チャンバにおける過度に低い温度値のいずれかを明らかにする可能性がある。前記アシル化チャンバの上流のガス状組成物のストリームにおける、および、堆積された脂肪酸クロライドの量の結果として到達され得る最大理論分圧値の大きさのオーダーの塩酸の高い濃度は、最適反応条件、または、アシル化反応にとってペナルティーとなる脂肪酸クロライドの加水分解につながるヒドロキシル化材料の過度に高い湿度のいずれかを示す。
【0067】
前記アシル化チャンバの上流のガス状組成物のストリームにおける脂肪酸クロライドの低い濃度は、脂肪酸クロライドの適用における欠陥、最適反応条件、またはアシル化反応を許さない前記アシル化チャンバにおける過度に低い温度のいずれかの指標を構成する。塩酸のかなりの濃度と相まって、脂肪酸クロライドのそのような低い濃度は、最適反応条件を示す。
【0068】
前記アシル化チャンバの上流のガス状組成物のストリームにおける脂肪酸クロライドの高い濃度は、上流での脂肪酸クロライドの過剰の堆積、または非最適な反応条件、特にガス状組成物の過度に高いストリームおよび/または前記アシル化チャンバにおける過度に高い温度のいずれかを示し得る。前記アシル化チャンバにおける脂肪酸クロライドの濃度の測定により、最適反応条件、すなわち飽和蒸気圧で、過剰ではないことを断言することが可能になる。
【0069】
前記アシル化チャンバにおける脂肪酸クロライドの高い濃度は、上流での脂肪酸クロライドの過剰適用、または前記アシル化材料の表面上に大量の脂肪酸クロライドを残す非最適反応条件、またはガス状組成物の過度に低いストリームのいずれかを示す。
【0070】
アシル化反応の化学量論量に対して塩酸の過度に高い濃度は、ヒドロキシル化材料に含まれる水による脂肪酸クロライドの分解の副反応を示し得る。
【0071】
反応生成ヒドロキシルとして知られているヒドロキシル基(-OH)(アクセス可能で、ガス形態の少なくとも1つの脂肪酸クロライドと反応することができる)を有する、ヒドロキシル化材料30と呼ばれる固体材料のアシル化のための、アシル化反応器1として知られている装置の第1の変形例が図1に示される。前記アシル化反応器1は、前記ヒドロキシル化材料30を、前記アシル化反応器1の上流部分に存在するリール3と前記アシル化反応器1の下流部分に存在するアシル化材料を収集するための部材4の間でスクロールするための手段2を備える。前記アシル化反応器における前記ヒドロキシル化/アシル化材料30、40、41のスクロール方向は矢印43により示される。スクロール手段2は、調整可能なスクロール速度、特に30m/分超、好ましくは100m/分超での前記ヒドロキシル化材料30、40、41のスクロールを可能にするのに好適である。上流リール3はロールまたはコイルの形態で調整されたヒドロキシル化材料のリールであってもよく、収集部材4はアシル化材料41を巻き上げる、および、巻き戻すための部材であってもよい。リール3の任意の他の形態が可能であり、例えば、一連の折り畳まれたシートの形態で調整されたヒドロキシル化材料のリール3である。
【0072】
図1で示される前記アシル化反応器1は、ガス雰囲気下の内部空間を区切り、前記ヒドロキシル化材料30のための前記アシル化チャンバ5中への上流入口6、および、収集部材4上で調整される準備ができたアシル化材料41のための下流出口7を有する、アシル化チャンバ5として知られているチャンバを備える。上流入口6および下流出口7は各々、前記アシル化チャンバ5内に、ヒドロキシル化材料のスクロールに対して横方向に存在する開口、特にスリットを形成する。上流入口開口および下流出口開口のサイズはヒドロキシル化材料のスクロールを妨害しないように選択され、前記アシル化チャンバ5内でのガス雰囲気の制御された閉じ込めを可能にするのに十分小さい。前記アシル化チャンバ5はガス雰囲気下の内部空間38、8、39を形成し、これは、上流から下流までスクロール方向43でスクロールされる前記ヒドロキシル化/アシル化材料30、40、41の長手方向の通過に好適である。前記アシル化チャンバ5は前記アシル化チャンバ5のガス雰囲気を加熱するための手段19、9、15を有する。加熱手段19、9、15は、前記アシル化チャンバ5の少なくとも1つのゾーン、特に中央ゾーン8のガス雰囲気を、グラフト温度(Tg)として知られ、脂肪酸クロライドの気化温度より低く、前記アシル化チャンバ5を通過する前記ヒドロキシル化材料30のアシル化を可能にするのに十分な温度にするのに好適である。加熱手段19、9、15は任意の型とすることができる。それらはガス雰囲気を伝導により加熱するのに好適である熱交換器19、9、15であってもよい。しかしながら、加熱手段19、9、15が誘導または放射加熱手段であることを妨げることはない。特定の実施形態では、熱交換器19、9、15は前記アシル化チャンバ5の雰囲気を熱勾配で加熱するのに好適であり、これにより、温度は前記アシル化チャンバ5内で上流から下流まで増加し、前記アシル化チャンバ5の少なくとも中央部分は前記グラフト温度(Tg)で維持される。このように、クロマトジェニックアシル化反応は最適化される。
【0073】
図1で示される前記アシル化反応器1は、ガス状組成物のストリームを前記アシル化チャンバ5の下流部分に導入するための手段11を備える。それらは、前記アシル化チャンバ5を下流から上流へ、前記ヒドロキシル化/アシル化材料30、40、41のスクロール方向43に対して逆流するように通過するガス状組成物のストリーム、特に大気のストリームを確立することを可能にする。ある一定の実施形態では、空気ストリームを導入するための手段11は、大気を取り込み、前記アシル化チャンバ5に空気ストリームのための下流入口47を介して入り、前記アシル化チャンバ5から上流出口51を介して出て行く空気ストリームを形成するように構成されたタービンを含む。ある一定の実施形態では、空気ストリームのための下流入口47は、アシル化材料のための出口スリット7と一致し、そのため、前記アシル化チャンバ5にヒドロキシル化材料のための出口スリット7を介して入る空気ストリーム36は、ガス雰囲気の前記アシル化チャンバ5からのスリット7を介した漏れに対抗する、特に完全に防止する。ガス状組成物のストリームを導入するための手段11は、このストリームを調整するための手段を含む。それらはまた、この空気ストリームを、その前記アシル化チャンバ5中への導入前に加熱するための手段を含み得る。前記アシル化チャンバ5中への空気ストリームのための下流入口47は、前記アシル化チャンバ5の全幅にわたって、かつ、アシル化材料幅の全幅にわたって横方向に存在するスリットを形成する。それにより、空気ストリームを前記アシル化チャンバ5の全幅にわたって広げるためのエアナイフの形成が可能になる。空気ストリームを前記アシル化チャンバ5の下流部分に導入するための手段11が、前記アシル化チャンバ5の空気ストリームのための上流出口51で現れる、前記アシル化チャンバ5のガス雰囲気を吸い上げるためのポンプ11’を含むことを妨げることはない。
【0074】
図1で示されるアシル化反応器1では、本発明によるプロセスの実行中、前記アシル化チャンバ5において逆流するように流れる空気ストリームはエアナイフを形成し、その流速は、アシル化反応の結果として形成された塩酸の同伴を可能にするのに十分である、かつ、前記アシル化チャンバ5のガス雰囲気中で、反応を可能にするのに十分である脂肪酸クロライドの濃度を維持するのに十分低くなるように調整される。
【0075】
空気ストリームのための上流出口51は、適切な場合には吸引ポンプ11’により同伴されて、この空気ストリームを分析するための装置37上に現れる。分析装置37は、この空気ストリーム中に存在し得る化学種、特にガス状塩酸、脂肪酸クロライドおよび、適切な場合には、水蒸気を分析し、定量するための手段を含む。前記アシル化反応器1はまた、前記アシル化チャンバ5を出て行く空気ストリーム中の脂肪酸クロライドを分析し、定量するための装置52を含み、この出て行く空気ストリームの組成は、前記アシル化チャンバ5のガス雰囲気の組成を表す。そのような分析装置37、52は、コンピュータ装置50と一緒に、アシル化反応の最適進行を制御し、必要に応じて、前記アシル化反応器1の少なくとも1つの制御パラメータの調整を実施するための指示を提供すること可能にする。
【0076】
前記アシル化反応器1はまた、空気ストリームに対して分析装置37の下流に位置する空気ストリーム中に存在するガス状塩酸を抽出するための部材24を備える。抽出部材24は、ガス状塩酸を空気ストリームからトラップし、地表大気中に、塩酸を実質的に含まない空気ストリームを放出するのに好適である。
【0077】
図1で示される前記アシル化反応器は、脂肪酸クロライドを前記スクロールヒドロキシル化材料30に適用するための装置10を備える。アプリケーター装置10は固定されており、これにより、脂肪酸クロライドを連続してスクロールヒドロキシル化材料30上に堆積させることが可能になる。アプリケーター装置10は、前記ヒドロキシル化材料30の2つの主面上、または、その主面の1つのみの上での堆積を実施することができるように選択される。アプリケーター装置10は印刷装置、特にフレキソ印刷装置または輪転グラビア印刷装置を含み得る。アプリケーター装置10は「アニロックス」ロールを含むことができ、そのセル寸法および表面密度は堆積される脂肪酸クロライドの量に適している。
【0078】
脂肪酸クロライドの前記ヒドロキシル化材料の2つの主面の1つのみ上への堆積を予想することを妨げるものはなく、前記ヒドロキシル化材料の別の面は、堆積物とは反対の面に適用される回転プライを用いた堆積中にマスクされ、前記ヒドロキシル化材料のスクロールを伴う。高い回転運動性で、ヒドロキシル化材料の面の1つを材料、特にデンプンのコートでコーティングすることを予想するのを妨げるものはなく、それはその面に疎水性を付与するには不適切である。
【0079】
図1で示される前記アシル化反応器1は、脂肪酸クロライドを適用するための装置10の上流で前記ヒドロキシル化材料30を加熱するための装置26を備える。この加熱装置26は任意的である。それは、前記ヒドロキシル化材料30を、脂肪酸クロライドのその後の堆積を可能にする、かつ、そのヒドロキシル化材料への適用中それを液体形態で維持するのに好適な温度にすることができるように適合される。加熱装置26は任意の型、特に放射加熱装置(例えば、赤外線加熱装置)または熱交換器とすることができる。
【0080】
本発明によるアシル化反応器1の図示されていない1つの変形例では、アプリケーター装置は、第1に、脂肪酸クロライドを不連続塊として、ヒドロキシル化材料の表面上に横方向に堆積させるための上流フレキソ印刷装置または輪転グラビア印刷装置、ならびに、第2に、脂肪酸クロライドを前記ヒドロキシル化材料の全表面上に広げるための下流部材を含み得る。そのような展着部材は、ベルベット糸状要素が提供されたベルベットから形成された前記ヒドロキシル化材料と接触するための表面を有し得る。そのような展着部材により、20mg/m~1g/mの脂肪酸クロライド/平方メートルのヒドロキシル化材料の密度で、前記ヒドロキシル化材料の表面上に均一な堆積物を形成することが可能になる。そのような展着部材は「ラッカーロール」型を有することができ、この展着ステップは40℃~190℃の温度で実施される。
【0081】
本発明によるアシル化反応器1の第2の変形例が図2に示される。前記アシル化反応器1は、図1で記載されるように、下記を備える:
-前記ヒドロキシル化材料30をスクロールするための手段2;
-脂肪酸クロライドを前記スクロールヒドロキシル化材料30に適用するための装置10;
-脂肪酸クロライド(複数可)を適用するための装置10の上流で前記ヒドロキシル化材料30を加熱するための装置26;
-大気のストリームを前記区分化チャンバ21に導入し、この空気ストリームを下流から上流へ、前記区分化チャンバ21における前記ヒドロキシル化/アシル化材料30、40、41のスクロール方向43に対して逆流するように循環させるための手段11;
-ガス状組成物のストリームに対して分析装置37の下流に配置された、ガス状組成物のストリーム中に存在するガス状塩酸を抽出するための部材24。
【0082】
図1で示される前記アシル化反応器1は、区分化チャンバ21への前記ヒドロキシル化材料30ための上流入口22、および、収集部材4において調整される準備ができたアシル化材料41のための下流出口23を有する区分化チャンバ21を備える。上流入口22および下流出口23は各々、前記区分化チャンバ21内に、ヒドロキシル化/アシル化材料のスクロールに対して横方向に存在する開口、特にスリットを形成する。上流入口開口22および下流出口開口23のサイズはヒドロキシル化材料のスクロールを妨害しないように選択され、前記区分化チャンバ21におけるガス雰囲気の制御された閉じ込めを可能にするのに十分小さい。前記区分化チャンバ21は、上流から下流へスクロールされる前記ヒドロキシル化/アシル化材料30、40、41の次から次への通過に好適な3つの並置されたコンパートメント16、5、12から形成される。それは、上流から下流まで、前記アシル化反応器1の上流部分に存在し、予熱チャンバ16として知られているチャンバを形成し、前記ヒドロキシル化材料30のための入口17と出口18の間で増加する温度勾配を有するガス雰囲気下の内部空間38を区切る第1のコンパートメントを含む。前記予熱チャンバ16は、前記予熱チャンバ16の内部空間38内に配列された少なくとも1つの熱交換器19、特に複数の交換器を含む。熱交換器(複数可)19は、前記予熱チャンバ16のガス雰囲気を前記予熱勾配に沿って加熱するのに好適である。よって、前記予熱温度(Tp)にされる前記予熱チャンバ16を通過する前記ヒドロキシル化材料30は少なくとも部分的に加熱される。例えば、そのような温度勾配は、大気温度のオーダー、特に40℃のオーダーの上流温度から、グラフト温度(Tg)のオーダーの下流温度まで広がり得る。言うまでもなく、この温度勾配は、前記予熱チャンバ16を下流から上流へ、スクロールヒドロキシル化材料30に対して逆流するように通過する熱気ストリームを考慮して確立される。
【0083】
前記区分化チャンバ21は前記予熱チャンバ16の下流に存在する第2のコンパートメントを含む。この第2のコンパートメントは、前記アシル化チャンバ5を形成し、ガス雰囲気下の内部空間8を区切り、これは、各脂肪酸クロライドの気化温度未満の前記グラフト温度(Tg)-特に150℃~220℃、特に約180℃-まで加熱することができ、前記アシル化チャンバ5を通過する前記ヒドロキシル化材料30のアシル化を可能にできる。前記アシル化チャンバ5は、前記アシル化チャンバ5の内部空間8内に配列された少なくとも1つの熱交換器9を含む。熱交換器9は、特に対流により、前記アシル化チャンバ5のガス雰囲気を前記グラフト温度(Tg)まで加熱するのに好適である。
【0084】
前記区分化チャンバ21はまた、前記アシル化チャンバ5の下流に、かつ、前記区分化チャンバ21の下流部分に存在する第3のコンパートメントを含む。この第3のコンパートメントは、リサイクルチャンバ12として知られている、ガス雰囲気下の内部空間39を区切るチャンバを形成し、これは、リサイクル温度(Tr)として知られており、脂肪酸クロライドの気化温度より低く、前記グラフト温度(Tg)より高い温度、特に180℃~240℃、特に約200℃の温度まで加熱することができる。前記リサイクル温度(Tr)は前記リサイクルチャンバ12における脂肪酸クロライドの液体/気体変換を促進するように選択される。
【0085】
図2で示される前記アシル化反応器1では、本発明によるプロセスの実行中、前記区分化チャンバ21内で下流から上流に流れる大気ストリームにより、前記リサイクルチャンバ12のガス雰囲気(およびガス形態の脂肪酸クロライド)を前記アシル化チャンバ5中に同伴することが可能になる。2つのチャンバ間での温度低下は、前記アシル化チャンバ5内のガス状脂肪酸クロライドの一部の凝結につながる。脂肪酸クロライドの前記アシル化チャンバ5への提供は、前記アシル化チャンバ5内の脂肪酸クロライドの液体/気体平衡を改変し、脂肪酸クロライドの遷移状態およびアシル化反応を促進する。空気ストリームはまた、前記アシル化チャンバ5のガス雰囲気の前記予熱チャンバ16への同伴を可能にし、そのため、2つのアシル化および予熱チャンバ5、16間の温度の低減は、前記予熱チャンバ16における脂肪酸クロライドの凝結および前記ヒドロキシル化材料30のスクロールによるその前記アシル化チャンバ5中へのリサイクルを引き起こす。
【0086】
前記区分化チャンバ21は前記リサイクルチャンバ12と前記アシル化チャンバ5の間に存在する第1の分離仕切り48を含む。この分離仕切り48は前記アシル化材料40が前記リサイクルチャンバ12中に入るための開口13および前記アシル化材料40が前記アシル化チャンバ5から出て行くための開口7を有する。第1の分離仕切り48はまた、前記アシル化材料40が前記アシル化チャンバ5から出て行くためのスリット7と一致する、ガス状組成物のストリームが出て行くため開口45を有する。この空気出口開口45は、前記リサイクルチャンバ12から前記アシル化チャンバ5まで流れるガス状組成物のストリームの制御を可能にする。前記区分化チャンバ21は前記アシル化チャンバ5と前記予熱チャンバ16の間に存在する第2の分離仕切り49を含む。この分離仕切り49は前記ヒドロキシル化材料40が前記アシル化チャンバ5中に入るための開口6、および、前記ヒドロキシル化材料30が前記予熱チャンバ16から出て行くための開口18を有する。分離仕切り49はまた、前記アシル化材料40が前記アシル化チャンバ中に入るためのスリット6と一致する空気が出て行くための開口46を有する。この開口46は、前記アシル化チャンバ5から前記予熱チャンバ16まで流れるガス状組成物のストリームの制御された通過を可能にする。
【0087】
図2で示される前記アシル化反応器1は、図1に記載されるように、その上流部分において、特に前記予熱チャンバ16の上流部分において、この空気ストリームを分析するための装置37内で現れる大気ストリームのための出口51を備える。分析装置37は、ガス状組成物のストリーム中に存在し得る化学種、特に水蒸気、ガス状塩酸および脂肪酸クロライドを分析し、定量するための手段を含む。そのような分析装置37により、アシル化反応の進行が最適かどうか、および/または、前記アシル化反応器1の少なくとも1つのパラメータの調整が必要かどうかを決定することが可能になる。純粋に例として、前記予熱チャンバ16を出て行くガス状組成物における水蒸気の高い含量は、高湿度量を有するヒドロキシル化材料30を示し、前記予熱チャンバ16の温度の増加を想定する必要がある。また、前記予熱チャンバ16の上流出口51でのガス状組成物中のガス状塩酸の低い濃度は、前記アシル化反応の非最適および/または不完全な進行を示す。進むべき道は、前記ヒドロキシル化材料のスクロール速度および/または空気ストリームおよび/または前記グラフト温度(Tg)を、例えば、ガス状組成物のストリーム中のガス状塩酸の濃度が最大となるように調整することである。空気ストリーム中の脂肪酸クロライドの高い濃度は、一方で、部分アシル化、他方で、前記アシル化材料上に残り、その疎水性特性に影響する過剰脂肪酸クロライドのリスクを示し得る。いずれの場合でも、そのような分析は、前記アシル化反応器1の制御パラメータを客観的に調整することを可能にする。そのような分析は、それ自体知られている1つ以上の分析装置の手段により、例えば、水素炎イオン化検出器および/または質量分析計の手段により実施することができる。そのような調整は前記アシル化反応器1を制御するためのコンピュータ手段50により自動的になされ得る。
【0088】
発明の第4の変形例によるアシル化反応器1の詳細1が図3に示される。この詳細では、前記アシル化チャンバ5のみが示される。前記アシル化チャンバ5はガス雰囲気下の内部空間8を区切り、この中で、加熱手段9が前記アシル化チャンバ5を通過する前記ヒドロキシル化/アシル化材料30、40からある距離で配置される。加熱手段9は、前記アシル化チャンバ5のガス雰囲気の温度を前記グラフト温度(Tg)にするのに好適である。加熱手段9は前記ヒドロキシル化/アシル化材料30、40との接触なしであり、そのため、前記材料の加熱は前記グラフト温度(Tg)まで加熱されたガス雰囲気の接触で得られる。前記アシル化チャンバ5は前記アシル化チャンバ5の内部空間8内に存在するガイドロール25を含み、前記ヒドロキシル化/アシル化材料30、40が前記アシル化チャンバ5内で非線形経路に沿ってガイドされる。ガイドロール25は、ヒドロキシル化/アシル化材料30、40の前記アシル化チャンバ5内での滞留時間、および、アシル化反応の効率を増加させることができる。示される実施形態では、前記アシル化反応器1はブレンディング手段を備え、それらは、前記アシル化チャンバ5において、ヒドロキシル化材料30の平面に実質的に平行で、かつ、ヒドロキシル化材料30のスクロール方向43に実質的に直角の流れ方向の、クロスストリーム20として知られている空気ストリームを形成するのに好適である。前記クロスストリーム20は、前記アシル化反応器内で下流から上流に流れるガス状組成物のストリームを実質的に改変しないように選択される。言うまでもなく、ブレンドし、前記クロスストリーム20を形成するためのそのような手段はコンピュータ装置50により、前記クロスストリーム20中の脂肪酸クロライドの濃度が前記グラフト温度(Tg)での脂肪酸クロライドの飽和蒸気圧に対応するように制御される。
【0089】
反応生成ヒドロキシルとして知られているヒドロキシル基(-OH)(アクセス可能で、ガス形態の脂肪酸クロライド29と反応することができる)を有する、ヒドロキシル化材料30と呼ばれる固体材料のアシル化のためのプロセスの変形例の概観図が図5に示される。前記ヒドロキシル化材料30はセルロース系材料であってもよい。それは紙材料またはボール紙材料、特に段ボールであってもよい。それはまた、織物であってもよい。前記ヒドロキシル化材料30は不規則で非常に粗い表面状態を有し得る。それは、多孔性であっても、なくてもよい。前記ヒドロキシル化材料30がほとんど凸凹のない均一な表面状態を有する光沢紙材料であることを妨げるものはない。それはまた、そのような反応生成ヒドロキシルを有する少なくとも1つのポリマーが負担する反応生成ヒドロキシルを有する非多孔性ヒドロキシル化材料であってもよい。そのようなポリマーはPVA(ポリビニルアルコール)であってもよい。前記ヒドロキシル化材料は、ポリビニルアルコールから形成された外面コートを有してもよい。特に、それは、セルロース系材料、特に、紙材料であってもよく、それはPVAのコートの表面適用により、気密で、非多孔性とされている。前記ヒドロキシル化材料は便宜的に可撓性であり、すなわち、それは、それ自体の重量の影響下で変形可能である。前記ヒドロキシル化材料は架橋紙材料であってもよく、その場合、このように架橋されたセルロース繊維の回転運動性は制限され、この場合、一般に機械強度特性、特に湿潤強度特性が改善される。前記ヒドロキシル化材料は、架橋原子の少なくとも1つの基と架橋された、例えば、1-クロロ-2,3-エポキシプロパン(エピクロロヒドリン)と架橋された紙材料であってもよい。
【0090】
本発明によるプロセスにおいては、前記ヒドロキシル化材料30は、例えばロールとして調整された幅の形態で、幅の最大寸法に平行なスクロール方向にて、前記アシル化反応器1の上流部分に存在するリールと前記アシル化反応器1の下流部分に存在するアシル化材料を収集するための部材の間でスクロールされる。本発明によるプロセスにおいては、前記スクロールヒドロキシル化材料30は、予熱101に供せられる。この予熱101は、任意の手段により、例えばヒドロキシル化材料30を赤外線放射による放射加熱に供することにより実施することができる。予熱101により、前記ヒドロキシル化材料30の温度を、脂肪酸クロライド28の液体形態での堆積を促進する温度まで上昇させることが可能になる。予熱されたヒドロキシル化材料31が形成され、これは、少なくとも1つの脂肪酸クロライドを含む組成物28を受け取る準備ができる。
【0091】
少なくとも1つの脂肪酸クロライドを含むそのような組成物28のヒドロキシル化材料31への連続固定堆積のステップ102が実施される。堆積組成物28は1つ以上の脂肪酸クロライドを含み得る。それは少なくとも1つの脂肪酸クロライド、または、単一の脂肪酸クロライドのみで形成され得る。脂肪酸クロライドは、式R-CO-Cl(式中、Rは、17(限界含む)~29(限界含む)、特に21(限界含む)~29(限界含む)の多くの炭素原子を有する炭化水素ベースの鎖である)の酸塩化物により形成される群から選択される。脂肪酸クロライドはベヘン酸塩化物(C2243OCl)、パルミチン酸塩化物(C1631OCl)および/またはステアリン酸塩化物(C1835OCl)であってもよい。堆積組成物28は、前記ヒドロキシル化材料31の2つの主面の一方および/または他方上に堆積される。
【0092】
本発明によるプロセスにおいては、前記グラフト温度(Tg)での前記アシル化チャンバのガス雰囲気中の脂肪酸クロライドの濃度が、ガス形態の脂肪酸クロライドの蒸気圧が、前記グラフト温度(Tg)での脂肪酸クロライドの飽和蒸気圧に実質的に等しくなるようなものとなるのに必要かつ十分である、前記ヒドロキシル化材料30、31の単位面積あたりの脂肪酸クロライドの量が前記ヒドロキシル化材料31の表面上に堆積される。特に、脂肪酸クロライドが、前記ヒドロキシル化材料30、31の前記反応生成ヒドロキシルに対してわずかに化学量論過剰にあるように選択された脂肪酸クロライドの量が堆積される。例えば、この同じ面積のヒドロキシル化材料30、31と反応させることができる脂肪酸クロライド(複数可)の最大量の1.5倍のオーダーの脂肪酸クロライド(複数可)の量が、前記ヒドロキシル化材料30、31の単位面積あたりで堆積される。特に、前記ヒドロキシル化材料30、31のそのような表面堆積は、20mg/m~1g/mのヒドロキシル化材料30、31の1平方メートルあたりで堆積される脂肪酸クロライド(複数可)の量を用いて実施される。
【0093】
図5で示される実施形態では、液体形態の脂肪酸クロライドが前記ヒドロキシル化材料の表面に適用され、その後、前記アシル化チャンバに入る。しかしながら、液体形態の脂肪酸クロライドを前記ヒドロキシル化材料の表面に、前記予熱チャンバ16における前記ヒドロキシル化材料の乾燥の相104中に適用することを想定するのを妨げることはない。液体形態の脂肪酸クロライドを、前記アシル化チャンバにおいて前記グラフト温度(Tg)で、または、前記グラフト温度(Tg)に近い温度でスクロールしている前記ヒドロキシル化材料の表面に適用することを想定するのを妨げることはない。
【0094】
本発明によるアシル化プロセスのある一定の実施形態では、ステップ102は、フレキソ印刷装置および輪転グラビア印刷装置から形成された群より選択された印刷装置の手段による脂肪酸クロライド組成物28の堆積を含む。この堆積の手段により、脂肪酸クロライドでコートされ、酸塩化物が不連続塊の形態で前記印刷材料32の表面上に広げられている、印刷材料32として知られている材料が形成される。堆積がそのような印刷装置を用いて実施される場合、この堆積物を広げて均一化するステップ103が実施される。この展着ステップは、脂肪酸クロライドに対して非反応性であるベルベット糸状要素が備えられたベルベットから形成された接触表面を有する展着部材の手段による表面ブラッシングにより実施される。
【0095】
この展着ステップ103の手段により、脂肪酸クロライドの均質で均一な堆積物でコートされたヒドロキシル化材料33が形成される。そのスクロールのために、コート材料33が前記予熱チャンバ16中に導入され、そのガス雰囲気は、上流から下流まで増加する温度勾配に沿って加熱される。これにより、蒸気形態の水の損失による前記コート材料33の乾燥の相104という結果になる。前記予熱チャンバ16において形成された水蒸気は、前記区分化チャンバ21においてコート材料33に対して逆流するように流れる空気ストリームにより輸送される。この乾燥相が、実質的に脱水された材料34につながる。そのスクロールの結果、脱水材料34が前記グラフト温度(Tg)にされた前記アシル化チャンバ5中に導入される。
【0096】
そのスクロールの結果、前記脱水材料34は、前記グラフト温度(Tg)での脂肪酸クロライドの飽和蒸気圧に実質的に等しいガス状脂肪酸クロライドの分圧を有する、前記アシル化チャンバ5のガス雰囲気と接触する。ガス形態の脂肪酸クロライド29は前記脱水材料34と反応し、クロマトジェニックアシル化反応により、アシル化材料40を形成する。この反応の結果、塩酸35が、前記アシル化チャンバ5のガス雰囲気中に放出される。このように形成された塩酸が、前記アシル化チャンバ5において前記リサイクルチャンバ12から、前記予熱チャンバ16の方向に流れる空気ストリーム36により同伴される。前記アシル化チャンバ5からの塩酸35の同伴がアシル化反応を促進する。クロマトジェニック合成によるアシル化反応が、脱水/アシル化材料34、40のスクロールに対して逆流するように流れるガス状組成物のストリーム36は、低く、ヒドロキシル化/アシル化材料上で堆積される液体形態の脂肪酸クロライド(複数可)のガス状態への変化に寄与するガス状脂肪酸クロライド(複数可)29の分圧を有するという事実のために、前記アシル化チャンバ5において維持される。
【0097】
そのスクロールの結果、アシル化材料40が前記リサイクルチャンバ12中に導入され、これは、前記グラフト温度(Tg)より高いが、前記少なくとも1つの酸塩化物の気化温度より低い前記抽出温度(Te)で維持されるガス雰囲気下の内部空間8を区切る。前記アシル化チャンバ5と前記リサイクルチャンバ12の間のガス雰囲気の温度の増加の結果、脂肪酸クロライドは、抽出相106中、前記リサイクルチャンバのガス雰囲気12において液体状態からガス状態に移行することができ、前記アシル化チャンバ5に向かう空気ストリーム36により同伴される。これにより、前記アシル化材料40上での液体形態の脂肪酸クロライドの抽出およびガス状で反応性形態の脂肪酸クロライドの、グラフト温度(Tg)の前記アシル化チャンバ5中へのリサイクルという結果になる。遊離脂肪酸クロライドを実質的に含まないアシル化材料41が抽出相106の結果、形成される。
【0098】
示されていない1つの実施形態では、前記リサイクルチャンバのガス雰囲気は、液体脂肪酸クロライドの蒸発を促進するブレンディング処理に供せられる。示されていない別の実施形態では、抽出ナイフとして知られているエアナイフ、特にホットエアナイフが前記リサイクルチャンバの下流の前記アシル化材料に適用される。前記抽出ナイフにより確実に、残留脂肪酸クロライドが前記アシル化材料から除去され、これは可能な限り定量的である。ある一定の実施形態では、前記抽出ナイフおよびガス状組成物のストリームは、共通の空気ストリームから形成される。
【0099】
本発明によるプロセスでは、ガス状組成物36のストリーム、特に大気36のストリームが前記区分化チャンバ21の下流部分中に導入され、そのため、前記区分化チャンバ21において、前記ヒドロキシル化/アシル化材料30、40のスクロール方向43に対して逆流するように流れる。空気ストリーム36は前記リサイクルチャンバ12において、加熱手段15と接触して流れ、これによりガス状組成物36のストリームは前記リサイクル温度(Tr)に到達する。空気ストリーム36の流れの方向が図5で、破線矢印により表される。空気ストリーム36は、適切な場合には予熱され、前記リサイクルチャンバ12中に導入され、そのガス雰囲気は前記抽出温度(Te)で維持される。前記リサイクルチャンバ12を通過する前記抽出温度(Te)の空気ストリーム36はガス形態の脂肪酸クロライドで満たされ、そのガス雰囲気における分圧は必然的に、(抽出温度(Te)の結果)飽和蒸気圧未満となる。それは、前記アシル化チャンバ5中に、ガス形態の脂肪酸クロライドを、前記グラフト温度(Tg)で飽和蒸気圧を必然的に超える分圧で同伴し、前記アシル化チャンバ5における脂肪酸クロライドの凝結および脂肪酸クロライドの前記アシル化チャンバ5中へのリサイクルにつながる。アシル化反応の結果として形成された塩酸35が前記予熱チャンバ16に向かう空気ストリーム36により同伴される。前記予熱チャンバ16では、ガス形態の脂肪酸クロライドの飽和蒸気圧が前記予熱勾配の結果として減少し、脂肪酸クロライドがガス状態から液体状態へ移行し、そのため、液体形態の脂肪酸クロライドが前記アシル化反応器1中にリサイクルされる。ガス形態の脂肪酸クロライドが枯渇し、塩酸35に富む空気ストリーム36は、塩酸35および脂肪酸クロライドを含む、塩酸組成物42として知られているガス状組成物のストリームを形成し、これは地表大気中への排出には不適当である。本発明によるプロセスのある一定の有利な実施形態では、前記塩酸組成物42の成分の分析の相108、特に、脂肪酸クロライドの定量分析が実施される。そのような分析108の結果により、プロセスおよび前記アシル化反応器1の制御パラメータの少なくとも1つの調整が可能になる。前記塩酸組成物42中に存在する塩酸をトラップする、および、地表大気中への排出に適している、または、本発明による前記アシル化反応器1中へリサイクルされるガス状組成物36のストリームを生成させる相107もまた実施される。
【0100】
本発明によるプロセスにおいては、前記区分化チャンバを出て行く大気ストリーム中に存在するガス状脂肪酸クロライドは定量される。そのような定量化により、過剰量の脂肪酸クロライドが前記ヒドロキシル化材料上に堆積されること、および/または脂肪酸クロライドのリサイクルの欠陥を明らかにすることが可能になる。
【0101】
本発明によるプロセスにより、疎水性アシル化材料を形成させることが可能になる。前記アシル化材料の疎水性は前記アシル化材料上に堆積された純水滴の接触角値により定量され、接触角は、アシル化材料上での水滴の接触点での、アシル化材料の主面と水滴の表面の右接線の間で形成される角である。典型的には、本発明によるプロセスにより得られたアシル化材料の接触角の値は90°~150°であり、150°の接触角値は、特に疎水性、かつ、撥水であるアシル化材料に対応する。アシル化の品質および前記アシル化材料の疎水性は、90°~150°のこの接触角値が室温で維持される時間を評価することにより定量化され得る。アシル化の品質および前記アシル化材料の疎水性はまた、「水ポケットの漏水性の試験」の手段により定量化することができ、この場合、前記アシル化材料から形成された水ポケットの漏水性は、水損失(蒸発を考慮して)を測定することにより観察される。アシル化の品質および前記アシル化材料の疎水性はまた、撥水性、すなわち、前記アシル化材料の表面上で形成された1滴の水が、アシル化材料の表面に付着して、または付着せずに、表面を転がることができる前記アシル化材料の特性の手段により定量することができる。十分な撥水性は約150°の接触角に対応する。
【0102】
実施例1-ステアリン酸塩化物で飽和させた空気のストリームを介する、ステアリン酸塩化物が含浸された、または、されていないヒドロキシル化材料のアシル化の比較
2%の質量割合でステアリン酸塩化物を含浸させた数片の同じ不織ポリマー材料を、ステアリン酸塩化物散布器として含む密閉容器を160℃で維持されたオーブン内に置く。30分後、液体ステアリン酸塩化物はガス状ステアリン酸塩化物と平衡化され、2片のセルロース系吸収性キッチンペーパー(一方はステアリン酸塩化物を含み、他方はステアリン酸塩化物を含まない)を導入する。2片の吸収性キッチンペーパーを密閉容器内で2分間保持する。2片を容器から取り出す。それらの疎水性を前記「水ポケット漏水性試験」の手段により分析する。最初にステアリン酸塩化物を含浸させた小片は完全に疎水性を示し、総不透過性が時間と共に維持される。対照的に、最初にステアリン酸塩化物を含浸させていない小片はわずかな疎水性しか示さず、前記漏水性試験中耐漏水性ではない。この実施例により、ステアリン酸塩化物で飽和させたガス相を、試薬を含まない一片の紙と接触させて配置すると、紙試料のグラフティングが可能になるが有効性がより低いことが示される。反対に、試薬を含み、かつ、試薬で飽和されたチャンバ内に置かれた紙試料は非常に満足のいくように反応する。
【0103】
実施例2-ステアリン酸塩化物で飽和されていない空気のストリームを介する、ステアリン酸塩化物が含浸されたヒドロキシル化材料のアシル化の比較
0.5%重量/重量の割合でステアリン酸塩化物を含浸させた一片のセルロース系吸収性キッチンペーパーを、空気ストリーム発生器として使用される真空掃除機の末端部に置き、次いで、150℃のオーダーの温度の空気を推進させるヘアドライヤーにより加熱する。次いで、吸収性キッチンペーパーの小片を150℃の温度で維持したオーブン内に入れ、次いで、その疎水性を、それを水中に浸漬させることにより試験する。真空掃除機末端部の適用に対応するゾーンはわずかな疎水性しか示さず、湿潤性で、小片の周辺ゾーンは完全な疎水性を示す。この実施例により、紙タイプのセルロース系材料に適用されるステアリン酸塩化物を含まないガス状組成物のストリームはステアリン酸塩化物の除去につながり、アシル化が許容されないことが示される。
【0104】
実施例3-ステアリン酸塩化物が含浸されたヒドロキシル化材料のアシル化に対する高温表面との接触により加熱する効果と高温表面との接触なしで加熱する効果の比較
ステアリン酸塩化物が含浸された一片のセルロース系吸収性キッチンペーパーを剛性平面上に置き、200℃の温度でのアイロン加熱を前記小片の上面に適用する。セルロース系吸収性キッチンペーパーの小片の褐変が直ちに観察される。比較のために、ステアリン酸塩化物が含浸されたセルロース系吸収性キッチンペーパーの同一の小片を200℃の温度で維持されたオーブン内に入れる。等しい加熱時間の間、褐変は観察されない。この実施例により、塩酸の存在下、高温に供された一片のセルロース系材料は劣化するが、一方、同じ温度で、高温ガス相内に置かれた同等の小片はこの劣化を示さず、無傷のままであることが示される。
【0105】
実施例4-本発明によるプロセスの一例を以下に記載する。100g/mの坪量および2mの幅を有する、ヒドロキシル化材料としての紙の幅を10m/sの速度で、その雰囲気が180℃の温度で維持されるアシル化チャンバを通してスクロールさせる。前記アシル化チャンバにおける幅のスクロール速度は10m/sである。0.2gのステアリン酸塩化物/平方メートル(m)のスクロール紙の割合の液体形態のステアリン酸塩化物の量を、スクロール紙の面の1つに、前記アシル化チャンバの上流で連続して適用する。4gのステアリン酸塩化物が毎秒このように堆積される。紙に対して逆流するように流れるガス状組成物としての大気の10L/sのストリームが前記アシル化チャンバ内で確立される。前記アシル化チャンバ内の空気ストリームは、飽和蒸気圧でのガス状ステアリン酸塩化の濃度が180℃の温度で117g/mであることを考慮して、1.17gのガス状ステアリン酸塩化物/秒を、ガス状ストリーム中0.117g/Lのガス状ステアリン酸塩化物の割合で同伴する。紙上に残る非ガス状ステアリン酸塩化物は液体/蒸気遷移状態を介して通過することにより、紙の前記反応生成ヒドロキシルと反応する。この反応中、0.28g/sのガス状塩酸がガス状組成物のストリーム中に0.028g/Lの割合で放出される。
【0106】
アシル化反応の結果として空気ストリーム中に放出される塩酸の連続アッセイは、アシル化反応進行の信頼できる指標を構成する。低い濃度はやや効率が悪いグラフト反応を表す。高い濃度は、例えば紙の過度に高い湿度のステアリン酸塩化物の異常な分解を示し得る。
【0107】
アシル化反応器の異なるゾーンにおけるステアリン酸塩化物の濃度のアッセイはまた、アシル化プロセスの化学「モニタリング」を可能にする。飽和蒸気圧に対応する濃度より低い、アシル化チャンバのガス雰囲気におけるステアリン酸塩化物の濃度は、紙の表面上に堆積されるステアリン酸塩化物の量が不十分であること、または、空気ストリームが高すぎることを示し得る。前記アシル化チャンバから出て行く空気ストリームにおけるステアリン酸塩化物の過度に高い濃度は、ステアリン酸塩化物の過剰堆積を示し得る。アシル化反応器を通しての、および、プロセスの様々な相の過程での塩酸およびステアリン酸塩化物の濃度の連続決定は、この反応の条件を制御し、最適化するには必須である。
【0108】
アシル化反応を最適化するために、紙の幅のスクロール速度、グラフト温度(Tg)および空気ストリームは、特に、前記アシル化チャンバから出て行く空気ストリーム中に放出される塩酸の濃度が紙の表面上に堆積されるステアリン酸塩化物の量に可能な限り密接に対応する傾向となるように調整され、最適反応収率が示される。この対応により、反応が最適に進行しているかどうかを決定する、および、適切な場合にはその進行を最適化することが可能になる。堆積されるステアリン酸塩化物の量を考慮して最大理論濃度より低い、空気ストリーム中に放出されるガス状塩酸の濃度は非最適反応条件の指標を構成する。これらの非最適反応条件は、飽和蒸気圧に対応する濃度より低い、アシル化チャンバ内のステアリン酸塩化物の濃度と関連し得る。ステアリン酸塩化物のこの濃度が前記アシル化チャンバにおいて、従来の分析手段を介して、例えば、水素炎イオン化検出器を使用して測定される。次いで、前記アシル化チャンバ内のガス雰囲気の温度および/または空気ストリームおよび/または前記アシル化チャンバにおける紙の幅のスクロール速度が調整されるべきである。バーフィードの手段により前記アシル化チャンバ内で紙の幅が移動させられる経路長を増加させることにより、前記アシル化チャンバ内での紙の幅の滞留時間を増加させることを想定するのを妨げるものはない。空気ストリームにおいて同伴される塩酸の濃度およびステアリン酸塩化物の濃度の同時分析により、アシル化反応器の制御パラメータおよびアシル化プロセスの制御の最適調整が可能になる。
【0109】
特に、前記アシル化チャンバにおける前記グラフト温度(Tg)、前記リサイクルチャンバにおける前記抽出温度(Te)および/または使用される脂肪酸クロライドによる前記予熱勾配を制御することが必須である。この関連で、ステアリン酸塩化物の飽和蒸気圧は160℃で59g/mにすぎないが、180℃で117g/mとなる。パルミチン酸塩化物の飽和蒸気圧は160℃で107g/m、180℃で205g/mである。前記アシル化チャンバ内のガスの熱およびレオロジー条件の微調整は、これらの変動を考慮するには必須である。
【0110】
並行して、前記アシル化チャンバの上流で空気ストリームにおいて高濃度で同伴されるステアリン酸塩化物の検出は非最適反応条件またはステアリン酸塩化物の過剰堆積の標識を構成する。しかしながら、前記アシル化チャンバの上流での、空気ストリームにおいて同伴されるステアリン酸塩化物の低い濃度の検出は、紙の幅上で堆積されるステアリン酸塩化物の量に可能な限り密接に対応する傾向がある塩酸の濃度と相まって、最適化反応条件の標識を構成する。
【0111】
発明は以上で記載されるもの以外の多くの変形および適用の対象となり得る。特に、別記されない限り、以上で記載される実施形態の各々の様々な構造および機能特性は組み合わされたもの、および/または厳密におよび/または密接に互いに関係しているものと考えるべきではなく、それどころか、単なる並置と考えるべきであることは言うまでもない。加えて、以上で記載される様々な実施形態の構造および/または機能特性は全体的に、または、部分的に、任意の異なる並置または任意の異なる組合わせの対象を形成し得る。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】