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特表2023-551403開放ウェル型マイクロキャビティプレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】開放ウェル型マイクロキャビティプレート
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528685
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 US2021059622
(87)【国際公開番号】W WO2022108968
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/116,280
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】レイシー,ウィリアム ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】タナー,アリソン ジーン
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029BB11
4B029GA08
(57)【要約】
細胞培養デバイスは、中に配置された開放ウェルおよびその開放ウェルと連通した流体入口区域を有するフレームを備える。その開放ウェルは、上部開口と、マイクロキャビティ基体を構成し、主面を画成する底板と、底板から上部開口まで延在する1つ以上の側壁とを有する。このマイクロキャビティプレートは複数のマイクロキャビティを備え、各マイクロキャビティは、ウェル内で培養された細胞がスフェロイドを形成するように作られている。この細胞培養デバイスは、スフェロイド細胞培養に使用される貯蔵開放ウェル型マイクロキャビティプレートであることがある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養デバイスにおいて、
フレームであって、
中に配置された開放ウェル、および
前記開放ウェルと連通し、四面体形ノッチを有する流体入口区域、
を有するフレーム、
を備え、前記開放ウェルは、
上部開口、
マイクロキャビティ基体を構成し、主面を画成する底板、および
前記底板から前記上部開口まで延在する1つ以上の側壁、
を有する、細胞培養デバイス。
【請求項2】
前記四面体形ノッチが、前記1つ以上の側壁の中心に配置されている、請求項1記載の細胞培養デバイス。
【請求項3】
前記四面体形ノッチのエッジが、前記側壁の上部外側部分から該側壁の底部内側部分まで傾斜している、請求項2記載の細胞培養デバイス。
【請求項4】
前記上部外側部分が、前記上部開口と同じレベルにあり、前記底部内側部分が、前記主面と同じレベルにあり、該主面と連通している、請求項3記載の細胞培養デバイス。
【請求項5】
前記四面体形ノッチが、前記開放ウェルの角に配置され、そこで、前記1つ以上の側壁の第1の側壁は、該1つ以上の側壁の第2の側壁と、直角に接合している、請求項1記載の細胞培養デバイス。
【請求項6】
前記四面体形ノッチのエッジが、前記角の上部外側部分から、該角の底部内側部分まで傾斜している、請求項5記載の細胞培養デバイス。
【請求項7】
前記角の上部外側部分が、前記上部開口と同じレベルにあり、前記角の底部内側部分が、前記主面と同じレベルにあり、該主面と連通している、請求項6記載の細胞培養デバイス。
【請求項8】
前記流体入口区域が、前記1つ以上の側壁の内の側壁内に配置された溝付き通路を含む、請求項1記載の細胞培養デバイス。
【請求項9】
前記溝付き通路が、前記側壁の第1の端部の上部から、該側壁の第2の端部の底部まで傾斜しており、該上部が、前記上部開口と同じレベルにあり、該底部が、前記主面と同じレベルにあり、該主面と連通している、請求項8記載の細胞培養デバイス。
【請求項10】
前記流体入口区域が、流体出口区域である、請求項1記載の細胞培養デバイス。
【請求項11】
前記細胞培養デバイスが、前記主面と前記上部開口との間の前記開放ウェル内に配置されたバッフルをさらに含み、該バッフルが、複数のバッフルセグメントを含み、各バッフルセグメントは、前記開放ウェルの一方の端部から該開放ウェルの反対の端部まで延在している、請求項1記載の細胞培養デバイス。
【請求項12】
前記マイクロキャビティ基体が、複数のマイクロキャビティを備え、前記複数のマイクロキャビティの各マイクロキャビティが、上部開口、丸底、および該上部開口から前記マイクロキャビティの底部まで延在するマイクロキャビティ側壁表面を有する、請求項1記載の細胞培養デバイス。
【請求項13】
各マイクロキャビティの前記上部開口の幅が、500μmから5mmであり、各マイクロキャビティの深さが、500μmから6mmである、請求項12記載の細胞培養デバイス。
【請求項14】
各マイクロキャビティが、細胞に対して非接着性である、請求項12記載の細胞培養デバイス。
【請求項15】
前記1つ以上の側壁が、前記マイクロキャビティ基体の上に貯蔵部を画成し、該1つ以上の側壁が、0.780インチ(約20mm)の高さを有する、請求項1記載の細胞培養デバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2020年11月20日に出願された米国仮特許出願第63/116280号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、細胞培養装置および方法に関する。特に、本開示は、細胞培養に使用するための開放ウェル型マイクロキャビティプレートに関する。
【背景技術】
【0003】
三次元(3D)細胞培養環境で培養された細胞は、単層として二次元(2D)環境で培養された細胞よりも生体内のような機能を示す。2D細胞培養システムにおいて、細胞は、それらが培養される基体に接着する。対照的に、細胞は、3Dシステムで増殖された場合、基体に接着するよりも、互いと相互作用して、3D細胞培養物またはスフェロイドを形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の培養装置内で3D細胞培養物を増殖させる場合、難題がある。難点の1つに、細胞培養装置の別々のウェル内で増殖されるスフェロイドにとって一貫したサイズと培養環境を維持することがある。例えば、播種密度と増殖時間は、システムごとの、または所定のシステム内のウェルごとの再現性に影響するであろう。細胞培養装置内で増殖される細胞の密度が増加するにつれて、細胞を維持するためには、大容積の細胞培養培地または細胞培養培地のより頻繁な交換が必要である。培地交換の頻度が増すと、培地の高さが培養される細胞を超えて上昇し、培地を通じての細胞のガス交換速度が好ましくなく減少してしまうであろう。さらに、ウェイブバッグ(wave bag)、スピナー、およびシェイカー内でスフェロイドクラスターとして細胞を高密度で増殖させる従来の方法は、増殖において一貫性のなさを示すことがあり、スフェロイドをより小さいクラスターに分割する傾向があるであろう。スフェロイドクラスターは、多くの場合、培地交換中に分割されたり、乱されたりするので、高密度でスフェロイドを増殖させるために、従来の細胞培養プレートまたは組織培養プレートが使用される場合にも、難題があるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施の形態は、培養交換が容易になるバルクスフェロイド生産のためのマイクロキャビティプレートを提供する。このマイクロキャビティプレート内の流体入口区域は、培地交換中のピペットの先端を入れる場所を提供する。ピペットの先端を入れる区域を提供することによって、ここに記載された実施の形態は、先端が培養区域に入れられ、スフェロイドを乱したり押し退けたりする既存の設備の問題を解決する。流体入口区域により、スロッシングや乱流を最小にしつつ、流体をプレートに導入することもできる。流体入口区域は、流体出口区域の働きもすることができる。このマイクロキャビティプレートは、スフェロイドを増殖させるための浅いマイクロキャビティを有するマイクロキャビティ基体底部分を持つ開放ウェルを備える。ピペットの先端が流体入口区域に入れられ、流体がマイクロキャビティプレートに導入されたときに、入ってくる流体からの乱流は最小になり、スフェロイドは、流体またはピペットの先端によりマイクロキャビティから押し退けられたり、乱されたりしない。
【0006】
開放ウェル内にマイクロキャビティ基体を設けることによって、本開示の実施の形態は、培養過程の開始から同じ環境内でスフェロイドを一斉に培養することができる。同じ環境内でスフェロイドを一斉に培養することにより、培地交換からのスフェロイドクラスターに対する乱れを最小にしつつ、サイズと増殖の一貫性を確保し、それにより、ここに記載された実施の形態は、既存の従来の設備の問題を解決する。
【0007】
ある態様において、細胞培養デバイスは、中に配置された開放ウェルおよびその開放ウェルと連通した流体入口区域を有するフレームを備える。その開放ウェルは、上部開口と、マイクロキャビティ基体を構成し、主面を画成する底板と、底板から上部開口まで延在する1つ以上の側壁とを有する。
【0008】
いくつかの実施の形態において、流体入口区域は、1つ以上の側壁の内の側壁の面を含む。いくつかの実施の形態において、その側壁の面は、側壁の上部外側部分から、側壁の長さに沿って側壁の底部内側部分まで傾斜している。いくつかの実施の形態において、上部外側部分は、上部開口と同じレベルにある。いくつかの実施の形態において、底部内側部分は、主面と同じレベルにあり、主面と連通している。
【0009】
いくつかの実施の形態において、流体入口区域は、1つ以上の側壁の内の側壁内に配置されたノッチを有する。いくつかの実施の形態において、そのノッチは、側壁の中心にある四面体形ノッチを含む。いくつかの実施の形態において、四面体形ノッチのエッジは、側壁の上部外側部分から側壁の底部内側部分まで傾斜している。いくつかの実施の形態において、上部外側部分は、上部開口と同じレベルにある。いくつかの実施の形態において、底部内側部分は、主面と同じレベルにあり、主面と連通している。
【0010】
いくつかの実施の形態において、流体入口区域は、開放ウェルの角に配置されたノッチを有し、そこで、1つ以上の側壁の第1の側壁は、1つ以上の側壁の第2の側壁と、直角に接合している。いくつかの実施の形態において、そのノッチは、開放ウェルの角にある四面体形ノッチを含む。いくつかの実施の形態において、四面体形ノッチのエッジは、その角の上部外側部分から、その角の底部内側部分まで傾斜している。いくつかの実施の形態において、その角の上部外側部分は、上部開口と同じレベルにある。いくつかの実施の形態において、その角の底部内側部分は、主面と同じレベルにあり、主面と連通している。
【0011】
いくつかの実施の形態において、流体入口区域は、1つ以上の側壁の内の側壁内に配置されたレッジ(ledge)を含む。いくつかの実施の形態において、そのレッジは、溝付き通路である。いくつかの実施の形態において、そのレッジは、側壁の第1の端部の上部から、側壁の第2の端部の底部まで傾斜している。いくつかの実施の形態において、その底部は、主面と同じレベルにあり、主面と連通している。いくつかの実施の形態において、上部は、上部開口と同じレベルにある。
【0012】
いくつかの実施の形態において、流体入口区域は、流体出口区域である。
【0013】
いくつかの実施の形態において、細胞培養デバイスは、バッフルをさらに含む。いくつかの実施の形態において、バッフルは、主面と上部開口との間の開放ウェル内に配置されている。いくつかの実施の形態において、バッフルは、複数のバッフルセグメントを含み、各バッフルセグメントは、開放ウェルの一方の端部から開放ウェルの反対の端部まで延在している。いくつかの実施の形態において、複数のバッフルセグメントの少なくとも1つのバッフルセグメントは、他のバッフルセグメントに対して垂直である。いくつかの実施の形態において、第1のバッフルセグメントは、側壁の長さに沿って、流体入口区域に隣接して、開放ウェル内に配置されている。
【0014】
いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ基体は、複数のマイクロキャビティを備える。いくつかの実施の形態において、複数のマイクロキャビティは、少なくとも一列に配列されている。いくつかの実施の形態において、複数のマイクロキャビティは、六方最密パターンで配列されている。
【0015】
いくつかの実施の形態において、複数のマイクロキャビティの各マイクロキャビティは、上部開口、底部、および上部開口からマイクロキャビティの底部まで延在するマイクロキャビティ側壁表面を有する。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティの上部開口は、主面と同一平面上にあり、マイクロキャビティの底部は、主面の下に位置している。いくつかの実施の形態において、各マイクロキャビティは、丸底を有する。いくつかの実施の形態において、各マイクロキャビティの上部開口の幅は、500μmから5mmである。いくつかの実施の形態において、複数のマイクロキャビティの各マイクロキャビティの深さは、500μmから6mmである。
【0016】
いくつかの実施の形態において、各マイクロキャビティは、細胞に対して非接着性である。いくつかの実施の形態において、各マイクロキャビティの内部表面は、極低接着性材料で被覆されている。いくつかの実施の形態において、各マイクロキャビティは、ウェル内で培養される細胞がスフェロイドを形成するように作られている。
【0017】
いくつかの実施の形態において、1つ以上の側壁は、マイクロキャビティ基体の上に貯蔵部を画成する。いくつかの実施の形態において、1つ以上の側壁は、0.780インチ(約20mm)の高さを有する。
【0018】
いくつかの実施の形態において、開放ウェルの内面は、細胞に対して非接着性である。いくつかの実施の形態において、開放ウェルの内面は、パーフルオロポリマー、オレフィン、アガロース、非イオン性ヒドロゲル、ポリエーテル、ポリオール、細胞接着を阻害するポリマー、またはその組合せから作られた非接着性表面コーティングを含む。いくつかの実施の形態において、非接着性表面コーティングは、極低接着(ULA)表面コーティングを含む。
【0019】
いくつかの実施の形態において、フレーム、1つ以上の側壁、またはその組合せは、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、シリコーンゴムまたは共重合体、エチレン酢酸ビニル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、またはその組合せから形成される。
【0020】
いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ基体は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルペンテン、(ポリ)4-メチルペンテン(PMP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、シリコーンゴムまたは共重合体、エチレン酢酸ビニル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、またはその組合せから形成される。
【0021】
いくつかの実施の形態において、細胞培養デバイスは、貯蔵開放ウェル型マイクロキャビティプレートである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】細胞培養デバイスの実施の形態の上から見下ろした図
図2図1に示された細胞培養デバイスの垂直断面図
図3】細胞培養デバイスの実施の形態の上から見下ろした図
図4図3に示された細胞培養デバイスの特徴の拡大図
図5】細胞培養デバイスの実施の形態の上から見下ろした図
図6図5に示された細胞培養デバイスの特徴の拡大図
図7】細胞培養デバイスの実施の形態の上から見下ろした図
図8図7に示された細胞培養デバイスの特徴の拡大図
図9】マイクロキャビティ基体の実施の形態の拡大図
図10】マイクロキャビティ基体の実施の形態の拡大図
図11】マイクロキャビティ基体の実施の形態の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0023】
3Dスフェロイドやオルガノイド(以後、スフェロイドと称される)などの3D細胞培養物における細胞応答は、細胞が単層で培養される2D細胞培養物における細胞応答よりも、生体内の挙動にいっそう似ている。3D培養物の追加の次元性は、細胞応答に差をもたらすと考えられる。何故ならば、追加の次元性は、周囲の細胞との相互作用に関与する細胞表面受容体の空間的構成に影響を与え、細胞に物理的制約条件を課し、それによって、細胞の外側から内側へのシグナル伝達に作用し、最終的に、遺伝子発現と細胞挙動に影響を与えるからである。しかしながら、3D細胞培養物またはスフェロイドを生成するための従来の培養デバイスには、培地の交換のために欠陥がある。スフェロイドは、培地を交換するときに、ピペットの先端により、または導入される流体により、押し退けられたり、乱されたりすることがある。
【0024】
さらに、細胞が表面上に単層を形成する二次元細胞培養物とは対照的に、スフェロイドなどの三次元(3D)細胞凝集体の形成により、細胞培養装置内で増殖される細胞の密度が増す。細胞の密度が増加すると、次に、装置内で培養される細胞の栄養素の需要も増す。したがって、スフェロイドのバルク培養中に、培地交換が、より頻繁に必要とされる。
【0025】
いくつかの実施の形態において、中に開放ウェルが配置されたフレームを備えた細胞培養デバイスが、ここに提供される。その開放ウェルは、上部開口、マイクロキャビティ基体底面、およびその底面から上部開口まで延在する1つまたは複数の側壁を有する。細胞培養デバイスは、流体入口区域をさらに備える。
【0026】
ここに記載された実施の形態は、流体を加えたり、除去したりするための、マイクロキャビティ培養区域とは別の区域を有する貯蔵マイクロキャビティプレートを提供する。ここに記載されるように、貯蔵プレートは、「開放ウェル」型プレートと称されることがある。実施の形態において、開放ウェル型プレートは、マイクロキャビティ基体の上面と下面が共に起伏している、波状マイクロキャビティ基体から作られる。
【0027】
ここに記載された実施の形態によるマイクロキャビティプレートは、流体入口区域を有する。流体入口区域は、流体の導入または吸引などのために、ピペットの先端を受け入れるサイズとなっている。流体入口区域は、マイクロキャビティ基体と流体連通している。実施の形態において、流体入口区域は、流体出口区域でもあることがある。
【0028】
いくつかの実施の形態において、流体入口区域は、より高い高さまたは相対的高さで間隔が離れたような、マイクロキャビティ基体から間隔が離れた底を有する。いくつかの実施の形態において、流体入口区域は、マイクロキャビティ基体から離れてピペットから分配される流体を逸らせて、スフェロイドを壊したり乱したりするのを避ける。
【0029】
ここに記載された開放ウェル型マイクロキャビティプレートの実施の形態は、培養物を汚染する可能性を減少させるために、標準的なマイクロプレート用の蓋で覆われることがある。その蓋は、ピペット操作のための区域を露出できるように、培養物から完全に外すように持ち上げられるか、または単に脇に位置をずらされることがある。
【0030】
図1は、マイクロキャビティプレート100などの細胞培養デバイスの実施の形態の上から見下ろした図を示す。図2は、図1のマイクロキャビティプレート100の拡大した垂直断面図を示す。この細胞培養デバイスは、中に配置された開放ウェル150および開放ウェル150と連通した流体入口区域105を有するフレーム102を備えることがある。開放ウェル150は、上部開口155、主面161を画成するマイクロキャビティ基体160を構成する底板162、および底板162から上部開口155まで延在する1つ以上の側壁120、121、122、123を有する。細胞培養デバイスに安定性を与えるためなどで、細胞培養デバイスの周囲にスカート170が配置されることがある。
【0031】
図1および2に示されるように、マイクロキャビティプレート100は、長い流体入口/出口区域105を有し、この区域は、増殖表面区域の幅に沿って延在する。流体入口区域105は、1つ以上の側壁120、121、122、123の内の側壁120の面128を含む。側壁120の面128は、この側壁の上部外側部分124から、側壁120の長さに沿ってこの側壁の底部内側部分126まで傾斜している。上部外側部分124は、上部開口155と同じレベルにある。底部内側部分126は、161主面と同じレベルにあり、主面161と連通している。主面161は、マイクロキャビティ基体160により画成された細胞増殖区域である。側壁120の上部の幅125が、側壁120の底部の幅127より狭いので、流体入口区域が配置される側壁120は、傾斜していると記載されることがある。
【0032】
細胞培養デバイスは、バッフル190をさらに備えることがある。バッフル190は、開放ウェル内に嵌まるように作られることがあり、バッフルセグメント191、バッフルセグメント193、およびバッフルセグメント195などの複数のバッフルセグメントを含むことがある。図1に示されるように、バッフルセグメント191は、側壁120から反対の側壁122まで延在して、開放ウェルの中心長さに沿って配置されることがある。バッフルセグメント193およびバッフルセグメント195は、側壁121から反対の側壁123まで開放ウェルの幅に沿って延在して、バッフルセグメント191と垂直に配置されることがある。バッフルセグメント193は、開放ウェルの中心幅に沿って配置されることがある。バッフルセグメント195は、第1の側壁120に沿って延在し、第1の側壁120に近接したバッフルセグメント191の端部で、バッフルセグメント193に平行に配置されることがある。バッフルセグメント195は、流体入口/出口区域の1つの壁を形成して、ピペットの先端を適所に保持するのに役立つことがある。ユーザは、ストリペット(stripette)(例えば、Corning(登録商標)Coastar(登録商標)Stripette(登録商標)血清学用ピペット)の先端を流体入口/出口区域に入れて、培地交換中に流体を除去し、分配することができる。
【0033】
図3は、マイクロキャビティプレート200の実施の形態の上から見下ろした図を示す。図4は、図3のマイクロキャビティプレート200の流体入口区域の特徴の拡大図を示す。図3および4に示されるように、マイクロキャビティプレート200は、長い角度の付いた貯蔵部または流体入口区域205を有する。この長い角度の付いた貯蔵部または流体入口区域205は、増殖表面区域の幅に沿って伸び、エッジに向かって細くなっている。
【0034】
細胞培養デバイスは、開放ウェル内に嵌まるように作られたバッフル290をさらに備えることがある。バッフル290は、バッフルセグメント291、バッフルセグメント293、およびバッフルセグメント295などの複数のバッフルセグメントを含むことがある。図3に示されるように、バッフルセグメント291は、側壁220から反対の側壁222まで延在し、開放ウェルの中心長さに沿って配置されることがある。バッフルセグメント293およびバッフルセグメント295は、側壁221から反対の側壁223まで開放ウェルの幅に沿って延在して、バッフルセグメント291と垂直に配置されることがある。バッフルセグメント293は、開放ウェルの中心幅に沿って配置されることがある。バッフルセグメント295は、第1の側壁220に沿って延在し、第1の側壁220に近接したバッフルセグメント291の端部で、バッフルセグメント293に平行に配置されることがある。バッフルセグメント295は、流体入口区域205の空間の1つの壁を構成して、流体の追加と除去に使用されるストリペットの先端を拘束するのに役立つことがある。
【0035】
流体入口区域205は、1つ以上の側壁の内の側壁220内に配置されたノッチを含む。バッフルセグメント295と反対にある側壁220上のノッチの表面域または面287、288は、互いに向かって傾斜し、エッジ241を形成する。それゆえ、ノッチ205は、側壁の中心229で四面体形のノッチを構成し、そこで、四面体形のノッチのエッジ241は、側壁220の上部外側部分224から、側壁220の底部内側部分226まで傾斜している。上部外側部分224は、上部開口と同じレベルにあることがある。底部内側部分226は、主面261と同じレベルにあり、主面261と連通していることがある。主面261は、マイクロキャビティ基体260により画成された細胞増殖区域である。
【0036】
図5は、マイクロキャビティプレート300の実施の形態の上から見下ろした図を示す。図6は、図5のマイクロキャビティプレート300の流体入口区域の特徴の拡大図を示す。図5および6に示されるように、マイクロキャビティプレート300は、流体入口区域305としての三角形貯蔵部またはノッチを有する。このノッチまたは三角形貯蔵部は、流体の追加と除去のためにユーザがストリペットの先端を置くための区域を提供する。流体入口区域305は、1つ以上の側壁の内の第1の側壁320が、1つ以上の側壁の内の第2の側壁321と直角に接合している、開放ウェル350の角に配置された三角形貯蔵部またはノッチを含む。三角形貯蔵部は、マイクロキャビティ基体360により画成される増殖表面区域と接合するまさに底を除いて、増殖表面区域の外のプレート構造またはフレーム302の境界内に完全にある。三角形の外側の二辺を構成する側壁320、321の面387、388は、増殖表面区域と接合する区域336に向かって傾斜している-第1の側壁の面387と第2の側壁の面388は、傾斜しており、それらが出合うエッジ341を形成する。それゆえ、流体入口区域305は、開放ウェル350の角部に四面体形のノッチを含み、そこで、四面体形のノッチのエッジ341は、角の上部外側部分334から、角の底部内側部分336まで傾斜している。角の上部外側部分334は、上部開口と同じレベルにある。角の底部内側部分336は、主面361と同じレベルにあり、主面361と連通している。主面361は、マイクロキャビティ基体360により画成され、細胞増殖区域または細胞増殖表面である。
【0037】
細胞培養デバイスは、開放ウェル内に嵌まるように作られたバッフル390をさらに備えることがある。バッフル390は、バッフルセグメント391、バッフルセグメント393、およびバッフルセグメント395などの複数のバッフルセグメントを含むことがある。図5に示されるように、バッフルセグメント391は、側壁320から反対の側壁322まで延在し、開放ウェルの中心長さに沿って配置されることがある。バッフルセグメント393およびバッフルセグメント395は、側壁321から反対の側壁323まで開放ウェルの幅に沿って延在して、バッフルセグメント391と垂直に配置されることがある。バッフルセグメント393は、開放ウェルの中心幅に沿って配置されることがある。バッフルセグメント395は、第1の側壁320に沿って延在し、第1の側壁320に近接したバッフルセグメント391の端部で、バッフルセグメント393に平行に配置されることがある。
【0038】
図7は、マイクロキャビティプレート400の実施の形態の上から見下ろした図を示す。図8図7のマイクロキャビティプレート400の流体入口区域405の特徴の拡大図を示す。図7および8に示されるように、マイクロキャビティプレート400は、開放ウェル450の増殖表面区域の幅に沿って延在する流体入口区域405を含む。流体入口区域405は、プレート構造の周囲区域から彫られている、流体レッジまたは溝407を含む。流体入口区域405は、1つ以上の側壁420、421、422、423の内の側壁420に配置されたレッジまたは溝付き通路407を含む。レッジ407は、側壁420の第1の端部481の上部485から、側壁420の第2の端部483の底部まで傾斜している。底部は、主面461と同じレベルにあり、主面461と連通している。主面461は、マイクロキャビティ基体460により画成された細胞増殖区域である。上部485は、上部開口と同じレベルにある。それゆえ、流体入口区域405は、増殖表面から最も遠い側面でより高く、増殖表面より約2mm上で終わるまで、幅を対角に移動するにつれて、低くなる。ユーザは、流体を追加するために、側壁の第1の端部481にあるレッジ405の上部にストリペットの先端を置き、流体を除去するために、側壁の第2の端部483にあるレッジ405の底部にその先端を置くことができる。
【0039】
細胞培養デバイスは、開放ウェル内に嵌まるように作られたバッフル490をさらに備えることがある。バッフル490は、バッフルセグメント491、バッフルセグメント493、およびバッフルセグメント495などの複数のバッフルセグメントを含むことがある。図7に示されるように、バッフルセグメント491は、側壁420から反対の側壁422まで延在し、開放ウェルの中心長さに沿って配置されることがある。バッフルセグメント493およびバッフルセグメント495は、側壁421から反対の側壁423まで開放ウェルの幅に沿って延在して、バッフルセグメント491と垂直に配置されることがある。バッフルセグメント493は、開放ウェルの中心幅に沿って配置されることがある。バッフルセグメント495は、第1の側壁420に沿って延在し、第1の側壁420に近接したバッフルセグメント491の端部で、バッフルセグメント493に平行に配置されることがある。
【0040】
いくつかの実施の形態において、細胞培養装置は、底板または底面および1つ以上の側壁を備えることがある。いくつかの実施の形態において、ここに記載された細胞培養デバイスは、主面を画成する底板、底板から延在して、貯蔵部を画成する1つ以上の側壁、および主面に形成された複数のマイクロキャビティを備える。底板は、全体的に、または一部は、スフェロイドの増殖を促進または誘発するマイクロキャビティのアレイを有する基体から形成されることがある。各マイクロキャビティは、主面と同一平面上にあり、貯蔵部に開いた上部開口、および主面より下に配置されたマイクロキャビティの天底を画成する。従来のウェルプレートとは対照的に、ここに記載されたプレートは、マイクロキャビティの表面より上に貯蔵部を画成し、これにより、使用すべき細胞培養培地の体積が増加し、それゆえ、培地交換がそれほど頻繁ではなくなる。ここに記載された貯蔵プレートは、マイクロウェルプレートの個々の浅いウェルを満たすのに典型的に使用されるであろう培地より過剰の培地を添加でき、異なるマイクロキャビティ内で培養された細胞が流体連通できるようにする。
【0041】
いくつかの実施の形態において、1つ以上の側壁は、ある市販の細胞培養装置よりも底板から遠くに(例えば、側壁の高さ)延在し、貯蔵部が通常の体積よりも多い培地を保持できるようにする。貯蔵部がより大きい容量となる機会のために、スフェロイドが各個別のマイクロキャビティ内の培地の量のみに依存する必要がないように、過剰の培地を貯蔵部に加えることができる。貯蔵部内の細胞培養培地は、貯蔵部内の全てのマイクロキャビティと連通しているので、細胞培養培地の全体に亘り栄養素と代謝産物を交換することができる。それゆえ、ここに記載されたマイクロキャビティプレートの実施の形態において培養されたスフェロイドは、標準的なマイクロプレートのウェル内で増殖しているスフェロイドほど頻繁に、給餌する(すなわち、細胞培養培地を交換する)必要がなくなる。給餌が必要とされるときに、流体入口区域で細胞培養培地を添加して、流体運動によってスフェロイドが浅いウェルから押し退けられるのを防ぐことができる。
【0042】
ある実施の形態において、ここに記載された貯蔵開放ウェル型マイクロキャビティプレートは、通常より多い容量の培地を保持するために周囲が深い側壁(例えば、標準型ウェルプレートの側壁より深い側壁)を備えることがある。例えば、細胞培養装置、またはマイクロキャビティプレートの高さは、0.560インチ(約14mm)の標準型96ウェルまたは384ウェルプレートの高さと比べて、約0.780インチ(約20mm)であることがある(与えられている寸法の公差は、±0.010インチ(約0.25mm)である)。
【0043】
ここに記載された実施の形態によるマイクロキャビティ基体は、複数のマイクロキャビティを備える。各マイクロキャビティは、細胞に非接着性である丸底を有する内部空洞を含むことがある。それゆえ、ここに記載された細胞培養デバイスは、マイクロキャビティ中に播種された細胞が、自己組織化するか、または互いに接着して、各マイクロキャビティ中にスフェロイドを形成することによって、3D細胞培養を促進する。マイクロキャビティは、浅く、細胞培養培地が、一度に全てのキャビティ内のスフェロイドの全てを覆うことができ、手作業が容易になる。
【0044】
ある実施の形態において、マイクロキャビティの上面は、側壁の底部に近い位置まで窪んでいることがある。個々のマイクロキャビティは、少容量の培地を保持することができる。個々のマイクロキャビティは、どの適切な寸法を有してもよい。例えば、個々のマイクロキャビティの直径または幅は、約500マイクロメートルから約5mmの範囲にあることがある。個々のマイクロキャビティの深さは、約500マイクロメートルから約6mmの範囲にあることがある。スフェロイドが、個々のマイクロキャビティ内の少量の培地のみに依存する必要がないように、貯蔵部に過剰の培地が添加されることがある。
【0045】
図9は、開放ウェルの底面を形成する、マイクロキャビティのアレイのパターンが形成されたマイクロキャビティ基体の実施の形態の拡大図を示す。マイクロキャビティ基体900の拡大図は、マイクロキャビティ910またはマイクロウェルのアレイを含む。ここに記載されたマイクロキャビティまたはマイクロウェルのアレイを有する細胞培養装置の構造化表面は、どの適切なサイズや形状を有してもよい、いくつの適切な数のマイクロキャビティを画成してもよい。マイクロキャビティは、そのサイズと形状に基づいて、容積を規定する。多くの実施の形態において、マイクロキャビティの1つ以上または全てが、縦軸に対して対称および/または回転対称である。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティの1つ以上または全ての縦軸は、互いに平行である。マイクロキャビティは、均一にまたは不均一に間隔が空けられることがある。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティは、均一に間隔が空けられている。マイクロキャビティの1つ以上または全てが、同じサイズと形状を有しても、または異なる形状とサイズを有しても差し支えない。
【0046】
いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティを画成するマイクロキャビティ基体は、六方最密マイクロキャビティのアレイを備える。そのような六方最密充填密度または「ハニカム」マイクロキャビティ形態は、マイクロキャビティの微小サイズの構造と相まって、多くのスフェロイドを一度に培養し、バルクスフェロイド生産を可能にする。六角形マイクロキャビティ1001のアレイを有する基体を示す、そのような基体1000の実施の形態の画像が、図10に示されている。ある実施の形態において、そのような充填密度により、約4.5インチ×約3インチ(約11cm×7.6cm)の典型的なマイクロプレートの作業表面積において直径が500μmである、約12,588個のウェルが含まれる。図11は、細胞(スフェロイド)500がマイクロキャビティ1101内で増殖させられている基体1100の実施の形態を示し、マイクロキャビティのアレイは、六方最密マイクロキャビティ構造を有する。いくつかの実施の形態において、各マイクロキャビティ1101内の細胞は、図から分かるように、1つのスフェロイド500を形成している。
【0047】
本開示の実施の形態によるマイクロキャビティプレートは、均一な培養環境を提供する。このマイクロキャビティプレート内で培養される全てのスフェロイドは、同じときに同じ処理を受け、それによって、均一な培養環境を提供することができる。対照的に、個々のウェルを有する典型的なプレートは、自動化設備でさえ、各ウェルに同じ容量を分配することが難しいので、どちらかというと、不均一な培養環境を有する。
【0048】
特定の実施の形態において、ここに記載された細胞培養装置は、開放ウェルの底面としてマイクロキャビティ基体を含む。マイクロキャビティ基体は、複数のマイクロキャビティを備える。複数のマイクロキャビティにおける各マイクロキャビティは、マイクロキャビティ内で培養された細胞が、規定の直径のスフェロイドを形成するように作られることがある。マイクロキャビティは、スフェロイドまたは3D細胞培養物を培養するのに適したどのサイズであってもよい。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティの幅は、約500マイクロメートルから約5mmの範囲にあることがある。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティの深さは、約500マイクロメートルから約6mmの範囲にあることがある。例えば、サイズがより大きいマイクロキャビティの実施の形態において、マイクロキャビティはスフェロイドプレートのウェルサイズと重複し、それによって、バルク培養においてオルガノイドを成長させることができる。
【0049】
いくつかの実施の形態において、細胞培養デバイスは、8から約10,000のマイクロキャビティ(8、16、24、32、48、64、96、128、256、384、500、600、700、800、1000、1536、2000、2400、3200、4000、10000、またはその中の任意の範囲)を備える。いくつかの実施の形態において、複数のマイクロキャビティが、少なくとも一列で配列されている。いくつかの実施の形態において、デバイスは、複数の列のマイクロキャビティを備える。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ基体は、複数のガス透過性ウェルまたはマイクロキャビティを画成する構造化表面を提供する。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティは、ガス透過性材料を通じて、装置の外部と気体連通している。いくつかの実施の形態において、その構造化表面は、複数のガス透過性マイクロキャビティを画成する。
【0050】
初期の高分子膜の厚さおよび工程パラメータに応じて、異なる底厚を有するマイクロウェルを備えた表面が生成される。いくつかの実施の形態において、マイクロウェルの底の高分子厚は、酸素透過性に直接影響する。マイクロウェルの底が薄いほど、マイクロウェル内にある細胞への酸素の供給をよりよくすることができる。上記製造方法は、酸素透過性がより高いマイクロウェルを有する表面を提供する。
【0051】
いくつかの実施の形態において、複数のマイクロキャビティの各々は、上部開口、マイクロウェルの底、および上部開口からマイクロウェルの底まで延在するマイクロキャビティの側壁を画成する。マイクロキャビティの開口または上部開口は、どの適切な形状を有してもよい。例えば、開口は、円形、六角形などであってよい。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティの底は、丸底を構成する。いくつかの実施の形態において、各マイクロキャビティの底は、丸まっており(例えば、半球状に丸い)、マイクロキャビティの側壁は、マイクロキャビティの底から上部まで直径が増加し、隣接するマイクロキャビティ間の境界は丸まっている。
【0052】
いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティの形状は、液体をマイクロキャビティに導入した際の空気逃しの問題を軽減するように移行する。いくつかの実施の形態において、円形断面のマイクロキャビティの底(またはマイクロキャビティの底部分)は、スフェロイドの形成には最適であるかもしれないが、ポケットを形成せずに空気逃しするには問題であろう。この問題を軽減するために、円形のウェルの底部断面および非円形(例えば、三角形、正方形、長方形、五角形、六角形など)の上部開口を有するマイクロキャビティが形成されることがある。そのような実施の形態において、側壁は、非円形(例えば、多角形)の上部開口から、円形のマイクロキャビティの底に移行する。いくつかの実施の形態において、その移行は、液体をマイクロキャビティに導入した際に、マイクロキャビティから逃げる気泡の「停滞(hanging up)」をもたらし得るどのような干渉する、ギザギザのある、または水平に現れるマイクロキャビティの側壁特徴を導入しないように徐々になっている。いくつかの実施の形態において、移行する壁および上部開口の非円形(例えば、多角形)の形状により生じるマイクロキャビティの側壁における角は、液体の進入および/または空気の逃げのための経路を提供する。
【0053】
マイクロキャビティ基体は、同じ材料または類似の材料から、プレートの残りを製造するための方法により形成されることがある。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ基体は、プレートの残りとは別々に成形または形成され、その後、熱結合、超音波溶接、またはプラスチック接合のどの他の方法によって結合されてもよい。マイクロキャビティ基体の構造の材料は、プラスチック重合体、共重合体、またはポリマーブレンドから作られることがある。非限定例としては、シリコーンゴム、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、他のそのような高分子、またはその組合せが挙げられる。どの適切な構成方法を使用して、マイクロキャビティ基体を形成してもよく、その非限定例としては、射出成形、熱成形、3Dプリンティング、またはプラスチック部品を形成するのに適した任意の他の方法が挙げられる。
【0054】
ここに記載された実施の形態によるマイクロキャビティプレートは、どの適切な材料から形成されてもよい。構成材料は、プラスチック重合体、共重合体、またはポリマーブレンドから作られることがある。非限定例としては、シリコーンゴム、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、他のそのような高分子、またはその組合せが挙げられる。どの適切な構成方法を使用して、マイクロキャビティ基体を形成してもよい。その非限定例としては、射出成形、熱成形、3Dプリンティング、またはプラスチック部品を形成するのに適した任意の他の方法が挙げられる。
【0055】
いくつかの実施の形態において、ガス透過性/液体不透過性材料が、ここに記載された細胞培養デバイスの構成に使用される。ここに記載された実施の形態に、どの適切なガス透過性/液体不透過性材料を使用してもよい。ガス透過性/液体不透過性材料の非限定例としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル、ポリスルホン、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または相溶性フルオロポリマー、シリコーンゴムまたは共重合体、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、またはポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、またはこれらの材料の組合せが挙げられる。マイクロキャビティ基体は、ウェルの少なくとも一部に亘り適切なガス透過性を有するどの適切な材料から形成されてもよい。適切なマイクロキャビティ基体の非限定例としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルペンテン、(ポリ)4-メチルペンテン(PMP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、シリコーンゴムまたは共重合体、エチレン酢酸ビニル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、またはその組合せが挙げられる。そのような材料により、マイクロキャビティの細胞培養区域と外部環境との間の効果的なガス交換が可能となり、液体や汚染物質の通過を防ぎつつ、酸素および他の気体の進入を可能にする。
【0056】
いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ基体の厚さは、ガス交換を最適にできるように調節される。マイクロキャビティ基体の厚さは、構成材料に依存する。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティの底の厚さは、10μmと75μmの間(例えば、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、60μm、70μm、75μm、およびそれらの間の任意の範囲)にある。実施の形態において、マイクロキャビティは、2000cc/m/日以上のマイクロキャビティ基体のガス透過性高分子材料を通る酸素透過率を有する。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティは、3000cc/m/日以上の基体を通るガス透過率を有する。いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティは、5000cc/m/日以上の基体を通るガス透過率を有する。
【0057】
ここに記載された細胞培養デバイスにより、3D細胞集合体の生成および培養が可能になる。スフェロイドなどの三次元で培養された細胞は、単層として二次元で培養された細胞よりも生体内のような機能を示すことができる。2D細胞培養システムにおいて、細胞は、それらが培養される基体に接着することができる。しかしながら、スフェロイドなど、細胞が三次元で増殖された場合、細胞は、基体に接着するよりも、互いと相互作用する。三次元で培養された細胞は、細胞コミュニケーションおよび細胞外基質の発生の観点から、生体内組織に非常によく似ている。それゆえ、スフェロイドは、細胞の移動、分化、生存、および増殖のための優れたモデルを提供し、したがって、研究、診断、および薬効、薬理学、および毒性試験のためのよりよいシステムを提供する。
【0058】
いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティ基体は、細胞やスフェロイドを増殖させるためのマイクロキャビティプレートの一部を形成する。マイクロキャビティは、培養中にスフェロイドの形成を促進させる環境を提供するように、構成され、配置される。すなわち、実施の形態において、マイクロキャビティは、スフェロイド誘発構造を有する。例えば、中で細胞を増殖させるマイクロキャビティは、マイクロキャビティ内の細胞に、互いに結合し、球体を形成させるように、細胞に非接着性であり得る。スフェロイドは、マイクロキャビティの構造により課せられるサイズ限界まで膨張する。いくつかの実施の形態において、デバイス内の細胞培養基体は、細胞に、基体ではなく、互いに結合させるように細胞に非接着性である。例えば、いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティは、マイクロキャビティを細胞に非接着性にするために、極低結合性材料で被覆されている。非接着性マイクロキャビティ、スフェロイド誘発マイクロキャビティ構造、および重力の組合せにより、マイクロキャビティ内で培養される細胞の増殖が限定される閉じ込め体積が規定され得、それにより、閉じ込め体積により規定される寸法を有するスフェロイドが形成される。スフェロイドは、マイクロキャビティの構造に課せられるサイズ限界まで膨張する。マイクロキャビティが均一な構造であるために、その中で増殖される細胞は、サイズが似た細胞集合体またはスフェロイドを形成できる。
【0059】
いくつかの実施の形態において、側壁、マイクロキャビティ、マイクロキャビティの底、および/または開放ウェルの他の内側部分は、ガス透過性であり、液体不透過性である。いくつかの実施の形態において、側壁、マイクロキャビティ、マイクロキャビティの底、および/または開放ウェルの他の内側部分は、低接着性または非接着性材料から作られている、および/または低接着性または非接着性材料で被覆されている。例えば、いくつかの実施の形態において、開放ウェルの内面は、細胞接着を防ぐために、細胞接着を阻害する高分子で処理されている。そのような高分子の非限定例としては、ポリ-HEMA、プルロニック(登録商標)、または専有ULA処理が挙げられる。
【0060】
いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティの内面は、細胞に非接着性である。マイクロキャビティは、非接着性ウェルを形成するために、非接着性材料から形成されることがある、または非接着性材料で被覆されることがある。非接着性材料の例としては、パーフルオロポリマー、オレフィン、または同様の高分子またはその混合物が挙げられる。他の例としては、アガロース、ポリアクリルアミドなどの非イオン性ヒドロゲル、ポリエチレンオキシドなどのポリエーテル、およびポリビニルアルコールなどのポリオール、または同様の材料もしくはその組合せが挙げられる。例えば、非接着性ウェル、ウェルの構造、重力の組合せにより、ウェル内で培養された細胞が、スフェロイドに自己組織化するのを誘発することができる。あるスフェロイドは、単層で増殖させられた細胞に対してより生体内のような応答を示す分化した細胞の機能を維持することができる。
【0061】
いくつかの実施の形態において、マイクロキャビティは、マイクロキャビティを細胞に非接着性にするために、低結合性処理を有する、または極低結合性材料で被覆されている。非接着性材料の例としては、パーフルオロポリマー、オレフィン、または同様の高分子またはその混合物が挙げられる。他の例としては、アガロース、ポリアクリルアミドなどの非イオン性ヒドロゲル、ポリエチレンオキシドなどのポリエーテル、およびポリビニルアルコールなどのポリオール、または同様の材料もしくはその組合せが挙げられる。例えば、非接着性マイクロキャビティ、マイクロキャビティの構造(例えば、サイズと形状)、および/または重力の組合せにより、マイクロキャビティ内で培養された細胞が、スフェロイドに自己組織化するするのを誘発することができる。あるスフェロイドは、単層で増殖させられた細胞に対してより生体内のような応答を示す分化した細胞の機能を維持する。
【0062】
いくつかの実施の形態において、低結合性処理または表面コーティングは、「Corning」Ultra Low Attachment(ULA)表面コーティングである。この「Corning」ULA表面は、親水性で、生物学的に不活性で、非分解性であり、これにより、高度に再現性のあるスフェロイドの形成と、容易な収穫が促進される。極低接着性表面の共有結合により、ウェル表面への細胞接着が低下する。極低接着性(ULA)表面により、均一で再現性のある3D多細胞スフェロイド形成が可能になる。
【0063】
多種多様な細胞種類を、ここに記載された細胞培養デバイス内で培養することができる。例えば、ここに記載された開放ウェル型マイクロキャビティプレートの実施の形態で、以下に限られないが、不死化細胞、初代培養細胞、がん細胞、幹細胞(例えば、胚または人工多能性)などを含む、どの種類の細胞も培養することができる。細胞は、哺乳類細胞、鳥類細胞、魚類細胞などであってよい。細胞は、分散(例えば、新たに播種された)、コンフルエント、二次元、三次元、スフェロイドなどを含む、どの培養形態にあってもよい。培養細胞は、さらに、様々な研究、診断、薬物スクリーニングおよび試験、治療、および工業用途に使用されることがある。
【0064】
いくつかの実施の形態において、細胞は哺乳類細胞(例えば、ヒト、ネズミ、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ニワトリ、ヤギ、ウマなど)である。細胞は、以下に限られないが、腎臓、線維芽細胞、乳腺、皮膚、脳、卵巣、肺、骨、神経、筋肉、心臓、結腸直腸、膵臓、免疫(例えば、B細胞)、血液などを含むどの組織の種類のものであってもよい。細胞は、以下に限られないが、副腎、膀胱、血管、骨、骨髄、脳、軟骨、子宮頸部、角膜、子宮内膜、食道、消化管、免疫系(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、白血球、マクロファージ、および樹状細胞)、肝臓、肺、リンパ管、筋肉(例えば、心筋)、神経、卵巣、膵臓(例えば、膵島細胞)、下垂体、前立腺、腎臓、唾液腺、皮膚、腱、精巣、および甲状腺を含む、どの所望の組織または臓器の種類からのものであっても、それに由来していてもよい。いくつかの実施の形態において、細胞は体細胞である。いくつかの実施の形態において、細胞は、任意の所望の分化状態(例えば、多能性(pluripotent, multi-potent)、運命決定、不死化など)にある、幹細胞または前駆細胞(例えば、胚幹細胞、人工多能性幹細胞)である。いくつかの実施の形態において、細胞は、疾患細胞または疾患モデル細胞である。例えば、いくつかの実施の形態において、スフェロイドは、1種類以上の種類のがん細胞または過剰増殖性状態に誘発できる細胞(例えば、形質転換細胞)を含む。
【0065】
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたシステム、デバイス、および方法は、1種類以上の細胞を含む。いくつかの実施の形態において、細胞は凍結保存されている。いくつかの実施の形態において、細胞は三次元培養されている。そのような実施の形態のいくつかにおいて、そのシステム、デバイス、および方法は、1種類以上のスフェロイドを含む。いくつかの実施の形態において、細胞の1種類以上は、活発に分裂している。いくつかの実施の形態において、スフェロイドは1種類の細胞を含有する。いくつかの実施の形態において、スフェロイドは複数の種類の細胞を含有する。いくつかの実施の形態において、複数のスフェロイドが増殖される場合、各スフェロイドは同じ種類であり、一方で、他の実施の形態において、2種類以上の異なる種類のスフェロイドが増殖される。スフェロイド内で増殖している細胞は、天然細胞または変性細胞(例えば、1種類以上の非天然遺伝子変化を含む細胞)であることがある。
【0066】
この中の実施の形態に記載された細胞培養デバイスを使用して細胞を培養する場合、細胞の増殖を支援できるどの細胞培養培地を使用してもよい。細胞培養培地は、例えば、以下に限られないが、糖類、塩類、アミノ酸、血清(例えば、ウシ胎仔血清)、抗体、成長因子、分化因子、着色剤、または他の所望の因子であることがある。例示の細胞培養培地としては、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ハムF12栄養混合物、最小必須培地(MEM)、RPMI培地、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、MesenCult(商標)-XF培地(STEMCELL Technologies Inc.から市販されている)などが挙げられる。
【0067】
いくつかの実施の形態において、前記システム、デバイス、および方法は、培地(例えば、栄養素(例えば、タンパク質、ペプチド、アミノ酸)、エネルギー(例えば、炭化水素)、必須金属およびミネラル(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、リン酸塩、硫酸塩)、緩衝剤(例えば、リン酸塩、酢酸塩)、pH変化の指示薬(例えば、フェノールレッド、ブロモクレゾールパープル)、選択剤(例えば、化学薬品、抗菌剤)などを含む)を含む。いくつかの実施の形態において、1種類以上の試験化合物(例えば、薬物)が、そのシステム、デバイス、および方法に含まれる。
【0068】
ここに記載された開放ウェル型マイクロキャビティプレートの実施の形態で細胞を培養する方法も、開示されている。いくつかの実施の形態において、方法は、マイクロキャビティプレート内での細胞集合体またはスフェロイドの細胞培養を含む。ここに記載されたマイクロキャビティプレートを使用して細胞を培養する方法は、マイクロキャビティプレート内に細胞を播種する工程を含む。マイクロキャビティプレート上に細胞を播種する工程は、そのプレートを、細胞を含有する溶液と接触させる工程を含むことがある。マイクロキャビティプレート上で細胞を培養する工程は、マイクロキャビティプレートを細胞培養培地と接触させる工程をさらに含むことがある。一般に、マイクロキャビティプレートを細胞培養培地と接触させる工程は、細胞が中で培養されることになっている培地を含む環境において、培養すべき細胞をマイクロキャビティプレート上に播種する、または配置する工程を含む。マイクロキャビティプレートを細胞培養培地と接触させる工程は、細胞培養培地をマイクロキャビティプレート上にピペットで供給する工程を含むことがある。
【0069】
いくつかの実施の形態において、ここに記載された細胞培養デバイスに培地を導入する工程、および培地にスフェロイド形成細胞を添加する工程を含む、スフェロイドを培養する方法が、ここに提供される。いくつかの実施の形態において、方法は、培地を置換または交換する(例えば、毎日など)工程をさらに含む。例えば、細胞培養培地は、所定の期間に亘りプレート内に配置されることがある。細胞培養培地の少なくともいくらかは、所定の期間後に除去されることがあり、新たな細胞培養培地が添加されることがある。細胞培養培地は、どの所定のスケジュールにしたがって、除去され、交換されてもよい。例えば、細胞培養培地の少なくともいくらかは、毎時、または12時間毎、または24時間毎、または2日毎、または3日毎、または4日毎、または5日毎、除去され交換されることがある。
【0070】
ここに記載された細胞培養装置は、どの適切な様式でもその装置のマイクロキャビティ内で細胞を培養するために使用することができる。例えば、細胞を培養する方法は、ここに記載されたような細胞培養装置の複数のマイクロキャビティの1つ以上の中に細胞と細胞培養培地を導入する工程を含む。複数のマイクロキャビティの内の1つ以上の中で細胞を培養する工程は、1つ以上のマイクロキャビティ内にスフェロイドを形成する工程を含むことがある。1つ以上のマイクロキャビティ内で培養されたスフェロイドは、約、例えば、500μm以下、400μm以下、300μm以下、250μm以下、150μm以下など、または上述した値内の任意の範囲の直径により規定されることがある。1つのスフェロイドの直径は、複数のマイクロキャビティ内で増殖されているスフェロイドの全ての平均直径から、約、例えば、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、2%以下など、または上述した値内の任意の範囲しか異ならないことがある。
【0071】
開放ウェルの構成により、手作業が容易になり、最初に均一な培養環境を維持することができる。流体入口区域により、ピペットの先端の存在または培地交換からの乱流のためのスフェロイドの乱れを防ぐことができる。細胞培養培地は、必要に応じて、置換または交換することができる。マイクロキャビティプレートに培地を導入したり、除去したりするために、ピペットを使用することができる。ピペットの先端は、細胞培養培地を加えるために、流体入口区域に入れることができる。
【0072】
一旦、培養物が、細胞またはスフェロイドの数、分化状態などの要求される特徴を形成したら、プレート内の細胞培養培地は除去してよい。細胞培養培地を除去するために、流体入口区域にピペットの先端を入れることができる。いくつかの実施の形態において、スフェロイドと共に、個々のマイクロキャビティ内にいくらかの細胞培養培地が残るであろうから、細胞培養培地は、大部分、除去してよい。
【0073】
本開示の方法は、スフェロイドを収穫する工程をさらに含むことがある。スフェロイドは、どの適切な様式で収穫されてもよい。例えば、スフェロイドは、マイクロキャビティプレートから除去するために吸引されることがある。別の例として、マイクロキャビティプレートからスフェロイドを収穫するために、重力が使用されることがある。例えば、ウェルが細胞に非接着性である実施の形態において、重力で細胞をウェルから移動させるために装置を反転させることによって、細胞が収穫されることがある。他の非限定的収穫方法としては、掻き落とし(scraping)、振動、および化学手段が挙げられる。
【0074】
様々な開示された実施の形態は、その特定の実施の形態に関連して記載された特定の特徴、要素、または工程を含むことがあるのが認識されよう。特定の特徴、要素、または工程が、ある特定の実施の形態に関連して記載されているにもかかわらず、様々な説明されていない組合せまたは配列で代わりの実施の形態と交換されてもよいまたは組み合わされてもよいことも認識されよう。
【0075】
ここに用いられているように、名詞は、「少なくとも1つ」の対象を指し、特に明記のない限り、「ただ1つ」に限定されるべきではないことも理解されよう。それゆえ、例えば、「開口」に対する言及は、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、そのような「開口」を2つ以上有する例を含む。
【0076】
ここに用いられた全ての科学用語と技術用語は、特に明記のない限り、当該技術分野で一般に使用されている意味を持つ。ここに提供された定義は、ここに頻繁に使用されている特定の用語の理解を容易にするためであり、本開示の範囲を限定する意図はない。
【0077】
ここに用いられているように、「有する」、「含む」、「構成する」などは、制約のない意味で使用され、一般に、「含むが、限定されない」ことを意味する。
【0078】
範囲が、「約」ある特定値から、および/または「約」別の特定値まで、とここに表現されることがある。そのような範囲が表現された場合、例は、そのある特定値から、および/または他方の特定値までを含む。同様に、値が、「約」という先行詞を使用して、近似として表現される場合、その特定値が別の態様を形成することが理解されよう。範囲の各々の端点が、他方の端点との関連で、および他方の端点とは関係なくの両方で有意であることがさらに理解されよう。
【0079】
ここに表現される全ての数値は、特に明記のない限り、そのように記載されていようとなかろうと、「約」を含むものとして解釈されるべきである。しかしながら、列挙された各数値が、「約」その値と表現されているかいないかにかかわらず、同様に正確に考えられることがさらに理解されよう。それゆえ、「10mm未満の寸法」および「約10mm未満の寸法」の両方は、「約10mm未満の寸法」並びに「10mm未満の寸法」の実施の形態を含む。
【0080】
特に明記のない限り、ここに述べられたどの方法も、その工程が特定の順序で行われることを必要とすると解釈されることは、決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、その工程がしたがうべき順序を実際に列挙していない場合、または工程が、特定の順序に限定されるべきことが、特許請求の範囲または説明に他に具体的に述べられていない場合、どの特定の順序も暗示されることは、決して意図されていない。
【0081】
特定の実施の形態の様々な特徴、要素または工程が、「含む」という移行句を使用して開示されることがあるが、「からなる」または「から実質的になる」という移行句を使用して記載されることのあるものを含む、代わりの実施の形態が暗示されることを理解すべきである。それゆえ、例えば、A+B+Cを含む方法に対して暗示される代わりの実施の形態は、方法がA+B+Cからなる実施の形態、および方法がA+B+Cから実質的になる実施の形態を含む。
【0082】
本開示の多数の実施の形態を詳細な説明を記載してきたが、本開示は、開示された実施の形態に限定されず、以下の請求項により述べられ、定義されたような本開示から逸脱せずに、様々な再配置、改変および置換が可能であることを理解すべきである。
【0083】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0084】
実施形態1
細胞培養デバイスにおいて、
フレームであって、
中に配置された開放ウェル、および
前記開放ウェルと連通した流体入口区域、
を有するフレーム、
を備え、前記開放ウェルは、
上部開口、
マイクロキャビティ基体を構成し、主面を画成する底板、および
前記底板から前記上部開口まで延在する1つ以上の側壁、
を有する、細胞培養デバイス。
【0085】
実施形態2
前記流体入口区域が、前記1つ以上の側壁の内の側壁の面を含む、実施形態1に記載の細胞培養デバイス。
【0086】
実施形態3
前記側壁の面が、該側壁の上部外側部分から、該側壁の長さに沿って該側壁の底部内側部分まで傾斜している、実施形態2に記載の細胞培養デバイス。
【0087】
実施形態4
前記上部外側部分が、前記上部開口と同じレベルにある、実施形態3に記載の細胞培養デバイス。
【0088】
実施形態5
前記底部内側部分が、前記主面と同じレベルにあり、該主面と連通している、実施形態3に記載の細胞培養デバイス。
【0089】
実施形態6
前記流体入口区域が、前記1つ以上の側壁の内の側壁内に配置されたノッチを有する、実施形態1に記載の細胞培養デバイス。
【0090】
実施形態7
前記ノッチが、前記側壁の中心にある四面体形ノッチを含む、実施形態6に記載の細胞培養デバイス。
【0091】
実施形態8
前記四面体形ノッチのエッジが、前記側壁の上部外側部分から該側壁の底部内側部分まで傾斜している、実施形態7に記載の細胞培養デバイス。
【0092】
実施形態9
前記上部外側部分が、前記上部開口と同じレベルにある、実施形態8に記載の細胞培養デバイス。
【0093】
実施形態10
前記底部内側部分が、前記主面と同じレベルにあり、該主面と連通している、実施形態8に記載の細胞培養デバイス。
【0094】
実施形態11
前記流体入口区域が、前記開放ウェルの角に配置されたノッチを有し、そこで、前記1つ以上の側壁の第1の側壁は、該1つ以上の側壁の第2の側壁と、直角に接合している、実施形態1に記載の細胞培養デバイス。
【0095】
実施形態12
前記ノッチが、前記開放ウェルの角にある四面体形ノッチを含む、実施形態11に記載の細胞培養デバイス。
【0096】
実施形態13
前記四面体形ノッチのエッジが、前記角の上部外側部分から、該角の底部内側部分まで傾斜している、実施形態12に記載の細胞培養デバイス。
【0097】
実施形態14
前記角の上部外側部分が、前記上部開口と同じレベルにある、実施形態13に記載の細胞培養デバイス。
【0098】
実施形態15
前記角の底部内側部分が、前記主面と同じレベルにあり、該主面と連通している、実施形態13に記載の細胞培養デバイス。
【0099】
実施形態16
前記流体入口区域が、前記1つ以上の側壁の内の側壁内に配置されたレッジを含む、実施形態1に記載の細胞培養デバイス。
【0100】
実施形態17
前記レッジが、溝付き通路である、実施形態16に記載の細胞培養デバイス。
【0101】
実施形態18
前記レッジが、前記側壁の第1の端部の上部から、該側壁の第2の端部の底部まで傾斜している、実施形態16に記載の細胞培養デバイス。
【0102】
実施形態19
前記底部が、前記主面と同じレベルにあり、該主面と連通している、実施形態18に記載の細胞培養デバイス。
【0103】
実施形態20
前記上部が、前記上部開口と同じレベルにある、実施形態18に記載の細胞培養デバイス。
【0104】
実施形態21
前記流体入口区域が、流体出口区域である、実施形態1に記載の細胞培養デバイス。
【0105】
実施形態22
前記細胞培養デバイスが、バッフルをさらに含む、実施形態1に記載の細胞培養デバイス。
【0106】
実施形態23
前記バッフルが、前記主面と前記上部開口との間の前記開放ウェル内に配置されている、実施形態22に記載の細胞培養デバイス。
【0107】
実施形態24
前記バッフルが、複数のバッフルセグメントを含み、各バッフルセグメントは、前記開放ウェルの一方の端部から該開放ウェルの反対の端部まで延在している、実施形態22に記載の細胞培養デバイス。
【0108】
実施形態25
前記複数のバッフルセグメントの少なくとも1つのバッフルセグメントが、他のバッフルセグメントに対して垂直である、実施形態24に記載の細胞培養デバイス。
【0109】
実施形態26
第1のバッフルセグメントが、側壁の長さに沿って、前記流体入口区域に隣接して、前記開放ウェル内に配置されている、実施形態24に記載の細胞培養デバイス。
【0110】
実施形態27
前記マイクロキャビティ基体が、複数のマイクロキャビティを備える、実施形態1に記載の細胞培養デバイス。
【0111】
実施形態28
前記複数のマイクロキャビティが、少なくとも一列に配列されている、実施形態27に記載の細胞培養デバイス。
【0112】
実施形態29
前記複数のマイクロキャビティが、六方最密パターンで配列されている、実施形態27に記載の細胞培養デバイス。
【0113】
実施形態30
前記複数のマイクロキャビティの各マイクロキャビティが、上部開口、底部、および該上部開口から前記マイクロキャビティの底部まで延在するマイクロキャビティ側壁表面を有する、実施形態27に記載の細胞培養デバイス。
【0114】
実施形態31
前記マイクロキャビティの上部開口が、前記主面と同一平面上にあり、該マイクロキャビティの底部は、前記主面の下に位置している、実施形態30に記載の細胞培養デバイス。
【0115】
実施形態32
各マイクロキャビティが、丸底を有する、実施形態30に記載の細胞培養デバイス。
【0116】
実施形態33
各マイクロキャビティの前記上部開口の幅が、500μmから5mmである、実施形態30に記載の細胞培養デバイス。
【0117】
実施形態34
前記複数のマイクロキャビティの各マイクロキャビティの深さが、500μmから6mmである、実施形態30に記載の細胞培養デバイス。
【0118】
実施形態35
各マイクロキャビティが、細胞に対して非接着性である、実施形態30に記載の細胞培養デバイス。
【0119】
実施形態36
各マイクロキャビティの内部表面が、極低接着性材料で被覆されている、実施形態35に記載の細胞培養デバイス。
【0120】
実施形態37
各マイクロキャビティが、前記ウェル内で培養される細胞がスフェロイドを形成するように作られている、実施形態30に記載の細胞培養デバイス。
【0121】
実施形態38
前記1つ以上の側壁が、前記マイクロキャビティ基体の上に貯蔵部を画成する、実施形態1に記載の細胞培養デバイス。
【0122】
実施形態39
前記1つ以上の側壁が、0.780インチ(約20mm)の高さを有する、実施形態38に記載の細胞培養デバイス。
【0123】
実施形態40
前記開放ウェルの内面が、細胞に対して非接着性である、実施形態1に記載の細胞培養デバイス。
【0124】
実施形態41
前記開放ウェルの内面が、パーフルオロポリマー、オレフィン、アガロース、非イオン性ヒドロゲル、ポリエーテル、ポリオール、細胞接着を阻害するポリマー、またはその組合せから作られた非接着性表面コーティングを含む、実施形態40に記載の細胞培養デバイス。
【0125】
実施形態42
前記非接着性表面コーティングが、極低接着(ULA)表面コーティングを含む、実施形態41に記載の細胞培養デバイス。
【0126】
実施形態43
前記フレーム、前記1つ以上の側壁、またはその組合せが、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、シリコーンゴムまたは共重合体、エチレン酢酸ビニル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、またはその組合せから形成される、実施形態1に記載の細胞培養デバイス。
【0127】
実施形態44
前記マイクロキャビティ基体が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルペンテン、(ポリ)4-メチルペンテン(PMP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、シリコーンゴムまたは共重合体、エチレン酢酸ビニル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、またはその組合せから形成される、実施形態1に記載の細胞培養デバイス。
【0128】
実施形態45
前記細胞培養デバイスが、貯蔵開放ウェル型マイクロキャビティプレートである、実施形態1に記載の細胞培養デバイス。
【符号の説明】
【0129】
100、200、300、400 マイクロキャビティプレート
102、302 フレーム
105、205、305、405 流体入口区域
120、121、122、123、220、320、321、420、421 1つ以上の側壁
124、224、334 上部外側部分
126、336 底部内側部分
150、350 開放ウェル
155 上部開口
160、260、360、460、900、1000、1100 マイクロキャビティ基体
161、261、361、461 主面
162 底板
170 スカート
190、290、390、490 バッフル
191、193、195、291、293、295、391、393、395、491、493、495 バッフルセグメント
241、341 エッジ
407 溝付き通路
500 スフェロイド
910、1001、1101 マイクロキャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】