(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】コークス炉ドアシール装置、コークス炉室及びコークス炉バッテリー
(51)【国際特許分類】
C10B 25/16 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
C10B25/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023526604
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2021080536
(87)【国際公開番号】W WO2022096522
(87)【国際公開日】2022-05-12
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500173376
【氏名又は名称】ポール ヴルス エス.エイ.
【氏名又は名称原語表記】PAUL WURTH S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100099472
【氏名又は名称】杉山 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【氏名又は名称】加治 信貴
(72)【発明者】
【氏名】ハットマッチャー、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ドステルト、クロード
(72)【発明者】
【氏名】チネ、クロード
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012CA01
(57)【要約】
コークス炉ドアを、コークス炉室のコークス炉ドア枠のシール面に対してシールするコークス炉ドアシール装置であって、コークス炉室を閉鎖するためのパネルユニットを有するコークス炉ドア;コークス炉ドアの周縁領域でシール片をシール面に対向して保持する固定装置;シール片であって、第1の動作状態又は第2の動作状態で動作するように構成されているシール片、を含み;第1の動作状態では、シール片はシール片に対向して配置されたシール面から第1の距離を隔てて配置され;第2の動作状態では、シール片はシール面に接触し;それによりシール片とパネルユニットが少なくとも部分的に空所を形成し、かつコークス炉ドアシール装置(1)はシール片(13)を断熱する第1の絶縁要素(14)を更に含み、第1の絶縁要素(14)は固定装置(11)に配置されている、コークス炉ドアシール装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉ドア(10)を、コークス炉室(31)のコークス炉ドア枠(20)のシール面(21)に対してシールするコークス炉ドアシール装置(1)であって、
コークス炉室(31)を閉鎖するためのパネルユニット(9)を有するコークス炉ドア(10);
コークス炉ドア(10)の周縁領域でシール片(13)をシール面(21)に対向して保持する固定装置(11);
シール片(13)であって、第1の動作状態又は第2の動作状態で動作するように構成されているシール片(13)、を含み;
第1の動作状態では、シール片(13)はシール片(13)に対向して配置されたシール面(21)から第1の距離(D)を隔てて配置され;かつ第2の動作状態では、シール片(13)はシール面(21)に接触し;それによりシール片(13)とパネルユニット(9)が少なくとも部分的に空所(32)を形成し;かつ
コークス炉ドアシール装置(1)は、シール片(13)を断熱する第1の絶縁要素(14)を更に含み、第1の絶縁要素(14)は固定装置(11)に配置されている、
コークス炉ドアシール装置(1)。
【請求項2】
固定装置(9)がパネルユニット(9)に取り付けられた、請求項1に記載されたコークス炉ドアシール装置(1)。
【請求項3】
シール片(13)をコークス炉室(31)から隔離するためのシール保護要素(30)がパネルユニット(9)に配置されている、請求項1又は2に記載されたコークス炉ドアシール装置。
【請求項4】
シール保護要素(30)は第1の絶縁要素(14)に接触するか、又はシール保護要素(30)は第1の絶縁要素(14)と対向して配置されている、請求項1から3のいずれかに記載されたコークス炉ドアシール装置。
【請求項5】
コークス炉ドア枠(20)は、コークス炉室(31)の少なくとも一部を画定するカラー部材(22)を含む、請求項1から4のいずれかに記載されたコークス炉ドアシール装置(1)。
【請求項6】
シール面(21)は、カラー部材(22)の少なくとも一部に配置されている、請求項5に記載されたコークス炉ドアシール装置(1)。
【請求項7】
シール材(13)を断熱する第2の絶縁要素(23)を更に含み、第2の絶縁要素(23)はカラー部材(22)とコークス炉ドア枠(20)の間に配置されている、請求項5又は6に記載されたコークス炉ドアシール装置(1)。
【請求項8】
カラー部材(22)は、コークス炉ドア(10)が閉鎖状態にあるときに、パネルユニット(9)又はシール保護要素(30)を支持するための頂部分(27)を含む、請求項5から7のいずれかに記載されたコークス炉ドアシール装置(1)。
【請求項9】
カラー部材(22)がテーパー状のプロファイルを呈する、請求項5から8のいずれかに記載されたコークス炉ドアシール装置(1)。
【請求項10】
シール片(13)は、媒体を保持するための中空体を含み、及び/又は
シール片(13)は、シール面(21)にリング状の構造を呈する、請求項1から9のいずれかに記載されたコークス炉ドアシール装置(1)。
【請求項11】
固定装置(11)は、シール片(13)を支持するためのベース部分(17)と、シール片(13)を区切るための蓋部分(16)とを含み、
ベース部分(17)及び蓋部分(16)は、シール片(13)を保持するための溝(12)を形成する、請求項1から10のいずれかに記載されたコークス炉ドアシールユニット(1)。
【請求項12】
固定装置(11)の溝(12)の深さ(G)は、空所(32)の幅(C)よりも大きく;及び/又は
固定装置(11)の溝(12)の深さ(G)は、第1の動作状態において、シール片(11)の深さ(S)よりも大きい、請求項11に記載されたコークス炉ドアシール装置(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載された、コークス炉ドアシール装置(1)を含むコークス炉室。
【請求項14】
請求項13に記載されたコークス炉室、及び請求項1から12のいずれかに記載されたコークス炉ドアシール装置(1)を含むコークス炉バッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉ドアシール装置、コークス炉室及びコークス炉バッテリーに関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉ガスの成分は、コークス化中に、コークス炉のコークス化室(coking chambers)のコークス炉ドアの内側に蓄積する。これらの成分はコークス炉ドアの気密性に悪影響を与え得る。加えて、これらの成分は、漏り易いコークス炉ドアから漏洩すると、例えば二酸化炭素の排出のような、環境に有害なガスの一部となりかつ/又は一部を形成することもあり得る。
【0003】
漏洩リスクを低減しかつコークス炉ドアの気密性を維持するための、コークス炉ドアの従来技術のシール(封止)の考え方は、コークス炉ドアの金属要素がコークス炉室の金属コークス炉ドア枠に直接接触する、いわゆる「金属間シール」に依拠している。
【0004】
US5,556,515には、金属枠と、ドアを閉鎖位置に掛け止める手段と、連続したシールを行うため、コークス化室ドア枠のシール面との接触に適合した前縁を有する枠の周囲に延在するシール部材、を含むコークス炉ドアが記載されている。シール部材は耐熱金属から作製される。
実開平6-10347には、横室炉型コークス炉ドアシール装置が記載されている。
SU1661188A1には、コークス炉ドアのシール装置が記載されている。
実全昭48-074846には、コークス炉の蓋、及び環状の中空ガスケットが挿入されたコークス炉が記載されている。
【0005】
金属間シールの考え方に基づくシールシステムは、上記ドア設置後におけるコークス炉ドアのほんの僅かな可能性にすぎない調整を阻害する。金属間シールシステムの要素は互いに固着(rigidly attached)されている。
【0006】
漏洩のリスクを更に減らし、コークス炉ドアの気密性を更に維持するために、コークス炉ドアを定期的に清掃する必要もある。結果として、ドアの詰まりを防ぐために、機械的又は空気圧による洗浄方法を定期的に適用する必要がある。しかしながら、既存のコークス炉ドアには、作業者による清掃がかなり難しい要素及び/又は部分(sections)がある。例えば、既存のコークス炉ドアは、断面プロファイルで見たときにU字型のチャネルを形成するいわゆる「ダブルナイフ(double knives)」を備えている。これらのダブルナイフは、コークス炉ドアに二重のシール面を提供する。しかしながら、前記ダブルナイフで囲まれたスペースは人手で洗浄できないので、そのようなコークス炉ドアを洗浄するために、例えば約40バールの水等の加圧媒体を配布するロボットが使用される。正常な洗浄手順であるにも拘らず、コークス炉ドアのダブルナイフとコークス炉ドア枠間、それぞれコークス炉枠に適切なシール圧力を維持するために、なおコークス炉ドアにかなり大きい力を加えることが必要である。
【0007】
コークスバッテリー(coke battery)のコークス炉室は、コークスバッテリーの複数のコークス炉室のうちの1つであり得る。例えば、従来のコークス炉室は、高さ約8メートル、幅約20メートル、厚さ約60センチメートルであり得る。コークス炉バッテリーにおいて、コークス炉室は、通常、コークス炉室、加熱室をそれぞれ加熱するように交互に作動し得る2つの加熱壁の間に配置される。コークス炉室内部及びコークス炉室の壁に沿った異なる地点で、異なる温度が規則的に優勢になっている。換言すれば、壁とコークス炉室内部には大きな温度勾配がある。例えば、石炭が充填された後に炉が起動すると、その不均一な温度分布により、炉の各部分及び/又は要素が異なる程度又は異なる割合(different rates)で膨張し得る。コークス炉ドアと共にコークス炉ドア枠は自然対流によって規則的に冷却され、かつ外(殻(shell))側では約300°Cまでの温度に晒される。
【0008】
その温度差により、コークス炉ドア枠とコークス炉ドアは熱膨張により曲がる。その曲げにより、コークス炉ドア枠とコークス炉ドアの間に凹凸面が生じる。その結果、金属間シールは漏洩し易く、漏洩が発生すると、コークス炉ドアとコークス炉ドア枠間で更に汚れや目詰まりをも生じ得る。加えて、漏洩したガスが、作業者及び/又はコークス(炉)バッテリーの近くの地域に住む人々にとって健康上のリスクとなり得る。
【0009】
漏洩が検出された場合、多くの場合、作業者は漏洩をシールし、コークス炉ドアとコークス炉ドア枠間の気密を維持しようとする。この目的のために、手動締付け及び/又はシール方法が作業者によって実行される。例えば、作業者は硬化液(hardening liquid)やシールペーストを塗布して漏洩を止めようとするが、これには時間とコストが掛かる。加えて、前記物質を適用すると、コーキングプロセス中にコークス炉ドア及び/又はコークス炉(ドア)枠が更に曲がって、さらなる漏洩が発生し得ることから、多くの場合非常に非効率的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、漏洩の発生を低減するコークス炉ドアシール装置、コークス炉室及びコークス炉バッテリーを提供することである。この目的は、独立請求項によるコークス炉シール装置、コークス炉室及びコークス炉バッテリーによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、コークス炉ドアシール装置の要素の特定の配置(arrangement)が、コークス炉ドア及び/又はコークス炉ドア枠の熱変形の影響を受けない自動調整機構を構成し得るとの知見に基づくものである。更に、本発明は、コークス炉ドアを開けると大きな炎が発生する可能性があるとの知見にも基づいている。これらの炎はシール片(sealing piece)から一定の距離のところで発生することが発明者らによって発見された。
【0012】
高温ガスはコークス炉室を開いた途端に猛スピードで飛び出すため、これらのガスが一定距離を移動して周りの空気と十分に混合して発火するまでに、一定の時間を要すると思われる。炎とシール片間のこの距離は、シール片の処の温度が予想よりもはるかに低く、かつ実際には-非常に驚くべきことには-シール片の臨界温度(critical temperature)を下回るのに十分であることが分った。
【0013】
このように、シール片は炎に直接晒されないため、シール片のレベルの処の温度は、驚くべきことに予想よりもはるかに低く、シール片の臨界温度を遥かに下回る。シール片は炎と直接接触せず、コークス炉及び/又は炎及び/又は高温コークス炉ガスによって伝達される熱によって、構造的損傷を受けることもない。結果として、自動調整シール機構を提供するために、可撓性シール片、例えばシリコーン(silicone)又は他の適切な材料で作られたシール片が使用し得る。
【0014】
自動調整シール機構と柔軟で気密性の高いシール片の配置により、漏洩するコークス炉ガスの量が大幅に減少する。作業者が手動で締付け及び/又はシール方法を適用する必要があるコークス化中の漏洩回数は結果として大幅に低減する。これによりコークス炉の操作性が特に向上する。
【0015】
コークス炉ガスの漏洩によって引き起こされる環境への悪影響が大幅に減少する。
【0016】
本発明は、コークス炉ドアをコークス炉室のコークス炉ドア枠のシール面に対してシールするコークス炉ドアシール装置に関する。コークス炉ドアシール装置は、コークス炉室を閉鎖するためのパネルユニットを有するコークス炉ドア;コークス炉ドアの周縁領域でシール片をシール面に対向して保持する固定装置(fixture device);及びシール片であって、第1の動作状態又は第2の動作状態で動作するように構成されているシール片、を含む。第1の動作状態では、シール片は、シール片に対向して配置されたシール面から第1の距離を隔てて配置される。第2の動作状態では、シール片はシール面に接触し、それによりシール片とパネルユニットが少なくとも部分的に空所を形成する。
【0017】
自動調整機構は、いわゆる「半径方向締付け原理(radial tightening principle)」に基づいており、寧ろ熱変形の影響をあまり受けず、したがって、-「軸方向締付け原理」とは対照的に-ドア本体と枠の間に特に剛接続(rigid connection)を必要としない。半径方向締付け原理によれば、コークス炉ドアをコークス炉ドア枠に対してシールするための力が、シール面に沿って半径方向に作用する。その結果、コークス炉ドアシール装置はその要素の熱変形が起り難い。加えて、本発明は、交換可能な要素の適用により、コークス炉ドアシール装置のより迅速な洗浄及び容易なメンテナンス(保守)をも可能にしている。結果として、漏洩の発生が効果的に低減される。
【0018】
「コークス炉ドア」は、コークス炉室をコークス炉バッテリーのコークス炉室の外部環境から分離するように構成された、任意の開放可能及び/又は閉鎖可能な要素又はドアを指す。コークス炉ドアは、ドア、カバー、フラップ、ハッチ、ポート(口;port)、蓋、キャップ(cap)、又は類似の閉鎖装置を呈する。コークス炉ドアの内側は、コークス炉室の内部の部屋と接触するように構成されており、そのため、コークス炉ドアの内側はコークス化中に高温の石炭及び/又はコークスに接触する。通常、内側は耐火性に構成されかつコークス炉室の内部に突出するための消火栓(fireplug)を呈し、ここで、前記消火栓は熱損失を防止するように構成されている。多くの場合、コークス炉室には、互いに向き合って配置された2つのコークス炉ドアがある。第1のコークス炉ドアは、「押し込み側」におけるコークス炉ドアを指す。押し込み側は、機械が石炭及び/又はコークスをコークス炉室の反対側に押し込めるように構成された側であり、「コークス側」を指す。
【0019】
コークス炉ドアにより、材料のコークス炉室への、又はコークス炉室からの充填及び/又は除去が可能になる。更に、コークス炉ドアは、石炭/コークス及びコークス炉ガスがコークス炉室から漏洩するのを防止する。それぞれ「コークス炉ドア枠」、枠/コークス炉枠は、コークス炉ドアによって閉鎖される開口の周りの枠を指す。開口はコークス炉室の開口を構成し得る。コークス炉ドアが閉鎖位置にあるとき、コークス炉ドア枠又は少なくともコークス炉ドア枠の一部は、コークス炉ドア又はコークス炉ドアの要素、例えばコークス炉ドアのパネルユニットなどと直接接触する。
【0020】
「パネルユニット」、パネル/(ドア)板(leaf)それぞれは、コークス炉室に障壁(barrier)/閉鎖体(closure)を提供するコークス炉ドアの要素を指す。パネルユニットは、コークス炉ドアと一体であってもよい。代替的には、パネルユニットをコークス炉ドアに取り付けてもよい。パネルユニットの少なくとも部分及び/又は側面は、コークス炉ドアが閉鎖位置にあるときは、コークス炉室に直接接触する。パネルユニットは、例えば、可燃性の金属板であり得る。パネルユニットの少なくとも一部は空冷され得る。
【0021】
「コークス炉ドア枠のシール面」は、コークス炉ドアが閉鎖位置にありかつシール片が第2の動作状態にあるとき、コークス炉ドア、とくにコークス炉ドアのシール片に接触する表面、表面部分又は領域を指す。シール面は、例えばコークス炉ドア枠の平滑面又はコークス炉ドア枠のカラー部材(collar member)の側面であり得る。カラー部材は、コークス炉ドア枠の一体部分であってもよいし、コークス炉ドア枠に取り付けられていてもよい。
【0022】
「シール片」、シールは、それぞれコークス炉ドア枠に対してコークス炉ドアをシールするための任意の適切な要素を指す。特に、シール片は、コークス炉ドアをコークス炉ドア枠に対してシールするように構成された非金属要素を指す。シール片は弾性材料で形成し得る。弾性材料とは弾性が強化された材料を指す。弾性は、力が加えられると形状が変化し、力が除去されると元の形状に戻る物体及び/又は材料の特性である。シール片は、例えば、シリコーン、特にいわゆる高温シリコーン、リング状シリコーンガスケット、(シール)ゴム、膨張可能なシール、及び/又はそれらの混合物、の少なくとも1つを含むか、又はそれらから成るか、又はそれらから形成され得る。更に、例えば弾性材料は、以下の、プラスチック、合成材料、ゴム材料(caoutchouc material)、類似の材料又はそれらの混合物、の少なくとも1つで形成し得るし、又は含み得る。シール片を形成するための適切な追加又は代替材料及び/又は製品は、シリコーン(例えばVMQ、FVMQ)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレン(EPDM)、クロロプレン(CR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化-ニトリル-ゴム(HNBR)、バイトン(Viton;登録商標)フルオロカーボンゴム(FKM)又は類似の材料、の少なくとも1つを含むか又はそれらから成り得る。追加的又は代替的に、シール片は、更に例えば繊維要素、例えばガラス及び/又はセラミック繊維シールであり得る。ここで、繊維要素はシール片上及び/又はシール片内に配置される。弾性材料で形成されたシール片を使用することで、コークス炉ドアが閉鎖されているときのシール片の(自動)調整を容易にし得る。シール片は、コークス炉ドアが閉鎖位置にあるときに炉ガスが炉から漏洩するのを防ぐ。加えて、シール片はコークス炉室の断熱に寄与する。
【0023】
「シール片を保持するための固定装置」は、少なくとも部分的にシール片を保持及び/又は位置決め及び/又は受容するように構成された構成要素又はいくつかの相互接続された要素を指す。例えば、固定装置は、シール片を保持するための溝を含み得る、ここで、シール片は、溝に摩擦的及び/又は形状-適合(form-fit)して接続し得る。更に例えば、固定装置は、シール片を保持するための溝を一緒に形成するベース部分及び蓋部分(lid segment)を含み得る。固定装置は、コークス炉ドア及び/又はコークス炉ドアの要素、例えばパネルユニット等、に取り付けるか又は配置し得る。例えば、固定装置は、コークス炉ドア及び/又はパネルユニットとの力-及び/又は形状-適合及び/又は材料及び/又は摩擦接続を有し得る。代替的には、固定装置は、コークス炉ドア及び/又はパネルユニットとそれぞれ一体化して1部品(one piece)に造ることもできる。更に代替的に、他の要素、例えば絶縁要素及び/又はシール保護要素が固定装置とコークス炉ドア又はパネルユニットとの間に配置し得る。固定装置は、シール片を保持(hold)及び/又は位置決め及び/又は維持(retain)する。加えて、固定装置は、コークス炉ガス及び/又は高温に対するシール片のための絶縁体を少なくとも部分的に形成し得る。
【0024】
「コークス炉ドアの周縁領域」は、コークス炉ドア及び/又はパネルユニットの縁(edge)及び/又は縁領域を指す。コークス炉ドアの周縁領域は、コークス炉ドア及び/又はパネルユニットの内側に位置し得る。コークス炉ドア及び/又はパネルユニットの内側は、コークス炉室に面する側である。例えば、コークス炉ドアの周縁領域は、消火栓を包囲する(encircling)/又は囲繞する(surrounding)領域であり得る。更に、例えば、コークス炉ドア及び/又はパネルユニットの周縁領域は、シール片及び/又はシール片を保持する固定装置が位置する領域であり得る。固定装置は、例えば、パネルユニット又はコークス炉ドアの縁にフランジ取り付けされ及び/又は面一になるように位置決めし得る。
【0025】
「第1の動作状態」は、シール片の動作状態を指す。例えば、シール片が膨張可能なシールを含むか又はそれから形成されている場合、第1の動作状態は、シールが収縮している状態を指し得る。同様に、「第2の動作状態」は、第1の動作状態と異なるシール片の動作状態を指す。例えば、シール片が膨張可能なシールを含むか又は膨張可能なシールから形成されている場合、第2の動作状態は、シールが加圧媒体によって膨張し、その結果、膨張可能なシールが膨張する状態を指し得る。
【0026】
「シール面から第1の距離だけ隔てて」とは、シール面とシール片との距離、間隔又は隙間を指す。「空所」は、コークス炉ドアが閉鎖されシール片がシール面に接触したとき、少なくとも部分的に形成し得る容積(volume)又は空洞(void)、中空(hollow)又は空の空間(empty space)を指す。空所は完全に又は部分的に閉鎖し得る。例えば、シール片が膨張可能なシールを含むか又はそれから形成されている場合、コークス炉ドアが閉鎖され、膨張可能なシールが膨張し、したがって、第2の動作状態にあるとき、空所がシール片の一部とパネルユニット又はコークス炉ドアの一部との間に形成され得る。換言すれば、コークス炉ドアが閉鎖されかつシール片が第2の動作状態で動作すると、空所は、シール片とパネルユニットの間、それぞれシール片の一部とパネルユニットの一部との間に配置される。換言すれば、シール片とパネルユニットは、少なくとも部分的に空所を区分する(delimit)/画定(define)する。空所は通常、空気などの気体で満し得る。結果として、伝導による熱伝達、例えば金属を介した熱伝導は、この領域で減少又は防止し得る。結果として、空所は空所に隣接するシール片に断熱性を付与する。したがって、シール片に加わる熱負荷を大幅に低減し得る。
この低減により、高い動作温度故に、そうでなければコークス炉ドアに適用できない、例えばシリコーンのようなシール材料で形成されたシール片の使用が可能にもなる。パネルユニットの内側は空所に接しているため、空所内部の熱はパネルユニットの内側からパネルユニットの空冷された外面に伝達され、そこで周りの環境に放散される。その結果、コークス化中に、シールの過熱を防ぐ連続的な熱の流れが発生する。加えて、コークス炉ドアを開放したときのシール片の火炎形成が低減又は完全に抑制される。空所内でのガスの流れ、それぞれのガスの移動も効果的に抑制又は低減されるため、閉鎖した空所によって、開放中のシール片上での火炎の形成も抑制できる。このことは、コークス炉ドアを開放した途端に、シール片の近くの領域で火炎-形成混合ガスが形成されるのを防止するのにも寄与する。
【0027】
1実施形態では、固定装置は、パネルユニットに取り付けられる。「パネルユニットに取り付けられる」とは、直接又は間接の取り付けを指す場合があり得る。例えば、固定装置は、パネルユニットの一部に配置され、したがってパネルユニットに直接接触し得る。代替的には、固定装置がパネルユニット又はパネルユニットの一部に間接的に取り付けられるように、1つ以上の他の構成要素、例えば第1の絶縁要素及び/又はシール保護要素を固定装置とパネルユニットとの間に配置し得る。固定装置はパネルユニットの内側に配置し得る。パネルユニットの内側は、コークス炉室に面する側に対応する。固定装置は、パネルユニットの周縁側又は周縁領域に配置し得る。固定装置をパネルユニットに配置することで、強化された自動調整機構が提供可能になる。
【0028】
コークス炉ドアシール装置は、更にシール片を断熱する第1の絶縁要素を含み、第1の絶縁要素は、固定装置に配置される。「絶縁要素」は、絶縁するための構成要素、特に断熱のための、その環境に対する要素を指す。例えば、絶縁要素(insulation element)、それぞれ絶縁要素は、雲母、ケイ酸塩鉱物(silicate mineral)及び/又はフィロケイ酸塩鉱物(phyllosilicate mineral)又はそれらの混合物(mixture)から形成されるか又は含み得る。絶縁要素の熱伝導率は、隣接する構成要素の熱伝導率と異なる場合があり得る。例えば、絶縁要素は、固定装置よりも低い熱伝導率を有し得る。絶縁要素の配置により、固定装置及び固定装置により保持されたシール片への熱伝達を更に減少し得る。絶縁要素は、例えば、固定装置とパネルユニットとの間に配置し得る。
【0029】
1実施形態では、シール片をコークス炉室から隔離するためのシール保護要素がパネルユニットに配置されている。「シール保護要素」は、コークス炉ドアが閉鎖された状態でコークス炉室に対して隔離及び/又は絶縁バリアを形成する、コークス炉ドア又はパネルユニットの構成要素を指す。シール保護要素は、例えば、金属製の折り曲げ可能なプレート、ストリップ(帯状片)、バー(棒)又はスプリングシールド(バネ遮蔽物;spring-shield)であり得る。コークス炉ドアの閉鎖状態において、シール保護要素は、シール保護要素の端部でコークス炉枠及び/又はコークス炉枠のカラー部材に接触した状態で、コークス炉室に面する一側を有し、コークス炉室の一部をそれぞれ区切る。シール保護要素は、例えば、凹状、凸状、曲面状、湾曲状又は角度付きプロファイルを有し得る。シール保護要素は、パネルユニットの一体部分であり得る。代替的には、シール保護要素をパネルユニットに取り付け得る。シール保護要素は、コークス化中にコークス炉ガスがシール片に接触するのを防止/回避/減少/低減する。加えて、シール保護要素は、コークス炉室内の熱に対する断熱/バリアも提供する。
【0030】
1実施形態では、シール保護要素は第1の絶縁要素に接触する。シール保護要素は、例えば第1の絶縁要素に配置し得る。特に、シール保護要素は、第1の絶縁要素とコークス炉ドアのパネルユニットとの間に配置し得る。シール保護要素が第1の絶縁要素に接触/境界を接し/隣接する配置により、コークス炉ドアシール装置の特にコンパクトな設計が可能になる。代替的に別の実施形態では、シール保護要素は、第1の絶縁要素と対向して配置される。シール保護要素は、第1の絶縁要素の反対側に/対向して配置した状態で、パネルユニットの内側に配置し得る。シール保護要素が第1の要素の反対側に配置する配置により、特に空所を大きな寸法にでき、これによりシール片に伝達される熱量を減少させる。
【0031】
1実施形態では、コークス炉ドア枠は、コークス炉室の少なくとも一部を画定するためのカラー部材を含む。「カラー部材」は、コークス炉ドア枠又はコークス炉ドア枠の表面から延びる及び/又は突出する構造要素を指す。カラー部材は、例えばコークス炉ドア枠又はコークス炉ドア枠の表面から垂直方向又は角度を付した方向に延在し得る。カラー部材は、コークス炉ドア枠の一体部分であり得るか又はコークス炉ドア枠に取り付け得る。コークス炉ドア枠の「一体」部分は、配置(arrangement)を指し、ここで、カラー部材及び枠、それぞれ、カラー部材の一部及び枠の一部は、1部品(one piece)又はブランク(半加工品;blank)から形成される。カラー部材は、金属材料で形成し得る。カラー部材は、長方形、L字型、I字型、凹状、凸型、角度付き、テーパー状又はC字型のプロファイルを有し得る。「プロファイル」は、断面プロファイルを指す場合があり得る。カラー部材のプロファイルは、異なる温度及び環境条件に適合させ得る。カラー部材の形状は、環境及び/又はシール片に伝達される熱量を規定する。カラー部材の配置により、コークス炉ドア枠によってカラー部材に伝達される熱の一部を周囲環境に放散可能になる。その結果、シール片に伝達される熱負荷を大幅に低減することができる。したがって、カラー部材は冷却フィンのように機能し得る。
【0032】
1実施形態では、シール面はカラー部材の少なくとも一部に配置される。カラー部材は、一側又は側部に配置されたシール面を有し得る。シール面は、シール片の第2の動作状態においてシール片に接触するように構成されている。カラー部材の別の側又は側部は空気によって冷却される。シール面を有するカラー部材の配置により、横方向のシールが可能となり、そのことでシール片の自動-調整及び半径方向の締付けが更に容易になる。
【0033】
1実施形態では、コークス炉ドアシール装置は、シール片を断熱する第2の絶縁要素を更に含み、ここで第2の絶縁要素は、カラー部材とコークス炉ドア枠との間に配置される。第2の絶縁要素は、カラー部材の少なくとも一部とコークス炉ドア枠の一部とに接触し得る。第2の絶縁要素は、コークス炉ドア枠に取り付けるか、コークス炉ドア枠と一体であり得る。第2の絶縁要素はカラー部材とコークス炉ドア枠との間に配置し得る。第2の絶縁要素の配置により、カラー部材に伝達される熱量を減少し得、それによりシール面に伝達される熱を更に低減することができる。
【0034】
1実施形態では、カラー部材は、コークス炉ドアが閉鎖状態であるとき、パネルユニット又はシール保護要素を支持する頂部分(top section)を含む。頂部分は、例えば、パネルユニット及び/又はコークス炉ドア及び/又はシール保護要素の端部を支持及び/又はそれに接触するように構成された表面又は表面部分と成り得る。頂部分は、例えば、コークス化中のコークス炉ドアの僅かな動き、それぞれ(自動)調整を可能にする特に滑らかな表面を含み得る。
【0035】
1実施形態では、カラー部材はテーパー状のプロファイルを呈する。カラー部材のテーパー状のプロファイルは、異なる幅の少なくとも2つの部分を有するカラー部材のプロファイルであり得る。特に、プロファイルは、カラー部材の頂部分に向かってテーパー状であり得る。テーパー状のプロファイルを有するカラー部材の配置により、コークス炉ドアシール装置の特に材料節約及びコンパクトな構造的構成が可能になる。
【0036】
1実施形態では、シール片は、媒体を保持するための中空体を含む。追加的又は代替的に、シール片は、シール面がリング状の構造であり得る。
【0037】
「中空体」は、シール片の管状又はホース状の構造を指す。例えば、シール片は、膨張可能なシールであり得る。膨張可能なシールの中空体は、媒体(例えば、ガス、水、油など)を充填し得、その結果、膨張可能なシールが膨張する。膨張可能なシールの膨張により、膨張可能なシールはシール面、例えばコークス炉ドア枠のシール面に接触し得る。
【0038】
「媒体」は、液体、流体、気体、溶液、エマルジョン又は類似の構造又は物質を指す。例えば、空気を媒体として用い得る。
更に例えば、媒体は加圧し得る。換言すれば、媒体は大気圧よりも高い圧力を有し得る。媒体が充填された中空体により、シール片は半径方向の締付けを行い、それ自身をシール面に合わせて調整し得る。
【0039】
「リング状の構造」は、端部同士が接続された構造であり得る。リング状の構造のシール片により、コークス炉ドアに対してシール面をシールすることが可能になる。その結果、コークス炉ガスの排出を完全に防止するか、少なくとも大幅に減少し得る。
【0040】
1実施形態では、固定装置は、シール片を支持するためのベース部分と、シール片を区切るための蓋部分とを含み、ここで、ベース部分及び蓋部分は、シール片を保持するための溝を形成する。シール片は溝によって支持/保持/位置決めし得る。ベース部分及び蓋部分は、例えば、少なくともネジ、ボルト、ピン又は類似の構造要素によって、互いに固定的(fixedly)及び/又は着脱可能に取り付け得る。ベース部分と蓋部分を含む固定装置の配置により、固定要素(fixture element)の構造をモジュール化することができ、したがって、固定装置及び/又はシール片の段取り替え(retooling)も可能になる。
【0041】
1実施形態では、固定装置の溝の深さは、空所の幅よりも大きい。追加的又は代替的に、第1の動作状態において、固定装置の溝の深さは、シール片がその第1の動作状態にあるときのシール片の深さよりも深い。シール片の第1の動作状態では、固定装置の溝の深さは、シール片の深さよりも大きい/深い場合があり得る。溝の深さがその第1の動作状態におけるシール片の深さよりも深い配置では、溝は、シール片と接触しないが、それらの周囲の環境と接触する2つの平行な壁部分を有する。これらの部分は特に迅速に空冷できるので、シール片への熱伝達を減少し得る。加えて、溝がシール片の深さよりも深い深さを有する配置により、シール片が第2の動作状態から第1の動作状態に変化したときに、シール片は溝内に退歩(slip back)/後退し得る。シール片は溝内で安全に退却し得るため、空所の数倍の大きさの溝でも、作業者は特に容易に洗浄することができ、そのため、工業的な清掃作業、例えば高圧洗浄作業などが容易になる。空所の幅は、カラー部材の表面部分と、カラー部材の表面と対向して配置された固定装置の表面部分との間の距離によって規定し得る。空所の正確な寸法は、設計及び洗浄面に依存し、当業者が容易に決定することができる。
【0042】
本発明は、コークス炉ドアシール装置を含むコークス炉室にも関する。コークス炉ドアシール装置を有するコークス炉室は、排出物(emissions)及び/又はコークス炉ガスの漏洩を起こし難い。加えて、コークス炉ドアシール装置を有するコークス炉室のコークス炉ドアは、作業者によってより容易に洗浄及び保守し得る。複数のコークス炉ドアシール装置は、コークス炉室に対向して又は異なる位置に配置し得る。コークス炉ドアシール装置の前述の改良及び実施形態は、コークス炉室にも適用される。
【0043】
本発明は、コークス炉ドアシール装置を含むコークス炉バッテリーにも関する。それぞれが1つ以上のコークス炉ドアシール装置を有し、複数のコークス炉室を有するコークス炉バッテリーは、漏洩を起こし難く、低減した量のコークス炉ガスを排出し得る。コークス炉ドアシール装置の前述の改良及び実施形態は、コークス炉バッテリーにも適用される。
【0044】
本発明の更なる態様及び特徴は、従属請求項、添付図面及び以下の実施形態の説明から派生する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
次に、本発明の実施形態について、例として、添付の図面を参照して説明する、ここで、
【
図1】コークス炉ドアシール装置の1実施形態の上面図である。
【
図2】
図1に示すコークス炉ドアの縁取り領域(edging area)の断面線A-Aに沿った拡大縦断面図である。
【
図3】カラー部材を取り付けて備えた、コークス炉ドア枠を有するコークスドアシール装置の別の実施形態の断面図である。
【
図4】パネルユニットにシール保護要素が配置されている、コークス炉ドアシール装置の別の実施形態の断面図である。
【
図5】シール保護要素が固定装置に対向配置されている、コークス炉ドアシール装置の別の実施形態の断面図である。
【
図6】固定装置がネジでパネルユニットに取り付けられている、コークス炉ドアシール装置の別の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、コークス炉ドアシール装置1の上面図を示し、枠は図示されていない。
図2は、
図1に示すコークス炉ドアの縁取り領域の断面線A-Aに沿った拡大縦断面図である。
図2において、コークス炉ドア1は閉鎖状態である。コークス炉ドアシール装置1は、コークス炉室31のコークス炉ドア枠20に嵌まり込む又は取付けるためのコークス炉ドア10で構成されている。コークス炉ドア10は、コークス炉室31を閉塞するパネルユニット9を含む。コークス炉ドア10の周縁領域には、溝12を有する固定装置11が、それぞれパネルユニット9に配置されている。固定装置は、ベース部分17と蓋部分16とから構成されている。ベース部分17及び蓋部分16は、シール片13を保持するための溝12を形成している。シール面21は、溝12から離れてそれに対向するように配置されている。溝12内には膨張可能なシールからなるシール片13が取り付けられている。溝12及びシール片13は、摩擦的及び/又はフォームフィット(形状適合;form-fit)接続を形成している。シール片13は、例えば加圧ガスである媒体(図示せず)を保持するための中空体を有する。シール片13は、例えばシリコーンなどの弾性材料で造られており、約300°Cで動作するように構成されている。シール片13は、コークス炉ドア10の周縁領域を完全に取り囲むリング状の構造(図示せず)を有している。
【0047】
図2のシール片13の斜線を施した面は、第1の動作状態における膨張可能なシールを示す。第1の動作状態では、シール片13は、シール片13に対向して配置された接触面21から距離Dで離間している。
図2のシール片13の一点鎖線の描写は、シール片13が接触面21に接触する第2の動作状態における膨張可能なシールを示している。第1の動作状態では、溝12の深さGは、シール片13の深さSよりも深く/大きい。固定装置11の溝12の深さGは、空所32の幅Cよりも大きく、少なくとも2倍大きい。これに関連して、空所の深さCは、例えば、コークス炉ドア10及び/又はコークス炉ドア枠20及び/又は例えば、1つ又は複数の取り付け/取り外し装置(図示せず)のような、コークス炉ドア10に接続された追加のさらなる構造要素の公差にも基づくか又は影響を受ける。それに加えて、コークス化中に、異なる構造要素の熱膨張により寸法のさらなる変化が生じ得る。つまり、溝の深さG、空所の幅C、並びにシール片13の深さSは若干変化し得る。例えば、溝内の後退距離Gはシール要素13のストロークに直接依存し得る。
【0048】
コークス炉ドア枠20には、カラー部材22が設けられている。カラー部材22は、コークス炉ドア枠20と一体化されている。カラー部材22はコークス炉ドア枠20から延在する。シール面21はカラー部材22の側部に配置されている。カラー部材22はテーパー状のプロファイルを有している。カラー部材22のプロファイルは頂部分29に向かって先細りになっている。頂部分29は、ドアが閉鎖位置にあるときにパネルユニット9を支持する。固定装置11は、シール片13をコークス炉ドア枠20、コークス炉ドア枠20のカラー部材22のシール面21それぞれに対向して保持する。
【0049】
シール片13の第2の動作状態では、シール片13とパネルユニット9により空所32が形成される。空所32は、第1の絶縁要素14、固定装置11の固定蓋部分16及びカラー部材22の各部分によって更に区画されている。第1の絶縁要素14は、パネルユニット9の周縁領域、縁それぞれのところで、蓋部分16とパネルユニット9との間に配置されている。シール片13が第1の動作状態から第2の動作状態に移行する間、シール片13は空所32を閉塞する。第1の絶縁要素14は、雲母又は類似の材料を含むか或いはそれから形成され得る。第1の絶縁要素14は、コークス炉ドア枠20及びコークス炉室31の熱に対して断熱性/絶縁性を与える。これにより、第1の絶縁要素14は、シール片13の断熱性/絶縁性に寄与する。
【0050】
図3は、カラー部材を取り付けて備えたコークス炉ドア枠20を有する、コークスドアシール装置1の別の実施形態の断面図を示す。
図2に示す実施形態とは逆に、カラー部材22はコークス炉ドア枠20と一体化されていない。カラー部材22は、コークス炉ドア枠20の表面から延びるL字状のプロファイルを呈している。カラー部材22は、コークス炉室31を部分的に区画している。固定装置11は、パネルユニット9の周縁領域においてパネルユニット9に間接的に取り付けられている。第1の絶縁要素14は、固定装置11の蓋部分16とパネルユニット9の表面との間に配置されている。第2の絶縁要素23は、カラー部材22とコークス炉ドア枠20の表面部との間に配置されている。第1の絶縁要素14は、コークス炉ドア枠20及びコークス炉室31の熱に対する断熱性/絶縁性を与える。第1の絶縁要素14と同様に、第2の絶縁要素23もシール片13の断熱性/絶縁性に寄与する。第2の絶縁要素23は、雲母又は類似の材料を含むか又はそれから形成され得る。第2の絶縁要素23は、コークス炉ドア枠20及びコークス炉室31の熱に対する断熱性/絶縁性を与える。
【0051】
図4は、シール保護要素30がパネルユニット9上に配置されているコークス炉ドアシール装置1の別の実施形態の断面図を示す。
図4のシール保護要素30は、コークス炉ドア10のパネルユニット9に取り付けられた角度付きバネ板(angled spring plate)/遮蔽体(shield)を呈している。より小さな遮蔽体でもよいことに注意する必要がある。シール保護要素は、パネルユニット9と一体であり得る(図示せず)。コークス炉ドア10の閉鎖状態では、シール保護要素30の端部はカラー部材22の頂部分29に接触する。シール保護要素30の一部は、パネルユニット9と第1の絶縁要素14との間に配置されている。
図4に示す実施形態では、カラー部材22は、コークス炉ドア枠20と一体化されている。シール片13の第2の動作状態においては、空所32は、シール保護要素30の一部、カラー部材22の一部、固定装置11の蓋部分16の一部、第1の絶縁要素14の一部及びシール片13の一部によって画定されている。シール片13の第1の動作状態から第2の動作状態への移行する間、シール片13は空所32の閉鎖手段となる。
【0052】
図5は、コークス炉ドアシール装置1の別の実施形態の断面図を示しており、ここでは、シール保護要素30は固定装置11に対向配置されている。
図5に示す実施形態は、
図4に示す実施形態と同様にコークス炉ドア枠20と一体化したカラー要素22を呈している。
図5に示すシール保護要素30は、コークス炉ドア10のパネルユニット9に取り付けられている角度付きばね板/遮蔽体を呈している。コークス炉ドア10の閉鎖状態では、シール保護要素30の端部がカラー部材22の頂部分29に接触する。絶縁要素14はパネルユニット9の周縁部と固定装置11との間に配置され、シール片13を保持する固定装置11は蓋部分16とベース部17を含んでいる。シール片13の第2の動作状態において、空所32は、シール保護要素30の一部、カラー部材22の一部、固定装置11の蓋部分16の一部、第1の絶縁要素14の一部、パネルユニット9の一部、及びシール片13の一部によって画定される。各々パネルユニット9の外側、パネルユニット9の外側を向いた側、すなわちパネルユニット9の内側と反対側が空冷されるので、
図5の実施形態では、空所32内に存在する熱量を特に連続的に放散することができる。
【0053】
図6は、コークス炉ドアシール装置1の別の実施形態の断面図であり、ここでは固定装置11はパネルユニット9にネジで取り付けられている。
図6に示す実施形態は、
図3に示す実施形態と同様に、カラー部材22を取り付けたコークス炉ドア枠20を有するコークスドアシール装置1を示している。カラー部材22は、コークス炉ドア枠20の表面から延びるL字状のプロファイルを呈している。カラー部材22は、コークス炉室31を部分的に区分している。第1の絶縁要素14は、固定装置11の蓋部分16とパネルユニット9の表面との間に配置されている。第2の絶縁要素23は、カラー部材22とコークス炉ドア枠20の表面部分との間に配置されている。第1の絶縁要素14及び第2の絶縁要素23は、それぞれ、コークス炉ドア枠20及びコークス炉室31の熱に対する絶縁性/断熱性を呈している。
図3に示す実施形態とは逆に、
図6に示す実施形態は枠バー28を呈している。枠バー28は、コークス炉ドア枠20から垂直に延びている。枠バー28は、コークス炉ドア枠20と一体化されている。枠バー28の少なくとも一部は空冷され、そのため枠バーはコークス炉ドア枠からの放熱を強化する。固定装置11は、第1のネジ33によってパネルユニット9の周縁領域でパネルユニット9に取り付けられている。固定装置11は、ネジ33が貫通延在する垂直貫通孔34を含む。同様に、カラー部材22並びに第2の絶縁要素23は、第2のネジ35によってコークス炉ドア枠20に固定されている。
【0054】
ここで論じた例は本発明の実施形態である。実施形態の場合、それぞれの実施形態は本発明の個々の特徴、つまり、各々互いに独立して考慮されるべきものでありかつ互いに独立して本発明を更に発展させるものでもある特徴、を表わしている。したがって、その特徴は、個別に、又は示された組み合わせ以外の組み合わせとしても解すべきである。更に、記載された実施形態は、既に説明した本発明の別の特徴によって補足することも可能である。
【0055】
本開示及び特許請求の範囲からみれば、本発明の更なる特徴及び実施形態は当業者にとってはその結果として得られるものである。
【符号の説明】
【0056】
1 コークス炉ドアシール装置
10 コークス炉ドア
11 固定装置
12 溝
13 シール片
14 第1の絶縁要素
16 蓋部分
17 ベース部分
20 コークス炉ドア枠
21 シール面
22 カラー部材
23 第2の絶縁要素
28 枠バー
29 頂部分
30 シール保護要素
31 コークス炉室
32 空所
33 第1のネジ
34 貫通孔
【手続補正書】
【提出日】2022-09-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉ドア(10)を、コークス炉室(31)のコークス炉ドア枠(20)のシール面(21)に対してシールするコークス炉ドアシール装置(1)であって、
コークス炉室(31)を閉鎖するためのパネルユニット(9)を有するコークス炉ドア(10);
コークス炉ドア(10)の周縁領域でシール片(13)をシール面(21)に対向して保持する固定装置(11)
であって、パネルユニット(9)に取り付けられた固定装置(11);
シール片(13)であって、第1の動作状態又は第2の動作状態で動作するように構成されているシール片(13)を含み;
第1の動作状態では、シール片(13)は、シール片(13)に対向して配置されたシール面(21)から第1の距離(D)を隔てて配置され;かつ第2の動作状態では、シール片(13)はシール面(21)に接触し;それによりシール片(13)とパネルユニット(9)が少なくとも部分的に空所(23)を形成し; かつ
コークス炉ドアシール装置(1)は、シール片(13)を断熱する第1の絶縁要素(14)を更に含み、第1の絶縁要素(14)は固定装置(11)に配置され
、かつ第1の絶縁要素(14)は、固定装置(11)がパネルユニット(9)に間接的に取り付けられるように、固定装置(11)とパネルユニット(9)との間に配置されている、コークス炉ドアシール装置(1)。
【請求項2】
シール片(13)をコークス炉室(31)から隔離するためのシール保護要素(30)がパネルユニット(9)に配置されている、請求項1に記載されたコークス炉ドアシール装置。
【請求項3】
シール保護要素(30)は第1の絶縁要素(14)に接触する、請求項1又は2に記載されたコークス炉ドアシール装置。
【請求項4】
シール保護要素(30)
は、第1の絶縁要素(14)と対向して配置されている、請求項1から3のいずれかに記載されたコークス炉ドアシール装置。
【請求項5】
コークス炉ドア枠(20)は、コークス炉室(31)の少なくとも一部を画定するカラー部材(22)を含む、請求項1から4のいずれかに記載されたコークス炉ドアシール装置(1)。
【請求項6】
シール面(21)は、カラー部材(22)の少なくとも一部に配置されている、請求項5に記載されたコークス炉ドアシール装置(1)。
【請求項7】
シール材(13)を断熱する第2の絶縁要素(23)を更に含み、第2の絶縁要素(23)はカラー部材(22)とコークス炉ドア枠(20)の間に配置されている、請求項5又は6に記載されたコークス炉ドアシール装置(1)。
【請求項8】
カラー部材(22)は、コークス炉ドア(10)が閉鎖状態にあるときに、パネルユニット(9)又はシール保護要素(30)を支持するための頂部分
(29)を含む、請求項5から7のいずれか記載されたコークス炉ドアシール装置(1)。
【請求項9】
カラー部材(22)がテーパー状のプロファイルを呈する、請求項5から8のいずれかに記載されたコークス炉ドアシール装置(1)。
【請求項10】
シール片(13)は、媒体を保持するための中空体を含み;及び/又は
シール片(13)は、シール面(21)に対してリング状の構造を呈する、請求項1から9のいずれかに記載されたコークス炉ドアシール装置(1)。
【請求項11】
固定装置(11)は、シール片(13)を支持するためのベース部分(17)及びシール片(13)を区切るための蓋部分(16)を含み;
ベース部分(17)及び蓋部分(16)は、シール片(13)を保持するための溝(12)を形成する、請求項1から10のいずれかに記載されたコークス炉ドアシールユニット(1)。
【請求項12】
固定装置(11)の溝(12)の深さ(G)は、空所(32)の幅(C)よりも大きく;及び/又は固定装置(11)の溝(12)の深さ(G)は、第1の動作状態において、シール片
(13)の深さ(S)よりも大きい、請求項11に記載されたコークス炉ドアシール装置(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載された、コークス炉ドアシール装置(1)を含むコークス炉室。
【請求項14】
請求項13に記載されたコークス炉室、及び請求項1から12のいずれかに記載されたコークス炉ドアシール装置(1)を含むコークス炉バッテリー。
【国際調査報告】