(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】鉄メルトからの鉄鋼製造
(51)【国際特許分類】
C21C 5/28 20060101AFI20231201BHJP
C21B 13/00 20060101ALI20231201BHJP
C21B 13/12 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
C21C5/28 A
C21B13/00
C21B13/12
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023526452
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2021079977
(87)【国際公開番号】W WO2022090390
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515153152
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・オーストリア・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・ヴルム
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・ミルナー
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト・ライン
【テーマコード(参考)】
4K012
4K070
【Fターム(参考)】
4K012CA09
4K012DA02
4K012DA05
4K070AA01
4K070AB03
4K070AC02
(57)【要約】
本出願は、鉄鋼を製造する方法であって、還元ガス(13)による直接還元によって酸化鉄含有出発原料(11)から海綿鉄(10)を製造する工程であり、還元ガス(13)が、少なくとも20体積%の水素H2からなる、工程と、海綿鉄から炭素含有量が1~5質量%の鉄メルトを製造する工程とを含む、方法に関する。この方法において、海綿鉄は処理に供され、処理は、- メルト及びスラグを製造するためにエネルギー入力及び添加剤の添加を行う工程であり、エネルギーが実質的に電気から供給され、スラグが、1.3未満、好ましくは1.25未満、特に好ましくは1.2未満の塩基度B2を有する、工程と、- メルト中の炭素含有量を設定する工程と、- 海綿鉄に含有される酸化鉄の少なくとも一部を還元する工程とを含む。処理の間及び/又は後に、スラグが分離される。このような鉄メルトから鉄鋼が製造される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鋼を製造する方法であって、
- 還元ガス(13)を用いる直接還元によって酸化鉄含有出発原料(11)から海綿鉄(10)を製造する工程であり、還元ガス(13)が、少なくとも20体積%の水素H2を含む、工程と、
- 1~5質量%の炭素含有量を有する鉄メルトを製造する工程であり、還元ガス(13)を用いる直接還元によって酸化鉄含有出発原料(11)から製造された海綿鉄(10)の少なくともサブ量が処理に供され、処理が、
- メルト(50)及びスラグ(60)を製造するためにエネルギー入力及び添加剤の添加を行う工程であり、エネルギー入力が、実質的に電気から行われ、スラグ(60)が、1.3未満、好ましくは1.25未満、特に好ましくは1.2未満の塩基度B2を有する、工程と、
- メルト(50)中の炭素含有量を調整する工程と、
- 海綿鉄(10)中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量を還元する工程と
を含み、スラグ(60)が、処理の間及び/又は後に分離される、工程と、
- 鉄鋼の製造のために鉄メルトを使用する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
直接還元が、45体積%超の水素H2を含む還元ガス(13)を使用して行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
直接還元が、直接還元反応器(12)で行われ、処理が、処理反応器(20)で行われ、直接還元反応器(12)と処理反応器(20)が、互いに空間的に分離されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
エネルギー入力が、電気アークを介して行われることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
エネルギー入力が、電気抵抗加熱を介して行われることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
エネルギー入力が、電気を使用して生成される水素プラズマを介して行われることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
固体又は液体状態のメルト(50)に供給される炭素、又はメルトに溶解した炭素をガス化するために、エネルギー入力が部分的に酸素の導入を介して行われることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
メルト(50)中の炭素含有量の調整が、供給される炭素担体(70)を使用して行われることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
メルト(50)中の炭素含有量の調整が、供給される酸素を使用して行われることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
海綿鉄(10)中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量の還元が、供給される炭素担体(70)を使用して行われることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
海綿鉄(10)中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量の還元が、海綿鉄(10)中に存在する炭素を使用して行われることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
海綿鉄(10)中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量の還元が、少なくとも部分的に電流を使用して行われることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
処理が、供給される固体炭素担体(70)及び/又は液体炭素担体(70)及び/又は気体炭素担体(70)を使用して、溶融範囲を低下させることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
鉄鋼の製造が、LD/BOF法を使用することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元ガスを用いる直接還元により得られる海綿鉄を使用して鉄メルトを製造する工程を含む鉄鋼製造の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の鉄鋼製造の大部分は、高炉ルートで行われ、その後の鉄鋼製造は塩基性酸素法(LD/BOF)に基づいて行われる。このルートでは、スラグの形態の脈石画分が高炉において低鉄損で排出され得るため、広範囲の鉄鉱石の処理が可能になり、下流のBOFにより、高品質で普遍的に使用できる素材鋼の生産が可能になる。
【0003】
鉄鋼製造のごく一部では、還元ガスを使用する直接還元により、直接還元鉄(DRI)としても知られる海綿鉄を生成し、その後、電気アーク炉(EAF)を使用して鉄鋼を製造する。高炉ルートと比較して、従来のEAFで生じるスラグ量/鉄損及びエネルギーと原料のコストを抑えるために、脈石画分が低い高品質の原料を使用する必要がある。また、従来のEAFでは、海綿鉄の高度な金属化も必要である。方法の結果として、素材鋼の品質も低下するか、又は同等の鉄鋼品質を得るために、EAFで得られた素材鋼に高価な後処理を施さなければならない。
【0004】
高炉ルートは石炭又はコークスの使用に基づくため、工業用CO2排出量を削減するためには、高炉ルートによって進行する世界の鉄鋼製造の割合を減らすことが望まれる。直接還元によって進行する世界の鉄鋼製造の割合を増やすことは、これにより、天然ガス又は水素に基づく還元ガスを使用する等、CO2排出量が少ない方式で製造を進めることもできるため、可能な補償手段である。しかし、このルートは、高炉ルートと比較して不利であるため、鉄鋼製造を直接還元に転換する可能性は限定的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が取り組む問題は、上述の欠点を回避するか、又は少なくともその程度を低下することを可能にする方法及び装置を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題は、鉄鋼を製造する方法であって、
- 還元ガスを用いる直接還元によって酸化鉄含有出発原料からの海綿鉄を製造する工程であり、還元ガスが、少なくとも20体積%の水素H2を含む、工程と、
- 1~5質量%の炭素含有量を有する鉄メルトを製造する工程であり、還元ガスを用いる直接還元によって酸化鉄含有出発原料から製造された海綿鉄の少なくともサブ量(sub-amount)が、処理に供され、処理が、
- メルト及びスラグを製造するためにエネルギー入力及び添加剤の添加を行う工程であり、エネルギー入力が、実質的に電気から行われ、スラグが、1.3未満、好ましくは1.25未満、特に好ましくは1.2未満の塩基度B2を有する、工程と、
- メルト中の炭素含有量を調整する工程と、
- 海綿鉄中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量を還元する工程と
を含み、スラグが、処理の間及び/又は後に分離される、工程と、
- 鉄鋼の製造のために鉄メルトを使用する工程と
を含む、方法によって解決される。
【0007】
方法は、20体積%の水素を含む還元ガスを使用して行われる直接還元を含む。これにより、酸化鉄含有出発原料を還元するためのアーク炉ルートを使用する場合や、水素の割合が少ない直接還元を行う場合よりも、低いCO2負荷で鉄鋼製造を進めることができる。直接還元は、還元剤として固体炭素又は固体炭素含有物質を添加することなく行われる。
【0008】
直接還元は、例えば固定床反応器又は流動床反応器又は移動床反応器として構成され得る直接還元反応器において実施される。
【0009】
直接還元の還元ガス中の水素の割合が高いほど、海綿鉄中の炭素含有量は低くなる。
【0010】
これは、処理中の溶融の温度範囲に影響する。これはまた、方法に従った鉄鋼の製造中に発生する炭素含有排出物の量に影響を与え、製造される鉄鋼の炭素含有量に影響を与える可能性がある。
【0011】
本発明による方法の処理は、固定床法ではなく浴法である。それは、直接還元方法からの海綿鉄に基づいて、高炉の生成物-液体銑鉄-のような生成物を製造するのに役立つ。この液体生成物は、1~5質量%の炭素含有量を有するものとする。質量パーセント又は質量%は、質量分率を指す。
【0012】
この目的のために、エネルギーが供給され、添加剤が海綿鉄に添加され、その結果、鉄に基づくメルトが形成され、海綿鉄中に存在する基礎鉱石の脈石に基づくスラグが形成される。添加剤には、例えば、石灰石及び/又はドロマイト(いずれも未焼成又は好ましくは焼成)、並びに石英が含まれる。スラグは、1.3未満、好ましくは1.25未満、特に好ましくは1.2未満の塩基度B2を有する。このようなスラグは、高炉のスラグのようなものであり、例えばセメント産業で適宜利用することができる。塩基度が低いほど、生じるスラグ量が少なくなり、したがって、本発明による方法の操作もよりエネルギー的に有利になる。
【0013】
塩基度B2は、二酸化ケイ素に対する酸化カルシウムの比率CaO/SiO2を質量%で表したものである。
【0014】
鉄メルトの製造では、海綿鉄は、処理に供される。
【0015】
使用される鉄メルト中の鉄源は、他の鉄担体-例えばスクラップや銑鉄-と組み合わせた海綿鉄であってもよいし、海綿鉄のみを鉄メルト中の鉄源として使用してもよい。
【0016】
メルトの炭素含有量は、所望のレベルに調整される。方法から得られる鉄メルトは、1~5質量%の炭素含有量を有するものとし、それに応じて、例えば、メルトへの炭素担体の供給により、及び/又はメルト中の炭素含有量を低下する手段、例えば酸素の供給により、調整が行われる。
【0017】
処理はまた、海綿鉄中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量を還元することを含み、その結果、メルト中の金属鉄の量は、それが由来する海綿鉄中の量よりも多くなる。これはエネルギー入力の間及び/又は後に生じる。
【0018】
エネルギー入力は、実質的に電気から行われる。これは、本質的に、供給されるエネルギーの少なくとも50%超、好ましくは供給される実体の65%超、特に好ましくは供給されるエネルギーの80%超を意味すると理解されるべきである。
【0019】
特に、再生可能エネルギー源からの発電の割合が増加しているため、このことは、方法のCO2バランスと、液体銑鉄様生成物に基づいて製造される鉄鋼のCO2バランスを改善する。
【0020】
高炉ルートでは、例えば、銑鉄とスラグがタップされ、それらの相互の不溶性と異なる密度の結果として重力支援分離が行われる場合に、生じたスラグが銑鉄から分離される。請求されているように、スラグは、処理の間及び/又は後に分離される。メルトは、炭素含有量が1質量%~5質量%の液体銑鉄様生成物として得られる。スラグの除去は、例えば、傾けることによって行われる。海綿鉄及び添加剤中に存在する脈石に由来するスラグを分離することにより、酸化鉄含有出発原料中に存在する脈石が除去される。
【0021】
1.0質量%~5質量%の炭素含有量を有する本発明に従って製造された鉄メルトは、主に鉄からなり、それは液体銑鉄様生成物である。液体銑鉄様生成物という表現は、本出願では、本発明に従って製造された鉄メルトを指すために鉄メルトという表現と同義的に使用される。1.0質量%~5質量%の炭素含有量を有する液体銑鉄様生成物は、鉄鋼製造方法-例えばLD/BOF-から見れば、高炉からの銑鉄に「似ている」、即ち高炉からの銑鉄とほぼ同じ方式で、即ち高炉を除く鉄鋼製造の高炉ルートに従って処理可能である。炭素含有量が高いほど、その後の鉄鋼への加工でより多くの冷却スクラップを使用することができ、冷却スクラップの量が多いほど、本発明に従って製造された液体銑鉄様生成物から製造される鉄鋼の単位量当たりのCO2排出量が低下する。
【0022】
液体銑鉄様生成物の炭素含有量は、好ましくは少なくとも1.25質量%であり、特に好ましくは少なくとも1.5質量%である。液体銑鉄様生成物の炭素含有量が最大で4質量%、特に好ましくは最大で3.5質量%、非常に特に好ましくは最大で3質量%であるとき、好ましい。
【0023】
本発明による方法を実施する場合、少量の鉄メルトが液体プールとして既に存在する容器に海綿鉄を装入することが有利であり得る。この液体プールは、例えば、本発明による方法を先に使用した後に容器を空にする際に容器内に保持され得るが、別の供給源、例えば高炉から由来する銑鉄等にも由来し得る。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、従来のEAF操作を利用することなく、海綿鉄から効率的かつ経済的に鉄鋼の工業生産を実現することを可能にする。銑鉄で知られている鉄鋼製造のルートを利用することができる。
【0025】
鉄鋼製造のための従来のEAF操作は、高温及び高塩基度で炭素レベルを低下させるために酸化条件下で操作される。スラグ中の酸化鉄による鉄損を最小限に抑えるためには、海綿鉄の金属化度が高く、脈石の割合が低いことが必要である。したがって、従来のEAF操作に供給される海綿鉄の製造には、高品質の鉄担体を使用する必要がある。高品質とは、鉄担体中に脈石がほとんど存在しないことを意味すると理解されるべきである。海綿鉄を介してEAFに導入される脈石が少ないほど、EAFのスラグ量は少なくなる。スラグ量が少ないほど、鉄が酸化鉄としてスラグ中に失われることが少なくなる。金属化度が高いほど、海綿鉄中に存在する酸化鉄の量が少なくなるため、それに応じてスラグによる酸化鉄の損失のリスクが低下する。
【0026】
炭素は、本発明によるプロセスシーケンスに存在する。したがって、海綿鉄中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量は、炭素によって還元される可能性があり、したがって、従来のEAF操作と比較して、使用される海綿鉄は、より低い金属化を有することも可能になる。酸化鉄の還元により、従来のEAFでの海綿鉄の処理と比較して、スラグ中の酸化鉄画分による鉄損は低くなる。
【0027】
メルト中の炭素の存在はまた、溶融操作の温度範囲、即ち、銑鉄様生成物が固体状態の物質から液体状態の物質に変換される温度範囲を狭くするため、液化に必要なエネルギー入力量が少なくなる。これは、本発明による方法を利用した海綿鉄からの鉄鋼製造が、従来のEAF操作よりも比較的低いエネルギーコストを伴うことを意味する。
【0028】
従来のEAF操作の場合と異なり、方法は鉄鋼の製造に重点を置いていないため、銑鉄様生成物の製造は、従来のEAF操作のようにスラグの塩基度を高くする必要がない。したがって、本発明による方法を利用する海綿鉄からの鉄鋼製造も、従来のEAF操作の場合よりも少ないスラグを生じるか、又は低品質の原料からの脈石の割合が高い海綿鉄は、従来のEAF操作と比較して同等のスラグ量で処理することができる。従来のEAFルートと比較してスラグ量が少ないのは、EAFルートと比較して、鉄鋼の品質向上よりもむしろ脈石の除去に重点を置いているため、本発明による手順がスラグの塩基度を低くし、したがって添加剤の量を少なくして実施されるという事実からも導かれる。スラグ量が少ないと、加熱する必要のある材料が少なくなるため、加熱/溶融に必要なエネルギーも少なくなる。本発明による方法は、好ましくは1.3未満の塩基度B2、特に好ましくは1.25未満の塩基度B2、非常に特に好ましくは1.2未満の塩基度B2で操作される。
【0029】
本発明による方法は、1.0%~5%の炭素含有量を有する液体銑鉄様生成物の製造時に、脈石画分が鉄損の少ないスラグとして既に排出されているので、広範囲の鉄鉱石を処理するために利用することができる。したがって、鉄鋼製造時に液状銑鉄様生成物を処理する工程では、既に除去されたスラグが負担になることはない。対照的に、海綿鉄を処理する従来のEAF操作では、著しく大量のスラグが伴い、負担になる。
【0030】
鉄鋼製造方法、例えばLD/BOFの観点から、1.0質量%~5質量%の炭素含有量を有する液体銑鉄様生成物は、高炉からの銑鉄とほぼ同じ方式で処理することができるので、対応する品質及び普遍的な潜在的用途を有する鉄鋼を製造できる。したがって、従来のEAFルートの使用によるこの点に関する制限を克服することができ、及び/又は費用のかかる後処理を省略することができる。
【0031】
方法の好ましい実施形態では、直接還元は、45体積%超の水素H2を含む還元ガスを使用して行われる。
【0032】
水素の割合が多いほど、本発明による方法又は液体銑鉄様生成物に基づいて製造される鉄鋼のCO2バランスが低くなる。
【0033】
有利な実施形態では、直接還元は、直接還元反応器で行われ、処理は、処理反応器で行われ、直接還元反応器と処理反応器は、互いに空間的に分離されている。海綿鉄を直接還元反応器から処理反応器へ輸送するために、輸送装置を使用することができる。
【0034】
同様に、直接還元反応器と処理反応器を共通の装置内に配置すること、即ち、互いに空間的に分離するのではなく、直接隣接させることも可能である。
【0035】
有利な実施形態では、エネルギー入力は、電気アークを介して行われる。
【0036】
有利な実施形態では、エネルギー入力は、電気抵抗加熱を介して行われる。これは、例えば電気分解の性能とすることができる。
【0037】
有利な実施形態では、エネルギー入力は、電気を使用して生成される水素プラズマを介して行われる。
【0038】
有利な実施形態では、エネルギー入力は、固体又は液体状態のメルトに供給される炭素、又はメルトに溶解した炭素をガス化するための酸素の導入を部分的に介して行われる。実際には、これは、例えばバーナーを介して、又はランスを使用して行われる。
【0039】
少なくとも技術的純度の高い酸素を導入することが好ましい。
【0040】
有利な実施形態では、メルト中の炭素含有量の調整は、供給される炭素担体を使用して行われる。
【0041】
これらは、固体炭素担体及び/又は液体炭素担体及び/又は気体炭素担体とすることができる。炭素担体は、例えば、石炭粉塵、粉コークス、グラファイト粉塵又は天然ガスを含むことができる。炭素担体は、部分的又は全体的にカーボンニュートラルな供給源、例えばバイオマス、例えば木炭から得られることもあり、これにより方法のCO2バランスが改善される。炭素担体は、例えば、ランス又はバス下ノズルを介して導入することができる。
【0042】
有利な実施形態では、メルト中の炭素含有量の調整は、供給される酸素を使用して行われる。炭素含有量が鉄メルトの所望の値を超えている場合、酸素供給を使用して炭素含有量の酸化的減衰を達成することができ、例えば、メルト中の炭素は反応してCOを生成し、気体状態でメルトから脱出することができる。
【0043】
有利な実施形態では、海綿鉄中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量の還元は、供給される炭素担体を使用して行われる。
【0044】
これらは、固体炭素担体及び/又は液体炭素担体及び/又は気体炭素担体とすることができる。炭素担体は、例えば、石炭粉塵、粉コークス、グラファイト粉塵、又は天然ガスを含むことができる。炭素担体は、部分的又は全体的にカーボンニュートラルな供給源、例えばバイオマス、例えば木炭から得られることもあり、これにより方法のCO2バランスが改善される。
【0045】
有利な実施形態では、海綿鉄中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量の還元は、海綿鉄中に存在する炭素を使用して行われる。
【0046】
海綿鉄において、炭素は、例えばセメンタイト(Fe3C)の形態で結合及び/又は溶解し、及び/又は元素状炭素の形態で存在することができる。
【0047】
有利な実施形態では、海綿鉄中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量の還元は、少なくとも部分的に電流を使用して行われる。
【0048】
これは、例えば、電気分解又は水素プラズマを使用して行うことができる。
【0049】
有利な実施形態では、処理は、供給される固体炭素担体及び/又は液体炭素担体及び/又は気体炭素担体を使用して、溶融範囲を低下させる。これらは、例えば、石炭粉塵、粉コークス、グラファイト粉塵、又は天然ガスである。炭素担体は、部分的又は全体的にカーボンニュートラルな供給源、例えばバイオマス、例えば木炭から得られることもあり、これにより方法のCO2バランスが改善される。低下は、鉄の融点と比較して理解する必要がある。本発明による方法は、好ましくは1550℃未満の温度、好ましくは1500℃未満の温度、特に好ましくは1450℃未満の温度で操作される。
【0050】
有利な実施形態では、鉄鋼の製造は、LD/BOF法を使用する。
【0051】
これは、好ましくは、少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも15質量%、特に好ましくは少なくとも20質量%のスクラップ使用量で実施される。
【0052】
本出願は、更に、本発明による方法を実行するための制御コマンドを含む機械可読プログラムコードを有する信号処理手段を提供する。本出願は、更に、このような信号処理手段のための機械可読プログラムコードを提供し、プログラムコードは、信号処理手段に本発明による方法を実行するように促す制御コマンドを含む。本発明は更に、この種の機械可読プログラムコードがその上に格納された記憶媒体を提供する。
【0053】
ここで、例示的な実施形態を参照して、本発明をより詳細に説明する。図面は例示的なものであり、本発明の概念を説明することを意図しているが、決して限定することを意図しておらず、ましてやその網羅的な説明を提供するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明によるプロセスシーケンスを示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、鉄メルトを製造するための本発明のプロセスシーケンスを示す略図である。
【0056】
海綿鉄10は、還元ガス13を用いる直接還元反応器12での直接還元により、酸化鉄含有出発原料11から製造される。還元ガス13は、少なくとも20体積%の水素H2を含む。海綿鉄10は、処理反応器20に供給される。処理反応器20では、処理に供される。処理は、矢印30で表されるエネルギー入力を含む。エネルギー入力は、実質的に電気から行われる。
【0057】
処理は、添加剤40の添加を含む。
【0058】
処理により、メルト50及びスラグ60が製造される。スラグは、1.3未満の塩基度B2を有する。
【0059】
処理は、メルト50中の炭素含有量を調整することを含み、例として、炭素担体70の添加によって表される。
【0060】
処理は、海綿鉄10中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量を還元することを含む。
【0061】
スラグ60は、処理の間及び/又は後に分離される(図示せず)。メルト50は、1~5質量%の炭素含有量を有する求められた鉄メルトである。前記メルトは、例えば、破線矢印で示すように、LD法により鉄鋼を製造するための転炉80に吹き込みランス90により供給することができる。
【0062】
海綿鉄10は、還元ガスによる直接還元によって酸化鉄含有出発原料から得られ、還元ガスは、少なくとも20体積%の水素H2を含み得る。
【0063】
直接還元は直接還元反応器で行われ、処理は処理反応器20で行われる。直接還元反応器と処理反応器20は、互いに空間的に離れていてもよく、海綿鉄は、輸送装置を使用して直接還元反応器から処理反応器に輸送することができる。
【0064】
同様に、直接還元反応器と処理反応器20を共通の装置内に配置すること、即ち、互いに空間的に分離するのではなく、直接隣接させることも可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 海綿鉄
11 酸化鉄含有出発原料
12 直接還元反応器
13 還元ガス
20 処理反応器
30 エネルギー入力
40 添加剤
50 メルト
60 スラグ
70 炭素担体
80 転炉
90 吹き込みランス
【手続補正書】
【提出日】2022-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鋼を製造する方法であって、
- 還元ガス(13)を用いる直接還元によって酸化鉄含有出発原料(11)から海綿鉄(10)を製造する工程であり、還元ガス(13)が、少なくとも20体積%の水素H2を含む、工程と、
- 1~5質量%の炭素含有量を有する鉄メルトを製造する工程であり、還元ガス(13)を用いる直接還元によって酸化鉄含有出発原料(11)から製造された海綿鉄(10)の少なくともサブ量が処理に供され、処理が、
- メルト(50)及びスラグ(60)を製造するためにエネルギー入力及び添加剤の添加を行う工程であり、エネルギー入力が、実質的に電気から行われ、
電気から行われるエネルギー入力が、電気アークを介して、及び電気抵抗加熱を介して行われ、スラグ(60)が、1.3未満、好ましくは1.25未満、特に好ましくは1.2未満の
、二酸化ケイ素に対する酸化カルシウムの比率CaO/SiO
2
を質量%で表した塩基度B2を有する、工程と、
- メルト(50)中の炭素含有量を調整する工程と、
- 海綿鉄(10)中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量を還元する工程と
を含み、スラグ(60)が、処理の間及び/又は後に分離される、工程と、
- 鉄鋼の製造のために鉄メルトを使用する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
直接還元が、45体積%超の水素H2を含む還元ガス(13)を使用して行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
直接還元が、直接還元反応器(12)で行われ、処理が、処理反応器(20)で行われ、直接還元反応器(12)と処理反応器(20)が、互いに空間的に分離されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
エネルギー入力が、電気を使用して生成される水素プラズマを介して行われることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
固体又は液体状態のメルト(50)に供給される炭素、又はメルトに溶解した炭素をガス化するために、エネルギー入力が部分的に酸素の導入を介して行われることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
メルト(50)中の炭素含有量の調整が、供給される炭素担体(70)を使用して行われることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
メルト(50)中の炭素含有量の調整が、供給される酸素を使用して行われることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
海綿鉄(10)中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量の還元が、供給される炭素担体(70)を使用して行われることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
海綿鉄(10)中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量の還元が、海綿鉄(10)中に存在する炭素を使用して行われることを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
海綿鉄(10)中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量の還元が、少なくとも部分的に電流を使用して行われることを特徴とする、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
処理が、供給される固体炭素担体(70)及び/又は液体炭素担体(70)及び/又は気体炭素担体(70)を使用して、溶融範囲を低下させることを特徴とする、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
鉄鋼の製造が、LD/BOF法を使用することを特徴とする、請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鋼を製造する方法であって、
- 還元ガス(13)を用いる直接還元によって酸化鉄含有出発原料(11)から海綿鉄(10)を製造する工程であり、還元ガス(13)が、少なくとも20体積%の水素H
2
を含む、工程と、
- 1~5質量%の炭素含有量を有する鉄メルトを製造する工程であり、還元ガス(13)を用いる直接還元によって酸化鉄含有出発原料(11)から製造された海綿鉄(10)の少なくともサブ量が処理に供され、処理が、
- メルト(50)及びスラグ(60)を製造するためにエネルギー入力及び添加剤の添加を行う工程であり、エネルギー入力
では、
供給されるエネルギーの少なくとも50%超が電気から行われ、電気から行われるエネルギー入力が、電気アークを介して、及び電気抵抗加熱を介して行われ、スラグ(60)が、1.3未
満の、二酸化ケイ素に対する酸化カルシウムの比率CaO/SiO
2を質量%で表した塩基度B2を有する、工程と、
- メルト(50)中の炭素含有量を調整する工程と、
- 海綿鉄(10)中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量を還元する工程と
を含み、スラグ(60)が、処理の間及び/又は後に分離される、工程と、
- 鉄鋼の製造のために鉄メルトを使用する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
スラグ(60)が、1.25未満の、二酸化ケイ素に対する酸化カルシウムの比率CaO/SiO
2
を質量%で表した塩基度B2を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スラグ(60)が、1.2未満の、二酸化ケイ素に対する酸化カルシウムの比率CaO/SiO
2
を質量%で表した塩基度B2を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
直接還元が、45体積%超の水素H
2
を含む還元ガス(13)を使用して行われることを特徴とする、請求項1
から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
直接還元が、直接還元反応器(12)で行われ、処理が、処理反応器(20)で行われ、直接還元反応器(12)と処理反応器(20)が、互いに空間的に分離されていることを特徴とする、請求項1
から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
エネルギー入力が、電気を使用して生成される水素プラズマを介して行われることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
固体又は液体状態のメルト(50)に供給される炭素、又はメルトに溶解した炭素をガス化するために、エネルギー入力が部分的に酸素の導入を介して行われることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
メルト(50)中の炭素含有量の調整が、供給される炭素担体(70)を使用して行われることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
メルト(50)中の炭素含有量の調整が、供給される酸素を使用して行われることを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
海綿鉄(10)中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量の還元が、供給される炭素担体(70)を使用して行われることを特徴とする、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
海綿鉄(10)中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量の還元が、海綿鉄(10)中に存在する炭素を使用して行われることを特徴とする、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
海綿鉄(10)中に存在する酸化鉄の少なくともサブ量の還元が、少なくとも部分的に電流を使用して行われることを特徴とする、請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
処理が、供給される固体炭素担体(70)及び/又は液体炭素担体(70)及び/又は気体炭素担体(70)を使用して、溶融範囲を低下させることを特徴とする、請求項1から
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
鉄鋼の製造が、LD/BOF法を使用することを特徴とする、請求項1から
13のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】