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特表2023-551396オリゴヌクレオチドベースの親和性クロマトグラフィーの方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】オリゴヌクレオチドベースの親和性クロマトグラフィーの方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20231201BHJP
   B01D 15/38 20060101ALI20231201BHJP
   B01J 20/281 20060101ALI20231201BHJP
   B01J 20/285 20060101ALI20231201BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20231201BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
C12N15/10 112Z
B01D15/38
B01J20/281 G
B01J20/281 X
B01J20/285 T
G01N30/88 D
G01N30/26 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527800
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 US2021059363
(87)【国際公開番号】W WO2022104197
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】63/113,594
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591163214
【氏名又は名称】ドナルドソン カンパニー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュウ, ジンシャン
(72)【発明者】
【氏名】テンプルズ, グラハム
【テーマコード(参考)】
4D017
【Fターム(参考)】
4D017AA20
4D017BA07
4D017CA12
4D017CA13
4D017CB01
4D017DA03
4D017DB01
4D017EA05
4D017EB05
(57)【要約】
オリゴヌクレオチド親和性カラムを、0.5CV/分~1000CV/分の流量で使用して、ポリヌクレオチドを供給液から精製するための方法が開示される。方法は、標的ポリヌクレオチドを含有する混合物を、表面に結合したオリゴヌクレオチド親和性リガンドを有するマクロ多孔性支持体を運ぶクロマトグラフィー媒体、例えば、カラム上に装填することを含むいくつかの工程を含み得る。親和性リガンドは、標的化ポリヌクレオチドをハイブリダイズすることができ、標的の分離及び精製を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヌクレオチドを精製するための方法であって、
前記ポリヌクレオチドを含む供給液をクロマトグラフィー媒体上に装填することであって、前記クロマトグラフィー媒体が、約1m/mL~約20m/mLの比表面積を有するマクロ多孔性支持体を含み、前記マクロ多孔性支持体が、前記マクロ多孔性支持体の表面に結合し、前記供給液と流体連通したオリゴヌクレオチド親和性リガンドを含み、前記オリゴヌクレオチド親和性リガンドが、前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に相補的であるヌクレオチド配列を含み、前記クロマトグラフィー媒体が、約0.2mgのポリヌクレオチド/mL~約15mgのポリヌクレオチド/mLの動的結合容量を示す、装填することと、
前記供給液を、前記クロマトグラフィー媒体を通して流すことであって、流す際に、前記ポリヌクレオチドが前記親和性リガンドとのハイブリダイゼーションを介して前記マクロ多孔性支持体上に保持され、前記供給液の不純物が前記クロマトグラフィー媒体を通過する、流すことと、
前記ポリヌクレオチドの前記マクロ多孔性支持体からの分離後に、前記ポリヌクレオチドを回収することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記マクロ多孔性支持体から前記ポリヌクレオチドを溶離させることを更に含み、溶離液が任意選択で加熱され、前記方法が任意選択で、前記溶離の前に洗浄工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶離が前記クロマトグラフィー媒体を通して導電性溶離液を流すことを含み、及び/又は前記任意選択の洗浄工程が流体の導電性洗浄を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記供給液が、約1CV/分~約1,000CV/分など、約0.5CV/分~約5CV/分など、約5CV/分~約500CV/分などの約0.5カラムボリューム毎分(CV/分)~約1,000CV/分の流量で前記クロマトグラフィー媒体を通して流れる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記マクロ多孔性支持体が、ポリオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ナイロン、ファイバーグラス、ヒドロゲル、ポリビニルアルコール、天然ポリマー、セルロース、濾紙、又はそれらの組み合わせを含み、例えば、前記マクロ多孔性支持体が、セルロースエステル、セルロースアセテート、再生セルロース、セルロースナノファイバーから選択されるセルロースを含み、及び/又は前記マクロ多孔性支持体が、約90重量%以上のセルロースを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記マクロ多孔性支持体が膜を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチド親和性リガンドが、約5~約50塩基の長さなど、約10~約40塩基の長さなど、約20~約25塩基の長さなどの約5~約100塩基の長さのものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチド親和性リガンドが、オリゴ-デオキシチミジン配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記マクロ多孔性支持体が、前記オリゴヌクレオチド親和性リガンドと前記マクロ多孔性支持体の前記表面との間にスペーサーを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記オリゴヌクレオチド親和性リガンドが、1つ以上の塩基置換を含み、例えば、前記オリゴヌクレオチド親和性リガンドが、1つ以上のロックド核酸塩基及び/又は1つ以上のペプチド核酸塩基を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マクロ多孔性支持体が、約0.2ミリリットル~約10リットルなど、約100ミリリットル~約1リットルなどの約0.2ミリリットル~約100リットルの容積を画定する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記供給液が導電性溶液であり、例えば、前記供給液が約1.5mS/cm~約3.35mS/cmなどの最大約3.35ミリジーメンス・パー・センチメートル(mS/cm)の導電率を示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記供給液が、約1~約8.5又は約6~約10のpHを示す、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が複数回繰り返され、前記方法の前記結合容量が20サイクルにわたって初期結合容量の約95%以上の値で保持される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリヌクレオチドが、一本鎖RNA、二本鎖RNA、一本鎖DNA、二本鎖DNA、ハイブリダイズされたDNA/RNA二重鎖、DNA/ペプチドコンジュゲート、RNA/ペプチドコンジュゲート、DNA/ポリペプチドコンジュゲート、又はRNA/ポリペプチドコンジュゲートを含み、例えば、前記ポリヌクレオチドがmRNAを含み、更に、前記ポリヌクレオチドが、約1,000塩基~約12,000塩基の長さなど、約800塩基~約4,000塩基の長さなど、約10,000~約15,000塩基の長さなどの約500塩基~約15,000塩基の長さである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、“Use of Oligo-DT Based Affinity Membrane”と題される、2020年11月13日の出願日を有する、米国仮特許出願第63/113,594号明細書の出願利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
治療用mRNAはタンパク質置換療法を促進する可能性を有し、多種多様な病態に対処し、ワクチンの安全性を増大させ、ワクチンのタイムラインを短縮し、このことはパンデミックのシナリオにおいて特に重要である。例えば、Moderna(登録商標)はそれらのワクチンのメッセンジャーリボ核酸(mRNA)プラットフォームを使用して、米国で新型コロナウイルス感染症(Coronavirus Disease-19(COVID-19))に対応した最初の臨床試験用ワクチンを記録的な速さで開発し、発見から臨床試験への移行にわずか3ヶ月を要したのみであった。しかしながら、mRNAベースの医薬品の開発の先駆的な企業であるCureVacのCEOによれば、mRNAの質と量、すなわち一貫した純度が、それらの製造についての障害のままである。特に、ハイスループットのダウンストリーム精製プロセスの欠如が、工業的mRNA製造のアップスケーリングにおける主な課題である。
【0003】
既存の精製プロセスの一例としては、細胞抽出物、インビトロ転写(IVT)反応、又は他のバイオエンジニアリング若しくは合成手段から生成されたmRNAの精製に使用されるクロマトグラフィー処理がある。適切な精製のために、mRNAは、タンパク質、核酸、及び/又は細胞若しくは培地からの他の成分、並びに宿主細胞からの抽出で使用される添加剤又は溶媒から分離されねばならない。IVT反応又は他の合成手段からの精製において、キャッピング成分、遊離ヌクレオチド、T7ポリメラーゼなどの酵素、RNase阻害剤(存在する場合)、鋳型DNA、並びにあらゆる非mRNA成分及び/又はポリアデニル化されていないRNAは精製中に除去されねばならない。
【0004】
個々の粒子(又は樹脂)の形態の固相を含む樹脂クロマトグラフィーカラムが、スケーラブルな抗体製造に使用されてきた。しかしながら、治療用mRNA(300~1,000kDa)は、抗体(約150kDa)よりも非常に大きい。例えば、図1に例示するように、治療用mRNAは、通常、5~300ヌクレオチドのポリアデニル酸(ポリ-A)テールを有し、これは未翻訳領域(UTR)、キャップ及びコーディング領域と共にタンパク質翻訳プロセスに不可欠な要素である。そのような大きなサイズのために、樹脂カラムの有効表面積及び容量は、抗体精製の場合よりもmRNAの場合に、はるかに低くなる。
【0005】
オリゴ-デオキシチミジン(オリゴ-dT)リガンドは、図2に示されるように、ポリ-Aテール中のアデニンとオリゴ-dT中のデオキシチミジンとの間のワトソン・クリック塩基対合後のハイブリダイゼーションを介してのポリアデニル化mRNAを供給流から単離するために有効な親和性リガンドとして認識されている。オリゴ-dT親和性ベースの樹脂クロマトグラフィーの製品が提案されているが、残念なことに、それらは200~4,000塩基の長さの範囲のmRNAに対して、0.6~5mgのmRNA/mL樹脂の低~中程度の結合容量によって特徴付けられている。更に、これらの樹脂製品は固相の細孔への質量移動が遅く、樹脂ベースのカラムの流動特性が不良なため、有効に機能するために長い滞留時間(数分程度)が必要である。加えて、樹脂ベースのカラムは、一般に、1カラムボリューム(CV)/分を下回る最大操作可能流量によって制限される。樹脂の床圧縮及び/又は構造的変形もまた、最適ではない性能並びに背圧の増加をもたらす。これと共に、樹脂カラムの低~中程度の結合容量及び長い滞留時間が、不十分な精製の生産性をもたらす。
【0006】
陰イオン交換クロマトグラフィー製品も、mRNA精製のために提案されている。陰イオン交換クロマトグラフィー製品は、親和性ベースのシステムと比較して、より高い結合容量を提供することができるが、mRNAをカラムから高収率で溶出させることが非常に難しく、それらを魅力のない代替品にしている。
【0007】
モノリス及びマクロ多孔性膜などの移流分離媒体は、多くの生物製剤の精製に対して、樹脂よりも少なくとも10倍速い処理速度を提供することが示されている。例えば、BIA Separationsのモノリスベースのオリゴ-dT親和性カラム製品は、滞留時間を適度に短縮する(推奨滞留時間は12~48秒であり、最小滞留時間は3.3秒である)。
【0008】
以上、当該技術分野における改善を述べてきたが、更なる改善の余地がある。当該技術分野において、必要とされるものは、mRNA精製のための親和性ベースの膜クロマトグラフィー製品である。例えば、mRNA精製用のオリゴ-dTベースの親和性膜クロマトグラフィー製品は、当該技術分野において大きな利益をもたらすであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態によれば、ポリヌクレオチド、例えば、mRNA、DNAなどを精製するための方法が開示される。方法は、ポリヌクレオチドを含む供給液をクロマトグラフィー媒体上に装填することを含み得る。クロマトグラフィー媒体は、マクロ多孔性支持体を含むことができ、これはまたマクロ支持体の表面上にオリゴヌクレオチド親和性リガンドを含むことができる。オリゴヌクレオチド親和性リガンドは、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に対して相補的であるヌクレオチド配列を含み得る。したがって、供給液が媒体を通して流れると、標的とされるポリヌクレオチドは親和性リガンドとのハイブリダイゼーションを介して保持されることができ、供給液の不純物はクロマトグラフィー媒体を通過することができる。クロマトグラフィー媒体は、約0.2mgポリヌクレオチド/mL~約15mgポリヌクレオチド/mLの動的結合容量を示すことができ、本方法は高流量で、例えば、約0.5カラムボリューム(CV)/分~約1000CV/分で行うことができる。方法はまた、多孔性支持体からのポリヌクレオチドの分離後、例えば、マクロ多孔性支持体からのポリヌクレオチドの溶出後にポリヌクレオチドを回収することも含み得る。
【0010】
本主題の完全且つ有効な開示(当業者にとってその最適な方法を含む)は、添付の図面への参照を含めて、本明細書の残りの部分においてより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】キャップ、5’未翻訳領域(UTR)、コーディング領域、3’UTR、及びポリ-A3’テールを含むヒトタンパク質をコードする典型的なmRNAの構造を模式的に示す。
図2】ハイブリダイゼーション時のアデニンとチミン塩基との間の水素結合構造を示す。
図3】5CV/分で異なる細孔径を有する本明細書に開示されるオリゴ-dT親和性膜のmRNA動的結合容量を示す。
図4】最大500CV/分の異なる流量における本明細書に開示されるオリゴ-dT親和性膜のmRNA動的結合容量を示す。
図5】80CV/分を介しての様々な流量における0.1mLのデバイスについての精製収率を示す。
図6】様々なオリゴ-dT製品の理論的及び相対的装填工程生産性(最大DBC10%まで結合したmg/分単位での滞留時間)を示す。
図7】2つの異なるmRNA標的についての2つの異なる流量での市販の樹脂ベースの分離媒体の10%動的結合容量値(DBC10%)を比較する。
図8】複数の異なる流量での異なるサイズのmRNA標的について、本明細書に記載される方法で得られるDBC10%値を提供する。
図9】開示された方法論の長期結合容量を決定するための定置洗浄(clean in place)プロトコルを含む20サイクル結合溶離(bind-and-elute)試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示される主題の様々な実施形態についてここで詳細に言及し、そのうちの1つ以上の例が以下に記載されている。各実施形態は、主題の説明として提供されており、それを限定するものではない。実際、当業者には、主題の範囲又は趣旨から逸脱することなく、本開示において様々な修正及び変更を行うことができることが明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として例示又は記載される特徴は、他の更なる実施形態をもたらすために別の実施形態で使用されてもよい。
【0013】
別途指定のある場合を除き、本文書で使用される用語及び語句、並びにその変形は、特に明示的に示されない限り、限定的なものではなく、オープンエンドとして解釈されるべきである。同じく、接続詞「及び(and)」と結びついた項目のグループは、それらの項目の各々及び全てのものがグループに存在することを必要とするものとして読み取るべきではなく、むしろ、明示的に別段の記載がない限り、「及び/又は(and/or)」と読み取るべきである。同様に、接続詞「又は(or)」と結びついた項目のグループは、そのグループ間の相互排他性を必要とするものと解釈されるべきではなく、明示的に別段の記載がない限り「及び/又は」と解釈されるべきである。更に、本開示の項目、要素若しくは構成要素は単数形で記述又は主張され得るが、単数形に限定が明示されていない限り、複数形がその範囲内であると見なされる。「1つ以上」、「少なくとも」、「これらに限定されないが」又はその他同類の語句などの広義の単語や語句の存在は、場合によっては、そのような広義の語句が存在しないより狭いケースが意図されているか、又は必要とすることを意味するものとして読み取るべきではない。
【0014】
一般に、多孔性支持体上にオリゴヌクレオチドリガンドを含む分離デバイスを利用する親和性ベースのクロマトグラフィープロセスが、本明細書に開示される。開示される方法は、約0.5CV/分~約1000CV/分の流量での低い背圧を伴う高い不純物クリアランスを含むポリヌクレオチド精製の性能において高い結合容量を提供することができる。開示される方法は、約80%以上で完全な標的配列回収値を有利に提供することができる。
【0015】
開示される方法は、オリゴヌクレオチドベースの親和性媒体を使用して、ポリヌクレオチドを迅速且つ効率的に精製するために利用することができる。例として、開示される方法は、約0.5CV/分~約1000CV/分の流量で標的ポリヌクレオチドを成功裏に精製することができる。一実施形態では、方法は、約0.5CV/分~約500CV/分の流量で行うことができる。一実施形態では、方法は、約1CV/分~約1000CV/分の流量で行うことができる。一実施形態では、方法は、約1CV/分~約500CV/分の流量で行うことができる。一実施形態では、方法は、約5CV/分~約1000CV/分の流量で行うことができる。一実施形態では、方法は、約5CV/分~約500CV/分の流量で行うことができる。
【0016】
開示される方法で使用するためのデバイスは、その上にオリゴヌクレオチド親和性リガンドを含むマクロ多孔性膜支持材料を含むことができる。一実施形態において、開示される方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Zhouらの米国特許出願公開第2020/0188859号明細書に記載されるようなマクロ多孔性オリゴヌクレオチドベースの親和性媒体を利用することができる。例として、マクロ多孔性支持体としては、限定されるものではないが、ポリオレフィン膜、ポリエーテルスルホン膜、ポリ(テトラフルオロエチレン)膜、ナイロン膜、ファイバーグラス膜、ヒドロゲル膜、ヒドロゲルモノリス、ポリビニルアルコール膜、天然ポリマー膜、セルロース膜(例えば、セルロースエステル膜、セルロースアセテート膜、再生セルロース膜、セルロースナノファイバー膜、セルロースモノリス、セルロース若しくはその誘導体を実質的に含有する(例えば、約90重量%以上)膜)、濾紙膜、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0017】
マクロ多孔性支持体は、任意選択で、天然の反応性部位又は膜に結合した反応性部位を含むカップリング基を介して、表面でオリゴヌクレオチド親和性リガンドを呈示するように誘導体化され得る。例えば、マクロ多孔性支持体は、反応性部位を膜に付加するために、活性化剤(例えば、N,N’-炭酸ジスクシンイミジル)と併せて、膨潤溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなど)中に膜が浸漬される多段階誘導化プロセスに供されてもよい。続いて、反応性部位は、親和性リガンドと直接反応することができるか、又は任意選択で中間体基(例えば、本明細書で更に述べられるスペーサー基としてのアルキル鎖を任意選択で伴う親和性リガンドに対する更なる反応性を含む中間体基)と反応して、本明細書に記載されるように使用するためのマクロ多孔性支持体を形成することができる。当然ながら、当該技術分野において一般的に知られているような他の形成方法を代替的に利用して、開示される方法で使用するためのマクロ多孔性支持体を提供してもよい。一般に、開示される方法で使用するためのマクロ多孔性支持体は、約1m/mL~約20m/mLの比表面積を含み得る。
【0018】
一般に、方法は、標的ポリヌクレオチドに対して相補的配列である配列(例えば、リガンド全体の約2つ以上の個々の配列)を含むオリゴヌクレオチド親和性リガンドを利用することができる。当該技術分野において既知であるように、親和性リガンド及び標的の相補的部分は2つの長さ全体にわたって伸びている必要はなく、各々の一部は、任意選択的で、互いにハイブリダイズする各々の不連続セグメントとハイブリダイズすることができる。例えば、それらの実施形態において、親和性リガンドが修飾塩基(例えば、本明細書で更に述べられるようなPNA又はLNA塩基)を含むそのような実施形態において、その特定の塩基は標的の塩基とハイブリダイズしなくてもよいが、修飾塩基の片側又は両側の塩基の配列は標的ポリヌクレオチドの塩基とハイブリダイズすることができる。例えば、マクロ多孔性支持体は、いくつかの実施形態において、約0.2mgポリヌクレオチド(例えば、RNA)/mL~約15mgポリヌクレオチド/mLの動的結合容量を有する標的化ポリヌクレオチドに結合することができるオリゴヌクレオチドリガンド部分を担持することができる。
【0019】
一実施形態において、方法は、約5~約100塩基の長さのオリゴ-dTを親和性リガンドとして利用することができるが、いくつかの実施形態において、より長い長さを使用してもよい。例えば、親和性媒体に固定化されたオリゴヌクレオチド親和性リガンドは、いくつかの実施形態において、約5~約20塩基の長さなど、約10~約100塩基の長さなど、約10~約50塩基の長さなど、約10~約40塩基の長さなど、約10~約30塩基の長さなど、約10~約20塩基の長さなど、約20~約100塩基の長さなど、約20~約40塩基の長さなど、約20~約30塩基の長さなどの、約5~約25塩基の長さであり得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、スペーサーは、マクロ多孔性支持体とオリゴヌクレオチド親和性リガンドとの間で共有結合され得る。一般に、スペーサーは、炭素系モノマー又はオリゴマーを含み得る。例として、スペーサーは、炭素系モノマー(例えば、-CH-)を含むことができるか、又は最大約50個の炭素原子の鎖長を含む炭素系オリゴマーであり得る。例えば、スペーサーは、いくつかの実施形態において、最大約20個の炭素又は最大約10個の炭素の長さの鎖長を含み得る。一実施形態では、炭素系スペーサーは、約5~約20個の炭素の長さなど、約5~約10個の炭素の長さなどの、約5~約50個の炭素の長さであり得る。
【0021】
一実施形態において、親和性リガンドは、リガンドの性能を変更し得る、標的ポリヌクレオチドに対して相補的な配列の天然塩基と比較して1つ以上の塩基置換を含み得る。1つのそのような修飾は、ロックド核酸(Locked Nucleic Acid)(LNA)塩基の使用である。LNAはリボース糖上の2’酸素と4’炭素とを連結する共有結合を有する修飾RNA塩基である。
【0022】
一実施形態において、ペプチド核酸(Peptide Nucleic Acid)(PNA)リガンドを親和性リガンドとして利用することができる。PNAは、負に帯電した骨格鎖なしに、塩基を結合するためにペプチド結合を利用する。この親和性を強化する構成に加えて、リガンド上の負電荷の欠如は、導電性をほとんど示さない供給物で結合操作及び精製プロセスが実施されることを可能にすることができる。
【0023】
塩基修飾は、親和性リガンドの1つ以上のヌクレオチドのための置換として使用することができる。そのような修飾は、親和性リガンドと標的ヌクレオチドとの間の相互作用を更に増強することができ、クロマトグラフィー生産性を改善するために、高流量が使用されることを可能にする。一実施形態において、親和性リガンドは、単一の修飾塩基を含み得る。他の実施形態において、親和性リガンドは、複数の修飾塩基を含み得る。例えば、親和性リガンドは、親和性リガンドの2番目の位置ごとに、3番目の位置ごとに、4番目の位置ごとに、又は5番目の位置ごとにLNA若しくはPNA塩基を含むことができる。更に、天然塩基が散在する修飾塩基の不連続なトラクトが存在することもあり、例えば、3つのLNA若しくはPNAのトラクトが3つの天然塩基のトラクトと交互に存在するが、トラクトは均等に釣り合いがとれるか、又は規則的に間隔を空ける必要はなく、例えば、3つのLNA若しくはPNAのトラクトが5つの天然塩基のトラクトと交互になるか、又は3つのLNA若しくはPNAのトラクトに続いて5つの天然塩基があり、続いて2つのLNA若しくはPNA、続いて7つの天然塩基の繰り返しがあってもよい。更に、塩基置換は、同じタイプであるか又は異なるタイプのものであり得る。例えば、親和性リガンドは、全ての塩基置換がLNA塩基若しくはPNA塩基である状態で複数の塩基置換を含むことができるか、又は複数の塩基置換は、LNA塩基とPNA塩基との両方の混合物を任意の組み合わせで含み得るが、他の実施形態では、1つのタイプの置換のみが従来の修飾されていない塩基の標的分子の相補的配列から修飾された親和性リガンドに含まれてもよく、例えば、1つ以上のLNA置換のみ、1つ以上のPNA置換のみ、又は修飾された塩基に対して天然塩基の1つの置換のみが含まれ得、その例を更に以下に提供する。
【0024】
いくつかの実施形態では、塩基修飾により潜在的に低下した導電率での結合が可能となり、大規模な結合後の洗浄工程の必要性が軽減され、精製プロトコルの処理速度を更に向上させることができる。例えば、完全PNA置換を含むオリゴヌクレオチドリガンドは、1.5mS/cm未満の導電率でハイブリダイゼーション特性を維持することができる。塩基修飾は、いくつかの実施形態において、より優れた相補的塩基認識を促進することができ、これは単一塩基置換変異体の分離又はポリアデニル化を伴わない配列の標的精製などの新しい核酸分離技術の機会を提供することができる。当然ながら、オリゴヌクレオチド親和性リガンドの完全なPNA若しくはLNA塩基置換は必須ではなく、塩基置換はオリゴヌクレオチド親和性リガンドの塩基に対して存在しないか、1つの塩基、又は複数の塩基に存在してもよい。一実施形態において、オリゴヌクレオチドリガンドの個々の塩基に対する部分的又は完全なLNA若しくはPNA置換を含む親和性リガンドは、フーグスティーン(Hoogsteen)型水素結合相互作用を介して、オリゴヌクレオチドリガンドと標的との三本鎖形成から生じる二本鎖核酸の標的精製の可能性を増大させることができる。
【0025】
本明細書に包含される修飾は、PNA及び/又はLNA塩基置換に限定されない。例えば、塩基修飾は、限定されないが、5-ヨードシチジン-5’-三リン酸、5-メチルシチジン-5’-三リン酸、2-チオシチジン-5’-三リン酸、6-アザシチジン-5’-三リン酸、5-ブロモシチジン-5’-三リン酸、5-アミノアリルシチジン-5’-三リン酸、シュードイソシチジン-5’-三リン酸、N-メチルシチジン-5’-三リン酸、5-カルボキシシチジン-5’-三リン酸、5-ホルミルシチジン-5’-三リン酸、5-ヒドロキシメチルシチジン-5’-三リン酸、5-ヒドロキシシチジン-5’-三リン酸、5-メドキシシチジン-5’-三リン酸、チエノシチジン-5’-三リン酸、5-ブロモ-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸、5-プロピニル-2’デオキシシチジン-5’-三リン酸、5-ヨード-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸、5-メチル-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸、2’-デオキシ-P-ヌクレオシド-5’-三リン酸、5-ヒドロキシ-2’デオキシシチジン-5’-三リン酸、2-チオ-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸、5-アミノアリル-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸、シュードウリジン-5’-三リン酸、2’-O-メチルシュードウリジン-5’-三リン酸、N-メチルシュードウリジン-5’-三リン酸、N-エチルシュードウリジン-5’-三リン酸、N-メチル-2’-O-メチルシュードウリジン-5’-三リン酸、N-メトキシメチルシュードウリジン-5’-三リン酸、又はN-プロピルシュードウリジン-5’-三リン酸のうちの1つ以上が含まれるオリゴヌクレオチド親和性リガンドのシチジン又はウリジン塩基に対する塩基置換を含み得る。
【0026】
開示される方法論で利用されるオリゴヌクレオチドリガンドベースの親和性膜カラムは、結合溶離モード又はフロースルー(flow-through)モードのいずれかで動作することができる。
【0027】
分離のプロセス生産性は、以下の等式を使用して定義することができる。等式中、Vtotは、装填、すすぎ、溶離、及び再生工程を含む分離プロトコル中にカラムを通過する溶液の総容量を表す。BVは、オリゴヌクレオチド媒体床体積を表す。装填容量は、オリゴヌクレオチド媒体の動的結合容量に比例することができる。したがって、プロセス生産性は、結合容量の増加及び滞留時間の減少と共に増加することができる。
【数1】
【0028】
開示される方法は、既存の樹脂クロマトグラフィーベースの方法と比較して、10倍以上のより高い生産性を提供することができる。例えば、図6に示すように、本明細書に開示される方法(図6の膜1、2及び3の使用によって表示される)は、非常に短い滞留時間でより高い結合容量を提供することができ、以前から知られる樹脂ベースの分離材料を利用する方法と比較して、生産性を大きく改善した。更に、本明細書に開示されるポリヌクレオチド精製用のオリゴヌクレオチドリガンドベースの親和性クロマトグラフィーは、いくつかの実施形態において、0.5CV/分~1000CV/分の流量で動作することができるが、一方、現行のオリゴ-dT樹脂カラム製品は、1CV/分未満の流量で動作する。例えば、現行のオリゴ-dT樹脂カラム製品は、360秒の滞留時間を必要とし得るが、一方、開示された方法は、図6に示すように、非常に速い滞留時間を用いて実行することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるようなポリヌクレオチド精製用のオリゴヌクレオチドリガンドベースの親和性クロマトグラフィーは、0.06秒程度の短い滞留時間で効果的に動作することができる。
【0029】
開示される方法のための分離デバイスのサイズ(すなわち、内部容積)は、特に限定されない。一般に、好ましいデバイスサイズは、調製のスケールに基づいて選択することができ、異なるスケールの調製には異なるデバイスサイズが使用される。したがって、分離プロトコルのマクロ多孔性支持体の容積は変化することもできる。一実施形態において、マクロ多孔性支持体の容積は、約0.2mL~約5mLなど、約1mL~約100mLなど、約100mL~約1リットルなど、約0.2mL~約1リットルなど、約0.2mL~約10リットルなど、約1リットル~約10リットルなど、約10リットル~約100リットルなどの、約0.025mL~約100リットルであり得る。
【0030】
本明細書に開示されるようなオリゴヌクレオチド親和性ベースの精製プロセスは、一般に、複数の工程を含み得る。プロトコルの1つの工程は、分離用のポリヌクレオチドを含有する供給液を、マクロ多孔性支持体を含み得るクロマトグラフィー媒体上に装填することを含み得る。クロマトグラフィー媒体に供給される供給液は、いくつかの実施形態において、導電性を示し得る。例えば、一実施形態において、例えば、親和性リガンドが1つ以上の塩基置換(例えば、LNA及び/又はPNA置換)を組み込む場合、供給液の導電率は最大約3.35mS/cmであり得るか、又はいくつかの実施形態において、それよりも更に高い。一実施形態において、供給物の導電率は、約1.5~約3.35mS/cmなどの0~3.35mS/cmであり得る。前に述べたように、LNA塩基及び/又はPNA塩基へのオリゴヌクレオチド親和性リガンドの少なくとも1つの置換は、導電性を示す供給液を考慮する場合、分離プロトコルの態様を改善するために利用することができる。
【0031】
供給液の標的化ポリヌクレオチドは、任意の構造又は塩基含有量を有し得る。一実施形態において、精製標的は、一本鎖RNA又はDNAであり得る。これは必要条件ではないが、一実施形態では、精製標的は、二本鎖DNA、二本鎖RNA、ハイブリダイズされたDNA/RNA二重鎖、DNA/ペプチドコンジュゲート、RNA/ペプチドコンジュゲート、DNA/ポリペプチドコンジュゲート、又はRNA/ポリペプチドコンジュゲートであり得る。一実施形態において、標的化ポリヌクレオチドは、約300~約5,000塩基のサイズを有し得る。例えば、標的化ポリヌクレオチドは、いくつかの実施形態において、約500塩基/塩基対~約15,000塩基/塩基対など、いくつかの実施形態において、約1,000塩基/塩基対~約12,000塩基/塩基対など、約4,000塩基/塩基対~約10,000塩基/塩基対など、約800塩基/塩基対~約4,000塩基/塩基対など、約10,000塩基/塩基対~約15,000塩基/塩基対などの、約800塩基/塩基対(二本鎖の場合)の長さ又はそれ以上の長さの一本鎖若しくは二本鎖のRNA又はDNAであり得るが、より長いまたより短い標的ポリヌクレオチドが本明細書に包含される。
【0032】
供給液の他の特性は、特に限定されない。一実施形態において、供給液のpHは、約1~約8.5の範囲であり得る。一実施形態において、供給液のpHは、約6~約10の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、高pHの供給液がDNAを標的化するプロトコルで利用することができ、いくつかの実施形態において、より低いpHの供給液がRNAを標的化するプロトコルで利用することができるが、これは開示される方法論の必要条件ではない。
【0033】
いくつかの実施形態において、分離プロトコルは、結合工程の後及び溶離の前に洗浄工程を含むことができる。例えば、洗浄工程は、溶離の前に媒体から1つ以上の不純物を洗浄するために利用され得る。一実施形態において、洗浄工程は、導電性を示す洗浄流体を利用することができる(例えば、当該技術分野において既知であるように1つ以上の好適な塩を添加することによって)。そのような実施形態において、導電性洗浄(例えば、高い塩含有量)を結合工程中に低導電性の供給液又は非導電性の供給液を含むプロトコルで利用することができるか、或いは比較的高い導電性の供給溶液で、すなわち、高導電性結合で利用することができる。例えば、洗浄工程で使用される流体の導電率は、いくつかの実施形態において、非導電性洗浄溶液から約3.35mS/cmまでの範囲であり得る。例えば、洗浄工程に使用される流体は、導電性又は非導電性供給流のものと本質的に同じ(例えば、約10%以下の範囲内)の導電率を示し得るか、又は供給流のものとは異なる導電率を示し得、例えば、洗浄流体は、いくつかの実施形態において、約1.5~約3.35mS/cmなどの約1.5mS/cm以下、又は約3.35mS/cmの供給流の導電率とは異なる導電率を示し得る。当然ながら、洗浄工程は開示されるプロトコルの必要条件ではなく、一実施形態において、非ローディングバッファー条件下での洗浄工程を実行する必要はない。例えば、オリゴヌクレオチド親和性リガンドがリガンド中に1つ以上のPNA塩基置換を含む実施形態においては、非ローディングバッファー条件下で洗浄工程を実行する必要がない、又は望ましくない可能性がある。
【0034】
分離プロトコルは、標的化ポリヌクレオチドをクロマトグラフィー媒体から溶離させる工程を含み得る。溶離液は、当該技術分野において既知であるように、開示された方法において利用することができ、これらには、限定されないが、水(例えば、脱イオン水、RNaseフリー水)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(トリス-HCl)(例えば、10mMのトリス-HCl pH7.0~7.5、一般的にRNaseフリーなど)が挙げられる。
【0035】
一般に、標的化ポリヌクレオチドの溶離は、不純物がポリヌクレオチドから著しく分離された後に行うことができる。一実施形態において、溶離溶液は、導電率を示し得る。例として、溶離溶液は、0~約1.5mS/cmなどの約1.5mS/cm以下の導電率を示し得る。一実施形態において、溶離溶液の温度は、いくつかの実施形態において、約25℃~約65℃、又は約15℃~約90℃などの周囲温度(すなわち、室温又は約25℃)~約90℃であり得る。一実施形態において、溶離溶液は、約40℃を超える温度を有し得る。例えば、高温の溶離溶液は、オリゴヌクレオチド親和性リガンドがリガンド上に1つ以上のPNA塩基を含む一実施形態において利用され得る。一般に、分離プロトコル全体にわたる分離媒体に対する圧力(例えば、膜横断圧力又はカラム横断圧力)は、いくつかの実施形態において、約0.5MPa以下などの、約1MPa以下であり得る。
【0036】
開示される分離プロトコルは、任意のサイズのポリヌクレオチドの精製に高流量での高容量結合を提供し得る。更に、開示される分離プロトコルは、長期の結合容量を提供することができ、複数の結合溶離サイクルにわたって、例えば、いくつかの実施形態において、20結合溶離サイクルにわたって、50結合溶離サイクルにわたって、又は100結合溶離サイクルにわたって、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、96%以上、又は97%以上の値で結合容量が保持される。
【0037】
本開示は、以下に記載される実施例を参照することでよりよく理解することができる。
【実施例
【0038】
実施例1
オリゴ-dTベースの親和性膜カラムのmRNA動的結合容量を調べた。この実施例において、10%動的結合容量値(DBC10%)を決定した。DBC10%は、膜床からの溶離液中の標的濃度が供給液中の標的濃度の10%に達するときのクロマトグラフィー媒体の単位容積当たりに結合した標的の質量を表す。
【0039】
図3は、3つの異なる細孔径を有する膜を使用したオリゴ-dTベースの膜カラムのDBC10%を示す。前に参照により本明細書に組み込まれた米国特許出願公開第2020/0188859号明細書に記載される方法に従って、膜を形成した。簡単に言うと、膜は25塩基のオリゴ-dT親和性リガンドを含み、マクロ多孔性マトリックスとオリゴ-dT親和性リガンドとの間に6Cスペーサーを含んでいた。3つの膜カラムの公称細孔径は、0.2μm、0.45μm、及び1.0μmであった。標的とされるmRNAは、約800の塩基とポリ-Aテールを有する緑色蛍光タンパク質(GFP)mRNAであった。mRNAを50mMのリン酸塩、250mMのNaCl、pH7.0緩衝液の供給液中に溶解した。mRNAの濃度は、供給液中で0.1mg/mLであった。装填流量を12秒の滞留時間を表す5CV/分で固定した。試験は室温で実施した。図3に示すように、DBC10%はより小さな細孔を有する膜カラムでより高く、DBC10%は、示すように、10mg/mLを超える値に達した。
【0040】
実施例2
オリゴ-dTベースの親和性膜カラムのmRNA動的結合容量に対する流量の影響を調べた。分離媒体は、上記の実施例1に記載される通りであった。
【0041】
図4は、様々な流量を使用したオリゴ-dTベースのクロマトグラフィー媒体の10%動的結合容量(DBC10%)を提供する。供給液は、50mMのリン酸塩、250mMのNaCl、pH7.0中の0.1mg/mLのGFP mRNAであった。滞留時間は、所与のクロマトグラフィーカラムについての流量に反比例する。この実施例において、滞留時間は12秒~0.12秒まで変化し、これは利用される比較的小さい容積のカラムにおける5CV/分~500CV/分の流量に相当する(図4)。図示するように、DBC10%は、所与の床容積に対する流量によってわずかに影響を受けた。
【0042】
図5は、上述したように、調製されたマクロ多孔質マトリックスと親和性リガンドとの間に6個の炭素のスペーサーを有する25塩基のオリゴ-dTを含む0.45μm細孔径のマクロ多孔質支持体を使用した0.1mLのデバイスについての収量%(注入されたmRNAのmg/溶離液中で回収されたmRNAのmg)を提供する。図示するように、収率は、最大少なくとも80CV/分の流量に対して一致していた。
【0043】
図6は、文献で報告されていた製品についての理論的装填工程生産性(mRNAのmg/分)並びに0.2μm、0.45μm、又は1.0μmのいずれかの細孔径を有し、記載されたように、6Cスペーサーを有する25塩基のオリゴ-dTで官能化されたマクロ多孔性膜分離媒体を組み込む0.2mLのデバイスを使用して、5CV/分で動作させて収集したデータを含む。示すように、開示された方法の装填工程生産性は、操作可能な速度の1/200を使用した樹脂ベースの分離材料を利用する以前から知られている方法の性能を超えることができる。
【0044】
実施例3
標的化mRNAの結合容量を、異なるサイズの標的及び異なる分離媒体について調べた。検討した材料は、市販の製品(POROS(商標)-OdT樹脂)及び6Cスペーサーを介して、マクロ多孔性膜に取り付けられた25塩基のオリゴ-dT親和性リガンドで官能化された0.45μmの細孔径を有する多孔性膜媒体を含んだ。標的化mRNAには、4000塩基のmRNA及び800塩基のmRNAが含まれる。供給液は、50mMのリン酸塩、250mMのNaCl、pH7.0中に0.1mg/mLの標的化mRNAのうちの1つを含んだ。
【0045】
市販の製品が、0.25CV/分の流量で使用するために推奨される。0.25CV/分の推奨される流量、並びに1CV/分のより高い流量において、両方のmRNA標的に対してこの市販の製品を使用して、分離プロトコルを実行した。結果を図7に示す。示されるように、4000塩基のmRNAについての結合容量は、0.25CV/分の推奨された流量において、800塩基のmRNAについてのものよりも32%低かった。推奨された限界を超えて流量を増加させることによって、800塩基のmRNAでは38%の容量減少をもたらし、4000塩基のmRNAについては66%の容量減少をもたらした。
【0046】
膜ベースの分離材料を、2つの異なるサイズのmRNAの分離について、及び10CV/分~80CV/分の複数の流量でも検討した。結果を図8に示す。図示するように、4,000塩基のmRNAについての結合容量は、800塩基のmRNAについてのものよりもわずか7%低かった。更に、最低流量から最高流量まで(10~80CV/分)において、800塩基のmRNAプロトコルでは、容量の20%のみの減少があり、4,000塩基のmRNAプロトコルでは26%の減少があった。
【0047】
精製プロトコルは、製造業者の推奨する条件下で、樹脂ベースの分離プロトコルと比較して、開示された方法論では、10~160倍速かった。更に、開示された方法は、93%~96%の標的回収をもたらした。開示された方法論は、特に大量のmRNA標的の精製を考慮する場合、樹脂ベースの方法と比較して、より堅牢な性能を発揮する。
【0048】
実施例4
0.1MのNaOH及び5分の接触時間を使用して、定置洗浄プロトコルを実施例4の膜分離デバイスで行った。プロトコルを20結合溶離サイクルで実施した。図9は、デバイスの結合容量が20サイクル試験の平均で98%に維持され、決定された最低値が試験の過程にわたって、96.5%であったことを示す結果を提供している。
【0049】
本発明の主題を、特定の例示的な実施形態及びその方法に関して詳細に説明してきたが、前述を理解した上で、そのような実施形態に対して変更、バリエーション及び等価物を容易に生じ得ることが当業者には理解されよう。したがって、本開示の範囲は限定的ではなく、例示的なものであり、主題の開示は、本明細書に開示されている教示を使用して、当業者に容易に明らかになるように、本発明の主題に対する変更、バリエーション及び/又は追加を含めることを排除するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】